説明

免疫刺激のためのIHNVG蛋白質

IHNV G蛋白質の部分および魚類の病原体に由来する第二蛋白質の部分、またはそれらのそれぞれの核酸のコード配列を含有するワクチン。IHNV G蛋白質の存在によって、第二蛋白質に対する免疫応答が促進され、その結果、第二蛋白質が由来するところの魚類の病原体による感染に対する防護効果が生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症、特に魚類における感染症を予防するための、新しいクラスのワクチンの使用に関する。本発明はさらに、IHNV(伝染性造血器壊死症ウイルス)などのラブドウイルスのG蛋白質をコードする核酸配列の部分および第二ペプチド(この第二ペプチドは病原体に由来する)をコードする核酸配列の部分を含有するワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
組み換え型ワクチンは、ヒト用の薬剤および動物薬において、死滅させた病原体または弱毒化した病原体に基づくより伝統的なやり方に対する代替物として時折用いられる。このような方法で全身に送達される多くの外来性の抗原は、主要組織適合複合体(MHC)クラスII経路により抗体を産生させる体液性の免疫応答を刺激することによって、免疫系の一部門のみを活性化させる能力を有する。しかしながら、理想的なワクチンは、MHCクラスI経路の活性化により感染細胞を破壊する、細胞性の応答も導くべきである。後者の応答は、感染細胞において外来性物質がサイトゾル中で分解され、その外来性物質の断片が、MHCクラスI分子と結合して細胞表面にまで往復し、CD細胞傷害性T細胞に提示されることにより、達成される。
【0003】
核酸ワクチン(NAV)は比較的新しい技術の型であり、病原体抗原、とりわけウイルス抗原の送達に有用である。ワクチンによってコードされたウイルス蛋白質は宿主の細胞の装置によってその位置で発現するので、理論上、投与された場合に動物を防護する能力を持つ細胞性免疫応答が惹起されるはずであるということを示唆する。しかしながら結果は入り混じっている。魚類において、伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)のG蛋白質(表面糖蛋白質)およびウイルス性出血性敗血症ウイルスのG蛋白質を発現するNAVは、それぞれIHNVおよびVHSVの感染に対して効果的である。しかしながら、その他のウイルス抗原に基づくNAVを利用して、説得力のある魚類の防護を実証することは難しかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、魚類およびその他の動物において、病原体の感染により生じる種々の疾患に対して有効な、改良されたワクチンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
第一側面において、本発明は、IHNV G蛋白質のコード配列の部分を含みおよびIHNV以外の病原性生物に由来する第二蛋白質のコード配列の部分をさらに含み、但し、第二蛋白質のコード配列はVHSVのM遺伝子の配列のすべてでなく部分でもない、発現ベクターを提供する。IHNV G蛋白質の部分は、IHNV G蛋白質の単離されたリーダー配列でもよい。第二蛋白質が魚類の病原体であることが好ましく、場合によりウイルスに由来する抗原であることが好ましい。IHNV G蛋白質のコード配列の部分は、第二蛋白質のコード配列と融合していてもよい。
【0006】
第二側面において、本発明は、医薬適合性の担体と共に、ラブドウイルスのG蛋白質の部分を含むDNA発現ベクターを含み、およびラブドウイルス以外の病原性生物に由来する第二蛋白質のコード配列の部分を同一ベクター上にさらに含有する核酸ワクチンを提供する。
【0007】
本発明はさらに、医薬適合性の担体と共に、IHNV G蛋白質をコードする核酸配列の部分を保持する第一発現ベクターを含有し、および第一発現ベクター上かまたは第二発現ベクター上に保持された、IHNVの抗原以外の第二抗原をコードする核酸配列の部分をさらに含有する、ワクチン組成物を提供する。一つの実施態様において、ワクチン組成物はアジュバントを含有する。
【0008】
第四の側面において、本発明は、(i)IHNV G蛋白質の単離されたかもしくは精製された部分またはIHNV G蛋白質のコード配列の部分を含むDNA発現ベクター、および(ii)IHNV以外のウイルスに由来する第二蛋白質の単離されたかもしくは精製された部分またはVHSV G蛋白質の部分以外の第二蛋白質のコード配列の部分を含むDNA発現ベクターを含む、個別投与、逐次投与および同時投与のための、部品のワクチンキットを提供する。
【0009】
別の側面において、本発明は、動物における感染症を予防または治療するための薬剤の製造における組成物の使用を提供する。ここで、当該組成物は、ラブドウイルスのG蛋白質のコード配列の部分を含む第一発現ベクターを含有し、当該第一発現ベクター上かまたは第二発現ベクター上に保持された当該感染症の原因の病原性生物に由来する第二蛋白質のコード配列の部分をさらに含有する。ここで、ラブドウイルスは感染症の原因ではない。最初の発現ベクターは、G蛋白質の部分以外のラブドウイルスに由来する配列を欠いていてもよい。
【0010】
さらなる側面において、本発明は、魚類におけるIHNV以外の感染症を予防または治療するための薬剤の製造における組成物の使用を提供する。ここで、当該組成物は、IHNV G蛋白質のコード配列の部分を含む第一発現ベクターを含有し、場合により、当該第一発現ベクター上かまたは第二発現ベクター上に保持された当該感染症の原因の病原性生物に由来する第二蛋白質のコード配列の部分をさらに含有する。
【0011】
別の側面において、本発明は動物における感染症を予防または治療する方法に関する。ここで、この方法は、ラブドウイルスのG蛋白質配列の部分をその同一のベクター上に含むDNA発現ベクターと、ラブドウイルス以外の病原体に由来する蛋白質の部分とを、医薬適合性の担体と共に含有する核酸ワクチンを当該動物に投与することを含む。一つの実施態様において、動物は魚類であり、そしてラブドウイルスはIHNVまたはVHSVである。
【0012】
(発明の詳細な説明)
本発明は、核酸ワクチンから発現されるIHNV G蛋白質またはそのリーダー配列(シグナル配列とも称される)が第二抗原と共に存在することによって免疫応答の促進が可能となり、その結果、第二抗原が由来するところの病原体に対する防護が強化されるという観察結果に基づく。この効果についての説明は未だに明らかではないが、G蛋白質上に免疫調節モチーフが存在することに関係があり得る。抗原蛋白質がG蛋白質またはそのリーダー配列に融合した結果、抗原が細胞表面に移行し、その結果、宿主の免疫系へのペプチドの露出が促進されるということも、もっともらしい。あるいは、防護の強化は、これらの効果の組み合わせを介した相乗効果によるものであり得る。
【0013】
IHNV G蛋白質は、IHNVに対する魚類のワクチン接種の基礎として、組み換え型で用いられてきた(米国特許第5,534,555号)。G蛋白質のアミノ酸配列および核酸配列は、たとえばケーナー(Koener)ら(1987) J. Virol. 61: 1342−1349から知られており、このものは参照して本明細書に組み込まれる。
【0014】
IHNVはラブドウイルスファミリーの一員であり、「G」糖蛋白質をどれも有している。ラブドウイルスとしては、ベシクロウイルス(たとえば水胞性口炎ウイルス(VSV))、リッサウイルス(たとえば狂犬病ウイルス)、エフェモウイルス(たとえば牛流行熱ウイルス)およびノビラブドウイルスが挙げられる。本明細書において記述されたあらゆる場合において、本発明は、IHNV G蛋白質の部分に代えて、あらゆるラブドウイルス、とりわけあらゆるノビラブドウイルスのG蛋白質の部分の使用に及ぶ。ノビラブドウイルスの具体例としては:ウイルス性出血性敗血症ウイルス(VHSV)、ライギョラブドウイルス(SHRV)、ヒラメラブドウイルス、ピネイドシュリンプラブドウイルス、コイ春季ウイルス血症ウイルスが挙げられる。本発明においては、とりわけ、VHSV G蛋白質がIHNV G蛋白質の代わりとなり得る。
【0015】
ラブドウイルスのG蛋白質配列による免疫増加効果を、免疫系についての体液性の部門および細胞性の部門の両者を備えるあらゆる動物における、疾患の治療または予防に適用することができる。このような動物としては、すべての種類の哺乳動物(ヒトを含む)、魚類、鳥類、および爬虫類が挙げられる。
【0016】
本発明者らは一つの実験(実施例1)を報告する。そこでは、IHNV G蛋白質およびIPNV(伝染性膵臓壊死ウイルス)に由来するVP2抗原は、単一のDNAプラスミドにおける融合蛋白質として、魚類においてインビボで互いに発現する。組み換え型IPNV VP2は、たとえば大腸菌などの生物において既に発現されており、およびIPNVに対する魚類のワクチン接種として、一定の成功の程度を伴って用いられてきた。米国特許第5,165,925号は、VP2ポリペプチドを含むIPNVに対するワクチンに関するものである。
【0017】
実施例1に記載されたように、この組み合わせ核酸ワクチン(NAV)を魚類に注射し、続いてこのものにIPNVを投与した。本発明者らは、従来のウイルス調製品、すなわちオイルアジュバント死滅ウイルスを用いて免疫化したものと比較して、生存率が顕著に改善されたことを観察した。実際のところ、G蛋白質−VP2蛋白質融合NAVを用いての相対的な生存パーセント(RPS)は、PBSのネガティブコントロールと比較して50%を超えていた。それに対して死滅ウイルスのRPSは約25%であった。
【0018】
IHNV G蛋白質を伴わずに、IPNV VP2蛋白質を保持するものを構築した結果、RPSの平均は、PBSのネガティブコントロールと比較してちょうど31%であった。したがって、構築物にIHNV G蛋白質を封入したものは、IPNV VP2蛋白質に対する免疫応答を増加させて、VP2蛋白質単独よりも防護レベルが67%強くなるという効果を有する。
【0019】
IHNV G蛋白質による免疫刺激効果を、第二実験(実施例2)で検証した。ここでは、IHNV G蛋白質のリーダー配列を、ISAV血球凝集素(HA)遺伝子の5’とDNA発現ベクター上で融合させた。そして投与試験におけるISAV感染に対して魚類をワクチン接種するために、ベクターを用いた。IHNV G蛋白質のリーダー配列の存在によって、DNAワクチンにおけるISAV HA抗原の防護効果が顕著に促進された。
【0020】
本発明は、核酸ワクチンと組み換え型抗原に基づくワクチンの両者を包含する。この組み換え型抗原ワクチンは、単離されたかまたは精製されたIHNV G蛋白質(またはその部分)、および魚類のIHNV以外の病原体に由来する第二抗原の単離されたかまたは精製された部分含有する。場合により、IHNV G蛋白質の部分および第二抗原の部分を、融合蛋白質の形で提供してもよい。
【0021】
代替的な実施態様において、本発明のワクチン組成物は、IHNV G蛋白質の単離されたかまたは精製された部分、および第二蛋白質のコード配列の部分を含むDNA発現ベクター;またはIHNV G蛋白質のコード配列の部分を含むDNA発現ベクター、および第二蛋白質の単離されたかまたは精製された部分を含有していてもよい。第二蛋白質としては、魚類の病原体に由来する抗原が好ましい。「単離された」または「精製された」蛋白質とは、その蛋白質が由来するところの細胞源もしくは組織源に由来する細胞の成分もしくはその他の混入蛋白質が実質的に無いことと、または化学合成した場合は化学的前駆体もしくはその他の化学薬品が実質的に無いことと定義される。
【0022】
好ましいワクチンは、IHNV G蛋白質遺伝子の部分およびIHNV以外の病原体に由来する第二遺伝子の部分を同一のDNA発現ベクター上で保持する核酸ワクチンである。あるいは、これらの二つの遺伝子を二つの別個のベクター上にて動物に同時投与してもよい。G蛋白質および第二遺伝子は同一のベクター上で保持され、これらは、別個の遺伝子として、または縦に並んだ遺伝子/遺伝子融合物として発現可能なものでもよい。縦に並んだ遺伝子/遺伝子融合物として発現した場合、G蛋白質の部分をコードする核酸配列、またはその断片、および第二抗原、またはその断片は、インフレームで融合している。
【0023】
遺伝子をインフレームで融合する場合、tRNA分子で認識される核酸配列におけるトリプレットコードの登録簿が天然の遺伝子における登録簿と同一であることを意味し、その結果得られる翻訳されたアミノ酸配列は、IHNV G蛋白質の部分と第二ペプチドの部分とを含むペプチドである。これらの二つの遺伝子または遺伝子の断片が、あらゆる介在配列が無い状態で直接融合することが好ましい。IHNV G蛋白質の遺伝子配列および第二蛋白質の遺伝子配列またはその部分が縦に一列に並んで融合する場合、IHNV G蛋白質配列またはその部分は第二蛋白質配列の5’、第二蛋白質配列の3’となり得るか、またはその配列内に埋め込まれ得る。
【0024】
この目的にとって、蛋白質の「部分」とは、基準蛋白質の少なくとも7の、場合により少なくとも15の、少なくとも25の、少なくとも50の、または少なくとも100の近接するアミノ酸を有するあらゆるペプチド分子を意味すると理解される。遺伝子配列または核酸配列の「部分」は、少なくとも20の、場合により少なくとも50の、少なくとも100の、または少なくとも200の連続した完全なコード配列のヌクレオチドを含む遺伝子配列の任意の部分である。遺伝子または蛋白質の「部分」は、遺伝子配列またはアミノ酸配列の全長でもよい。好ましい実施態様において、本発明において用いられるIHNV G蛋白質の部分には、外側の膜に局在するG蛋白質のリーダー配列、またはそれをコードするヌクレオチド配列が含まれる。場合により、この部分はG蛋白質の残りを除くリーダー配列を含んでもよい。(N末端から読み取られる)完全なリーダー配列は:MDTMITTPLILILITCGANS(配列番号:1)である。先端が切り取られたが機能を有する種類のリーダー配列を、完全なリーダー配列の代わりに採用してもよい。
【0025】
IHNV G蛋白質または第二蛋白質、またはそれらのそれぞれのコード配列について述べる場合、この用語には、実質的な相同性を有する蛋白質またはコード配列が含まれていることを理解すべきである。この文脈において、「実質的に相同な」とは、基準配列と比較して少なくとも60%の基準配列に対する相同性、好ましくは少なくとも70%の相同性、より好ましくは少なくとも80%の相同性、さらに好ましくは少なくとも90%の相同性、そして最も好ましくは少なくとも95%の相同性を有する配列を意味する。
【0026】
二つのアミノ酸配列または二つの核酸配列の相同性パーセントを定めるために、比較目的にとって最適となるように配列を整列する(たとえば、第二アミノ酸または核酸配列について最適のアラインメントとなるために第一アミノ酸または核酸配列の配列に隙間を導入してもよく、比較目的のために隙間の中に介在する相同性が無い配列を無視してもよい)。
【0027】
配列内において対応する位置のように、第一(基準)配列における位置が同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドで占められている場合、これらの分子はその位置で相同性を有する(すなわち、その位置で同一である)。核酸配列を比較する場合において、ヌクレオチドを含むコドンのトリプレットが、比較されている両方の分子内の同一のアミノ酸をコードしている特定の位置における相同性も存在する。これは遺伝子コードの縮重のせいである。
【0028】
二つの配列の間の相同性パーセントは、配列によって占められる相同的な位置の数の関数である(すなわち、相同性%=相同的な位置の数/位置の総数)。場合により、数学的アルゴリズムを用いて配列の比較と相同性パーセントの決定を完成させることができる。適切なアルゴリズムはNBLASTプログラムおよびXBLASTプログラムに組み込まれている(アルチュール(Altschul))ら(1990) J. Mol. Biol. 215: 430−10。
【0029】
さらに、同一の電荷を持つアミノ酸を互いに置換してもよい。たとえば、リジンおよびアルギニンを互いに置換してもよい。グルタミン酸とアスパラギン酸を互いに置換してもよい。グルタミンとアスパラギンを互いに置換してもよい。このような蛋白質のアミノ酸についての電荷の中立的な変化は当分野において認識されており、得られる蛋白質もなお本発明の範囲となる。
【0030】
IHNVおよびその他の病原体の地域的に異なる多数の分離株が存在する。これらの病原体の核酸配列の変動およびそれらが発現する蛋白質のアミノ酸配列における変動には特定の程度がある。本発明で用いられるIHNV G蛋白質および第二蛋白質は、単離された特定のあらゆる源に制限されない。特定の地域のためのワクチンを設計する場合、第二蛋白質変種をその地域における一般的な分離株と一致させることが好都合であろう。
【0031】
本発明の一つの実施態様において、IHNV G蛋白質および第二蛋白質についての核酸配列が機能するように転写制御配列に結合しているDNA発現ベクター、およびそのDNA発現ベクターと医薬適合性の担体とを含有する核酸ワクチンが提供される。同一の(単数または複数の)転写制御配列の制御下で発現するために、IHNV G蛋白質および第二蛋白質についての核酸配列が結合していてもよく、または互いに別個の転写制御配列の制御下で独立して発現してもよい。本明細書で用いられるように、「DNA発現ベクター」という用語は、既に結合している別の核酸を輸送する能力を有する核酸分子を意味する。好ましいDNA発現ベクターは、真核細胞の発現ベクターである。ベクターの一つのタイプは「プラスミド」であり、このものは環状の二本鎖DNAの輪であって、その中に追加のDNAセグメントを連結することができる。ベクターの別のタイプはウイルスベクターであり、ここでは追加のDNAセグメントをウイルスのゲノム内に連結することができる。組み換え型発現ベクターの範囲において、「機能するように結合された」とは、ヌクレオチド配列の発現が可能なようなやり方で、対象のヌクレオチド配列が(単数または複数の)制御配列に結合されたことを意味することを意図する。
【0032】
転写制御配列としては、プロモーターやポリアデニル化配列が挙げられる。メチル化されていないCpGジヌクレオチドを有する免疫賦活性のオリゴヌクレオチド、またはその他の抗原蛋白質や補助的なサイトカイン類をコードするヌクレオチド配列などのその他のヌクレオチド配列を用いて、免疫応答を強化することができる。制御配列としては、多数のタイプの宿主細胞におけるヌクレオチド配列を直接構成するもの、またはその配列の発現を誘導可能なもの、およびある特定の宿主細胞だけにおいてヌクレオチド配列を直接発現できるもの(組織特異的制御配列など)が挙げられる。DNAは裸の状態で存在してもよく、または細胞性の取り込みを促進する薬剤(たとえば、リポソームまたはカチオン性脂質)と共に投与してもよい。DNAワクチン接種の技術は、たとえば、WO 90/11092号に総説されており、参照して本明細書に組み込まれる。
【0033】
魚類においてインビボ発現を最適にするために、ワクチン接種を受ける魚の内因性の転写制御配列を選択することが好ましいであろう。たとえば、内因性のサイトカイン遺伝子またはアクチン遺伝子のプロモーターが考えられ、またはその他の制御配列は魚類のDNAウイルスに由来するものでもよい。魚類に適用される際のDNAワクチン接種は、米国特許第号5,780,448号により詳細に説明されており、参照して本明細書に組み込まれる。
【0034】
組み換え型IHNVの蛋白質およびその他の病原体蛋白質は、大腸菌(E.coli)やピヒア・パストリス(Pichia pastoris)を含めた種々の生物において、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターを含むベクターを利用して首尾よく発現されている。組み換え型ワクチンにおいて、同時投与するために、精製されたIHNV G蛋白質および第二蛋白質を混合してもよい。あるいは、精製組み換え型融合蛋白質を調製するために、これらの遺伝子の部分の融合物を含む発現ベクターを、標準的な技術によって構築することができ、そして宿主細胞内で発現させることができる。蛋白質精製の従来法を利用して、ワクチンに用いるための組み換え型蛋白質を調製することができる。さらなる精製処置を経た組み換え型蛋白質に代えて、組み換え型蛋白質を発現する宿主細胞の溶解物を場合により用いてもよい。
【0035】
ここで示された結果に基づいて、本発明者らは、IHNVのG蛋白質のヌクレオチド配列(またはコードされた蛋白質配列)の部分と、感染症を引き起こす病原体に由来する第二抗原のヌクレオチド配列(またはコードされた蛋白質配列)の部分とを含有する組成物を動物に投与する工程を含む、魚類などの動物における感染症を治療または予防する方法を請求の範囲とする。我々はさらに、当該病原性生物によって引き起こされる動物(たとえば魚類)における感染症を治療または予防するためのおよび/または当該病原性生物による感染を治療または予防するための薬剤(ワクチン)の製造におけるIHNVのG蛋白質またはそれをコードするヌクレオチド配列の部分と、および病原性生物に由来する第二蛋白質またはそれをコードするヌクレオチド配列の部分とを含有する組成物の使用を請求の範囲とする。
【0036】
本発明の「第二」(異種)の蛋白質は、IHNV以外の魚類の病原体に由来する蛋白質(またはペプチドもしくは抗原)でもよい。第二蛋白質は、感染症の症候群を引き起こす真菌、ウイルス、原虫または細菌による魚類の病原体に由来するものでもよい。第二蛋白質は、場合により、ラブドウイルス以外の、またはVHSV以外のウイルスに由来するものでよい。たとえば、第二蛋白質は、伝染性サケ貧血ウイルス(ISAV)、伝染性膵臓壊死ウイルス(IPNV)、イリドウイルス、神経壊死症ウイルス(NNV)、サケ膵臓病ウイルス(SPDV)、コイ春季ウイルス血症ウイルス(SVCV)、ウィルス性出血性敗血症(VHSV)、レニバクテリウム・サルモニナルム(細菌性腎臓病を引き起こす原因)、ピシリケッチア・サルモニス(サルモネラ菌感染症を引き起こす原因)、ビブリオ・スピーシーズ、アエロモナス・スピーシーズ、エルジニア・ルケリ、ノカルジア・スピーシーズ、シュードモナス・スピーシーズ、フォトバクテリウム・ダムセラなどに由来するものでよい。好ましい実施態様において、第二蛋白質はウイルス起源のものである。これらのおよびその他の病原性生物に由来する、増加しつつある多数のポリペプチドを精製および/またはクローン化して発現させ、そしてこれらのポリペプチドはワクチン組成物におけるIHNV G蛋白質またはそのコード配列と共に、利用可能であり、提供されている。好ましい実例としては、たとえば、IPNV蛋白質VP1、VP2、VP3およびNSならびにそれらがコードするヌクレオチド配列がある。WO 01/10469号に開示されているISAV蛋白質としては、血球凝集素、ヌクレオカプシド、ポリメラーセおよびセグメント7 P4およびP5蛋白質、ならびにこれらをコードするヌクレオチド配列が挙げられる。WO 01/68865号に開示されたP.サルモンス(P. salmons)の蛋白質としては、OspAおよびIcmEならびにそれらがコードするヌクレオチド配列;ヌクレオカプシドなどのノダウイルスの蛋白質;ならびにSPDVに由来する構造ポリペプチドならびにこれらがコードするヌクレオチド配列(WO 99/58639号に開示)が挙げられる。本発明によるところの好ましいワクチン組成物には、IPNV VP2配列の部分がインフレームで融合したIHNV G蛋白質のヌクレオチド配列の部分を保持するDNA発現ベクター、または血球凝集素の配列の部分がインフレームで融合したIHNV G蛋白質のリーダー配列が含まれる。
【0037】
本発明のワクチンを受け取る最も重要な魚類の候補は、とりわけギンザケ(Oncorhynchus kisutch)、カワマス(Salvelinus fontinalis)、ブラウン・トラウト(Salmo truffa)、マスノスケ(Oncorhynchus tshawytscha)、サクラマス(Oncorhynchus masou)、カラフトマス(Oncorhynchus gorbuscha)、ニジマスすなわち(Oncorhynchus mykiss)、ホッキョクイワナ(Salvelinus alpinus)およびタイセイヨウサケ(Salmo salar)が含まれるサケであり、サケおよびマスの種が含まれる。しかしながら、感染症に罹りやすいその他の任意の魚(たとえば、観賞用の魚類の種、ニシキゴイ、キンギョ、コイ、ナマズ、ブリ、タイ、スズキ、カマス、オヒョウ、タラ、テラピア、ターボット、オオカミウオなど)にとって、利益となる。
【0038】
本発明の「第二」(異種の)蛋白質は、また魚類以外の動物、とりわけヒトなどの哺乳動物の病原体に由来する抗原となり得る。第二蛋白質は、動物において感染症の症候群を引き起こす真菌、ウイルス、原虫または細菌の病原体に由来するものでもよい。可能性のある病原体の非制限的なリストには:肝炎ウイルス(たとえばHBV、HCV)、HIVおよびその他の免疫不全ウイルスの遺伝子、インフルエンザウイルス属、麻疹ウイルス、コロナウイルス属、ヘルペスウイルス、ポリオウイルス、ライノウイルス属、ロタウイルス、アデノウイルス、乳頭腫ウイルス属、ハンタウイルス属、パルボウイルス属、ならびにウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、ウシヘルペスウイルス(BHV)、口蹄疫ウイルス、ウシRSウイルス(BRSV)、パラインフルエンザウイルス3型ウイルス(PI3)、ウシ伝染性鼻気管炎(IBR)、ブタ繁殖呼吸傷害症候群ウイルス(PRRSV)などの具体的なウイルス;ジアルジア(Giardia)の種、エルジニア(Yersinia)、レエイシュマニア(Leishmania)、アモエバ(Amoeba)、エントアモエバ(Entamoeba)、トリパノソーマ(Trypanosoma)、トキソプラズマ(Toxoplasma)、プラスモジウム(Plasmodium)、クリプトスポリジア(Cryptosporidia)、カンジダ(Candida)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、ヒストプラズマ(Histoplasma)、コクシジオイデス(Coccidioides)、ブラストミセス(Blastomyces)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ニューモコッカス(Pneumococcus)、ナイセリア(Neisseria)、リステリア(Listeria)、カンピロバクター(Campylobacter)、クラミジア(Chlamydia)、アイメリア(Eimeria)、クロストリジア(Clostridia)、パスツレラ(Pasteurella)、ブラキスピラ(Brachyspira)、サルモネラ(Salmonella)、レジオネラ(Legionella)、マイコバクテリア(Mycobacteria)、マイコプラズマ(Mycoplasma)(たとえば、マイコプラズマ・ボビス(M. bovis)、マイコプラズマ・ヒヨニューモニエ(M. hyopneumoniae))、トレポネーマ(Treponema)、ボレリア(Borrelia)、レプトスピラ(Leptospira)、エールリヒア(Ehrlichia)、リケッチア(Rickettsia)、ブルセラ(Brucella)、ネオスポーラ(Neospora)、フゾバクテリウム(Fusobacterium)、エシェリヒア・コリ(E.coli)、マンヘミア・ヘモリィティカ(Mannheimia haemolytica)、ヘモフィルス・ソムナス(Haemophilus somnus)、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、アナプラズマ(Anaplasma)などが含まれる。
【0039】
本発明のワクチンを用いてあらゆる脊椎動物を免疫化することができる。ヒト、耕作地の主要な動物種、すなわちウシ、ウマ、ヒツジ、ブタおよび家禽類ならびにコンパニオンアニマルについて、特別な記述を行うことができる。
【0040】
本発明の二成分ワクチンを、単一のワクチン組成物を一緒にすることで調製してもよく、または個別投与もしくは同時投与のために個別に調製してもよい。場合により、個々の成分を個別投与、逐次投与および同時投与のためのキットの形態で供給する。この二成分を投与の直前に混合してもよい。
【0041】
本発明のワクチンの魚類にとって好ましい投与経路は、筋肉内に(とりわけ軸上の筋肉内に)注射することである。別の選択肢は、(大型の魚類については)腹腔内注射、餌に混ぜての経口、または海水もしくは淡水中に浸漬することである。本発明のワクチンの投与のためには、2グラム以上、好ましくは10グラム以上の体重の魚では注射によることが推奨される。浸漬または経口投与のためには、魚の体重が少なくとも0.1g、場合により少なくとも0.5g、通常は少なくとも2グラムであることが好ましい。
【0042】
魚類以外の動物のワクチンにおいて、とりわけ核酸ワクチンは筋肉注射によって送達されることが、または粘膜への送達によることが多い。送達の技術としては、エレクトロポレーション、皮下または経皮注射、マイクロインジェクション、ジェット式注射、リン酸カルシウム−DNA共沈、DEAE−デキストランの介在による形質移入、ポリブレンの介在による形質移入、リポソームの融合、リポフェクチン、原形質融合、ウイルスの感染、微粒子、細菌性の担体、およびバイオリスティック法(パーティクルガン法、たとえば遺伝子銃の使用)が挙げられるが、これらに制限されるわけではない。
【0043】
本発明のワクチンを、予防目的または治療目的のために動物に投与してもよい。このワクチンは、標的の感染症に対して長期間の防護を誘導する能力を有する。魚類の場合の「長期間」の防護とは、ワクチン接種から7日間を超えての、より好ましくは20日間を超えての、特に好ましくは70日間を超えての防護的な免疫応答を意味する。
【0044】
ワクチンの効果的な投与量は、対象の大きさおよび種類に依存して、ならびに投与形態によって変化し得る。医師、獣医師または養殖専門家による試行錯誤を経て、最適な投与量を求めることができる。魚類にとっては、一回の投与量のワクチンに、0.01から0.5g、好ましくは約0.05から0.2gの組み換え型蛋白質が含まれてもよい。核酸ワクチンについての適切な投与量の範囲は、ピコグラム量ほどの少量でもよく、mg量ほどの多量でもよいが、通常は投与単位あたり約0.01から100μg、好ましくは0.1μgから50μg、より好ましくは約1μgから20μg、最も好ましくは投与単位あたり約5μgから10μgである。ワクチン接種に応答した魚が経験するストレスが原因で、単一注射のワクチンとしてワクチンを提供することが好ましい。注射可能なワクチンにとっては、一回の投与単位の容量は通常0.025から0.5mL、好ましくは0.05から0.2mLであり、場合により0.1mL程度でもよい。
【0045】
典型的には、注射または水への送達のために、液体の溶液、エマルジョンまたは懸濁液としてワクチンが調製される。液体の媒体への溶解または懸濁に適した、または投与前の固体の餌への混合に適した固体(たとえば粉末)の形態に調製してもよい。ワクチンは凍結乾燥してもよく、場合により、滅菌済みの希釈液で再構成させるための状態にある使用形態で凍結乾燥する。たとえば、凍結乾燥ワクチンを0.9%の生理食塩水(場合により、ワクチン製品の封入物の一部としてもよい)で再構成してもよい。分子の安定性が高く保存期間が長いため、核酸ワクチンは凍結乾燥に特に適している。あるいは、ワクチンを生理食塩水の溶液で供給してもよい。魚を浸漬することで投与するためのペン、タンクまたは槽に添加する前に、液体すなわちワクチンが再構成された形態を、さらに少量の水(たとえば1から10倍容量)で希釈してもよい。本発明の医薬用のワクチン組成物を、即放性の形態でまたは徐放性の形態で投与してもよい。
【0046】
医薬適合性の担体または媒体としては従来の賦形剤が挙げられ、たとえば、水、油または生理食塩水などの溶媒、デキストロース、グリセリン、ショ糖、トリカイン、湿潤剤または乳化剤、充填剤、被覆剤、バインダー、フィラー、崩壊剤、希釈剤、潤滑剤、pH緩衝剤、またはムラミールジペプチド、アブリジン、水酸化アルミニウムなどの従来のアジュバント、油、サポニン類、ブロックコポリマーおよびその他の技術的に知られた物質でもよい。核酸ワクチンの場合では、DNA発現ベクターを裸の状態で送達してもよく、またはカチオン性脂質−DNA複合体、リポソーム、リン酸カルシウム共沈物、微粒子に吸着させたものなどの形態で提供してもよい。
【0047】
いくつかの例において、病原体によって引き起こされる感染症の治療または予防のために、本発明のワクチンを、組み合わせワクチンにおける感染性病原体に対する従来のワクチンと組み合わせたり(死滅病原体または組み換え型の病原体の抗原ワクチンまたは病原体の核酸ワクチン)、または個別投与、逐次投与および同時投与のための両成分を含むキットの状態とすることが望ましい。
【実施例1】
【0048】
タイセイヨウサケ、Salmo salarにおける伝染性膵臓壊死ウイルスに対する核酸ワクチンの評価。
【0049】
ワクチン接種
タイセイヨウサケの稚魚(体重は9−26g)を、8℃の新鮮な水が入った直径が1メートルの円形の二つのタンクに入れる。そしてワクチン接種の24時間前から、空腹にさせる。ワクチン接種のために、約0.5g/リットルの濃度の3−アミノ安息香酸エチルエステル(MS222、Sigma、プール、英国)を用いて魚に麻酔をかける。核酸ワクチン(10μgのDNA/50μLの投与量)を、左側の背部の側面の、背びれの少し下側の領域に、筋肉注射によって投与する。オイルアジュバント死滅IPNVワクチン、PBSのコントロールを、腹腔内注射(100μL)によって投与する。それぞれの処理群には40匹の魚があり、6種のワクチンのそれぞれについて、ワクチンあたり2回反復する。
【0050】
試験群には次の組成物が与えられる:
(1)pUKベクター:カナマイシン耐性遺伝子、CMV最初期プロモーター、マルチクローニング部位、およびウシ成長ホルモンのポリアデニル化シグナル(BGHポリA)を保持するクローニングベクター。
(2)pUK+VP2:IPNV VP2の完全なコード配列がそのベクターのマルチクローニング部位内に組み込まれているpUKベクター。
(3)pUK+IHNG:IHNV G蛋白質の完全なコード配列がそのベクターのマルチクローニング部位内に組み込まれているpUKベクター。
(4)pUK+IHNG+VP2:pUKベクター。IHNウイルスの糖蛋白質(G)とインフレームで融合したIPNV VP2蛋白質の完全なコード配列が、G蛋白質がVP2の5’となるようにマルチクローニング部位内に組み込まれているpUKベクター。
(5)IPNV+オイル:オイルでアジュバント化されたIPNウイルスの非活性化調製品。
(6)PBS(ネガティブコントロール)。
【0051】
ワクチン接種からほぼ6週間後に、5日間をかけて魚を海洋化サケとする。5日間の終りまでに魚が完全な強さの海水中にある状態となるように、魚のタンクに海水を流し込んで徐々に増加させ、その一方で淡水の流れを減少させる。
【0052】
共同生活中の投与
ワクチン接種から807度日後に、IPNウイルスの「Cole−Deep」株を2回凍結させて通過させた上清を、滅菌したPBSで五倍に希釈して最終濃度を1×10TCID50/mLとする。MS222で魚に麻酔をかけ、そしてそれぞれの魚の投与量が10TCID50となるように、100μLのウイルス懸濁液を腹腔内に注射することによって、群れごとに投与する。投与時の海水の温度は約11℃であり、それぞれのタンク内での水の流速は約5リットル/分である。
【0053】
最初の観察時に、一日当たり二回、死亡数を除去する。この試験を投与から8週間後に終える。
【0054】
結論
【0055】
【表1】

【0056】
腹腔内に注射された海洋化タイセイヨウサケを用いての共同生活に基づく投与モデルは、上出来である。腹腔内に注射された共同生活した魚における累積死亡数は、平均で41.25%に達し、このことは、3.95%という標準偏差を伴う4台の投与タンクを通してほとんど再現されている。
【0057】
オイルを用いて死滅させたIPNVのワクチンの成績を、PBSでワクチン接種したコントロールに関連して評価する。死滅ワクチンによればある程度の防護が与えられ、PBSでワクチン接種したコントロールと比較しての相対的な生存パーセント(RPS)は25%を超えている。
【0058】
核酸ワクチンの成績を、空のプラスミドかまたはIHNV G蛋白質についての遺伝子を含むプラスミドのいずれかと比較する。コントロールのプラスミドを、PBSコントロールでなされた偽のワクチン接種と比較して、空のプラスミドまたはIHNV G蛋白質を含むプラスミドのどちらに防護効果があるのかを求める。プラスミドベクターpUKは、有意な防護効果を与える。IPNV VP2蛋白質がベクター内に含まれる場合、PBSでワクチン接種したコントロールと比較して有意な防護(31%のRPS)が与えられる。IHNV G蛋白質遺伝子がベクター内に含まれ、IPNV遺伝子が無い場合、PBSと比較しての防護効果は17%のRPSに達する。
【0059】
最も優れた成績のワクチンは、IPNV VP2と共にIHNV G蛋白質についての遺伝子を含有するNAVである。このワクチンでワクチン接種された魚は、PBSでワクチン接種されたコントロールと比較して52%RPSの相対的な生存パーセントを示す。
【0060】
結論として、オイルアジュバントによる標準的な死滅ウイルス調製品は、この試験において十分な成績を示すが、VP2を含むNAVsの成績の方がさらに優れている。とりわけ、IHNV G蛋白質と共にVP2を含むNAVは最も効果的である。
【実施例2】
【0061】
ISAVに対する核酸ワクチンの評価
平均体重が10g(6月齢未満)のタイセイヨウサケの稚魚を、12±1℃で流速が2.5L/分の水に少なくとも7日間順応させる。この魚に、一日当たり体重の1.5%の市販のペレット餌を与える。
【0062】
ワクチン接種の前に、30mg/Lのベンゾカインで魚に麻酔をかける。核酸ワクチン(10μgのDNA/50μLの投与量)を、背びれのすぐ前の軸上の筋肉内に筋肉注射することによって、投与する。オイルエマルジョンワクチンを腹腔内注射(150μL)によって投与する。それぞれの同型のワクチンの群には55匹の魚がおり、5種のワクチンのそれぞれについて、ワクチンあたり2回反復する。
【0063】
試験群には次の組成物が与えられる:
(1)pUKベクター:カナマイシン耐性遺伝子、CMV最初期プロモーター、マルチクローニング部位、およびウシ成長ホルモンのポリアデニル化シグナル(BGHポリA)を保持するクローニングベクター。
(2)pUK−HA:ISAV血球凝集素蛋白質の完全なコード配列がマルチクローニング部位内に組み込まれているpUKベクター。
(3)pUK−IHNg:IHNV G蛋白質の完全な配列がマルチクローニング部位内に組み込まれているpUKベクター。
(4)pUK−HA−IHNg:ISAV血球凝集素蛋白質の完全なコード配列がマルチクローニング部位内に組み込まれ、およびその5’末端がIHNV G蛋白質のリーダー配列に融合したpUKベクター。
(5)ISAV+オイル:オイルでアジュバント化されたISAウイルスの非活性化調製品。
【0064】
850.5度日後に、魚に投与する。脂びれが切り取られた同一のストックのサケが共同生活している中で、0.1mLの培養ISAV(魚あたり約10TCID50)を、腹膜内注射して投与し、および処理された魚のそれぞれのタンクに加える。
【0065】
それぞれのタンク内の魚の死亡率について、31日間、一日に二回監視する。相対的な生存パーセント(RPS)を次のように計算する:
RPS=1−(ワクチンでの死亡率%/pUKコントロールでの死亡率%)×100
結果:
ネガティブコントロール群(pUKプラスミド)についての累積死亡率は94%である。最も優れた防護は、ポジティブコントロールの一価の非活性化ISAVワクチンの注射によって誘導される(94%のRPS)。ネガティブコントロールとしてのpUK−IHNgプラスミドの注射によって、いくらかの非特異的な防護が誘導される(26%のRPS)。pUK−HAによって、高いレベルの防護が付与される(49%のRPS)。3’末端におけるIHNV G蛋白質のリーダー配列の追加(pUK−HA−IHNg)によって、この防護は有意に強化される(60%のRPS)。これらの結果から、核酸ワクチンにIHNV G蛋白質配列(または少なくともそのリーダー配列)を含めてIHNV以外の感染症に対する免疫性を促進するという有意性についてのさらなる支持が提供される。G蛋白質のリーダー配列は、魚の内側の細胞表面に異種抗原を局在化させている可能性がある。または、魚類の免疫系を非特異的に刺激する蛋白質の範囲内の特別のモチーフが存在することもあり得る。
【0066】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
IHNV G蛋白質のコード配列の部分を含みおよびIHNV以外の病原性生物に由来する第二蛋白質のコード配列の部分をさらに含み、但し、第二蛋白質のコード配列はVHSVのM遺伝子の配列の部分ではない、DNA発現ベクター。
【請求項2】
第二蛋白質のコード配列が、魚類の病原体に由来する、請求項1に記載のDNA発現ベクター。
【請求項3】
第二蛋白質のコード配列が、魚類のラブドウイルス以外の病原体に由来する、請求項1に記載のDNA発現ベクター。
【請求項4】
IHNV G蛋白質のリーダー配列を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載のDNA発現ベクター。
【請求項5】
IHNV G蛋白質の完全なコード配列を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のDNA発現ベクター。
【請求項6】
IHNV G蛋白質のコード配列の部分と第二蛋白質のコード配列の部分とが互いにインフレームで融合している、請求項1から5のいずれか1項に記載のDNA発現ベクター。
【請求項7】
第二蛋白質が、ISAV、IPNV、VHSV、NNV、イリドウイルス、SVCV、SPDV、レニバクテリウム・サルモニナルム(Renibacterium salmoninarum)、ピシリケッチア・サルモニス(Piscirickettsia salmonis)、ビブリオ・スピーシーズ(Vibrio spp.)、アエロモナス・スピーシーズ(Aeromonas spp.)、エルジニア・ルケリ(Yersinia ruckerii)、シュードモナス・スピーシーズ(Pseudomonas spp.)、ノカルジア・スピーシーズ(Nocardia spp.)およびフォトバクテリウム・ダムセラ・サブスピーシーズ・ピシシダ(Photobacterium damselae subsp. piscicida)から選択される病原体に由来する、請求項2に記載のDNA発現ベクター。
【請求項8】
第二蛋白質が、IPNVに由来するVP2蛋白質かまたはISAVに由来する血球凝集素蛋白質である、請求項7に記載のDNA発現ベクター。
【請求項9】
医薬適合性の担体と共に、ラブドウイルスG蛋白質の部分を含むDNA発現ベクターを含みおよびラブドウイルス以外の病原性生物に由来する第二蛋白質のコード配列の部分を同一のベクター上にさらに含む、核酸ワクチン。
【請求項10】
病原性生物が魚類の病原体である、請求項9に記載の核酸ワクチン。
【請求項11】
ラブドウイルスがIHNVかまたはVHSVである、請求項9または10に記載の核酸ワクチン。
【請求項12】
請求項1から8のいずれか1項に記載のDNA発現ベクターを含有する、請求項9に記載の核酸ワクチン。
【請求項13】
IHNV G蛋白質のコード配列の部分を含む第一DNA発現ベクター、VHSV G蛋白質の部分以外の第二蛋白質のコード配列の部分を含む第二DNA発現ベクターおよび医薬適合性の担体を含有する核酸ワクチン。
【請求項14】
IHNV G蛋白質の部分および魚類のIHNV以外の病原性生物に由来する第二蛋白質の部分を含む融合蛋白質。
【請求項15】
IHNV G蛋白質の単離されたかまたは精製された部分を含みおよび魚類のIHNV以外の病原性生物に由来する第二蛋白質の単離されたかまたは精製された部分をさらに含む組成物。
【請求項16】
IHNV G蛋白質の単離されたかまたは精製された部分および第二蛋白質のコード配列の部分を含むDNA発現ベクターを含有する組成物。
【請求項17】
IHNV G蛋白質のコード配列の部分を含むDNA発現ベクターおよび第二蛋白質の単離されたかまたは精製された部分を含む組成物。
【請求項18】
請求項15から17のいずれか1項に記載の組成物および医薬適合性の担体を含有するワクチン。
【請求項19】
(i)IHNV G蛋白質の単離されたかもしくは精製された部分またはIHNV G蛋白質のコード配列の部分を含むDNA発現ベクターおよび(ii)IHNV以外のウイルスに由来する第二蛋白質の単離されたかもしくは精製された部分またはVHSV G蛋白質の部分以外の第二蛋白質のコード配列の部分を含むDNA発現ベクター、を含む、個別投与、逐次投与および同時投与のための、部品のワクチンキット。
【請求項20】
哺乳動物における病原体の感染を予防または治療するための薬剤の調製における、請求項9に記載の核酸ワクチンの使用。
【請求項21】
魚類における細菌、ウイルス、真菌または原虫の感染を予防または治療するための薬剤の調製における、請求項9、13および18のいずれか1項に記載のワクチンまたは請求項19に記載の部品のワクチンキットの使用。
【請求項22】
魚類における感染症を予防または治療するための薬剤の調製における、請求項9、13および18のいずれか1項に記載のワクチンまたは請求項19に記載の部品のワクチンキットの使用。
【請求項23】
魚類におけるIHNV以外の感染症を予防または治療するための薬剤の調製における組成物の使用であって、上記組成物はIHNV G蛋白質のコード配列の部分を含むDNA発現ベクターを含み、および場合によりさらに、同一ベクター上に、IHNV以外の魚類の病原性微生物に由来する第二蛋白質のコード配列の部分を含む、前記使用。

【公表番号】特表2006−504414(P2006−504414A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−537104(P2004−537104)
【出願日】平成15年9月16日(2003.9.16)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010305
【国際公開番号】WO2004/026338
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】