説明

光電変換素子

【課題】 太陽光発電装置や太陽光発電システムなどに用いられる光電変換素子において、ドナー/アクセプターの相分離構造が制御された、良好な光電変換層を作製できる光電変換材料を提供する。
【解決手段】 電子供与性(または電子受容性)を有する分子構造を含むブロックと水素結合形成能を有する分子構造を含むブロックから少なくとも構成されるブロック共重合体と、該ブロック共重合体の水素結合形成能を有する分子構造と水素結合を形成する電子受容性化合物(または電子供与性化合物)とからなる光電変換層を有する光電変換素子により前記課題が達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電装置や太陽光発電システムなどに有用な光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する意識の高まりもあり、地球温暖化への影響があるとされる二酸化炭素を排出する化石燃料に対して、安価でかつクリーンなエネルギー資源である太陽エネルギーが注目されている。太陽エネルギーを、他のエネルギー、例えば電気エネルギーへと変換することが、その有効活用のために重要であり、シリコンを始めとした無機半導体型の光発電素子が開発され、実用化されてきた。しかしながら、これらの光発電素子は、製造にかかるエネルギーが莫大であり、より低エネルギーで安価に製造できる光電変換素子の開発が望まれている。
【0003】
有機化合物は通常安価であり、また使用後も焼却等により処分しても、環境に対する負荷は小さい。このような背景から、有機光電変換分子を用いた光電変換素子の開発は最も重要なエネルギー対策の一つである。
有機物を用いた光電変換素子は、1986年にTangが電子供与性の有機半導体(ドナー)と電子受容性の有機半導体(アクセプター)の積層構造を有する素子で、1%の効率を示すことを報告したことから関心が高まった(非特許文献1参照)。
【0004】
ドナー/アクセプター型の有機光電変換素子においては、光電変換効率ηEQEは式ηEQE=η×ηED×ηCCで表わされる。このときηは太陽光の吸収効率であり、励起子の拡散効率ηEDは、光吸収により生じる励起子のうち失活せずにドナー/アクセプター界面まで到達するものの割合であり、キャリアーの捕集効率ηCCはドナー/アクセプター界面で起こる励起子の分解により生じるキャリアー(電子とホール)がそれぞれの電極に到達する確率である。ηEDを高めるためには、高密度なドナー/アクセプター界面を形成して、励起子のドナー/アクセプター界面までの拡散を容易に進行させることが重要であり、また、キャリアー捕集効率を高めるためには、電荷分離して生成した電子とホールの再結合を抑制する必要がある。
【0005】
このような考えのもと、Forrestらは、Tangの素子で使用されたドナーおよびアクセプター化合物である銅フタロシアニン(CuPc)と3,4,9,10−ペリレン テトラカルボキシリック ビス−ベンズイミダゾール(PTCBI)の共蒸着膜を加熱処理することにより、CuPcおよびPTCBI分子同士の凝集により生成するドナーおよびアクセプター相が互いに高密度に入り組んだ構造、いわゆるバルクへテロジャンクション構造を形成することに成功し、その結果、光電変換効率がTangの素子より50%改善され、1.5%まで向上することを報告している(非特許文献2参照)。
【0006】
このように、近年の有機光電変換素子の開発は、ドナー/アクセプター相の構造制御が光電変換効率改善の鍵となっている。
このような状況下、ブロックポリマーが形成するミクロ相分離形構造の光電変化素子への適用を目的として、電子供与性を有するポリフェニレンビニレンとポリスチレンからなるブロックポリマーが合成され、そのポリスチレン部分に代表的な電子受容性化合物であるC60を共有結合を介して付加させる検討が行われている(非特許文献3参照)。この検討では、C60付加の際、副反応が起こりやすいためか、反応溶媒を一度除去すると得られたポリマーが溶媒に一部不溶になる等の問題がある。この場合、溶媒にポリマーを溶解して、基板上に塗布して、次いで溶媒のみを除去して膜を形成する、キャスト法等の簡便な方法で、均一な薄膜を形成することは困難である。
【非特許文献1】シー・ダブリュー・タング(C.W.Tang) 著,「アプライド フィジックス レター(Applied Physics Letters)」,(米国),第48巻,1986年1月13日,p.183−185
【非特許文献2】ステフェン・アール・フォレスト(Stephen R Forrest)外,「ネイチャー(Nature)」、 第45巻,2003年,p.158
【非特許文献3】ベルト・デ・ボエル(Bert de Boer)外,「マクロモレキュールズ(Macromolecules)」,第37巻,2004年,p.3673
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような実状に鑑み成されたものであり、ドナー/アクセプター相分離構造が制御された良好な光電変換層を作製できる光電変換材料と、それを用いた光電変換素子に関するものでる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らの検討の結果、電子供与性(または電子受容性)を有する分子構造を含むブロックと水素結合形成能を有する分子構造を含むブロックから構成される分子量分布の狭いブロック共重合体が、既存の重合方法と原子移動ラジカル重合法を組み合わせることにより、得られることを見出した。
また、同ブロック共重合体と相補的に水素結合を形成する電子受容性化合物(または電子供与性化合物)を併用し、キャスト法等の簡便な成膜法で得られる電子供与性化合物を含む相と電子受容性化合物を含む相からなる、相分離構造が制御された光電変換層を有する光電変換素子が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は、電子供与性を有する分子構造を含むブロックと水素結合形成能を有する分子構造を含むブロックから構成されるブロック共重合体と、該ブロック共重合体の水素結合形成能を有する分子構造と水素結合を形成する電子受容性化合物とからなる光電変換層を有することを特徴とする光電変換素子に関する。
また本発明は、電子受容性を有する分子構造を含むブロックと水素結合形成能を有する分子構造を含むブロックから構成されるブロック共重合体と、該ブロック共重合体の水素結合形成能を有する分子構造と水素結合を形成する電子供与性化合物とからなる光電変換層を有することを特徴とする光電変換素子に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光電変換素子は、光電変換層におけるドナー/アクセプターの相分離構造を制御できるため、光電変換層における光利用効率を高めることができ、高効率な光発電が可能である。
また、本光電変換素子は、比較的容易に製造でき、また製造時や廃棄時における環境負荷が小さいなどの特長を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための好適な形態について詳細に説明する。
まず、本発明の光電変換素子において光電変換層として用いるブロック共重合体について説明する。本発明で用いられるブロック共重合体は、電子供与性を有する分子構造を含むブロックと水素結合形成能を有する分子構造を含むブロックから構成されるブロック共重合体、又は電子受容性を有する分子構造を含むブロックと水素結合形成能を有する分子構造を含むブロックから構成されるブロック共重合体である。
【0012】
電子供与性を有する分子構造としては、当該分子構造部分において電子供与性を有しておれば特に限定されないが、ポリアリーレンビニレン構造、ポリアニリン構造、ポリチオフェン構造、ポリピロール構造、ポリアミン構造等が挙げられる。
また、電子受容性を有する分子構造としては、当該分子構造部分において電子受容性を有しておれば特に限定されないが、ビオロゲン構造、ペリレン構造、フラーレン構造、電子吸引基が結合したポリアリーレンビニレン構造等が挙げられる。
具体的な電子受容性分子構造の例としては下記式(1)〜(4)に示すものを、また電子供与性分子構造の例としては下記式(5)〜(12)に示すものを挙げることができる。
【0013】
【化1】


【化2】

【0014】
次に、上記ブロック共重合体の水素結合形成能を有する分子構造を含むブロックについて説明する。
本発明で用いられる水素結合形成能を有する分子構造とは、水素結合による相互作用を形成する能力を有する構造であれば特に限定されないが、カルボン酸、スルホン酸等の酸類、Na、K、Li等を対イオンとするカルボン酸塩やスルホン酸塩、アミンおよびピリジン等のアミン誘導体、尿素およびグアニジン等の尿素誘導体、ヒドラジンおよびヒドラゾン等のヒドラジン誘導体、ピロリジンやその誘導体等であり、加えてハロゲンアニオン、BF、ClO、PF、CHCOO、CH(C)SO、CFSO等を対イオンとする第四アンモニウム塩、ピリジニウム塩、グアニジニウム塩、ヒドラジニウム塩、ピロリジニウム塩等も含む。さらに、アルコール類、フェノール類、アミド類、イミド類、アミドカルボン酸、イミド酸、ヒドラゾン酸、ヒドロキシム酸、ヒドロキサム酸等も含まれる。具体的な分子構造の例としては、酸類として下記式(13)〜(16)に示すものを、塩基類として下記式(17)〜(23)に示すものを挙げることができる。
【0015】
【化3】


【化4】

【0016】
一般式(1)〜(23)中、R〜Rは、各々同一でも異なっていてもよく、各々個別に、水素または直鎖および分岐した炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基または炭素数6〜72のフラーレンを含むアリール基、アラルキル基、ヒドロキシアラルキル基、アリールオキシ基、および炭素数2〜16のエチレンオキサイド基を示す。さらにR〜RはC60やC70等のフラーレン骨格中の炭素原子であってもよく、また、R〜Rはフラーレン誘導体に結合していてもよい。
同一構造式中に、複数のR〜Rが存在する場合、それらは同一でも異なってもよい。
【0017】
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられ、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブチレニル基、ペンチレニル基、ヘキセニル基などが挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、i−プロポキシ基、ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペンチルオキシ基、t−ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、キシリル基、トリル基、クメニル基、ナフチル基等が、アラルキル基としては、ベンジル基等が、アリールオキシ基としては、フェノキシ基、トリルオキシ基などが挙げられる。Xは、Na、K、Li等を示す。
【0018】
およびYは、各々同一でも異なっていてもよく、各々個別に、ハロゲンアニオン、ClO、BF、PF、CHCOO、およびCH(C)SOから選ばれる対アニオンを示す。
また、mおよびnは、各々個別に、1〜1000、好ましくは2〜500の整数を表すものである。
【0019】
これらの構造を有する共重合体としては、これらの構造を主鎖に有する共重合体、これらの構造を側鎖に有する共重合体のいずれでもよい。
【0020】
本発明において用いるブロック共重合体として、より具体的には以下の一般式(24)〜(29)のようなものが挙げられる。
【0021】
【化5】

【0022】
一般式(24)〜(29)中、Aは電子受容性を有する分子構造を含有する分子団、Dは電子供与性を有する分子構造を含有する分子団、Hは水素結合を形成する原子団を表す。また、Rはポリマー残基を表す。これら一般式(24)〜(29)で表されるブロック共重合体の具体例としては特に限定されないが、以下の式(30)〜(49)で示されるものが挙げられる。
【0023】
【化6】


【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【0024】
上記ブロック共重合体と水素結合を形成する電子供与性化合物または電子受容性化合物の具体例としては特に限定されないが、以下の式(50)〜(64)で示されるものが挙げられる。
【0025】
【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【0026】
一般式(30)〜(64)中、RおよびRは、各々同一でも異なっていてもよく、各々個別に、水素または直鎖および分岐した炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルキレン基,アルコキシル基、ヒドロキシルアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基,アリーレン基を示す。または、炭素数2〜16のエチレンオキサイド基を示す。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、イソプロピレン基などが挙げられ、アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリーレン等が挙げられる。
【0027】
また、式(24)〜(53)におけるnおよびmとしては、各々個別に、nは通常2〜10000、好ましくは2〜5000、さらに好ましくは2〜2000の範囲の整数であり、mは通常2〜10000、好ましくは2〜5000、さらに好ましくは2〜2000の範囲の整数である。また、式(30)から(49)におけるlとしては、各々個別に、通常1から100、好ましくは1から20の範囲の整数である。
式(30)から(63)におけるXは、Na、K、Li等であり、Xは、ハロゲンアニオン、BF、ClO、PF、CHCOO、CH(C)SO、CFSO等である。
【0028】
また、これらの共重合体の分子末端は、その製法により異なるが、通常、水素、炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、アルデヒド基、炭素数6〜12のアリール基、アラルキル基、アリールオキシ基などの炭化水素残基またはハロゲン基である。
【0029】
これらの共重合体の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の重縮合重合、イオン重合、ラジカル重合等により合成することが出来る。例えば、芳香族モノマー化合物の強塩基による縮合重合反応を行い、続いて重合物の末端を重合開始能を有する基に変換して、マクロイニシェーターとして、水素結合形成能を有するメタクリル酸エステルを、原子移動ラジカル重合法により合成する方法等が挙げられる。
【0030】
本発明においては、電子供与性(又は電子受容性)を有する分子構造を含むブロックと水素結合形成能を有する分子構造を含むブロックから構成されるブロック共重合体と、同ブロック重合体と水素結合を形成する電子受容性化合物(又は電子供与性化合物)を併用して光電変換層として用いることを特徴とする。
ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は1.5以下であることが好ましく、1.0〜1.3が特に好ましい。
また本発明においては、光電変換層がミクロ相分離構造を形成していることが好ましい。
前記光電変換層が形成するミクロ相分離構造は、各々電子供与性を有する分子を含む相と電子受容性を有する分子を含む相から構成されている。光電変換層が形成するミクロ相分離構造の各ドメインサイズが1μm以下であることが好ましく、5nm〜100nmが特に好ましい。
【0031】
本発明の光電変換素子は、基本的には、電子供与性(又は電子受容性)を有する分子構造を含むブロックと水素結合形成能を有する分子構造を含むブロックから構成されるブロック共重合体と、該ブロック共重合体の水素結合形成能を有する分子構造と水素結合を形成する電子受容性化合物(又は電子供与性化合物)とからなる光電変換層の薄膜を導電基板上に1層以上形成し、さらに導電膜をその上に形成することで作製される。
【0032】
また、光電変換層と導電基板との中間層として、poly(3,4−ethylendioxythiophene)/polystyrene−para−sulfonic acid (PEDOT−PSS)層を、また、光電変換層と導電膜との中間層にフッ化リチウム層を設けることができる。導電基板上にこのブロック共重合体を含む薄膜の形成方法としては特に制限されないが、通常、真空蒸着法の他、分子ビームエピタキシャル法、イオンプレーティング法、CVD法などのドライ成膜法の他、クロロホルム、塩化メチレン、メトキシベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラヒドロフラン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ピリジン、アニリン等の溶媒を単一で、あるいは混合して使用して、本発明のブロック共重合体および同ブロック共重合体と水素結合相互作用を形成する電子受容性化合物または電子供与性化合物からなる溶液とし、キャスト法、スピンコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、または溶液層に基板を浸漬して吸着あるいは結合させるディップコート法などに適用して薄膜を形成することができる。
【0033】
光電変換層の厚さは特に限定されないが、通常0.05μm〜50μm、好ましくは0.08μm〜2μm程度が望ましい。
光電変換層中のブロック共重合体と、それと併用する電子供与性または電子受容性化合物のモル比は、10000:1から1:10000であり、好ましくは1:1000から1000:1の範囲であり、さらに好ましくは1:100から100:1の範囲であり、最も好ましくは1:50から50:1の範囲である。
光電変換層を作成後に加熱処理を行う場合があるが、加熱温度は通常40℃〜250℃で、好ましくは80℃〜200℃程度が望ましい。加熱時間は10分〜48時間で、好ましくは1時間〜36時間程度が望ましい。
【0034】
また、導電基板としては、適当な方法により導電性が得られれば特に制限されることはないが、通常は、透明基板上に透明電極層を積層させて製造される。透明基板としては、特に限定されず、材質、厚さ、寸法、形状等は目的に応じて適宜選択することができ、例えば無色あるいは有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等が用いられる他、無色あるいは有色の透明性を有する樹脂でも良い。かかる樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペンテンなどが挙げられる。なお、本発明における透明とは、10〜100%の透過率を有することであり、また、本発明における基板とは、常温において平滑な面を有するものであり、その面は平面あるいは曲面であってもよく、また応力によって変形するものであってもよい。
【0035】
また、電極の導電層を形成する透明電極層としては、本発明の目的を果たすものである限り特に限定されないが、例えば金、銀、クロム、銅、タングステンなどの金属薄膜、金属酸化物からなる導電膜などが挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化錫、酸化亜鉛や、これらに微量成分をドープしたIndium Tin Oxide(ITO(In:Sn))、Fluorine doped Tin Oxide(FTO(SnO:F))、Aluminum doped Zinc Oxide(AZO(ZnO:Al))などが好適なものとして用いられる。これらの膜厚は通常、10〜5000nm、好ましくは50〜3000nmである。また、表面抵抗(抵抗率)は適宜選択されるところであるが、通常、0.5〜500Ω/sq、好ましくは2〜50Ω/sqである。
【0036】
透明電極層の形成法としては、特に限定されず、導電層として用いる前述の金属や金属酸化物の種類により適宜公知の方法が選択使用されるところであるが、通常、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVDあるいはスパッタリング法などが用いられる。いずれの場合も基板温度20〜700℃の範囲内で形成されるのが望ましい。
【0037】
また、ブロック共重合体の薄膜上に形成する導電膜としてはアルミニウム、マグネシウム、金、銀、白金、インジウム、銅、クロムなどの金属や、マグネシウム:銀などの合金の他、導電性のカーボンや銀、金、銅等の金属ペースト等が挙げられる。
この導電膜の形成方法としては、導電膜として用いる前述の材料により適宜公知の方法が選択使用されるところであるが、通常、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVDあるいはスパッタリング法等のドライ成膜やスピンコート法、ディップコート法、バーコート法、ディスペンサー法のほか、スクリーン印刷法を初めとした各種の印刷方法を挙げることができる。
導電膜の膜厚は通常、10〜5000nm、好ましくは50〜3000nmである。また、表面抵抗(抵抗率)は適宜選択されるところであるが、通常、0.5〜500Ω/sq、好ましくは2〜50Ω/sqである。
【0038】
また、本発明の光電変換素子の別の態様として、ブロック共重合体からなる光電変換層を導電性基板上に成膜した後、対極基板を積層する形態をとることもできる。
【0039】
導電性基板としては、本発明の目的を果たすものである限り特に限定されないが、支持基板と導電層からなり、材質、厚さ、寸法、形状等は目的に応じて適宜選択することができる。支持基板には導電性があっても無くてもよく、金、白金などの金属のほか、例えば無色あるいは有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等が用いられる他、無色あるいは有色の透明性を有する樹脂でも良い。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペンテンなどが挙げられる。
【0040】
また、導電層としては、本発明の目的を果たすものである限り特に限定されないが、例えば金、銀、クロム、銅、タングステン、アルミニウムなどの金属薄膜、金属酸化物からなる導電膜などが挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化錫、酸化亜鉛や、これらに微量成分をドープしたIndium Tin Oxide(ITO(In:Sn))、Fluorine doped Tin Oxide(FTO(SnO:F))、Aluminum doped Zinc Oxide(AZO(ZnO:Al))などが好適なものとして用いられる。これらの膜厚は通常、10〜5000nm、好ましくは50〜3000nmである。また、表面抵抗(抵抗率)は適宜選択されるところであるが、通常、0.5〜500Ω/sq、好ましくは2〜50Ω/sqである
【0041】
なお、対極基板は支持基板と導電層からなり、支持基板は特に限定されるものではないが、金、白金などの金属のほか、例えば無色あるいは有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等が用いられる他、無色あるいは有色の透明性を有する樹脂でも良い。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペンテンなどが挙げられる。
また、導電層は特に限定されるものではないが、例えば、金、銀、クロム、銅、タングステン、アルミニウムなどの金属薄膜、金属酸化物からなる導電膜などが挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化錫、酸化亜鉛や、これらに微量成分をドープしたIndium Tin Oxide(ITO(In:Sn))、Fluorine doped Tin Oxide(FTO(SnO:F))、Aluminum doped Zinc Oxide(AZO(ZnO:Al))などが好適なものとして用いられる。これらの膜厚は通常、10〜5000nm、好ましくは50〜3000nmである。また、表面抵抗(抵抗率)は適宜選択されるところであるが、通常、0.5〜500Ω/sq、好ましくは2〜50Ω/sqである。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらになんら制限されるものではない。
【0043】
[実施例1]
a)ブロック共重合体の合成
ヒドロキノン30gとKOH42gをエタノール450mLに溶解し、1時間還流した。その後、ブロモオクタン145gを添加し、24時間還流を行った。反応液から生成物をエーテルで抽出し、水洗後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(MERCK社製シリカゲル60(粒径0.040〜0.063mm))(ヘキサン:エーテル=5:1)で精製し、次いで蒸留により2,5−ジオクチロキシトルエンを得た。
次に、2,5−ジオクチロキシトルエン50gを塩化メチレンに溶解後、0℃で四塩化チタン43gを滴下し、30分撹拌した。次いで、ジクロロメチルメチルエーテル23gを添加し、室温で24時間撹拌した。反応液を氷水に滴下後、塩化メチレンで抽出を行い、水洗脱水後、溶媒除去した後、生成物をアセトン中で再結晶することにより、4−メチル−2,5−ジオクチロキシベンズアルデヒドを得た。4−メチル−2,5−ジオクチロキシベンズアルデヒド10gとアニリン2.8gを減圧下60℃で反応させ、4−メチル−2,5−ジオクチロキシベンズアルディミンを得た。これをN,N−ジメチルホルムアミド中、カリウムt−ブトキシドを用いて重合することにより、ω−ホルミル−ポリ(2,5−ジオクチロキシ1−1,4−フェニレンビニレン)を得た。次に、このポリマーのホルミル基を水素化リチウムアルミニウムによりベンジルアルコールに還元し、次いで、ブロモイソ酪酸ブロマイドでエステル化した。得られた化合物を塩化銅(I)と1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミンを触媒としてテトラヒドロフラン中、安息香酸構造を有するメタクリル酸エステルを原子移動ラジカル重合法により重合することにより、下記式で示されるブロック共重合体(n=8、m=20 Mw/Mn=1.3)を得た。
【0044】
【化15】

【0045】
b)ピリジン構造を有する電子受容性化合物の合成
4−ピリジンカルボキシアルデヒド、N−(3,6,9−トリオキサデシル)グリシンおよびC60をトルエン中で還流することにより、下記式で示されるピリジン骨格を有する電子受容性化合物を合成した。
【0046】
【化16】

【0047】
c)光電変換素子の製造
アルカリ洗浄およびプラズマ−オゾン洗浄して清浄化したフィルム抵抗値10Ω/sqの5cm角パターニングITOガラス(ガラス基板上にSnドープIn膜を形成した後、パターニングした透明導電性ガラス)上に、poly(3,4−ethylendioxythiophene)/polystyrene−para−sulfonic acid(PEDOT−PSS)をスピンコート法により、膜厚100nmに成膜してパターニングした後、前記カルボキシル基を有するブロック共重合体とピリジン骨格を有する電子受容性化合物をmol比1:20でテトラヒドロフランへ溶解した溶液をキャストした。その後、十分乾燥することにより光電変換層を作製した。なお、光電変換層の膜厚は約100nmであった。得られた光電変換層の表面状態を原子間力顕微鏡のタッピングモードで解析したところ、約0.1μmのドメインサイズを有するミクロ相分離構造が形成されていることが確認された。
次に、この光電変換層上にLiF層を蒸着した後、Alを1.33×10−3Pa(1×10−5Torr)で(30Å/s)で約100nm積層し、光電変換素子を作製した。
この素子に疑似太陽光(1kW/m)を照射し、短絡時の電流値を測定したところ、2.1μAの電流値が得られ、良好な光電変換素子の特性を示すことが確認できた。
【0048】
[比較例1]
アルカリ洗浄およびプラズマ−オゾン洗浄して清浄化したフィルム抵抗値10Ω/sqの5cm角パターニングITOガラス上に、poly(3,4−ethylendioxythiophene)/polystyrene−para−sulfonic acid(PEDOT−PSS)をスピンコート法により、膜厚100nmに成膜してパターニングした後、下記式で示されるポリマーAと化合物Bの混合物のクロロホルム溶液をキャストして、十分乾燥することにより光電変換層を作製した(膜厚約100nm)。
得られた光電変換層の表面状態を原子間力顕微鏡のタッピングモードで解析したところ、規則的な構造形成は確認されなかった。
次に、光電変換層上にLiF層を蒸着した後、Alを1.33×10−3Pa(1×10−5Torr)で(30Å/s)約100nm積層し、光電変換素子を作製した。この素子に疑似太陽光(1kW/m)を照射し、短絡時の電流値を測定したところ、得られた電流値は0.6μAであった。
【0049】
【化17】

【0050】
[比較例2]
アルカリ洗浄およびプラズマ−オゾン洗浄して清浄化したフィルム抵抗値10Ω/sqの5cm角パターニングITOガラス(ガラス基板上にSnドープIn膜を形成した後、パターニングした透明導電性ガラス)上に、poly(3,4−ethylendioxythiophene)/polystyrene−para−sulfonic acid(PEDOT−PSS)をスピンコート法により、膜厚100nmに成膜してパターニングした後、下記式で示されるカルボキシル基を有するブロック共重合体とピリジン骨格を有する電子受容性化合物(mol比1:20)のアセトン溶液をキャストした。十分乾燥することにより膜厚約100nmの光電変換層を作製した。
次に、この光電変換層上にLiF層を蒸着した後、Alを1.33×10−3Pa(1×10−5Torr)で(30Å/s)で約100nm積層し、光電変換素子を作製した。
この素子に疑似太陽光(1kW/m)を照射し、短絡時の電流値を測定したところ、得られた電流値は、0.3μAであった。
【0051】
【化18】

【化19】

【0052】
[実施例2]
a)ブロック共重合体の合成
実施例1と同様に、ω−ホルミル−ポリ(2,5−ジオクチロキシ−1,4−フェニレンビニレン)のホルミル基を水素化リチウムアルミニウムによりベンジルアルコールに還元し、次いで、ブロモイソ酪酸ブロマイドでエステル化した。得られた化合物を臭化銅(I)と1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミンを触媒としてテトラヒドロフラン中、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートを原子移動ラジカル重合法により重合することにより、下記式で示されるアミノ基を有するブロック共重合体(n=8、m=20 Mw/Mn=1.3)を得た。
【0053】
【化20】

【0054】
b)カルボキシル基を有する電子受容性化合物の合成
[6,6]−Phenyl C61 butyric acid methyl esterをアルカリ条件下で加水分解することにより、下記式で示されるカルボキシル基を有する電子受容性化合物を合成した。
【0055】
【化21】

【0056】
c)光電変換素子の製造
アルカリ洗浄およびプラズマ−オゾン洗浄して清浄化したフィルム抵抗値10Ω/sqの5cm角パターニングITOガラス(ガラス基板上にSnドープIn膜を形成した後、パターニングした透明導電性ガラス)上に、poly(3,4−ethylendioxythiophene)/polystyrene−para−sulfonic acid(PEDOT−PSS)をスピンコート法により、膜厚100nmに成膜してパターニングした後、前記アミノ基を有するブロック共重合体とカルボキシル基を有する電子受容性化合物をmol比1:20でテトラヒドロフランへ溶解した溶液をキャストした。その後、十分乾燥することにより光電変換層を作製した。なお、光電変換層の膜厚は約100nmであった。
次にこの光電変換層上にLiF層を蒸着した後、Alを1.33×10−3Pa(1×10−5Torr)で(30Å/s)で約100nm積層し、光電変換素子を作製した。
この素子に疑似太陽光(1kW/m)を照射し、短絡時の電流値を測定したところ、2.0μAの電流値が得られ、良好な光電変換素子の特性を示すことが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子供与性を有する分子構造を含むブロックと水素結合形成能を有する分子構造を含むブロックから構成されるブロック共重合体と、該ブロック共重合体の水素結合形成能を有する分子構造と水素結合を形成する電子受容性化合物とからなる光電変換層を有することを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
電子受容性を有する分子構造を含むブロックと水素結合形成能を有する分子構造を含むブロックから構成されるブロック共重合体と、該ブロック共重合体の水素結合形成能を有する分子構造と水素結合を形成する電子供与性化合物とからなる光電変換層を有することを特徴とする光電変換素子。
【請求項3】
ブロック共重合体と、それと併用する電子供与性化合物または電子受容性化合物のモル比は、10000:1から1:10000であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が1.5以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記光電変換層がミクロ相分離構造を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記光電変換層が形成するミクロ相分離構造が各々電子供与性を有する分子を含む相と電子受容性を有する分子を含む相から構成されていることを特徴とする請求項5記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記光電変換層が形成するミクロ相分離構造の各ドメインサイズが1μm以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の光電変換素子。

【公開番号】特開2006−73900(P2006−73900A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257663(P2004−257663)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】