説明

光電気複合ケーブル

【課題】ケーブル屈曲時に光ファイバに側圧がかかることを極力抑え、光ファイバの良好な伝送特性を維持することが可能な光電気複合ケーブルを提供する。
【解決手段】外被20の内側に光ファイバ心線12と複数本の電線15とを有する光電気複合ケーブル11であって、光ファイバ心線12が断面中央に配置された保護チューブ13内に収容され、複数本の電線15が、保護チューブ13と外被20との間に配置されるとともに、保護チューブ13の周方向に移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線及び光ファイバを有する光電気複合ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器間、例えば、プロジェクタとパーソナルコンピュータとの間やプラズマディスプレイなどのディスプレイとチューナーとの間などを接続するケーブルとして、DVI(Digital Visual Interface)伝送インタフェース規格による光DVIケーブルが用いられている。
【0003】
光DVIケーブルは、送信モジュールと、受信モジュールと、光電気複合ケーブルとから構成されている。この光DVIケーブルを構成する光電気複合ケーブルは、複数本の光ファイバと複数本のメタル線と抗張力繊維とそれらを包む外被とを備えており、各光ファイバは、送信モジュールからの光信号を受信モジュールへ伝送する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−25272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光電気複合ケーブルは、その外被内において、光ファイバ、メタル線及び抗張力線が密に束ねられている。光電気複合ケーブルが曲げられると外被が横断面で見て楕円形に変形し、その外被の内側では楕円形の短径方向に光ファイバがメタル線や抗張力線に押されて、光ファイバに側圧が作用して伝送損失が増加するおそれがある。
また、光ファイバに保護被覆が設けられていたり光ファイバがチューブに収容されて保護されていたりしても、光電気複合ケーブルが小さい曲げ半径で曲げられると、メタル線や抗張力線によって保護被覆やチューブが押し潰され、光ファイバに側圧が作用することを回避できない。
【0006】
本発明の目的は、ケーブル屈曲時に光ファイバに側圧がかかることを極力抑え、光ファイバの良好な伝送特性を維持することが可能な光電気複合ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することのできる本発明の光電気複合ケーブルは、外被の内側に光ファイバと複数本の電線とを有する光電気複合ケーブルであって、
前記光ファイバが断面中央に配置されたチューブ内に収容され、
前記複数本の電線が、前記チューブと前記外被との間に配置されるとともに、前記チューブの周方向に移動可能であることを特徴とする。
【0008】
本発明の光電気複合ケーブルにおいて、前記チューブの少なくとも外周面は、フッ素系樹脂から形成されていることが好ましい。
【0009】
本発明の光電気複合ケーブルにおいて、前記複数本の電線が前記チューブの周囲に撚られて配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光電気複合ケーブルによれば、ケーブルが曲げられて外被が変形して扁平になると、チューブの周囲に配置された電線が外被によって楕円形の短径方向に押されるが、電線はチューブの周方向に移動して、電線がチューブを押し潰すことが防がれる。よって、このチューブ内に収容された光ファイバに側圧が作用することを抑えることができ、光ファイバの伝送損失の増加を防ぐことができる。このように、本発明の光電気複合ケーブルは、小さい曲げ半径で曲げられたとしても、光ファイバに側圧がかかることを極力抑えて、良好な伝送特性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る光電気複合ケーブルの実施形態の例を示す断面図である。
【図2】図1のケーブルが曲げられた際の屈曲箇所の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る光電気複合ケーブルの実施形態の例を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、光電気複合ケーブル11は、最外層である外被20の内側に、光ファイバ心線(光ファイバ)12と複数本の電線15とを有する。光ファイバ心線12は、1本または複数本設けられ、光電気複合ケーブル11の断面中央に配置された保護チューブ(チューブ)13内に収容されている。
【0013】
外被20の内側であって保護チューブ13の外側は、収容部14とされており、この収容部14には、例えば、複数本の電線15及び複数本の抗張力線16が配置されている。電線15は、例えば、ツイストペアケーブル、同軸ケーブルあるいは絶縁ケーブルなどがあり、例えば、AWG(American Wire Gauge)の規格によるAWG20〜46程度のケーブルである。また、本例では、4本の電線15のうち2本が信号線であり、2本が電力線である。また、収容部14の周囲には、押さえ巻き18、シールド層19及び外被20が順に設けられている。収容部14の厚さ(保護チューブ13の外周と押さえ巻き18の内周との距離)は、電線15及び抗張力線16の外径と同等、またはそれより僅かに大きいことが好ましい。
【0014】
この光電気複合ケーブル11では、収容部14に収容された電線15及び抗張力線16が、保護チューブ13の周囲において、保護チューブ13を締め付けない程度に螺旋状に緩く撚られている。これにより、これらの電線15及び抗張力線16は、収容部14において、保護チューブ13の周方向に移動可能とされている。
【0015】
保護チューブ13内に収容された光ファイバ心線12は、コアとクラッドからなる直径0.125mmのガラスファイバの周囲に紫外線硬化型樹脂からなる被覆層を形成したものであり、被覆層の外径が0.25mmとされている。また、さらに被覆層を設けて外径0.9mmの光ファイバ心線12としたり、光ファイバ心線12をさらに抗張力繊維及び被覆層で覆った光ファイバコードとしてもよい。
【0016】
なお、光ファイバ心線12としては、クラッドが高硬度プラスチックから形成されて折れ曲がり(キンク)に強く破断しにくいハードプラスチッククラッドファイバ(H−PCF)を用いることが好ましい。また、コア及びクラッドがプラスチックからなるものであってもよい。
【0017】
保護チューブ13は、非粘着性、自己潤滑性、耐摩耗性に優れたフッ素系樹脂から形成されている。この保護チューブ13を形成するフッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロチレン(PTFE)樹脂や、耐食性に優れたテトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)樹脂を用いるのが好ましい。保護チューブ13の外径は、例えば1.0mmである。
【0018】
信号線からなる電線15は、例えば、錫メッキが施された軟銅線または銅合金線からなる外径0.1mmの素線を7本撚り合わせた外径0.30mmの導体を有している。そして、この導体を厚さ0.14mmの絶縁性を有する外被によって覆うことにより、外径が0.58mmの電線15とされている。また、電力線からなる電線15は、例えば、錫メッキが施された軟銅線または銅合金線からなる外径0.127mmの素線を7本撚り合わせた外径0.38mmの導体を有している。そして、この導体を厚さ0.1mmの絶縁性を有する外被によって覆うことにより、外径が0.58mmの電線15とされている。電線15の外被の材料としては、信号線及び電力線の何れの場合も、耐熱性、耐薬品性、非粘着性、自己潤滑性などに優れたポリテトラフルオロエチレン(PFA)樹脂を用いるのが好ましい。
【0019】
押さえ巻18としては、耐熱性、耐摩耗性などに優れたポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂から形成された樹脂テープが用いられる。この押さえ巻き18が施された部分の内径は、例えば2.2mmである。シールド層19は、例えば、外径0.04mmの錫メッキされた銅合金線を編組したものである。
【0020】
外被20は、例えば、難燃ポリエチレン樹脂等から形成され、厚さ0.25mmで外径は3.0mmである。
【0021】
このように構成された光電気複合ケーブル11が曲げられると、図2に示すように、光電気複合ケーブル11はその曲げ箇所において外被20が横断面で見て楕円形に変形し、断面外形が矢印A方向に潰れて扁平になる。すると、保護チューブ13の周囲に移動可能に配置された電線15は、外被20の変形に伴って矢印A方向に押されて、保護チューブ13の外周面を滑るように保護チューブ13の周方向及び楕円形の長径方向に移動する。また、電線15の移動に伴って抗張力線16も収容部14内を移動する。これらの電線15及び抗張力線16の移動により、電線15及び抗張力線16が保護チューブ13を押し潰すことが防がれる。よって、保護チューブ13内に収容された光ファイバ心線12に側圧が作用することを防ぎ、光ファイバ心線12の伝送損失の増加を防ぐことができる。このように、光電気複合ケーブル11は、小さい曲げ半径で曲げられたとしても、光ファイバ心線12に側圧がかかることを極力抑えて、良好な伝送特性を維持することができる。
【0022】
特に、光ファイバ心線12を収容した保護チューブ13が、非粘着性、自己潤滑性に優れたフッ素系樹脂から形成されていることにより、周囲に配置された電線15及び抗張力線16が保護チューブ13の外周面を滑りやすくなり、収容部14内を移動しやすくなる。これにより、光ファイバ心線12を良好に保護することができる。
【0023】
また、電線15及び抗張力線16が保護チューブ13の周囲に緩く撚られて配置されているので、光電気複合ケーブル11を曲げたときに曲げの内側と外側の線路長の差が生じにくく、光電気複合ケーブル11を折り曲げても電線15及び抗張力線16が収容部14内で保護チューブ13の周方向に円滑に移動し、保護チューブ13を押し潰すことが良好に防がれる。
【0024】
光電気複合ケーブル11の曲げがなくなると、外被20が復元して断面円形(図1に示す状態)となり、これに伴い、外被20の扁平により楕円形の長径方向へ移動していた電線15及び抗張力線16が元の位置に戻り、保護チューブ13の周囲に配置される。
【0025】
なお、上記の実施形態では、複数本(2本)の光ファイバ心線12を保護チューブ13に収容した多心タイプについて説明したが、1本の光ファイバ心線12を保護チューブ13に収容した単心タイプであっても良い。
また、電線15及び抗張力線16の本数も上記実施形態に限定されない。また、収容部14には、抗張力線16を設けずに電線15だけを配置しても良い。
【符号の説明】
【0026】
11:光電気複合ケーブル、12:光ファイバ心線(光ファイバ)、13:保護チューブ(チューブ)、15:電線、20:外被

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外被の内側に光ファイバと複数本の電線とを有する光電気複合ケーブルであって、
前記光ファイバが断面中央に配置されたチューブ内に収容され、
前記複数本の電線が、前記チューブと前記外被との間に配置されるとともに、前記チューブの周方向に移動可能であることを特徴とする光電気複合ケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の光電気複合ケーブルであって、
前記チューブの少なくとも外周面は、フッ素系樹脂から形成されていることを特徴とする光電気複合ケーブル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光電気複合ケーブルであって、
前記複数本の電線が前記チューブの周囲に撚られて配置されていることを特徴とする光電気複合ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−243318(P2011−243318A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112006(P2010−112006)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】