説明

光電センサ

【課題】 検出閾値をシフトさせることなく、受光素子の出力レベルをシフトさせて、環境要因による受光量のレベル変動を補償する光電センサを提供することを目的とする。
【解決手段】 外部入力端子Tiからトリガー信号が入力された場合、その時点で得られた受光量をシフト基準値Lsとして記憶し、このシフト基準値Ls及び予めユーザが指定したシフト目標値Laの差に基づいて、その後の受光量をレベルシフトさせることによって、環境要因によるレベルシフトを抑制し、かつ、ユーザが予め指定している検出閾値Lthをシフトさせることなく、検出判定処理を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電センサに係り、更に詳しくは、受光素子の出力レベルに基づいて検出判定を行う光電センサであって、環境要因による受光素子の出力レベル変動を補償する光電センサの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
投光素子から検出領域に向けて光を出射し、その透過光又は反射光を受光素子で検出して、その受光量を所定の検出閾値と比較すれば、上記検出領域(つまり光の伝搬経路)における様々な状態判別を行うことができる。例えば、検出領域における検出対象物の有無、あるいは、検出対象物の色や形状などを判別することができる。このような方法により状態検出を行う光電センサは、FAシステム等において広く普及している。
【0003】
この種の光電センサでは、検出対象物の状態変化とは異なる何らかの原因(以下、環境要因と呼ぶ)によって、受光素子の出力レベルがシフトし、正常な検出動作を行うことができなくなる場合があった。例えば、光電センサを用いて検出対象物の有無を検出している場合であれば、検出物が存在しない場合の出力レベル(背景レベル)と、検出物が存在する場合の出力レベル(動作レベル)との間に、検出閾値が設定されていなければならないが、環境要因によって受光素子の出力レベルが大きくシフトし、検出閾値が両レベル間から外れてしまう場合があった。検出閾値の設定は、ユーザによって予め行われているため、この様な環境要因によるレベルシフトがあった場合、光電センサを正常に動作させるためには、ユーザが検出閾値を再設定しなければならなかった。
【0004】
一般に、受光素子の出力レベルは、様々な要因によってシフトすることが知られている。例えば、空気中の粉塵量や受光面の汚れなどによって検出領域からの光量が変化すれば、受光素子の出力レベルが変化する。また、検出領域からの光量が一定であっても、受光素子の温度特性や経時変化によって、出力レベルが変化する場合もある。このため、従来の光電センサでは、検出閾値を再設定しなければならない場合が少なくなかった。
【0005】
この様な問題を解決する従来の光電センサが、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1には、ゼロリセット操作時における受光量がゼロとなるように、受光素子の出力レベルをシフトさせるゼロリセット機能を備えた光電センサが開示されている。この光電センサでは、ゼロリセット操作があった場合に、その時の受光素子の出力レベルがゼロリセット基準値として記憶され、その後は、受光量として、受光素子の出力レベルからゼロリセット基準値を引いた値(シフト受光量)が表示され、また、検出閾値として、ユーザ設定された検出閾値からゼロリセット基準値を引いた値(シフト検出閾値)が表示される。そして、これらのシフト受光量及びシフト検出閾値を比較することにより検出判定が行われる。
【0006】
このようなゼロリセット機能を用いることによって、受光素子の出力に不測のレベルシフトが生じた場合であっても、ゼロリセット操作を行うだけで、検出閾値を再設定することなく、長期間にわたって光電センサを正常動作させることが可能になる。
【特許文献1】特開2001−124594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、受光素子から出力される検出信号のレベルは、検出領域からの光量が増大するのに応じて増大し、最も暗い場合でもゼロ又は正の値となる。従って、受光素子の出力レベルは、負の値になることはなく、光電センサは、受光素子の出力レベルについて、その符号を考慮する必要はない。
【0008】
ところが、ゼロリセット機能を有する従来の光電センサの場合、ゼロリセットを行った時点でゼロレベルとなるように、その後の受光素子の出力レベルをシフトさせるため、ゼロリセット時よりも受光量が低下すれば、シフト受光量は負の値になる。例えば、動作レベルが背景レベルよりも低いダークオン(dark-on)モードで光電センサを運用している場合に、背景レベルについてゼロリセットを行えば、動作レベルでのシフト受光量は負の値となる。
【0009】
従って、ゼロリセット機能を有する光電センサが、従来の光電センサと同様、負の受光量をゼロとみなし、負の値を取り扱わない場合、ゼロリセット時よりも受光量が低下していることを検出できず、特に、ダークオンモードではゼロリセット機能を利用することができない。一方、負の受光量も取り扱い可能にしておけばこの様な問題は生じないが、符号を考慮しない従来の光電センサに比べて開発コストが増大し、その結果、製造コストも増大してしまう。
【0010】
また、ゼロリセット操作が行われた場合、受光素子の出力レベルだけでなく、検出閾値もシフトされ、光電センサには、レベルシフト後の受光量や検出閾値が表示される。ところが、光電センサに表示されている検出閾値がユーザ設定値と異なっている場合、シフト機能が有効であるために、検出閾値が自動的にシフトされた結果なのか、あるいは、シフト機能は無効であり、ユーザが設定入力を誤った結果であるのかをユーザ自身が判断しなければならず、操作に慣れないユーザを混乱させるという問題があった。
【0011】
さらに、ゼロリセット機能を利用するには、適切なタイミングで定期的にゼロリセット入力を行う必要がある。一般に、受光面の汚れなどに起因する受光素子の出力レベルのシフトは、比較的緩慢であり、頻繁にゼロリセットを行う必要は必ずしもないが、定期的にゼロリセットを行っておく必要がある。また、受光素子から所望レベル(背景レベル又は動作レベルのいずれか)が出力されているタイミングで、ゼロリセットを行う必要があり、煩雑であった。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、検出閾値をシフトさせることなく、受光量をレベルシフトさせて、環境要因によるレベル変動を補償する光電センサを提供することを目的とする。
【0013】
また、受光量をレベルシフトさせて、環境要因によるレベル変動を補償するとともに、レベルシフト後に更に減少した受光量も検出することができる光電センサを安価に提供することを目的とする。
【0014】
さらに、受光量についてレベルシフトを行うためのトリガー信号を自動的に生成することができる光電センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による光電センサは、ユーザにより指定されたシフト目標値及び検出閾値を記憶するユーザ設定値記憶手段と、検出領域からの光量に応じた検出信号を出力する受光素子と、上記検出信号をアナログデジタル変換して受光量を出力するアナログデジタル変換手段と、トリガー信号に基づいて上記受光量をシフト基準値として記憶するシフト基準値記憶手段と、上記シフト基準値及び上記シフト目標値の差に基づいて上記受光量をレベルシフトさせてシフト受光量を生成するレベルシフト手段と、上記シフト受光量を表示する表示手段とを備えて構成される。この様な構成により、トリガー信号の入力時におけるシフト受光量をユーザに指定させることができる。
【0016】
また、本発明による光電センサは、上記構成に加えて、上記レベルシフト手段は、上記受光量から上記シフト基準値を減算するとともに、上記シフト目標値を加算し、シフト受光量を求める演算手段からなる。この様な構成により、ユーザは、トリガー信号の入力時におけるシフト受光量をシフト目標値として指定することができる。
【0017】
また、本発明による光電センサは、上記構成に加えて、上記シフト受光量及び上記検出閾値を比較し、検出判定を行う検出判定手段を備え、上記表示手段が、上記検出閾値を表示するように構成される。この様な構成により、ユーザによって設定された検出閾値をシフトさせる必要がなく、そのまま検出判定に使用し、あるいは、表示させることができる。
【0018】
また、本発明による光電センサは、上記構成に加えて、上記トリガー信号が入力される外部入力端子を備えて構成される。この様な構成により、光電センサの外部から入力されたトリガー信号に基づいてレベルシフトを行わせることができる。
【0019】
また、本発明による光電センサは、上記構成に加えて、上記シフト受光量及び上記検出閾値を比較し、検出判定を行う検出判定手段と、上記検出判定手段による判定結果を遅延させ、上記トリガー信号を生成するトリガー信号生成手段とを備えて構成される。この様な構成により、適切なタイミングでトリガー信号を生成し、シフト基準値を自動更新させることができる。
【0020】
また、本発明による光電センサは、検出領域からの光量に応じた検出信号を出力する受光素子と、上記検出信号をアナログデジタル変換して受光量を出力するアナログデジタル変換手段と、トリガー信号に基づいて、上記受光量をシフト基準値として記憶するシフト基準値記憶手段と、上記シフト基準値に基づいて上記受光量をレベルシフトさせてシフト受光量を生成するレベルシフト手段と、上記シフト受光量に基づいて検出判定を行う検出判定手段と、検出判定手段による判定結果を遅延させ、上記トリガー信号を生成するトリガー信号生成手段とを備えて構成される。この様な構成により、適切なタイミングでトリガー信号を生成し、シフト基準値を自動更新させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、トリガー信号の入力時におけるシフト受光量をユーザに指定させることにより、検出閾値をシフトさせることなく、受光量をシフトさせることができる。このため、環境要因による受光量の変動を補償しつつ、ユーザにとって理解しやすい光電センサを提供することができる。
【0022】
また、本発明によれば、トリガー信号の入力時におけるシフト受光量(シフト目標値)をユーザに指定させることにより、トリガー信号の入力時における受光量(シフト基準値)よりも少ない検出領域からの光量も検出することができる。特に、背景レベルの出力時にトリガー信号を入力し、かつ、ダークオンモードによる検出判定を行うことが可能になる。
【0023】
さらに、本発明によれば、検出判定結果を遅延させて、トリガー信号を生成しているので、適切なタイミングでトリガー信号を自動的に生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による光電センサの一構成例を示したブロック図である。この光電センサは、光ファイバ30g及び導電線31mを介して接続されたセンサアンプ1及びセンサヘッド2からなり、センサヘッド2が、検出領域に向けて投光するとともに、当該検出領域からの光量を検出する反射型の光検出装置である。
【0025】
投光素子11は、LEDやレーザダイオード等の光源からなる。投光制御部12は、投光素子11の点灯制御を行っており、上記光源の発光タイミングや点灯時の光量を制御している。投光素子11からの光は、光ファイバ30gを介してセンサヘッド2へ送られ、投光レンズ等からなる投光光学系20を介して、検出領域へ出射される。
【0026】
検出領域内の検出対象物によって反射された上記出射光は、その他の環境光とともに受光光学系21に入射される。受光光学系21は集光レンズ等からなり、検出領域からの光を受光素子22へ集光させている。受光素子22は、光量に応じた検出信号を出力する光電変換素子であり、光量が増大すれば検出信号のレベルも増大する。この検出信号は、受光回路23により導電線31mを介してセンサアンプ1へ送られ、主制御部10へ入力される。なお、受光素子22から出力されるアナログ信号としての検出信号は、受光回路23又は主制御部10においてデジタル信号に変換される。本明細書では、このアナログデジタル変換によって得られた検出量を「受光量」と呼ぶことにする。
【0027】
主制御部10は、投光制御部12、操作入力部13、表示部14、メモリ15及び入出力回路16を制御しているマイクロプロセッサであり、後述する当該光電センサについての詳細動作は、いずれも主制御部10上で実行されるプログラムによって実現される。操作入力部13は、ユーザがデータ入力やモード選択を行うための操作キーからなり、キー操作信号は主制御部10へ出力される。表示部14は、主制御部10がデータや実行中のモードを表示するための表示手段である。メモリ15は、主制御部10のプログラム及びデータを保持している記憶手段であり、メモリ15内のデータのリード及びライトは、主制御部10によって行われる。
【0028】
外部端子T1〜T3,Tiは、センサアンプ1を図示しない外部機器に接続するための入出力端子であり、例えば、FAシステムのシーケンサーに接続される。入出力回路16は、主制御部10が、これらの外部端子T1〜T3,Tiを介して、外部機器との間で信号入出力を行うためのインターフェース回路である。端子T1〜T3は、受光量に基づく検出判定結果を出力するための信号出力端子であり、個別の判定条件によって検出判定処理をそれぞれ行う3つのチャンネルCH1〜CH3に対応している。端子Tiは、トリガー信号を入力するための信号入力端子である。
【0029】
図2は、反射型の光電センサの基本動作についての説明図である。図中の(a)は、検出領域内に検出対象物が存在ぜず、センサヘッド2からの光が、検出対象物で反射されない場合が示されている。このとき、センサヘッド2には、比較的弱い光しか入射されず、受光量として、低レベルの背景レベルL1が得られる。一方、図中の(b)は、検出領域内に検出対象物が存在し、センサヘッド2からの光が検出対象物により反射される場合が示されている。このとき、検出対象物で反射された比較的強い光がセンサヘッド2に入射され、受光量として、より高レベルの動作レベルL2が得られる。
【0030】
主制御部10は、上記受光量を検出閾値Lthと比較することにより検出判定を行っている。図2の場合、動作レベルL2が背景レベルL1よりも高いレベルであることから、受光量が検出閾値Lth以下であれば、検出判定結果としてオフ信号を出力させ、検出閾値Lthを超えていればオン信号を出力させる。このような検出判定処理は、ライトオン(Light-on)モードと呼ばれている。なお、後述する通り、動作レベルL2が背景レベルL1よりも低い場合は、ダークオンモードによる検出判定処理が行われる。
【0031】
図1のメモリ15には、ユーザが予め指定した各種の設定データが格納されている。ここでは、ユーザ設定データとして、検出閾値Lth及びシフト目標値Laが上記検出判定モードとともに保持されているものとする。検出閾値Lthは、背景レベルL1及び動作レベルL2間の値として予めユーザが指定した値である。また、シフト目標値Laは、トリガー信号の入力時に得られる受光量をシフトさせたシフト受光量として予めユーザが指定した値である。
【0032】
また、メモリ15には、トリガー信号の入力タイミングに基づいて得られたシフト基準値Lsが保持されている。シフト基準値Lsは、トリガー信号の入力時に実際に得られる受光量であり、トリガー信号に基づいて主制御部10によって更新される。
【0033】
なお、メモリ15は、外部メモリであってもよいし、内部メモリであってもよい。また、電源遮断によって消去されず、電源再投入時に従前の設定データを記憶している不揮発性メモリであってもよいし、電源遮断によって従前の設定データが消去される揮発性メモリであってもよい。より好ましくは、シフト基準値Lsが、揮発性メモリに格納され、シフト目標値Laや検出閾値Lthが、不揮発性メモリに格納される。
【0034】
この光電センサは、受光素子22の検出信号が環境要因によってシフトした場合、検出された受光量をシフトさせてシフト受光量を求め、このシフト受光量に基づいて検出判定が行われるシフト機能を有している。このレベルシフトは、シフト目標値La及びシフト基準値Lsに基づいて行われる。より具体的には、シフト基準値Lsがシフト目標値Laとなるように、シフト基準値Ls及びシフト目標値Laの差をシフト量とし、主制御部10が受光量のレベルシフトを行っている。
【0035】
本実施の形態では、予め想定された背景レベルがシフト目標値Laとして指定され、また、トリガー信号は背景レベルの出力期間に入力されるものとする。FAシステムなどで用いられる光電センサは、移動中の検出対象物4が検出領域を通過したか否かを検出する目的で用いられる場合が多い。このような光電センサでは、受光素子22から動作レベルが出力される期間よりも、背景レベルが出力される期間の方が圧倒的に長く、背景レベルの出力中にトリガー信号を入力する方が容易であり、シフト目標値Laとして背景レベルの想定値が指定される。ただし、シフト目標値Laとして動作レベルの想定値を指定し、動作レベルの出力期間にトリガー信号を入力してもよい。
【0036】
図3は、上記シフト機能によるレベルシフトの一例を示した説明図である。受光素子22によって検出された現在の受光量が3000、シフト基準値Lsが2500、シフト目標値Laが1000であれば、まず、受光量3000からシフト基準値2500を減算して、その差500を求めた後、シフト目標値1000を加算し、シフト受光量として1500が求められる。つまり、シフト目標値Laからシフト基準値Lsを引いた−1500がシフト量として用いられる。
【0037】
図4のステップS101〜S103は、トリガー信号入力時における図1の光電センサの動作の一例を示したフローチャートである。主制御部10は、外部端子Tiからトリガー信号が入力されると、シフト機能が有効であるか否かを判別する(ステップS101)。その結果、シフト機能が無効である場合には、当該トリガー信号を無視して、何も行わずに当該処理フローを終了する。
【0038】
なお、シフト機能の有効又は無効は、ユーザによる操作入力部13のキー操作によって切り替え選択され、その選択結果がメモリ15に保持されている。また、シフト機能が無効となる期間中であっても、メモリ15はシフト目標値La及びシフト基準値Lsを保持している。このため、その後、ユーザがシフト機能を有効にすれば、シフト機能を無効化する前と同じ状態が再現される。
【0039】
シフト機能が有効である場合、主制御部10は、現在の受光量を取得する(ステップS102)。すなわち、投光制御部12へ制御信号を出力し、投光素子11を発光させ、受光素子22から出力される検出信号をA/D変換した値を取得する。次に、主制御部10は、この受光量をシフト基準値Lsとしてメモリ15に格納する(ステップS103)。このとき、メモリ15内のシフト基準値Lsが上書きされるため、メモリ15には、常に最新のシフト基準値Lsのみが保持されている。
【0040】
図5のステップS201〜S209は、ライトオンモードにおける検出判定処理の一例を示したフローチャートである。まず最初に、図4のステップS102の場合と同様にして、現在の受光量の取得が行われる(ステップS201)。受光量を取得した主制御部10は、次に、シフト機能が有効であるか否かを判別する(ステップS202)。その結果、シフト機能が有効である場合、主制御部10は、現在の受光量をレベルシフトさせてシフト受光量を求める(ステップS203)。つまり、取得した受光量にシフト目標値Laを加算するとともに、シフト基準値Lsを減算して、環境要因によるレベルシフトを補償したシフト受光量を求める。その後の処理(ステップS204〜S209)では、当該シフト受光量が現在の受光量として用いられる。一方、シフト機能が無効であれば、上記レベルシフトは行われず、ステップS204へ進む。
【0041】
次に、受光量が負の値であれば、受光量をゼロにし(ステップS204,205)、その後の検出判定処理(ステップS206〜S208)及び表示処理(ステップS209)では受光量の絶対値のみが取り扱われる。検出判定処理では、受光量が検出閾値Lthと比較される。動作モードがライトオンモードである場合、受光量が検出閾値Lthを超えていれば、出力端子T1〜T3からオン信号が出力され、検出閾値Lth以下であれば、オフ信号が出力される。
【0042】
また、表示処理では、表示部14に表示されている受光量及び検出閾値Lthが主制御部10によって更新される。なお、表示部14は、受光量及び検出閾値Lthを同時に表示できるものである必要はない。例えば、ユーザの操作入力により、受光量、検出閾値Lth、その他のデータを切替表示する構成であってもよい。
【0043】
本実施の形態によれば、メモリ15が、トリガー信号入力時の受光量としてユーザが予め想定したシフト目標値Laと、トリガー信号入力時における実際の受光量であるシフト基準値Lsとを保持し、主制御部10が、シフト目標値La及びシフト基準値Lsの差をシフト量として、その後の受光量についてレベルシフトを行い、求められたシフト受光量を用いた検出判定処理及び表示処理を行っている。
【0044】
つまり、従来のゼロリセットと同様、環境要因による受光量のシフトを補償することができるのに加えて、トリガー信号入力時におけるシフト受光量をゼロに固定化するのではなく、シフト目標値Laとしてユーザに予め指定させている。従って、トリガー信号の入力後に、受光量がトリガー信号入力時よりも低下しても、シフト受光量は負の値にはならず、検出判定処理及び表示処理において絶対値のみを取り扱っていても、正確な検出判定及び表示を行うことができる。つまり、コストアップを抑制しつつ、受光量のシフト補償と、検出精度の向上とを両立させている。
【0045】
また、トリガー信号入力時におけるシフト受光量をシフト目標値Laとすることにより、従来のゼロシフトの場合のように、ユーザが予め指定した検出閾値Lthをシフトさせる必要がない。従って、ユーザは、シフト機能をほとんど意識しなくても、光電センサを使用することができ、検出閾値Lthの自動シフトによって、不慣れなユーザを混乱させることもない。
【0046】
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2による光電センサの一構成例を示したブロック図である。図1の光電センサと比較すれば、センサアンプ1の外部端子T1,Tiに信号遅延回路5が接続されている点で異なる。
【0047】
信号遅延回路5は、入力信号を予め定められた所定時間tdだけ遅延させる遅延手段からなる。信号遅延回路5では、外部端子T1から出力される検出判定信号を遅延させるとともに、必要に応じて、信号レベルの変換や正負論理の変換等も行われ、トリガー信号として、外部端子Tiへ入力される。例えば、シーケンサーのプログラムにより、信号遅延回路5を実現することもできる。
【0048】
図7は、図6の光電センサの動作の一例を示したタイミングチャートである。図中の(a)は、実際の受光量、(b)は、シフト機能が有効である場合のシフト受光量、(c)は、外部端子T1から出力される検出判定信号、(d)は、信号遅延回路5で生成されたトリガー信号である。
【0049】
この図では、動作レベルL2が背景レベルL1より高レベルであり、シフト受光量が検出閾値Lthを超えると、検出判定信号がオン状態となる。つまり、実施の形態1の場合と同様、光電センサをライトオンモードで動作させている。また、この光電センサは、トリガー信号の立ち下がり時に、シフト基準値Lsを更新するものとする。
【0050】
外部端子T1を外部端子Tiに接続して、検出判定信号をそのままトリガー信号とした場合、受光量の変化が緩慢であれば、受光量が背景レベルL1まで低下する前に取得された受光量が、シフト基準値Lsが更新される可能性がある。つまり、背景レベルL1よりも高い値が新たなシフト基準値Lsとなる可能性がある。このため、信号遅延回路5の遅延時間tdをオフ信号の出力開始から受光量が背景レベルL1になるまで時間よりも長くしておけば、新たなシフト基準値Lsとして、背景レベルL1が採用されるタイミングでトリガー信号を自動的に入力することができる。例えば、遅延時間tdを受光量の変化時間以上にしておけばよい。
【0051】
本実施の形態によれば、検出判定信号を遅延させてトリガー信号を生成している。このため、適切なタイミングでトリガー信号を生成し、シフト基準値を自動更新させることができる。
【0052】
なお、本実施の形態では、信号遅延回路5がセンサアンプ1の外部回路である場合の例について説明したが、信号遅延回路5をセンサアンプ1の内部に設けることもできる。この場合、遅延時間tdはユーザにより設定できることが望ましい。また、本実施の形態では、実施の形態1の光電センサに信号遅延回路5を適用した場合の例について説明したが、従来のゼロシフト機能を有する光電センサに信号遅延回路5を適用しても同様の作用効果を奏することができる。
【0053】
実施の形態3.
本実施の形態では、本発明を適用可能な光電センサの他の構成例について、更に説明する。
【0054】
図8は、本発明の実施の形態3による光電センサの一構成例を示したブロック図である。図1の光電センサと比較すれば、受光素子22及び受光回路23がセンサアンプ1内に設けられ、受光光学系21で集光された入射光が、光ファイバ31gを介して、センサヘッド2からセンサアンプ1へ伝送される点で異なっている。つまり、センサアンプ1及びセンサヘッド2間における投光系び受光系の伝送経路が、ともに光ファイバ30g,31gにより構成されている。
【0055】
図9は、本発明の実施の形態3による光電センサの他の構成例を示したブロック図である。図1の光電センサと比較すれば、投光素子11がセンサヘッド2内に設けられ、投光制御部12からの制御信号が、導電線30mを介して、センサアンプ1からセンサヘッド2へ伝送される点で異なっている。つまり、センサアンプ1及びセンサヘッド2間における投光系び受光系の伝送経路が、ともに導電線30m,31mにより構成されている。
【0056】
本発明は、実施の形態1及び2の場合と全く同様にして、図8及び図9の光電センサにも適用することができ、全く同様の作用効果が得られる。さらに、センサアンプ1及びセンサヘッド2を一体として構成した光電センサについても、全く同様にして本発明を適用することができ、同様の作用効果が得られる。
【0057】
実施の形態4.
上記実施の形態1乃至3では、反射型の光電センサに本発明を適用する場合の例について説明したが、本発明は、透過型の光電センサにも適用することができる。本実施の形態では、本発明が適用された透過型の光電センサについて説明する。
【0058】
図10は、本発明の実施の形態4による光電センサの一構成例を示したブロック図である。この光電センサは、センサアンプ1、投光ヘッド2A及び受光ヘッド2Bにより構成される透過型の光検出装置である。投光ヘッド2A及び受光ヘッド2Bは、光ファイバ30g,31gを介して、センサアンプ1にそれぞれ接続されている。また、投光ヘッド2A及び受光ヘッド2Bは、検出領域を挟んで対向配置され、投光ヘッド2Aから出射され、検出領域を透過した光が受光ヘッド2Bにより検出される。なお、図1に示されたブロックに相当するブロックには同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
図11は、透過型の光電センサの基本動作について説明図である。図中の(a)は、検出領域内に検出対象物が存在ぜず、投光ヘッド2Aからの光が、検出対象物により遮断されない場合が示されている。このとき、受光ヘッド2Bには、比較的強い光が入射され、受光量として、高レベルの背景レベルL1が得られる。一方、図中の(b)は、検出領域内に検出対象物が存在し、投光ヘッド2Aからの光が検出対象物により遮断される場合が示されている。このとき、受光ヘッド2Bには比較的弱い光のみが入射され、受光量として、より低レベルの動作レベルL2が得られる。
【0060】
主制御部10は、上記受光量を検出閾値Lthと比較して、検出判定を行っている。図11の場合、動作レベルL2が背景レベルL1よりも低いレベルであることから、受光量が検出閾値Lth以上であれば、検出判定結果としてオフ信号を出力させ、検出閾値Lth未満であればオン信号を出力させる。このような検出判定処理は、実施の形態1のライトオンモードに対し、ダークオンモードと呼ばれている。
【0061】
なお、本実施の形態でも、実施の形態1の場合と同様、予め想定された背景レベルL1がシフト目標値Laとして指定され、また、トリガー信号は背景レベルL1の出力期間に入力されるものとする。
【0062】
図12のステップS301〜S309は、ダークオンモードにおける検出判定処理の一例を示したフローチャートである。この処理フローは、ステップS306を除き、図5のフローチャート(実施の形態1)と同様である。すなわち、シフト受光量が検出閾値Lth以上であれば、オフ信号が出力され、シフト受光量が検出閾値Lth未満であればオン信号が出力される(ステップS306〜S308)。
【0063】
上述した通り、ダークオンモードでは、動作レベルL2が背景レベルL1より低く、検出閾値Lthも背景レベルL1より低くなる。このため、仮に、ステップS303においてゼロリセットを行ったとすれば、それに応じて検出閾値Lthもシフトさせなければならず、負の値になってしまう。また、検出対象物が存在する場合のシフト受光量も負の値となり、ステップS304及びS305を含む処理フローでは、検出判定を行うことができない。
【0064】
つまり、ゼロリセットを行う従来の光電センサでは、ダークオンモードにおいては、検出判定を行うことが不可能になる。これに対し、本発明によるシフト機能を備えた光電センサでは、トリガ入力時の受光量をシフト目標値Laにシフトさせ、検出閾値Lthをシフトさせないため、この様な問題は生じない。
【0065】
図13は、本発明の実施の形態4による光電センサの他の構成例を示したブロック図である。図10の光電センサと比較すれば、投光素子11が投光ヘッド2A内に設けられ、受光素子22及び受光回路23が受光ヘッド2B内に設けられ、投光制御部12からの制御信号が、導電線30mを介して投光ヘッド2Aへ伝送され、受光回路23からの検出信号が、導電線31mを介してセンサアンプ1へ伝送される点で異なっている。つまり、センサアンプ1及びセンサヘッド2間における投光系び受光系の伝送経路が、ともに導電線30m,31mにより構成されている。
【0066】
本発明は、図10の光電センサの場合と全く同様にして、図13の光電センサにも適用することができ、全く同様の作用効果が得られる。さらに、センサアンプ1、投光ヘッド2A及び受光ヘッド2Bを一体として構成した光電センサについても、全く同様にして本発明を適用することができ、同様の作用効果が得られる。
【0067】
実施の形態5.
本実施の形態では、検出判定を行うための複数のチャンネルCH1〜CH3を有する光電センサに本発明を適用する場合について説明する。
【0068】
図14は、本発明の実施の形態5による光電センサの一構成例を示したブロック図である。この光電センサは、投光素子11が、複数の光源11Lからなり、投光制御部12は、各光源11Lの輝度や点灯タイミングを個別に制御することができる。複数の光源11Lは、同色の組み合わせであってもよいし、異なる色の組み合わせであってもよい。ここでは、RGBからなる3色の光源11Lが用いられ、任意の1又は2以上の光源を同時に点灯させることにより、出射光を任意の色にすることができるものとする。
【0069】
メモリ15内には、シフト目標値La、検出閾値Lth、検出判定モード、点灯条件などからなるチャンネル条件15Cが、各チャンネルCH1〜CH3ごとに格納されている。
【0070】
各チャンネルCH1〜CH3による検出判定処理は、タイムシェアリングによって順次に実行される。つまり、各チャンネルの検出判定処理は、それぞれが別個の処理として、時間軸上で順次に実行され、発光条件や検出判定条件の異なる複数の検出判定処理が、見かけ上、並列処理されている。
【0071】
このような多チャンネルによる検出判定処理が行われる光電センサの場合であれば、各チャンネルごとにシフト機能の有効又は無効をユーザに選択させ、また、各チャンネルごとにシフト目標値Laを設定すれば、各チャンネルCH1〜CH3ごとに、本発明を提供することができ、上記の各実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態1による光電センサの一構成例を示したブロック図である。
【図2】反射型の光電センサの基本動作について説明図である。
【図3】シフト機能によるレベルシフトの一例を示した説明図である。
【図4】トリガー信号入力時における図1の光電センサの動作の一例を示したフローチャートである。
【図5】ライトオンモードにおける検出判定処理の一例を示したフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態2による光電センサの一構成例を示したブロック図である。
【図7】図6の光電センサの動作の一例を示したタイミングチャートである。
【図8】本発明の実施の形態3による光電センサの一構成例を示したブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態3による光電センサの他の構成例を示したブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態4による光電センサの一構成例を示したブロック図である。
【図11】透過型の光電センサの基本動作について説明図である。
【図12】ダークオンモードにおける検出判定処理の一例を示したフローチャートである。
【図13】本発明の実施の形態4による光電センサの他の構成例を示したブロック図である。
【図14】本発明の実施の形態5による光電センサの一構成例を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0073】
1 センサアンプ
2 センサヘッド
2A 投光ヘッド
2B 受光ヘッド
4 検出対象物
5 信号遅延回路
10 主制御部
11 投光素子
12 投光制御部
13 操作入力部
14 表示部
15 メモリ
16 入出力回路
20 投光光学系
21 受光光学系
22 受光素子
23 受光回路
30g,31g 光ファイバ
30m,31m 導電線
L1 背景レベル
L2 動作レベル
La シフト目標値
Ls シフト基準値
Lth 検出閾値
T1〜T3,Ti 外部端子
td 遅延時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザにより指定されたシフト目標値及び検出閾値を記憶するユーザ設定値記憶手段と、
検出領域からの光量に応じた検出信号を出力する受光素子と、
上記検出信号をアナログデジタル変換して受光量を出力するアナログデジタル変換手段と、
トリガー信号に基づいて上記受光量をシフト基準値として記憶するシフト基準値記憶手段と、
上記シフト基準値及び上記シフト目標値の差に基づいて上記受光量をレベルシフトさせてシフト受光量を生成するレベルシフト手段と、
上記シフト受光量を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする光電センサ。
【請求項2】
上記レベルシフト手段は、上記受光量から上記シフト基準値を減算するとともに、上記シフト目標値を加算し、シフト受光量を求める演算手段からなることを特徴とする請求項1に記載の光電センサ。
【請求項3】
上記シフト受光量及び上記検出閾値を比較し、検出判定を行う検出判定手段を備え、
上記表示手段が、上記検出閾値を表示することを特徴とする請求項1に記載の光電センサ。
【請求項4】
上記トリガー信号が入力される外部入力端子を備えたことを特徴とする請求項1に記載の光電センサ。
【請求項5】
上記シフト受光量及び上記検出閾値を比較し、検出判定を行う検出判定手段と、
上記検出判定手段による判定結果を遅延させ、上記トリガー信号を生成するトリガー信号生成手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の光電センサ。
【請求項6】
検出領域からの光量に応じた検出信号を出力する受光素子と、
上記検出信号をアナログデジタル変換して受光量を出力するアナログデジタル変換手段と、
トリガー信号に基づいて、上記受光量をシフト基準値として記憶するシフト基準値記憶手段と、
上記シフト基準値に基づいて上記受光量をレベルシフトさせてシフト受光量を生成するレベルシフト手段と、
上記シフト受光量に基づいて検出判定を行う検出判定手段と、
検出判定手段による判定結果を遅延させ、上記トリガー信号を生成するトリガー信号生成手段とを備えたことを特徴とする光電センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−3136(P2006−3136A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177779(P2004−177779)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】