説明

光重合性ポリマーミセル及びその製造方法、並びに光重合性ポリマーミセルを含むインク組成物

【課題】本発明は、光(ラジカル)重合性に優れ、高濃度領域であっても急激な粘度上昇のない、常温での保存安定性や高温(例えば40〜70℃の領域)保存安定性に優れ、インク組成物の構成成分である溶媒に対する耐性にも優れた光重合性ポリマーミセルを提供することを目的とする。
また、本発明は、印刷濃度が高く滲みがなく印刷部分の縁がシャープであり斑もない版印刷に匹敵する画質が得られ、非吸収性の被記録媒体にも高画質で定着性の良好な印刷ができ安全性に優れ環境への影響が少ないインクジェット記録用インク組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】親水性のブロックセグメントと少なくとも一部にラジカル重合性基を有する疎水性のブロックセグメントとを有し、かつ10,000を超える数平均分子量を有するブロックコポリマーから構成された球状のミセルに、疎水性の光重合開始剤が内包された、光重合性ポリマーミセルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光重合性ポリマーミセル及びその製造方法、並びに光重合性ポリマーミセルを含む記録液に関する。より具体的には、本発明は、光硬化型インクジェット記録用インク組成物及びそれに使用する光重合性ポリマーミセル、並びに当該ミセルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、インク組成物の小滴を飛翔させ、紙等の被記録媒体に付着させて印刷を行う印刷方法である。このインクジェット記録方法は、高解像度かつ高品位な画像を、高速で印刷することができるという特徴を有するものである。
【0003】
従来より、インクジェット記録方法に使用されるインク組成物は、染料や顔料を色材とし、水溶性有機溶剤や水を溶媒の主成分としたインク組成物である。普通紙や上質紙等の紙類やインクジェット記録用の専用紙等にこのインク組成物が印刷されている。水性顔料インクは、インク中に揮発性の高い溶剤を含まないことから安全性や環境への影響という点において優れている。ところが、水性顔料インクは、上質紙や普通紙等のインクが浸透しやすい紙類に印刷した場合には紙の構成材料とその構造に因り、滲みが発生しやすく、十分な印刷濃度が得にくく、印刷箇所の縁のシャープさも劣り、斑も発生しやすい。そのため、水性顔料インクは、凸版印刷等の従来の印刷の持つ品質には及ばない。また、上質紙や普通紙に比べてインクが浸透し難い印刷本紙にインクジェット記録用水性顔料インクを印刷した場合にはインクの溶媒成分の乾燥が不十分となることから高速印刷が困難である。金属、陶器やプラスチック製の板又はフィルムを被記録媒体とし、顔料及びインク溶媒としての非水溶性の溶剤を含むインク組成物、又は、顔料、光硬化性モノマー及び光開始剤を含む光硬化型インク組成物を用いてインクジェット印刷が行われている。これらのインク組成物に使用する溶剤やモノマーには動植物に対して毒性を示すものもあり、安全性や揮発による環境への影響等に課題が残されている。
【0004】
そこで、非吸収性の被記録媒体に印刷する場合においても、水性インク組成物を用いれば、安全面、環境面や使用の便宜性などの点から好ましい。水性インク組成物を非吸収性の被記録媒体への印刷に使用するにあたっては、色材が被記録媒体の表面に強固に定着(固着)することが要求されるとともに、固着までの時間、即ち乾燥時間が短いことが要求される。色材の被記録媒体への定着性を改善するために、水性インク組成物に成膜性を有する樹脂を共存させる提案がなされているが、印刷後に加熱乾燥が行われる。乾燥手段として光重合反応、即ち紫外線硬化反応を利用する方法も提案されている。非吸収性の被記録媒体に対しては、顔料と水溶性の光重合性モノマーや光重合性オリゴマーと水溶性の光開始剤と水とからなる水性インク組成物、又は、顔料と水溶性の光重合性ポリマーと水溶性の光開始剤と水とからなる水性インク組成物を印字する。そして、その後、水等の溶媒を乾燥させ、紫外線を照射して硬化する方法が行われる。しかしながら、これらのインクは被記録媒体への密着性や塗膜の耐水性に劣ることがある。
【0005】
エマルション形態のオリゴマー粒子内に光開始剤とモノマーとを内包させた光重合性樹脂を含む水性インクが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第01/057145号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、インクジェット記録方法に使用される水性インク組成物において、安全性や環境への影響が少ない利点を活かし、印刷濃度が高く、滲みがなく、印刷部分の縁がシャープで、かつ斑もない、版印刷の品質に匹敵するものは未だ得られていない。また、水性インクを吸収しない金属、陶器やプラスチック等の素材に対して、高画質で十分な定着性を有する印刷物も得られていない。
【0008】
特許文献1に開示されたオリゴマー粒子は、インクジェット記録用インク組成物の主要な構成成分として使用するにあたって実用上必ずしも十分とはいえず、さらなる改善の余地がある。なぜなら、上記オリゴマー粒子を用いたインク組成物は、常温での保存安定性、高温(例えば40〜70℃の領域)での保存安定性、及びインク組成物に含まれる溶媒に対する耐性の点で、実用上必ずしも十分といえないからである。
【0009】
また、特許文献1に開示されたオリゴマー粒子は、インク組成物中の含有量を増していくと粘度が急激に増加するため、インクジェット記録用に使用する場合は吐出に大きな影響をあたえるという課題がある。さらに、特許文献1に開示されたオリゴマー粒子は、光重合性の点で、特に、紫外線照射機構を有する印刷速度の大きなインクジェットプリンタに使用するには不十分である。
【0010】
そこで、本発明は、光重合性に優れ、高濃度領域であっても急激に粘度が上昇せず、常温での保存安定性や高温での保存安定性に優れ、かつインク組成物に含まれる溶媒に対する耐性に優れた、光重合性ポリマーミセルを提供することを目的とする。
本発明は、印刷濃度が高く滲みがなく印刷部分の縁がシャープであり斑もない版印刷に匹敵する画質が得られ、非吸収性の被記録媒体にも高画質で定着性の良好な印刷ができ安全性に優れ環境への影響が少ないインク組成物を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した。まず、ミセルの分子構造に着目して検討を重ねた結果、オリゴマーでなく所定のブロックコポリマーから構成されたミセルは、構造上極めて安定であることを見出した。また、かかるミセルは、光(ラジカル)重合性に優れ、高濃度領域であっても急激に粘度上昇せず、常温での保存安定性や高温(例えば40〜70℃の領域)での保存安定性に優れ、かつインク組成物に含まれる溶媒に対する耐性にも優れることを見出した。これにより、上記の課題が解決できることを見出した。
【0012】
また、本発明者らは、ミセルを形成する両親媒性化合物を含むインク組成物の高濃度領域での高粘度化現象が、かかる両親媒性化合物から形成されたミセルが球状を維持できないことに起因して生じることを見出した。具体的には、インク等の水性液体中における所定濃度の両親媒性化合物がその分子構造に起因して球状のミセルを形成する。さらに両親媒性化合物の濃度が高まると、棒状やひも状を経て、板状や層状の会合体となることにより、インク等の水性液体の粘度が高くなると推測される。従って、外部刺激に対しても、両親媒性化合物の形成する球状ミセルが球状構造を維持することによって、インク等の水性液体は両親媒性化合物の高濃度領域においても高粘度化が起こり難いことを見出した。
【0013】
また、球状ミセルから他の会合体構造に変わることにより球状ミセル中に物質を内包させた場合には内包物が漏れ出す虞があるため、外部刺激に対しても球状ミセル構造を維持することによって、上記の目的を達成することができることを見出した。
【0014】
所定のブロックコポリマーが、水を主体とした水性溶媒中で、ラジカル重合性基を有する疎水性ブロックセグメントをコア側に、親水性基を有する親水性ブロックセグメントを水性溶媒側に、各々配向して(ポリマー)ミセルを形成することを見出した。なお、以下では疎水性ブロックセグメントを「疎水性ブロック」といい、親水性ブロックセグメントを「親水性ブロック」ともいう。
上記所定のブロックコポリマーは、ラジカル重合性基が導入された疎水性ブロックと親水性ブロックとがこの順に並ぶか、又は、ラジカル重合性基が導入された疎水性ブロックと導入されない疎水性ブロックと親水性ブロックとがこの順に並ぶ。上記ミセルは両親媒性のポリマーによって形成されたものであることから、低分子の界面活性剤や両親媒性のオリゴマーから形成されたミセルに比べて外部刺激に対する耐性に優れている。具体的には、上記ミセルは、常温での保存安定性や高温(例えば40〜70℃の領域)での保存安定性に優れ、インク組成物に含まれる溶媒に対する耐性に優れ、かつ高濃度領域であっても急激な粘度上昇が抑えられることを見出した。
【0015】
従来のラジカル重合性基を有する両親媒性化合物として公知の、疎水性基と親水性基とラジカル重合性基とから構成される、反応性界面活性剤及びウレタンアクリレートオリゴマーは、その分子構造により導入できるラジカル重合性基の上限数が決まる。一般に、ウレタンアクリレートオリゴマーの方が反応性界面活性剤よりもラジカル重合性基を比較的導入しやすいが、それでも最大で10個程度である。これに対し、本発明のコポリマーは、10個を超える多数のラジカル重合性基を持つことができるため、上述の両親媒性の反応性界面活性剤やウレタンアクリレートオリゴマーに比べて光(ラジカル)重合性が高まることを見出した。
【0016】
また、水を主体とした水性溶媒中で本発明のブロックコポリマーから形成された(ポリマー)ミセルに疎水性の光重合開始剤を内包させた場合、光ラジカル重合反応が促進することを見出した。なぜなら、当該ミセルを構成する本発明のブロックコポリマーのうち、ラジカル重合性基が導入された疎水性ブロックセグメントがミセルのコア側に位置するため、疎水性の光重合開始剤は疎水性相互作用によりコアに内包されるからである。即ち、疎水性のブロックセグメントに導入されたラジカル重合性基と疎水性の光重合開始剤とはミセルのコア内で近接している。そのため、光重合開始剤の開裂反応が起こる波長の紫外線を照射すると、光重合開始剤が開裂して発生した開始剤ラジカルがミセル内という均一場で近接した多数のラジカル重合性基に対してラジカル重合反応が起こることにより、重合速度が顕著に増大する。
【0017】
このように、上記所定のブロックコポリマーが、水を主体とした水性溶媒中で、ラジカル重合性基を有する疎水性ブロックセグメントをコア側に、親水性基を有する親水性ブロックセグメントを水性溶媒側に、各々配向して(ポリマー)ミセルを形成することで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0018】
即ち、本発明は下記のとおりである。
[1]
親水性のブロックセグメントと少なくとも一部にラジカル重合性基を有する疎水性のブロックセグメントとを有し、かつ10,000を超える数平均分子量を有するブロックコポリマーから構成された球状のミセルに、疎水性の光重合開始剤が内包された、光重合性ポリマーミセル。
[2]
(a)ラジカル重合性基が導入された疎水性ブロックセグメントと親水性基を有する親水性ブロックセグメントとがこの順に並んだブロックコポリマー、及び、(b)ラジカル重合性基が導入された疎水性ブロックセグメントと疎水性基を有する疎水性ブロックセグメントと親水性基を有する親水性ブロックセグメントとがこの順に並んだブロックコポリマー、のいずれかが、水を主体とした水性溶媒中で、前記ラジカル重合性基を有する疎水性ブロックセグメントがコア側に配向し、かつ、前記親水性基を有する親水性ブロックセグメントが水性溶媒側に配向したミセル構造をとる、[1]に記載の光重合性ポリマーミセル。
[3]
前記親水性のブロックセグメントは、ポリエチレンオキサイド基、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスフィン酸基、アミド基及び水酸基からなる群より選択される一種以上の基を含み、前記疎水性のブロックセグメントは、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、フルオロアルキル基及びポリシロキサン基からなる群より選択される一種以上の基を有し、かつ、末端に前記ラジカル重合性基が存在する基を有する、[1]又は[2]に記載の光重合性ポリマーミセル。
[4]
前記ラジカル重合性基は、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基及びビニルエーテル基からなる群より選択される一種以上の基である、[1]〜[3]のいずれかに記載の光重合性ポリマーミセル。
[5]
前記疎水性の光重合開始剤が、380〜420nmの波長領域の光を吸収する、[1]〜[4]のいずれかに記載の光重合性ポリマーミセル。
[6]
親水性のブロックセグメント及び少なくとも一部がラジカル重合性基を含有する疎水性のブロックセグメントを有し、20,000を超える数平均分子量を有するブロックコポリマーを、水に溶解した溶液を得る第1工程と、前記溶液に、疎水性の光重合開始剤を添加して混合した混合液を得る第2工程と、前記混合液に、水をさらに添加して乳化を行うことにより、前記ブロックコポリマーから構成され、かつ、前記疎水性の光重合開始剤を内包したミセルを形成する第3工程と、を含む、光重合性ポリマーミセルの製造方法。
[7]
[1]〜[5]のいずれかに記載の光重合性ポリマーミセルを含む、記録液。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0020】
[光重合性ポリマーミセル]
本発明の第1実施形態は光重合性ポリマーミセルに係る。光重合性ポリマーミセルは、親水性のブロックセグメント及び疎水性のブロックセグメントを有する。そして、当該ミセルは、疎水性のブロックセグメントの少なくとも一部にラジカル重合性基を有する、数平均分子量が10,000を超えるブロックコポリマーが、水を主体とした水性溶媒中で形成される球状のミセルである。当該ミセル内に疎水性の光重合開始剤が内包される。
【0021】
ここで、本明細書における「モノマー」とは、ポリマー合成に用いられるモノマーを指し、分子量が約1,000以下の分子を意味する。本明細書における「オリゴマー」とは、ポリマー合成に用いられるモノマーから得られる比較的反覆単位の少ない低重合度生成物を指し、二量体や三量体から分子量が数千程度までのものを意味する。本明細書における「ポリマー」とは、数平均分子量が10,000を超える分子を意味する。なお、本明細書における数平均分子量は、ポリマーの全重量を、ポリマーを構成する全分子数で割ったもので、GPC法によって測定される。
また、本明細書における「球状」は、略球状ないし概ね球状をも含む。
以下、本実施形態の光重合性ポリマーミセルを説明する。
【0022】
上記光重合性ポリマーミセルは、所定のブロックコポリマーが、水を主体とした水性溶媒中でラジカル重合性基を有する疎水性ブロックをコア側に位置し親水性基を有する親水性ブロックを水性溶媒側に位置して配向しミセルを形成したものを指す。上記所定のブロックコポリマーは、ラジカル重合性基が導入された疎水性ブロックと親水性基を有する親水性ブロックとがこの順に並ぶ。又は、上記所定のブロックコポリマーは、ラジカル重合性基が導入された疎水性ブロックと疎水性基を有する疎水性ブロックと親水性基を有する親水性ブロックとがこの順に並ぶ。
本実施形態における光重合性ポリマーミセルは、コア(内殻)に光重合開始剤等の薬剤を内包し、保持することができる。
【0023】
本実施形態における水を主体とした水性溶媒とは、水を主たる溶媒として水に溶解する有機溶媒、即ち水性有機溶媒を含むものを指す。また、水としてはイオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水や蒸留水等の純水又は超純水を用いることが好ましい。
【0024】
このように、上記光重合性ポリマーミセルはブロックコポリマーから構成される。「ブロックコポリマー」とは、2種以上のブロックセグメント構造がポリマー鎖上で連結したコポリマーをいう。本実施形態におけるブロックコポリマーは、1種以上の親水性のブロックセグメントと1種以上の疎水性のブロックセグメントとを有するポリマー化合物であり、疎水性のブロックセグメントの少なくとも一部にラジカル重合性基を有することを特徴とする。従って、本実施形態におけるミセルは、「ポリマーミセル」といえる。
なお、本実施形態におけるブロックコポリマーの数平均分子量としては、ブロックコポリマーとして10,000を超えていればよい。換言すれば、かかるブロックコポリマーを構成する各ブロックセグメントは、数平均分子量が10,000以下であってもよい。
【0025】
本実施形態におけるブロックコポリマーは上述の構造を有することから両親媒性を示す。ここで、「両親媒性」とは、親水性及び疎水性の両方の性質を持つことをいう。「親水性」とは、水を主体とした水性液体に対して親和性が比較的大きい性質を表す。他方、「疎水性」とは、上記水性液体に対して親和性が比較的小さい性質を表す。
上記光重合性ポリマーミセルは、両親媒性ブロックコポリマーが重合開始剤を内包させることを特徴とする。これに対し、上記特許文献1に開示されたインクには、この両親媒性ブロックコポリマーが存在せず、上述のような問題がある。
【0026】
本実施形態の光重合性ポリマーミセルは、後述するように、水溶性の記録液(以下、記録液を「インク」ともいう。)に使用することができる。
【0027】
本実施形態におけるブロックコポリマーのセグメントの並び順として、例えば、AB型ジブロック、ABC型トリブロック、ABA型トリブロック、及び(AB)n型マルチブロックが挙げられる。上記のいずれの並び順を採った場合でも、水を主体とした水性溶媒中で、疎水性ブロックセグメントをコア側に、親水性基を有する親水性ブロックセグメントを水性溶媒側に各々位置するように配向して、ミセル(ポリマーミセル)が形成される。その際、ラジカル重合性基は最もコア側にあるということが、光(ラジカル)重合性にとって優位に働く。
【0028】
上記の並び順の一例を挙げると、AB型ジブロックコポリマーは二つのブロックセグメントからなる。「A」は親水性のブロックセグメントであり、「B」は実質的に疎水性のブロックセグメントである。実質的に疎水性のブロックセグメントは、疎水性のモノマーを構成成分として重合して得られたブロックセグメント及び親水性のブロックセグメントに対して相対的に疎水性であるブロックセグメントのうち少なくともいずれか一方を含有する。
【0029】
また、本実施形態は、少なくとも一部の上記疎水性のブロックセグメントがラジカル重合性基を有するという構成を採る。上述のように、本実施形態は、当該構成のうちラジカル重合性基に起因して、ラジカル重合反応性を向上させることが可能となる。
その理由は、上記ミセルに内包された疎水性の光重合開始剤と上記ミセルの内側に存在する疎水性のブロックセグメント中のラジカル重合性基とが、疎水性部分同士の相互作用により近接して配置されているため、互いに反応しやすくなるからである。
【0030】
即ち、当該ミセルにおいて、ミセルを形成する本実施形態のブロックコポリマーのラジカル重合性基が導入された疎水性ブロックセグメントがミセルのコア側に位置するため、疎水性の光重合開始剤は疎水性相互作用によりコアに内包される。このようにして、ラジカル重合性基と疎水性の光重合開始剤とは、ミセルのコア内で近接して配置された状態となる。そして、ミセル内という均一場において光重合開始剤の開裂反応が起こる波長の紫外線を照射すると、光重合開始剤が開裂して発生した開始剤ラジカルは、近接した疎水性ブロックセグメント中の多数のラジカル重合性基とラジカル重合反応する。そのため、非常に重合速度が増大する。
【0031】
上述のように、当該構成のうちブロックコポリマーは、従来のポリウレタンアクリレート等のオリゴマーに比して、1分子あたり一層多くのラジカル重合性基を導入することが可能となる。ミセルを構成するブロックコポリマーにおいて、疎水性ブロックセグメント中に、好ましくは10%以上、より好ましくは50%以上がラジカル重合性基を有する。
【0032】
上記ミセルを構成するブロックコポリマーの数平均分子量は、10,000を超える。数平均分子量が10,000以下であると、水を主体とした水性溶媒中で形成されたミセルが不安定になる場合があり、室温及び高温(例えば40〜70℃の領域)における保存安定性、及びインク組成物の構成成分である溶媒に対する耐性に劣り得る。また、上記数平均分子量は、より好ましくは10,000を超えて20,000以下である。
【0033】
上記ミセルの形状は上述の球状である。その理由は、ミセルが少なくとも球状を維持することにより、高濃度領域であってもミセルが高粘度化することを効果的に防止できるためである。換言すれば、上記ミセルがブロックコポリマーから構成されることにより、濃度に依存しないミセル、即ち、高濃度下でも球状が維持されるミセルを得ることができる。また、上記ミセルが球状であると、当該ミセルに内包した光重合開始剤等がミセルから漏れ出すことを防止でき、高いラジカル重合反応性を維持できる。
【0034】
上記ミセルの平均粒子径は、好ましくは1μm未満であり、より好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは100〜300nmである。平均粒子径が上記範囲内である場合、光重合開始剤等の内包物質を完全に内包することができ、粘度が高くなる等の影響も少なく、該ミセルを用いたインクジェット記録用インク組成物に用いた場合にノズルを詰まらせることがない。なお、本明細書における平均粒子径は、動的光散乱法、レーザー回折・散乱法により測定する。動的光散乱法での測定は、例えばマルバーン社製のゼータ電位・粒子径測定装置ゼータサイザーナノで行うことができる。また、レーザー回折・散乱法での測定は、例えばマイクロトラック社製のマイクロトラックMT3000IIで行うことができる。
【0035】
上記の親水性のブロックセグメントは、親水性を示す部分として、例えば、ポリエチレンオキサイド基、カルボン酸基及びその塩、スルホン酸基及びその塩、ホスフィン酸基及びその塩、アミド基、水酸基といった親水性基を含む。これらの中でも、良好な親水性を得る観点から、特にポリエチレンオキサイド基、カルボン酸基及びその塩、スルホン酸基及びその塩、ホスフィン酸基及びその塩からなる群より選択される一種以上の基が好ましい。
【0036】
親水性のブロックセグメントは、上記の基が含まれれば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基や脂環式炭化水素基を含んでも構わない。なお、上記の親水性基は、親水性のブロックセグメントの主鎖又は側鎖のうちの少なくともいずれか一方に存在すればよい。
【0037】
上記の疎水性のブロックセグメントは、疎水性を示す部分として、特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、フルオロアルキル基及びポリシロキサン基を構造中に有する。
【0038】
上記脂肪族炭化水素基の例として、特に限定されないが、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基が挙げられる。上記芳香族炭化水素基の例として、特に限定されないが、アリール基及びアラルキル基が挙げられる。上記脂環式炭化水素基の例として、特に限定されないが、シクロアルキル基が挙げられる。これらの基の具体的態様は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基及びオクチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基等のアリール基、並びにベンジル基及びフェネチル基等のアラルキル基である。
【0039】
これらの中でも、十分な疎水性が得られるという観点から、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、フルオロアルキル基及びポリシロキサン基からなる群より選択される一種以上の基が好ましい。より好ましくは、炭素数4以上の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、フルオロアルキル基及びポリシロキサン基である。さらに好ましくはn−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、イソデシル基、ラウリル基、ステアリル基、オクチル基、イソオクチル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、フルオロアルキル基及びポリシロキサン基が挙げられる。
【0040】
なお、上記の疎水性基は、疎水性のブロックセグメントの主鎖又は側鎖のうちの少なくともいずれか一方に存在すればよい。
【0041】
また、本実施形態においては、上述のように、少なくとも一部の上記疎水性のブロックセグメント中にラジカル重合性基を有する。本実施形態におけるブロックコポリマーの並び順は、上述の通りである。
なお、ラジカル重合性基は、疎水性のブロックセグメントにおける主鎖の末端に位置していてもよく、当該ブロックセグメントが側鎖を有する場合には当該側鎖の末端に位置していてもよい。
【0042】
上記ラジカル重合性基として、特に限定されないが、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、ビニルアミノ基及びビニル基が挙げられる。光ラジカル重合反応性が特に高いという観点から、より好ましくはアクリロイル基、アクリルアミド基、メタクリロイル基及びメタクリルアミド基が挙げられ、さらに好ましくはアクリロイル基及びアクリルアミド基が挙げられる。
【0043】
ここで、本実施形態におけるAB型ジブロックコポリマーの構成及び組成の一例を挙げるが、下記の例は本実施形態を何ら限定するものではない。下記式(1)で表される化学式は、本実施形態におけるAB型ジブロックコポリマーの一例である。
【0044】
[化1]

【0045】
式(1)中、親水性のブロックセグメントを下記式(2)に、疎水性のブロックセグメントを下記式(3)に、それぞれ示す。
【0046】
[化2]

【0047】
[化3]

【0048】
上記式(2)中、側鎖が上述の親水性を示す部分としてのポリエチレンオキサイド基である。
一方、上記式(3)中、主鎖に結合しているのが上述の疎水性を示す部分としての芳香族炭化水素基(ベンジル基)と末端にラジカル重合性基(アクリロイル基)が存在する基である。
【0049】
本実施形態のブロックコポリマーの合成方法としては、段階的成長法及びカップリング法が挙げられる。段階的成長法は、好ましくはリビングラジカル重合である。リビングラジカル重合は、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシニトロキシルラジカル等のニトロキシルラジカルを用いた重合、チオカルボニル化合物等の可逆的付加開裂型連鎖移動剤との交換連鎖反応を利用した重合があり得る。カップリング法においては、末端反応性ポリマー間のカップリング反応を利用する。これにより、片末端反応性ポリマー同士からはAB型ブロックコポリマー、片末端反応性ポリマーと両末端反応性ポリマーからはABA型ブロックコポリマー、両末端反応性ポリマー同士からは(AB)n型のマルチブロックコポリマーが得られる。
【0050】
〔光重合開始剤〕
本実施形態の光重合性ポリマーミセルは、疎水性の光重合開始剤を内包して含有する。このような構成を採ることにより、上述の通り、ラジカル重合反応の重合速度が非常に高まる。ここで、「疎水性の光重合開始剤がミセルに内包される」とは、疎水性の光重合開始剤がミセルのコア(内殻)に保持されることを意味する。
【0051】
光重合開始剤は、例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue,93,435(1993)や、R.S.Davidson著、Journal of Photochemistry and biology A :Chemistry,73.81(1993)や、J.P.Faussier“Photoinitiated Polymerization−Theory and Applications”:Rapra Review vol.9,Report,Rapra Technology(1998)や、M.Tsunooka et al.,Prog.Polym.Sci.,21,1(1996)等、多くに記載されている。
【0052】
疎水性の光重合開始剤の具体例として、特に限定されないが、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ジクロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンジルメチルケタール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]2−モルフォリノプロパン−1−オン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾフィルフォーメート、アゾビスイソブチリロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシドが挙げられる。
【0053】
特に、本実施形態の光重合性ポリマーミセルを顔料インクに用いる場合には、紫外域において比較的高波長側に吸収を持つ光重合開始剤を使用することが好ましい。具体的には、本実施形態に好ましく使用される疎水性の光重合開始剤は、380〜420nmの波長領域の光を吸収できるものが好ましい。したがって、当該光重合開始剤が上記範囲内の波長領域の光を吸収する場合、硬化性を向上させることができる。
【0054】
かかる疎水性の光重合開始剤としては、例えば、アシルホスフィンオキサイドが好ましく、具体的には2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドが挙げられる。
【0055】
市販品としては、例えば、Darocur TPO、IRGACURE 819(以上、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)社製)が挙げられる。
【0056】
本実施形態の光重合性ポリマーミセルは、上記の成分以外にも、疎水性のラジカル重合性モノマーを含んでいてもよい。
疎水性のラジカル重合性モノマーの具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、t−ブチルスチレン、ブロムスチレン、p−クロルメチルスチレン等のスチレン誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、イソプロピルアクリレート、アクリル酸n−ブチル、ブトキシエチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸シクロヘキシル、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、及びイソボルニルアクリレート、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノールEO付加物アクリレート、イソオクチルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシルジグリコールアクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアクリレート等の単官能アクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、イソプロピルメタクリレート、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸イソデシル、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、及びイソボルニルメタクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート、等の単官能メタクリル酸エステル類等が挙げられる。
【0057】
特に、疎水性のラジカル重合性モノマーとして、ビニル基,アクリロイル基,メタクリロイル基,プロペニル基,ビニリデン基,及びビニレン基から選ばれる1種以上の不飽和炭化水素基を2個以上有する架橋性モノマーは光重合性ポリマーミセルの光重合性をさらに高めることができ、また、強靭で耐水性、耐薬品性、耐熱性に優れた重合物(硬化物)が得られることから好ましい。架橋性モノマーとして具体的には、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、アリルアクリレート、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラブロモビスフェノールAジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン、テトラブロモビスフェノールAジメタクリレート、ジシクロペンタニルジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリグリセーロールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリルメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、及びジエチレングリコールビスアリルカーボネート等が挙げられる。
【0058】
このように、本実施形態によれば、光(ラジカル)重合性に優れ、高濃度領域であっても急激な粘度上昇のない、常温及び高温での保存安定性に優れ、インク組成物の構成成分である溶媒に対する耐性にも優れた光重合性ポリマーミセルが得られる。
【0059】
[光重合性ポリマーミセルの製造方法]
本発明の第2実施形態は、光重合性ポリマーミセルの製造方法に係る。当該製造方法は、少なくとも下記の3つの工程を含む。第1工程において、親水性のブロックセグメント及び少なくとも一部がラジカル重合性基を含有する疎水性のブロックセグメントを有するブロックコポリマーを水に混合する。第2工程において、第1工程後の混合液に疎水性の光重合開始剤を添加し混合する。第3工程において、第2工程後の混合液に水をさらに添加して乳化を行う。第1工程から第3工程により、上記の10,000を超える数平均分子量を有するブロックコポリマーから構成された疎水性の光重合開始剤を内包したミセルを形成することができる。
【0060】
以下、本実施形態の製造方法を説明する。なお、第1実施形態において既に説明した事項は、重複した内容であるため、ここでは説明を省略する。
【0061】
〔第1工程〕
第1工程においては、所定のブロックコポリマーを水に混合する。水は、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水を用いることが好ましい。また、水の温度は、好ましくは20〜60℃、より好ましくは30〜50℃である。
【0062】
〔第2工程〕
第2工程においては、第1工程後の混合液に、疎水性の光重合開始剤を添加して混合する。疎水性の光重合開始剤の添加量は、ブロックコポリマーの質量に対して1〜10質量%が好ましい。
【0063】
〔第3工程〕
第3工程においては、第2工程後の混合液に、水をさらに添加して乳化を行う。水の種類は、上記第1工程において列挙した水の種類と同様である。また、水の温度は、好ましくは20〜60℃、より好ましくは30〜50℃である。温度が上記範囲内である場合、乳化状態が良好となる。
乳化は一般的な攪拌機を使用することで行える。攪拌温度は、好ましくは30〜50℃である。攪拌速度は、好ましくは100〜500rpmである。攪拌時間は、好ましくは1〜5時間である。
【0064】
上記第3工程を経た結果、上記の10,000を超える数平均分子量を有するブロックコポリマーから構成された、疎水性の光重合開始剤を内包した光重合性ポリマーミセルが形成される。
【0065】
[記録液]
本発明の第3実施形態は、上記第1実施形態の光重合性ポリマーミセルを含む記録液に係る。記録液は、インクジェット記録、即ちインクジェット印刷に用いられる。インクジェット記録は、記録液を加熱又は加圧といった方法により小液滴として吐出させ、これを紙等の印刷メディアに付着させて記録を行うものである。
【0066】
上記記録液は、色材(記録剤)としての顔料と、光重合性ポリマーミセルと、水と、水溶性有機溶剤とを含む。なお、各種の添加剤等が上記記録液に含まれてもよい。
【0067】
本実施形態の光重合性ポリマーミセルは、光(ラジカル)重合性に優れ、高濃度領域であっても急激な粘度上昇のない、常温や高温(例えば40〜70℃の領域)での保存安定性に優れ、インク組成物の構成成分である溶媒に対する耐性にも優れる。そのため、当該光重合性ポリマーミセルを使用したインクジェット記録用インク組成物は、普通紙、上質紙や印刷本紙への印刷において、高い印刷濃度を持ち、滲みの発生がない。これにより、当該インク組成物は、印刷箇所の縁部分がシャープな仕上がりとなり、印刷斑もなく、版印刷の印刷品質を超える画質が得られ、インクが素材中に吸収されない非吸収素材への印刷に対し高画質で十分な定着性を有する印刷物が得られる。しかも、当該インク組成物は、溶剤系インクやモノマーを主成分とするUVインクに対して安全性や環境への影響が少ない。なお、上記の上質紙とは、普通紙のうちの上級印刷用紙をいう。
【0068】
普通紙とは、表面を顔料などで塗工していない紙(非塗工紙)をいい、化学パルプの使用割合により、上級印刷用紙(100%、上質紙)、中級印刷用紙(40%以上100%未満、中質紙及び上更紙)、下級印刷用紙(40%未満、更紙)に分類される。辞書本文などに使われるインディア紙などの薄葉紙も含まれる。
【0069】
印刷本紙とは、上級印刷用紙や中級印刷用紙を原紙とし、表面に塗料を塗布した印刷用紙(塗工紙)をいい、塗料の量などにより、アート紙、コート紙、軽量コート紙などに分類される。
【0070】
以下、本実施形態のインク組成物に含まれる光重合性ポリマーミセル以外の成分を説明する。
【0071】
顔料は特に限定されず、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。無機顔料としては、酸化チタン及び酸化鉄に加え、コンタクト法、ファーネスト法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。また、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料など)、フタロシアニン顔料(銅フタロシアニン顔料、無金属フタロシアニン顔料)、縮合多環顔料(アントラキノン系顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。顔料の平均粒径は、10μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.1μm以下である。ここで、本明細書における平均粒径は、動的光散乱法により測定される。
【0072】
特に黒インクとして使用されるカーボンブラックとしては、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学社(Mitsubishi Chemical Corporation)製)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン(Carbon Columbia)社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1OOO、Monarch 11OO、Monarch 1300、Monarch 1400等(キャボット社(CABOT JAPAN K.K.)製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4等(以上、デグッサ(Degussa)社製)が使用できる。
イエローインクに使用される顔料としては、C.I.Pigment Yellow 1、C.I.Pigment Yellow 2、C.I.Pigment Yellow 3、C.I.Pigment Yellow 12、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 14C、C.I.Pigment Yellow 16、C.I.Pigment Yellow 17、C.I.Pigment Yellow 73、C.I.PigmentYellow 74、C.I.Pigment Yellow75、C.I.Pigment Yellow 83、C.I.Pigment Yellow 93、C.I.Pigment Yellow95、C.I.Pigment Yellow97、C.I.Pigment Yellow 98、C.I.Pigment Yellow114、C.I.Pigment Yellow128、C.I.Pigment YelloW129、C.I.Pigment Yellow151、C.I.Pigment Yellow 154が挙げられる。
マゼンタインクに使用される顔料としては、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 48(Ca)、C.I.Pigment Red 48(Mn)、C.I.Pigment Red 57(Ca)、C.I.Pigment Red 57:1、C.I.Pigment Red112、C.I.Pigment Red 123、C.I.Pigment Red 168、C.I.PigmentRed 184、C.I.Pigment Red 202が挙げられる。
シアンインクに使用される顔料としては、C.I.Pigment Blue1、C.I.PigmentBlue 2、C.I.Pigment Blue 3、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:34、C.I.Pigment Blue 16、C.I.Pigment Blue 22、C.I.Pigment Blue 60、C.I.Vat Blue 4、C.I.Vat Blue 60が挙げられる。
【0073】
顔料は、分散剤を用いなくても水に分散が可能なもの(表面処理顔料)を利用することができる。表面処理顔料は、その表面にカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びスルホン基のうち1種以上の官能基又はその塩が結合するような表面処理により、分散剤が無くても水に分散可能である。具体的には、例えば、真空プラズマなどの物理的処理、及び、例えば次亜塩素酸やスルホン酸による酸化処理などの化学的処理により、官能基又は官能基を含んだ分子をカーボンブラックインクなどの顔料粒子の表面に導入することにより得られる。一つの顔料粒子に導入される官能基は、単一でも複数種であっても良く、導入される官能基の種類及びその程度は、インク中の分散安定性、色濃度及びインクジェットヘッド全面での乾燥性等を考慮しながら適宜決定されて良い。本実施形態において、顔料が分散剤無しに水中に安定に存在している状態も分散と表現する。本実施形態において、好ましく用いられる上記顔料は、例えば、特開平8−3498号公報記載の方法によって得ることができる。
【0074】
顔料は、分散剤で水性媒体中に分散させた顔料分散液としてインクに添加するのが好ましい。顔料分散液を調製するのに用いられる分散剤としては、一般に顔料分散液を調製するのに用いられている分散剤、例えばポリマー分散剤、界面活性剤を使用することができる。なお、この顔料分散液に含まれる界面活性剤がインク組成物の界面活性剤としても機能するであろうことは当業者に明らかであろう。
ポリマー分散剤の好ましい例としては天然ポリマーが挙げられ、その具体例としては、にかわ、ゼラチン、カゼイン、アルブミンなどのタンパク質類;アラビアゴム、トラガントゴムなどの天然ゴム類;サボニンなどのグルコシド類;アルギン酸及びアルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸アンモニウムなどのアルギン酸誘導体;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロースなどのセルロース誘導体などが挙げられる。
さらに、ポリマー分散剤の好ましい例として合成ポリマーが挙げられ、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリルコポリマー、アクリル酸カリウム−アクリルニトリルコポリマー、酢酸ビニル−アクリル酸エステルコポリマー、アクリル酸−アクリル酸エステルコポリマーなどのアクリル系樹脂;スチレン−アクリル酸コポリマー、スチレン−メタクリル酸コポリマー、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステルコポリマー、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸コポリマー、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステルコポリマーなどのスチレン−アクリル樹脂;スチレン−マレイン酸コポリマー、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、ビニルナフタレン−アクリル酸コポリマー、ビニルナフタレン−マレイン酸コポリマー、及び酢酸ビニル−エチレンコポリマー、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレンコポリマー、酢酸ビニル−マレイン酸エステルコポリマー、酢酸ビニル−クロトン酸コポリマー、酢酸ビニル−アクリル酸コポリマーなどの酢酸ビニル系コポリマー及びそれらの塩が挙げられる。
これらの中でも、特に疎水性基を持つモノマーと親水性基を持つモノマーとのコポリマー、及び疎水性基と親水性基を分子構造中に併せ持ったモノマーからなる重合体が好ましい。本実施形態に用いる顔料分散液の調製は、まず、例えば、顔料と分散剤と水又は水及び水溶性有機溶媒(例えば、低沸点有機溶媒)の混合物とを混合する。次に、分散機(例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー又はパールミル等)で分散することにより調製することができる。
【0075】
上記顔料の含有量は、インク組成物の総量中、1〜10質量%が好ましく、2〜5質量%がより好ましい。
【0076】
水、即ち主溶媒としての水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。
【0077】
本実施形態のインク組成物には、さらに2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、ε−カプロラクタム、ジメチルスルホキシド、スルホラン、モルホリン、N−エチルモルホリン、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等からなる群から選ばれる一種以上の極性溶媒を添加することができる。極性溶媒を添加することにより、インク組成物中におけるカプセル化顔料粒子の分散性が向上するという効果が得られ、インクの吐出安定性を良好にすることができる。
これらの極性溶媒の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは0.1質量%〜20質量%であり、より好ましくは1質量%〜10質量%である。
【0078】
本実施形態のインク組成物は、水性溶媒が被記録媒体に浸透することを促進する目的で、浸透剤をさらに含有することが好ましい。水性溶媒が被記録媒体に素早く浸透することによって、画像の滲みが少ない記録物を得ることができる。このような浸透剤としては、多価アルコールのアルキルエーテル(グリコールエーテル類ともいう)及び/又は1,2−アルキルジオールが好ましく用いられる。多価アルコールのアルキルエーテルとしては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等が挙げられる。1,2−アルキルジオールとしては、例えば1,2−ペンタンジオール、及び1,2−ヘキサンジオールなどが挙げられる。これらの他に、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、及び1,8−オクタンジオール等の直鎖炭化水素のジオール類を挙げることができ、これらから適宜選択して本実施形態のインク組成物に用いることができる。
【0079】
中でも、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ペンタンジオール、及び1,2−ヘキサンジオールから選ばれる1種以上が好ましい。
【0080】
これらの浸透剤の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは1〜10質量%である。含有量が1質量%以上であると、インク組成物の被記録媒体への浸透性を向上する効果が得られる。一方、含有量が20質量%以下であると、このインク組成物を用いて印刷した画像に滲みが発生することを防止でき、またインク組成物の粘度があまり高くならないようにすることができる。
【0081】
また、本実施形態のインク組成物にグリセリンを含有させることにより、そのインク組成物をインクジェット記録に用いた場合のインクジェットノズルの目詰まりが発生しにくくなり、さらにインク組成物自身の保存安定性を高めることもできる。
【0082】
また、本実施形態のインク組成物は、界面活性剤、特にアニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。アニオン性界面活性剤の具体例として、特に限定されないが、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸、アシルメチルタウリン酸、ジアルキルスルホ琥珀酸、アルキル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化オレフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸塩、アルキルザルコシン塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩及びモノグリセライトリン酸エステル塩が挙げられる。また、ノニオン性界面活性剤の具体例として、特に限定されないが、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミド、グリセリンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、シュガーアルキルエステル、多価アルコールアルキルエーテル及びアルカノールアミン脂肪酸アミドが挙げられる。
【0083】
アニオン性界面活性剤の具体例として、特に限定されないが、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩が挙げられる。ノニオン性界面活性剤の具体例として、特に限定されないが、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル系化合物、並びにポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、及びポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系化合物が挙げられる。
【0084】
特に、本実施形態のインク組成物は、界面活性剤としてアセチレングリコール系界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール系界面活性剤を含むことが好ましい。これにより、インク組成物に含まれる水性溶媒が被記録媒体へ浸透しやすくなるため、種々の被記録媒体に対して滲みの少ない画像を印刷できる。アセチレングリコール系界面活性剤として市販されている市販品を利用することできる。その具体例として、特に限定されないが、サーフィノール104、82、465、485、104PG50及びTG(いずれも商品名、Air Products and Chemicals. Inc.より入手可能)、並びにオルフィンSTG及びオルフィンE1010(以上商品名、日信化学社(Nissin Chemical Industry Co., Ltd.)製)が挙げられる。また、アセチレンアルコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えばサーフィノール61(商品名、Air Products and Chemicals. Inc.より入手可能)が挙げられる。
【0085】
これらのアセチレングリコール系界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール系界面活性剤は、インク組成物の総量に対して、好ましくは0.01〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%になるように用いることが好ましい。
【0086】
また、本実施形態のインク組成物は、pH調整剤を含有することができる。pH調整剤として、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸リチウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、フタル酸水素カリウム、及び酒石酸水素カリウムなどのアルカリ金属塩類;アンモニア;並びに、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリイソプロペノールアミン、ブチルジエタノールアミン、モルホリン、及びプロパノールアミンなどのアミン類などが挙げられる。
【0087】
また、防カビ、防腐又は防錆の目的で、安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベンチアゾリン−3−オン(製品名:プロキセルXL(アビシア社製))、及び3,4−イソチアゾリン−3−オン、4,4−ジメチルオキサゾリジンから選ばれる一種以上の化合物を、本実施形態のインク組成物に添加することができる。
【0088】
また、インクジェット記録ヘッドのノズルが乾燥することを防止する目的で、尿素、チオ尿素及びエチレン尿素よりなる群から選ばれる一種以上を本実施形態のインク組成物に添加することもできる。
【0089】
本実施形態のインク組成物は、湿潤剤をさらに含んでもよい。上記湿潤剤としては、一般に記録液に用いられるものであれば特に制限されることなく使用できる。沸点が、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上の高沸点湿潤剤を用いる。沸点が上記範囲内である場合、記録液に保水性と湿潤性を付与することができる。
【0090】
高沸点湿潤剤の具体例として、特に限定されないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、数平均分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトールが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。インク組成物に高沸点湿潤剤を添加することにより、開放状態、即ち、室温で顔料インクが空気に触れている状態で放置しても、流動性と再分散性とを長時間維持できるインクジェット印刷用顔料インクを得ることができる。さらに、このような記録液は、インクジェットプリンタを用いての印字中又は印字中断後の再起動時に、インクジェットノズルの目詰まりが生じにくくなるため、インクジェットノズルからの高い吐出安定性を有するインク組成物が得られる。上記湿潤剤の含有量は、インク組成物の総量中、1〜15質量%が好ましく、2〜10質量%がより好ましい。
【0091】
本実施形態の好ましい態様によれば、本実施形態によるインク組成物は、糖を含んでなることができる。糖の添加は湿潤性をもたらす。特に、糖の添加は保水性と湿潤性とを長期間維持する効果をインク組成物に付与するので、長期間保管しても顔料の凝集や粘度の上昇がなく優れた保存安定性を実現することができる。また、糖の添加は開放状態(室温で空気に触れている状態)に放置しても流動性と再分散性とを長時間維持する効果をインク組成物に付与することができる。さらに、糖の添加は印刷中や印刷後の再起動時でのノズルの目詰まりを防止することができるので、その結果、高い吐出安定性を得ることができる。糖の具体例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類及び四糖類を含む)及び多糖類が挙げられる。中でも好ましくはグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、ソルビット、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオースである。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、アルギン酸、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。また、これらの糖類の誘導体として、糖類の還元糖(例えば、糖アルコール(一般式HOCH2(CHOH)nCH2OH(nは2〜5の整数を表す)で表される)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ糖等が挙げられる。特に糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。これら糖類の添加量は0.1〜40質量%程度が好ましく、より好ましくは1〜30質量%程度である。
【0092】
〔記録液の物性〕
上記記録液の20℃における粘度は3〜30mPa・sであることが好ましい。本明細書における粘度は、レオメーター(PHYSICA MCR300、Paar Physica社製)により測定する。また、上記記録液の表面張力は20〜45mN/mであることが好ましい。本明細書における表面張力は、一般的な表面張力計により測定する。
【0093】
[印刷方法]
本発明の第4実施形態は、印刷方法に係る。当該印刷方法は、前述したインク組成物を印刷メディアに印刷後、紫外線を照射して印刷物を得るというものである。本実施形態の印刷方法によれば、吸収性メディア上で当該インク組成物(顔料インク)が十分硬化するため高速印刷が可能となる。
【0094】
[印刷物]
本発明の第5実施形態は、印刷物に係る。当該印刷物は、前述したインクジェット記録用インク組成物を印刷メディアに印刷後、紫外線を照射して得られる。本実施形態の印刷物は、当該インク組成物(顔料インク)が十分硬化され、かつ高い印字濃度を有する印刷画像を備えるものである。
【実施例】
【0095】
以下、本実施の形態を実施例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0096】
[両親媒性ブロックコポリマーの合成及び光重合性ポリマーミセルの調製]
〔合成例1〕
(1.ポリエチレングリコールATRPマクロ開始剤の合成)
10g(0.005モル)のポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル(数平均分子量2000)と1.0g(0.01モル)のトリエチルアミンとを、70mLの無水THFに溶解した。この溶液を氷冷槽中で少し冷却させ、4.3mL(0.035モル)の2−ブロモイソブチリルブロミドをゆっくりと加えた。次いで、この溶液を室温まで加温し、24時間攪拌した。水にこの混合液を注いだ後、塩化メチレンを用いて抽出を行った。得られた抽出物を1モル/Lの塩酸水溶液及び1モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて順に洗浄した後、硫酸マグネシウム上で乾燥し、さらに減圧下で溶媒を除去した。得られた粗生成物を溶解可能な最少量の塩化メチレンに溶解し、ジエチルエーテルを添加して沈殿させ、沈殿物をろ過して白色の固形物を得た。
【0097】
(2.ポリ(エチレングリコール)−ポリ(ベンジルメタクリレート−co−グリシジルメタクリレート)の合成)
1.1当量のN,N,N’,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンと1.1当量の臭化銅(I)と5当量のベンジルメタクリレートと5当量のグリシジルメタクリレートとをTHFに溶解した。この溶解液に1当量のポリエチレングリコールATRPマクロ開始剤を加えた。これを、室温下、アルゴンガスを用いて15〜20分間脱気し、次いで60℃で8時間加熱した。これを、10%のメタノールを含むTHFに注いだ。析出したポリマーをシリカゲル上でろ過し、臭化銅を除去した。さらに、得られたポリマーを水に対して48時間透析し、凍結乾燥した。
【0098】
(3.ポリ(エチレングリコール)−ポリ(ベンジルメタクリレート−co−アクリロイル化グリシジルメタクリレート)の合成)
11当量のポリ(エチレングリコール)−ポリ(ベンジルメタクリレート−co−グリシジルメタクリレート)をメチルエチルケトンに溶解した。この溶解液に5当量のアクリル酸を加え、テトラブチルアンモニウムクロライドを5000ppm、ヒドロキノンモノメチルエーテルを2000ppm添加して、50℃で10時間反応させた。反応終了後、水洗して、エバポレータを用いてメチルエチルケトンを除去した。
【0099】
得られた合成物を、赤外分光光度計(MAGNA-IR 860、Nicolet社製)を用いて調べたところ、エポキシド基の特性吸収1250cm-1及び950〜800cm-1の消失、並びにビニル基の特性吸収810cm-1の存在を確認した。即ち、ポリ(エチレングリコール)−ポリ(ベンジルメタクリレート−co−グリシジルメタクリレート)から、ポリ(エチレングリコール)−ポリ(ベンジルメタクリレート−co−アクリロイル化グリシジルメタクリレート)が合成されたことが確認された。
【0100】
(4.光重合性ポリマーミセルの調製)
10gのポリ(エチレングリコール)−ポリ(ベンジルメタクリレート−co−アクリロイル化グリシジルメタクリレート)と0.5gの光重合開始剤TPOとを水10gに加え、40℃に加温して混合した。ここに、40gの水を徐々に添加して、光重合開始剤を内包した両親媒性ブロックポリマーの乳化物、即ち光重合性ポリマーミセル液を調製した。
【0101】
(5.光重合性ポリマーミセルの光硬化性)
ガラス板上にバーコータを用いて、上記の光重合性ポリマーミセル液を10μmの厚みに塗布して、395nmの波長を持つLEDランプで300mJ/cm2の照射エネルギーを照射した。その結果、水の存在下で硬化物が得られた。
【0102】
〔合成例2〕
(1.ポリエチレングリコールATRPマクロ開始剤の合成)
合成例1と同様にして行った。
【0103】
(2.ポリ(エチレングリコール)−ポリ(スチレン−co−アクリル酸)の合成)
1.1当量のN,N,N’,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンと1.1当量の臭化銅(I)と5当量のスチレンと5当量のアクリル酸とをTHFに溶解し、1当量のポリエチレングリコールATRPマクロ開始剤を加えた。これを、室温下、アルゴンガスを利用して15〜20分間脱気し、次いで60℃で8時間加熱した。これを、10%のメタノールを含むTHFに注いだ。析出したポリマーをシリカゲル上でろ過し、臭化銅を除去した。さらに、得られたポリマーを水に対して48時間透析し、凍結乾燥した。
【0104】
(3.ポリ(エチレングリコール)−ポリ(スチレン−co−4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル変性アクリル酸)の合成)
11当量のポリ(エチレングリコール)−ポリ(スチレン−co−4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル変性アクリル酸)をメチルエチルケトンに溶解した。この溶解液に5当量の4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成社(Nippon Kasei Chemical Co.,Ltd)製)を加えた。ここに、テトラブチルアンモニウムクロライドを5000ppm、かつ、ヒドロキノンモノメチルエーテルを2000ppm添加して、50℃で10時間反応させた。反応終了後、水洗して、エバポレータを用いてメチルエチルケトンを除去した。
【0105】
得られた合成物を、上記赤外分光光度計を用いて調べたところ、エポキシド基の特性吸収1250cm-1及び950〜800cm-1の消失、並びにビニル基の特性吸収810cm-1の存在を確認した。即ち、ポリ(エチレングリコール)−ポリ(スチレン−co−アクリル酸)から、ポリ(エチレングリコール)−ポリ(スチレン−co−4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル変性アクリル酸)が合成されたことが確認された。
【0106】
(4.光重合性ポリマーミセルの調製)
10gのポリ(エチレングリコール)−ポリ(スチレン−co−4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル変性アクリル酸)と0.5gの光重合開始剤TPOとを水10gに加え、40℃に加温して混合した。ここに、40gの水を徐々に添加して、光重合開始剤を内包した両親媒性ブロックポリマーの乳化物、即ち光重合性ポリマーミセル液を調製した。
【0107】
(5.光重合性ポリマーミセルの光硬化性)
ガラス板上にバーコータを用いて、上記の光重合性ポリマーミセル液を10μmの厚みに塗布して、395nmの波長を持つLEDランプで300mJ/cm2の照射エネルギーを照射した。その結果、水の存在下で硬化物が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、特に印刷本紙、上質紙や普通紙等の吸収性メディアを用いた高速印刷に好適な、紫外線硬化型のインクジェット印刷用記録液、並びにインクジェット印刷方法及びインクジェット印刷物として、産業上の利用可能性を有する。また、金属、陶器やプラスチック等の被記録媒体に対して優れた密着性(定着性)を有する高画質の印刷物が得られる紫外線硬化型のインクジェット印刷用記録液、並びにインクジェット印刷方法及びインクジェット印刷物として、産業上の利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性のブロックセグメントと少なくとも一部にラジカル重合性基を有する疎水性のブロックセグメントとを有し、かつ10,000を超える数平均分子量を有するブロックコポリマーから構成された球状のミセルに、疎水性の光重合開始剤が内包された、光重合性ポリマーミセル。
【請求項2】
(a)ラジカル重合性基が導入された疎水性ブロックセグメントと親水性基を有する親水性ブロックセグメントとがこの順に並んだブロックコポリマー、及び、
(b)ラジカル重合性基が導入された疎水性ブロックセグメントと疎水性基を有する疎水性ブロックセグメントと親水性基を有する親水性ブロックセグメントとがこの順に並んだブロックコポリマー、
のいずれかが、水を主体とした水性溶媒中で、前記ラジカル重合性基を有する疎水性ブロックセグメントがコア側に配向し、かつ、前記親水性基を有する親水性ブロックセグメントが水性溶媒側に配向したミセル構造をとる、請求項1に記載の光重合性ポリマーミセル。
【請求項3】
前記親水性のブロックセグメントは、ポリエチレンオキサイド基、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスフィン酸基、アミド基及び水酸基からなる群より選択される一種以上の基を含み、
前記疎水性のブロックセグメントは、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、フルオロアルキル基及びポリシロキサン基からなる群より選択される一種以上の基を有し、かつ、末端に前記ラジカル重合性基が存在する基を有する、請求項1又は2に記載の光重合性ポリマーミセル。
【請求項4】
前記ラジカル重合性基は、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基及びビニルエーテル基からなる群より選択される一種以上の基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光重合性ポリマーミセル。
【請求項5】
前記疎水性の光重合開始剤が、380〜420nmの波長領域の光を吸収する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光重合性ポリマーミセル。
【請求項6】
親水性のブロックセグメント及び少なくとも一部がラジカル重合性基を含有する疎水性のブロックセグメントを有し、20,000を超える数平均分子量を有するブロックコポリマーを、水に溶解した溶液を得る第1工程と、
前記溶液に、疎水性の光重合開始剤を添加して混合した混合液を得る第2工程と、
前記混合液に、水をさらに添加して乳化を行うことにより、前記ブロックコポリマーから構成され、かつ、前記疎水性の光重合開始剤を内包したミセルを形成する第3工程と、
を含む、光重合性ポリマーミセルの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光重合性ポリマーミセルを含む、記録液。

【公開番号】特開2011−201973(P2011−201973A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68821(P2010−68821)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】