説明

光輝性軽合金ホイール

【課題】 金属薄膜層形成前の歩留まりの低下、および塗装の手直しが容易かつ安価にできる光輝性軽合金ホイールを提供する。
【解決手段】 下地層と、金属薄膜層と、前記金属薄膜層の上にクリアー層が形成された光輝性軽合金ホイールであって、前記下地層と金属薄膜層の間に中間層が形成されていることを特徴とする光輝性軽合金ホイールを用いる。中間層は、5μm以上100μm以下の厚さで形成し、また、顔料を含まない塗料を用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属調の光輝性塗装が施された、アルミニウム合金などを基体とする光輝性軽合金ホイールに関するものであり、特に鋳肌部分に光輝性塗装を施すものである。
【背景技術】
【0002】
自動車(例えば乗用車)部品である軽合金ホイールでは、高質感をもった外観を呈するようにするために、基体の表面に多層からなる塗装が施される。近年、さらに高質感を高めるために、金属の研摩面を連想させる金属調シルバー塗装(光輝性塗装)を施すものが製造されている。この光輝性シルバー塗装では、従来のシルバーメタリック系のぎらぎらした粒子感を感じさせない高い緻密感と、視覚の方向によって大きな陰影感を与える金属調塗装が要求されており、このような光輝性塗膜を実現するために、種々の提案がなされている。金属調シルバー塗装は、一般的に、下地層の上に金属フレークを含んだ溶剤または水性めっき調コートを形成するものが殆どであるが、さらに光輝性を出すために、下地層の上に蒸着などによる金属薄膜を形成するものもある。
【0003】
蒸着などによる金属薄膜を形成する金属調シルバー塗装として、特許文献1には、被覆材の表面に、ポリエステル、アクリル、エポキシ系の粉体樹脂塗膜を20〜200μmの厚さで設け、その上にポリエステル樹脂を主材とした熱硬化性樹脂による10〜40μmのアンダーコート層を設け、その上にチタン合金薄膜を設け、その上に透明樹脂塗膜を設けた4層の塗膜材料が記載され、被覆する対象としてアルミホイールを用いることが記載されている。
【特許文献1】特開2002−219771号公報((0019)〜(0021)、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属薄膜層を有する光輝性軽合金ホイールは、通常、真空蒸着装置やスパッタリング装置を用いて薄さ1μm以下の金属薄膜層が形成される。しかしながら、この金属薄膜層は、下地層や、トップクリア層などよりもコストがかかる。よって、光輝性軽合金ホイールの外観不良が、金属薄膜層の形成後に見つかった場合、手直しした後に再度金属薄膜層を形成しなければならないため、非常にコストが高くなる。
外観不良は下地層を原因とするものが多い。下地層を塗装した時点で一度検査を行うと、全体のホイールの不良の中で、下地層を原因とする外観不良の発生分がなくなり、その分高価なメタリック塗料の再塗装が不要になる。下地層を原因とする外観不良とは、鋳肌の凹凸が下地層の表面に表れてしまうものである。この手直しとして、研磨機もしくはサンドペーパーなどを用いた手作業で、下地層表面の凹凸を平滑にする作業が行われる。しかし、研磨によってホイール基体が露出したり、下地層が多層の場合は下層部が露出したりすることがあり、その場合は、再度下地層の塗装をやり直す必要があった。
【0005】
本発明は上記の問題を解決し、金属薄膜層を形成する前の歩留まりの低下を防止し、また、手直しをしても下地層の再塗装が不要な光輝性軽合金ホイールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明の光輝性軽合金ホイールは、下地層と、金属薄膜層と、前記金属薄膜層の上にクリアー層が形成された光輝性軽合金ホイールであって、前記下地層と金属薄膜層の間に中間層が形成されていることを特徴とする。前記下地層は、プライマー層および/もしくはカラーベース層からなるものが適用できる。防錆機能を高めるために、6価クロム添加の溶剤プライマーと、粉体プライマ-と、カラーベース層からなる下地層としても良い。
【0007】
本発明の光輝性軽合金ホイールは、前記中間層は、5μm以上100μm以下の厚さで形成されていることが好ましい。ここで中間層とは、中間層の上下面に接する層とは異なる成分からなる層を指す。
【0008】
また、本発明の光輝性軽合金ホイールは、前記中間層は、顔料を含まない透明な樹脂層を用いることが好ましい。
【0009】
また、本発明の光輝性軽合金ホイールは、前記中間層は、前記クリアー層と同種、さらには同じ塗料を用いることが好ましい。
【0010】
また、本発明の光輝性軽合金ホイールは、前記下地層は、基体の表面に形成されたプライマー層と、前記プライマー層の上に形成されたカラーベース層からなることが好ましい。
【0011】
また、本発明の光輝性軽合金ホイールの金属薄膜層は、金属の蒸着膜であることが外観的に好ましい。
【0012】
また、本発明の光輝性軽合金ホイールは、前記プライマー層はエポキシ系粉体塗料またはエポキシポリエステル系粉体塗料からなることが好ましい。
【0013】
また、本発明の光輝性軽合金ホイールは、鋳肌部分に塗装を施したものが好ましい。
【0014】
本発明の光輝性軽合金ホイールは、下地層と金属薄膜層の間に中間層が形成されている。そのため、中間層が形成された状態で外観検査および表面の研磨を行っても、研磨による傷が下地層に届きにくい。これによって手直しによる下地層の再塗装が不要となり、手間とコストが低減される。また、中間層を入れることにより中間層表面が平滑化され、下地層の凹凸による外観不良の発生が少なくなるという効果もある。
【0015】
手直しの研磨による傷から下地層を守るため、この中間層の厚さは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上設けるとよい。全体の膜厚が厚くなりすぎないように、中間層の厚さは100μm以下とすることが好ましい。また、光輝性を出すために、塗膜表面から入った光は金属薄膜層を通過し、その後下地層で反射され、再度金属薄膜層を通過して塗膜表面から出て行かなくてはならない。このため、下地層と金属薄膜層の間に形成される中間層は、透明性の樹脂層であることが好ましい。完全な透明であってもよいし、若干顔料を含む半透明のものでもよい。顔料は樹脂層の耐候性、耐食性、耐薬品性などを悪化させる要因になる。中間層に顔料を用いないことで、従来の4層塗膜の光輝性軽合金ホイールで下地層を厚く塗ったものに比べ、耐候性、耐食性、耐薬品性の点でよりよい効果が得られた光輝性軽合金ホイールを得ることができる。
【0016】
この中間層として用いられる透明性の樹脂層は、金属薄膜層の上に形成されるクリアー塗料と同種なもの、さらには同じものを使用することが好ましい。同一の塗料を用いることで、製造管理が容易になる、新たな設備が不要になる、同一の塗料を倍使用することになり購入コストが下げられる、などのメリットが得られる。
【0017】
下地層は、例えば、基体の表面に形成されたプライマー層と、前記プライマー層の上に形成されたカラーベース層からなるものが採用できる。この他、カラーベース層のみからなるものも適用できるし、カラー系のプライマー層のみを下地層とすることもできる。光輝性を施すために、下地層は黒色や紺色系の濃彩色とすることが好ましい。よって、下地層が単層であれ多層であれ、下地層の最上層となる層は濃彩色系の塗料を用いることが好ましい。本発明の光輝性軽合金ホイールは、2次的な効果として、外観性を長期保護する効果がある。ユーザーが洗浄の際に使用する洗浄剤の中にはフッ酸が入っているものが有り、このフッ酸がクリアー層、金属薄膜層を介して下地層の濃彩色系まで到達すると、ホイールの色調が部分的に濃くなることがある。中間層はこのフッ酸の下地層までの侵入を防ぐ役目を持つ。また、中間層は顔料を含まない透明性の樹脂の方が耐薬品性に強いので、この効果がさらに得やすい。
下地層を有色プライマーの一層とした時は、プライマー層が厚く形成されるので、手直しによるホイール基体が露出する可能性は低い。しかし、下地層をプライマー層とカラーベース層とした時は、カラーベース層が薄いため、下のプライマー層が露出してしまうことが多く、再塗装の発生する頻度はより高い。そのため、プライマー層とカラーベース層の下地層の上に中間層を形成する場合には、歩留まりを低減させる効果がさらに得やすい。
下地層が多層の場合、プライマー層とは30μ以上の厚い塗料とし、カラーベース層はプライマー層よりも薄く顔料を含む層を指すものとする。カラーベース塗料には金属粒子を含むものでもよいが、この金属粒子は塗膜体積に対して20%以下とする。
【0018】
また、プライマー層はエポキシ系粉体塗料またはエポキシポリエステル系粉体塗料などを採用できる。エポキシポリエステル系粉体塗料でプライマー層を形成し、アクリル系カラーコート層をその上に形成することで、耐候性、密着性の良好な塗膜が形成できる。
【0019】
また、本発明の光輝性軽合金ホイールは、鋳肌部分に塗装を施すことが好ましい。鋳肌の凹凸が有っても、本発明の光輝性軽合金ホイールであれば、中間層が凹凸を少なくする効果を持ち、歩留まりが向上してコストが低減されるという効果が十分に発揮される。本発明の光輝性軽合金ホイールに用いられるホイール基体は、低圧鋳造さらには一体型鋳造によるものが好ましい。
【0020】
本発明の軽合金ホイールは、一般的な3層塗装の塗装設備内を2回くり返して搬送往復させられるため、中間層とクリアー層には同じ塗料を使用することで品質管理が容易に行える。
【0021】
軽合金ホイールの基体(軽合金素材)表面は、プライマー層を設ける前に前処理が施される。この前処理には、一般に、脱脂と酸洗を行い、その後化成処理が施される。化成処理液として一般的にはクロム酸クロムやリン酸クロムを用いたクロメート処理が適用されるが、環境保護の観点からノンクロムの化成処理液として、Ti酸やZr酸を用いたものが使用される。
【0022】
プライマー塗料は、ポリエステル系、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系の樹脂を使用できる。水酸基の配向による金属への密着性の良好なエポキシ系粉体塗料(グリシジルエーテル型(例えばビスフェノールA型)、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、環状オキシラン型エポキシ樹脂を主体とする)を用いることが好ましい。架橋剤や、必要により顔料、硬化剤、表面調整剤などが用いられる。
エポキシ系粉体塗料としては、価格及び基体との密着性の点から、特に、酸末端ポリエステル樹脂を硬化剤とするグルシジル基/カルボキシル基架橋型エポキシ樹脂からなり、固形分濃度が高い(40〜60質量%)エポキシ・ポリエステル系粉体塗料が好ましい。エポキシ・ポリエステル/ハイブリッド系粉体塗料を、150〜180℃の温度で、10〜30分間焼付けることにより、平滑でかつ強固な高分子架橋塗膜が形成される。プライマー層の膜厚は、上記のように軽合金ホイールの鋳肌の凹凸を隠す必要がある場合、40〜200μm程度の厚さで形成される。塗膜装置には静電塗装装置が一般的に用いられる。また、下地層としてプライマー単層とする場合は、濃彩色系のものを用いる。
【0023】
本発明において、カラーベース塗料とは顔料を含んだ有色の塗料を指す。カラーベース塗料として、例えばアクリル、ポリエステル、エポキシ樹脂等からなり溶剤を含むものがある。プライマー層にエポキシ−ポリエステル系のハイブリット粉体塗料を用いた場合、熱硬化性のアクリル樹脂系着色塗料を用いることが好ましい。アクリル樹脂や硬化剤、顔料などを有機溶剤に溶解もしくは分散してなる熱硬化性塗料が好ましい。環境保護のために有機溶剤の割合が少ないハイソリッド系のものが好ましく、例えばアクリル樹脂と硬化剤、顔料などがvol%で全体の50%以上のものが好ましい。軽合金ホイールへの塗布方法として、エアスプレ−や静電塗装などで塗装することが好ましい。膜厚は10〜40μmが一般的である。カラーベース塗料には顔料が用いられ、黒色に近い濃彩色系のベース層とする必要がある。有機顔料、無機顔料、炭素系顔料(例えば、カーボンブラック、グラファイト等)、メタリック粉末などの公知の顔料を適宜使用し、黒色系の濃彩色ベース層とする。他、防錆顔料、硬化触媒、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、表面調整剤、ワキ防止剤等の添加剤を配合することができる。
【0024】
中間層に5μm以上の厚みがあると、下地層の凹凸が平滑化される。100μmを超えるとコスト高となる。好ましくは10〜40μmの厚みとする。また、中間層を研磨しても、下地層を傷つけることがない。中間層は特に限定されず既知のものが使用できるが、光輝性を出すための光の透過性や、一般の3層塗装における塗装設備への汎用性を考慮すると、トップコート層と同種のクリアー塗料とすることが好ましい。
中間層として、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の塗料が使用できる。硬化剤として、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のアミノ樹脂、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート、イソシアヌレート体、もしくはこれらのブロック体等が使用できる。クリアー塗料とする場合は、光の透過性を保つことを前提に、増粘剤、硬化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、表面調整剤、等を使用することができる。
例えば、アクリル樹脂を主剤としメラミン樹脂を架橋剤として用いて、120〜160℃で熱硬化反応させて形成され、膜厚が20〜40μmであるものが用いられる。あるいは、前記透明保護膜が、アクリル・メラニン塗料またはポリエステル・ウレタン塗料を用いて、60〜100℃で乾燥させ熱硬化反応させて形成され、膜厚が20〜30μmであるものが用いられる。
有機溶媒を用いた溶剤塗料あるいは粉体塗料の他、水分散型、非水分散型、水溶液型のいずれもが適用できる。
【0025】
金属薄膜塗料は、金属または金属化合物からなり、たとえば、アルミニウム、窒化チタン、金などの金属(純金属、合金を含む)、もしくは金属化合物の乾式メッキ層からなるものである。金属薄膜層を乾式メッキにより製造する場合は、スパッタリング、イオンプレーティング、蒸着などの既知の方法が採用できる。金属薄膜層がアルミニウム(アルミニウム合金を含む)からなる場合は、下地層からの濃彩色系の色が若干透過して深みのある色合いが出せる。また、金属薄膜層は、下地層の色を透過させるために、金属薄膜層の厚さは0.01〜2μmとることが好ましい。2μmを超えると、下地層からの反射光が透過しにくくなり、外観性が下がる。0.01μmより薄いと、金属薄膜層自体の形成が困難である。本発明の光輝性軽合金ホイールは、下地層が凹凸で外観不良の可能性が高い状態であっても、中間層を設けることで目立たなくする効果があり、かつ金属薄膜塗料の塗装前に外観不良があっても中間層を研磨することにより手直しができる。よって金属薄膜塗料の塗装後の外観不良品の発生率が下げられるので、本発明の光輝性軽合金ホイールは、高価な金属薄膜塗料の再塗装が減り、コストが下がるという効果がある。
【0026】
金属薄膜層の上に塗布されるクリアー塗料は、透明なものであれば良いが、有機溶剤にポリマーまたはオリゴマーを溶解した溶剤系クリアー塗料または粉体系クリアー塗料を使用して形成することが可能である。クリアー塗料としては、透明性、光沢、耐候性等に優れたアクリル塗料、例えば、固形分濃度が30〜60質量%程度のアクリル溶剤塗料を用いることが好ましい。アクリル塗料には、アクリル系モノマーとエポキシ基、カルボキシル基、水酸基等の官能性モノマーを溶液重合させて得られる熱硬化性アクリル樹脂が使用される。特に、メラミンを架橋剤とした硬化性アクリル樹脂が使用され、樹脂固形分濃度が40〜50質量%程度のアクリル溶剤塗料を用いることが好ましい。クリアー層は、金属薄膜ベース層の表面に塗布後、130〜180℃の温度で焼付けることにより、例えば10〜40μmの厚さに形成される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、下地層と金属薄膜層の間に中間層を設けることにより、下地層の表面の凹凸により発生する外観不良が減り、高価な金属薄膜層を形成する前段階で外観不良品の発生を抑えることができる。また、金属薄膜層を形成する前段階で外観不良品が発生しても、研磨などの手直しが下地層を傷つけにくいため、下地層の再塗装が不要である。また、洗浄剤中のフッ酸が下地層まで染み込むのを防ぐので、下地層の濃彩色の色調が斑になるのを防ぐ役目も持つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(実施例1)
以下本発明の詳細を添付図面により説明する。
図1は本発明の金属調塗膜の断面を模式的に示す図である。図1において、30は、Al、Mg、Fe等の金属またはそれらの合金で鋳造により形成された軽合金ホイールの基体であり、その表面に粉体樹脂によるプライマー層11a、カラーベース層12、中間層(クリアー層)14、金属薄膜層16、及びクリアー層18からなる5層の塗膜が形成されている。通常、この塗膜を形成する前に、耐食性を高めるために基体30の表面に前処理が施される。基体30が鋳物などのアルミニウム合金の場合は、アルカリ脱脂、及びクロメート処理に代表される化成処理を施す。化成被膜は、3mg/m以上(好ましくは5〜20mg/m)の付着量を有するように形成される。化成処理後の基体30は、水洗、乾燥される。
Al−Si−Mg系合金(JIS AC4CH材相当)からなる基体(低圧鋳造による一体型アルミホイール)をアルカリ脱脂、クロメート処理後、純水で水洗し、乾燥して、前処理を施した。その後、プライマー層11aとして、エポキシ・ポリエステル系粉体塗料(日本ペイント社製)を、軽合金ホイール9の鋳肌に静電塗装により約100μmの厚さに積層し、150〜180℃の温度で、30〜60分間焼付けた。その後、カラーベース層12として、アクリル系の黒色の熱硬化性樹脂(日本ペイント工業社製のアクリルメラミン樹脂系塗料(AS70ブラックベース))を膜厚が20μmとなるようにスプレーガンにより吹付け、100〜130℃で10〜30分間焼付けた。これによりプライマー層11aとカラーベース層12からなる下地層を形成した。この下地層の上に中間層14として、アクリル系の透明な熱硬化性樹脂(溶剤系クリアー、日本ペイント(株)製)を膜厚が25μmとなるようにスプレーガンにより吹付け、130〜160℃で焼付けた。外観検査の結果、この中間層14の表面に凹凸が残るものは、軽合金ホイール全体の10%以下となることが解った。
また、この中間層14の表面に凹凸が残るものに対し、手直しによる表面研磨を行った。♯600〜1200番のサンドペーパーにより研磨し、凹凸を平滑にした。この手直しによる下地層の研磨傷は発生せず、そのまま中間層14の上に金属薄膜層16およびクリアー層18を形成した。金属箔膜層は、アルミ合金をスパッタリングして、中間層14の上に厚さ約0.2μmのアルミ薄膜を形成した。その後、アクリル系の透明な熱硬化性樹脂(溶剤系クリアー、日本ペイント(株)製)を膜厚が25μmとなるようにスプレーガンにより吹付け、130〜160℃で焼付けた。その結果、最終的な外観はなんら問題無く、意匠性の良好な軽合金ホイールを得ることが出来た。
【0029】
(比較例1)
実施例1と同様に、軽合金ホイールの基体表面に、粉体樹脂によるプライマー層11a、カラーベース層12からなる下地層を形成した。
外観検査を行ったところ、この下地層の表面の凹凸は、軽合金ホイール全体の約20%に見受けられ、手直しによる研磨処理が必要であった。中間層14を設けた実施例1の結果に対し、手直しの総数が全体の10%以上も増えている。
また、手直しをした場合はカラーベース層の下のプライマー層が見えてしまい、下地層の再塗装が必要となる。また、洗剤液をもちいて表面を洗浄すると、斑模様となることがある。
【0030】
(実施例2)
図2は本発明の金属調塗膜の断面を模式的に示す図である。図2において、30は、Al、Mg、Fe等の金属またはそれらの合金で鋳造により形成されたアルミホイール基体であり、その表面に粉体樹脂による濃彩色系のプライマー層11b、中間層(クリアー層)14、金属薄膜層16、及びクリアー層18からなる4層の塗膜が形成されている。
実施例1と同様にして、軽合金ホイールの基体30に化成処理を施し、その後、水洗して乾燥した。
Al−Si−Mg系合金(JIS AC4CH材相当)からなる基体(ディスク面が低圧鋳造でリム部が圧延材の2ピースアルミホイール)をアルカリ脱脂、クロメート処理後、純水で水洗し、乾燥して、前処理を施した。その後、プライマー層11bとして、濃彩色系のエポキシ・ポリエステル系粉体塗料(日本ペイント社製)を、軽合金ホイール30の鋳肌に静電塗装により約110μmの厚さに積層し、150〜180℃の温度で、30〜60分間焼付け、下地層とした。この下地層の上に中間層14として、アクリル系の透明な熱硬化性樹脂(溶剤系クリアー、日本ペイント(株)製)を膜厚が20μmとなるようにスプレーガンにより吹付け、130〜160℃で焼付けた。外観検査の結果、この中間層14の表面に凹凸が残るものは、軽合金ホイール全体の約11%しか発生しないことが解った。
また、この中間層14の表面に凹凸が残るものに対し、手直しによる表面研磨を行った。♯600〜1200番のサンドペーパーにより研磨し、凹凸を平滑にした。この手直しによる下地層の研磨傷は発生せず、そのまま中間層14の上に金属薄膜層16およびクリアー層18を形成した。金属箔膜層は、アルミ合金を蒸着させて、中間層14の上に厚さ約0.08μmのアルミ薄膜を形成した。その後、アクリル系の透明な熱硬化性樹脂(溶剤系クリアー、日本ペイント(株)製)を膜厚が25μmとなるようにスプレーガンにより吹付け、130〜160℃で焼付けた。その結果、最終的な外観はなんら問題無く、意匠性の良好な軽合金ホイールを得ることが出来た。
【0031】
(比較例2)
実施例2と同様に、軽合金ホイールの基体表面に、粉体樹脂による濃彩色系のプライマー層11bからなる下地層を形成した。
外観検査を行ったところ、この下地層の表面の凹凸は、軽合金ホイール全体の約23%に見受けられ、手直しによる研磨処理が必要であった。中間層14を設けた実施例2の結果に対し、手直しの総数が全体の10%以上も増えている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の5層の金属調塗膜を模式的に示す図である。
【図2】本発明の4層の金属調塗膜を模式的に示す図である。
【図3】従来の4層金属調塗膜の一例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0033】
11:粉体プライマー層、12:濃彩色系カラーベース層、14、18:クリアー層、16:金属薄膜層、30:軽合金ホイール基体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地層と、金属薄膜層と、前記金属薄膜層の上にクリアー層が形成された光輝性軽合金ホイールであって、前記下地層と金属薄膜層の間に中間層が形成されていることを特徴とする光輝性軽合金ホイール。
【請求項2】
前記中間層は、5μm以上100μm以下の厚さで形成されている樹脂層であることを特徴とする請求項1に記載の光輝性軽合金ホイール。
【請求項3】
前記中間層は、顔料を含まない塗料を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の光輝性軽合金ホイール。
【請求項4】
前記中間層は、前記クリアー層と同種の塗料を用いることを特徴とする請求項1乃至3に記載の光輝性軽合金ホイール。
【請求項5】
前記下地層は、基体の表面に形成されたプライマー層と、前記プライマー層の上に形成されたカラーベース層からなることを特徴とする請求項1乃至4に記載の光輝性軽合金ホイール。
【請求項6】
前記金属薄膜層は、金属の蒸着膜であることを特徴とする請求項1乃至5に記載の光輝性軽合金ホイール。
【請求項7】
前記プライマー層はエポキシ系粉体塗料またはエポキシポリエステル系粉体塗料からなることを特徴とする請求項1乃至6に記載の光輝性軽合金ホイール。
【請求項8】
前記光輝性軽合金ホイールは、鋳肌部分に塗装を施したものである請求項1乃至7に記載の光輝性軽合金ホイール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−276713(P2007−276713A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108178(P2006−108178)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】