説明

光電管適性を有する剥離紙用原紙および剥離紙

【課題】
光電管適性を有する剥離紙において、糊残りや身上がりがなく、ラベル加工適性良好となる剥離紙を提供する。
【解決手段】
光電管適性を有する剥離紙用原紙において、LBKPを全原料パルプに対し70質量%以上配合して抄紙され、かつスーパーカレンダー処理されている原紙であって、該原紙の透気度、平滑度、地合、バリア性、密度等をコントロールし、該原紙に剥離剤樹脂0.8〜1.5g/mを塗布・硬化した際の剥離剤樹脂単体層の厚みが30〜150nmとなるように均一に浸み込ませる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離紙基材に適した光透過性を有する剥離紙用原紙および剥離紙に関するものであり、さらに詳しくは、ラベル加工適性に優れた粘着シート用の剥離紙用原紙および剥離紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、表面基材と剥離紙との間に粘着剤層を形成したものであり、近年、情報化社会の進展に伴い、商業用、事務用、家庭用などの非常に広範囲に亘って、ラベル、ステッカー、シール、ワッペン、配送伝票等として使用されている。その表面基材としては、大部分が紙を使用しており、剥離紙には、グラシン紙のような高密度原紙、クレーコート紙、ポリエチレンラミネート紙等にシリコーン化合物やフッ素化合物の如き剥離剤を塗布したものが広く使用されている。通常は、剥離性能や価格面、また、環境・安全面から無溶剤型のシリコーン樹脂が使用されている。粘着剤としては、溶剤型、エマルジョン型、ホットメルト型等が使用されているが、中でもアクリル系エマルジョン型が安全面、品質面から、通常多く使用されている。
【0003】
近年、こうした粘着シートは、特に商業用、産業用のラベルにおいて、省資源の観点から打ち抜かれたラベル周囲の不要部(以下「粕」と称す)をできるだけ細く、少なくし、しかも装飾性、生産性を増すため複雑な形に高速で打ち抜かれるようになってきている。このためラベル加工時に、粕を剥離紙から剥がす(以下「粕取り」と称す)際、粕切れを起こし易く、作業性の低下が問題となっている。一方、粕取り適性を向上させるためには、剥離力を軽くすると改善効果が期待できるが、本来剥離紙上に残すラベルも一緒に除去される(以下「身上がり」と称す)ことがあり、トラブルの一因となっている。
【0004】
これらの問題を解決するための技術として、特許文献1では、剥離力と剥離紙基材の厚み方向の弾性率を規定しており、特許文献2、3でも表面基材の強度と剥離強度を規定した技術が開示されている。また、通常、光透過性を持たせるためには、剥離紙原紙としては、グラシン紙のような針葉樹パルプを主体として、叩解を進め、さらにはカレンダー処理により高密度化した基材が使用される。一方、特許文献4〜9には、普通紙で光透過性を発現させるために、透明化樹脂を塗布して透明性を発現させ、剥離紙を低米坪化しないことで、ラベル打抜き加工性を持たせる技術が開示されている。また、剥離紙に粘着剤を塗布する工程で、剥離紙基材にピンホールや凹部があると、粘着剤が入り込んだ状態の粘着シートとなり、次に、粘着剤の付着した表面基材を剥離剤層から剥離すると剥離紙上に粘着剤が残る現象(以下「糊残り」と称す)が見られる。
【0005】
この糊残りは、粘着シートをフォーム印刷やシール印刷加工に供する過程で、印刷、ダイカット(打ち抜き)、粕取り等をする際に、剥離剤表面が当たるガイドロール等に剥離紙上に残った粘着剤が付着し、紙送り不良や印刷ずれ等のトラブルを起こし、作業性や品質面に重大な障害となる。また、オートラベラーやハンドラベラー等でプリントやラベリングを行う工程でも同様に紙送り不良や印刷ずれ等の剥離剤層表面の糊残りが問題となる。この問題を解決するため、従来から、剥離剤をより均一に塗布し、剥離紙原紙においては、剥離剤が浸み込まないようなバリア性付与が常套手段となっていた。特に、特許文献10では、金属ロールと金属ロールで通紙処理して高密度、高平滑化することで剥離剤の浸透を抑制しつつ、ラベリング適性を付与する技術が開示されている。特許文献10では、平滑度を2,000秒以上とすることが記載されているが、平滑度2,000秒以上を達成するためには、特許文献10記載のような金属ロール/金属ロールでの高圧カレンダー処理が必要となり、高密度化および高平滑化達成のための製造方法が限定される上、処理に莫大なコストがかかってしまう。さらに、特許文献11では、α−セルロース含有率が低めの広葉樹晒クラフトパルプを一部使用することで光電管適性を付与できることが開示されているが、剥離剤樹脂の塗布に関して言及したものではなく、身上がりや糊残りといったラベル加工適性の改善を意図したものではない。
【0006】
上記のような問題点を解決し、細い複雑な形に打ち抜かれた粕を高速で粕取りでき、かつ身上がり、および糊残りの発生がない作業性の良好な粘着シートを構成することができる剥離紙および剥離紙用原紙が求められているのが現状である。
【0007】
【特許文献1】特開平11−181364号公報
【特許文献2】特開平11−293596号公報
【特許文献3】特開2000−144078号公報
【特許文献4】特開2001−271295号公報
【特許文献5】特開2003−147696号公報
【特許文献6】特開2003−253600号公報
【特許文献7】特開2003−340976号公報
【特許文献8】特開2005−010513号公報
【特許文献9】特開2005−089905号公報
【特許文献10】特開2000−345497号公報
【特許文献11】特開2007−186816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、糊残りや身上がりがなく、ラベル加工適性が良好となる、粘着シート用の光透過性を有する剥離紙用原紙および剥離紙を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の発明を包含する。
(1)光電管適性を有する剥離紙用原紙において、広葉樹晒クラフトパルプを全原料パルプに対し70質量%以上配合して抄紙され、かつスーパーカレンダー処理されている原紙であって、該原紙に剥離剤樹脂0.8〜1.5g/mを塗布・硬化した際の剥離剤樹脂単体層の厚みが30〜150nmである剥離紙。
【0010】
(2)JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000に準じて測定した前記剥離紙用原紙の透気度が3,000〜30,000秒である(1)記載の剥離紙用原紙。
【0011】
(3)ISO2471に準じて測定した前記剥離紙用原紙の不透明度が50〜75%である(1)または(2)に記載の剥離紙用原紙。
【0012】
(4)前記剥離紙用原紙に剥離剤を塗布・硬化後の剥離紙の地合ムラ規格化標準偏差が0.4以下である(1)〜(3)のいずれか1項に記載の剥離紙。
【0013】
(5)JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000に準じて測定した前記剥離紙用原紙の平滑度が300〜1,500秒である(1)〜(4)のいずれか1項に記載の剥離紙用原紙。
【0014】
(6)前記剥離剤樹脂が、無溶剤型シリコーン樹脂である(1)〜(5)のいずれか1項に記載の剥離紙。
【発明の効果】
【0015】
広葉樹晒クラフトパルプ(以下LBKPと略す)を主体として、地合、平滑性、バリア剤の種類と塗布量、密度、透気度を特定の範囲にコントロールして製造した剥離紙用原紙に、シリコーン樹脂等の剥離剤樹脂を適度かつ均一に浸み込ませることで、従来の高平滑で高透気度の剥離紙原紙のように表面の剥離剤バリア性を高くせずとも、糊残りがなく、その一方で適度な剥離強度を発現させることで、身上がり、粕取り適性といったラベル加工適性が良好な剥離紙を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明者らは、粘着シートの糊残りや身上がり、粕取り適性といったラベル加工適性を改善すべく、光透過性を有する剥離紙用原紙の物性につき種々検討した結果、剥離紙用原紙の地合、平滑性、バリア剤の種類と塗布量、密度、透気度を特定の範囲にコントロールして、剥離剤であるシリコーン樹脂等を少なからず原紙に浸み込ませる方が、糊残りや身上がりに良好であることを見出した。すなわち、剥離剤樹脂を剥離紙用原紙に0.8〜1.5g/m塗布・硬化した場合、剥離剤樹脂単体層の厚みが30〜150nmであることが必要である。剥離剤樹脂単体層の厚みが小さい場合、剥離紙用原紙への浸み込みが多く、表面に剥離剤樹脂単体層として残っている剥離剤樹脂の量が少ない。厚みが大きい場合、塗布した剥離剤樹脂の多くが剥離紙用原紙の表面にあり、剥離剤樹脂単体層の塗膜を形成していることを示す。剥離剤樹脂単体層の厚みが30nm未満では、剥離剤樹脂の表面カバーリング不足となり、剥離力が重くなり過ぎて、剥離性能が発現し難くなるおそれがある。また、ラベル加工時に糊残りが発生し易いといった種々のラベル加工適性に不具合を生じてしまう。一方、剥離剤樹脂単体層の厚みが150nmを超えて大きくなると、剥離力が軽めとなり、ラベルの剥離紙への接着力が弱くなり、身上がりし易くなるおそれがある。剥離剤樹脂単体層の厚みを測定する方法としてはイオンスパッタリングによるESCAでの深さ方向分析(「表面・深さ方向の分析方法」(サイエンス&テクノロジー)の155〜163頁、2007年発行等に記載されている)を用いたが、この方法に限定するものではない。
【0017】
これらシリコーン樹脂等の剥離剤樹脂の浸み込みをコントロールする手法として、第一にはJAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000に準じて測定した剥離紙用原紙の透気度をコントロールする。すなわち、剥離紙用原紙の透気度が3,000〜30,000秒であることが好ましく、より好ましくは5,000〜20,000秒、特に好ましくは6,000〜12,000秒である。剥離紙用原紙の透気度が3,000秒未満では、剥離剤樹脂が浸み込み過ぎて、剥離性能が発現し難くなる。また、30,000秒を超えて高くなると、剥離剤樹脂の浸み込みがなくなり、剥離強度が軽くなって、身上がりが発生し易くなってしまう。第二には、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000に準じて測定した剥離紙用原紙の平滑度が300〜1,500秒であることが好ましく、より好ましくは500〜1,200秒、特に好ましくは700〜1,000秒である。平滑度が300秒未満では、剥離剤樹脂の表面厚さ方向への均一な浸み込みがしにくく、平滑度が1,500秒を超えて高くなると、剥離剤樹脂自体の浸み込みがしにくくなり、剥離強度が軽くなって、身上がりが発生し易くなってしまう。
【0018】
さらに、剥離剤樹脂単体層の厚みを均一にするためには、剥離紙用原紙の地合は良いことが望ましく、光電管適性としての光透過性を付与するために従来のように針葉樹晒クラフトパルプ(以下NBKPと略記する)を主体として高叩解するのではなく、LBKPを主体として抄紙し、カレンダー処理して高密度化する方が良い。LBKPは、NBKPに比べ、繊維が比較的細くて短く、ピンホールが少なく、均一地合を形成し易い。また、LBKPの中でも、ヘミセルロースを多く含有する方が透明性は発現し易い傾向にある。即ち、ピンホールの少ない均一地合を形成するためには、LBKPの配合量は、全原料パルプの70質量%以上であることが必要である。70質量%未満では、地合の均一性が不十分となり、ピンホールができ易くなり、剥離剤樹脂を塗布しても、ピンホールが残り糊残りの原因となる。また、地合が不均一であると、粘着シートを打抜き加工する際に、打抜き刃の刃当たりが均一にならず、ラベルがうまく切れずに身上がりを招く要因にもなる。
【0019】
NBKPを主体としたグラシン紙の場合、透気度や平滑度が高くても、元々のNBKPがLBKPに比べ繊維幅が非常に太いため、局所的にピンホールの解消が不十分となる傾向がある。本発明において使用されるその他のパルプ原料としては木材パルプに限定されず、麻やケナフなどの非木材パルプや、合成繊維を配合しても良い。地合の均一性の目安として、本発明ではAMBERTEC社製のベータ・フォーメーション・テスター(β線地合計)により、1mm×1mm単位の微小部分の坪量を測定(4900データ)し、平均坪量X、坪量の標準偏差YとしたときのY/X1/2を坪量ムラの「規格化された標準偏差」とした。なぜなら、標準偏差は坪量が上がることで、その数値も大きくなるため、標準偏差を坪量の平方根で割った値を用いるのである。
【0020】
原料パルプの叩解レベルは、グラシン紙ほどの高叩解をする必要はなく、カナディアン標準フリーネスとして200〜400csfml程度で良い。このような原料で抄紙した原原紙に、剥離剤樹脂の浸み込みをコントロールするためのバリア剤を塗布する。バリア剤は、水溶性高分子を主成分とする組成物であり、より好ましくは、ポリビニルアルコールや澱粉等が好適に使用される。水溶性高分子組成物の塗布量は、固形分で、片面当たり0.3〜1.0g/mである。0.3g/m未満では、バリア性が不十分となり、1.0g/mを超えて多くなると、透気度が高くなり、本発明での剥離剤樹脂が浸み込まず、好ましくない。
【0021】
本発明では、この剥離紙用の原原紙に10〜20%の水分を保持させた状態でカレンダー処理することにより、高密度化して透明性を発現させる。バリア剤の塗布には、カレンダー処理前の原原紙が高水分を保持している必要があることなどの操業効率の点から、オンマシンでのサイズプレスもしくはゲートロールコーターが好ましい。また、カレンダー処理としては、透明性の発現を考慮すると、密度が1.0〜1.2g/cmの範囲であることが好ましいことから、より高密度化し易いスーパーカレンダーによる高温多段加圧処理が良い。なお、本発明では、原紙の坪量が55〜75g/m程度のものを汎用的に使用するもとのとする。
【0022】
このようにして得られた剥離紙原紙の透気度は、前述の通り、3,000〜30,000秒の範囲となり、ISO2471に準じて測定した不透明度は、50〜75%の範囲となる。不透明度が75%を超えると光電管適性が不十分であり、不透明度を50%未満となるように透明性を高くしなくとも光電管適性は問題ない。本発明では、透明性発現のために、透明化樹脂を含浸・塗布することを必須の構成要件とはしておらず、高密度化することで透明性を発現させている。原紙抄造時には、原料スラリーに内添薬品として、硫酸バンドなどの定着剤や、澱粉やPAM系などの紙力増強剤、AKDやロジン系のサイズ剤、それ以外にも必要に応じ、湿潤紙力剤や染料・顔料などを適宜添加することができる。ここで、ステキヒドサイズ度(JIS P 8122:2004に準じて測定)は、5〜20秒程度あることが好ましい。
【0023】
ところで、粘着剤の多くが水性エマルジョン型であるため、剥離剤樹脂が原紙表面をコートしているとはいっても、完全バリアではないため、原紙空隙間に粘着剤が浸み込む可能性がある。原紙への粘着剤の浸み込みを抑制するため、ステキヒトサイズ度は適宜付与することが好ましい。また、粘着剤の原紙への入り込みによる糊残りを防止する点からも、均一地合でピンホールがなく、剥離剤樹脂も少なからず原紙に浸み込ませることで、糊残りの抑制効果も発現する。
【0024】
本発明では、上記のような紙質範囲にある剥離紙用原紙に、剥離剤樹脂を塗布し、硬化させる。本発明での剥離剤樹脂としては、一般的にシリコーン樹脂、フッ素樹脂、アミノアルキド樹脂、ポリエステル樹脂等が例示できるが、通常は剥離品質、価格面から水性エマルジョン型、溶剤型、または無溶剤型のシリコーン樹脂が使用される。特に、環境配慮面、作業者の安全面から水性エマルジョン型や無溶剤型への切替えが進んでおり、本発明では、無溶剤型シリコーン樹脂を使用することがより好ましい。中でも25℃における粘度が50〜1,000mPa・sである無溶剤型シリコーン樹脂がさらに好ましい。剥離剤樹脂を塗布する方法としては、バーコーター、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、多段ロールコーター等が挙げられる。
【0025】
剥離剤樹脂の塗布量は、0.8〜1.5g/m程度必要である。塗布量が0.8g/m未満では、剥離剤量が少なく剥離性能が不十分となる。また、1.5g/mを超えて多くなると、剥離力が軽くなり過ぎるおそれがあることに加えて、経済的にも好ましくない。このような塗布量範囲とした剥離剤樹脂単体層を前述の通り、ある程度浸み込ませることが重要となる。剥離剤樹脂単体層の厚みが30nm未満では、表面への剥離剤量が少なく、剥離力が重くなってしまう。また、150nmを超えると、表面の剥離剤量が多く存在することになり、剥離力が必要以上に軽くなり、身上がりが発生しやすい。また、前述したように剥離紙とした後の地合の均一性を透過光により地合ムラとして数値化した場合、その規格化標準偏差は0.4以下が好ましい。0.4を超えて大きくなると、地合ムラが徐々に大きくなり、打ち抜き加工時の刃当たりの不均一化を招き、ラベル加工適性が悪化する。また、剥離紙の厚み方向での圧縮弾性率も高くした方が、打ち抜き適性には良好な傾向もあり、その意味からも剥離紙の密度は高くした方が好ましい。
【0026】
粘着シートを製造する際、剥離紙の剥離剤層の表面に、粘着剤を塗布し、乾燥した後、表面基材と貼り合せるわけであるが、粘着剤としては、例えば、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプロピレンブロック共重合体、再生ゴム、合成ゴム等のゴム系、アクリル系、シリコーン系等の粘着剤が適宜使用される。これら粘着剤は、溶剤型、水性エマルジョン型、ホットメルト型、液状硬化型等の形態をしている。粘着剤の塗布量としては、乾燥質質量で10〜40g/mの範囲で適宜調整される。粘着剤の塗布量が、10g/m未満では粘着剤等としての効果が乏しく、40g/mを超えるとその効果が飽和し、経済的にも好ましくない。なお、粘着剤を塗布する方法としては、リバースロールコーター、リバースグラビアコーター、バリオグラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が挙げられる。
【0027】
表面基材としては、例えば、キャストコート紙、アート紙、コート紙、上質紙、感熱紙、インクジェット用紙、合成紙、蒸着紙、各種高分子フィルム等があり、その用途、目的に応じ適宜選択して使用することができる。
【実施例】
【0028】
本発明を下記の実施例によって、さらに具体的に説明する。実施例、比較例中の部、%は、特に断らない限り質量部、質量%を示し、塗布量、部数、混合割合等はすべて固形分で示した。
【0029】
(実施例1)
(1)表面基材
表面基材として、坪量78g/mの感熱紙(商品名:「LCB575」、王子製紙製)を用いた。
【0030】
(2)剥離紙用原紙
LBKP100%で叩解フリーネス300mlcsfとしたパルプスラリーに、硫酸バンド0.5%、PAM系紙力剤0.5%(荒川化学工業社製「ポリストロン117」)、AKDサイズ剤0.5%(荒川化学工業社製「サイズパインK−903−20」)を加えて紙料とした。
この紙料を長網多筒ドライヤー型抄紙機により抄造し、オンマシンゲートロールコーターにてポリビニルアルコール系樹脂(第一工業化学社製「A−300」)を片面あたり約1g/mとなるように両面塗布し、剥離紙用原原紙を得た。ついで、この原原紙をスーパーカレンダー処理し、高密度化することで、本発明の光透過性を有する剥離紙用原紙を作成した。得られた剥離紙用原紙の調湿坪量は、64g/mである。
【0031】
(3)粘着シート
上記剥離紙用原紙に3本オフセットグラビアコーターで、無溶剤型シリコーン樹脂(東レ・ダウコーング・シリコーン社製「LTC−1056L」)(25℃における粘度:250mPa・s)を架橋反応に必要な触媒と混合した後、1g/m塗布・硬化し、剥離紙を得た。
次いで、この剥離紙のシリコーン塗布面に粘着剤(日本カーバイド工業社製「ニカゾールL−501」)を固形分として20g/mとなるように塗布し、上記表面基材と貼り合せて粘着シートを得た。
【0032】
(実施例2)
剥離紙用原原紙へのポリビニルアルコール系樹脂の塗布量を0.5g/mとした以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0033】
(実施例3)
剥離紙用原紙の叩解フリーネスを200mlcsfとした以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0034】
(実施例4)
剥離紙用原紙の原料パルプをLBKP70%、NBKP30%とし、混合叩解によるフリーネスを300mlcsfとした以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0035】
(実施例5)
実施例3の剥離紙用原紙の抄紙において、抄速をアップしたため、若干地合が悪化した。それ以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0036】
(実施例6)
剥離紙用原紙へのシリコーン樹脂塗布において、バーコーターにて、溶剤型シリコーン(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製「SRX−345」)を1g/m塗工した以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0037】
(比較例1)
剥離紙用原紙の叩解フリーネスを450mlcsfとした以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0038】
(比較例2)
剥離離用原紙の原料パルプをLBKP60%、NBKP40%とし、混合叩解フリーネスを450mlとした以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0039】
(比較例3)
剥離紙用原紙の原料パルプをLBKP20%、NBKP80%とし、混合叩解フリーネスを200mlcsfとした以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0040】
上記剥離紙用原紙の透気度およびステキヒトサイズ度、および粘着シートのラベル加工適性(身上がり、糊残り)は、下記の方法にて測定した。
【0041】
<剥離紙用原紙>
・坪量:JIS P 8124:1998に準じて測定した。
・厚さ:JIS P 8118:1998に準じて測定した。
・密度:JIS P 8118:1998に準じて測定した。
・透気度:JAPAN TAPPI No.5−2:2000に準じて測定した。
・平滑度:JAPAN TAPPI No.5−2:2000に準じて測定した。
・ステキヒトサイズ度:JIS P 8122:2004に準じて測定した。
・不透明度:ISO2471に準じて測定した。
【0042】
<剥離紙>
・剥離剤樹脂単体層の厚さ:X線光電子分光分析法により深さ方向にて、剥離剤樹脂の構成原子の存在量を測定。
・地合:ベータ・フォーメーション・テスター(Ambertec社製)にて、剥離紙の地合ムラを測定し、規格化標準偏差として算出した。
地合測定面積:8cm角、地合測定ピッチ1mm
【0043】
<粘着シート>
・身上がり適性
粘着シート220mm巾のロールを凸版輪転印刷機SKP−250A(三起社製)にて、速度20m/minで粕取りし、身上がりの有無を評価した。
○…身上がり発生せず
△…わずかに身上がり発生
×…身上がり発生
【0044】
・糊残り評価
上記身上がり適性評価工程で、ロールに付着した糊量によって評価した。
○…糊残りが目立たない
△…糊残りが多少ある
×…糊残りがかなり目立つ
【0045】
・光電管適性
粘着ラベルをオートラベラーでの紙送り検出機にかけ、光電管が光を通して、検出可能かを確認した。
○…光電管での検出が可能である。
×…光電管での検出が不可能である。
【0046】
・剥離性能
粘着ラベルをオートラベラーにかけ、ラベルを剥がす際の剥離性能を評価した。
○…剥離性能に問題なし
△…剥離性能はやや劣るものの、使用には問題なし。
×…剥離性能に問題あり
【0047】
・総合評価
身上がり、糊残り、光電管適性等のラベル加工適性を総合的に評価した。
◎…加工適性は非常に良好である。
○…加工適性は良好である。
△…加工適性はやや劣るものの問題ない。
×…加工適性に問題あり。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
表1、および表2から明らかなように、LBKPを主体として地合、平滑性、バリア剤の種類と塗工量、密度、透気度を特定の範囲内にコントロールした実施例1〜6は、特定の範囲の剥離剤樹脂の浸み込み度合いであり、身上がり、糊残り、光電管適性とも問題ない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
剥離紙用原紙に使用するパルプの70質量%以上がLBKPであり、剥離紙用原紙に剥離剤樹脂を少なからず浸み込ませて、該原紙に剥離剤樹脂0.8〜1.5g/mを塗布・硬化した際の剥離剤樹脂単体層の厚みを30〜150nmとすることにより、糊残りや身上がりがなく、光電管適性も問題ない、ラベル加工適性に優れた剥離紙を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電管適性を有する剥離紙用原紙において、広葉樹晒クラフトパルプを全原料パルプに対し70質量%以上配合して抄紙され、かつスーパーカレンダー処理されている原紙であって、該原紙に剥離剤樹脂0.8〜1.5g/mを塗布・硬化した際の剥離剤樹脂単体層の厚みが30〜150nmであることを特徴とする剥離紙。
【請求項2】
JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000に準じて測定した前記剥離紙用原紙の透気度が3,000〜30,000秒であることを特徴とする請求項1に記載の剥離紙用原紙。
【請求項3】
ISO2471に準じて測定した前記剥離紙用原紙の不透明度が50〜75%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の剥離紙用原紙。
【請求項4】
前記剥離紙用原紙に剥離剤を塗布・硬化後の剥離紙の地合ムラ規格化標準偏差が0.4以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の剥離紙。
【請求項5】
JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000に準じて測定した前記剥離紙用原紙の平滑度が300〜1,500秒であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の剥離紙用原紙。
【請求項6】
前記剥離剤樹脂が、無溶剤型シリコーン樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の剥離紙。

【公開番号】特開2009−203561(P2009−203561A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44445(P2008−44445)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】