説明

光電変換装置

【課題】 絶縁層と結晶半導体粒子との間の界面の剥離を抑制し、また、結晶半導体粒子の下側に到達した光を効率よく結晶半導体粒子に取り込むことができる、高変換効率の光電変換装置を得ること。
【解決手段】 光電変換装置は、導電性基板1上に、表層に第2導電型の半導体部3が形成された球状の第1導電型の結晶半導体粒子2が多数個接合され、結晶半導体粒子2間の導電性基板1上に絶縁層4が形成され、半導体部3及び絶縁層4の上に透光性導体層5が形成されている光電変換装置であって、結晶半導体粒子2は、その表面の導電性基板1との接合部2bの上側近傍に全周にわたって、結晶半導体粒子2の径が段状に変化する段差2aが形成されているとともに段差2aから下側の縦断面における半径が小さくなっており、絶縁層4は、結晶半導体粒子2の表面における接合部2bとの境界2cから段差2aの上側までを覆っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電等に使用される光電変換装置に関し、特に結晶シリコン粒子等の結晶半導体粒子を用いた光電変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の太陽電池、特に結晶半導体粒子を使用した光電変換装置の1例を図2に示す。この光電変換装置は、アルミニウム等から成る導電性基板11上に結晶シリコン粒子等の結晶半導体粒子12が、互いに間隔をあけて多数個接合されている。また、結晶半導体粒子12間の導電性基板11上に、ポリイミド等から成る絶縁層14が設けられている。このような結晶半導体粒子12を使用した光電変換装置においては、結晶半導体粒子12は球形をしている。
【0003】
なお、図2において、13は第1導電型(例えばp型)の結晶半導体粒子12の表層に形成された第2導電型(例えばn型)の半導体部である。また、15は結晶半導体粒子12及び絶縁層14の上に形成された、ITO等から成る透光性導体層である。
【0004】
このような光電変換装置においては、結晶半導体粒子12の外側を透明な樹脂やガラスによって封止し、光電変換モジュールを作製するのが一般的である。樹脂としては熱可塑性の樹脂が用いられ、光電変換装置及び樹脂を加熱しながら光電変換装置に樹脂を圧着する方法が行われている。
【特許文献1】特開2005−159168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、光電変換モジュールを作製するための加熱処理を行うと、絶縁層14と結晶半導体粒子12との間で剥離が発生する場合がある。これは、光電変換モジュールに組み立てるときに、絶縁層14に下方向に力がかかり、絶縁層14と結晶半導体粒子12との界面に応力が発生することによる。
【0006】
即ち、図2の構成の光電変換装置においては、絶縁層14の結晶半導体粒子12の球状表面との接触部14aの接触角が直角に近いこと等の理由から、上記の応力によって絶縁層14の接触部14aが剥離し易いことが原因であると考えられる。
【0007】
図2に示すように、結晶半導体粒子12の下端部には全周にわたって凹部12aが形成されており、凹部12aと結晶半導体粒子12の球状表面との間の角部が鋭角状に形成されている。これは、第2導電型の半導体部13が第1導電型の導電性基板11に接触するのを防止するために、半導体部13の下端部をエッチング法等によって除去することによって発生する。この鋭角状の角部を有する凹部12aがあると、ポリイミド等から成る液状の絶縁層14を結晶半導体粒子12間に塗布した際に、液状の絶縁層14の接触部14aは凹部12aから上側の結晶半導体粒子12の球状表面にスムーズに這い上がることができないため、結晶半導体粒子12の球状表面に対する接触部14aの接触角は直角に近いものとなる。
【0008】
また、凹部12aは深さ及び大きさが小さいため、上記の応力を凹部12aの内部の絶縁層14との界面によって分散させる効果が小さい。そのため、上記の応力は結晶半導体粒子12の球状表面と絶縁層14との接触部14aに集中し、接触部14aに剥離が発生することとなる。
【0009】
絶縁層14と結晶半導体粒子12との間で剥離が起きると、絶縁層14及び結晶半導体粒子12上に形成されている透光性導体層15が破断され、これにより、内部抵抗が増加し光電変換装置の光電変換効率(以下、変換効率ともいう)が低下するという問題点があった。
【0010】
また、結晶半導体粒子12の表面がほとんど球面であるため、光電変換装置の上方より入射し結晶半導体粒子12の下側に到達した入射光は、結晶半導体粒子12の表面で数回反射された後に光電変換装置の外部へ出て行ってしまい易い。このため、入射光が結晶半導体粒子12に取り込まれる比率が低くなり、光電変換装置の変換効率が低下するという問題点があった。
【0011】
従って、本発明は上記従来の技術における問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、絶縁層と結晶半導体粒子との間の界面の剥離を抑制し、また、結晶半導体粒子の下側に到達した光を効率よく結晶半導体粒子に取り込むことができる、高変換効率の光電変換装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の光電変換装置は、導電性基板上に、表層に第2導電型の半導体部が形成された球状の第1導電型の結晶半導体粒子が多数個接合され、前記結晶半導体粒子間の前記導電性基板上に絶縁層が形成され、前記半導体部及び前記絶縁層の上に透光性導体層が形成されている光電変換装置であって、前記結晶半導体粒子は、その表面の前記導電性基板との接合部の上側近傍に全周にわたって、前記結晶半導体粒子の径が段状に変化する段差が形成されているとともに前記段差から下側の縦断面における半径が小さくなっており、前記絶縁層は、前記結晶半導体粒子の表面における前記接合部との境界から前記段差の上側までを覆っていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、前記段差の径方向の深さが前記結晶半導体粒子の直径の0.1乃至30%であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、前記段差の最深部の角部の縦断面形状が円弧状であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、前記段差の前記角部の縦断面における曲率半径が段差の深さの0.8乃至2倍であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、前記絶縁層の前記結晶半導体粒子の前記半導体部の表面と接する角度が鋭角であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光電変換装置は、導電性基板上に、表層に第2導電型の半導体部が形成された球状の第1導電型の結晶半導体粒子が多数個接合され、結晶半導体粒子間の導電性基板上に絶縁層が形成され、半導体部及び絶縁層の上に透光性導体層が形成されている光電変換装置であって、結晶半導体粒子は、その表面の導電性基板との接合部の上側近傍に全周にわたって、結晶半導体粒子の径が段状に変化する段差が形成されているとともに段差から下側の縦断面における半径が小さくなっており、絶縁層は、結晶半導体粒子の表面における前記接合部との境界から段差の上側までを覆っていることから、絶縁層と結晶半導体粒子との界面に応力が加わった際に、応力は段差内部の界面に分散され、絶縁層と結晶半導体粒子との間で剥離が起きない。
【0018】
また、図4に示すように、結晶半導体粒子は段差の下側の半径が小さくなっているため、結晶半導体粒子の下側に入射した光(L1)は、段差の下側に閉じ込められて多数回反射を繰り返すため、結晶半導体粒子に多く取り込まれることとなる。その結果、変換効率の高い光電変換装置を得ることができる。
【0019】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、段差の径方向の深さが結晶半導体粒子の直径の0.1乃至30%であることにより、結晶半導体粒子と導電性基板の接合強度が確保され、結晶半導体粒子が導電性基板から脱落することがなく、従って光電変換装置の変換効率が低下するのを防ぐことができる。
【0020】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、段差の最深部の角部の縦断面形状が円弧状であることから、段差の内側に進行した光がより多く結晶半導体粒子側に反射されて取り込まれることになり、従って変換効率の高い光電変換装置を得ることができる。
【0021】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、段差の角部の縦断面における曲率半径が段差の深さの0.8乃至2倍であることから、段差の内側に進行した光がより多く結晶半導体粒子側に反射されて取り込まれるという効果がさらに向上する。従って、変換効率のより高い光電変換装置を得ることができる。
【0022】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、絶縁層は、結晶半導体粒子の半導体部の表面と接する角度が鋭角であることから、絶縁層の接触部が結晶半導体粒子の半導体部の表面に沿った形状となるため、光電変換モジュールの作製時に絶縁層の結晶半導体粒子の半導体部との接触部に応力が加わった際に、絶縁層の接触部が結晶半導体粒子の半導体部の表面から容易には剥がれないものとなる。
【0023】
また、図4に示すように、絶縁層の結晶半導体粒子の半導体部との接触部に入射した光(L2)は、結晶半導体粒子の段差の下側に屈折して段差の内側に進むため、段差の内側に閉じ込められて結晶半導体粒子により多く取り込まれることになり、変換効率の高い光電変換装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の光電変換装置について実施の形態の1例を図面に基づいて以下に詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の光電変換装置について実施の形態の1例を示す断面図である。図1において、1は導電性基板、2は粒状光電変換体を構成する結晶半導体粒子、2aは結晶半導体粒子2の段差、3は粒状光電変換体を構成する半導体部(以下、半導体層ともいう)、4は絶縁層、4aは絶縁層4の結晶半導体粒子2の球状表面との接触部、5は透光性導体層である。
【0026】
本発明の光電変換装置は、導電性基板1上に、表層に第2導電型の半導体部3が形成された球状の第1導電型の結晶半導体粒子2が多数個接合され、結晶半導体粒子2間の導電性基板1上に絶縁層4が形成され、半導体部3及び絶縁層4の上に透光性導体層5が形成されている光電変換装置であって、結晶半導体粒子2は、その表面の導電性基板1との接合部2bの上側近傍に全周にわたって、結晶半導体粒子2の径(半径)が段状に変化する段差2aが形成されているとともに段差2aから下側の縦断面における半径が小さくなっており、絶縁層4は、結晶半導体粒子2の表面における接合部2bとの境界2cから段差2aの上側までを覆っている構成である。
【0027】
上記の構成により、絶縁層4と結晶半導体粒子2との界面に応力が加わった際に、応力は段差2a内部の界面に分散され、絶縁層4と結晶半導体粒子2との間で剥離が起きない。また、図4に示すように、結晶半導体粒子2は段差2aの下側の半径が小さくなっているため、結晶半導体粒子2の下側に入射した光(L1)は、段差2aの下側に閉じ込められて多数回反射を繰り返すため、結晶半導体粒子2に多く取り込まれることとなる。その結果、変換効率の高い光電変換装置を得ることができる。なお、図4において、L1は結晶半導体粒子2の球状表面に垂直上方より入射した入射光を示し、L2は絶縁層4の結晶半導体粒子2の球状表面との接触部4aに垂直上方より入射した入射光を示す。
【0028】
結晶半導体粒子2の表面に形成された段差2aは、結晶半導体粒子2のほぼ径方向において段状に形成されているものであるが、完全に径方向に沿って半径が小さくなるように形成されていなくてもよく、ほぼ径方向に沿って形成されていればよい。また、段差2aは、縦断面において最奥部がほぼ直角の角部となっているもの、縦断面において最奥部が円弧状等の曲線状の角部となっているもの等であってよい。
【0029】
絶縁層4は、結晶半導体粒子2の表面における接合部2bとの境界2cから段差2aよりも上側までを覆っているが、段差2aから上側に5〜200μmの長さで覆っていることがよい。5μm未満では、絶縁層4と結晶半導体粒子2との間で剥離が発生し易くなり、200μmを超えると、絶縁層4の表面で光が反射され、結晶半導体粒子2内部に光が到達しなくなる。
【0030】
導電性基板1は、アルミニウム等の金属,導電層を有するセラミックス等から成ればよく、例えばアルミニウム,アルミニウム合金,鉄,ステンレススチール,ニッケル合金,アルミナセラミックス等から成る。導電性基板1の材料が絶縁体の場合、その材料からなる基板上に導電層を、蒸着法、スパッタリング法、メッキ法などにより形成したものとすることができる。
【0031】
第1導電型の結晶半導体粒子2は、多数個(数1000個〜100000個程度)が導電性基板1上に間隔をあけて配設される。この結晶半導体粒子2は、例えば主成分としてのSiに、第1導電型がp型であれば、p型不純物としてのB,Al,Ga等の元素、または第1導電型がn型であれば、n型不純物としてのP,As等の元素が微量含まれているものである。
【0032】
なお、以下の実施の形態では、導電性基板1がアルミニウム、結晶半導体粒子2がシリコンからなる場合について説明する。
【0033】
隣接する結晶半導体粒子2同士の間の間隔は、結晶半導体粒子2の使用量を少なくするために広い方がよいが、より好適には結晶半導体粒子2の半径よりも広い間隔がよく、その場合、結晶半導体粒子2を最密に配設したときに比べて結晶半導体粒子2の個数が約1/2以下となる。
【0034】
また、結晶半導体粒子2の表面を粗面にすることにより、結晶半導体粒子2表面での反射を低減させることができる。この粗面を形成するには、アルカリ液中で結晶半導体粒子2の表面をエッチングしても良いし、RIE(Reactive Ion Etching)装置等を用いて結晶半導体粒子2の表面を微細加工しても良い。
【0035】
結晶半導体粒子2の直径は0.2〜0.8mmがよい。0.8mmを超えると、結晶シリコン平板(ウエハ)から切り出した小型の結晶シリコン平板を用いた光電変換装置における、ウエハの切削部も含めたシリコン使用量と変わらなくなり、結晶半導体粒子2を用いて半導体の使用量を減少させるという利点がなくなる。また、0.2mmよりも小さいと、導電性基板1への結晶半導体粒子2のアッセンブルがしにくくなるという問題が発生する。従って、結晶半導体粒子2の直径は、シリコン使用量との関係から0.2〜0.4mmがより好適である。
【0036】
結晶半導体粒子2に形成された段差2aの径方向の深さは、結晶半導体粒子2の直径の0.1乃至30%であることがよい。これにより、結晶半導体粒子2と導電性基板1の接合強度が確保され、結晶半導体粒子2が導電性基板1から脱落することがなく、従って光電変換装置の変換効率が低下するのを防ぐことができる。
【0037】
段差2aの径方向の深さが結晶半導体粒子2の直径の0.1%(0.2μm〜0.8μm)未満である場合、結晶半導体粒子2と導電性基板1の接合強度は確保されるが、入射光を段差2aの内側に閉じ込める効果がほとんど生じないため、変換効率の向上の効果が極めて小さくなる。また、段差2aの内側で応力を分散させる効果も小さくなるため、絶縁層4が結晶半導体粒子2から剥がれ易くなる。
【0038】
段差2aの径方向の深さが結晶半導体粒子2の直径の30%(60μm〜240μm)を超えると、結晶半導体粒子2と導電性基板1の接合強度が低下し、結晶半導体粒子2が導電性基板1から脱落し易くなる。
【0039】
段差2aは、結晶半導体粒子2の表面の導電性基板1との接合部2bの上側近傍に全周にわたって形成されているが、段差2aの高さ(上下方向の長さ)は、結晶半導体粒子2の接合部2bの境界2cから10μm〜150μm程度であることがよい。10μm未満では、半導体部3と導電性基板1が短絡する場合が発生し易くなる。150μmを超えると、結晶半導体粒子2の下側に入射した光(L1)の閉じ込め効果が小さくなる。
【0040】
段差2aの最深部の角部の縦断面形状は円弧状であることがよい。この場合、段差2aの内側に進行した光がより多く結晶半導体粒子2側に反射されて取り込まれることになり、従って変換効率の高い光電変換装置を得ることができる。
【0041】
この場合、段差2aの角部の縦断面における曲率半径は段差2aの深さの0.8乃至2倍であることがよい。この構成により、段差2aの内側に進行した光がより多く結晶半導体粒子2側に反射されて取り込まれるという効果がさらに向上する。段差2aの角部の縦断面における曲率半径が段差2aの深さの0.8倍未満である場合、および2倍を超える場合、光の取り込み効果が小さくなることにより、変換効率が低下し易くなる。
【0042】
段差2aと結晶半導体粒子2の球状表面との間の角部は、鈍角状であることがよい。この場合、絶縁層4となる液状の樹脂等を結晶半導体粒子2間に塗布した際に、液状の樹脂等が段差2aから上の結晶半導体粒子2の半導体部3の球状表面にスムーズに這い上がり、絶縁層4の接触部4aの結晶半導体粒子2の半導体部3の球状表面に対する接触角が鋭角状になり易くなる。
【0043】
絶縁層4の結晶半導体粒子2の半導体部3と接する角度が鋭角であることがよい。このことから、絶縁層4の接触部4aが結晶半導体粒子2の半導体部3の表面に沿った形状となるため、光電変換モジュールの作製時に絶縁層4の結晶半導体粒子2の半導体部3との接触部4aに応力が加わった際に、絶縁層4の接触部4aが結晶半導体粒子2の半導体部3の表面から容易には剥がれないものとなる。
【0044】
また、図4に示すように、絶縁層4の結晶半導体粒子2の半導体部3との接触部4aに入射した光(L2)は、結晶半導体粒子2の段差2aの下側に屈折して段差2aの内側に進むため、段差2aの内側に閉じ込められて結晶半導体粒子2により多く取り込まれることになり、変換効率の高い光電変換装置を得ることができる。
【0045】
鋭角状である接触部4aの角度は60°以下がよい。60°を超えると、接触部4aが結晶半導体粒子2の半導体部3の表面から容易には剥がれないという効果が極めて小さくなる。
【0046】
本発明の光電変換装置は、例えば以下のようにして製造される。導電性基板1上に、多量のホウ素を含有した過共晶のアルミニウム−シリコン共晶ペーストを、少なくとも結晶半導体粒子2が配置される部位に塗布する。
【0047】
次に、多数個(数1000〜100000個程度)の結晶半導体粒子2を互いに間隔を置いて配設した後、上方より押圧板等により一定の加重をかけて、導電性基板1を成すアルミニウムと結晶半導体粒子2を成すシリコンとの共晶温度(577℃)以上に加熱する。これによって、導電性基板1と結晶半導体粒子2の共晶層(共晶部)を形成し、その共晶層を介して導電性基板1と結晶半導体粒子2とを接合させる。
【0048】
さらに、アルミニウム−シリコン共晶ペーストが加熱されて形成された過共晶層(過共晶部)からホウ素を多量に含むシリコン層が析出され、それがp+層となることでBSF(Back Surface Field)効果を得ることができる。
【0049】
なお、結晶半導体粒子2を導電性基板1に接合する方法は上記の方法に限るものではなく、アルミニウムから成る導電性基板1とシリコンから成る結晶半導体粒子2を接触させ、アルミニウムとシリコンとの共晶温度(577℃)以上に加熱することによって、アルミニウムとシリコンとの共晶層(合金層)を形成し、その共晶層を介して導電性基板1と結晶半導体粒子2とを接合させる方法であればよい。
【0050】
第2導電型の半導体部3は例えばSiから成り、気相成長法等により、例えばシラン化合物の気相に、第2導電型がn型である場合n型を呈するためのリン系化合物の気相、または第2導電型がp型である場合p型を呈するためのホウ素系化合物の気相を微量導入して形成する。半導体部3の膜質としては、結晶質、非晶質、結晶質と非晶質とが混在するもののいずれでもよいが、光線透過率が高いことを考慮すると、結晶質または結晶質と非晶質とが混在するものがよい。
【0051】
また、半導体部3は、結晶半導体粒子2を導電性基板1に接合する前に、結晶半導体粒子2の表面部(表層部)に例えば熱拡散法により形成しても良い。結晶半導体粒子2が例えばp型のときには、オキシ塩化リンを拡散剤として、石英管に900℃の温度で30分間、結晶半導体粒子2を挿入することにより、結晶半導体粒子2の表面に0.5〜5μmの厚みでn型の半導体部3を形成することができる。
【0052】
半導体部3中の第2導電型を付与するための微量元素の濃度は、例えば1×1016〜1×1021原子/cm程度である。さらに、半導体部3は、結晶半導体粒子2の表面の凸形曲面に沿って形成されることが好ましい。結晶半導体粒子2の凸形曲面の表面に沿って形成されることによって、pn接合部の面積を広く取ることができ、結晶半導体粒子2の内部で生成したキャリアを効率よく収集することが可能となる。
【0053】
結晶半導体粒子2の表面に段差2aを形成するには、例えば以下の方法による。まず、耐酸性または耐アルカリ性のレジストを結晶半導体粒子2の表面の上側に付着させる。レジストは、室温放置または200℃程度のベークによって固化させる。
【0054】
次に、フッ酸、フッ硝酸の混合溶液または苛性ソーダ水溶液などに、結晶半導体粒子2を浸漬することにより、レジストに覆われていない結晶半導体粒子2の表面をエッチング除去する。このとき、結晶半導体粒子2の表面の半導体部3の一部をエッチング除去することにより、段差2aが形成されるとともにpn分離もなされる。
【0055】
次に、光電変換装置全体を酸化することにより、結晶半導体粒子2の表面に酸化膜を形成する。これにより、結晶半導体粒子2において表面再結合によるキャリアの消滅が防がれ、光電変換素子(光電変換の単位体で1個の結晶半導体粒子2を有するもの)の変換効率が向上する。酸化方法としては、シリコンから成る結晶半導体粒子2を酸化する方法全般が適用できる。例えば、水蒸気酸化法、乾燥酸素中での酸化法、電解陽極酸化法、気相陽極酸化法等が適用できる。
【0056】
酸化膜の厚みは50〜300Å程度がよい。50Å未満では、上述した効果が得られなくなり、300Åを超えると、酸化膜形成工程が長時間に及ぶため生産性が低下する。
【0057】
絶縁層4は、正極(p型)と負極(n型)の分離を行うための絶縁材料からなり、例えばSiO,B,Al,CaO,MgO,P,LiO,SnO,ZnO,BaO,TiO等の材料を任意成分とする低温焼成用ガラス(ガラスフリット)材料、上記材料の1種または複数種から成るフィラーを複合したガラス組成物、ポリイミドまたはシリコーン樹脂等の有機系の絶縁物質等からなる。
【0058】
絶縁層4は以下のようにして形成される。絶縁材料のペースト、溶液、シート等を、結晶半導体粒子2上から塗布または配置して、アルミニウムとシリコンの共晶温度である577℃以下の温度で加熱する。これによって、結晶半導体粒子2間の隙間に充填させて、焼成固化或いは熱硬化させて絶縁層4とする。この場合、加熱温度が577℃を超えると、アルミニウムとシリコンとの合金層が溶融し始めるために、導電性基板1と結晶半導体粒子2との接合が不安定となり、場合によっては結晶半導体粒子2が導電性基板1から離脱して発電電流を取り出せなくなる。また、絶縁層4を形成した後、結晶半導体粒子2の表面を洗浄するために、フッ酸を含む洗浄液で洗浄する。
【0059】
半導体層3上及び絶縁層4上に、一方の電極である導電性基板1に対して他方の電極を兼ねる透光性導体層5を形成する。この透光性導電層5は、SnO,In,ITO,ZnO,TiO等から選ばれる1種または複数種の酸化物系膜等から成り、スパッタリング法、気相成長法あるいは塗布焼成法等により形成される。透光性導体層5は、厚みを適宜選べば反射防止膜としての効果も付与できる。
【0060】
また、透光性導体層5は、半導体部3の表面に沿って形成され、結晶半導体粒子2及び半導体層3の凸形曲面に沿って形成されることが好ましい。この場合、pn接合部の面積を広く稼ぐことができ、結晶半導体粒子2の内部で生成したキャリアを効率よく収集することができる。
【実施例】
【0061】
本発明の光電変換装置の実施例について以下に説明する。
【0062】
図1の構成の光電変換装置を以下のようにして作製した。結晶半導体粒子2として、直径0.3mmのp型の結晶シリコン粒子を用い、多数個(1万個)の結晶シリコン粒子のそれぞれの表層部にリン(P)を熱拡散処理することにより、結晶シリコン粒子の外郭部をn型の半導体部3としてpn接合部を形成した。
【0063】
次に、アルミニウム製の導電性基板1の主面上の結晶シリコン粒子が配置される各部位に、アルミニウム−シリコン共晶ペーストを塗布し焼成してアルミニウム−シリコン過共晶層を形成した。
【0064】
次に、それらのアルミニウム−シリコン過共晶層上に結晶シリコン粒子をそれぞれ配置し、アルミニウムとシリコンの共晶温度である577℃以上の温度(630℃)で約10分加熱して、多数の結晶シリコン粒子を互いに間隔を空けて導電性基板1上に接合した。
【0065】
次に、結晶シリコン粒子の表面の段差2aの位置より上側に印刷法によりレジストを転写し、オーブンで160℃、10分焼成してレジストを固化させた。
【0066】
次に、フッ酸、硝酸の混合溶液に結晶シリコン粒子を浸漬して段差2aを形成した後、アルコールに結晶シリコン粒子を浸してレジストを除去した。形成された段差2aの径方向の深さは結晶シリコン粒子の直径(0.3mm)の5%(15μm)であり、段差2aの縦断面形状は、曲率半径が段差2aの径方向の深さ(15μm)の1.0倍(15μm)の円弧状であった。
【0067】
次に、結晶シリコン粒子について、570℃の酸素雰囲気中で5時間、酸化処理を施した。
【0068】
次に、結晶シリコン粒子間に液状のポリイミドを滴下して塗布し、熱乾燥によってポリイミドを硬化させて、厚み30μmの絶縁層4を形成した。絶縁層4の結晶シリコン粒子の半導体部3の球状表面との接触部4aの角度は30°であった。
【0069】
次に、結晶シリコン粒子の半導体部3の表面を洗浄し、結晶シリコン粒子及び絶縁層4の上に、透光性導体層5としてのITO膜をスパッタリング法により80nmの厚みで形成した。
【0070】
その後、透光性導体層5上に銀を含む線状のフィンガー電極を形成し、取り出し電極とした。さらに、図3に示すように、結晶シリコン粒子2及び導電性基板1を覆うように透明樹脂層6を形成して光電変換モジュールを作製した。
【0071】
(比較例)
図2に示すように、下端部に凹部12aが形成された結晶シリコン粒子を用いた光電変換装置を作製した。凹部12aは、半導体部13と導電性基板11との電気的接触を分離するPN分離を行う際に形成した。PN分離は、結晶シリコン粒子における半導体部13の導電性基板11との接合部の上側を全周にわたってフッ酸でエッチングし、結晶シリコン粒子の下端部に鋭角状の角部を有する凹部12aを形成した。その後、熱酸化法により、結晶シリコン粒子の表層の半導体部13の表層部を酸化させた。これによりPN分離を行った。凹部12aの形成以外は上記実施例と同様にして光電変換装置を作製した。
【0072】
この光電変換装置において、凹部12aの深さは20μm、凹部12aの高さ(上下方向の長さ)は5μmであった。また、絶縁層14の結晶シリコン粒子の半導体部13の球状表面との接触部14aの角度は約90°であった。
【0073】
その後、結晶シリコン粒子及び導電性基板11を覆うように透明樹脂層を形成して光電変換モジュールを作製した。
【0074】
本発明の実施例の光電変換装置と比較例の光電変換装置とを比較した。実施例と比較例とでは、光電変換装置の状態では光電変換効率はほぼ同じであったが、光電変換モジュールとした状態では、実施例の光電変換装置の光電変換効率が9.5%、比較例の光電変換装置の光電変換効率が8.6%となり、実施例の光電変換効率が10%高くなった。
【0075】
これは、比較例の光電変換装置は、絶縁層14と一部の結晶シリコン粒子との間で剥離が起き、その剥離の発生部において絶縁層14及び結晶シリコン粒子の上に形成されている透光性導体層15が破断され、その結果、内部抵抗が増大するとともにフィルファクター(FF)が低下していることが原因であると考えられる。
【0076】
なお、本発明は上記の実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことができることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の光電変換装置について実施の形態の1例を示す断面図である。
【図2】従来の光電変換装置の1例の断面図である。
【図3】図1の本発明の光電変換装置を光電変換モジュールとした場合の断面図である。
【図4】図1の本発明の光電変換装置について、入射光が結晶半導体粒子に取り込まれる様子を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1・・・導電性基板
2・・・結晶半導体粒子
2a・・・段差
2b・・・接合部
2c・・・境界
3・・・半導体部
4・・・絶縁層
4a・・・接触部
5・・・透光性導体層
6・・・透明樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基板上に、表層に第2導電型の半導体部が形成された球状の第1導電型の結晶半導体粒子が多数個接合され、前記結晶半導体粒子間の前記導電性基板上に絶縁層が形成され、前記半導体部及び前記絶縁層の上に透光性導体層が形成されている光電変換装置であって、前記結晶半導体粒子は、その表面の前記導電性基板との接合部の上側近傍に全周にわたって、前記結晶半導体粒子の径が段状に変化する段差が形成されているとともに前記段差から下側の縦断面における半径が小さくなっており、前記絶縁層は、前記結晶半導体粒子の表面における前記接合部との境界から前記段差の上側までを覆っていることを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記段差の径方向の深さが、前記結晶半導体粒子の直径の0.1乃至30%であることを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記段差の最深部の角部の縦断面形状が円弧状であることを特徴とする請求項1または2記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記段差の前記角部の縦断面における曲率半径が前記段差の深さの0.8乃至2倍であることを特徴とする請求項3記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記絶縁層は、前記結晶半導体粒子の前記半導体部の表面と接する角度が鋭角であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の光電変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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