説明

光量絞り装置

【課題】観音開き方式の光量絞り装置において、光を絞るための絞り羽根の角度を正確に把握し、絞り羽根の作動精度を高める。
【解決手段】磁気センサ16の磁気検出部40及び磁石20が、回転軸24の中心線C24上かつランプ光路Lを外れた位置に、各々の対向面40a、20aを絞り羽根12の回転軸C24と直交する方向へと向けて配置されている。磁気検出部40及び磁石20の何れも、ランプ光路Lから大きく外れ、ランプ光の熱及び光の影響を受ける範囲の外側に位置することとなる。従って、熱及び光による磁気検出部40及び磁石20の劣化、磁気センサ16の角度検出精度の低下を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影型の高精細度テレビジョン(HDTV)システムや、ビデオプロジェクタ等に使用される、光量絞り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
投影型の高精細度テレビジョン(HDTV)システムや、ビデオプロジェクタは、使用環境に応じて画像の明度を調整することができるように、光源に大光量のランプを用いつつ必要に応じてその光量を絞ることができるものが一般的である。ここで、ランプの光量を絞るためにランプに印加する電力を低下させる場合には、定格電力の70%以下でランプを使用すると、ランプの寿命が短くなるといった問題がある。そこで、ランプの寿命を縮めることなく必要な光量に調節することができるように、ランプの光を機械的に遮断する光量絞り装置が広く用いられている。この光量絞り装置には、相互に平行にスライド可能に配置された二枚の絞り羽根を具備し、該二枚の絞り羽根の重合面積の変化に応じて、ランプ光路の遮蔽面積が調節される、スライド方式の光量絞り装置や、二枚の絞り羽根が、同期回転する二本の平行な回転軸に夫々支持されて各回転軸を中心に回転することにより、二枚の絞り羽根の間に設定されたランプ光路の遮蔽面積が調節される、観音開き方式の光量絞り装置(例えば、特許文献1参照)が用いられている。
【0003】
この光量絞り装置は、映像シーンの変化に対する敏速な応答性を確保する上で、二枚の絞り羽根の開度を高速かつ正確に制御することが必要不可欠となっている。そして、観音開き方式の光量絞り装置においては、二枚の絞り羽根の開度は、二枚の絞り羽根の回転軸の回転角度によって調整されるものであることから、二本の回転軸の回転角度を正確に計測し、モータの回転角度を正確に制御するための磁気センサを具備している。
【0004】
図3、図4には、従来の観音開き方式の光量絞り装置10の、絞り羽根112、114の周辺部の構造が示されている。図3の例では、磁気センサ16には、板状の磁気検出部としてホール素子18を用いたセンサが採用されている。そして、被検出部である磁石20は、コ字状のヨーク22の縦壁に固定され、図4に示されるように、ホール素子18及び磁石20の対向面18a、20aは、絞り羽根112、114の回転軸の中心線24C又は26Cと平行に位置する、「縦型」に配置されている。
【0005】
ヨーク22は、モータ28の回転部若しくはモータの回転軸に直接回転駆動される部分30(図示の例では、モータの回転軸に固定された歯車)に固定されており、かかる歯車30に絞り羽根112も固定されているので、絞り羽根112の回転軸の回転角度の変化は、磁石20の対向面20aの角度変化と一致する。一方、ホール素子18は、回路基板32に実装され、回路基板32はブラケット等の支持部材に固定されていることから、絞り羽根112、114が回転しても、ホール素子18の対向面18aの角度は変化しない。そして、素子面(対向面18a)に垂直な磁界成分のみ検出し、検出した磁界の強度に比例した出力電圧を発生するという、ホール素子18の基本原理に基づき、絞り羽根112、114の回転角度を把握することができる。
なお、歯車30は、絞り羽根114の回転軸26に固定されている歯車36と噛み合っていることから、モータ30の動力は、歯車30、36を介して回転軸26に伝達され、絞り羽根112、114は同期回転する。又、当然ながら、磁気センサ16、回路基板32、歯車30、36は、何れもランプ光路Lとの干渉を避ける位置に設けられている。
【0006】
【特許文献1】WO2005−026835
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、観音開き方式の光量絞り装置10は、二枚の絞り羽根112、114が、同期回転する二本の平行な回転軸に夫々支持されて各回転軸の軸線C24、C26を中心に回転することにより、二枚の絞り羽根112、114の間に、軸線C24、C26と直交する方向に設定されたランプ光路Lの遮蔽面積が調節されるものであるが、図3に示されるように、ランプ光の熱及び光の影響を受ける範囲は、設定されたランプ光路Lよりも広範囲に広がっていることから、熱及び光によるホール素子18及び回路基板32の劣化を招くおそれがあった。又、磁石20も、熱減磁による影響を抑えるために、安価な磁石の使用を避ける必要があった。そして、熱によるホール素子18及び磁石20の劣化により、角度の検出精度の低下を防ぐことが困難であった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、投影型の高精細度テレビジョン(HDTV)システムや、ビデオプロジェクタに用いることが可能な、ランプの光を機械的に遮断する観音開き方式の光量絞り装置において、光を絞るための絞り羽根の角度を正確に把握し、絞り羽根の作動精度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0010】
(1)二枚の絞り羽根が、二本の平行な回転軸に夫々支持され、前記二枚の絞り羽根の間にランプ光路が設定され、前記二本の回転軸のうち一方の回転軸を直接駆動するモータと、前記一方の回転軸から他方の回転軸へと動力を伝達する動力伝達手段とが、前記ランプ光路から外れた位置に設けられ、前記二枚の絞り羽根が各回転軸を中心に回転することで、前記ランプ光路の遮蔽面積が調節される形式の光量絞り装置であって、前記回転軸の中心線上かつ前記ランプ光路を外れた位置に、前記回転軸の回転角度を検出するための、板状の磁気検出部及び板状の磁石からなる磁気センサが、前記磁気検出部及び前記磁石の対向面を前記回転軸と直交する方向へと向けて配置されている光量絞り装置。
【0011】
本項に記載の光量絞り装置は、磁気センサの板状の磁気検出部及び板状の磁石が、回転軸の中心線上かつランプ光路を外れた位置に、各々の対向面を絞り羽根の回転軸と直交する方向へと向けて配置されていることから、板状の磁気検出部及び板状の磁石の何れも、ランプ光路から大きく外れ、ランプ光の熱及び光の影響を受ける範囲の外側に位置することとなる。又、ランプ光に対し板状の磁気検出部及び板状の磁石の側面が面することとなるので、ランプ光(又はランプ光から一部拡散する光)に照らされる面積(投影面積)も大幅に減少する。従って、熱及び光による磁気検出部及び回路基板の劣化や、ランプ光に含まれる高エネルギーの紫外線に起因する、回路基板の劣化を回避することができる。よって、熱及び光による磁気検出部及び磁石の劣化、磁気センサの角度検出精度の低下を防ぐことができる。又、磁石が受ける熱減磁の影響を抑え、高価な磁石を使用しなくとも、長期にわたり所望の磁力を維持することができる。
【0012】
(2)前記磁石が、前記モータの回転部に対し、樹脂性接着剤により接着固定され、前記磁気センサが、前記磁石に覆い被さるようにして配置されている光量絞り装置。
本項に記載の光量絞り装置は、磁石が、モータの回転部に対し、樹脂性接着剤により接着固定され、更に、磁気検出部が磁石に覆い被さるようにして配置されていることから、ランプ光に含まれる高エネルギーの紫外線が、樹脂性接着剤に及ぼす影響を十分に抑えることができる。
【0013】
(3)上記(2)項において、前記磁石が、前記動力伝達手段を構成する前記二本の回転軸に設けられた歯車に対し、樹脂性接着剤により接着固定され、前記磁気センサが、前記磁石に覆い被さるようにして配置されている光量絞り装置(請求項2)。
本項に記載の光量絞り装置は、磁石が、二枚の絞り羽根を同期回転させるための歯車に対し、樹脂性接着剤により接着固定され、更に、磁気検出部が、磁石に覆い被さるようにして配置されていることから、ランプ光に含まれる高エネルギーの紫外線が、樹脂性接着剤に及ぼす影響を十分に抑えることができる。
【0014】
(4)前記磁気検出部はMRセンサである光量絞り装置(請求項3)。
本項に記載の光量絞り装置は、磁気センサの磁気検出部にMRセンサが用いられることで、絞り羽根の角度を正確に把握するものである。MRセンサは、それを構成するエレメントと平行な方向の磁界の強さ及び向きによって抵抗値が変化する性質の素子を利用して、角度変化に応じて変化する出力電圧から絞り羽根の角度を検出するものであり、低磁界で高感度、優れた温度特性並びに広い温度範囲での作動、高速応答が可能となっている。
【発明の効果】
【0015】
本発明はこのように構成したので、投影型の高精細度テレビジョン(HDTV)システムや、ビデオプロジェクタに用いることが可能な、ランプの光を機械的に遮断する観音開き方式の光量絞り装置において、光を絞るための絞り羽根の角度を正確に把握し、絞り羽根の作動精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
図1、図2には、本発明の実施の形態に係る観音開き方式の光量絞り装置38の、絞り羽根12、14の周辺部の構造が示されている。磁気センサ42を構成する磁気検出部には、板状の磁気検出部としてMRセンサ40が用いられており、板状の磁石20は、歯車30の上面に固定され、MRセンサ40が、磁石20に覆い被さるようにして配置されている。すなわち、図2に示されるように、MRセンサ40及び磁石20の対向面40a、20aは、絞り羽根12、14の回転軸の中心線24C上で、かつ、中心線24C、26Cと直交する方向へと向けるようにして、「横型」に配置されている。なお、図2中の符号S、Nは、磁石20の磁極を示し、符号Bで示される矢印は、磁石20から発生する磁界の向きを示している。
【0017】
MRセンサ40が実装された回路基板32は、ランプ光路Lから外れた位置において、絞り羽根12、14の回転軸の中心線24C、26Cと直交する方向へと広がるように配置されており、その一部分が、MRセンサ40の取付け部として突出した形状を有している。なお、モータ28には、ボイスコイルモータが用いられており、高速制御に優れ、絞り羽根12、14の動作を俊敏に行うことが可能であることから、映像シーンに対するコントラストが敏速に対応可能となっている。
【0018】
上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。まず、本発明の実施の形態に係る光量絞り装置38は、磁気センサ42の磁気検出部40及び磁石20が、回転軸24の中心線C24上かつランプ光路Lを外れた位置に、各々の対向面40a、20aを絞り羽根12の回転軸C24と直交する方向へと向けて配置されていることから、磁気検出部40及び磁石20の何れも、ランプ光路Lから大きく外れ(例えば、「縦型」に配置した場合と比較して20mmほど外れ)、ランプ光の熱及び光の影響を受ける範囲の外側に位置することとなる。又、ランプ光Lに対し板状の磁気検出部40及び板状の磁石20の側面が面することとなるので、ランプ光L(又はランプ光から一部拡散する光)に照らされる面積(投影面積)も大幅に減少する。
【0019】
従って、熱及び光による磁気検出部40及び回路基板32の劣化や、ランプ光に含まれる高エネルギーの紫外線に起因する、回路基板32の劣化を回避することができる。又、熱及び光による磁気検出部40及び磁石20の劣化、磁気センサ42の角度検出精度の低下を防ぐことができる。従来技術(図3)との比較において、磁気センサ42の温度は、100℃から80℃へと低下することが、発明者らによって確認されている。従って、磁石20が受ける熱減磁の影響を抑え、高価な磁石を使用しなくとも、長期にわたり所望の磁力を維持することができる。
【0020】
又、本発明の実施の形態に係る光量絞り装置は、磁石20が、二本の回転軸24、26を同期回転させるための歯車30に対し、樹脂性接着剤により接着固定され、磁石20が、磁気検出部40に覆い被さるようにして配置されていることから、ランプ光に含まれる高エネルギーの紫外線が、樹脂性接着剤に及ぼす影響を十分に抑えることができる。
なお、磁石20の固定場所は、モータ28の回転部に直接固定されていても良く、又、必要に応じ、歯車30と対をなす歯車36に固定されていても良い。
【0021】
又、本発明の実施の形態に係る光量絞り装置40は、磁気センサ42の磁気検出部にMRセンサ40が用いられることで、絞り羽根12、14の角度を正確に把握することができる。MRセンサ40は、MRセンサ40を構成するエレメントと平行な方向の磁界の強さ及び向きによって抵抗値が変化する性質の素子を利用して、角度変化に応じて変化する出力電圧から、絞り羽根12、14の角度を検出する(出力電圧のSin/Cos波からTan−1を演算する。)ものであり、低磁界で高感度、優れた温度特性並びに広い温度範囲での作動、高速応答が可能となっている。又、MRセンサ40を用いることにより、組立て精度や温度変化に対する角度検出精度の誤差を、ホール素子18を用いる場合よりも小さく抑えることが可能である。
なお、必要に応じ、ホール素子18を用いて「横型」の磁気センサを構成することとしても、熱及び光による磁気検出部40及び磁石20の劣化、磁気センサの角度検出精度の低下を防ぐことができることは、理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る光量絞り装置の斜視図であり、かつ、要部を拡大して示したものである。
【図2】図1に示される光量絞り装置の、磁気センサを抽出して示したものであり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図3】従来の光量絞り装置の斜視図である。
【図4】図3に示される光量絞り装置の、磁気センサを抽出して示したものであり、(a)は平面図、(b)は斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
12、14:絞り羽根、20:磁石、20a:対向面、 24、26:回転軸、 C24、C26:回転軸の軸線、28:モータ、 30、36:歯車、32:制御回路基板、38:光量絞り装置、40:MRセンサ、40a:対向面、42:磁気センサ、L:ランプ光路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二枚の絞り羽根が、二本の平行な回転軸に夫々支持され、前記二枚の絞り羽根の間にランプ光路が設定され、前記二本の回転軸のうち一方の回転軸を直接駆動するモータと、前記一方の回転軸から他方の回転軸へと動力を伝達する動力伝達手段とが、前記ランプ光路から外れた位置に設けられ、前記二枚の絞り羽根が各回転軸を中心に回転することで、前記ランプ光路の遮蔽面積が調節される形式の光量絞り装置であって、
前記回転軸の中心線上かつ前記ランプ光路を外れた位置に、前記回転軸の回転角度を検出するための、板状の磁気検出部及び板状の磁石からなる磁気センサが、前記磁気検出部及び前記磁石の対向面を前記回転軸と直交する方向へと向けて配置されていることを特徴とする光量絞り装置。
【請求項2】
前記磁石が、前記モータの回転部、若しくは、前記動力伝達手段を構成する前記二本の回転軸に設けられた歯車に対し、樹脂性接着剤により接着固定され、前記磁気センサが、前記磁石に覆い被さるようにして配置されていることを特徴とする請求項1記載の光量絞り装置。
【請求項3】
前記磁気検出部はMRセンサであることを特徴とする請求項1又は2記載の光量絞り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−63828(P2009−63828A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231592(P2007−231592)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】