説明

光電変換装置

【課題】 光電変換素子を板状結晶等を裁断することなく作製でき、結晶半導体粒子間の距離を結晶半導体粒子の直径の1/10以上に広げても、光電変換効率の光の入射角依存性を小さくすることができ、その結果、半導体の使用量を少なくすることができ、軽量化、低コスト化された光電変換装置を提供すること。
【解決手段】 導電性導電性基板1上に、結晶半導体粒子2の多数個が間隔をあけて接合され、それらの上に透光性導電層5が形成され、透光性導電層5上に透光性集光層7が形成されており、多数個の結晶半導体粒子2は、隣接するもの同士の間隔が結晶半導体粒子2の半径よりも大きく、透光性集光層7は、各結晶半導体粒子2上に、縦断面における輪郭形状が結晶半導体粒子2よりも直径が大きな略半円状であって高さよりも横方向の幅が小さい略半円状である凸部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光入射角度の依存性を小さく抑えた光電変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の集光型の太陽電池としては、平板結晶の光電変換素子を裁断して小面積の平板結晶の光電変換素子を作製し、それらの光電変換素子を間隔を置いて配置し、各光電変換素子上に集光レンズを設けた構成のものが提案されている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
また、特許文献3に開示されている、従来の結晶半導体粒子を用いた光電変換装置を図10に示す。第1のアルミニウム箔23に開口を形成し、その開口にp型中心核21の上にn型外郭22を持つシリコン球を挿入し、シリコン球の裏側のn型外郭22を除去し、第1のアルミニウム箔23及びn型外郭22を除去したシリコン球の表面に、絶縁層24を形成し、シリコン球の裏側頂上部の絶縁層を除去した後に、シリコン球と第2のアルミニウム箔26とを、金属接合部25を介して接合して成るものである。なお、図10において、10はシリコン球に集光させるための球状レンズである。
【0004】
この場合、結晶半導体粒子を用いた場合、結晶半導体粒子間に隙間が生じてしまい、結果として光電変換ロスとなる。そこで、結晶半導体粒子間の隙間に入射した光エネルギーを隙間に隣接する結晶半導体粒子に引き込むために、結晶半導体粒子上に結晶半導体粒子の曲面に平行に球状レンズを形成している。
【特許文献1】特許第2735154号公報
【特許文献2】特開平6−37344号公報
【特許文献3】米国特許第5419782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2に示された光電変換装置に用いられる光電変換素子は、シリコン結晶等からなる板状結晶を裁断して小面積の光電変換素子を作製し、光電変換素子間の隔てられた距離をタブ等で接続していく必要があり、製造工程数が多くなり製造が煩雑となるという問題点があった。
【0006】
また、特許文献3に示された光電変換装置は、結晶半導体粒子の曲面に平行に形成された球状レンズを用いているが、その球状レンズを用いて光電変換効率の光の入射角依存性を小さくしようとすると、結晶半導体粒子間の距離を結晶半導体粒子の直径の1/10程度までしか広げることができない。その結果、光電変換装置における半導体の使用量が低減されず、軽量化、低コスト化に不利である。
【0007】
従って、本発明は上記従来の技術における問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、光電変換素子を板状結晶等を裁断することなく作製でき、結晶半導体粒子間の距離を結晶半導体粒子の直径の1/10以上に広げても、光電変換効率の光の入射角依存性を小さくすることができ、その結果、半導体の使用量を少なくすることができ、軽量化、低コスト化された光電変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光電変換装置は、導電性基板上に、表層に第2導電型の半導体部が形成された球状の第1導電型の結晶半導体粒子の多数個が互いに間隔をあけて接合されるとともに該結晶半導体粒子上に透光性導電層が形成され、該透光性導電層上に前記結晶半導体粒子のそれぞれに光を集光させる透光性集光層が形成された光電変換装置であって、前記多数個の結晶半導体粒子は、隣接するもの同士の間の間隔が前記結晶半導体粒子の半径よりも大きく、前記透光性集光層は、前記各結晶半導体粒子上に、縦断面における輪郭形状が前記結晶半導体粒子よりも直径が大きな略半円状であって高さよりも横方向の幅が小さい略半円状である凸部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の光電変換装置は好ましくは、前記透光性集光層の前記凸部は、頂部が前記結晶半導体粒子の曲率と同じ球面状であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、前記透光性集光層の前記凸部は、縦断面における輪郭形状の前記頂部以外の両側部が前記結晶半導体粒子よりも直径が大きな円弧から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光電変換装置によれば、導電性基板上に、表層に第2導電型の半導体部が形成された球状の第1導電型の結晶半導体粒子の多数個が互いに間隔をあけて接合されるとともに結晶半導体粒子上に透光性導電層が形成され、その透光性導電層上に結晶半導体粒子のそれぞれに光を集光させる透光性集光層が形成された光電変換装置であって、多数個の結晶半導体粒子は、隣接するもの同士の間の間隔が結晶半導体粒子の半径よりも大きく、透光性集光層は、各結晶半導体粒子上に、縦断面における輪郭形状が結晶半導体粒子よりも直径が大きな略半円状であって高さよりも横方向の幅が小さい略半円状である凸部が形成されていることから、結晶半導体粒子間の距離を結晶半導体粒子の直径の1/10以上に広げても、光電変換効率の光の入射角依存性を小さくすることができる。その結果、半導体の使用量を少なくすることができ、軽量化、低コスト化された光電変換装置を作製できる。
【0012】
また、結晶半導体粒子を用いることにより、板状結晶等を裁断する工程が不要となり、また、結晶半導体粒子を導電性基板上において間隔を置いて接続するために結晶半導体粒子同士を別途接続する必要がなくなる。
【0013】
本発明の光電変換装置は好ましくは、透光性集光層の凸部は、頂部が結晶半導体粒子の曲率と同じ球面状であることから、頂部に照射される入射光の入射角度が導電性基板の上面に対して少なくとも45°〜135°の範囲で、入射光を結晶半導体粒子に透光性集光層を介して効率よく入射させることが可能となる。その結果、光電変換効率の光の入射角依存性をさらに小さくすることができる。
【0014】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、透光性集光層の凸部は、縦断面における輪郭形状の頂部以外の両側部が結晶半導体粒子よりも直径が大きな円弧から成ることから、両側部に照射する入射光の入射角度が導電性基板の上面に対して少なくとも45°〜135°の範囲で、入射光を結晶半導体粒子に透光性集光層を介して効率よく入射させることが可能となる。その結果、光電変換効率の光の入射角依存性をさらに小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の光電変換装置について実施の形態の例を図面に基づいて以下に詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の光電変換装置の実施の形態の例を示す断面図であり、図4はその平面面図である。図1において、1は導電性基板、2は粒状光電変換体を構成する結晶半導体粒子、3は絶縁体層、4は粒状光電変換体を構成する半導体部(半導体層)、5は透光性導電層、6は導電性基板1を成す例えばアルミニウムと結晶半導体粒子を成す例えばシリコンとの合金層、7は凸部を有する透明樹脂等からなる透光性集光層である。なお、導電性基板1は、それ自体がアルミニウムからなるものでもよく、また、絶縁基板の上にアルミニウム等から成る導電層を設けたものとしてもよい。
【0017】
本発明の光電変換装置は、導電性基板1上に、表層に第2導電型の半導体部4が形成された球状の第1導電型の結晶半導体粒子2の多数個が互いに間隔をあけて接合されるとともに結晶半導体粒子2上に透光性導電層5が形成され、その透光性導電層5上に結晶半導体粒子2のそれぞれに光を集光させる透光性集光層7が形成された光電変換装置であって、多数個の結晶半導体粒子2は、隣接するもの同士の間の間隔が結晶半導体粒子2の半径よりも大きく、透光性集光層7は、各結晶半導体粒子2上に、結晶半導体粒子2の中心を通る縦断面における外側の輪郭形状が結晶半導体粒子2よりも直径が大きな略半円状であって高さよりも横方向の幅が小さい略半円状である凸部が形成されている。
【0018】
上記の構成により、結晶半導体粒子2間の距離を結晶半導体粒子2の直径の1/10以上に広げても、光電変換効率の光の入射角依存性を小さくすることができる。その結果、半導体の使用量を少なくすることができ、軽量化、低コスト化された光電変換装置を作製できる。
【0019】
本発明の導電性基板1は、アルミニウム,アルミニウムの融点以上の融点を有する金属,セラミックスであればよく、例えばアルミニウム,アルミニウム合金,鉄,ステンレススチール,ニッケル合金,アルミナセラミックス等が用いられる。導電性基板1の材料がアルミニウム以外の場合、その材料からなる基板上にアルミニウムから成る導電層を形成したものとする。
【0020】
まず、第1導電型の結晶半導体粒子2を導電性基板1上に間隔を置いて配設する。この結晶半導体粒子2は、Siにp型を呈するためのB,Al,Ga等、またはn型を呈するためのP,As等の元素が微量含まれているものである。
【0021】
なお、以下の実施の形態では、導電性基板1がアルミニウム、結晶半導体粒子2がシリコンからなる場合について説明する。
【0022】
結晶半導体粒子2の形状としては、凸曲面を持つことによって入射光の光線角度の依存性も小さくできる球状等の形状がよい。隣接する結晶半導体粒子2同士の間の間隔は、結晶半導体粒子2の使用量を少なくするためにも広い方がよいが、より好適には結晶半導体粒子2の半径(粒径の1/2)よりも広い間隔がよく、結晶半導体粒子2を最密に配設したときに比べて結晶半導体粒子2の個数が約1/2以下となる。
【0023】
結晶半導体粒子2の粒径は、0.2〜0.8mmがよい。なぜなら、0.8mmを超えると、従来のシリコンの板状母結晶(ウエハ)の切削部も含めた板状結晶タイプの光電変換装置におけるシリコン使用量と変わらなくなり、結晶半導体粒子2を用いるメリットがなくなる。また、0.2mmよりも小さいと、導電性基板1へのアッセンブルがしにくくなるという問題が発生するからである。従って、結晶半導体粒子2の粒径は、シリコン使用量との関係から0.2〜0.6mmがより好適である。
【0024】
導電性基板1上に結晶半導体粒子2を間隔を置いて配設した後、一定の加重をかけて導電性基板1を成すアルミニウムと結晶半導体粒子2を成すシリコンとの共晶温度(577℃)以上に加熱することによって、導電性基板1と結晶半導体粒子2の合金層6を形成し、その合金層6を介して導電性基板1と結晶半導体粒子2を接合させる。
【0025】
絶縁体層3は、正極と負極の分離を行うための絶縁材料からなり、例えばSiO,B,Al,CaO,MgO,P,LiO,SnO,ZnO,BaO,TiO等を任意成分とする材料からなる低温焼成用ガラス材料、上記材料の1種または複数種から成るフィラーを複合したガラス組成物、或いはシリコーン樹脂等の有機系の絶縁物質などを用いる。
【0026】
上記絶縁材料のペースト、溶液又は液体を結晶半導体粒子2上から塗布して、アルミニウムとシリコンの共晶温度である577℃以下の温度で加熱することによって、結晶半導体粒子2間の隙間に充填し、焼成固化或いは熱硬化させて絶縁体層3とする。この場合、加熱温度が577℃を超えると、アルミニウムとシリコンとの合金層6が溶融し始めるために、導電性基板1と結晶半導体粒子2との接合が不安定となり、場合によっては結晶半導体粒子2が導電性基板1から離脱して発電電流を取り出せなくなる。また、絶縁体層3を形成した後、結晶半導体粒子2の表面を洗浄するために、弗酸を含む洗浄液で洗浄する。
【0027】
半導体層4は例えばSiから成り、気相成長法等で例えばシラン化合物の気相に、n型を呈するためのリン系化合物の気相、またはp型を呈するためのホウ素系化合物の気相を微量導入して形成する。半導体層4の膜質としては、結晶質、非晶質、結晶質と非晶質とが混在するもののいずれでもよいが、光線透過率を考慮すると、結晶質または結晶質と非晶質とが混在するものがよい。
【0028】
結晶半導体粒子2がない部分で入射光の一部が半導体層4を透過し、下部の導電性基板1で反射して結晶半導体粒子2に照射されることで、光電変換装置全体に照射される光エネルギーを効率よく結晶半導体粒子2に照射することが可能となる。
【0029】
半導体層4中の微量元素の濃度は、例えば1×1016〜1×1021原子/cm程度である。さらに、半導体層4は、結晶半導体粒子2の表面の凸形曲面に沿って形成されることが好ましい。結晶半導体粒子2の凸形曲面の表面に沿って形成されることによって、pn接合の面積を広く稼ぐことができ、結晶半導体粒子2の内部で生成したキャリアを効率よく収集することが可能となる。
【0030】
なお、第1導電型の結晶半導体粒子2の外郭に、第2導電型、つまり、結晶半導体粒子2がp型の場合にn型を呈するP,As等、または結晶半導体粒子2がn型の場合にp型を呈するB,Al,Ga等の元素が微量含まれている結晶半導体粒子2を用いる場合には、半導体層4はなくてもよい。この場合、結晶半導体粒子2の上に下記の透光性導電層5を直接形成してもよい。
【0031】
半導体層4上、または結晶半導体粒子2の外郭に第2導電型の元素を微量含んでいる場合には結晶半導体粒子2上に、他方の電極を兼ねる透光性導電層5を形成する。なお、一方の電極の機能は導電性基板1が果たす。
【0032】
この透光性導電層5は、SnO,In,ITO,ZnO,TiO等から選ばれる1種または複数種の酸化物系膜等から成り、スパッタリング法、気相成長法、あるいは塗布焼成法等で形成される。透光性導電層5は、膜厚を選べば反射防止膜としての効果も期待できる。
【0033】
なお、透光性導電層5は透明であり、結晶半導体粒子2がない部分で入射光の一部が透光性導電層5を透過し、下部の導電性基板1で反射して結晶半導体粒子2に照射されることで、光電変換装置全体に照射される光エネルギーを効率よく結晶半導体粒子2に導いて照射させることが可能となる。
【0034】
透光性導電層5は、半導体層4あるいは結晶半導体粒子2の表面に沿って形成され、結晶半導体粒子2の凸形曲面に沿って形成されることが好ましい。この場合、pn接合の面積を広く稼ぐことができ、結晶半導体粒子2の内部で生成したキャリアを効率よく収集することができる。
【0035】
また、半導体層4あるいは透光性導電層5上に保護層(不図示)を形成してもよい。このような保護層としては、透明誘電体の特性を持つものがよく、CVD法やPVD法等によって、例えば酸化珪素,酸化セシウム,酸化アルミニウム,窒化珪素,酸化チタン,SiO−TiO(SiO−TiOの混合物),SiO:Ti(Tiドープシリカ),酸化タンタル,酸化イットリウム等を単一組成または複数組成で単層または組み合わせて、半導体層4または透光性導電層5上に形成する。この保護層は、光の入射面側にあるために、透明性が必要であり、また半導体層4または透光性導電層5と外部との間の電流リークを防止するために、誘電体であることが必要である。なお、保護層の膜厚を最適化すれば、反射防止膜としての機能も期待できる。
【0036】
透光性導電層5と外部端子との間の直列抵抗値を低くするために、隣接する結晶半導体粒子2間の透光性導電層5の上に、集電極として一定間隔のフィンガー電極(不図示)及びバスバー電極(不図示)から成るパターン電極を設けて、半導体層4と電気的に接続してもよい。結晶半導体粒子2上を避けてフィンガー電極を設けることによって、フィンガー電極によって陰となる領域ができるのをなくすことができ、入射光を効率よく光電変換することが可能となる。
【0037】
他方の電極を兼ねる透光性導電層5及び集電極上に、各結晶半導体粒子2上において、縦断面における輪郭形状が結晶半導体粒子2よりも直径が大きな略半円状であって高さよりも横方向の幅が小さい略半円状である凸部が形成されている透光性集光層7を形成する。
【0038】
透光性集光層7の凸部は、具体的には図7に示すように非球面形状であり、好ましくは、凸部の頂部が結晶半導体粒子2の曲率と同じ球面状であり、凸部の縦断面における輪郭形状の頂部以外の両側部が結晶半導体粒子2よりも直径が大きな円弧から成る。また、凸部は、その中心を通る垂線(鉛直線)を回転軸Vとした、非球面形状(縦置きしたラグビーボール状)の回転体である。
【0039】
さらに凸部は、縦断面において、頂部以外の両側部が結晶半導体粒子2よりも直径が大きな円弧となっているが、その円弧は、導電性基板1の主面に平行で結晶半導体粒子2の中心を通る水平線H上に中心を持つ、結晶半導体粒子2の円よりも直径が大きい2つの円の円弧である。また、凸部の頂部が、回転軸V上に中心をもつとともに結晶半導体粒子2の直径と同じ直径を有する円の円弧となっている。従って、凸部は、縦断面において、頂部の円弧と両側部の円弧とがつながった形状を有する。
【0040】
また、凸部の縦断面における両側部の円弧は、図7に示すように、左右でそれぞれ同じ直径の2つの円の一部であるが、それら2つの円の直径は、結晶半導体粒子2の円の直径の2〜2.5倍程度の大きさを有する。
【0041】
図7のような縦断面における輪郭形状8を有する透光性集光層7の凸部の集光性を、図5に示す2次元の光線追跡(コンピューターシミュレーション)によって、以下のようにして求めた。
【0042】
透光性集光層7の屈折率を1.5〜1.6とした。凸部の頂部の直径Aの仮想円9を、結晶半導体粒子2の円の直上に配置し、結晶半導体粒子2の円の中心から仮想円9の頂上までの距離をBとする。後に計算する側部の円の直径をより大きくするためには、距離Bが大きい方が有利となる。即ち、距離Bを大きくして、側部の円の直径をより大きくすると、光の入射角依存性が小さくなるという効果がある。
【0043】
一例として、入射角45度の平行光のうち、凸部の頂部の仮想円9で屈折した光がすべて結晶半導体粒子2の円に当たるように、仮想円9の直径Aを変数として距離Bを計算した。その結果、直径Aと距離Bとの関係は図6のグラフのようになり、距離Bが最大となるのは、凸部の頂部の仮想円9の直径Aが結晶半導体粒子2の円とほぼ同じである場合、即ち直径Aが結晶半導体粒子2の円の0.8〜1.2倍程度である場合であることが判った。
【0044】
次に、凸部の側部の仮想円10の直径C(図7)を決める。仮想円10の中心は、導電性基板1の主面に平行で結晶半導体粒子2の中心を通る水平線H上にあるものとし、仮想円10が上記のように決定した直径Aと距離Bの仮想円9と略内接するものとする。この場合、仮想円9が仮想円10に完全に内接すると、仮想円9が仮想円10の外側に現れないことになるため、即ち凸部の側部の円弧よりも直径が小さな頂部が形成されないことになるため、仮想円9の上端部(仮想円9の全周の上端側1/5〜1/6程度の部分)が仮想円10の外側に現れるように形成する。即ち、仮想円9の上端部と、仮想円10とを繋ぐように形成する。
【0045】
一例として、直径Cを変数として、入射角45度の平行光のうち仮想円10で屈折する光が、結晶半導体粒子2の円に当たる照射比率Dを計算した。仮想円10の直径Cと照射比率Dの関係は図8のグラフのようになり、照射比率Dの最大値は直径Cが結晶半導体粒子2の円の約2倍程度の場合に得られ、結晶半導体粒子2の円よりも直径が大きいものとなった。
【0046】
即ち、垂直入射の場合、直径Cが結晶半導体粒子2の円の直径の1.5〜2.3倍程度のときに照射比率Dが最大となる。45度入射の場合、照射比率Dは、直径Cが結晶半導体粒子2の円の直径の1.7倍で上昇し始め、2.3倍程度で最大となり、2.5倍で1.7倍のときと同程度となる。以上より、直径Cが結晶半導体粒子2の円の直径の2.0〜2.3倍程度のときに照射比率Dが最大となる。
【0047】
以上のようにして決めた頂部の仮想円9と、側部の仮想円10とで構成された縦断面における輪郭形状を、回転軸Vの回りに回転させて成る非球面形状の凸部とした。これらの非球面形状のの凸部を、導電性基板1上の各結晶半導体粒子2上に形成する。これにより、結晶半導体粒子2の導電性基板1上に配設する間隔を従来よりも大幅に広くすることができる。
【0048】
透光性集光層7の材料としては、透明で成形性がよいものであればよく、例えばアクリル,ポリエチレン,EVA(エチレンビニルアセテート),シリコーン系樹脂,ポリカーボネート,ポリアミド,その他の透明樹脂がよい。より好ましくは、建築物の屋根等に設置される場合に隣接家屋の火災時の延焼防止という製品の性格上、難燃性の材料であればよく、シリコーン系樹脂,ポリカーボネート,ポリアミド等がよい。
【0049】
透光性集光層7の凸部を形成する方法としては、上記の透明樹脂からなるシートを結晶半導体粒子2上に載せ、凸部のネガ形状(凹形状)を多数有する型を金属等の耐熱材料で形成し、圧縮成形、射出成形等の成形方法で形成する。
【0050】
さらに、図2,図3のように、透光性集光層7の表面に、耐候性を有するとともに透光性集光層7よりも屈折率の低い低屈折率層11(図2)または低屈折率板(低屈折率シート)11(図3)を設けてもよい。この場合、透光性集光層7の表面反射を低減させて、入射光の利用効率を向上させることもできる。低屈折率層11等の材料としては、透明で透光性集光層7よりも屈折率の低い材料からなっていれば良く、例えばポリフッ化ビニル(PVF),エチレン−4フッ化エチレン共重合体(ETFE),ポリ3フッ化塩化エチレン(PCTFE)等のフッ素樹脂、或いはシリカ化合物系の材料がよい。
【0051】
また、導電性基板1の裏面には、充填層12を、透光性集光層7の材料と同様の材料を使って設けることができ、さらに耐候性層13を積層してもよい。耐候性層13の材料としては、例えばポリフッ化ビニル(PVF),エチレン−4フッ化エチレン共重合体(ETFE),ポリ3フッ化塩化エチレン(PCTFE)等のフッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂がよい。また耐候性層13としては、これらの樹脂を使ってアルミ箔や金属酸化膜を挟んで張り合わせたシート、ガラス、ステンレス等の金属シート等がある。
【0052】
なお、上述した構成の光電変換素子(1個の結晶半導体粒子2を有する光電変換の単位体)を1つ設けるか、または複数を接続(直列、並列または直並列に接続)した光電変換装置とする。さらに、光電変換装置を1つ設けるか、または複数を接続(直列、並列または直並列に接続)したものを発電手段として用い、この発電手段から直接直流負荷へ発電電力を供給するようにしてもよい。また、その発電手段をインバータ等の電力変換手段を介して発電電力を適当な交流電力に変換した後、この発電電力を商用電源系統や各種の電気機器等の交流負荷に供給することが可能な発電装置としてもよい。さらに、このような発電装置を日当たりのよい建物の屋根や壁面に設置する等して、各種態様の太陽光発電システム等の光発電装置として利用することも可能である。
【実施例】
【0053】
次に、本発明の光電変換装置の実施例について説明する。
【0054】
(実施例1)
以下のようにして光電変換装置を作製した。アルミニウム製の導電性基板の主面上に、結晶半導体粒子として直径約0.3mmのp型のシリコン粒子の多数を、その直径の約0.6倍の間隔を空けて配置し、アルミニウムとシリコンの共晶温度である577℃以上の温度で約10分加熱して、多数のシリコン粒子を導電性基板上に接合した。
【0055】
次に、導電性基板上の多数のシリコン粒子の間に、ポリイミドからなる絶縁体層を充填し形成した。その後、シリコン粒子の上部表面を洗浄し、シリコン粒子及び絶縁体層の上にn型の結晶質シリコンと非晶質シリコンとの混晶からなる半導体層を、300nmの厚みで形成し、さらに透光性導電層としてITO膜を、80nmの厚みで形成した。
【0056】
上記の構成の光電変換素子上に、ポリカーボネートシートを置き、以下の形状を有する凸部のネガ型が形成された金型でポリカーボネートシートを上方から加熱圧縮し、シリコン粒子毎に凸部を形成した透光性集光層を形成した。
【0057】
凸部は、縦断面における輪郭形状の側部の円弧をシリコン粒子の直径の約2.3倍の直径の2つの円の円弧とし、頂部をシリコン粒子の直径とほぼ同径の円の円弧とし、その縦断面における輪郭形状を回転軸の回りに回転させた非球面形状のものとした。
【0058】
(実施例2)
本実施例2では、実施例1のポリカーボネートシートの上に、コロナ放電による表面改質処理を施したエチレン−4フッ化エチレン共重合体(ETFE)からなる50μm厚のフィルムを載せて、ポリカーボネートシート及びETFEフィルムを加熱圧縮した以外は、実施例1と同様にして光電変換装置を作製した。
【0059】
(実施例3)
本実施例3では、実施例1の凸部の上に、コロナ放電による表面改質処理を施したETFEからなる50μm厚のフィルムを接着剤を介して貼り付けた以外は、実施例1と同様にして光電変換装置を作製した。
【0060】
(比較例1)
本比較例1では、透光性集光層の凸部の全体形状が、シリコン粒子の直径の約1.8倍の大きさの直径を有する球であるものとした。さらに、アルミニウム製の導電性基板上に多数のシリコン粒子を実施例1と同様に配置し接合し、シリコン粒子上には何も形成しなかった。それ以外は実施例1と同様にして作製した。
【0061】
以上の光電変換装置について、フィールド(野外)での一日の発生電流を測定した結果を表1に示す。なお、表1において、多数のシリコン粒子をそれらの間に間隔を有しないようにして密に配置させた構成である比較例2の光電変換装置における一日の発生電流を1として規格化した値(発生電流比)を示す。
【表1】

【0062】
実施例1の光電変換装置は、一日の発生電流比が0.94であり、球面状の凸部を有する比較例1の光電変換装置よりも高い発生電流が得られ、単純な球面状の凸部よりも効率良く太陽光線をシリコン粒子に集めていることがわかった。また、実施例1の光電変換装置におけるシリコン粒子の使用量は、比較例2の光電変換装置のようにシリコン粒子を密に配置させたときの使用量の1/2〜1/3となり、比較例2の光電変換装置と同程度の発生電流を得ながらシリコン粒子の使用量を減らすことが可能であった。
【0063】
比較例1の光電変換装置は、一日の発生電流比が0.88であり、低い値となった。
【0064】
実施例2の光電変換装置は、一日の発生電流比が0.96となり、実施例1の光電変換装置よりも向上した。これは、ETFEフィルムの屈折率(n=1.4)が、ポリカーボネート(n=1.59)よりも低いために、表面反射が抑えられて、より効率良く太陽光線をシリコン粒子に集められたためと考えられる。
【0065】
実施例3の光電変換装置は、一日の発生電流比が0.92となり、実施例1の光電変換装置よりは多少劣るものの、比較例1の光電変換装置よりも高い発生電流比が得られた。従って、凸部上に信頼性の高いフッ素樹脂フィルムを張り付けることも有効であることが判った。
【0066】
なお、本発明は、上記の実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の光電変換装置の実施の形態の1例を示す断面図である。
【図2】本発明の光電変換装置の実施の形態の他例を示す断面図である。
【図3】本発明の光電変換装置の実施の形態の他例を示す断面図である。
【図4】図1の光電変換装置を示す平面図である。
【図5】本発明の透光性集光層の凸部の縦断面における円弧状の頂部の位置を示す断面図である。
【図6】本発明の透光性集光層の凸部の縦断面における円弧状の頂部の直径Aと、結晶半導体粒子の中心から頂部の頂点までの距離Bとの関係を示すグラフである。
【図7】本発明の透光性集光層の凸部の縦断面における円弧状の側部の位置を示す断面図である。
【図8】本発明の透光性集光層の凸部の縦断面における円弧状の側部の直径Cと照射効率Dの関係を示すグラフである。
【図9】比較例の透光性集光層の球面状の凸部における光線入射角45°での光線追跡を示す断面図である。
【図10】従来の光電変換装置の断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1:導電性基板
2:第1導電型の結晶半導体粒子
4:第2導電型の半導体部
5:透光性導電層
7:透光性集光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基板上に、表層に第2導電型の半導体部が形成された球状の第1導電型の結晶半導体粒子の多数個が互いに間隔をあけて接合されるとともに該結晶半導体粒子上に透光性導電層が形成され、該透光性導電層上に前記結晶半導体粒子のそれぞれに光を集光させる透光性集光層が形成された光電変換装置であって、前記多数個の結晶半導体粒子は、隣接するもの同士の間の間隔が前記結晶半導体粒子の半径よりも大きく、前記透光性集光層は、前記各結晶半導体粒子上に、縦断面における輪郭形状が前記結晶半導体粒子よりも直径が大きな略半円状であって高さよりも横方向の幅が小さい略半円状である凸部が形成されていることを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記透光性集光層の前記凸部は、頂部が前記結晶半導体粒子の曲率と同じ球面状であることを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記透光性集光層の前記凸部は、縦断面における輪郭形状の前記頂部以外の両側部が前記結晶半導体粒子よりも直径が大きな円弧から成ることを特徴とする請求項2記載の光電変換装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−123312(P2007−123312A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−309485(P2005−309485)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】