説明

光電変換素子

【課題】 導電性が良好に確保された耐剥離性の高い対向電極を、安価なカーボン電極を用いて実現した光電変換素子の提供。
【解決手段】 透光性板1と、当該透光性板1の内面に定着する透光導電膜2と、当該透光導電膜2の内面に定着する透光電極3と、対向板4と、当該対向板4の内面に定着し前記透光電極3から一定の間隔を隔てて対向する対向電極5と、当該透光電極3と対向電極5間に充填する電解液6とで構成され、前記対向電極5が、比表面積約2000平方メートル/グラム以上のカーボン:約70から約85重量パーセントと、エーテル化度が約1.5から約2.0のカルボキシ・メチル・セルロース樹脂:約2から約3重量パーセントと、導電助剤:約13から28重量パーセントとを含有するカーボン層からなる光電変換素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い光電変換効率が得られる太陽電池など光電変換素子の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高い光電変換効率を得るために、固体電解質よりも電解液を対となる電極間に充填した太陽電池が紹介されているが(例えば特許文献1および乃至特許文献3参照)、対向電極に白金が用いられる場合、導電性は確保できるものの素子自体が高価となる問題があった。一方、対向電極にカーボンを用いる場合には、素子が安価となるものの、導電性や、電解液との相性等に起因した対向板に対する耐剥離性、更には、対向板の素材を選択する際の制約という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−93475号公報
【特許文献2】特開2006−252914号公報
【特許文献3】特開2009−218179号公報
【特許文献4】特開2003−297446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記実情に鑑みて成されたものであって、導電性が良好に確保された耐剥離性の高い対向電極を、安価なカーボン電極を用いて実現した光電変換素子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為になされた本発明による光電変換素子は、透光性板と、当該透光性板の内面に定着する透光導電膜と、当該透光導電膜の内面に定着する透光電極と、対向板と、当該対向板の内面に定着し前記透光電極から一定の間隔を隔てて対向する対向電極と、当該透光電極と対向電極間に充填する電解液とで構成され、前記対向電極が、比表面積約2000平方メートル/グラム以上のカーボン:約70から約85重量パーセントと、エーテル化度が約1.5から約2.0のカルボキシ・メチル・セルロース樹脂:約2から約3重量パーセントと、導電助剤:約13から28重量パーセントとを含有するカーボン層からなることを特徴とする。前記対向板と対向電極との間に導電膜を介在してもよい。
【0006】
本発明による光電変換素子は、透光電極、対向電極、及びスペーサで電解液を密封することにより単位セルを構成するが、複数のセルを連結した複合セルとして構成しても良い。用途としては、前記電解液として酸化還元対にヨウ素を用いたニトリル系電解液を用いた色素増感型太陽電池として構成してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、対向電極として、素材の配合比率及びカルボキシ・メチル・セルロース樹脂のエーテル化度の面で所定の条件を満たすカーボンペーストから形成することによって、アルミ、チタン、銅などの金属板や、PP,PET等の樹脂フィルム、又は硬直性の高い板からフレキシブルな板など、多種多様な対向板に対して良好な定着性を得ることができ、それによって、対向板を選択する際の制約が緩和され、多様な対向板に対してひびや剥離が生じない性状のカーボン被膜を十分な導電性を有する電極として採用することができる。
例えば、色素増感型太陽電池として採用した場合にあっても、酸化還元対にヨウ素を用いたニトリル系電解液の影響を受けて対向板からの剥離が誘発されることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1(A)(B)(C)】本発明による光電変換素子の一例を示す(A):斜視図、(B):(A)のA−A矢視断面図、(C):他の例の断面図である。
【図2(A)(B)】本発明による光電変換素子におけるカルボキシ・メチル・セルロースのエーテル化度に対するカーボン電極の性状検査結果の一例を示す、(A):表、(B):表をグラフ化したものである。
【図3(A)(B)】本発明による光電変換素子におけるカルボキシ・メチル・セルロースの配合比に対するカーボン電極の性状検査結果の一例を示す、(A):表、(B):表をグラフ化したものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明による光電変換素子の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1に示す例は、本発明による光電変換素子を色素増感型太陽電池として構成した一例を示したものである。
これらの例は、透光性板1と、当該透光性板1の内面に定着する透光導電膜2と、当該透光導電膜2の内面に定着する透光電極3と、対向板4と、当該対向板4の内面に定着し前記透光電極3から一定の間隔を隔てて対向する対向電極5と、当該透光電極3と対向電極5間に充填する電解液6と、両電極3,5間に充填した電解液6の側方を囲い密封するスペーサ7とで構成される。
【0010】
透光性板1は、ガラスやPET(ポリエチレン・テレフタレート)等の合成樹脂等からなる絶縁性を持ち且つ透光性を有する板である。
透光導電膜2は、導電性酸化物等、透光性及び導電性を併せ持つ被膜等である。
透光電極3は、増感色素を担持した多孔質の半導体層であって、酸化チタンペースト等、透光性を持つ導電性酸化物のペーストを透光導電膜2の内面に所定の透光性を確保できる程度の均等な厚さに印刷し乾燥させてなる。導電性酸化物のペーストは、前記特許文献等に記載の公知の手法で作れば良い。
【0011】
対向板4は、チタンなど導電性板を用いる場合もあれば、PETなどの合成樹脂等からなる絶縁性板を用いる場合もあり、ガラス等の透光性を有する板を用いる場合もあれば、チタンの様に透光性を有しない板を用いる場合もある。絶縁性板とする場合には、導電膜8を形成する場合があり、更に、透光性を有する板を用いる場合には、透光性を持った導電膜8を用いる場合もある。
【0012】
透光性板1及び対向板4は、フレキシブル性を持たせても良い。
【0013】
対向電極5は、対向板4にカーボンペーストを約5μmから約50μm、好ましくは、約5μmから約10μm程度の均等な厚さに印刷し乾燥させてなるものである。
前記カーボンペーストは、水に、比表面積約2000平方メートル/グラムから約3000平方メートル/グラム程度の活性炭を約70重量パーセントから約85重量パーセント、エーテル化度約1.5から約2.0程度のCMC(カルボキシ・メチル・セルロース)樹脂を約2重量パーセントから約3重量パーセント、及びカーボンファイバーやカーボンナノファイバー等の導電助剤を約13重量パーセントから約28重量パーセントを入れて混合したものである。
【0014】
上記の如く配合したカーボンペーストを用いることによって、比較的高い光電変換効率が得られると共に、上記の如く配合したカーボンペーストを用いることによって、電解液6に3日間浸す耐電解液性試験、折り曲げ試験、及びテープを貼着して引き剥がす剥離試験のいずれにあっても、剥離が見られない良質な塗膜カーボン層たる対向電極5を得ることができた(図2及び図3参照)。
【0015】
電解液6は、電解質を溶媒で溶解した液体である。具体的には、酸化体と還元体からなる酸化還元系物質が溶媒に含まれることとなるものであって、例えば、塩素化合物やヨウ素化合物など前記特許文献等に記載の公知な素材等を用いれば良い。溶媒は、上記電解質を溶解できイオン伝導性に優れたものが望ましく、例えば、ジメチルカーボネートやジエチルカーボネートなど前記特許文献等に記載の公知な素材を用いれば良い。
因みに、ここで示した実施の形態にあっては、酸化還元対にヨウ素を用いたニトリル系電解液6を用いている。
【0016】
スペーサ7は、厚み約10μmから約100μmの絶縁性シートであり、PET、PP(ポリプロピレン)、ポリイミド等を素材とする。
【0017】
以上の構成により、光が透光電極3へ良好に到達し、色素の励起による効率的な光電変換作用が促されることとなる。
【符号の説明】
【0018】
1 透光性板,2 透光導電膜,3.透光電極,4 対向板,5 対向電極,
6 電解液,7 スペーサ,8 導電膜,


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性板(1)と、当該透光性板(1)の内面に定着する透光導電膜(2)と、当該透光導電膜(2)の内面に定着する透光電極(3)と、
対向板(4)と、当該対向板(4)の内面に定着し前記透光電極(3)から一定の間隔を隔てて対向する対向電極(5)と、
当該透光電極(3)と対向電極(5)間に充填する電解液(6)
とで構成され、
前記対向電極(5)が、比表面積約2000平方メートル/グラム以上のカーボン:約70から約85重量パーセントと、エーテル化度が約1.5から約2.0のカルボキシ・メチル・セルロース樹脂:約2から約3重量パーセントと、導電助剤:約13から28重量パーセントとを含有するカーボン層からなることを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
透光性板(1)と、当該透光性板(1)の内面に定着する透光導電膜(2)と、当該透光導電膜(2)の内面に定着する透光電極(3)と、
対向板(4)と、当該対向板(4)の内面に定着する導電膜(8)と、当該導電膜(8)の内面に定着し前記透光電極(3)から一定の間隔を隔てて対向する対向電極(5)と、
当該透光電極(3)と対向電極(5)間に充填する電解液(6)
とで構成され、
前記対向電極(5)が、比表面積約2000平方メートル/グラム以上のカーボン:約70から約85重量パーセントと、エーテル化度が約1.5から約2.0のカルボキシ・メチル・セルロース樹脂:約2から約3重量パーセントと、導電助剤:約13から28重量パーセントとを含有するカーボン層からなることを特徴とする光電変換素子。



【図1(A)(B)(C)】
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【図2(A)(B)】
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【図3(A)(B)】
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【公開番号】特開2013−54855(P2013−54855A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190835(P2011−190835)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(591020445)立山科学工業株式会社 (71)
【Fターム(参考)】