光記録媒体
【課題】高速高密度記録が可能な、いわゆる青色レーザー用途に適する光学記録媒体を提供すること。
【解決手段】基板上に記録層が形成される光学記録媒体の該記録層に含有する有機色素化合物を下記一般式(A)のベンゾトリアゾール誘導体とする。
【効果】 これら誘導体はいずれも近紫外域により近い長波長側の紫外域に吸収を持ち、一部は
近紫外域まで吸収を示すものである。 この吸収特性はいわゆる青色レーザーの波長に対応し、
かつ従来のアゾ系、シアニン系有機色素に比べて優れた耐光性を持つため、次世代の記録媒体であるblu−ray Discなどの光学記録媒体用の色素化合物としてきわめて有用である。
【解決手段】基板上に記録層が形成される光学記録媒体の該記録層に含有する有機色素化合物を下記一般式(A)のベンゾトリアゾール誘導体とする。
【効果】 これら誘導体はいずれも近紫外域により近い長波長側の紫外域に吸収を持ち、一部は
近紫外域まで吸収を示すものである。 この吸収特性はいわゆる青色レーザーの波長に対応し、
かつ従来のアゾ系、シアニン系有機色素に比べて優れた耐光性を持つため、次世代の記録媒体であるblu−ray Discなどの光学記録媒体用の色素化合物としてきわめて有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザー光の照射により、情報をパターンとして記録するための光記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、CD−R/RW、DVD−R/RW,MOなど記録又は再生が非接触で行われる等の優れた特徴から、各種記録媒体は大容量のデータを記録することができ、同じように大容量を記録し、保存するテープストリーマなどと比較するとランダムアクセスが容易である点、メディアの単価が低コストであることなどからコンピューターのようなデータ処理装置における外部記録装置として近年、急速に普及している。
【0003】
とりわけCD−RやDVD−Rにおいてはメディアが非常に安価であり、かつコンピューターの機種を選ばず、互換性に優れていること、各種のDV機器などでも使用できる点で末端の消費者から専門機関、学校、官庁に至るまで幅広く使用されており、今後、ますます優位性を有するものと考えられている。
【0004】
近年になって扱うデータがそれまで文字データや静止画データのような比較的データ量の小さなものから映画のようなデータ量の多い動画データを記録するようになった。 さらにこれらの画像を映し出す、ハードウエアーの劇的な進歩により、さらにリアルでクリアーな画質、音質などが求められるようになってきた。DVD−Rをもってしても記録容量が小さく、さらに大容量のデータを記録するメディアの開発が急務となっている。 そこで青色レーザー等の波長の短いレーザーを用いた高速高密度の記録再生可能な光学記録媒体が提唱され、関連各社において研究開発されている。
すでに現在、一部で実用化が始まってはいるが、無機物質であるため、DVD−Rの開発時と同様にコストや応答速度の問題が浮き彫りになっている。
【0005】
このように高密度で記録再生可能な光学記録媒体を開発する上で青色レーザー等のこれまでより波長の短いレーザー光を用い高速かつ高密度の光記録媒体に記録するための有機色素材料が必要であるが、390nm〜430nm、特に最も重要な波長域である405nm付近に十分な極大吸収を持ついわゆるブルーレイディスクに対応した有機色素材料が開発されていないのが現状である。
【0006】
このような波長領域に吸収を持つ化合物としては、例えば、特許文献1〜5に記載されているような有機色素の基本骨格としてピラン化合物の誘導体、ポリアセンジイミド系色素の誘導体、シアニン系色素の混合物、メチン基のパラ位に特定のアミノ基を導入したベンゼン誘導体を用いる方法などが提案されている。
【特許文献1】特開2004−322564号公報
【特許文献2】特開2004−090372号公報
【特許文献3】特開2003−266954号公報
【特許文献4】特開2003−246142号公報
【特許文献5】特開2003−103935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来よりも、より紫外領域に近い波長光を使うために、その破壊エネルギーは桁違いに大きくなる。
その材料そのものが近紫外〜紫外光を照射する際において安定性に優れたものでなければならない。
そこで、紫外線領域に近い波長光によって励起された状態から、そのエネルギーを基底状態に速やかに戻すことができるベンゾトリアゾール系化合物のように耐光性に優れた構造物が適している。
材料の構造にアゾ基やメチン基などを有する化合物は、近紫外〜紫外域の耐光性に問題があるため、
DVD−Rなどの有機色素に少し改良を加えたものでは対応できなくなっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、下記(化1)に示した一般式(A)で示されるベンゾトリアゾール誘導体の内、R1〜R10 がそれぞれ下記の官能基または原子のうちいずれかであるベンゾトリアゾール誘導体が、光学記録媒体の記録層に含有されているものとすることを主要な解決手段とする。
【0009】
【化1】
R1 、R2は、炭素数1〜20のアルキル基(任意の位置で枝分かれしているものを含む)、カルボキシル基または、炭素数1〜20のカルボン酸エステル、ヒドロキシル基、または、炭素数1〜20のアルキルエーテル、(任意の位置で枝分かれしているものを含む)
R4,R5,R8,R9は、カルボキシル基または、炭素数1〜20のカルボン酸エステル、
ヒドロキシル基、または、炭素数1〜20のアルキルエーテル
R3,R6,R7,R10 は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(任意の位置で枝分かれしているものを含む)
【発明の効果】
【0010】
上記化合物は、ベンゾトリアゾールをメチレン基でつないで2量体としているため、耐光性、高温加熱時の蒸散性や、物質としての安定性に優れている。 特に耐光性に関しては、1量体のベンゾトリアゾールよりも格段に優れた特性を示すものである。本発明の光学記録媒体は、記録層に上記化合物を含有させたため、青色レーザーの強い波長域の光に対して優れた性能と安定性を持つものである。
【0011】
本発明の化合物は、ベンゾトリアゾールのメチレンビス体であるが、過去にも類似構造物として特開2005−206720などでも紹介されている。ただし、これらの化合物における吸収波長域は、400nm付近での吸収がほとんどなく、本発明である光学記録媒体の用途としては不適であるが、本発明の光学記録媒体に添加するベンゾトリアゾール誘導体は、置換基効果により、長波長側にシフトしており、ちょうど対応する吸収帯を持つ媒体とすることができる。 特に驚くべきことに、ベンゾトリアゾールの5位に水酸基、またはアルキルエーテル基を修飾した(f)、(g)の化合物におけるモル吸光係数は40000前後と非常に大きなものであり、大容量光記録媒体の有機色素の材料としてきわめて有用であることを見出した。
【特許文献6】特開2005−206720号公報
【0012】
本発明の化合物は、融点が高く、長期間経過後も結晶化することなく、嵩高いアモルファス状態を維持することができる。
【0013】
また、本発明の化合物は、クロロホルムや、トルエン、キシレンなど有機溶媒に対する溶解度が大きいものである。
【0014】
なかでも、下記構造式で表されるベンゾトリアゾール誘導体は、有機溶媒が揮発する際にも結晶化しにくく、かつ、トルエンやクロロホルムなど有機溶媒に対する溶解性に優れている有機化合物であり、基板上に容易に記録層を形成させることができる。
【0015】
化合物(a)
【0016】
【化2】
化合物(b)
【0017】
【化3】
化合物(c)
【0018】
【化4】
化合物(d)
【0019】
【化5】
化合物(e)
【0020】
【化6】
化合物(f)
【0021】
【化7】
化合物(g)
【0022】
【化8】
化合物(h)
【0023】
【化9】
さらに、上記化合物は、湿式塗布法のみならず、蒸着法、スパッタリング法によっても基板上に製膜することができ、これらの方法によっても、良好な光学記録媒体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に本発明につき詳細に説明する。本発明は、少なくとも片面に、レーザーによって記録可能な記録層を有する光学記録媒体についての発明であって、一般式(A)によって示される有機色素化合物を記録層に含有させたことを特徴とするものである。 以下に前記一般式(A)において表される化合物について説明する。
【0025】
R1、R2は、炭素数1〜20のアルキル基(任意の位置で枝分かれしているものを含む)、カルボキシル基または、炭素数1〜20のカルボン酸エステル、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、または、炭素数1〜20のアルキルエーテル(任意の位置で枝分かれしているものを含む)、R4,R5,R8,R9は、カルボキシル基または、炭素数1〜20のカルボン酸エステル、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、または、炭素数1〜20のアルキルエーテル、R3,R6,R7,R10 は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(任意の位置で枝分かれしているものを含む)を表す。 該置換基はさらに置換されていても良い。該任意の置換基の例としてR1,R2は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基,n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−ヘキシル基、イソヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜20の直鎖、又は分岐のアルキル基、又は水素原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、tert−ヘプチルオキシ基、n−オクトキシ基、イソオクトキシ基、tert−オクトキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等の炭素数1〜20の直鎖、又は分岐のアルコキシ基またはヒドロキシル基;カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基,n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、ネオペンチルオキシカルボニル基、tert−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、イソヘプチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、イソヘプチルオキシカルボニル基、tert−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクトキシカルボニル基、イソオクトキシカルボニル基、tert−オクトキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等の置換されても良い炭素数1〜20の直鎖、又は分岐のアルキルカルボニル基またはカルボキシル基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子などがあげられる。
【0026】
該任意の置換基の例としてR4,R5,R8,R9は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基,n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−ヘキシル基、イソヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜20の直鎖、又は分岐のアルキル基又は水素原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、tert−ヘプチルオキシ基、n−オクトキシ基、イソオクトキシ基、tert−オクトキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等の炭素数1〜20の直鎖、又は分岐のアルコキシ基またはヒドロキシル基;カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基,n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、ネオペンチルオキシカルボニル基、tert−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、イソヘプチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、イソヘプチルオキシカルボニル基、tert−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクトキシカルボニル基、イソオクトキシカルボニル基、tert−オクトキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数1〜20の直鎖、又は分岐のアルキルカルボニル基またはカルボキシル基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子などがあげられる。
【0027】
該任意の置換基の例としてR3,R6,R7,R10は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基,n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−ヘキシル基、イソヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜20の直鎖、又は分岐のアルキル基又は水素原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、tert−ヘプチルオキシ基、n−オクトキシ基、イソオクトキシ基、tert−オクトキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等の炭素数1〜20の直鎖、又は分岐のアルコキシ基またはヒドロキシル基等の炭素数1〜20の直鎖、又は分岐のアルキルカルボニル基またはカルボキシル基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子などがあげられる。
【0028】
一般式(A)で表される本発明化合物は、例えば下記(化10,化11)の示した反応式を経て合成することができる。
「マンニッヒ反応工程」
【0029】
【化10】
「縮合工程」
【0030】
【化11】
ベンゾトリアゾール誘導体に高沸点溶媒である商品名「ソルベッソ150」(エクソンモービル社製)溶媒下、パラホルムアルデヒドとジエチルアミン等の低級アミンを反応させてマンニッヒベースとし、さらにベンゾトリアゾール誘導体と縮合させることで本発明の上記ベンゾトリアゾール誘導体化合物を合成できる。反応の溶媒としては、上記「ソルベッソ150」以外に例えばキシレン等の芳香族系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、ヘプタン、オクタン等の鎖状炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環状炭化水素を用いることができる。また、再結晶の際に用いる再結晶溶媒としては、メチルイソブチルケトン以外に例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等の低級エステル類等があげられる。
【0031】
本発明の有機色素を製膜して用いる方法としては真空蒸着法、スパッタリング法、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等などが一般的であるが、コスト面ではスピンコート法が望ましい。
【0032】
ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等により塗布する場合の塗布溶媒としては、基板を侵さない溶媒であれば良く、特に限定されない。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の鎖状炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環状炭化水素系溶媒;テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール等のフルオロアルキルアルコール系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシカルボン酸エステル系溶媒等が挙げられる。また、基板に関しては、ガラスや、金属製の基板などに置き換わる動きも見られることから、例えばトルエン、キシレン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドのように樹脂製の基板を侵すような溶媒であっても、将来的には、使用できる可能性がある。
【0033】
以下に本発明に用いる色素化合物の合成法と該色素化合物を用いた光学記録媒体の製造例を示す。
ただし化合物の合成方法、記録媒体の製造方法はこれに限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
〔化合物の合成〕
化合物(a)
イ)2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ジエチルアミノメチル−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールの合成
1000mLの四つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イルフェノール)(商品名「シーソーブ709」シプロ化成社製)96.9g(0.30モル)、ジエチルアミン65.7g(0.90モル)、92%パラホルムアルデヒド29.4g(0.90モル)、を入れ、95〜100℃にて8時間撹拌した。 次いでn-ヘキサン240mLを加えて70℃の温水100mLで3回洗浄し、冷却して析出した結晶をブフナーロートに濾過し取った。 乾燥機にて60℃で乾燥し、微黄色の結晶であるマンニッヒ塩基体98.0gを得た。 融点102.2〜103.1℃ 、収率80%であった。
<測定条件>
装置:LC−6A ((株)島津製作所製)
使用カラム:SUMIPAX ODS A−212 5μm 6mmφ×15cm
カラム温度:40℃
移動相:メタノール:水=95:5
流速:1.0mL/min
なお、下記ロ)のHPLC面百純度も上記と同様の条件で行った。
【0035】
ロ)化合物(a)の合成
500mLの四つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、イ)で合成したマンニッヒ塩基化合物25.0g(0.061mol)、2−[2−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシリックアシドメチルエステル23.4g(0.061mol)、キシレン30mL、28%ナトリウムメチラートメタノール溶液0.19gを加え、145℃で10時間反応させた。 この際、留出したキシレン、ジエチルアミンは、留去しつつ反応させた。次に加熱、減圧下、キシレンを完全に留去してから110℃まで冷却してトルエン10mLを加え、酢酸0.1mLにて反応物を中和した。 温水10mLで2回洗浄し、減圧下でトルエンを除去、次いでメタノールを加えて結晶を析出させた後、この結晶をブフナーロートに濾過し取った。 収量13.2g、収率60.1%、HPLC純度79.1%の粗結晶を得た。この粗結晶2gを100mLの四つ口フラスコに入れ、トルエン3mLとメタノール30mLの混合溶媒で加熱して1μmのメンブランフィルターで濾過した後、再結晶させた。ブフナーロートでこの結晶を濾過し取り、さらにメタノールで洗浄してから乾燥させ、化合物(a)である微黄色の粉末結晶を得た。 収率は粗結晶体より55.7%、HPLC純度85.7%、融点133.4〜139.0℃であった。 この化合物は、1H−NMR、13C−NMRにより、いずれも推定構造を支持するものであった。 これらのチャートを図1〜2に示す。また、LC−MSにより、MS= 716.405に対して、pMS=717.3、nMS=715.5のピークが観測された。
【0036】
<紫外〜近紫外吸収スペクトル>
化合物(a)の紫外〜近紫外吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長λmaxが354nmにあり、εは32700であった。 このスペクトルを図3に示す。また測定条件については以下の通りである。
<測定条件>
装置:UV−2450((株)島津製作所製)
測定波長:250〜500nm
また以下の実施例も本実施例と同様の測定条件で紫外〜近紫外吸収スペクトルの測定を行った。
【0037】
<溶解性評価>
化合物(a)について各種溶媒に溶解させたときの溶解度を調べた結果を表1に示す。 イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、トリフルオロプロパノールに対しての溶解度は低いが、クロロホルム、トルエン、キシレンへの溶解性が優れていた。
【0038】
<記録媒体の作製>
上記で得られた化合物(a)をクロロホルムに対して2.0wt%になるように調製した。
次にガラス板(7.5cm×2.5cm、厚さ約1mm)をポリカーボネート円盤に貼り付けて回転数500〜600rpmで回転させた。回転している円盤上に上記化合物(a)のクロロホルム溶液を滴下し、風乾させることで化合物(a)が膜化して付着しているガラス板を得た。
滴下した溶液の縁に結晶化が見られたが、中心部はアモルファス状態を維持していた。
また、塗膜したガラス板の紫外〜近紫外吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長λmaxが355nmであった。
【0039】
(実施例2)
〔化合物の合成〕
化合物(b)
100mLの四つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2−(5−ターシャリブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシリックアシドメチルエステル3.25g(0.01モル)、ジエチルアミン0.8g(0.011モル)、92%パラホルムアルデヒド0.33g(0.01モル)、ソルベッソ150 30mLを入れ、95〜98℃にて13時間撹拌した。 次いで70℃の温水30mLで2回洗浄し、32%NaOH 0.25gを加え、140〜150℃、減圧下で揮発分を留去しながら10時間反応させた。薄層クロマトにより未反応が消失していることを確認した後、酢酸0.1mLで反応物を中和した。次いでトルエン30mLを加えて、80℃まで加熱して溶解させ、温水で洗浄し、トルエンを留去してイソプロパノールにおき替えて結晶を析出させた。 この結晶をブフナーロートで濾過し取り、1.17gの粗結晶を得た。 収率は35.2%であった。
次にこの結晶1.17gを100mLの四つ口フラスコにトルエン5mLと共に入れ、加熱溶解後、メンブランフィルターで濾過してからメタノール20mLで置き換えた後に再結晶させ、この結晶をブフナーロートで濾過し取った。 収量は0.89g、収率26.8%、HPLC純度96.8%で微黄色粉末状である(b)の結晶を得た。また、融点222.4〜223.2℃であった。 この化合物は、1H−NMR、13C−NMR解析により、いずれも推定構造を支持するものであった。 これらのチャートを図4〜5に示す。 またLC−MSにより、MS= 662.285に対して、pMS= 663.2、nMS= 661.4のピークが観測された。
【0040】
<紫外〜近紫外吸収スペクトル>
化合物(b)の紫外〜近紫外吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長λmaxが360nmにあり、εは36700であった。 このスペクトルを図6に示す。
<溶解性評価>
化合物(b)について各種溶媒に溶解させたときの溶解度を調べた結果を表1に示す。 イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、トリフルオロプロパノールに対しての溶解度は低いが、クロロホルム、トルエン、キシレンへの溶解性が優れていた。
【0041】
<記録媒体の作製>
溶媒をジクロロメタンにて実施したこと以外は、すべて実施例1と同様に行った。
滴下した溶液の縁に結晶化が見られたが、中心部はアモルファス状態を維持していた。
また、塗膜したガラス板の紫外〜近紫外吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長λmaxが362nmであった。
【0042】
(実施例3)
〔化合物の合成〕
化合物(c)
100mLの四つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2−(5−ターシャリブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシリックアシドイソプロピルエステル3.53g(0.01モル)、ジエチルアミン1.46g(0.02モル)、92%パラホルムアルデヒド0.66g(0.02モル)、ソルベッソ150 30mLを入れ、85〜90℃にて10時間撹拌した。 次いで70℃の温水30mLで2回洗浄し、32%NaOH 0.25gを加え、140〜150℃、減圧下で揮発分を留去しながら11時間反応させた。薄層クロマトにより未反応が消失していることを確認した後、酢酸0.1mLで反応物を中和した。次いでトルエン30mLを加えて、80℃まで加熱して溶解させ、温水で洗浄し、トルエンを留去してイソプロパノールにおき替えて結晶を析出させた。 この結晶をブフナーロートで濾過し取り、1.36gの粗結晶を得た。 収率は37.8%であった。 またHPLC純度は90.4%であった。 次にこの結晶1.36gを100mLの四つ口フラスコにトルエン5mLと共に入れ、加熱溶解後、メンブランフィルターで濾過してからイソプロパノール40mLで置き換えた後に再結晶させ、この結晶をブフナーロートで濾過し取った。 収量は1.04g、収率28.9%、HPLC純度99.4%で微黄色粉末状である(c)の結晶を得た。また、融点174.7〜176.0℃であった。 この化合物は、1H−NMR、13C−NMR解析により、いずれも推定構造を支持するものであった。 これらのチャートを図7〜8に示す。また、LC−MSにより、MS= 718.348に対して、pMS= 719.1、nMS= 717.2のピークが観測された。
【0043】
<紫外〜近紫外吸収スペクトル>
化合物(c)の紫外〜近紫外吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長λmaxが360nmにあり、εは36600であった。 このスペクトルを図9に示す。
<溶解性評価>
化合物(c)について各種溶媒に溶解させたときの溶解度を調べた結果を表1に示す。 イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、トリフルオロプロパノールに対しての溶解度は低いが、クロロホルム、トルエン、キシレンへの溶解性が優れていた。
【0044】
<記録媒体の作製>
すべて実施例2と同様に行った。
滴下した溶液の縁に結晶化が見られたが、中心部はアモルファス状態を維持していた。
また、塗膜したガラス板の紫外〜近紫外吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長λmaxが363nmであった。
【0045】
(実施例4)
〔化合物の合成〕
化合物(d)
100mLの四つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、実施例1−イ)で合成した2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ジエチルアミノメチル−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノール2.04g(0.005モル)、2−[2−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシリックアシドイソプロピルエステル2.05g(0.005モル)、28%ナトリウムメチラートメタノール溶液 0.19g、キシレン30mLを加え、140〜150℃、減圧下で揮発分を留去しながら7時間反応させた。薄層クロマトにより未反応が消失していることを確認した後、トルエン10mLを加え、酢酸0.1mLで反応物を中和した。次いで温水で洗浄し、メンブランフィルターで濾過してからトルエンを減圧留去してイソプロパノールにおき替えて結晶を析出させた。 この結晶をブフナーロートで濾過し取り、0.88gの結晶を得た。 収率は23.6%であった。 HPLC純度は82.3%であった。この化合物は、1H−NMR、13C−NMR解析により、いずれも推定構造を支持するものであった。 これらのチャートを図10〜11に示す。また、LC−MSにより、MS= 744.436に対して、pMS=745.2、nMS= 743.4のピークが観測された。
【0046】
<紫外〜近紫外吸収スペクトル>
化合物(d)の紫外〜近紫外吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長λmaxが353nmにあり、εは30900であった。 このスペクトルを図12に示す。
<溶解性評価>
化合物(d)について各種溶媒に溶解させたときの溶解度を調べた結果を表1に示す。 イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、トリフルオロプロパノールに対しての溶解度は低いが、クロロホルム、トルエン、キシレンへの溶解性が優れていた。
【0047】
<記録媒体の作製>
すべて実施例2と同様に行った。
滴下した溶液の縁に結晶化が見られたが、中心部はアモルファス状態を維持していた。
また、塗膜したガラス板の紫外〜近紫外吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長λmaxが353nmであった。
【0048】
(実施例5)
〔化合物の合成〕
化合物(e)
100mLの四つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、実施例1−イ)で合成した2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ジエチルアミノメチル−4−(5−ターシャリブチル)−フェノール1.76g(0.005モル)、2−[2−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシリックアシドメチルエステル1.91g(0.005モル)、28%ナトリウムメチラートメタノール溶液 0.19g、キシレン30mLを加え、実施例4と同様に行った。収量1.4g、収率は42.3%であった。 HPLC純度は74.0%、融点は149.2〜155.1℃であった。この化合物は、1H−NMR、13C−NMR、LC−MS解析により、いずれも推定構造を支持するものであった。 これらのチャートを図13〜14に示す。 また、LC−MSにより、MS= 660.342に対して、pMS= 661.2、nMS= 659.3のピークが観測された。
【0049】
<紫外〜近紫外吸収スペクトル>
化合物(e)の紫外〜近紫外吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長λmaxが351nmにあり、εは31300であった。 このスペクトル図を図15に示す。
<溶解性評価>
化合物(e)について各種溶媒に溶解させたときの溶解度を調べた結果を表1に示す。 イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、トリフルオロプロパノールに対しての溶解度は低いが、クロロホルム、トルエン、キシレンへの溶解性が優れていた。
【0050】
<記録媒体の作製>
すべて実施例2と同様に行った。
滴下した溶液の縁に結晶化が見られたが、中心部はアモルファス状態を維持していた。
【0051】
(実施例6)
〔化合物の合成〕
化合物(f)
100mLの四つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2−(5−メトキシベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチルフェノール5.11g(0.02モル)、ジエチルアミン2.92g(0.04モル)、92%パラホルムアルデヒド1.31g(0.04モル)を入れ、105℃にて10時間撹拌した。 次いでキシレン50mLを加えて抽出し、70℃の温水50mLで2回洗浄し、この中に32%NaOH0.5gを加え、140〜150℃、減圧下で揮発分を留去しながら5時間反応させた。HPLCにより未反応が消失していることを確認した後、酢酸0.2mLで反応物を中和した。次いでトルエン50mLを加えて、80℃まで加熱して溶解させ、温水で洗浄し、トルエンを留去してイソプロパノールにおき替えて結晶を析出させた。 この結晶をブフナーロートで濾過し取った。次にこの粗結晶8.0gを200mLの四つ口フラスコにトルエン100mLと共に入れ、加熱後、冷却してこの結晶をブフナーロートに濾過し取った。 収量は7.7g、収率73.7%、HPLC純度97.3%で淡褐色粉末状である(f)の結晶を得た。融点は300℃以上であった。 この化合物は、1H−NMR、13C−NMR解析により、いずれも推定構造を支持するものであった。 これらのチャートを図16〜17に示す。 また、LC−MSにより、MS= 522.202に対して、pMS= 523.0、nMS= 521.2のピークが観測された。
【0052】
<紫外〜近紫外吸収スペクトル>
化合物(f)の紫外〜近紫外吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長λmaxが352nmにあり、εは43300であった。 このスペクトル図を図18に示す。
<溶解性評価>
化合物(f)について各種溶媒に溶解させたときの溶解度を調べた結果を表1に示す。 イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、トリフルオロプロパノールに対しての溶解度は低いが、クロロホルム、トルエン、キシレンへの溶解性が優れていた。
【0053】
<記録媒体の作製>
すべて実施例2と同様に行った。
滴下した溶液の縁に結晶化が見られたが、中心部はアモルファス状態を維持していた。
【0054】
(実施例7)
〔化合物の合成〕
化合物(g)
イ)2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ジエチルアミノメチル−4−ターシャリブチル−フェノールの合成
1000mLの四つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−ターシャリブチル−2−イルフェノール(商品名「シーソーブ708」シプロ化成社製)80.1g(0.30モル)、ジエチルアミン65.7g(0.90モル)、92%パラホルムアルデヒド29.4g(0.90モル)、を入れ、80〜90℃にて8時間撹拌した。 次いでn−ヘキサン200mLを加えて70℃の温水100mLで3回洗浄し、冷却して析出した結晶をブフナーロートに濾過し取った。 乾燥機にて60℃で乾燥し、微黄色の結晶であるマンニッヒ塩基体82.9gを得た。 収率78.4%であった。
ロ)化合物(g)の合成
100mLの四つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−オール4.44g(0.0184モル)、実施例1−イ)で合成した2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ジエチルアミノメチル−4−ターシャリブチル−フェノール6.48g(0.0184モル)、 キシレン100mL、32%NaOH1.0gを加え、140〜150℃、減圧下で揮発分を留去しながら8時間反応させた。HPLCにより未反応が消失していることを確認した後、酢酸0.5mLで反応物を中和した。次いでトルエン100mLを加えて、80℃まで加熱して溶解させ、温水で洗浄し、トルエンを留去してイソプロパノールにおき替えて結晶を析出させた。 この結晶をブフナーロートで濾過し取った。次にこの粗結晶を100mLの四つ口フラスコにイソプロパノール50mLと共に入れ、加熱後、冷却してこの結晶をブフナーロートに濾過し取った。 粗結晶としての収量は7.7g。次にこの粗結晶を100mLの四つ口フラスコにイソプロパノール50mLと共に入れ、加熱後、冷却してこの結晶をブフナーロートに濾過し取った。 収量は5.7g、収率59.6%、HPLC純度97.0%で灰白色粉末状である(g)の結晶を得た。 融点は 224.2〜227.8℃であった。 この化合物は、1H−NMR、13C−NMR解析により、いずれも推定構造を支持するものであった。 これらのチャートを図22〜23に示す。また、LC−MSにより、MS= 576.285に対して、pMS= 577.2、nMS= 575.3のピークが観測された。
【0055】
<紫外〜近紫外吸収スペクトル>
化合物(g)の紫外〜近紫外吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長λmaxが342nmにあり、εは39000であった。 このスペクトル図を図24に示す。
<溶解性評価>
化合物(g)について各種溶媒に溶解させたときの溶解度を調べた結果を表1に示す。 イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、トリフルオロプロパノールに対しての溶解度は低いが、クロロホルム、トルエン、キシレンへの溶解性が優れていた。
【0056】
<記録媒体の作製>
すべて実施例2と同様に行った。
滴下した溶液の縁に結晶化が見られたが、中心部はアモルファス状態を維持していた。
【0057】
(実施例8)
〔化合物の合成〕
化合物(h)
100mLの四つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−オール4.83g(0.02モル)、実施例1−イ)で合成した2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ジエチルアミノメチル−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノール8.17g(0.020モル)、 キシレン100mL、32%NaOH1.0gを加え、140〜150℃、減圧下で揮発分を留去しながら8時間反応させた。HPLCにより未反応が消失していることを確認した後、酢酸0.5mLで反応物を中和した。次いでトルエン100mLを加えて、80℃まで加熱して溶解させ、温水で洗浄し、トルエンを留去してイソプロパノールにおき替えて結晶を析出させた。 この結晶をブフナーロートで濾過し取った。次にこの粗結晶5.2gを100mLの四つ口フラスコにイソプロパノール50mLと共に入れ、加熱後、冷却してこの結晶をブフナーロートに濾過し取った。 収量は2.0g、収率41.7%、HPLC純度99.2%で灰白色粉末状である(h)の結晶を得た。融点は165.8〜168.2℃であった。 この化合物は、1H−NMR、13C−NMR解析により、いずれも推定構造を支持するものであった。 これらのチャートを図22〜23に示す。また、LC−MSにより、MS= 576.285に対して、pMS= 577.2、nMS= 575.3のピークが観測された。
【0058】
<紫外〜近紫外吸収スペクトル>
化合物(h)の紫外〜近紫外吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長λmaxが344nmにあり、εは33000であった。 このスペクトル図を図24に示す。
<溶解性評価>
化合物(h)について各種溶媒に溶解させたときの溶解度を調べた結果を表1に示す。 イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、トリフルオロプロパノールに対しての溶解度は低いが、クロロホルム、トルエン、キシレンへの溶解性が優れていた。
【0059】
<記録媒体の評価>
すべて実施例2と同様に行った。
滴下した溶液の縁に結晶化が見られたが、中心部はアモルファス状態を維持していた。
【0060】
実施例1〜8の化合物(a)〜(h)の特性をまとめて表1に示す。なお、塗布膜としたときの結晶性の有無も併せて示す。評価基準は下記の通りである。
○:結晶析出が認められない。
△:塗布膜の縁にわずかに結晶析出が認められる。
×:塗布膜の縁に明確に結晶析出が認められるか、又は塗布膜の縁以外の部分に結晶析出が認められる。
【0061】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の化合物は、近紫外から紫外領域に広い吸収を持ち、かつ非結晶性が高いので、有機色素として塗料や写真薬など一般の色剤、また蒸散性に優れ、既存の紫外線吸収剤よりも可視光域に近い領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤として好適に使用できる。なかでも有機色素としては、いわゆる青色レーザーを用いる光記録媒体用に添加する色素として、紫外線吸収剤としては、ポリカーボネート樹脂のようなエンジニアリングプラスチックに対して好適に利用できる。また、本発明の化合物は、金属錯体の配位子としても利用でき、本発明の化合物を配位子とした有機金属錯体もまた有機色素として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】化合物(a)の1H−NMRである。
【図2】化合物(a)の13C−NMRである。
【図3】化合物(a)の紫外〜近紫外吸収スペクトルである。
【図4】化合物(b)の1H−NMRである。
【図5】化合物(b)の13C−NMRである。
【図6】化合物(b)の紫外〜近紫外吸収スペクトルである。
【図7】化合物(c)の1H−NMRである。
【図8】化合物(c)の13C−NMRである。
【図9】化合物(c)の紫外〜近紫外吸収スペクトルである。
【図10】化合物(d)の1H−NMRである。
【図11】化合物(d)の13C−NMRである。
【図12】化合物(d)の紫外〜近紫外吸収スペクトルである。
【図13】化合物(e)の1H−NMRである。
【図14】化合物(e)の13C−NMRである。
【図15】化合物(e)の紫外〜近紫外吸収スペクトルである。
【図16】化合物(f)の1H−NMRである。
【図17】化合物(f)の13C−NMRである。
【図18】化合物(f)の紫外〜近紫外吸収スペクトルである。
【図19】化合物(g)の1H−NMRである。
【図20】化合物(g)の13C−NMRである。
【図21】化合物(g)の紫外〜近紫外吸収スペクトルである。
【図22】化合物(h)の1H−NMRである。
【図23】化合物(h)の13C−NMRである。
【図24】化合物(h)の紫外〜近紫外吸収スペクトルである。
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザー光の照射により、情報をパターンとして記録するための光記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、CD−R/RW、DVD−R/RW,MOなど記録又は再生が非接触で行われる等の優れた特徴から、各種記録媒体は大容量のデータを記録することができ、同じように大容量を記録し、保存するテープストリーマなどと比較するとランダムアクセスが容易である点、メディアの単価が低コストであることなどからコンピューターのようなデータ処理装置における外部記録装置として近年、急速に普及している。
【0003】
とりわけCD−RやDVD−Rにおいてはメディアが非常に安価であり、かつコンピューターの機種を選ばず、互換性に優れていること、各種のDV機器などでも使用できる点で末端の消費者から専門機関、学校、官庁に至るまで幅広く使用されており、今後、ますます優位性を有するものと考えられている。
【0004】
近年になって扱うデータがそれまで文字データや静止画データのような比較的データ量の小さなものから映画のようなデータ量の多い動画データを記録するようになった。 さらにこれらの画像を映し出す、ハードウエアーの劇的な進歩により、さらにリアルでクリアーな画質、音質などが求められるようになってきた。DVD−Rをもってしても記録容量が小さく、さらに大容量のデータを記録するメディアの開発が急務となっている。 そこで青色レーザー等の波長の短いレーザーを用いた高速高密度の記録再生可能な光学記録媒体が提唱され、関連各社において研究開発されている。
すでに現在、一部で実用化が始まってはいるが、無機物質であるため、DVD−Rの開発時と同様にコストや応答速度の問題が浮き彫りになっている。
【0005】
このように高密度で記録再生可能な光学記録媒体を開発する上で青色レーザー等のこれまでより波長の短いレーザー光を用い高速かつ高密度の光記録媒体に記録するための有機色素材料が必要であるが、390nm〜430nm、特に最も重要な波長域である405nm付近に十分な極大吸収を持ついわゆるブルーレイディスクに対応した有機色素材料が開発されていないのが現状である。
【0006】
このような波長領域に吸収を持つ化合物としては、例えば、特許文献1〜5に記載されているような有機色素の基本骨格としてピラン化合物の誘導体、ポリアセンジイミド系色素の誘導体、シアニン系色素の混合物、メチン基のパラ位に特定のアミノ基を導入したベンゼン誘導体を用いる方法などが提案されている。
【特許文献1】特開2004−322564号公報
【特許文献2】特開2004−090372号公報
【特許文献3】特開2003−266954号公報
【特許文献4】特開2003−246142号公報
【特許文献5】特開2003−103935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来よりも、より紫外領域に近い波長光を使うために、その破壊エネルギーは桁違いに大きくなる。
その材料そのものが近紫外〜紫外光を照射する際において安定性に優れたものでなければならない。
そこで、紫外線領域に近い波長光によって励起された状態から、そのエネルギーを基底状態に速やかに戻すことができるベンゾトリアゾール系化合物のように耐光性に優れた構造物が適している。
材料の構造にアゾ基やメチン基などを有する化合物は、近紫外〜紫外域の耐光性に問題があるため、
DVD−Rなどの有機色素に少し改良を加えたものでは対応できなくなっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、下記(化1)に示した一般式(A)で示されるベンゾトリアゾール誘導体の内、R1〜R10 がそれぞれ下記の官能基または原子のうちいずれかであるベンゾトリアゾール誘導体が、光学記録媒体の記録層に含有されているものとすることを主要な解決手段とする。
【0009】
【化1】
R1 、R2は、炭素数1〜20のアルキル基(任意の位置で枝分かれしているものを含む)、カルボキシル基または、炭素数1〜20のカルボン酸エステル、ヒドロキシル基、または、炭素数1〜20のアルキルエーテル、(任意の位置で枝分かれしているものを含む)
R4,R5,R8,R9は、カルボキシル基または、炭素数1〜20のカルボン酸エステル、
ヒドロキシル基、または、炭素数1〜20のアルキルエーテル
R3,R6,R7,R10 は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(任意の位置で枝分かれしているものを含む)
【発明の効果】
【0010】
上記化合物は、ベンゾトリアゾールをメチレン基でつないで2量体としているため、耐光性、高温加熱時の蒸散性や、物質としての安定性に優れている。 特に耐光性に関しては、1量体のベンゾトリアゾールよりも格段に優れた特性を示すものである。本発明の光学記録媒体は、記録層に上記化合物を含有させたため、青色レーザーの強い波長域の光に対して優れた性能と安定性を持つものである。
【0011】
本発明の化合物は、ベンゾトリアゾールのメチレンビス体であるが、過去にも類似構造物として特開2005−206720などでも紹介されている。ただし、これらの化合物における吸収波長域は、400nm付近での吸収がほとんどなく、本発明である光学記録媒体の用途としては不適であるが、本発明の光学記録媒体に添加するベンゾトリアゾール誘導体は、置換基効果により、長波長側にシフトしており、ちょうど対応する吸収帯を持つ媒体とすることができる。 特に驚くべきことに、ベンゾトリアゾールの5位に水酸基、またはアルキルエーテル基を修飾した(f)、(g)の化合物におけるモル吸光係数は40000前後と非常に大きなものであり、大容量光記録媒体の有機色素の材料としてきわめて有用であることを見出した。
【特許文献6】特開2005−206720号公報
【0012】
本発明の化合物は、融点が高く、長期間経過後も結晶化することなく、嵩高いアモルファス状態を維持することができる。
【0013】
また、本発明の化合物は、クロロホルムや、トルエン、キシレンなど有機溶媒に対する溶解度が大きいものである。
【0014】
なかでも、下記構造式で表されるベンゾトリアゾール誘導体は、有機溶媒が揮発する際にも結晶化しにくく、かつ、トルエンやクロロホルムなど有機溶媒に対する溶解性に優れている有機化合物であり、基板上に容易に記録層を形成させることができる。
【0015】
化合物(a)
【0016】
【化2】
化合物(b)
【0017】
【化3】
化合物(c)
【0018】
【化4】
化合物(d)
【0019】
【化5】
化合物(e)
【0020】
【化6】
化合物(f)
【0021】
【化7】
化合物(g)
【0022】
【化8】
化合物(h)
【0023】
【化9】
さらに、上記化合物は、湿式塗布法のみならず、蒸着法、スパッタリング法によっても基板上に製膜することができ、これらの方法によっても、良好な光学記録媒体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に本発明につき詳細に説明する。本発明は、少なくとも片面に、レーザーによって記録可能な記録層を有する光学記録媒体についての発明であって、一般式(A)によって示される有機色素化合物を記録層に含有させたことを特徴とするものである。 以下に前記一般式(A)において表される化合物について説明する。
【0025】
R1、R2は、炭素数1〜20のアルキル基(任意の位置で枝分かれしているものを含む)、カルボキシル基または、炭素数1〜20のカルボン酸エステル、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、または、炭素数1〜20のアルキルエーテル(任意の位置で枝分かれしているものを含む)、R4,R5,R8,R9は、カルボキシル基または、炭素数1〜20のカルボン酸エステル、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、または、炭素数1〜20のアルキルエーテル、R3,R6,R7,R10 は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(任意の位置で枝分かれしているものを含む)を表す。 該置換基はさらに置換されていても良い。該任意の置換基の例としてR1,R2は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基,n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−ヘキシル基、イソヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜20の直鎖、又は分岐のアルキル基、又は水素原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、tert−ヘプチルオキシ基、n−オクトキシ基、イソオクトキシ基、tert−オクトキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等の炭素数1〜20の直鎖、又は分岐のアルコキシ基またはヒドロキシル基;カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基,n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、ネオペンチルオキシカルボニル基、tert−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、イソヘプチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、イソヘプチルオキシカルボニル基、tert−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクトキシカルボニル基、イソオクトキシカルボニル基、tert−オクトキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等の置換されても良い炭素数1〜20の直鎖、又は分岐のアルキルカルボニル基またはカルボキシル基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子などがあげられる。
【0026】
該任意の置換基の例としてR4,R5,R8,R9は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基,n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−ヘキシル基、イソヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜20の直鎖、又は分岐のアルキル基又は水素原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、tert−ヘプチルオキシ基、n−オクトキシ基、イソオクトキシ基、tert−オクトキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等の炭素数1〜20の直鎖、又は分岐のアルコキシ基またはヒドロキシル基;カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基,n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、ネオペンチルオキシカルボニル基、tert−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、イソヘプチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、イソヘプチルオキシカルボニル基、tert−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクトキシカルボニル基、イソオクトキシカルボニル基、tert−オクトキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数1〜20の直鎖、又は分岐のアルキルカルボニル基またはカルボキシル基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子などがあげられる。
【0027】
該任意の置換基の例としてR3,R6,R7,R10は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基,n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−ヘキシル基、イソヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜20の直鎖、又は分岐のアルキル基又は水素原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、tert−ヘプチルオキシ基、n−オクトキシ基、イソオクトキシ基、tert−オクトキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等の炭素数1〜20の直鎖、又は分岐のアルコキシ基またはヒドロキシル基等の炭素数1〜20の直鎖、又は分岐のアルキルカルボニル基またはカルボキシル基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子などがあげられる。
【0028】
一般式(A)で表される本発明化合物は、例えば下記(化10,化11)の示した反応式を経て合成することができる。
「マンニッヒ反応工程」
【0029】
【化10】
「縮合工程」
【0030】
【化11】
ベンゾトリアゾール誘導体に高沸点溶媒である商品名「ソルベッソ150」(エクソンモービル社製)溶媒下、パラホルムアルデヒドとジエチルアミン等の低級アミンを反応させてマンニッヒベースとし、さらにベンゾトリアゾール誘導体と縮合させることで本発明の上記ベンゾトリアゾール誘導体化合物を合成できる。反応の溶媒としては、上記「ソルベッソ150」以外に例えばキシレン等の芳香族系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、ヘプタン、オクタン等の鎖状炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環状炭化水素を用いることができる。また、再結晶の際に用いる再結晶溶媒としては、メチルイソブチルケトン以外に例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等の低級エステル類等があげられる。
【0031】
本発明の有機色素を製膜して用いる方法としては真空蒸着法、スパッタリング法、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等などが一般的であるが、コスト面ではスピンコート法が望ましい。
【0032】
ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等により塗布する場合の塗布溶媒としては、基板を侵さない溶媒であれば良く、特に限定されない。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の鎖状炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環状炭化水素系溶媒;テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール等のフルオロアルキルアルコール系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシカルボン酸エステル系溶媒等が挙げられる。また、基板に関しては、ガラスや、金属製の基板などに置き換わる動きも見られることから、例えばトルエン、キシレン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドのように樹脂製の基板を侵すような溶媒であっても、将来的には、使用できる可能性がある。
【0033】
以下に本発明に用いる色素化合物の合成法と該色素化合物を用いた光学記録媒体の製造例を示す。
ただし化合物の合成方法、記録媒体の製造方法はこれに限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
〔化合物の合成〕
化合物(a)
イ)2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ジエチルアミノメチル−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールの合成
1000mLの四つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イルフェノール)(商品名「シーソーブ709」シプロ化成社製)96.9g(0.30モル)、ジエチルアミン65.7g(0.90モル)、92%パラホルムアルデヒド29.4g(0.90モル)、を入れ、95〜100℃にて8時間撹拌した。 次いでn-ヘキサン240mLを加えて70℃の温水100mLで3回洗浄し、冷却して析出した結晶をブフナーロートに濾過し取った。 乾燥機にて60℃で乾燥し、微黄色の結晶であるマンニッヒ塩基体98.0gを得た。 融点102.2〜103.1℃ 、収率80%であった。
<測定条件>
装置:LC−6A ((株)島津製作所製)
使用カラム:SUMIPAX ODS A−212 5μm 6mmφ×15cm
カラム温度:40℃
移動相:メタノール:水=95:5
流速:1.0mL/min
なお、下記ロ)のHPLC面百純度も上記と同様の条件で行った。
【0035】
ロ)化合物(a)の合成
500mLの四つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、イ)で合成したマンニッヒ塩基化合物25.0g(0.061mol)、2−[2−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシリックアシドメチルエステル23.4g(0.061mol)、キシレン30mL、28%ナトリウムメチラートメタノール溶液0.19gを加え、145℃で10時間反応させた。 この際、留出したキシレン、ジエチルアミンは、留去しつつ反応させた。次に加熱、減圧下、キシレンを完全に留去してから110℃まで冷却してトルエン10mLを加え、酢酸0.1mLにて反応物を中和した。 温水10mLで2回洗浄し、減圧下でトルエンを除去、次いでメタノールを加えて結晶を析出させた後、この結晶をブフナーロートに濾過し取った。 収量13.2g、収率60.1%、HPLC純度79.1%の粗結晶を得た。この粗結晶2gを100mLの四つ口フラスコに入れ、トルエン3mLとメタノール30mLの混合溶媒で加熱して1μmのメンブランフィルターで濾過した後、再結晶させた。ブフナーロートでこの結晶を濾過し取り、さらにメタノールで洗浄してから乾燥させ、化合物(a)である微黄色の粉末結晶を得た。 収率は粗結晶体より55.7%、HPLC純度85.7%、融点133.4〜139.0℃であった。 この化合物は、1H−NMR、13C−NMRにより、いずれも推定構造を支持するものであった。 これらのチャートを図1〜2に示す。また、LC−MSにより、MS= 716.405に対して、pMS=717.3、nMS=715.5のピークが観測された。
【0036】
<紫外〜近紫外吸収スペクトル>
化合物(a)の紫外〜近紫外吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長λmaxが354nmにあり、εは32700であった。 このスペクトルを図3に示す。また測定条件については以下の通りである。
<測定条件>
装置:UV−2450((株)島津製作所製)
測定波長:250〜500nm
また以下の実施例も本実施例と同様の測定条件で紫外〜近紫外吸収スペクトルの測定を行った。
【0037】
<溶解性評価>
化合物(a)について各種溶媒に溶解させたときの溶解度を調べた結果を表1に示す。 イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、トリフルオロプロパノールに対しての溶解度は低いが、クロロホルム、トルエン、キシレンへの溶解性が優れていた。
【0038】
<記録媒体の作製>
上記で得られた化合物(a)をクロロホルムに対して2.0wt%になるように調製した。
次にガラス板(7.5cm×2.5cm、厚さ約1mm)をポリカーボネート円盤に貼り付けて回転数500〜600rpmで回転させた。回転している円盤上に上記化合物(a)のクロロホルム溶液を滴下し、風乾させることで化合物(a)が膜化して付着しているガラス板を得た。
滴下した溶液の縁に結晶化が見られたが、中心部はアモルファス状態を維持していた。
また、塗膜したガラス板の紫外〜近紫外吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長λmaxが355nmであった。
【0039】
(実施例2)
〔化合物の合成〕
化合物(b)
100mLの四つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2−(5−ターシャリブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシリックアシドメチルエステル3.25g(0.01モル)、ジエチルアミン0.8g(0.011モル)、92%パラホルムアルデヒド0.33g(0.01モル)、ソルベッソ150 30mLを入れ、95〜98℃にて13時間撹拌した。 次いで70℃の温水30mLで2回洗浄し、32%NaOH 0.25gを加え、140〜150℃、減圧下で揮発分を留去しながら10時間反応させた。薄層クロマトにより未反応が消失していることを確認した後、酢酸0.1mLで反応物を中和した。次いでトルエン30mLを加えて、80℃まで加熱して溶解させ、温水で洗浄し、トルエンを留去してイソプロパノールにおき替えて結晶を析出させた。 この結晶をブフナーロートで濾過し取り、1.17gの粗結晶を得た。 収率は35.2%であった。
次にこの結晶1.17gを100mLの四つ口フラスコにトルエン5mLと共に入れ、加熱溶解後、メンブランフィルターで濾過してからメタノール20mLで置き換えた後に再結晶させ、この結晶をブフナーロートで濾過し取った。 収量は0.89g、収率26.8%、HPLC純度96.8%で微黄色粉末状である(b)の結晶を得た。また、融点222.4〜223.2℃であった。 この化合物は、1H−NMR、13C−NMR解析により、いずれも推定構造を支持するものであった。 これらのチャートを図4〜5に示す。 またLC−MSにより、MS= 662.285に対して、pMS= 663.2、nMS= 661.4のピークが観測された。
【0040】
<紫外〜近紫外吸収スペクトル>
化合物(b)の紫外〜近紫外吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長λmaxが360nmにあり、εは36700であった。 このスペクトルを図6に示す。
<溶解性評価>
化合物(b)について各種溶媒に溶解させたときの溶解度を調べた結果を表1に示す。 イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、トリフルオロプロパノールに対しての溶解度は低いが、クロロホルム、トルエン、キシレンへの溶解性が優れていた。
【0041】
<記録媒体の作製>
溶媒をジクロロメタンにて実施したこと以外は、すべて実施例1と同様に行った。
滴下した溶液の縁に結晶化が見られたが、中心部はアモルファス状態を維持していた。
また、塗膜したガラス板の紫外〜近紫外吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長λmaxが362nmであった。
【0042】
(実施例3)
〔化合物の合成〕
化合物(c)
100mLの四つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2−(5−ターシャリブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシリックアシドイソプロピルエステル3.53g(0.01モル)、ジエチルアミン1.46g(0.02モル)、92%パラホルムアルデヒド0.66g(0.02モル)、ソルベッソ150 30mLを入れ、85〜90℃にて10時間撹拌した。 次いで70℃の温水30mLで2回洗浄し、32%NaOH 0.25gを加え、140〜150℃、減圧下で揮発分を留去しながら11時間反応させた。薄層クロマトにより未反応が消失していることを確認した後、酢酸0.1mLで反応物を中和した。次いでトルエン30mLを加えて、80℃まで加熱して溶解させ、温水で洗浄し、トルエンを留去してイソプロパノールにおき替えて結晶を析出させた。 この結晶をブフナーロートで濾過し取り、1.36gの粗結晶を得た。 収率は37.8%であった。 またHPLC純度は90.4%であった。 次にこの結晶1.36gを100mLの四つ口フラスコにトルエン5mLと共に入れ、加熱溶解後、メンブランフィルターで濾過してからイソプロパノール40mLで置き換えた後に再結晶させ、この結晶をブフナーロートで濾過し取った。 収量は1.04g、収率28.9%、HPLC純度99.4%で微黄色粉末状である(c)の結晶を得た。また、融点174.7〜176.0℃であった。 この化合物は、1H−NMR、13C−NMR解析により、いずれも推定構造を支持するものであった。 これらのチャートを図7〜8に示す。また、LC−MSにより、MS= 718.348に対して、pMS= 719.1、nMS= 717.2のピークが観測された。
【0043】
<紫外〜近紫外吸収スペクトル>
化合物(c)の紫外〜近紫外吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長λmaxが360nmにあり、εは36600であった。 このスペクトルを図9に示す。
<溶解性評価>
化合物(c)について各種溶媒に溶解させたときの溶解度を調べた結果を表1に示す。 イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、トリフルオロプロパノールに対しての溶解度は低いが、クロロホルム、トルエン、キシレンへの溶解性が優れていた。
【0044】
<記録媒体の作製>
すべて実施例2と同様に行った。
滴下した溶液の縁に結晶化が見られたが、中心部はアモルファス状態を維持していた。
また、塗膜したガラス板の紫外〜近紫外吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長λmaxが363nmであった。
【0045】
(実施例4)
〔化合物の合成〕
化合物(d)
100mLの四つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、実施例1−イ)で合成した2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ジエチルアミノメチル−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノール2.04g(0.005モル)、2−[2−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシリックアシドイソプロピルエステル2.05g(0.005モル)、28%ナトリウムメチラートメタノール溶液 0.19g、キシレン30mLを加え、140〜150℃、減圧下で揮発分を留去しながら7時間反応させた。薄層クロマトにより未反応が消失していることを確認した後、トルエン10mLを加え、酢酸0.1mLで反応物を中和した。次いで温水で洗浄し、メンブランフィルターで濾過してからトルエンを減圧留去してイソプロパノールにおき替えて結晶を析出させた。 この結晶をブフナーロートで濾過し取り、0.88gの結晶を得た。 収率は23.6%であった。 HPLC純度は82.3%であった。この化合物は、1H−NMR、13C−NMR解析により、いずれも推定構造を支持するものであった。 これらのチャートを図10〜11に示す。また、LC−MSにより、MS= 744.436に対して、pMS=745.2、nMS= 743.4のピークが観測された。
【0046】
<紫外〜近紫外吸収スペクトル>
化合物(d)の紫外〜近紫外吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長λmaxが353nmにあり、εは30900であった。 このスペクトルを図12に示す。
<溶解性評価>
化合物(d)について各種溶媒に溶解させたときの溶解度を調べた結果を表1に示す。 イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、トリフルオロプロパノールに対しての溶解度は低いが、クロロホルム、トルエン、キシレンへの溶解性が優れていた。
【0047】
<記録媒体の作製>
すべて実施例2と同様に行った。
滴下した溶液の縁に結晶化が見られたが、中心部はアモルファス状態を維持していた。
また、塗膜したガラス板の紫外〜近紫外吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長λmaxが353nmであった。
【0048】
(実施例5)
〔化合物の合成〕
化合物(e)
100mLの四つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、実施例1−イ)で合成した2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ジエチルアミノメチル−4−(5−ターシャリブチル)−フェノール1.76g(0.005モル)、2−[2−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシリックアシドメチルエステル1.91g(0.005モル)、28%ナトリウムメチラートメタノール溶液 0.19g、キシレン30mLを加え、実施例4と同様に行った。収量1.4g、収率は42.3%であった。 HPLC純度は74.0%、融点は149.2〜155.1℃であった。この化合物は、1H−NMR、13C−NMR、LC−MS解析により、いずれも推定構造を支持するものであった。 これらのチャートを図13〜14に示す。 また、LC−MSにより、MS= 660.342に対して、pMS= 661.2、nMS= 659.3のピークが観測された。
【0049】
<紫外〜近紫外吸収スペクトル>
化合物(e)の紫外〜近紫外吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長λmaxが351nmにあり、εは31300であった。 このスペクトル図を図15に示す。
<溶解性評価>
化合物(e)について各種溶媒に溶解させたときの溶解度を調べた結果を表1に示す。 イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、トリフルオロプロパノールに対しての溶解度は低いが、クロロホルム、トルエン、キシレンへの溶解性が優れていた。
【0050】
<記録媒体の作製>
すべて実施例2と同様に行った。
滴下した溶液の縁に結晶化が見られたが、中心部はアモルファス状態を維持していた。
【0051】
(実施例6)
〔化合物の合成〕
化合物(f)
100mLの四つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2−(5−メトキシベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチルフェノール5.11g(0.02モル)、ジエチルアミン2.92g(0.04モル)、92%パラホルムアルデヒド1.31g(0.04モル)を入れ、105℃にて10時間撹拌した。 次いでキシレン50mLを加えて抽出し、70℃の温水50mLで2回洗浄し、この中に32%NaOH0.5gを加え、140〜150℃、減圧下で揮発分を留去しながら5時間反応させた。HPLCにより未反応が消失していることを確認した後、酢酸0.2mLで反応物を中和した。次いでトルエン50mLを加えて、80℃まで加熱して溶解させ、温水で洗浄し、トルエンを留去してイソプロパノールにおき替えて結晶を析出させた。 この結晶をブフナーロートで濾過し取った。次にこの粗結晶8.0gを200mLの四つ口フラスコにトルエン100mLと共に入れ、加熱後、冷却してこの結晶をブフナーロートに濾過し取った。 収量は7.7g、収率73.7%、HPLC純度97.3%で淡褐色粉末状である(f)の結晶を得た。融点は300℃以上であった。 この化合物は、1H−NMR、13C−NMR解析により、いずれも推定構造を支持するものであった。 これらのチャートを図16〜17に示す。 また、LC−MSにより、MS= 522.202に対して、pMS= 523.0、nMS= 521.2のピークが観測された。
【0052】
<紫外〜近紫外吸収スペクトル>
化合物(f)の紫外〜近紫外吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長λmaxが352nmにあり、εは43300であった。 このスペクトル図を図18に示す。
<溶解性評価>
化合物(f)について各種溶媒に溶解させたときの溶解度を調べた結果を表1に示す。 イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、トリフルオロプロパノールに対しての溶解度は低いが、クロロホルム、トルエン、キシレンへの溶解性が優れていた。
【0053】
<記録媒体の作製>
すべて実施例2と同様に行った。
滴下した溶液の縁に結晶化が見られたが、中心部はアモルファス状態を維持していた。
【0054】
(実施例7)
〔化合物の合成〕
化合物(g)
イ)2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ジエチルアミノメチル−4−ターシャリブチル−フェノールの合成
1000mLの四つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−ターシャリブチル−2−イルフェノール(商品名「シーソーブ708」シプロ化成社製)80.1g(0.30モル)、ジエチルアミン65.7g(0.90モル)、92%パラホルムアルデヒド29.4g(0.90モル)、を入れ、80〜90℃にて8時間撹拌した。 次いでn−ヘキサン200mLを加えて70℃の温水100mLで3回洗浄し、冷却して析出した結晶をブフナーロートに濾過し取った。 乾燥機にて60℃で乾燥し、微黄色の結晶であるマンニッヒ塩基体82.9gを得た。 収率78.4%であった。
ロ)化合物(g)の合成
100mLの四つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−オール4.44g(0.0184モル)、実施例1−イ)で合成した2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ジエチルアミノメチル−4−ターシャリブチル−フェノール6.48g(0.0184モル)、 キシレン100mL、32%NaOH1.0gを加え、140〜150℃、減圧下で揮発分を留去しながら8時間反応させた。HPLCにより未反応が消失していることを確認した後、酢酸0.5mLで反応物を中和した。次いでトルエン100mLを加えて、80℃まで加熱して溶解させ、温水で洗浄し、トルエンを留去してイソプロパノールにおき替えて結晶を析出させた。 この結晶をブフナーロートで濾過し取った。次にこの粗結晶を100mLの四つ口フラスコにイソプロパノール50mLと共に入れ、加熱後、冷却してこの結晶をブフナーロートに濾過し取った。 粗結晶としての収量は7.7g。次にこの粗結晶を100mLの四つ口フラスコにイソプロパノール50mLと共に入れ、加熱後、冷却してこの結晶をブフナーロートに濾過し取った。 収量は5.7g、収率59.6%、HPLC純度97.0%で灰白色粉末状である(g)の結晶を得た。 融点は 224.2〜227.8℃であった。 この化合物は、1H−NMR、13C−NMR解析により、いずれも推定構造を支持するものであった。 これらのチャートを図22〜23に示す。また、LC−MSにより、MS= 576.285に対して、pMS= 577.2、nMS= 575.3のピークが観測された。
【0055】
<紫外〜近紫外吸収スペクトル>
化合物(g)の紫外〜近紫外吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長λmaxが342nmにあり、εは39000であった。 このスペクトル図を図24に示す。
<溶解性評価>
化合物(g)について各種溶媒に溶解させたときの溶解度を調べた結果を表1に示す。 イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、トリフルオロプロパノールに対しての溶解度は低いが、クロロホルム、トルエン、キシレンへの溶解性が優れていた。
【0056】
<記録媒体の作製>
すべて実施例2と同様に行った。
滴下した溶液の縁に結晶化が見られたが、中心部はアモルファス状態を維持していた。
【0057】
(実施例8)
〔化合物の合成〕
化合物(h)
100mLの四つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−オール4.83g(0.02モル)、実施例1−イ)で合成した2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ジエチルアミノメチル−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノール8.17g(0.020モル)、 キシレン100mL、32%NaOH1.0gを加え、140〜150℃、減圧下で揮発分を留去しながら8時間反応させた。HPLCにより未反応が消失していることを確認した後、酢酸0.5mLで反応物を中和した。次いでトルエン100mLを加えて、80℃まで加熱して溶解させ、温水で洗浄し、トルエンを留去してイソプロパノールにおき替えて結晶を析出させた。 この結晶をブフナーロートで濾過し取った。次にこの粗結晶5.2gを100mLの四つ口フラスコにイソプロパノール50mLと共に入れ、加熱後、冷却してこの結晶をブフナーロートに濾過し取った。 収量は2.0g、収率41.7%、HPLC純度99.2%で灰白色粉末状である(h)の結晶を得た。融点は165.8〜168.2℃であった。 この化合物は、1H−NMR、13C−NMR解析により、いずれも推定構造を支持するものであった。 これらのチャートを図22〜23に示す。また、LC−MSにより、MS= 576.285に対して、pMS= 577.2、nMS= 575.3のピークが観測された。
【0058】
<紫外〜近紫外吸収スペクトル>
化合物(h)の紫外〜近紫外吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長λmaxが344nmにあり、εは33000であった。 このスペクトル図を図24に示す。
<溶解性評価>
化合物(h)について各種溶媒に溶解させたときの溶解度を調べた結果を表1に示す。 イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、トリフルオロプロパノールに対しての溶解度は低いが、クロロホルム、トルエン、キシレンへの溶解性が優れていた。
【0059】
<記録媒体の評価>
すべて実施例2と同様に行った。
滴下した溶液の縁に結晶化が見られたが、中心部はアモルファス状態を維持していた。
【0060】
実施例1〜8の化合物(a)〜(h)の特性をまとめて表1に示す。なお、塗布膜としたときの結晶性の有無も併せて示す。評価基準は下記の通りである。
○:結晶析出が認められない。
△:塗布膜の縁にわずかに結晶析出が認められる。
×:塗布膜の縁に明確に結晶析出が認められるか、又は塗布膜の縁以外の部分に結晶析出が認められる。
【0061】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の化合物は、近紫外から紫外領域に広い吸収を持ち、かつ非結晶性が高いので、有機色素として塗料や写真薬など一般の色剤、また蒸散性に優れ、既存の紫外線吸収剤よりも可視光域に近い領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤として好適に使用できる。なかでも有機色素としては、いわゆる青色レーザーを用いる光記録媒体用に添加する色素として、紫外線吸収剤としては、ポリカーボネート樹脂のようなエンジニアリングプラスチックに対して好適に利用できる。また、本発明の化合物は、金属錯体の配位子としても利用でき、本発明の化合物を配位子とした有機金属錯体もまた有機色素として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】化合物(a)の1H−NMRである。
【図2】化合物(a)の13C−NMRである。
【図3】化合物(a)の紫外〜近紫外吸収スペクトルである。
【図4】化合物(b)の1H−NMRである。
【図5】化合物(b)の13C−NMRである。
【図6】化合物(b)の紫外〜近紫外吸収スペクトルである。
【図7】化合物(c)の1H−NMRである。
【図8】化合物(c)の13C−NMRである。
【図9】化合物(c)の紫外〜近紫外吸収スペクトルである。
【図10】化合物(d)の1H−NMRである。
【図11】化合物(d)の13C−NMRである。
【図12】化合物(d)の紫外〜近紫外吸収スペクトルである。
【図13】化合物(e)の1H−NMRである。
【図14】化合物(e)の13C−NMRである。
【図15】化合物(e)の紫外〜近紫外吸収スペクトルである。
【図16】化合物(f)の1H−NMRである。
【図17】化合物(f)の13C−NMRである。
【図18】化合物(f)の紫外〜近紫外吸収スペクトルである。
【図19】化合物(g)の1H−NMRである。
【図20】化合物(g)の13C−NMRである。
【図21】化合物(g)の紫外〜近紫外吸収スペクトルである。
【図22】化合物(h)の1H−NMRである。
【図23】化合物(h)の13C−NMRである。
【図24】化合物(h)の紫外〜近紫外吸収スペクトルである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記に示した一般式(A)で示される化合物を含有する記録層を備える光記録媒体。
【化1】
R1 、R2は、炭素数1〜20のアルキル基(任意の位置で枝分かれしているものを含む)、カルボキシル基または、炭素数1〜20のカルボン酸エステル、ヒドロキシル基、または、炭素数1〜20のアルキルエーテル、R4,R5,R8,R9は、カルボキシル基または、炭素数1〜20のカルボン酸エステル、ヒドロキシル基、または、炭素数1〜20のアルキルエーテル(任意の位置で枝分かれしているものを含む)、R3,R6,R7,R10 は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(任意の位置で枝分かれしているものを含む)
【請求項2】
R3,R4,R5,R6,R7,R8,R9,R10の内、少なくとも1個は、置換基として、カルボキシル基または、炭素数1〜20のカルボン酸エステル、ヒドロキシル基、または、炭素数1〜20のアルキルエーテル基であり、かつR1,R2の内、少なくとも1個は置換基として炭素数1〜20のアルキル基(任意の位置で枝分かれしているものを含む)である、請求項1記載の光記録媒体。
【請求項3】
前記一般式(A)におけるR1〜R10が、下記(a) 〜 (h)記載の組み合わせのいずれかであるベンゾトリアゾール誘導体化合物である、請求項1記載の光記録媒体。
(a)
R1,R2=tert−Octyl
R3,R4,R5,R6,R7,R9,R10=H、R8=COOCH3
(b)
R1,R2=tert−Butyl
R3,R4,R6,R7,R9,R10=H、R5,R8=COOCH3
(c)
R1,R2=tert−Butyl
R3,R4,R6,R7,R9,R10=H、R5,R8=COOCH(CH3)2
(d)
R1,R2=tert−Octyl
R3,R4,R5,R6,R7,R9,R10=H、R8=COOCH(CH3)2
(e)
R1=tert−Octyl
R2=tert−Butyl
R3,R4,R5,R6,R7,R9,R10=H、R8=COOCH3
(f)
R1,R2=CH3
R3,R4,R6,R7,R9,R10= H、R5,R8=OCH3
(g)
R1=CH3
R2=tert−Butyl
R3,R4,R5,R6,R7,R9,R10=H、R8=OH
(h)
R1=CH3
R2=tert−Octyl
R3,R4,R5,R6,R7,R9,R10=H、R8=OH
【請求項1】
下記に示した一般式(A)で示される化合物を含有する記録層を備える光記録媒体。
【化1】
R1 、R2は、炭素数1〜20のアルキル基(任意の位置で枝分かれしているものを含む)、カルボキシル基または、炭素数1〜20のカルボン酸エステル、ヒドロキシル基、または、炭素数1〜20のアルキルエーテル、R4,R5,R8,R9は、カルボキシル基または、炭素数1〜20のカルボン酸エステル、ヒドロキシル基、または、炭素数1〜20のアルキルエーテル(任意の位置で枝分かれしているものを含む)、R3,R6,R7,R10 は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(任意の位置で枝分かれしているものを含む)
【請求項2】
R3,R4,R5,R6,R7,R8,R9,R10の内、少なくとも1個は、置換基として、カルボキシル基または、炭素数1〜20のカルボン酸エステル、ヒドロキシル基、または、炭素数1〜20のアルキルエーテル基であり、かつR1,R2の内、少なくとも1個は置換基として炭素数1〜20のアルキル基(任意の位置で枝分かれしているものを含む)である、請求項1記載の光記録媒体。
【請求項3】
前記一般式(A)におけるR1〜R10が、下記(a) 〜 (h)記載の組み合わせのいずれかであるベンゾトリアゾール誘導体化合物である、請求項1記載の光記録媒体。
(a)
R1,R2=tert−Octyl
R3,R4,R5,R6,R7,R9,R10=H、R8=COOCH3
(b)
R1,R2=tert−Butyl
R3,R4,R6,R7,R9,R10=H、R5,R8=COOCH3
(c)
R1,R2=tert−Butyl
R3,R4,R6,R7,R9,R10=H、R5,R8=COOCH(CH3)2
(d)
R1,R2=tert−Octyl
R3,R4,R5,R6,R7,R9,R10=H、R8=COOCH(CH3)2
(e)
R1=tert−Octyl
R2=tert−Butyl
R3,R4,R5,R6,R7,R9,R10=H、R8=COOCH3
(f)
R1,R2=CH3
R3,R4,R6,R7,R9,R10= H、R5,R8=OCH3
(g)
R1=CH3
R2=tert−Butyl
R3,R4,R5,R6,R7,R9,R10=H、R8=OH
(h)
R1=CH3
R2=tert−Octyl
R3,R4,R5,R6,R7,R9,R10=H、R8=OH
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2008−194983(P2008−194983A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34021(P2007−34021)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(301000675)シプロ化成株式会社 (33)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(301000675)シプロ化成株式会社 (33)
【Fターム(参考)】
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