説明

免疫学的欠損を有する患者において免疫応答性を回復するための、組成物および方法

【課題】T細胞集団において発現されるTCRのポリクローン性を刺激、活性化および維持または増加するための方法を提供する。
【解決手段】種々の実施形態において、細胞は、表面で刺激され、ここで、この表面にT細胞の少なくとも一部の細胞表面部分に連結し、かつこのT細胞の少なくとも一部を刺激する1以上の試薬が結合され、増強された増大、細胞情報伝達および/または細胞表面凝集を生じる。特定の局面において、細胞表面部分の結合により細胞集団(例えば、T細胞)を刺激するための方法が、表面に細胞集団を接触することによって提供され、この表面には、細胞表面部分に結合する1以上の試薬が結合され、それにより細胞の刺激、細胞表面部分の凝集、および/またはレセプターの情報伝達増強を誘導する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は一般に、T細胞を刺激するための方法に関し、そしてより詳細には、T細胞集団における、発現されたT細胞レセプター(TCR)のポリクローン性(polyclonality)を増大させ、それにより、このT細胞の免疫潜在能力を回復させる方法に関する。本発明はまた、ポリクローン性が増大した刺激されたT細胞を含め、細胞の組成物およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
T細胞が、種々の癌または感染性生物と関連した多数の抗原を認識する能力は、そのT細胞抗原レセプター(TCR)によって付与される。TCRは、α鎖およびβ鎖の両方またはγ鎖とδ鎖との両方から構成される。これらの鎖を構成するタンパク質は、TCRの途方も無く大きい多様性を作製する独特の機構を用いたDNAによってコードされる。TCRのα鎖およびβ鎖、またはTCRのγ鎖およびδ鎖は、ジスルフィド結合によって連結される(Janeway,Travers,Walport.Immunobiology.第4版,148−159.Elsevier Science Ltd/Garland Publishing.1999(非特許文献1))。このα/βヘテロダイマーまたはγ/δヘテロダイマーは、細胞膜において不変のCD3鎖と複合体を形成し、そしてこの複合体は、MHC分子に結合した特異的抗原性ペプチドを認識するか、またはγδ T細胞の場合、MHC拘束とは独立した部分を認識し得る。TCR特異性の莫大な数の多様性は、免疫グロブリン多様性とそっくりに、体細胞遺伝子の再配置によって作製される。β鎖遺伝子は、50個を超える可変セグメント(V)、2個の多様性セグメント(D)、10個を超える連結セグメント(J)、および2個の定常領域セグメント(C)を含む。α鎖遺伝子は、約70個のVセグメント、および60個を超えるJセグメントを含むが、Dセグメントを含まず、そして1個のCセグメントを含む。胸腺におけるT細胞発達の間に、β鎖のDからJまでの遺伝子の再配置が生じ、続いてDJへのV遺伝子セグメントの再配置が生じる。この機能的VDJβエキソンは転写され、スプライシングされて、Cβに連結される。α鎖については、Vα遺伝子セグメントは、Jα遺伝子セグメントへと再配置されて、機能的エキソンが作製され、次いでこの機能的エキソンは転写され、そしてスプライシングされてCαとなる。
【0003】
V遺伝子セグメント、D遺伝子セグメント、およびJ遺伝子セグメントが一緒に結合して、大きなエレメントのコンビナトリアル多様性をTCRレパートリーにランダムに導入する。Vセグメント、Dセグメント、およびJセグメントが連結する正確な点は、変動して、連結部において局所アミノ酸多様性を生じ得る。連結部の正確なヌクレオチド位置は、10残基程度という多数で異なって、V遺伝子セグメント、D遺伝子セグメント、およびJ遺伝子セグメントの末端からのヌクレオチドの欠失をもたらし得、それによって、これらのセグメントの連結部においてコドンの変化を生じ得る。多様性は、いずれの遺伝子セグメントによってもコードされないさらなるヌクレオチドが、連結される遺伝子セグメント間の連結部において付加される場合、再配置プロセスの間にさらに増大し得る(このプロセスによって作製される可変性は、「N領域多様性」と呼ばれる)(Janeway,Travers,Walport.Immunobiology.第4版,98および150.Elsevier Science Ltd/Garland Publishing.1999(非特許文献2))。
【0004】
T細胞レパートリーについての多様性のレベルは、どのTCR Vβ鎖が、循環するT細胞のプールにおいて個々のT細胞によって用いられるかを評価することによって、およびVβ遺伝子の隣に挿入されたランダムヌクレオチドの数によって、部分的に測定され得る。一般に、循環するT細胞プールが、TCR Vβ鎖の完全な範囲を発現するT細胞を含む場合、そしてこれらの個々のVβ鎖が、挿入されたヌクレオチドの最も広いアレイを利用する遺伝子組換え事象から誘導される場合、免疫系のT細胞アームは、多数の潜在能力抗原を認識するその最大の潜在能力を有する。循環するT細胞のプールによって発現される、ある範囲のTCR Vβ鎖が限定または低減される場合、そして発現されたTCRが、制限されたヌクレオチド挿入を有する、組換えられた遺伝子によってコードされる鎖を利用する場合、最も広範な免疫応答潜在能力は、それに応じて低減される。この結果は、感染および癌の危険性の増加をもたらす、広範な種々の抗原に対する応答能力の低減である。
【0005】
スペクトル型分析は、T細胞のプールによるTCR Vβ遺伝子、TCR Vα遺伝子、TCR Vγ遺伝子、またはTCR Vδ遺伝子の使用法、およびT細胞の発達において組換えプロセスの間にヌクレオチド挿入のレベルを測定するために、近年開発された方法である(米国特許第5,837,447号(特許文献1)に記載の通り)。スペクトル型分析を用いて、T細胞免疫応答の潜在能力の広さまたは狭さを測定し得る。
【0006】
抗原提示細胞(APC)上のMHC分子に関連して結合した抗原性ペプチドに対するαβ TCRの結合は、T細胞とAPCとの間での接触点にて、免疫学的シナプスにおいて生じる、T細胞活性化における中心的事象である。T細胞活性化を維持するために、Tリンパ球は代表的に、第二の補助刺激シグナルを必要とする。補助刺激は、代表的に、Tヘルパー細胞が、クローン増大を誘導するに十分なサイトカインレベルを生成するために必要である。Bretscher,Immunol.Today 13:74,1992(非特許文献3);Juneら,Immunol.Today 15:321,1994(非特許文献4)。主な補助刺激シグナルは、活性化された抗原提示細胞(APC)上の、B7ファミリーのリガンドのメンバー(CD80(B7.1)またはCD86(B7.2))がT細胞上のCD28に結合した場合に生じる。
【0007】
T細胞の特定のサブセットの増大を刺激する方法は、免疫治療において有用な、種々のT細胞組成物を作製する潜在能力を有する。成功裏の免疫治療は、効率的な刺激によってT細胞のポリクローン性、応答性、および量を増加させることにより、補助され得る。
【0008】
ヒトT細胞を増大させるために利用可能な種々の技術は、補助細胞および/または外因性増大因子(例えば、インターロイキン−2(IL−2))の使用に主に依存している。
IL−2は、T細胞のCD8部分集団を優先的に増大させるT細胞の増大を刺激するために、抗CD3抗体とともに用いられている。両方のAPCシグナルは、再注入の際の、T細胞の最適な活性化、増大、およびT細胞の長期生存に必要とされると考えられる。補助細胞としての、MHCが一致したAPCについての必要性は、長期間の培養系についての重大な問題を提示する。なぜなら、APCは、寿命が比較的短いからである。それゆえ、長期培養系においては、APCは、供給源から連続して入手されて補充されなければならない。補助細胞の再生可能な供給についての必要性は、補助細胞が影響を受ける免疫欠損の処置について問題がある。さらに、ウイルス感染を処置する場合、補助細胞がウイルスを保有する場合、細胞は、長期培養の間にT細胞集団全体を汚染し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,837,447号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Janeway,Travers,Walport.Immunobiology.第4版,148−159.Elsevier Science Ltd/Garland Publishing.1999
【非特許文献2】Janeway,Travers,Walport.Immunobiology.第4版,98および150.Elsevier Science Ltd/Garland Publishing.1999
【非特許文献3】Bretscher,Immunol.Today 13:74,1992
【非特許文献4】Juneら,Immunol.Today 15:321,1994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
当該分野でこれまで利用可能な方法は、T細胞の増大に抗CD3および抗CD28を利用する。しかし、このような方法はいずれも、このような方法または類似の方法を用いて、T細胞集団のポリクローン性を増大させることも、その有益な結果も、全く記載していない。さらに、増大したT細胞の利用可能性は、いくつかの疾患状態にのみ限定されている。さらに、これまで利用可能な方法は、T細胞集団のポリクローン性を増大および/または維持するというよりも、T細胞集団のクローン性をさらにゆがめる傾向がある。最大のインビボでの有効性のために、理論的に、エキソビボまたはインビボで作製された、活性化T細胞集団は、免疫応答を、癌、感染性疾患、または他の疾患状態に最大に調和させ得る状態にあるべきである。本発明は、TCR発現において増大したポリクローン性を有する、増大した数の、より高度に活性化されかつより純度の高いT細胞を作製する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明の1つの局面は、免疫無防備状態の患者由来のT細胞集団のTCR発現のポリクローン性を回復するために、この患者において免疫応答性を回復するために用いられる方法を提供し、この方法は、その少なくとも一部分がT細胞を含む細胞集団を提供する工程、この細胞集団を表面に曝露する工程であって、ここでこの表面には、T細胞の少なくとも一部分の細胞表面部分を連結し、そしてT細胞の少なくとも一部分を刺激する1以上の因子が結合している工程、TCR発現に関して少なくとも1つのTCRのVβファミリー、Vαファミリー、Vγファミリー、および/またはVδファミリーのポリクローン性を増大させるに充分な時間にわたってこの細胞を増大させ、それにより、T細胞集団のポリクローン性を回復させる工程を包含する。
【0013】
本発明の1つの実施形態では、この回復は、少なくとも1つのVβ、Vα、Vγ、および/またはVδのファミリー遺伝子のVβ、Vα、Vγ、および/またはVδのスペクトル型プロフィールによって測定される場合の、T細胞集団の、モノクローン性からオリゴクローン性へのシフト、モノクローン性からポリクローン性へのシフト、またはオリゴクローン性からポリクローン性へのシフトを含む。本明細書中に提供される方法の別の実施形態では、このシフトは、少なくとも1つのVβ、Vα、Vγ、および/またはVδのファミリーの遺伝子を発現するポリクローナルT細胞の、治療における使用のために充分な数までの増加を含む。
【0014】
本発明の別の局面は、個体のT細胞が、免疫無防備状態ではない個体と比較して減少したTCR発現ポリクローン性を有する、免疫無防備状態の個体において免疫応答性を回復する方法を提供し、この方法は、少なくともその一部分がT細胞を含む細胞集団をこの個体から得る工程;この細胞集団を表面に曝露する工程であって、この表面には、このT細胞の少なくとも一部分の細胞表面部分を連結し、かつT細胞の少なくとも一部分を刺激する1以上の因子が結合している、工程;少なくとも1つのTCRのVβファミリー、Vαファミリー、Vγファミリー、および/またはVδファミリーのポリクローン性を増大させるに充分な時間にわたってこの細胞を増大させる工程;ならびにT細胞のこの刺激された部分を免疫無防備状態の個体に注入する工程;ならびにそれによって、この免疫無防備状態の個体において免疫応答性を回復させる工程を包含する。特定の実施形態では、注入されたT細胞のポリクローン性は、注入後、少なくとも3〜6ヶ月間から1年にわたって、インビボで維持される。
【0015】
1つの実施形態では、この免疫無防備状態の個体は、癌を有する。この癌は、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、白血病、形質細胞腫、肉腫、神経膠腫、胸腺腫、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、腎臓癌、腎細胞癌、膵臓癌、鼻咽腔癌、食道癌、脳癌、肺癌、卵巣癌、子宮頸癌、多発性骨髄腫、肝細胞(heptocellular)癌、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、巨顆粒球リンパ球性白血病(LGL)、および慢性リンパ球性白血病(CLL)のうちのいずれか1種であり得る。1つの好ましい実施形態では、癌は、B細胞リンパ球性白血病である。
【0016】
別の実施形態では、この免疫無防備状態の個体は、感染性生物に感染している。この感染性生物は、ウイルス(例えば、1本鎖RNAウイルスもしくは1本鎖DNAウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、もしくはC型肝炎ウイルス、単純疱疹ウイルス(HSV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV))、寄生生物、細菌、M.tuberculosis、Pneumocystis carinii、Candida、もしくはAspergillusまたはそれらの組み合わせが挙げられ得る。
【0017】
別の実施形態では、この免疫無防備状態の個体は、先天性遺伝障害(例えば、重症複合型免疫不全(SCID)または分類不能型免疫不全(CVID))を有する。特定の実施形態では、この個体は、癌に関連した処置の結果として、免疫無防備状態である。特定の実施形態では、この個体は、造血幹細胞移植、骨髄移植、臍帯血、同種異型細胞移植、自己細胞移植、もしくは異種細胞移植、化学療法、放射線療法、細胞傷害剤を用いた処置、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、コルチコステロイドなど)を用いた処置に関連した処置の結果として、免疫無防備状態である。さらなる実施形態では、この免疫無防備状態の個体は、免疫不全または自己免疫疾患を有する。なおさらなる実施形態では、この免疫無防備状態の個体は、腎臓、肝臓または膵臓に罹患する慢性疾患を有する。1つの特定の実施形態では、この個体は、糖尿病を有する。1つの実施形態では、この免疫無防備状態の個体は、加齢によって影響される。さらなる実施形態では、この免疫無防備状態の個体は、遺伝子治療またはT細胞レパートリーのゆがみをもたらした遺伝子形質導入を含む他の手順を受けている。
【0018】
別の実施形態では、この免疫無防備状態の個体は、変化したかまたはゆがんだT細胞レパートリーに関連した障害(例えば、以下の疾患が挙げられるがこれらに限定されない)に罹患している:慢性関節リウマチ、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病、アディソン病、セリアック病、慢性疲労症候群、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、線維筋痛症、全身性エリテマトーデス、感染、シェーグレン症候群、甲状腺機能亢進/グレーヴズ病、甲状腺機能低下/橋本病、インスリン依存性糖尿病(1型)、重症筋無力症、子宮内膜症、強皮症、悪性貧血、グッドパスチャー症候群、ヴェーゲナー病、糸球体腎炎、再生不良性貧血、種々の血球減少症のいずれか、発作性夜間血色素尿症、骨髄異形成症候群、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫溶血性貧血、ファンコーニ貧血、エヴァンズ症候群、第VIII因子インヒビター症候群、第IX因子インヒビター症候群、全身性脈管炎、皮膚筋炎、多発性筋炎およびリウマチ熱。本明細書中に記載される方法および組成物を用いて、低血球数によって特徴付けられる血液学的障害を処置し得る。
【0019】
別の実施形態では、この免疫無防備状態の個体は、T細胞レパートリーのゆがみに関連した神経学的障害または心臓血管疾患に罹患している。
【0020】
さらなる実施形態では、本発明の細胞組成物は、自己免疫疾患を有する患者に投与される。本発明の1つの実施形態は、免疫無防備状態の個体において免疫応答性を回復するための方法を提供し、ここで、この免疫無防備状態の個体は、自己免疫疾患に罹患している。特定の実施形態では、自己免疫疾患としては、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病、アディソン病、セリアック病、慢性疲労症候群、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、線維筋痛症、全身性エリテマトーデス、感染、シェーグレン症候群、甲状腺機能亢進/グレーヴズ病、甲状腺機能低下/橋本病、インスリン依存性糖尿病(1型)、および重症筋無力症が挙げられるがこれらに限定されない。さらなる実施形態では、この免疫無防備状態の個体は、化学療法で処置されている。なおさらなる実施形態では、この免疫無防備状態の個体は、細胞傷害剤で処置されている。別の実施形態では、この免疫無防備状態の個体は、免疫抑制剤で処置されている。1つの実施形態では、この免疫無防備状態の個体は、再生不良性貧血、脊髄異形成症候群、ファンコーニ貧血、特発性血小板減少性紫斑病および自己免疫溶血性貧血が挙げられるがこれらに限定されない血球減少に関連した血液学的障害に罹患している。
【0021】
本発明の1つの局面は、本明細書中に記載される方法に従ってポリクローン性が回復しているT細胞集団、および薬学的に受容可能な賦形剤を含む、免疫無防備状態の個体における免疫応答性を回復する際に使用するための、組成物を提供し、ここで、この個体のT細胞は、免疫無防備状態でない個体と比較してポリクローン性が減少している。
【0022】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、化学療法剤(例えば、フルダラビン(fludarabine))、外部ビーム照射治療(XRT)、シクロホスファミド、または抗体(例えば、OKT3もしくはCAMPATH)のいずれかを用いたT細胞除去治療後の患者に投与される。別の実施形態では、本発明の細胞組成物は、例えば、CD20と反応する薬剤(例えば、Rituxan)でのB細胞除去治療後の患者に投与される。患者に投与されるべき上記の処置の投薬量は、処置されるべき状態の正確な性質および処置のレシピエントに伴って変化する。ヒトへの投与のための投薬量のスケーリングは、当該分野で受け入れられている実践に基づいて行われ得る。例えば、CAMPATHについての用量は、一般に、成体患者について1〜約100mgの範囲であり、通常、1日間と30日間との間の期間にわたって毎日投与される。好ましい日用量は、1〜10mg/日であるが、いくつかの例では、40mg/日までのより多くの用量が用いられ得る(米国特許第6,120,766号に記載される)。
【0023】
1つの局面では、本発明は、TCR発現のポリクローン性が本発明の方法によって回復されたT細胞集団、および薬学的に受容可能な賦形剤を含む、免疫無防備状態の個体における免疫応答性を回復する際に使用するための組成物を提供し、ここで、この個体のT細胞は、ポリクローン性が、免疫無防備状態でない個体と比較して減少している。
【0024】
別の局面では、本発明は、方法を提供し、ここで、表面には、T細胞の第1細胞表面部分を連結する第1薬剤が結合しており;そして同じまたは第2の表面には、このT細胞の第2部分を連結する第2薬剤が結合しており、この第1薬剤および第2薬剤による連結は、このT細胞の増大を誘導する。1つの実施形態では、この第1薬剤は、抗CD3抗体を含み、そしてこの第2薬剤は、このT細胞の表面上の補助分子を結合するリガンドを含む。さらなる実施形態では、この補助分子は、CD28である。別の実施形態では、この第1薬剤は、抗CD3抗体を含み、そしてこの第2薬剤は、抗CD28抗体を含む。なおさらなる実施形態では、この第1薬剤および第2剤は、共有結合によって、この表面またはこの第2表面に結合される。他の実施形態では、この第1薬剤および第2薬剤は、直接的結合または間接的結合によって、この表面またはこの第2表面に結合される。
【0025】
別の局面では、本発明は、方法を提供し、ここで、この表面には、T細胞の少なくとも一部分の細胞表面部分を連結し、かつこのT細胞の少なくとも一部分を刺激する1以上の因子が結合しており、ここで、1以上の因子によるこの連結は、このT細胞の活性化を誘導する。1つの実施形態では、1以上の表面は、本発明において有用である。さらなる実施形態では、3以上の因子は、シスまたはトランスでこの表面に結合される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、ポリクローナルT細胞集団、オリゴクローナルT細胞集団、およびモノクローナルT細胞集団の代表的なスペクトル型プロフィールを例示する、TCR Vβ鎖スペクトル型分析の模式図である。
【図2】図2は、非活性化T細胞、OKT3およびIL−2を用いて活性化したT細胞、ならびにXCELLERATETMプロセスを用いて活性化されたT細胞について、スペクトル型分析によって測定した場合のT細胞レパートリーの比較を示す。
【図3】図3は、XCELLERATETM活性化の前および後のB−CLL患者由来のT細胞のスペクトル型分析であり、そしてXCELLERATETMプロセスが、この患者に観察されるT細胞欠損を矯正することを示す。
【図4】図4は、Goroshov Perturbation Index(Gorochov,G.,Neumann,A.U.,Kereveur,A.,Parizot,C.,Li,T.,Katlama,C.,Karmochkine,M.,Raguin,G.,Autran,B.,およびDebre,P.Nat.Med,4:215−221,1998.)を用いての8人のドナーについてのT細胞レパートリー「摂動」の総レベルを示すグラフである。
【図5A】図5aは、2人のB−CLLドナー由来の、操作されていない、そしてXCELLERATEDTM CD4+ T細胞と比較した、2人の正常なドナー由来の、操作されていないCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞についての、いくつかのVβファミリーに関するTCR Vβ細胞表面発現のフローサイトメトリーー分析を示す棒グラフである。このグラフは、その表面に代表的TCR Vβファミリータンパク質を発現する、CD8細胞のパーセントを示す。
【図5B】図5bは、2人のB−CLLドナー由来の、操作されていない、そしてXCELLERATEDTM CD8+ T細胞と比較した、2人の正常なドナー由来の、操作されていないCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞についての、いくつかのVβファミリーに関するTCR Vβ細胞表面発現のフローサイトメトリーー分析を示す棒グラフである。このグラフは、その表面に代表的TCR Vβファミリータンパク質を発現する、CD4細胞のパーセントを示す。
【図6】図6は、XCELLERATETMプロセスが、移植した骨髄腫患者においてリンパ球回復を改善することを示す折れ線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
本発明を説明する前に、本明細書の以下で用いられる特定の用語の定義を示して、それを理解することが有用であり得る。
【0028】
用語「生体適合性」は、本明細書中で用いられる場合、生きた細胞に対して主に非毒性であるという特性をいう。
【0029】
用語「刺激」は、本明細書中で用いられる場合、細胞表面部分の連結によって誘導される一次反応をいう。例えば、レセプターに関連しては、このような刺激は、レセプターの連結およびその後のシグナル伝達事象を伴う。T細胞の刺激に関して、このような刺激は、1つの実施形態において、シグナル伝達事象をその後誘導する、T細胞表面部分の連結(例えば、TCR/CD3複合体の結合)をいう。さらに、刺激事象は、細胞を活性化し得、そして細胞表面分子(例えば、レセプターまたは接着分子)の発現をアップレギュレートもしくはダウンレギュレートし得るか、または分子の分泌をアップレギュレートもしくはダウンレギュレートし得る(例えば、腫瘍増大因子β(TGF−β)のダウンレギュレーション)。従って、細胞表面分子の連結は、直接的なシグナル伝達事象が存在しない場合でさえも、細胞骨格構造の再構成または細胞表面部分(これらの各々は、その後の細胞応答を増強、改変、または変更するに役立ち得る)の合体をもたらし得る。
【0030】
用語「活性化」は、本明細書中で用いられる場合、測定可能な形態学的、表現型的、および/または機能的変化を誘導する、充分な細胞表面部分の連結後の細胞の状態をいう。
T細胞に関連しては、このような活性化は、細胞増大を誘導するように充分に刺激されたT細胞状態であり得る。T細胞の活性化はまた、サイトカインの産生および/もしくは分泌を誘導し得、そして細胞表面分子(例えば、レセプターまたは接着分子)の発現をアップレギュレートもしくはダウンレギュレートし得るか、または特定の分子の分泌および調節エフェクター機能もしくは細胞溶解エフェクター機能の性能をアップレギュレートもしくはダウンレギュレーションし得る。他の細胞に関連しては、この用語は、特定の物理化学的プロセスのアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションのいずれかを推測する。
【0031】
用語「標的細胞」は、本明細書で使用される場合、細胞表面部分連結によって刺激されることが意図される任意の細胞をいう。
【0032】
「抗体」は、本明細書で使用される場合、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体(mAb)の両方;霊長類化(例えば、ヒト化);マウス;マウス−ヒト;マウス−霊長類;およびキメラを含み;そして、インタクトな分子、そのフラグメント(例えば、scFv、Fv、Fd、Fab、Fab’およびF(ab)’フラグメント)または多量体またはインタクトな分子の凝集体および/またはフラグメントであり得;そして天然に存在しても、生成されてもよい(例えば、免疫、合成または遺伝子操作);「抗体フラグメント」は、本明細書で使用される場合、抗体由来であるか、または抗体に関連するフラグメントをいい、これは、抗原に結合し、そして幾つかの実施形態において、誘導体化されて、例えば、ガラクトース残基の組み込みによる清浄および取り込みを容易にする構造特性を提示し得る。これは、例えば、F(ab)、F(ab)’、scFv、軽鎖可変領域(V)、重鎖可変領域(V)およびこれらの組み合わせを含む。
【0033】
用語「タンパク質」は、本明細書で使用される場合、タンパク質、糖タンパク質および他の細胞由来改変タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドを含み;そして、インタクトな分子、そのフラグメント、または多量体またはインタクトな分子の凝集体および/またはフラグメントであり得;そして天然に存在しても、生成されてもよい(例えば、合成(化学的および/または酵素的を含む)または遺伝子操作によって)。
【0034】
用語「因子」、「リガンド」または「細胞表面部分に結合する因子」とは、本明細書で使用される場合、規定された細胞の集団に結合する分子をいう。因子は、任意の細胞表面部分(例えば、レセプター、抗原性決定因子)または標的細胞集団に存在する他の結合部位に結合し得る。この因子は、タンパク質、ペプチド、抗体およびその抗体フラグメント、融合タンパク質、合成分子、有機分子(例えば、低分子)などであり得る。T細胞刺激における説明および文脈内で、抗体は、このような因子の典型的な例として使用される。
【0035】
用語「細胞表面部分」とは、本明細書で使用される場合、細胞表面レセプター、抗原性決定因子、または標的細胞集団上に存在する任意の他の結合部位をいう。
【0036】
用語「細胞表面部分に結合する因子」および「細胞表面部分」とは、本明細書で使用される場合、特異的結合、一般的に比較的高い親和性を示す相補的/非相補的なセットの分子として概観されるべきである。
【0037】
「同時刺激シグナル」とは、本明細書で使用される場合、一次シグナル(例えば、TCR/CD3連結)と組み合わせて、T細胞増大および/または活性化に導くシグナルをいう。
【0038】
「分離」は、本明細書で使用される場合、1つの成分を別の成分から実質的に精製する(例えば、濾過、親和性、浮遊密度、または磁気誘引)任意の手段を包含する。
【0039】
「表面」とは、本明細書で使用される場合、それに結合する因子を有し得る任意の表面をいい、これには、金属、ガラス、プラスチック、コポリマー、コロイド、脂質、細胞表面など挙げられるが、これらに限定されない。本質的に、それに結合(bound)または結合(attached)された因子を保持し得る任意の表面をいう。
【0040】
「モノクローン性」とは、本明細書で使用される場合、T細胞の集団の文脈において、スペクトル型分析(TCR Vβ、Vα、Vγ、またはVδ鎖超過変領域レパートリーの測定)によって規定されるような単一の特異性を有するT細胞の集団をいう。T細胞の集団は、所定のTCR Vβ、Vα、Vγおよび/またはVδファミリーについてのVβ、Vα、Vγおよび/またはVδスペクトル型プロフィールが、単一の優勢のピークを有する場合に(図1を参照のこと)、モノクローナル(またはモノ特異的)であると見なされる。スペクトル型分析は、配列ではない、特定のサイズの再配置された可変遺伝子を区別する。従って、単一のピークは、制限された数の再配置されたTCR可変遺伝子(Vβ、Vα、Vγ、またはVδ)のいずれか1つを発現するT細胞の集団を表し得、この可変遺伝子は、4つの可能性のあるヌクレオチド(アデニン(a)、グアニン(g)、シトシン(c)、もしくはチミン(t))または接合領域における4つのヌクレオチドの組み合わせのうちのいずれか1つを含むことが理解される。本発明の特定の実施形態において、特定のバンドをクローニングし、そして配列決定して、特定の長さを表すバンドに存在する再配置された可変遺伝子の配列を決定することが、望ましくあり得る。
【0041】
「オリゴクローン性」は、本明細書で使用される場合、T細胞の集団の文脈において、スペクトル型分析(TCR β鎖超過変領域レパートリーの測定)によって規定されるような、複数であるが狭い抗原特異性を有するT細胞の集団をいう。T細胞の集団は、所定のTCR VβファミリーについてのVβスペクトル型プロフィールが、約2と約4との間の優勢ピークを有する場合に、オリゴクローナルと見なされる(図1を参照こと)。
【0042】
「ポリクローン性」とは、本明細書で使用される場合、T細胞の集団の文脈において、スペクトル型分析(TCR β鎖超過変領域レパートリーの測定)によって規定されるように複数のかつ広範な抗原特異性を有するT細胞の集団をいう。T細胞の集団は、所定のTCR VβファミリーについてのVβスペクトル型プロフィールが、複数のピーク、代表的に、5以上の優勢的なピークを有し、Gasussian分布を有するほとんどの場合に、ポリクローナルと見なされる(例えば、図1、2、および3を参照のこと)。
【0043】
「ポリクローン性の回復または増加」とは、本明細書で使用される場合、スペクトル型分析または類似の分析(例えば、フローサイトメトリー)または配列分析によって測定されるような、T細胞の集団において発現されたTCR Vβ、Vα、Vγ、および/またはVδ遺伝子における、モノクローナルプロフィールからオリゴクローナルプロフィールもしくはポリクローナルプロフィールへのシフト(言い換えれば、モノクローン性からオリゴクローン性またはポリクローン性へのシフト)、またはオリゴクローナルプロフィールからポリクローナルプロフィールへのシフト(言い換えれば、オリゴクローン性からポリクローン性へのシフト)をいう。T細胞の集団におけるモノクローナルVβ、Vα、Vγ、および/またはVδ発現プロフィールからオリゴクローナルプロフィールまたはポリクローナルプロフィールへのシフトは、一般的に、少なくとも1つのTCR Vβ、Vα、Vγ、および/またはVδファミリーにおいて見られる。本発明の1つの実施形態において、このシフトは、2、3、4、または5Vβファミリーにおいて観察される。本発明の特定の実施形態において、シフトは、6、7、8、9または10Vβファミリーにおいて観察される。本発明のさらなる実施形態において、シフトは、11、12、13、または14Vβファミリーにおいて観察される。本発明のさらなる実施形態において、シフトは、15〜20Vβファミリーにおいて観察される。本発明のさらなる実施形態において、シフトは、20〜24Vβファミリーにおいて観察される。別の実施形態において、シフトは、全てのVβファミリーにおいて観察される。T細胞の集団のポリクローン性を回復または増加させる機能的有意性は、T細胞の抗原の完全幅、T細胞の集団の完全幅に応答する免疫潜在能力、またはその能力が、回復されるか、または増加されることである。
本発明の特定の局面において、集団中の幾つかのT細胞は、本明細書に示される方法によって引き込まれるそれらのTCRを有し得ない(例えば、ダウンレギュレートされたTCR発現を有するT細胞)。しかし、本明細書に記載される方法およびそれらによって分泌される因子によって活性化されるT細胞に近接することによって、これらのT細胞は、次いで、それらのTCR発現をアップレギュレートし得、それにより、T細胞の集団のポリクローン性のさらなる増加を生じる。
【0044】
用語「動物」または「哺乳動物」は、本明細書で使用される場合、全ての哺乳動物(ヒトを含む)を包含する。好ましくは、本発明の動物は、ヒト被験体である。
【0045】
用語「曝露する」とは、本明細書で使用される場合、直に近接するか、直接接触する状態または条件にすることをいう。
【0046】
用語「増大」とは、本明細書で使用される場合、新たな細胞を生成することによる成長または増加を意味する。
【0047】
「免疫応答または免疫応答性」とは、本明細書で使用される場合、免疫系の細胞(T細胞が挙げられるが、これに限定されない)の活性化をいい、その結果、特定の細胞の特定のエフェクター機能が誘導される。エフェクター機能は、増大、サイトカインの分泌、抗体の分泌、調節分子および/または接着分子の発現、および細胞溶解を誘導する能力が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0048】
「免疫応答の刺激」とは、本明細書で使用される場合、免疫系の細胞のエフェクター機能の活性化および誘導が達成されるような任意の刺激をいう。
【0049】
「免疫応答不全」とは、本明細書で使用される場合、免疫系の細胞の不適切な活性化および/もしくは増大、またはその欠如、ならびに/またはサイトカインの不適切な分泌、もしくはその欠如、ならびに/または免疫系の細胞の他のエフェクター機能の不適切または不十分な誘導(例えば、調節レセプター、接着レセプター、および/またはホーミングレセプターの発現、ならびにサイトカインの誘導)をいう。
【0050】
用語「予防する」または「癌または癌細胞の発生を阻害する」とは、本明細書で使用される場合、癌の発生が、予防されるか、または癌の発症が遅延されることを意味する。
【0051】
用語「癌または癌細胞の存在を処置または低減する」あるいは「腫瘍または腫瘍細胞の存在を処置または低減する」とは、本明細書で使用される場合、癌増大または腫瘍増大が阻害されることを意味し、これは、例えば、悪性腫瘍細胞の腫瘍容積または数によって反映される。癌の減少は、当該分野における任意の数の技術(M−タンパク質の測定、PCRベースのアッセイ、RNAおよびDNAハイブリダイゼーションアッセイ、またはインサイチュPCRもしくはインサイチュハイブリダイゼーションなどが挙げられる)を使用して決定され得る。腫瘍容積は、種々の公知の手順(例えば、目盛り板ノギスによる2つの二次元測定を得ること)によって決定され得る。
【0052】
「感染性疾患の発生を予防または阻害する」とは、本明細書で使用される場合、感染性疾患の発生が予防されるか、または感染性疾患の発症が遅延されるか、または既存の感染の拡散が戻されるかもしくは安定化されることを意味する。
【0053】
「改善する」とは、本明細書で使用される場合、以下のように定義される:快方に向かう;改善する(The American Heritage College Dictionary,第3版,Houghton Mifflin Company,2000)。
【0054】
「粒子」または「表面」としては、本明細書で使用される場合、コロイド粒子、マイクロスフィア、ナノ粒子、ビーズなどが挙げられ得る。表面は、それに結合するか、それと一体化されるリガンドを有し得、かつ、生体適合性であり、刺激される標的細胞に対して実質的に非毒性である任意の表面(細胞表面(例えば、K562細胞)を含む)であり得る。種々の実施形態において、市販されている表面(例えば、ビーズまたは他の粒子)は、有用である(例えば、Miltenyi Particles,Miltenyi Biotec,Germany;Sepharoseビーズ,Pharmacia Fine Chemicals,Sweden;DYNABEADSTM,Dynal Inc.,New York;PURABEADSTM,Prometic Biosciences,Immunicon製の磁気ビーズ,Huntingdon Valley,PA,Bangs Laboratories,Inc.製のマイクロスフェア,Fishers,IN)。
【0055】
「常磁性粒子」とは、本明細書で使用される場合、上記で規定されるような、磁場に応じて局在化する粒子をいう。
【0056】
用語「感染性疾患」とは、本明細書で使用される場合、感染性生物によって引き起こされる任意の疾患をいう。感染性生物としては、以下が挙げられ得る:ウイルス(例えば、一本鎖RNAウイルス、一本鎖DNAウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、およびC型肝炎ウイルス、単純疱疹ウイルス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV),ヒトパピローマウイルス(HPV)),寄生生物(例えば、原生動物および後生動物病原体(例えば、Plasmodia種,Leishmania種,Schistosoma種,Trypanosoma種),細菌(例えば、Mycobacteria,特に,M.tuberculosis,Salmonella,Streptococci,E.coli,Staphylococci),真菌(例えば、Candida種,Aspergillus種),Pneumocystis carinii,およびプリオン(ヒツジおよびヤギの神経系のスクラピー、伝染性、変性疾患、ならびにウシ海綿状脳症(BSE),または「狂牛病」、ならびにネコのネコ海綿状脳症を引き起こす公知のプリオン感染動物。ヒトが罹患する4つの公知のプリオン疾患は、(1)クールー、(2)クロイツフェルト−ヤコブ病(CJD)、(3)ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー病(GSS)、ならびに(4)致死性家族性不眠症(FFI))。本明細書で使用される場合、「プリオン」は、使用される任意の動物−−そして、特に、ヒトおよび家畜動物において、これらの疾患または他の疾患の全てまたはいずれかを引き起こす全ての形態のプリオンを含む。
【0057】
(T細胞のポリクローン性の刺激、活性化、および回復)
本発明の増加したポリクローン性により刺激および活性化されるT細胞は、活性化を誘導する細胞表面部分連結によって生成される。増加したポリクローン性により刺激および活性化されるT細胞は、T細胞の集団を活性化することによって、そして補助分子に結合するリガンド(例えば、米国特許出願番号08/253,694,同08/435,816,同08/592,711,同09/183,055,同09/350,202,および同09/252,150,ならびに米国特許第6,352,694号,同第5,858,358号および同第5,883,223号に記載されるような)を用いてT細胞表面上の補助分子を刺激することによって生成される。
【0058】
一般的に、ポリクローン性のT細胞活性化および回復は、細胞表面部分連結(例えば、T細胞レセプター(TCR)/CD3複合体またはCD2表面タンパク質の刺激)によって達成され得る。多数の抗ヒトCD3モノクローナル抗体は、市販されており、例示的には、クローンBC3(XR−CD3;Fred Hutchinson Cancer Research Center,Seattle,WA),OKT3(American Type Culture Collectionから入手したハイブリドーマ細胞から調製された),ならびにモノクローナル抗体G19−4である。同様に、抗CD2抗体の刺激性形態は、公知であり、かつ入手可能である。抗CD2抗体によるCD2を介する刺激は、代表的に、少なくとも2つの異なる抗CD2抗体の組み合わせを使用して達成される。記載された抗CD2抗体の刺激性組み合わせとしては、以下が挙げられる:T11.1またはT11.2抗体と組み合わせたT11.3抗体(Meuerら,Cell 36:897−906,1984)、ならびに9−1抗体と組み合わせた9.6抗体(同じエピトープをT11.1として認識する)(Yangら,J.Immunol.137:1097−1100,1986)。同じエピトープに上記の抗体のいずれかとして結合する他の抗体もまた、使用され得る。さらなる抗体、または抗体の組み合わせは、標準的な技術によって調製および同定され得る。刺激はまた、超抗原(例えば、StaphylococcusエンテロトキシンA(SEA),StaphylococcusエンテロトキシンB(SEB),Toxic Shock Syndrome Toxin1(TSST−1))、エンドトキシンとの接触を介して、あるいは、種々のマイトジェン(植物性赤血球凝集素(PHA)、酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)およびイオノマイシン、リポ多糖類(LPS)、T細胞マイトジェン、ならびにIL−2)を介して達成され得る。
【0059】
T細胞の集団のポリクローン性をさらに活性化および増加させるために、T細胞表面上の同時刺激分子または補助分子(例えば、CD28)は、この補助分子に結合するリガンドを用いて刺激される。従って、当業者は、CD28分子を架橋し得る任意の因子(抗CD28抗体もしくはそのフラグメントを含む)、またはCD28に対する天然のリガンドを使用して、T細胞を刺激し得ることを認識する。本発明の文脈において有用な例示的な抗CD28抗体またはそのフラグメントとしては、以下が挙げられる:モノクローナル抗体9.3(IgG2)(Bristol−Myers Squibb,Princeton,NJ)、モノクローナル抗体KOLT−2(IgG1)、15E8(IgG1),248.23.2(IgM),クローンB−T3(XR−CD28;Diaclone,
【0060】
【数1】

Besancon,France)ならびにEX5.3D10(IgG2)(ATCC HB11373)。例示的な天然のリガンドとしては、タンパク質のB7ファミリー(例えば、B7−1(CD80)およびB7−2(CD86))が挙げられる(Freedmanら,J.Immunol.137:3260−3267,1987;Freemanら,J.Immunol.143:2714−2722,1989;Freemanら,J Exp.Med.174:625−631,1991;Freemanら,Science 262:909−911,1993;Azumaら,Nature 366:76−79,1993;Freemanら,J.Exp.Med.178:2185−2192,1993)。
【0061】
本発明における補助分子に結合するリガンドにより刺激され得るT細胞の表面上の他の例証的な補助分子としては、CD54,Ox−40,LFA−1,ICOS,41−BB,およびCD40が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
さらに、天然のリガンドの結合ホモログ(天然であっても、化学技術または組換え技術による合成であっても)はまた、本発明に従って使用され得る。他の因子としては、天然のリガンドおよび合成リガンドが挙げられ得る。因子としては、他の抗体もしくはそのフラグメント、成長因子、サイトカイン、ケモカイン、可溶性レセプター、ステロイド、ホルモン、マイトジェン(例えば、PHA)、または他の超抗原が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0063】
(T細胞集団の増大)
本発明の1つの局面において、エキソビボのT細胞増大が、細胞集団の刺激により行われ得る。ここで、少なくともその細胞集団の一部が、T細胞を含む。本発明の1つの実施形態において、T細胞は、単一の因子によって刺激され得る。別の実施形態において、T細胞は、2つ以上の因子により刺激され、1つは第1のシグナルを誘導し、そしてさらなる因子は、1つ以上の同時刺激性シグナルを誘発する。単一のシグナルを刺激するか、または第1のシグナルおよび第2のシグナルを刺激する補助的分子を刺激するために有用なリガンドは、可溶性形態で使用され得るか、細胞の表面に接着し得るか、または本明細書中に記載されるように表面上に固定化され得る。表面に接着されるリガンドまたは因子は、「代理(surrogate)」抗原提示細胞(APC)として役立つ。好ましい実施形態において、第1の因子および第2の因子の両方が、表面上に一緒に固定される。1つの実施形態において、第1の活性化シグナル(例えば、CD3リガンド)および同時刺激分子(例えば、CD28リガンド)が同じ表面(例えば、粒子)に結合される。さらに、上記のように、1つ、2つ、またはそれ以上の刺激性分子が、同じ表面上でか、または異なる表面上で使用され得る。
【0064】
増大前に、T細胞の供給源が被験体より得られる。用語「被験体」とは、免疫応答が誘発され得る生物(例えば、ヒト)を含むことを意図する。被験体の例としては、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、およびそれらのトランスジェニック種が挙げられる。T細胞は、末梢血液単核細胞、骨髄、胸腺、組織細胞診、腫瘍、リンパ節組織、腸関連リンパ系組織、粘膜関連リンパ系組織、脾臓組織、または任意の他のリンパ系組織および腫瘍を含む、多くの供給源から得られ得る。T細胞は、T細胞株および自己供給源または同種供給源から得られ得る。T細胞はまた、異種供給源(例えば、マウス、ラット、非ヒト霊長類、およびブタ)から得られ得る。本発明の特定の実施形態において、T細胞は、当業者に公知であるいくつかの技術(例えば、フィコール分離)を用いて、被験体から回収された血液のユニットから得られ得る。1つの好ましい実施形態において、個体の循環血液に由来する細胞は、アフェレーシスまたは白血球搬出により得られる。アフェレーシス産物は、代表的にリンパ球(T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、および血小板が挙げられる)を含む。1つの実施形態において、アフェレーシスにより回収された細胞は、洗浄され、血漿画分を除去され得、そして細胞を後のプロセッシング工程に適切な緩衝液または培地中に置かれ得る。本発明の1つの実施形態において、細胞はリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で洗浄される。代替の実施形態において、洗浄溶液は、カルシウムを欠き、そしてマグネシウムを欠き得るか、または全てでないにしても多くの二価のカチオンを欠き得る。当業者が容易に理解するように、洗浄工程は、製造業者の指示に従って、当業者に公知の方法(例えば、半自動化「貫流」遠心分離(例えば、Cobe 2991セルプロセッサ、Baxter))を用いて達成され得る。洗浄後、細胞は、種々の生体適合性緩衝液(例えば、無Ca、無Mg PBS)中に再懸濁され得る。あるいは、アフェレーシスサンプルの所望ではない成分が除去され得、そして細胞が直接培養培地中に再懸濁され得る。
【0065】
別の実施形態において、赤血球を溶解するか、または除去し、そして単球を減少せることにより(例えば、PERCOLLTM勾配を介した遠心分離により)、T細胞は末梢血リンパ球より単離される。T細胞の特定の亜集団(例えば、CD28T細胞、CD4T細胞、CD8T細胞、CD45RAT細胞、およびCD45ROT細胞)は、ポジティブな選択技術またはネガティブな選択技術によりさらに単離され得る。例えば、1つの好ましい実施形態において、抗CD3/抗CD28(すなわち、3×28)結合体ビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M−450 CD3/CD28 T)と一緒に、所望のT細胞のポジティブな選択に十分な期間インキュベーションすることにより、T細胞は、単離される。1つの実施形態において、この期間は約30分間である。さらなる実施形態において、この期間は、30分から36時間、またはそれ以上、およびそれらの間の全ての整数値にわたる。さらなる実施形態において、この期間は、少なくとも1、2、3、4、5、または6時間である。なお別の好ましい実施形態において、この期間は10〜24時間である。1つの好ましい実施形態において、インキュベーション期間は、24時間である。白血病を有する患者からのT細胞の単離に関して、より長いインキュベーション時間(例えば、24時間)の使用は、細胞産生量を高め得る。より長いインキュベーション時間が使用され、腫瘍組織からか、または免疫不全状態の個体から腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を単離するように、他の細胞型と比較してわずかなT細胞が存在する任意の状況においてT細胞を単離し得る。さらに、より長いインキュベーション時間の使用は、CD8T細胞の捕捉効率を高め得る。例えば、CD3T細胞、CD28T細胞が、CD3/CD28結合体磁気ビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M−450 CD3/CD28 T Cell Expander)を用いてポジティブに選択され得る。本発明の1つの局面において、ネガティブな選択によるT細胞集団の濃縮が、ネガティブに選択された細胞に特有の表面マーカーに方向付けられた抗体の組み合わせを用いて達成され得る。好ましい方法は、細胞分類および/または負の磁気免疫接着(immunoadhernce)あるいはネガティブに選択された細胞に存在する細胞表面マーカーに方向付けられたモノクローナル抗体のカクテルを使用するフローサイトメトリーーによる選択である。例えば、ネガティブな選択を用いるCD4細胞の濃縮のために、モノクローナル抗体カクテルは、代表的にCD14、CD20、CD11b、CD16、HLA−DR、およびCD8に対する抗体を含む。
【0066】
本発明のさらなる局面は、増大前に、種々のマーカー(例えば、CD62L、CD45RAまたはCD45RO、サイトカイン(例えば、IL−2、IFN−γ、IL−4、IL−10)、サイトカインレセプター(例えばCD25)、パーフォリン、接着分子(例えば、VLA−1、VLA−2、VLA−4、LPAM−1、LFA−1)、および/またはホーミング分子(例えば、L−セレクチン))を発現する細胞集団を減少させるか、または増加させるT細胞集団または組成物を提供する。1つの実施形態において、任意のこれらのマーカーを発現する細胞は、マーカーに方向付けられた抗体または他のリガンド/結合剤により減少されるか、またはポジティブに選択される。当業者は、所望のマーカーを発現する細胞サンプルを減少するか、またはポジティブに選択するための、種々の特定の方法を容易に同定し得る。
【0067】
上記の単球の減少に関して、単球集団(すなわち、CD14細胞)は、種々の方法(抗CD14コーティングビーズまたはカラムを含む)、または除去を容易にするための食作用活性の利用により、またはプラスチックへの接着を介してエキソビボの増大の前に、血液調製物から減少され得る。従って、1つの実施形態において、本発明は、食作用単球により飲み込まれるために十分なサイズの常磁性粒子を使用する。特定の実施形態において、常磁性粒子は、市販のビーズ(例えば、商品名DynabeadsTMの下でDynal ASにより製造されている常磁性粒子)である。これに関する、例示的なDynabeadsTMは、M−280、M−450、およびM−500である。1つの局面において、別の非特異的細胞は、常磁性粒子を「無関連」タンパク質(例えば、血清タンパク質、または抗体)でコーティングすることにより除去される。無関連タンパク質および抗体としては、増大されるT細胞を特別に標的にしない、タンパク質および抗体またはそのフラグメントが挙げられる。特定の実施形態において、無関連ビーズとして、ヒツジ抗マウス抗体でコーティングされたビーズ、ヤギ抗マウス抗体でコーティングされたビーズ、およびヒト血清アルブミンでコーティングされたビーズが挙げられる。
【0068】
端的に言うと、単球の減少は、Ficollを用いて全血より単離されたPBMCまたは1つ以上の種々の無関連または非抗体結合常磁性粒子を有するアフェレーシスした末梢血を、単球の除去を可能にする任意の量(約20:1のビーズ:細胞の比)で、約30分間〜2時間、22〜37℃でプレインキュベーションすることにより実行され得、その後常磁性粒子に接着するか、または常磁性粒子を飲み込む細胞の磁気除去が続く。プレインキュベーションはまた、3〜4℃の低さの温度で行われ得る。このような分離は、当該分野で有効な標準方法を用いて、実行され得る。例えば、いくつかの磁気分離方法が使用され得、この方法としては、種々の市販の製品を含む(例えば、DYNAL(登録商標)Magnetic Particle Concentrator (DYNAL MPC(登録商標)))。要求性の減少の保証は、当業者に公知の種々の方法でモニタリングされ、この方法は、前記減少の前および後のCD14陽性細胞のフローサイトメトリーー分析を含む。
【0069】
刺激に関するT細胞はまた、洗浄工程後凍結され、これは、単球除去工程を必要としない。理論によって束縛されることを望まないが、凍結工程およびその後の解凍工程は、細胞集団において顆粒球およびある程度の単球を除去することによって、より均一な産物を提供する。血漿および血小板を除去する洗浄工程後、細胞は、凍結溶液中に再懸濁され得る。多くの凍結溶液およびパラメーターが当該分野で公知であり、そしてこの文脈で有用であるが、ある方法は、20%DMSOおよび8%ヒト血清アルブミン、または他の適切な細胞凍結培地を含有するPBSを使用する工程を包含し、次いで細胞は、1分あたり1℃の速度で−80℃に凍結され、そして液体窒素保存タンクの気相中に保存される。
【0070】
細胞集団は、本明細書中で記載されるように(例えば、表面上に固定化された抗CD3抗体または抗CD2抗体と接触されるか、または、カルシウムイオノフォアと関連するプロテインキナーゼCアクチベーター(例えば、ブリオスタチン)と接触されることにより)刺激され得る。T細胞表面上の補助分子の同時刺激のため、補助分子に結合するリガンドが使用される。例えば、T細胞の増大を刺激するために適切な条件下で、CD4細胞の集団が抗CD3抗体および抗CD28抗体と接触され得る。同様に、CD8T細胞の増大を刺激するために、抗CD3抗体および抗CD28抗体(B−T3、XR−CD28)(Diaclone,
【0071】
【数2】

,France)が、当該分野で一般的に知られている別の方法として使用され得る(Bergら, Transplant Proc.30(8):3975−3977,1998;Haanenら,J.Exp.Med.190(9):1319−1328,1999;Garlandら,J.Immunol Meth.227(1−2):53−63,1999)。
【0072】
T細胞に対する第1の刺激シグナルおよび同時刺激シグナルは、異なる手順により提供され得る。例えば、各シグナルを提供する因子は、溶液中に存在し得るか、または表面と結合し得る。表面と結合した場合、因子は、同じ表面(すなわち、「シス」形態)に結合し得るか、または異なる表面(すなわち、「トランス」形態)に結合し得る。あるいは、1つの因子は表面に結合し得、別の因子は溶液中に存在し得る。1つの実施形態において、同時刺激シグナルを提供する因子は、細胞表面に結合し、そして第1の活性化シグナルを提供する因子は、溶液中にあるか、または表面と結合する。特定の実施形態において、両方の因子は、溶液中に存在し得る。別の実施形態において、因子は可溶性形態であり得、次いで表面と架橋される(例えば、細胞発現FCレセプターまたは、因子と結合する抗体あるいは他の結合因子)。好ましい実施形態において、2つの因子が球状表面上または半球状表面上(原型例は、ビーズまたは細胞、同じビーズ上(すなわち、「シス」)または異なるビーズ(すなわち「トランス」である)に固定化される。一例として、第1の活性化シグナルを提供する因子は、抗CD3抗体であり、そして同時刺激シグナルを提供する因子は、抗CD28抗体であり;そして両方の因子は同じビーズに、当量の分子量で一緒に同定される。1つの実施形態において、T細胞増大およびT細胞成長に関して、ビーズに結合する各抗体の1:1の割合が使用される。本発明の特定の局面において、ビーズに結合する抗CD3:CD28抗体の割合が使用され、その結果T細胞増大の増加が、1:1の割合を用いて観察された増大と比較して観察される。1つの特定の実施形態において、1:1の割合を使用して観察された増大と比較して、約0.5倍〜約3倍の増加が観察された。1つの実施形態において、ビーズに結合するCD3:CD28抗体の割合は、100:1〜1:100およびこれらの間のすべての整数の範囲にわたる。本発明の1つの局面において、抗CD3抗体より多くの抗CD28抗体が粒子に結合される(すなわち、CD3:CD28の割合は1未満である)。本発明の特定の実施形態において、ビーズに結合する抗CD3抗体に対する抗CD28抗体の比は、2:1より大きい。1つの実施形態において、ビーズに結合する抗体の1:100のCD3:CD28の比が使用される。別の実施形態において、ビーズに結合する抗体の1:75のCD3:CD28の比が使用される。さらなる実施形態において、ビーズに結合する抗体の1:50のCD3:CD28の比が使用される。別の実施形態において、ビーズに結合する抗体の1:30のCD3:CD28の比が使用される。1つの好ましい実施形態において、ビーズに結合する抗体の1:10のCD3:CD28の比が使用される。別の実施形態において、ビーズに結合する抗体の1:3のCD3:CD28の比が使用される。なお別の実施形態において、ビーズに結合する抗体の3:1のCD3:CD28の比が使用される。
【0073】
1:500〜500:1の粒子:細胞の割合およびその間の任意の整数値が使用され、T細胞または他の標的細胞を刺激し得る。当業者が容易に理解し得るように、細胞に対する粒子の割合は、標的細胞に相対的な粒子サイズに依存し得る。例えば、小さいサイズのビーズは、わずかな細胞を結合するのみであるが、大きなビーズは、多くの細胞を結合し得る。特定の実施形態において、粒子に対する細胞の割合は、1:100〜100:1およびその間の整数値にわたり、そしてさらなる実施形態において、その割合は、1:9〜9:1およびその間の任意の任意の整数値を含み、T細胞を刺激するために使用され得る。T細胞刺激を生じる、T細胞に対する抗CD3結合粒子および抗CD28結合粒子の割合は、上記のように変動し得るが、しかし、特定の好ましい値としては、少なくとも1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1〜6:1が挙げられ、1つの好ましい割合は、少なくとも1:1のT細胞あたりの粒子である。1つの実施形態において、1:1またはそれ未満の粒子:細胞の割合が使用される。さらなる実施形態において、細胞に対する粒子の割合は、刺激の日数に依存して変化され得る。例えば、1つの実施形態において、第1日目に細胞に対する粒子の割合が1:1〜10:1であり、そして、さらなる粒子が、その後10日間まで毎日または1日おきに、1:1〜1:10の最終割合(添加の日の細胞数に基づく)で、細胞に添加される。ある特定の実施形態において、刺激の第1日目の粒子:細胞の割合は1:1であり、そして刺激の第3日目および第5日目に、1:5に調整される。別の実施形態において、粒子は、毎日または1日おきに、刺激の第1日目の1:1の最終割合、刺激の第3日目および第5日目の1:5の最終割合の基準で添加される。別の実施形態において、刺激の第1日目の粒子:細胞の割合は2:1であり、そして刺激の第3日目および第5日目に、1:10に調整される。別の実施形態において、粒子は、毎日または1日おきに、刺激の第1日目の1:1の割合、刺激の第3日目および第5日目の1:10の割合の基準で添加される。当業者は、他の種々の割合が、本発明における使用に適切であり得ることを理解する。特に、割合は、粒子サイズおよび細胞サイズならびに細胞型に基づいて変化する。
【0074】
特定の方法を使用する場合、約12〜約14日の期間後、刺激からT細胞を分離することにより、最初の活性化および刺激の後の、T細胞集団の長期間の刺激を維持することが、有利となり得る。T細胞増大の割合が、例えば、サイズを検査するか、またはT細胞の容積を測定する(例えば、コールター計数器を用いる)ことにより、定期的に(例えば、毎日)モニタリングされる。これに関して、休止T細胞は、約6.8ミクロンの平均直径を有し、そして最初の活性化および刺激の際、刺激するリガンドの存在下で、T細胞平均直径は、第4日目までに12ミクロン以上に増加し、そして約第6日目までに減少し始める。平均T細胞直径が、約8ミクロンに減少した場合、T細胞は再活性化および再刺激され、T細胞のさらなる増大を誘導し得る。あるいは、T細胞増大の割合およびT細胞再刺激化に対する時間は、細胞表面分子(例えば、CD154、CD54、CD25、CD137、CD134(これらは、活性化されたT細胞において誘導される))の存在をアッセイすることにより、モニタリングされ得る。
【0075】
CD4細胞集団および/またはCD8T細胞集団の長期間刺激の誘導に関して、刺激因子(例えば、抗CD3抗体および抗CD28抗体(B−T3、XR−CD28(Diaclone,
【0076】
【数3】

,France))またはモノクローナル抗体ES5.2D8)を用いてT細胞を数回再活性化および再刺激し、元のT細胞集団の全部で約10倍〜約1,000倍に増加したCD4細胞集団またはCD8細胞集団を生成することが必要となり得る。例えば、本発明の1つの実施形態において、T細胞は、実施例1に記載されるように、2〜3回刺激される。さらなる実施形態において、T細胞は、実施例1に記載されるように、4または5回刺激される。本発明の方法を使用した場合、刺激前と比較して、増加した多クローンを有する、約100〜約100,000倍のT細胞数を達成することが可能である。さらに、本発明の方法により増大したT細胞は、相当レベルのサイトカイン(例えば、IL−2、IFN−γ、IL−4、GM−CSFおよびTNF−α)を培養上清中に分泌する。例えば、IL−2での刺激と比較して、抗CD3および抗CD28同時刺激の使用により増大されたCD4T細胞は、高レベルのGM−CSFおよびTNF−αを培養培地中に分泌する。これらのサイトカインは、培養上清から精製されるか、または上清を培養物中で細胞を維持するために直接使用され得る。同様に、培養上清およびサイトカインと共に、本発明の方法により増大されたT細胞は、インビボで、細胞の増大を支持するために投与され得る。
【0077】
一つの実施形態において、T細胞刺激は、細胞が、静態状態(低増大または非増大)に戻るために十分な期間(最初の刺激後、約8〜14日)、例えば、ビーズ(3×28ビーズ)上に共固定された抗CD3抗体および抗CD28抗体を用いて、実施される。次いで、刺激シグナルは、細胞から除去され、そして細胞は、洗浄され、そして患者に注入し戻される。刺激段階の終了時の細胞は、実施例によるって明らかであるように、抗原への応答に対するそれらの能力および記憶様表現型を示すためのこれらの細胞の能力によって示されるような、本発明の方法によって「過剰誘導可能」にされる。従って、注入後、外因性のまたはインビボで抗原による、いずれかの再刺激に関し、活性化されたT細胞は、独特の表現型特性(例えば、保持されたCD154発現、増加されたサイトカイン生成など)によって特性を示された頑健性応答を示す。
【0078】
本発明のさらなる実施形態において、細胞(例えば、T細胞)は、薬剤被覆ビーズまたは薬剤結合ビーズと結合され、ビーズおよび細胞は、後で分離され、次いで細胞は、培養される。代替的な実施形態において、培養に先立ち、薬剤被覆ビーズまたは薬剤結合ビーズおよび細胞は、分離されず、一緒に培養される。さらなる実施形態において、ビーズおよび細胞は、圧力の適用によって最初に濃縮され、細胞表面に部分連結を生じ、それゆえ、細胞刺激および/または活性シグナルの分極を誘導する。
【0079】
一例として、T細胞が、標的細胞集団である場合、細胞表面部分は、抗CD3および抗CD28が接着される常磁性ビーズ(3×28ビーズ)が、調製されたT細胞に接触することを可能にすることによって連結され得る。一つの実施形態において、細胞(例えば、10〜10T細胞)およびビーズ(例えば、1:1の比率でDYNABEADS(登録商標)M−450 CD3/CD28 T常磁性ビーズ)は、緩衝液、好ましくはPBS(カルシウムおよびマグネシウムのような二価の陽イオンを有さない)中で組み合される。再び、当業者は、任意の細胞濃度が使用され得ることを容易に評価し得る。例えば、標的細胞は、サンプル中で非常に稀であり得、そしてサンプルの0.01%だけを構成するか、またはサンプル全体(すなわち、100%)が、目的の標的細胞からなり得る。従って、任意の細胞数は、本発明の文脈の中にある。特定の実施形態において、粒子および細胞が、細胞および粒子の最大の接触を確実にするためにともに混ぜられる(すなわち、細胞の濃度を増加する)容積を有意に減少することは、所望され得る。例えば、一つの実施形態において、約20億細胞/mlの濃度が、使用される。別の実施形態において、100,000,000細胞/mlより多い濃度が、使用される。さらなる実施形態において、10,000,000細胞、15,000,000細胞、20,000,000細胞、25,000,000細胞、30,000,000細胞、35,000,000細胞、40,000,000細胞、45,000,000細胞、または50,000,000細胞/mlの細胞濃度が、使用される。なお別の実施形態において、75,000,000細胞、80,000,000細胞、85,000,000細胞、90,000,000細胞、95,000,000細胞、または100,000,000細胞/mlの細胞濃度が、使用される。さらなる実施形態において、125,000,000細胞または150,000,000細胞/mlの濃度が、使用され得る。高濃度を使用する場合、増加した細胞収率、細胞活性化、および細胞膨張を生じ得る。さらに、高細胞濃度の使用は、目的の標的抗原を弱く発現し得る細胞(例えば、CD28陰性T細胞)のより有効な捕捉を可能にする。細胞のこのような集団は、治療価値を有し得、獲得することが所望される。例えば、高濃度の細胞を使用することは、弱いCD28発現を通常有するCD8+T細胞のより効率的な選択を可能にする。
【0080】
関連した実施形態において、より低濃度の細胞を使用することは、所望され得る。T細胞および粒子の混合物を有意に希釈することによって、粒子と細胞との間の相互作用は、最小化される。これは、粒子に結合される高い量の所望の抗原を発現する細胞を選択する。例えば、CD4+T細胞は、CD28のより高いレベルを発現し、そしてより効率的に捕捉され、そして希釈濃度中でCD8+T細胞より刺激される。一つの実施形態において、使用される細胞濃度は、約5×10/mlである。他の実施形態において、使用される濃度は、約1×10/ml〜約1×10/ml、およびこれらの間の任意の整数値であり得る。
【0081】
細胞が懸濁される緩衝液は、特定の細胞型に適切な任意のものであり得る。特定の細胞型を利用する場合、この緩衝液は、工程の間、細胞完全性を維持するために必要な他の成分(例えば、1〜5%血清)を含み得る。別の実施形態において、細胞およびビーズは、細胞培養培地中で組み合され得る。細胞およびビーズは、1分〜数時間の範囲の間、例えば、回転、撹拌または混合するための任意の手段によって、混合され得る。次いで、ビーズおよび細胞の容器は、力(例えば、磁場中に配置すること)によって濃縮される。培地および結合していない細胞は、除去され、そしてビーズまたは他の表面に接着される細胞は、例えば、蠕動ポンプを介して汲み上げることによって洗浄され、次いで細胞培養のために適切な培地中で再懸濁される。
【0082】
本発明の一つの実施形態において、混合物は、30分間から数時間(約3時間)、約14日間、または1時間毎に、またはその間の整数値の分の間、培養され得る。別の実施形態において、混合物は、21日間培養され得る。本発明の一つの実施形態において、ビーズおよびT細胞は、約8日間一緒に培養される。別の実施形態において、ビーズおよびT細胞は、2〜3日間一緒に培養される。上記のように、刺激のいくつかのサイクルはまた、所望され得、その結果、T細胞の培養時間は、60日以上であり得る。T細胞培養のための適切な条件は、増大および生活能力のために必要な因子を含み得る適切な培地(例えば、最小必須培地またはRPMI Media 1640または、X−vivo 15、(Bio Whittaker))を含み、血清(例えば、胎児のウシ血清もしくはヒト血清)またはインターロイキン−2(IL−2)を含む。インスリン、または細胞増大のための任意の他の添加剤が、当業者に公知である。培地としては、無血清であるかあるいは適切な量の血清(または血漿)またはホルモンの規定されたセットおよび/またはT細胞の増大および拡大のために十分な量のサイトカインを補充されるかの、添加されたアミノ酸およびビタミンを有する、RPMI 1640、AIM−V、DMEM、MEM、α−MEM、F−12、X−Vivo 15、およびX−Vivo 20が挙げられる。抗体(例えば、ペニシリンおよびストレプトマイシン)は、実験培養中にのみ含まれ、被験体に混合されるべきである細胞の培養中には、含まれない。標的細胞は、増大を支持するために必要な条件下(例えば、適切な温度(例えば、37℃)および雰囲気(例えば、空気+5%のCO)で維持される。
【0083】
別の実施形態において、刺激剤(例えば、抗CD3/CD28(例えば、3×28)被覆ビーズ)への露呈時間は、所望のT細胞表現型を得るためのこのような方法で改善され、または注文され得る。あるいは、T細胞の所望の集団は、刺激より先に多数の選択技術を使用して選択され得る。CD8細胞傷害性または調節T細胞とは対照的に、ヘルパーT細胞(T)、代表的にはCD4のより大きな集団を所望し得る。なぜなら、T細胞の拡大は、免疫応答の全体にわたって改善し得、または復旧し得るからである。多くの特異的な免疫応答は、CD8抗原特異的T細胞によって媒介され、標的細胞を直接的に溶解しまたは死滅させ得るが、ほとんどの免疫応答は、例えば、重要な免疫調節分子(例えば、GM−CSF、CD40L、およびIL−2)を発現するCD4T細胞の補助を必要とする。CD4媒介補助が好ましい場合、CD4:CD8の比率を保持するまたは高める、本明細書に記載されるような方法は、非常に利益であり得る。CD4T細胞の増加した数は、標的細胞視感度を潜在的に改善する(改善されたAPC機能)、患者に誘導された細胞発現CD40Lの量を増加し得る。同様の効果は、GM−CSFまたはIL−2(全ては、CD4T細胞によって優先的に発現される)を発現する注入細胞の数を増加することによって見られ得る。あるいは、CD4補助が、さほど必要とされず、そして増加したCD8T細胞の数が、所望される状況において、本明細書中に記載される(実施例1を参照のこと)XCELLERATETMアプローチはまた、例えば、刺激および/または培養より先にCD8細胞を前もって選択することによって利用され得る。このような状況は、増加したIFN−γのレベルまたは増加した標的細胞の細胞溶解が、好まれる場合に存在し得る。このような状況はまた、所望のTCRレパートリーを有するT細胞を拡大する(例えば、所望されるVβファミリー遺伝子を発現すること)ために刺激剤への露呈の時間および型を改善し得る。
【0084】
異なるT細胞集団の単離を達成するために、粒子への露呈時間は、変化され得る。例えば、一つの好ましい実施形態において、T細胞は、所望のT細胞のポジティブな選択のために十分な期間、3×28ビーズ(例えば、Dynabeads M−450)を用いてインキュベートによって単離される。一つの実施形態において、この期間は、約30分である。さらなる実施形態において、この期間は、少なくとも1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、または6時間である。なお別の好ましい実施形態において、この期間は、10時間〜24時間またはそれ以上である。一つの好ましい実施形態において、インキュベーション時間は、24時間である。癌患者からT細胞の単離のため、長いインキュベーション時間(例えば、24時間)の使用は、細胞収率を増加し得る。
【0085】
特定の実施形態において、刺激時間および/または拡大時間は、10週間以下、8週間以下、4週間以下、2週間以下、10日以下、または8日以下(4週間以下は、4週間〜1日(24時間)の全ての時間範囲もしくはこれらの数の間の任意の値を含む)であり得る。いくつかの実施形態において、例えば、制限希釈または細胞選別(ここで、より長い刺激時間が必要であり得る)を使用して、T細胞をクローン化することが望まれ得る。いくつかの実施形態において、刺激および拡大は、6日以下、4日以下、2日以下の間に実施され得、そして他の実施形態において、24時間以下、および好ましくは4〜6時間以下の間、実施され得る(これらの範囲は、間の任意の整数値を含む)。T細胞の刺激は、より短い時間実施される場合、T細胞の集団は、数が劇的に増加しないかもしれないが、この集団は、インビボで増大し続け得るより頑健性かつより健康な活性T細胞を提供し、そして天然の効果器T細胞プールをより密接に類似する。T細胞補助の利用性が、しばしばタンパク質抗原に対する抗体応答における制限因子であるので、被験体中に、T細胞のCD4豊富集団を選択的に拡大するか、または選択的に注入するための能力は、非常に有益である。このような豊富な集団のさらなる利益は、Bリンパ球によって提示される抗原を認識するその活性ヘルパーT細胞が、2つの型の刺激(物理的接触およびサイトカイン産生)を送達し、B細胞の増大および分化を生じることにおいて容易に明らかである。
【0086】
様々な実施形態において、当業者は、細胞からの刺激シグナルの除去が、使用される表面の型に依存することを理解する。例えば、常磁性ビーズが、使用される場合、そのとき磁気分離は、実行可能な選択肢である。分離技術は、常磁性ビーズの製造者の指示によって詳細に記載されている(例えば、DYNAL Inc.、Oslo、Norway)。
さらに、ろ過は、表面が、細胞から分離されるのに十分大きいビーズである場合、使用され得る。さらに、様々な輸血フィルターは、市販されており、20ミクロンおよび80ミクロンの輸血フィルター(Baxter)を含む。従って、ビーズが、フィルターのメッシュサイズより大きい限り、このようなろ過は、非常に有効である。関連する実施形態において、ビーズは、フィルターを通過し得るが、細胞は、残ったままであり得る。従って、分離を可能にする。一つの特定の実施形態において、使用される生物適合性表面は、露呈の間、培養中で分解する(すなわち、生分解性である)。
【0087】
本明細書中で記載される方法において使用される抗体は、公知の源(例えば、ATCC)から容易に得られ得るが、T細胞補助分子に対する抗体およびCD3複合体は、標準技術によって作製され得る。本発明の方法における使用のため、抗体を生じるための方法は、当該分野において周知であり、そして本明細書中においてさらに詳細に議論される。
【0088】
(表面上でのリガンド固定)
上記されるように、本発明の方法は、好ましくは表面に結合したリガンドを使用する。表面は、そこへ結合したかまたはその中に取り込まれたリガンドを有し得る任意の表面であり得、そしてそれは、生分解性であり、すなわち、刺激されるべき標的細胞に対し実質的に非毒性である。生体適合性表面は、生分解性または非生分解性であり得る。表面は、天然または合成であり得、そして合成表面は、ポリマーであり得る。表面は、コラーゲン、精製されたタンパク質、精製されたペプチド、ポリサッカリド、グリコサミノグリカン、細胞外マトリックス組成物、リポソーム、または細胞を含み得る。ポリサッカリドとしては、例えば、セルロース、アガロース、デキストラン、キトサン、ヒアルロン酸、またはアルギン酸塩が挙げられ得る。他のポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリエーテル、ポリ無水物、ポリアルキルシアノアルキレート、ポリアクリルアミド、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ポリビニル酢酸、ブロックコポリマー、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはポリウレタンが挙げられ得る。ポリマーは、乳酸またはコポリマーであり得る。コポリマーとしては、乳酸およびグリコール酸(PLGA)が挙げられ得る。非生分解性表面としては、ポリマー(例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)およびポリ(エチレン−酢酸ビニル))が挙げられ得る。生適合性表面としては、例えば、ガラス(例えば、生物ガラス)、コラーゲン、キチン、金属、ヒドロキシアパタイト、アルミン酸塩、生物セラミック物質、ヒアルロン酸ポリマー、アルギン酸塩、アクリルエステルポリマー、乳酸ポリマー、グリコール酸ポリマー、乳酸/グリコール酸ポリマー、精製されたタンパク質、精製されたペプチド、または細胞外マトリックス組成物が挙げられる。表面を構成する他のポリマーとしては、ガラス、シリカ、シリコン、ヒドロキシアパタイト、ヒドロゲル、コラーゲン、アクロレイン、ポリアクリルアミド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、または多数のプラスチックもしくは合成有機ポリマーなどが挙げられる。表面は、生物学的構造体(例えば、リポソームまたは細胞表面)を含み得る。表面は、脂質、プレート、バッグ、ペレット、繊維、メッシュ、または粒子の形態であり得る。粒子としては、コロイド粒子、ミクロスフェア、ナノ粒子、ビーズなどが挙げられる。様々な実施形態において、市販され得る表面(例えば、ビーズまたは他の粒子)は、有用である(例えば、Miltenyi Particles、Miltenyi Biotec、Germany;Sepharose beads、Pharmacia Fine Chemicals、Sweden;DYNABEADSTM、Dynal Inc.、New York;PURABEADSTM、Prometic Biosciences)。
【0089】
ビーズが使用される場合、ビーズは、標的細胞刺激を引き起こす任意のサイズであり得る。一つの実施形態において、ビーズは、好ましくは、約5ナノメートル〜約500μmの大きさである。従って、ビーズの大きさの選択は、ビーズが果たす特定の用途に依存する。例えば、ビーズが単球除去のために使用される場合、小さいサイズが、単球摂取を容易にするために選択される(例えば、2.8μmおよび4.5μmの直径または取り込まれ得る任意のサイズ(例えば、ナノメートルサイズ));しかし、ろ過によるビーズの分離が、所望される場合、50μm以上のビーズのサイズが、代表的に使用される。さらに、常磁性ビーズを使用する場合、ビーズは、代表的に、約2.8μm〜約500μmのサイズの範囲であり、そしてより好ましくは、約2.8μm〜約50μmである。最後に、約10nmぐらい小さい超常磁性ナノ粒子を使用するために選択し得る。従って、上記の議論から容易に明らかなように、事実上、任意の粒子サイズは、利用され得る。
【0090】
薬剤は、当該分野で公知でありかつ利用できる様々な方法によって表面に接着されるかまたは結合されるか、または統合され得る。薬剤は、天然リガンド、タンパク質リガンド、または合成リガンドであり得る。接着は、共有結合もしくは非共有結合、静電結合、または疎水性結合であり得、そして様々な接着手段(例えば、化学的手段、機械的手段、酵素的手段、静電的手段、またはリガンドが細胞を刺激することができる他の手段)によって達成され得る。薬剤の接着は、直接的または間接的(例えば、係留的)であり得る。例えば、リガンドに対する抗体は、最初に表面に接着され得(直接接着)、またはアビジンもしくはストレプタビジン、または一次に結合する二次抗体は、ビオチン化されたリガンドへ結合するための表面に接着され得る(間接接着)。リガンドに対する抗体は、抗イディオタイプ抗体を介して表面に接着され得る。他の例としては、タンパク質Aまたはタンパク質G、または抗体に結合するため表面に接着される、非特異的抗体結合分子を使用する手段が挙げられる。あるいは、リガンドは、化学的手段(例えば、市販されている架橋試薬(Pierce Rockford、IL)を使用する表面への架橋)、または他の手段によって表面に接着され得る。特定の実施形態において、リガンドは、表面に共有結合される。さらに、一つの実施形態において、市販されているトシル活性化DYNABEADSTMまたはエポキシ表面反応基を有するDYANBEADSTMは、製造者の指示に従って、目的のポリペプチドリガンドとともにインキュベートされる。簡潔には、このような状態は、代表的には4〜37℃の範囲の温度で、pH4〜pH9.5のリン酸塩緩衝液中でのインキュベーションを包含する。
【0091】
1つの局面において、特定のリガンドのような薬剤は、単一起源または複数起源であり得、そして抗体またはそのフラグメントであり得るが、別の局面において、T細胞を利用する場合、同時刺激リガンドは、B7分子(例えば、B7−1、B7−2)である。これらのリガンドは、上で議論される異なる結合手段のいずれかによって表面に結合される。表面に結合されるB7分子は、同時刺激分子を発現する細胞から単離され得るか、または標準的な組換えDNA技術および本明細書中に記載されるような同時刺激分子の生成および単離を可能にする発現系を使用して得られ得る。細胞表面に結合される場合にT細胞において同時刺激シグナルを誘発する能力を保持するB7分子のフラグメント、変異体、または改変体もまた、使用され得る。さらに、当業者は、T細胞サブセットの増大の活性化および誘導に有用な任意のリガンドもまた、ビーズまたは培養容器表面もしくは任意の表面に固定化され得ることを認識する。さらに、表面へのリガンドの共有結合は、1つの好ましい方法論であるが、二次モノクローナル抗体による吸着または捕捉もまた、使用され得る。表面に結合した特定のリガンドの量は、表面がビーズの場合は、フローサイトメトリーー分析によって容易に決定され得るかまたは、表面が例えば、組織培養皿、メッシュ、繊維、バッグの場合には、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)によって決定され得る。
【0092】
特定の実施形態において、B7分子または抗CD28抗体もしくはそのフラグメントの刺激性形態は、抗CD3抗体のような、TCR/CD3複合体を刺激する薬剤として同一の固相表面に結合される。抗CD3抗体に加えて、抗原シグナルを模倣するレセプターに結合する他の抗体が使用され得る。例えば、ビーズまたは他の表面は、抗CD2抗体とB7分子との組み合わせ(特に、抗CD3抗体と抗CD28抗体との組み合わせ)でコーティングされ得る。
【0093】
表面に結合された場合、この薬剤は、同一表面に(すなわち、「シス」形態で)または別々の表面に(すなわち「トランス」形態で)結合され得る。あるいは、一方の薬剤は表面に結合され、そして他方の薬剤は溶液中にある。1つの実施形態において、同時刺激シグナルを提供する薬剤は、細胞表面に結合され、そして一次活性化シグナルを提供する薬剤は、溶液中にあるかまたは表面に結合される。好ましい実施形態において、これら2つの薬剤は、同一のビーズ(すなわち、「シス」)または別々のビーズ(すなわち、「トランス」)のいずれかでビーズ上に固定化される。例示の目的で、一次活性化シグナルを提供する薬剤は、抗CD3抗体であり、そして同時刺激シグナルを提供する薬剤は、抗CD28抗体であり;そして両方の薬剤は、等しい分子量で同じビーズに同時に固定化される(co−immobilize)。1つの実施形態において、CD4T細胞増大およびT細胞増大のために、ビーズに結合される各抗体の1:1の比が使用される。本発明の特定の局面において、ビーズに結合される、抗CD3:CD28の比が使用され、その結果、1:1の比を使用して観察される増大と比較した場合に、T細胞増大の増加が観察される。1つの特定の実施形態において、1:1の比を使用して観察される増大と比較して、約0.5倍〜約3倍の増加が観察される。1つの実施形態において、ビーズに結合されるCD3:CD28の抗体比は、100:1〜1:100の範囲であり、その間の全ての整数値である。本発明の1つの局面において、抗CD3抗体よりも多くの抗CD28抗体が粒子に結合される(すなわち、CD3:CD28の比は、1未満である)。本発明の特定の実施形態において、ビーズに結合する抗CD3抗体に対する抗CD28抗体の比は、2:1よりも大きい。1つの特定の実施形態において、ビーズに結合する、1:100のCD3:CD28の抗体比が使用される。別の実施形態において、ビーズに結合する、1:75のCD3:CD28の抗体比が使用される。さらなる実施形態において、ビーズに結合する、1:50のCD3:CD28の抗体比が使用される。別の実施形態において、ビーズに結合する、1:30のCD3:CD28の抗体比が使用される。1つの好ましい実施形態において、ビーズに結合する、1:10のCD3:CD28の抗体比が使用される。別の実施形態において、ビーズに結合する、1:3のCD3:CD28の抗体比が使用される。なお別の実施形態において、ビーズに結合する、3:1のCD3:CD28の抗体比が使用される。
【0094】
(薬剤)
本発明によって企図される薬剤としては、タンパク質リガンド、天然リガンド、および合成リガンドが挙げられる。細胞表面部分に結合し得、そして特定の条件下でシグナル伝達を誘導する結合および凝集を引き起こし得る薬剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:レクチン(例えば、フィトヘマグルチニン(PHA)、レンズマメレクチン、コンカナバリンA)、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、ポリペプチド、糖ペプチド、レセプター、B細胞レセプターおよびT細胞レセプターのリガンド、細胞外マトリクス成分、ステロイド、ホルモン(例えば、成長ホルモン、コルチコステロイド、プロスタグランジン、テトラヨードサイロニン)、細菌性部分(例えば、リポポリサッカライド)、マイトジェン、スーパー抗原およびこれらの誘導体、増大因子、サイトカイン、接着分子(例えば、L−セレクチン、LFA−3、CD54、LFA−1)、ケモカイン、および低分子。これらの薬剤は、細胞、血液成分および組織のような天然の供給源から単離され得るかまたはインビトロで増大された細胞から単離され得、化学合成または当業者に公知の他の方法によって組み換え的に調製される。
【0095】
本発明の1つの局面において、T細胞を刺激することが所望される場合、有用な薬剤としては、CD3/TCR複合体、CD2、および/またはCD28を結合し、それぞれ活性化または増大を開始する能力を有するリガンドが挙げられる。従って、リガンドという用語は、細胞表面タンパク質に対する「天然の」リガンド(例えば、CD28に対するB7分子)、および人工リガンド(例えば、細胞表面タンパク質に特異的な抗体)である、タンパク質を含む。このような抗体およびこれらのフラグメントは、ハイブリドーマ方法および組換えDNA技術およびタンパク質増大技術のような、従来の技術に従って作製され得る。有用な抗体およびフラグメントは、ヒトを含む任意の種由来であり得るか、または1より多い種からの配列を使用するキメラタンパク質として形成され得る。
【0096】
抗体、ポリクローナル抗血清、またはモノクローナル抗体を作製するために使用され得る当該分野で周知の方法は、リガンドに特異的である。抗体はまた、遺伝子操作された免疫グロブリン(Ig)または所望の特性を有するように設計されたIgフラグメントとして作製され得る。例えば、例示の目的であり、限定されないが、抗体としては、第一の哺乳動物種由来の少なくとも1つの可変(V)領域ドメインおよび第二の別の哺乳動物種由来の少なくとも1つの定常領域ドメインを有する、キメラ融合タンパク質である、組換えIgGが挙げられ得る。最も一般的には、キメラ抗体は、マウス可変領域配列およびヒト定常領域配列を有する。このようなマウス/ヒトキメラ免疫グロブリンは、マウス抗体由来の、抗原に特異的な結合を付与する相補性決定領域(CDR)を、ヒト由来のV領域フレームワーク領域およびヒト由来の定常領域にグラフトすることによって「ヒト化」され得る。異なる種のCDRを含む抗体はまた、複数の特異的抗体(二特異的抗体または三特異的抗体など)を作製するために組み合わされ得る。これらの分子のフラグメントは、タンパク質分解性消化によってか、または必要に応じて、タンパク質分解性消化後のジスルフィド結合の穏やかな還元およびアルキル化、または組換え遺伝子操作技術によって作製され得る。
【0097】
抗体は、約10−1以上、より好ましくは、約10−1以上、より好ましくは、10−1以上、そしてなおより好ましくは、約10−1以上の親和性定数Kを有する抗原に特異的に結合する場合に、「免疫特異的」であると定義される。結合パートナーまたは抗体の親和性は、例えば、Scatchardら(Ann.N.Y Acad.Sci.USA 51:660,1949)に記載されるような従来の技術を使用してかまたは、表面プラズモン共鳴(BIAcore,Biosensor,Piscataway,NJ)例えば、Wolffら,Cancer Res.,53:2560−2565,1993を参照のこと)を使用して、容易に決定され得る。
【0098】
抗体は、一般に、当業者に公知である種々の技術のいずれかを使用して調製され得る(例えば、Harlowら,Antibodies:A Laboratory Manual,1988,Cold Spring Harbor Laboratoryを参照のこと)。このような技術の1つにおいて、動物は、ポリクローナル抗血清を作製するために、抗原としてリガンドを用いて免疫される。適切な動物としては、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシが挙げられ、そしてマウス、ラットおよびハムスターのようなより小さい哺乳動物種も含まれ得る。本発明の抗体はまた、米国特許第6,150,584号、同第6,130,364号、同第6,114,598号、同第5,833,985号、同第6,071,517号、同第5,756,096号、同第5,736,137号、および同第5,837,243号に記載されるように作製され得る。
【0099】
免疫原は、リガンド、精製されたかもしくは部分的に精製されたリガンドポリペプチドまたはこれらの改変体もしくはフラグメント、あるいはリガンドペプチドを発現する細胞から構成され得る。リガンドペプチドは、タンパク質分解性切断によって作製され得るか、または化学的に合成され得る。免疫化のためのペプチドは、宿主動物中の抗原応答をより生じるようであるアミノ酸配列を決定するために、当業者に公知の方法に従って、リガンドの一次構造、二次構造または三次構造を分析することによって選択され得る(例えば、Novotny,Mol.Immunol.28:201−207,1991;Berzoksky,Science 229:932−40,1985を参照のこと)。
【0100】
免疫原の調製としては、リガンドポリペプチドまたはこれらの改変体もしくはフラグメント、またはペプチドの、別の免疫原性タンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニンまたはウシ血清アルブミン)への共有結合が挙げられ得る。さらに、ペプチド、ポリペプチドまたは細胞は、アジュバント中で乳化され得る(Harlowら,Antibodies:A Laboratory Manual,1988 Cold Spring Harbor Laboratoryを参照のこと)。一般に、最初の注入後、動物は、その動物種に好ましいスケジュールに従って、1回以上の追加免疫を受ける。その免疫応答は、定期的に動物から採血し、血清を分離し、そしてオークターロニーアッセイのようなイムノアッセイで血清を分析して、特定の抗体力価を評価することによって、モニタリングされ得る。一旦抗体力価が確立されると、その動物を定期的に採血して、ポリクローナル抗血清を蓄積し得る。次いで、リガンドポリペプチドまたはペプチドに特異的に結合するポリクローナル抗体は、例えば、プロテインAを使用するかまたは適切な固体支持体に結合されたリガンドポリペプチドもしくはペプチドを使用する、アフィニティークロマトグラフィーによって、抗血清から精製され得る。
【0101】
例えば、KohlerおよびMilstein(Nature,256:495〜497,1975;Eur.J.Immunol.6:511〜519,1976)の技術ならびにこれらの改良を使用して、リガンドポリペプチドまたはそのフラグメントもしくは改変体に特異的に結合するモノクローナル抗体が好ましくあり得る。リガンドポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントに対して所望の特異性を有する抗体を産生する不死化真核生物細胞株であるハイブリドーマが作製され得る。動物(例えば、ラット、ハムスター、または好ましくはマウス)を、上記のように調製されたリガンド免疫原で免疫する。免疫した動物から得たリンパ系細胞(最も一般には、脾臓細胞)は、薬物感作骨髄腫細胞融合パートナー(好ましくは、免疫した動物と同系のパートナー)と融合することにより不死化され得る。この脾臓細胞と骨髄腫細胞は膜融合促進剤(例えば、ポリエチレングリコールまたは非イオン性界面活性剤)を用いて数分で混合され得、次いで、骨髄腫細胞ではなくハイブリドーマ細胞の増大を支持する選択培地に低密度で撒いた。好ましい選択培地はHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)である。十分時間(通常、約1〜2週間)の経過後、細胞のコロニーが観察される。単一のコロニーを単離し、細胞から産生される抗体を、リガンドポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントに対する結合活性について試験し得る。
【0102】
リガンド抗原に高い親和性と特異性を有する抗体を産生するハイブリドーマが好ましい。リガンドポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマが、本発明により意図される。
【0103】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養物の培養上清から単離され得る。マウスモノクローナル抗体の産生のための代替的な方法は、このハイブリドーマ細胞を同系のマウスの腹腔内に注入することである。このマウスは、モノクローナル抗体を含有する腹水を産生する。従来の技術(例えば、クロマトグラフィー、ゲル濾過、沈降または抽出)により、抗体から混入物が除去され得る。
【0104】
ヒトモノクローナル抗体は、任意の多数の技術により産生され得る。方法としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ヒト末梢血液細胞のエプスタイン−バーウイルス(EBV)形質転換(米国特許第4,464,456号を参照のこと)、ヒトB細胞のインビトロ免疫(例えば、Boernerら、J.Immunol.147:86〜95,1991を参照のこと)、ならびに、酵母人工染色体(YAC)により挿入されたヒト免疫グロブリン遺伝子を有する免疫トランスジェニックマウス由来の脾臓細胞の融合および酵母人工染色体により挿入されたマウス免疫グロブリン遺伝子を有する免疫トランスジェニックマウス由来の脾臓細胞の融合(例えば、米国特許第5,877,397号、Bruggemannら、Curr.Opin.Biotechnol.8:455〜58,1997;Jakobovitsら、Ann.N.Y.Acad.Sci.764:525〜35,1995を参照のこと)、または、ヒト免疫グロブリンV領域ファージライブラリからの単離。
【0105】
本発明における使用のためにキメラ抗体およびヒト化抗体が作成され得る。キメラ抗体は、第1の哺乳動物種由来の少なくとも1つの定常領域ドメインと、第2の異なる哺乳動物種由来の少なくとも1つの可変領域ドメインを有する(例えば、Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851〜55,1984を参照のこと)。最も一般には、キメラ抗体は、非ヒトモノクローナル抗体由来の少なくとも1つの可変領域ドメイン(例えば、マウス、ラットまたはハムスターのモノクローナル抗体由来の可変領域)をコードするポリヌクレオチド配列を、少なくとも1つのヒト定常領域をコードする配列を含むベクターにクローニングすることによって構築され得る(例えば、Shinら、Methods Enzymol.178:459〜76,1989;Wallsら、Nucleic Acids Res.21:2921〜29,1993を参照のこと)。選択されるヒト定常領域は、特定の抗体に所望されるエフェクター機能に依存し得る。キメラ抗体を作製するための当該分野で公知の別の方法は、相同組換えである(米国特許第5,482,856号)。好ましくは、このベクターが、キメラ抗体の安定な発現のために真核細胞生物にトランスフェクトされる。
【0106】
非ヒト/ヒトキメラ抗体は、さらに遺伝的に操作され、「ヒト化」抗体を作製し得る。
このような抗体は、非ヒト哺乳動物種の免疫グロブリン由来の複数のCDR、少なくとも1つのヒト可変フレームワーク領域および少なくとも1つのヒト免疫グロブリン定常領域を有する。ヒト化により、非ヒトモノクローナル抗体またはキメラ抗体と比較した場合、減少した結合活性を有する抗体を生じ得る。従って、当業者は、1以上のストラテジーを使用して、ヒト化抗体を設計する。
【0107】
特定の実施形態において、抗体の抗原結合フラグメントの使用が好ましくあり得る。このようなフラグメントとしては、FabフラグメントまたはF(ab’)フラグメントが挙げられ、これらは、それぞれ、パパインまたはペプシンでのタンパク質分解性消化により調製され得る。抗原結合フラグメントは、例えば、固定化タンパク質Aまたは固定化リガンドポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントを用いる、アフィニティクロマトグラフィーによりFcフラグメントから分離され得る。Fabフラグメントを作製するための代替的な方法としては、F(ab’)フラグメントの穏やかな還元の後のアルキル化が挙げられる(例えば、Weir,Handbook of Experimental Immunology,1986,Blackwell Scientific,Bostonを参照のこと)。
【0108】
上記の任意のIg分子のいずれかの非ヒト、ヒトまたはヒト化重鎖および軽鎖可変領域は、単鎖Fv(sFv)フラグメント(単鎖抗体)として構築され得る。例えば、Birdら、Science 242:423〜426,1988;Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879〜5883,1988を参照のこと。多機能融合タンパク質は、インフレームでsFvをコードするポリヌクレオチド配列と種々のエフェクタータンパク質をコードするポリヌクレオチド配列とを結合することにより作製され得る。これらの方法は当該分野で公知であり、例えば、欧州特許第B1−0318554号、米国特許第5,132,405号、米国特許第5,091,513号および米国特許第5,476,786号に開示される。
【0109】
リガンドポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントに特異的に結合する抗体を選択するためのさらなる方法は、ファージディスプレイによる(例えば、Winterら、Annul.Rev.Immunol.12:433〜55,1994;Burtonら、Adv.Immunol.57:191〜280,1994を参照のこと)。ヒトまたはマウス免疫グロブリン可変領域遺伝子コンビナトリアルライブラリーが、ファージベクター内で作製され得、このベクターは、リガンドポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントに特異的に結合するIgフラグメント(Fab、Fv、sFvまたはその多量体)を選択するためにスクリーニングされ得る(例えば、米国特許第5,223,409号、Huseら、Science 246:1275〜81,1989;Kangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:4363〜66,1991;Hoogenboomら、J Molec.Biol.227:381〜388,1992;Schlebuschら、Hybridoma 16:47〜52,1997およびこれらにおいて引用される参考文献を参照のこと)。
【0110】
(使用方法)
上記の方法に加え、本明細書中に記載される方法で刺激および/または活性化された細胞は、種々の状況において使用され得る。ポリクローン性が増加した本発明のT細胞は、歪んだT細胞レパートリーが予想または観察される条件の任意の個体に注入され得る。ポリクローン性が増加した本発明のT細胞が、ドナーに注入され、広範かつ潜在的な免疫防御を提供し得る。本発明の文脈内で、本明細書中に記載される組成物および方法を使用して、免疫無防備状態の個体(例えば、免疫学的欠損または本明細書中に記載するように歪んだT細胞レパートリーを有する個体(天然に生じたか、または薬物または治療により人工的に誘導されたかのいずれか))を処置し得る。
【0111】
特定の実施形態において、免疫無防備状態の個体は、天然に、すなわち天然に存在する原因に起因して(例えば、本明細書中に記載される任意の疾患または障害によって)免疫無防備である。他の実施形態において、個体は、例えば、本明細書中に記載される任意の疾患の任意の数の処置の結果として誘導されることにより、免疫無防備状態になる。この状況において、個体は、免疫無防備であり得るか、すなわち言い換えると、免疫学的欠損または、化学療法、代表的には移植、細胞傷害性剤、免疫抑制剤もしくは本明細書中に記載される変更されたかもしくは歪んだT細胞レパートリーをもたらすような任意の他の処置とともに投与される処置の結果としての歪んだT細胞レパートリーを有し得る。特定の実施形態において、個体は、化学療法、照射または薬物(例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノラートおよびFK506)、抗体もしくは他の免疫切除剤(例えば、CAMPATH、抗CD3抗体、サイトクシン(cytoxin)、フルダリビン(fludaribine)、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228および照射)を用いる処置の結果として、免疫無防備である。これらの薬物は、カルシウム依存性のホスファターゼカルシニューリンを阻害するか(シクロスポリンおよびFK506)、または成長因子誘導性シグナル伝達に重要なp70S6キナーゼを阻害するか(ラパマイシン)のいずれかである(Liuら、Cell 66:807〜815,1991;Hendersonら、Immun.73:316〜321,1991;Biererら、Curr.Opin.Immun.5:763〜773,1993;Isoniemi(前出))。
【0112】
天然に生じる免疫応答は、任意の所定の抗原ついて少数の免疫優性エピトープを選択し、そしてこれらのエピトープに対する特異性を有するT細胞が活性化、増大され、免疫応答を媒介する。残念ながら、多くの他の潜在的なエピトープは、インビボT細胞活性化プロセスにおいて競合できず、免疫応答において非活性化/免疫応答に非参加なままであり、これによって、免疫監視が病原体/腫瘍によって圧倒され得る可能性が増す。ドナーのT細胞のポリクローン性を活性化および増加することにより、標的抗原に応答し得るTCRを有するこれらの劣性T細胞が、向上した応答性の状態に駆動され、免疫応答における強力なプレーヤーにされ得る。このことは、異なる特異性を有するT細胞の免疫系の全設備を広げ、あらゆる免疫学的傷害をチャレンジさせる。従って、このアプローチは、狭義の免疫応答が作動モードである場合に生じる逸脱改変体に対して保護するのに役立つ。
【0113】
本明細書中に記載される方法論を使用して、感染性疾患、自己免疫疾患、あらゆる数の癌、血液疾患(例えば、細胞減少症)の処置、移植(例えば、造血幹細胞移植)または免疫不全の種々の状態もしくは条件のいずれかと同時の処置における使用のため、および免疫療法における使用のための、TCR発現の観点で増加したポリクローン性を有する、CD28、CD4、CD8、CD45RAおよび/またはCD45ROのT細胞集団を選択的に拡大し得る。結果として、抗原応答性に関してはポリクローナルであるが、CD4またはCD8のいずれかに関して実質的に同質であるTCRを発現するT細胞集団が産生され得る。さらに、この方法は、個体の総CD4T細胞集団またはCD8T細胞集団を再構成するのに十分な数でT細胞集団の増大を可能にする(個体のリンパ球集団は、約5×1011個である)。得られたT細胞集団はまた、遺伝的に形質導入され、免疫療法に使用され得るかまたは感染因子のインビトロ分析の方法において使用され得る。例えば、腫瘍浸潤性リンパ球の集団は、癌を罹患する個体から得られ得、刺激されたT細胞を十分な数に増加させ得る。得られたT細胞集団は、遺伝的に形質導入され、腫瘍壊死因子(TNF)または他のタンパク質(例えば、任意の数のサイトカイン、アポトーシスのインヒビター(例えば、Bcl−2))、HIV感染から細胞を防御する遺伝子(例えば、RevM10またはイントラカイン(intrakine)など)、標的分子、接着および/またはホーミング分子ならびにその任意の種々の抗体もしくはフラグメント(例えば、Scfv)を発現し、個体に与えられる。
【0114】
本発明のCD4T細胞集団の1つの特定の用途は、個体におけるHIV感染の処置である。HIVの長期感染は、最終的にCD4Tリンパ球の数の顕著な減少をもたらす。次いで、この減少が、免疫不全の深在性状態を引き起こし、生命を脅かす日和見感染症のアレイに対して敏感な患者に付与される。CD4T細胞の数の正常レベルへの補充は、免疫機能を有意な程度まで回復することが期待され得る。従って、本明細書中に記載される方法は、HIV感染患者においてCD4T細胞のポリクローン性を増加し、この集団を再構成するのに十分な数までCD4T細胞を増大するための手段を提供する。長期刺激の間にT細胞の感染を回避することもまた必要であり得るかまたは、HIV感染に永久に耐性であるT細胞を与えることが望ましくあり得る。T細胞が、HIV感染に耐性にされ得るかまたは感染した個体にT細胞を回復する前にはウイルスを産生し得ない、多くの技術が存在する。例えば、1つ以上の抗レトロウイルス剤が、増大の前にCD4T細胞とともに培養され、HIV複製またはウイルス産生(例えば、逆転写および/またはウイルス機構の他の成分を標的にする薬物(例えば、Chowら、Nature 361:650〜653、1993を参照のこと))を阻害し得る。
【0115】
いくつかの方法が、T細胞を遺伝的に形質導入し、HIV感染または複製を阻害する分子を産生するのに使用され得る。例えば、種々の実施形態において、T細胞は遺伝的に形質導入され、トランス優性インヒビター、「分子デコイ」、アンチセンス分子または毒素を産生し得る。このような方法論は、米国特許出願番号08/253,751、同08/253,964およびPCT公開番号WO 95/33823にさらに詳細に記載される。
【0116】
1つの実施形態において、悪性腫瘍(例えば、非ホジキンリンパ腫(NHL)およびB細胞慢性リンパ球性白血病(B−CLL))が処置され得る。増大したT細胞を使用した最初の研究がNHLにおいて試験されている(Liebowitzら、Curr.Opin.Onc.10:533〜541、1998を参照のこと)が、本発明のT細胞集団は、免疫療法の成功および応答性を劇的に増強し得る、増加したポリクローン性特性を提供する。図3に示されるように、B−CLLを有する患者は、いくつかのVβファミリーについてT細胞集団内のTCRのモノクローン性またはオリゴクローン性の発現を有する。XCELLERATETMプロセスの12日後、TCR発現のポリクローン性は、これらのT細胞集団に回復される。さらに、B−CLLを有する患者は、特別な障害(一般的なT細胞免疫抑制に付随して、末梢血における高い白血病性細胞負荷にあまり相関しないT細胞の数を含む)を示す。本発明のT細胞集団は、特に、幹細胞(CD34)移植治療と組み合わせる場合、この疾患の処置において劇的に改善された効力を提供し得る。したがって、T細胞機能および、抗CD3×抗CD28が同時に固定されたビーズでの抗CLL T細胞活性を増加することが有益である。
【0117】
本発明はまた、動物における癌または悪性腫瘍細胞の存在を予防、阻害または減少するための組成物および方法を提供し、この方法は、抗癌有効量の被験体で活性化されるポリクローナルT細胞を動物に投与する工程を包含する。
【0118】
免疫応答が誘導されるかまたは存在が予防、阻害もしくは減少される、本発明により企図される癌としては、以下が挙げられ得るがこれらに限定されない:黒色腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、白血病、形質細胞種、肉腫、神経膠腫、胸腺腫、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、腎癌、腎細胞癌、膵臓癌、上咽頭癌、食道癌、脳癌、肺癌、卵巣癌、子宮頚癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、巨顆粒状リンパ球性白血病(LGL)および慢性リンパ球性白血病(CLL)。1つの実施形態において、癌は、B細胞慢性リンパ球性白血病である。
【0119】
本発明の組成物および方法はまた、化学療法、細胞傷害性剤または本明細書中に記載され、かつ当業者に公知である任意の免疫抑制剤で処置されている個体における免疫応答性を回復するのに使用され得る。さらなる実施形態において、本発明の組成物および方法は、造血幹細胞移植を受けた個体を処置する(すなわち、その個体における免疫応答性を回復する)のに使用され得る。特定の実施形態において、本発明の組成物で処置されるべき個体は、臍帯血、同種細胞移植片、自己細胞移植片、または異種細胞移植片を有する。
【0120】
さらなる実施形態において、本発明の方法および組成物は、遺伝子治療またはT細胞レパートリーの歪みをもたらし得る遺伝子形質導入を含む任意の手順を受けた個体における免疫応答性を回復するのに使用され得る。より特異的には、一次Tリンパ球におけるレトロウイルス媒介遺伝子送達は、遺伝子改変細胞の活性化および形質導入/選択依存性のTCR Vβの歪みを誘導し得る。しかし、細胞の活性化および刺激、その後の本明細書中に記載される方法(例えば、本明細書中に記載されるようなCD3/CD28同時刺激)を使用する遺伝子改変は、CD4およびCD8の両方のT細胞サブセットのTCR Vβレパートリーの変更(歪み)を予防する。
【0121】
特定の実施形態において、本発明の組成物および方法は、免疫不全に関連するかなり多数の障害(変更されたT細胞レパートリーを含む)に苦しむ個体における免疫応答性を回復するか、さもなくば改善するのに使用され得、これらの障害としては、以下のような疾患が挙げられるがこれらに限定されない:慢性関節リウマチ、多発性硬化症、インシュリン依存性糖尿病、アジソン病、セリマック病、慢性疲労症候群、炎症性腸疾患、潰瘍性結腸炎、クローン病、線維筋痛症、全身性エリテマトーデス、乾癬、シェーグレン症候群、甲状腺機能亢進症/グレーブズ病、甲状腺機能低下症/橋本病、インシュリン依存性糖尿病(1型)、重症筋無力症、子宮内膜症、強皮症、悪性貧血、グッドパスチャー症候群、ウェゲナー病、糸球体腎炎、再生不良性貧血、任意の種々の細胞減少症、発作性夜間血色尿症、骨髄異形性症候群、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、ファンコニ貧血、エヴァン症候群、第VIII因子インヒビター症候群、第IX因子インヒビター症候群、全身性脈管炎、皮膚筋炎、多発性筋炎およびリウマチ性熱。本明細書中に記載される方法および組成物は、低血球数により特徴付けられる血液障害を処置するのに使用され得る。
【0122】
特定の実施形態において、本発明の組成物および方法は、T細胞レパートリーの歪みに関連する神経障害の処置に使用され得る。さらなる実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、心血管疾患を処置するのに使用される。
【0123】
T細胞は、本明細書中に記載されるように刺激され、そして増大され、ウイルス(例えば、ヒト免疫不全ウイルス)、細菌、寄生生物および真菌のような病原因子に対する応答性を誘導または増強し得る。病原因子としては、感染性生物によって引き起こされる任意の疾患が挙げられる。感染性生物としては以下が挙げられ得る:ウイルス(例えば、1本鎖RNAウイルス、1本鎖DNAウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、単純疱疹ウイルス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、ヒトパピローマウイルス(HPV))、寄生生物(例えば、原虫およびメタゾア寄生生物(例えば、Plasmodia種、Leishmania種、Schistosoma種、Trypanosoma種)、細菌(例えば、Mycobacteria(特に、M.tuberculosis、Salmonella、Streptococci、E.coli、Staphylococci))、真菌(例えば、Candida種、Aspergillus種)、Pneumocystis cariniiおよびプリオン(動物に感染してスクラピー(ヒツジおよびヤギの神経系の伝播性変性疾患)およびウシ海綿状脳症(BSE)または「狂牛病」、ネコのネコ海綿状脳症)。ヒトに感染することが知られている4つのプリオン疾患は、クールー病、クロイツフェルト−ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー病(GSS)および致死家族性不眠(FFI)である。本明細書中で使用される場合、「プリオン」は、これらの疾患もしくは、あらゆる動物において(特にヒトおよび家畜において)使用される他の疾患の全てまたはいずれかを生じるプリオンの全ての形態を含む。
【0124】
T細胞は、本明細書中に記載されるように刺激および増大され、免疫無防備状態の個体(例えば、先天性遺伝性障害(例えば、重症複合免疫不全(SCID)または分類不能型免疫不全(CVID))を有する個体)における応答性を誘導または増強し得る。1つの実施形態において、T細胞は、本明細書中に記載されるように、骨髄移植、化学療法、放射療法または他の癌療法に関する処置の結果として、刺激および増大され、免疫無防備状態の個体における応答性を誘導または増強し得る。1つの実施形態において、T細胞は、本明細書中に記載されるように刺激および増大され、免疫不全または自己免疫疾患を有する免疫無防備状態の個体における応答性を誘導または増強し得る。なおさらなる実施形態において、T細胞は、刺激および増大され、腎臓、肝臓または膵臓を冒す慢性疾患を有する、免疫無防備状態の個体における応答性を誘導または増強し得る。1つの特定の実施形態において、本発明のT細胞を使用して糖尿病を有する個体における応答性が誘導または増強される。別の実施形態において、本発明のT細胞を使用して、老齢により冒されている個体における応答性が誘導または増強される。
【0125】
本発明はさらに、混合したT細胞集団由来のT細胞の特異的な亜集団を選択的に増大する方法を提供する。特に、本発明は、より高い割合のCD4とCD8の二重陽性T細胞を有する特異的に富化されたT細胞集団を提供する。
【0126】
本発明の別の実施形態は、CD4T細胞集団由来のTH1細胞の集団を選択的に増大するための方法を提供する。この方法において、CD4T細胞が抗CD28抗体(例えば、モノクローナル抗体9.3)と同時に刺激され、TH1特異的サイトカイン(IFN−γを含む)の分泌を誘導し、結果としてTH2細胞を上回るTH1細胞の富化を生じる。
【0127】
本発明はさらに、CD4T細胞集団由来のTH2細胞集団を選択的に増大するための方法を提供する。この方法において、CD4T細胞が抗CD28抗体(例えば、モノクローナル抗体B−T3、XR−CD28)と同時に刺激され、TH2−特異的サイトカインの分泌を誘導し、結果としてTH1細胞を上回るTH2細胞の富化を生じる(例えば、Fowlerら、Blood 1994年11月15日;84(10):3540〜9;Cohenら、Ciba Found Symp 1994;187:179〜93を参照のこと)。
【0128】
本発明はさらに、特定のVβ遺伝子、Vα遺伝子、Vγ遺伝子またはVδ遺伝子を発現するT細胞集団を選択的に増大するための方法を提供する。例えば、この方法において、特定のVβ遺伝子、Vα遺伝子、Vγ遺伝子またはVδ遺伝子を発現するT細胞が正または負に選択され、次いで、本発明の方法に従って、さらに増大/刺激される。あるいは、目的の特定のVβ遺伝子、Vα遺伝子、Vγ遺伝子またはVδ遺伝子を発現する、刺激および増大されたT細胞は、正または負に選択され、そしてさらに刺激および増大され得る。
【0129】
別の例において、2つ以上の固定化抗体(例えば、抗CD3および抗CD28)またはこの細胞が被験体に投与される前に、T細胞活性化に必要とされるレセプターを刺激するための他の成分(例えば、プラスチック表面上または別々のミクロ粒子上に固定化される)を含む患者由来の血液が、独立型の使い捨て可能なデバイス内に引き込まれる。1つの実施形態において、使い捨て可能なデバイスは、シリンジおよび無菌ドッキングデバイスと結合/ドッキングするのに適した適切なチュービング接続部を有する容器(例えば、プラスチック製の袋またはフラスコ)を備え得る。このデバイスは、T細胞活性化成分(例えば、抗CD3抗体および抗CD28抗体)の固定化のための固体表面を有する;これらは容器自身の表面または挿入物であり得、代表的には、平面、エッチングされた平面、でこぼこした表面、多孔性のパッド、線維、臨床的に受容可能な/安全な鉄−流体、ビーズなどである。さらに、独立型デバイスを使用する場合、被験体はデバイスに接続されたままであり得るか、またはこのデバイスが患者から分離され得る。さらに、このデバイスは、室温で使用され得るか、または携帯用のインキュベーターを使用して生理温度でインキュベートされ得る。
【0130】
血液および血液産物を回収および処理するためのデバイスおよび方法は周知であるので、当業者は、本明細書中に提供される所定の教示を容易に認識し、上に示された必要性を満たす種々のデバイスが容易に設計され得るかまたは既存のデバイスが改変され得ることを容易に認識する。従って、このようなデバイスおよび方法は、本明細書中に示される特定の実施形態によって限定されないが、無菌性を維持し得る任意のデバイスまたは方法論を含み、このデバイスまたは方法論は、血液を補体の活性化を減少する流体形状に維持し、そして、ここで、T細胞活性化に必須の成分(例えば、抗CD3抗体および抗CD28抗体またはこれらに対するリガンド)が、被験体への投与の前に、固定化され得るかまたは血液もしくは血液産物から分離され得る。さらに、種々の血液産物が、本明細書中に記載されるデバイスおよび方法と組み合せて使用され得ることを、当業者は容易に理解し得る。例えば、この方法およびデバイスを使用して、被験体への投与の前に解凍される、凍結保存全血、末梢血単核細胞、他の凍結保存血液由来細胞または凍結保存T細胞株由来のT細胞の迅速な活性化を提供し得る。別の例において、この方法およびデバイスを使用して、被験体に投与する前に、以前にエキソビボで増大されたT細胞産物またはT細胞株の活性を高め、従って、高度に活性化されたT細胞産物を提供し得る。最後に、容易に理解されるように、上記の方法およびデバイスが、被験体およびドナーに、同時に自己細胞療法または同種細胞療法に使用され得る。
【0131】
本発明の方法はまた、ワクチンとともに使用され、抗原の応答性を増強し、インビボ効果を増強し得る。さらに、本発明により増大されたT細胞が体内で比較的長い半減期を有する場合、これらの細胞は、所望の目的の核酸配列を運び、そして癌、疾患または感染の部位に潜在的にホーミングすることにより、遺伝子治療のための完全なビヒクルとして作用し得る。従って、本発明により増大された細胞は、ワクチン、1つ以上のサイトカイン、1つ以上の治療抗体などと組み合せて患者に送達され得る。実質的に、より頑強なT細胞集団により恩恵を受ける任意の治療は、本明細書中に記載される使用方法の範囲内である。
【0132】
本発明は、TCR発現において増加したポリクローン性を有するT細胞の方法および組成物を提供し、これは、以下が挙げられるが、これらに限定されない癌の存在を予防、阻害または減少するために使用される:黒色腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、上咽頭癌、白血病、形質細胞種、肉腫、神経膠腫、胸腺腫、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、腎臓癌、腎細胞癌、膵臓癌、食道癌、脳癌、肺癌、卵巣癌、子宮頚癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、巨顆粒状リンパ球性白血病(LGL)および当該分野で公知の他の新生物。
【0133】
あるいは、本明細書中に記載されるポリクローン性T細胞組成物を使用して、感染性生物に対する応答性を誘導または増強し得る。感染性生物は、ウイルス(例えば、1本鎖RNAウイルスもしくは1本鎖DNAウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルスもしくはC型肝炎ウイルス、単純疱疹ウイルス(HSV)、ヒトパピローマウイルス(HPV))、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、寄生生物、細菌(M.tuberculosis、Pneumocystis carinii、CandidaまたはAspergillus)、あるいはこれらの組み合せを含み得る。
【0134】
本発明の別の実施形態において、本明細書中に記載されるポリクローン性T細胞組成物を使用して、先天性遺伝性障害または免疫不全障害(例えば、重症複合免疫不全(SCID)または分類不能型免疫不全(CVID))を補正する応答性を誘導または増強し得る。特定の実施形態において、本明細書中に記載されるポリクローン性T細胞組成物を使用して、骨髄移植、化学療法、放射療法または他の癌処置に関する処置の結果である免疫不全を補正する応答性を誘導または増強し得る。さらなる実施形態において、本明細書中に記載されるポリクローン性T細胞組成物を使用して、免疫不全または自己免疫疾患を補正する応答性を誘導または増強し得る。なおさらなる実施形態において、本明細書中に記載されるポリクローン性T細胞組成物を使用して、腎臓、肝臓または膵臓を冒す慢性疾患を補正する応答性を誘導または増強し得る。なお別の実施形態において、本明細書中に記載されるポリクローン性T細胞組成物を使用して、糖尿病を処置する応答性を誘導または増強し得る。1つの特定の実施形態において、本明細書中に記載されるT細胞組成物を使用して、老齢に関連する免疫不全を補正する応答性を誘導または増強し得る。
【0135】
さらなる実施形態において、本発明のTCR発現の増加したポリクローン性を示すT細胞組成物は、このような感染性疾患および癌の処置に伝統的に使用される他の治療と組み合わせて使用され得る。
【0136】
(薬学的組成物)
本発明のT細胞集団は、単独でか、または薬学的組成物として、希釈剤および/もしくは他の成分(例えば、IL−2もしくは他のサイトカインまたは細胞集団)と組み合せてのいずれかで投与され得る。簡単には、本発明の薬学的組成物は、1つ以上の薬学的または生理学的に受容可能なキャリア、希釈剤もしくは賦形剤と組み合せて、本明細書中に記載される標的細胞集団を含み得る。このような組成物は、緩衝液(例えば、中性緩衝化生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水など);炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、ショ糖またはデキストラン、マンニトール);タンパク質:ポリペプチドまたはアミノ酸(例えば、グリシン);抗酸化剤;キレート剤(例えば、EDTAまたはグルタチオン);アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および保存料を含み得る。本発明の組成物は、好ましくは、静脈内投与のために処方される。
【0137】
本発明の薬学的組成物は、処置されるべき(または予防されるべき)疾患に適切な様式で投与され得る。投与の量および頻度は、患者の状態ならびに患者の疾患の型および重篤度のような因子によって決定されるが、適切な投薬量は、臨床試験により決定され得る。
【0138】
本発明の組成物を被験体に投与することにより、動物において誘導される免疫応答としては、腫瘍および感染細胞を殺傷し得る細胞傷害性T細胞によって媒介される細胞性免疫応答ならびにヘルパーT細胞応答が挙げられ得る。B細胞を活性化させ、従って抗体産生をもたらし得るヘルパーT細胞によって主に媒介される体液性免疫応答もまた誘導され得る。種々の技術が、本発明の組成物により回復または誘導される免疫応答の型を分析するのに使用され得、これらは、当該分野において十分に記載されている:例えば、Coliganら、Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons Inc.(1994)。
【0139】
「免疫的有効量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍阻害有効量」または「治療量」は、投与されるべき本発明の組成物の正確な量が、年齢、体重、腫瘍サイズ、感染または転移の程度の個人差および患者の状態を考慮して、医師により決定され得ることを示唆する。代表的には、養子性免疫療法研究において、活性化抗原特異的T細胞が、約2×10〜2×1011細胞で患者に投与される。(例えば、米国特許第5,057,423号を参照のこと)。本発明のいくつかの局面において、特に同種細胞または異種細胞の使用において、10個/kg(患者1人あたり10〜1011個)の範囲のより少数の細胞が投与され得る。本発明の1つの実施形態において、T細胞は、約1×10細胞で患者に投与される。T細胞組成物は、これらの範囲内の投薬量で複数回投与され得る。活性化T細胞は、治療を受けている患者に対し、自己または異種であり得る。所望される場合、この処置はまたは、本明細書中に記載されるような、マイトジェン(例えば、PHA)またはリンホカイン、サイトカイン、および/またはケモカイン(例えば、GM−CSF、IL−4、IL−13、Flt3−L、RANTES、MIP1αなど)の投与を含み、免疫応答の誘導を増強し得る。
【0140】
本発明の特定の局面において、投与されるT細胞は、投与後、そのインビボポリクローン性を少なくとも2週間と1年との間保持する。さらなる実施形態において、投与されるT細胞は、投与後、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間または20週間ポリクローン性を維持する。なおさらなる実施形態において、投与されるT細胞は、投与後、少なくとも5ヶ月、5.5ヶ月、6ヶ月、6.5ヶ月、7ヶ月、7.5ヶ月、8ヶ月、8.5ヶ月、9ヶ月、9.5ヶ月、10ヶ月、10.5ヶ月、11ヶ月、11.5ヶ月、12ヶ月またはそれ以上、ポリクローン性を維持する。
【0141】
本発明の薬学的組成物の投与は、以下に挙げるような任意の簡便な様式において実施され得る:エアロゾル吸入、注入、経口摂取、輸注、移植(implantation)または移植(transplantation)。本発明の組成物は、皮下、皮内、筋肉内、静脈内(i.v.)注射、腫瘍内、または腹腔内で、患者に投与され得る。好ましくは、本発明のT細胞組成物は、i.v.注射により投与される。活性化T細胞の組成物は、腫瘍またリンパ節内に直接注入され得る。
【0142】
なお別の実施形態において、薬学的組成物は、制御放出系にて送達され得る。1つの実施形態において、ポンプが使用され得る(Langer,1990,Science 249:1527〜1533; Sefton 1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201;Buchwaldら、1980;Surgery 88:507;Saudekら、1989,N.Engl.J.Med.321:574を参照のこと)。別の実施形態において、ポリマー物質が使用され得る(Medical Applications of Controlled Release,1974,LangerおよびWise(編),CRC Pres.,Boca Raton,Fla.;Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,1984,SmolenおよびBall(編),Wiley,New York;RangerおよびPeppas,1983;J Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61を参照のこと;Levyら、1985,Science 228:190;Duringら、1989,Ann.Neurol.25:351;Howardら、1989,J.Neurosurg 71:105もまた参照のこと)。なお別の実施形態において、制御放出系は、治療標的の近くに配置され得、従って、全身性用量の画分のみを必要とし得る(例えば、Medical Applications of Controlled Release,1984,LangerおよびWise(編),CRC Pres.,Boca Raton,Fla.,第2巻、pp.115〜138を参照のこと)。
【0143】
本発明のT細胞組成物はまた、任意の数のマトリックスを使用して投与され得る。マトリックスは、組織操作の範囲内において数年にわたって使用されている(例えば、Principles of Tissue Engineering(Lanza,Langer,およびChick(編)),1997を参照のこと)。本発明は、人工のリンパ性器官として作用する新規範囲内で、このようなマトリックスを使用して、代表的には、T細胞の調節を介して、免疫系を支持、維持または調節する。従って、本発明は、組織操作における有用性を示すこれらのマトリックス組成物および処方物を使用し得る。従って、本発明の組成物、デバイスおよび方法において使用され得るマトリックスの型は、実質的に制限がなく、生体マトリックスおよび合成マトリックスの両方を含み得る。1つの特定の例において、米国特許第5,980,889号;同5,913,998号;同5,902,745号;同5,843,069号;同5,787,900号;または同5,626,561号により示される組成物およびデバイスが、使用される。マトリックスは、哺乳動物宿主に投与される場合に生体適合性であることに一般に関連する特性を含む。マトリックスは、天然材料または合成材料の両方から形成され得る。このマトリックスは、動物の体内で永久的な構造または取り出し可能な構造(例えば、移植片;または生分解性物)を残すことが所望される場合、例えば、非生分解性であり得る。マトリックスは、海面、移植片、チューブ、TELFA(登録商標)パッド、線維、中空線維、凍結乾燥成分、ゲル、粉末、多孔性組成物、リポソーム、細胞または新生物の形態を取り得る。さらに、マトリックスは、播種された細胞、産生されるサイトカインまたは他の活性因子の徐放性放出を可能にするように設計され得る。特定の実施形態において、本発明のマトリックスは、可撓性かつ弾性であり、そして、物質(例えば、無機塩、水性流体および酸素を含む溶解されたガス状物質)に浸透し得る半固形足場として記載され得る。
【0144】
マトリックスは、生体適合性物質の例として本明細書中で使用される。しかし、本発明は、マトリックスに限定されず、従って、マトリックスという用語が現れる場合、これらの用語は、デバイス、および、細胞性保持または細胞性横断(traversal)が、生体適合性であり、そして、高分子の横断が、直接物質を介して、その結果物質自体が半透膜であるか、または特定の半透過性物質と組み合せて使用されるかのいずれかを可能にし得る他の物質を含むように読まれるべきである。
【0145】
本明細書中に参照される全ての参考文献は、その全体が参考として本明細書中に引用される。さらに、本明細書中で使用される全ての数値の範囲が、範囲内のあらゆる整数値を明確に含み、範囲内の特定の数値の選択が、特定の用途に依存して企図される。さらに、以下の実施例が例示として提供され、これは、限定を目的としない。
【実施例】
【0146】
(実施例1:T細胞刺激)
本明細書中に記載される特定の実験において、XCELLERATE ITMと呼ばれるプロセスを使用した。簡単には、このプロセスにおいて、XCELLERATEしたT細胞を、末梢血単核細胞(PBMC)アフェレーシス産物から製造する。患者の臨床部位からの収集後、PBMCアフェレーシスを洗浄し、次いで、「コートしていない」DYNABEADS(登録商標)M−450 Epoxyとインキュベートする。この時間の間、食細胞(例えば、単球)がビーズを摂取する。インキュベーション後、ビーズおよびビーズに接着している任意の単球/食細胞を取り除くために、細胞およびビーズをMaxSep Magnetic Separatorで処理する。この単球枯渇工程の後、合計5×10個のCD3T細胞を含む容量を取り、1.5×10個のDYNABEADS(登録商標)M−450 CD3/CD28 T Cell Expanderにセットアップし、XCELLERATETMプロセスを開始する(約3:1 ビーズ:T細胞)。次いで、細胞とDYNABEADS(登録商標)M−450 CD3/CD28 T Cell Expanderとの混合物を37℃、5% COで、約8日インキュベートし、第1の注入のためのXCELLERATE化T細胞を生成する。残った単球枯渇化PBMCを、第2またはさらなる細胞産物増大(約21日後)まで凍結保存し、約21日後にこれらを溶解し、洗浄し、次いで、合計5×10個のCD3T細胞を含む容量を取り、1.5×10個のDYNABEADS(登録商標)M−450 CD3/CD28 T Cell Expanderにセットアップし、第2の注入のためのXCELLERATETMプロセスを開始する。37℃、5%COでの約8日のインキュベーション期間の間、CD3T細胞を活性化および増大する。抗CD3 mAb(クローンBC3;XR−CD3)を、Fred Hutchinson Cancer Research Center(Seattle,WA)より得、抗CD28 mAb(クローンB−T3;XR−CD28)をDiaclone(
【0147】
【数4】

,France)より得る。
【0148】
XCELLERATE IITMと呼ばれる改変されたプロセスを用いて、上記のプロセスを、いくらか改変して使用し、ここで、単球枯渇工程は使用されず、特定のプロセスにおいて、ビーズとの最初の接触の前に細胞を凍結し、そして、さらなる濃縮および刺激を行った。このプロセスの1つのバージョンにおいて、T細胞をドナーまたは患者の循環血から、アフェレーシスにより得た。アフェレーシス産物の成分としては、代表的に、リンパ球、単球、顆粒球、B細胞、他の有核細胞(白血球)、赤血球および血小板が挙げられる。代表的なアフェレーシス産物は、1×1010〜2×1010個の有核細胞を含む。これらの細胞をカルシウム、マグネシウムを含まないリン酸緩衝生理食塩水で洗浄して、血漿タンパク質および血小板を取り除く。この洗浄工程を、細胞を遠心分離し、上清流体を取り除き、次いでPBSで置換することにより行った。このプロセスを、半自動「フロースルー」遠心分離機(COBE 2991 System,Gambro BCT,Lakewood,CO)を使用して達成した。細胞をそれらが処理される閉鎖系に維持する。
【0149】
細胞を、単球を含む非結合細胞を除き、(活性化細胞を富化し)、次いで刺激を続けることによりさらに処理し得る。あるいは、洗浄した細胞を、凍結、保存そして後に処理(これは、本明細書中に実証される)し、増大の強大さおよび顆粒球の枯渇を増加し得る。1つの実施例において、細胞を凍結するために、35mlの細胞懸濁物を35mlの凍結溶液とともに250mlのCryocyteTM凍結バッグ(Baxter)に入れる。35mlの細胞懸濁物は、代表的に、PBS中に3.5×10〜5.0×10細胞を含む。等量の凍結溶液(PBS中20% DMSOおよび8% ヒト血清アルブミン)を添加する。細胞は、50×10細胞/mlの最終濃度である。CryocyteTMバッグは、30〜70mlの範囲の容量を含み得、細胞濃度は、10×10〜200×10細胞/mlの範囲であり得る。一旦、CryocyteTMバッグを細胞および凍結溶液で充填すると、バッグを、制御された速度の冷凍庫に置き、そして、細胞を、−80℃まで毎分1℃ずつ下降して凍結する。次いで、凍結した細胞を、必要になるまで液体窒素保存システムに置く。
【0150】
細胞を液体窒素保存システムから取り出し、37℃で溶解する。DMSOを取り除くために、次いで、溶解した細胞を、カルシウム、マグネシウムを含まないPBSでCOBE 2991 Systemにて洗浄する。次いで、洗浄した細胞を80ミクロンのメッシュフィルターに通過する。
【0151】
溶解した細胞(約0.5×10個のCD3細胞)を、100mlのカルシウム、マグネシウムを含まないPBSを含むプラスチック製の1L Lifecellバッグに入れる。PBSは1%〜5%のヒト血清を含む。1.5x10個 3×28ビーズ(Dynabeads M−450 CD3/CD28 T Cell Expander)をまた、細胞とともにバッグに入れる(3:1 DYNABEADS M−450 CD3/CD28 T Cell Expander:CD3T細胞)。ビーズおよび細胞を室温、1RPM(end−over−end 回転)で、約30分間混合する。ビーズおよび細胞を含むバッグを、MaxSep Magnetic Separator(Nexell Therapeutics,Irvine,CA)に置く。バッグとMaxSepとの間に、プラスチック製のスペーサー(約6mm厚)を置く。(磁気強度を増すために、スペーサーが取り除かれ得る。)ビーズおよびビーズに接着するあらゆる細胞を磁石に保持し、一方で、PBSおよび未結合の細胞が吐き出される。
【0152】
3×28ビーズおよびビーズに結合させて濃縮した細胞を細胞培養培地(X−Vivo 15(BioWhittaker)を含む1リットル;50mlの熱で不活化したプールされたヒト血清、20mlの1M Hepes、10mlの 200mM L−グルタミンを含み、約100,000I.U.のIL−2を伴ってか伴わない)で、3LのLifecell培養バッグにリンスする。3×28ビーズおよび正に選択された細胞をLifecellバッグに移した後、バッグが1000mlを含むまで培養培地を添加する。細胞を含むバッグをインキュベーター(37℃および5% CO)に配置し、細胞を増大させ、必要に応じて細胞を継代する。
【0153】
T細胞の活性化および増大を、培養の3日後および8日後に細胞を回収することにより測定した。T細胞の活性化を、培養の3日目に、細胞のサイズ、細胞表面マーカー発現のレベル(特にCD25およびCD154の発現)を測定することにより評価した。8日目に、細胞をMaxSep磁石の上で重力下(約150ml/分)で浮遊させ、磁性粒子を取り除き、そして、細胞を、上記のCOBEデバイスを使用して洗浄および濃縮し、静脈内投与に適する平衡化電解質溶液(例えば、Plasma−Lyte A(登録商標)(Baxter−Healthcare))に再懸濁した。この点で、細胞をまた、適切な凍結溶液中で凍結し得る。
【0154】
記載されるように、XCELLERATE ITMは、刺激および濃縮を行わず、単球枯渇を刺激の前に行ったことを除いて、上記と同じ条件をいう。
【0155】
4人のドナー由来の単球枯渇PBMCを、3×28共役ビーズ(Dynabeads M−450 CD3/CD28 T Cell Expander)で刺激した。上清中のIL−2、IL−4、TNF−αおよびIFN−γの濃度をELISAで決定した。IL−4、TNF−αおよびIFN−γの濃度をまた、12日目に、細胞を新しいDynabeads M−450 CD3/CD28 T Cell Expanderで再播種(再刺激)した後に測定した。
【0156】
表1、表2および表3に示すように、IFN−γ、IL−4およびTNF−αの濃度を、XCELLERATETMおよび再刺激の間の種々の日に、ELISAにより測定した。
【0157】
(表1:XCELLERATETMプロセスの3日目およびXCELLERATETM活性化T細胞の再刺激の3日目のT細胞によるインターフェロン−γの産生)
【0158】
【表1】

3人のドナー由来の食細胞−枯渇PMBCを、Dynabeads M−450 Epoxy(Dynabeads CD3/CD28 T Cell Expander)(XCELLERATETM)に結合した抗CD3および抗CD28で刺激した。2日目に、上清中のIFN−γの濃度をELISAで決定した。12日目に、細胞をDynabeads M−450 Epoxy(再刺激)に結合した新しい抗CD3および抗CD28で再播種し、2日後にIFN−γの濃度を決定した。
【0159】
(表2:XCELLERATETMプロセスの2日目およびXCELLERATETM活性化T細胞の再刺激の2日目のT細胞によるIL−4の産生)
【0160】
【表2】

3人のドナー由来の食細胞−枯渇PMBCを、Dynabeads M−450 Epoxy(XCELLERATETM)に結合した抗CD3および抗CD28で刺激した。2日目および4日目に、上清中のIL−4の濃度をELISAで決定した。12日目に、細胞をDynabeads M−450 Epoxy(再刺激)に結合した新しい抗CD3および抗CD28で再播種し、2日後にIL−4の濃度を決定した。
【0161】
(表3:XCELLERATETMプロセスの2日目および4日目ならびにXCELLERATETM活性化T細胞の再刺激の2日目および4日目のT細胞によるTNF−αの産生)
【0162】
【表3】

4人のドナー由来の食細胞−枯渇PMBCを、Dynabeads M−450 Epoxyに結合した抗CD3および抗CD28で刺激した。2日目および4日目に、上清中のTNF−αの濃度をELISAで決定した。12日目に、細胞をDynabeads M−450 Epoxy(再刺激)に結合した新しい抗CD3および抗CD28で再播種し、2日後および4日後にTNF−αの濃度を決定した。
【0163】
Xcellerate化T細胞上のCDw137(41BB)、CD154(CD40L)およびCD25の発現レベルを、フローサイトメトリーーで分析し、平均蛍光をプロットした。CDw137(41BB)の発現レベルは増加し、4日目で最大になり、次いで、徐々に減少する。再刺激の後、CDw137の発現は急速に増加した。CD154の発現は、約7日まで徐々に増加し、次いで減少する。しかし、再刺激の後、CD154のレベルは、急速にかつ最初の刺激の間よりもより高いレベルまで増加する。CD25のレベルは、約3日まで徐々に増加し、次いで8日(分析した最後の時点)まで徐々に減少した。
【0164】
(実施例2:T細胞のスペクトル型分析)
この実施例は、XCELLERATETM法を用いる刺激の前後に、T細胞集団において発現されるTCRのクローン性を決定するためのスペクトル型分析の使用を記載する。
再構成されるVβ遺伝子の分析が、本明細書中に記載される。当業者は、Vα、VγおよびVδTCR遺伝子が同様の様式で分析され得ることを容易に認識する。
【0165】
米国特許第5,837,447号ならびにC.Ferrandら、(C.Ferrand,E.Robinet,Emmanuel Contassot,J−M Certoux,Annick Lim,P.Herve,およびP.Tiberghien.Human Gene Therapy 11:1151〜1164,2000)に本質的に記載されるように、スペクトル型分析を実施した。簡単には、開始細胞験濁物は、PBMC、細胞株、CD8+細胞を枯渇させたPBMCおよび/またはXCELLERATE化T細胞であった。Trizol(Gibo−BRL)を用いて総RNAを単離し、2μgを、標準のcDNA合成反応にてランダムヘキサマー(Pharmacia Biotech)で逆転写した。
【0166】
各TCR BVセグメントを、以前に記載されるように(Puisieuxら、1994,J Immunol.153,2807〜2818;Pannetierら、1995,Immunol.Today 16:176〜181)、24中1のTCR BVサブファミリー特異的プライマー、およびTCRのβ鎖の2つの定常領域(Cβ1およびCβ2)を認識するCpプライマーを用いて増幅した。Cβプライマーは、6−Fam蛍光色素(Gibco−BRL)に結合した。定量分析について、cDNAを内部標準(PTZ−δCD3プラスミド)と同時に増幅した。
【0167】
cDNA合成反応物のアリコートを、サーマルサイクラー(thermocycler)にて、24中1のTCRBVオリゴヌクレオチドおよび非標識化Cβプライマーを用いて25μl反応系で増幅させた。
【0168】
(TCRBV転写物サイズパターンのPCR増幅)
cDNA合成反応物のアリコート(85ngの総RNAに対応する)をサーマルサイクラー(PTC−200;MJ Research,Watertown,MA)にて、24中1のTCRBVオリゴヌクレオチドおよび非標識化Cβプライマーを用いて25μlの反応系で増幅した。各反応系は、1×Taqポリメラーゼ緩衝液(Promega,Charbonniere,France)、1.5mMのMgCl、0.2μM濃度の各dNTP、0.5μM濃度の各プライマーおよび0.5UのTaqポリメラーゼ(Promega)を含んだ。以下のプログラムを使用して、PCRを飽和で(at saturation)行った:前変性(94℃で3分間);変性(94℃で25秒)、アニーリング(60℃で45秒)および重合(72℃で45秒)の40サイクル;その後に最終伸長(72℃で5分間)。増幅および起こり得る混入をチェックするために、いくつかのTCRBV/CβPCR産物について、2%アガロースでの電気泳動を実施し、このアッセイにはネガティブコントロール(cDNAが存在しない)が含まれた。24のTCRBV/Cβ−40サイクルPCR産物の各々の2μlを、Cβ蛍光プライマーが10μl中0.1μMの最終濃度であった以外は、同じ条件下で、2サイクルの伸長(流出)に供した。
【0169】
(細胞集団におけるTCRBVサブファミリー発現の定量)
(競合δCD3 PCR)
各サンプルについて、段階希釈した所定の量のDNAプラスミド(4bpを欠失したδCD3鎖)(1011〜10コピーの範囲の競合物)を添加することにより、合成cDNAを増幅した(Garderetら、1998)。最適な滴定点を、PCR産物が標準cDNAとネイティブcDNAとが匹敵する強度の信号を得る、標準の濃度として規定した。簡単には、δCD3 PCRを、1×Taqポリメラーゼ緩衝液(Promega)、1.5mMのMgCl、0.2μM濃度の各dNTP、0.5μM濃度の各プライマーおよび0.5UのTaqポリメラーゼ(Promega)を用いて、25μl反応系にて行った。以下のプログラムを使用して、PCRを飽和で行った:前変性(94℃で3分間);変性(94℃で1分間)、アニーリング(60℃で1分間)および重合(72℃で45秒)の40サイクル;その後に最終伸長(72℃で5分間)。第1のPCRの2μlを、3’δCD3蛍光プライマーが10μl容積中0.1μMの最終濃度であった以外は、同じ条件下での2サイクルの伸長の間、染色した。蛍光PCR産物を、変性6%アクリルアミドゲルで分離し、Genescanバージョン1.2.1を備える自動化DNAシーケンサー(Applied Biosystems,Foster City,CA)分析ソフトウェアで分析した。
【0170】
(定量的TCRBV/Cβ PCR)
全レパートリー中のTCRBVサブファミリー発現を定量化するために、cDNA(δCD3 RNAの5×10コピーに対応する)から、各TCRBVサブファミリープライマーについて、0.1μMの濃度でCβ蛍光プライマーを使用する以外は、40増幅サイクルについて記載されたものと同じ条件下で、直鎖状段階のPCR(26〜28サイクル)の間、24のTCRBV/Cβ反応(15μl)を行った。全レパートリー中のTCRBV発現について、各TCRBVサブファミリーの相対的な割合を、TCRBVサブファミリーの全ピークの和を、全TCRBVサブファミリーの和で割ることによって算出した。δCD3コピーの最初の数が全てのTCRBV PCRにおいて等価であったので、全てのサンプルは、互いに匹敵した。
【0171】
(電気泳動およびCDR3フラグメントのサイズ分析)
40サイクルおよび26〜28サイクルの、両方のPCR増幅の反応物を等量(それぞれ10または15μl)の20mM EDTA−脱イオン化ホルムアミドと混合し、Rox−1000サイズ標準(Applied Biosystems)を分子量マーカーとして使用した。容量2.5μlの混合物を24cmの6%アクリルアミド配列決定ゲルにロードし、自動化373A DNAシーケンサー(Applied Biosystems)で、Immunoscopeソフトウェアを用いてサイズおよび蛍光強度の決定について分析した。
【0172】
この技術を用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)産物の長さは、エキソヌクレアーゼ活性と結合領域の末端トランスフェラーゼによるNヌクレオチドの付加とのバランスと共に、結合(J)遺伝子セグメントおよび多様性(D)遺伝子セグメントの使用に依存して、インプットTCR RNAのCDR3の長さに反映される。インフレーム転写物に対応するピークが検出される。優性のピークの出現は、オリゴクローン性またはクローン性のT細胞集団の存在を示唆し、一方で、ピークまたは完全なサブファミリーのスペクトル型の非存在は、それぞれ、所定のCDR3の長さまたはVβサブファミリーのT細胞の非存在あるいは、増大性のTCR遺伝子再配列を伴うT細胞のTCR転写物の非存在を示唆する。
【0173】
図2に示すように、T細胞レパートリーを、XCELLERATETMプロセスを使用して、T細胞がOKT3/IL−2を用いて活性化される場合に見られるレパートリーの歪みと比較して維持した。B−CLLの患者由来のT細胞を、XCELLERATETM活性化プロセスの前後に分析した。図3(特に、4列目のパネル、Vβ4、Vβ9、Vβ15およびVβ22)に示すように、B−CLLを有する患者は、歪んだT細胞レパートリーを示す(すなわち、T細胞を発現する多数のVβファミリー遺伝子(Vβ4、Vβ9、Vβ11、Vβ13、Vβ14、Vβ15およびVβ22が挙げられる)に対する減少したポリクローン性を示す)。XCELLERATETMプロセスの12日目のT細胞のスペクトル型分析は、これらのT細胞のポリクローン性の回復を示す。
【0174】
図4は、Gorochov分析(G.Gorochovら、Nat.Med,4:215〜221,1998)を使用して、XCELLERATETM増大の前後に、各ドナーについてのレパートリー「混乱(perturbation)」の総レベルを合算した値に帰する。図4aは、小規模のXCELLERATETM増大の前後に8人の異なるB−CLLドナーから得られた値を示し、一方で、図4bは、臨床規模のXCELLERATETM増大の前後に5人の異なるドナーから得られた値を示す。1人のドナーを除いて、すでに歪んでいるレパートリーがより歪む場合、初期的な歪みを有した全ての他のドナーは、規格化に向かっていった(ガウス分布)。分析した13サンプル中8つが、高いレベルのレパートリー混乱から標準のレベルに戻った。13サンプル中1つが混乱の減少を示したが、標準とみなされるレベルまでではなく、そして、開始時に歪んでいなかった3人のドナーサンプルが増大プロセスの間中、正規分布を維持した。
【0175】
TCR Vβの使用はまた、異なるVβファミリーのメンバーに特異的な抗体を使用して、標準の技術を用いるフローサイトメトリーーにより、種々のTCR Vβファミリーの表面発現を分析することで試験された。図5aおよび5bに示すように、細胞表面に代表的なTCR Vβファミリータンパク質(Vβ1、Vβ2、Vβ5、Vβ8、Vβ14、Vβ17およびVβ21.3)を発現したCD4 T細胞およびCD8 T細胞の割合を決定した。2人の正常なドナーから単離したT細胞と2人のCLLドナーから単離したT細胞を分析した。B−CLLサンプルの場合、プロットは、XCELLERATETMパターンの前後を示す。これらのデータより、B−CLLサンプルの各々は、特に、CD8集団の中で、特定のVβファミリーの過剰提示および過少提示の両方を示すことが明らかである。例えば、活性化および増大の前に、CD8 T細胞集団の中で、CLLドナー1は、Vβ2発現T細胞およびVβ21.3発現T細胞の非常に高い割合を有する一方、CLLドナー2は、Vβ14発現T細胞の非常に高い割合を有する。対照的に、これらの同じ2つのドナーは、ドナー1についてVβ5、Vβ8、Vβ14発現の、およびドナー2についてVβ1、Vβ2、Vβ8の極端に低い割合を示す。スペクトル型研究における観察と同様に、XCELLERATETMプロセスを経た増大の後、これらの割合は、より正常なレベルになる傾向があり、過剰発現の割合は低下し、そして、Vβの過少提示の割合は上昇する。
【0176】
白血病性B細胞に特異性を有するT細胞の頻度を評価するために、XCELLERATEDTMT細胞と自己白血病性B細胞標的とを混合することにより、インターフェロンγ(IFNγ)ELISPOT分析を実施した。表4に示されるように、腫瘍特異的T細胞は、1:167〜1:2,500の範囲で検出可能であった。XCELLERATEDTM前の頻度は、1:10,000未満(感受性の限界)であり、腫瘍特異的T細胞が選択的に数を増幅したか、またはよりおそらくは、腫瘍特異的T細胞が、活性化および発現の前にアネルギー性であり、そして、XCELLERATEDTMプロセスは、応答性を回復したことを示した。報告された腫瘍応答性T細胞の頻度は、CLL刺激細胞の非存在下でのIFNγ陽性細胞のバックグラウンド頻度の減算を示す。
【0177】
(表4:XCELLERATEDTM増大後の腫瘍応答性T細胞の頻度)
【0178】
【表4】

表4.14の小規模発現および2の大規模発現からの13/16のXcellerate化T細胞を、ELISPOTにより抗腫瘍特異的T細胞の頻度について評価した。組織は、13人の異なるドナーから得た。
【0179】
従って、本明細書中に示されるように、TCR発現を減少し、従って抗原に対する応答性を回復し得るだけでなく、免疫応答の幅が個々のT細胞のエキソビボXcellerationにより広がり得る。XCELLERATEDTMプロセスを使用して、T細胞のポリクローン性を維持または回復し得る。ポリクローン性が増加した本発明のエクセラレイト化T細胞は、予防的手段としてかまたは存在する病気(例えば、B−CLL)の処置のために使用され得る。従って、このプロセスを使用して産生された活性化T細胞または増大したT細胞は、免疫無防備状態の個体における免疫応答性を回復するのに使用され得る。
【0180】
(実施例3:エクセラレイトプロセスは、移植片骨髄腫(transplanted myeloma)患者におけるリンパ球の回復を改善する)
この実施例は、多発性骨髄腫を有する患者の予備的な臨床試験からのデータを記載し、エクセラレイト化T細胞が移植片骨髄腫患者における回復を改善することを示す。
【0181】
XCELLERATE IIプロセスを、本質的には実施例1に記載するように、臨床試験に登録した後、幹細胞の回収の前に、患者から回収した白血病化(leukapheresed)細胞について行った。Xcellerate化T細胞を、幹細胞注入の+3日後に注入した。図6に示されるように、XCELLERATETMプロセスは、移植片骨髄腫患者のリンパ球回復を改善する。さらに、CD4およびCD8の両方のT細胞が、Xcellerate化T細胞の注入後に増加した。
【0182】
従って、この臨床データは、Xcellerate化T細胞が、移植片骨髄腫患者の回復を改善することを示し、本明細書中に記載されるT細胞組成物がドナーに注入され、広範かつ潜在的な免疫防御を提供し得るという概念を支持する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞集団のポリクローン性を回復する方法であって、該方法は以下:
(a)少なくとも細胞集団の一部がT細胞を含む細胞集団を提供する工程;
(b)該細胞集団を、該T細胞の少なくとも一部の細胞表面部分に連結し、かつ該T細胞の少なくとも一部を刺激する1つ以上の試薬に曝露する工程であって、ここで、該1つ以上の試薬への該細胞の曝露は、ポリクローン性を増加させるのに十分な時間であり、それにより該T細胞集団のポリクローン性を回復する工程
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、ここで前記回復は、以下:
(a)モノクローン性からオリゴクローン性へのシフト;
(b)モノクローン性からポリクローン性へのシフト;および
(c)オリゴクローン性からポリクローン性へのシフト;
からなる群から選択されるシフトを含み、ここで該シフトは、Vβ、Vα、VγまたはVδファミリー遺伝子の少なくとも1つのVβ、Vα、VγまたはVδスペクトル型プロフィールにより測定される前記細胞集団のシフトを含む、方法。
【請求項3】
前記シフトが、Vβ、Vα、VγまたはVδファミリー遺伝子の少なくとも1つを発現するポリクローナルT細胞の、治療における使用に十分な数への増加を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の試薬が表面に結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、ここで、前記表面がT細胞の第1表面部分に連結する第1の試薬に結合され;該第1または第2の表面が該T細胞の第2の部分に連結する第2の試薬に結合され、ここで、該第1および第2の試薬による該連結が、該T細胞の増大を誘導する、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、ここで、前記第1の試薬が抗CD3抗体を含み、かつ前記第2の試薬が前記T細胞の表面上の補助分子に結合するリガンドを含む、方法。
【請求項7】
前記補助分子がCD28である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の試薬が抗CD3抗体を含み、かつ前記第2の試薬が抗CD28抗体を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記第1および第2の試薬が、前記表面または前記第2の表面に共有結合により結合される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記第1および第2の試薬が、前記表面または前記第2の表面に直接結合により結合される、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記第1および第2の試薬が、前記表面または前記第2の表面に間接結合により結合される、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
免疫無防備状態の個体における免疫応答性を回復する方法であって、該方法は以下:
(a)該個体由来の細胞集団を獲得する工程であって、少なくともその一部がT細胞を含む、工程;
(b)該細胞集団を1つ以上の試薬に曝露する工程であって、該1つ以上の試薬は該T細胞の少なくとも一部の細胞表面に連結し、かつ該T細胞の少なくとも一部を刺激し、ここで、該1つ以上の試薬への該細胞の曝露が、ポリクローン性を増加するのに十分な時間である、工程;
(c)該免疫無防備状態の個体に該刺激された一部のT細胞を投与する工程であって:
それによって該免疫無防備状態の個体における免疫応答性を回復する、工程
を包含する、方法。
【請求項13】
前記1つ以上の試薬が表面に結合される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、ここで前記表面が、T細胞の第1の細胞表面部分に結合する第1の試薬に結合され;該第1または第2の表面が該T細胞の第2の部分に結合する第2の試薬に結合され、ここで、該第1および第2の試薬による該結合が、該T細胞の増大を誘導する、方法。
【請求項15】
前記投与されるT細胞のポリクローン性が、投与後少なくとも3ヶ月間インビボで維持される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記投与されるT細胞のポリクローン性が、投与後少なくとも6ヶ月間インビボで維持される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記投与されるT細胞のポリクローン性が、投与後少なくとも1年間インビボで維持される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記免疫を有する個体が癌を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、ここで前記癌が以下:
黒色腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、上咽頭癌、白血病、形質細胞腫、肉腫、神経膠腫、胸腺腫、乳癌、前立腺癌、直腸結腸癌、腎臓癌、腎細胞癌、膵臓癌、食道癌、脳腫瘍、肺癌、卵巣癌、子宮頚癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、巨顆粒リンパ球白血病(LGL)および慢性リンパ性白血病(CLL)
からなる群から選択される、方法。
【請求項20】
前記癌がB細胞性慢性リンパ性白血病である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記免疫無防備状態の個体がウイルスに感染している、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、ここでウイルスが:
1本鎖RNAウイルス、1本鎖DNAウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、またはC型肝炎ウイルス、単純疱疹ウイルス(HSV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、サイトメガロウイルス(CMV)およびエプスタイン−バーウイルス(EBV)
からなる群から選択される、方法。
【請求項23】
前記免疫無防備状態の個体が、先天性遺伝障害を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項24】
前記免疫無防備状態の個体が、腎臓、肝臓または膵臓に影響する慢性疾患を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項25】
前記免疫無防備状態の個体が、加齢に関連する免疫不全を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項26】
前記免疫無防備状態の個体が、自己免疫疾患に罹患している、請求項12に記載の方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、ここで前記自己免疫疾患が、以下:
慢性関節リウマチ、多発性硬化症、インシュリン依存性糖尿病、アジソン病、セリマック病、慢性疲労症候群、炎症性腸疾患、潰瘍性結腸炎、クローン病、線維筋痛症、全身性エリテマトーデス、乾癬、シェーグレン症候群、甲状腺機能亢進症/グレーブス病、甲状腺機能低下症/橋本病、インシュリン依存性糖尿病(1型)および重症筋無力症
からなる群から選択される、方法。
【請求項28】
前記免疫無防備状態の個体が、化学療法で処置されている、請求項12に記載の方法。
【請求項29】
前記免疫無防備状態の個体が細胞傷害性剤で処置されている、請求項12に記載の方法。
【請求項30】
前記免疫無防備状態の個体が免疫抑制剤で処置されている、請求項12に記載の方法。
【請求項31】
前記免疫無防備状態の個体が、細胞減少症に関する血液障害に罹患している、請求項12に記載の方法。
【請求項32】
前記障害が、再生不良性貧血、骨髄異型性症候群、ファンコニ貧血、特発性血小板減少性紫斑病および自己免疫性溶血性貧血からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
T細胞集団と、免疫無防備状態の個体における免疫応答性を回復するのに使用するための薬学的に受容可能な賦形剤とを含有する組成物であって、ここで、該T細胞集団の前記ポリクローン性が請求項1に従って回復し、そして、該個体のT細胞が免疫障害を有さない個体と比較してポリクローン性を減少している、組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−36264(P2011−36264A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226115(P2010−226115)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【分割の表示】特願2003−566523(P2003−566523)の分割
【原出願日】平成15年2月7日(2003.2.7)
【出願人】(502221282)ライフ テクノロジーズ コーポレーション (113)
【Fターム(参考)】