説明

光透過型エンコーダ用スケール及びその成形金型

【課題】光透過型エンコーダにおいて、安価な製造コストで、変位量検知の分解能をより一層高めることを可能とする。
【解決手段】光透過型エンコーダ用スケールの側壁にスリット孔及び遮光部を成形するための櫛歯部11を有する雌金型10と、雌金型10と対になる雄金型20とを備える。櫛歯部11は、複数の歯形12と歯溝13とが交互に並んで成り、雄金型20は、歯形12の歯先面15と当接してスリット孔の入射面又は出射面を成形する当接面21と、歯溝13を区画して遮光部を成形する成形面22を有する。それぞれの歯形12において、歯元17の厚みを歯先18の厚みよりも薄くして、バリの発生によって変位量検知の精度が低下することを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタの紙送り機構等に用いて好適な光透過型エンコーダ用スケール及びそれを成形するための成形金型に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタの記録紙を駆動する紙送り機構においては、コストダウンの要請から、近年、駆動力発生源としてDCモータが用いられている。DCモータは、安価な反面、単独の構成で出力軸の回転変位量を検知することができないので、回転変位量の検知手段として光透過型のロータリエンコーダが併用されている。
【0003】
光透過型のロータリエンコーダとしては、軸方向光路タイプのエンコーダと径方向光路タイプのエンコーダが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の実施形態1に開示された径方向光路タイプのエンコーダは、同文献に示されるように、小径化等において種々の利点を有しているが、円周線を通る接線に対して45 °の角度をなす側面は、発光素子から出射された光を完全に遮蔽することができない。特にその端縁部において透過した光が受光されると、出力信号としてのパルス信号の波形がなまり、パルスの立ち上がり及び立ち下がりのタイミングを正確に検出することができないことから、変位量検知の分解能をより一層高めることが困難となる。
【0004】
また、同文献の実施形態2及び3に開示されたエンコーダは、スケールに遮光部を形成するために、粗面とすべき領域を研磨したり、方形パターンを印刷したりする必要があるため、製造工程における工数が嵩み、コストダウンを図ることが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−178235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、変位量検知の分解能をより一層高めることが可能な光透過型エンコーダを、安価な製造コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために発明の光透過型エンコーダ用スケールの側壁に光を通過させるスリット孔及び光を遮断する遮光部を成形するための櫛歯部を有する第1金型と、該第1金型と対になって、前記スリット孔及び遮光部を成形する第2金型とを備えた光透過型エンコーダ用スケールの成形金型において、前記第1金型の櫛歯部は、歯側面及び歯先面を有する複数の歯形と、該歯側面及び歯底面で区画される複数の歯溝とが交互に並んで成り、前記第2金型は、前記歯先面と当接して前記スリット孔の入射面又は出射面を成形する当接面と、前記歯溝を区画して前記遮光部を成形する成形面とを有し、それぞれの歯形において、前記第1金型と前記第2金型とが当接する歯先部の厚みが該歯先部よりも歯元側の一部の厚みよりも厚いことを特徴とする。
【0008】
この発明において、それぞれの歯形において、前記歯先部が前記歯元側の一部よりも前記歯溝の側に突出していることが好ましい。
【0009】
この発明において、前記第2金型の当接面は、前記成形面より後退して凹部を形成し、前記第1金型の歯先面は、前記第2金型の凹部に嵌合するように延出されて、前記当接面と当接することが好ましい。
【0010】
この発明において、前記スケールの側壁の内側面又は外側面を成形する前記第2金型の側壁成形面と、前記当接面とは、スケールを透過する光軸方向に段違いに形成されていることが好ましい。
【0011】
この発明において、前記複数の歯溝は、前記第1金型又は第2金型の型開き/閉じ方向に延出されて、前記スケールの側壁を形成するキャビティ空間に連通されていることが好ましい。
【0012】
この発明において、前記第1金型又は第2金型は、その型閉じ/開き方向における前記複数の歯溝の端部が互いに連通されて形成された連通部を有することが好ましい。
【0013】
この発明において、前記第1金型が雌金型であり、前記第2金型が雄金型であることが好ましい。
【0014】
この発明において、前記第1金型が雄金型であり、前記第2金型が雌金型であることが好ましい。
【0015】
この発明において、前記複数の歯形が直線状に配列されていることが好ましい。
【0016】
この発明において、前記複数の歯形が円周状に配列されていることが好ましい。
【0017】
この光透過型エンコーダ用スケールに係る発明においては、上記成形金型によって成形されることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の成形金型によれば、それぞれの歯形において、歯先部の厚みが歯元側の一部の厚みよりも厚いので、歯先面と当接面との僅かな隙間に浸入した成形材料によって遮光部の歯先側の端縁にバリが生じても、バリを歯元側の一部によって成形された遮光部の死角に留めて光路内に出現しないようにすることができる。これにより、スリット孔を透過する光を歯元側の一部によって成形された遮光部によって遮ることができる。従って、仮に歯先側の端縁にバリが発生したとしても、バリによって光が遮られることがなくなることから、光透過型エンコーダにおける変位量検知の分解能を高めることができる。
【0019】
また、歯先部が歯元側の一部よりも前記歯溝の側に突出されることにより、バリを歯元側の一部によって成形された遮光部の死角に留める効果を高めることができ、エンコーダを構成するフォトインタラプタの配置の自由度を高めることができる。例えば、スケールの回転軸に対して径方向に、フォトインタラプタの発光素子と受光素子を配置することができる。
【0020】
また、第1金型の歯先面が、第2金型の凹部に嵌合するように延出されることにより、バリが生ずる場合であっても、その方向を歯側面を延長した方向に限定できる。これにより、バリを歯元側の一部によって成形された遮光部の死角に留める効果を一層高めることができる。
【0021】
また、スケールの側壁の内側面又は外側面を成形する第2金型の側壁成形面と、当接面とは、スケールを透過する光軸方向に段違いに形成されることにより、金型の構造を簡素化し、コストダウンを図ることができる。
【0022】
また、歯溝が、第1金型又は第2金型の型開き/閉じ方向に延出されて、スケールの側壁を形成するキャビティ空間に連通されることにより、スケールの側壁と遮光部の型開き/閉じ方向における端部が一体成形される。これにより、簡素な金型構造で遮光部の強度・剛性を高めることができ、光透過型エンコーダにおける変位量検知の分解能とその検知精度を高めることができる。
【0023】
また、複数の歯溝が連通部によって連通されることにより、遮光部の型閉じ方向における端部が一体成形される。これにより、簡素な金型構造で遮光部の強度・剛性を一層高めることができ、光透過型エンコーダにおける変位量検知の分解能とその検知精度を一層高めることができる。
【0024】
また、複数の歯形が直線状に配列されることにより、リニアエンコーダ用のスケールを成形することができ、円周状に配列されることにより、ロータリエンコーダ用のスケールを成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態による光透過型ロータリエンコーダ用のスケールの斜視図であって、(a)はスケールを斜め上方から視た斜視図、(b)はスケールを斜め下方から視た斜視図。
【図2】同スケールの側面図。
【図3】(a)は図2におけるA−A線断面図、(b)はそのD部の拡大図。
【図4】同スケール及びそれを成形するための金型の断面を示す半断面図であって、(a)は図3におけるB−B線断面、(b)は同C−C線断面。
【図5】上記実施形態による金型におけるA−A線断面図のD部の拡大図。
【図6】上記実施形態による金型で製造されたスケールの遮光部とフォトインタラプタの発光素子から出射される光との関係を拡大して示す図。
【図7】通常の金型で製造されたスケールの遮光部とフォトインタラプタの発光素子から出射される光との関係を拡大して示す図。
【図8】上記実施形態の変形例による金型におけるA−A線断面図のD部の拡大図。
【図9】上記実施形態の別の変形例による金型におけるA−A線断面図のD部の拡大図。
【図10】上記実施形態のさらに別の変形例による金型におけるA−A線断面図のD部の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(光透過型エンコーダ用のスケール)
本発明の一実施形態による光透過型ロータリエンコーダ用のスケールについて図面を参照して説明する。図1及び図2は光透過型ロータリエンコーダ用のスケールを示す。スケールは、例えば、特許文献1の図1等に記載されている光透過型ロータリエンコーダのスケールに替えてモータの出力軸に装着されて用いられる。スケールをモータの出力軸に装着することにより、モータの出力軸の回転変位量を検知でき、他の回転軸に装着することにより、その回転軸の回転変位量を検知できる。例えば、紙送りローラの回転軸に装着することにより、紙送りローラの回転変位量、すなわち紙送り量を検知できる。
【0027】
図1において、(a)はスケールを斜め上方から視た斜視図、(b)はスケールを斜め下方から視た斜視図を示している。スケールは、モータの出力軸に圧入される軸部1と、軸部1の回転を伝達する円盤状のディスク部2と、円筒状の側壁3と、光を通過させるために側壁3に形成されたスリット孔4と、光を遮断するために側壁3の外面側に櫛歯状に形成された遮光部5を備える。スリット孔4及び遮光部5は、所定の間隔で複数個、円周状に交互に配列されている。遮光部5は、上方に延出されて、側壁3と一体化される。また、それぞれの遮光部5は、スリット孔4の下方において互いに連結される。
【0028】
図3において(a)は図2におけるスケールのA−A線断面図、(b)はそのD部の拡大図を示す。フォトインタラプタ100の発光素子101と受光素子102とは、スケールのスリット孔4及び遮光部5を跨ぐように、スケールの径方向に沿って配設される。スケールの回転に伴い、発光素子から出射された光をスリット孔4によって透過し、遮光部5によって遮蔽する。図3では、スケールの外側に発光素子が、内側に受光素子がそれぞれ設けられているが、スケールの内側に発光素子が、外側に受光素子がそれぞれ設けられる形態であってもよい。
【0029】
スリット孔4の外開口面4aは、内開口面4bよりも小さく形成されている。すなわち、遮光部5の外端面5aは、内端面5bよりも大きく形成されている。換言すれば、遮光部5の外端面5aの端縁5cは、内端面5bの端縁5dよりもスリット孔4の側に突出している。そして、遮光部5の内端面5bの端縁5dには、雌金型10と雄金型20(図4及び図5参照)の合わせ目によって生ずるパーティングラインが形成される。
【0030】
(エンコーダ用スケールの成形金型)
図4は、エンコーダ用スケール及びそれを成形する金型の半断面を示す。(a)は図3におけるB−B線断面であり、(b)は同C−C線断面である。それぞれ、左半分がスケールの断面、右半分が金型の断面を示す。雌金型10と雄金型20によって区画されたキャビティ空間25に樹脂成形材料が充填されて、スケールが成形される。
【0031】
図5は、図3(b)のD部に相当する領域の金型の断面図である。雌金型(第1金型)10は、その内周にスリット孔4を形成するための櫛歯部11を有する。雄金型(第2金型)20は、雌金型10と対になって、スリット孔4及び遮光部5を成形する。本実施形態にあっては、固定されている雄金型20に対して雌金型10が上/下方向に移動することにより、型開き/型閉じが実現されるが、固定されている雌金型10に対して雄金型20が下/上方向に移動することにより、型開き/型閉じが実現される構成であってもよい。
【0032】
雌金型10の櫛歯部11は、複数の歯形12及び歯溝13が円周上に交互に並んで成る。歯形12は、歯側面14と歯先面15を有する。歯溝13は、歯側面14及び歯底面16によって区画される。1つの歯形12における2つの歯側面14を延長した仮想面は、スケールの外側で交差する。すなわち、それぞれの歯形12において、歯元17の厚みが歯先18の厚みよりも薄く設定されている。換言すれば、歯先18の厚みが歯元17の厚みよりも厚く設定されている。図5においては、歯先18は、歯先部の最も先端となる部分であり、歯元17は、歯形12の歯元側で最も厚みの薄い部分である。また、歯先18の端縁18aが歯元17の端縁17aよりも歯溝13の側に突出して形成されている。これにより、遮光部5の外端面5aは、内端面5bよりも大きく形成され、また、遮光部5の外端面5aの端縁5cは、内端面5bの端縁5dよりもスリット孔4の側に突出して形成される。すなわち、遮光部5の内端面5bの端縁5dは、外端面5aの端縁5cよりも、光軸に垂直であってかつ遮光部5の内側方向に退避して形成される。
【0033】
雄金型20は、当接面21と、成形面22を有する。当接面21は、櫛歯部11の歯先面15が当接されて、スリット孔4の外開口面4aを形成する。成形面22は、歯溝13を区画して、遮光部5の内端面5bを成形する。
【0034】
スケールの側壁3の内側面3a(図1(b)参照)を形成する雄金型20の側壁成形面23は、図4に示すように、当接面21に対してスケールを透過する光軸方向に段違いに形成されている。金型が閉じられたとき、雌金型10の歯先面15と雄金型20の当接面21とが、摺り合わせ(滑り接触)により当接されて、スリット孔4の内開口面4bを形成する。
【0035】
図4(a)に示すように、各歯溝13は、下方すなわち雌金型10の型閉じ方向における歯形の端部で互いに連通する連通部13aを有する。これにより、下端部が一体的に連結され、遮光部5の強度・剛性が高められる。
【0036】
また、図4(b)に示すように、歯溝13は、上方すなわち雌金型10の型開き方向に延出されて、スケールの側壁3を形成するキャビティ空間26に連通されている。これにより、スケールの側壁3と遮光部5の上方端部が一体化され、遮光部5の強度・剛性が高められる。このような金型構成によって、微細化されたスリット孔4及び遮光部5を限られた領域に集約する場合にあっても、十分な強度と剛性を確保することができる。なお、歯溝13の深さは、その上方端部において漸減される。これにより、樹脂成形材料の充填時においては、その流れが良好となると共に、離型時においては、雌金型10の歯溝13とスケールの遮光部5との摩擦が軽減され、雌金型10からスケールの型抜きが容易となる。このような歯溝13によって、遮光部5の上方端部は、図1等に示すようにテーパ状に形成される。なお、遮光部5の上方端部のテーパ面は平面に限られることなく、曲面で形成されるように歯溝13の上方端部が形成されていてもよい。
【0037】
図6は、上記金型で製造されたスケールの遮光部5とフォトインタラプタ100の発光素子101から出射される光との関係を拡大して示す。本実施形態の金型構造においては、遮光部5の内面側において雌金型10の歯先面15と雄金型20の当接面21が当接するため、遮光部5の内端面5bの端縁5dには、金型の分割ライン(パーティングライン)が形成される。従って、成形条件によっては、雌金型10の歯先面15と雄金型20の当接面21との間の僅かな隙間に浸入した樹脂成形材料によって、遮光部5の内端面5bの端縁5dからスリット孔4の方向(光軸に略垂直な方向)にバリ5eが発生する。
【0038】
図7は、通常の金型によって成形されたスケールの遮光部205とフォトインタラプタ100の発光素子101から出射される光との関係を拡大して示す。通常の金型及びスケールの構成であっては、遮光部205の2つの側面205fが互いに平行か、又はスケールの回転軸を中心とする放射面に沿って形成されるため、外端面205aと側面205fとのなす角が略90゜となり、スリット孔4の空間に突き出したバリ205eによって光が遮蔽され、回転変位量の検知に悪影響を及ぼす。
【0039】
一般的に、バリの発生量(突き出し量)は、成形時期や樹脂材料のロット等の成形条件によって変動するため、安価にかつ生産現場に過度の負担をかけることなく、バリを安定的に抑制するのは困難である。そのため、図7に示した通常の金型においては、スケールの小型化を図りつつ、回転変位量の分解能を高めたい、という市場の要求に適切に答えることが困難であった。
【0040】
これに対して、本実施形態の金型で製造されたスケールにあっては、図6に示すように、外端面5aと側面5fとのなす角が鋭角となるため、バリ5eを外端面5aの端縁5cの死角に留めて光路内に出現しないようにすることができる。これにより、スリット孔4を透過する光を遮光部5の外端面5aによって遮る(規定する)ことができる。従って、仮に端縁5dにバリ5eが発生したとしても、バリ5eによって光が遮られることがなくなることから、光透過型エンコーダにおける変位量検知の分解能を高めることができる。
【0041】
また、スケールの側壁3の内側面を成形する雄金型20の側壁成形面23と、当接面21とは、スケールを透過する光軸方向に段違いに形成されることにより、金型の一様な並進運動のみで離型することができる。これにより、スライドコア等の複雑な金型構造に頼ることなく、簡素な金型構造でスケールの側壁3にスリット孔4及び遮光部5を形成することが可能になり、成形金型のコストダウンを図ることができる。また、離型の際にスケールの遮光部5等に生ずる応力を緩和し、変形を抑制することができる。
【0042】
また、歯溝13が、雌金型10の型開き方向に延出されて、スケールの側壁3を形成するキャビティ空間26に連通されることにより、スケールの側壁3と遮光部5の型開き方向における端部が一体成形される。これにより、簡素な金型構造で遮光部5の強度・剛性を高めることができ、光透過型エンコーダにおける変位量検知の分解能とその検知精度を高めることができる。
【0043】
また、複数の歯溝13は、歯形12の型閉じ方向における端部において連通部13aを介して互いに連通されることにより、遮光部5の型閉じ方向における端部が一体成形される。これにより、簡素な金型構造で遮光部5の強度・剛性を一層高めることができ、光透過型エンコーダにおける変位量検知の分解能とその検知精度を一層高めることができる。
【0044】
(変形例)
図8は、図5に示した金型の変形例を示す。この変形例においては、雄金型20の当接面21は、成形面22より内側に後退して凹部24を形成し、雌金型10の歯先面15は、凹部24に嵌合するように延出されている。このような金型構造にあっては、バリは歯側面14に沿って(図6において、側面5fに沿って)発生するため、外端面5aの端縁5cの死角から光路内に出現することがない。これにより、より一層、光透過型エンコーダにおける変位量検知の分解能及び検知精度を高めることができる。
【0045】
(変形例)
図9及び図10は、図5及び図8に示した金型の別の変形例を示す。これらの変形例は、雄金型40に、櫛歯部41の歯形42、歯溝43、歯側面44及び歯先面45等を、雌金型30に、当接面31及び成形面32等をそれぞれ形成している点で、図5及び図8に示した金型とは異なる。
【0046】
この変形例においても、それぞれの歯形42において、歯元47の厚みが歯先48の厚みよりも薄く設定されている点は変わらない。また、雌金型30の側壁成形面は、当接面31に対してスケールを透過する光軸方向に段違いに形成されている。金型が閉じられたとき、雄金型40の歯先面45と雌金型30の当接面31とが、摺り合わせにより当接されて、スリット孔4の外開口面を形成する。
【0047】
この変形例においては、遮光部5は側壁3の内側に配置される。歯溝43の端部の構造も上記と同様に与えられる。上記の実施形態の金型で製造されたスケールにおいては、遮光部の上端が空間的(構造的)に開放され、側壁を介して上方のディスク部と連続する。また、バリは遮光部の内周に発生し、遮光部の外周側で光路が規定される。これに対して、この変形例の金型で製造されたスケールにおいては、遮光部の下端が空間的に開放され、遮光部の上端が側壁を介して上方のディスク部と連続する。また、バリは遮光部の外周に発生し、遮光部の内周側で光路が規定される。いずれの金型構造においても、歯溝が延出されて側壁及びディスク部を成形するキャビティと連続する特徴的な構成は変わらない。このように、変形例の作用効果については、上記と同様であるが、いずれの金型構造を用いるかによって側壁3に対する遮光部5等の配置が決定されるので、スケールの内側又は外側の一方の空間的制約を優先する場合に応じて、金型構造を使い分ければよい。
【0048】
また、図10に示した変形例においては、雌金型30の当接面31は、成形面32より外側に後退して凹部34を形成し、雄金型40の歯先面45は、凹部34に嵌合するように延出されている。これらの変形例の作用効果については、上記と同様であるので、その説明を省略する。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく、少なくとも2つの金型が当接する(パーティングラインが形成される)歯先部の厚みが該歯先部よりも歯元側の一部の厚みよりも厚ければよい。例えば、それぞれの歯形において、歯先17と歯元18の中間部分の厚みが最も薄い形態であってもよい。この場合、歯元17の厚みが歯先18の厚みより厚く設定されていても、遮光部5のうち歯厚の最も薄い部分によって成形された側面箇所が、光路を規定する部分となり、フォトインタラプタ100を適宜配置することにより、歯先部に生ずるバリ5eを遮光部5の側面5fの死角に留めて光路内に出現しないようにすることができる。また、本発明は種々の変形が可能であり、例えば、複数の歯形を直線状に配列することにより、リニアエンコーダ用のスケールにも適用可能である。また、櫛歯は、一方の金型のみに存在する形態に限られず、歯先と対応する当接面が備わっていれば、雄型と雌型の両方の金型に設けられていてもよい。さらにまた、上記実施形態及びその変形例の特徴を適宜組み合わせて成形金型を構成することもできる。
【符号の説明】
【0050】
3 側壁
4 スリット孔
5 遮光部
10 雌金型(第1金型)
11 櫛歯部
12 歯形
13 歯溝
13a 連通部
14 歯側面
15 歯先面
16 歯底面
17 歯元
18 歯先
20 雄金型(第2金型)
21 当接面
22 成形面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過型エンコーダ用スケールの側壁に光を通過させるスリット孔及び光を遮断する遮光部を成形するための櫛歯部を有する第1金型と、該第1金型と対になって、前記スリット孔及び遮光部を成形する第2金型とを備えた光透過型エンコーダ用スケールの成形金型において、
前記第1金型の櫛歯部は、歯側面及び歯先面を有する複数の歯形と、該歯側面及び歯底面で区画される複数の歯溝とが交互に並んで成り、
前記第2金型は、前記歯先面と当接して前記スリット孔の入射面又は出射面を成形する当接面と、前記歯溝を区画して前記遮光部を成形する成形面とを有し、
それぞれの歯形において、前記第1金型と前記第2金型とが当接する歯先部の厚みが該歯先部よりも歯元側の一部の厚みよりも厚いことを特徴とする成形金型。
【請求項2】
それぞれの歯形において、前記歯先部が前記歯元側の一部よりも前記歯溝の側に突出していることを特徴とする請求項1に記載の成形金型。
【請求項3】
前記第2金型の当接面は、前記成形面より後退して凹部を形成し、前記第1金型の歯先面は、前記第2金型の凹部に嵌合するように延出されて、前記当接面と当接することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の成形金型。
【請求項4】
前記スケールの側壁の内側面又は外側面を成形する前記第2金型の側壁成形面と、前記当接面とは、スケールを透過する光軸方向に段違いに形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の成形金型。
【請求項5】
前記複数の歯溝は、前記第1金型又は第2金型の型開き/閉じ方向に延出されて、前記スケールの側壁を形成するキャビティ空間に連通されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の成形金型。
【請求項6】
前記第1金型又は第2金型は、その型閉じ/開き方向における前記複数の歯溝の端部が互いに連通されて形成された連通部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の成形金型。
【請求項7】
前記第1金型が雌金型であり、前記第2金型が雄金型であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の成形金型。
【請求項8】
前記第1金型が雄金型であり、前記第2金型が雌金型であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の成形金型。
【請求項9】
前記複数の歯形が直線状に配列されていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の成形金型。
【請求項10】
前記複数の歯形が円周状に配列されていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の成形金型。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の成形金型によって成形されることを特徴とする光透過型エンコーダ用スケール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−255733(P2012−255733A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129625(P2011−129625)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(390025140)株式会社小松ライト製作所 (71)
【出願人】(000143031)コーデンシ株式会社 (18)
【Fターム(参考)】