説明

光通信装置及び光通信システム

【課題】 省電力化及び小型化が可能な光通信装置を提供する。
【解決手段】 送信装置からの光信号を受信装置に向けて反射する第1の状態と、光信号を受信装置外に向けて反射する第2の状態との間で動作可能な反射手段(11)と、反射手段を駆動する駆動手段(13)と、駆動手段の駆動を制御する制御手段(16)とを有する。制御手段は、駆動手段を介して反射手段を第1及び第2の状態間で動作させることにより、光信号を変調して受信装置に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単な構成において小型化及び省電力化を図ることのできる光通信装置及び、これを用いた光通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自由空間における光通信システムについて、図10を用いて説明する(例えば、特許文献1参照)。中継装置又は通信端末といった、いわゆる相手装置200の発光ユニット201から送信された光信号は、光通信装置100の光学系101を介してフォトダイオード等の受光素子102で受光される。そして、受光素子102の出力は、信号増幅器103で増幅された後、受信情報の判別を行う検出判定部104に入力される。これにより、相手装置200から送信された情報を認識することができる。
【0003】
一方、相手装置200に対して特定の情報を送信する場合には、電力増幅器105で入力信号が増幅された後、LEDやレーザー等の発光素子106に入力される。これにより、発光素子106が駆動し、発光素子106からの光信号(送信情報)は光学系107を介して相手装置200に送信される。この光信号は、相手装置200に設けられた受光ユニット202で受光される。
【0004】
なお、電源108は、光通信装置100内の各回路に電力を供給する。
【特許文献1】特開2001−91650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図10に示す従来の光通信システムに用いられる光通信装置100では、特定の情報を相手装置200に送信するためにLED等の発光素子106を駆動するため、消費電力が増加してしまう。また、発光素子106を駆動する際に生じる熱によって、不具合が生じてしまうおそれがある。
【0006】
さらに、光通信装置100から離れた位置に配置された相手装置200に対して光信号を送信したり、相手装置200からの光信号を受信したりするため、光学系101、107が大型化し、光学系101、107を備えた光通信装置100も大型化してしまう。しかも、光学系101、107の追尾を行うために、トラッキングシステムが必要となるため、光通信装置100の大型化及び消費電力の増加といった不具合が生じてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願第1の発明は、送信装置及び受信装置に対して光通信が可能な光通信装置であって、前記送信装置からの光信号を前記受信装置に向けて反射する第1の状態と、前記光信号を前記受信装置外に向けて反射する第2の状態との間で動作可能な反射手段と、該反射手段を駆動する駆動手段と、該駆動手段の駆動を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記駆動手段を介して前記反射手段を前記第1及び第2の状態間で動作させることにより、前記光信号を変調して前記受信装置に送信することを特徴とする。
【0008】
本願第2の発明は、送信装置及び受信装置に対して光通信が可能な光通信装置であって、前記送信装置からの光信号を前記受信装置に向けて反射する第1の状態と、前記光信号を吸収する第2の状態との間で変化する反射手段と、該反射手段を駆動する駆動手段と、該駆動手段の駆動を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記駆動手段を介して前記反射手段を前記第1及び第2の状態間で変化させることにより、前記光信号を変調して前記受信装置に送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願第1及び第2の発明によれば、反射手段を第1及び第2の状態間で動作させて送信装置からの光信号を変調して、特定の情報を含む信号を受信装置に送信することができる。そして、反射手段を第1及び第2の状態間で動作させるだけであるため、光通信装置の小型化を図ることができるとともに、消費電力を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0011】
本発明の実施例1である光通信装置について説明する。図1は、本実施例の光通信装置が用いられる光通信システムの概略図を示す。
【0012】
相手装置の送信ユニット(発光ユニット)200における発光素子(LED等)202から照射された光信号は、送信ユニット200の光学系201を介して本実施例の光通信装置10に向けて送信される。ここで、相手装置としては、送信ユニット及び受信ユニットを備えた構成であってもよいし、送信ユニット及び受信ユニットが別体として構成されているものであってもよい。
【0013】
本実施例の光通信装置10は、相手装置からの光信号をコーナーキューブプリズムで反射させるものであり、この反射条件(上記プリズムにおける反射部の角度)を変化させることにより、相手装置(送信ユニット)からの光信号を変調し、この変調された信号を相手装置(受信ユニット)に送信するものである。
【0014】
以下、本実施例の光通信装置10の構成について、具体的に説明する。まず、コーナーキューブプリズム11の駆動機構について、図2及び図3を用いて説明する。
【0015】
図2において、コーナーキューブプリズム11の一端側は固定(不図示)されており、他端側は電磁アクチュエータ12に連結されている。電磁アクチュエータ12は、駆動回路13によって駆動される。
【0016】
すなわち、電磁アクチュエータ12が駆動回路13からの駆動信号を受けると、図2の矢印Xで示す方向に動作する。これにより、電磁アクチュエータ12に連結されたコーナーキューブプリズム11の一端も矢印Xで示す方向に移動する。
【0017】
ここで、コーナーキューブプリズム11の形状を図3に示す。図3(A)に示すように、コーナーキューブプリズム11は、複数の反射面11aを有しており、これらの反射面11aが格子状に配置されている。また、各反射面11aは、4つの反射部を有している。そして、図3(A)に示すように、各反射面11aにおける少なくとも2つの反射部を用いて、相手装置からの光信号を反射するようになっている。
【0018】
なお、図3(B)、(C)はそれぞれ、図3(A)に示すコーナーキューブプリズム11の図中横方向(L1−L1)及び縦方向(L2−L2)の断面図である。
【0019】
上述したコーナーキューブプリズム11の構成において、電磁アクチュエータ12を駆動すると、コーナーキューブプリズム11の一端が矢印X方向にスライド移動する。電磁アクチュエータ12が非通電状態にある場合には、各反射面11aにおける2つの反射部r1、r2のなす角度は、図3に示すように略90度となっている。このコーナーキューブプリズム11の状態を図2の実線で示す。
【0020】
コーナーキューブプリズム11が図3に示す状態にある場合には、各反射面11aにおける複数の反射部での全反射作用によって、任意の方向からの入射光を、該入射光に対して略平行光に変換して射出(反射)させることができる。
【0021】
そして、電磁アクチュエータ12を駆動すると、コーナーキューブプリズム11の一端が矢印X方向に移動することによって、各反射面11aにおける反射部r1、r2の角度が略90度の状態からずれるようになっている。このコーナーキューブプリズム11の状態を図2の点線で示す。
【0022】
各反射面11aの反射部r1、r2の角度θが略90度である場合には、相手装置から送信された光信号は、まず、各反射面11aの反射部r1に入射する。そして、反射部r1で反射した後、反射部r2で反射することにより、入射光と略平行な光となって相手装置側に向かう。
【0023】
すなわち、反射部r1、r2の角度θが略90度である場合には、相手装置からの光がそのままの状態で相手装置に向かうことになる。この反射光は、相手装置の受信ユニット(受光ユニット)300における光学系301を介して受光素子302で受光される(図1参照)。
【0024】
一方、電磁アクチュエータ12の駆動によって、反射部r1、r2の角度θを略90度の状態からずらすと、入射光と反射光が略平行となる状態からずれることになる。例えば、図2の点線で示す光路のように、相手装置からの光は、反射部r1で反射した後、反射部r2の先端側の領域で反射することにより、相手装置側とは異なる方向に向かうことになる。すなわち、コーナーキューブプリズム11での反射光は相手装置で受信されないことになる。
【0025】
上述したように各反射面11aにおける反射部r1、r2の角度θを、略90度と、略90度ではない角度との間で変化させることにより、相手装置からの光信号を変調することができる。このように光信号を変調することにより、特定の情報を含む信号を相手装置に送信することができる。
【0026】
図2に示すように、本実施例では、コーナーキューブプリズム11における反射部r1、r2の角度θが、静電距離センサ14によって検出されるようになっている。静電距離センサ14は、電磁アクチュエータ12の駆動に伴うコーナーキューブプリズム11の谷部分の変化(動作)を、該谷部分の変化に伴う静電容量の変化に基づいて検出するものである。そして、制御回路16は、静電距離センサ14の検出結果に基づいて、駆動回路13に制御信号を出力することにより、角度θの制御を行う。
【0027】
次に、本実施例である光通信装置の全体的な構成について、図1を用いて説明する。
【0028】
図1において、コーナーキューブプリズム11の一部の領域は、相手装置から送信された光の一部を透過し、残りを反射させる半透過ミラーで構成されている。そして、半透過ミラーを透過した光は、受光素子(例えば、フォトダイオード)18で受光される。
【0029】
なお、上述したコーナーキューブプリズム11の一部の領域は、相手装置からの光信号のうち少なくとも一部を透過させるものであればよい。すなわち、半透過であってもよいし、全透過であってもよい。
【0030】
受光素子18の出力信号は、信号増幅回路19で増幅された後、制御回路16に出力される。制御回路16は、受光素子18の出力に基づいて、入射信号に対して自己の変調信号を同期化することが可能となる。これにより、多重化システムを構成することができる。なお、電源17は、光通信装置10内の各回路に電力を供給する。
【0031】
本実施例では、コーナーキューブプリズム11を駆動するために電磁アクチュエータ12を用いた場合について説明したが、これに限るものではなく、上述したようにコーナーキューブプリズム11を変形させるものであれば、いかなるものでも用いることができる。
【0032】
例えば、電磁アクチュエータ12の代わりに圧電素子(電気−機械エネルギ変換素子)を用いることができる。具体的には、コーナーキューブプリズム11の端部を圧電素子に連結し、電圧の印加に伴う圧電素子の変形を利用することにより、コーナーキューブプリズム11の一端を上記と同様にスライド移動させることができる。
【0033】
また、櫛歯形状の2つの電極部材のうち一方をコーナーキューブプリズム11の一端に連結し、他方を固定する。そして、2つの電極部材に供給する電力を制御することにより、電極部材間の間隔を、静電力を用いて変化させることができる。これにより、コーナーキューブプリズム11の一端を上記と同様にスライド移動させることができる。
【0034】
一方、図3に示すコーナーキューブプリズム11に代えて、図4に示す構造(いわゆる、三浦折り構造)のプリズム11’を用いることもできる。図4に示す構造では、図4(B)、(C)に示すように、プリズム11’の平面内における互いに直交する方向(図4(A)の横方向及び縦方向)において、谷部分及び山部分が交互に連続して形成されており、谷部分の角度及び山部分の角度が略90度に設定されている。ここで、図4(B)、(C)はそれぞれ、図4(A)に示すプリズム11’の図中横方向及び縦方向の断面図を示す。
【0035】
図4に示す構造を用いれば、プリズム11’の一端を矢印で示す方向に移動させることで、プリズム11’におけるすべての反射面の反射部の角度を容易に変化させることができる。
【0036】
すなわち、プリズム11’の端部に対して僅かな力を加えるだけで、図4(C)の実線及び点線で示すように、プリズム11’の全体において、谷部分及び山部分の角度を容易に変化させることができる。そして、プリズム11’に微小な振動を加えるだけで、送信装置に向かう光信号を変調することができる。このように微小な振動を加えるだけなので、プリズム11’の駆動に伴う消費電力を低減することができる。
【0037】
図4に示す三浦折り構造は、微細な加工技術が必要となるが、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術によって実現することが可能である。
【0038】
次に、本実施例の変形例について、図5を用いて説明する。本変形例では、薄膜のコーナーキューブ11”を用い、静電駆動によって入射光に対する反射条件を変化させるものである。以下、本変形例について具体的に説明する。
【0039】
本変形例の原理は、上述した実施例と同様である。すなわち、薄膜コーナーキューブ11”の谷部分の角度θが略90度の場合(薄膜コーナーキューブ11”が図5の実線に示す状態の場合)には、図5の実線で示す光路のように、薄膜コーナーキューブ11”は、入射光に対して、該入射光と略平行な反射光に変換し、この反射光は相手装置(受信ユニット)側に導かれる。一方、谷部分の角度が略90度以外の場合(薄膜コーナーキューブ11”が図5の点線に示す状態の場合)には、図5の点線で示す光路のように、反射光が相手装置側とは異なる方向に導かれることになる。
【0040】
そして、薄膜コーナーキューブ11”での反射光を、上述した2つの状態間で変化させることにより、相手装置(送信ユニット)からの光信号を変調でき、特定の情報を含む信号を相手装置(受信ユニット)に向けて送信することができる。
【0041】
ここで、駆動回路13は、薄膜コーナーキューブ11”と、薄膜コーナーキューブ11”に連結された電極支持板17とに電圧を印加することにより、薄膜コーナーキュー11”及び電極支持板17間に静電力を作用させる。これにより、薄膜コーナーキューブ11”を、図5の実線で示す状態と、図5の点線で示す状態との間で動作させることができる。
【0042】
また、光学式反射モニタ15は、薄膜コーナーキューブ11”に対して検出光を照射し、薄膜コーナーキューブ11”で反射した検出光を受光する。これにより、薄膜コーナーキューブ11”の状態を検出している。
【0043】
すなわち、光学式反射モニタ15から検出光が照射されてから、検出光が薄膜コーナーキューブ11”で反射して光学式反射モニタ15に到達するまでの時間に基づいて、薄膜コーナーキューブ11”の状態(谷部分の角度θ、言い換えれば、反射部の傾斜角度)を検出することができる。
【0044】
制御回路16は、光学式反射モニタ15の出力に基づいて、駆動回路13に制御信号を出力することにより、薄膜コーナーキューブ11”の駆動を制御する。
【0045】
本実施例によれば、コーナーキューブプリズム11の一端側を微小振動させるだけで、また、変形例によれば、薄膜コーナーキューブ11”を微小振動させるだけで、相手装置(送信ユニット)から送信された光信号を変調することができ、小さな電力(具体的には、数mW程度)で変調を行うことができる。
【0046】
しかも、コーナーキューブプリズムでの反射状態を変化させて変調を行っているため、コーナーキューブプリズムに対して反射機能と変調機能とを持たせることができる。これにより、従来のように反射機能(光信号送信機能)を有する部材と、変調機能を有する回路とを別々に設ける場合に比べて、光通信装置を小型化することができる。
【0047】
また、本実施例の光通信装置では、相手装置からの光を反射させるだけであり、光信号を照射する必要がない。このため、照射する光信号に応じた電力を消費することはなく、光信号の強度に拘わらず、同一の消費電力で変調を行うことができる。しかも、光信号の照射に伴う発熱がなくなり、従来のように発熱によって光通信装置に不具合が生じてしまうこともない。
【0048】
さらに、本実施例の光通信装置では、半導体センサや発光素子を設ける必要がないため、耐放射線性を向上させることができる。また、従来の光通信装置で用いられている光学系が不要となるとともに、光学系の追尾を行うためのトラッキングシステムも不要となる。
【0049】
一方、本実施例及び変形例では、プリズムの一端を固定し、他端側を移動させているが、プリズムの一部(端部ではない部分)を固定し、両端を移動させるようにしてもよい。また、上述した説明では、プリズムを構成する反射部のなす角度を略90度と、これ以外の角度とで変化させるようにしているが、これに限るものではない。すなわち、相手装置(送信ユニット)から送信された光信号を、相手装置(受信ユニット)側に向けて反射する状態と、相手装置外に向けて反射する状態との間で、反射部の角度を変化させるようにすればよい。そして、この条件を満足するように、プリズムを構成する反射部の角度(谷部分や山部分の角度)を、適宜設定することができる。
【0050】
次に、本実施例である光通信装置の第1の利用方法について、図6を用いて説明する。ここでの利用方法は、病院内で利用するものである。
【0051】
車椅子400に取り付けられた端末401には、本実施例の光通信装置が設けられている。端末401は、車椅子400に乗っている患者の心電情報や体温情報を検出できるようになっている。
【0052】
一方、天井500には、光信号を送信する送信ユニットと、光信号を受信する受信ユニットとが、所定の間隔を空けて設けられている。
【0053】
送信ユニットの光照射領域AREA1、AREA2内に車椅子400が位置している場合には、送信ユニットからの光信号が端末401に設けられた光通信装置のプリズムで反射することにより、この反射光が受信ユニットで受信されることになる。
【0054】
このように光通信装置で反射した光信号を受信ユニットで受信することにより、車椅子400の位置情報を取得することが可能となる。また、送信ユニットからの光信号を変調することにより、心電情報や体温情報などを含む信号を受信ユニットに送信することができる。
【0055】
受信ユニットで得られた情報は、医師等が使用する端末に送信される。これにより、医師等は、車椅子に乗った患者の状態をリアルタイムで監視することができる。
【0056】
ここで、車椅子400に設けられる光通信装置は、上述したように省電力化を図ることができるため、長時間、使用することができる。
【0057】
また、病院内で使用する以外にも、ビル内に用いられる移動体光テレメータに、本実施例の光通信装置を搭載することができる。
【0058】
次に、本実施例である光通信装置の第2の利用方法について、図7を用いて説明する。ここでの利用方法は、本実施例の光通信装置を、月面上で移動する探査車に搭載したものである。
【0059】
月面に対して上空にあるオービター600は、月面700上の探査車800に対して、所定の照射角(例えば、略1mrad)でレーザー等トラッキングを行いながら光信号を送信する。探査車800には、本実施例の光通信装置801が搭載されている。
【0060】
宇宙空間では、光信号の減衰が無いと考えられるため、月面700に対して100km離れた位置から、1mradの照射角度で10Wのレーザー光を照射すると、直径が略100mの光束が月面700上に到達することになる。
【0061】
ここで、探査車800に搭載された光通信装置801内のコーナーリフレクタの大きさを0.1m^2とし、コーナーリフレクタにおいて、オービター600からの光信号を1mradで反射させたとする。
【0062】
また、コーナーリフレクタで反射した光信号は、オービター600に設けられた0.5m^2の光学系を通過して、受光素子としての冷却型PINフォトダイオードで受光されるものとする。ここで、冷却型PINフォトダイオードとしては、雑音等価入力(NEP)が1×10−14[W/(Hz)1/2]のものを使用する。
【0063】
この場合において、光学系への入射パワーは5×10−11Wとなり、10MHzのデータ送信時において、SN比が略2となる。
【0064】
ここで、デジタル方式の伝送であることを考慮すると、ビット誤り率は、リードソロモン符号訂正法を利用して、10−5以下と推定される。この値は、データ伝送上において問題ない値である。上述した推定結果から、探査車800及びオービター600間での光通信が可能となる。
【0065】
また、上述した利用方法以外の他の利用方法について、以下に説明する。
【0066】
まず、本実施例の光通信装置を車等(より具体的には、車の窓)に設けることにより、道路施設側に設けられた相手装置との間で双方向の通信を行うことができる。これにより、ETCの利用、車両の識別、リアルタイム走行車両診断等を行うことができる。しかも、これらのシステムのコストダウンを図ることができる。
【0067】
本実施例の光通信装置は、上述したように小型化できるため、容易に車等に設置することができる。しかも、温度や振動等の外部環境からの影響を受けにくいため、特に車両に搭載するのに適している。
【0068】
次に、本実施例の光通信装置を、携帯型電子機器(例えば、携帯電話)に設けることもできる。従来、IrDA等の光通信規格に沿った光通信が実用化されているが、携帯電話に発光機を設けているため、電力上の制約から通信距離が概ね1mとなっている。
【0069】
ここで、本実施例の光通信装置を用いれば、屋内外を問わず外部(相手装置)から送信された光信号を反射させるだけであるため、通信距離を従来に比べて広げることができる。しかも、本実施例の光通信装置は、小型であるとともに、消費電力を低減できるため、携帯型電子機器に搭載しても携帯型電子機器が大型化したり、電力を大幅に消費したりすることはない。
【0070】
次に、老人養護施設での老人の管理を行うために、本実施例の光通信装置を用いることもできる。具体的には、健康管理や位置情報を必要としている者に対して、本実施例の光通信装置が搭載された腕時計状のテレメータを携帯させることができる。
【0071】
そして、老人養護施設内に、光通信装置に対して光信号を照射する送信ユニットと、光通信装置で反射した光信号を受信する受信ユニットとを設けることにより、テレメータを携帯した者の位置情報を確認することが可能となる。また、光信号を変調することにより、携帯者の健康情報を送信させることもできる。
【0072】
次に、留守中の自宅やペットホテルにいるペットの健康状態を知るために、本実施例の光通信装置を用いることができる。本実施例の光通信装置は小型化可能であるため、例えば、ペットの首輪に設けることができる。これにより、光通信装置で光信号を変調することにより、ペットの健康情報を送信することができる。
【0073】
なお、以下に説明する実施例においても、上記と同様の利用方法を適用することができる。
【実施例2】
【0074】
本発明の実施例2である光通信装置について説明する。本実施例では、図8に示す液晶ユニットを用いて入射光に対する反射状態を変化させるものである。
【0075】
図8において、本実施例における液晶ユニット40は、透明電極41、液晶主材42、偏光板43及び主反射板(電極)44を有している。そして、透明電極41及び主反射板44に印加する電圧を制御することにより、光信号を吸収する状態と、光信号を透過させる状態との間で変化させることができる。
【0076】
液晶ユニット40(液晶主材42)が光吸収状態にある場合には、相手装置からの光信号が吸収され、該光信号は反射しない。一方、液晶ユニット40(液晶主材42)が光透過状態にある場合には、相手装置からの光信号が透過し、主反射板44で反射する。これにより、光信号が相手装置に導かれる。
【0077】
上述したように液晶ユニット40を、光吸収状態と光透過状態との間で動作させることにより、相手装置からの光信号を変調することができる。
【0078】
ここで、液晶主材42としては、強誘電性液晶を用いることができ、この場合には、従来のネマティック液晶に比べて、3桁以上の応答速度が実現できる。
【実施例3】
【0079】
次に、本発明の実施例3である光通信装置について説明する。本実施例では、反射面に振動波を発生させることにより、入射光に対する反射状態を変化させるものである。
【0080】
具体的には、図9(A)に示すように、弾性体となる反射部材51の端部に圧電素子52を設け、圧電素子52への印加電圧を制御することにより、反射部材51の表面に振動波を発生させることができる。ここで、反射部材51の表面には、黒色の膜が形成されており、振動波を発生させない状態(すなわち、平面の状態)では、相手装置(送信ユニット)から送信された光信号に対する反射率が低くなっている。
【0081】
反射部材51の表面に振動波を発生させると、この振動波によって相手装置(送信ユニット)から送信された光信号に対する反射率を向上させることができる。すなわち、振動波を発生させない状態と、振動波を発生させた状態とに変化させることにより、反射率を変化させることができる。これにより、相手装置(送信ユニット)からの光信号に対して変調を行い、この信号を相手装置(受信ユニット)に送信することができる。
【0082】
ここで、反射部材51の表面に形成される振動波は、反射部材51の表面に入射する光の波長に対して1/2又は1/4の波長となるように設定されている。
【0083】
一方、図9(B)に示すような構成とすることもできる。すなわち、反射部材53を圧電素子で構成し、電圧の印加によって圧電素子を変形させることにより、圧電素子の表面に振動波を発生させることもできる。
【0084】
ここで、平面に対して振動波を発生させることもできるし、予め反射面にグリッドを形成し、そこに別な振動波を発生させて反射強度を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施例1である光通信システムを示す概略図である。
【図2】実施例1における光通信装置の駆動機構を示す図である。
【図3】実施例1の光通信装置に用いられるコーナーキューブプリズムの正面図及び断面図である。
【図4】実施例1の光通信装置に用いられる三浦折り構造のプリズムの正面図及び断面図である。
【図5】実施例1の変形例である光通信装置の駆動機構を示す図である。
【図6】本発明の光通信システムの利用形態を示す図である。
【図7】本発明の光通信システムの利用形態を示す図である。
【図8】本発明の実施例2である光通信装置の一部の構成を示す図である。
【図9】本発明の実施例3における光通信装置の駆動機構を示す図(A、B)である。
【図10】従来の光通信システムを示す概略図である。
【符号の説明】
【0086】
11:コーナーキューブプリズム
12:電磁駆動ユニット
13:駆動回路
14:静電距離センサ
16:制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置及び受信装置に対して光通信が可能な光通信装置であって、
前記送信装置からの光信号を前記受信装置に向けて反射する第1の状態と、前記光信号を前記受信装置外に向けて反射する第2の状態との間で動作可能な反射手段と、
該反射手段を駆動する駆動手段と、
該駆動手段の駆動を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記駆動手段を介して前記反射手段を前記第1及び第2の状態間で動作させることにより、前記光信号を変調して前記受信装置に送信することを特徴とする光通信装置。
【請求項2】
前記反射手段の前記第1及び第2の状態を検出する検出手段を有し、
前記制御手段は、前記検出手段の検出結果に基づいて前記駆動手段を駆動することを特徴とする請求項1に記載の光通信装置。
【請求項3】
前記反射手段は、第1及び第2の反射部を有しており、
前記第1及び第2の反射部のなす角度は、前記第1の状態において略90度であり、前記第2の状態において略90度以外であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光通信装置。
【請求項4】
前記反射手段は、電気−機械エネルギ変換素子を有しており、
前記駆動手段は、前記電気−機械エネルギ変換素子への電圧の印加によって、前記電気−機械エネルギ変換素子の表面に振動波を発生させることを特徴とする請求項1又は2に記載の光通信装置。
【請求項5】
前記駆動手段は、電気−機械エネルギ変換素子を有しており、電圧の印加に伴う前記電気−機械エネルギ変換素子の変形により前記反射手段を前記第1及び第2の状態間で動作させることを特徴とする請求項1又は2に記載の光通信装置。
【請求項6】
前記駆動手段は、前記反射手段を静電駆動することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光通信装置。
【請求項7】
前記反射手段は、前記光信号の少なくとも一部を透過させる透過領域を有しており、
前記透過領域を透過した光信号を受信する受信手段を有し、
前記制御手段は、前記受信手段の出力に基づいて前記駆動手段を駆動することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光通信装置。
【請求項8】
送信装置及び受信装置に対して光通信が可能な光通信装置であって、
前記送信装置からの光信号を前記受信装置に向けて反射する第1の状態と、前記光信号を吸収する第2の状態との間で変化する反射手段と、
該反射手段を駆動する駆動手段と、
該駆動手段の駆動を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記駆動手段を介して前記反射手段を前記第1及び第2の状態間で変化させることにより、前記光信号を変調して前記受信装置に送信することを特徴とする光通信装置。
【請求項9】
前記反射手段は、
前記第1の状態において前記光信号を透過するとともに、前記第2の状態において前記光信号を吸収する液晶素子と、
該液晶素子が透過状態にある場合において、前記光信号を反射する反射面とを有していることを特徴とする請求項8に記載の光通信装置。
【請求項10】
前記液晶素子が、強誘電性液晶で構成されていることを特徴とする請求項9に記載の光通信装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の光通信装置と、
前記光通信装置に対して光信号を送信する送信装置と、
前記光通信装置で変調した前記光信号を受信する受信装置とを有することを特徴とする光通信システム。
【請求項12】
請求項1から10のいずれかに記載の光通信装置と、
前記光通信装置に対して光信号を送信する送信ユニットと、前記光通信装置で変調した前記光信号を受信する受信ユニットとを含む送受信装置とを有することを特徴とする光通信システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−37047(P2007−37047A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−221446(P2005−221446)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000244110)明星電気株式会社 (22)
【Fターム(参考)】