光走査装置、光走査型表示装置及び光走査方法
【課題】 鋸歯状波を有効に活用して波形に工夫をこらした走査信号を形成し、この走査信号でもって良好に光の走査を行うようにした光走査装置、光走査型表示装置及び光走査方法を提供する。
【解決手段】 垂直走査機構を垂直走査させる垂直走査波信号が、鋸歯状波部Wa及び補正波部Wbでもって構成されている。ここで、垂直走査機構の垂直走査は、鋸歯状波部Waに基づきなされる。また、補正波部Wbは、垂直走査機構の固有の共振周波数に基づき当該垂直走査機構に生ずる共振を抑制するように、正弦波の前半周期部1及び一定レベル部2でもって構成される。
【解決手段】 垂直走査機構を垂直走査させる垂直走査波信号が、鋸歯状波部Wa及び補正波部Wbでもって構成されている。ここで、垂直走査機構の垂直走査は、鋸歯状波部Waに基づきなされる。また、補正波部Wbは、垂直走査機構の固有の共振周波数に基づき当該垂直走査機構に生ずる共振を抑制するように、正弦波の前半周期部1及び一定レベル部2でもって構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置、光走査型表示装置及び光走査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、光走査装置においては、下記非特許文献1に開示されたラスタスキャナがある。このラスタスキャナは、入射光を走査ミラーによりその揺動に応じて走査するようになっている。
ここで、当該ラスタスキャナでは、垂直走査に採用される垂直走査信号は、鋸歯状波でもって構成されている。このため、当該垂直走査信号は、その周期毎に、垂直走査時間の経過に伴い最小レベルから最大レベルまで直線的に上昇した後上記最小レベルに瞬時に復帰する。
【0003】
従って、ラスタスキャナにおいては、走査ミラーが垂直走査信号の上述のようなレベル変化に応じて揺動することとなる。
【非特許文献1】Hakan Urey,Randy Sprague,"BiaxiaPmEMS Raster Scanner with Linear Ramp Drive",OpticaPmEMS 2003, IEEE-LEOS, Waikoloa,Hawaii, Aug 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のラスタスキャナにおいては、上述のように走査ミラーが垂直走査信号の上述のようなレベル変化に応じて揺動する過程において、垂直走査信号がその最大レベルから最小レベルに瞬時に復帰するときに、走査ミラーが当該復帰に対し反動を生じる。
【0005】
ここで、通常、走査ミラーは弾性梁部材を介して静止部材に揺動可能に支持されているため、ラスタスキャナ自体には、走査ミラー及び弾性梁部材で決まる固有の共振周波数が存在する。
【0006】
従って、上記反動に起因する周波数にラスタスキャナの共振周波数が含まれていると、走査ミラーが共振振動を起こす。このため、走査ミラーが、垂直走査信号の上記復帰後のレベルの変化に追随できず、このレベル変化とは異なる脈動運動を起こす。その結果、入射光に対する垂直走査が良好にはなされないという不具合を招く。
【0007】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処するため、鋸歯状波を有効に活用して波形に工夫をこらした走査信号を形成し、この走査信号でもって良好に光の走査を行うようにした光走査装置、光走査型表示装置及び光走査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の解決にあたり、本発明に係る光走査装置は、請求項1の記載によれば、
静止部材(31、32)に弾性梁部材(35、36)を介し揺動可能に支持される揺動部材(34)を有してなる走査素子(30)と、
所定周期にて走査信号を発生する走査信号発生手段(50、70、80、90)と、
上記走査信号に基づき走査素子をその揺動部材にて揺動するように駆動する駆動手段(100、37、38、39)とを備えて、
走査素子が、揺動部材に入射する光を、当該揺動部材によりその揺動に応じて走査する。
【0009】
当該光走査装置において、走査信号発生手段は、上記所定周期のうち前側期間にて形成される鋸歯状波部(Wa)と、上記所定周期のうち後側期間にて走査素子の固有の共振周波数に基づき形成される補正波部(Wb)とでもって、上記走査信号を構成して発生するようにしたことを特徴とする。
【0010】
このように、走査信号が、その所定周期のうち前側期間にて形成される鋸歯状波部と、上記所定周期のうち後側期間にて走査素子の固有の共振周波数に基づき形成される補正波部とでもって、構成される。
【0011】
従って、補正波部が走査素子の固有の共振周波数に基づき走査素子の共振を抑制するように形成されていれば、走査信号のうち鋸歯状波部に基づき走査する走査素子の共振が、補正波部でもって良好に抑制され得る。その結果、走査素子の走査が良好になされ得る。
【0012】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載の光走査装置において、
走査信号発生手段は、上記前側期間を、揺動部材に入射する光を走査する期間とし、上記後側期間を、揺動部材を上記光の走査開始揺動位置に戻す期間として、上記鋸歯状波部及び補正波部でもって、上記走査信号を構成して発生することを特徴とする。
【0013】
このように走査信号を構成することで、請求項1に記載の発明の作用効果がより一層具体的に確保され得る。
【0014】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1或いは2に記載の光走査装置において、
上記後側期間は走査素子の上記固有の共振周波数に対する共振周期に相当する期間であり、
上記補正波部は、上記共振周期に相当する期間に形成されていることを特徴とする。
このように、上記後側期間を、走査素子の上記固有の共振周波数に対する共振周期に相当する期間とし、補正波部を、上記共振周期に相当する期間にて形成することで、請求項1或いは2に記載の発明の作用効果をより一層確実に達成し得る。
【0015】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項1〜3のいずれか1つに記載の光走査装置において、
上記補正波部は、上記後側期間のうち、その前半期間部及び後半期間部にて、それぞれ、正弦波の前半周期部(1)及び略一定レベル部(2)でもって構成されていることを特徴とする。
このように、補正波部が、上記後側期間の前半期間部及び後半期間部にて、それぞれ、正弦波の前半周期部及び略一定レベル部でもって構成されることで、走査信号のうち鋸歯状波部に基づき走査する走査素子の共振が、正弦波の前半周期部で抑制された上で略一定レベル部で抑制される。従って、走査素子の共振がより一層効果的なされ、その結果、請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明の作用効果がより一層向上され得る。
本発明は、請求項5の記載によれば、請求項4に記載の光走査装置において、
上記正弦波の前半周期部は、その最大レベルにて、前記鋸歯状波部の最大値と最小値との差の0.5倍〜1.0倍の範囲以内のレベルに設定されており、
上記鋸歯状波部の始点部及び終点部は、上記正弦波の前半周期部の始点部及び終点部並びに上記略一定レベル部と共に、同一のレベルに設定されていることを特徴とする。
【0016】
このように、正弦波の前半周期部の最大レベル、鋸歯状波部及び正弦波の前半周期部の始点部及び終点部のレベル及び略一定レベル部のレベルを設定することで、請求項4に記載の作用効果が具体的に確保され得る。
【0017】
また、本発明は、請求項6の記載によれば、請求項1〜5のいずれか1つに記載の光走査装置において、
揺動部材は、上記光を入射させる一側面(34d)を有する揺動板(34)であり、
駆動手段は、磁石(38、39)と、揺動板の他側面(34a)に設けられて上記走査信号に基づき揺動板を揺動させるように磁石との間で磁界を形成する電磁コイル(37)とを備えていることを特徴とする。
このように、揺動板を磁石と電磁コイルとの間の磁気作用でもって揺動させるようにしても、請求項1〜5のいずれか1つに記載の発明と同様の作用効果が達成され得る。
【0018】
また、本発明は、請求項7の記載によれば、請求項1〜6のいずれか1つの記載の光走査装置において、
走査素子の温度を検出する温度検出手段と、
温度検出手段の検出温度に基づき上記固有の共振周波数を補正する補正手段とを備えて、
走査信号発生手段は、補正手段によって補正された上記固有の共振周波数に基づき上記補正波部を形成するようにしたことを特徴とする。
これによれば、上記垂直走査波のうちの補正波部の波形が走査素子の温度に基づき補正されることとなり、その結果、走査素子による走査がより一層精度よくなされ得る。
また、本発明に係る光走査型表示装置は、請求項8の記載によれば、
画像を画像光でもって出射する画像光出射手段(C)と、
この画像光出射手段からの出射画像光を入射されて2次元的に走査して2次元走査光を出射する走査手段(10、30、B)とを備えて、
この走査手段からの2次元走査光に基づき上記画像を表示する。
【0019】
当該光走査型表示装置において、走査手段は、画像光出射手段からの出射画像光を水平走査し水平走査光として出射する水平走査手段(10)と、この水平走査手段からの水平走査光を垂直走査して上記2次元走査光として出射する垂直走査手段(30)とを備えて、
水平走査手段及び垂直走査手段の双方のうちの少なくとも一方が、請求項1〜6のいずれか1つに記載の光走査装置でもって構成されていることを特徴とする。
【0020】
このように請求項1〜6のいずれか1つに記載の光走査装置でもって、水平走査手段及び垂直走査手段の双方のうちの少なくとも一方を構成することで、水平走査手段及び垂直走査手段の双方のうちの少なくとも一方による走査を良好に確保し得る光走査型表示装置の提供が可能となる。
【0021】
また、本発明に係る光走査方法では、請求項9の記載によれば、
静止部材(31、32)に弾性梁部材(35、36)を介し揺動可能に支持される揺動部材(34)を備えた走査素子(10、30)でもって、走査信号に応じた揺動部材の揺動により、当該揺動部材への入射光を走査する。
【0022】
当該光走査方法において、上記走査信号は、上記所定周期のうち前側期間にて形成される鋸歯状波部(Wa)と、上記所定周期のうち後側期間にて走査素子の固有の共振周波数に基づき形成される補正波部(Wb)とでもって構成されることを特徴とする。
【0023】
このように、走査信号が、その所定周期のうち前側期間にて形成される鋸歯状波部と、上記所定周期のうち後側期間にて走査素子の固有の共振周波数に基づき形成される補正波部とでもって、構成される。
【0024】
従って、補正波部が走査素子の固有の共振周波数に基づき走査素子の共振を抑制するように形成されていれば、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る光走査方法の提供が可能となる。
【0025】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を図面により説明する。
【0027】
図1は、本発明に係る網膜走査型画像表示装置の一実施形態を示している。当該画像表示装置は、使用者の左眼用のものであって、この画像表示装置は、光走査装置A、信号処理装置B及び画像光形成装置Cでもって構成されている。
【0028】
光走査装置Aは、図1にて示すごとく、水平走査機構10、リレー光学系20、垂直走査機構30及びリレー光学系40を備えている。
【0029】
水平走査機構10は、水平走査用反射板11を備えており、この反射板11は、適宜な静止部材により同軸的に支持された両対向梁部材12の間にて当該両梁部材12により図1にて図示矢印X方向に揺動可能に支持されている。
【0030】
しかして、当該水平走査機構10は、信号処理装置Bの水平走査駆動回路60(後述する)により駆動されて反射板11を矢印X方向に揺動させ、当該反射板11により、その揺動角に応じて、画像光形成装置Cのコリメートレンズ170(後述する)から入射されるビーム状のコリメート画像光を水平走査しながらビーム状の水平走査画像光として反射する。
【0031】
リレー光学系20は、水平走査機構10により水平走査されるビーム状の水平走査画像光を収束させて垂直走査機構30に向け出射する。
【0032】
次に、垂直走査機構30の構成について詳細に説明する。この垂直走査機構30は、図1にて示すごとく、両リレー光学系20、40の間に介装されているもので、当該垂直走査機構30は、図2にて示すごとく、基板31と、この基板31上に設けた長方形状の板枠32とを備えている。
【0033】
また、当該垂直走査機構30は、垂直走査用四角板形状反射板34及び両梁部材35、36を備えており、反射板34は、図2にて示すごとく、図示左端中央部にて、梁部材35でもって、板枠32の内壁32aの中央部に支持されている。また、当該反射板34は、図2にて示すごとく、図示右端中央部にて、梁部材36でもって、板枠32の内壁32bの中央部に支持されている。
【0034】
両梁部材35、36は、共に、捻れ可能に弾性材料でもって長手状に形成されており、これら両梁部材35、36は、板枠32の中空部内にて、図2にて示すごとく、反射板34を図示矢印R1或いはR2の方向(図1にて図示矢印Y方向)に揺動可能に支持している。
【0035】
また、当該垂直走査機構30は、図2或いは図3にて示すごとく、電磁コイル37及び両磁石38、39を備えている。電磁コイル37は、図3にて示すごとく、コイル本体37aを有している。このコイル本体37aは、複数のコイル辺部でもって四角渦巻き状に形成されており、当該コイル本体37aは、図3にて示すごとく、その内端部から外端部にかけて図示反時計方向に四角渦巻き状に巻回されて、反射板34にその裏面34aにて同軸的に装着されている。
【0036】
ここで、コイル本体37aの複数のコイル辺部のうち、各コイル辺部37bは、図3にて示すごとく、反射板34の中央よりも当該反射板の一側縁34b側にてこの一側縁34bに平行に位置している。また、各コイル辺部37cは、図3にて示すごとく、反射板34の中央よりも当該反射板の他側縁34c側にてこの他側縁34cに平行に位置している。
【0037】
また、電磁コイル37は、図3にて示すごとく、内端側接続端子37d及び外端側接続端子37eを有しており、内端側接続端子37dは、コイル本体37aの内端部から延出して、梁部材35の裏面35aにその長手方向に沿い装着されている。一方、外端側接続端子37eは、このコイル本体37aの外端部から延出して、梁部材36の裏面36aにその長手方向に沿い装着されている。
【0038】
両磁石38、39は、共に、永久磁石材料でもって直方体形状に形成されている。磁石38は、図2にて示すごとく、板枠32の内壁32cと反射板34の一側縁34bとの間に介装されており、この磁石38は、その幅方向外端部38aにて、板枠32の内壁32cの長手方向中央部位に固着されている。これに伴い、当該磁石38は、その幅方向内端部38bにて、図2及び図3にて示すごとく、反射板34の一側縁34bに所定の間隙を介し対向するように位置する。本実施形態では、当該磁石38の幅方向外端部38a及び幅方向内端部38bは、それぞれ、S極及びN極を構成している。
【0039】
また、磁石39は、図2にて示すごとく、板枠32の内壁32dと反射板34の他側縁34cとの間に介装されており、この磁石39は、その幅方向外端部39aにて、図2にて示すごとく、板枠32の内壁32dの長手方向中央部位に固着されている。これに伴い、当該磁石39は、その幅方向内端部39bにて、図1及び図2にて示すごとく、反射板34の他側縁34cに所定の間隙を介し対向して位置する。本実施形態では、当該磁石39の幅方向外端部39a及び幅方向内端部39bは、それぞれ、N極及びS極を構成している。
【0040】
ここで、上述のように構成した電磁コイル37と両磁石38、39との間の磁気作用について説明する。
【0041】
電流がコイル本体37aに内端側接続端子37dから流入すると、各コイル辺部37bに流れる電流と磁石38の幅方向内端部38bであるN極との間において、反射板34の板厚方向に向け、フレミングの左手の法則に従う方向に磁力を発生する。また、各コイル辺部37cに流れる電流と磁石39の幅方向内端部39bであるS極との間において、反射板34の板厚方向に向け、フレミングの左手の法則に従う方向に磁力を発生する。
【0042】
但し、各コイル辺部37bに流れる電流の方向は、反射板34の裏面34a上において、各コイル辺部37cに流れる電流の方向に対し逆方向となるため、各コイル辺部37bに流れる電流に起因して生ずる磁力は、各コイル辺部37cに流れる電流に起因して生ずる磁力とは、逆向きになる。
【0043】
このため、反射板34は、コイル本体37aに内端側接続端子37dから流入する電流に基づき各コイル辺部37bと各コイル辺部37cとに互いに逆向きに発生する各磁力を受けて、両梁部材35、36の捻れ作用のもと図2にて図示矢印R1方向に揺動する。この矢印R1方向への揺動に伴い、垂直走査機構30は、反射板34により、その表面である反射面34dにて、入射光を走査しながら反射する。
【0044】
一方、電流がコイル本体37aに外端側接続端子37eから流入すると、各コイル辺部37bに流れる電流の方向及び各コイル辺部37cに流れる電流の方向が、電流がコイル本体37aに内端側接続端子37dから流入する場合とは逆向きになる。
【0045】
従って、各コイル辺部37bに流れる電流に起因して生ずる磁力及び各コイル辺部37cに流れる電流に起因して生ずる磁力も、電流がコイル本体37aに内端側接続端子37dから流入する場合とは逆向きに発生する。
【0046】
このため、反射板34は、コイル本体37aに外端側接続端子37eから流入する電流に基づき各コイル辺部37bと各コイル辺部37cとに互いに逆向きに発生する各磁力を受けて、両梁部材35、36の上述とは逆方向の捻れ作用のもと図2にて図示矢印R2方向に揺動する。この矢印R2方向への揺動に伴い、垂直走査機構30は、反射板34により、反射面34dにて、入射光を走査しながら反射する。
【0047】
このことは、垂直走査機構30は、反射板34により、その揺動角に応じて、リレー光学系20からのビーム状の水平走査画像光を垂直走査しながら垂直走査画像光として反射することを意味する。なお、上述した両矢印R1及びR2の方向は、図1にて矢印Yで示す垂直走査方向に相当する。
【0048】
リレー光学系40は、垂直走査機構30からのビーム状の垂直走査画像光を収束させてビーム状の走査画像光として左眼Iの瞳孔Iaに向け出射する。
【0049】
信号処理装置Bは、図1にて示すごとく、光センサ50a及びビーム検出信号処理回路50bを備えており、光センサ50aは、水平走査機構10の反射板11から反射されるビーム状の光を検出してビーム検出信号を発生する。ビーム検出信号処理回路50bは、光センサ50aからのビーム検出信号を信号処理して信号処理信号を発生する。なお、光センサ50aは、水平走査機構10の近傍に設けられている。
【0050】
また、信号処理回路Bは、映像信号処理回路50を有しており、この映像信号処理回路50は、ビーム検出信号処理回路50bからの信号処理信号や外部からの2次元状の映像を表わす映像信号に基づき、当該2次元状の映像の1フレームを構成する複数の水平ラインに対応して、水平ライン毎に、当該1フレームの形成のための青色、緑色及び赤色の各駆動信号の出力タイミングを決定する。
【0051】
そして、当該映像信号処理回路50は、上記出力タイミング毎に、青色、緑色及び赤色の各駆動信号を発生する。なお、上記2次元状の映像は、一連のフレームでもって構成されており、各フレーム毎に上記複数の水平ラインが対応する。
【0052】
また、映像信号処理回路50は、上記出力タイミング毎に、水平同期信号を発生するとともに、上記各フレームの複数の水平ラインのうちの最初の水平ライン毎に、垂直同期信号を発生する。
【0053】
また、信号処理装置Bは、水平走査駆動回路60を備えており、この水平走査駆動回路60は、映像信号処理回路50からの各水平同期信号を増幅処理し水平走査駆動電圧として順次発生し水平走査機構10に出力する。これにより、水平走査機構10は、水平走査駆動回路60からの各水平走査駆動電圧に基づき水平走査駆動される。
【0054】
また、信号処理回路Bは、マイクロコンピュータ70を備えており、このマイクロコンピュータ70は、バスライン71を介し接続したCPU72、ROM73及びRAM74を主たる構成素子として備えている。
【0055】
マイクロコンピュータ70は、CPU72により、所定のプログラムを実行し、この実行中において、映像信号処理回路50からの各垂直同期信号に基づきデジタル垂直走査波データをROMの所定の各アドレスから順次読み出す。なお、上述したデジタル垂直走査波データは、垂直走査機構30の垂直走査に用いられるデータであって、マイクロコンピュータ70のROM73にその所定の各アドレスにて予め記憶されている。
【0056】
ここで、上述したデジタル垂直走査波データの形成方法について詳細に説明する。
一般的に、垂直走査機構30の光に対する垂直走査範囲はできる限り広いことが望ましい。このような観点からすれば、垂直走査波としては、直線性に優れる鋸歯状波が適している。
【0057】
しかし、垂直走査機構30は、反射板34及び両梁部材35、36の構成に起因して、固有の共振周波数を有する。従って、このような垂直走査機構30において上記鋸歯状波をそのまま垂直走査波として用いても、反射板34の揺動は、本明細書の「発明の解決しようとする課題」の欄にて述べたように、上記固有の共振周波数の存在のために、鋸歯状波の変化に追随できず、乱れてしまう。
【0058】
そこで、本発明者等は、鋸歯状波の長所を有効に活用しつつ、反射板34の良好な揺動特性を確保する対策につき種々検討を加えてみた。
【0059】
その結果、鋸歯状波が最大レベルから最小レベルに瞬時に復帰するときに反射ミラー34に生じる反動を抑制する抑制波部を補正波部として鋸歯状波部に付加し、当該鋸歯状波部及び補正波部でもって1周期分の垂直走査波を構成すれば、鋸歯状波の長所を有効に活用しつつ、反射板34の良好な揺動特性を確保し得ることが分かった。
【0060】
具体的には、本実施形態では、垂直走査波(以下、垂直走査波Wともいう)は、図4にて直交座標面上で示すごとく、所定の周期Tを有し、鋸歯状波部Wa及び補正波部Wbでもって構成される。但し、当該直交座標面は、横軸を時間軸とし、縦軸を垂直走査波の振幅とする座標面である。
【0061】
ここで、反射板34は、上述したごとく、図2にて矢印R1或いはR2の方向に揺動するから、この反射板34の揺動角の範囲は、鋸歯状波部Waの振幅範囲の最小レベルと最大レベルとの間の範囲で決まる。このことは、垂直走査波Wの有効走査期間(図5にて図示符号Ta参照)は、鋸歯状波部Waの最小レベルから最大レベルまでの上昇期間で決まることを意味する。なお、鋸歯状波部Waが最大レベルから最小レベルに復帰する期間は非常に短いため、鋸歯状波部Waの周期は、ほぼ有効走査期間Taに等しい。
また、上述のごとく、反射板34の揺動角の範囲は、鋸歯状波部Waの振幅範囲の最小レベルと最大レベルとの間の範囲で決まることから、当該最小レベルと最大レベルとの間の中央レベルを、上記直交座標面上において零レベルとし、この零レベルに対応する反射板34の揺動角を零度とする。
これに伴い、上述した最小レベル及び最大レベルは、それぞれ、負の最大レベル(−Pm)(図4参照)及び正の最大レベル(+Pm)(図4参照)に相当し、絶対値において互いに等しくなる。なお、鋸歯状波部Waの負の最大レベル(−Pm)は、鋸歯状波部Waの始点に対応する。
【0062】
また、上述のように零レベルに対応して反射板34の揺動角を零度としたことに伴い、負の最大レベル(−Pm)及び正の最大レベル(+Pm)が、それぞれ、反射板34の負の最大揺動角及び正の最大揺動角に対応する。
【0063】
また、上述した補正波部Wbは、図4にて示すごとく、正弦波の前半周期部1(以下、正弦波前半周期部1という)及び一定レベル部2でもって構成される。正弦波前半周期部1は、鋸歯状波部Waの正の最大レベル(+Pm)から負の最大レベル(−Pm)への復帰直後において、上述した垂直走査機構30に固有の共振周波数(以下、共振周波数frともいう)の逆数である共振周期(図5にて符号Tb参照)の前半部に相当する時間で形成される。
【0064】
このことは、正弦波前半周期部1の期間は、上述した固有の共振周波数frの逆数である共振周期Tbの前半部に等しいことを意味する。
また、正弦波前半周期部1の最大レベルは、鋸歯状波部Waの振幅の半分の1.25倍に等しい(図4にて符号Ps参照)。従って、は、鋸歯状波Waの負の最大レベル(−Pm)への復帰直後に当該負の最大レベルから正弦波状に立ち上がって最大レベルPsとなり、この最大レベルから正弦波状に負の最大レベル(−Pm)に復帰する。
なお、鋸歯状波Waの負の最大レベル(−Pm)への復帰直後の当該負の最大レベルが、の始点に対応し、また、上述のように正弦波状に復帰した負の最大レベルが、の終点に対応する。
また、一定レベル部4は、上述した固有の共振周波数frの逆数である共振周期Tbの後半部の間、正弦波前半周期部1の負の最大レベル(−Pm)への復帰直後から負の最大レベル(−Pm)に等しいレベルを維持するように形成される。
【0065】
以上のように垂直走査波Wを構成することで、反射板34は、鋸歯状波のレベル上昇に円滑に追随しかつ乱れることなく負の最大揺動角に復帰する。
【0066】
次に、上述のように構成した垂直走査波Wを用いてデジタル垂直走査波データを形成するにあたっては、垂直走査波Wを、例えば、図5にて示すごとく、0〜255に量子化する。なお、サンプリング数nは、0〜255の量子化にあわせて設定する。
【0067】
本実施形態では、当該垂直走査波Wをn個のサンプリングタイミングt1・・、ti、・・、tm、・・、tnにてサンプリングする(図5及び図6参照)。このことは、垂直走査波Wの周期Tをn個の期間Δtに分割し、Δtの期間毎に垂直走査波Wをサンプリングすることを意味する。ここで、上述の期間Δtは、Δt=tk−(tk−1)で表される。但し、nは定数であり、また、k=1、2、・・、nとする。
【0068】
具体的には、垂直走査波Wのうち鋸歯状波部Waが、図6の図表にて示すごとく、各サンプリングタイミングt0、t1、t2、ti−2、ti−1、tiにて、それぞれ、各サンプリングデータ0、ΔV、2ΔV、254ΔV、255ΔV、0としてサンプリングされる。
【0069】
また、補正波部Wbの周期に相当する共振周期Tbを4m(=n−i)個の期間Δtに分割すると共に、共振周波数frに対応する共振角周波数をωr=2πfrと表せば、当該垂直走査波Wの補正波部Wbのうちの正弦波前半周期部1が、図6の図表にて示すごとく、各サンプリングタイミングti、ti+1、ti+2、ti+m、ti+2m−2、ti+2m−1、ti+2mにて、それぞれ、各サンプリングデータ0、Asin(ωr・Δt)、Asin(ωr・2Δt)、Asin(ωr・mΔt)、Asin{ωr・2(m−1)Δt}、Asin{ωr・(2m−1)Δt}、Asin(ωr・2mΔt)としてサンプリングされる。
【0070】
ここで、例えば、上述したAsin(ωr・mΔt)において、4mが2πに対応することから、ωr・mΔt=π/2である。従って、Asin(ωr・mΔt)=Aが成立する。また、上述したAsin(ωr・2mΔt)は、ωr・2mΔt=πであることから、0である。つまり、正弦波の位相が0ラジアンからπラジアンまでの半周期に相当する波形である。
【0071】
また、当該垂直走査波Wの補正波部Wbのうちの一定レベル部2が、図6の図表にて示すごとく、各サンプリングタイミングti+2m、ti+2m+1、ti+4m−1、ti+4mにて、それぞれ、0としてサンプリングされる。なお、ti+4m=tnである。
このようにして、上述のようにサンプリングされたn個のサンプリングデータが、垂直走査波Wを表すデジタルデータ(上記デジタル垂直走査波データ)として形成される。
【0072】
このように形成したデジタル垂直走査波データは、マイクロコンピュータ70により読み出し可能にROM73にその各所定のアドレスにて予め記憶されている。
【0073】
また、信号処理装置Bは、デジタル−アナログ変換器80(以下、D−A変換器80という)、垂直走査波生成回路90及び垂直走査駆動回路100を備えている。D−A変換器80は、マイクロコンピュータ70のROM73の各所定のアドレスから順次読み出されるデジタル垂直走査波データを順次アナログ垂直走査波信号に変換して垂直走査波生成回路90に出力する。
【0074】
なお、ROM73の各所定のアドレスから順次読み出されるデジタル垂直走査波データを一旦RAM74に記憶させ、その後、RAM74から読み出すように構成してもよい。これによって、ROM73のプログラム実行を円滑にさせ、高速読み出しも可能となるため、高サンプル数による緻密な波形生成が可能となる。
【0075】
また、別途RAMを設けて、このRAMに、ROM73の各所定のアドレスから順次読み出されるデジタル垂直走査波データを記憶させ、その後、上述の別途設けたRAから読み出すようにしてもよい。
【0076】
垂直走査波生成回路90は、D−A変換器80から順次出力されるアナログ垂直走査波信号の振幅及び直流レベルを増幅器等で調整し、実際に垂直走査機構30を駆動する駆動垂直走査波信号を生成する。ここで、当該垂直走査波信号の波形(垂直走査波)は、鋸歯状波部Wa、正弦波前半周期部1及び一定レベル部2(図4参照)でもって構成されており、鋸歯状波部Waの振幅の中央レベルが、零レベルとなっている。
【0077】
垂直走査駆動回路100は、垂直走査波生成回路90からの垂直走査波信号を増幅処理し垂直走査駆動電圧として発生し垂直走査機構30に出力する。ここで、当該垂直走査駆動電圧は、上記垂直走査波信号の鋸歯状波部Wa、正弦波前半周期部1及び一定レベル部2を増幅処理して構成されている。従って、当該垂直走査駆動電圧の極性に応じた電流が垂直走査機構30の電磁コイル37に流れる。
【0078】
画像光形成装置Cは、青色レーザ駆動回路110a(以下、Bレーザ駆動回路110aともいう)、緑色レーザ駆動回路110b(以下、Gレーザ駆動回路110bともいう)及び赤色レーザ駆動回路110c(以下、Rレーザ駆動回路110cともいう)を備えている。
【0079】
Bレーザ駆動回路110aは、映像信号処理回路50からの青色駆動信号に基づき、青色レーザ120a(以下、Bレーザ120aともいう)において発光される青色レーザ光の光強度を変調するための駆動信号を生成してBレーザ120aに出力する。
【0080】
Gレーザ駆動回路110bは、映像信号処理回路50からの緑色駆動信号に基づき、緑色レーザ120b(以下、Gレーザ120bともいう)において発光される緑色レーザ光の光強度を変調するための駆動信号を生成してGレーザ120bに出力する。
【0081】
また、Rレーザ駆動回路110cは、映像信号処理回路50からの赤色駆動信号に基づき、赤色レーザ120c(以下、Rレーザ120cともいう)において発光される赤色レーザ光の光強度を変調するための駆動信号を生成してRレーザ120cに出力する。
【0082】
Bレーザ120aは、ビーム状の青色レーザ光を発光するレーザ発光部を備えており、このBレーザ120aは、そのレーザ発光部からの青色レーザ光を、Bレーザ駆動回路110aからの駆動信号に基づき強度変調し、ビーム状の青色レーザ強度変調光としてコリメートレンズ130aに出射する。
【0083】
Gレーザ120bは、ビーム状の緑色レーザ光を発光するレーザ発光部を備えており、このGレーザ120bは、そのレーザ発光部からの緑色レーザ光を、Gレーザ駆動回路110bからの駆動信号に基づき強度変調し、ビーム状の緑色レーザ強度変調光としてコリメートレンズ130bに出射する。
【0084】
また、Rレーザ120cは、ビーム状の赤色レーザ光を発光するレーザ発光部を備えており、このRレーザ120cは、そのレーザ発光部からの赤色レーザ光を、Rレーザ駆動回路110cからの駆動信号に基づき強度変調し、ビーム状の赤色レーザ強度変調光としてコリメートレンズ130cに出射する。
【0085】
コリメートレンズ130aは、Bレーザ120aからの青色レーザ強度変調光をコリメートしビーム状の青色のコリメート画像光としてダイクロイックミラー140aに出射する。コリメートレンズ130bは、Gレーザ120bからの緑色レーザ強度変調光をコリメートしビーム状の緑色のコリメート画像光としてダイクロイックミラー140bに出射する。コリメートレンズ130cは、Rレーザ120cからの赤色レーザ変調光をコリメートしビーム状の赤色のコリメート画像光としてダイクロイックミラー140cに出射する。
【0086】
ダイクロイックミラー140cは、コリメートレンズ130cからの赤色のコリメート画像光をダイクロイックミラー140bに向けてビーム状に反射する。ダイクロイックミラー140bは、コリメートレンズ130bからの緑色のコリメート画像光及びダイクロイックミラー140cからの赤色のコリメート画像光を合波し合波画像光としてダイクロイックミラー140aに向けてビーム状に反射する。
【0087】
ダイクロイックミラー140aは、コリメートレンズ130aからの青色のコリメート画像光及びダイクロイックミラー140bからの合波画像光を合波し合波画像光として結合光学系150に向けてビーム状に反射する。
【0088】
結合光学系150は、ダイクロイックミラー140aを光ファイバー160にその入射端部にて光学的に結合させるもので、この結合光学系150は、ダイクロイックミラー140aからの合波画像光を収束させて光ファイバー160にその入射端部から入射させる。なお、本第1実施形態では、結合光学系150は、凸レンズでもって構成されている。
【0089】
光ファイバー160は、結合光学系150からの画像光を導光し、コリメートレンズ170に向けてビーム状に出射する。
【0090】
当該コリメートレンズ170は、光ファイバー160からの出射画像光をコリメートしビーム状のコリメート画像光として光走査装置Aの水平走査機構10に向けて出射する。
【0091】
以上のように構成した本実施形態において、当該画像表示装置が作動状態におかれるものとする。すると、信号処理装置Bにおいて、映像信号処理回路50が、上述したように、水平同期信号及び垂直同期信号をそれぞれ順次発生するとともに、外部からの2次元状の画像を表わす映像信号に基づき、青色、緑色及び赤色の各駆動信号を発生する。
【0092】
上述のように映像信号処理回路50が水平同期信号を順次発生すると、水平走査駆動回路60が、順次、水平走査駆動電圧を発生し水平走査機構10に出力する。このため、当該水平走査機構10は、水平走査駆動回路60から順次出力される水平走査駆動電圧により駆動されて水平走査状態におかれる。
【0093】
また、上述のように映像信号処理回路50が垂直同期信号を順次発生すると、これら各垂直同期信号は順次マイクロコンピュータ70に出力される。すると、映像信号処理回路50からの垂直同期信号の出力毎に、当該マイクロヒータ70は、CPU72により、上記所定のプログラムの実行のもと、ROM73の所定の各アドレスから上記デジタル垂直走査波データを読み出してD−A変換器80に出力する。
【0094】
これに伴い、このD−A変換器80は、マイクロコンピュータ70からの上記デジタル垂直走査波データの出力毎に、このデジタル垂直走査波データをアナログ垂直走査波信号に変換して垂直走査波生成回路90に出力する。
【0095】
しかして、この垂直走査波生成回路90は、D−A変換器80からのアナログ垂直走査波信号の出力毎に、このアナログ垂直走査波信号を、時間の経過に伴い上記掃引電圧により掃引して垂直走査波信号を生成し垂直走査駆動回路100に出力する。このため、当該垂直走査駆動回路100は、垂直走査波生成回路90からの垂直走査波信号の発生毎に、この垂直走査波信号を増幅処理し垂直走査駆動電圧として垂直走査機構30に出力する。
【0096】
すると、このように垂直走査駆動電圧が垂直走査機構30に出力される毎に、この垂直走査機構30においては、当該垂直走査駆動電圧が電磁コイル37にその内端側接続端子37d或いは外端側接続端子37eから印加される。
【0097】
ここで、垂直走査駆動電圧、即ち、垂直走査波信号の鋸歯状波部Waが負のときには、一例として、電磁コイル37の内端側接続端子37dの電位が負となり、電磁コイル37の外端側接続端子37eの電位は接地電位とする。このため、電磁コイル37には、垂直走査駆動電圧のうち鋸歯状波部Waに基づく電流は、外端側接続端子37eからコイル本体37aを通り内端側接続端子37dに流れる。なお、外端側接続端子37eに代えて、内端側接続端子37dの電位を接地電位としてもよい。
【0098】
従って、コイル本体37aにおいては、電流が、各コイル辺部37bには図3にて図示左側から右側に向けて流れ、一方、各コイル辺部37cには図3にて図示右側から左側に向けて流れる。このため、各コイル辺部37bに流れる電流及び各コイル辺部37cに流れる電流は、磁石38のN極から磁石39のS極に向かう磁界との間において、フレミングの左手の法則に従い、反射板34を矢印R1方向(図2参照)に揺動させるように磁力を発生する。
【0099】
また、垂直走査駆動電圧、即ち、垂直走査波信号の鋸歯状波部Waが正のときには、電磁コイル37の内端側接続端子37dの電位が正となり、電磁コイル37の外端側接続端子37eの電位が接地電位となる。このため、電磁コイル37には、垂直走査駆動電圧のうち鋸歯状波部Waに基づく電流は、内端側接続端子37dからコイル本体37aを通り外端側接続端子37eに流れる。
【0100】
従って、コイル本体37aにおいては、電流が、各コイル辺部37bには図3にて図示右側から左側に向けて流れ、一方、各コイル辺部37cには図3にて図示左側から右側に向けて流れる。このため、各コイル辺部37bに流れる電流及び各コイル辺部37cに流れる電流は、磁石38のN極から磁石39のS極に向かう磁界との間において、フレミングの左手の法則に従い、反射板34を矢印R2方向(図2参照)に揺動させるように磁力を発生する。
【0101】
以上のように、垂直走査波信号が、その鋸歯状波部Waにて、この鋸歯状波部Waの周期毎に、負及び正に交互に交流的に変化することで、反射板34は、矢印R1及び矢印R2の各方向に交互に揺動する。
【0102】
ここで、このような揺動過程においては、垂直走査波信号の鋸歯状波部Waが正の最大レベル(+Pm)から負の最大レベル(−Pm)に瞬時に復帰する毎に、反射ミラー34は反動を生じ、上記固有の共振周波数に基づき共振しようとする。
【0103】
しかし、上述したごとく、垂直走査波信号は、鋸歯状波部Waのほかに、補正波部Wbである正弦波前半周期部1及び一定レベル部2をも有するように構成されている。このため、反射板34が上述のように共振しようとしても、正弦波前半周期部1が、垂直走査波信号の鋸歯状波部Waの負の最大レベル(−Pm)への復帰時に抑制するように作用する。そして、このような抑制作用後において、一定レベル部2が、さらに反射板34に対しその共振を抑制するように作用する。換言すれば、補正波部Wbの周期Tbは、反射板34の共振を抑制するための共振補正期間としての意義を有する。
【0104】
従って、反射板34は、垂直走査波信号Wの鋸歯状波部Waの負の最大レベル(−Pm)への復帰の際に生じがちな反射板34の共振が確実にタイミングよく抑制される。その結果、反射板34は、図7にて符号3aにより示すごとく、垂直走査波信号の周期T毎に、共振することなく、円滑に負の最大揺動角(鋸歯状波部Waの負の最大レベル(−Pm)に対応)に復帰し得る。これにより、垂直走査機構30は、共振することなく、良好な垂直走査状態におかれる。なお、図7において、符号3は、垂直走査波信号Wのレベル変化に伴う反射板34の揺動角の変化を波形で示す。また、上述した符号3aは、波形3のいうち、反射板34の負の最大揺動角への復帰過程を、波形で示す。
【0105】
また、上述のように、映像信号処理回路50が外部からの2次元状の画像を表わす映像信号に基づき、青色、緑色及び赤色の各駆動信号を発生すると、画像光形成装置Cにおいて、各レーザ駆動回路110a、110b、110cは、各レーザ120a、120b、120cの各レーザ発光部からのレーザ光の光強度を変調するように各レーザ120a、120b、120cを駆動する。
【0106】
これに伴い、各レーザ120a、120b、120cは、各レーザ光を強度変調してビーム状のレーザ強度変調画像光として各コリメートレンズ130a、130b、130cに出射する。すると、各コリメートレンズ130a、130b、130cが、各レーザ強度変調画像光をコリメートして各コリメート画像光として各ダイクロイックミラー140a、140b、140cに出射する。
【0107】
このように出射されると、ダイクロイックミラー140cは、コリメートレンズ130cからのコリメート画像光をダイクロイックミラー140bに向けて反射し、このダイクロイックミラー140bは、コリメートレンズ130bからのコリメート画像光及びダイクロイックミラー140cからの反射画像光を合波してダイクロイックミラー140aに向けて反射する。
【0108】
これに伴い、このダイクロイックミラー140aは、コリメートレンズ130aからのコリメート画像光及びダイクロイックミラー140bからの合波画像光を合波し、合波画像光として結合光学系150に向けて出射する。すると、この結合画像系150は、ダイクロイックミラー140aからの合波画像光を収束させて光ファイバー160を通しコリメートレンズ170に入射する。このため、当該コリメートレンズ170は、その入射画像光をコリメートしてコリメート画像光として光走査装置Aの水平走査機構10に向けて出射する。
【0109】
このとき、水平走査機構10は、上述のように水平走査状態にあるため、コリメートレンズ170からのコリメート画像光は、水平走査機構10により水平走査され、水平走査画像光としてリレー光学系20に向けて反射される。これに伴い、当該水平走査画像光は、リレー光学系20により、収束されて垂直走査機構30に向けて出射される。
【0110】
このとき、垂直走査機構30は上述のごとく垂直走査状態にあるため、リレー光学系20からの水平走査画像光は、垂直走査機構30により、垂直走査されて垂直走査画像光としてリレー光学系40に向けて反射される。
【0111】
ここで、垂直走査機構30の反射板34は、図7の波形3にて示すごとく、円滑に揺動するため、リレー光学系20からの水平走査画像光は、垂直走査機構30により、適正に垂直走査されて、垂直走査画像光としてリレー光学系40に向けて反射される。
【0112】
このように反射される当該垂直走査画像光は、リレー光学系40により収束されて、左眼Iの瞳孔Iaに向けて出射され、左眼Iの網膜Ibに良好な2次元状の画像として表示され得る。
【0113】
ちなみに、上述した垂直走査波信号において正弦波前半周期部1の最大レベルの適正な範囲について調べてみた。これによれば、正弦波前半周期部1の最大レベルPsを、鋸歯状波部Waの最大値と最小値との差の半分とした場合には、反射板34が、図8にて符号4で示すごとく、脈動しながら鋸歯状波部Waの値の変化に追随して揺動することが分かった。
【0114】
また、正弦波前半周期部1の最大レベルPsを、鋸歯状波部Waの最大値と最小値との
差の半分のA倍とした場合には、反射板34が、図7にて符号3で示すごとく、脈動することなく鋸歯状波部Waのレベルの変化に良好に追随して揺動することが分かった。なお、上述のAは鋸歯状波部Waの波形に基づいて決まる定数である。
【0115】
さらに、共振周波数の異なる垂直走査機構或いは周波数が同一であっても構成の異なる垂直走査機構の場合、正弦波前半周期部1の最大レベルPsが、鋸歯状波部Waの最大値と最小値との差の半分のレベルと当該振幅の最大レベルとの間のレベルに相当範囲で、反射板34が、鋸歯状波部Waのレベルの変化にほぼ良好に追随して揺動する条件があることも分かった。
【0116】
従って、好ましくは、正弦波前半周期部1の最大レベルPsは、鋸歯状波部Waの最大値と最小値との差の半分のA倍であることが望ましいが、鋸歯状波部Waの最大値と最小値との差の半分のレベルと当該振幅の最大レベルとの間のレベルに相当するレベルであれば実用上支障はない。
【0117】
次に、上述した垂直走査駆動電圧、即ち垂直走査波信号における鋸歯状波部Waの周波数の適正な範囲について調べてみた。これによれば、鋸歯状波部Waの周波数を100(Hz)とした場合には、図9にて示す結果が得られた。また、鋸歯状波部Waの周波数を200(Hz)とした場合には、図10にて示す結果が得られた。
【0118】
これら図9及び図10にて示す結果では、反射板34の揺動角は、図9及び図10にて符号5及び符号6で示すごとく、鋸歯状波部Waのレベルに円滑に追随して変化することが分かる。なお、鋸歯状波部Waの周波数をさらに変更して調べてみたところ、同様に、反射板34の揺動角は鋸歯状波部Waのレベルに円滑に追随して変化することが分かった。
【0119】
次に、垂直走査機構30の共振周波数をパラメータとして、鋸歯状波形成範囲と鋸歯状波部Waの周波数との関係について調べてみた。これによれば、図11にて示すような各グラフa〜hが得られた。
【0120】
ここで、グラフa、グラフb及びグラフcは、それぞれ、垂直走査機構30の共振周波数を、100(Hz)、300(Hz)及び500(Hz)とした場合の鋸歯状波形成範囲と鋸歯状波部Waの周波数との関係を示す。
【0121】
また、グラフd、グラフe、グラフf、グラフg及びグラフhは、それぞれ、垂直走査機構30の共振周波数を、1(kHz)、1.5(kHz)、2(kHz)、2.5(kHz)及び3(kHz)とした場合の鋸歯状波形成範囲と鋸歯状波部Waの周波数との関係を示す。
【0122】
これら各グラフa〜hによれば、鋸歯状波部Waの周波数の適正範囲を30(Hz)〜100(Hz)の範囲とした場合、鋸歯状波形成範囲を80(%)以上にするには、垂直走査機構30の共振周波数は300(Hz)以上であることが望ましいことが分かる。
【0123】
また、垂直走査機構30の垂直走査を上記垂直走査駆動電圧で行う場合と正弦波電圧で行う場合と対比してみると、反射板30の反射面から反射される光の走査速度が一定になっている領域(時間)は、300Hzの垂直走査機構で1回の走査時間中、約80%の時間がとれるが、正弦波駆動では、等速走査と近似できる領域はあるものの、全走査時間のごく一部である。鋸歯状波部Waの直線範囲は正弦波電圧の直線範囲よりもかなり広く、従って、垂直走査の有効範囲もかなり広くなる。
【0124】
ここで、本実施形態では、上記垂直走査駆動電圧でもって垂直走査を行うため、反射板34は、上述のごとく、鋸歯状波部Waのレベル変化に追随して円滑に揺動する。その結果、上述した垂直走査の有効範囲は、良好な垂直走査のもとに、かなり広く確保し得る。
【0125】
また、本実施形態では、垂直走査が垂直走査波信号の鋸歯状波部でもってなされるため、広い範囲に亘り均等性に優れる。従って、正弦波で駆動して、sin-1Θ補正を行うことは不要となる。
【0126】
なお、本発明の実施にあたり、上記実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記実施形態における当該画像表示装置は、使用者の左眼用のものとして使用されることに限らず、使用者の右眼用のものとして使用してもよい。
(2)補正波部Wbは、正弦波前半周期部1に代えて、台形波部、三角波部或いは矩形波部を採用しても、上記実施形態と同様の作用効果が達成され得る。
(3)補正波部Wbの一定レベル部2は、鋸歯状波部Waの負の最大レベル(−Pm)に限ることなく、適宜なレベルに変更してもよい。
(4)網膜走査型画像表示装置に限らず、光走査型表示装置であれば、どのような表示装置に本発明を適用してもよい。
(5)垂直走査機構30に代えて、水平走査機構10による水平走査に本発明を適用してもよい。
(6)垂直走査機構30の温度を検出する温度センサを設けて、マイクロコンピュータ70によりCPU72でもって、上記温度センサによる検出温度に基づき垂直走査機構30に固有の共振周波数を補正し、この補正共振周波数に基づき上記デジタル垂直走査波データのうち補正波部Wbに対応するデータ部を補正してD−A変換器80に出力するようにしてもよい。
【0127】
これによれば、上記垂直走査波のうちの補正波部Wbの波形が垂直走査機構30の温度に基づき補正されることとなり、その結果、垂直走査機構30による垂直走査がより一層精度よくなされ得る。
(7)上述した一定レベル部2は、緩やかにレベル変化する等のほぼ一定レベル部であればよい。
(8)上述した垂直走査波信号の波形、即ち垂直走査波は、上下反転した波形であっても、上記実施形態と同様の作用効果が達成され得る。
(9)磁石38或いは39の高さや長さは、反射板34の板厚や幅に一致するのではなく、当該反射板34の板厚や幅よりも大きくても小さくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明が適用される網膜走査型画像表示装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1の垂直走査機構の拡大斜視図である。
【図3】図2の垂直走査機構のうち反射板、両梁部材及び両磁石を裏面側からみた図である。
【図4】上記実施形態における垂直走査波の構成を示す図である。
【図5】上記実施形態における垂直走査波の量子化のための説明図である。
【図6】上記実施形態における垂直走査波のサンプリングタイミング及びサンプリングデータを示す図表である。
【図7】上記実施形態の垂直走査機構における垂直走査波信号の波形及び反射板の揺動特性を示す波形図である。
【図8】上記実施形態における垂直走査機構の垂直走査波信号の波形及び反射板の揺動特性を、正弦波前半周期部の最大レベルを鋸歯状波部の振幅の半分として示す波形図である。
【図9】上記実施形態における垂直走査機構の垂直走査波信号の波形及び反射板の揺動特性を、鋸歯状波部の周波数を100(Hz)として示す波形図である。
【図10】上記実施形態における垂直走査機構の垂直走査波信号の波形及び反射板の揺動特性を、鋸歯状波部の周波数を200(Hz)として示す波形図である。
【図11】鋸歯状波範囲と鋸歯状波部の周波数との間の関係を、共振周波数をパラメータとして示すグラフである。
【符号の説明】
【0129】
1、2、10…水平走査機構、11、34…反射板、30…垂直走査機構、
31…基板、32…板枠、34a…裏面、34d…表面、35、36…梁部材、
37…電磁コイル、38、39…磁石、50…映像信号処理回路、
60…水平走査駆動回路、70…マイクロコンピュータ、80…D−A変換器、
90…垂直走査波生成回路、100…垂直走査駆動回路、A…光走査装置、
B…信号処理装置、C…画像光形成装置、Wa…鋸歯状波部、Wb…補正波部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置、光走査型表示装置及び光走査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、光走査装置においては、下記非特許文献1に開示されたラスタスキャナがある。このラスタスキャナは、入射光を走査ミラーによりその揺動に応じて走査するようになっている。
ここで、当該ラスタスキャナでは、垂直走査に採用される垂直走査信号は、鋸歯状波でもって構成されている。このため、当該垂直走査信号は、その周期毎に、垂直走査時間の経過に伴い最小レベルから最大レベルまで直線的に上昇した後上記最小レベルに瞬時に復帰する。
【0003】
従って、ラスタスキャナにおいては、走査ミラーが垂直走査信号の上述のようなレベル変化に応じて揺動することとなる。
【非特許文献1】Hakan Urey,Randy Sprague,"BiaxiaPmEMS Raster Scanner with Linear Ramp Drive",OpticaPmEMS 2003, IEEE-LEOS, Waikoloa,Hawaii, Aug 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のラスタスキャナにおいては、上述のように走査ミラーが垂直走査信号の上述のようなレベル変化に応じて揺動する過程において、垂直走査信号がその最大レベルから最小レベルに瞬時に復帰するときに、走査ミラーが当該復帰に対し反動を生じる。
【0005】
ここで、通常、走査ミラーは弾性梁部材を介して静止部材に揺動可能に支持されているため、ラスタスキャナ自体には、走査ミラー及び弾性梁部材で決まる固有の共振周波数が存在する。
【0006】
従って、上記反動に起因する周波数にラスタスキャナの共振周波数が含まれていると、走査ミラーが共振振動を起こす。このため、走査ミラーが、垂直走査信号の上記復帰後のレベルの変化に追随できず、このレベル変化とは異なる脈動運動を起こす。その結果、入射光に対する垂直走査が良好にはなされないという不具合を招く。
【0007】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処するため、鋸歯状波を有効に活用して波形に工夫をこらした走査信号を形成し、この走査信号でもって良好に光の走査を行うようにした光走査装置、光走査型表示装置及び光走査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の解決にあたり、本発明に係る光走査装置は、請求項1の記載によれば、
静止部材(31、32)に弾性梁部材(35、36)を介し揺動可能に支持される揺動部材(34)を有してなる走査素子(30)と、
所定周期にて走査信号を発生する走査信号発生手段(50、70、80、90)と、
上記走査信号に基づき走査素子をその揺動部材にて揺動するように駆動する駆動手段(100、37、38、39)とを備えて、
走査素子が、揺動部材に入射する光を、当該揺動部材によりその揺動に応じて走査する。
【0009】
当該光走査装置において、走査信号発生手段は、上記所定周期のうち前側期間にて形成される鋸歯状波部(Wa)と、上記所定周期のうち後側期間にて走査素子の固有の共振周波数に基づき形成される補正波部(Wb)とでもって、上記走査信号を構成して発生するようにしたことを特徴とする。
【0010】
このように、走査信号が、その所定周期のうち前側期間にて形成される鋸歯状波部と、上記所定周期のうち後側期間にて走査素子の固有の共振周波数に基づき形成される補正波部とでもって、構成される。
【0011】
従って、補正波部が走査素子の固有の共振周波数に基づき走査素子の共振を抑制するように形成されていれば、走査信号のうち鋸歯状波部に基づき走査する走査素子の共振が、補正波部でもって良好に抑制され得る。その結果、走査素子の走査が良好になされ得る。
【0012】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載の光走査装置において、
走査信号発生手段は、上記前側期間を、揺動部材に入射する光を走査する期間とし、上記後側期間を、揺動部材を上記光の走査開始揺動位置に戻す期間として、上記鋸歯状波部及び補正波部でもって、上記走査信号を構成して発生することを特徴とする。
【0013】
このように走査信号を構成することで、請求項1に記載の発明の作用効果がより一層具体的に確保され得る。
【0014】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1或いは2に記載の光走査装置において、
上記後側期間は走査素子の上記固有の共振周波数に対する共振周期に相当する期間であり、
上記補正波部は、上記共振周期に相当する期間に形成されていることを特徴とする。
このように、上記後側期間を、走査素子の上記固有の共振周波数に対する共振周期に相当する期間とし、補正波部を、上記共振周期に相当する期間にて形成することで、請求項1或いは2に記載の発明の作用効果をより一層確実に達成し得る。
【0015】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項1〜3のいずれか1つに記載の光走査装置において、
上記補正波部は、上記後側期間のうち、その前半期間部及び後半期間部にて、それぞれ、正弦波の前半周期部(1)及び略一定レベル部(2)でもって構成されていることを特徴とする。
このように、補正波部が、上記後側期間の前半期間部及び後半期間部にて、それぞれ、正弦波の前半周期部及び略一定レベル部でもって構成されることで、走査信号のうち鋸歯状波部に基づき走査する走査素子の共振が、正弦波の前半周期部で抑制された上で略一定レベル部で抑制される。従って、走査素子の共振がより一層効果的なされ、その結果、請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明の作用効果がより一層向上され得る。
本発明は、請求項5の記載によれば、請求項4に記載の光走査装置において、
上記正弦波の前半周期部は、その最大レベルにて、前記鋸歯状波部の最大値と最小値との差の0.5倍〜1.0倍の範囲以内のレベルに設定されており、
上記鋸歯状波部の始点部及び終点部は、上記正弦波の前半周期部の始点部及び終点部並びに上記略一定レベル部と共に、同一のレベルに設定されていることを特徴とする。
【0016】
このように、正弦波の前半周期部の最大レベル、鋸歯状波部及び正弦波の前半周期部の始点部及び終点部のレベル及び略一定レベル部のレベルを設定することで、請求項4に記載の作用効果が具体的に確保され得る。
【0017】
また、本発明は、請求項6の記載によれば、請求項1〜5のいずれか1つに記載の光走査装置において、
揺動部材は、上記光を入射させる一側面(34d)を有する揺動板(34)であり、
駆動手段は、磁石(38、39)と、揺動板の他側面(34a)に設けられて上記走査信号に基づき揺動板を揺動させるように磁石との間で磁界を形成する電磁コイル(37)とを備えていることを特徴とする。
このように、揺動板を磁石と電磁コイルとの間の磁気作用でもって揺動させるようにしても、請求項1〜5のいずれか1つに記載の発明と同様の作用効果が達成され得る。
【0018】
また、本発明は、請求項7の記載によれば、請求項1〜6のいずれか1つの記載の光走査装置において、
走査素子の温度を検出する温度検出手段と、
温度検出手段の検出温度に基づき上記固有の共振周波数を補正する補正手段とを備えて、
走査信号発生手段は、補正手段によって補正された上記固有の共振周波数に基づき上記補正波部を形成するようにしたことを特徴とする。
これによれば、上記垂直走査波のうちの補正波部の波形が走査素子の温度に基づき補正されることとなり、その結果、走査素子による走査がより一層精度よくなされ得る。
また、本発明に係る光走査型表示装置は、請求項8の記載によれば、
画像を画像光でもって出射する画像光出射手段(C)と、
この画像光出射手段からの出射画像光を入射されて2次元的に走査して2次元走査光を出射する走査手段(10、30、B)とを備えて、
この走査手段からの2次元走査光に基づき上記画像を表示する。
【0019】
当該光走査型表示装置において、走査手段は、画像光出射手段からの出射画像光を水平走査し水平走査光として出射する水平走査手段(10)と、この水平走査手段からの水平走査光を垂直走査して上記2次元走査光として出射する垂直走査手段(30)とを備えて、
水平走査手段及び垂直走査手段の双方のうちの少なくとも一方が、請求項1〜6のいずれか1つに記載の光走査装置でもって構成されていることを特徴とする。
【0020】
このように請求項1〜6のいずれか1つに記載の光走査装置でもって、水平走査手段及び垂直走査手段の双方のうちの少なくとも一方を構成することで、水平走査手段及び垂直走査手段の双方のうちの少なくとも一方による走査を良好に確保し得る光走査型表示装置の提供が可能となる。
【0021】
また、本発明に係る光走査方法では、請求項9の記載によれば、
静止部材(31、32)に弾性梁部材(35、36)を介し揺動可能に支持される揺動部材(34)を備えた走査素子(10、30)でもって、走査信号に応じた揺動部材の揺動により、当該揺動部材への入射光を走査する。
【0022】
当該光走査方法において、上記走査信号は、上記所定周期のうち前側期間にて形成される鋸歯状波部(Wa)と、上記所定周期のうち後側期間にて走査素子の固有の共振周波数に基づき形成される補正波部(Wb)とでもって構成されることを特徴とする。
【0023】
このように、走査信号が、その所定周期のうち前側期間にて形成される鋸歯状波部と、上記所定周期のうち後側期間にて走査素子の固有の共振周波数に基づき形成される補正波部とでもって、構成される。
【0024】
従って、補正波部が走査素子の固有の共振周波数に基づき走査素子の共振を抑制するように形成されていれば、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る光走査方法の提供が可能となる。
【0025】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を図面により説明する。
【0027】
図1は、本発明に係る網膜走査型画像表示装置の一実施形態を示している。当該画像表示装置は、使用者の左眼用のものであって、この画像表示装置は、光走査装置A、信号処理装置B及び画像光形成装置Cでもって構成されている。
【0028】
光走査装置Aは、図1にて示すごとく、水平走査機構10、リレー光学系20、垂直走査機構30及びリレー光学系40を備えている。
【0029】
水平走査機構10は、水平走査用反射板11を備えており、この反射板11は、適宜な静止部材により同軸的に支持された両対向梁部材12の間にて当該両梁部材12により図1にて図示矢印X方向に揺動可能に支持されている。
【0030】
しかして、当該水平走査機構10は、信号処理装置Bの水平走査駆動回路60(後述する)により駆動されて反射板11を矢印X方向に揺動させ、当該反射板11により、その揺動角に応じて、画像光形成装置Cのコリメートレンズ170(後述する)から入射されるビーム状のコリメート画像光を水平走査しながらビーム状の水平走査画像光として反射する。
【0031】
リレー光学系20は、水平走査機構10により水平走査されるビーム状の水平走査画像光を収束させて垂直走査機構30に向け出射する。
【0032】
次に、垂直走査機構30の構成について詳細に説明する。この垂直走査機構30は、図1にて示すごとく、両リレー光学系20、40の間に介装されているもので、当該垂直走査機構30は、図2にて示すごとく、基板31と、この基板31上に設けた長方形状の板枠32とを備えている。
【0033】
また、当該垂直走査機構30は、垂直走査用四角板形状反射板34及び両梁部材35、36を備えており、反射板34は、図2にて示すごとく、図示左端中央部にて、梁部材35でもって、板枠32の内壁32aの中央部に支持されている。また、当該反射板34は、図2にて示すごとく、図示右端中央部にて、梁部材36でもって、板枠32の内壁32bの中央部に支持されている。
【0034】
両梁部材35、36は、共に、捻れ可能に弾性材料でもって長手状に形成されており、これら両梁部材35、36は、板枠32の中空部内にて、図2にて示すごとく、反射板34を図示矢印R1或いはR2の方向(図1にて図示矢印Y方向)に揺動可能に支持している。
【0035】
また、当該垂直走査機構30は、図2或いは図3にて示すごとく、電磁コイル37及び両磁石38、39を備えている。電磁コイル37は、図3にて示すごとく、コイル本体37aを有している。このコイル本体37aは、複数のコイル辺部でもって四角渦巻き状に形成されており、当該コイル本体37aは、図3にて示すごとく、その内端部から外端部にかけて図示反時計方向に四角渦巻き状に巻回されて、反射板34にその裏面34aにて同軸的に装着されている。
【0036】
ここで、コイル本体37aの複数のコイル辺部のうち、各コイル辺部37bは、図3にて示すごとく、反射板34の中央よりも当該反射板の一側縁34b側にてこの一側縁34bに平行に位置している。また、各コイル辺部37cは、図3にて示すごとく、反射板34の中央よりも当該反射板の他側縁34c側にてこの他側縁34cに平行に位置している。
【0037】
また、電磁コイル37は、図3にて示すごとく、内端側接続端子37d及び外端側接続端子37eを有しており、内端側接続端子37dは、コイル本体37aの内端部から延出して、梁部材35の裏面35aにその長手方向に沿い装着されている。一方、外端側接続端子37eは、このコイル本体37aの外端部から延出して、梁部材36の裏面36aにその長手方向に沿い装着されている。
【0038】
両磁石38、39は、共に、永久磁石材料でもって直方体形状に形成されている。磁石38は、図2にて示すごとく、板枠32の内壁32cと反射板34の一側縁34bとの間に介装されており、この磁石38は、その幅方向外端部38aにて、板枠32の内壁32cの長手方向中央部位に固着されている。これに伴い、当該磁石38は、その幅方向内端部38bにて、図2及び図3にて示すごとく、反射板34の一側縁34bに所定の間隙を介し対向するように位置する。本実施形態では、当該磁石38の幅方向外端部38a及び幅方向内端部38bは、それぞれ、S極及びN極を構成している。
【0039】
また、磁石39は、図2にて示すごとく、板枠32の内壁32dと反射板34の他側縁34cとの間に介装されており、この磁石39は、その幅方向外端部39aにて、図2にて示すごとく、板枠32の内壁32dの長手方向中央部位に固着されている。これに伴い、当該磁石39は、その幅方向内端部39bにて、図1及び図2にて示すごとく、反射板34の他側縁34cに所定の間隙を介し対向して位置する。本実施形態では、当該磁石39の幅方向外端部39a及び幅方向内端部39bは、それぞれ、N極及びS極を構成している。
【0040】
ここで、上述のように構成した電磁コイル37と両磁石38、39との間の磁気作用について説明する。
【0041】
電流がコイル本体37aに内端側接続端子37dから流入すると、各コイル辺部37bに流れる電流と磁石38の幅方向内端部38bであるN極との間において、反射板34の板厚方向に向け、フレミングの左手の法則に従う方向に磁力を発生する。また、各コイル辺部37cに流れる電流と磁石39の幅方向内端部39bであるS極との間において、反射板34の板厚方向に向け、フレミングの左手の法則に従う方向に磁力を発生する。
【0042】
但し、各コイル辺部37bに流れる電流の方向は、反射板34の裏面34a上において、各コイル辺部37cに流れる電流の方向に対し逆方向となるため、各コイル辺部37bに流れる電流に起因して生ずる磁力は、各コイル辺部37cに流れる電流に起因して生ずる磁力とは、逆向きになる。
【0043】
このため、反射板34は、コイル本体37aに内端側接続端子37dから流入する電流に基づき各コイル辺部37bと各コイル辺部37cとに互いに逆向きに発生する各磁力を受けて、両梁部材35、36の捻れ作用のもと図2にて図示矢印R1方向に揺動する。この矢印R1方向への揺動に伴い、垂直走査機構30は、反射板34により、その表面である反射面34dにて、入射光を走査しながら反射する。
【0044】
一方、電流がコイル本体37aに外端側接続端子37eから流入すると、各コイル辺部37bに流れる電流の方向及び各コイル辺部37cに流れる電流の方向が、電流がコイル本体37aに内端側接続端子37dから流入する場合とは逆向きになる。
【0045】
従って、各コイル辺部37bに流れる電流に起因して生ずる磁力及び各コイル辺部37cに流れる電流に起因して生ずる磁力も、電流がコイル本体37aに内端側接続端子37dから流入する場合とは逆向きに発生する。
【0046】
このため、反射板34は、コイル本体37aに外端側接続端子37eから流入する電流に基づき各コイル辺部37bと各コイル辺部37cとに互いに逆向きに発生する各磁力を受けて、両梁部材35、36の上述とは逆方向の捻れ作用のもと図2にて図示矢印R2方向に揺動する。この矢印R2方向への揺動に伴い、垂直走査機構30は、反射板34により、反射面34dにて、入射光を走査しながら反射する。
【0047】
このことは、垂直走査機構30は、反射板34により、その揺動角に応じて、リレー光学系20からのビーム状の水平走査画像光を垂直走査しながら垂直走査画像光として反射することを意味する。なお、上述した両矢印R1及びR2の方向は、図1にて矢印Yで示す垂直走査方向に相当する。
【0048】
リレー光学系40は、垂直走査機構30からのビーム状の垂直走査画像光を収束させてビーム状の走査画像光として左眼Iの瞳孔Iaに向け出射する。
【0049】
信号処理装置Bは、図1にて示すごとく、光センサ50a及びビーム検出信号処理回路50bを備えており、光センサ50aは、水平走査機構10の反射板11から反射されるビーム状の光を検出してビーム検出信号を発生する。ビーム検出信号処理回路50bは、光センサ50aからのビーム検出信号を信号処理して信号処理信号を発生する。なお、光センサ50aは、水平走査機構10の近傍に設けられている。
【0050】
また、信号処理回路Bは、映像信号処理回路50を有しており、この映像信号処理回路50は、ビーム検出信号処理回路50bからの信号処理信号や外部からの2次元状の映像を表わす映像信号に基づき、当該2次元状の映像の1フレームを構成する複数の水平ラインに対応して、水平ライン毎に、当該1フレームの形成のための青色、緑色及び赤色の各駆動信号の出力タイミングを決定する。
【0051】
そして、当該映像信号処理回路50は、上記出力タイミング毎に、青色、緑色及び赤色の各駆動信号を発生する。なお、上記2次元状の映像は、一連のフレームでもって構成されており、各フレーム毎に上記複数の水平ラインが対応する。
【0052】
また、映像信号処理回路50は、上記出力タイミング毎に、水平同期信号を発生するとともに、上記各フレームの複数の水平ラインのうちの最初の水平ライン毎に、垂直同期信号を発生する。
【0053】
また、信号処理装置Bは、水平走査駆動回路60を備えており、この水平走査駆動回路60は、映像信号処理回路50からの各水平同期信号を増幅処理し水平走査駆動電圧として順次発生し水平走査機構10に出力する。これにより、水平走査機構10は、水平走査駆動回路60からの各水平走査駆動電圧に基づき水平走査駆動される。
【0054】
また、信号処理回路Bは、マイクロコンピュータ70を備えており、このマイクロコンピュータ70は、バスライン71を介し接続したCPU72、ROM73及びRAM74を主たる構成素子として備えている。
【0055】
マイクロコンピュータ70は、CPU72により、所定のプログラムを実行し、この実行中において、映像信号処理回路50からの各垂直同期信号に基づきデジタル垂直走査波データをROMの所定の各アドレスから順次読み出す。なお、上述したデジタル垂直走査波データは、垂直走査機構30の垂直走査に用いられるデータであって、マイクロコンピュータ70のROM73にその所定の各アドレスにて予め記憶されている。
【0056】
ここで、上述したデジタル垂直走査波データの形成方法について詳細に説明する。
一般的に、垂直走査機構30の光に対する垂直走査範囲はできる限り広いことが望ましい。このような観点からすれば、垂直走査波としては、直線性に優れる鋸歯状波が適している。
【0057】
しかし、垂直走査機構30は、反射板34及び両梁部材35、36の構成に起因して、固有の共振周波数を有する。従って、このような垂直走査機構30において上記鋸歯状波をそのまま垂直走査波として用いても、反射板34の揺動は、本明細書の「発明の解決しようとする課題」の欄にて述べたように、上記固有の共振周波数の存在のために、鋸歯状波の変化に追随できず、乱れてしまう。
【0058】
そこで、本発明者等は、鋸歯状波の長所を有効に活用しつつ、反射板34の良好な揺動特性を確保する対策につき種々検討を加えてみた。
【0059】
その結果、鋸歯状波が最大レベルから最小レベルに瞬時に復帰するときに反射ミラー34に生じる反動を抑制する抑制波部を補正波部として鋸歯状波部に付加し、当該鋸歯状波部及び補正波部でもって1周期分の垂直走査波を構成すれば、鋸歯状波の長所を有効に活用しつつ、反射板34の良好な揺動特性を確保し得ることが分かった。
【0060】
具体的には、本実施形態では、垂直走査波(以下、垂直走査波Wともいう)は、図4にて直交座標面上で示すごとく、所定の周期Tを有し、鋸歯状波部Wa及び補正波部Wbでもって構成される。但し、当該直交座標面は、横軸を時間軸とし、縦軸を垂直走査波の振幅とする座標面である。
【0061】
ここで、反射板34は、上述したごとく、図2にて矢印R1或いはR2の方向に揺動するから、この反射板34の揺動角の範囲は、鋸歯状波部Waの振幅範囲の最小レベルと最大レベルとの間の範囲で決まる。このことは、垂直走査波Wの有効走査期間(図5にて図示符号Ta参照)は、鋸歯状波部Waの最小レベルから最大レベルまでの上昇期間で決まることを意味する。なお、鋸歯状波部Waが最大レベルから最小レベルに復帰する期間は非常に短いため、鋸歯状波部Waの周期は、ほぼ有効走査期間Taに等しい。
また、上述のごとく、反射板34の揺動角の範囲は、鋸歯状波部Waの振幅範囲の最小レベルと最大レベルとの間の範囲で決まることから、当該最小レベルと最大レベルとの間の中央レベルを、上記直交座標面上において零レベルとし、この零レベルに対応する反射板34の揺動角を零度とする。
これに伴い、上述した最小レベル及び最大レベルは、それぞれ、負の最大レベル(−Pm)(図4参照)及び正の最大レベル(+Pm)(図4参照)に相当し、絶対値において互いに等しくなる。なお、鋸歯状波部Waの負の最大レベル(−Pm)は、鋸歯状波部Waの始点に対応する。
【0062】
また、上述のように零レベルに対応して反射板34の揺動角を零度としたことに伴い、負の最大レベル(−Pm)及び正の最大レベル(+Pm)が、それぞれ、反射板34の負の最大揺動角及び正の最大揺動角に対応する。
【0063】
また、上述した補正波部Wbは、図4にて示すごとく、正弦波の前半周期部1(以下、正弦波前半周期部1という)及び一定レベル部2でもって構成される。正弦波前半周期部1は、鋸歯状波部Waの正の最大レベル(+Pm)から負の最大レベル(−Pm)への復帰直後において、上述した垂直走査機構30に固有の共振周波数(以下、共振周波数frともいう)の逆数である共振周期(図5にて符号Tb参照)の前半部に相当する時間で形成される。
【0064】
このことは、正弦波前半周期部1の期間は、上述した固有の共振周波数frの逆数である共振周期Tbの前半部に等しいことを意味する。
また、正弦波前半周期部1の最大レベルは、鋸歯状波部Waの振幅の半分の1.25倍に等しい(図4にて符号Ps参照)。従って、は、鋸歯状波Waの負の最大レベル(−Pm)への復帰直後に当該負の最大レベルから正弦波状に立ち上がって最大レベルPsとなり、この最大レベルから正弦波状に負の最大レベル(−Pm)に復帰する。
なお、鋸歯状波Waの負の最大レベル(−Pm)への復帰直後の当該負の最大レベルが、の始点に対応し、また、上述のように正弦波状に復帰した負の最大レベルが、の終点に対応する。
また、一定レベル部4は、上述した固有の共振周波数frの逆数である共振周期Tbの後半部の間、正弦波前半周期部1の負の最大レベル(−Pm)への復帰直後から負の最大レベル(−Pm)に等しいレベルを維持するように形成される。
【0065】
以上のように垂直走査波Wを構成することで、反射板34は、鋸歯状波のレベル上昇に円滑に追随しかつ乱れることなく負の最大揺動角に復帰する。
【0066】
次に、上述のように構成した垂直走査波Wを用いてデジタル垂直走査波データを形成するにあたっては、垂直走査波Wを、例えば、図5にて示すごとく、0〜255に量子化する。なお、サンプリング数nは、0〜255の量子化にあわせて設定する。
【0067】
本実施形態では、当該垂直走査波Wをn個のサンプリングタイミングt1・・、ti、・・、tm、・・、tnにてサンプリングする(図5及び図6参照)。このことは、垂直走査波Wの周期Tをn個の期間Δtに分割し、Δtの期間毎に垂直走査波Wをサンプリングすることを意味する。ここで、上述の期間Δtは、Δt=tk−(tk−1)で表される。但し、nは定数であり、また、k=1、2、・・、nとする。
【0068】
具体的には、垂直走査波Wのうち鋸歯状波部Waが、図6の図表にて示すごとく、各サンプリングタイミングt0、t1、t2、ti−2、ti−1、tiにて、それぞれ、各サンプリングデータ0、ΔV、2ΔV、254ΔV、255ΔV、0としてサンプリングされる。
【0069】
また、補正波部Wbの周期に相当する共振周期Tbを4m(=n−i)個の期間Δtに分割すると共に、共振周波数frに対応する共振角周波数をωr=2πfrと表せば、当該垂直走査波Wの補正波部Wbのうちの正弦波前半周期部1が、図6の図表にて示すごとく、各サンプリングタイミングti、ti+1、ti+2、ti+m、ti+2m−2、ti+2m−1、ti+2mにて、それぞれ、各サンプリングデータ0、Asin(ωr・Δt)、Asin(ωr・2Δt)、Asin(ωr・mΔt)、Asin{ωr・2(m−1)Δt}、Asin{ωr・(2m−1)Δt}、Asin(ωr・2mΔt)としてサンプリングされる。
【0070】
ここで、例えば、上述したAsin(ωr・mΔt)において、4mが2πに対応することから、ωr・mΔt=π/2である。従って、Asin(ωr・mΔt)=Aが成立する。また、上述したAsin(ωr・2mΔt)は、ωr・2mΔt=πであることから、0である。つまり、正弦波の位相が0ラジアンからπラジアンまでの半周期に相当する波形である。
【0071】
また、当該垂直走査波Wの補正波部Wbのうちの一定レベル部2が、図6の図表にて示すごとく、各サンプリングタイミングti+2m、ti+2m+1、ti+4m−1、ti+4mにて、それぞれ、0としてサンプリングされる。なお、ti+4m=tnである。
このようにして、上述のようにサンプリングされたn個のサンプリングデータが、垂直走査波Wを表すデジタルデータ(上記デジタル垂直走査波データ)として形成される。
【0072】
このように形成したデジタル垂直走査波データは、マイクロコンピュータ70により読み出し可能にROM73にその各所定のアドレスにて予め記憶されている。
【0073】
また、信号処理装置Bは、デジタル−アナログ変換器80(以下、D−A変換器80という)、垂直走査波生成回路90及び垂直走査駆動回路100を備えている。D−A変換器80は、マイクロコンピュータ70のROM73の各所定のアドレスから順次読み出されるデジタル垂直走査波データを順次アナログ垂直走査波信号に変換して垂直走査波生成回路90に出力する。
【0074】
なお、ROM73の各所定のアドレスから順次読み出されるデジタル垂直走査波データを一旦RAM74に記憶させ、その後、RAM74から読み出すように構成してもよい。これによって、ROM73のプログラム実行を円滑にさせ、高速読み出しも可能となるため、高サンプル数による緻密な波形生成が可能となる。
【0075】
また、別途RAMを設けて、このRAMに、ROM73の各所定のアドレスから順次読み出されるデジタル垂直走査波データを記憶させ、その後、上述の別途設けたRAから読み出すようにしてもよい。
【0076】
垂直走査波生成回路90は、D−A変換器80から順次出力されるアナログ垂直走査波信号の振幅及び直流レベルを増幅器等で調整し、実際に垂直走査機構30を駆動する駆動垂直走査波信号を生成する。ここで、当該垂直走査波信号の波形(垂直走査波)は、鋸歯状波部Wa、正弦波前半周期部1及び一定レベル部2(図4参照)でもって構成されており、鋸歯状波部Waの振幅の中央レベルが、零レベルとなっている。
【0077】
垂直走査駆動回路100は、垂直走査波生成回路90からの垂直走査波信号を増幅処理し垂直走査駆動電圧として発生し垂直走査機構30に出力する。ここで、当該垂直走査駆動電圧は、上記垂直走査波信号の鋸歯状波部Wa、正弦波前半周期部1及び一定レベル部2を増幅処理して構成されている。従って、当該垂直走査駆動電圧の極性に応じた電流が垂直走査機構30の電磁コイル37に流れる。
【0078】
画像光形成装置Cは、青色レーザ駆動回路110a(以下、Bレーザ駆動回路110aともいう)、緑色レーザ駆動回路110b(以下、Gレーザ駆動回路110bともいう)及び赤色レーザ駆動回路110c(以下、Rレーザ駆動回路110cともいう)を備えている。
【0079】
Bレーザ駆動回路110aは、映像信号処理回路50からの青色駆動信号に基づき、青色レーザ120a(以下、Bレーザ120aともいう)において発光される青色レーザ光の光強度を変調するための駆動信号を生成してBレーザ120aに出力する。
【0080】
Gレーザ駆動回路110bは、映像信号処理回路50からの緑色駆動信号に基づき、緑色レーザ120b(以下、Gレーザ120bともいう)において発光される緑色レーザ光の光強度を変調するための駆動信号を生成してGレーザ120bに出力する。
【0081】
また、Rレーザ駆動回路110cは、映像信号処理回路50からの赤色駆動信号に基づき、赤色レーザ120c(以下、Rレーザ120cともいう)において発光される赤色レーザ光の光強度を変調するための駆動信号を生成してRレーザ120cに出力する。
【0082】
Bレーザ120aは、ビーム状の青色レーザ光を発光するレーザ発光部を備えており、このBレーザ120aは、そのレーザ発光部からの青色レーザ光を、Bレーザ駆動回路110aからの駆動信号に基づき強度変調し、ビーム状の青色レーザ強度変調光としてコリメートレンズ130aに出射する。
【0083】
Gレーザ120bは、ビーム状の緑色レーザ光を発光するレーザ発光部を備えており、このGレーザ120bは、そのレーザ発光部からの緑色レーザ光を、Gレーザ駆動回路110bからの駆動信号に基づき強度変調し、ビーム状の緑色レーザ強度変調光としてコリメートレンズ130bに出射する。
【0084】
また、Rレーザ120cは、ビーム状の赤色レーザ光を発光するレーザ発光部を備えており、このRレーザ120cは、そのレーザ発光部からの赤色レーザ光を、Rレーザ駆動回路110cからの駆動信号に基づき強度変調し、ビーム状の赤色レーザ強度変調光としてコリメートレンズ130cに出射する。
【0085】
コリメートレンズ130aは、Bレーザ120aからの青色レーザ強度変調光をコリメートしビーム状の青色のコリメート画像光としてダイクロイックミラー140aに出射する。コリメートレンズ130bは、Gレーザ120bからの緑色レーザ強度変調光をコリメートしビーム状の緑色のコリメート画像光としてダイクロイックミラー140bに出射する。コリメートレンズ130cは、Rレーザ120cからの赤色レーザ変調光をコリメートしビーム状の赤色のコリメート画像光としてダイクロイックミラー140cに出射する。
【0086】
ダイクロイックミラー140cは、コリメートレンズ130cからの赤色のコリメート画像光をダイクロイックミラー140bに向けてビーム状に反射する。ダイクロイックミラー140bは、コリメートレンズ130bからの緑色のコリメート画像光及びダイクロイックミラー140cからの赤色のコリメート画像光を合波し合波画像光としてダイクロイックミラー140aに向けてビーム状に反射する。
【0087】
ダイクロイックミラー140aは、コリメートレンズ130aからの青色のコリメート画像光及びダイクロイックミラー140bからの合波画像光を合波し合波画像光として結合光学系150に向けてビーム状に反射する。
【0088】
結合光学系150は、ダイクロイックミラー140aを光ファイバー160にその入射端部にて光学的に結合させるもので、この結合光学系150は、ダイクロイックミラー140aからの合波画像光を収束させて光ファイバー160にその入射端部から入射させる。なお、本第1実施形態では、結合光学系150は、凸レンズでもって構成されている。
【0089】
光ファイバー160は、結合光学系150からの画像光を導光し、コリメートレンズ170に向けてビーム状に出射する。
【0090】
当該コリメートレンズ170は、光ファイバー160からの出射画像光をコリメートしビーム状のコリメート画像光として光走査装置Aの水平走査機構10に向けて出射する。
【0091】
以上のように構成した本実施形態において、当該画像表示装置が作動状態におかれるものとする。すると、信号処理装置Bにおいて、映像信号処理回路50が、上述したように、水平同期信号及び垂直同期信号をそれぞれ順次発生するとともに、外部からの2次元状の画像を表わす映像信号に基づき、青色、緑色及び赤色の各駆動信号を発生する。
【0092】
上述のように映像信号処理回路50が水平同期信号を順次発生すると、水平走査駆動回路60が、順次、水平走査駆動電圧を発生し水平走査機構10に出力する。このため、当該水平走査機構10は、水平走査駆動回路60から順次出力される水平走査駆動電圧により駆動されて水平走査状態におかれる。
【0093】
また、上述のように映像信号処理回路50が垂直同期信号を順次発生すると、これら各垂直同期信号は順次マイクロコンピュータ70に出力される。すると、映像信号処理回路50からの垂直同期信号の出力毎に、当該マイクロヒータ70は、CPU72により、上記所定のプログラムの実行のもと、ROM73の所定の各アドレスから上記デジタル垂直走査波データを読み出してD−A変換器80に出力する。
【0094】
これに伴い、このD−A変換器80は、マイクロコンピュータ70からの上記デジタル垂直走査波データの出力毎に、このデジタル垂直走査波データをアナログ垂直走査波信号に変換して垂直走査波生成回路90に出力する。
【0095】
しかして、この垂直走査波生成回路90は、D−A変換器80からのアナログ垂直走査波信号の出力毎に、このアナログ垂直走査波信号を、時間の経過に伴い上記掃引電圧により掃引して垂直走査波信号を生成し垂直走査駆動回路100に出力する。このため、当該垂直走査駆動回路100は、垂直走査波生成回路90からの垂直走査波信号の発生毎に、この垂直走査波信号を増幅処理し垂直走査駆動電圧として垂直走査機構30に出力する。
【0096】
すると、このように垂直走査駆動電圧が垂直走査機構30に出力される毎に、この垂直走査機構30においては、当該垂直走査駆動電圧が電磁コイル37にその内端側接続端子37d或いは外端側接続端子37eから印加される。
【0097】
ここで、垂直走査駆動電圧、即ち、垂直走査波信号の鋸歯状波部Waが負のときには、一例として、電磁コイル37の内端側接続端子37dの電位が負となり、電磁コイル37の外端側接続端子37eの電位は接地電位とする。このため、電磁コイル37には、垂直走査駆動電圧のうち鋸歯状波部Waに基づく電流は、外端側接続端子37eからコイル本体37aを通り内端側接続端子37dに流れる。なお、外端側接続端子37eに代えて、内端側接続端子37dの電位を接地電位としてもよい。
【0098】
従って、コイル本体37aにおいては、電流が、各コイル辺部37bには図3にて図示左側から右側に向けて流れ、一方、各コイル辺部37cには図3にて図示右側から左側に向けて流れる。このため、各コイル辺部37bに流れる電流及び各コイル辺部37cに流れる電流は、磁石38のN極から磁石39のS極に向かう磁界との間において、フレミングの左手の法則に従い、反射板34を矢印R1方向(図2参照)に揺動させるように磁力を発生する。
【0099】
また、垂直走査駆動電圧、即ち、垂直走査波信号の鋸歯状波部Waが正のときには、電磁コイル37の内端側接続端子37dの電位が正となり、電磁コイル37の外端側接続端子37eの電位が接地電位となる。このため、電磁コイル37には、垂直走査駆動電圧のうち鋸歯状波部Waに基づく電流は、内端側接続端子37dからコイル本体37aを通り外端側接続端子37eに流れる。
【0100】
従って、コイル本体37aにおいては、電流が、各コイル辺部37bには図3にて図示右側から左側に向けて流れ、一方、各コイル辺部37cには図3にて図示左側から右側に向けて流れる。このため、各コイル辺部37bに流れる電流及び各コイル辺部37cに流れる電流は、磁石38のN極から磁石39のS極に向かう磁界との間において、フレミングの左手の法則に従い、反射板34を矢印R2方向(図2参照)に揺動させるように磁力を発生する。
【0101】
以上のように、垂直走査波信号が、その鋸歯状波部Waにて、この鋸歯状波部Waの周期毎に、負及び正に交互に交流的に変化することで、反射板34は、矢印R1及び矢印R2の各方向に交互に揺動する。
【0102】
ここで、このような揺動過程においては、垂直走査波信号の鋸歯状波部Waが正の最大レベル(+Pm)から負の最大レベル(−Pm)に瞬時に復帰する毎に、反射ミラー34は反動を生じ、上記固有の共振周波数に基づき共振しようとする。
【0103】
しかし、上述したごとく、垂直走査波信号は、鋸歯状波部Waのほかに、補正波部Wbである正弦波前半周期部1及び一定レベル部2をも有するように構成されている。このため、反射板34が上述のように共振しようとしても、正弦波前半周期部1が、垂直走査波信号の鋸歯状波部Waの負の最大レベル(−Pm)への復帰時に抑制するように作用する。そして、このような抑制作用後において、一定レベル部2が、さらに反射板34に対しその共振を抑制するように作用する。換言すれば、補正波部Wbの周期Tbは、反射板34の共振を抑制するための共振補正期間としての意義を有する。
【0104】
従って、反射板34は、垂直走査波信号Wの鋸歯状波部Waの負の最大レベル(−Pm)への復帰の際に生じがちな反射板34の共振が確実にタイミングよく抑制される。その結果、反射板34は、図7にて符号3aにより示すごとく、垂直走査波信号の周期T毎に、共振することなく、円滑に負の最大揺動角(鋸歯状波部Waの負の最大レベル(−Pm)に対応)に復帰し得る。これにより、垂直走査機構30は、共振することなく、良好な垂直走査状態におかれる。なお、図7において、符号3は、垂直走査波信号Wのレベル変化に伴う反射板34の揺動角の変化を波形で示す。また、上述した符号3aは、波形3のいうち、反射板34の負の最大揺動角への復帰過程を、波形で示す。
【0105】
また、上述のように、映像信号処理回路50が外部からの2次元状の画像を表わす映像信号に基づき、青色、緑色及び赤色の各駆動信号を発生すると、画像光形成装置Cにおいて、各レーザ駆動回路110a、110b、110cは、各レーザ120a、120b、120cの各レーザ発光部からのレーザ光の光強度を変調するように各レーザ120a、120b、120cを駆動する。
【0106】
これに伴い、各レーザ120a、120b、120cは、各レーザ光を強度変調してビーム状のレーザ強度変調画像光として各コリメートレンズ130a、130b、130cに出射する。すると、各コリメートレンズ130a、130b、130cが、各レーザ強度変調画像光をコリメートして各コリメート画像光として各ダイクロイックミラー140a、140b、140cに出射する。
【0107】
このように出射されると、ダイクロイックミラー140cは、コリメートレンズ130cからのコリメート画像光をダイクロイックミラー140bに向けて反射し、このダイクロイックミラー140bは、コリメートレンズ130bからのコリメート画像光及びダイクロイックミラー140cからの反射画像光を合波してダイクロイックミラー140aに向けて反射する。
【0108】
これに伴い、このダイクロイックミラー140aは、コリメートレンズ130aからのコリメート画像光及びダイクロイックミラー140bからの合波画像光を合波し、合波画像光として結合光学系150に向けて出射する。すると、この結合画像系150は、ダイクロイックミラー140aからの合波画像光を収束させて光ファイバー160を通しコリメートレンズ170に入射する。このため、当該コリメートレンズ170は、その入射画像光をコリメートしてコリメート画像光として光走査装置Aの水平走査機構10に向けて出射する。
【0109】
このとき、水平走査機構10は、上述のように水平走査状態にあるため、コリメートレンズ170からのコリメート画像光は、水平走査機構10により水平走査され、水平走査画像光としてリレー光学系20に向けて反射される。これに伴い、当該水平走査画像光は、リレー光学系20により、収束されて垂直走査機構30に向けて出射される。
【0110】
このとき、垂直走査機構30は上述のごとく垂直走査状態にあるため、リレー光学系20からの水平走査画像光は、垂直走査機構30により、垂直走査されて垂直走査画像光としてリレー光学系40に向けて反射される。
【0111】
ここで、垂直走査機構30の反射板34は、図7の波形3にて示すごとく、円滑に揺動するため、リレー光学系20からの水平走査画像光は、垂直走査機構30により、適正に垂直走査されて、垂直走査画像光としてリレー光学系40に向けて反射される。
【0112】
このように反射される当該垂直走査画像光は、リレー光学系40により収束されて、左眼Iの瞳孔Iaに向けて出射され、左眼Iの網膜Ibに良好な2次元状の画像として表示され得る。
【0113】
ちなみに、上述した垂直走査波信号において正弦波前半周期部1の最大レベルの適正な範囲について調べてみた。これによれば、正弦波前半周期部1の最大レベルPsを、鋸歯状波部Waの最大値と最小値との差の半分とした場合には、反射板34が、図8にて符号4で示すごとく、脈動しながら鋸歯状波部Waの値の変化に追随して揺動することが分かった。
【0114】
また、正弦波前半周期部1の最大レベルPsを、鋸歯状波部Waの最大値と最小値との
差の半分のA倍とした場合には、反射板34が、図7にて符号3で示すごとく、脈動することなく鋸歯状波部Waのレベルの変化に良好に追随して揺動することが分かった。なお、上述のAは鋸歯状波部Waの波形に基づいて決まる定数である。
【0115】
さらに、共振周波数の異なる垂直走査機構或いは周波数が同一であっても構成の異なる垂直走査機構の場合、正弦波前半周期部1の最大レベルPsが、鋸歯状波部Waの最大値と最小値との差の半分のレベルと当該振幅の最大レベルとの間のレベルに相当範囲で、反射板34が、鋸歯状波部Waのレベルの変化にほぼ良好に追随して揺動する条件があることも分かった。
【0116】
従って、好ましくは、正弦波前半周期部1の最大レベルPsは、鋸歯状波部Waの最大値と最小値との差の半分のA倍であることが望ましいが、鋸歯状波部Waの最大値と最小値との差の半分のレベルと当該振幅の最大レベルとの間のレベルに相当するレベルであれば実用上支障はない。
【0117】
次に、上述した垂直走査駆動電圧、即ち垂直走査波信号における鋸歯状波部Waの周波数の適正な範囲について調べてみた。これによれば、鋸歯状波部Waの周波数を100(Hz)とした場合には、図9にて示す結果が得られた。また、鋸歯状波部Waの周波数を200(Hz)とした場合には、図10にて示す結果が得られた。
【0118】
これら図9及び図10にて示す結果では、反射板34の揺動角は、図9及び図10にて符号5及び符号6で示すごとく、鋸歯状波部Waのレベルに円滑に追随して変化することが分かる。なお、鋸歯状波部Waの周波数をさらに変更して調べてみたところ、同様に、反射板34の揺動角は鋸歯状波部Waのレベルに円滑に追随して変化することが分かった。
【0119】
次に、垂直走査機構30の共振周波数をパラメータとして、鋸歯状波形成範囲と鋸歯状波部Waの周波数との関係について調べてみた。これによれば、図11にて示すような各グラフa〜hが得られた。
【0120】
ここで、グラフa、グラフb及びグラフcは、それぞれ、垂直走査機構30の共振周波数を、100(Hz)、300(Hz)及び500(Hz)とした場合の鋸歯状波形成範囲と鋸歯状波部Waの周波数との関係を示す。
【0121】
また、グラフd、グラフe、グラフf、グラフg及びグラフhは、それぞれ、垂直走査機構30の共振周波数を、1(kHz)、1.5(kHz)、2(kHz)、2.5(kHz)及び3(kHz)とした場合の鋸歯状波形成範囲と鋸歯状波部Waの周波数との関係を示す。
【0122】
これら各グラフa〜hによれば、鋸歯状波部Waの周波数の適正範囲を30(Hz)〜100(Hz)の範囲とした場合、鋸歯状波形成範囲を80(%)以上にするには、垂直走査機構30の共振周波数は300(Hz)以上であることが望ましいことが分かる。
【0123】
また、垂直走査機構30の垂直走査を上記垂直走査駆動電圧で行う場合と正弦波電圧で行う場合と対比してみると、反射板30の反射面から反射される光の走査速度が一定になっている領域(時間)は、300Hzの垂直走査機構で1回の走査時間中、約80%の時間がとれるが、正弦波駆動では、等速走査と近似できる領域はあるものの、全走査時間のごく一部である。鋸歯状波部Waの直線範囲は正弦波電圧の直線範囲よりもかなり広く、従って、垂直走査の有効範囲もかなり広くなる。
【0124】
ここで、本実施形態では、上記垂直走査駆動電圧でもって垂直走査を行うため、反射板34は、上述のごとく、鋸歯状波部Waのレベル変化に追随して円滑に揺動する。その結果、上述した垂直走査の有効範囲は、良好な垂直走査のもとに、かなり広く確保し得る。
【0125】
また、本実施形態では、垂直走査が垂直走査波信号の鋸歯状波部でもってなされるため、広い範囲に亘り均等性に優れる。従って、正弦波で駆動して、sin-1Θ補正を行うことは不要となる。
【0126】
なお、本発明の実施にあたり、上記実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記実施形態における当該画像表示装置は、使用者の左眼用のものとして使用されることに限らず、使用者の右眼用のものとして使用してもよい。
(2)補正波部Wbは、正弦波前半周期部1に代えて、台形波部、三角波部或いは矩形波部を採用しても、上記実施形態と同様の作用効果が達成され得る。
(3)補正波部Wbの一定レベル部2は、鋸歯状波部Waの負の最大レベル(−Pm)に限ることなく、適宜なレベルに変更してもよい。
(4)網膜走査型画像表示装置に限らず、光走査型表示装置であれば、どのような表示装置に本発明を適用してもよい。
(5)垂直走査機構30に代えて、水平走査機構10による水平走査に本発明を適用してもよい。
(6)垂直走査機構30の温度を検出する温度センサを設けて、マイクロコンピュータ70によりCPU72でもって、上記温度センサによる検出温度に基づき垂直走査機構30に固有の共振周波数を補正し、この補正共振周波数に基づき上記デジタル垂直走査波データのうち補正波部Wbに対応するデータ部を補正してD−A変換器80に出力するようにしてもよい。
【0127】
これによれば、上記垂直走査波のうちの補正波部Wbの波形が垂直走査機構30の温度に基づき補正されることとなり、その結果、垂直走査機構30による垂直走査がより一層精度よくなされ得る。
(7)上述した一定レベル部2は、緩やかにレベル変化する等のほぼ一定レベル部であればよい。
(8)上述した垂直走査波信号の波形、即ち垂直走査波は、上下反転した波形であっても、上記実施形態と同様の作用効果が達成され得る。
(9)磁石38或いは39の高さや長さは、反射板34の板厚や幅に一致するのではなく、当該反射板34の板厚や幅よりも大きくても小さくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明が適用される網膜走査型画像表示装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1の垂直走査機構の拡大斜視図である。
【図3】図2の垂直走査機構のうち反射板、両梁部材及び両磁石を裏面側からみた図である。
【図4】上記実施形態における垂直走査波の構成を示す図である。
【図5】上記実施形態における垂直走査波の量子化のための説明図である。
【図6】上記実施形態における垂直走査波のサンプリングタイミング及びサンプリングデータを示す図表である。
【図7】上記実施形態の垂直走査機構における垂直走査波信号の波形及び反射板の揺動特性を示す波形図である。
【図8】上記実施形態における垂直走査機構の垂直走査波信号の波形及び反射板の揺動特性を、正弦波前半周期部の最大レベルを鋸歯状波部の振幅の半分として示す波形図である。
【図9】上記実施形態における垂直走査機構の垂直走査波信号の波形及び反射板の揺動特性を、鋸歯状波部の周波数を100(Hz)として示す波形図である。
【図10】上記実施形態における垂直走査機構の垂直走査波信号の波形及び反射板の揺動特性を、鋸歯状波部の周波数を200(Hz)として示す波形図である。
【図11】鋸歯状波範囲と鋸歯状波部の周波数との間の関係を、共振周波数をパラメータとして示すグラフである。
【符号の説明】
【0129】
1、2、10…水平走査機構、11、34…反射板、30…垂直走査機構、
31…基板、32…板枠、34a…裏面、34d…表面、35、36…梁部材、
37…電磁コイル、38、39…磁石、50…映像信号処理回路、
60…水平走査駆動回路、70…マイクロコンピュータ、80…D−A変換器、
90…垂直走査波生成回路、100…垂直走査駆動回路、A…光走査装置、
B…信号処理装置、C…画像光形成装置、Wa…鋸歯状波部、Wb…補正波部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止部材に弾性梁部材を介し揺動可能に支持される揺動部材を有してなる走査素子と、
所定周期にて走査信号を発生する走査信号発生手段と、
前記走査信号に基づき前記走査素子をその揺動部材にて揺動するように駆動する駆動手段とを備えて、
前記走査素子が、前記揺動部材に入射する光を、当該揺動部材によりその揺動に応じて走査するようにした光走査装置において、
前記走査信号発生手段は、前記所定周期のうち前側期間にて形成される鋸歯状波部と、前記所定周期のうち後側期間にて前記走査素子の固有の共振周波数に基づき形成される補正波部とでもって、前記走査信号を構成して発生するようにしたことを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記走査信号発生手段は、前記前側期間を、前記揺動部材に入射する光を走査する期間とし、前記後側期間を、前記揺動部材を前記光の走査開始揺動位置に戻す期間として、前記鋸歯状波部及び補正波部でもって、前記走査信号を構成して発生することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記後側期間は前記走査素子の前記固有の共振周波数に対する共振周期に相当する期間であり、
前記補正波部は、前記共振周期に相当する期間に形成されていることを特徴とする請求項1或いは2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記補正波部は、前記後側期間のうち、その前半期間部及び後半期間部にて、それぞれ、正弦波の前半周期部及び略一定レベル部でもって構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の光走査装置。
【請求項5】
前記正弦波の前半周期部は、その最大レベルにて、前記鋸歯状波部の最大値と最小値との差の0.5倍〜1.0倍の範囲以内のレベルに設定されており、
前記鋸歯状波部の始点部及び終点部は、前記正弦波の前半周期部の始点部及び終点部並びに前記略一定レベル部と共に、同一のレベルに設定されていることを特徴とする請求項4に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記揺動部材は、前記光を入射させる一側面を有する揺動板であり、
前記駆動手段は、磁石と、前記揺動板の他側面に設けられて前記走査信号に基づき前記揺動板を揺動させるように前記磁石との間で磁界を形成する電磁コイルとを備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の光走査装置。
【請求項7】
前記走査素子の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段の検出温度に基づき前記固有の共振周波数を補正する補正手段とを備えて、
前記走査信号発生手段は、前記補正手段によって補正された前記固有の共振周波数に基づき前記補正波部を形成するようにしたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの記載の光走査装置。
【請求項8】
画像を画像光でもって出射する画像光出射手段と、
この画像光出射手段からの出射画像光を入射されて2次元的に走査して2次元走査光を出射する走査手段とを備えて、
この走査手段からの2次元走査光に基づき前記画像を表示するようにした光走査型表示装置において、
前記走査手段は、前記画像光出射手段からの出射画像光を水平走査し水平走査光として出射する水平走査手段と、この水平走査手段からの水平走査光を垂直走査して前記2次元走査光として出射する垂直走査手段とを備えて、
前記水平走査手段及び垂直走査手段の双方のうちの少なくとも一方が、請求項1〜7のいずれか1つに記載の光走査装置でもって構成されていることを特徴とする光走査型表示装置。
【請求項9】
静止部材に弾性梁部材を介し揺動可能に支持される揺動部材を備えた走査素子でもって、走査信号に応じた前記揺動部材の揺動により、当該揺動部材への入射光を走査する光走査方法において、
前記走査信号は、前記所定周期のうち前側期間にて形成される鋸歯状波部と、前記所定周期のうち後側期間にて前記走査素子の固有の共振周波数に基づき形成される補正波部とでもって構成されることを特徴とする光走査方法。
【請求項1】
静止部材に弾性梁部材を介し揺動可能に支持される揺動部材を有してなる走査素子と、
所定周期にて走査信号を発生する走査信号発生手段と、
前記走査信号に基づき前記走査素子をその揺動部材にて揺動するように駆動する駆動手段とを備えて、
前記走査素子が、前記揺動部材に入射する光を、当該揺動部材によりその揺動に応じて走査するようにした光走査装置において、
前記走査信号発生手段は、前記所定周期のうち前側期間にて形成される鋸歯状波部と、前記所定周期のうち後側期間にて前記走査素子の固有の共振周波数に基づき形成される補正波部とでもって、前記走査信号を構成して発生するようにしたことを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記走査信号発生手段は、前記前側期間を、前記揺動部材に入射する光を走査する期間とし、前記後側期間を、前記揺動部材を前記光の走査開始揺動位置に戻す期間として、前記鋸歯状波部及び補正波部でもって、前記走査信号を構成して発生することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記後側期間は前記走査素子の前記固有の共振周波数に対する共振周期に相当する期間であり、
前記補正波部は、前記共振周期に相当する期間に形成されていることを特徴とする請求項1或いは2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記補正波部は、前記後側期間のうち、その前半期間部及び後半期間部にて、それぞれ、正弦波の前半周期部及び略一定レベル部でもって構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の光走査装置。
【請求項5】
前記正弦波の前半周期部は、その最大レベルにて、前記鋸歯状波部の最大値と最小値との差の0.5倍〜1.0倍の範囲以内のレベルに設定されており、
前記鋸歯状波部の始点部及び終点部は、前記正弦波の前半周期部の始点部及び終点部並びに前記略一定レベル部と共に、同一のレベルに設定されていることを特徴とする請求項4に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記揺動部材は、前記光を入射させる一側面を有する揺動板であり、
前記駆動手段は、磁石と、前記揺動板の他側面に設けられて前記走査信号に基づき前記揺動板を揺動させるように前記磁石との間で磁界を形成する電磁コイルとを備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の光走査装置。
【請求項7】
前記走査素子の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段の検出温度に基づき前記固有の共振周波数を補正する補正手段とを備えて、
前記走査信号発生手段は、前記補正手段によって補正された前記固有の共振周波数に基づき前記補正波部を形成するようにしたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの記載の光走査装置。
【請求項8】
画像を画像光でもって出射する画像光出射手段と、
この画像光出射手段からの出射画像光を入射されて2次元的に走査して2次元走査光を出射する走査手段とを備えて、
この走査手段からの2次元走査光に基づき前記画像を表示するようにした光走査型表示装置において、
前記走査手段は、前記画像光出射手段からの出射画像光を水平走査し水平走査光として出射する水平走査手段と、この水平走査手段からの水平走査光を垂直走査して前記2次元走査光として出射する垂直走査手段とを備えて、
前記水平走査手段及び垂直走査手段の双方のうちの少なくとも一方が、請求項1〜7のいずれか1つに記載の光走査装置でもって構成されていることを特徴とする光走査型表示装置。
【請求項9】
静止部材に弾性梁部材を介し揺動可能に支持される揺動部材を備えた走査素子でもって、走査信号に応じた前記揺動部材の揺動により、当該揺動部材への入射光を走査する光走査方法において、
前記走査信号は、前記所定周期のうち前側期間にて形成される鋸歯状波部と、前記所定周期のうち後側期間にて前記走査素子の固有の共振周波数に基づき形成される補正波部とでもって構成されることを特徴とする光走査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−276399(P2006−276399A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−94672(P2005−94672)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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