説明

免疫原性を低下させた抗CR1抗体及び組成物並びにそれに基づく治療法

本発明は、ヒトCR1受容体に結合する免疫原性を低下させた抗体又は抗体フラグメントを提供するものである。本発明の免疫原性を低下させた抗CR1抗体は、当該の免疫原性を低下させた抗体がヒトにとって非免疫原性であるか、又は免疫原性が低くなるように、一つ以上のアミノ酸置換を含むように改変された一つ以上の非ヒト配列を含む。更に、本発明は、このような免疫原性を低下させた抗CR1抗体と、病原体に結合する抗原認識部分とを含む二重特異的分子も提供するものである。更に本発明は、血液由来免疫原性病原体により引き起こされる疾患又は異常の、本発明の二重特異的分子を用いた治療のための方法及び組成物も提供するものである。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、引用をもってその全文をここに援用することとする2003年3月28日出願の米国仮特許出願60/458,869号の米国特許法第119条(e)に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
1. 発明の分野
本発明は、ヒトCR1受容体に結合する、免疫原性を低下させた抗体又は抗体フラグメントに関する。本発明の免疫原性を低下させた抗CR1抗体は、本免疫原性を低下させた抗体がヒトにとって非免疫原性であるか、又は、免疫原性が低くなるように、一つ以上のアミノ酸置換を含むように改変された一つ以上の非ヒト配列を含む。更に本発明は、このような免疫原性を低下させた抗CR1抗体と、病原体に結合する抗原認識部分とを含む二重特異的分子にも関する。更に本発明は、血液由来免疫原性病原体により引き起こされる疾患又は異常を本発明の二重特異的分子を用いて治療するための方法及び組成物にも関する。
【0003】
2. 発明の背景
霊長類の赤血球、即ち赤血球(RBC)は循環系からの抗原クリアランスで重要な役割を果たしている。霊長類では、循環系で免疫複合体が形成されると補体因子C3bが活性化して、C3bがこの免疫複合体に結合する。その後、このC3b/免疫複合体が、赤血球表面上に発現した1型補体受容体(CR1)であるC3b受容体に、該免疫複合体に付着したC3b分子を介して結合する。次に、この免疫複合体が赤血球に付き添われて肝臓及び脾臓の細網内皮系組織(RES)に送られて破壊される。このRES細胞は、特に肝臓内では、固定された組織マクロファージであるクッパー細胞と呼ばれ、赤血球に結合した免疫複合体を認識して、C3b受容体とRBCとの接合部を切断することによりこの複合体をRBCから切り離すことで赤血球及びC3b受容体/免疫複合体を解放する。すると、この複合体はクッパー細胞に飲み込まれ、クッパー細胞の細胞レベル下オルガネラ内で完全に破壊される。
【0004】
この病原体クリアランスのプロセスは、微生物及び可溶性病原体の両方のクリアランスに関与していることが示されている。例えば、抗体(Abs)と補体の両方によりオプソニン化された細菌は赤血球に付着するが、この結合が、微生物の貪食及び致死の促進につながる。更に、場合によっては、循環系で形成される可溶性抗体(Ab)−タンパク質抗原(Ag)免疫複合体(非粒子)が補体を固定し、赤血球に結合した後、循環系から除去されて肝臓及び脾臓で破壊されることも示されている (Schifferli et al., 1989,
Kidney Int. 35:993, Cornacoff et al.,
1983, J. Clin. Invest. 71:236, Hebert et al., 1987, Kidney Int. 31:877)。しかしながら、この病原体クリアランスのプロセスは補体依存的であり、即ち、C3b受容体により認識される免疫複合体に限られており、C3b受容体によっては認識されない免疫複合体を除去する上では効果がない。
【0005】
Taylor らは、循環系から病原体を除去する補体独立的な方法を発見した。Taylor らは、霊長類C3b受容体に特異的な第一モノクローナル抗体(mAb)を病原性分子に特異的な第二モノクローナル抗体に化学的に架橋すると、補体を活性化することなく、病原性分子を霊長類のC3b受容体に結合させるための機序を提供する二重特異的ヘテロ重合抗体(HP)ができることを示した。(米国特許第5,487,890号;第5,470,570号;及び第5,879,679号)。Taylor はまた、循環中から病原性抗原特異的自己抗体を除去するために用いることのできるHPも報告した。このようなHPは、「抗原ベースのヘテロ重合体」(AHP)とも呼ばれ、抗原に架橋させたCR1 特異的モノクローナル抗体を含有する(例えば米国特許第5,879,679号;Lindorfer, et al., 2001, Immunol Rev.183: 10−24; Lindorfer, et al., 2001, J Immunol Methods 248: 125−138; Ferguson, et . al., 1995,
Arthritis Rheum 38: 190−200を参照されたい)。
【0006】
架橋により生ずるHP及びAHPに加えて、例えば補体受容体1(CR1)など、C3b様受容体に結合する第一抗原認識ドメインと、抗原に結合する第二抗原認識ドメインとを有する二重特異的分子も、化学的架橋を含まない方法により、作製することができる(例えばPCT 公報WO 02/46208;及びPCT公報WO 01/80883を参照されたい)。PCT公報WO 01/80833は、ハイブリドーマ細胞株の融合、組換え技術、及び適したモノクローナル抗体から得られる重鎖及び軽鎖のin vitroでの再構築を含む方法により作製される二重特異的抗体を解説している。PCT公報WO 02/46208はタンパク質のtrans−スプライシングにより生ずる二重特異的分子を解説している。
【0007】
Kuhn ら (1998, J. Immunol. 160:
5088−5097) は、補体の完全な非存在下で、大変高いレベルの効率で標的病原体(微生物及びタンパク質抗原の両方)をCR1を介して霊長類赤血球に結合させる方法を開示している (Taylor et al., 1991,
Proc. Natl. Acad. Sci. USA
88:3305; Powers et al., 1995, Infect.
Immun. 63:1329; Reist et al., 1994,
Eur. J. Immunol. 24:2018; Taylor et al., 1995, J.
Hematother. 4:357)。この方法は、(C3bのサロゲートの役目をする)CR1に特異的なモノクローナル抗体を、標的病原体に特異的なモノクローナル抗体に架橋することにより構築される二重特異的モノクローナル抗体(mAb)複合体の使用に基づく。ネルソンの最初の研究や、より幅広く研究された赤血球ベースの免疫複合体クリアランス減少に基づくと、これらの二重特異的複合体(ヘテロ重合体(HP);抗CR1モノクローナル抗体×抗病原体モノクローナル抗体)は、可溶性及び粒子性の病原体の両方を血流内の赤血球に結合させ、その後、この病原体を貪食及び破壊に向けてアクセプタ細胞に提示する能力を有すると考えられる。Kuhn ら (1998, J.
Immunol. 160: 5088−5097) はまた、サル・モデルでのin vivo 実験で、いったん赤血球CR1に特異的ヘテロ重合体を介して結合しさえすれば、可溶性タンパク質及び原型ウィルスの両者ともが、赤血球−免疫複合体クリアランス反応と多くの点で大変似た機序により、循環中から除去され、肝臓内で破壊されることが立証されたと開示している
(Reist et al., 1994,
Eur. J. Immunol. 24:2018; Ferguson et al., 1995, J. Immunol. 155:339; Taylor et al., 1997, J. Immunol. 158:842 (アブストラクト))。
【0008】
更にKuhn ら (1998, J.
Immunol. 160: 5088−5097) は、Nelsonが調べたものと同様に、E. coliを粒子性病原体モデルとして用いるin
vitroモデルの使用を開示している。特異的ヘテロ重合体を用いてE. coliを霊長類赤血球に結合させ、この赤血球に結合した基質のヒト単球への輸送が調べられた。補体の非存在下で行われたこれらの実験結果では、ヘテロ重合体を介して赤血球CR1に結合したE. coliは、実際にヒト単球により貪食及び破壊されることが示された。更にKuhn らは、赤血球CR1の消失が伴うこの輸送反応は、霊長類において赤血球CR1に結合した基質が循環中から除去されるin vivoでの反応に驚くべき類似性を示すことを開示している。
【0009】
Lindorferら (2001, J. Immunol. 167(4):2240−9) は、サルでの急性輸注モデルで血流内の細菌を標的とするために、霊長類CR1特異的mAbを抗細菌性mAbに架橋して成る二重特異的ヘテロ重合体を開示している。in vitro研究では、シュードモナス−アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)(株PAO1)の、血清中の霊長類赤血球への様々なレベルでの補体媒介性結合(免疫粘着)が実証された。補体を枯渇させた動物でのin vivo実験では、細菌の赤血球への結合は二重特異的ヘテロ重合体の投与前では1%未満だったのに対し、その輸注から5分以内に細菌の99%を越えるものが赤血球に結合したことが明らかになった。補体充分なサルでは、輸注された細菌の様々な割合が赤血球に結合した。これらの補体充分なサルを二重特異的ヘテロ重合体で処理すると、細菌の99%を越えるものが赤血球に結合した。24時間生存研究が行われた。肺の損傷の程度、サイトカイン・レベル、及び循環中の肝酵素を含むいくつかの臨床パラメータは、二重特異的ヘテロ重量体が、細菌攻撃に対してある程度の保護を提供したことを示した。
【0010】
Lindorfer ら (Immunological Review, 2001, 183:10−24) は、デング熱ウィルスの表面E糖タンパク質に特異的な中和マウス抗体のいくつかを用いたHPコンストラクトを報告している。このようなHPコンストラクトは、検査された動物のモデルの循環中のデング熱ウィルスに結合し、除去することができる。
【0011】
上述の方法では、当該の二重特異的ヘテロ重合体はマウス抗CR1モノクローナル抗体を含む。ヒトの患者に投与されたとき、このマウス抗CR1 モノクローナル抗体は、ヒト抗マウス抗体(HAMA)の産生を惹起することにより、この患者の免疫応答を惹起するであろう。
この患者の抗マウス抗体は該二重特異的ヘテロ重合体に結合して除去するであろう。更にこの患者は、該マウス抗体に対してアレルギー感受性を生じ、将来マウス抗体に曝露したときにアナフィラキシー・ショックを起こすかも知れない。
【0012】
非ヒト抗体の免疫原性を低下させるために、ヒト抗体に存在する配列を導入することで非ヒト起源の抗体を改変し、と同時に、その抗体の結合特異性及び親和性を維持するのに重要な位置にある特定の特有のアミノ酸残基は保持するような技術が開発されている。例えば、マウスmAb由来の可変領域と、ヒト免疫グロブリン定常領域とを有するもの(Morrison, et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci., 81, 6851−6855; Neuberger, et al., 1984, Nature 312,
604−608; Takeda, et al.,
1985, Nature, 314, 452−454; Cabilly et
al., 米国特許第4,816,567号;及びBoss et al., 米国特許第4,816,397号)など、異なる部分が異なる動物種由来であるような抗体分子であるキメラ抗体を、適した抗原特異性のマウス抗体分子由来の遺伝子を、適した対生物活性のヒト抗体分子由来の遺伝子と一緒にスプライスすることにより、作製でき、用いることができる。ヒト以外の種を由来とする一つ以上の相補性決定領域(CDR)と、ヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域とを有する、非ヒト種由来の抗体分子であるヒト化抗体も開発されている(例えば、引用をもってその全文をここに援用することとする米国特許第5,585,089号を参照されたい)。このようなキメラ及びヒト化モノクローナル抗体は、当業で公知の組換えDNA技術により、例えばPCT公報WO 87/02671;ヨーロッパ特許出願 184,187; ヨーロッパ特許出願
171,496; ヨーロッパ特許出願 173,494; PCT公報 No. WO 86/01533; 米国特許第4,816,567号及び第5,225,539号; ヨーロッパ特許出願 125,023; Better et al., 1988,
Science 240:1041−1043; Liu et
al., 1987, Proc. Natl. Acad.
Sci. USA 84:3439−3443; Liu et al., 1987, J. Immunol.
139:3521−3526; Sun et al., 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. USA
84:214−218; Nishimura et al., 1987, Canc. Res. 47:999−1005; Wood et al., 1985, Nature 314:446−449; Shaw et al., 1988,
J. Natl. Cancer Inst. 80:1553−1559; Morrison 1985,
Science 229:1202−1207; Oi et al., 1986, Bio/Techniques
4:214; Jones et al., 1986, Nature 321:552−525; Verhoeyan et al.,
1988, Science 239:1534; 及びBeidler et al., 1988, J. Immunol. 141:4053−4060で解説された方法を用いるなどして、作製することができる。
【0013】
抗体などのタンパク質からT細胞エピトープを消去する技術も開示されている(WO
00/34317 及びWO 98/52976を参照されたい)。これらの技術においては、あるタンパク質中の潜在的なT細胞エピトープをまず特定し、次にこの特定されたエピトープを、アミノ酸配列を改変することにより、除去する。
【0014】
従って、免疫応答を惹起することなくヒトの患者に投与することのできる非免疫原性又は低免疫原性の抗体が求められている。
【0015】
ここに挙げた参考文献の議論又は引用は、このような参考文献が本発明にとって従来技術であるとの承諾として見なされてはならない。
【0016】
3.発明の概要
本発明は、循環中から目的の抗原を迅速かつ効率的に除去するための方法及び組成物を提供するものである。本発明の分子は、循環中抗原又は病原体を除去するために、ヒトの造血細胞表面上で発現するCR1の固有の特性を利用する。具体的には、本発明の組成物は、循環中から抗原を迅速かつ効率的に除去するために有用である。本発明は、免疫原性を低下させた抗CR1抗体遺伝子にコードされたタンパク質と、そのヌクレオチド配列を提供する。更に本発明は、このような免疫原性を低下させた抗CR1抗体タンパク質のフラグメントや、他の誘導体及び類似体も提供する。このようなフラグメント又は誘導体をコードする核酸も、本発明の範囲内である。例えば組換え法などによる前述のタンパク質の作製法が提供される。
【0017】
更に本発明は、機能的に活性な、即ちCR1への結合を示すことができる、融合/キメラタンパク質を含む、免疫原性を低下させた抗CR1抗体のタンパク質及び誘導体も提供する。
【0018】
本発明の免疫原性を低下させた抗CR1分子、例えば抗体、その誘導体及び/又はフラグメント、は、CR1への結合特異性を有する。好適な実施態様では、本発明の免疫原性を低下させた抗CR1分子は、二重特異的分子又はヘテロ重合体を作製するために用いることができる。いくつかの実施態様では、前記のヘテロ重合体は二重特異的抗体である。前記二重特異的抗体は、哺乳動物の循環中に存在する抗原に結合する第一結合ドメインと、補体受容体1(CR1)(霊長類ではCD35としても公知である)に結合する第二結合ドメインとを有する。別の実施態様では、本発明は、循環中から目的の抗原を迅速かつ効率的に除去するために、造血細胞表面上に発現するCR1の固有の特性を利用する、免疫原性を低下させた分子を提供するものである。
【0019】
更に本発明は、免疫原性を低下させた抗CR1ヘテロ重合体又は二重特異的抗体を作製する方法や、その治療的及び予防的使用法、並びに、前記免疫原性を低下させた抗CR1ヘテロ重合体又は二重特異的抗体、ポリペプチドである二重特異的分子をコードする核酸、及び、前記核酸で形質転換した細胞、を含有するキットや、前記二重特異的分子の組換え作製法も提供する。
【0020】
更に本発明は、対象の血液由来免疫原性病原体により引き起こされる疾患又は異常を治療又は防止する方法も提供し、当該方法は、CR1と目的の抗原とに免疫特異的に結合する免疫原性を低下させた二重特異的抗体を、前記治療又は防止に有効量、対象に投与するステップを含む。いくつかの実施態様では、目的の抗原は、病原体の抗原、自己抗原又は哺乳動物の循環系から除去したい血液由来タンパク質である。
【0021】
本発明は、更に、循環中から目的の抗原を除去するために有用な、免疫原性を低下させた抗CR1抗体を特定する方法を提供する。本方法は、前記免疫原性を低下させた抗CR1抗体を投与すると、循環中から目的の抗原が除去されるかどうかを判定するステップを含む。好適な実施態様では、前記免疫原性を低下させた抗CR1抗体は二重特異的抗体又はその誘導体である。
【0022】
本発明は、更に、CR1への結合をめぐってヒト補体と競合する、免疫原性を低下させた抗体をコードする単離された核酸も提供する。更に本発明は、CR1に免疫特異的に結合する、免疫原性を低下させた抗体をコードする核酸を単離する方法も提供するものである。
【0023】
また本発明は、免疫原性を低下させた抗CR1ヘテロ重合体又は二重特異的抗体、ポリペプチドである二重特異的分子をコードする核酸、及び、前記核酸で形質転換させた細胞、を含有するキットや、前記二重特異的分子の組換え作製法も提供する。
【0024】
5. 発明の詳細な説明
本発明は、ヒトCR1受容体に結合する免疫原性を低下させた抗体を提供するものである。ここで用いる場合の用語「免疫原性を低下させた抗体」とは、ヒト以外の起源のものであるが、開始物質である非ヒト抗体に比較して、ヒトにとって非免疫原性又は低免疫原性であるように改変された、即ち、一箇所以上のアミノ酸置換を持つ、抗体を言う。更に本発明は、免疫原性を低下させた抗CR1抗体と、病原性抗原性分子に結合する第二抗原結合部分とを含む、免疫原性を低下させた二重特異的分子も提供する。
【0025】
免疫グロブリン分子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン及びmu定常領域や、無数の免疫グロブリン可変領域を含む遺伝子にコードされている。軽鎖はカッパ又はラムダのいずれかに分類される。軽鎖は、可変軽鎖(VL)及び定常軽鎖(CL)ドメインを含む。重鎖は、ガンマ、mu、アルファ、デルタ、又はイプシロンに分類され、これらがひいてはそれぞれ免疫グロブリン・クラス
IgG、IgM、IgA、IgD 及びIgEを定義する。重鎖は可変重鎖(VH)、定常重鎖1(CH1)、ヒンジ、定常重鎖2(CH2)、及び定常重鎖3(CH3)ドメインを含む。IgG重鎖は更にそれらの配列のバリエーションに基づいて下位分類され、そのサブクラスはIgG1、IgG2、IgG3 及びIgG4と指定されている。
【0026】
抗体は、更に二対の軽鎖及び重鎖ドメインに分割することができる。対になったVL及びVHドメインは、抗体−抗原認識ドメインを構成するそれぞれ:フレームワーク領域 1 (FR1)、相補性決定領域 1 (CDR1)、フレームワーク領域 2 (FR2)、相補性決定領域 2 (CDR2)、フレームワーク領域 3 (FR3)、 相補性決定領域 3 (CDR3)、フレームワーク領域 4 (FR4) という一連の7個のサブドメインを含む。
【0027】
本発明は、循環中から目的の抗原を迅速かつ効率的に除去するための方法及び組成物を提供するものである。本発明の分子は、循環中抗原を除去するために、ヒトの造血細胞表面上に発現するCR1の固有の特性を利用する。具体的には、本発明の組成物は、循環中から抗原を迅速かつ効率的に除去するために有用である。本発明は、免疫原性を低下させた抗CR1抗体遺伝子にコードされたタンパク質と、そのヌクレオチド配列を提供する。更に本発明は、このような免疫原性を低下させた抗CR1抗体タンパク質のフラグメントや、他の誘導体及び類似体も提供する。このようなフラグメント又は誘導体をコードする核酸も、本発明の範囲内である。例えば組換え法などによる前述のタンパク質の作製法が提供される。
【0028】
本発明のタンパク質が免疫原性を低下させた抗体又はその誘導体である場合、前記の抗体又は誘導体は、好ましくはモノクローナル抗体であるとよく、より好ましくは組換え抗体、そして最も好ましくはヒト、ヒト化、又はキメラであるとよい。本発明に包含される免疫原性を低下させた抗CR1抗体には、ヒト、キメラ、ヒト化抗体がある。ある実施態様では、免疫原性を低下させた抗CR1抗体又はその誘導体は二重特異的分子である。
【0029】
本発明の免疫原性を低下させた抗体は、ヒト免疫系では外来タンパク質として余り認識されないはずであり、即ち免疫原性が低いため、ヒトでの治療上又は診断上の使用に好適である。具体的には、ヒト免疫反応は、免疫原性を低下させた二重特異的抗体の治療上の有効性を、反復的な治療に関して減じるであろう。
【0030】
本発明の免疫原性を低下させた抗CR1分子、例えば抗体、その誘導体及び/又はフラグメント、は、CR1への結合特異性を有する。好適な実施態様では、本発明の免疫原性を低下させた抗CR1分子は、二重特異的分子又はヘテロ重合体を作製するために用いることができる。いくつかの実施態様では、前記のヘテロ重合体は二重特異的抗体である。前記二重特異的抗体は、ヒト又は霊長類の循環中に存在する抗原に結合する第一結合ドメインと、補体受容体1(CR1)(霊長類ではCD35としても公知である)に結合する第二結合ドメインとを有する。別の実施態様では、本発明は、循環中から目的の抗原を迅速かつ効率的に除去するために、造血細胞表面上に発現するCR1受容体(例えばヒトの赤血球上のCR1)の固有の特性を利用する免疫原性を低下させた分子を提供するものである。
【0031】
更に本発明は、機能的に活性な、即ちCR1への結合を示すことができる、融合/キメラタンパク質を含む、免疫原性を低下させた抗CR1抗体のタンパク質及び誘導体も提供する。
【0032】
また本発明は、免疫原性を低下させた抗CR1ヘテロ重合体又は二重特異的抗体を作製する方法や、その治療的及び予防的使用法、並びに、前記免疫原性を低下させた抗CR1ヘテロ重合体又は二重特異的抗体、ポリペプチドである二重特異的分子をコードする核酸、及び、前記核酸で形質転換した細胞、を含有するキットや、前記二重特異的分子の組換え作製法も提供する。
【0033】
更に本発明は、対象の血液由来免疫原性病原体により引き起こされる疾患又は異常を治療又は防止する方法も提供し、当該方法は、CR1と目的の抗原とに特異的に結合する免疫原性を低下させた二重特異的抗体を、前記治療又は防止に有効量、対象に投与するステップを含む。いくつかの実施態様では、目的の抗原は、病原体の抗原、自己抗原、又はヒト又は霊長類の循環系から除去したい血液由来タンパク質である。
【0034】
本発明の組成物及び方法は、抗原性分子が循環中から除去されることが望ましいような(即ち、抗原性分子が当該状態の原因物質であるか、又は原因物質の一成分であるような)疾患、異常又は他の状態の治療や、このような状態の症状及び兆候の発症の防止、あるいは、これらの状態の進展における症状及び兆候の遅延にとって有用である。本発明の方法は、このような状態のいずれかの症状及び兆候の改善又は軽減、このような状態のいずれかの病的又は研究室での所見の改善、このような状態の進展の遅延、このような状態の症状及び兆候の発症の遅延や、このような状態の発生の防止、及び、このような状態のいずれかの症状及び兆候の発症の防止を含め、このような状態の治療などにとって有用であろう。
【0035】
更に本発明は、CR1への結合をめぐってヒト補体と競合する、免疫原性を低下させた抗体をコードする単離された核酸を提供するものである。更に本発明は、CR1に免疫特異的に結合する、免疫原性を低下させた抗体をコードする核酸を単離する方法も提供するものである。
【0036】
C3b受容体は、霊長類における補体受容体1(CR1)又はCD35として知られる。ここで用いられる場合の用語「CR1受容体」は、霊長類CR1受容体に類似の機能を有するあらゆる哺乳動物循環中分子を意味するものと、理解されている。本発明によれば、CR1分子は、補体でオプソニン化された血流中の免疫複合体に結合してこれらを肝臓及び脾臓に運び、そこでこれらが破壊される。当該の赤血球は循環に戻る。
【0037】
本発明の分子が結合するであろう血液由来抗原には、限定はしないが、病原体の抗原、自己抗原、又は哺乳動物の循環系から除去したい血液由来タンパク質がある。いくつかの実施態様では、前記の病原体の抗原(「病原性抗原性分子」)は、微生物抗原、例えばウィルス、細菌、真菌、又は酵母抗原など;又は原虫もしくは寄生生物抗原を含め、しかしこれらに限らず、感染性物質の抗原である。他の実施態様では、前記の病原性抗原性分子は、薬物、毒素、又は低密度リポタンパク質であってよい。
【0038】
ここで用いられる用語「エピトープ」とは、抗原性決定基、即ち、ある分子のうちで、ホストの免疫学的応答を惹起する、又は、抗体が結合する、領域を言う。この領域は連続的なアミノ酸を含むことがあるが、必ずしもそうではない。エピトープという用語は、当業においては「抗原性決定基」としても知られる。エピトープは、ホストの免疫系に固有の空間的コンホメーションで、3つという少ない数のアミノ酸を含む場合がある。一般に、一個のエピトープは、少なくとも5個のこのようなアミノ酸から成り、そしてより通常は少なくとも8乃至10個のこのようなアミノ酸から成る。このようなアミノ酸の空間的コンホメーションを判定する方法は当業で公知である。
【0039】
更に本発明は、細菌性、ウィルス性又は寄生生物由来の抗原など、循環中の目的の抗原の検出に用いられる、放射性標識された抗体と関連して用いることができる方法及び組成物も提供するものである。免疫原性を低下させた二重特異的抗CR1抗体を、循環中の細菌性、ウィルス性又は寄生生物由来の抗原を検出するために放射性標識することができ、例えば放射性標識された抗体をホストに注射した後、当業で公知の放射線部位を特異的に検出するいずれかの撮像法により、可視化することができる。
【0040】
ここで用いられる用語「放射性標識された抗体」とは、インジウム−111(111In)など、放射性マーカに連結させた抗体を言う。(Hagan P.L. et al., 1985, J. Nucl.
Med. 26:1418−1423を参照されたい)。
【0041】
ある好適な実施態様では、本発明の方法及び組成物を用いて、ヒト又はヒト以外の霊長類の疾患を治療する。別の実施態様では、本発明の方法及び組成物を用いて、ウィルス、細菌、真菌、原虫又は寄生物感染を含め、しかしこれらに限らない感染を治療する。
【0042】
本発明により提供される方法により、血流中のあらゆる標的抗原を、CR1受容体の赤血球表面上に、補体系を活性化する必要なく、結合させることができる。本発明の方法は、補体カスケードを完全に迂回することにより、標的抗原の赤血球表面への結合能を著しく高め、ひいては、攻撃してきた血液由来病原体を免疫粘着が破壊する効率を著しく高める。
【0043】
本発明の方法及び組成物は、幅広い血液由来疾患の管理及び治療において著しい進歩を提供する。本発明の方法及び組成物が有利であるのは、これらにより、単に治療用化合物を患者の血流に注射することにより、ウィルス粒子、細菌、毒素及び自己抗体などの血液由来病原体を血流から迅速、安全かつ効率的に除去及び破壊することができるからである。本発明の方法及び組成物は、各指定された病原体に対し、免疫原性を低下させた適した二重特異的抗CR1抗体を作製することにより、多数の様々な疾患を治療するために用いることができる。モノクローナル抗体を製造するプロセスと、2つのモノクローナル抗体を相互に接合して二重特異的抗体を形成するプロセスは両者とも、当業で公知である。本発明の組成物は、主なクラスの血液由来病原体のメンバーを除去及び破壊することができるため、幅広い様々な疾患の効果的な治療法となる。本発明の、非免疫原性の、免疫原性を低下させた抗CR1抗体は、免疫応答を誘導することなく、長期間にわたって複数の機会に患者に投与することができ、可溶性及び粒子性の両方の病原体を血流中の赤血球に結合させることができ、こうしてその病原体を、貪食及び破壊に向けてアクセプタ細胞に提示することができる。
【0044】
限定とはせずに開示を明瞭にするために、本発明の詳細な説明を以下の小項に分割する。
【0045】
5.1 免疫原性を低下させた抗CR1抗体及び作製
本発明は、ヒトCR1受容体に結合する、免疫原性を低下させた抗体又は抗体フラグメントを提供するものである。本発明の免疫原性を低下させた抗CR1抗体は、CR1結合ドメイン及びエフェクタ・ドメインを含有する、いずれの免疫原性を低下させた抗体であってもよい。いくつかの実施態様では、当該の免疫原性を低下させた抗CR1抗体は、免疫原性を低下させた抗CR1モノクローナル抗体(mAb)である。いくつかの実施態様では、当該の免疫原性を低下させた抗CR1抗体の定常領域はヒトである。好適な実施態様では、当該の免疫原性を低下させた抗CR1抗体は、それぞれ未改変の非ヒト配列に比較したときに、当該の免疫原性を低下させた抗体がヒトにとって非免疫原性であるか、又は低免疫原性であるように、一つ以上のアミノ酸置換を含むように改変された一つ以上の非ヒトVH又はVL配列を含む(WO 00/34317 及びWO 98/52976を参照されたい)。
【0046】
好適な実施態様では、免疫原性を低下させた抗CR1抗体は、そのそれぞれの1つ以上のヒトT細胞エピトープが一つ以上のアミノ酸置換により改変されているような1つ以上の非ヒトVH又はVL配列を含む。好適な実施態様では、本発明は、マウスVH又はVL配列から作製されたこのような免疫原性を低下させたVH又はVL配列を提供するものである。ある好適な実施態様では、当該の免疫原性を低下させたVH
又はVL 配列は、マウスE11ハイブリドーマ(カタログ番号184−020、Ancell Immunology Research Products MN; N.
Hogg et al., 1984, Eur J Immunol 14: 236−243; and Leukocyte Typing IV, W. Knapp, et al, eds., Oxford
University Press, Oxford, 1989, p. 829−830)から作製された抗CR1抗体から得られるマウスVH及びVL配列から作製される。マウスE11 VHのDNA (配列番号1番)及びアミノ酸(配列番号2番)配列を図1に示す。マウスE11 VLのDNA (配列番号3番)及びアミノ酸(配列番号4番)配列を図2に示す。
【0047】
好適な実施態様では、本発明は、CR1に特異的に結合すると共に、配列番号2番に解説された通りのアミノ酸配列であるが、配列番号2番に以下のアミノ酸置換のうちの1つ以上を持つ、免疫原性を低下させた VH 配列を含む、デイミュナイズ(原語:deimmunize)された分子を提供する:
位置 17: Ser → Thr;
位置 25: Thr → Ser;
位置 29: Ile → Met;
位置 44: Asn → Lys;
位置 45: Lys → Gly;
位置 49: Met → Ile;
位置 59: Ser → Thr;
位置 64: Leu → Val;
位置 69: Ser → Thr;
位置 71: Thr → Ser;
位置 83: Leu → Met;
位置 111: Val →
Tyr; 及び
位置 114: Ala →
Gln。
【0048】
ある好適な実施態様では、当該の免疫原性を低下させた VH 配列は、上に特定したアミノ酸置換を全て持つ(VH1と同定)。別の好適な実施態様では、当該の免疫原性を低下させた VH 配列は、位置59及び111の置換を除き、上に特定したアミノ酸置換を全て持つ(VH2と同定)。更に別の好適な実施態様では、当該の免疫原性を低下させた VH 配列は、位置59、64、69、及び111の置換を除き、上に特定したアミノ酸置換を全て持つ(VH3と同定)。更に別の好適な実施態様では、当該の免疫原性を低下させた VH
配列は、位置29、59、64、69、及び111の置換を除き、上に特定したアミノ酸置換を全て持つ(VH4と同定)。更に別の好適な実施態様では、当該の免疫原性を低下させた VH 配列は、上に特定したアミノ酸置換のうち、43、44、71、83、及び114 しか持たない(VH5と同定)。
【0049】
別の実施態様では、本発明は、CR1に特異的に結合すると共に、配列番号2番のアミノ酸番号51−66番(相補性決定領域2(CDR2))に記載された通りの、しかし以下のアミノ酸置換のうちの一つ以上を配列番号2番に持つアミノ酸配列を含む、免疫原性を低下させた分子を提供する:
位置 59: Ser →
Thr; 及び
位置 64: Leu →
Val。
【0050】
別の実施態様では、本発明は、CR1に特異的に結合すると共に、配列番号2番のアミノ酸番号99−112番(相補性決定領域3(CDR3))に記載された通りの、しかし以下のアミノ酸置換を配列番号2番に持つアミノ酸配列を含む、免疫原性を低下させた分子を提供する:
位置 111: Val →
Tyr。
【0051】
別の実施態様では、本発明は、CR1に特異的に結合すると共に:
(a)配列番号2番のアミノ酸番号31−36番(相補性決定領域1(CDR1))に記載された通りのアミノ酸配列;
(b)配列番号2番のアミノ酸番号51−66番(相補性決定領域2(CDR2))に記載された通りの、しかし以下のアミノ酸置換:
位置 59: Ser →
Thr, 及び
位置 64: Leu →
Val;
のうちの一つ以上を配列番号2番に持つ、アミノ酸配列;及び
(c)配列番号2番のアミノ酸番号99−112番(相補性決定領域3(CDR3))であるが、以下のアミノ酸置換:
位置 111: Val →
Tyr。
を配列番号2番に持つ、アミノ酸:
を含む、免疫原性を低下させた分子を提供する。
【0052】
別の実施態様では、本発明は、CR1に特異的に結合すると共に、配列番号4番を含むが、以下のアミノ酸置換のうちの一つ以上を配列番号4番に持つ、免疫原性を低下させた分子を提供する:
位置 15: Leu → Val;
位置 53: Lys → Tyr;
位置 80: His →
Ser;
位置 104: Gly →
Pro;
位置 107: Thr → Lys;
位置 108: Leu →
Val; 及び
位置 111: Arg →
Lys。
【0053】
ある好適な実施態様では、当該の免疫原性を低下させた VL 配列は、上に特定したアミノ酸置換を全て持つ(VL1と同定)。別の好適な実施態様では、当該の免疫原性を低下させた VL 配列は、位置53及び107の置換を除き、上に特定したアミノ酸置換を全て持つ(VL2と同定)。
【0054】
更に本発明は、上記の免疫原性を低下させた抗体V領域:VH1をコードする核酸配列を含むpUC19 E DIVH1、VH2をコードする核酸配列を含むpUC19 E DIVH2、VH3をコードする核酸配列を含むpUC19 E DIVH3、VH4をコードする核酸配列を含むpUC19 E DIVH4、VH5をコードする核酸配列を含むpUC19 E DIVH5、VL1をコードする核酸配列を含むpUC19 E DIVL1、及びVL2をコードする核酸配列を含むpUC19 E DIVL2 、をコードするプラスミドDNAも提供するものである。
【0055】
更に本発明は、VH1−VH5のうちの一つ以上と、VL1−VL2のうちの1つ以上とを含む、免疫原性を低下させた抗CR1抗体を提供する。好ましくは、当該の免疫原性を低下させた抗CR1抗体はヒト定常領域を含むとよい。ある好適な実施態様では、当該の免疫原性を低下させた抗CR1モノクローナル抗体は、免疫原性を低下させた VH4及びVL1を含むと共に、ATCCに寄託された19E9である。別の好適な実施態様では、当該の免疫原性を低下させた抗CR1モノクローナル抗体 は、免疫原性を低下させた VH3 及びVL1を含むと共に、ATCCに寄託された12H10である。更に別の好適な実施態様では、当該の免疫原性を低下させた抗CR1 モノクローナル抗体は、免疫原性を低下させた VH3及びVL2を含むと共に、ATCCに寄託された15A12である。更に別の好適な実施態様では、当該の免疫原性を低下させた抗CR1モノクローナル抗体は、免疫原性を低下させた VH2及びVL1を含むと共に、ATCCに寄託された44H1である。更に別の好適な実施態様では、当該の免疫原性を低下させた抗CR1 モノクローナル抗体は、 免疫原性を低下させた VH5 及びVL2を含むと共に、ATCCに寄託された31C11である。
【0056】
免疫原性を低下させた抗CR1抗体は、キメラ抗体、例えば、しかし限定はしないが、相補性決定領域がマウスであり、そしてフレームワーク領域及び定常領域がヒトであるようなヒト化モノクローナル抗体など、であってよい。ある具体的な実施態様では、当該の免疫原性を低下させたキメラ抗体は、E11マウス可変領域をヒトIgG1定常領域に連結して含むと共に、ATCCに寄託された3G4である。
【0057】
本発明の免疫原性を低下させた抗体はいずれのアイソタイプのものであってもよいが、好ましくはヒトIgG1であるとよい。
【0058】
他の実施態様では、当該の免疫原性を低下させた抗CR1抗体は、免疫グロブリンFcドメインのN末端に融合させた、免疫原性を低下させた抗CR1一本鎖可変領域フラグメント (scFv) を含む、しかしこれに限らない、免疫原性を低下させた抗CR1ポリペプチド抗体である。ここで用いられる場合の、抗体は、一般的には、軽鎖の可変ドメインをポリペプチド・リンカを介して重鎖の可変ドメインに融合させたものから成る融合ポリペプチドを含む、一本鎖抗体(scFv)であってもよい。本発明のscFvは、上述の、本発明の免疫原性を低下させた VH 及びVL のいずれをも含むことができる。
【0059】
また、当該の免疫原性を低下させた抗CR1抗体は抗体フラグメントであってもよい。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性なフラグメントの例には、本抗体をペプシン又はパパインなどの酵素により処理することで作製することのできるscFv、F(ab) 及びF(ab')2 フラグメントがある。抗体は、例えばインタクト免疫グロブリンとして存在するが、あるいは、切断して、パパイン又はペプシンなどの多種のペプチダーゼによる消化で生ずる、多数のよく特徴付けられたフラグメントにすることもできる。ペプシンを、抗体をジスルフィド架橋より下のヒンジ領域で消化すると、ジスルフィド結合によりVH−CH1に接合された軽鎖から成るFabの二量体である、抗体のF(ab)’2 フラグメントが生じる。F(ab)’2 を、穏和条件下で還元して、ジスルフィド架橋をヒンジ領域で分解することでF(ab)’2 二量体をFab’ 単量体に転化させてもよい。Fab’ 単量体は基本的には、ヒンジ領域の部分を持つFabである。エピトープ、抗体及び抗体フラグメントの詳細な解説についてはPaul, ed.,
1993, Fundamental Immunology, Third Edition (ニューヨーク、レイブン・プレス刊)を参照されたい。当業者であれば、このようなFab’
フラグメントは、化学的か、又は組換えDNA技術を用いてde novoで合成できるであろうことは認識されよう。このように、ここで用いる場合の抗体フラグメントという用語には、全抗体の改変により生ずる抗体フラグメントや、又はde novo合成されたものが含まれる。本発明の抗体フラグメントには、上述の本発明の免疫原性を低下させた VH 及びVL のいずれも含めることができる。
【0060】
ある好適な実施態様では、免疫原性を低下させた抗CR1抗体は、その全文を引用をもってここに援用することとするPCT公報 WO 00/34317 及びWO 98/52976に記載された方法に従ってデザインされ、作製される。この実施態様では、マウス抗CR1抗体などの選択された非ヒト抗CR1抗体のVH及びVLをコードするcDNAを開始配列として用いる。該cDNAは、標準的な方法を用いて得ることができる。選択的には、得られたVH 及びVL クローンを、予測されたサイズのインサートについて、例えばPCRなどの当業で公知の標準的方法によりスクリーニングし、選択されたクローンのDNA配列を、標準的方法により決定することができる。相補性決定領域(CDR)の位置は、Kabat et al. (1991)に開示された他の抗体配列を参照して、標準的な方法を用いて決定することができる。
【0061】
非ヒトの開始VH 及びVL 配列を、ヒト生殖細胞系抗体遺伝子のディレクトリと比較する (Cox et al., 1994; Tomlinson et al., 1992)。最も近いマッチヒト生殖細胞系遺伝子を免疫原性を低下させた VH 及びVLの基準として選択する。次に、得られた開始V領域配列にペプチド・スレディングを行って、複数の様々なヒトMHCクラスIIアロタイプへの結合解析を通して、潜在的T細胞エピトープを特定する。配列はまた、適したデータベース、例えばオーストラリア、メルボルンのThe Walter and Eliza Hall Institute of Medical Research、World Wide Web site wehil.wehi.edu.au,などから、プログラム「Searcher」など、適したプログラムを用いて公知のヒトT細胞結合ペプチドの存在についても分析することができる。
【0062】
主要な免疫原性を低下させた VH 及びVL 配列は、開始配列中の多様な好適な非ヒトアミノ酸を保持するようにデザインされる。好ましくは、主要な免疫原性を低下させた配列の作製に、免疫原性を低下させた最終的な分子の結合に影響するであろうアミノ酸置換が少数、必要な場合、複数の他のバリアントVH 及びVL 配列もデザインされるとよい。
【0063】
当該の免疫原性を低下させた可変領域は、重複PCR組換えの方法により、構築される。 クローニング後の非ヒト開始VH 及びVL 遺伝子を、フレームワーク領域を変異誘発して必要な免疫原性を低下させた配列にするためのテンプレートとして用いる。数組の変異原性プライマ・ペアは、変更しようとする領域を包含しつつ、合成される。好適な実施態様では、ベクタVH−PCR1 及びVL−PCR1 (Riechmann et al., 1988)
を、リーダ・シグナル・ペプチド、リーダ・イントロン及びマウス免疫グロブリン・プロモータを含む5‘側フランキング配列、並びに、スプライス部位及びイントロン配列を含む3‘側フランキング配列、を導入するためのテンプレートとして用いることができる。次に、免疫原性を低下させた
生じたV領域を、pUC19など、適したプラスミド内にクローニングし、このDNA配列全体を、免疫原性を低下させた 各VH 及びVLが正しいことを確認する。
【0064】
免疫原性を低下させた重鎖及び軽鎖V−領域遺伝子は、該プラスミドから、非ヒト重鎖免疫グロブリン・プロモータ、リーダ・シグナル・ペプチド、リーダ・イントロン、VH又はVL配列及びスプライス部位を含む、適した制限断片として切り出すことができる。これらを、IgG1定常領域などのヒト定常領域と、哺乳動物細胞での選択マーカとを含む適した発現ベクタに移す。
【0065】
重鎖及び軽鎖発現ベクタは、好ましくは、多種の組み合わせで適した細胞株にエレクトロポレーションにより同時トランスフェクトされるとよい。選択マーカ遺伝子を発現しているコロニを選抜する。トランスフェクトされた細胞クローンによるヒト抗体の産生は、ヒトIgGに関するELISAにより測定することができる。抗体を分泌している細胞株を選抜し、増殖させる。当該の免疫原性を低下させた抗体を、当業で公知の標準的な方法を用いて精製する。
【0066】
好ましくは、当該の免疫原性を低下させた抗体を、RBCへのそれらの結合親和性についてスクリーニングするとよい。ある好適な実施態様では、改良された抗原結合検定法を用い、この検定法では、抗体をRBCに溶液中で反応させた後、検定終了時に細胞を96ウェル・プレートにポリL−リジン及びグルタルアルデヒドを用いて固定し、その直後に基質を添加する。洗浄した赤血球を抗体の希釈液に、96ウェルV底プレート内で加える。結合した抗体を、ビオチン化抗ヒト抗体か、又は、開始非ヒト抗体に結合する抗体で検出した後、標準的な方法に従ってアビジン・アルカリ・ホスファターゼを用いて可視化する。
【0067】
ある好適な実施態様では、免疫原性を低下させた抗CR1抗体は、その全文を引用をもってここに援用することとするPCT公報 WO 00/34317 及びWO 98/52976に記載された方法に従ってデザインされ、作製される。この実施態様では、マウス抗CR1抗体などの選択された非ヒト抗CR1抗体のVH及びVLをコードするcDNAを開始配列として用いる。該cDNAは、標準的な方法を用いて得ることができる。選択的には、得られたVH 及びVL クローンを、予測されたサイズのインサートについて、例えばPCRなどの当業で公知の標準的方法によりスクリーニングし、選抜されたクローンのDNA配列を、標準的方法により決定することができる。相補性決定領域(CDR)の位置は、Kabat et al. (1991)に開示された他の抗体配列を参照して、標準的な方法を用いて決定することができる。
【0068】
非ヒトの開始VH 及びVL 配列を、ヒト生殖細胞系抗体遺伝子のディレクトリと比較する (Cox et al., 1994; Tomlinson et al., 1992)。最も近いマッチヒト生殖細胞系遺伝子を免疫原性を低下させた VH 及びVLの基準として選択する。次に、得られた開始V領域配列にペプチド・スレディングを行って、複数の様々なヒトMHCクラスIIアロタイプへの結合解析を通して、潜在的T細胞エピトープを特定する。配列はまた、適したデータベース、例えばオーストラリア、メルボルンのThe Walter and Eliza Hall Institute of Medical Research、World Wide Web site wehil.wehi.edu.au,などから、プログラム「Searcher」など、適したプログラムを用いて公知のヒトT細胞結合ペプチドの存在についても分析することができる。
【0069】
主要な免疫原性を低下させた VH 及びVL 配列は、開始配列中の多様な好適な非ヒトアミノ酸を保持するようにデザインされる。好ましくは、主要な免疫原性を低下させた配列の作製に、免疫原性を低下させた最終的な分子の結合に影響するであろうアミノ酸置換が少数、必要な場合、複数の他のバリアントVH 及びVL 配列もデザインされるとよい。
【0070】
当該の免疫原性を低下させた可変領域は、重複PCR組換えの方法により、構築される。 クローニング後の非ヒト開始VH 及びVL 遺伝子を、フレームワーク領域を変異誘発して必要な免疫原性を低下させた配列にするためのテンプレートとして用いる。数組の変異原性プライマ・ペアは、変更しようとする領域を包含しつつ、合成される。好適な実施態様では、ベクタVH−PCR1 及びVL−PCR1 (Riechmann et al., 1988)
を、リーダ・シグナル・ペプチド、リーダ・イントロン及びマウス免疫グロブリン・プロモータを含む5‘側フランキング配列、並びに、スプライス部位及びイントロン配列を含む3‘側フランキング配列、を導入するためのテンプレートとして用いることができる。次に、免疫原性を低下させた
生じたV領域を、pUC19など、適したプラスミド内にクローニングし、このDNA配列全体を、免疫原性を低下させた 各VH 及びVLについて正しいことを確認する。
【0071】
免疫原性を低下させた重鎖及び軽鎖V−領域遺伝子は、該プラスミドから、非ヒト重鎖免疫グロブリン・プロモータ、リーダ・シグナル・ペプチド、リーダ・イントロン、VH又はVL配列及びスプライス部位を含む、適した制限断片として切り出すことができる。これらを、IgG1定常領域などのヒト定常領域と、哺乳動物細胞での選択マーカとを含む適した発現ベクタに移す。
【0072】
重鎖及び軽鎖発現ベクタは、好ましくは、多種の組み合わせで適した細胞株にエレクトロポレーションにより同時トランスフェクトされるとよい。選択マーカ遺伝子を発現しているコロニを選抜する。トランスフェクトされた細胞クローンによるヒト抗体の産生は、ヒトIgGに関するELISAにより測定することができる。抗体を分泌している細胞株を選抜し、増殖させる。当該の免疫原性を低下させた抗体を、当業で公知の標準的な方法を用いて精製する。
【0073】
好ましくは、当該の免疫原性を低下させた抗体を、RBCへのそれらの結合親和性についてスクリーニングするとよい。ある好適な実施態様では、改良された抗原結合検定法を用い、この検定法では、抗体をRBCに溶液中で反応させた後、検定終了時に細胞を96ウェル・プレートにポリL−リジン及びグルタルアルデヒドを用いて固定し、その直後に基質を添加する。洗浄した赤血球を抗体の希釈液に、96ウェルV底プレート内で加える。結合した抗体を、ビオチン化抗ヒト抗体か、又は、開始非ヒト抗体に結合する抗体で検出した後、標準的な方法に従ってアビジン・アルカリ・ホスファターゼを用いて可視化する。
【0074】
5.2 病原性抗原性分子に結合する抗原結合部分及び作製
更に本発明は、セクション5.1に解説した通りの免疫原性を低下させた抗CR1抗体と、病原性抗原性分子に結合する抗原結合部分とを含む、免疫原性を低下させた二重特異的分子も提供するものである。
【0075】
目的の抗原(例えば哺乳動物の循環中から除去しようとする抗原など)に対する抗体又は抗体フラグメントは、適した対象を、抗原を免疫原として免疫することにより、調製することができる。免疫後の対象中の抗体価を、例えば酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)などの標準的な技術により、固定したポリペプチドを用いて経時的に観察することができる。必要に応じ、当該抗体分子を哺乳動物から(例えば血液から)単離し、プロテインAクロマトグラフィなどの公知の技術により更に精製して、IgG画分を得ることができる。
【0076】
例えば特定の抗体価が最高となったときなど、免疫から適当な時間後に、抗体産生細胞を対象から得、例えばKohler and Milstein (1975, Nature 256:495−497)が最初に解説したハイブリドーマ技術、Kozbor et al. (1983, Immunol.
Today 4:72)によるヒトB細胞ハイブリドーマ技術、Cole
et al. (1985, Monoclonal 抗体 and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp.
77−96)によるEBV−ハイブリドーマ技術又はトリオーマ技術など、標準的な技術によりモノクローナル抗体を調製するために用いることができる。ハイブリドーマを作製する技術は公知である(概略的にはCurrent Protocols in Immunology, 1994, John Wiley & Sons, Inc.,
New York, NY)を参照されたい。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、例えば標準的なELISA検定法を用いるなど、目的のポリペプチドに結合する抗体を探してハイブリドーマ培養上清をスクリーニングすることにより、検出される。
【0077】
モノクローナル抗体は実質的に均質な抗体の集団から得られ、即ち、該集団を含む個々の抗体は、少量存在するかも知れない天然で発生する変異を除き、同一である。このように、修飾成句「モノクローナル」は、当該抗体の特徴を、別個の抗体の混合物ではないと示すものである。例えば、当該のモノクローナル抗体を、Kohler et al., 1975, Nature, 256:495が最初に解説したハイブリドーマ法を用いて作製してもよく、あるいは組換えDNA法で作製してもよい(米国特許第4,816,567号)。ここで用いられる用語「モノクローナル抗体」は、更に、当該抗体が免疫グロブリンであることも指す。
【0078】
モノクローナル抗体を作製するハイブリドーマ法においては、マウス又は他の適したホスト動物、例えばハムスター、を上述したように免疫して、免疫処理に用いたタンパク質に特異的に結合するであろう抗体を産生する又は産生することのできるリンパ球を惹起する(概略的には、引用をもってその全文をここに援用することとする米国特許第 5,914,112号を参照されたい)。
【0079】
代替的には、リンパ球をin vitroで免疫してもよい。次にリンパ球を骨髄腫細胞にポリエチレングリコール等の適した融合剤を用いて融合してハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal 抗体: Principles and Practice, pp. 59−103 (Academic Press, 1986)))。このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、好ましくは未融合の親骨髄腫細胞の成長又は生存を阻害する一種以上の物質を含有する適した培地に接種及びこの培地で成長させる。例えば、親骨髄腫細胞が、酵素ヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT 又はHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培地は、典型的には、HGPRT欠損細胞の成長を防ぐ物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン(HAT培地)を含むであろう。
【0080】
好適な骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定な高レベルの抗体産生を支援し、そしてHAT培地などの培地に対して感受性あるものである。これらの中でも好適な骨髄腫細胞株は、例えば米国カリフォルニア州サンディエゴ、Salk インスティテュート・セル・ディストリビューション・センターから入手できるMOPC−21及びMPC−11マウス腫瘍由来のものや、米国メリーランド州ロックビル、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから入手可能なSP−2細胞由来のものなどのマウス骨髄腫細胞である。
【0081】
ヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株も、ヒトモノクローナル抗体の産生について解説されている (Kozbor, 1984, J. Immunol., 133:3001; Brodeur et al., Monoclonal
antibody Production Techniques and Applications, pp. 51−63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。ハイブリドーマ細胞が成長中の培地を、当該抗原に対するモノクローナル抗体の産生について検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞が産生するモノクローナル抗体の結合特異性を、免疫沈降法や、又は、放射免疫検定法(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)などのin vitro結合検定法により、判定する。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson et al., 1980, Anal. Biochem., 107:220 のスカッチャード分析、又は、Biacore装置などの表面プラズモン共鳴法により、判定することができる。
【0082】
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞を特定したら、そのクローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法(Goding, Monoclonal 抗体: Principles and Practice, pp. 59−103 (Academic Press, 1986))で成長させてよい。この目的のための適した培地には、例えば、D−MEM 又はRPMI−1640 培地がある。加えて、ハイブリドーマ細胞を動物の腹水腫瘍としてin vivoで成長させてもよい。該サブクローンにより分泌されるモノクローナル抗体を、培地、腹水又は血清から、例えばプロテインA−セファロース、ヒドロキシルアパタイト・クロマトグラフィ、ゲル電気泳動法、透析、又はアフィニティ・クロマトグラフィなどの従来の免疫グロブリン精製法により、適宜分離する。
【0083】
モノクローナル抗体分泌性ハイブリドーマを調製する代わりに、病原体か、又は、本発明の病原性抗原性分子ポリペプチドに対するモノクローナル抗体は、組換えコンビナトリアル免疫グロブリン・ライブラリ(例えば抗体ファージ・ディスプレイ・ライブラリ)を目的の抗原でスクリーニングすることにより、同定及び単離することができる。ファージ・ディスプレイ・ライブラリを作製及びスクリーニングするためのキットは市販されている(例えばファルマシア社リコンビナント・ファージ抗体システム、カタログ番号27−9400−01; 及びストラタジーン社抗原SurfZAP ファージ・ディスプレイ・キット、カタログ番号240612)。加えて、抗体ディスプレイ・ライブラリの作製及びスクリーニングで用いるために特に適した方法及び試薬の例は、例えば米国特許第5,223,409号及び第5,514,548号; PCT公報 No. WO 92/18619; PCT公報 No. WO 91/17271; PCT公報 No. WO 92/20791; PCT公報 No. WO 92/15679; PCT公報 No. WO 93/01288; PCT公報 No. WO 92/01047; PCT公報 No. WO 92/09690; PCT公報 No. WO 90/02809; Fuchs et al., 1991,
Bio/Technology 9:1370−1372; Hay et
al., 1992, Hum. Antibod. Hybridomas
3:81−85; Huse et al., 1989, Science 246:1275−1281; Griffiths et al., 1993, EMBO J. 12:725−734に見ることができる。
【0084】
加えて、適した抗原特異性を持つマウス抗体分子由来の遺伝子を、適した対生物活性のヒト抗体分子由来の遺伝子と一緒にスプライシングすることによる「キメラ抗体」の作製のために開発された技術(Morrison, et al., 1984, Proc. Natl. Acad.
Sci., 81, 6851−6855; Neuberger, et al., 1984, Nature 312,
604−608; Takeda, et al.,
1985, Nature, 314, 452−454)を用いることができる。キメラ抗体とは、例えばマウスmAb由来の改変領域と、ヒト免疫グロブリン定常領域とを有するものなど、異なる部分が異なる動物種由来である分子である。(例えば引用をもってその全文をここに援用することとするCabilly et al., 米国特許第4,816,567号;及びBoss et al., 米国特許第 4,816,397号を参照されたい)。
【0085】
ヒト化抗体は、非ヒト種を由来とする一つ以上の相補性決定領域(CDR)と、ヒト免疫グロブリン分子を由来とするフレームワーク領域とを有する、非ヒト種由来の抗体分子である。(例えば引用をもってその全文をここに援用することとする米国特許第5,585,089号を参照されたい)このようなキメラ及びヒト化モノクローナル抗体は、当業で公知の組換えDNA技術により、PCT公報 No. WO 87/02671; ヨーロッパ特許出願 184,187; ヨーロッパ特許出願 171,496; ヨーロッパ特許出願 173,494; PCT公報 No. WO 86/01533; 米国特許第4,816,567号及び第5,225,539号; ヨーロッパ特許出願 125,023; Better et al., 1988,
Science 240:1041−1043; Liu et
al., 1987, Proc. Natl. Acad.
Sci. USA 84:3439−3443; Liu et al., 1987, J. Immunol.
139:3521−3526; Sun et al., 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. USA
84:214−218; Nishimura et al., 1987, Canc. Res. 47:999−1005; Wood et al., 1985, Nature 314:446−449; Shaw et al., 1988,
J. Natl. Cancer Inst. 80:1553−1559; Morrison 1985,
Science 229:1202−1207; Oi et al., 1986, Bio/Techniques
4:214; Jones et al., 1986, Nature 321:552−525; Verhoeyan et al.,
1988, Science 239:1534; 及び Beidler et al., 1988, J. Immunol. 141:4053−4060に解説された方法を用いるなどして、作製することができる。
【0086】
相補性決定領域(CDR)グラフティングは、抗体をヒト化する別の方法である。それは完全な抗原特異性及び結合親和性をヒトフレームワークに移すためにマウス抗体を整形することを含む(Winter et al. 米国特許第5,225,539号)。CDRをグラフトされた抗体は、例えばQueen et al., 1989 (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:10029)に解説されたようなIL−2受容体に対する抗体;Riechmann et al. (1988, Nature,
332:323に解説されたような細胞表面受容体−CAMPATHに対する抗体;Cole et al. (1991, Proc. Natl. Acad.
Sci. USA 88:2869)のB型肝炎に対する抗体;や、Tempest
et al. (1991, Bio−Technology
9:267)のウィルス抗原−呼吸系発疹ウィルスに対する抗体など、多種の抗原に対して成功裡に構築されてきた。マウスモノクローナル抗体のCDRがヒト抗体にグラフトされた、CDRグラフト抗体が生じる。グラフティング後、大半の抗体は、フレームワーク領域に付加的なアミノ酸変更があることで親和性を維持するために有利である。これはおそらく、フレームワークの残基は、CDRのコンホメーションを維持するために必要であるからであり、そしていくつかのフレームワークの残基は、抗原結合部位の一部であることが実証されている。しかしながら、いずれの抗原性部位も導入しないようにフレームワーク領域を保存するために、当該配列を、コンピュータ・モデリングに従って確立された生殖細胞系配列に、比較する。
【0087】
完全ヒト抗体がヒト患者の治療的治療にとっては特に好ましい。このような抗体は、内因性免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子を発現できないが、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子を発現できるようなトランスジェニック・マウスを用いることで、作製することができる。該トランスジェニック・マウスは、通常の方法で、例えば免疫原の全部又は一部など、選択された抗原で免疫される。
【0088】
抗原に対するモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を用いて得ることができる。トランスジェニック・マウスが持つヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化中に再編成した後、クラス・スイッチング及び体細胞変異を起こす。このように、このような技術を用いると、治療上有用なIgG、IgA及びIgE抗体を作製することができる。ヒト抗体を作製するこの技術の概観については、Lonberg and Huszar (1995, Int. Rev. Immunol.
13:65−93)を参照されたい。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を作製するこの技術の詳細な議論や、このような抗体を作製するためのプロトコルについては、例えば米国特許第5,625,126号;米国特許第5,633,425号;米国特許第5,569,825号;米国特許
第5,661,016号;及び米国特許第5,545,806号を参照されたい。加えて、アブジェニックス社(カリフォルニア州フレモント、例えば米国特許第5,985,615号を参照されたい)及びメダレックス社(ニュージャージー州プリンストン)などの会社は、選択された抗原に対するヒト抗体を、上述したものと同様な技術を用いて提供しようと、取り組んでいる。
【0089】
5.3 二重特異的分子
本発明は、免疫原性を低下させた二重特異的分子、例えばCR1に結合する免疫原性を低下させた第一抗原認識部分と、対象の循環中から除去しようとする目的の抗原のエピトープに結合する第二抗原認識部分とを有することを特徴とする、免疫原性を低下させた二重特異的抗体など、を提供するものである。
【0090】
本発明によれば、二重特異的分子の第一抗原認識部分は、免疫原性を低下させた抗CR1結合ドメインとエフェクタ・ドメインとを含有するいずれのポリペプチドであってもよい。好適な実施態様では、当該の免疫原性を低下させた抗CR1抗体は、そのそれぞれにおいて一つ以上のヒトT細胞エピトープが一つ以上のアミノ酸の置換により改変されているような1つ以上の
非ヒトVH 又は VL 配列を含む。好適な実施態様では、当該の免疫原性を低下させた 抗CR1 抗体は、セクション5.1に解説するようなVH1−VH5のうちの1つ以上と、VL1−VL2のうちの1つ以上とを含む。当該の免疫原性を低下させた抗CR1結合部分は、セクション5.1に解説された、いずれの免疫原性を低下させた抗CR1分子であってもよい。ある好適な実施態様では、前記第一抗原認識部分は免疫原性を低下させた 抗CR1 mAbである。ある好適な実施態様では、当該の免疫原性を低下させた抗CR1 モノクローナル抗体は19E9、12H10、15A12、44H1、31C11である。別の実施態様では、前記第一抗原認識部分は、CR1受容体に対する特異性を持つと共に、免疫グロブリンFcドメインのN末端に融合した一本鎖可変領域フラグメント(scFv)を含む、しかしこれに限らない免疫原性を低下させた抗CR1ポリペプチド・抗体である。前記第一抗原結合部分は、また、例えば、しかし限定はしないが、相補性決定領域がマウスであり、そしてフレームワーク領域がヒトであるため、当該抗体で治療したヒトの患者において免疫応答の可能性が低いような、免疫原性を低下させたヒト化モノクローナル抗体など、免疫原性を低下させたキメラ抗体であってもよい(引用をもってその全文をここに援用する米国特許第4,816,567号、第4,816,397号、第5,693,762号;第5,585,089号;第5,565,332号及び第5,821,337号 )。好ましくは、当該キメラ抗体のFcドメインは、貪食細胞上のFc受容体で認識可能であり、こうしてRBC−免疫複合体の輸送及びその後の蛋白質分解が容易であるとよい。ある具体的な実施態様では、当該の免疫原性を低下させたキメラ抗体は、E11マウス可変領域をヒトIgG1定常領域に連結して含む3G4である。
【0091】
本発明によれば、二重特異的分子の前記第二抗原認識部分は、抗体又はその抗原結合フラグメントを含め、しかしこれらに限らず、目的の抗原を認識して結合するいずれの分子部分であってもよい。前記第二抗原認識部分が結合する先の抗原性分子は、循環中に存在すると共に、治療しようとする対象にとって潜在的に有害であるか、又は好ましくないいずれの物質であってもよく、その中には、限定はしないが、タンパク質又は薬物又は毒素、自己抗体又は自己抗原、あるいは何らかの感染性物質又はその産物の分子、がある。抗原性分子とは、疾患又は異常又はいずれかの他の望ましくない状態の原因となる物質(例えば病原体)又はその一部である抗原性決定基を含有する(又は結合ドメインが結合することのできる)いずれかの分子である。
【0092】
本発明の二重特異的分子の前記第二抗原結合認識部分は、病原性抗原性分子を認識して結合する、モノクローナル抗体などの抗体であってよい。更に、当該の二重特異的分子の抗原結合部分は、抗原性分子を認識して結合する抗体のいずれかの抗原結合フラグメントであってもよい。別の好適な実施態様では、前記抗原結合抗体フラグメントは、免疫グロブリン分子のFab、Fab'、(Fab')2、又はFvフラグメント である。別の好適な実施態様では、当該の抗原結合抗体フラグメントは、ファージに表示された抗体フラグメントのライブラリなどから、親和性スクリーニング及びその後の組換え発現により得ることができる一本鎖Fv(scFv)フラグメントである。更に別の実施態様では、当該の二重特異的分子の抗原結合抗体フラグメント部分は、一本鎖抗体 (scAb)である。ここで用いられる場合、一本鎖抗体(scAb)には、免疫グロブリン分子の定常κドメインなどの定常ドメインに融合されたscFvから成る抗体フラグメントが含まれる。
【0093】
また、当該の二重特異的分子の第二抗原認識部分は、非タンパク質性部分であってもよい。ある実施態様では、前記第二抗原認識部分は核酸である。別の実施態様では、前記第二抗原認識部分は有機低分子である。更に別の実施態様では、前記第二抗原結合部分はオリゴ糖である。
【0094】
多様な精製済み二重特異的分子を組み合わせて、二重特異的分子の「カクテル」にすることができる。ここで用いる場合、本発明の二重特異的分子のカクテルとは、抗原又は病原体の1つ又は混合物を標的とする精製済み二重特異的分子の混合物を言う。具体的には、二重特異的分子のカクテルとは、異なる又は同じ抗原性分子を標的とすると共に、種類が混合されたものである複数の第二抗原結合ドメインを有する精製済み二重特異的分子の混合物を言う。例えば、第二抗原結合ドメインの混合物は、ペプチド、核酸、及び/又は有機低分子の混合物であってもよい。二重特異的分子のカクテルは、一般に、多様な精製済み二重特異的分子を混合することにより、調製される。このような二重特異的分子カクテルは、なかでも、個々の患者のニーズに従ってテーラーされた個人向け医療に有用である。
【0095】
二重特異的分子は、ヒトCR1受容体に特異的な免疫原性を低下させた抗CR1抗体と、病原性抗原性分子に特異的な第二抗体とを含む、架橋された抗体であってよい。当該の二重特異的分子は、更に、組換えにより作製されると共に、CR1受容体を認識する免疫原性を低下させたCR1結合ドメインと、病原性抗原性分子を認識する第二ドメインとを有する抗体であってもよい。
当該の二重特異的分子は、また、やはりタンパク質trans−スプライシングの方法を用いて調製することができ、免疫原性を低下させた CR1 結合領域である第一抗原認識部分と、病原性抗原性分子を認識する第二抗原認識部分とを有する。
【0096】
ある実施態様では、本発明の免疫原性を低下させた抗CR1二重特異的分子は、免疫グロブリン重鎖(Fc)のCH2及びCH3部分のアミノ末端に結合された第一結合ドメイン(BD1)を、第二結合ドメイン(BD2)に、このFcドメインのカルボキシ末端で結合させたものから基本的に成る、又は代替的には、結合させたものを含む、単一分子(好ましくはポリペプチド)である。別の実施態様では、該CH2ドメイン及びCH3ドメインの位置は、逆の順序で存在する。該結合ドメインの一方がCR1に結合し、該結合ドメインの他方が病原性抗原性分子に結合する。該結合ドメインは、個別に、所望の特異性を持つ、scFv (即ち、ポリペプチド・リンカを介してVHに融合させたVL)であっても、あるいはその受容体又はリガンド又は結合ドメインであっても、あるいは他の結合相手であってもよい。例えば、病原性抗原性分子に結合する結合ドメインは、ウィルスに対する細胞受容体(例えばHIVに結合するCD4及び/又はケモカイン受容体)でも、 又は、細菌に対する受容体(例えばグラム陰性細菌に結合するポリミキシン又はその多量体)でも、又は
薬物又は他の分子に対する細胞受容体(例えばアレルギー反応を治療又は防止するためにIgEに結合するIgE受容体のαドメイン)、又は、自己抗体に対する受容体(例えば重症筋無力症を治療又は防止するためのアセチルコリン受容体)でもよい。
【0097】
結合ドメインがポリペプチドではないか、又は、当該の二重特異的分子の他の部分との融合タンパク質としては容易には発現しない実施態様では、このような結合ドメインを、当該の二重特異的分子の残りの部分に架橋することもできる。例えば、ポリミキシンを、CH2CH3 と、CR1に結合する結合ドメインとを含む融合ポリペプチドに架橋することができる。
【0098】
別の実施態様では、本発明の二重特異的分子は、BD1を免疫グロブリンFcドメイン(ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメイン)のアミノ末端に結合させたものから基本的に成る、又はこれらを含む、第一分子(好ましくはポリペプチド)と、BD2ドメインをFcドメインのカルボキシ末端に結合させたFcドメインから基本的に成る、又はこれらを含む、第二分子(好ましくはポリペプチド)とから成る二量体分子であり、この場合、前記第一及び第二ポリペプチドのFcドメインは、相互に相補的であり、かつ、相互に結び付くことができる。BD1 及びBD2 は上に解説した通りである。
【0099】
ある具体的な実施態様では、当該の二重特異的分子(好ましくはポリペプチド)の単量体の一方又は両方は、可変軽鎖ドメイン(VL)及び定常軽鎖ドメイン(CL)と、それに続く、可変重鎖ドメインのアミノ末端に結合した(いずれかの構造/配列の)リンカ分子と、それに続くCH1ドメインと、ヒンジ領域と、CH2ドメインと、CH3ドメインとから基本的に成るか、又は、これらを含む。
【0100】
ある具体的な実施態様では、当該の二重特異的分子(好ましくはポリペプチド)の単量体の一方又は両者は、CH1ドメインのアミノ末端に結合したscFvと、それに続くヒンジ領域と、CH2ドメインと、CH3ドメインとから基本的に成るか、又はこれらを含む。
【0101】
別の実施態様では、本発明の免疫原性を低下させた抗CR1二重特異的分子は、2つの別々の抗原(その一方はCR1であり、他方は病原性抗原性分子である)に対して特異性を持つ2つの別々のscFvを含む分子である。当該の分子(好ましくはポリペプチド)は、CH2ドメインに結合した第一scFvドメインと、それに続くCH3ドメインと、第二scFVドメインとから基本的に成るか、又はこれらを含む。
【0102】
別の実施態様では、本発明の二重特異的分子は、2つの別々の抗原に対して特異性を持つ2つの可変領域から基本的に成るか、又はこれらを含む分子である。当該の分子(好ましくはポリペプチド)は、可変軽鎖ドメインに結合した第一可変重鎖ドメインと、それに続くCH2ドメインと、CH3ドメインと、可変重鎖ドメインと、可変軽鎖ドメインとから基本的に成るか、又はこれらを含む。
【0103】
代替的には、CH2及びCH3ドメインの位置を交換してもよい。更に、本発明は、ドメインを更に相互に対して異なる位置に並べ変えつつ、その機能的特性、即ちCR1への結合、病原性抗原性分子への結合、及びマクロファージによる循環中からの除去能を保持することも考察する。更に、上の議論から明白であるように、上述した結合ドメインは、好ましくは、しかし必ずしもではないが、(ペプチドを含む)ポリペプチドであるとよい。更に、当該の結合ドメインは、結合を媒介する適した構造に、共有又は非共有結合を介して所望の結合特異性を提供することができる。例えば、当該の結合ドメインに、ビオチン化分子に非共有結合により結合させたアビジン又はストレプトアビジンを含めてもよく、該ビオチン化分子はひいては病原性抗原性分子に結合する。
【0104】
更に、本発明は、それぞれを引用をもってその全文をここに援用することとするWO 01/80883及びWO 02/46208に開示された方法で調製される免疫原性を低下させた二重特異的分子も包含する。例えば、2つの結合ドメイン(BD1及びBD2)の位置を当該二重特異的分子について交換してもよい。
【0105】
5.3 二重特異的分子の作製法:化学的架橋
本発明で用いられる二重特異的分子は、抗体を化学的に架橋することにより、作製することができる。例えば、それぞれを引用をもってその全文をここに援用することとする米国特許第5,487,890号、第5,470,570号、第5,879,679号、PCT公報 WO 02/075275、2002年9月16日に出願された米国仮出願 No. 60/411,731、2002年9月16日に出願された米国仮出願No. 60/411,421、2003年3月28日に出願された米国仮出願番号未定、弁理士整理番号No. 9635−046−888を参照されたい。
【0106】
本発明の好適な実施態様では、当該の二重特異的分子は、一つ以上の抗原結合抗体又は抗体フラグメントに架橋させた、免疫原性を低下させた抗CR1 mAb を含む。抗CR1 mAbなどの抗CR1抗体と、抗原結合抗体フラグメントとを、架橋剤を介して架橋することにより結合させることが好ましい。タンパク質を結合させるための当業で公知のいずれかの架橋化学法を、本発明で用いることができる。本発明のある好適な実施態様では、前記抗CR1 mAb及び前記抗原結合抗体フラグメントを、架橋剤スルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル) シクロヘキサン−1−カルボキシレート (sSMCC) 及びN−スクシンイミジル−S−アセチル−チオアセテート(SATA)を用いて作製する。本発明の別の好適な実施態様では、前記抗CR1 mAb 及び前記抗原結合抗体フラグメントを、 ポリ−(エチレングリコール) 架橋剤 (PEG)を介して結合させる。この実施態様では、前記PEG部分をいずれの所望の長さとすることもできる。 例えば、前記PEG部分は、200乃至20,000ダルトンの範囲の分子量を有することができる。好ましくは、前記PEG部分は、500乃至1000ダルトンの範囲、又は1000乃至8000ダルトンの範囲、より好ましくは3250乃至5000ダルトンの範囲、そして最も好ましくは約5000ダルトンの分子量を有するとよい。このような二重特異的分子は、架橋剤N−スクシンイミジル−S−アセチル−チオアセテート (SATA) 及びポリ(エチレングリコール)−マレイミド、例えばモノメトキシポリ(エチレングリコール)−マレイミド(mPEG−MAL) 又はNHS−ポリ(エチレングリコール)−マレイミド (PEG−MAL)を用いて作製することができる。PEGで結合された二重特異的分子の作製法は、2002年9月16日に出願された米国仮出願No. 60/411,731に解説されている。
【0107】
5.3 二重特異的分子を作製する方法:組換え技術
本発明で用いられる二重特異的分子は、組換えによっても作製可能であるが、このとき、所望の結合特異性(抗体抗原が組み合わさる部位)を持つ抗体可変ドメインをコードするヌクレオチド配列は、免疫グロブリン定常ドメイン配列をコードするヌクレオチド配列に融合される。例えば引用をもってその全文をここに援用することとするPCT公報 WO 01/80883を参照されたい。該融合は、好ましくは、ヒンジ、CH2、及びCH3領域のうちの少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとなされるとよい。更に、第一重鎖定常領域(CH1)に、遊離チオール基を持つアミノ酸残基を含有させると、ジスルフィド結合が、ハイブリドーマ中での当該タンパク質の翻訳時に、可変ドメインと重鎖との間に形成されるため、好適である(Arathoon et al., WO
98/50431を参照されたい)。
【0108】
このアプローチのある好適な実施態様では、当該の二重特異的抗体は、一方のアームを定常CH2及びCH3ドメインに融合させた、第一結合特異性を持つハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、他方のアームの(第二結合特異性を提供する)ハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖ペアとから構成される(例えば1994年3月3日に公開されたWO 94/04690 を参照されたい)。ある実施態様では、免疫グロブリン重鎖融合体と、必要に応じて免疫グロブリン軽鎖もコードするDNAを別々の発現ベクタ内に挿入し、適したホスト生物に同時トランスフェクトする。別の実施態様では、2つ又は3つ全てのポリペプチド鎖のコーディング配列を1つの発現ベクタに挿入する。単一のポリペプチドを含む二重特異的分子は、組換えによっても作製することができる。ある実施態様では、放出された腫瘍抗原に結合する抗原認識部分をコードする核酸を、CR1受容体に結合する抗原認識部分をコードする核酸に融合させて、一個のポリペプチド二重特異的分子をコードする融合核酸を得る。こうしてこの核酸を適したホスト内で発現させて、当該の二重特異的分子を産生させる。
【0109】
ある具体的な実施態様では、当該の二重特異的分子は、CR1に結合する第一抗原認識部分と、放出された腫瘍関連抗原のエピトープに結合する第二抗原認識部分とを有する二重特異的免疫グロブリン分泌細胞を作製するステップを含む方法により、作製される。本方法は、CR1に結合する免疫グロブリンを発現する第一細胞を、放出された腫瘍関連抗原に結合する免疫グロブリンを発現する第二細胞に融合させるステップと、当該の二重特異的免疫グロブリンを発現する細胞を選抜するステップとを含む。別の具体的な実施態様では、CR1に結合する少なくとも第一抗原認識部分と、放出された腫瘍関連抗原のエピトープに結合する第二抗原認識部分とを含む二重特異的分子は、少なくとも前記第一抗原認識部分をコードする第一DNA配列と、少なくとも前記第二抗原認識部分をコードする第二DNA配列とで、細胞を形質転換するステップと、前記第一DNA配列及び前記第二DNA配列を個別に発現させることにより、前記第一及び第二抗原認識部分が別々の分子として産生されて、前記形質転換後の一個の細胞内で集合して一緒になり、CR1には第一抗原認識部分で結合することができ、そして循環中から除去しようとする抗原には第二抗原認識部分で結合することができるようにする、ステップとを含む方法により、作製される。
【0110】
5.3 二重特異的分子を作製する方法:タンパク質trans−スプライシング
本発明で用いられる二重特異的分子は、タンパク質trans−スプライシングの方法を用いても作製することができる。例えば引用をもってその全文をここに援用することとする、 PCT公報 WO 02/46208を参照されたい。当該の方法は、抗CR1 mAbなどの第一抗原認識部分を、ペプチドもしくはポリペプチド、核酸、及び有機低分子などの放出された腫瘍関連抗原のエピトープに結合する第二抗原認識部分に、直接又はリンカを介して結合させて、二重特異的分子を形成するために用いることができる。代替的には、当該の方法は、第一抗原認識部分をストレプトアビジンに結合させて、ビオチン化第二抗原認識部分に結合させることのできる第一抗原認識部分−ストレプトアビジン融合分子を形成するために、用いることもできる。
【0111】
タンパク質trans−スプライシングを用いた方法では、前記第一抗原認識部分を、適したスプリット・インテインのN−インテインのN末端に結合させて、N−インテイン第一抗原認識部分フラグメントを作製し、他方、当該の第二抗原認識部分を、スプリット・インテインのC−インテインのC末端に結合させて、C−インテイン第二抗原認識部分フラグメントを作製する。次に、前記N−インテイン第一抗原認識部分フラグメントと、前記C−インテイン第二抗原認識部分フラグメントとを、これらが再構成してtrans−スプライシングを起こして当該の二重特異的分子を生じるように、一緒にする。
【0112】
タンパク質trans−スプライシングにより生ずる当該の二重特異的分子は、第一抗原認識部分に結合した単一の第二抗原認識部分を含有することができる。代替的には、本発明の二重特異的分子は、第一抗原認識部分の様々な領域に結合した2つ以上の第二抗原認識部分も含有することができる。例えば、当該の二重特異的分子は、第一抗原認識モノクローナル抗体の重鎖のそれぞれに結合した2つの第二抗原認識部分を含有することができる。2つ以上の第二抗原認識部分を、当該の二重特異的分子に含有させる場合、このような第二抗原認識部分は同じ又は異なる抗原認識部分であってよい。この第一及び第二抗原認識部分は、除去しようとする同じ放出された腫瘍関連抗原を標的とする異なる抗原認識部分であってもよい。本発明のある好適な実施態様では、当該の第一及び第二抗原認識部分は、除去しようとする抗原性分子を協働的に標的とする。非限定的な一例として、当該の第二抗原認識部分の一方は、放出された腫瘍関連抗原に対する他方の第二抗原認識部分の結合を高めることで、放出された腫瘍関連抗原の除去を促すものでもよい。また当該の第一及び第二抗原認識部分は、除去しようとする異なる放出された腫瘍関連抗原を標的とする異なる抗原認識部分であってもよい。
【0113】
多様なスプリット・インテインを、本発明の二重特異的分子の作製に用いることができる。本発明のある局面では、天然で生じるスプリット・インテインを二重特異的分子の作製に用いる。本発明の別の局面では、天然で生じる非スプリット・インテインに基づく操作されたスプリット・インテインを、二重特異的分子の作製に用いる。本発明の多様な実施態様では、当該改変により、trans−スプライシングにおけるインテインの能力が向上又は高められるように、及び/又は、trans−スプライシング・プロセスの制御が可能になるように、N−インテイン及び/又はC−インテインに1つ以上のアミノ酸残基を追加、欠失、及び/又は変異させることにより、スプリット・インテインを改変することができる。ある好適な実施態様では、Cys 残基をC−インテインのカルボキシ末端に含めて、C−インテインに結合した分子部分はCysで始まらなければならないという要件を緩和する。他の好適な実施態様では、一つ以上の天然近位エクステイン残基を−及び/又はC−インテインに加えて、外来エクステイン成分中でのtrans−スプライシングを容易にする。
【0114】
ある好適な実施態様では、シネコシスティス(原語:Synechocystis )種 PCC6803 のDnaE遺伝子にコードされたスプリット・インテインのtrans−スプライシング系を、本発明の二重特異的分子の作製に用いる。本発明の別の実施態様では、マイコバクテリウム−ツベルキュローシス(原語:Mycobacterium tuberculosis )RecA インテインに基づく操作されたスプリット・インテイン系を用いる。インテイン抗原認識部分フラグメントが別々のホスト内で発現する二重特異的分子の作製は、in vitro で行うことができる。また、二重特異的分子の作製は、in vivoでも行うことができる。ある実施態様では、インテイン抗原認識部分フラグメントをコードする核酸を、別々のベクタに挿入した後、これらのベクタを、当該の二重特異的分子のin vivo産生に向けてホストに同時トランスフェクトする。別の実施態様では、インテイン・フラグメントをコードする核酸を同じベクタ内に挿入した後、このベクタを当該の二重特異的分子のin vivo産生に向けてホストにトランスフェクトする。
【0115】
本方法においては、N−インテイン第一抗原認識部分フラグメントを、CR1に結合する適した抗原認識部分を、適した・スプリット・インテインのN−インテインのN末端に融合させることにより、作製することが好ましい。ある好適な実施態様では、抗CR1 mAbの重鎖のC末端を、スプリット・インテインのN−インテインのN末端に融合させる。C−インテイン第二抗原認識部分フラグメントは、好ましくは、除去しようとする放出された腫瘍関連抗原のエピトープに結合する適した抗原認識部分を、適したスプリット・インテインのC−インテインのC末端に融合させることにより、作製されるとよい。該C−インテインのスプライス接合部のC末端側すぐにあるアミノ酸残基はシステイン、セリン、又はスレオニンである。本発明の別の実施態様では、ストレプトアビジンを、スプライス接合部のすぐ下流にあるCys、Ser、又はThrを含むC−インテインのC末端に融合させることによりC−インテイン・ストレプトアビジンを作製し、これをtrans−スプライシングに用いて第一抗原認識部分−ストレプトアビジンの融合分子を生じさせ、この融合分子をその後、ビオチン化第二抗原認識部分と反応させて、当該の二重特異的分子を生じさせる。アビジンを含め、しかしこれに限らず、ビオチンに特異的に結合する他の分子も本発明の範囲内にあると理解されている。
【0116】
ある実施態様では、当該の二重特異的分子は、N−インテイン第一抗原認識部分フラグメントとC−インテイン第二抗原認識部分フラグメントとを、in vitroで、これらのフラグメントが再構成及びtrans−スプライシングを起こすように混合することにより、作製される。別の実施態様では、第一抗原認識部分−ストレプトアビジンの分子は、N−インテイン第一抗原認識部分フラグメント及びC−インテイン・ストレプトアビジンフラグメントをinvitroで混合することで、第一抗原認識部分−ストレプトアビジン分子を生じさせることにより、作製される。次に、当該の二重特異的分子を、前記の第一抗原認識−ストレプトアビジン分子のビオチン化第二抗原認識部分との反応により、生じさせる。
【0117】
5.3 二重特異的分子のEX VIVO調製
ある代替的な実施態様では、二重特異的抗体などの二重特異的分子を、投与前に対象の造血細胞にex vivoで前もって結合させる。例えば、造血細胞を、治療しようとする個体から採集し(又は代替的には、適合血液型の非自己由来ドナーから造血細胞を採集し)、適した用量の当該の治療的二重特異的抗体と一緒に、該抗体が造血細胞表面上のCR1に結合するのに充分な時間、インキュベートする。次に、この造血細胞/二重特異的抗体混合物を、治療しようとする対象に、適した用量、投与する(例えばTaylor et al., 米国特許第 5,487,890号を参照されたい)。
【0118】
該造血細胞は好ましくは血球であるとよく、最も好ましくは赤血球であるとよい。
【0119】
従って、ある具体的な実施態様では、本発明は、病原性抗原性分子の存在に関連する望ましくない状態を有する哺乳動物を治療する方法を提供するものである。本方法は、造血細胞/二重特異的分子複合体を対象に治療上有効量、投与するステップを含み、前記複合体は、基本的には、CR1を発現する造血細胞を1つ以上の二重特異的分子に結合させて成り、前記二重特異的分子は(a)第二モノクローナル抗体に化学的に架橋された、CR1に対する第一モノクローナル抗体から構成されておらず、(b)造血細胞上のCR1に結合する第一結合ドメインを含み、そして(c)病原性抗原性分子に結合する第二結合ドメインを含む。本方法は、代替的には、病原性抗原性分子の存在に関連する望ましくない状態を有する哺乳動物を治療する方法を包含し、本方法は、二重特異的分子をCR1を発現している造血細胞に接触させて造血細胞/二重特異的分子複合体を形成するステップであって、但しこのとき前記二重特異的分子が、(i)第二モノクローナル抗体に化学的に架橋された、CR1に対する第一モノクローナル抗体から構成されておらず、(ii)CR1に結合する第一結合ドメインを含み、そして(iii)病原性抗原性分子に結合する第二結合ドメインを含む、ステップと、(b)前記造血細胞/二重特異的分子複合体を治療上有効量、前記哺乳動物に投与するステップと、を含む。
【0120】
更に本発明は、造血細胞/二重特異的分子複合体を作製する方法も提供するものであり、本方法は、二重特異的分子を、CR1を発現する造血細胞に、複合体が形成されるような結合が導かれる条件下で接触させるステップを含むが、前記複合体は、1つ以上の二重特異的分子に結合した造血細胞から基本的に成り、但し前記二重特異的分子は(a)前記造血細胞上のCR1に結合する第一結合ドメインを含み、(b)病原性抗原性分子に結合する第二結合ドメインを含み、そして(c)第二モノクローナル抗体に化学的に架橋された、CR1に対する第一モノクローナル抗体からは構成されていない。
【0121】
Taylor et al. (米国特許第5,879,679号、ここでは以後「‘679 特許」と言及)は、いくつかの場合で、血漿中の自己抗体(又は他の病原性抗原)の濃度が大変高く、そのために、二重特異的抗体を最適に投入しても、自己抗体の全部が標準的条件下では造血細胞に結合できる訳ではないため、この系が飽和することを実証した。例えば、自己抗体血清の抗体価が大変高い場合、自己抗体の一部は、その高濃度のために造血細胞に結合しない。
【0122】
しかしながら、CR1上の異なる部位に結合するモノクローナル抗体を含有する二重特異的抗体の組合せを用いることにより、飽和を解決することができる。例えば、モノクローナル抗体 19E9 及び12H10 は、霊長類C3b受容体上の別々の、かつ競合しない部位に結合する。従って、それぞれがCR1に対する異なるモノクローナル抗体で作製された2つの二重特異的抗体の混合物を含有する「カクテル」では、抗体の赤血球への結合がより多量になるであろう。また本発明の二重特異的抗体は、静脈内輸注用のいくつかの流体と組み合わせて用いることもできる。
【0123】
更に別の実施態様では、二重特異的抗体などの二重特異的分子を、少なくとも2つの異なる二重特異的抗体の「カクテル」を用いて、上述したようにin vitroで赤血球に予め結合させる。この実施態様では、当該の2つの異なる二重特異的抗体は同じ抗原に結合するが、更に、CR1上の別個かつ重複しない認識部位にも結合する。CR1への結合に、少なくとも2つの重複しない二重特異的抗体を用いることにより、一個の赤血球に結合することのできる二重特異的抗体−抗原複合体の数が増加する。このように、2種以上の二重特異的抗体が一個のCR1に結合できるようにすることにより、抗原の除去が、特に抗原が高濃度である場合に高まる(例えば「’679 特許」、コラム6、41−64行目を参照されたい)。
【0124】
5.3 二重特異的分子のポリクローナル集団
更に本発明は、免疫原性を低下させた二重特異的分子のポリクローナル集団も提供するものである。ここで用いられる場合の、本発明の免疫原性を低下させた二重特異的分子のポリクローナル集団とは、それぞれが、病原性抗原性分子に結合する第一抗原認識領域と、CR1に結合する第二抗原認識領域とを有する複数の異なる免疫原性を低下させた二重特異的分子を含む二重特異的分子の一集団を言い、この場合、前記複数の異なる二重特異的分子中の前記第一抗原認識領域は、それぞれ異なり、かつ、それぞれ異なる結合特異性を有し、そしてこの場合、前記二重特異的分子のそれぞれは、CR1に対する第二モノクローナル抗体に化学的に架橋された第一モノクローナル抗体からは構成されていない。いくつかの実施態様では、当該のポリクローナル集団中の各二重特異的分子の第一及び第二抗原認識領域は、二個以上の重鎖及び軽鎖ペアを含まない。好ましくは、当該のポリクローナル集団の前記複数の二重特異的分子が、抗原性分子の異なるエピトープに対する、及び/又は、ある抗原性分子の異なるバリアントに対する、特異性部分を含むとよい。より好ましくは、当該のポリクローナル集団の前記複数の二重特異的分子が、ある抗原性分子の天然で生ずるエピトープの大多数に対する、及び/又は、ある抗原性分子の全てのバリアントに対する、特異性部分を含むとよい。当該のポリクローナル集団には、更に、異なる抗原性分子の混合物に対する特異性部分を含めることもできる。好適な実施態様では、当該ポリクローナル集団中の二重特異的分子の少なくとも90%、75%、50%、20%、10%、5%、又は1% が、所望の一抗原性分子及び/又は複数の抗原性分子を標的とする。他の好適な実施態様では、当該のポリクローナル集団中のいずれかの一個の二重特異的分子の比率は、その集団の90%、50%、又は10%を越えない。当該のポリクローナル集団は、異なる特異性部分を持つ少なくとも2種の異なる二重特異的分子を含む。より好ましくは、当該のポリクローナル集団が、異なる特異性部分を持つ少なくとも10種の異なる二重特異的分子を含むとよい。最も好ましくは、当該のポリクローナル集団が、異なる特異性を持つ少なくとも100種の異なる二重特異的分子を含むとよい。
【0125】
本発明の二重特異的分子のポリクローナル集団は、通常は、単一の特異性を有するモノクローナル抗体によっては効果的に標的とされず、また除去もされ得ない、複数のエピトープを有する病原体、及び/又は、複数の変種又は変異体を有する病原体、をより効率的に除去するために用いることができる。、ある病原体の複数のエピトープ及び/又は複数の変種を標的とすることにより、二重特異的分子のポリクローナル集団は、変異率の高い病原体の除去に有利である。なぜなら、2箇所異常のエピトープで変異が同時に起きる頻度は遙かに低い傾向にあるからである。
【0126】
本発明の二重特異的分子のポリクローナル集団は、セクション5.3に前述したいずれの種類の二重特異的分子も含むことができる。二重特異的分子のポリクローナル集団は、セクション5.3.1乃至5.3.3.に解説されたいずれかの方法を適合させることにより、作製される。
【0127】
本発明の二重特異的分子のポリクローナル集団は、CR1に結合する免疫原性を低下させた免疫グロブリンを発現するハイブリドーマ細胞株に、異なる抗原性分子に結合する免疫グロブリンのポリクローナル集団の重鎖及び軽鎖可変領域をコードする核酸を含有する真核性発現ベクタの集団をトランスフェクトすることにより、作製することができる。次に、病原性抗原性分子に結合する第一結合ドメインと、CR1に結合する第二結合ドメインとを含む二重特異的免疫グロブリンを発現する細胞を、当業で公知の標準的方法を用いて選抜する。前記の免疫グロブリンのポリクローナル集団は、例えばファージ・ディスプレイ・ライブラリからなど、当業で公知のいずれの方法によっても、得ることができる。ファージ・ディスプレイ・ライブラリを用いる場合は、このようなファージ・ディスプレイ・ライブラリの特異性部分の数は、好ましくは、リンパ球が一度に発現する異なる特異性部分の数に近いとよい。より好ましくは、ファージ・ディスプレイ・ライブラリの特異性部分の数が、リンパ球が一度に発現する異なる特異性部分の数よりも多いとよい。最も好ましくは、ファージ・ディスプレイ・ライブラリが、リンパ球が発現することのできる特異性部分の完全な一揃いを含むとよい。ファージ・ディスプレイ・ライブラリを作製及びスクリーニングするためのキットは市販されている(例えばファルマシア社リコンビナント・ファージ・アンティボディ・システム、カタログ番号27−9400−01; 及びストラタジーン社抗原SurfZAP ファージ・ディスプレイ・キット、カタログ番号240612)。加えて、抗体ディスプレイ・ライブラリを作製及びスクリーニングする際の使用に特に適した方法及び試薬の例は、例えば、米国特許第5,223,409号及び第5,514,548号;PCT公報 No. WO 92/18619; PCT公報 No. WO 91/17271; PCT公報 No. WO 92/20791; PCT公報 No. WO 92/15679; PCT公報 No. WO 93/01288; PCT公報 No. WO 92/01047; PCT公報 No. WO 92/09690; PCT公報 No. WO 90/02809; Fuchs et al., 1991,
Bio/Technology 9:1370−1372; Hay et
al., 1992, Hum. Antibod. Hybridomas
3:81−85; Huse et al., 1989, Science 246:1275−1281; Griffiths et al., 1993,
EMBO J. 12:725−734に見ることができる。
【0128】
ある好適な実施態様では、真核性発現ベクタのポリクローナル集団は、ファージ・ディスプレイ・ライブラリからDen
et al., 1999, J. Immunol. Meth. 222:45−57に従って作製される。該ファージ・ディスプレイ・ライブラリを、アフィニティ・クロマトグラフィによりスクリーニングして、目的の1つ又は複数の抗原性分子に対する結合特異性を有するポリクローナル・サブライブラリを選抜する(McCafferty et al., 1990, Nature 248:552; Breitling et al., 1991,
Gene 104:147; and Hawkins et al., 1992, J. Mol. Biol.
226:889)。次に、重鎖及び軽鎖可変領域をコードする核酸を頭同士で連結して、二方向性のファージ・ディスプレイ・ベクタのライブラリを作製する。次に、この二方向性のファージ・ディスプレイ・ベクタを、二方向性の哺乳動物発現ベクタに物質移動させ(Sarantopoulos et al., 1994, J. Immunol. 152:5344)、この哺乳動物発現ベクタを用いて、ハイブリドーマ細胞株をトランスフェクトする。
【0129】
他の好適な実施態様では、二重特異的分子のポリクローナル集団は、選抜された表示された抗体の全収集物を用いた方法により、引用をもってその全文をここに援用することとする米国特許第 6,057,098が解説したように個々のメンバをクローン単離せずに、作製される。複数のエピトープを有する抗原性分子に対して充分に大きなレパートリーの特異性部分を有するファージ・ディスプレイ・ライブラリをアフィニティ・スクリーニングすることで、ポリクローナル抗体を、好ましくは複数の抗体を表示する、表示されたライブラリ・メンバを濃縮後に、得る。選抜されたディスプレイ抗体をコードする核酸を適したPCrを用いて切り出し、増幅する。該核酸は、全長核酸が単離されるように、ゲル電気泳動法により精製することができる。次に、該核酸のそれぞれを、異なるインサートを有する発現ベクタの集団が得られるように、適した発現ベクタ内に挿入する。ある実施態様では、その後、発現ベクタの該集団を、抗CR1結合ドメインをコードするヌクレオチド配列を含有するベクタと、適したホスト内で同時発現させる。別の実施態様では、発現ベクタの該集団と、抗CR1結合ドメインをコードするヌクレオチド配列を含有するベクタとを別々のホスト内で発現させ、該抗原結合ドメインと、該抗CR1結合ドメインとを、in
vitroで組み合わせて、二重特異的分子のポリクローナル集団を形成する。
【0130】
更に他の実施態様では、二重特異的抗体のポリクローナル集団を組換えにより作製し、このとき、所望の結合特異性部分(抗体−抗原の結合部位)を持つ抗体可変ドメインをコードする核酸のポリクローナル集団を、免疫グロブリン定常ドメイン配列をコードするヌクレオチドに融合させる。該融合は、好ましくは、ヒンジ、CH2、及びCH3領域のうちの少なくとも一部を含む、免疫グロブリン重鎖定常ドメインとなされるとよい。第一重鎖定常領域(CH1)に、遊離チオール基を持つアミノ酸残基を含有させて、ジスルフィド結合が、ハイブリドーマ中でタンパク質翻訳時に、可変ドメインと重鎖との間に形成されるようにすることも好ましい(Arathoon et al., WO 98/50431を参照されたい)。
【0131】
免疫グロブリン重鎖融合体、そして必要に応じ、免疫グロブリン重鎖、をコードするDNAを別々の発現ベクタ内に挿入し、適したホスト生物に同時トランスフェクトする。これにより、等しくない比率の3つのポリペプチド鎖中の3つのポリペプチド・フラグメントのそれぞれの比率を調節することができるため、収量を最適にすることができる。しかしながら、少なくとも2つのポリペプチド鎖を等しい比率で発現させると収量が高くなる場合、あるいは、前記比率がさほど重要でない場合は、2つ又は3つ全部のポリペプチド鎖のコーディング配列を一個の発現ベクタ内に挿入することも可能である。
【0132】
このアプローチのある好適な実施態様では、ポリクローナル集団中の各二重特異的分子は、一方のアームの異なる第一結合特異性部分を定常CH2及びCH3ドメインに融合させて持つハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖ペア(第二結合特異性部分を提供する)とから成る。この非対称な構造により、当該の二重特異的分子の一方の半分のみに免疫グロブリン軽鎖が存在することで分離が簡単になるため、不要な免疫グロブリンの組合せから、所望の二重特異的化合物を容易に分離することができることが見出された。このアプローチは、1994年3月3日に公開されたWO 94/04690に開示されている。
【0133】
単一のポリペプチド二重特異的分子を含む、二重特異的分子のポリクローナル集団は、組換えにより作製することができる。選択された抗原認識領域のポリクローナル集団をコードする核酸のポリクローナル集団を、CR1に結合する抗原認識領域をコードする核酸に融合させて、二重特異的分子の集団をコードする融合核酸の集団を得る。次に、核酸の該集団を適したホスト内で発現させて、二重特異的分子のポリクローナル集団を生じさせる。ある好適な実施態様では、選択された抗原認識領域のポリクローナル・ライブラリをコードする核酸のポリクローナル集団は米国特許第 6,057,098号に解説された方法に従って得られる。
【0134】
更に他の好適な実施態様では、二重特異的分子のポリクローナル集団は、例えば病原体の一組の変種、及び/又は、多様な病原体の混合物など、しかしこれらに限らず、一組の抗原によるアフィニティ・スクリーニングで得られる、表示された抗体の集団から作製される。二重特異的分子のこのようなポリクローナル集団は、一組の抗原を標的とし、除去するために用いることができる。
【0135】
二重特異的分子のポリクローナル集団は、当業で公知のいずれかの方法を用いて精製することができる。二重特異的分子のポリクローナル集団の成分は、当業で公知の標準的な方法を用いて判定することができる。
【0136】
ファージ・ディスプレイ・ライブラリから作製される二重特異的分子のポリクローナル集団が解説されているが、当業者であれば、ある集団の作製で用いられる複数の第二抗原認識部分は、適した抗原認識部分のいずれかの集団から得ることができることは認識されよう。抗原認識部分のこのような集団から作製される二重特異的分子の集団は、本発明の範囲内にあると意図されている。
【0137】
5.3 二重特異的分子のカクテル
多様な精製済み二重特異的分子を組み合わせて、二重特異的分子の「カクテル」にすることができる。ここで用いられる場合の、本発明の二重特異的分子のカクテルとは、1つ又は混合物となった抗原を標的にするための精製済み二重特異的分子の混合物を言う。具体的には、二重特異的分子のカクテルとは、異なる又は同じ抗原性分子を標的とすると共に、種類が混合したものである複数の第一抗原結合ドメインを有する精製済み二重特異的分子の混合物を言う。例えば、前記の第一抗原結合ドメインの混合物は、ペプチド、核酸、及び/又は有機低分子の混合物であってよい。二重特異的分子のカクテルは、一般に、多種の精製済み二重特異的分子を混合することにより、調製される。このような二重特異的分子のカクテルは、なかんずく、個々の患者のニーズに従ってテーラーメードされた個人向け医薬として有用である。
【0138】
5.4 標的病原性抗原性分子
本発明は、病原性抗原性分子の存在に関連する疾患又は異常を治療又は防止する方法を提供するものである。当該の病原性抗原性分子は、循環中に存在すると共に、治療しようとする対象にとって潜在的に有害であるか、又は好ましくないようないずれの物質であってもよく、その中には、限定はしないが、病原体の抗原、自己抗原、又は、哺乳動物の循環系から除去することが望まれる血液由来タンパク質が含まれる。病原性抗原性分子は、疾患又は異常又はいずれかの他の望ましくない状態の原因物質(例えば病原体)であるか又はその一部である抗原性決定基を含有する(又は、結合ドメインが結合することのできる)あらゆる分子である。
【0139】
固定組織貪食細胞により除去される循環中病原性抗原性分子には、対象にとって有害なあらゆる抗原性成分が含まれる。有害な病原性抗原性分子の例には、寄生生物、真菌、原虫、細菌、又はウィルスに関連するあらゆる病原性抗原がある。更に、循環中病原性抗原性分子には、例えば炭疽病防御抗原及び致死因子、ボツリヌス、ヘビ毒等の毒素;免疫複合体;自己抗体;薬物;バルビツール酸など、過量の物質;又は、循環中に存在すると共に、ホスト哺乳動物の健康にとって好ましくない又は有害なあらゆるもの、も含まれよう。哺乳動物の循環系から病原性抗原性分子を効果的に除去することに免疫系が失敗すると、外傷性及び血液量減少性ショックを引き起こす場合がある (Altura and Hershey, 1968, Am. J. Physiol.
215:1414−9)。
【0140】
更に、移植抗原など、非病原性抗原は、ホストにとって有害であると誤って認識され、それらがあたかも病原性抗原性分子であるかのように、ホスト免疫系の攻撃を受ける。本発明は、更に、例えば移植抗原特異抗体など、移植片拒絶に関与する免疫細胞又は因子に結合して除去するであろう二重特異的抗体を有効量、対象に投与するステップを含む、移植片拒絶を治療する実施態様も提供する。
【0141】
5.4 自己免疫抗原
ある実施態様では、循環中から除去しようとする病原性抗原性分子には自己免疫抗原が含まれる。これらの抗原には、限定はしないが、自己免疫疾患に関連する自己抗体又は天然で生じる分子が含まれる。
【0142】
数多くの様々な自己抗体を、霊長類の循環中から、本発明の二重特異的抗体を用いることにより、除去することができる。ある非限定的な例では、IgE(免疫グロブリンE)抗体を、循環中から、本発明の二重特異的抗体により、除去する。より具体的には、当該の二重特異的抗体は、IgEに特異的な1つの可変領域と、CR1に特異的な第二の可変領域とを含む。この二重特異的抗体を用いて、循環中IgE抗体を減少させ、ひいては、喘息などのアレルギー性反応を低下又は阻害することができる。
【0143】
別の例では、血友病に罹患した特定のヒトにVIII因子が欠損していることが示されている。組換えVIII因子置換により、この血友病は治療される。しかしながら、最終的には何人かの患者がVIII因子に対する抗体を生じさせて、この治療法に干渉してしまう。抗−抗VIII因子抗体により調製される本発明の二重特異的抗体は、この問題の治療上の解決法を提供する。具体的には、抗VIII因子自己抗体に対する特異性を第一可変領域に持ち、そしてCR1に対する特異性を第二可変領域に持つ二重特異的抗体は、循環中から自己抗体を除去し、ひいてはこの疾患を寛解させる上で、治療上有用であろう。
【0144】
本発明の二重特異的抗体により除去可能な自己抗体の更なる例には、限定はしないが、以下の抗原に対する自己抗体がある:筋肉アセチルコリン受容体(この抗体は重症筋無力症に関連する);カルジオリピン(狼瘡に関連する);血小板関連たんぱく(特発性血小板減少性紫斑病に関連する); シェーグレン症候群に関連する多価抗原;組織移植自己免疫反応の症例への関与が示唆されている抗原;心筋に見られる抗原(自己免疫性心筋炎に関連する);免疫複合体関連腎臓疾患に関連する抗原;dsDNA 及びssDNA抗原(ループス腎炎に関連する);デズモグレイン及びデズモプラキン(天疱瘡及び類天疱瘡に関連する);又は、特徴付けられ、また疾患病理に関連するあらゆる他の抗原。
【0145】
上記の二重特異的抗体をヒト又は非ヒト霊長類の循環中に注射すると、当該の二重特異的抗体は、赤血球に、ヒト又は霊長類C3b受容体可変ドメイン認識部位を介して高率で、そして赤血球上のCR1部位の数に応じて、結合するであろう。同時に、当該の二重特異的抗体は、該モノクローナル抗体に結合した抗原を介して、前記自己抗体に間接的に結び付くであろう。こうして、当該の二重特異的抗体/自己抗体複合体をそれらの表面上に有する赤血球は、結合した病原性自己抗体の循環中からの除去及び除去を促す。
【0146】
本発明によれば、当該の二重特異的抗体は、CR1をそれらの表面上に発現している造血細胞への病原性抗原又は自己抗体の結合を促し、その後、該造血細胞まで除去することなく、この病原性抗原又は自己抗体を循環中から除去する。
【0147】
5.4 感染性疾患
具体的な実施態様では、感染性疾患物質の抗原とCR1の両方に結合する二重特異的分子の投与により、感染性疾患を治療又は防止する。従って、このような実施態様では、当該の病原性抗原性分子は、感染性疾患物質の抗原である。
【0148】
このような抗原は、限定はしないが:インフルエンザウィルス・ヘマグルチニン(Genbank 受託番号 JO2132; Air, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci.
USA 78:7639−7643; Newton et al.,
1983, Virology 128:495−501)、ヒト呼吸系発疹ウイルスG糖たんぱく(Genbank 受託番号Z33429; Garcia
et al., 1994, J. Virol.; Collins et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA
81:7683)、デング熱ウィルスのエンベロープタンパク質、マトリックスタンパク質又は他のタンパク質(Genbank 受託番号 M19197; Hahn et al.,
1988, Virology 162:167−180)、はしかウィルス・ヘマグルチニン(Genbank
受託番号M81899; Rota et al., 1992, Virology 188:135−142)、2型単純疱疹ウィルス糖たんぱくgB (Genbank 受託番号M14923; Bzik et al., 1986, Virology 155:322−333)、ポリオウィルス I VP1 (Emini et al., 1983, Nature 304:699)HIV Iのエンベロープ糖たんぱく(Putney et al., 1986, Science 234:1392−1395)、B型肝炎表面抗原 (Itoh et al., 1986, Nature 308:19;
Neurath et al., 1986, Vaccine 4:34)、ジフテリア毒素(Audibert et al.,
1981, Nature 289:543)、連鎖球菌 24M エピトープ(Beachey, 1985, Adv.
Exp. Med. Biol. 185:193)、淋菌ピリン(Rothbard and Schoolnik, 1985, Adv. Exp.
Med. Biol. 185:247)、偽狂犬病ウィルスg50 (gpD)、偽狂犬病ウィルス II (gpB)、偽狂犬病ウィルスgIII (gpC)、偽狂犬病ウィルス 糖たんぱく H、偽狂犬病ウィルス糖たんぱくE、伝染性胃腸炎糖たんぱく 195、伝染性胃腸炎マトリックスタンパク質、ブタロタウィルス糖たんぱく 38、ブタパルボウィルス・カプシドタンパク質、セルプリナ−ヒドデンセタリエ(原語:Serpulina hydodysenteriae)防御抗原、ウシウィルス性下痢糖たんぱく55、ニューカッスル病ウィルス・ヘマグルチニン−ノイラミニダーゼ、ブタインフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザノイラミニダーゼ、口蹄病ウィルス、ブタコレラウィルス、ブタインフルエンザウィルス、アフリカブタ熱ウィルス、マイコプラズマ−ニューモリエ(原語:Mycoplasma hyopneumoniae)、感染性ウシ鼻気管炎ウィルス(例えば感染性ウシ鼻気管炎ウィルス糖たんぱくE 又は糖たんぱく G)、又は感染性喉頭気管炎ウィルス(例えば感染性喉頭気管炎ウィルス糖たんぱくG 又は糖たんぱく I)、ラクロスウィルスの糖たんぱく (Gonzales−Scarano et al., 1982,
Virology 120 :42)、新生仔ウシ下痢ウィルス(Matsuno and Inouye, 1983, Infection and
Immunity 39:155)、ベネズエラ・ウマ脳脊髄炎ウィルス (Mathews and Roehrig, 1982, J. Immunol.
129:2763)、プンタ−トロ(原語:punta toro)ウィルス (Dalrymple et al., 1981, Replication of Negative Strand Viruses,
Bishop and Compans (eds.), Elsevier, NY, p. 167)、マウス白血病ウィルス (Steeves et al., 1974, J. Virol.
14:187)、マウス乳腺腫瘍ウィルス (Massey and Schochetman, 1981, Virology 115:20)、B型肝炎ウィルスコアタンパク質及び/又はB型関連ウィルス表面抗原又はそのフラグメントもしくは誘導体(例えば公開日1980年6月4日の英国特許公報No. GB 2034323A 80; Ganem and Varmus, 1987, Ann. Rev. Biochem. 56:651−693; Tiollais
et al., 1985, Nature 317:489−495を参照されたい)、ウマインフルエンザウィルス 又はウマ疱疹ウィルスのもの
(例えばA型/アラスカ91ウマインフルエンザウィルスノイラミニダーゼ、A型/マイアミ63ウマインフルエンザウィルスノイラミニダーゼ、A型/ケンタッキー81ウマインフルエンザウィルスノイラミニダーゼ1型ウマ疱疹ウィルス糖たんぱく B、及び1型ウマ疱疹ウィルス糖たんぱく D、ウシ呼吸系発疹ウィルス又はウシパラインフルエンザウィルスの抗原(例えばウシ呼吸系発疹ウィルス付着たんぱく(BRSV G)、ウシ呼吸系発疹ウィルス融合タンパク質 (BRSV F)、ウシ呼吸系発疹ウィルス核カプシドタンパク質 (BRSV N)、3型ウシパラインフルエンザウィルス融合タンパク質、及び3型ウシパラインフルエンザウィルスヘマグルチニン・ノイラミニダーゼ、ウシウィルス性下痢ウィルス
糖たんぱく 48 又は糖たんぱく 53であってよい。
【0149】
本発明の二重特異的分子を用いて治療又は防止することのできる更なる疾患又は異常には、限定はしないが、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、水痘、アデノウィルス、I型単純疱疹 (HSV−I)、II型単純疱疹 (HSV−II)、牛疫、ライノウィルス、エコーウィルス、ロタウィルス、呼吸系発疹ウィルス、パピローマウィルス、パポバウィルス、サイトメガロウィルス、エキノ(原語:echino)ウィルス、アルボウィルス、ハンタウィルス、コクサッキーウィルス、流行性耳下腺炎ウィルス、はしかウィルス、風疹ウィルス、ポリオウィルス、I型ヒト免疫不全ウィルス (HIV−I)、及びII型ヒト免疫不全ウィルス (HIV−II)、あらゆるピコルナウィルス科、エンテロウィルス、カリチウィルス科、あらゆるノーウォーク群のウィルス、トガウィルス、例えばデング熱ウィルス、アルファウィルス、フラビウィルス、コロナウィルス、狂犬病ウィルス、マルブルグウィルス、エボラウィルス、パラインフルエンザウィルス、オルトミキソウィルス、バンヤウィルス、アレナウィルス、レオウィルス、ロタウィルス、オルビウィルス、I型ヒトT細胞白血病ウィルス、II型ヒトT細胞白血病ウィルス、シミアン免疫不全ウィルス、レンチウィルス、ポリオーマウィルス、パルボウィルス、エプスタイン−バーウィルス、ヒト疱疹ウィルス−6、オナガザル疱疹ウィルス 1 (B ウィルス)、及びポックスウィルスにより引き起こされるもの、がある。
【0150】
本発明の二重特異的分子を用いて治療又は防止することができる細菌性疾患又は異常には、限定はしないが、マイコバクテリア、リケッチア、マイコプラズマ、ネイセリア種(例えばネイセリア−メニンギティデス(原語:Neisseria meningitides)及びネイセリア−ゴノローエア(原語:Neisseria gonorrhoeae)、レジオネラ、ビブリオ−コレラ、連鎖球菌、例えば肺炎連鎖球菌、スタフィロコッカス−アウレウス(原語:Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス−エピデルミディス(原語:Staphylococcus epidermidis)、シュードモナス−アエルギノーサ(原語:Pseudomonas aeruginosa)、コリノバクテリア−ジフテリア(原語:Corynobacteria diptheriae)、クロストリジウム種、毒素原性大腸菌、及びバシラス−アンスラシス(原語:Bacillus anthracis (炭疽病))等がある。
【0151】
本発明の二重特異的分子を用いて治療又は防止することができる原虫性疾患又は異常には、限定はしないが、プラズモディウム、アイメリア、リーシュマニア、及びトリパノソーマがある。
【0152】
5.4 更なる病原性抗原性分子
ある実施態様では、本発明の方法及び組成物により循環中から除去しようとする病原性抗原性分子は、バルビツール酸、三環式抗うつ剤、及びジギタリスを含む、しかしこれらに限らないあらゆる血清薬を包含する。
【0153】
別の実施態様では、除去しようとする病原性抗原性分子は、過量存在すると共に、対象にとって一時的又は永久的な障害又は有害となりかねないあらゆる血清抗原を包含する。この実施態様は、薬物過量に特に関係する。
【0154】
別の実施態様では、循環中から除去しようとする病原性抗原性分子には、天然で生ずる物質が含まれる。本発明の方法及び組成物により除去できると思われる、天然で生ずる病原性抗原性分子の例には、限定はしないが、低密度リポたんぱく、インターロイキン、又は他の免疫調節化学物質及びホルモンがある。
【0155】
5.5 二重特異的抗体の用量
免疫原性を低下させた二重特異的分子の投薬量は、当業者に公知の慣例的な実験により、決定することができる。循環中の抗原レベル、当該二重特異的分子の半減期や、RBCの数及び、各RBC上のCR1部位の数に基づいてそれを決定することができる。循環中の抗原レベルは、例えばELISAなど、当業で公知のいずれかの技術により、判定することができる。当該の免疫原性を低下させた二重特異的分子の半減期も、ELISAを用いるなど、様々な時点での当該二重特異的分子の血清濃度を測定する様々な実験により、判定することができる。免疫原性を低下させた二重特異的分子の半減期は、当該の二重特異的分子それ自体及び特定の抗原の両方や、当該の二重特異的分子が複合体形成した先の抗原の量に左右される。
【0156】
ある免疫原性を低下させた二重特異的分子の投与の効果又は利益は、例えば生存率、副作用、目的の抗原の除去率、又はこれらの組合せを測定することに基づく方法など、当業で公知のいずれかの方法により、評価することができる。ある免疫原性を低下させた二重特異的分子を投与すると、例えば生存率が高くなる、副作用が減る、目的の抗原の除去率が増す、など、患者において前記の利益のうちのいずれか1つ以上が達成されるのであれば、
当該の方法は効験を有すると言うことができる。
【0157】
用量は、担当医が慣例的な実験を行えば決定することができる。ヒトへの投与前に、好ましくは効験を、霊長類、又は、霊長類もしくはヒトCR1を発現するいずれかの動物モデルなど、動物モデルで示すとよい。当業で公知の循環障害のいずれかの動物モデルを用いることができる。
【0158】
より具体的には、当該の二重特異的抗体の用量は、造血細胞濃度と、造血細胞一個当たりの抗CR1受容体モノクローナル抗体が結合するCR1エピトープ部位の数とに基づいて決定することができる。当該の二重特異的抗体を過剰量、添加すると、この二重特異的抗体の一部は造血細胞に結合せず、病原性抗原の造血細胞への結合を阻害することになるであろう。その理由は、遊離二重特異的抗体が溶液中にあるとき、それは、入手できる病原性抗原をめぐって、造血細胞に結合した二重特異的抗体と競合するであろう。このように、当該の二重特異的抗体が媒介する、病原性抗原の造血細胞への結合は、投入された二重特異的抗体濃度の濃度の関数として結合を調べたときにベル型の曲線を描く。
【0159】
ウィルス血症の結果、最高で108−109 ウィルス粒子/血液1ml(HIVは106/ml;Ho, 1997, J. Clin. Invest. 99:2565−2567を参照されたい)となることがある。治療的二重特異的抗体の用量は、好ましくは、最小でも循環中の抗原数のほぼ10倍であるべきである。
【0160】
概略的には、抗体の場合、好適な投薬量は0.01 mg/kg 乃至10 mg/kg 体重(一般的には0.1 mg/kg 乃至 5 mg/kg)である。一般的には、部分的ヒト抗体及び完全ヒト抗体は、他の抗体よりもヒト体内での半減期が長い。従って、投薬量を少なくし、投与回数を減らすことがしばしば可能である。脂質化などの修飾を用いて抗体を安定化させ、取り込み及び(脳内などへの)組織透過を高めることができる。抗体を脂質化する方法は、Cruikshank et al., 1997, J. Acquired Immune Deficiency Syndromes and
Human Retrovirology 14:193に解説されている。
【0161】
ここで定義するように、二重特異的抗体の治療上有効量(即ち有効な投薬量)は、約0.001 乃至10 mg/kg 体重の範囲であり、好ましくは約0.01 乃至 5 mg/kg 体重、より好ましくは約0.1 乃至2 mg/kg 体重、そして更により好ましくは約0.1 乃至 1 mg/kg、0.2 乃至 1 mg/kg、0.3 乃至 1 mg/kg、0.4 乃至 1 mg/kg、又は0.5 乃至1 mg/kg 体重の範囲である。
【0162】
当業者であれば、疾患又は異常の重篤度、以前の治療、対象の全身の健康及び/又は年齢、及び他の既往症を含め、しかしこれらに限らず、特定の因子が、対象を効果的に治療するために必要な投薬量を左右することがあることを理解されよう。更に、治療上有効量の二重特異的抗体による対象の治療には、単回の治療を含めることができるが、又は好ましくは一連の治療を含めることができるとよい。ある好適な例では、対象を約0.1 乃至 5 mg/kg 体重の範囲の二重特異的抗体で、1週間当たり1回、約1乃至10週間の間、好ましくは2乃至8週間の間、より好ましくは約3乃至7週間の間、そして更により好ましくは約4、5、又は6週間の間、治療する。更に、治療に用いる、二重特異的抗体の有効な投薬量を、特定の治療の経過にわたって増減させてもよいことも理解されよう。投薬量の変更は、ここで解説する通りの診断検定法の結果から行われ、また明白であろう。
【0163】
二重特異的抗体作用薬の適した用量は、通常の熟練した医師、獣医、又は研究者の地検内にある数多くの因子に依存すると考えられる。当該の二重特異的抗体の用量は、例えば、処理しようとする対象又は試料の種類、大きさ、及び状態によって様々であろうが、更に、当該組成物を投与する経路、そして該当する場合には、担当医が当該二重特異的抗体に望む、病原性抗原分子又は自己抗体に対する効果にも依存する。
【0164】
更に、二重特異的抗体の適した用量は、除去しようとする抗原に対する当該の二重特異的抗体の効力に依存するとも理解されている。このような適した用量は、ここに解説した検定法を用いて判定してもよい。
抗原を除去するためにこれらの二重特異的抗体のうちの1つ以上を動物(例えばヒト)に投与する場合、医師、獣医、又は研究者は、例えば、最初に比較的低用量を処方した後、この用量を適した応答が得られるまで増加させていってもよい。加えて、いずれか特定の動物の対象にとっての特定の用量レベルは、RBC CR1の数、用いる二重特異的抗体の活性、対象の年齢、体重、全身の健康、性別、及び食餌や、投与の時間、投与経路、排出速度、いずれかの薬物の組合せや、除去しようとする抗原の濃度を含む多種の因子に依存するであろうと、理解されている。
【0165】
5.6 医薬調合物及び投与
本発明の二重特異的抗体を、投与に適した医薬組成物に取り入れることができる。このような組成物は、典型的には、二重特異的抗体と、薬学的に許容可能な担体とを含む。ここで用いられる言語「薬学的に許容可能な担体」は、薬学的投与に適合性あるあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗カビ剤、等張剤並びに吸収遅延剤等を包含するものであると、意図されている。薬学的に活性な物質のためのこのような媒質及び作用薬の使用は当業で公知である。いずれかの従来の媒質又は作用薬が当該の二重特異的抗体にとって不適合でない限り、当該組成物中へのその使用は考察されたところである。補助的な二重特異的抗体も、当該組成物中に取り入れることができる。
【0166】
本発明の医薬組成物は、それに意図された投与経路に適合性があるように調合される。好適な投与経路は静脈内である。投与経路の他の例には、非経口、皮内、皮下、経皮(局所)、及び経粘膜がある。非経口、皮内、又は皮下用途に用いられる溶液又は懸濁液には、以下の成分を含めることができる:注射用の水、生理食塩水、非揮発性の油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒などの無菌の希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩などの緩衝剤や、塩化ナトリウム又はデキストロースなど、張性の調節のための作用薬。pHは、例えば塩酸又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基で調節することができる。非経口用の製剤は、ガラス製もしくはプラスチック製のアンプル、使い捨て用シリンジ又は多人数用バイアル内に封入することができる。
【0167】
注射用に適した医薬組成物には、無菌の水溶液(水溶性の場合)又は分散液や、無菌の注射用溶液又は分散液の即時調製用の無菌粉末がある。静脈内投与の場合、適した担体には生理食塩水、静菌水、Cremophor EL (BASF社;ニュージャージー州パーシパニー)、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)がある。いずれの場合も、本組成物は無菌でなければならず、また粘性が低く、当該の二重特異的抗体が注入可能である程度に流動性でなくてはならない。それは製造及び保管条件下で安定でなくてはならず、また細菌及びカビなどの微生物の汚染作用から保護されていなくてはならない。
【0168】
担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)及びこれらの適した混合物などを含有する溶媒又は分散媒であってよい。適正な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングを用いたり、分散液の場合には必要な粒子サイズを維持したり、そして界面活性剤を用いるなどにより、維持することができる。微生物の作用を防ぐには、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等の多種の抗菌剤及び抗カビ剤により、達成が可能である。多くの場合、例えば糖類、マンニトールなどの多価アルコール、ソルビトール、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物中に含めることが好ましいであろう。注射用組成物の吸収を長引かせるには、本組成物中に、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなど、吸収を遅らせる作用薬を含めることにより、可能である。
【0169】
無菌の注射用溶液は、必要量の当該の二重特異的抗体(例えば一種以上の二重特異的抗体)を、適した溶媒に、必要に応じて上に列挙した成分の1つ又は組合せと一緒に取り入れた後、濾過滅菌することにより、調製することができる。一般的には、分散液は、当該の二重特異的抗体を、塩基性の分散媒と、上に列挙したものの中の必要な他の成分とを含有する無菌の賦形剤に取り入れることにより、調製される。無菌の注射用溶液の調製用の無菌粉末の場合、好適な調製法は真空乾燥及び凍結乾燥であり、その結果、活性成分と、予め無菌濾過されたその溶液から出る付加的な所望の成分との粉末が生ずる。
【0170】
ある実施態様では、当該の二重特異的抗体は、インプラント及びマイクロ封入送達系を含め、制御放出調合物など、身体から当該化合物が急速に消失しないように保護するであろう担体と一緒に調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの生分解性で生体適合性あるポリマを用いることができる。このような調合物の調製法は当業者に明白であろう。材料はまた、アルザ・コーポレーション及びノヴァ・ファーマシューティカルズ社から市販のものを得ることもできる。
(ウィルス抗原に対するモノクローナル抗体で、感染細胞に標的決定されたリポソームを含む)リポソーム懸濁液も、薬学的に許容可能な担体として用いることができる。これらは、例えば引用をもってその全文をここに援用することとする米国特許第4,522,811号に解説されたように、 当業で公知の方法に従って調製することができる。
【0171】
投与を簡便にし、また投薬量を均一にするために、非経口用組成物を単位剤形で調合すると有利である。ここで用いる単位剤形とは、治療しようとする対象にとって単位型の投薬量として調整された物理的に別個の単位を言う。各単位は、必要な薬品用担体との関連から所望の治療効果を生ずるよう計算された所定量の二重特異的抗体を含有する。本発明の単位剤形の詳細は、二重特異的抗体の固有の特徴、及び、達成しようとする特定の治療効果、並びにこのような二重特異的抗体を、個体の治療に向けて配合する技術に内在する限界、によって決定され、またこれらに直接依存する。
【0172】
当該の医薬組成物は、キット、容器、パック、又はディスペンサ内に、投与のための指示と一緒に含めることができる。
【0173】
5.7 治療法の組合せ
当業者であれば、患者における疾患治療の効験を最大にするために、ここに解説した通りの二重特異的分子を用いた治療法のいずれを組み合わせることもできることは、明白であろう。当業者であれば、個々の患者にとって最適な治療の組合せを決定することができよう。
【0174】
5.8 キット
更に本発明は、本発明の免疫原性を低下させた二重特異的分子、又は、本発明の免疫原性を低下させたポリペプチド二重特異的分子をコードする1つ以上の核酸、及び/又は、このような核酸で形質転換させた細胞、を一つ以上の容器に容れて含有するキットも提供するものである。該核酸は染色体に組み込むことも、あるいはベクタ(例えばプラスミド、特にプラスミド発現ベクタ)として存在させることもできる。本発明の医薬組成物を含有するキットも提供される。
【0175】
6.例:免疫原性を低下させた抗CR1抗体、及び、免疫原性を低下させた抗CR1抗体を含む二重特異的分子
以下の例は、本発明の描写の方法として提供されたのであり、いずれの態様でも本発明を限定するとは意図されていない。
【0176】
6.1 例1: ヒト赤血球補体受容体1(CR1)に対する免疫原性を低下させた抗体
この例では、ヒト赤血球補体受容体1(CR1)に対する免疫原性を低下させた抗体の開発を開示する。
【0177】
マウス抗体遺伝子の配列の決定
マウス・ハイブリドーマ E11(カタログ番号 184−020、ミネソタ州アンセル・イムノテクノロジ・リサーチ・プロダクツ社)を、成長中の細胞ストックから、10%ウシ胎児血清を添加したダルベッコの改良イーグル培地中で増殖させた。分泌された抗体のアイソタイプをマウスIgG16と確認した。
【0178】
全RNAを107個のハイブリドーマ細胞から調製した。これらの細胞からの調整培地をELISAによりマウス抗体の産生について検査し、これが確認された。
【0179】
VH及びVL cDNAをマウス6定常領域及びマウスIgG定常領域プライマを用いて調製した。第一鎖のcDNAは、PCRにより、多種のマウスシグナル配列プライマ(VHには6組、VLには7組)を用いて増幅された。増幅されたDNAをゲル精製し、ベクタpGem(登録商標) T イージー(プロメガ社) 内に標準的方法に従ってクローニングした。
【0180】
得られたVH及びVLクローンを、予測されたサイズのインサートについてPCRによりスクリーニングし、選抜されたクローンのDNA配列を標準的な方法に従ったジデオキシ鎖終了法により決定した。
【0181】
重鎖V領域のDNA及びアミノ酸配列を図1に示す。6つの独立したクローンが同一の配列を示した。相補性決定領域(CDR)の位置を Kabat et al. (1991)に開示された他の抗体配列を参照して決定した。E11 VHは、マウス重鎖サブグループIA (Kabat et al., 1991)に指定することができる。
【0182】
軽鎖V領域のDNA及びアミノ酸配列を図2に示す。5つの独立したクローンが同一の配列を示した。CDRの位置を、上に開示した通り、他の抗体配列(Kabat et al., 1991)を参照して決定した。E11 VL はマウス・カッパ鎖サブグループ III (Kabat et al., 1991)に指定することができる。
【0183】
融合相手から得られた、2つの異常な非生産的軽鎖配列は、ハイブリドーマにも存在した。
【0184】
免疫原性を低下させた抗体配列のデザイン
マウスVH 及びVL 配列を、ヒト生殖細胞系抗体遺伝子のディレクトリと比較した (Cox et al., 1994; Tomlinson et al., 1992)。免疫原性を低下させた VH に関する基準として選択された最もマッチしたヒト生殖細胞系遺伝子は JH6
のDP−65 だった。免疫原性を低下させた VL に関して基準として選択された最もマッチしたヒト生殖細胞系遺伝子は JL5の b1 だった。得られたマウス V 領域配列にペプチド・スレディングを行って、18個の異なるヒトMHCクラスIIアロタイプへの結合の解析を通して、潜在的T細胞エピトープを特定した。該配列は、更に、データベース (The Walter and Eliza Hall Institute of Medical Research,
Melbourne, Australia, World Wide Web site wehil.wehi.edu.au)
から、登録商標コンピュータ・プログラム「Searcher」を用いて公知のヒトT細胞結合ペプチドの存在についても分析された。
【0185】
主要な免疫原性を低下させた VH 及びVL 配列を、多様な好適なマウスアミノ酸
(EDIVHv1,
EDIVLv1)を保持するようにデザインした。主要な免疫原性を低下させた配列を作製するには、最終的な免疫原性を低下させた分子の結合に影響しかねない少数のアミノ酸置換が必要なため、4つの他のバリアントVH 配列及び1つの他のVL をデザインした。主要な免疫原性を低下させた VH 領域のDNA配列を図3に示し、そして主要な免疫原性を低下させた VL については図4に示す。マウス及び免疫原性を低下させた V領域の相対的なアミノ酸配列を、VHに関しては図5に、そしてVLに関しては図6に示す。
【0186】
免疫原性を低下させた抗体配列の構築
当該の免疫原性を低下させた可変領域は、重複PCR組換えの方法により、構築された。クローニングされたマウスVH 及びVL 遺伝子を、フレームワーク領域を変異誘発して必要な免疫原性を低下させた配列にするためのテンプレートとして用いた。数組の変異誘発性プライマ・ペアを、変更しようとする領域を包含するように合成した。ベクタVH−PCR1 及びVL−PCR1 (Riechmann et al., 1988)
を、ベクタVH−PCR1 及びVL−PCR1 (Riechmann et al., 1988)
を、リーダ・シグナル・ペプチド、リーダ・イントロン及びマウス免疫グロブリン・プロモータを含む5’側フランキング配列と、スプライス部位及びイントロン配列を含む3’側フランキング配列とを導入するためのテンプレートとして用いた。生じた免疫原性を低下させた V領域をpUC19 内にクローニングし、このDNA配列全体を、各免疫原性を低下させた VH 及びVLについて正しいことを確認した。
【0187】
上記の方法を用い、免疫原性を低下させた抗体V領域をコードする以下のプラスミドDNAを作製した:
pUC19 E DIVH1
pUC19 E DIVH2
pUC19 E DIVH3
pUC19 E DIVH4
pUC19 E DIVH5
pUC19 E DIVL1
pUC19 E DIVL2
【0188】
当該の免疫原性を低下させた重鎖及び軽鎖V領域遺伝子を、pUC19 から、マウス重鎖免疫グロブリン・プロモータ、リーダ・シグナル・ペプチド、リーダ・イントロン、VH又はVL配列及びスプライス部位を含むHindIII 乃至 BamHI
断片として切り出した。これらを、それぞれヒトIgG1又は6定常領域と哺乳動物細胞用の選択マーカとを含む発現ベクタ pSVgpt 及び pSVhyg (図7及び8)に移した。そのDNA配列が、免疫原性を低下させた VH 及びVL について正しいことを、発現ベクタ内で確認した。
【0189】
キメラ抗体遺伝子の構築
キメラ抗体は、マウス可変領域に連結されたヒト定常領域から成る。キメラ抗体は、(1)正しい可変領域がクローニングされたことの確認、(2)免疫原性を低下させた(ヒト化)抗体と同じエフェクタ機能、そして同じ二次検出試薬を用いた抗原結合検定におけるコントロール抗体としての用途、に向けた、大変有用なツールとなる。Orlandi et al. (1989)が解説したように、発現ベクタ pSVgpt 及びpSVhyg 内で、ヒトIgG1又は6定常領域に連結したE11マウス可変領域から成るキメラ重鎖及び軽鎖発現ベクタが構築されている。ベクタ VH−PCR1 及びVL−PCR1 (Riechmann et al.,
1988) は、リーダ・シグナル・ペプチド、リーダ・イントロン及びマウス免疫グロブリン・プロモータを含む5’側フランキング配列と、スプライス部位及びイントロン配列を含む3’側フランキング配列を導入するためのテンプレートとして用いられた。そのDNA配列が、VH及びVLについて正しいことを、キメラ発現ベクタ内で確認した。
【0190】
免疫原性を低下させ、かつキメラである抗体の発現
抗体発現のためのホスト細胞株は、英国ポートンのヨーロピアン・コレクション・オブ・アニマル・セル・カルチャー(ECACC番号85110505)から得られた非免疫グロブリン産生性マウス骨髄腫であるNS0だった。該重鎖及び軽鎖発現ベクタを、様々な組み合わせでNS0細胞にエレクトロポレーションにより同時トランスフェクトした。
gpt 遺伝子を発現しているコロニを、19%ウシ胎児血清、0.8μg/mlのミコフェノール酸及び250μg/mlのキサンチンを添加したダルベッコの改良イーグル培地(DMEM)で選抜した。トランスフェクトされた細胞クローンによるヒト抗体の産生を、ELISAによりヒトIgGについて測定した。抗体を分泌している細胞株を選抜し、増殖させた。免疫原性を低下させ、かつキメラである抗体 をProsep(登録商標)−A(バイオプロセッシング社)を用いて精製した。
【0191】
上記の方法を用い、免疫原性を低下させた抗体を発現する以下の細胞株を作製した:
E DI VH4/VL1 19E9、免疫原性を低下させた Ab VH4/VL1 を産生する(「E DI VH4/VL1」;図11を参照されたい)。
E DI VH3/VL1 12H10、免疫原性を低下させた Ab VH3/VL1 を産生する(「E DI VH3/VL1」;図12を参照されたい)。
E DI VH3/VL2 15A12、免疫原性を低下させた Ab VH3/VL2 を産生する(「E DI VH3/VL2」;図10を参照されたい)。
E DI VH2/VL1 44H1、免疫原性を低下させた Ab VH2/VL1 を産生する(「E DI VH2/VL1」;図11を参照されたい)。
E DI VH5/VL2 31C11、免疫原性を低下させた Ab VH5/VL2 を産生する(「E DI VH5/VL2」;図10を参照されたい)。
E Ch VH/ChVLA 3G4 (キメラ)、免疫原性を低下させたキメラ Ab VH5/VL2を産生する(「E キメラ Ab」;図9−13を参照されたい)。
【0192】
抗原結合検定
パイロット抗原結合検定法においては、赤血球を96ウェル・プレートにポリL−リジン及びグルタルアルデヒドで固定した。赤血球を96ウェル・プレートに固定することの欠点は、それにより、おそらくは赤血球上の抗原を変性又はマスキングしてしまうことが原因で、大変高いバックグラウンドが生じたことである。
【0193】
従って、改良された抗原結合検定法を採用した。この検定法では、抗体をRBCと溶液中で反応させ、当該細胞は、基質を添加する直前の、検定終了時に固定された。洗浄された赤血球を、96ウェルのV底プレートに容れた抗体の希釈液(二重又は三重にして)に加えた。結合した抗体を、ビオチン化抗ヒトもしくは抗マウス抗体で検出し、次に、標準的な方法に従ってアビジン・アルカリ・ホスファターゼを用いて可視化した。グルタルアルデヒドで固定した後、PNPP基質で顕色させ、吸光度を405 nmで読み取った。図9は、無関係のマウス抗体コントロール及び無関係のヒト(免疫原性を低下させた)抗体コントロールに比較したときの、当該のマウス及びキメラ抗体の結合を示す。二次ビオチン化試薬が、マウス及びヒト(キメラであり、かつ免疫原性を低下させた)抗体で、直接的な比較が可能でないように異なることに留意されたい。
【0194】
その結果は、マウス及びキメラE11抗体が両者とも良好に結合すること、そして無関係のコントロール抗体による結合はないことを示している。ヒト定常領域に連結したマウスV領域を持つキメラ抗体は、結合の上でマウス抗体と同等であると予測され、当該の免疫原性を低下させた抗体による結合実験のコントロールとなった。
【0195】
図10、11、12及び13は、キメラ抗体(「EキメラAb」)に比較したときの、当該の免疫原性を低下させた抗体の結合を示す。免疫原性を低下させた (「DI」) 抗体 E DI VH5/VL2、E DI VH5/VL1、E DI VH4/VL1、E DI VH5/VL2 及び E DI VH3/VL1は、キメラ抗体と同等な結合を示した。E DI VH2/VL1 の結合は、キメラ抗体に比較してほぼ2分の1に減少していた。E DI VH1/VL1、E DI VH1/VL2、E DI VH3/VL2 及びE DI V4/VL2の結合は、キメラ抗体に比較してさらにほぼ10分の1に減少していた。作表された結果を下の表1に示す。結果は、A405 0.4での抗体の ng で表されている。
【0196】
【表1】

表1. 免疫原性を低下させた抗体の赤血球上のCR1への結合。
【0197】
これらの結果は、免疫原性を低下させた抗CR1モノクローナル抗体 E DI VH5/VL2、E DI VH5/VL1、E DI VH4/VL1、E DI VH5/VL2 及びE DI VH3/VL1 を、免疫原性を低下させた抗CR1 モノクローナル抗体×抗病原体モノクローナル抗体のヘテロ重合体(HP)を作製するために用いてもよいことを示している。このような二重特異的抗体は、ヒトの循環中から病原性物質を除去するために用いることができる。
【0198】
参考文献
Cox JPL, Tomlinson IM,
Winter G. A directory of human VK
segments reveals a strong bias in their usage. Eur. J. Immunol. 1994; 24: 827−36.
Kabat EA, Wu TT, Perry
HM, Gottesman KS, Foeller C.; Sequences of proteins of Immunological Interest,
US Department of Health and Human Services, 1991.
Orlandi R, Gussow D,
Jones P, Winter G. Cloning
immunoglobulin variable domains for expression by the polymerase chain
reaction. Proc Natl
Acad Sci
USA
1989; 86: 3833−7.
Riechmann L, Clark
M, Waldmann H, Winter G. Reshaping
human 抗体 for
therapy. Nature 1988; 332: 323−7.
Tomlinson IM, Walter G, Marks JD, Llewelyn MB,
Winter G. The repertoire of human
germline VH sequences reveals about fifty groups of VH
segments with different hypervariable loops. J. Mol. Biol. 1992:227:776−798.
【0199】
6.2 例2 二重特異的分子 3F3/19E9
この例では、炭疽菌の防御抗原に結合するモノクローナル抗体 3F3と、3F3/19E9を含む二重特異的分子の、J774マクロファージに対する効果を解説する。
【0200】
材料及び試薬
サル赤血球:
ランパイン・バイオ・ラブズ社、カタログ番号B1−180N−10、ロット番号102938800 (#4)から得られるNaeoia中のヒヒ血液。マクロファージ細胞:J774A1、継代 #3、生存率は94.8%であり、2×106細胞/mlで継代した。rPA (2.2 mg/ml)、ロット番号102−72 (CFでアリクォート)NB199−20、1:100(2μl アリクォート+198μl DMEM)に希釈。致死因子 (LF) (1.45 mg/ml)、ロット番号 199−38。それを 1:100(2μl アリクォート+198μl DMEM)に希釈した。振盪速度は 2.1だった。HP 試料:H4−19E9 × 3F3 MAb (PEG)、ロット番号 175−91A、濃度は309.4μg/mlだった。 当該の二重特異的分子は、免疫原性を低下させた抗CR1 Mabである19E9と、非中和抗PA抗体である3F3を、N−スクシンイミジル S−アセチルチオアセテート (SATA) 及び NHS−ポリ (エチレングリコール)− マレイミド (PEG−MAL) を架橋剤として用いて架橋することにより、作製された。
【0201】
手法
1. HPを以下のように希釈した(PAのモル比に基づき):50μlを赤血球有りの組に加えた(100%)。赤血球のない2つの組に、僅かに25μlのMAbを下の表2で解説するように加えた後、25μlのDMEMを加えた(50%)。
【0202】
【表2】

【0203】
2. 試験管内での致死毒素の希釈及びHP保護(FACS);
3. PA洗浄:細胞内のrPA (2.2mg/ml) の最終濃度は150.0 ng/mlであり、PA のストックは0.022 mg/ml (1:100 の希釈度)だった。洗浄は8×150ng/ml − 1.2μg/mlであり、163.6μlのPAストック (22μl/ml) を3 ml のcDMEMに加えた。
4. LF洗浄:細胞内のLF (1.45 mg/ml) の最終濃度は 150.0 ng/mlであり、LF のストックは14.5μg/mlであり、洗浄は 8×150ng/ml −1.2μg/mlであり、245.3μlの LF ストック (14.5μg/ml) を3 ml cDMEMに加えた。
5. 赤血球のある組をHPと一緒に45分間、37℃のインキュベータ内でインキュベートした。インキュベート後、PBS/BSAで1.5回、洗浄した。
6. その間、その他の二組を準備した。赤血球のある組を1.5回、洗浄した後、PA + LFを全ての試験管に同時に加えた。
7. 1時間、37℃のインキュベータ内で2.1の振盪速度でインキュベートした。
8. 200μlの細胞を加え、37℃で3.5時間、2.1の振盪速度でインキュベートした。
9. 3.5時間のインキュベート後、シェーカから細胞を取り出した。低温のPBS/0.5% BSA 緩衝液で0.5回、洗浄した;
10. 200μlのBD FACS 溶解溶液を全ての試験管に加え、室温で10分間、インキュベートした;
11. 4℃で20分間、インキュベートし、1.5回、洗浄した;
12. 2 ml の BD FACS 溶解溶液を全ての試験管に加え、室温で10分間、インキュベートする;
13. 低温の緩衝液で1.5回、洗浄し、その最終ペレットを400μlの緩衝液中でインキュベートした;
14. FACS
calibur で1時間以内に分析した。
【0204】
結果
3F3に架橋させた二重特異的分子19E9の様々な条件下での保護の促進率及び保護率を、表3並びに図14A及び14Bに示す。
【0205】
【表3】

結論
該データは、当該の二重特異的分子 3F3/19E9 (HP) が致死毒素からマクロファージを保護することを明確に示している。
【0206】
7. 参考文献
本発明は、ここに解説された具体的な実施態様によって範囲を限定されるものではない。実際、上に解説したものに加え、本発明の多様な改変は、前述の記載から、当業者には明白となるであろう。このような改変は、付属の請求項の範囲内にあると、意図されている。
【0207】
ここで引用された文献はすべて、引用をもって、そして各個々の公報、特許又は特許出願を具体的かつ個別に、あらゆる目的のために引用をもってその全文を援用することを示唆した場合と同程度に、あらゆる目的のためにその全文をここに援用されたものである。
【0208】
いずれかの公報の引用は、本出願日前のその開示のためであり、先行発明の効力によりこのような公報の先行発明であるとする権利は本発明にはないものとの承諾とみなされてはならない。



【図面の簡単な説明】
【0209】
【図1】図1は、マウスE11 VHのDNA[配列番号1番]及びアミノ酸[配列番号2番]配列を示す。詳細についてはセクション6(実施例1)を参照されたい。
【図2】図2は、マウスE11 VLのDNA[配列番号3番]及びアミノ酸[配列番号4番]配列を示す。詳細についてはセクション6(実施例1)を参照されたい。
【図3】図3は、主要な免疫原性を低下させたE11重鎖、E DIVHv1のDNA[配列番号5番]及びアミノ酸[配列番号6番]配列を示す。詳細についてはセクション6(実施例1)を参照されたい。
【図4】図4は、主要な免疫原性を低下させたE11軽鎖、E DIVLv1のDNA[配列番号7番]及びアミノ酸[配列番号8番]配列を示す。詳細についてはセクション6(実施例1)を参照されたい。
【図5】図5は、マウス及び免疫原性を低下させたEVHのアミノ酸配列の比較を示す。詳細についてはセクション6(実施例1)を参照されたい。マウスE11 VH: MoVH.PRO、 配列番号2番;免疫原性を低下させた E11 VH v1: DiVH−v1.PRO、 配列番号6番;免疫原性を低下させたE11 VH v2: DiVH−v2.PRO、配列番号9番;免疫原性を低下させた E11 VH v3: DiVH−v3.PRO、配列番号10番;免疫原性を低下させた E11 VH v4: DiVH−v4.PRO、配列番号11番;免疫原性を低下させた E11 VH v5: DiVH−v5.PRO、配列番号12番。
【図6】図6は、マウス及び免疫原性を低下させたEVLのアミノ酸配列の比較を示す。詳細についてはセクション6(実施例1)を参照されたい。マウスE11 VL: MoVL.PRO、配列番号8番;免疫原性を低下させた E11 VL v1: DiVL−v1.PRO、配列番号13番;免疫原性を低下させた E11 VL v2: DiVL−v2.PRO、配列番号14番。
【図7】図7は重鎖発現ベクタを示す。詳細についてはセクション6(実施例1)を参照されたい。
【図8】図8は軽鎖発現ベクタを示す。詳細についてはセクション6(実施例1)を参照されたい。
【図9】図9は、マウス及びキメラE11抗体の結合を示す。詳細についてはセクション6(実施例1)を参照されたい。
【図10】図10は、免疫原性を低下させた抗体 E DI VH5/VL2 及びE DI VH3/VL2 の結合を、キメラ抗体(「EキメラAb」)の結合に比較して示す。詳細についてはセクション6(実施例1)を参照されたい。
【図11】図11は、免疫原性を低下させた抗体 E DI VH4/VL1 及びE DI VH2/VL1 の結合を、キメラ抗体(「EキメラAb」)の結合と比較して示す。詳細についてはセクション6(実施例1)を参照されたい。
【図12】図12は、免疫原性を低下させた抗体 E DI VH1/VL1、E DI VH1/VL2 及び E DI VH3/VL1 の結合をキメラ抗体 (「EキメラAb」)の結合に比較して示す。詳細についてはセクション6(実施例1)を参照されたい。
【図13】図13は、免疫原性を低下させた抗体 E DI VH5/VL1 及びE DI VH4/VL2 の結合を、キメラ抗体(「EキメラAb」)の結合に比較して示す。詳細についてはセクション6(実施例1)を参照されたい。
【図14】図14A−Bは、マクロファージ生存率検定で、3F3を19E9に架橋させた二重特異的分子がマクロファージをB.アンスラシス(B. anthracis)の致死毒素(PA及びLFを含有する)から赤血球の存在下で保護したことが示されたことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CR1に特異的に結合する分子であって、配列番号2番に解説された通りの、しかし配列番号2番に以下のアミノ酸置換:
位置 17: Ser → Thr;
位置 25: Thr → Ser;
位置 29: Ile → Met;
位置 44: Asn → Lys;
位置 45: Lys → Gly;
位置 49: Met → Ile;
位置 59: Ser → Thr;
位置 64: Leu → Val;
位置 69: Ser → Thr;
位置 71: Thr → Ser;
位置 83: Leu →
Met;
位置 111: Val →
Tyr; 及び
位置 114: Ala →
Gln
のうちの一つ以上を持つアミノ酸配列を含む、分子。
【請求項2】
配列番号2番に以下のアミノ酸置換:
位置 17: Ser → Thr;
位置 25: Thr → Ser;
位置 29: Ile → Met;
位置 44: Asn → Lys;
位置 45: Lys → Gly;
位置 49: Met → Ile;
位置 59: Ser → Thr;
位置 64: Leu → Val;
位置 69: Ser → Thr;
位置 71: Thr → Ser;
位置 83: Leu → Met;
位置 111: Val → Tyr; 及び
位置 114: Ala → Gln
を有する、請求項1に記載の分子。
【請求項3】
配列番号2番に以下のアミノ酸置換:
位置 17: Ser → Thr;
位置 25: Thr → Ser;
位置 29: Ile → Met;
位置 44: Asn → Lys;
位置 45: Lys → Gly;
位置 49: Met → Ile;
位置 64: Leu → Val;
位置 69: Ser → Thr;
位置 71: Thr → Ser;
位置 83: Leu → Met; 及び
位置 114: Ala → Gln
を有する、請求項1に記載の分子。
【請求項4】
配列番号2番に以下のアミノ酸置換:
位置 17: Ser → Thr;
位置 25: Thr → Ser;
位置 29: Ile → Met;
位置 44: Asn → Lys;
位置 45: Lys → Gly;
位置 49: Met → Ile;
位置 71: Thr → Ser;
位置 83: Leu → Met; 及び
位置 114: Ala → Gln
を有する、請求項1に記載の分子。
【請求項5】
配列番号2番に以下のアミノ酸置換:
位置 17: Ser → Thr;
位置 25: Thr → Ser;
位置 44: Asn → Lys;
位置 45: Lys → Gly;
位置 49: Met → Ile;
位置 71: Thr → Ser;
位置 83: Leu → Met; 及び
位置 114: Ala → Gln
を有する、請求項1に記載の分子。
【請求項6】
配列番号2番に以下のアミノ酸置換:
位置 17: Ser → Thr;
位置 44: Asn → Lys;
位置 45: Lys → Gly;
位置 71: Thr → Ser;
位置 83: Leu →
Met; 及び
位置 114: Ala →
Gln
を有する、請求項1に記載の分子。
【請求項7】
CR1に特異的に結合する分子であって、配列番号2番のアミノ酸番号51−66に記載された通りの、しかし以下のアミノ酸置換:
位置 59: Ser →
Thr; 及び
位置 64: Leu →
Val
のうちの一つ以上を持つアミノ酸配列を有する相補性決定領域2を含む免疫グロブリン可変領域を含む、分子。
【請求項8】
CR1に特異的に結合する分子であって、配列番号2番のアミノ酸番号99−112に記載された通りの、しかし以下のアミノ酸置換:
位置 111: Val →
Tyr
のうちの一つ以上を持つアミノ酸配列を有する相補性決定領域3を含む免疫グロブリン可変領域を含む、分子。
【請求項9】
CR1に特異的に結合する分子であって、
(a)配列番号2番のアミノ酸番号31−36に記載された通りの相補性決定領域1と;
(b)配列番号2番のアミノ酸番号51−66に記載された通りの、しかし以下のアミノ酸置換:
位置 59: Ser →
Thr, 及び
位置 64: Leu →
Val;
のうちの1つ以上を持つ相補性決定領域2と;
(c)配列番号2番のアミノ酸番号99−112に記載された通りの、しかし以下のアミノ酸置換:
位置 111: Val →
Tyr
を持つ相補性決定領域3と
を含む免疫グロブリン可変領域を含む、分子。
【請求項10】
配列番号4番に記載された通りの、しかし以下のアミノ酸置換:
位置 15: Leu
→ Val;
位置 53: Lys
→ Tyr;
位置 80: His →
Ser;
位置 104: Gly → Pro;
位置 107: Thr → Lys;
位置 108: Leu → Val; 及び
位置 111: Arg → Lys
のうちの一つ以上を持つアミノ酸配列を更に含む、請求項1乃至6のいずれかに記載の分子。
【請求項11】
配列番号4番に以下のアミノ酸置換:
位置 15: Leu
→ Val;
位置 53: Lys
→ Tyr;
位置 80: His → Ser;
位置 104: Gly → Pro;
位置 107: Thr → Lys;
位置 108: Leu → Val; 及び
位置 111: Arg → Lys
を有する、請求項10に記載の分子。
【請求項12】
配列番号4番に以下のアミノ酸置換:
位置 15: Leu → Val;
位置 80: His → Ser;
位置 104: Gly → Pro;
位置 108: Leu → Val; 及び
位置 111: Arg → Lys
を有する、請求項10に記載の分子。
【請求項13】
免疫グロブリンである、請求項10に記載の分子。
【請求項14】
scFvである、請求項10に記載の分子。
【請求項15】
ヒト化された、請求項10に記載の分子。
【請求項16】
キメラである、請求項10に記載の分子。
【請求項17】
精製された、請求項13に記載の分子。
【請求項18】
請求項13に記載の分子を発現するハイブリドーマ。
【請求項19】
(a)哺乳動物の循環系中の量を低下させたい病原性抗原性分子に特異的に結合する第一結合部分と;
(b)CR1に特異的に結合する第二結合部分であって、配列番号2番に記載された通りの、しかし配列番号2番に以下のアミノ酸置換:
位置 17:
Ser → Thr;
位置 25:
Thr → Ser;
位置 29: Ile → Met;
位置 44:
Asn → Lys;
位置 45:
Lys → Gly;
位置 49:
Met → Ile;
位置 59:
Ser → Thr;
位置 64: Leu → Val;
位置 69: Ser → Thr;
位置 71: Thr → Ser;
位置 83: Leu → Met;
位置 111: Val → Tyr; 及び
位置 114: Ala → Gln
のうちの1つ以上を持つアミノ酸配列を含む、第二結合部分と
を含む、分子。
【請求項20】
配列番号2番に以下のアミノ酸置換:
位置 17: Ser → Thr;
位置 25: Thr → Ser;
位置 29: Ile → Met;
位置 44: Asn → Lys;
位置 45: Lys → Gly;
位置 49: Met → Ile;
位置 59: Ser → Thr;
位置 64: Leu
→ Val;
位置 69: Ser
→ Thr;
位置 71: Thr
→ Ser;
位置 83: Leu
→ Met;
位置 111: Val → Tyr; 及び
位置 114: Ala → Gln
を有する、請求項19に記載の分子。
【請求項21】
配列番号2番に以下のアミノ酸置換:
位置 17: Ser
→ Thr;
位置 25: Thr
→ Ser;
位置 29: Ile → Met;
位置 44: Asn
→ Lys;
位置 45: Lys
→ Gly;
位置 49: Met
→ Ile;
位置 64: Leu
→ Val;
位置 69: Ser → Thr;
位置 71: Thr → Ser;
位置 83: Leu → Met; 及び
位置 114: Ala → Gln
を有する、請求項19に記載の分子。
【請求項22】
配列番号2番に以下のアミノ酸置換:
位置 17: Ser → Thr;
位置 25: Thr → Ser;
位置 29: Ile → Met;
位置 44: Asn → Lys;
位置 45: Lys → Gly;
位置 49: Met → Ile;
位置 71: Thr → Ser;
位置 83: Leu → Met; 及び
位置 114: Ala → Gln
を有する、請求項19に記載の分子。
【請求項23】
配列番号2番に以下のアミノ酸置換:
位置 17: Ser → Thr;
位置 25: Thr → Ser;
位置 44: Asn → Lys;
位置 45: Lys → Gly;
位置 49: Met → Ile;
位置 71: Thr → Ser;
位置 83: Leu → Met; 及び
位置 114: Ala → Gln
を有する、請求項19に記載の分子。
【請求項24】
配列番号2番に以下のアミノ酸置換:
位置 17:
Ser → Thr;
位置 44: Asn → Lys;
位置 45: Lys → Gly;
位置 71: Thr → Ser;
位置 83: Leu → Met; 及び
位置 114: Ala → Gln
を有する、請求項19に記載の分子。
【請求項25】
前記第二結合部分が、配列番号4番に記載された通りの、しかし配列番号4番に以下のアミノ酸置換:
位置 15: Leu
→ Val;
位置 53: Lys
→ Tyr;
位置 80: His → Ser;
位置 104: Gly → Pro;
位置 107: Thr → Lys;
位置 108: Leu → Val; 及び
位置 111: Arg → Lys
のうちの1つ以上を持つ、アミノ酸配列を更に含む、請求項19乃至24のいずれかに記載の分子。
【請求項26】
配列番号4番に以下のアミノ酸置換:
位置 15: Leu
→ Val;
位置 53: Lys
→ Tyr;
位置 80: His → Ser;
位置 104: Gly → Pro;
位置 107: Thr → Lys;
位置 108: Leu → Val; 及び
位置 111: Arg → Lys
を有する、請求項25に記載の分子。
【請求項27】
配列番号4番に以下のアミノ酸置換:
位置 15: Leu → Val;
位置 80: His → Ser;
位置 104: Gly → Pro;
位置 108: Leu → Val; 及び
位置 111: Arg → Lys
を有する、請求項25に記載の分子。
【請求項28】
前記第二結合部分が免疫グロブリン又はそのFab領域である、請求項19に記載の分子。
【請求項29】
前記第一結合部分が免疫グロブリン又はそのFab領域である、請求項28に記載の分子。
【請求項30】
前記第一及び第二結合部分が相互に架橋されている、請求項29に記載の分子。
【請求項31】
ヒト化された、請求項19に記載の分子。
【請求項32】
キメラである、請求項19に記載の分子。
【請求項33】
精製された、請求項19に記載の分子。
【請求項34】
前記第二結合部分が免疫グロブリン又はそのFab領域である、請求項25に記載の分子。
【請求項35】
前記第一部分が免疫グロブリン又はそのFab領域である、請求項34に記載の分子。
【請求項36】
前記第一及び第二結合部分が相互に架橋されている、請求項25に記載の分子。
【請求項37】
ヒト化された、請求項25に記載の分子。
【請求項38】
キメラである、請求項25に記載の分子。
【請求項39】
精製された、請求項25に記載の分子。
【請求項40】
(a)(i)病原体の抗原;
(ii)自己抗原;又は
(iii)哺乳動物の循環系から除去したい血液由来タンパク質
に特異的に結合する第一結合部分と、
(b)CR1に特異的に結合する第二結合部分であって、配列番号2番のアミノ酸番号51−66に記載された通りの、しかし配列番号2番に以下のアミノ酸置換:
位置 59: Ser → Thr; 及び
位置 64: Leu → Val
のうちの一つ以上を持つ、相補性決定領域2を含む免疫グロブリン可変領域を含む、第二結合部分と
を含む、分子。
【請求項41】
配列番号2番に以下のアミノ酸置換:
位置 59: Ser → Thr; 及び
位置 64: Leu → Val
を有する、請求項40に記載の分子。
【請求項42】
前記免疫グロブリン可変領域が、配列番号2番の記載されたアミノ酸番号31−36通りの相補性決定領域1を含む、請求項40に記載の分子。
【請求項43】
(a)(i)病原体の抗原;
(ii)自己抗原;又は
(iii)哺乳動物の循環系から除去したい血液由来タンパク質
に特異的に結合する第一結合部分と、
(b)CR1に特異的に結合する第二結合部分であって、配列番号2番のアミノ酸番号99−112に記載された通りの、しかし配列番号2番に以下のアミノ酸置換:
位置 111: Val → Tyr
を持つ相補性決定領域3を含む免疫グロブリン可変領域を含む、第二結合部分と
を含む、分子。
【請求項44】
前記免疫グロブリン可変領域が、配列番号2番のアミノ酸番号31−36に記載された通りの相補性決定領域1を含む、請求項43に記載の分子。
【請求項45】
前記第一及び第二結合部分がそれぞれ免疫グロブリン又はそのFab領域である、請求項40乃至44のいずれかに記載の分子。
【請求項46】
前記第一及び第二結合部分が相互に架橋されている、請求項40乃至44のいずれかに記載の分子。
【請求項47】
ヒト化された、請求項40乃至43のいずれかに記載の分子。
【請求項48】
キメラである、請求項40乃至43のいずれかに記載の分子。
【請求項49】
精製された、請求項40乃至43のいずれかに記載の分子。
【請求項50】
第一ポリペプチド及び第二ポリペプチドを含む二量体分子であって、前記第一ポリペプチドが第一結合ドメインを含み、そして前記第二ポリペプチドが第二結合ドメインを含み、更に前記第一ポリペプチド及び第二ポリペプチドが、それぞれ個別に(a)アミノからカルボキシ末端の順に、免疫グロブリン可変軽鎖ドメイン、免疫グロブリン定常軽鎖ドメイン、リンカ・ポリペプチド、免疫グロブリン可変重鎖ドメイン、CH1ドメイン、免疫グロブリン・ヒンジ領域、CH2ドメイン、及びCH3ドメインから基本的に成る第三ポリペプチド;及び(b)アミノからカルボキシ末端の順に、scFv、CH1ドメイン、免疫グロブリン・ヒンジ領域、CH2ドメイン、及びCH3ドメインから基本的に成る第四ポリペプチド、から成る群より選択される、請求項19に記載の分子。
【請求項51】
第一ポリペプチド及び第二ポリペプチドを含む二量体分子であって、前記第一ポリペプチドが第一結合ドメインを含み、そして前記第二ポリペプチドが第二結合ドメインを含み、更に前記第一ポリペプチド及び第二ポリペプチドが、それぞれ個別に(a)アミノからカルボキシ末端の順に、免疫グロブリン可変軽鎖ドメイン、免疫グロブリン定常軽鎖ドメイン、リンカ・ポリペプチド、免疫グロブリン可変重鎖ドメイン、CH1ドメイン、免疫グロブリン・ヒンジ領域、CH2ドメイン、及びCH3ドメインから基本的に成る第三ポリペプチド;及び(b)アミノからカルボキシ末端の順に、scFv、CH1ドメイン、免疫グロブリン・ヒンジ領域、CH2ドメイン、及びCH3ドメインから基本的に成る第四ポリペプチド、から成る群より選択される、請求項25に記載の分子。
【請求項52】
アミノからカルボキシ末端の順に、第一ポリペプチド及び第二ポリペプチドから基本的に成るポリペプチドであって、前記第一ポリペプチドが第一結合ドメインを含み、前記第二ポリペプチドが第二結合ドメインを含み、そして前記第一ポリペプチドが、アミノからカルボキシ末端の順に、第一scFv、CH2ドメイン、及びCH3ドメインから基本的に成り、そして前記第二ポリペプチドが、アミノからカルボキシ末端の順に、第二scFvドメインから基本的に成る、ポリペプチド、である、請求項19に記載の分子。
【請求項53】
アミノからカルボキシ末端の順に、第一ポリペプチド及び第二ポリペプチドから基本的に成るポリペプチドであって、前記第一ポリペプチドが第一結合ドメインを含み、前記第二ポリペプチドが第二結合ドメインを含み、そして前記第一ポリペプチドが、アミノからカルボキシ末端の順に、第一scFv、CH2ドメイン、及びCH3ドメインから基本的に成り、そして前記第二ポリペプチドが、アミノからカルボキシ末端の順に、第二scFvドメインから基本的に成る、ポリペプチド、である、請求項25に記載の分子。
【請求項54】
アミノからカルボキシ末端の順に、第一ポリペプチド及び第二ポリペプチドから基本的に成るポリペプチドであって、前記第一ポリペプチドが第一結合ドメインを含み、前記第二ポリペプチドが第二結合ドメインを含み、そして前記第一ポリペプチドが、アミノからカルボキシ末端の順に、第一scFv、CH3ドメイン、及びCH2ドメインから基本的に成り、そして前記第二ポリペプチドが、アミノからカルボキシ末端の順に、第二scFvドメインから基本的に成る、ポリペプチド、である、請求項19に記載の分子。
【請求項55】
アミノからカルボキシ末端の順に、第一ポリペプチド及び第二ポリペプチドから基本的に成るポリペプチドであって、前記第一ポリペプチドが第一結合ドメインを含み、前記第二ポリペプチドが第二結合ドメインを含み、そして前記第一ポリペプチドが、アミノからカルボキシ末端の順に、第一免疫グロブリン可変重鎖、第一免疫グロブリン可変軽鎖、CH2ドメイン及びCH3ドメインから基本的に成り、そして前記第二ポリペプチドが、アミノからカルボキシ末端の順に、第二免疫グロブリン可変重鎖及び第二免疫グロブリン可変軽鎖から基本的に成る、ポリペプチド、である、請求項25に記載の分子。
【請求項56】
前記第一及び第二結合ドメインがそれぞれ免疫グロブリン又はそのFab領域である、請求項50乃至55のいずれかに記載の分子。
【請求項57】
哺乳動物の循環中から血液由来抗原、自己抗原又は病原体を除去する方法であって、前記哺乳動物に、請求項25に記載の分子を、前記哺乳動物の循環中から目的の抗原を除去するために有効量、投与するステップを含む、方法。
【請求項58】
前記哺乳動物がヒトである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
血液由来抗原、自己抗原又は病原体を哺乳動物の循環中から除去する方法であって、前記抗原、自己抗原又は病原体が、前記哺乳動物の循環中で発現し、前記方法が、請求項25に記載の分子を、前記哺乳動物の循環中から目的の抗原を除去するために有効量、前記哺乳動物に投与するステップを含む、方法。
【請求項60】
前記哺乳動物がヒトである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
治療上有効量の、請求項25に記載の分子と、薬学的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
【請求項62】
一つ以上の容器内に、請求項25に記載の分子をコードする一つ以上の単離された核酸を含む、キット。
【請求項63】
請求項25に記載の分子をコードする一つ以上の核酸をトランスフェクトされた細胞を一個以上に含有して含む、キット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公表番号】特表2007−530438(P2007−530438A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532353(P2006−532353)
【出願日】平成16年3月29日(2004.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/009622
【国際公開番号】WO2005/002529
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(505361439)
【氏名又は名称原語表記】Himawan, Jeff
【住所又は居所原語表記】7 Calle Merecida, TalegaComplex, San Clemente, CA 92673−6847 (US).
【Fターム(参考)】