説明

光透過層用の材料、硬化性組成物及び光情報媒体

【課題】低温下に放置しても反りの小さい光情報媒体を得ることができる光透過層用の材料及びその材料に使用される硬化性組成物並びにその材料を光透過層に使用した光情報媒体を提供する。
【解決手段】支持基体上に情報記録層を有し、この情報記録層上に光透過層を有し、この光透過層を通して記録光及び再生光の少なくとも一方が入射するように使用される光情報媒体の光透過層用の材料であって、材料の−20℃での破断点伸度が10%以上である光透過層用の材料、光透過層用の材料に使用される光透過層用の硬化性組成物及び上記光透過層用の材料から得られる光情報媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光透過層用の材料、硬化性組成物及び光情報媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報記録媒体の分野では高密度化に関して様々な研究が進められている。光ディスクの分野においても、動画が記録できる0.6mm厚の基板を貼り合わせた構造のDVDが普及期を迎えている。
【0003】
しかしながら、今後、デジタルハイビジョン放送が広まるにつれ、更なる大容量の光ディスクが必要とされている。そこで、光ディスクにおける光透過層の厚みを0.1mmとし、レンズ開口数(NA)が0.85程度で、記録及び再生のレーザー波長を400nm程度とした高密度光ディスクシステムが提案され、実用化されている。
【0004】
この0.1mm厚の光透過層の形成方法としては、例えば、特許文献1には液状の放射線硬化型樹脂をスピンコート法により塗布した後に放射線を照射して硬化させる方法により形成する手法が提案されている。
【0005】
しかしながら、上記方法で得られた光ディスクは外部環境(温度)の変化により反りが生じるという問題があり、この反りを防止するために、例えば、特許文献2には光ディスクの支持基体の情報記録層及び光透過層が積層されている面の反対側の面に反り抑制層を配置する方法が提案されている。
【0006】
また、特許文献3には光透過層に特定の弾性率を有する硬化膜を使用することにより高温高湿環境下に長時間放置しても反りが抑制される光ディスクが提案されている。
【0007】
しかしながら、上記のいずれも−20℃程度の低温環境下に放置した場合における反りの抑制に対しては十分とは言えない。
【特許文献1】特開2003−85836号公報
【特許文献2】特開2003−132596号公報
【特許文献3】特開2007−102980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、低温下に放置しても反りの小さい光情報媒体を得ることができる光透過層用の材料及びその材料に使用される硬化性組成物並びにその材料を光透過層に使用した光情報媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨とするところは、支持基体上に情報記録層を有し、この情報記録層上に光透過層を有し、この光透過層を通して記録光及び再生光の少なくとも一方が入射するように使用される光情報媒体の光透過層用の材料であって、材料の−20℃での破断点伸度が10%以上である光透過層用の材料を第1の発明とする。
【0010】
また、本発明の要旨とするところは、上記の光透過層用の材料として硬化物を使用する場合の原料である光透過層用の硬化性組成物を第2の発明とする。
【0011】
更に、本発明の要旨とするところは、支持基体上に情報記録層を有し、この情報記録層上に光透過層を有し、この光透過層を通して記録光及び再生光の少なくとも一方が入射するように使用される光情報媒体であって、光透過層が上記の光透過層用の材料から得られるものである光情報媒体を第3の発明とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明により低温下で反りの小さい光情報媒体を提供できることから、高密度の再生専用光ディスクや記録型光ディスク等の光情報媒体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
支持基体
本発明の光情報媒体を構成する支持基体としては、例えば、金属、ガラス、セラミックス、紙、木材、プラスチック等の材料及びこれらの複合材料が挙げられる。
【0014】
これらの中で、従来の光ディスク製造プロセスを利用できる点でプラスチックが好ましい。プラスチックの具体例としては、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0015】
情報記録層
本発明においては支持基体の1面に情報記録層が積層されている。
【0016】
情報記録層の材料は特に限定されず、読み取り専用型媒体、相変化型記録媒体、ピット形成タイプ記録媒体、光磁気記録媒体等に適用可能な材料を目的に応じて選択することができる。
【0017】
情報記録層の材料の具体例としては、Au、Al、Al・Ti合金、Ag、Ag・Pd・Cu合金、Ag・In・Te・Sb合金、Ag・In・Te・Sb・Ge合金、Ge・Sb・Te合金、Ge・Sn・Sb・Te合金、Sb・Te合金、Tb・Fe・Co合金及び色素が挙げられる。
【0018】
本発明においては、必要に応じて情報記録層の少なくとも一方の側に、記録層の保護や光学的効果を目的として、SiN、ZnS、SiO等の誘電体層を設けることができる。
【0019】
支持基体上に情報記録層を形成する方法としてはスパッタリング法等の公知の方法が挙げられる。
【0020】
光透過層
本発明においては情報記録体層の上に光透過層が積層される。
【0021】
光透過層の厚みとしては、本発明の効果の発現性の点で、0.1mm程度が好ましい。
【0022】
また、光透過層の透明性としては、情報記録層への記録や再生のために400nm程度のレーザーに対する透明性が良好であることが好ましい。
【0023】
材料
光透過層の材料は、−20℃での破断点伸度(以下、「破断点伸度(a)」という)が10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上である。
【0024】
材料の破断点伸度(a)が10%以上で、−20℃と25℃の場合における光ディスクの反り量の差を0.2度以下とすることができ、低温における光情報媒体への記録や再生を問題なく行うことができる。
【0025】
また、材料の破断点伸度としては、−20℃と25℃の場合における光ディスクの反り量の差の点で、破断点伸度(a)を25℃における破断点伸度(以下、「破断点伸度(b)」という)で除した値(破断点伸度(a)/破断点伸度(b))が0.3〜1であることが好ましく、0.5〜1がより好ましい。尚、破断点伸度(a)は破断点伸度(b)を超えることは無いので、破断点伸度(a)/破断点伸度(b)の値は1以下である。
【0026】
破断点伸度(単位:%)は光情報媒体から剥離した光透過層を用いて測定することができ、最大点応力(単位:MPa)及び引張弾性率(単位:MPa)と共に求めることができる。
【0027】
本発明においては、材料の25℃における引張弾性率は100〜1,500MPaが好ましく、200〜1,000MPaがより好ましい。引張弾性率が100MPa以上で情報記録層の保護膜として十分な硬度を有する傾向にあり、1,500MPa以下で反りの低減効果に優れている傾向にある。
【0028】
光透過層に使用される材料としては、例えば、熱可塑性樹脂及び硬化性組成物の硬化物が挙げられる。
【0029】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート及びアモルファスポリオレフィンが上げられる。
【0030】
硬化性組成物
本発明の硬化性組成物としては、例えば、熱硬化性組成物及び紫外線硬化性組成物等の活性エネルギー線硬化性組成物が挙げられる。
【0031】
活性エネルギー線硬化性組成物の硬化に使用する活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、X線、電子線、紫外線及び可視光線が挙げられる。
【0032】
本発明においては、活性エネルギー線硬化性組成物としては、得られる光情報媒体の周方向の膜厚精度と製造コストの点で、紫外線硬化性組成物が好ましい。
【0033】
紫外線硬化性組成物の具体例としては、硬化物の機械特性が優れる点で、ウレタン(メタ)アクリレート(A)(以下、「成分A」という)、成分A以外の(メタ)アクリレート(B)(以下、「成分B」という)及び光重合開始剤(C)(以下「成分C」という)を含有する紫外線硬化性組成物が挙げられる。
【0034】
成分A
成分Aは硬化性組成物に低収縮性を付与するための成分であり、またその硬化物に強靭性や可とう性を付与するための成分である。
【0035】
成分Aは(メタ)アクリロイル基とウレタン基を分子内に有する化合物であり、例えば、イソシアネート化合物、多価アルコール及び水酸基含有(メタ)アクリレートから合成される。
【0036】
尚、本発明において、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイルは、それぞれ、アクリレート及び(メタ)アクリレートの少なくとも1種、並びにアクリロイル及び(メタ)アクリロイルの少なくとも1種を示す。
【0037】
成分Aの合成に使用される上記のイソシアネート化合物としては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ビス(4−イソシアナトフェニル)メタン、ビス(3−クロロ−4−イソシアナトフェニル)メタン、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、トリス(4−イソシアナトフェニル)メタン、1,2−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,2−水添キシリレンジイソシアネート、1,4−水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水添テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等のジイソシアネート類が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いられる。
【0038】
これらの中で、得られる硬化物が黄変しにくい点で、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート等の脂肪族骨格のジイソシアネート化合物及びイソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,2−水添キシリレンジイソシアネート、1,4−水添キシリレンジイソシアネート、水添テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族骨格のジイソシアネート化合物が好ましい。
【0039】
成分Aの合成に使用される多価アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール類;1−メチルブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、3−メチルペンタンジオール、2,4−ジエチルペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類;上記多価アルコール類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテル変性ポリオール類;上記多価アルコール類と、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトラヒドロフタル酸等の多塩基酸類又はこれら多塩基酸の酸無水物類との反応によって得られるポリエステルポリオール類;上記多価アルコール類と、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類との反応によって得られるポリラクトンポリオール類;上記多価アルコール類及び多塩基酸類と、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類との反応によって得られるラクトン変性ポリエステルポリオール類;上記多価アルコール類とテトラヒドロフランとの共重合体;環状ヒドロキシカルボン酸エステルと、アンモニア又は1個の第一級若しくは第二級アミノ窒素を含む化合物との反応によって得られるアミドポリオール類;1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、2,4−ジエチルペンタンジオール、トリメチルヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等のジオール類と、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジフェニルカーボネート等の炭酸エステル類とのエステル交換反応により得られるポリカーボネートジオール類;並びにポリブタジエングリコール類が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いられる。
【0040】
これらの中で、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、テトラヒドロフラン−ネオペンチルグリコール共重合体類及びアミドジオール類は、得られる硬化物の耐湿性と強伸度のバランスに優れ、得られる光情報媒体の寸法安定性に優れる点で、好ましい。更に、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール類は、得られる光情報媒体の−20℃と25℃における反り量の差を小さくすることができる点で、より好ましい。
【0041】
成分Aの合成に使用される水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び分子内に少なくとも1個のヒドロキシル基を有するヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0042】
上記の水酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類及びこれらのカプロラクトンの付加物が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いられる。
【0043】
これらの中で、得られる成分Aが低粘度となる点で、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0044】
成分Aの合成方法としては、公知のウレタン(メタ)アクリレートの合成方法が挙げられる。成分Aの合成方法の具体例としては以下の方法が挙げられる。
【0045】
まず、フラスコ内に2モルのジイソシアネートを仕込み、更にジブチル錫ジラウレート等の触媒を総仕込量に対して50〜300ppmとなるように混合する。次いで、フラスコ内温度を40〜60℃に保ちながら、フラスコ内に1モルのジオール化合物を2〜4時間かけて滴下してウレタンプレポリマーを得る。その後、フラスコ内温を60〜75℃として、フラスコ内に、得られたウレタンプレポリマー末端に残存するイソシアネート基と当量のヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルを滴下して、ウレタンプレポリマー末端に残存するイソシアネート基と付加反応させてウレタン(メタ)アクリレートを得る。
【0046】
本発明においては、成分Aの含有量は、成分A及び成分Bの合計量100質量部に対して30〜80質量部が好ましく、40〜70質量部がより好ましい。成分Aの含有量が30質量部以上で、硬化性組成物の硬化収縮率の低減効果に優れ、得られる硬化物の破断点伸度(a)が10%以上になり、硬化物の可撓性に優れる傾向にある。また、成分Aの含有量が80質量部以下で、硬化性組成物の液粘度が低くなり、情報記録層上への塗工作業性に優れ、得られる硬化物の機械的物性及び保護性能に優れる傾向にある。
【0047】
成分B
成分Bは硬化性組成物の硬化物に表面硬度、強靭性、可とう性、隣り合う層との密着性等を付与するための成分である。
【0048】
成分Bとしては、例えば、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、モノ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート及びエポキシポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0049】
上記の3官能以上の多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリスエトキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリスプロポキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシレーテッドペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシレーテッドペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用して用いられる。
【0050】
前記のジ(メタ)アクリレートの具体例としては、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッドシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッドシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッドビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッドビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッド水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッド水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシフルオレンエタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物(付加数;n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,11−ウンデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,13−トリデカンジオールジ(メタ)アクリレート及び1,14−テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用して用いられる。
【0051】
モノ(メタ)アクリレートの具体例としては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−エチル−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチル(メタ)アクリレート、2−イソブチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性リン酸(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、2−エチル−ヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性クレゾール(メタ)アクリレート、ノニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アダマンチルオキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリブチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジブチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート及びt−ブチル−シクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用して用いられる。
【0052】
前記のポリエステルポリ(メタ)アクリレートの具体例としては、フタル酸、コハク酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テレフタル酸、アゼライン酸、アジピン酸等の多塩基酸、エチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコール及び(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応で得られるポリエステルポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用して用いられる。
【0053】
前記のエポキシポリ(メタ)アクリレートの具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネート変成ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールA型プロピレンオキサイド付加物の末端グリシジルエーテル等のエポキシ樹脂類と(メタ)アクリル酸との反応物であるエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用して用いられる。
【0054】
これらの中で、硬化性組成物の硬化性と硬化物の機械物性のバランスが良好である点で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリスエトキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリスプロポキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシレーテッドペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシレーテッドペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッドシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッドシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッド水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッド水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチル(メタ)アクリレート、2−イソブチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル−メチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0055】
本発明において、成分Bの含有量は、成分A及び成分Bの合計量100質量部に対して20〜70質量部が好ましく、30〜60質量部がより好ましい。成分Bの含有量が20質量部以上で、硬化性組成物の低粘度化による塗布作業性に優れ、得られる硬化物の機械的物性及び保護性能に優れる傾向にある。また、成分Bの含有量が70質量部以下で、硬化性組成物の硬化収縮率の低減が十分に図られ、得られる硬化物の可撓性が優れ、硬化物の破断点伸度(a)を10%以上にできる傾向にある。特に、成分Bの含有量が30〜60質量部で、光透過層の破断点伸度(a)を破断点伸度(b)で除した値を0.3〜1にできる傾向にある。
【0056】
成分C
成分Cは硬化性組成物を効率よく硬化物とするための成分である。
【0057】
成分Cとしては、例えば、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルホルメート等の光重合開始剤が挙げられる。
【0058】
これらの中で、成分Cとして、硬化性組成物の硬化性及び硬化物の難黄変性の点で、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン及び1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトンが好ましい。これらは一種単独で、又は二種以上を併用して用いられる。
【0059】
本発明において、成分Cの含有量は、成分A及び成分Bの合計量100質量部に対して1〜10質量部が好ましく、1.5〜5質量部がより好ましい。
【0060】
成分Cの含有量が1質量部以上で、空気雰囲気中で安定して硬化できる傾向にあり、10質量部以下で、硬化性組成物の塗膜の深部硬化性が良好で、硬化物の黄変が抑えられる傾向にある。
【0061】
本発明の硬化性組成物には、本発明を損なわない範囲で、例えば、熱重合開始剤、酸化防止剤、光安定剤、光増感剤、熱可塑性高分子、スリップ剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、無機フィラー、有機フィラー、表面有機化処理した無機フィラー等の添加剤を適宜配合することができる。
【0062】
上記の酸化防止剤及び光安定剤の添加量は、それぞれ、成分A、成分B及び成分Cの合計量100質量部に対して0.001〜5質量部が好ましく、0.01〜3質量部がより好ましい。
【0063】
本発明の硬化性組成物は、ダストやゲル物等の異物の存在による読み取りエラー又は書き込みエラーを防止するために、5μm以上、好ましくは1μm以上の異物を排除するろ過フィルターを用いてろ過することが好ましい。
【0064】
ろ過フィルターの素材としては、例えば、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン及びナイロンが挙げられる。
【0065】
また、本発明において、光透過層に気泡が存在すると読み取りエラー又は書き込みエラーの原因となることから、本発明の硬化性組成物は予め真空、超音波、遠心条件下又はその組み合わせの条件下において脱気を行うことが好ましい。
【0066】
本発明においては、上記した硬化性組成物は、支持基体上に設けられた情報記録層の上に、スピンコート、スプレーコート、ブラシコート等の公知の塗工方法で塗工され、情報記録層上に硬化性組成物の塗膜を形成することができる。尚、硬化性組成物の塗膜の厚みとしては、硬化後の膜厚が5〜500μm以下となる厚みが好ましい。次いで、活性エネルギー線で硬化性組成物の塗膜を硬化し、情報記録層上に光透過層を形成して光記録媒体を得ることができる。尚、活性エネルギー線を照射する雰囲気としては、空気中でも窒素、アルゴン等の不活性ガス中でもよいが、製造コストの点で、空気中で照射することが好ましい。
【0067】
硬化物
本発明において、硬化物は光透過層として使用することができる。
【0068】
硬化性組成物の硬化物を光透過層として使用する場合には、光透過層の厚みが5μm以上で、後述する光情報媒体の表面を十分に保護できる傾向にあり、500μm以下で、光情報媒体の反りを抑制しやすい傾向にある。硬化性組成物の硬化物を光透過層として使用する場合の光透過層の厚みは10〜300μmがより好ましく、15〜150μmが更に好ましい。
【0069】
硬化性組成物の硬化物を光透過層として使用する場合には、高温高湿条件下においても光透過層の膜厚変化を小さくできる点で、硬化性組成物の反応率は90%以上が好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上が更に好ましい。反応率が90%以上で、硬化物中に残存する未反応のジ(メタ)アクリレート類や光重合開始剤が経時的に揮発して膜厚が減少することを抑制できる傾向にある。
【0070】
硬化性組成物の反応率を90%以上とする方法としては、例えば、活性エネルギー線として紫外線を使用した場合、積算光量を500mJ/cm以上、より好ましくは1,000mJ/cm以上、更に好ましくは2,000mJ/cm以上とする条件で紫外線を照射して硬化性組成物を硬化させる方法が挙げられる。
【0071】
尚、硬化性組成物の反応率を測定する方法としては、例えば、赤外分光法により(メタ)アクリロイル基の残存量を測定する手法、硬化物の弾性率、Tg等の物理特性の飽和度から測定する手法及びゲル分率により架橋度合いを測定する手法が挙げられる。
【0072】
これらの中で、硬化物中に残存する残渣を定量しやすいことから、ゲル分率を測定する手法を利用することが好ましい。ゲル分率の測定方法としては、例えば、硬化物を粉砕し、溶剤中で未硬化成分を抽出した後、乾燥させて、その重量変化によりゲル分率を測定する方法が挙げられる。
【0073】
光情報媒体
本発明の光情報媒体は少なくとも支持基体上に情報記録層を有し、この情報記録層上に光透過層を有する構造を有している。
【0074】
また、本発明の光情報媒体は、光透過層を通して記録光又は再生光が入射して、情報記録層への情報の記録又は情報記録層の情報の読み取りができるものである。
【0075】
本発明の光情報媒体には、光透過層の上に擦り傷防止や汚れ防止等を目的として、ハードコート層を設けることができる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明する。尚、実施例及び比較例における硬化物及び光ディスクの各種物性の評価は以下の方法で行った。また、以下において、「部」は「質量部」を示す。
【0077】
(1)硬化物の引張弾性率及び破断点伸度
作製した評価用光ディスクから平均膜厚が100μmの硬化物の層を剥離し、剥離した硬化物の層から10mm×100mm×100μmの試験片を切り出した。次いで、標線間距離50mm及び引張速度20mm/分で、JIS K7127−1989に準拠して、−20℃及び25℃での破断点伸度(%)並びに25℃での引張弾性率(MPa)を測定した。
尚、破断点伸度について、測定値から下記基準で評価した。
○:−20℃における破断点伸度(a)が10%以上。
×:−20℃における破断点伸度(a)が10%未満。
【0078】
また、破断点伸度(a)を破断点伸度(b)で除した値を下記基準で評価した。
○:0.3〜1。
×:0.3未満。
【0079】
(2)光ディスクの反り角及び寸法安定性
作製した評価用光ディスクの初期の反り角(度)を、ジャパンイーエム(株)製光ディスク光学機械特性測定装置「DLD−3000」(商品名)を用いて、25℃及び相対湿度50%の環境下にて、光ディスクの半径55mmの位置での値を測定した。
【0080】
次いで、光ディスクを−20℃の環境下に24時間放置して取り出した直後に、光ディスクの半径55mm位置での反り角を測定し、−20℃での光ディスクの反り角と25℃での光ディスクの反り角との差を求めて光ディスクの寸法安定性を評価した。尚、光ディスクの反り角とは、光ディスク最外周における光透過層側への半径方向の最大反り角のことである。また、反り角の値が負(−)である場合は、光ディスクが支持基体の光透過層が積層されていない面側に反っていることを意味する。
光ディスクの寸法安定性は下記基準で評価した。
○:−20℃と25℃とにおける反り角の差が0.2度以下。
×:−20℃と25℃とにおける反り角の差が0.2度を越える。
【0081】
(3)光ディスクの耐腐食性
作成した評価用光ディスクを、80℃及び相対湿度85%の環境下にて96時間の耐久試験を行い、情報記録層である銀合金膜の外観を下記の基準に従って目視にて評価した。
○:銀合金膜に異常なし。
×:銀合金膜に変色、腐食等の異常あり。
【0082】
[合成例1]ウレタンアクリレート(UA1)の製造
5リットルの4つ口フラスコにイソホロンジイソシアネート(デグサジャパン(株)製、商品名:VESTANAT IPDI)1,667g及びジブチル錫ジラウレート(昭和化学(株)製)0.8gを入れ、ウォーターバスでフラスコ内温が70℃になるように加熱、撹拌した。次いで、フラスコ内温を70℃に保ちながら、滴下ロートから、フラスコ内に、40℃に保温したポリテトラメチレングリコール(保土谷化学工業(株)製、商品名:PTG850)2,170gを4時間等速滴下で加え、更に、同温度で2時間攪拌して反応を継続した。その後、フラスコ内温を75℃に上げ、フラスコ内温を75℃に保ちながら、滴下ロートから、2−ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名:HEA)1,162gとハイドロキノンモノメチルエーテル2.5gを均一に混合溶解させた液を2時間等速滴下し、更にフラスコ内容物の温度を75℃に保ちながら4時間反応を継続させて、ウレタンアクリレート(UA1)を得た。
【0083】
[合成例2〜4]ウレタンアクリレート(UA2)〜(UA4)の製造
ウレタンアクリレートの原料として表1に示すものを使用する以外は合成例1と同様にしてウレタンアクリレート(UA2)〜(UA4)を得た。
【表1】

【0084】
IPDI:イソホロンジイソシアネート(デグサジャパン(株)製、商品名:VESTANAT IPDI)
TMDI:トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(デグサジャパン(株)製、商品名:VESTANAT TMDI)
PTG−850:ポリテトラメチレングリコール(保土谷化学工業(株)製、商品名:PTG850)
PTG−1000:ポリテトラメチレングリコール(保土谷化学工業(株)製、商品名:PTG1000)
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名:HEA)
【0085】
[実施例1]
(1)硬化性組成物の調製
成分Aとしてウレタンアクリレート(UA1)55質量部、成分Bとしてトリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(東亞合成(株)製、商品名:アロニックスM−315)20質量部、テトラヒドロフルフリルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名:ビスコート#150)25質量部、成分Cとして1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア184)3質量部を混合溶解し、1μmのフィルターでろ過した後に、減圧脱気して、硬化性組成物(イ)を得た。
【0086】
(2)評価用光ディスクの作製
ポリカーボネート樹脂(飽和吸水率:0.15%)を射出成型して光ディスク形状を有する、透明で円盤状の、表面が鏡面の支持基体(直径12cm、板厚1.1mm及び反り角0度)を作製した。
【0087】
得られた支持基体の片表面に、情報記録層として、スパッタリング法にて膜厚20nmのAg98PdCu(原子比)合金膜(以下、「銀合金膜」という)を積層した。
【0088】
この銀合金膜上に、上記で調製した硬化性組成物(イ)を、雰囲気温度23℃及び相対湿度50%の環境下で、スピンコーターを用いて塗工した。その後、塗工面の上方より、Hバルブランプ(フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)製)を用いて、紫外線を積算光量1,000mJ/cm(紫外線光量計「UV−350」((株)オーク製作所製、商品名)で測定)で照射し、塗膜を硬化して平均膜厚が100μmの硬化物で構成される光透過層を形成し、支持基体の上に情報記録層及び光透過層が順次積層された評価用光ディスクを作成した。
【0089】
得られた評価用光ディスクを使用して硬化物の引張弾性率及び破断点伸度並びに光ディスクの反り角、寸法安定性及び耐腐食性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【表2】

【0090】
アロニックスM−315:トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(東亞合成(株)製、商品名)
TMP3A−3:トリメチロールプロパントリアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名)
カヤラッドNPGDA:ネオペンチルグリコールジアクリレート(日本化薬(株)製、商品名)
FA−512A:ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(日立化成工業(株)製、商品名)
ビスコート#150:テトラヒドロフルフリルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名)
ユニディックV−5530:ビスフェノールA型エポキシアクリレート(DIC(株)製商品名)
ライトアクリレートDCP−A:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(共栄社化学(株)製、商品名)
SR−256:2−エトキシエトキシエチルアクリレート(サートマー・ジャパン(株)製、商品名)
イルガキュア184:1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名)
【0091】
[実施例2〜6及び比較例1〜3]
硬化性組成物として表2に示すものを使用した。それ以外は実施例1と同様にして、評価用光ディスクを作成し、得られた評価用光ディスクを使用して硬化物の引張弾性率及び破断点伸度並びに光ディスクの反り角、寸法安定性及び耐腐食性を評価した。得られた結果を表2に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基体上に情報記録層を有し、この情報記録層上に光透過層を有し、この光透過層を通して記録光及び再生光の少なくとも一方が入射するように使用される光情報媒体の光透過層用の材料であって、材料の−20℃での破断点伸度が10%以上である光透過層用の材料。
【請求項2】
材料の−20℃における破断点伸度を25℃における破断点伸度で除した値が0.3〜1である請求項1に記載の光透過層用の材料。
【請求項3】
材料が硬化性組成物の硬化物である請求項1又は2に記載の光透過層用の材料。
【請求項4】
硬化性組成物が紫外線硬化性組成物である請求項3に記載の光透過層用の材料。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の光透過層用の材料に使用される光透過層用の硬化性組成物。
【請求項6】
支持基体上に情報記録層を有し、この情報記録層上に光透過層を有し、この光透過層を通して記録光及び再生光の少なくとも一方が入射するように使用される光情報媒体であって、光透過層が請求項1〜4のいずれかに記載の光透過層用の材料から得られるものである光情報媒体。

【公開番号】特開2010−9634(P2010−9634A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164303(P2008−164303)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】