説明

光電変換素子

太陽光発電装置や太陽光発電システムなどに有用な光電変換素子に用いられる光電変換層として、電子供与性分子構造および電子受容性分子構造を併有する有機化合物(A)、および/または電子供与性分子構造を有する有機化合物(B)および電子受容性分子構造を有する有機化合物(C)が、ポリマー中に分散している光電変換層を用いることにより、光電変換層の相分離を抑制して光利用効率を高めた光電変換素子が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、太陽光発電装置や太陽光発電システムなどに有用な光電変換素子に関する。
【背景技術】
近年、環境問題に対する意識の高まりもあり、地球温暖化への影響があるとされる二酸化炭素を排出する化石燃料に対して、安価でかつクリーンなエネルギー資源である太陽エネルギーが注目されている。太陽エネルギーを、他のエネルギー、例えば電気エネルギーへと変換することが、その有効活用のために重要であり、シリコンを初めとした無機半導体型の光発電素子が開発され、実用化されてきた。しかしながら、これらの光発電素子は、製造にかかるエネルギーが莫大であり、より低エネルギーで安価に製造できる光電変換素子の開発が望まれている。
有機化合物は安価であり、また使用後焼却等により処分しても、環境に対する負荷は小さい。このような背景から、有機光電変換物質を用いた光電変換素子の開発は最も重要なエネルギー対策の一つである。
有機物を用いた光電変換素子は、1986年のTangの素子が約1%の効率を示したこと(Applied Physics Letters,第48巻,1986年1月13日,p.183−185)から関心が高まり、その後も光電変換効率は年々改善されている。有機光電変換素子においては電子供与性の有機半導体(ドナー)と、電子受容性の有機半導体(アクセプター)を組み合わせ、いわゆるヘテロジャンクション構造を作ることが、高効率化のために必要である。効果的な電荷分離はドナーとアクセプターの界面近傍で生じる。このような考えのもと、ドナー性の導電性ポリマーとアクセプター性のフラーレン誘導体を混合したいわゆるバルクヘテロジャンクションが提案され(例えば、米国特許第5454880号、米国特許第5454880号)、さらに高密度なドナー/アクセプター界面を有する光電変換素子が開発され、その光電変換効率も大きくなった。このように、近年の有機光電変換素子の開発は、ドナーとアクセプターの電荷分離界面を如何に設計するかが鍵となっている。
また、電荷分離後に生じたキャリア(電子、ホール)の効率的な輸送も高効率化のための重要な開発のポイントである。Friendらは、自己組織化によってスタッキングする電子供与性のベンゾコロネンと電子受容性のペリレン色素を用いることによって、キャリアの移動効率の高い構造を作ることに成功した(Science,第293巻,2001年8月10日,p.1119−1122)。π共役系がスタッキングすることによって、その積層方向に対して大きなキャリア移動度を示すものである。
一方で、分子が自己組織化する傾向が強いことは、光電変換素子を作製する際にドナーおよびアクセプターそれぞれの同一分子が集まってしまい相分離することがある。相分離が生じると、光電変換層の表面に凹凸が生じ、光電変換効率の低下につながる。
本発明はこのような実状に鑑み成されたものであり、相分離を抑え良好な光電変換層を作製できる光電変換材料と、それを用いた光電変換素子に関するものでる。
【発明の開示】
本発明者らの検討の結果、光電変換層がポリマーで構成され、当該ポリマー中に特定の化合物を分散させることで、光電変換層における相分離の発生を抑制して光利用効率を高めることができるという優れた性能を有する光電変換素子が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は、電子供与性分子構造および電子受容性分子構造を併有する有機化合物(A)がポリマー中に分散している光電変換層を有することを特徴とする光電変換素子に関する。
また、本発明は、電子供与性分子構造を有する有機化合物(B)および電子受容性分子構造を有する有機化合物(C)がポリマー中に分散している光電変換層を有することを特徴とする光電変換素子に関する。
以下に、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の光電変換素子において光電変換層を構成するポリマーに関して説明する。本発明に用いられるポリマーは、電子供与性分子構造と電子受容性分子構造を併有する有機化合物(A)(以下、単に化合物(A)ともいう。)を分散させることができるもの、あるいは電子供与性分子構造を有する有機化合物(B)(以下、単に化合物(B)ともいう。)および電子受容性分子構造を有する有機化合物(C)(以下、単に化合物(C)ともいう。)を分散させることができるものであれば特に限定されない。例えば、ポリメチルメタクリレートやポリエチルアクリレートなどのアクリル系ポリマー、ポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシドなどのポリエーテル、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、あるいはポリフェニレンビニレンやポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの導電性高分子化合物などが挙げられる。これらの中でも特に導電性高分子化合物がより好ましい。導電性高分子化合物としては、通常10−6〜10S/cm、好ましくは10−4〜10S/cmの電気伝導度(20℃)を有するものが好ましい。
ポリマーの分子量としては、化合物(A)を分散でき、または化合物(B)および化合物(C)を分散でき、光電変換層を形成することができるものであれば特に限定されるものではなく、適宜選択される。通常は、1000〜500万、好ましくは1万〜100万、さらに好ましくは5万〜50万のものが用いられる。
ポリマー中の電子供与性分子構造と電子受容性分子構造を併有する有機化合物(A)の含有量は、本発明の目的を損なわない限り特に限定されないが、ポリマー100質量部対して、通常5〜300質量部、好ましくは10〜100質量部、さらに好ましくは20〜80質量部である。
また、ポリマー中の電子供与性分子構造を有する有機化合物(B)および電子受容性分子構造を有する有機化合物(C)の含有量は、本発明の目的を損なわない限り特に限定されないが、ポリマー100質量部対して、電子供与性分子構造を有する有機化合物(B)は通常5〜300質量部、好ましくは10〜100質量部、さらに好ましくは20〜80質量部であり、電子受容性分子構造を有する有機化合物(C)は通常5〜300質量部、好ましくは10〜100質量部、さらに好ましくは20〜80質量部であることが望ましい。また、電子供与性分子構造を有する有機化合物(B)と電子受容性分子構造を有する有機化合物(C)の使用割合は、特に限定されないが、通常両者の質量比が通常10/90〜90/10、好ましくは、20/80〜80/20が望ましい。
本発明において電子供与性分子構造とは、イオン化ポテンシャルが小さく、他の分子に電子を供給して自らは正のイオンになりやすい性質を示す構造をいい、また、本発明において電子受容性分子構造とは、電子親和力が大きく、他の分子から電子を受け取って自らは負のイオン状態になりやすい性質を示す構造をいう。
本発明において、電子供与性分子構造と電子受容性分子構造を併有する化合物(A)を用いる場合、前記の電子受容性または電子供与性の性質は化合物(A)中におけるそれらの各構造の相対的な関係により自ずと決まり、それらの性質を満たす構造の組み合わせが適宜選択されるものである。
また、本発明において、電子供与性分子構造を有する化合物(B)と電子受容性分子構造を有する化合物(C)を組み合わせて用いる場合、前記の電子受容性または電子供与性の性質は、用いるそれらの化合物間での相対的な関係により自ずと決まり、それらの性質を満たす化合物の組み合わせが適宜選択されるものである。
本発明で用いられる電子供与性を有する分子構造としては、当該分子構造部分において電子供与性を有しておれば特に限定されるものではなく、例えば、アミン構造、メタロセン構造、ポリアリーレンビニレン構造、ポリアニリン構造、ポリチオフェン構造、ポリピロール構造、ポリアミン構造等が挙げられる。
また、電子受容性を有する分子構造としては、電子受容性を有しておれば特に限定されるものではなく、例えば、ビオロゲン構造、ペリレン構造、フラーレン構造等が挙げられる。
具体的な電子受容性を有する分子構造の例としては下記式(1)〜(18)に示すものを、また電子供与性分子構造の例としては下記式(19)〜(61)に示すものを挙げることができる。










一般式(1)〜(61)中、R〜R60(R10およびR12を除く)は各々同一でも異なっていてもよく、各々個別に、水素原子、直鎖もしくは分岐した炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、または炭素数6〜12のアリール基、アラルキル基、アリールオキシ基を示す。なお、R44はシクロペンタジエニル環と結合し、環を形成してもよいし、互いに異なるシクロペンタジエニル環を架橋する基を形成してもよい。
10およびR12は各々同一でも異なっていてもよく、各々個別に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アセチル基、ホルミル基、直鎖もしくは分岐した炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、アルキルチオ基、アルキルオキシカルボニル基、または炭素数6〜12のアリール基、アラルキル基、アリールオキシ基を示す。
また、同一構造式中に、複数のR〜R60が存在する場合、それらは同一でも異なってもよい。
およびBは各々同一でも異なっていてもよく、各々個別に、ハロゲンアニオン、ClO、BF、PF、CHCOOおよびCH(C)SOから選ばれる対アニオンを示す。
また、m、nは、各々1〜1000、好ましくは2〜500の整数を表し、k、lは、各環状炭化水素基の置換可能数を表すものであり、通常各々0〜4の整数の範囲である。
はCu、Zn、Co、Fe、Ti、Mg、Ni、Mo、Os、Ruなどの金属原子を表す。MはLi、Na、Mg、Ca等のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を表す。MはCr、Co、Fe、Mg、Ni、Os、Ru、V、X−Hf−Y、X−Mo−Y、X−Nb−Y、X−Ti−Y、X−V−YまたはX−Zr−Yを示す。なお、ここでいうXおよびYは水素、ハロゲンまたは炭素数1〜12のアルキル基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられ、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブチレニル基、ペンチレニル基、ヘキセニル基などが挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、i−プロポキシ基、ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペンチルオキシ基、t−ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、キシリル基、トリル基、クメニル基、ナフチル基等が、アラルキル基としては、ベンジル基、トリメチル基等が、アリールオキシ基としては、フェノキシ基、トリルオキシ基などが挙げられる。
電子供与性分子構造と電子受容性分子構造を併有する化合物では、上述したような電子供与性分子構造と電子受容性分子構造が共有結合やイオン結合のような化学結合により結合している。共有結合としては、例えば、炭素数1〜20、好ましくは1〜10の炭化水素基による結合が挙げられ、これらの具体例としてアルキレン等の炭化水素基の他、エステル結合含有炭化水素基、エーテル結合含有炭化水素基、アミド結合含有炭化水素基、チオエーテル結合含有炭化水素基、アミン結合含有炭化水素基、ウレタン結合含有炭化水素基、シリル結合含有炭化水素基などが好適なものとして挙げることができる。
電子受容性分子構造と電子供与性分子構造の好適な組み合わせとしては、フラーレン誘導体(式(3))とポリ(フェニレンビニレン)誘導体(式(40))、シアノ基含有ポリ(フェニレンビニレン)誘導体(式(4))とポリ(フェニレンビニレン)誘導体(式(40))、ビオロゲン誘導体(式(1))とアミン誘導体(式(29)〜(35))、ビオロゲン誘導体(式(1))とメタロセン誘導体(式(46))、ビオロゲン誘導体(式(1))とポリチオフェン誘導体(式(42))、ビオロゲン誘導体(式(1))とポリピロール誘導体(式(42))、ビオロゲン誘導体(式(1))とポリ(フェニレンビニレン)誘導体(式(40))、ペリレン誘導体(式(2))と銅フタロシアニン誘導体(式(20)〜(22))、ペリレン誘導体(式(2))とフタロシアニン誘導体(式(19))、ペリレン誘導体(式(2))とアミン誘導体(式(29)〜(35))、ペリレン誘導体(式(2))とポリ(フェニレンビニレン)誘導体(式(40))、ペリレン誘導体(式(2))とポリチオフェン誘導体(式(42))、ペリレン誘導体(式(2))とポリピロール誘導体(式(42))、ペリレン誘導体(式(2))とメタロセン誘導体(式(46))、フラーレン誘導体(式(3))と銅フタロシアニン誘導体(式(20)〜(22))、フラーレン誘導体(式(3))とアミン誘導体(式(29)〜(35))、フラーレン誘導体(式(3))とポリチオフェン誘導体(式(42))、フラーレン誘導体(式(3))とポリピロール誘導体(式(42))、フラーレン誘導体(式(3))とメタロセン誘導体(式(46))、シアノ基含有ポリ(フェニレンビニレン)誘導体(式(4))とアミン誘導体(式(29)〜(35))、シアノ基含有ポリ(フェニレンビニレン)誘導体(式(4))と銅フタロシアニン誘導体(式(20)〜(22))、シアノ基含有ポリ(フェニレンビニレン)誘導体(式(4))とポリチオフェン誘導体(式(42))、シアノ基含有ポリ(フェニレンビニレン)誘導体(式(4))とポリピロール誘導体(式(42))、シアノ基含有ポリ(フェニレンビニレン)誘導体(式(4))とメタロセン誘導体(式(46))などの組み合わせが好ましい。
このような化合物の例としては、下記式(62)〜(66)に示すようなものが挙げられる。


一般式(62)〜(66)中、R、R、R10、R12〜R14、R16およびR38は各々同一でも異なっていてもよく、各々個別に、直鎖および分岐した炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基または炭素数6〜12のアリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アラルキル基を示す。Rは炭素数1〜20、好ましくは1〜10の2価の炭化水素基を示す。AおよびBは各々同一でも異なっていてもよく、各々個別に、ハロゲンアニオン、ClO、BF、PF、CHCOOおよびCH(C)SOから選ばれる対アニオンを示す。また、m、nは、各々1〜1000、好ましくは2〜500の整数を表し、k、lは、各環状炭化水素基の置換可能数を表すものであり、通常各々0〜4の整数の範囲である。
一般式(62)〜(66)におけるR15の炭化水素基の好適な具体例としてはアルキレン等の炭化水素基の他、エステル結合含有炭化水素基、エーテル結合含有炭化水素基、アミド結合含有炭化水素基、チオエーテル結合含有炭化水素基、アミン結合含有炭化水素基、ウレタン結合含有炭化水素基、シリル結合含有炭化水素基などが挙げられる。
前記エステル結合含有炭化水素基としては一般式−R−COO−R’−または−R−OCO−R’−(RおよびR’はそれぞれ炭素数1〜8のアルキレンを示す。)で表されるものが挙げられ、エーテル結合含有炭化水素基としては一般式−R−O−R’−(RおよびR’はそれぞれ炭素数1〜10のアルキレンを示す。)で表されるものが挙げられ、アミド結合含有炭化水素基としては一般式−R−CONH−R’−または−R−NHCO−R’−(RおよびR’はそれぞれ炭素数1〜8のアルキレンを示す。)で表されるものが挙げられ、チオエーテル結合含有炭化水素基としては一般式−R−S−R’−(RおよびR’はそれぞれ炭素数1〜10のアルキレンを示す。)で表されるものが挙げられ、アミン結合含有炭化水素基としては一般式−R−NH−R’−(RおよびR’はそれぞれ炭素数1〜10のアルキレンを示す。)で表されるものや一般式−R−NH−Ph−基(Rは炭素数1〜10のアルキレンを示し、Phは炭素数6〜12のアリーレン基あるいは置換アリーレン基を示す。)が挙げられ、ウレタン結合含有炭化水素基としては一般式−R−OCONH−R’−または−R−NHCOO−R’−(RおよびR’はそれぞれ炭素数1〜8のアルキレンを示す。)で表されるものが挙げられ、シリル結合含有炭化水素基としては一般式−R−Si(R”)−R’−(RおよびR’はそれぞれ炭素数1〜8のアルキレンを示し、R”はメチル基またはエチル基を示す。)で表されるものが挙げられる。
なかでも、これらの化合物として、具体的には、下記に示す化合物が好適なものとして挙げられる。



また、具体的な電子受容性分子構造を有する化合物の例としては下記式(1’)〜(18’)に示すものを、また電子供与性分子構造を有する化合物の例としては下記式(19’)〜(61’)に示すものを挙げることができる。











一般式(1’)〜(61’)中、R〜RおよびR13〜R60は各々同一でも異なっていてもよく、各々個別に、水素原子、直鎖もしくは分岐した炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、または炭素数6〜12のアリール基、アラルキル基、アリールオキシ基を示す。なお、R44はシクロペンタジエニル環と結合し、環を形成してもよいし、互いに異なるシクロペンタジエニル環を架橋する基を形成してもよい。
10〜R12は各々同一でも異なっていてもよく、各々個別に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アセチル基、ホルミル基、直鎖もしくは分岐した炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、アルキルチオ基、アルキルオキシカルボニル基、または炭素数6〜12のアリール基、アラルキル基、アリールオキシ基を示す。
また、同一構造式中に、複数のR〜R60が存在する場合、それらは同一でも異なってもよい。
およびBは各々同一でも異なっていてもよく、各々個別に、ハロゲンアニオン、ClO、BF、PF、CHCOOおよびCH(C)SOから選ばれる対アニオンを示す。
また、m、nは、各々1〜1000、好ましくは2〜500の整数を表し、k、lは、各環状炭化水素基の置換可能数を表すものであり、通常各々0〜4の整数の範囲である。
はCu、Zn、Co、Fe、Ti、Mg、Ni、Mo、Os、Ruなどの金属原子を表す。MはLi、Na、Mg、Ca等のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を表す。MはCr、Co、Fe、Mg、Ni、Os、Ru、V、X−Hf−Y、X−Mo−Y、X−Nb−Y、X−Ti−Y、X−V−YまたはX−Zr−Yを示す。なお、ここでいうXおよびYは水素、ハロゲンまたは炭素数1〜12のアルキル基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられ、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブチレニル基、ペンチレニル基、ヘキセニル基などが挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、i−プロポキシ基、ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペンチルオキシ基、t−ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、キシリル基、トリル基、クメニル基、ナフチル基等が、アラルキル基としては、ベンジル基、トリメチル基等が、アリールオキシ基としては、フェノキシ基、トリルオキシ基などが挙げられる。
電子受容性分子構造を有する化合物および電子供与性分子構造を有する化合物の具体例としては、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリピリジン、ポリ−p−フェニレン、ポリ−p−フェニレンスルフィド、ポリフェニレンビニレン、ポリ(2,5−ジヘキシロキシ−1,4−フェニレンビニレン)、ポリ(2,5−ジオクチロキシ−1,4−フェニレンビニレン)、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキシロキシ)−1,4−フェニレンビニレン)および以下に示す化合物(69)〜(131)等などが好適なものとして挙げられる。











電子受容性分子構造と電子供与性分子構造の好適な組み合わせとしては、フラーレン誘導体(上記式(3’))とポリ(フェニレンビニレン)誘導体(上記式(40’))、シアノ基含有ポリ(フェニレンビニレン)誘導体(上記式(4’))とポリ(フェニレンビニレン)誘導体(上記式(40’))、ビオロゲン誘導体(上記式(1’))とアミン誘導体(上記式(29’)〜(35’))、ビオロゲン誘導体(上記式(1’))とメタロセン誘導体(上記式(46’))、ビオロゲン誘導体(上記式(1’))とポリチオフェン誘導体(上記式(42’))、ビオロゲン誘導体(上記式(1’))とポリピロール誘導体(上記式(42’))、ビオロゲン誘導体(上記式(1’))とポリ(フェニレンビニレン)誘導体(上記式(40’))、ペリレン誘導体(上記式(2’))と銅フタロシアニン誘導体(上記式(20’)〜(22’))、ペリレン誘導体(上記式(2’))とフタロシアニン誘導体(上記式(19’))、ペリレン誘導体(上記式(2’))とアミン誘導体(上記式(29’)〜(35’))、ペリレン誘導体(上記式(2’))とポリ(フェニレンビニレン)誘導体(上記式(40’))、ペリレン誘導体(上記式(2’))とポリチオフェン誘導体(上記式(42’))、ペリレン誘導体(上記式(2’))とポリピロール誘導体(上記式(42’))、ペリレン誘導体(上記式(2’))とメタロセン誘導体(上記式(46’))、フラーレン誘導体(上記式(3’))と銅フタロシアニン誘導体(上記式(20’)〜(22’))、フラーレン誘導体(上記式(3’))とアミン誘導体(上記式(29’)〜(35’))、フラーレン誘導体(上記式(3’))とポリチオフェン誘導体(上記式(42’))、フラーレン誘導体(上記式(3’))とポリピロール誘導体(上記式(42’))、フラーレン誘導体(上記式(3)’)とメタロセン誘導体(上記式(46’))、シアノ基含有ポリ(フェニレンビニレン)誘導体(上記式(4’))とアミン誘導体(上記式(29’)〜(35’))、シアノ基含有ポリ(フェニレンビニレン)誘導体(上記式(4’))と銅フタロシアニン誘導体(上記式(20’)〜(22’))、シアノ基含有ポリ(フェニレンビニレン)誘導体(上記式(4’))とポリチオフェン誘導体(上記式(42’))、シアノ基含有ポリ(フェニレンビニレン)誘導体(上記式(4’))とポリピロール誘導体(上記式(42)’)、シアノ基含有ポリ(フェニレンビニレン)誘導体(上記式(4’))とメタロセン誘導体(上記式(46’))などの組み合わせが好ましい。
また、光電変換層を構成するポリマー中に分散されるこれらの電子供与性分子構造および電子受容性分子構造を兼備する化合物(A)、あるいはまた電子供与性分子構造を有する化合物(B)または電子受容性分子構造を有する化合物(C)は、さらに導電性を具備することが望ましい。これらの化合物が導電性を有するか否かについては常法により容易に判別することができる。例えば、これらの化合物に、ドーピングを行った後、常法により電気伝導度を測定することにより判別することができる。通常、電気伝導度が10−6〜10S/m、好ましくは10−4〜10S/cm程度のものが望ましい。
本発明においては、光電変換層を構成するポリマー中に電子供与性分子構造と電子受容性分子構造を併有する化合物(A)、および/または電子供与性分子構造を有する化合物(B)および電子受容性分子構造を有する化合物(C)を分散させることを特徴とする。分散方法としては、特に限定されないが、ホモジナイザー、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、2本ロール、3本ロール等を用いた分散方法が挙げられ、必要に応じて本発明を損なわない範囲で、適当な溶媒を用い、該溶媒に各成分を分散または溶解する方法も挙げられる。
なお、ポリマー前駆体と、電子供与性分子構造と電子受容性分子構造を有する化合物(A)、および/または電子供与性分子構造を有する化合物(B)および電子受容性分子構造を有する化合物(C)を予め分散処理したのち、常法によりポリマー前駆体を重合しポリマー化してもよい。
またこの光電変換層を形成する導電基板としては、適当な方法により導電性が得られれば特に制限されることはないが、通常は、透明基板上に透明電極層を積層させて製造される。透明基板としては、特に限定されず、材質、厚さ、寸法、形状等は目的に応じて適宜選択することができ、例えば無色あるいは有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等が用いられる他、無色あるいは有色の透明性を有する樹脂でも良い。具体的には、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペンテンなどが挙げられる。なお、本発明における透明とは、10〜100%の透過率を有することであり、また、本発明における基板とは、常温において平滑な面を有するものであり、その面は平面あるいは曲面であってもよく、また応力によって変形するものであってもよい。
また、透明電極層を形成する透明導電膜としては、本発明の目的を達成するものである限り特に限定されないが、例えば金、銀、クロム、銅、タングステンなどの金属薄膜、金属酸化物からなる導電膜などが挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化錫、酸化亜鉛や、これらに微量成分をドープしたIndium Tin Oxide(ITO(In:Sn))、Fluorine doped Tin Oxide(FTO(SnO:F))、Aluminum doped Zinc Oxide(AZO(ZnO:Al))などが好適なものとして用いられる。これらの膜厚は通常、100〜5000nm、好ましくは500〜3000nmである。また、表面抵抗(抵抗率)は、本発明の基板の用途により適宜選択されるところであるが、通常、0.5〜500Ω/sq、好ましくは2〜50Ω/sqである。
透明電極膜の形成法としては、特に限定されなく、導電層として用いる前述の金属や金属酸化物の種類により適宜公知の方法が選択使用されるところであるが、通常、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVDあるいはスパッタリング法などが用いられる。いずれの場合も基板温度20〜700℃の範囲内で形成されるのが望ましい。
また、必要に応じて、導電基板と光電変換層の間に半導体層を設けてもよい。半導体層を作製するのに用いられる材料としては、Bi、CdS、CdSe、CdTe、CuInS、CuInSe、Fe、GaP、GaAs、InP、Nb、PbS、Si、SnO、TiO、WO、ZnO、ZnS等が挙げられ、好ましくはCdS、CdSe、CuInS、CuInSe、Fe、GaAs、InP、Nb、PbS、SnO、TiO、WO、ZnOであり、これらを複数組み合わせて用いてもよい。特に好ましくはTiO、ZnO、SnO、Nbであり、最も好ましくはTiO、ZnOである。
用いる半導体は単結晶でも多結晶でも良い。結晶系としては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型などが主に用いられるが、好ましくはアナターゼ型である。半導体層の形成には公知の方法を用いることができる。
半導体層の形成方法としては、上記半導体のナノ粒子分散液、ゾル溶液等を、公知の方法により基板上に塗布することで得ることが出来る。この場合の塗布方法としては特に限定されずキャスト法による薄膜状態で得る方法、スピンコート法、ディップコート法、バーコート法のほか、スクリーン印刷法を初めとした各種の印刷方法を挙げることができる。
半導体層の厚みは任意であるが0.5μm以上50μm以下、好ましくは1μm以上20μm以下である。
さらに本発明の光電変換素子では、必要に応じて、電子障壁層及び/または正孔輸送層や正孔障壁層及び/または電子輸送層や保護層を設けることもできる。電子障壁層及び/または正孔輸送層は、通常陽極と光電変換層の間に設けられ、正孔障壁層及び/または電子輸送層は、通常と陰極と光電変換層の間に設けられる。これらの層構造の一例を図2に示す。
電子障壁層及び正孔輸送層に用いられる材料は、光生成した正孔を輸送する機能あるいは光生成した電子を障壁する機能のいずれかを有しているものであればよい。その具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマーやポリチオフェン等の導電性高分子等が挙げられる。
電子障壁層及び/または正孔輸送層は1種又は2種以上の上記材料からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
電子障壁層及び/または正孔輸送層の形成方法としては、真空蒸着法、LB法、インクジェット法、上記材料を溶媒中に溶解又は分散させて塗布する方法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法等)等が用いられる。
塗布する方法の場合、上記材料を樹脂成分と共に溶解又は分散させて塗布液を調製してもよく、該樹脂成分としては、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等が使用できる。電子障壁層及び正孔輸送層の膜厚は特に限定されないが、通常1nm〜5μmとするのが好ましく、5nm〜1μmとするのがより好ましく、10nm〜500nmとするのが特に好ましい。
正孔障壁層及び/または電子輸送層に用いられる材料は、光生成した電子を輸送する機能あるいは光生成した正孔を障壁する機能のいずれかを有しているものであればよい。その具体例としては、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、金属錯体(8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体等)等が挙げられる。
正孔障壁層及び/または電子輸送層は1種又は2種以上の上記材料からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
正孔障壁層及び/または電子輸送層の形成方法としては、真空蒸着法、LB法、インクジェット法、上記材料を溶媒中に溶解又は分散させて塗布する方法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法等)等が用いられる。
塗布する方法の場合、上記材料を樹脂成分と共に溶解又は分散させて塗布液を調製してもよい。該樹脂成分としては、前述した電子障壁層及び/または正孔輸送層の場合と同様のものが使用できる。正孔障壁層及び/または電子輸送層の膜厚は特に限定されず、通常1nm〜5μmとするのが好ましく、5nm〜1μmとするのがより好ましく、10nm〜500nmとするのが特に好ましい。
保護層は水分、酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有する。保護層の材料としては、金属(In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等)、金属酸化物(MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等)、金属フッ化物(MgF、LiF、AlF、CaF等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が使用できる。
保護層の形成方法は特に限定されず、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、塗布法、インクジェット法等が適用できる。
また、光電変換層の薄膜上に形成する導電膜としてはアルミニウム、マグネシウム、金、銀、白金、インジウム、銅、クロムなどの金属や、マグネシウム:銀などの合金の他、導電性のカーボンや銀、金、銅等の金属ペースト等が挙げられる。
この導電膜の形成方法としては導電膜として用いる前述の材料により適宜公知の方法が選択使用されるところであるが、通常、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVDあるいはスパッタリング法等のドライ成膜やスピンコート法、ディップコート法、バーコート法、ディスペンサー法のほか、スクリーン印刷法を初めとした各種の印刷方法を挙げることができる。
導電膜の膜厚は、通常100〜5000μm、好ましくは500〜3000μmである。また、表面抵抗(抵抗率)は、本発明の光電変換素子の用途により適宜選択されるところであるが、通常、0.5〜500Ω/sq、好ましくは2〜50Ω/sqである。
また、本発明の光電変換素子の別の態様として、対極基板を用いて、対向基板、電子供与性分子構造および電子受容性分子構造を有する化合物(A)、および/または電子供与性分子構造を有する化合物(B)および電子受容性分子構造を有する化合物(C)が分散したポリマーからなる光電変換層および導電性基板を積層する形態をとることもできる。
対極基板としては、それ自体で導電性を有する支持基板、または支持基板上に導電膜を形成したものを挙げることが出来る。
支持基板としては、特に限定されず、材質、厚さ、寸法、形状等は目的に応じて適宜選択することができる。支持基板には導電性があっても無くてもよく、金、白金などの金属のほか、例えば無色あるいは有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等が用いられる他、無色あるいは有色の透明性を有する樹脂でも良い。具体的には、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペンテンなどが挙げられる。
なお、本発明における基板とは、常温において平滑な面を有するものであり、その面は平面あるいは曲面であってもよく、また応力によって変形するものであってもよい。また、支持基板表面には金、白金などの金属や、In:Sn、SnO:F、ZnO:Alなどの薄膜を真空蒸着法、電子ビーム真空蒸着法、スパッタリング法等の公知の方法で成膜し、対極基板とすることができる。
対極基板を用いる場合には、光電変換層と対極基板の間に、電解質層を設けても良い。電解質層は(a)高分子マトリックス、(b)可塑剤、(c)支持電解質、から選ばれる少なくとも1種以上の物質を含有してなるイオン伝導性材料であって、上記(a)〜(c)あるいは(d)レドックス剤によって可逆な酸化還元特性を示すことを特徴とする。
高分子マトリックスとして使用できる材料としては、高分子マトリックス単体で、あるいは可塑剤の添加や、支持電解質の添加、または可塑剤と支持電解質の添加によって固体状態またはゲル状態が形成されれば特に制限は無く、一般的に用いられるいわゆる高分子化合物を用いることができる。
上記高分子マトリックスとしての特性を示す高分子化合物としては、具体的には、ヘキサフロロプロピレン、テトラフロロエチレン、トリフロロエチレン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、スチレンポリフッ化ビニリデンなどのモノマーを重合あるいは共重合させて得られる高分子化合物を挙げることができる。またこれらの高分子化合物は単独で用いても、混合して用いても良い。
可塑剤としては、一般に電気化学セルや電池に用いられる溶媒であればいずれも使用することができる。具体的には、無水酢酸、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、エチレンカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、ジメトキシエタン、プロピオンニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸エチルジメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリペンチル、リン酸トリヘキシル、リン酸トリヘプチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリノニル、リン酸トリデシル、リン酸トリス(トリフフロロメチル)、リン酸トリス(ペンタフロロエチル)、リン酸トリフェニルポリエチレングリコール、及びポリエチレングリコール等が使用可能である。特に、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ジオキソラン、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルが好ましい。可塑剤はその1種を単独で使用しても良いし、また2種以上を混合して使用しても良い。
支持電解質としては、電気化学の分野又は電池の分野で通常使用される塩類、酸類、アルカリ類、常温溶融塩類が使用できる。
塩類としては、特に制限はなく、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩;4級アンモニウム塩;環状4級アンモニウム塩;4級ホスホニウム塩などが使用でき、特にLi塩が好ましい。
塩類の具体例としては、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、および(CSOから選ばれる対アニオンを有するLi塩、Na塩、あるいはK塩が挙げられる。
またハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、および(CSOから選ばれる対アニオンを有する4級アンモニウム塩、具体的には、(CHNBF、(CNBF、(n−CNBF、(CNBr、(CNClO、(n−CNClO、CH(CNBF、(CH(CNBF、(CHNSOCF、(CNSOCF、(n−CNSOCF、さらには、

等が挙げられる。またハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、および(CSOから選ばれる対アニオンを有するホスホニウム塩、具体的には、(CHPBF、(CPBF、(CPBF、(CPBF等が挙げられる。
また、これらの混合物も好適に用いることができる。
酸類も特に限定されず、無機酸、有機酸などが使用でき、具体的には硫酸、塩酸、リン酸類、スルホン酸類、カルボン酸類などが使用できる。
アルカリ類も特に限定されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがいずれも使用可能である。
常温溶融塩類も特に限定されることは無いが、本発明における常温溶融塩とは、溶媒成分が含まれないイオン対のみからなる常温において溶融している(即ち液状の)イオン対からなる塩であり、通常、融点が20℃以下であり、20℃を越える温度で液状であるイオン対からなる塩を示す。
常温溶融塩はその1種を単独で使用することができ、また2種以上を混合しても使用することもできる。
常温溶融塩の例としては、例えば、以下のものが挙げられる。

(ここで、Rは炭素数2〜20、好ましくは2〜10のアルキル基を示す。Xはハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、および(CSOから選ばれる対アニオンを表す。)

(ここで、R1およびR2は各々炭素数1〜10のアルキル基(好ましくはメチル基またはエチル基)、または炭素数7〜20、好ましくは7〜13のアラルキル基(好ましくはベンジル基)を示しており、互いに同一でも異なっても良い。また、Xは対アニオンを示し、具体的にはハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、(CSOなどを示す。)

(ここで、R、R、R、Rは、各々炭素数1以上、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基(フェニル基など)、またはメトキシメチル基などを示し、互いに同一でも異なってもよい。また、Xは対アニオンを示し、具体的にはハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、(CSOなど示す。)
以上の支持電解質の使用量については特に制限はなく、任意であるが、通常、電解質層中に0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、かつ70質量%以下、好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下の量で含有させることができる。
次に、レドックス材について説明する。
レドックス材は可逆な電気化学的酸化還元反応を行うことができるものであって、特にその種類を制限するものではない。レドックス材は、酸化体、還元体のどちらか一方のみを用いてもよいし、酸化体と還元体を適当なモル比で混合し、添加することもできる。
また、高分子マトリックス、可塑剤、支持電解質が電気化学的応答性を示すように、これら高分子マトリックス、可塑剤、支持電解質の酸化還元対を添加するなどしても良い。そのような性質を示す材料として、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、および(CSOから選ばれる対アニオンを有するフェロセニウムなどのメタロセニウム塩などのほか、ヨウ素、臭素、塩素などのハロゲン類を用いることもできる。
電解質には、更に他の成分を含有させることができる。含有させることができる他の成分としては、紫外線吸収剤を挙げることができる。用いることができる紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物、ベンゾフェノン骨格を有する化合物等の有機紫外線吸収剤が代表的なものとして挙げられる。
ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物としては、例えば、下記の一般式(132)で表される化合物が好適に挙げられる。

一般式(132)において、R81は、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルキル基を示す。ハロゲン原子としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を挙げることができる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。R81の置換位置は、ベンゾトリアゾール骨格の4位または5位であるが、ハロゲン原子およびアルキル基は通常4位に位置する。R82は、水素原子または炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルキル基を示す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。R83は、炭素数1〜10、好ましくは1〜3のアルキレン基またはアルキリデン基を示す。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基等を挙げることができ、またアルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基等が挙げられる。
一般式(132)で示される化合物の具体例としては、3−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパン酸、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンエタン酸、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシベンゼンエタン酸、3−(5−メチル−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1−メチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、3−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパン酸オクチルエステル等が挙げられる。
ベンゾフェノン骨格を有する化合物としては、例えば、下記の一般式(133)〜(135)で示される化合物が好適に挙げられる。

上記一般式(133)〜(135)において、R92、R93、R95、R96、R98、及びR99は、互いに同一もしくは異なる基であって、ヒドロキシル基、炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルキル基またはアルコキシ基を示す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、及びシクロヘキシル基を挙げることができる。またアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、i−プロポキシ基、及びブトキシ基を挙げることができる。
91、R94、及びR97は、炭素数1〜10、好ましくは1〜3のアルキレン基またはアルキリデン基を示す。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、及びプロピレン基を挙げることができる。アルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、及びプロピリデン基が挙げられる。
p1、p2、p3、q1、q2、及びq3は、それぞれ別個に0乃至3の整数を表す。
上記一般式(133)〜(135)で表されるベンゾフェノン骨格を有する化合物の好ましい例としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−カルボン酸、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−カルボン酸、4−(2−ヒドロキシベンゾイル)−3−ヒドロキシベンゼンプロパン酸、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
もちろん、これらを二種以上組み合わせて使用することができる。
紫外線吸収剤の使用は任意であり、また使用する場合の使用量も特に制限されるものではないが、使用する場合は電解質中に0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上であり、20質量%以下、好ましくは10質量%以下の範囲の量で含有させることが望ましい。
電解質層は電解質フィルムとして製造しても良い。電解質フィルムの製造方法について以下に説明する。
電解質フィルムは、所望により可塑剤、支持電解質、レドックス材、紫外線吸収剤等の任意成分を高分子マトリックス成分中に配合することにより得られる混合物を、公知の方法によりフィルムに成形することにより得ることが出来る。この場合の成形方法としては特に限定されず、押出し成型、キャスト法によるフィルム状態で得る方法、スピンコート法、ディップコート法などを挙げることができる。
押出し成型については常法により行うことができ、高分子マトリックスと可塑剤、支持電解質、レドックス材、紫外線吸収剤等の任意成分を混合し、過熱溶融した後、フィルム成型することが行われる。
キャスト法については、高分子マトリックスと可塑剤、支持電解質、レドックス材、紫外線吸収剤等の任意成分を混合し、さらに適当な希釈剤にて粘度調整を行い、キャスト法に用いられる通常のコータにて塗布し、乾燥することで成膜することができる。コータとしては、ドクタコータ、ブレードコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、リバースロールコータ、グラビアコータ、スプレイコータ、カーテンコータを用いることができ、粘度および膜厚により使い分けることができる。
スピンコート法については、高分子マトリックスと可塑剤、支持電解質、レドックス材、紫外線吸収剤等の任意成分を混合し、さらに適当な希釈剤にて粘度調整を行い、市販のスピンコーターにて塗布し、乾燥することで成膜することができる。
ディップコート法については、高分子マトリックスと可塑剤、支持電解質、レドックス材、紫外線吸収剤等の任意成分を混合し、さらに適当な希釈剤にて粘度調整を行って混合物溶液を作製し、適当な基盤を混合物溶液より引き上げた後、乾燥することで成膜することができる。
以上の方法により得られた電解質フィルムは、イオン伝導度が、通常室温で1×10−7S/cm以上、好ましくは1×10−6S/cm以上、さらに好ましくは1×10−5S/cm以上を示す。イオン伝導度は、複素インピーダンス法などの一般的な手法で求めることができる。
電解質フィルムの厚さは、特に限定されないが、下限としては、通常1μm以上、好ましくは10μm以上であり、上限としては通常3mm以下、好ましくは1mm以下である。
【産業上の利用可能性】
本発明の光電変換素子は、光電変換層における相分離の発生が抑制され、また、電荷分離の効率が良好となるために光電変換層における光利用効率を高めることができ、高効率な光発電が可能である。
また、本発明の光電変換素子は、比較的容易に製造でき、また製造時や廃棄時における環境負荷が小さいなどの特長を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらになんら制限されるものではない。
【実施例1】
アルカリ洗浄およびプラズマ−オゾン洗浄し、清浄化した表面抵抗値10Ω/sqの5cm角ITOガラス(ガラス基板上にSnドープIn膜を形成した透明導電性ガラス)上に、ポリメチルメタクリレート(FLUKA社製、Mw=約20万)500mgをクロロホルム10gに溶解させた溶液に電子受容性分子構造と電子供与性分子構造を併有する下記式で示される化合物200mgを分散させた塗布液をスピンコートした。十分乾燥することにより光電変換層を作製した。なお、層の膜厚は約4.5μmであった。この光電変換層の表面状態を観察したが、均質で曇りのない膜が成膜されていた。また、得られた光電変換層を80℃に20時間放置したが、特に変化は認められなかった。
次にこの光電変換層上にアルミニウムを1.33×10−3Pa(1×10−5Torr)で(30Å/s)で約100nm積層し、光電変換素子を作製した。
この素子に、拡散板を通し均一化した100Wタングステンランプの光をガラス基板側から照射し、短絡時の電流値を測定したところ、4μAの電流値が得られ、良好な光電変換素子の特性を示すことが確認できた。

【実施例2】
アルカリ洗浄およびプラズマ−オゾン洗浄し、清浄化した表面抵抗値10Ω/sqの5cm角ITOガラス(ガラス基板上にSnドープIn膜を形成した透明導電性ガラス)上に、ポリメチルメタクリレート(FLUKA社製、Mw=約20万)500mgをクロロホルム10gに溶解させた溶液に電子受容性分子構造を有する化合物としてフラーレン(C60)200mgおよび電子供与性分子構造を有する化合物として下記化合物(a)(ポリ(2,5−ジヘキシルオキシ−1,4−フェニレンビニレン)、ALDRICH社製)100mgを分散させた塗布液をスピンコートした。十分乾燥することにより光電変換層を作製した。なお、層の膜厚は約5μmであった。この光電変換層の表面状態を観察したが、均質で曇りのない膜が成膜されていた。また、得られた光電変換層を、80℃に20時間放置したが、特に変化は認められなかった。
次にこの光電変換層上にアルミニウムを1.33×10−3Pa(1×10−5Torr)で(30Å/s)で約100nm積層し、光電変換素子を作製した。
この素子に、拡散板を通し均一化した100Wタングステンランプの光をガラス基板側から照射し、短絡時の電流値を測定したところ、2.1μAの電流値が得られ、良好な光電変換素子の特性を示すことが確認できた。

【実施例3】
アルカリ洗浄およびプラズマ−オゾン洗浄し、清浄化した表面抵抗値10Ω/sqの5cm角ITOガラス(ガラス基板上にSnドープIn膜を形成した透明導電性ガラス)上に、ポリ[(3,4−エチレンジオキシ)−2,5−チオフェン]・ポリスチレンスルホン酸分散物(Bayer社製「BaytronP」、固形分:1.3%)をスピンコートし、150℃で2時間真空乾燥して膜厚100nmの塗布層を形成した。さらにその上に、ポリメチルメタクリレート(FLUKA社製、Mw=約20万)500mgをクロロホルム10gに溶解させた溶液に電子受容性分子構造を有する化合物としてC60を200mg、および電子供与性分子構造を有する化合物として実施例2で用いた化合物(a)100mgを分散させた塗布液をスピンコートした。十分乾燥することにより光電変換層を作製した。なお、層の膜厚は約5μmであった。この光電変換層の表面状態を観察したが、均質で曇りのない膜が成膜されていた。また、得られた光電変換層を、80℃に20時間放置したが、特に変化は認められなかった。
次にこの光電変換層上にAlを1.33×10−3Pa(1×10−5Torr)で(30Å/s)で約100nm積層し、光電変換素子を作製した。
この素子に、拡散板を通し均一化した100Wタングステンランプの光をガラス基板側から照射し、短絡時の電流値を測定したところ、3.5μAの電流値が得られ、良好な光電変換素子の特性を示すことが確認できた。
【実施例4】
アルカリ洗浄およびプラズマ−オゾン洗浄し、清浄化した表面抵抗値10Ω/sqの5cm角ITOガラス(ガラス基板上にSnドープIn膜を形成した透明導電性ガラス)上に、ポリ[(3,4−エチレンジオキシ)−2,5−チオフェン]・ポリスチレンスルホン酸分散物(Bayer社製「BaytronP」、固形分:1.3%)をスピンコートし、150℃で2時間真空乾燥して膜厚100nmの塗布層を形成した。さらにその上に、(ポリ(2,5−ジヘキシルオキシ−1,4−フェニレンビニレン)、ALDRICH社製)500mgをクロロホルム10gに溶解させた溶液に電子受容性分子構造と電子供与性分子構造を併有する下記式で示される化合物(b)200mgを分散させた塗布液をスピンコートした。十分乾燥することにより光電変換層を作製した。なお、層の膜厚は約5μmであった。この光電変換層の表面状態を観察したが、均質で曇りのない膜が成膜されていた。また、得られた光電変換層を、80℃に20時間放置したが、特に変化は認められなかった。
次にこの光電変換層上にAlを1.33×10−3Pa(1×10−5Torr)で(30Å/s)で約100nm積層し、光電変換素子を作製した。
この素子に、拡散板を通し均一化した100Wタングステンランプの光をガラス基板側から照射し、短絡時の電流値を測定したところ、4.2μAの電流値が得られ、良好な光電変換素子の特性を示すことが確認できた。

【実施例5】
アルカリ洗浄およびプラズマ−オゾン洗浄し、清浄化した表面抵抗値10Ω/sqの5cm角ITOガラス(ガラス基板上にSnドープIn膜を形成した透明導電性ガラス)上に、ポリ[(3,4−エチレンジオキシ)−2,5−チオフェン]・ポリスチレンスルホン酸分散物(Bayer社製「BaytronP」、固形分:1.3%)をスピンコートし、150℃で2時間真空乾燥して膜厚100nmの塗布層を形成した。さらにその上に、(ポリ(2,5−ジヘキシルオキシ−1,4−フェニレンビニレン)、ALDRICH社製)500mgをクロロホルム10gに溶解させた溶液に、電子受容性分子構造を有する化合物として、下記式で示される化合物(c)200mg、および電子供与性分子構造を有する化合物として、下記式で示される化合物(d)100mgを分散させた塗布液をスピンコートした。十分乾燥することにより光電変換層を作製した。なお、層の膜厚は約5μmであった。この光電変換層の表面状態を観察したが、均質で曇りのない膜が成膜されていた。また、得られた光電変換層を、80℃に20時間放置したが、特に変化は認められなかった。
次に、この光電変換層上にAlを1.33×10−3Pa(1×10−5Torr)で(30Å/s)で約100nm積層し、光電変換素子を作製した。
この素子に、拡散板を通し均一化した100Wタングステンランプの光をガラス基板側から照射し、短絡時の電流値を測定したところ、4.5μAの電流値が得られ、良好な光電変換素子の特性を示すことが確認できた。

【図面の簡単な説明】
図1は、本発明における光電変換素子としての層構造の一例である。
図2は、本発明における光電変換素子としての層構造の他の例である。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子供与性分子構造および電子受容性分子構造を併有する有機化合物(A)がポリマー中に分散している光電変換層を有することを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
電子供与性分子構造を有する有機化合物(B)および電子受容性分子構造を有する有機化合物(C)がポリマー中に分散している光電変換層を有することを特徴とする光電変換素子に関する。
【請求項3】
前記ポリマーが導電性高分子化合物であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記ポリマーが導電性高分子化合物であることを特徴とする請求の範囲第2項に記載の光電変換素子。

【国際公開番号】WO2004/049458
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【発行日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554964(P2004−554964)
【国際出願番号】PCT/JP2003/012963
【国際出願日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】