説明

光CDM送信回路および光CDM伝送システム

【課題】光CDM方式においてビート雑音の発生を無くし、信号多重数がビート雑音により制限されない光CDM送信回路および光CDM伝送システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る光CDM送信回路は、2種の符号要素で構成される固有符号がそれぞれに付与されており、M個の入力電気信号のうちの対応する1個がそれぞれに入力されるM個の拡散符号器、及び前記拡散符号器に付与した前記固有符号のうち最長の符号長であるN以上の個数の加算器を有し、前記入力電気信号からN個の前記多値電気信号を生成する電気符号化手段と、光周波数が互いに異なる1番目からN番目の光搬送波を前記電気符号化手段が生成する1番目からN番目の前記多値電気信号でそれぞれ強度変調して多値光信号を生成するN個の光変調器と、前記光変調器が生成したそれぞれの前記多値光信号を合波して多波長光信号を出力する光周波数合波手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固有符号に応じて符号化された光符号分割多重(CDM:Code Division Multiplexing)信号を多重伝送する光CDM送信回路および光CDM伝送システムの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
光CDM方式は、固有符号に応じて符号化された光CDM信号を多重伝送する方式である。各送受信回路には、固有符号が割り当てられる。各送信回路は、割り当てられた固有符号に対応する符号器により符号化した光CDM信号を出力する。符号化は、光周波数領域、時間領域のいずれかの領域、または両領域を用いて行われる。受信側では、多重された光CDM信号から、受信回路と同じ固有符号を割り当てられた送信回路が出力する光CDM信号のみを、選択的に受信する。
【0003】
光周波数領域において強度符号化を行う方式では、広帯域光の各光周波数成分に、送信回路に割り当てられた固有符号を構成する符号要素{1},{0}を割り当てた時に、符号要素{1}に対応する成分が同一の信号を搬送する光CDM信号を送受信する。受信回路は、受信回路に割り当てられた固有符号を構成する符号要素{1},{0}を受信回路に入力された光CDM信号の各光周波数成分に割り当てた時に、符号要素{1}に対応する光周波数成分と、{0}に対応する光周波数成分とに分離して出力する光領域での復号を行った後に、分離した各成分をそれぞれ直接検波した差を出力する(例えば、非特許文献1を参照。)。
【0004】
固有符号として、アダマール符号やビットシフトしたM系列符号を用いることにより、多元接続干渉(MAI:MultipleAccess Interference)を除去することが可能である。また、図1のように、受信回路において、光周波数成分ごとに分離した光CDM信号の各光周波数成分をそれぞれ直接検波し、符号要素{1}に対応する光周波数成分を検波した光検波手段の出力を正、それ以外の光周波数成分を検波した光検波手段の出力を負として加える加減算により、電気領域で復号を行う構成も可能である。
【非特許文献1】D.Zaccarin,et al.,“An optical CDMA system based on spectral encoding of LED,”IEEE Photon. Technol.Lett.,vol.4,N0.4,pp.479−482,1993
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の光周波数領域において強度符号化を行う方式では、光CDM信号の多重の際に光電界が加算されるため、複数の信号が受信回路に同時に入力された際に検波時にビート雑音が発生する。ここで、複数の光CDM信号間で光周波数が同一である成分を有するため、直接検波によって得られる所望信号とビート雑音とは、ともにベースバンド成分であり、フィルタで分離することができない。従って、ビート雑音の影響により、信号多重数が制限されるという課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、光CDM方式においてビート雑音の発生を無くし、信号多重数がビート雑音により制限されない光CDM送信回路および光CDM伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明に係る光CDM送信回路は、電気符号化手段からの信号により光周波数成分をそれぞれ多値強度変調することにより、光周波数領域で強度符号化された多波長光信号を一括して生成することとした。
【0008】
具体的には、本発明に係る光CDM送信回路は、2種の符号要素で構成される固有符号がそれぞれに付与されており、M個(Mは2以上の整数)の入力電気信号のうちの対応する1個がそれぞれ入力されるM個の拡散符号器、及び前記拡散符号器に付与した前記固有符号のうち最長の符号長であるN(Nは2以上の整数)以上の個数の加算器を有し、前記入力電気信号からN個の多値電気信号を生成する電気符号化手段と、光周波数が互いに異なる1番目からN番目の光搬送波を前記電気符号化手段が生成する1番目からN番目の前記多値電気信号でそれぞれ強度変調して多値光信号を生成するN個の光変調器と、前記光変調器が生成したそれぞれの前記多値光信号を合波して多波長光信号を出力する光周波数合波手段と、を備える。前記拡散符号器は、N個の出力端を持ち、付与された前記固有符号を構成する前記符号要素を1番目の出力端からN番目の出力端へ順に割り当てた際に、前記固有符号を構成する2種の前記符号要素のうちの一方が割り当てられた出力端から前記入力電気信号の値を出力し、他の前記出力端から0を出力し、前記加算器は、各々の前記拡散符号器の出力端のうち、同一番目の符号要素を割り当てられた全ての出力端からの出力同士を加算して前記多値電気信号を生成する。
【0009】
電気符号化手段からの多値信号により光周波数成分をそれぞれ多値変調することにより、光周波数領域で強度符号化された多波長光信号が一括して生成される。つまり、各光周波数成分に着目した場合、光CDM信号の多重の際に、従来方式では光電界が加算されているのに対し、本発明では光強度が加算されているため、光CDM受信回路における検波時にビート雑音が発生しない。従って、本発明は、光CDM方式においてビート雑音の発生を無くし、信号多重数がビート雑音により制限されない光CDM送信回路を提供することができる。
【0010】
本発明に係る光CDM送信回路は、入力された直列電気信号からM個の前記入力電気信号を生成して前記電気符号化手段の前記拡散符号器のそれぞれへ結合する直並列変換手段をさらに備えてもよい。同期転送モード(STM:Synchronous Transfer Mode)などの回線交換をベースとした伝送システムヘの適用が可能である。
【0011】
本発明に係る光CDM送信回路の前記拡散符号器に付与される全ての前記固有符号は、符号長が同一でもよいし、それぞれ符号長が異なっていてもよい。
【0012】
具体的には、本発明に係る光CDM伝送システムは、前記光CDM送信回路と、前記光CDM送信回路の前記光周波数合波手段が出力する多波長光信号がそれぞれ入力される複数の光CDM受信回路と、を備える。前記光CDM受信回路は、前記多波長光信号を1番目からN番目までの前記光搬送波ごとに分離する光周波数分波手段と、前記光周波数分波手段からの出力をそれぞれ検波する1番目からN番目までのN個の光検波手段と、前記拡散符号器に付与された前記固有符号のひとつが付与され、付与された前記固有符号を構成する前記符号要素を前記多波長光信号の各光周波数成分へ順に割り当てた際に、前記固有符号を構成する2種の前記符号要素のうちの一方が割り当てられた光周波数成分を検波した前記光検波手段の出力を正、他方の前記符号要素が割り当てられた光周波数成分を検波した前記光検波手段の出力を負として加える加減算を行う電気復号化手段と、を有する。
【0013】
電気符号化手段からの多値信号により光周波数成分をそれぞれ多値変調することにより、光周波数領域で強度符号化された多波長光信号が一括して生成される。つまり、各光周波数成分に着目した場合、従来方式では光電界が加算されているのに対し、本発明では光強度が加算されているため、光CDM受信回路における検波時にビート雑音が発生しない。従って、本発明は、光CDM方式においてビート雑音の発生を無くし、信号多重数がビート雑音により制限されない光CDM伝送システムを提供することができる。
【0014】
本発明に係る光CDM伝送システムの他の形態は、光CDM送信回路と、前記光CDM送信回路の前記光周波数合波手段が出力する多波長光信号がそれぞれ入力される少なくとも1個の光CDM受信回路と、を備える。前記光CDM受信回路は、前記多波長光信号を1番目からN番目までの前記光搬送波ごとに分離する光周波数分波手段と、前記光周波数分波手段からの出力をそれぞれ検波する1番目からN番目までのN個の光検波手段と、前記拡散符号器に付与された前記固有符号のひとつが付与され、付与された前記固有符号を構成する前記符号要素を前記多波長光信号の各光周波数成分へ順に割り当てた際に、前記固有符号を構成する2種の前記符号要素のうちの一方が割り当てられた光周波数成分を検波した前記光検波手段の出力を正、他方の前記符号要素が割り当てられた光周波数成分を検波した前記光検波手段の出力を負として加える加減算を行う複数の電気復号化手段と、を有する。
【0015】
本発明に係る光CDM伝送システムの他の形態は、光CDM送信回路と、前記光CDM送信回路の前記光周波数合波手段が出力する多波長光信号がそれぞれ入力される複数の光CDM受信回路と、を備える。前記光CDM受信回路は、前記拡散符号器に付与された前記固有符号のひとつが付与されており、付与された前記固有符号を構成する前記符号要素を前記多波長光信号の各光周波数成分へ順に割り当てた際に、前記固有符号を構成する2種の前記符号要素のうちの一方が割り当てられた光周波数成分と他方の前記符号要素が割り当てられた光周波数成分との2つのグループに分離して出力する光復号化手段と、前記光復号化手段の各出力をそれぞれ検波した差のベースバンド成分を出力する差動検波手段と、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、光CDM方式においてビート雑音の発生を無くし、信号多重数がビート雑音により制限されない光CDM送信回路および光CDM伝送システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0018】
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態の光CDM伝送システム301の構成を説明するブロック図である。光CDM伝送システム301は、光CDM送信回路11と、M個の光CDM受信回路12−1〜光CDM受信回路12−Mとが、光ファイバ伝送路13で接続されている。
【0019】
本実施形態の光CDM送信回路は、2種の符号要素で構成される固有符号がそれぞれに付与されており、M個(Mは2以上の整数)の入力電気信号D(mは1以上M以下の整数)のうちの対応する1個がそれぞれに入力されるM個の拡散符号器71−m、及び拡散符号器71−mに付与した固有符号のうち符号長が最長であるN個(Nは2以上の整数)の加算器72−n(nは1以上N以下の整数)を有し、M個の入力電気信号DからN個の多値電気信号Dを生成する電気符号化手段111と、光周波数が互いに異なる1番目からN番目の光搬送波Lを電気符号化手段111が生成する1番目からN番目の多値電気信号Dでそれぞれ強度変調して多値光信号Sを生成するN個の光変調器113−nと、光変調器113−nが生成したそれぞれの多値光信号Sを合波して多波長光信号Scを出力する光周波数合波手段114と、を備える。
【0020】
拡散符号器71−mは、N個の出力端61−m,nを持ち、拡散符号器に付与された固有符号を構成する符号要素を1番目の出力端61−m,1からN番目の出力端61−m,Nへ順に割り当てた際に、固有符号を構成する2種の符号要素のうちの一方が割り当てられた出力端61−m,nから入力電気信号Dの値を出力し、他の出力端61−m,nから0を出力する。加算器72−nは、各拡散符号器71−mのN個の出力端61−m,nのうち、同一番目の符号要素を割り当てられた全ての出力端61−m,nからの出力同士を加算して多値電気信号Dを生成する。なお、本実施形態は、各拡散符号器71−mに付与される全ての固有符号の符号長が同一であるとする。
【0021】
各々の光変調器113−nは、光源112−nから光周波数fの光搬送波Lが入力され、入力された光搬送波Lを電気符号化手段111が生成する多値電気信号Dにより変調して出力する。このとき、各光源112−nから出力される光搬送波Lnの光周波数fは互いに異なる。各光変調器113−nの出力光は、光周波数合波手段114により合波され、光ファイバ伝送路13を介して、各光CDM受信回路12−mへ伝送される。光周波数合波手段114は、アレイ導波路回折格子(AWG:Arrayed Waveguide Grating)や多層膜フィルタ等や、光ファイバやPLC(Planar Lightwave Circuit)により作成される光カプラがこれにあたる。図2では、出力光の光周波数が異なる各光源112−nの出力を、光変調器113−nへそれぞれ入力する構成としたが、多波長光源の出力を光周波数成分ごとに分離して各光変調器113−nへ入力することも可能である。例えば、単一モード光の出力を高周波信号で変調して多波長化する構成、モード同期レーザ等を多波長光源として用いることが可能である。また、スーパールミネッセントダイオード(SLD:Super Luminescent Diode)、半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)、光ファイバ増幅器などが出力する広帯域な自然放出光(ASE:Amplified Spontaneous Emission)を、光周波数成分ごとに切り出す構成も可能である。
【0022】
電気符号化手段111は、符号長がNである固有符号を割り当てられたM個の拡散符号器71−mと、N個の加算器72−nを備え、入力されたM個の入力電気信号DからN個の多値電気信号Dを生成する。固有符号としては、光周波数領域において符号化を行う光CDM方式において用いられるアダマール符号等を用いる。拡散符号器71−mは、N個の出力端61−m,nを有し、拡散符号器71−mに割り当てられた固有符号を構成する各符号要素{1},{0}が各出力端61−m,nに順に割り当てられる。符号要素{1}を割り当てられた各出力端61−m,nは、拡散符号器71−mへの入力電気信号Dのシンボル値D(t)を出力する。一方、符号要素{0}を割り当てられた出力端61−m,nは、0を出力する。つまり、固有符号mのn番目の符号要素cm,nが割り当てられた拡散符号器71−mの出力端61−m,nの出力は、符号要素cm,nの値と拡散符号器71−mへの入力電気信号のDのシンボル値D(t)との積cm,n・D(t)で表せる。なお、上記とは逆に、符号要素{0}を割り当てられた各出力端61−m,nが拡散符号器71−mへの入力電気信号Dのシンボル値D(t)を出力し、符号要素{1}を割り当てられた出力端61−m,nが0を出力する場合でも同様である。以下、このような場合を「逆割り当ての場合」と記載する。
【0023】
加算器72−nは、各拡散符号器71−mの出力端61−m,nのうち、同一番目の符号要素を割り当てられたすべての出力端61−m,nの出力を加算し、多値電気信号Dを生成する。加算器72−nが、各拡散符号器71−mのn番目の出力端61−m,nの出力を加算した多値電気信号Dのシンボル値D(t)は、式(1)で表される。
【数1】

【0024】
電気符号化手段111の構成例を図3に示す。図3は、M=3,N=4の場合であり、電気符号化手段111は、3個の拡散符号器71−1〜拡散符号器71−3と4個の加算器72−1〜加算器72−4により構成されている。また、固有符号の符号長は4である。
【0025】
拡散符号器71−mはN=4個のスイッチ(SW)を備える。入力電気信号Dは分岐され、各スイッチSWを介して出力端61−m,nより出力される。ここで、符号要素{1}を割り当てられた出力端61−m,nに接続するスイッチSWのみをONとすることにより、各符号要素の値と拡散符号器71−mへの入力電気信号Dのシンボル値D(t)との積を出力端61−m,nより出力することが可能となる。例えば、固有符号{1,1,0,0}が割り当てられた拡散符号器71−1の出力端61−m,1〜出力端61−m,4の出力は、D(t)=1の場合、順に1,1,0,0となり、D(t)=0の場合はすべて0となる。
【0026】
加算器72−1は、拡散符号器71−1の出力端61−1,1、拡散符号器71−2の出力端61−2,1、拡散符号器71−3の出力端61−3,1の出力を加算し、多値電気信号Dのシンボル値D(t)=c1,1・D(t)+c2,1・D(t)+c3,1・D(t)を生成する。同様に、加算器72−2〜加算器72−4で、多値電気信号D〜多値電気信号Dが生成される。表1は、加算器72−1〜加算器72−3に与えられる固有符号が順に{1,1,0,0},{1,0,1,0},{0,1,1,0}である場合、入力電気信号D〜入力電気信号Dのシンボル値の組み合わせに対する多値電気信号のDシンボル値D(t)〜多値電気信号Dのシンボル値D(t)を示す。{0},{1}の2値より構成される入力電気信号Dから、{0},{1},{2}の3値より構成される多値電気信号Dが生成される。
【表1】

【0027】
例えば、固有符号として、符号長Nのアダマール符号を用いた場合は、多値電気信号Dのシンボル値D(t)の最大値はN/2となり、{0},{1},{2},・・・,{N/2}のN/2+1値より構成される多値電気信号Dが生成される。図3では、入力電気信号D〜入力電気信号D間でビット同期しているが、非同期であってもよい。なお、入力電気信号D〜入力電気信号Dの信号速度は、異なっていてもよい。また、拡散符号器71−mと加算器72−nの代わりに、表1の様な加算結果を予め記憶させたメモリとD/Aコンバータを用いることもできる。
【0028】
光変調器113−nは、入力された光搬送波Lを、電気符号化手段111が生成した多値電気信号Dにより多値強度変調して多値光信号Sを出力する。図2では、光変調器113−nが、光周波数fの光搬送波Lを、多値電気信号Dで変調するとした。多値強度変調は、図4のような透過特性を有するLiNbO(LN)強度変調器へのバイアス電圧(V)を透過曲線の最大点と最小値の中間点に設定し、最大電圧値と最小電圧値の中間値が0Vとなるように調整した多値電気信号で変調することにより実現できる。
【0029】
以下、固有符号としてアダマール符号を用いた場合を例に、多値強度変調について説明する。多値電気信号Dの電圧値v(t)は、多値電気信号の最大電圧値と最小電圧値との差を2・Δvとすると、シンボル値D(t)の最大値はN/2、最大電圧値と最小電圧値の中間値は0Vであるため、
【数2】

と表せる。よって、LN強度変調器への印加電圧V(t)は、バイアス電圧(V)を中心にして、
【数3】

となる。ここで、LN強度変調器への印加電圧V−Δv<V<V+Δvにおける透過曲線T(V)が、式(4)で線形近似できるとする。
【数4】

=T(V−Δv)は印加電圧V=V−Δvにおける透過率、ΔTは近似直線の傾きである。時刻tにおける透過率は、式(3)式(4)より、
【数5】

となる。よって、光変調器113−nへ入力される光周波数fである光搬送波Lの光強度をP、光位相をθとすると、多値光信号Sは、
【数6】

と表せるため、各光変調器113−nの出力を光周波数合波手段114で合波した光CDM送信回路11の出力は、式(7)で表される光周波数領域で強度符号化した多波長光信号Scとなる。
【数7】

なお、Sc(t)は多波長光信号Scのシンボル値である。
【0030】
光CDM受信回路12−mは、光周波数分波手段121、N個以上の光検波手段122−n、符号長がNである固有符号を割り当てられた電気復号化手段123を備える。光CDM受信回路12−mへ入力された多波長光信号Scは、光周波数分波手段121により光周波数成分ごとに分離される。光周波数分波手段121の各々の出力端は、各光検波手段122−nと接続され、光周波数成分ごとに分離された各成分は光検波手段122−nによりそれぞれ検波される。図2では、光検波手段122−nが、光周波数がfである成分を検波するとした。光検波手段122−nでは、直接検波、ホモダイン検波、ヘテロダイン検波のいずれかを行う。
【0031】
電気復号化手段123は、各光検波手段122−nの出力のうち、電気復号化手段123へ割り当てられた固有符号を構成する各要素{1},{0}を、多波長光信号Scの各光周波数成分に割り当てた時に、{1}に対応する成分を検波した光検波手段122−nの出力Qを正、{0}に対応する成分を検波した光検波手段122−nの出力Qを負として加える加減算を行う。なお、逆割り当ての場合、電気復号化手段123は、{0}に対応する成分を検波した光検波手段122−nの出力Qを正、{1}に対応する成分を検波した光検波手段122−nの出力Qを負として加える加減算を行う。
【0032】
この加減算により、固有符号h(hはM以下の整数)を割り当てられた光CDM受信回路12−hは、光CDM送信回路11において固有符号hを割り当てられた拡散符号器71−hに入力された入力電気信号Dを選択的に受信することが可能となる。
【0033】
以下、式(7)で表される多波長光信号Scが光CDM受信回路12−mへ入力され、各光検波手段122−nが直接検波を行うとすると、光検波手段122−nの出力Q(t)は、
【数8】

となる。式(8)より分かるように、光検波手段122−nの出力Q(t)には、従来の光周波数領域における強度符号化を用いた光CDM方式において生じるビート雑音が発生しない。
【0034】
この時、固有符号hを割り当てられた電気復号化手段123の出力信号R(t)は、
【数9】

と表せる。アダマール符号は、式(10)式(11)の関係を満たすため、
【数10】

【数11】

(t)は、
【数12】

となる。以上より、光CDM伝送システム301では、光検波手段122−nの出力Q(t)にビート雑音が発生しないため、従来の光周波数領域における強度符号化を用いた光CDM方式において課題であったビート雑音の影響を受けることなく所望の信号を受信できる。
【0035】
図2の光CDM伝送システム301では、1個の電気符号化手段123を有する各光CDM受信回路12−mを備えていた。光CDM伝送システム301は、光CDM受信回路12−mの代替として、図5のように複数の電気復号化手段223−mを有する光CDM受信回路22−mを備えてもよい。
【0036】
各電気復号化手段223−mはそれぞれ拡散符号器71−mに割り当てられた固有符号が割り当てられている。光検波手段122−nの出力Qは分岐され、各電気復号化手段223−mへ入力される。各電気復号化手段223−mは、拡散符号器71−mへ入力された入力電気信号Dを出力信号Rとして出力する。なお、固有符号が割り当てられない電気符号化手段223−mは0を出力するものとする。
【0037】
各光CDM受信回路22−mが所望する情報量の大小に応じて、各光CDM受信回路22−m内の電気復号化手段223−mへの固有符号の割り当てを動的に変化させることにより、伝送効率を向上させることが可能となる。つまり、大きな情報量を所望する光CDM受信回路22−m内の複数の電気復号化手段223−mへ固有符号を割り当てることにより、複数の信号を同時に受信し、一定時間に受信できる情報量を増大することが可能となる。
【0038】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、図2の光CDM伝送システム301が備える光CDM送信回路11の代替として、直並列変換手段115が配置された光CDM送信回路21を備える光CDM伝送システムである。図6は、光CDM送信回路21の構成例である。直並列変換手段115は、光CDM送信回路21へ入力される直列電気信号DcからM個の入力電気信号Dを生成し、生成された各入力電気信号は電気符号化手段111内の拡散符号器71−mへそれぞれ入力される。光CDM送信回路21は、第1の実施形態で説明した光CDM送信回路11と同様に多波長光信号Scを出力する。
【0039】
第2の実施形態の光CDM伝送システムは、同期転送モード(STM)などの回線交換をベースとした伝送システムヘの適用が可能である。例えば、図7に示すように、直並列変換手段115へは、入力電気信号D〜入力電気信号Dのシンボル値D(t)〜シンボル値D(t)を、フレーム内のタイムスロットに順に固定割付したSTMフレームである直列電気信号Dcが入力されるとする。直並列変換手段115では、STMフレームの各タイムスロットの値が、順に各出力端に割り当てられ、シンボル値D(t)〜シンボル値D(t)が生成され、入力電気信号D〜入力電気信号Dが出力される。
【0040】
第1の実施形態の説明と同様に、各光CDM受信回路12−hの電気符号化手段123は、固有符号hが割り当てられており、同じ固有符号hが割り当てられた拡散符号器71−hに入力された入力電気信号Dを出力信号Rとして出力する。
【0041】
従って、第1の実施形態で説明したように、第2の実施形態の光CDM伝送システムも、光検波手段122−nの出力Q(t)にビート雑音が発生しないため、従来の光周波数領域における強度符号化を用いた光CDM方式において課題であったビート雑音の影響を受けることなく所望の信号を受信できる。
【0042】
また、光CDM送信回路21において、固有符号を割り当てられない拡散符号器71−mの出力を0とすると、拡散符号器71−mへ割り当てる符号を動的に変化させることにより、光CDM送信回路21が送信する情報量を変化させることも可能である。
【0043】
さらに、第2の実施形態は、パケット交換をベースとした伝送システムヘの適用も可能である。例えば、スイッチSW181とバッファ182−mにより構成される図8に示すような直並列変換手段115へ、各光CDM受信回路12−mが所望するパケットP〜パケットPがランダムに含まれる直列電気信号Dcが入力されるとする。スイッチSW181が入力されたパケットPのヘッダー情報等を読み込むことにより各バッファ182−mに割り当てられる。同一の光CDM受信回路12−mを宛先とするパケットごとに分離された各パケット列の入力電気信号Dが生成される。
【0044】
光CDM受信回路12−mは、電気復号化手段123に割り当てられた固有符号と同じ符号を割り当てられた拡散符号器71−mに入力された所望のパケット列を選択的に受信する。この伝送システムにおいては、同一の光CDM受信回路12−mを宛先とするパケットごとに分離されたパケット列が送受信されるので、特定の光CDM受信回路12−mを宛先とするパケット列が時間軸を占有する。よって、異なる受信回路を宛先とするパケット間で時間軸を共有する従来の伝送方式と比べて、高速・大容量化が図れる。
【0045】
(第3の実施形態)
第1〜2の実施形態の光CDM伝送システムでは、拡散符号器および電気復号手段へ割り当てられるすべての固有符号の符号長を同一としたが、第3の実施形態は、符号長が異なる固有符号が混在する光CDM伝送システムである。第3の実施形態は、図2の光CDM伝送システム301が備える光CDM受信回路12−mの代替として光CDM受信回路32−mを備える光CDM伝送システムである。
【0046】
例えば、光周波数領域において符号化を行う光CDM方式において用いられるアダマール符号を用いるとすると、式(13)〜式(16)を満たす符号長がN/2である固有符号1〜Kと符号長がNである固有符号K+1〜Mとを混在させることが可能である。
【数13】

【数14】

【数15】

【数16】

ここで、cm,nは固有符号mのn番目の符号要素である。
【0047】
本実施形態の光CDM送信回路11の動作について図2及び図3を用いて説明する。電気符号化手段111内の拡散符号器71−mのそれぞれには、固有符号が割り当てられる。拡散符号器71−mは、割り当てられた固有符号のうち符号長が最長である固有符号の符号長Nと等しい個数の出力端61−m,nを有し、拡散符号器71−mに割り当てられた固有符号を構成する各符号要素{1},{0}が各出力端61−m,nに順に割り当てられる。符号要素{1}を割り当てられた各出力端61−m,nは、拡散符号器71−mへの入力電気信号Dの値を出力する。一方、それ以外の出力端61−m,nは0を出力する。逆割り当ての場合は、符号要素{0}を割り当てられた各出力端61−m,nは、拡散符号器71−mへの入力電気信号Dの値を出力する。一方、それ以外の出力端61−m,nは0を出力する。
【0048】
加算器72−nは、各拡散符号器71−mの出力端61−m,nのうち、同一番目の符号要素を割り当てられたすべての出力端61−m,nの出力を加算し、多値電気信号Dを生成する。
【0049】
以下、固有符号としてアダマール符号を用い、拡散符号器71−1〜拡散符号器71−Kに符号長がN/2である固有符号1〜Kが割り当てられ、拡散符号器71−K+1〜拡散符号器71−Mに符号長がNである固有符号K+1〜Mが割り当てられるとする。各固有符号は、式(13)〜式(16)を満たすとする。加算器72−nが各拡散符号器71−mのn番目の出力端61−m,nの出力を加算して生成される多値電気信号Dのシンボル値D(t)は、
【数17】

【数18】

と表される。D(t)は固有符号mが割り当てられた拡散符号器71−mへの入力電気信号Dのシンボル値である。
【0050】
図9は、光CDM受信回路32−mの構成例である。光CDM受信回路32−mは、光周波数分波手段121、光検波手段122−n、スイッチSW191−n及び電気復号化手段123を有する。光CDM受信回路32−mは、電気復号化手段123に割り当てられた固有符号を構成する各要素{1},{0}を、多波長光信号Scの各光周波数成分に割り当てた時に、{1}に対応する成分を検波した光検波手段122−nの出力を正、{0}に対応する成分を検波した光検波手段122−nの出力を負として加える加減算を行う。逆割り当ての場合は、{0}に対応する成分を検波した光検波手段122−nの出力を正、{1}に対応する成分を検波した光検波手段122−nの出力を負として加える加減算を行う。
【0051】
多波長光信号Scに含まれる光周波数f〜fの各成分は光周波数分波手段121により分離され、光検波手段122−nでそれぞれ検波される。各光検波手段122−nの出力はスイッチSW191−nを介して、電気復号化手段123へ入力される。各スイッチSW191−nは、電気的復号化手段123に割り当てられた固有符号を構成する各要素{1},{0}が順に割り当てられている。符号要素が割り当てられたスイッチSW191−nのみがONとなる。電気復号化手段123における加減算により、光CDM受信回路32−mは、電気復号化手段123に割り当てられた固有符号と同じ符号を割り当てられた拡散符号器71−mに入力された入力電気信号Dを選択的に受信することが可能となる。図9では、各光検波手段122−nの出力端を電気的なスイッチSW191−nと接続する構成としたが、各光検波手段122−nの入力端の前に光学的なスイッチSW191−nを配置する構成も可能である。
【0052】
以下、第1の実施形態で説明した式(7)のD(t)が式(17),式(18)で表せる光周波数領域で強度符号化された多波長光信号Scが各光CDM受信回路32−mへ入力され、各光検波手段122−nは直接検波を行うとする。各光検波器122−nの出力Qは、式(8)で表され、従来の光周波数領域における強度符号化を用いた光CDM方式において生じるビート雑音が発生しない。
【0053】
符号長がNである固有符号h(K+1≦h≦M)を割り当てられた電気復号化手段123を備える光CDM受信回路32−hでは、多波長光信号Scのすべての光周波数成分に符号要素が割り当てられるため、すべてのスイッチSW191−nがONとなり、電気符号化手段123の出力R’は、式(13)〜式(16)を用いて展開して、
【数19】

となり、所望の入力電気信号Dを受信できる。
【0054】
一方、符号長がN/2である固有符号h’(1≦h’≦K)を割り当てられた電気復号化手段123を備える光CDM受信回路32−h’では、多波長光信号の光周波数成分のうち、符号要素が割り当てられない光周波数fN/2+1〜fの成分を検波する光検波器122−nの出力が入力されるスイッチSW191−N/2+1〜スイッチSW191−NがOFFとなるので、電気符号化手段123の出力R’h’は、式(13)〜式(16)を用いて展開して、
【数20】

となり、所望の信号Dh’を受信できる。
【0055】
以上より、第3の実施形態の光CDM伝送システムの構成は、符号長が異なる固有符号が混在する場合であっても、従来の光周波数領域における強度符号化を用いた光CDM方式において課題となるビート雑音の影響を受けることなく所望の信号を受信できる。
【0056】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の光CDM伝送システムは、図2の光CDM伝送システム301が備える光CDM受信回路12−mの代替として、光領域で復号を行う光CDM受信回路42−mを備える。図10は、光CDM受信回路42−mの構成例である。光CDM受信回路42−mは、光復号化手段223、差動検波手段224を備える。
【0057】
光復号化手段223は、光復号化手段へ割り当てられた符号長がNである固有符号を構成する符号要素{1},{0}を、多波長光信号Scの各光周波数成分に割り当て、{1}に対応する光周波数成分と、{0}に対応する光周波数成分とに分離して出力する。光復号化手段223は、光周波数分波手段231、1×2光スイッチSW232−n、光周波数合波手段233−1及び光周波数合波手段233−2を組み合わせて構成される。例えば、光周波数分波手段231、光周波数合波手段233−1及び光周波数合波手段233−2は、AWGや誘電体多層膜フィルタである。また、光周波数合波手段233−1及び光周波数合波手段233−2は、光ファイバやPLCにより作成された光カプラとしてもよい。
【0058】
光周波数分波手段231は、多波長光信号Scを光周波数成分ごとに分離する。光周波数分波手段231の各出力ポートはそれぞれ1×2光スイッチSW232−nと接続され、分離された各成分は、1×2光スイッチSW232−nに入力される。1×2光スイッチSW232−nは、入力された光成分をONとOFFに応じて出力ポートAまたは出力ポートBから出力する。例えば、全ての1×2光スイッチSW232−nの出力ポートAの出力は光周波数合波手段233−1で合波され、全ての1×2光スイッチSW232−nの出力ポートBの出力は光周波数合波手段233−2で合波されるとする。ここで、符号要素{1}に当たる光周波数成分が入力される1×2光スイッチ232−nをON、それ以外をOFFとすることにより、多波長光信号Scを符号要素{1}に対応する成分と符号要素{0}に対応する成分とに分離することができる。
【0059】
差動検波手段224は、光復号化手段の各出力をそれぞれ検波した差のベースバンド成分を出力する。具体的には、差動検波手段224は、光復号化手段の各出力を直接検波する光検波器241−1及び光検波器241−2、光検波器241−1及び光検波器241−2の出力を低域濾波してベースバンド成分を出力する低域濾波器242−1及び低域濾波器242−2、並びに、低域濾波器242−1及び低域濾波器242−2の出力を減算する減算器243を有する。固有符号hを割り当てられた光CDM受信回路42−hは、減算器243の減算により、光CDM送信回路11又は光CDM送信回路21において固有符号hを割り当てられた拡散符号器71−hに入力された入力電気信号Dを選択的に受信することが可能となる。
【0060】
図10の差動検波手段224は、光検波器241−1及び光検波器241−2の出力を低域濾波したベースバンド成分の減算を行う構成としたが、減算器243の前で低域濾波せずに、減算器243の後で低域濾波を行う構成も可能である。また、光検波器241−1及び光検波器241−2の代わりにホモダイン検波手段/ヘテロダイン検波手段を配置し、ホモダイン検波/ヘテロダイン検波を行う構成も可能である。
【0061】
以下、式(7)で表せる多波長光信号Scが、光CDM受信回路42−mへ入力され、差動検波手段224において直接検波される場合の出力信号R”について説明する。固有符号hが光復号化手段223に割り当てられているとする。光周波数合波手段233−1及び光周波数合波手段233−2の出力S”h,1(t)及び出力S”h,2(t)は、それぞれ
【数21】

【数22】

と表せる。よって、光検波器241−1及び光検波器241−2の出力Q”h,1(t)及び出力Q”h,2(t)は、それぞれ
【数23】

【数24】

となる。
【0062】
式(23)及び式(24)の右辺第2項の、上にN、下にi=1≠nを記載したΣの意味は、iがi=nとなる時を除いてi=1からi=Nまで順次該当の値を加算することである。式(23)及び式(24)に示されるように、光CDM受信回路42−mを備える光CDM伝送システムもベースバンドにビート雑音が発生しない。
【0063】
光検波器241−1及び光検波器241−2の各出力Q”h,1(t)、Q”h,2(t)は、低域濾波器242−1及び低域濾波器242−2により、式(23)及び式(24)の右辺第2項が除去された後に減算される。減算器243が出力する出力信号R”(t)は、
【数25】

となり、式(9)と同様に表せる。
【0064】
光CDM伝送システム301が図10の光CDM受信回路42−mを備えていても、光検波器241−1及び光検波器241−2の出力Q’h,1(t)及び出力Q’h,2(t)にベースバンドにビート雑音が発生しないため、従来の光周波数領域における強度符号化を用いた光CDM方式において課題であったビート雑音の影響を受けることなく所望の信号を受信できる。
【0065】
(第5の実施形態)
第4の実施形態の光CDM伝送システムでは、拡散符号器および光復号化手段へ割り当てられるすべての固有符号の符号長が同一であるが、第5の実施形態は、符号長が異なる固有符号が混在する光CDM伝送システムである。第5の実施形態は、図2の光CDM伝送システム301が備える光CDM受信回路12−mの代替として、光領域で復号を行う光CDM受信回路52−mを備える光CDM伝送システムである。
【0066】
例えば、光周波数領域において符号化を行う光CDM方式において用いられるアダマール符号を用いるとすると、式(13)〜式(16)を満たす符号長がN/2である符号1〜Kと符号長がNである符号K+1〜Mとを混在させることが可能である。
【0067】
第5の実施形態の光CDM伝送システムが備える光CDM受信回路52−mの構成例を図11に示す。光CDM受信回路52−mは、光復号化手段323及び差動検波手段224を備える。
【0068】
光復号化手段52−mは、光CDM受信回路323へ割り当てられた固有符号を構成する符号要素{1},{0}を、多波長光信号Scの各光周波数成分に割り当てたときに、{1}に対応する光周波数の成分と、{0}に対応する光周波数の成分とに分離して出力する。光復号化手段323は、光周波数分波手段231、光スイッチSW332−n、1×2光スイッチSW232−n、光周波数合波手段233−1及び光周波数合波手段233−2を組み合わせて構成される。
【0069】
光復号化手段323に入力された多波長光信号Scの光周波数成分f〜fは光周波数分波手段231により分離され、光スイッチSW332−nを介して、1×2光スイッチSW232−nへ入力される。この時、各光スイッチSW332−nは、光復号化手段に割り当てられた固有符号を構成する各要素{1},{0}が順に割り当てられている。符号要素が割り当てられた光スイッチSW332−nのみがONとなる。
【0070】
光スイッチSW332−nの出力は1×2光スイッチSW232−nへ入力される。1×2光スイッチSW232−nは、入力された光成分をONとOFFに応じて出力ポートAまたは出力ポートBから出力する。全ての各1×2光スイッチSW232−nの出力ポートAの出力は光周波数合波手段233−1で合波される。全ての1×2光スイッチSW232−nの出力ポートBの出力は光周波数合波手段233−2で合波される。ここで、符号要素{1}に当たる光周波数成分が入力される1×2光スイッチ232−nをON、それ以外をOFFとすることにより、多波長光信号Scを符号要素{1}に対応する成分と符号要素{0}に対応する成分とに分離することができる。
【0071】
差動検波手段224は、図10で説明した差動検波手段224と同様の構成であり、同様に動作する。
【0072】
以下、固有符号としてアダマール符号を用い、拡散符号器71−1〜拡散符号器71−Kに符号長がN/2である固有符号1〜Kが割り当てられ、拡散符号器71−K+1〜拡散符号器71−Mに符号長がNである固有符号K+1〜Mが割り当てられるとする。各固有符号は、式(13)〜式(16)を満たすとする。つまり、第4の実施形態と同様の光周波数領域で強度符号化された多波長光信号Scが光CDM受信回路52−mへ入力される。また、差動検波手段224において直接検波される場合の出力信号Rについて説明する。
【0073】
符号長がNである固有符号h(K+1≦h≦M)を割り当てられた光復号化手段323を備える光CDM受信回路52−hでは、多波長光信号Scの全光周波数成分に符号要素が割り当てられるため、すべての光スイッチSW332−hがONとなり、減算器243の出力である出力信号R(t)は、式(13)〜式(16)を用いて展開して、
【数26】

と、なり、所望の信号を受信できる。
【0074】
一方、符号長がN/2である固有符号h’(1≦h’≦K)を割り当てられた光復号化手段323を備える光CDM受信回路52−h’では、多波長光信号Scの光周波数成分のうち、符号要素が割り当てられない光周波数の成分fN/2+1〜fが入力される光スイッチSW332−N/2+1〜スイッチSW332−NがOFFとなる。減算器243の出力である出力信号Rh’(t)は、式(13)〜式(16)を用いて展開して、
【数27】

となり、所望の信号を受信できる。
【0075】
以上より、第5の実施形態の光CDM伝送システムの構成は、符号長が異なる固有符号が混在する場合であっても、従来の光周波数領域における強度符号化を用いた光CDM方式において課題となるビート雑音の影響を受けることなく所望の信号を受信できる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る光CDM送信回路および光CDM伝送システムは、光ファイバを用いた光通信システムに適用され、多ユーザが同一周波数帯を同時に使用することが可能となることから波長の効率的利用が可能となる。また、多重チャネル数の増大による新サービスの追加の容易性、耐妨害性の向上による誤接続によるサービス断防止を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】従来の光周波数領域における強度符号化を用いた光CDM伝送システムの構成を説明する図である。
【図2】本発明に係る光CDM伝送システムの構成を説明する図である。
【図3】本発明に係る光CDM送信回路の電気符号化手段の構成を説明する図である。
【図4】光変調器が行う多値強度変調を説明する図である。
【図5】本発明に係る光CDM伝送システムが備える光CDM受信回路の他の構成を説明する図である。
【図6】本発明に係る光CDM送信回路の他の構成を説明する図である。
【図7】本発明に係る光CDM送信回路の直並列変換手段の動作を説明する図である。
【図8】本発明に係る光CDM送信回路の直並列変換手段の動作を説明する図である。
【図9】本発明に係る光CDM伝送システムが備える光CDM受信回路の他の構成を説明する図である。
【図10】本発明に係る光CDM伝送システムが備える光CDM受信回路の他の構成を説明する図である。
【図11】本発明に係る光CDM伝送システムが備える光CDM受信回路の他の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0078】
301:光CDM伝送システム
11、21:光CDM送信回路
12−1〜M、12−m、22、32−1〜M、32−m、42−1〜M、42−m、52−1〜M、52−m:光CDM受信回路
13:光ファイバ伝送路
111:電気符号化手段
112−1〜N、112−n:光源
113−1〜N、113−n:光変調器
114、233−1、233−2:光周波数合波手段
115:直並列変換手段
71−1〜M、71−m:拡散符号器
72−1〜N、72−n:加算器
61−m,n:出力端
121、231:光周波数分波手段
122−1〜N、122−n:光検波手段
123、223−1〜M、223−m:電気復号化手段
SW181、191−1〜N、191−n:スイッチ
182−1〜M、181−m:バッファ
323:光復号化手段
SW332−1〜N、SW332−n:光スイッチ
SW232−1〜N、SW232−n:1×2光スイッチ
224:差動検波手段
241−1、241−2:光検波器
242−1、242−2:低域濾波器
243:減算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種の符号要素で構成される固有符号がそれぞれに付与されており、M個(Mは2以上の整数)の入力電気信号のうちの対応する1個がそれぞれ入力されるM個の拡散符号器、及び前記拡散符号器に付与した前記固有符号のうち最長の符号長であるN(Nは2以上の整数)以上の個数の加算器を有し、前記入力電気信号からN個の多値電気信号を生成する電気符号化手段と、
光周波数が互いに異なる1番目からN番目の光搬送波を前記電気符号化手段が生成する1番目からN番目の前記多値電気信号でそれぞれ強度変調して多値光信号を生成するN個の光変調器と、
前記光変調器が生成したそれぞれの前記多値光信号を合波して多波長光信号を出力する光周波数合波手段と、
を備える光CDM送信回路であって、
前記拡散符号器は、
N個の出力端を持ち、付与された前記固有符号を構成する前記符号要素を1番目の出力端からN番目の出力端へ順に割り当てた際に、前記固有符号を構成する2種の前記符号要素のうちの一方が割り当てられた出力端から前記入力電気信号の値を出力し、他の前記出力端から0を出力し、
前記加算器は、
各々の前記拡散符号器の出力端のうち、同一番目の符号要素を割り当てられた全ての出力端からの出力同士を加算して前記多値電気信号を生成すること
を特徴とする光CDM送信回路。
【請求項2】
入力された直列電気信号からM個の前記入力電気信号を生成して前記電気符号化手段の前記拡散符号器のそれぞれへ結合する直並列変換手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の光CDM送信回路。
【請求項3】
前記拡散符号器に付与される全ての前記固有符号は、符号長が同一であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光CDM送信回路。
【請求項4】
請求項1から3に記載のいずれかの光CDM送信回路と、前記光CDM送信回路の前記光周波数合波手段が出力する多波長光信号がそれぞれ入力される複数の光CDM受信回路と、を備える光CDM伝送システムであって、
前記光CDM受信回路は、
前記多波長光信号を1番目からN番目までの前記光搬送波ごとに分離する光周波数分波手段と、
前記光周波数分波手段からの出力をそれぞれ検波する1番目からN番目までのN個の光検波手段と、
前記拡散符号器に付与された前記固有符号のひとつが付与され、付与された前記固有符号を構成する前記符号要素を前記多波長光信号の各光周波数成分へ順に割り当てた際に、前記固有符号を構成する2種の前記符号要素のうちの一方が割り当てられた光周波数成分を検波した前記光検波手段の出力を正、他方の前記符号要素が割り当てられた光周波数成分を検波した前記光検波手段の出力を負として加える加減算を行う電気復号化手段と、
を有することを特徴とする光CDM伝送システム。
【請求項5】
請求項1から3に記載のいずれかの光CDM送信回路と、前記光CDM送信回路の前記光周波数合波手段が出力する多波長光信号がそれぞれ入力される少なくとも1個の光CDM受信回路と、を備える光CDM伝送システムであって、
前記光CDM受信回路は、
前記多波長光信号を1番目からN番目までの前記光搬送波ごとに分離する光周波数分波手段と、
前記光周波数分波手段からの出力をそれぞれ検波する1番目からN番目までのN個の光検波手段と、
前記拡散符号器に付与された前記固有符号のひとつが付与され、付与された前記固有符号を構成する前記符号要素を前記多波長光信号の各光周波数成分へ順に割り当てた際に、前記固有符号を構成する2種の前記符号要素のうちの一方が割り当てられた光周波数成分を検波した前記光検波手段の出力を正、他方の前記符号要素が割り当てられた光周波数成分を検波した前記光検波手段の出力を負として加える加減算を行う複数の電気復号化手段と、
を有することを特徴とする光CDM伝送システム。
【請求項6】
請求項1から3に記載のいずれかの光CDM送信回路と、前記光CDM送信回路の前記光周波数合波手段が出力する多波長光信号がそれぞれ入力される複数の光CDM受信回路と、を備える光CDM伝送システムであって、
前記光CDM受信回路は、
前記拡散符号器に付与された前記固有符号のひとつが付与されており、付与された前記固有符号を構成する前記符号要素を前記多波長光信号の各光周波数成分へ順に割り当てた際に、前記固有符号を構成する2種の前記符号要素のうちの一方が割り当てられた光周波数成分と他方の前記符号要素が割り当てられた光周波数成分との2つのグループに分離して出力する光復号化手段と、
前記光復号化手段の各出力をそれぞれ検波した差のベースバンド成分を出力する差動検波手段と、
を有することを特徴とする光CDM伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−28761(P2010−28761A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191186(P2008−191186)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】