説明

光電変換装置および方法

【課題】光電変換装置におけるより効率的な発電を可能とすることができるようにする。
【解決手段】ステップS21において、光量測定部110は、受光した光量が閾値を超えて変化したか否かを判定し、閾値を超えて変化したと判定されるまで待機する。ステップS22において、光量測定部110は、受光した光量のレベルを特定する。ステップS23において、光量測定部110は、ステップS22で特定されたレベルに対応する制御信号を出力する。ステップS24において、制御信号に対応して可動集電バー103が移動させられる。例えば、レベル3に対応する制御信号が出力された場合、受光面に可動集電バー103が5本露出するように移動させられ、レベル2に対応する制御信号が出力された場合、受光面に可動集電バー103が3本露出するように移動させられる。なお、この際、可動集電バー103同士の間隔も最適値となるように移動させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置および方法に関し、特に、光電変換装置におけるより効率的な発電を可能とすることができるようにする光電変換装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池の普及がめざましい。例えば、色素増感太陽電池など、光電変換効率が高く、製造コストが安いなどの利点があり、新しいタイプの太陽電池が注目を浴びているおり、シリコン系などに替わる次世代の太陽電池として研究が広く行われている。
【0003】
色素増感型太陽電池は、その特徴として、製造プロセスが簡便であることや、デザイン性の付与が可能であることが挙げられる。デザイン性の一例としては、複数の色を有する太陽電池であれば、設置する装置、建物等の外観を損なうことなく、設置することができ、太陽電池の一層の普及につながるものと考えられる。
【0004】
色素増感太陽電池は、例えば、厚さ1μm程度の透明導電膜が形成され、透明導電膜の上には、酸化チタン、酸化ニオジムなどの酸化物半導体微粒子からなり、光増感色素が担持された酸化物半導体多孔質膜4が形成される。色素増感太陽電池では、太陽光などの光が導電性ガラス側から入射されると、透明導電膜と対極との間に起電力が生じるように構成さえている。
【0005】
また、導電性ガラスにおいて、その表面の電気抵抗を大幅に低減し、かつ光の透過量が低下しないようにし、光電変換効率を高める技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−203681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、太陽電池を設計等する場合、単位時間あたりの発電量を高めるべく、変換効率を高くすることが重要となる。変換効率は、太陽光の持つエネルギーと、その入射光により発生する電気エネルギーの比であり、変換効率が高いほど効率的な発電が可能といえる。
【0008】
しかしながら、太陽電池は、光量に応じて発電電流は随時変化し、その光量に応じて開口率・集電間隔には最適値が存在する。
【0009】
例えば、大型の色素増感型太陽電池の場合、透明導電膜の抵抗が高く、光量が多くなると発生する電流が大きくなるので、電子伝導の助けとなる集電配線が必要になる。そして、光量が多ければ電流量が増えるので、集電配線への負担が増すため、集電配線の本数を多くする必要があるが、光量が少ない場合、集電配線は少なくて済む。
【0010】
このため、開口率・集電間隔を日中、夕方など、その光量に応じて調整することができれば、より効率的な発電が可能であるものの、通常開口率や集電間隔はモジュール作製時に固定されてしまう。
【0011】
そのため、従来の技術では効率的に発電できないという問題があった。
【0012】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、光電変換装置におけるより効率的な発電を可能とすることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一側面は、受光した光を電気エネルギーに変換して発電を行う発電手段と、受光面に設けられ、前記発電手段の発電により得られた電流を電極に導く集電配線と、前記受光面に入射する光量を測定する光量測定手段とを備え、前記集電配線は、第1の方向に長い線状の固定された複数の固定集電バーと、前記第1の方向に直交する第2の方向に長い線状の集電バーであって、前記光量測定手段の測定結果に応じて前記第2の方向に移動する複数の可動集電バーを有する光電変換装置である。
【0014】
複数の前記固定集電バーのうちの一部の固定集電バーは、前記可動集電バーの前記第1の方向の移動を可能とするために、前記可動集電バーの一部と係合して前記可動集電バーを、前記第1の方向および前記第2の方向と直交する第3の方向に移動させるようにすることができる。
【0015】
複数の前記固定集電バーのうちの他の固定集電バーのそれぞれには、前記可動集電バーの一部と接触するためのコンタクトポイントが、前記第1の方向の予め定められた位置に複数設けられているようにすることができる。
【0016】
前記光量測定手段の測定結果が予め設定された所定の光量を表すものである場合、複数の前記固定集電バーのうちの一部の前記可動集電バーは、前記受光面の外部の位置であって、前記コンタクトポイントと接触しない位置に移動し、複数の前記固定集電バーのうちの他の前記可動集電バーは、予め定められた前記コンタクトポイントと接触する位置に移動するか、または移動せずにとどまるようにすることができる。
【0017】
本発明の一側面は、受光した光を電気エネルギーに変換して発電を行う発電手段と、受光面に設けられ、前記発電手段の発電により得られた電流を電極に導く集電配線と、前記受光面に入射する光量を測定する光量測定手段とを備え、前記集電配線は、第1の方向に長い線状の固定された複数の固定集電バーと、前記第1の方向に直交する第2の方向に長い線状の集電バーであって、前記光量測定手段の測定結果に応じて前記第2の方向に移動する複数の可動集電バーを有する光電変換装置の光電変換方法であって、前記複数の可動集電バーが、前記前記光量測定手段の測定結果に応じて前記第2の方向に移動するステップを含む光電変換方法である。
【0018】
本発明の一側面においては、受光した光を電気エネルギーに変換して発電が行われ、受光面に設けられ、集電配線により、前記発電により得られた電流が電極に導かれ、前記受光面に入射する光量が測定される。また、前記集電配線が、第1の方向に長い線状の固定された複数の固定集電バーと、前記第1の方向に直交する第2の方向に長い線状の集電バーであって、前記光量測定手段の測定結果に応じて前記第2の方向に移動する複数の可動集電バーを有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光電変換装置におけるより効率的な発電を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来の色素増感太陽電池の外観の例を示す斜視図である。
【図2】図1に示される色素増感太陽電池の断面図の例を示す図である。
【図3】集電配線同士の間隔の最適値を説明するための図である。
【図4】光量に応じた集電配線の本数の最適値を説明するための図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る光電変換装置の外観の例を示す図である。
【図6】図5に示される光電変換装置の断面図の例を示す図である。
【図7】図5に示される光電変換装置の別の位置での断面図の例を示す図である。
【図8】図5に示される光電変換装置の外観の別の例を示す図である。
【図9】変換効率最適化処理の例を説明する図である。
【図10】図5に示される光電変換装置の断面図の別の例を示す図である。
【図11】図5に示される光電変換装置の断面図のさらに別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0022】
最初に、従来の色素増感太陽電池について説明する。
【0023】
図1は、従来の色素増感太陽電池の外観の例を示す斜視図である。同図に示されるように、色素増感太陽電池セルは、例えば、矩形のセルとして構成され、主に酸化チタンなどを原材料として構成される。
【0024】
すなわち、セルの内部には、それぞれ所定のパターン形状を有する複数の色素担持多孔質酸化チタンの層(酸化チタン層)が形成されている。また、酸化チタン層上には透明導電膜およびガラス層が設けられており、セルの互いに直交する二辺に平行な方向(垂直方向および水平方向)に集電配線が形成されている。
【0025】
セルの受光面に入射した光は、ガラス層および透明導電膜を透過して色素担持多孔質酸化チタンに入射し、色素担持多孔質酸化チタンの増感色素を励起して電子を発生する。
【0026】
色素増感太陽電池の端子の取り出しは、外部に露出している集電配線を接続することにより行うことができる。すなわち、酸化チタン層の増感色素が励起されて発生した電子は集電配線を介して取り出し電極(端子)へと導かれるようになされている。この際、電子取り出し路の抵抗を減少させ、集電効率を向上させるために、透明導電膜上に集電配線がパターニングして形成されている。集電配線を形成する導電材料に特に制限はないが、銀や銅などの導電性の高い金属やカーボンなどがよい。
【0027】
なお、図1の色素増感太陽電池においては、水平(X軸)方向に長い集電配線が2本、垂直(Y軸)方向に長い集電配線が13本設けられている。
【0028】
図2は、図1に示される色素増感太陽電池の断面図の例を示す図である。なお、同図は、図1に示される色素増感太陽電池を図中の水平方向(X軸方向)に平行な線で切った場合の断面図を表している。
【0029】
図2において、図中の最上部にガラス層31が設けられている。なお、ガラスに替えて何らかの硬く透明な素材を用いるようにしてもよい。
【0030】
そして、ガラス層の下に透明導電膜32が設けられている。透明導電膜32は、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチシモン含有酸化スズ(ATO)などの素材により構成される。
【0031】
透明導電膜32の下には、作用極としての酸化チタン層41が設けられている。なお、酸化チタンに替えて酸化亜鉛を用いるようにしても構わない。
【0032】
また、図中の最下部には、対極基板33が設けられている。対極基板33は、チタン、アルミニウムなどの素材により構成される。
【0033】
そして、対極基板33の上には対極としてのカーボン層42が設けられている。なお、カーボンに替えて白金(PT)を用いるようにしても構わない。
【0034】
酸化チタン層41とカーボン層42との間には、電解液44が充填される。また、透明導電膜32に接触する形態で、紙面の奥行方向に長い集電配線43−1と集電配線43−2が設けられている。ここで、集電配線43−1と集電配線43−2は、図1において垂直方向に長い13本の集電配線として示されたものの一部である。
【0035】
集電配線43−1と集電配線43−2(まとめて集電配線43と称する)は、銀、銅などの金属により構成される。また、集電配線43は、その先端部が、ガラスフリット、樹脂などにより構成されるカバー43−1a、カバー43−2aにより覆われている。
【0036】
上述したように、酸化チタン層41の増感色素が励起されて発生した電子は集電配線43を介して取り出し電極へと導かれるようになされている。従って、集電配線43の断面積が大きくなればなるほど、集電配線43の抵抗値が小さくなり、酸化チタン層41の増感色素が励起されて発生した電子による電流の伝送路上でのロスが減ることになる。
【0037】
一方で、集電配線43の断面積が大きくなれば、当然色素増感太陽電池の受光面における酸化チタン層41の占める割合が小さくなるので、酸化チタン層41に入射する光量も減少し電子の発生も鈍化することになる。
【0038】
すなわち、図2に示される長さbが大きくなるほど、集電配線43の断面積が大きくなり、集電配線43の抵抗値が小さくなるが、長さaが小さくなり、酸化チタン層41に入射する光量が減少するのである。このように、色素増感太陽電池においては、集電配線43における電力の損失と酸化チタン層41において発生される電力とがトレードオフの関係となる。
【0039】
例えば、図2の例において、集電配線43−2を除去し、集電配線43−1のみを介して電子を取り出し電極へ導こうとした場合を考える。この場合、色素増感太陽電池の受光面における酸化チタン層41の占める割合が大きくなるので、電子の発生は活性化するが、それらの電子が集電配線43−1に集中するため、電流のロスが増大する。
【0040】
このため、色素増感太陽電池を設計する場合、集電配線の本数、および集電配線同士の間隔が最適となるように調整し、効率的な発電が可能となるように設計することが重要である。
【0041】
なお、色素増感太陽電池の受光面における酸化チタン層41の占める割合を大きくするために、例えば、図2に示される集電配線43の図中水平方向の長さ(集電配線幅)を小さくして、図中垂直方向の長さを大きくすれば、効率的な発電が可能となるようにも思える。このようにすれば、集電配線43の断面積も、当然色素増感太陽電池の受光面における酸化チタン層41の占める割合も大きくすることができるからである。
【0042】
つまり、一見すると、上述した集電配線43における電力の損失と酸化チタン層41において発生される電力のトレードオフの対策として、集電配線幅を細くすれば、集電配線の本数、および集電配線同士の間隔を調整しなくても、問題を解決できるようにも思える。
【0043】
しかしながら、実際には、透明導電膜と集電配線との接触抵抗が比較的大きいため、集電配線幅をあまり細くすると電流の伝送路上でのロスが増大することになる。つまり、透明導電膜から集電配線に無駄なく電流を流すためには、ある程度の集電配線幅が必要なのである。従って、集電配線の本数を変えずに集電配線幅を変えたとしても、上述した集電配線43における電力の損失と酸化チタン層41において発生される電力のトレードオフの対策として現実的な解決策とはなり難い。
【0044】
結果として、効率的な発電が可能となるように色素増感太陽電池を設計するためには、やはり集電配線の本数、および集電配線同士の間隔が最適となるように調整する必要がある。
【0045】
図3は、集電配線同士の間隔の最適値を説明するための図であり、集電配線同士の間隔と色素増感太陽電池による光電変換の効率(変換効率と称する)の関係を示すグラフである。同図は、横軸が集電配線同士の間隔とされ、縦軸が変換効率の相対値とされる。ここでは、単位面積の色素増感太陽電池セルにおいて集電配線を介さずに出力された電力量を1とし、セルに所定の断面積を有する集電配線を2本配置して、集電配線同士の間隔を変化させて出力された電力の割合が変換効率として示されている。
【0046】
同図に示されるように、この例では、集電配線同士の間隔が約8mmで変換効率の相対値はピークとなっている。同図のグラフにおいてピークとなる点が変換効率を最大にする集電配線の本数を示すものであり、その光量において最適な集電配線の本数であるといえる。
【0047】
集電配線同士の間隔は、通常、セルの受光面の端部から最寄の集電配線までの距離の2倍となる間隔で、集電配線を均等に並べたとき最適となる。例えば、矩形のセルの受光面上に垂直方向に3本の集電配線を並べた場合、最も左の集電配線と、受光面の左端部の辺からの水平方向の距離Lが、最も右の集電配線と、受光面の右端部の辺からの水平方向の距離と等しくなるようにする。そして、左右の集電配線と中央の集電配線との水平方向の距離は、上述した距離Lの2倍となるようにする。
【0048】
このように、セル内に集電配線をどれだけ離して配置するかによって、変換効率が変化することになる。また、図3の例では、説明を簡単にするために、集電配線の本数が2である場合を例として説明したが、集電配線の本数が変化すると、集電配線同士の間隔の最適値も変化することになる。さらに、図3の例では、同一方向の集電配線が2本存在する場合について説明したが、実際の色素増感太陽電池のセル上には、水平方向と垂直方向の集電配線が設けられることが多く、そのような集電配線の配置パターンに応じて、やはり集電配線同士の間隔の最適値も変化することになる。
【0049】
従って、色素増感太陽電池を設計する場合、集電配線のレイアウトを決めて、集電配線の本数、および集電配線同士の間隔が最適となるように調整する必要がある。
【0050】
しかしながら、色素増感太陽電池の受光面に入射する光量は、時刻や季節、天候などによって変化する。そうすると、上述したように、集電配線の本数、および集電配線同士の間隔を調整したとしても、一定の光量に対応した調整では常に効率的な発電ができるとは限らない。上述したように、色素増感太陽電池においては、集電配線43における電力の損失と酸化チタン層41において発生される電力とがトレードオフの関係となるからである。
【0051】
図4は、光量に応じた集電配線の本数の最適値を説明するための図であり、集電配線の本数と発電効率の関係を示すグラフである。同図は、横軸が集電配線の本数とされ、縦軸が変換効率とされる。ここでは、同一の単位面積のセルに所定の本数の集電配線を配置して出力された電力に基づいて得られた変換効率が示されている。なお、集電配線の本数が変化した場合、集電配線同士の間隔の最適値も変化することになるが、この例では、各本数において最適値となる間隔がそれぞれ設定されたものとする。
【0052】
同図の線81は、200W/m2の光量(照射強度)を照射した場合の、各集電配線の本数に対応する変換効率を表すものであり、線82は、1000W/m2の光量を照射した場合の、各集電配線の本数に対応する変換効率を表すものである。
【0053】
同図に示されるように、線81により示される変換効率の値は、集電配線の本数が9本のときに、約9%でピークとなっている。また、線82により示される変換効率の値は、集電配線の本数が15本のときに、約7%でピークとなっている。ここで、線81または線82がピークとなる点が変換効率を最大にする集電配線の本数を示すものであり、その光量において最適な集電配線の本数であるといえる。
【0054】
照射強度1000W/m2の場合、最適な本数は15本であるが、仮に集電配線の数を15本として固定してしまうと、照射強度が200W/m2に下がったとき、本来約9%の変換効率を実現できるはずであるのに、約8%の変換効率しか実現できないことになる。また、照射強度200W/m2の場合、最適な本数は9本であるが、仮に集電配線の数を9本として固定してしまうと、照射強度が1000W/m2に上がったとき、本来約7%の変換効率を実現できるはずであるのに、約5%の変換効率しか実現できないことになる。
【0055】
このように、色素増感太陽電池の受光面に入射する光量が200W/m2の場合と、1000W/m2の場合とでは、最適な集電配線の本数が異なるので、常に効率よく発電できるようにするためには、光量に応じて集電配線の本数を変える必要がある。
【0056】
そこで、本発明においては、光量に応じて集電配線の本数および集電配線同士の間隔を変更できる光電変換装置を実現できるようにする。
【0057】
図5は、本発明を適用した光電変換装置100の外観の例を示す図である。光電変換装置100は、受光した光を電気エネルギーに変換するものであり、例えば、色素増感太陽電池として構成される。
【0058】
同図に示されるように、光電変換装置100は、矩形のセルとして構成され、同図に示されている面がセルの受光面となる。セルの図中左側端部に電池の負極であるバー101−2が設けられており、図中右側端部にはバー101−1が設けられている。なお、電池の正極は、セルの裏面に設けられた対極基板となる。
【0059】
また、光電変換装置100には、垂直(Y軸)方向に設けられたバー101−1およびバー101−2と直交する方向(水平方向、X軸方向)に集電バー102−1と集電バー102−2が設けられている。集電バー102−1と集電バー102−2は、例えば、銀、銅などの金属により構成される。
【0060】
さらに、光電変換装置100には、集電バー102−1および集電バー102−2と直交する方向に複数の可動集電バーが設けられている。この例では、可動集電バー103−1乃至可動集電バー103−5が設けられている。なお、可動集電バー103−1乃至可動集電バー103−5を個々に区別する必要がない場合、単に可動集電バー103と称することにする。
【0061】
また、光電変換装置100には、可動集電バー103と直交する方向に複数の固定集電バーが設けられている。この例では、固定集電バー104−1乃至固定集電バー104−4が設けられている。なお、固定集電バー104−1乃至固定集電バー104−4を個々に区別する必要がない場合、単に固定集電バー104と称することにする。
【0062】
固定集電バー104は、受光面側に後述するコンタクトポイントが設けられており、同図においては、複数の円によりコンタクトポイントが示されている。
【0063】
詳細は後述するが、可動集電バー103は、図中水平方向に移動するようになされている。例えば、可動集電バー103−1は、図中水平左方向に移動して集電バー102−1の内部に挿入されるようになされている。また、例えば、可動集電バー103−5は、図中水平右方向に移動して集電バー102−2の内部に挿入されるようになされている。従って、光電変換装置100においては、受光面に露出する可動集電バー103の本数が変化するようになされている。
【0064】
また、光電変換装置100においては、受光面に露出する可動集電バー103の本数が変化するとともに、可動集電バー103同士の間隔が変化するようになされている。すなわち、各可動集電バー103は、図中水平方向の位置を、例えば、固定集電バー104に設けられた任意のコンタクトポイントの位置とするように移動可能とされている。このようにすることで、可動集電バー103同士の間隔が変化することになる。
【0065】
さらに、光電変換装置100には、光量測定部110が接続されるようになされている。光量測定部110は、例えば、光電変換装置100のセル上の予め設定された領域において光電変換された電力を測定することにより、セルが受光している光量を測定するようになされている。
【0066】
光量測定部110は、例えば、測定された光量に対応する制御信号を出力するようになされている。
【0067】
図6は、図5に示される光電変換装置100の断面図の例を示す図である。なお、同図は、図5に示される光電変換装置100を図中の垂直方向(Y軸方向)に、可動集電バー103−1と平行な線で切った場合の断面図を表している。同図に示されている上側の面がセルの受光面となる。
【0068】
図6において、可動集電バー103−1の下にガラス層131が設けられている。なお、ガラスに替えて何らかの硬く透明な素材を用いるようにしてもよい。
【0069】
そして、ガラス層の下に透明導電膜132が設けられている。透明導電膜132は、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチシモン含有酸化スズ(ATO)などの素材により構成される。
【0070】
透明導電膜132の下には、作用極としての酸化チタン層141が設けられている。なお、酸化チタンに替えて酸化亜鉛を用いるようにしても構わない。
【0071】
また、図中の最下部には、対極基板133が設けられている。対極基板133は、チタン、アルミニウムなどの素材により構成される。
【0072】
そして、対極基板133の上には対極としてのカーボン層142が設けられている。なお、カーボンに替えて白金(PT)を用いるようにしても構わない。
【0073】
酸化チタン層141とカーボン層142との間には、電解液144が充填される。また、透明導電膜132に接触する形態で、紙面の奥行方向に長い固定集電バー104−1乃至固定集電バー104−3が設けられている。なお、ここでは、簡単のため、固定集電バー104−4は省略されている。固定集電バー104は、銀、銅などの金属により構成される。
【0074】
また、固定集電バー104−1乃至固定集電バー104−3は、その先端部が、ガラスフリット、樹脂などにより構成されるカバー104−1a乃至カバー104−3aにより覆われている。
【0075】
固定集電バー104−1乃至固定集電バー104−3には、それぞれコンタクトポイント121−1乃至コンタクトポイント121−3が接続されている。コンタクトポイント121−1乃至コンタクトポイント121−3は、例えば、銀、銅などの金属により構成され、透明導電膜132とガラス層131を貫通してセルの受光面に露出するように設けられている。
【0076】
なお、図6では、コンタクトポイント121−1乃至コンタクトポイント121−3のみが示されているが、固定集電バー104−1乃至固定集電バー104−3には、紙面の奥行方向に複数のコンタクトポイントが接続されている。
【0077】
図5を参照して上述したように、コンタクトポイントのそれぞれは、固定集電バー104の所定の位置に設けられており、コンタクトポイント121−1乃至コンタクトポイント121−3は、それらの一部である。従って、固定集電バー104上の所定の位置には、コンタクトポイントが存在するが、別の位置ではコンタクトポイントが存在しない。図5に示される光電変換装置100を図6とは異なった位置で切った場合の断面図は、例えば、図7に示されるようになる。図7に示される断面図においては、コンタクトポイントが示されていない。
【0078】
図6に戻って、可動集電バー103−1には、ローラー部111−1とローラー部111−2が設けられている。同図に示されるように、集電バー102−1と集電バー102−2は、それぞれ内部が空洞とされており、ローラー部111−1とローラー部111−2が挿入されるようになされている。そして、ローラー部111−1とローラー部111−2は、それぞれ集電バー102−1と集電バー102−2の内部に挿入された状態で紙面の奥行方向に移動できるように構成されている。これにより、可動集電バー103−1も紙面の奥行方向に移動できるようになされている。
【0079】
また、可動集電バー103−1には、コンタクトポイント121−1乃至コンタクトポイント121−3と接触させるための突起部112−1乃至突起部112−3が設けられている。突起部112−1乃至突起部112−3は、それぞれ可動集電バーと同じ素材で構成される。
【0080】
可動集電バー103−1を移動させる場合、一旦、集電バー102−1と集電バー102−2が、図中上方向に移動する。すなわち、集電バー102−1および集電バー102−2が、ローラー部111−1およびローラー部111−2と係合した状態で上方向に移動することで、可動集電バー103−1を図中上方向に引き上げるようになされている。
【0081】
そして、突起部112−1乃至突起部112−3が、例えば、それぞれコンタクトポイント121−1乃至コンタクトポイント121−3と接触可能な位置に移動したとき、集電バー102−1と集電バー102−2が、図中下方向に移動する。
【0082】
これにより、突起部112−1乃至突起部112−3が、例えば、それぞれコンタクトポイント121−1乃至コンタクトポイント121−3と接触し、固定集電バー104−1乃至固定集電バー104−3を流れる電子が可動集電バー103−1に導かれる。また、このとき、ローラー部111−1およびローラー部111−2が、それぞれ集電バー102−1と集電バー102−2の内部の接触部102−1aおよび接触部102−2aと接触し、可動集電バー103−1に導かれた電子は、集電バー102−1と集電バー102−2に導かれ、最終的には、バー101−2の負極に至るようになされている。
【0083】
図6の例では、可動集電バー103−1を例として説明したが、各可動集電バー103は、同様に構成されている。
【0084】
図5を参照して上述したように、光量測定部110は、例えば、測定された光量に対応する制御信号を出力するようになされている。集電バー102−1、集電バー102−2、および各可動集電バー103は、光量測定部110から出力された制御信号に基づいて動作するようになされている。
【0085】
なお、各可動集電バー103を移動させるために、ローラー部111−1およびローラー部111−2に駆動機構が設けられるようにしてもよいし、集電バー102−1と集電バー102−2の内部に駆動機構が設けられるようにしてもよい。
【0086】
光量測定部110は、例えば、測定された光量が予め設定された閾値を下回った場合、セルの受光面に露出する可動集電バー103の数を減少させるための制御信号を出力するようになされている。これにより、上述したように、集電バー102−1と集電バー102−2が移動し、可動集電バー103が移動する。
【0087】
図8は、可動集電バー103が移動した後の光電変換装置100の外観の例を示す図である。
【0088】
図8の例では、可動集電バー103−1が、図中水平左方向に移動して集電バー102−1の内部に挿入され、可動集電バー103−5が、図中水平右方向に移動して集電バー102−2の内部に挿入されている。すなわち、図8の状態では、図5に示される状態において5本あった可動集電バー103のうちの2本がセルの受光面の外部に移動しており、受光面に露出していない。なお、102−1の内部、または集電バー102−2の内部に挿入された可動集電バー103は、突起部とコンタクトポイントが接触しないようになされている。すなわち、セルの受光面に露出していない可動集電バー103は、電子の取り出し路の一部とはならないのである。
【0089】
これにより、受光面全体に占める、ガラス層131および透明導電膜132を介して、酸化チタン層141に光が入射する面積の割合(開口率)が増加する。すなわち、図8に示される状態になると、図5に示される状態においては、可動集電バー103−5と可動集電バー103−1の影になっていた酸化チタン層141に光が入射するようになるので開口率が増加するのである。
【0090】
また、図8の例では、図5の場合と比較して、可動集電バー103−2と可動集電バー103−3との間隔、および可動集電バー103−3と可動集電バー103−4との間隔が広くなっている。
【0091】
すなわち、光量測定部110からセルの受光面に露出する可動集電バー103の数を減少させるための制御信号が出力された場合、上記の移動に加えて可動集電バー103−2が、図中水平左方向に移動し、可動集電バー103−4が、図中水平右方向に移動するようになされている。一方、可動集電バー103−3は、移動していない。
【0092】
これにより、可動集電バー103同士の間隔も調整される。すなわち、可動集電バー103−1と可動集電バー103−5が受光面の外部に移動したことにより、セルの受光面の図中左右端部から最寄の可動集電バー103までの水平方向の距離も変化する。従って、図3を参照して上述したように、可動集電バー103同士の間隔の最適値も変化するのである。
【0093】
このように、光電変換装置100は、セルが受光する光量に応じて、受光面に露出する可動集電バー103の本数が5本から3本に変化するのである。これにより、可動集電バー103の本数がそのとき受光した光量に対応する最適値に近づけられる。また、このとき、光電変換装置100において、可動集電バー103同士の間隔も変化するのである。これにより、可動集電バー103同士の間隔がそのときの可動集電バーの本数に対応する最適値に近づけられる。
【0094】
従って、本発明によれば、光電変換装置におけるより効率的な発電が可能となる。
【0095】
ここでは、セルが受光する光量が下回った場合、受光面に露出する可動集電バー103の本数が5本から3本に変化する例について説明したが、セルが受光する光量が上回った場合、可動集電バー103の本数が3本から5本に変化する。
【0096】
また、ここでは、受光面に露出する可動集電バー103の本数が3本または5本の場合の例について説明したが、より多様に変化するようにしてもよい。
【0097】
例えば、光量測定部110により測定された光量を複数の段階に区分し、それぞれ段階に応じた制御信号が出力されるようにする。そして、制御信号に応じて受光面に露出する可動集電バー103の本数が、例えば、3本、4本、5本、6本、7本、・・・のように変化するようにしてもよい。
【0098】
なお、可動集電バー103の本数が、奇数(例えば、5本)から奇数(例えば、3本)に変化する場合、受光面の中央に配置された可動集電バー(例えば、可動集電バー103−3)は移動しないが、奇数(例えば、5本)から偶数(例えば、4本)に変化する場合、受光面の中央に配置された可動集電バー(例えば、可動集電バー103−3)も移動することになる。
【0099】
すなわち、光電変換装置100の集電配線のレイアウトを前提として予め、図3と図4を参照して上述したように、可動集電バー103の本数の最適値と、それらの本数における可動集電バー103同士の間隔の最適値を求めておけばよい。そして、セルが受光する光量に応じて各可動集電バー103を移動させるようにすればよい。
【0100】
ここで、図9のフローチャートを参照して、本発明の光電変換装置100による変換効率最適化処理の例について説明する。
【0101】
ステップS21において、光量測定部110は、受光した光量が閾値を超えて変化したか否かを判定し、閾値を超えて変化したと判定されるまで待機する。
【0102】
ステップS21において、光量が閾値を超えて変化したと判定された場合、処理は、ステップS22に進む。
【0103】
ステップS22において、光量測定部110は、受光した光量のレベルを特定する。ここで、光量のレベルは、例えば、次のようにして特定される。例えば、光量が第1の閾値未満の場合はレベル1、光量が第1の閾値以上第2の閾値未満の場合はレベル2、光量が第2の閾値以上第3の閾値未満の場合はレベル3、・・・のように特定される。
【0104】
ステップS23において、光量測定部110は、ステップS22で特定されたレベルに対応する制御信号を出力する。
【0105】
ステップS24において、ステップS23の処理で出力された制御信号に対応して可動集電バー103が移動させられる。
【0106】
例えば、レベル3に対応する制御信号が出力された場合、受光面に可動集電バー103が5本露出するように移動させられ、レベル2に対応する制御信号が出力された場合、受光面に可動集電バー103が3本露出するように移動させられる。なお、この際、上述したように、可動集電バー103同士の間隔も最適値となるように移動させられる。
【0107】
ステップS24の処理の後、処理は、ステップS21に戻る。
【0108】
このようにして、変換効率最適化処理が実行される。このようにすることで、光電変換装置100において常に効率的な発電を行うことができる。
【0109】
ところで、光電変換装置100は、図6を参照して上述した構成と異なる構成を採用することも可能である。
【0110】
例えば、光電変換装置100を図10に示されるように構成することも可能である。図10は、図5に示される光電変換装置100の断面図の別の例を示す図である。なお、図10は、図6と同様に、図5に示される光電変換装置100を図中の垂直方向(Y軸方向)に、可動集電バー103−1と平行な線で切った場合の断面図を表している。同図に示されている上側の面がセルの受光面となる。
【0111】
図10において、図6と対応する部分には同一の符号が付されている。図10の構成は、いわゆる埋め込み配線型と称される構成であり、図6の場合と異なり、ガラス層131の内部に固定集電バー104−1乃至固定集電バー104−3が埋め込まれている。それ以外の構成は、図6の場合と同様なので詳細な説明は省略する。
【0112】
あるいはまた、図10に替えて、図11に示される構成が採用されるようにしてもよい。図11は、図5に示される光電変換装置100の断面図のさらに別の例を示す図である。なお、図11は、図6と同様に、図5に示される光電変換装置100を図中の垂直方向(Y軸方向)に、可動集電バー103−1と平行な線で切った場合の断面図を表している。同図に示されている上側の面がセルの受光面となる。
【0113】
図11において、図6と対応する部分には同一の符号が付されている。図11の構成も、いわゆる埋め込み配線型と称される構成であるが、図10の場合と異なり、固定集電バー104−1乃至固定集電バー104−3の図中下側に透明導電膜132が設けられている。それ以外の構成は、図6の場合と同様なので詳細な説明は省略する。
【0114】
なお、本明細書において上述した一連の処理は、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0115】
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0116】
100 光電変換装置, 101−1,101−2 バー, 102−1,102−2 集電バー, 103 可動集電バー 104 固定集電バー,110 光量測定部, 111−1,111−2 ローラー部, 112−1乃至112−3 突起部, 121−1乃至121−3 コンタクトポイント, 131 ガラス層, 132 透明導電膜, 141 酸化チタン層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光した光を電気エネルギーに変換して発電を行う発電手段と、
受光面に設けられ、前記発電手段の発電により得られた電流を電極に導く集電配線と、
前記受光面に入射する光量を測定する光量測定手段とを備え、
前記集電配線は、
第1の方向に長い線状の固定された複数の固定集電バーと、
前記第1の方向に直交する第2の方向に長い線状の集電バーであって、前記光量測定手段の測定結果に応じて前記第2の方向に移動する複数の可動集電バーを有する
光電変換装置。
【請求項2】
複数の前記固定集電バーのうちの一部の固定集電バーは、
前記可動集電バーの前記第1の方向の移動を可能とするために、前記可動集電バーの一部と係合して前記可動集電バーを、前記第1の方向および前記第2の方向と直交する第3の方向に移動させる
請求項1に記載の光電変換装置
【請求項3】
複数の前記固定集電バーのうちの他の固定集電バーのそれぞれには、
前記可動集電バーの一部と接触するためのコンタクトポイントが、前記第1の方向の予め定められた位置に複数設けられている
請求項2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記光量測定手段の測定結果が予め設定された所定の光量を表すものである場合、
複数の前記固定集電バーのうちの一部の前記可動集電バーは、
前記受光面の外部の位置であって、前記コンタクトポイントと接触しない位置に移動し、
複数の前記固定集電バーのうちの他の前記可動集電バーは、
予め定められた前記コンタクトポイントと接触する位置に移動するか、または移動せずにとどまる
請求項3に記載の光電変換装置。
【請求項5】
受光した光を電気エネルギーに変換して発電を行う発電手段と、受光面に設けられ、前記発電手段の発電により得られた電流を電極に導く集電配線と、前記受光面に入射する光量を測定する光量測定手段とを備え、前記集電配線は、第1の方向に長い線状の固定された複数の固定集電バーと、前記第1の方向に直交する第2の方向に長い線状の集電バーであって、前記光量測定手段の測定結果に応じて前記第2の方向に移動する複数の可動集電バーを有する光電変換装置の光電変換方法であって、
前記複数の可動集電バーが、前記前記光量測定手段の測定結果に応じて前記第2の方向に移動するステップ
を含む光電変換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−113941(P2012−113941A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261394(P2010−261394)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】