説明

光電式分離型煙感知器

【課題】外光の影響を低減できる光電式分離型煙感知器を提供する。
【解決手段】光を発する送光部20と、送光部20から発せられた光を受ける受光部10と、を備えた光電式分離型煙感知器において、送光部に、光を偏光させる送光フィルタ21を備え、受光部は、受光部が受ける光を偏光させる受光フィルタ11を有する。送光フィルタの偏光方向を変更することで、あるいは受光フィルタの偏光方向を変更することで送光フィルタの偏光方向と受光フィルタの偏光方向との角度差を制御して作動試験及び不作動試験が可能となり、作動試験及び不作動試験が、外部からの操作または試験信号入力によって行うことができる。また受光フィルタを有するため、様々な方向の偏光を含む外光のうち、特定の方向の偏光だけが通過できるため、外光の影響を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電式分離型煙感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、体育館、工場、アトリウムなどの比較的高所において、光を用いて長距離の空間を監視する煙感知器がある。
そのような煙感知器としては、例えば、発光部(送光部)と受光部が分離して設置され、発光部から発せられた光を受光部が受光することにより煙の有無を検出し、火災の発生を感知する光電式分離型煙感知器が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、従来は、光電式分離型煙感知器の作動試験・不作動試験を行う際に、鉄板を格子状にしたフィルタを光電式分離型煙感知器の光路上に所定時間(例えば30秒)以上挿入していた。作動試験としては、煙により光が遮られた場合に光電式分離型煙感知器が作動することの模擬試験として、格子の間隔が小さいフィルタを挿入し火災を検出することを確認していた。また、不作動試験としては、埃等により光強度が低減してもその低減率が所定値以下である場合に光電式分離型煙感知器が作動しないことの模擬試験として、格子の間隔が大きいフィルタを挿入して火災を検出しないことを確認していた。つまり、格子状にしたフィルタにより、光強度を低減させることで作動試験・不作動試験を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−16546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の光電式分離型煙感知器は、送光部から発せられた光だけでなく外光及びその反射光が受光部に入ることがある。そのため、その外光及びその反射光の光の量が大きいと受光素子が飽和してしまい煙を検出しにくくなるという問題点があった。
【0006】
また、光電式分離型煙感知器は高所に取り付けられているため、作動試験・不作動試験を行う際に、足場を組んだり、格子状のフィルタに重量がある延伸装置を取り付けたりして、格子状のフィルタを光路上に挿入する必要があった。そのため、試験を行うのが大変であるという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、外光の影響を低減できる光電式分離型煙感知器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光電式分離型煙感知器は、光を発する送光部と、前記送光部から発せられた光を受ける受光部と、を備えた光電式分離型煙感知器において、前記受光部は、該受光部が受ける光を偏光させる受光フィルタを有するものである。
【0009】
また、本発明の光電式分離型煙感知器は、前記受光フィルタの偏光方向が変更可能である。
【0010】
また、本発明の光電式分離型煙感知器は、前記受光部が受ける外光の強度が最小値から所定の範囲内になるように前記受光フィルタの偏光方向を制御する制御部を備えたものである。
【0011】
また、本発明の光電式分離型煙感知器は、前記送光部に、光を偏光させる送光フィルタを有するものである。
【0012】
また、本発明の光電式分離型煙感知器は、前記送光部に、光を発する送光素子と、該送光素子から発せられた光を偏光させる送光フィルタを有し、前記送光フィルタの偏光方向を変更することで、前記送光フィルタの偏光方向と前記受光フィルタの偏光方向との角度差を制御して作動試験及び不作動試験が行われるものである。
【0013】
また、本発明の光電式分離型煙感知器は、作動試験及び不作動試験が、外部からの操作または試験信号入力によって行われるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光電式分離型煙感知器は、光を偏光させる受光フィルタを有するため、様々な方向の偏光を含む外光のうち、特定の方向の偏光だけが通過できるため、外光の影響を低減することができる。
【0015】
また、本発明の光電式分離型煙感知器は、受光フィルタの偏光方向が変更可能であるので、その方向を反射光の偏光方向と一致しないようにすることで、床や壁などで発生する反射光の影響を低減することができる。
【0016】
また、本発明の光電式分離型煙感知器は、前記受光部が受ける外光の強度が最小値から所定の範囲内になるように前記受光フィルタの偏光方向を制御する。これにより、例えば外光が反射する位置が変わり反射光の偏光方向が変化しても、反射光の影響が最小から所定の範囲内の状態で火災監視を行うことができる。
【0017】
また、本発明の光電式分離型煙感知器は、光を偏光させる送光フィルタを有する。これにより、例えば受光部と送光部との距離が近距離に変更された場合でも、受光部の増幅率を変更しなくても、受光素子が飽和してしまうことを抑制できる。
【0018】
また、本発明の光電式分離型煙感知器は、前記送光フィルタの偏光方向と前記受光フィルタの偏光方向との角度差を制御することで作動試験及び不作動試験が行われる。これにより、受光フィルタを通過する光の強度を容易に変化させることができるので、試験装置を別途用意する必要が無く、作動試験及び不作動試験を容易に行うことができる。
【0019】
また、本発明の光電式分離型煙感知器においては、作動試験及び不作動試験が、外部からの操作または試験信号入力によって行われるため、光電式分離型煙感知器が高所にあっても、足場を組んだり、重量がある延伸装置を用いたりする必要が無いので、試験を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1及び2における光電式分離型煙感知器を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1及び2における光電式分離型煙感知器の制御系を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1及び2における光電式分離型煙感知器の受光部が受ける光強度と出力電圧との関係を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1及び2における光電式分離型煙感知器の制御フローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態2における光電式分離型煙感知器の作動及び不作動試験のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の光電式分離型煙感知器について、図面を用いて詳細に説明する。
【0022】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における光電式分離型煙感知器を示す概略構成図である。(a)は、光電式分離型煙感知器の概略構成の側面図である。(b)は送光部20及び受光部10のそれぞれの正面図である。
本実施の形態1の光電式分離型煙感知器は、光を発する送光部20と、送光部20が発した光を受ける受光部10とを備えている。
【0023】
送光部20は、図1(a)に示すように、受光部10側に向かって送光素子23、レンズ部22、送光フィルタ21の順に配置されている。
また、図1(b)に示すように、送光部20は、正面視において、送光素子23を覆うようにレンズ部22が設けられており、レンズ部22を覆うように送光フィルタ21が設けられている。
送光フィルタ21の下部には、略円盤形状の送光フィルタ駆動手段25が、略円盤形状の送光フィルタ21と接して設けられている。この送光フィルタ駆動手段25を回転させることで送光フィルタ21を回転させることができる。
【0024】
送光素子23と送光フィルタ21との間に設けられたレンズ部22は、送光素子23が発した光を集束するものである。送光フィルタ21は、偏光フィルタであり、特定の偏光のみ通過させる。また、送光フィルタ21は、回転自在に支持されており、回転させることにより偏光方向を変更することができる。
【0025】
図1(a)に示すように、受光部10は、送光部20側に向かって受光素子13(例えば、フォトダイオード)、レンズ部12、受光フィルタ11の順に配置されている。
また、図1(b)に示すように、受光部10は、正面視において、受光素子13を覆うようにレンズ部12が設けられており、レンズ部12を覆うように受光フィルタ11が設けられている。
受光フィルタ11の下部には略円盤形状の受光フィルタ駆動手段15が、略円盤形状の受光フィルタ11と接して設けられており、受光フィルタ駆動手段15を回転させることで受光フィルタ11を回転させることができる。
【0026】
受光フィルタ11は、送光フィルタ21と同様に偏光フィルタを用いており、特定の偏光のみ通過させるので外光の影響を低減させる。また、受光フィルタ11は、回転自在に支持されており、回転することにより偏光方向を変更することができる。受光素子13と受光フィルタ11との間に設けられたレンズ部12は、受光フィルタ11を通過した光を受光素子13に集束する。
【0027】
なお、送光フィルタ駆動手段25、受光フィルタ駆動手段15、送光フィルタ21及び受光フィルタ11は、図1に示す略円盤形状のものに限られず、送光フィルタ21及び受光フィルタ11の偏光方向を変化できるように構成されていればよい。
このように構成された本実施の形態1の光電式分離型煙感知器において、送光部20から発せられた光は、受光部10の受光フィルタ11、レンズ部12を通り受光素子13に入り、その光強度の変化により煙を感知する。
【0028】
図2は、本発明の実施の形態1における光電式分離型煙感知器の制御系を示すブロック図である。
送光部20は、制御部26及び電源兼通信部27を有している。また、受光部10は、制御部16、電源兼通信部17及び試験入力部18を有している。
【0029】
送光部20の電源兼通信部27と受光部10の電源兼通信部17とは電線30で接続されている。その電線30は、信号線と電源線を兼用しており、例えば、電源兼通信部27に外部から電力が供給され、電源兼通信部27から電源兼通信部17に電力が送られる。また、電線30は、送光部20、受光部10間の同期を行う同期線も兼ねている。また、電源兼通信部27及び電源兼通信部17は、図示しない火災受信機と信号線により接続され、火災受信機と通信を行ない状態情報を送受信する。
【0030】
送光部20は、制御部26(例えば、マイコン)を備えており、送光部20の全ての動作を制御している。制御部26は、信号出力制御部26a及び送光フィルタ制御部26eを有している。信号出力制御部26aは、火災受信機と通信を行なったり、送光部20と受光部10とで同期するための通信を行なうために、電源兼通信部27を制御する。
【0031】
また、送光フィルタ制御部26eは、送光フィルタ駆動手段25に指令を送り、送光フィルタ21を駆動させる。送光フィルタ駆動手段25は、図1に示したように例えば略円盤形状の物体であり、モーター等により回転することにより、送光フィルタ21を回転させる。
【0032】
受光部10は、受光部10の全ての動作を制御する制御部16を備えている。また、制御部16は、信号出力制御部16a、試験入力判定部16b、火災判定部16c、設定部16d及び受光フィルタ制御部16eを有している。
信号出力制御部16aは、上述した送光部20の信号出力制御部26aと同様な動作を行なうために、電源兼通信部17を制御する。
【0033】
受光フィルタ制御部16eは、受光フィルタ駆動手段15に指令を送ることで受光フィルタ11を駆動する。受光フィルタ制御部16e及び受光フィルタ駆動手段15の構成及び機能は、上述した送光フィルタ制御部26e及び送光フィルタ駆動手段25と同様である。
受光素子13は、受光フィルタ11及びレンズ部12を通過した光を受けると光強度に応じた電気信号(電圧)に変換する。その電気信号は、増幅回路14に送られ、制御部16により制御される増幅倍率で増幅される。
【0034】
増幅回路14で増幅された信号は、制御部16に送られ、その信号に応じて火災判定部16cが火災かどうか判定する。この判定方法は、例えば、その信号と予め定めた基準値との比較により、火災と判定するものであり、詳しくは後述する。
【0035】
また、制御部16には、試験入力部18が接続されている。作動試験等を行う際は、外部の図示しない指示部から試験入力部18に信号または接点(スイッチ)入力が送られ、試験入力部18が試験開始等の情報を制御部16に伝える。試験入力判定部16bは、試験入力部18から試験開始の情報を得た際に試験の判定処理を行う。なお、作動試験については、後述の実施の形態2で詳細に説明する。
【0036】
設定部16dは、例えばROMであり、監視領域における受光部10と送光部20の距離の情報を有している。例えば、近距離(5m以上20m未満)、中距離(20m以上40m未満)及び遠距離(40m以上100m以下)のいずれかが設定されており、コードとして記憶される。設定部16dは、制御部16の外部に設けられたディップスイッチ等のスイッチでもよい。この設定部16dで設定された距離に応じて前述した増幅回路14の増幅率が調節される。
【0037】
例えば、近距離である場合は、光が強いため増幅率を低く設定し、距離が中距離になった場合には、中距離に設定を変更することで増幅率を上げて受光素子13が出力する弱い電圧に対応している。
なお、受光部10と送光部20との距離が変更された場合、送光フィルタ21を用いて光強度を変更することもできる。例えば、長距離の設定をしておくことで増幅率が高く設定され、その状態で距離が近距離になった場合は、送光フィルタ21と受光フィルタ11の偏光方向の角度差を大きくし、受光素子13が受光する光を弱める。これにより、設定部16dの設定変更を行わなくても距離の変更に対応でき、受光素子13が飽和して正しい光強度が検出できなくなるということを抑制できる。
【0038】
図3は、本発明の実施の形態1における光電式分離型煙感知器の受光部が受ける光の強度と出力電圧との関係を示す図である。
受光部10が受ける外光が少ない場合、光強度は、L1及びL2のように低い値となる。そして、光強度が、煙の発生によりL2からL1に変化した場合、電圧はV2からV1に大きく変化し、この変化により煙の発生を検出する。そのため、煙の検出を精度よく行うことができる。
【0039】
一方、受光部10へ入る外光が多い場合、光強度はL3及びL4のように高い値となる。そして、受光素子13が飽和してしまい光強度が、煙の発生によりL4からL3に大きく変化した場合であっても、電圧はV4からV3に小さくしか変化しない。そのため、電圧の変化が煙によるものなのかノイズ等の影響によるものなのかの判別が困難であり煙の検出の精度が悪くなる。
【0040】
本実施の形態1の光電式分離型煙感知器は、このような特性を持っているので、受光素子13に入る光強度を低減させる必要がある。
前述したように、本実施の形態1における光電式分離型煙感知器は、受光フィルタ11を備えているので、特定の偏光方向以外の光を通さない。そのため、受光素子13に入る外光の影響を低減し、光の強度を低減させることができる。
【0041】
また、外光については、様々な偏光方向の光が混在しているが、反射光に関しては、偏光方向が比較的揃っている。また、外光は、時間とともに太陽の位置が移動するのに伴い、反射光の偏光も時間とともに変化する。そのため、その偏光の変化に応じて、受光フィルタ11を回転させ、受光フィルタ11の偏光方向の角度を反射光の偏光と異なる角度にする。例えば、受光フィルタ11の偏光方向の角度を、受光フィルタ11に入る反射光の偏光方向と直交する角度に変更させることで、反射光の影響を最小から所定の範囲内になるようにすることができる。そのため、受光素子13に入る反射光の影響を低減し、光の強度を低減させることができる。
なお、送光フィルタ制御部26e、送光フィルタ駆動手段25及び送光フィルタ21は、主に後述の実施の形態2で用いられるものであるので、本実施の形態1においては、必ずしも設けられていなくてよい。
【0042】
次に、上記のように構成された光電分離型煙感知器の動作について説明する。
図4は、本発明の実施の形態1における光電式分離型煙感知器の制御フローチャートである。
本実施の形態1の光電式分離型煙感知器は、所定時間毎に発光を行い煙の感知をしている。発光する際に、ステップ1において、受光部10の制御部16から送光部20の制御部26に電線30を介して同期パルスを送出する。そして、ステップ2において、受光フィルタ制御部16e及び送光フィルタ制御部26eが、受光フィルタ駆動手段15及び送光フィルタ駆動手段25を駆動させることで、受光フィルタ11と送光フィルタ21を回転させる。ここで、受光フィルタ11と送光フィルタ21は、偏光方向を一致させたまま回転し、受光電圧が最小値から所定の範囲内になるようにする。このように受光フィルタ11と送光フィルタ21の偏光方向を一致させているので、送光部20からの煙検出用の光は受光フィルタ11によって減衰しない。また、送光フィルタ21を備えていない場合は、受光電圧が最小値から所定の範囲内になるように受光フィルタ11を回転させる。これにより、前述したように外光の反射光の影響を低減させる。
【0043】
そして、ステップ3において制御部16は受光電圧の測定を行う。ステップ4において、制御部16はステップ3で測定した受光電圧と予め算出した基準値とを用いて減光率を算出する。ここで、基準値とは、直前の所定時間(例えば1時間)内の受光電圧の平均値である。減光率は、減光率=(基準値−受光電圧)/基準値 として計算する。そして、ステップ3及び4の処理は複数回行われ、ステップ5において、制御部16は複数算出された減光率データの平均化処理を行う。この平均化処理は、例えば最近6回の減光率データの平均値を算出する。
【0044】
ステップ6において、火災判定部16cは、平均化処理された減光率データと予め定めた火災しきい値とを比較することで火災判定処理を行う。そして、ステップ7において、火災判定部16cは、その判定結果により火災検出と判断した場合は、ステップ8に移行して火災信号を発報し、図示しない火災受信機等が火災であることを表示する。
【0045】
ステップ7において、火災が検出されなかった場合は、制御部16は、ステップ9において基準値の更新時間かどうかを判断する。基準値とは、ステップ4で用いた値であり、前述したように時間とともに受光部10に入る外光の強度や埃の量等の監視空間の環境が変化するため、それに対応させて例えば1時間毎に更新する。基準値の更新時間でなければ、ステップ13に移行し、基準値の更新時間であれば、ステップ10に移行し、制御部16は新基準値の算出を行う。この新基準値は、例えば直前の1時間の受光電圧の平均値を用いる。
【0046】
そして、ステップ11において、制御部16は新基準値が正常かどうかを判断する。仮に、監視している領域が煙や埃が発生していて、ある程度減光されている場合、その時間の受光電圧は平常時より低くなる。そのような環境で新基準値を算出してしまうと、火災が発生して煙が発生しても減光率が新基準値に対して、火災しきい値に達する程低くなりにくくなるため、ステップ6にて火災と判定できなくなる。そのため、ステップ11において、制御部16は例えば旧基準値と比較した新基準値の変化が所定の範囲内であれば正常と判断する。
新基準値が正常であれば、その新基準値を用いて基準値の更新処理を行い、正常でなければ更新せずにステップ13に移行する。そして、ステップ13において、次回発光時間まで待機し、発光時間になったらステップ1に移行する。この待機時間は、例えば1分間とする。
【0047】
本実施の形態1の光電式分離型煙感知器は、上記ステップ2で示したように、受光フィルタ11と送光フィルタ21の偏光方向を一致させたまま回転させることで受光電圧が最小値から所定の範囲内になるようにする。これにより、外光の影響を抑制できる。
また、ステップ9〜ステップ12に示したように、所定時間毎に基準値を変更し、減光率の算出を行っているので、時間とともに受光部10に入る外光及び反射光の量が変化してもその影響を抑制することができる。
【0048】
以上のように、本実施の形態1の光電式分離型煙感知器は、受光フィルタ11を備えているので、特定の偏光方向以外の光を通さないため、外光の影響を低減することができる。そのため受光部10が受ける光強度を容易に低減させることができるので精度よく煙を検出できる。
また、受光フィルタ11を通過する光の強度が最小値から所定の範囲内になるように受光フィルタ11を駆動させる。これにより、例えば外光が反射する位置が変わり反射光の偏光方向が変化しても、外光の反射光の影響を最小から所定の範囲内になるようにした状態で火災監視を行うことができる。
また、送光フィルタ21を備えたことで、受光部10と送光部20の距離が近くなっても、それに対応して光を弱めることができるので受光素子13が飽和してしまう可能性を抑制できる。
【0049】
実施の形態2.
本実施の形態2においては、実施の形態1で示した光電式分離型煙感知器を用いて作動及び不作動試験を行う例について説明する。
図5は、本発明の実施の形態2における光電式分離型煙感知器の作動及び不作動試験のイメージ図である。
この試験は、図4のステップ2で示した処理により、送光フィルタ21と受光フィルタ11との偏光方向を一致させ、受光電圧が最小値から所定の範囲内の状態、つまり外光の影響が最小から所定の範囲内の状態で行う。
【0050】
まず、外部の図示しない指示部から試験入力部18に試験開始のトリガとなる指令を送ることで、試験が開始される。この指示部とは、例えばスイッチ等を新たに設けたものであって、そのスイッチの操作により試験開始の指令が送られる。また、指示部は、例えば既存の火災受信機であって、その火災受信機から試験信号を送るものでもよい。また、指示部から試験入力部18への伝達は、電気信号であってもよく、無線又は有線の通信であってもよい。また、赤外線等の光によるものであっても良い。
例えば、1回目のトリガで不作動試験(火災を検出しないことを確認する試験)、2回目のトリガで作動試験(火災を検出することを確認する試験)を行うとする。
【0051】
不作動試験の際には、送光フィルタ21を30°ずらし、送光フィルタ21と受光フィルタ11の偏光方向の差を30°とする。なお、受光フィルタ11をずらすと外光の影響が変化するため、送光フィルタ21をずらす。それにより、送光素子23からの光は減衰されて受光素子13に入るが、火災と判定する程は減衰されていない。この状態で30秒以内に火災を検出しないことを確認する。この判定は、図4のステップ6で示した火災判定と同じである。
【0052】
次に、作動試験の際には、送光フィルタを45°までずらし、送光フィルタ21と受光フィルタ11の偏光方向の差を45°とする。それにより、さらに送光素子23からの光が減衰されて受光素子13に入り、煙が増えて火災が進行した状態と同じ減衰量にする。この状態で30秒以内に火災を検出することを確認する。
【0053】
本発明の実施の形態2における光電式分離型煙感知器は、上記のような試験を行うことで、機器が正常に動作していることを確認する。
なお、上述の送光フィルタ21の回転角度及び試験時間は一例であり、光電式分離型煙感知器の性能及び設置環境等により異なるものである。
また、回転角度及び試験時間は、予め制御部26等に記憶していたものを用いてもよいし、試験毎にダイヤル等で設定してもよい。
【0054】
また、本発明の実施の形態2における光電式分離型煙感知器は、高所に取り付けられていることが多い。そのため、試験入力部18への指令を送る図示しない指示部は、光電式分離型煙感知器の遠隔であって使用者が操作し易い場所に設けることが望ましい。
【0055】
以上により、本発明の実施の形態2における光電式分離型煙感知器は、送光フィルタ21の偏光方向と受光フィルタ11の偏光方向との角度差を変更することで受光強度を変化させることができる。そのため、格子状のフィルタ等の試験装置を別途用意する必要が無く、作動試験及び不作動試験を容易に行える。
また、作動及び不作動試験を外部からの操作又は試験信号によって行うことができるため、足場を組んだり、重量がある延伸装置を用いたりする必要が無いため試験を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0056】
10 受光部、11 受光フィルタ、12 レンズ部、13 受光素子、14 増幅回路、15 受光フィルタ駆動手段、16 制御部、16a 信号出力制御部、16b 試験入力判定部、16c 火災判定部、16d 設定部、16e 受光フィルタ制御部、17 電源兼通信部、18 試験入力部、20 送光部、21 送光フィルタ、22 レンズ部、23 送光素子、25 送光フィルタ駆動手段、26 制御部、26a 信号出力制御部、26e 送光フィルタ制御部、27 電源兼通信部、30 電線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発する送光部と、
前記送光部から発せられた光を受ける受光部と、
を備えた光電式分離型煙感知器において、
前記受光部は、該受光部が受ける光を偏光させる受光フィルタを有することを特徴とする光電式分離型煙感知器。
【請求項2】
前記受光フィルタは、偏光方向が変更可能であることを特徴とする請求項1に記載の光電式分離型煙感知器。
【請求項3】
前記受光部が受ける外光の強度が最小値から所定の範囲内になるように前記受光フィルタの偏光方向を制御する制御部を備えたことを特徴とする請求項2に記載の光電式分離型煙感知器。
【請求項4】
前記送光部は、光を発する送光素子と、該送光素子から発せられた光を偏光させる送光フィルタを有し、
前記送光フィルタの偏光方向を変更することで、前記送光フィルタの偏光方向と前記受光フィルタの偏光方向との角度差を制御して作動試験及び不作動試験が行われることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の光電式分離型煙感知器。
【請求項5】
作動試験及び不作動試験は、外部からの操作または試験信号入力によって行われることを特徴とする請求項4に記載の光電式分離型煙感知器。
【請求項6】
前記送光部は、光を偏光させる送光フィルタを有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の光電式分離型煙感知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−73591(P2013−73591A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214568(P2011−214568)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】