説明

光通信システム、光送信機、光受信機、及び光通信方法

【課題】本発明は、周波数利用効率を向上させ、既設の伝送路及び従来の伝送方式で伝送容量を拡大することができる光通信システム、光送信機、光受信機、及び光通信方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る光通信システム及び光通信方法は、マルチモード伝送路に存在する複数の伝搬モードそれぞれをキャリアとして利用する。このため、1の波長であっても複数のキャリアを形成することができる。従って、周波数利用効率を向上させ、既設の伝送路及び従来の伝送方式で伝送容量を拡大することができる光通信システム及び光通信方法を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数利用効率を向上した多重光伝送技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、光ファイバネットワークにおけるトラフィックは増大しており、伝送速度の高速化や波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing:WDM)技術による波長多重数の増加、多値変調など様々な手法を用いて伝送容量の拡大を図ってきた。しかし、将来的に既設の伝送路、従来の伝送方式を用いての伝送容量の拡大が困難になると予想されるため、波長領域の拡大、新たな伝送ファイバ、及び新たな伝送方式が検討されている。
【0003】
波長領域を拡大する方法として、現在利用されていない波長帯を利用して、広波長域のWDMを実現し伝送容量を増大させる検討もなされている。しかし、伝送損失が波長帯により異なるため、使用できる波長帯は限定されると考えられ、さらに、広波長域にわたり増幅が可能な光増幅器も実現が困難なため、広波長域のWDMが実用に至るためには多くの課題がある。
【0004】
新たな伝送ファイバに関しては、ファイバ非線形による波形歪を抑圧するために実効断面積(Aeff)が拡大できるファイバ構造が提案されている。ファイバ非線形の抑圧はファイバへ入力できる入力パワーの増加につながり、入力パワーの増加が可能になれば伝送速度の高速化、更なる多値化が可能になるなどの優位性が得られる。しかし、非特許文献1に示されるようにAeffの拡大は単一モード動作を前提としているため、曲げ損失と単一モード動作がトレードオフの関係にあることからAeffの大幅な拡大が困難という課題がある。
【0005】
新たな伝送方式に関しては、非特許文献2に示されている無線の伝送方式において周波数利用効率を向上させるために利用されている直交した周波数成分を利用するOFDM (Orthogonal Frequency Division Multiplexing)や非特許文献3に示されているようにMIMO(Multiple Input Multiple Output)をマルチモード光ファイバに適用することが検討されているが、送受信機において複雑な信号処理を必要とするため、演算処理の高速化などの課題がある。
【0006】
また、新たな伝送方式に関しては、特許文献1に光ファイバの伝搬モードを利用した多重方法も提案されているが、所望の高次モードを励振する方法が提案されておらず、単一波長で利用することを前提としているため、大容量化の実現が困難という課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−288911号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】松井 他、“Single−mode photonic crystal fiber with low bending loss and Aeff of > 200μm2 for ultra high−speed WDM transmission”、OFC2010、PDPA2.
【非特許文献2】S.L.Jansen他、 “10x121.9−Gb/s PDM−OFDM Transmission with 2−b/s/Hz Spectral Efficiency over 1,000km of SSMF”
【非特許文献3】Benn C. Thomsen、“MIMO enabled 40Gb/s transmission using mode division multiplexing in multimode fiber”、OFC2010、OThM6.
【非特許文献4】S.Savin他、 “Tunable mechanically induced long−period fiber gratings” POTICCS LETTERS/Vol.25, No.10/May 15,2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、周波数利用効率を向上させ、既設の伝送路及び従来の伝送方式で伝送容量を拡大することができる光通信システム、光送信機、光受信機、及び光通信方法を提供することを目的とする。なお、対象とする伝送路は既設の伝送路に限るものではなく、今後新設される伝送路においても伝送容量を拡大することができる光通信システム、光送信機、光受信機、及び光通信方法を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る光通信システム、光送信機、光受信機、及び光通信方法は、マルチモード光ファイバケーブルにおいて伝搬モードそれぞれをキャリアとして利用する多重方法を採用することとした。
【0011】
具体的には、本発明に係る光通信システムは、光通信信号を送信する光送信機と、前記光通信信号を受信する光受信機と、前記光送信機と前記光受信機との間を接続し、所定波長の光を複数のモードで伝搬するマルチモード伝送路と、を備える光通信システムであって、
前記光送信機は、前記マルチモード伝送路で伝搬可能な前記所定波長のうちの1波長の光を、前記マルチモード伝送路における基本モードで生成する光源と、前記光源からの光を複数に分岐する光分波器と、前記光分波器で分岐された光のそれぞれを変調して光信号として出力する光変調器と、前記光変調器が出力する前記光信号を互いにモードが異なるようにモード変換するモード変換器と、前記モード変換器又は前記光変調器が出力する前記光信号を合波するモード合波器と、をモード多重ユニットとして有し、前記モード合波器が合波した前記光信号を前記光通信信号としており、
前記光受信機は、受信した前記光通信信号をモード毎の前記光信号に分波するモード分波器と、前記モード分波器が出力する前記光信号を受光する受光回路と、をモード分割ユニットとして有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る光通信方法は、前記光送信機で、前記マルチモード伝送路で伝搬可能な前記所定波長のうちの1波長の光を、前記マルチモード伝送路における基本モードで生成する光生成手順と、前記光生成手順で生成された光を複数に分岐する光分波手順と、前記光分波手順で分岐された光のそれぞれを変調して光信号として出力する光変調手順と、前記光変調手順で出力された前記光信号を互いにモードが異なるようにモード変換するモード変換手順と、前記モード変換手順又は前記光変調手順で出力された前記光信号を合波するモード合波手順と、をモード多重ステップとして実行し、前記モード合波手順で合波した前記光信号を前記光通信信号としており、
前記光受信機で、受信した前記光通信信号をモード毎の前記光信号に分波するモード分波手順と、前記モード分波手順で出力された前記光信号を受光する受光手順と、をモード分割ステップとして実行することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る光通信システム及び光通信方法は、マルチモード伝送路に存在する複数の伝搬モードそれぞれをキャリアとして利用する。このため、1の波長であっても複数のキャリアを形成することができる。従って、周波数利用効率を向上させ、既設の伝送路及び従来の伝送方式で伝送容量を拡大することができる光通信システム及び光通信方法を提供することができる。
【0014】
本発明に係る光通信システムの前記光送信機は、前記光源の波長が互いに異なる複数の前記モード多重ユニットを有し、それぞれの前記モード多重ユニットが出力する波長の異なる前記光通信信号を合波して出力する伝搬モード保持波長合波器をさらに有し、
前記光受信機は、複数の前記モード分割ユニットを有し、受信した前記光通信信号を波長毎に分波し、それぞれを前記モード分割ユニットの前記モード分波器へ結合する伝搬モード保持波長分波器をさらに有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る光通信方法は、前記光送信機で、前記光源の波長が互いに異なる複数の前記モード多重ステップを行い、それぞれの前記モード多重ステップで出力される波長の異なる前記光通信信号を合波して出力する伝搬モード保持波長合波手順をさらに行い、
前記光受信機で、受信した前記光通信信号を波長毎に分波する伝搬モード保持波長分波手順を行い、前記伝搬モード保持波長分波手順で分波された前記光通信信号をそれぞれ複数の前記モード分割ステップで処理することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る光通信システムの前記光送信機の前記モード多重ユニットは、前記モード合波器を2つ持ち、前記光信号を直交する偏波に調整し、前記偏波毎に前記モード合波器に結合する偏波コントローラをさらに持ち、
前記光送信機は、前記モード多重ユニットが出力する偏波の異なる前記光通信信号を前記偏波を保持した状態で合波して出力する伝搬モード保持偏波合波器をさらに有し、
前記光受信機の前記モード分割ユニットは、前記モード分波器を2つ持ち、
前記光受信機は、受信した前記光通信信号を前記偏波毎に分離してそれぞれを前記モード分割ユニットの前記モード分波器に結合する伝搬モード保持偏波分波器をさらに有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る光通信方法は、前記光送信機で、前記モード多重ステップにおいて、前記モード合波手順前に前記光信号を直交する偏波に調整する偏波コントロール手順を行い、前記モード合波手順で前記偏波毎に前記光信号を合波して前記光通信信号とし、
前記モード多重ステップの後に、前記モード多重ステップで出力される偏波の異なる前記光通信信号を前記偏波を保持した状態で合波して出力する伝搬モード保持偏波合波手順をさらに行い、
前記光受信機で、受信した前記光通信信号を前記偏波毎に分離する伝搬モード保持偏波分波手順を行い、前記伝搬モード保持偏波分波手順で分離した前記光通信信号を前記モード分割ステップで処理することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る光通信システムの前記光送信機の前記モード多重ユニットは、前記モード合波器を2つ持ち、前記光信号を直交する偏波に調整し、前記偏波毎に前記モード合波器に結合する偏波コントローラをさらに持ち、
前記光送信機は、前記光源の波長が互いに異なる複数の前記モード多重ユニットを有し、それぞれの前記モード多重ユニットが出力する波長と偏波の異なる前記光通信信号を偏波を保持した状態で合波して出力する伝搬モード保持波長合波器をさらに有し、
前記光受信機の前記モード分割ユニットは、前記モード分波器を2つ持ち、
前記光受信機は、複数の前記モード分割ユニットを有し、受信した前記光通信信号を波長毎に分波する伝搬モード保持波長分波器と、前記伝搬モード保持波長分波器で分波された前記光通信信号を前記偏波毎に分離してそれぞれを前記モード分割ユニットの前記モード分波器に結合する伝搬モード保持偏波分波器と、をさらに有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る光通信方法は、前記光送信機で、前記光源の波長が互いに異なる複数の前記モード多重ステップを行い、
前記モード多重ステップにおいて、前記モード合波手順前に前記光信号を直交する偏波に調整する偏波コントロール手順を行い、前記モード合波手順で前記偏波毎に前記光信号を合波して前記光通信信号とし、前記モード多重ステップの後に、それぞれの前記モード多重ステップで出力される波長と偏波の異なる前記光通信信号を偏波を保持した状態で合波して出力する伝搬モード保持波長合波手順をさらに行い、
前記光受信機で、受信した前記光通信信号を波長毎に分波する伝搬モード保持波長分波手順を行い、前記伝搬モード保持波長分波手順で分波された前記光通信信号をそれぞれ前記偏波毎に分離する伝搬モード保持偏波分波手順を行い、前記伝搬モード保持偏波分波手順で分離した前記光通信信号を前記モード分割ステップで処理することを特徴とする。
【0020】
本発明に係る光通信システム及び光通信方法は、従来の多重技術である波長の異なる複数の信号光を用いるWDM技術と、異なる偏波に信号を重畳する偏波分割多重(PDM:Polarization Division Multiplex)技術と組み合わせることが可能である。本発明は、これらの従来の技術とを組み合わせることで周波数利用効率をさらに向上させることができ、既設の伝送路及び従来の伝送方式で伝送容量をさらに拡大することができる光通信システム及び光通信方法を提供することができる。
【0021】
本発明に係る光送信機は、前記光通信システムが備える光送信機である。
【0022】
本発明に係る光受信機は、前記光通信システムが備える光受信機である。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、周波数利用効率を向上させ、既設の伝送路及び従来の伝送方式で伝送容量を拡大することができる光通信システム、光送信機、光受信機、及び光通信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る光通信システムを説明する図である。
【図2】ファイバブラッググレーティングにおいて基本モードを第1高次モードに変換するためのグレーティングの間隔を計算した結果を示す図である。
【図3】モード合波器及びモード分波器の原理を示す図である。
【図4】平行導波路における基本モードと第1高次モードの透過率を示す図である。
【図5】本発明に係る光通信システムを説明する図である。
【図6】本発明に係る光通信システムを説明する図である。
【図7】本発明に係る光通信システムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0026】
(実施形態1)
図1は、本実施形態の光通信システム100を説明する図である。光通信システム100は、光通信信号を送信する光送信機111と、光通信信号を受信する光受信機118と、光送信機111と前記光受信機118との間を接続し、所定波長の光を複数のモードで伝搬するマルチモード伝送路117と、を備える。光送信機111は、マルチモード伝送路117で伝搬可能な所定波長のうちの1波長の光を、マルチモード伝送路117における基本モードで生成する光源112と、光源112からの光を複数に分岐する光分波器113と、光分波器113で分岐された光のそれぞれを変調して光信号として出力する光変調器114と、光変調器114が出力する光信号を互いにモードが異なるようにモード変換するモード変換器115と、モード変換器115又は光変調器114が出力する光信号を合波するモード合波器116と、をモード多重ユニット151として有し、モード合波器116が合波した光信号を光通信信号としている。光受信機118は、受信した光通信信号をモード毎の光信号に分波するモード分波器119と、モード分波器119が出力する光信号を受光する受光回路120と、をモード分割ユニット161として有する。
【0027】
光送信機111は、モード多重ユニット151を有する。モード多重ユニット151は、光源112、光分波器113、光変調器114、モード変換器115及びモード合波器116を持つ。光受信機118は、モード分割ユニット161を有する。モード分割ユニット161は、モード分波器119及び受光回路120を持つ。
【0028】
図1に示すように、光通信システム100における光送信機111は、波長λの光源112と波長λの光をN個に等分岐する光分波器113と波長λの光を変調する光変調器114と波長λの基本伝搬モードを所望の高次モードに変換するモード変換器115と発生させたN個の伝搬モードを合波するモード合波器116とにより構成されている。また、光受信機118は合波されたN個の伝搬モードをそれぞれのモードに分離するモード分波器119と分波されたN個の信号光を受光して電気信号に変換する受光回路120とにより構成されている。
【0029】
光送信機111のモード合波器116と光受信機118のモード分波器119とは、マルチモード伝送路117により接続されている。光送信機111の光源112から出力された光は光分波器113で等分岐され、等分岐された光はそれぞれのポートで光変調器114により変調される。変調された基本伝搬モードはそれぞれのポートでモード変換器115により異なる高次の伝搬モードに変換される。基本モードを含むN個の伝搬モードはモード合波器116により合波され、この合波された信号光はマルチモード伝送路117により伝搬され、光受信機118のモード分波器119によりそれぞれの伝搬モードに分離され、受光回路120で受光されて電気信号に変換される。光送信機111においてモード変換器115より前段では、基本モードで伝搬しているため従来の光デバイスを用いて装置が構成できる。
【0030】
モード変換器115は長周期ファイバブラッググレーティングにより構成される。非特許文献4に示されるように波長λにおいて基本モードを高次モードに変換するためのグレーティングの間隔Λは式(1)で与えられる。式(1)のneffとnclはそれぞれ波長λにおける基本モードの実効屈折率、m番目の高次モードの実効屈折率を示している。ファイバグレーティングの間隔は使用するファイバの構造パラメータ、波長、変換するモード次数によって決定される。使用する波長を決定後、ファイバの構造パラメータから数値解析を行い、基本モードの実効屈折率と所望の高次モードの実効屈折率を算出する。これらの計算結果と式(1)を用いて必要なグレーティング周期を決定する。
【数1】

【0031】
コアとクラッドの比屈折率差Δを0.35%、コア半径を4.5μmのステップ型の屈折率分布のファイバを仮定して式(1)を用いて基本モードを第1高次モードに変換するためのグレーティングの間隔を計算した結果を図2に示す。図2は横軸を波長λ、縦軸を基本モードを第1高次モードに変換するグレーティングの間隔Λを示している。この結果からグレーティングの間隔をおよそ480μmに設定することで波長1000nmの基本モードを第1高次モードに変換できる。
【0032】
次にモード合波器116、モード分波器119は対称平行導波路によって実現できる。図3にモード合波器、モード分波器の原理図を示す。2つの導波路間の距離を変化させることによって、モード間の結合長の差を利用して、各モードを平行ポートと対角ポートへの分離を実現する。図4に横軸を平行導波路のコア間距離、縦軸に平行ポートの基本モードと第1高次モードの透過率を示す。平行導波路の導波路パラメータは図2の計算で用いた屈折率分布のファイバを仮定している。コア間距離を変化させると基本モードと第1高次モードの透過率が変化し、モード間の透過率が異なっており平行ポートと対角ポートに分離できることがわかる。図4の計算においては、2つの導波路が平行で導波路間で光の相互作用が発生する長さを相互作用長とし、その相互作用長は20cmとしており今回用いたファイバパラメータではコア間距離を15μmとすることで、基本モードの透過率が1、第1高次モードの透過率が0となるので、基本モードが平行ポートに出力され、第1高次モードが対角ポートに出力されることがわかり、それぞれのモードに分離できる。この方法はさらに高次のモードへも適用が可能であり、コア間距離と相互作用長を適切に設定することで所望の高次モードが分離できる平行導波路を設計し、多重したモード数Nに応じて平行導波路を直列に接続することで複数のモードの分離が可能になる。
【0033】
光通信システム100は、伝搬モードごとに重畳する光信号を基本モードにおいて生成し、基本モードの光信号を長周期ファイバブラッググレーティングを用いて、基本モードで生成された信号光を高次モードへ変換し、基本モードを含むN個のモードそれぞれに信号を重畳し、それらを合波して多重する。このため、光通信システム100は、基本モードのみの光通信システムと比べて伝送容量をN+1倍とすることができる。
【0034】
(実施形態2)
図5は、本実施形態の光通信システム200を説明する図である。光通信システム200は、図1の光通信システム100とWDMとを組み合わせている。光通信システム200は、光送信機211が、光源112の波長が互いに異なる複数のモード多重ユニット151を有し、それぞれのモード多重ユニット151が出力する波長の異なる光通信信号を合波して出力する伝搬モード保持波長合波器217をさらに有していること、及び光受信機219が、複数のモード分割ユニット161を有し、受信した光通信信号を波長毎に分波し、それぞれをモード分割ユニット161のモード分波器119へ結合する伝搬モード保持波長分波器220をさらに有すること、が光通信システム100と異なる点である。
【0035】
光送信機211は、モード多重ユニット151を波長毎にN個並列する。光受信機118は、モード分割ユニット161を波長毎にN個並列する。
【0036】
光送信機211は、λからλのN個の光源112とN個の波長それぞれの光を等分岐する光分波器113とN個の波長それぞれの光を変調する光変調器114とそれぞれの波長の基本伝搬モードを所望の高次モードに変換するモード変換器115とそれぞれの波長において発生させたN個の伝搬モードを合波するモード合波器116とそれぞれの波長の伝搬モードを保持した状態でN個の波長を合波する伝搬モード保持波長合波器217とにより構成されている。
【0037】
また、光受信機219は合波されたN個の波長を伝搬モードを保持したまま波長分離を行う伝搬モード保持波長分波器220と伝搬モード波長分波器により分波されたそれぞれの波長においてN個の伝搬モードを分離するモード分波器119とモード分波器119により分波されたN個の信号光を受光して電気信号に変換する受光回路120とにより構成されている。
【0038】
光送信機211の伝搬モード保持波長合波器217と光受信機219の伝搬モード保持波長分波器220とは、マルチモード伝送路117により接続されている。光送信機211の光源112から出力されたN個の光は光分波器113で等分岐され、等分岐された光はそれぞれのポートで光変調器114により変調される。変調された基本伝搬モードはそれぞれのポートでモード変換器115により異なる高次の伝搬モードに変換される。基本モードを含むN個の伝搬モードはモード合波器116により合波され、この合波された信号光はさらに伝搬モード保持波長合波器217により合波され、マルチモード伝送路117により伝搬され、光受信機219の伝搬モード保持波長分波器220によりN個の波長それぞれに分離され、モード分波器119によりN個の伝搬モードに分離され、受光回路120で受光されて電気信号に変換される。
【0039】
光通信システム200は、モード分割多重と波長分割多重の2つの多重方法を簡易なファイバデバイスを用いることで構成し、基本モードのみの光通信システムと比べて伝送可能な容量を飛躍的に増加させることができる。
【0040】
(実施形態3)
図6は、本実施形態の光通信システム300を説明する図である。光通信システム300は、図1の光通信システム100とPDMとを組み合わせている。光通信システム300は、モード多重ユニット152が、モード合波器116を2つ持ち、光信号を直交する偏波に調整し、偏波毎にモード合波器116に結合する偏波コントローラ317をさらに持つこと、光送信機が、モード多重ユニット152が出力する偏波の異なる光通信信号を偏波を保持した状態で合波して出力する伝搬モード保持偏波合波器319をさらに有すること、モード分割ユニット162が、モード分波器119を2つ持つこと、及び前記光受信機が、受信した光通信信号を偏波毎に分離してそれぞれをモード分割ユニット162のモード分波器119に結合する伝搬モード保持偏波分波器322をさらに有すること、が光通信システム100と異なる点である。
【0041】
光送信機311は、モード多重ユニット152を有する。モード多重ユニット152は、光源112、光分波器313、光分波器113、光変調器114、モード変換器115及びモード合波器116を持つ。そして、モード多重ユニット152は、光分波器113からモード合波器116までの間を偏波毎に2つの系としている。光受信機321は、モード分割ユニット162を有する。モード分割ユニット162は、モード分波器119及び受光回路120を持ち、偏波毎に2つの系としている。
【0042】
光送信機311は、波長λの光源112と波長λの光を2分岐する光分波器313、光分波器313により分岐された波長λの光をN個に分岐する光分波器113と、波長λの基本モードを変調する光変調器114と、波長λの基本伝搬モードを所望の高次モードに変換するモード変換器115と発生させたN個の伝搬モードそれぞれの偏波を調節する偏波コントローラ317とN個の伝搬モードを合波するモード合波器116とそれぞれの伝搬モードを保持した状態で2つの偏波を合波する伝搬モード保持偏波合波器319とにより構成されている。
【0043】
また、光受信機321は合波されたN個の伝搬モードを保持した状態で偏波分離する伝搬モード保持偏波分波器322とN個の伝搬モードそれぞれに分離するモード分波器119とモード分波器119により分波されたN個の信号光を受光して電気信号に変換する受光回路120とにより構成されている。
【0044】
光送信機311の伝搬モード保持偏波合波器319と光受信機321の伝搬モード保持偏波分波器322とは、マルチモード伝送路117により接続されている。光送信機311の光源112から出力された波長λの光は光分波器313で2分岐され、2分岐された光を光分波器113によりさらにN個に等分岐する。N個に等分岐された光はそれぞれのポートで光変調器114により変調される。変調された基本伝搬モードはそれぞれのポートでモード変換器115により異なる高次の伝搬モードに変換される。波長λの光を2分岐した内の一方をX偏波、もう一方をY偏波となるようにモード変換器115の後段に接続されている偏波コントローラ317を調節し、基本モードを含むN個の伝搬モードをX偏波とY偏波それぞれにNモード数多重し、伝搬モード保持偏波合波器319により合波する。この合波された信号光はマルチモード伝送路117により伝搬され、光受信機321の伝搬モード保持偏波分波器322によりX偏波、Y偏波に分離された後、モード分波器119によりN個の伝搬モードそれぞれに分離され、受光回路120で受光されて電気信号に変換される。
【0045】
光通信システム300は、モード分割多重と偏波分割多重の2つの多重方法を簡易なファイバデバイスを用いることで構成し、基本モードのみの光通信システムと比べて伝送可能な容量を飛躍的に増加させることができる。
【0046】
(実施形態4)
図7は、本実施形態の光通信システム400を説明する図である。光通信システム400は、図1の光通信システム100とWDMとPDMとを組み合わせている。光通信システム400は、モード多重ユニット152が、モード合波器116を2つ持ち、光信号を直交する偏波に調整し、偏波毎にモード合波器116に結合する偏波コントローラ317をさらに持つこと、光送信機411が、光源112の波長が互いに異なる複数のモード多重ユニット152を有し、それぞれのモード多重ユニット152が出力する波長と偏波の異なる光通信信号を偏波を保持した状態で合波して出力する伝搬モード保持波長合波器419をさらに有すること、モード分割ユニット161が、モード分波器119を2つ持つこと、及び光受信機421が、複数のモード分割ユニット161を有し、受信した光通信信号を波長毎に分波する伝搬モード保持波長分波器422と、伝搬モード保持波長分波器422で分波された光通信信号を偏波毎に分離してそれぞれをモード分割ユニット161のモード分波器119に結合する伝搬モード保持偏波分波器322と、をさらに有すること、が光通信システム100と異なる点である。
【0047】
光送信機411は、モード多重ユニット152を波長毎にN個並列する。光受信機421は、モード分割ユニット161を波長毎にN個並列する。
【0048】
光送信機411は、λからλのN個の光源112とN個の波長それぞれの光を2分岐する光分波器313と、2分岐した光をさらにN個に等分岐するための光分波器113とN個の波長の基本モードそれぞれを変調する光変調器114とそれぞれの波長の基本伝搬モードを所望の高次モードに変換するモード変換器115とN個の波長それぞれに対応し、それぞれの波長において発生させたN個の高次モードそれぞれの偏波を調節する偏波コントローラ317とそれぞれの波長において発生させたN個の伝搬モードを合波するモード合波器116とそれぞれの波長の伝搬モードを保持した状態でN個の波長を合波する伝搬モード保持波長合波器419とにより構成されている。
【0049】
また、光受信機421は合波されたN個の波長を伝搬モードを保持した状態で波長分離を行う伝搬モード保持波長分波器422と伝搬モード波長分波器422により分波されたそれぞれの波長において、N個の伝搬モードを保持した状態で偏波を分離するための伝搬モード保持偏波分波器322とN個の伝搬モードを分離するモード分波器119とモード分波器119により分波されたN個の信号光を受光して電気信号に変換する受光回路120とにより構成されている。
【0050】
光送信機411の伝搬モード保持波長合波器419と光受信機421の伝搬モード保持波長分波器422とは、マルチモード伝送路117により接続されている。光送信機411の光源112から出力されたN個の光は光分波器313で2分岐され、2分岐された光は光分波器113によりさらにN個に等分岐する。N個に等分岐された光はそれぞれのポートで光変調器114により変調される。変調された基本伝搬モードはそれぞれのポートでモード変換器115により異なる高次の伝搬モードに変換される。N個の波長λのそれぞれの光を2分岐した内の一方をX偏波、もう一方をY偏波となるようにモード変換器115の後段に接続されている偏波コントローラ317を調節し、基本モードを含むN個の伝搬モードをX偏波とY偏波それぞれにNモード数多重し、モード合波器116により合波する。それぞれの波長において合波されたX偏波、Y偏波それぞれに調節されたN個の伝搬モードは、さらに伝搬モードを保持した状態で波長を合波する伝搬モード保持波長合波器419によりN個の波長を合波する。この偏波、波長、伝搬モードすべてが合波された信号光はマルチモード伝送路117により伝搬され、光受信機421の伝搬モード保持波長分波器422によりN個の波長それぞれに分離され、N個の波長それぞれにおいてさらに伝搬モード保持偏波分波器322によりX偏波とY偏波に分離される。偏波分離の後にモード分波器119によりN個の伝搬モードそれぞれに分離され、受光回路120で受光されて電気信号に変換される。
【0051】
光通信システム400は、モード分割多重、偏波分割多重及び波長分割多重の3つの多重方法を簡易なファイバデバイスを用いることで構成し、基本モードのみの光通信システムと比べて伝送可能な容量を飛躍的に増加させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の光通信システムは、既設の伝送路の容量を拡大することに限らない。新規に敷設される伝送路や新たに開発された光ファイバで構成する伝送路であっても本発明の光通信システムを適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
100、200、300、400:光通信システム
111、211、311、411:光送信機
118、219、321、421:光受信機
112:光源
113:光分波器
114:光変調器
115:モード変換器
116:モード合波器
117:マルチモード伝送路
119:モード分波器
120:受光回路
151、152:モード多重ユニット
161、162:モード分割ユニット
217:伝搬モード保持波長合波器
220:伝搬モード保持波長分波器
313:光分波器
317:偏波コントローラ
319:伝搬モード保持偏波合波器
322:伝搬モード保持偏波分波器
419:伝搬モード保持偏波合波器
422:伝搬モード保持波長分波器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光通信信号を送信する光送信機と、
前記光通信信号を受信する光受信機と、
前記光送信機と前記光受信機との間を接続し、所定波長の光を複数のモードで伝搬するマルチモード伝送路と、
を備える光通信システムであって、
前記光送信機は、
前記マルチモード伝送路で伝搬可能な前記所定波長のうちの1波長の光を、前記マルチモード伝送路における基本モードで生成する光源と、
前記光源からの光を複数に分岐する光分波器と、
前記光分波器で分岐された光のそれぞれを変調して光信号として出力する光変調器と、
前記光変調器が出力する前記光信号を互いにモードが異なるようにモード変換するモード変換器と、
前記モード変換器又は前記光変調器が出力する前記光信号を合波するモード合波器と、
をモード多重ユニットとして有し、前記モード合波器が合波した前記光信号を前記光通信信号としており、
前記光受信機は、
受信した前記光通信信号をモード毎の前記光信号に分波するモード分波器と、
前記モード分波器が出力する前記光信号を受光する受光回路と、
をモード分割ユニットとして有すること
を特徴とする光通信システム。
【請求項2】
前記光送信機は、
前記光源の波長が互いに異なる複数の前記モード多重ユニットを有し、
それぞれの前記モード多重ユニットが出力する波長の異なる前記光通信信号を合波して出力する伝搬モード保持波長合波器をさらに有し、
前記光受信機は、
複数の前記モード分割ユニットを有し、
受信した前記光通信信号を波長毎に分波し、それぞれを前記モード分割ユニットの前記モード分波器へ結合する伝搬モード保持波長分波器をさらに有すること
を特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【請求項3】
前記光送信機の前記モード多重ユニットは、
前記モード合波器を2つ持ち、
前記光信号を直交する偏波に調整し、前記偏波毎に前記モード合波器に結合する偏波コントローラをさらに持ち、
前記光送信機は、
前記モード多重ユニットが出力する偏波の異なる前記光通信信号を前記偏波を保持した状態で合波して出力する伝搬モード保持偏波合波器をさらに有し、
前記光受信機の前記モード分割ユニットは、
前記モード分波器を2つ持ち、
前記光受信機は、
受信した前記光通信信号を前記偏波毎に分離してそれぞれを前記モード分割ユニットの前記モード分波器に結合する伝搬モード保持偏波分波器をさらに有すること
を特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【請求項4】
前記光送信機の前記モード多重ユニットは、
前記モード合波器を2つ持ち、
前記光信号を直交する偏波に調整し、前記偏波毎に前記モード合波器に結合する偏波コントローラをさらに持ち、
前記光送信機は、
前記光源の波長が互いに異なる複数の前記モード多重ユニットを有し、
それぞれの前記モード多重ユニットが出力する波長と偏波の異なる前記光通信信号を偏波を保持した状態で合波して出力する伝搬モード保持波長合波器をさらに有し、
前記光受信機の前記モード分割ユニットは、
前記モード分波器を2つ持ち、
前記光受信機は、
複数の前記モード分割ユニットを有し、
受信した前記光通信信号を波長毎に分波する伝搬モード保持波長分波器と、
前記伝搬モード保持波長分波器で分波された前記光通信信号を前記偏波毎に分離してそれぞれを前記モード分割ユニットの前記モード分波器に結合する伝搬モード保持偏波分波器と、
をさらに有すること
を特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載する光通信システムが備える光送信機。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載する光通信システムが備える光受信機。
【請求項7】
光通信信号を送信する光送信機と、
前記光通信信号を受信する光受信機と、
前記光送信器と前記光受信器との間を接続し、所定波長の光を複数のモードで伝搬するマルチモード伝送路と、
を備える光通信システムの光通信方法であって、
前記光送信機で、
前記マルチモード伝送路で伝搬可能な前記所定波長のうちの1波長の光を、前記マルチモード伝送路における基本モードで生成する光生成手順と、
前記光生成手順で生成された光を複数に分岐する光分波手順と、
前記光分波手順で分岐された光のそれぞれを変調して光信号として出力する光変調手順と、
前記光変調手順で出力された前記光信号を互いにモードが異なるようにモード変換するモード変換手順と、
前記モード変換手順又は前記光変調手順で出力された前記光信号を合波するモード合波手順と、
をモード多重ステップとして実行し、前記モード合波手順で合波した前記光信号を前記光通信信号としており、
前記光受信機で、
受信した前記光通信信号をモード毎の前記光信号に分波するモード分波手順と、
前記モード分波手順で出力された前記光信号を受光する受光手順と、
をモード分割ステップとして実行すること
を特徴とする光通信方法。
【請求項8】
前記光送信機で、
前記光源の波長が互いに異なる複数の前記モード多重ステップを行い、
それぞれの前記モード多重ステップで出力される波長の異なる前記光通信信号を合波して出力する伝搬モード保持波長合波手順をさらに行い、
前記光受信機で、
受信した前記光通信信号を波長毎に分波する伝搬モード保持波長分波手順を行い、
前記伝搬モード保持波長分波手順で分波された前記光通信信号をそれぞれ複数の前記モード分割ステップで処理すること
を特徴とする請求項7に記載の光通信方法。
【請求項9】
前記光送信機で、
前記モード多重ステップにおいて、
前記モード合波手順前に前記光信号を直交する偏波に調整する偏波コントロール手順を行い、
前記モード合波手順で前記偏波毎に前記光信号を合波して前記光通信信号とし、
前記モード多重ステップの後に、
前記モード多重ステップで出力される偏波の異なる前記光通信信号を前記偏波を保持した状態で合波して出力する伝搬モード保持偏波合波手順をさらに行い、
前記光受信機で、
受信した前記光通信信号を前記偏波毎に分離する伝搬モード保持偏波分波手順を行い、
前記伝搬モード保持偏波分波手順で分離した前記光通信信号を前記モード分割ステップで処理すること
を特徴とする請求項7に記載の光通信方法。
【請求項10】
前記光送信機で、
前記光源の波長が互いに異なる複数の前記モード多重ステップを行い、
前記モード多重ステップにおいて、
前記モード合波手順前に前記光信号を直交する偏波に調整する偏波コントロール手順を行い、
前記モード合波手順で前記偏波毎に前記光信号を合波して前記光通信信号とし、
前記モード多重ステップの後に、
それぞれの前記モード多重ステップで出力される波長と偏波の異なる前記光通信信号を偏波を保持した状態で合波して出力する伝搬モード保持波長合波手順をさらに行い、
前記光受信機で、
受信した前記光通信信号を波長毎に分波する伝搬モード保持波長分波手順を行い、
前記伝搬モード保持波長分波手順で分波された前記光通信信号をそれぞれ前記偏波毎に分離する伝搬モード保持偏波分波手順を行い、
前記伝搬モード保持偏波分波手順で分離した前記光通信信号を前記モード分割ステップで処理すること
を特徴とする請求項7に記載の光通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−169857(P2012−169857A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29061(P2011−29061)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】