説明

免疫応答の調節

インビボおよびインビトロで調節性T細胞(Treg)の産生を調節する化合物、すなわち、Foxp3の発現を増大または低減する転写因子に作用する化合物を特定するための方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2007年11月20日付で出願された米国特許仮出願第60/989,309号、および2008年3月21日付で出願された同第61/070,410号の恩典を主張するものであり、それらの全内容が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発
本発明は、国立衛生研究所から授与された助成金番号AI435801、AI043458およびNS38037の下で政府支援により行われた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
本発明は、インビボおよびインビトロで調節性T細胞(Treg)の数および/または活性を増大するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
調節性T細胞(Treg)は免疫系の自己反応性成分を制御する。その結果、Treg機能不全は重篤な自己免疫に結び付けられるので、Tregの数または活性を増大する化合物は、多発性硬化症などの自己免疫障害の処置において有用であるものと期待される。
【0005】
Treg細胞は、病原性自己免疫の制御に関わる特殊化したT細胞サブセットである(Sakaguchi et al., Ann. Rev. Immunol., 22:531-562, 2004(非特許文献1)。免疫調節のためのTregの重要性は、抗体でのTreg枯渇から(Sakaguchi et al., J. Immunol. 155, 1151-64 (1995)(非特許文献2)); 3日齢の新生仔の胸腺摘出の結果として(Sakaguchi et al., J Exp Med. 156, 1565-76 (1982))(非特許文献3); またはジフテリア毒素受容体のTreg限定発現を有するトランスジェニックマウスにおけるジフテリア毒素での処理から(Kim et al., Nat Immunol. 8, 191-7 (2007)(非特許文献4))生ずる免疫障害によって浮き彫りにされている。さらに、多発性硬化症(Viglietta et al., J. Exp. Med. 199, 971-9 (2004)(非特許文献5))、関節リウマチ(Ehrenstein et al., J Exp Med. 200, 277-85 (2004)(非特許文献6))、糖尿病(Brusko et al., Diabetes. 54, 1407-14 (2005)(非特許文献7); Lindley et al., Diabetes. 54, 92-9 (2005)(非特許文献8))および狼瘡(Mudd et al., Scand. J. Immunol. 64(3):211-218 (2006)(非特許文献9))などのいくつかの自己免疫疾患においてTregの欠損が報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Sakaguchi et al., Ann. Rev. Immunol., 22:531-562, 2004
【非特許文献2】Sakaguchi et al., J. Immunol. 155, 1151-64 (1995)
【非特許文献3】Sakaguchi et al., J Exp Med. 156, 1565-76 (1982)
【非特許文献4】Kim et al., Nat Immunol. 8, 191-7 (2007)
【非特許文献5】Viglietta et al., J. Exp. Med. 199, 971-9 (2004)
【非特許文献6】Ehrenstein et al., J Exp Med. 200, 277-85 (2004)
【非特許文献7】Brusko et al., Diabetes. 54, 1407-14 (2005)
【非特許文献8】Lindley et al., Diabetes. 54, 92-9 (2005)
【非特許文献9】Mudd et al., Scand. J. Immunol. 64(3):211-218 (2006)
【発明の概要】
【0007】
概要
本発明は、少なくとも一つには、Foxp3遺伝子の発現および/または活性を調節できる(例えば、増大または低減できる)転写因子が治療的免疫調節の有用な標的を与えるという発見に基づいている。したがって、本発明は、とりわけ、免疫応答の異常(例えば、自己免疫)または免疫応答の不在(例えば不十分な免疫応答などの)によって引き起こされる疾患の予防または処置のための組成物および方法を提供する。
【0008】
一つの局面において、本発明は、生体適合性ナノ粒子に連結された、アリール炭化水素受容体(AHR)転写因子に特異的に結合するリガンドを含む組成物を特徴とする。リガンドは、例えば、AHRとの結合について競合的に2,3,7,8テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(TCDD)と競合しかつAHR依存的なシグナル伝達を活性化する小分子であり得る。いくつかの態様において、リガンドは、2,3,7,8テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(TCDD)、トリプタミン(TA)、2-(1'H-インドール-3'-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE)または6-ホルミルインドロ[3,2-b]カルバゾール(FICZ)である。
【0009】
いくつかの態様において、該組成物は同様に、リガンド分解の阻害剤、例えば、トラニルシプロミンなどのモノアミンオキシダーゼ阻害剤を含む。阻害剤は同じナノ粒子上に存在しても(すなわち、連結されても)、(同じもしくは異なる種の)異なるナノ粒子に連結されても、または溶液中で遊離していてもよい。いくつかの態様において、本明細書において記載する方法および組成物は、どちらもナノ粒子に連結されていない、アリール炭化水素受容体(AHR)転写因子に特異的に結合するリガンド、ならびにその分解阻害剤、例えば、トリプタミンおよびトラニルシプロミンの使用を含む。
【0010】
いくつかの態様において、該組成物は同様に、T細胞、B細胞、樹状細胞またはマクロファージ上に存在する抗原に選択的に結合する抗体を含む。抗体は同じナノ粒子上に存在しても(すなわち、連結されても)、(同じもしくは異なる種の)異なるナノ粒子に連結されてもまたは溶液中で遊離していてもよい。
【0011】
さらなる局面において、本発明は、T細胞の集団中のCD4/CD25/Foxp3を発現するT調節性(Treg)細胞の数または活性を増大するための方法を特徴とする。該方法は、生体適合性ナノ粒子に連結された、2,3,7,8テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(TCDD)、トリプタミン(TA)および2-(1'H-インドール-3'-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE)からなる群より選択される一種または複数種のAHRリガンドを含む組成物の十分な量と細胞の集団を接触させる段階、ならびに任意で集団中のCD4/CD25/Foxp3を発現する細胞の存在および/または数を評価する段階を含む。該方法は、調節性T細胞(Treg)の数および/または活性の増大をもたらす。
【0012】
いくつかの態様において、T細胞の初期集団はナイーブT細胞またはCD4+CD62リガンド+ T細胞の一方または両方を含む。T細胞の集団は、すなわち、インビトロにおいて、または生きている哺乳動物対象、例えば、自己免疫障害、例えば、多発性硬化症を有する対象において単離することができる。T細胞が生きている対象内にある態様において、該方法は、一種または複数種のリガンドを経口的に、粘膜にまたは静脈内に投与する段階を含むことができる。
【0013】
いくつかの態様において、本明細書において記載する方法を用いて産生または活性化されたTreg細胞は、自己免疫障害に罹患した対象に、障害の症状を改善または寛解させるのに十分な量で投与される。
【0014】
本明細書において同様に提供されるのは、調節性T細胞(Treg)の産生または活性を増大する候補化合物を特定するための方法である。該方法は、レポーター遺伝子、例えばルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質およびそれらの変種からなる群より選択されるレポーター遺伝子に機能的に連結された、哺乳動物Foxp3プロモーター配列中のアリール炭化水素受容体(AHR)に対する結合配列を含むレポーター構築物を発現する細胞を提供する段階; 細胞を試験化合物と接触させる段階; ならびにレポーター遺伝子の発現に及ぼす試験化合物の作用を評価する段階を含む。レポーター遺伝子の発現を増大または低減する試験化合物は、Tregの産生を調節する候補化合物である。
【0015】
該方法は任意で、TCDD、トリプタミンおよび(ITE)からなる群より選択される公知のAHRリガンド、またはそれらと競合的にAHRに結合する化合物の存在下でレポーター構築物の発現を測定する段階; 候補化合物がAHRとの結合について公知の化合物と競合するかどうかを判定する段階; ならびに候補化合物が公知の化合物と競合的にAHRに結合する場合、その候補化合物を選択する段階を含んでもよい。
【0016】
一つの局面において、本発明は、調節性T細胞(Treg)の産生を調節する候補化合物を特定する方法を提供する。これらの方法は、レポーター遺伝子に機能的に連結された転写因子に対する結合配列を含むレポーター構築物を発現する細胞を提供する段階を含む。レポーター構築物に含めるのに適した結合配列は、NKX22、AHR、EGR1、EGR2、EGR3、NGFICおよびDelta EF1を含む。次いで細胞を試験化合物と接触させ、レポーター遺伝子の発現に及ぼす試験化合物の作用を評価する。レポーター遺伝子の発現を増大または低減する試験化合物は、Tregの産生を調節する候補化合物である。
【0017】
別の局面において、本発明は、調節性T細胞(Treg)の産生を調節する候補化合物を特定する方法を提供する。これらの方法は、例えば産卵から30分後の生存しているゼブラフィッシュ、例えばゼブラフィッシュ胚を提供する段階; 例えば、ゼブラフィッシュが生存している水の中に試験化合物を入れることによりまたは化合物を胚に微量注入することにより、ゼブラフィッシュを試験化合物と接触させる段階; およびゼブラフィッシュにおけるFoxp3発現に及ぼす試験化合物の作用を評価する段階を含み、ゼブラフィッシュにおけるFox-3の発現を増大または低減する試験化合物は、Tregの産生を調節する候補化合物である。
【0018】
さらなる局面において、本発明は、Foxp3遺伝子の発現増大、活性増大またはその両方を促進できる転写因子リガンドを含む組成物を提供する。
【0019】
別の局面において、本発明は、T細胞の集団中のTregの数を増大するための方法を提供する。これらの方法は、例えば2,3,7,8テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(TCDD)、トリプタミン(TA)および2-(1'H-インドール-3'-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE)からなる群より選択される、一種または複数種の転写因子リガンドと細胞を接触させる段階を含み、該方法によって調節性T細胞(Treg)の数および/または活性の増大が起こる。いくつかの態様において、該方法は細胞におけるFoxp3発現のレベルを判定する段階を含む。
【0020】
さらなる局面において、本発明は、患者においてTregの数を増大するための方法を提供する。これらの方法は、処置のために選択された患者に一種または複数種の転写因子リガンド、例えば、2,3,7,8テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(TCDD)、トリプタミン(TA)および/または2-(1'H-インドール-3'-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE)を投与する段階を含み、該方法によって調節性T細胞(Treg)の数および/または活性の増大が起こる。
【0021】
本明細書において用いられる場合、「処置」は、疾患または障害の症状の一つまたは複数が寛解されるか、または他に有利な形で変えられる任意の様式を意味する。本明細書において用いられる場合、特定の障害の症状の寛解は、恒久的または一時的、永続的または一過的にせよ、本発明の組成物および方法による処置に起因または関連しうる症状の任意の緩和をいう。
【0022】
「有効な量」および「処置するのに有効な」という用語は、本明細書において用いられる場合、意図した効果または生理的転帰を生じるためのその投与という関連の中で有効な、ある期間(急性または慢性投与および定期的または持続的投与を含む)に利用される本明細書において記載の組成物の一つまたは複数の量または濃度をいう。
【0023】
「患者」という用語は、本発明の方法による処置が提供される、動物、ヒトまたは非ヒト、げっ歯類または非げっ歯類を説明するために本明細書を通じて用いられる。獣医学的または非獣医学的な適用が企図される。この用語は、哺乳動物、例えば、ヒト、他の霊長類、ブタ、マウスおよびラットのようなげっ歯類、ウサギ、モルモット、ハムスター、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、ヒツジおよびヤギを含むが、これらに限定されることはない。典型的な患者は、ヒト、家畜、ならびにネコおよびイヌのような家庭内ペットを含む。
【0024】
遺伝子という用語は、本明細書において用いられる場合、単離されたまたは精製された遺伝子をいう。「単離された」または「精製された」という用語は、核酸分子または遺伝子に適用される場合、核酸分子の天然源の中に存在する他の核酸を含め、他の材料から分離されている核酸分子を含む。mRNAまたはcDNA分子などの「単離された」核酸分子は、他の細胞材料、または組み換え技術によって産生される場合には培地を実質的に含まない、あるいは化学的に合成される場合には化学的前駆物質もしくは他の化学物質を実質的に含まないものとすることができる。
【0025】
「単離された」または「精製された」ポリペプチド、ペプチドまたはタンパク質は、タンパク質が得られる細胞源または組織源由来の細胞材料または他の夾雑タンパク質を実質的に含まない、あるいは化学的に合成される場合には化学的前駆物質または他の化学物質を実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、選択タンパク質の調製物が、乾燥重量で約30%未満(例えば、20%、10%または5%未満)の非選択タンパク質または化学的前駆物質を有することを意味する。そのような非選択タンパク質は、本明細書において「夾雑タンパク質」ともいわれる。単離された治療用タンパク質、ペプチドまたはポリペプチドが組み換えにより産生される場合、それは培地を実質的に含まないものとすることができ、すなわち、培地は、タンパク質調節物の容量の約20%未満(例えば、約10%または5%未満)に相当する。本発明は、乾燥重量で少なくとも0.01、0.1、1.0、および10ミリグラムの単離されたまたは精製された調製物を含む。
【0026】
他に定義されない限り、本明細書において用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。方法および材料は、本発明で用いるために本明細書において記載されており; 当技術分野において公知の他の適当な方法および材料を用いることもできる。材料、方法および実施例は例証にすぎず、限定を意図するものではない。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベース登録、および他の参考文献は、その全体が参照により組み入れられる。矛盾する場合には、定義を含め、本明細書が優先されよう。
【0027】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な記載および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A】IFA中MTまたはPBSでの免疫から14日後の、6ヶ月齢ゼブラフィッシュ由来の脾細胞のMTまたはConAに対する増殖応答の棒グラフである。結果は三つ組の平均cpm + s.d.として示されている。
【図1B】リアルタイムPCRにより測定したときの、CFA中ゼブラフィッシュ脳ホモジネート(zCNS)またはPBSでの免疫から14日または28日の6ヶ月齢ゼブラフィッシュにおけるCD3 (1B)、IL-17 (1C)およびIFNg (1D)の発現の棒グラフである(三つ組の平均 + s.d.)。
【図1C】リアルタイムPCRにより測定したときの、CFA中ゼブラフィッシュ脳ホモジネート(zCNS)またはPBSでの免疫から14日または28日の6ヶ月齢ゼブラフィッシュにおけるCD3 (1B)、IL-17 (1C)およびIFNg (1D)の発現の棒グラフである(三つ組の平均 + s.d.)。
【図1D】リアルタイムPCRにより測定したときの、CFA中ゼブラフィッシュ脳ホモジネート(zCNS)またはPBSでの免疫から14日または28日の6ヶ月齢ゼブラフィッシュにおけるCD3 (1B)、IL-17 (1C)およびIFNg (1D)の発現の棒グラフである(三つ組の平均 + s.d.)。
【図1E】ゼブラフィッシュ、ヒトおよびマウスの推定上のFoxP3遺伝子の配列比較である。星印は同一性を示し、最適なアライメントのためにダッシュ記号を導入した。亜鉛フィンガー、ロイシンジッパーおよびフォークヘッド・ドメインは、それぞれ、青色、緑色または赤色の囲みで強調されている。
【図1F】His標識zFoxp3およびウミシイタケ標識Foxp3をコードする構築物をコトランスフェクトした293T細胞におけるzFoxp3発現の棒グラフである。結果は沈殿前のルシフェラーゼの総量に対して規準化されている(三つ組の平均 + s.d.)。
【図1G】哺乳動物および魚類におけるFoxp1、Foxp2、Foxp3およびFoxp4タンパク質を示す放射状の遺伝子系統樹である。図中カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)のFoxp配列は外集団である。枝の長さは配列間の距離に比例している。Mm、マウス(Mus musculus); Hs、ヒト(Homo sapiens); Dr、ゼブラダニオ(Danio rerio); Ga、イトヨ(Gasterosteus aculeatus) (トゲウオ); Ci、カタユウレイボヤ。
【図2A】zFoxp3をコードするベクター、Foxp3をコードするベクターまたは対照(空のベクター)の存在下で、NF-κBまたはNFAT応答性プロモーターの制御下のルシフェラーゼをコードするレポーター構築物、およびp65 NF-κB (上グラフ)またはNFAT (下グラフ)をコトランスフェクトした293T細胞の棒グラフの対である。コトランスフェクトした対照のウミシイタケ活性に対してルシフェラーゼ活性を規準化した(三つ組の平均 + s.d.)。
【図2B】Hisタグ付きzFoxp3、Foxp3およびNF-κB (上グラフ)またはHAフラッグNFAT (下グラフ)をコトランスフェクトし、His抗体に対する抗体で免疫沈降した293T細胞のウエスタンブロットの対である。沈降物をPAGE-SDSによって分離し、NF-κBまたはHA抗体に対する抗体でのウエスタンブロットによって検出した。
【図2C】GFPおよびzFoxp3をコードする2シストロン性のレトロウイルスまたは空の対照レトロウイルスで形質導入したMACS精製CD4+CD25- T細胞の4グラフのセットであり、(左から右に) CD25、GITR、CD152およびCD4の表面発現についてGFP+集団を解析した。
【図2D】図2D(i)〜(iii)は、GFPおよびzFoxp3、Foxp3をコードする2シストロン性のレトロウイルスまたは空の対照レトロウイルスで形質導入したMACS精製CD4+CD25- T細胞の棒グラフである。GFP+集団を、プレートに結合されたCD3に対する抗体での活性化時のその増殖、IL-2およびIFNg分泌(三つ組のウェルにおける平均cpmまたはpg/ml + s.d.)について、ならびに(e) プレートに結合されたCD3に対する抗体で活性化されたマウスCD4+CD25- T細胞の増殖かつIL-2およびIFNg分泌に及ぼすその抑制活性(三つ組のウェルにおける平均cpmまたはpg/ml + s.d.)について解析した。
【図2E】図2E(i)〜(iii)は、GFPおよびzFoxp3、Foxp3をコードする2シストロン性のレトロウイルスまたは空の対照レトロウイルスで形質導入したMACS精製CD4+CD25- T細胞の棒グラフである。GFP+集団を、プレートに結合されたCD3に対する抗体での活性化時のその増殖、IL-2およびIFNg分泌(三つ組のウェルにおける平均cpmまたはpg/ml + s.d.)について、ならびに(e) プレートに結合されたCD3に対する抗体で活性化されたマウスCD4+CD25- T細胞の増殖かつIL-2およびIFNg分泌に及ぼすその抑制活性(三つ組のウェルにおける平均cpmまたはpg/ml + s.d.)について解析した。
【図3A】FACSによって選別したゼブラフィッシュ単球、リンパ球および赤血球におけるリアルタイムPCRにより測定されたzFoxP3の発現の棒グラフである(三つ組の平均 + s.d.)。
【図3B】表示し黄色で強調したゼブラフィッシュ、ヒトおよびマウスFoxp3配列上の保存されたAHR結合部位(CABS)のリストである。
【図3C】リアルタイムPCRにより測定したときの、FACS選別したCD4+Foxp3:GFP+およびCD4+Foxp3:GFP- T細胞におけるFoxP3 (左)およびAHR (右)発現の棒グラフの対である(GAPDH発現に対して規準化した三つ組の平均 + s.d.)。
【図3D】リアルタイムPCRにより判定したときの、受精後3日のゼブラフィッシュ胚の入った水にTCDDを添加してから72時間後のzFoxp3発現の棒グラフである(GAPDH発現に対して規準化した三つ組の平均 + s.d.)。
【図3E】未処理C57BL/6JマウスからFACSにより流入領域リンパ節において判定したときの、1 mg/マウスのTCDDまたは対照としてのとうもろこし油の投与から11日後、および100 mg/マウスのMOG35-55/CFAでのマウスの免疫(またはなし)から10日後の、CD4+ T細胞集団におけるCD4+FoxP3+ T細胞の頻度の棒グラフである(マウス3匹の平均 + s.d.)。
【図3F】異なる濃度のTCDDの存在下、プレートに結合されたCD3に対する抗体で72時間刺激した精製CD4+ T細胞の増殖の棒グラフである。細胞増殖は三つ組のウェルにおけるcpm + s.d.として表示されている(***P < 0.0001、一方向ANOVA、n = 3)。
【図3G】通常の培地(対照、左パネル)、TCDD (中央のパネル)またはTGFb1 (右パネル)の存在下で5日間プレートに結合されたCD3およびCD28に対する抗体によって刺激したFoxp3gfpノックインマウス由来CD4+ T細胞集団におけるCD4+Foxp3:GFP T細胞の3つのFACSプロットのセットである。
【図3H】1 mg/マウスのTCDDまたは対照としてとうもろこし油で処理し、次に100 mg/マウスのMOG35-55/CFAで免疫した、CD90.2 Foxp3gfpノックインドナーマウス由来FACS精製CD4+Foxp3:GFP- 2D2 T細胞を受けた宿主マウスからの、FACSにより単離され解析された、ドナー特異的マーカーCD90.2陽性のFoxp3:GFP CD4+ T細胞の棒グラフである。結果は平均 + s.d.として示されており、1群につきマウス5匹を含めた。P < 0.02、対応のないt-検定。
【図3I】非進化的保存AHR結合部位(NCABS)-1、-2および-3に対応する配列。
【図3J】foxp3遺伝子の略図である。矢印はChIPアッセイにおいて用いたPCRプライマーの位置を示し、エキソンを赤色で描き、その番号をその下に示した。
【図3K】マウスAHRまたは構成的に活性化されたTGFβ受容体IIのEL-4細胞における発現によるウミシイタケ・ルシフェラーゼタグ付きfoxp3 (BACFoxp3:Ren)の転写の活性化の棒グラフである。コトランスフェクトした対照のルシフェラーゼ活性に対してウミシイタケ活性を規準化した(三つ組の平均 + s.d.)。
【図3L】TCDDで処理したCD4+ T細胞におけるfoxp3およびcyp1a1中のNCABSおよびCABSとのAHRの相互作用のChIP分析の棒グラフである。(c) CD4+Foxp3:GFP- T細胞(GFP-)、CD4+Foxp3:GFP+ Treg (GFP+)およびレスベラトロールで5時間処理したCD4+Foxp3:GFP+ Treg (GFP+ + R)に対してリアルタイムPCRにより測定したAHR、CYP1A1およびFoxp3の発現(GAPDH発現に対して規準化した三つ組の平均 + s.d.)。
【図3M】TCDD-または対照処理マウス由来の胸腺CD4+ T細胞におけるfoxp3およびcyp1a1中のCABSおよびNCABSとのAHRの相互作用のChIP分析の棒グラフである。
【図3N】図3N(i)〜(iii)は、CD4+Foxp3:GFP- T細胞(GFP-)、CD4+Foxp3:GFP+ Treg (GFP+)およびレスベラトロールで5時間処理したCD4+Foxp3:GFP+ Treg (GFP+ + R)に対してリアルタイムPCRにより測定したAHR (N(i))、CYP1A1 (N(ii))およびFoxp3 (N(iii))の発現の棒グラフである(GAPDH発現に対して規準化した三つ組の平均 + s.d.)。
【図3O】レスベラトロールの存在下エフェクタT細胞としてCD3に対する抗体で活性化されたCD4+ Foxp3:GFP-細胞を用いてアッセイした、未処理Foxp3gfpマウスからFACS選別されたCD4+ Foxp3:GFP+ Tregの抑制活性に及ぼすレスベラトロールでのAHR不活性化の影響の棒グラフである。細胞増殖は三つ組のウェルにおけるcpm + s.d.として表示されている。
【図3P】CD4+ Foxp3:GFP- 2D2 T細胞を用いてアッセイした、TCDDまたは対照処理マウスから精製されたTregのMOG35-55特異的な抑制活性の棒グラフである。細胞増殖は三つ組のウェルにおけるcpm + s.d.として表示されている。
【図3Q】天然Treg、またはTGFβ1 (TGFb1)もしくはTCDD (TCDD)で誘導したTregの抑制活性の棒グラフである。細胞増殖は三つ組のウェルにおけるcpm + s.d.として表示されている。
【図3R】未処理Foxp3gfpマウスからFACS選別されたCD4+ Foxp3:GFP+ TregおよびCD4+ Foxp3:GFP- T細胞の増殖に及ぼすTCDDでのAHR活性化の影響を示す棒グラフである。細胞増殖は三つ組のウェルにおけるcpm + s.d.として表示されている。
【図3S】レスベラトロールの存在下エフェクタT細胞としてCD3に対する抗体で活性化されたCD4+ Foxp3:GFP-細胞を用いてアッセイした、未処理Foxp3gfpマウスからFACS選別されたCD4+ Foxp3:GFP+ Tregの抑制活性に及ぼすTCDDでのAHR活性化の影響の棒グラフである。細胞増殖は三つ組のウェルにおけるcpm + s.d.として表示されている。
【図4A】C57BL/6マウスにip投与された、TCDDまたは対照としての油のEAEに及ぼす影響を示す線グラフである。MOG35-55/CFAの免疫によって24時間後にEAEを誘導した。これらのマウスでのEAEの経過を平均EAEスコア + s.e.m. (P < 0.001、二方向ANOVA、n = 6)として示している。
【図4B】C57BL/6野生型マウスまたはAHR-mtマウスにip投与された、TCDDまたは対照としての油のEAEに及ぼす影響を示す線グラフである。MOG35-55/CFAの免疫によって24時間後にEAEを誘導した。これらのマウスでのEAEの経過を平均EAEスコア + s.e.m. (P < 0.001、二方向ANOVA、n = 10)として示している。
【図4C】MOG35-55/CFAの免疫から10日後にTCDDまたは対照処理動物から採取されたリンパ節細胞のMOG35-55 (4C)に対する増殖応答の棒グラフである。細胞増殖は三つ組のウェルにおけるcpm + s.d.として表示されている。
【図4D】MOG35-55/CFAの免疫から10日後にTCDDまたは対照処理動物から採取されたリンパ節細胞のCD3抗体(4D)に対する増殖応答の棒グラフである。細胞増殖は三つ組のウェルにおけるcpm + s.d.として表示されている。
【図4E】図4E(i)〜(iii)は、MOG35-55/CFAの免疫から10日後にTCDDまたは対照処理動物から採取されたリンパ節細胞におけるMOG35-55により誘発されたサイトカイン分泌の(pg/mlとして表現した)棒グラフである。
【図4F】図4F(i)〜(ii)は、TCDDでのAHR活性化によるEAEの阻止に関連したCD4+IL17+およびCD4+IFNg+ T細胞の頻度減少を示す棒グラフである。流入領域リンパ節細胞をMOG35-55/CFAの免疫から10日後にTCDDまたは対照処理マウスから単離し、MOG35-55で活性化し、細胞内Foxp3、IL-17またはIFNgについて染色した。データはエフェクタCD4+Foxp3- T細胞集団内のサイトカイン+細胞の平均割合 + s.d.を表しており、1群につきマウス5匹を含めた。P < 0.04、対応のないt-検定。
【図4G】TCDDによるAHR活性化がCNS炎症、脱髄および軸索喪失を阻止することを示す棒グラフである。手短に言えば、TCDD処理マウスおよび対照マウスの脊髄に対する細胞浸潤物、脱髄および軸索喪失の定量化。脊髄をEAE誘導後19日目に採取し、ヘマトキシリンおよびエオシン、ルクソールファーストブルーまたは銀染色により染色して、細胞浸潤物(g)、脱髄(h)および軸索喪失(i)をそれぞれ定量化した。スチューデントのt検定を用いてTCDD処理の影響を解析した。
【図4H】TCDDによるAHR活性化がCNS炎症、脱髄および軸索喪失を阻止することを示す棒グラフである。手短に言えば、TCDD処理マウスおよび対照マウスの脊髄に対する細胞浸潤物、脱髄および軸索喪失の定量化。脊髄をEAE誘導後19日目に採取し、ヘマトキシリンおよびエオシン、ルクソールファーストブルーまたは銀染色により染色して、細胞浸潤物(g)、脱髄(h)および軸索喪失(i)をそれぞれ定量化した。スチューデントのt検定を用いてTCDD処理の影響を解析した。
【図4I】TCDDによるAHR活性化がCNS炎症、脱髄および軸索喪失を阻止することを示す棒グラフである。手短に言えば、TCDD処理マウスおよび対照マウスの脊髄に対する細胞浸潤物、脱髄および軸索喪失の定量化。脊髄をEAE誘導後19日目に採取し、ヘマトキシリンおよびエオシン、ルクソールファーストブルーまたは銀染色により染色して、細胞浸潤物(g)、脱髄(h)および軸索喪失(i)をそれぞれ定量化した。スチューデントのt検定を用いてTCDD処理の影響を解析した。
【図5A】C57BL/6マウスにip投与された、TCDDまたは対照としての油のEAEに及ぼす作用を図示した棒グラフである。MOG35-55/CFAの免疫によって24時間後にEAEを誘導した。脾臓CD4+ T細胞集団中のCD4+FoxP3+ T細胞の頻度をEAE誘導から21日後にFACSによって判定した(マウス5匹の平均 + s.d.)。P < 0.02、対応のないt-検定。
【図5B】MOG35-55/CFAの免疫から10日後にTCDDまたは対照処理動物から採取されたCD4+CD25-リンパ節細胞のMOG35-55に対する増殖応答を図示した棒グラフである。細胞増殖は三つ組のウェルにおけるcpm + s.d.として表示されている。
【図5C】MOG35-55/CFAの免疫から10日後にTCDDまたは対照処理マウスから精製されたCD4+またはCD4+CD25- T細胞(5×106個)で処理したマウスにおけるEAEスコアの線グラフである。1日後、MOG35-55/CFAによりレシピエントマウスでEAEを誘導した。これらのマウスでのEAEの経過を平均EAEスコア + s.e.m. (P < 0.001、二方向ANOVA、n = 4)として示している。
【図5D】MOG35-55/CFAの免疫から10日後にTCDD処理動物から採取され、IL-4、IL-10、TGFbに対する遮断用抗体またはアイソタイプ対照の存在下MOG35-55によりインビトロで活性化されたリンパ節細胞の増殖応答を示す棒グラフである。細胞増殖は三つ組のウェルにおけるcpm + s.d.として表示されている。
【図5E】MOG35-55/CFAの免疫から10日後にTCDDまたは対照処理マウスから精製されたCD4+ T細胞(5×106個)を注射した未処理野生型(WT)またはドミナントネガティブTGFbRIIマウスにおけるEAEの線グラフである。1日後、MOG35-55/CFAによりレシピエントマウスでEAEを誘導した。これらのマウスでのEAEの経過を平均EAEスコア + s.e.m. (P < 0.001、二方向ANOVA、n = 4)として示している。
【図5F】TCDD-または対照処理Foxp3gfpマウス由来のCD4+Foxp3:GFP-リンパ節細胞のMOG35-55に対する増殖の棒グラフである(三つ組のウェルにおけるcpm + s.d.)。
【図5G】MOG35-55/CFAの免疫から10日後にTCDDまたは対照処理Foxp3gfpマウスから採取されたCD4+Foxp3:GFP-リンパ節細胞のMOG35-55に対する想起サイトカイン応答の棒グラフである。サイトカイン分泌は三つ組のウェルにおけるpg/mとして表現されている。
【図5H】臨床EAEスコアの線グラフである。TCDD処理マウスはEAE発症の顕著な遅延を示した(P = 0.03、スチューデントのt検定、n = 9)。
【図5I】18日目に回収され、PMA/イオノマイシンで刺激され、CD4ならびに細胞内IL-17およびIFNγについて染色された流入領域リンパ節細胞のFACSプロットの対である。四半部内の数値はCD4+Foxp3:GFP- T細胞ゲートにおけるサイトカイン陽性細胞の割合を示す。TCDDでの処理はCD4+ IL-17+ T細胞の頻度の有意な減少をもたらした(P = 0.03、スチューデントのt検定、n = 4)。
【図6】図6A〜Cは、内因性AHRリガンドがEAE発生を制御することを示す棒グラフである。6A、CD4+ T細胞集団中のCD4+Foxp3+ T細胞の頻度を野生型C57BL/6マウスおよびAHR-mtマウスの血液中FACSによって判定し、平均 + s.d.として示した(n = 5〜11、P < 0.03 t-検定)。6B、MOG35-55/CFAの免疫により野生型C57BL/6JマウスおよびAHR-mtマウスにおいてEAEを誘導した。EAEの経過を平均EAEスコア + s.e.m. (P < 0.001、二方向ANOVA、n = 6〜8)として示している。6C、ITE (100 mg/マウス)、TA (100 mg/マウス)または対照としてPBSをC57BL/6マウスに毎日投与した。最初の投与から1日後に、MOG35-55/CFAの免疫によりEAEを誘導した。EAEの経過を平均EAEスコア + s.e.m. (P < 0.001、二方向ANOVA、n = 9)として示している。
【図7】図7AおよびBは、推定TFBSの特定のための系統発生フットプリンティングの結果を示す。ヒト、マウス、ラット、イヌおよびゼブラフィッシュFoxp3のゲノム配列を系統発生フットプリンティングによって解析した。7Aは系統樹を示し; 樹距離は1 kbあたりの置換の数(#)である。7Bはヒト(SEQ ID NO:1)とゼブラフィッシュ(SEQ ID NO:2)との間で保存された推定TFBSの位置の動的可視化を図示したグラフである。
【図8】図8A〜Eは、Foxp3をトランスフェクトした細胞における転写因子の発現レベルを示す棒グラフである。図8A〜E: トランスフェクト細胞におけるFOXP3 (8A)およびNKX2.2 (8B)の増加、ならびにEGR1 (8C)、EGR2 (8D)およびEGR3 (8E)の減少を示す。図9A〜D: 3日目および6日目の時点でのFoxp3トランスフェクト細胞におけるNKX2.2発現の増加、ならびにEGR1、EGR2およびEGR3発現の減少を示す。
【図9】図9A〜Eは、Foxp3をトランスフェクトした細胞における転写因子の発現レベルを示す棒グラフである。図8A〜E: トランスフェクト細胞におけるFOXP3 (8A)およびNKX2.2 (8B)の増加、ならびにEGR1 (8C)、EGR2 (8D)およびEGR3 (8E)の減少を示す。図9A〜D: 3日目および6日目の時点でのFoxp3トランスフェクト細胞におけるNKX2.2発現の増加、ならびにEGR1、EGR2およびEGR3発現の減少を示す。
【図10】GenBankアクセッション番号NT_039700.6に示されている遺伝子の付番に関連しての、マウスFoxp3遺伝子におけるNKX22、EGR1、EGR2、EGR3、NGFICおよびDelta EF1の結合部位のリストである。
【図11A】マウスFoxp3遺伝子、GenBankアクセッション番号NT_039700.6上の全AHR結合部位のリストである。
【図11B】マウスFoxp3遺伝子、GenBankアクセッション番号NT_039700.6上の全AHR結合部位のリストである。
【図11C】マウスFoxp3遺伝子、GenBankアクセッション番号NT_039700.6上の全AHR結合部位のリストである。
【図11D】マウスFoxp3遺伝子、GenBankアクセッション番号NT_039700.6上の全AHR結合部位のリストである。
【図11E】マウスFoxp3遺伝子、GenBankアクセッション番号NT_039700.6上の全AHR結合部位のリストである。
【図11F】マウスFoxp3遺伝子、GenBankアクセッション番号NT_039700.6上の全AHR結合部位のリストである。
【図11G】マウスFoxp3遺伝子、GenBankアクセッション番号NT_039700.6上の全AHR結合部位のリストである。
【図12A】ゼブラフィッシュFoxp3, NW_644989.1のゲノム配列である。
【図12B】ゼブラフィッシュFoxp3, NW_644989.1のゲノム配列である。
【図12C】ゼブラフィッシュFoxp3, NW_644989.1のゲノム配列である。
【図12D】ゼブラフィッシュFoxp3, NW_644989.1のゲノム配列である。
【図12E】ゼブラフィッシュFoxp3, NW_644989.1のゲノム配列である。
【図12F】ゼブラフィッシュFoxp3, NW_644989.1のゲノム配列である。
【図13】TAによるEAEの抑制に及ぼすモノアミンオキシダーゼ阻害剤トラニルシプロミンの作用を示す棒グラフである。C57BL/6マウス(4〜7匹/群)をTAまたはTAおよびトラニルシプロミン(INH)で処理し、EAEを誘導し、EAEの発生についてマウスをモニターした。
【図14】漸増量のTCDDの存在下ゼブラフィッシュ胚でのウミシイタケタグ付きマウスfoxp3遺伝子座の発現の棒グラフである。
【図15】図5AおよびBは、EAEのIP-ITEおよび経口-ITE抑制の棒グラフである。EAEをB6マウス(n=10)において誘導し、マウスをITE (200 μg/マウス)で毎日処理し、またはマウスに媒体を経口的にもしくは腹腔内に投与し、マウスを毎日EAE発生についてスコア化した。
【図16】ITEのIP投与によるFoxP3+ Tregの誘導を示すFACSプロット(16)である。EAEをB6マウス(n=10)において誘導し、マウスをITEまたは媒体で処理し、TregレベルをEAE誘導後17日目の時点で脾細胞に関してFACSにより解析した。
【図17】ITEのIP投与によるFoxP3+ Tregの誘導を示す棒グラフ(17)である。EAEをB6マウス(n=10)において誘導し、マウスをITEまたは媒体で処理し、TregレベルをEAE誘導後17日目の時点で脾細胞に関してFACSにより解析した。
【図18】ITEの経口投与によるFoxP3+ Tregの誘導を示すFACSプロット(18)である。EAEをB6マウス(n=10)において誘導し、マウスをITEまたは媒体で処理し、TregレベルをEAE誘導後17日目の時点で脾細胞に関してFACSにより解析した。
【図19】ITEの経口投与によるFoxP3+ Tregの誘導を示す棒グラフ(19)である。EAEをB6マウス(n=10)において誘導し、マウスをITEまたは媒体で処理し、TregレベルをEAE誘導後17日目の時点で脾細胞に関してFACSにより解析した。
【図20】FoxP3gfpマウスに対するITEのIP投与によるFoxP:GFP3+ Tregの誘導を示すFACSプロット(20A)および棒グラフ(20B)である。B6マウス(n=3)、このマウスをITEまたは媒体で処理し、CFA/MOG35-55で免疫し、Tregレベルを免疫から10日後に脾細胞に関してFACSにより解析した。
【図21】FoxP3gfpマウスに対するITEのIP投与によるFoxP:GFP3+ Tregの誘導を示すFACSプロット(21A)および棒グラフ(21B)である。B6マウス(n=3)、このマウスをITEまたは媒体で処理し、CFA/MOG35-55で免疫し、Tregレベルを免疫から10日後に血液に関してFACSにより解析した。
【図22】図22AおよびBは、IP-ITEがMOGに対する想起応答を抑制することを示す線グラフである。EAEをB6マウス(n=3)において誘導し、マウスをITEまたは媒体で処理し、脾細胞に関するMOG35-55 (22A)またはαCD3 (22B)に対する想起応答をEAE誘導後17日目の時点で解析した。図22Cは、22AおよびBにおけるのと同じ細胞におけるサイトカイン発現の6つの棒グラフのセットである。
【図23】IP-ITEがTH1およびTH17細胞の産生を妨害することを示す線グラフ(23A)および6つの棒グラフのセット(23B)である。EAEをB6マウス(n=3)において誘導し、マウスをITEまたは媒体で処理し、TH1およびTH17細胞の誘導をEAE誘導後17日目の時点でFACSによりおよびELISAにより追跡した。
【図24】経口-ITEがMOGに対する想起応答を低減することを示すFACSプロット(24A)および棒グラフ(24B)である。EAEをB6マウス(n=3)において誘導し、マウスをITEまたは媒体で処理し、脾細胞に関するMOG35-55 (左パネル)またはαCD3 (右パネル)に対する想起応答をEAE誘導後17日目の時点で解析した。
【図25】IP-ITEがMOG35-55特異的T細胞のTreg:Teff比を増大することを示すFACSプロットである。FoxP3gfpマウス(n=3)をMOG35-55で免疫し、ITE (25Aの下側パネル)または媒体(25Aの上側パネル)で処理し、MOG35-55特異的TregおよびTeff細胞の頻度を免疫後10日目の時点でFACSにより追跡した。
【図26】IP-ITEがMOG35-55に対するCD4+ T細胞応答を抑制することを示す4つの線グラフのセットである。FoxP3gfpマウス(n=3)をMOG35-55で免疫し、ITEまたは媒体で処理し、選別T細胞集団の想起応答を免疫後10日目の時点で解析した。
【図27A】IP-ITEがMOG35-55特異的Treg活性を増強することを示す棒グラフである。FoxP3gfpマウス(n=3)をMOG35-55で免疫し、ITEまたは媒体で処理し、免疫から10日後にFoxP3:GFP+ TregをFACS選別し、その抑制活性を、応答細胞として2D2 FoxP3:GFP- T細胞を用いて評価した。
【図27B】IP-ITEがMOG35-55特異的Treg活性を増強することを示す棒グラフである。FoxP3gfpマウス(n=3)をMOG35-55で免疫し、ITEまたは媒体で処理し、免疫から10日後にFoxP3:GFP+ TregをFACS選別し、その抑制活性を、応答細胞として2D2 FoxP3:GFP- T細胞を用いて評価した。
【図27C】この作用をTGFb1に対する抗体を遮断する抗体で阻害できたことを示す棒グラフである。
【図28】CD4+ T細胞はIPおよび経口によるITEで誘導されるEAEの防御を移入できることを示す線グラフの対である。T細胞を疾患の誘導後20日目に媒体またはITEで処理したEAE B6マウスから選び出し、300万個の細胞を未処理B6マウス(n=5)に移入し、細胞の移入から2日後に、レシピエントにおいてEAEを誘導した。
【図29】IP-ITEによるAPC集団の調節を示す6つのFACSプロットのセットである。EAEをB6マウス(n=3)において誘導し、マウスをITEまたは媒体で処理し、EAE誘導後17日目の時点で脾細胞に関してFACSによりAPCを解析した。
【図30】ITEの毎週投与がEAE発生を抑制できないことを示す線グラフである。EAEをB6マウス(n=10)において誘導し、マウスを200 μg/マウスのITEまたは媒体で毎日または毎週処理した。
【図31】AHRリガンド送達のための金ナノ粒子の略図である。
【図32】AHRリガンドを含んだ金ナノ粒子の機能性を示すグラフの対である。ナノ粒子を、AHRレポーター細胞株のルシフェラーゼ活性を活性化するその能力について評価した。
【図33】AHRリガンドナノ粒子によるEAEの調節を示す棒グラフである。EAEをB6マウス(n=5)において誘導し、0日目から始めて毎週ナノ粒子でマウスを処理し、EAEの兆候について動物を追跡した。
【図34】ナノ粒子を介したITE送達によるFoxP3+ Tregの誘導を示す9つのFACSプロットのセットである。EAEをB6マウス(n=5)において誘導し、0日目から始めて毎週ナノ粒子でマウスを処理し、TregレベルをEAE誘導後22日目の時点で脾細胞に関してFACSにより解析した。
【図35A】ナノ粒子を介したITE送達がMOGに対する想起応答を抑制することを示す。EAEをB6マウス(n=5)において誘導し、マウスをITEまたは媒体で処理し、EAE誘導後22日目の時点で脾細胞に関してMOG35-55 (35A、上)またはαCD3 (35A、下)に対する想起応答を解析した。図35B: 同じ細胞中でのサイトカイン応答を示す。
【図35B】ナノ粒子を介したITE送達がMOGに対する想起応答を抑制することを示す。EAEをB6マウス(n=5)において誘導し、マウスをITEまたは媒体で処理し、EAE誘導後22日目の時点で脾細胞に関してMOG35-55 (35A、上)またはαCD3 (35A、下)に対する想起応答を解析した。図35B: 同じ細胞中でのサイトカイン応答を示す。
【図36】TCDDによるヒトCD4+ FoxP3+ T細胞の誘導を示すFACSプロットのセットである。CD4+ CD62L+ CD45RO- T細胞をFACSによって単離し、TCDD 100 nMもしくはTGFβ1 2.5 ng/mlまたはその両方の存在下CD3およびCD28に対する抗体により5日間インビトロで分化させた。
【図37】TCDDによるヒトCD4+ FoxP3+ T細胞の誘導の不均一性を実証する4つのFACSプロットのセットである。CD4+ CD62L+ CD45RO- T細胞をFACSによって単離し、TCDD 100 nMもしくはTGFβ1 2.5 ng/mlまたはその両方の存在下CD3およびCD28に対する抗体により5日間インビトロで分化させた。
【図38】TCDDの存在下でのヒトT細胞の活性化が抑制性T細胞を誘導することを示す棒グラフの対である。CD4+ CD62L+ CD45RO- T細胞をFACSによって単離し、TCDDもしくはTGFβ1 2.5 ng/mlまたはその両方の存在下CD3およびCD28に対する抗体により5日間インビトロで分化させ、FACSによる再精製の後、CD4+ CD25HighおよびCD4+ CD25Low T細胞をCD28およびCD3に対する抗体により活性化された非処理エフェクタT細胞に関するその抑制活性についてアッセイした。
【図39】インビトロで分化されたヒトT細胞によるFoxP3発現である。CD4+ CD62L+ CD45RO- T細胞をFACSによって単離し、TCDD 100 nMもしくはTGFβ1 2.5 ng/mlまたはその両方の存在下CD3およびCD28に対する抗体により5日間インビトロで分化させ、FoxP3発現をCD25HighまたはCD25Low選別CD4 T細胞に関してリアルタイムPCRにより分析した。
【図40】インビトロで分化されたヒトT細胞によるAHR発現を示す棒グラフの対である。CD4+ CD62L+ CD45RO- T細胞をFACSによって単離し、TCDD 100 nMもしくはTGFβ1 2.5 ng/mlまたはその両方の存在下CD3およびCD28に対する抗体により5日間インビトロで分化させ、AHR発現をCD25HighまたはCD25Low選別CD4 T細胞に関してリアルタイムPCRにより分析した。
【図41】インビトロで分化されたヒトT細胞によるIL-10産生を示す棒グラフの対である。CD4+ CD62L+ CD45RO- T細胞をFACSによって単離し、TCDD 100 nMもしくはTGFβ1 2.5 ng/mlまたはその両方の存在下CD3およびCD28に対する抗体により5日間インビトロで分化させ、IL-10産生をCD25HighまたはCD25Low選別CD4 T細胞に関してリアルタイムPCRにより分析した。
【図42】TCDDで誘導されたヒトCD4+ CD25High T細胞の抑制活性がIL-10に依存することを示す棒グラフである。CD4+ CD62L+ CD45RO- T細胞をFACSによって単離し、TCDDもしくはTGFβ1 2.5 ng/mlまたはその両方の存在下CD3およびCD28に対する抗体により5日間インビトロで分化させ、FACSによる再精製の後、CD4+ CD25High T細胞をIL-10に対する遮断用抗体の存在下CD28およびCD3に対する抗体により活性化された非処理エフェクタT細胞に関するその抑制活性についてアッセイした。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
Tregが免疫調節において果たす中心的役割の重要性のため、それらの経路を特徴付けること、およびこれらの経路を、例えばTreg細胞の産生(例えば、Treg細胞へのもしくはTreg細胞の方向への細胞の分化)を促進するために調節できる、またはTreg活性の増大を促進する化合物を特定することは、例えば自己免疫、感染症およびがんの処置に重要である。
【0030】
本発明は、とりわけ、治療的免疫調節に有用な組成物および方法を提供する。
【0031】
したがって、本発明は、少なくとも一つには、本明細書において記載する化合物によるAhRの調節を用いて、インビトロおよびインビボで免疫調節細胞を調節できる(例えば、免疫調節細胞の数および/または活性を増大または低減できる)という発見に基づいている。
【0032】
いくつかの態様において、本発明は、インビトロおよびインビボでのTreg分化(例えば産生)および/または活性のFoxp3依存性調節因子としてのリガンド活性化転写因子アリール炭化水素受容体(AHR)の特定に基づいている。本明細書において同様に記載するのは、Treg発現および/または活性の増大を引き起こす転写因子(例えばAHR)のリガンドである。より具体的には、本明細書において提示するデータは、異常な(例えば、過剰な、上昇したまたは不適切な)免疫応答によって引き起こされる疾患または障害、例えば、自己免疫疾患または障害の処置において免疫応答を抑制するのに有用でありうる、Treg免疫調節細胞の数および/または活性の増大を促進するための、AHR特異的リガンド、例えば、高親和性AHRリガンド2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(TCDD)、トリプタミン(TA)および/または2-(1'H-インドール-3'-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE)の使用について実証する。驚いたことには、有効な用量のTCDDを静脈内にまたは経口で投与することができる。
【0033】
他の潜在的に有用なAHR転写因子リガンドは、Denison and Nagy, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol., 43:309-34, 2003および本明細書に引用している参考文献に記載されており、それらは全てその全体が本明細書に組み入れられる。他のそのような分子には、平面疎水性のHAH (ポリハロゲン化ジベンゾ-pジオキシン、ジベンゾフランおよびビフェニルなどの)およびPAH (3-メチルコラントレン、ベンゾ(a)ピレン、ベンズアントラセンおよびベンゾフラボンなどの)、ならびに関連化合物が含まれる(Denison and Nagy, 2003、前記)。Nagy et al., Toxicol. Sci. 65:200-10 (2002)では、他のリガンドを特定し確認するのに有用な高速大量処理スクリーニングについて記載している。Nagy et al., Biochem. 41:861-68 (2002)も参照されたい。いくつかの態様において、本発明において有用なそれらのリガンドは、TCDD、TAおよび/またはITEと競合的に結合するものである。
【0034】
いくつかの態様において、本発明は、Foxp3発現または活性を調節(例えば、増大または低減)できる転写因子(例えば、リガンド活性化転写因子)および/またはリガンド(例えば、リガンド活性化転写因子とFoxp3との間の会合の増大を促進できるリガンド)を特定するのに有用な方法を提供する。
【0035】
治療的配列
上記のように、本発明は、Foxp3遺伝子中の特異的な転写因子結合部位の特定を含む。これらの結合部位は、すなわち、NKX22、AHR、EGR1、EGR2、EGR3、NGFICおよびDelta EF1を含む。本明細書において記載するように、それらのTFの活性および/またはレベルを操作することで、Foxp3の発現を変化させ、かくしてインビボおよびインビトロでTregの産生および/または活性増大を調節する(例えば、促進する)ことができる。それらのTFの活性および/またはレベルを調節して、Tregの産生および/または活性を増大する化合物は、例えば、異常な免疫応答を低減することが望ましい障害、例えば、自己免疫疾患の処置において有用である。
【0036】
本明細書において記載する方法において有用な配列は、以下に限定されるものではないが、例えば、NKX22、AHR、EGR1、EGR2、EGR3、NGFICおよびDelta EF1配列、ならびにそのためのTF結合配列を含み、それらの全てが当技術分野において公知である。いくつかの態様において、該方法はヒトNKX22、AHR、EGR1、EGR2、EGR3、NGFICまたはDelta EF1配列と少なくとも80%同一である、例えば、本明細書において記載のヒト配列と少なくとも80%、85%、90%または95%同一である核酸またはポリペプチドの使用を含む。
【0037】
二つの配列の同一性の割合を判定するには、最適な比較のために配列を整列させる(例えば、最適なアライメントのために第一および第二のアミノ酸または核酸配列の一方または両方にギャップを導入することができ、比較のために非相同配列を無視することができる)。比較のために整列される参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、80%、90%、100%である。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第一の配列中のある位置が第二の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有されている場合、それらの分子はその位置で同一である。二つの配列間の同一性の割合は、二つの配列の最適なアライメントのために導入することが必要な、ギャップの数および各ギャップの長さを考慮しつつ、それらの配列によって共有される同一の位置の数の関数である。
【0038】
配列の比較および二つの配列間の同一性の割合の判定は、数学的アルゴリズムを用いて行うことができる。本方法において、二つのアミノ酸配列間の同一性の割合は、(www.gcg.comのワールドワイドウェブにて利用可能な) GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに組み込まれたNeedleman and Wunsch ((1970) J. Mol. Biol. 48:444-453)のアルゴリズムにより、Blossum 62スコアリングマトリックスをギャップペナルティー12、ギャップ伸長ペナルティー4およびフレームシフトギャップペナルティー5とともに用いて判定される。
【0039】
本明細書において記載する方法において有用なTFの活性断片は、完全長TFが結合する同じDNA配列(例えば、プロモーター配列)に結合する断片であり、かつ完全長TFの転写開始活性の少なくとも30%、例えば、完全長タンパク質と同じプロモーターおよび同じ遺伝子に関して、完全長タンパク質の活性の少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上を有する。
【0040】
Foxp3
少なくとも一部の種では、Tregの分化および機能は転写因子Foxp3により推進される(Fontenot et al., Nat. Immunol., 4:330-336, 2003; Hori et al., Science, 299:1057-61, 2003)。Foxp3は同様に、ヒトTregにとって重要である可能性があり; Foxp3における突然変異はさまざまな免疫学的状態(例えば、自己免疫状態)、例えば、自己免疫症候群であるX連鎖免疫調節異常・多発性内分泌障害腸症候群(IPEX)に関連付けられている(Chatila et al., J. Clin. Invest., 106:R75-81 (2000); Gavin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 103: 6659-64 (2006))。ヒトでは、Foxp3陰性のTregも記載されており、例えば、Roncarolo and Gregori, Eur J Immunol. 38, 925 (2008)を参照されたい。
【0041】
例示的なヒトFoxp3 mRNA配列は当技術分野において公知であり、Genbankアクセッション番号NM_014009.2を含み; タンパク質のアミノ酸配列はGenbankアクセッション番号NP_054728.2である。ヒトFoxp3遺伝子の配列はNC_000023.9で見出すことができ; マウス遺伝子はNT_039700.6である。Foxp3プロモーターが特定されかつ配列決定されており、例えば、Mantel et al., J. Immunol. 176 (6): 3593 (2006)を参照されたい。マウスFoxp3遺伝子中のAHRに対する結合部位は全て、例えば図11A〜G中で、強調されており; 他のTFに対する結合部位は図10A〜Bで特定されている。
【0042】
Foxp3の転写を増大する転写因子
本明細書において記載するように、NKX22、AHRおよびDelta EF1はFoxp3の転写を増大する。それゆえ、これらのTFのレベルおよび/または活性を増大する化合物は、Tregの産生および/または活性を増大するであろう。逆に、これらのTFのレベルおよび/または活性を低減する化合物は、Tregの産生を低減し、それによって免疫応答を増大するものと予想されよう。
【0043】
AHR
例示的なヒトAhR mRNA配列は当技術分野において公知であり、Genbankアクセッション番号NM_001621.3を含み; タンパク質のアミノ酸配列はGenbankアクセッション番号NP_001612.1である。AhRの活性断片は、転写活性を有するDNA結合断片であり、少なくとも一つのPAS領域、例えば、NP_001612.1のアミノ酸番号122〜224または282〜381を含有する。AhRに結合する共通認識配列は配列TNGCGTGを含む。
【0044】
DeltaEF1
例示的なヒトDeltaEF1 mRNA配列は当技術分野において公知であり、Genbankアクセッション番号NM_030751.3を含み; タンパク質のアミノ酸配列はGenbankアクセッション番号NP_110378.2である。DeltaEF1に結合する共通認識配列は配列CACCTおよびCACCTGを含む(Sekido et al., Genes Cells 2:771-783 (1997))。
【0045】
NKX2.2
例示的なヒトNKX2.2 mRNA配列は当技術分野において公知であり、Genbankアクセッション番号NM_002509.2を含み; タンパク質のアミノ酸配列はGenbankアクセッション番号NP_002500.1である。NKX2.2に結合する共通認識配列は配列ACTTGATおよびT(T/C)AAGT(A/G)(C/G)TTを含む(Watada et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 97(17):9443-9448 (2000))。
【0046】
Foxp3の転写を低減する転写因子
本明細書において記載するように、EGR1、EGR2、EGR3およびNGFIC (EGR4)はFoxp3の転写を低減する。それゆえ、これらのTFのレベルおよび/または活性を増大する化合物は、Tregの産生を低減し、それによって免疫応答を増大するであろう。逆に、これらのTFのレベルおよび/または活性を低減する化合物は、Tregの産生を増大し、免疫応答を低減するものと予想されよう。
【0047】
EGR1
ヒトegr1タンパク質の配列はGenBankデータベース中、アクセッション番号NP_001955.1で利用可能であり; mRNAはアクセッション番号NM_001964.2で利用可能である。egr1に関するさらなる情報は、インターネット上ncbi.nlm.nih.govで、UniGeneデータベース中UniGene Hs.326035で、およびEntrez Geneデータベース中GeneID:1958で見出すことができる。EGR1に結合する共通認識配列は、配列5'GCG(G/T)GGGCG3'を含む(Nakagama et al, Mol. Cell. Biol., 15(3): 1489-1498 (1995))。
【0048】
egr1の活性断片は、DNAに結合するタンパク質の部分、例えば、二つのC2H2型DNA結合亜鉛フィンガーの一つまたは複数(例えば、Sukhatme et al., 1988、前記を参照のこと)、例えば、GenBankアクセッション番号NP_001955.1のアミノ酸番号338〜362および/または368〜390を含む。例示的な活性断片はHuang et al., Cancer Res. 1995; 55(21):5054-5062、およびJain et al., J. Biol. Chem. 1996; 271(23): 13530-6に記載されている。
【0049】
egr-1の阻害剤はWO2007/118157に記載されている。
【0050】
EGR2
ヒトegr2タンパク質の配列はGenBankデータベース中、アクセッション番号NP_000390.2で利用可能であり; mRNAはアクセッション番号NM_000399.2で利用可能である。
【0051】
EGR2に結合する共通認識配列は配列

(小文字はそれほど頻繁には選択されない塩基を示す) (Swirnoff and Milbrandt, Mol. Cell. Biol. 15:2275-2287 (1995))を含む。
【0052】
EGR3
ヒトegr3タンパク質の配列はGenBankデータベース中、アクセッション番号NP_004421.2で利用可能であり; mRNAはアクセッション番号NM_004430.2で利用可能である。
【0053】
EGR3に結合する共通認識配列は配列

(小文字はそれほど頻繁には選択されない塩基を示す) (Swirnoff and Milbrandt, Mol. Cell. Biol. 15:2275-2287 (1995))を含む。
【0054】
NGFIC (EGR4)
例示的なヒトNGFIC mRNA配列は当技術分野において公知であり、Genbankアクセッション番号NM_001965.2を含み; タンパク質のアミノ酸配列はGenbankアクセッション番号NP_001956.2である。Crosby et al., Mol Cell Biol. 11(8): 3835-41 (1991)を参照されたい。
【0055】
NGFICに結合する共通認識配列は配列

(小文字はそれほど頻繁には選択されない塩基を示す) (Swirnoff and Milbrandt, Mol. Cell. Biol. 15:2275-2287 (1995))を含む。
【0056】
NKX22、AHR、EGR1、EGR2、EGR3、NGFICおよびDelta EF1の一つまたは複数の発現、レベルまたは活性を調節する化合物を特定する方法
化合物がNKX22、AHR、EGR1、EGR2、EGR3、NGFICおよび/またはDelta EF1の一つまたは複数の発現、レベルまたは活性を変化させるかどうかを評価するためにいくつかの方法が当技術分野において公知である。
【0057】
発現を評価する方法は当技術分野において周知であり、ノーザン解析、リボヌクレアーゼ保護アッセイ法、逆転写・ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、リアルタイムPCRおよびRNAインサイチューハイブリダイゼーションを含むが、これらに限定されることはない(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)を参照のこと)。ペプチドのレベルは、例えば、ウエスタン解析、免疫アッセイ法またはインサイチューハイブリダイゼーションによってモニターすることができる。活性、例えば、プロモーター結合および/または転写活性の変化は、例えば、電気泳動移動度シフトアッセイ法、DNAフットプリンティング、受容体遺伝子アッセイ法、またはセリン、スレオニンもしくはチロシンリン酸化アッセイ法によって判定することができる。いくつかの態様において、発現、レベルまたは活性に及ぼす試験化合物の作用は、細胞、細胞抽出物、共培養物、外植片または対象のグルコース耐性またはインスリン分泌の変化として観察される。いくつかの態様において、NKX22、AHR、EGR1、EGR2、EGR3、NGFICおよび/またはDelta EF1の一つまたは複数の発現、レベルまたは活性に及ぼす試験化合物の作用は、グルコース耐性またはインスリン分泌の変化を持った、トランスジェニック細胞もしくは非ヒト動物、または外植片、組織、もしくはそれに由来する細胞において評価され、対照、例えば、野生型動物、またはそれに由来する外植片もしくは細胞と比較することができる。
【0058】
発現、レベルまたは活性に及ぼす試験化合物の作用は、細胞、例えば、培養哺乳動物細胞、膵臓β細胞、細胞溶解物、または対象、例えば、げっ歯類、例えば、ラット、マウスもしくはウサギなどの非ヒト実験哺乳動物、または細胞、組織もしくは臓器外植片、例えば、膵臓もしくは膵臓細胞において評価することができる。
【0059】
いくつかの態様において、試験化合物がNKX22、AHR、EGR1、EGR2、EGR3、NGFICおよび/またはDelta EF1の一つまたは複数のレベル、発現または活性を調節する能力は、ノックアウト動物、またはNKX22、AHR、EGR1、EGR2、EGR3、NGFICおよび/もしくはDelta EF1条件付きノックアウトトランスジェニック動物の一つもしくは複数の発現、レベルもしくは活性の低減を持った他の動物において評価される。
【0060】
いくつかの態様において、試験化合物がNKX22、AHR、EGR1、EGR2、EGR3、NGFICおよび/またはDelta EF1プロモーターの一つまたは複数由来の発現を、例えば、持続的にまたは一時的に調節する、例えば、増大または低減する能力を、例えば、日常的なレポーター(例えば、LacZまたはGFP)転写アッセイ法によって評価することができる。例えば、ゲノムがNKX22、AHR、EGR1、EGR2、EGR3、NGFICおよび/またはDelta EF1プロモーターに機能的に連結されたレポーター遺伝子を含む細胞またはトランスジェニック動物を、試験化合物と接触させることができ; 試験化合物がレポーター遺伝子または遺伝子産物の活性を増大または低減する能力は、試験化合物がTFの発現を調節する能力を示す。別の例では、ゲノムがそれらのTFの一つに対する認識配列を含んだプロモーター、例えば、それらのTFの一つに対する認識配列を含んだFoxp3プロモーターの全部または一部に機能的に連結されたレポーター遺伝子を含む細胞またはトランスジェニック動物を、試験化合物と接触させることができ; 試験化合物がレポーター遺伝子または遺伝子産物の活性を増大または低減する能力は、試験化合物がTFの活性を調節する能力を示す。
【0061】
GFPまたはLacZのようなレポーターに融合されたNKX22、AHR、EGR1、EGR2、EGR3、NGFICおよび/またはDelta EF1プロモーターまたは認識配列を含む導入遺伝子を発現する細胞、細胞抽出物、外植片または対象(例えば、実験動物)に、試験化合物を投与することができる(例えば、β-ガラクトシダーゼレポーター遺伝子をwhnプロモーターの制御下に配置することについて記載している、Nehls et al., Science, 272:886-889 (1996)、およびLee et al., Dev. Biol., 208:362-374 (1999)を参照されたい)。プロモーターまたはプロモーターからの転写を調節する因子に及ぼす試験化合物の作用の結果としての、導入遺伝子、例えば、LacZまたはGFPなどのレポーターの転写の増強または阻害を用いて、本明細書において特定するTFの一つまたは複数の転写に及ぼす試験化合物の作用をアッセイすることができる。レポーター転写物のレベル、かくしてプロモーター活性を他の公知の方法、例えば、ノーザン解析、リボヌクレアーゼ保護アッセイ法、逆転写・ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)またはRNAインサイチューハイブリダイゼーションによってモニターすることもできる(例えば、Cuncliffe et al., Mamm. Genome, 13:245-252 (2002); Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)を参照のこと)。無細胞系、例えば、プロモーター-レポーター導入遺伝子(例えば、ARNTプロモーター-LacZ導入遺伝子)、プロモーターに結合する転写因子、未精製の細胞溶解物または核抽出物、および一つまたは複数の試験化合物(例えば、本明細書において記載の試験化合物)を含む環境を用いて試験化合物を評価することもでき、この場合、プロモーター活性に及ぼす化合物の作用は色の変化として検出される。
【0062】
一つの態様において、本明細書において記載するスクリーニング方法には、本明細書において特定するTFの一つまたは複数を発現する細胞、例えば、膵臓β細胞を試験化合物に曝露する、クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイの使用が含まれる。細胞を、例えば、UVまたはホルムアルデヒドを用いて、架橋結合に供し、DNA-タンパク質複合体を形成させてもよく、すると、DNAが断片化される。DNA-タンパク質複合体を、例えば、本明細書において特定するTFの一つまたは複数に対して作製された抗体を用いて免疫沈降する。タンパク質を除去し(例えば、酵素消化により)、例えば、マイクロアレイを用いて解析する。このようにして、転写因子とその標的遺伝子との結合の変化を評価し、かくして本明細書において特定するTFの活性の指標を与えることができる。
【0063】
試験化合物
本明細書において記載する方法で用いる試験化合物は限定されることはなく、未精製のまたは部分的もしくは実質的に精製された有機源の抽出物、例えば、植物の(例えば、草本の)および藻類の抽出物、無機の要素または化合物、ならびに部分的もしくは実質的に精製されたまたは合成された化合物、例えば、小分子、ポリペプチド、抗体、およびポリヌクレオチド、ならびにそれらのライブラリーを含むことができる。
【0064】
本明細書において記載する方法によりスクリーニングされ、本明細書において記載するTFの一つまたは複数の発現、レベルまたは活性を増大するものと判定された試験化合物は、免疫療法で(すなわち、Tregのレベルを増大または低減することによって免疫応答の制御を増大または低減することにより)処置可能な障害、例えば、がんまたは自己免疫障害の処置用の候補化合物と考えることができる。例えば、免疫療法で処置可能な障害、例えば、がんまたは自己免疫障害のインビボモデルにおいてスクリーニングされ、障害に、例えば、障害の一つまたは複数の症状に望ましい効果を及ぼすと判定された候補化合物は、候補治療剤と考えることができる。候補治療剤は、いったんスクリーニングされ、臨床の場で検証されたら、治療剤である。候補治療剤および治療剤は任意で、最適化されおよび/または誘導体化され、生理学的に許容される賦形剤とともに処方されて、薬学的組成物を形成してもよい。
【0065】
処置の方法
上記のように、本発明は、少なくとも一つには、治療的免疫調節に有用な標的の特定に基づいている。したがって、本発明は、免疫学的状態を有する患者(例えば、ヒト)を処置するための組成物および方法を提供する。本発明を用いた処置から恩恵を受けうる免疫学的状態は、自己免疫応答または無免疫応答もしくは不十分な免疫応答によって引き起こされる疾患または障害を含む。
【0066】
自己免疫
自己免疫は、現在、世界中で最も一般的な病因であり、米国で三番目に多く予防されている(prevent)疾患である。本明細書において記載する組成物および方法を用いた処置から恩恵を受けることができる自己免疫状態は、例えば、アジソン病、脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、セリアック病、慢性疲労免疫機能障害症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、糖尿病(例えば、I型)、自律神経障害、子宮内膜症、好酸球増加筋痛症候群、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋肉痛症候群(fibromyalgia, syndrome)/線維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、炎症性大腸炎(IBD)、扁平苔癬、狼瘡、メニエール病、混合性結合組織病(MCTD)、多発性硬化症、重症筋無力症、天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節症、スティフマン症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、甲状腺疾患、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、白斑、ならびにウェゲナー肉芽腫症を含むが、これらに限定されることはない。
【0067】
本明細書において記載するように、一つまたは複数の自己免疫状態を有する患者を、例えば、Foxp3の発現および/または活性の増大を促進し、それによってインビトロおよび/またはインビボでTreg細胞の数または活性の増大を促進しうる、一つもしくは複数の転写因子(例えば、AHRなどのリガンド活性化転写因子)および/または一つもしくは複数の転写因子リガンド(例えば、TCDD、トリプタミン(TA)および/または2-(1'H-インドール-3'-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE))の治療的に有効な量を用いて患者におけるTreg細胞の数および/またはTreg細胞の活性を増大することによって処置することができる。
【0068】
いくつかの態様において、該方法は、本明細書において記載の転写因子、例えば、NKX22、AHR、EGR1、EGR2、EGR3、NGFICおよび/またはDelta EF1をコードする核酸を含んだ組成物を(例えば、T細胞の集団にまたは対象に)投与する段階を含む。核酸は発現ベクター、例えば、当技術分野において公知であるような改変ウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクターまたはアデノウイルスベクターの中にあってよい。細胞治療または遺伝子治療プロトコルでこれらのベクターを用いるための方法は、当技術分野において公知である。細胞治療法の場合、処置される対象から採取されたT細胞の集団から始めることが望ましい。
【0069】
いくつかの態様において、該方法は、本明細書において記載する転写因子、例えば、AHR受容体を活性化するリガンドを含んだ組成物を投与する段階を含む。いくつかの態様において、リガンドは一つまたは複数のその分解阻害剤と同時投与され、例えば、トリプタミンはモノアミンオキシダーゼ阻害剤、例えば、トラニルシプロミンとともに投与される。阻害剤は同じ組成物中でまたは別の組成物中で投与することができる。このように、本発明は同様に、トリプタミンおよびその分解阻害剤、例えば、MAOI、例えば、トラニルシプロミンを含んだ組成物を含む。
【0070】
いくつかの態様において、処置を必要とする患者に、Foxp3の発現および/または活性の増大を促進し、それによってインビトロおよび/またはインビボでTreg細胞の数または活性の増大を促進しうる一つまたは複数のリガンド(例えば、TCDD、トリプタミン(TA)および/または2-(1'H-インドール-3'-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE))の薬学的に有効な用量を投与することができる。
【0071】
代替としてまたはさらに、Treg細胞に分化できる細胞(例えば、ナイーブT細胞および/またはCD4+CD62リガンド+ T細胞)の集団を、インビトロでFoxp3発現および/または活性の増大を促進できる転写因子リガンド(例えば、TCDD、トリプタミン(TA)および/または2-(1'H-インドール-3'-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE))と接触させ、それにより集団中のTreg細胞の数の増大を効果的に促進させることもできる。あるいはまたはさらに、Treg細胞を含有する細胞の集団(例えば、単離された(例えば、100%の) Treg細胞または少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、95もしくは99%のTreg細胞を含有する細胞の集団)を、Foxp3発現および/または活性の増大を促進できる転写因子リガンド(例えば、TCDD、トリプタミン(TA)および/または2-(1'H-インドール-3'-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE))と接触させ、それにより集団中のTreg細胞の活性の増大を効果的に促進させることもできる。あるいはまたはさらに、細胞を、本明細書において記載する転写因子、例えば、NKX22、AHR、EGR1、EGR2、EGR3、NGFICおよびDelta EF1をコードする核酸を含んだ、発現ベクター、例えば、レンチウイルス、レトロウイルスまたはアデノウイルスなどのウイルスのベクターと接触させることもできる。いくつかの態様において、細胞はまた、例えば、それらを有効な量のT細胞活性化剤、例えば、抗CD3抗体および抗CD28抗体の一方または両方の組成物と接触させることによって活性化される。次いで、これらの集団由来の一つまたは複数の細胞を患者に、単独でまたはFoxp3の発現および/もしくは活性の増大を促進し、それによってインビトロおよび/もしくはインビボでTreg細胞の数もしくは活性の増大を促進しうる一つもしくは複数のリガンド(例えば、TCDD、トリプタミン(TA)および/もしくは2-(1'H-インドール-3'-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE))との組み合わせで投与することができる。
【0072】
患者選定
本明細書において記載する組成物および方法は、治療的免疫調節から恩恵を受けうる患者(例えば、ヒト) (例えば、免疫応答の抑制を必要とする患者)を処置するのに特に役立つ。該方法は、処置を必要とする患者を選定する段階および本明細書において記載する組成物の一つまたは複数を患者に投与する段階を含む。処置を必要とする対象は、例えば、そのかかりつけの医師によって特定されることができる。
【0073】
いくつかの態様において、該方法は、疾患に特異的な自己抗原に対する自己抗体の存在および/またはレベル、例えば、表1または2に記載した自己抗原に対する自己抗体の存在および/またはレベルを判定する段階を含む。この結果を用いて、疾患を発症する対象の可能性または危険性を判定することができ; 自己抗体の存在および/またはレベルに基づく本明細書において記載の方法を用いた処置のために対象を選定することができる。
【0074】
処置の検証/処置有効性のモニタリング
処置の間および/または後に、患者を、例えば、特定の自己免疫疾患またはその症状の重症度を評価するのに当技術分野において公知の方法を用い、一つまたは複数の時点で評価して処置の有効性を判定することができる。いくつかの態様において、疾患に特異的な自己抗原に対する自己抗体のレベル、例えば、表1または2に記載した自己抗原に対する自己抗体のレベルをモニターすることもでき; 自己抗体のレベルの減少(例えば、有意な減少)は、正の応答を示唆し、すなわち、処置が成功したことを示唆しうる; 例えば、Quintana et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 101 (suppl. 2): 14615-14621 (2004)を参照されたい。その後、処置を修正なしに継続してもよく、修正して進行もしくは転帰を改善してもよく(例えば、投与量レベル、投与の頻度、薬学的組成物の量を増やしてもよく、および/もしくは投与の様式を変えてもよく)、または停止してもよい。
【0075】
投与
本明細書において記載する組成物の一つまたは複数の治療的に有効な量を標準的な方法により、例えば、一つまたは複数の投与経路により、例えば、米国食品医薬品局によって現在認可されている(FDA; 例えば、ワールドワイドウェブ・アドレスfda.gov/cder/dsm/DRG/drg00301.htm参照)投与経路の一つまたは複数により、例えば、経口的に、局所的に、粘膜に、静脈内にまたは筋肉内に投与することができる。
【0076】
いくつかの態様において、本明細書において記載するリガンドの一つまたは複数を驚くべき有効性で経口的に投与することができる。
【0077】
薬学的処方物
本明細書において記載する(例えば、小分子リガンド、例えばTCDD、トリプタミン(TA)、および/または2-(1'H-インドール-3'-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE)の一つまたは複数を含むが、これらに限定されない)組成物の一つまたは複数の治療的に有効な量を、対象、例えば、ヒトへの投与に適した薬学的組成物の中に組み入れることができる。そのような組成物は典型的には、組成物および薬学的に許容される担体を含む。本明細書において用いられる場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的投与に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含むよう意図される。薬学的に活性な物質のためにそのような媒質および薬剤を用いることは公知である。任意の従来の媒質または薬剤が活性化合物と不適合である場合を除き、そのような媒質を本発明の組成物に使用することができる。補完的な活性化合物、例えば、リガンドの分解阻害剤を組成物の中に組み入れることもできる。
【0078】
いくつかの態様において、組成物は自己抗原、例えば、表1もしくは2に記載した自己抗原、または自己免疫疾患と関連することが当技術分野において公知の別の自己抗原を含むこともできる。
【0079】
薬学的組成物はその意図した投与経路に適合するように処方することができる。非経口適用、皮内適用、または皮下適用に使用される溶液または懸濁液としては、以下の成分: 注射用蒸留水、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたはその他の合成溶媒などの滅菌希釈剤; ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤; アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤; エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤; 酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤ならびに塩化ナトリウムまたはデキストロースのような等張性の調整用の作用物質を挙げることができる。pHは塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で、調整することができる。非経口調製物はアンプル、使い捨て注射器またはガラスもしくはプラスチック製の複数回投与用バイアルの中に封入することができる。
【0080】
注射可能な用途に適した薬学的組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)または滅菌分散液および注射可能な滅菌溶液または滅菌分散液の即時調製用の滅菌粉末を含む。静脈内投与の場合、適当な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標) (BASF, Parsippany, NJ)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。いかなる場合でも、この組成物は無菌でなければならず、容易に注射できる程度に流動性とするべきである。これは製造および保存の条件下で安定でなければならず、これは細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。この担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびその適当な混合物を含む溶媒または分散媒とすることができる。その適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によりおよび界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用からの保護はさまざまな抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、塩化ナトリウムを組成物の中に含めることが好ましいであろう。注射可能な組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物の中に含めることにより実現することができる。
【0081】
注射可能な滅菌溶液は、必要とされる量の組成物(例えば、本明細書において記載する薬剤)を適切な溶媒中に、必要に応じて、上記に列挙した成分の一つまたは組み合わせとともに組み入れ、続けてろ過滅菌を行うことによって調製することができる。一般に、分散液は活性化合物を、基本的な分散媒および上記に列挙したものから必要とされるその他の成分を含む滅菌媒体の中に組み入れることによって調製される。注射可能な滅菌溶液の調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製の方法は、活性成分に加えて所望とされる付加的な任意の成分の粉末を予め滅菌ろ過したその溶液からもたらす真空乾燥法および凍結乾燥法である。
【0082】
経口用組成物は一般に、不活性希釈剤または食用担体を含む。それらはゼラチンカプセルの中に封入され、または錠剤に圧縮されることができる。治療的な経口投与を目的に、活性化合物を賦形剤とともに組み入れて、錠剤、トローチ、またはカプセルの形態で使用することができる。経口用組成物はうがい薬として用いるために液体担体を使用して調製することもでき、この場合、液体担体中の化合物は経口的に適用され、かつうがいされ(swished)、かつ喀出されまたは嚥下される。薬学的に適合する結合剤および/または補助物質を、組成物の一部として含めることができる。この錠剤、丸剤、カプセル、トローチなどは、以下の成分のいずれかまたは似通った性質の化合物を含むことができる: 微結晶性セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチンなどの結合剤; でんぷんもしくはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、PRIMOGEL(商標) (ナトリウムカルボキシメチルでんぷん)、もしくはとうもろこしでんぷんなどの崩壊剤; ステアリン酸マグネシウムもしくはSTEROTES(商標)などの滑沢剤; コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤; スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤; またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ風味などの香料添加剤。
【0083】
全身投与を経粘膜的なまたは経皮的な手段によるものとすることもできる。経粘膜投与または経皮投与の場合、浸透される障壁に適した浸透剤が処方物の中に用いられる。そのような浸透剤は一般に公知であり、例えば、経粘膜投与の場合、界面活性剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は鼻腔用スプレイまたは坐剤の使用により達成することができる。経皮投与の場合、活性化合物は当技術分野において一般に公知であるように軟膏剤(ointment)、膏薬(salve)、ゲル、またはクリームの中に処方される。
【0084】
一つの態様において、活性化合物はインプラントおよびマイクロカプセル化した送達系を含めて、制御放出処方物のような、体内からの迅速除去から化合物を防御できる担体とともに調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生体分解・生体適合性高分子を用いることができる。そのような処方物の調製方法は当業者には明らかであろう。その材料はAlza社およびNova Pharmaceuticals社から商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体によって感染細胞を標的とするリポソームを含めて)を薬学的に許容される担体として用いることもできる。これらは当業者に公知の方法により、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているように、調製することができる。
【0085】
核酸分子をベクター中に挿入し、これを遺伝子治療用ベクターとして使用することができる。遺伝子治療用ベクターは、例えば、静脈注射、局所投与により(米国特許第5,328,470号を参照のこと)または定位注射により(例えばChen et al., PNAS 91:3054-3057, 1994を参照のこと)、対象に送達することができる。遺伝子治療用ベクターの薬学的調製物は、許容される希釈剤の中に遺伝子治療用ベクターを含むことができ、または遺伝子送達媒体が埋め込まれた徐放性マトリックスを含むことができる。あるいは、完全な遺伝子送達ベクターを組み換え細胞からそのまま産生させることができる場合、例えば、レトロウイルスベクターの場合、薬学的調製物は遺伝子送達系を産生する一つまたは複数の細胞を含むことができる。
【0086】
薬学的組成物は投与のための使用説明書とともに容器、パック、または分注器の中に含めることができる。一つの局面において、薬学的組成物はキットの一部として含めることができる。
【0087】
一般に、薬学的組成物を投与するために用いられる投与量は、毒性、刺激性またはアレルギー反応などの望ましくない副作用なしに、予防および/または処置のために意図した目的の達成を促進する。個々の要求は変わりうるが、処方物の有効量に最適な範囲の判定は当技術分野の技量の範囲内である。ヒトの用量は動物試験から容易に推定することができる(Katocs et al., Chapter 27 In:「Remington's Pharmaceutical Sciences」, 18th Ed., Gennaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1990)。一般に、当業者によって調整されうる、処方物の有効量を提供するのに必要な投与量は、年齢、健康状態、身体状態、体重、レシピエントの疾患または障害の種類および程度、処置の頻度、必要なら、併用療法の性質、ならびに所望の効果の性質および範囲を含む、いくつかの要因に応じて変わるであろう(Nies et al., Chapter 3, In: Goodman & Gilman's 「The Pharmacological Basis of Therapeutics」, 9th Ed., Hardman et al., eds., McGraw-Hill, New York, N.Y., 1996)。
【0088】
AHRリガンド-ナノ粒子
本明細書において実証するように、AHRリガンドに連結されたナノ粒子を含む組成物は、リガンドを経口でも注射でもともに送達するうえで、および生きている動物でTreg応答を誘導するうえで、驚くほどに有効である。したがって、本発明は、生体適合性ナノ粒子に連結されたAHRリガンドを、任意で選択の細胞または組織にナノ粒子を標的化する抗体とともに含んだ組成物を、さらに含む。
【0089】
AHR転写因子リガンド
AHR特異的リガンド、例えば、高親和性AHRリガンド2,3,7,8-テトラクロロ-ジベンゾ-p-ダイオキシン(TCDD)、トリプタミン(TA)および/または2-(1'H-インドール-3'-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE)は、異常な(例えば、過剰な、上昇したまたは不適切な)免疫応答によって引き起こされる疾患または障害、例えば、自己免疫疾患または障害の処置において免疫応答を抑制するのに有用でありうる、Treg免疫調節細胞の数および/または活性の増大を促進する。
【0090】
他の潜在的に有用なAHR転写因子リガンドは、Denison and Nagy, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol., 43:309-34, 2003および本明細書に引用している参考文献に記載されており、それらは全てその全体が本明細書に組み入れられる。他のそのような分子には平面疎水性のHAH (ポリハロゲン化ジベンゾ-pジオキシン、ジベンゾフランおよびビフェニルなどの)およびPAH (3-メチルコラントレン、ベンゾ(a)ピレン、ベンズアントラセンおよびベンゾフラボンなどの)、ならびに関連化合物が含まれる(Denison and Nagy, 2003、前記)。Nagy et al., Toxicol. Sci. 65:200-10 (2002)では、他のリガンドを特定かつ確認するのに有用な高速大量処理スクリーニングについて記載している。Nagy et al., Biochem. 41:861-68 (2002)も参照されたい。いくつかの態様において、ナノ粒子組成物において有用なそれらのリガンドは、TCDD、TAおよび/またはITEと競合的に結合するものである。
【0091】
生体適合性ナノ粒子
本明細書において記載する方法および組成物において有用なナノ粒子は、(i) 生体適合性である、すなわち、薬学的に適切な量で用いられる場合に生きている動物において重大な有害反応を引き起こさない、(ii) 結合部分が共有結合的に付着されうる官能基を特徴とする、(iii) 相互作用部分とナノ粒子との低い非特異的結合を示す、および(iv) 溶液中で安定である、すなわち、ナノ粒子が沈殿しない、材料でできている。ナノ粒子は単分散粒子(ナノ粒子1個につき1つの材料、例えば、1つの金属の単結晶)または多分散粒子(ナノ粒子1個につき複数の、例えば、2つ、3つまたは4つの結晶)であることができる。
【0092】
いくつかの生体適合性ナノ粒子、例えば、有機または無機ナノ粒子が当技術分野において公知である。リポソーム、デンドリマー、炭素ナノ材料および高分子ミセルは有機ナノ粒子の例である。量子ドットを用いることもできる。無機ナノ粒子は金属ナノ粒子、例えば、Au、Ni、PtおよびTiO2ナノ粒子を含む。磁性ナノ粒子、例えば、デキストランまたはPEG分子で囲まれたFe2+および/またはFe3+のコアを有する10〜20 nmの球状結晶を用いることもできる。いくつかの態様において、例えばQian et al., Nat. Biotechnol. 26(1):83-90 (2008); 米国特許第7060121号; 米国特許第7232474号; および米国特許出願公開第2008/0166706号に記載されているように、コロイド金ナノ粒子が用いられる。適当な、ナノ粒子、ならびに多機能ナノ粒子を構築および使用するための方法は、例えば、Sanvicens and Marco, Trends Biotech., 26(8): 425-433 (2008)に論じられている。
【0093】
全ての態様において、ナノ粒子は官能基を介して本明細書において記載するAHRリガンドに付着(連結)される。いくつかの態様において、ナノ粒子は、官能基を含む高分子と会合し、金属酸化物を互いに分散状態に保つのにも役に立っている。高分子は、以下に限定されるものではないが、ポリエチレングリコールもしくはシランなどの合成高分子、天然高分子、あるいは合成もしくは天然高分子のどちらかの誘導体またはこれらの組み合わせであることができる。有用な高分子は親水性である。いくつかの態様において、高分子「コーティング」は磁性金属酸化物の周りの連続薄膜ではなく、金属酸化物に付着し、これを取り囲んだ「網状」または「雲状」の伸長高分子鎖である。高分子は、デキストラン、プラナン(pullanan)、カルボキシデキストラン、カルボキシメチルデキストラン、および/または還元型カルボキシメチルデキストランを含めて、多糖類および誘導体を含むことができる。金属酸化物は、互いに接触しているか、または高分子によって個別に捕捉もしくは包囲されている、一つまたは複数の結晶の集合体であることができる。
【0094】
他の態様において、ナノ粒子は非重合性官能基組成物と会合している。会合した高分子をもたない安定化された機能化ナノ粒子を合成する方法が公知であり、それらも本発明の範囲内である。そのような方法は、例えば、Halbreich et al., Biochimie, 80 (5-6):379-90, 1998に記載されている。
【0095】
いくつかの態様において、ナノ粒子は直径が約1〜100 nm、例えば、約25〜75 nm、例えば、約40〜60 nmまたは約50〜60 nm未満の外形寸法を有する。高分子成分は、いくつかの態様において、例えば、約5〜20 nmの厚さまたはそれ以上のコーティングの形態であることができる。ナノ粒子の外形寸法は約15〜200 nm、例えば、約20〜100 nm、約40〜60 nm; または約60 nmである。
【0096】
ナノ粒子の合成
ナノ粒子を調製できるさまざまな方法が存在しているが、いかなる方法でも、その結果は、ナノ粒子を結合部分に連結させるために使用できる官能基を有するナノ粒子でなければならない。
【0097】
例えば、AHRリガンドは、官能化高分子への共有結合的な付着を通じて金属酸化物に、または非重合性の表面官能化金属酸化物に、連結させることができる。後者の方法では、ナノ粒子をAlbrecht et al., Biochimie, 80 (5-6): 379-90, 1998の方法の変形にしたがって合成することができる。ジメルカプトコハク酸はナノ粒子にカップリングされると、カルボキシル官能基をもたらす。官能化とは、ナノ粒子に所望の部分、例えば、本明細書において記載するAHRリガンドまたは抗体を付着させるために使用できるアミノもしくはカルボキシルまたは他の反応基の存在を意味する。
【0098】
別の態様において、AHRリガンドは、ナノ粒子と会合した官能化高分子を介してナノ粒子に付着される。いくつかの態様において、高分子は親水性である。具体的な態様において、該結合体は、末端のアミノ、スルフヒドリル、またはリン酸基を有するオリゴヌクレオチド、および親水性高分子上にアミノまたはカルボキシ基を保有する超常磁性酸化鉄ナノ粒子を用いて作製される。カルボキシおよびアミノ誘導体化したナノ粒子を合成する方法がいくつかある。官能化し、コーティングしたナノ粒子を合成する方法は、以下でさらに詳細に論じられている。
【0099】
カルボキシ官能化ナノ粒子は、例えば、Gormanの方法(WO 00/61191参照)にしたがって作製することができる。カルボキシ官能化ナノ粒子は、多糖体コーティングナノ粒子から、強塩基中でブロモ酸またはクロロ酢酸と反応させてカルボキシル基を付着させることにより、作製することもできる。さらに、カルボキシ官能化粒子は、アミノ官能化ナノ粒子から、無水コハク酸または無水マレイン酸などの試薬を用いてアミノ基をカルボキシ基に変換することにより、作製することができる。
【0100】
ナノ粒子の大きさは、反応条件を調整することにより、例えば、米国特許第5,262,176号に記載されているように温度を変化させることにより制御することができる。例えば、米国特許第5,492,814号に記載されているように、遠心分離法、限外ろ過法、またはゲルろ過法を用いて粒子を分画することによって、均一な粒径の材料を作製することもできる。
【0101】
ナノ粒子を過ヨウ素酸塩で処理しアルデヒド基を形成させることもできる。次いで、アルデヒド含有ナノ粒子をジアミン(例えば、エチレンジアミンまたはヘキサンジアミン)と反応させることができるが、これによってシッフ塩基を形成させ、その後、水素化ホウ素ナトリウムまたはシアノ水素化ホウ素ナトリウムで還元することができる。
【0102】
デキストランコーティングナノ粒子を作製し、例えばエピクロルヒドリンと、架橋結合させることもできる。アンモニアを添加するとエポキシ基と反応してアミン基を生じる。Hogemann et al., Bioconjug. Chem. 2000. 11(6):941-6、およびJosephson et al., Bioconjug. Chem., 1999, 10(2):186-91を参照されたい。
【0103】
カルボキシ官能化ナノ粒子は、水溶性カルボジイミドおよびジアミン、例えばエチレンジアミンまたはヘキサンジアミンの使用により、アミノ官能化磁性粒子に変換することができる。
【0104】
オリゴヌクレオチドまたはポリペプチドなどのビオチン化された結合部分とともに用いるナノ粒子に、アビジンまたはストレプトアビジンを付着させることができる。例えば、Shen et al., Bioconjug. Chem., 1996, 7(3):311-6を参照されたい。同様に、アビジン標識結合部分とともに用いるナノ粒子に、ビオチンを付着させることもできる。
【0105】
これらの方法の全てで、低分子量化合物を、限外ろ過法、透析法、磁気分離法、または他の手段によってナノ粒子から分離することができる。未反応のAHRリガンドを、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーによってリガンド-ナノ粒子結合体から分離することができる。
【0106】
いくつかの態様において、例えばQian et al., Nat. Biotechnol. 26(1):83-90 (2008); 米国特許第7060121号; 米国特許第7232474号; および米国特許出願公開第2008/0166706号に記載されているように、当技術分野において公知の方法を用いてコロイド金ナノ粒子が作製される。
【0107】
いくつかの態様において、例えば、米国特許第7291598号; 同第5145684号; 同第6270806号; 同第7348030号などに記載されているように、ナノ粒子がペグ化される。
【0108】
抗体
いくつかの態様において、ナノ粒子は、細胞を選択的に標的化するために抗体も含む。本明細書において用いられる「抗体」という用語は、完全長の、二本鎖免疫グロブリン分子、ならびに合成変種を含め、その抗原結合部分および断片をいう。典型的な完全長抗体は、二本の重(H)鎖可変領域(本明細書においてVHと略される)および二本の軽(L)鎖可変領域(本明細書においてVLと略される)を含む。本明細書において用いられる抗体の「抗原結合断片」という用語は、標的に選択的に結合する能力を保持した完全長抗体の一つまたは複数の断片をいう。抗原結合断片の例としては、(i) Fab断片、つまりVL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片; (ii) F(ab')2断片、つまりヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された二本のFab断片を含む二価断片; (iii) VHおよびCH1ドメインからなるFd断片; (iv) 抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v) VHドメインからなる、dAb断片(Ward et al., Nature 341:544-546 (1989)); ならびに(vi) 単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられるが、これらに限定されることはない。さらに、Fv断片の二つのドメインVLおよびVHは別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、組み換え方法を用い、VLおよびVH領域が対になって一価分子を形成している単一のタンパク質鎖(一本鎖Fv (scFv)としても公知; 例えば、Bird et al. Science 242:423-426 (1988); およびHuston et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883 (1988)を参照のこと)として作製されることを可能にする合成リンカーによりつなぎ合わせることができる。そのような一本鎖抗体は「抗原結合断片」という用語のなかにも包含される。
【0109】
抗体および抗体断片の産生は同分野において十分に実証されている。例えば、Harlow and Lane, 1988. Antibodies, A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratoryを参照されたい。例えばJones et al., Nature 321: 522-525 (1986)であるが、これはヒト抗体のCDRをマウス抗体由来のものと置き換えることについて開示している。Marx, Science 229:455-456 (1985)では、マウス可変領域およびヒト定常領域を持つキメラ抗体について論じている。Rodwell, Nature 342:99-100 (1989)では、抗体CDRの情報から導出される、より低分子量の認識要素について論じている。Clackson, Br. J. Rheumatol. 3052: 36-39 (1991)では、Fv断片誘導体、一本鎖抗体、融合タンパク質キメラ抗体およびヒト化げっ歯類抗体を含め、遺伝子操作されたモノクローナル抗体について論じている。Reichman et al., Nature 332: 323-327 (1988)では、ラット超可変領域が移植されたヒト抗体について開示している。Verhoeyen, et al., Science 239: 1534-1536 (1988)では、マウス抗原結合部位のヒト抗体への移植について教示している。
【0110】
本明細書において記載する方法では、化合物をT細胞、B細胞、樹状細胞および/またはマクロファージに標的化することが望ましく、それゆえ、それらの細胞種の一種または複数種に選択的な抗体を用いることができる。例えば、T細胞の場合、抗CXCR4抗体、抗CD28抗体、抗CD8抗体、抗TTLA4抗体または抗CD3抗体を用いることができ; B細胞の場合、CD20、CD19に対する抗体、またはB細胞受容体に対する抗体を用いることができ; 樹状細胞の標的化の場合、CD11c、DEC205、MHCクラスIもしくはクラスII、CD80またはCD86に対する代表的な抗体を用いることができ; マクロファージの場合、CD11b、MHCクラスIもしくはクラスII、CD80またはCD86に対する代表的な抗体を用いることができる。他の適当な抗体は当技術分野において公知である。
【0111】
キット
本発明は同様に、キットを含む。いくつかの態様において、キットは、本明細書において記載する組成物の一用量または複数用量を含む。導入療法および維持療法のための投薬形態の組成、形状および種類は、患者の要件に応じて変わりうる。例えば、投薬形態は、次の任意の組み合わせを含めて、非経口の投薬形態、経口の投薬形態、遅延または制御放出性の投薬形態、局所および粘膜の投薬形態でありうる。
【0112】
特定の態様において、キットは包装または容器の中に以下の一つまたは複数を含むことができる: (1) 本明細書において記載する組成物の一用量または複数用量; (2) 一種または複数種の薬学的に許容される補助剤または賦形剤(例えば、薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体および包接体); (3) 用量の投与のための一種または複数種の媒体; (5) 投与のための使用説明書。構成成分(1)〜(5)の、全てを含め、二つまたはそれ以上が同じ容器中に見出される態様を用いることもできる。
【0113】
キットが供給される場合、含まれる組成物の種々の成分は別個の容器中に包装され、使用の直前に混合されてもよい。それらの成分をそのように別個に包装することで活性成分の機能を損なうことなく、長期の保存が可能とされうる。二種以上の生物活性剤が特定のキットに含まれる場合、生物活性剤は、(1) 別個に包装され、使用の直前に適切な(類似したまたは異なった、しかし適合した)補助剤または賦形剤と別々に混合されてもよく、(2) 一緒に包装され、使用の直前に一緒に混合されてもよく、または(3) 別個に包装され、使用の直前に一緒に混合されてもよい。選択した化合物が混合後に安定した状態を保っていれば、化合物は、例えば、数分前、数時間前、数日前、数ヶ月前、数年前を含めて、使用の直前ではなく使用前の時点で、および製造時に混合されてもよい。
【0114】
本発明の特定のキットに含まれる組成物は、種々の成分の有効期限が最適に保たれ、容器の材料によって吸着されないまたは変えられないような、任意の種類の容器中で供給されることができる。これらの容器に適した材料は、例えば、ガラス、有機高分子(例えば、ポリカーボネートおよびポリスチレン)、セラミック、金属(例えば、アルミニウム)、合金、または類似の試薬を保持するために通例利用されるその他任意の材料を含むことができる。例示的な容器は、非限定的に、試験管、バイアル、フラスコ、ボトル、注射器などを含むことができる。
【0115】
上記のように、キットには使用説明材料が供給されてもよい。これらの使用説明書は印刷されてもよく、ならびに/または、非限定的に、フロッピーディスク、CD-ROM、DVD、Zipディスク、ビデオカセット、オーディオテープおよびフラッシュメモリー素子などの、電子可読媒体として供給されてもよい。あるいは、使用説明書はインターネットウェブサイトに公開されてもよく、または使用者に電子メールとして配布されてもよい。
【実施例】
【0116】
本発明を以下の実施例のなかでさらに説明するが、それらは、特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲を限定するものではない。
【0117】
実施例1: ゼブラフィッシュFoxp3のクローニングおよび特徴付け
ゼブラフィッシュは脊椎動物発生の実験モデルであり; 本明細書において記載するように、それを免疫原性モデルとして用いることもできる。本実施例では、哺乳動物Foxp3のゼブラフィッシュ(ゼブラダニオ)機能的相同体(本明細書においてzFoxp3と呼ぶ)のクローニングおよび特徴付けについて記載する。
【0118】
zFoxp3の特定
Foxp3依存的な免疫調節機構がゼブラフィッシュで作動しているかどうかを調べるため、本発明者らは、Foxp3相同体を求めてゼブラフィッシュゲノムを探索し、本発明者らはその相同体をzFoxp3と名付けた(図1E)。系統発生解析ではzFoxp3を、哺乳動物およびその他魚類のオルソロガスな予測と合わせて、サブツリーに配置し、zFoxp3が哺乳動物Foxp3に対するゼブラフィッシュオルソログであることが示唆された(図1F)。哺乳動物では、Foxp3はよく保存されたシンテニーブロックに位置している。実際に、本発明者らは哺乳動物X染色体とゼブラフィッシュ第8染色体との間で、zFoxp3が位置している領域中にいくつかのオルソロガス遺伝子(suv39h1、cacnals、tspyl2、wasp)を見出し、zFoxp3がFoxp3の魚類オルソログであるという可能性を強めた。
【0119】
遺伝子系統図解析に用いたアミノ酸配列のアクセッション番号は、次の通りである: ゼブラダニオFoxp1a Q08BX8 BC124513; Foxp1b Q2LE08 NM_001039637; Foxp2 Q4JNX5 NM_001030082; Foxp3注釈付き(EST CK028390); Foxp4注釈付き。ヒト: Foxp1 Q9H334 NM_001012505、Foxp2 015409 NM_148899、Foxp3 Q9BZS1 NM_014009、Foxp4 Q8IVH2 NM_138457; マウス: Foxp1 P58462 NM_053202、Foxp2 P58463 NM_053242、Foxp3 Q99JB6 NM_054039、Foxp4 Q9DBY0 NM_028767; カタユウレイボヤFoxp Q4H3H6。Foxp1、Foxp2、Foxp3およびFoxp4の明白なトゲウオ・オルソログのアミノ酸配列は、Ensemblから得た。
【0120】
zFoxp3のクローニング
zFoxp3はTOPO(登録商標) PCRクローニングキット(Invitrogen, CA, USA)を製造元の使用説明書にしたがって用いることにより、ゼブラフィッシュ腎臓より調製されたcDNAからクローニングした。
【0121】
Foxp3の特徴付け
哺乳動物Foxp3でのDNA (Stroud et al., Structure. 14, 159-66 (2006))または転写因子NFAT (Wu et al., Cell 126, 375-87 (2006))とのフォークヘッド・ドメインの相互作用を媒介するものと予測されるアミノ酸(aa)は、zFoxp3において、ヒトで突然変異するとFoxp3活性の損なわれることが分かったaa (Ziegler, Annu Rev Immunol. 24, 209-26 (2006))と同様に、保存されている(図1E)。亜鉛フィンガー/ロイシンジッパードメインは、Foxp3のホモ二量体化およびその転写調節活性に重要である(Chae et al., Proc Natl Acad Sci USA 103, 9631-6 (2006))。zFoxp3が二量体化する能力を調べるため、本発明者らは、Hisタグ付きzFoxp3およびウミシイタケ・ルシフェラーゼタグ付きFoxp3 (Foxp3-Ren)を用いてプルダウンアッセイ法をデザインした。記載されているように(Bettelli et al., Proc Natl Acad Sci USA 102, 5138-43 (2005)) 293細胞をトランスフェクトし、24または48時間後にデュアル・ルシフェラーゼアッセイキット(New England Biolabs, Ipswich, MA)を用いて細胞を分析した(細胞を溶解し、zFoxp3をNi-アガロースでプルダウンし、ペレット中のウミシイタケ・ルシフェラーゼ活性を定量化した)。標準化のためにTk-Renillaを用いた。あるいは、トランスフェクト細胞を溶解し、記載されているように(Bettelli et al., Proc Natl Acad Sci USA 102, 5138-43 (2005))免疫沈降を行った; ヘマグルチニン(HA)標識NFATおよびNF-kBを、Santa Cruz Biotechnology (Santa Cruz, CA, USA)から入手した抗HA抗体および抗P65抗体で検出した。
【0122】
図1Gに示されるように、zFoxp3はFoxp3-Renをプルダウンし、zFoxp3がホモ二量体化できることを示唆した。ゆえに、zFoxp3は哺乳動物Foxp3に共通の構造的特徴を有する。
【0123】
Foxp3はNF-kBおよびNFATと物理的に相互作用して、その転写活性を下方制御することができる(Wu et al., (2006)、前記; Bettelli et al., (2005)、前記)。図2aに示されるように、zFoxp3はNFATおよびNF-κB応答性プロモーターの活性化を妨げた。この効果はNF-κBでいっそう強力であった。共免疫沈降実験から、zFoxp3がNF-κBともNFATとも相互作用することが示された。NFATによって推進されるレポーターに及ぼすFoxp3の阻害効果の低下に一致して(図2a参照)、zFoxp3-NFATの相互作用はさらに弱かった(図2b参照)。これらの結果からzFoxp3がNFATおよびNF-κBと直接的に相互作用して、その転写活性を妨害できることが示唆される。
【0124】
MSCV GFP-RVレトロウイルスDNAプラスミドをPhoenixパッケージング細胞株にトランスフェクトし、72時間後に、レトロウイルスを含有する上清を回収した。MACS精製CD4+ T細胞を24時間後、プレートに結合されたCD3およびCD28に対する抗体で活性化し、これに、8 μg/mlポリブレン(Sigma-Aldrich)および組み換えヒトIL-2 (25単位/ml)を補充した、レトロウイルスを含有する上清を遠心分離によって(2000 rpmで45分)感染させた。
【0125】
細胞を72時間、無血清のX-VIVO 20(商標)培地(Bio Whittaker, Walkersville, MD, USA)中で培養した。最後の16時間の間に、細胞に1 μCiの[3H]チミジン(PerkinElmer, Waltham, MA, USA)をパルスし、引き続いてガラス繊維フィルタ上に収集し、βカウンタ(1450 Microbeta, Trilux, PerkinElmer)中で取り込まれた[3H]チミジンの分析を行った。あるいは、培養上清を活性化後48時間の時点で回収し、BD Biosciencesから入手したIFN-γ、IL-17、IL-4、IL-10に対する抗体およびR&D Systemsから入手したTGF-βに対する抗体を用いてELISAによりサイトカイン濃度を測定した。抑制アッセイ法の場合、CD3に対する抗体で未処理C57BL/6マウス由来のMACS精製CD4+CD25- T細胞(1〜5×104細胞/ウェル)を刺激し、かつ異なる比率のCD4+GFP+レトロウイルス導入T細胞の存在下で3日間、C57BL/6の照射脾臓細胞(0.3〜1.5×104細胞/ウェル)を刺激した。
【0126】
マウスT細胞へのzFoxp3のレトロウイルス導入により、CD25、CTLA-4およびGITRなどのTreg機能と関連する表面分子の上方制御が引き起こされた(図2c参照)。さらに、マウスT細胞におけるzFoxp3の異所性発現は、CD3に対する抗体での活性化時のその増殖およびサイトカイン分泌の大幅な減少を引き起こした(図2d参照)。さらに、zFoxp3導入T細胞は他のT細胞の活性化を、T細胞増殖という点でもサイトカイン分泌という点でも、用量依存的に阻害することができた(図2e参照)。要約すれば、マウスT細胞におけるzFoxp3の発現はTreg様の表現型を誘導した。これらのデータから、zFoxp3は哺乳動物Foxp3の機能的相同体であること、およびFoxp3はTreg様の表現型を促進できることが示唆される。
【0127】
ゼブラフィッシュ組織のウエスタンブロット試験により、胸腺、腎臓および脾臓においてzFoxp3の予想サイズに適合するFoxp3交差反応性タンパク質が特定された。次いで、zFoxp3の発現をFACS選別リンパ球、骨髄単球および赤血球に関してリアルタイムPCRにより分析した(Traver et al., Nat Immunol 4, 1238-46 (2003))。RNAeasyカラム(Qiagen, Valencia, CA, USA)を用いて細胞からRNAを抽出し、相補的DNAを推奨(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA, USA)の通り調製し、リアルタイムPCRの鋳型として用いた。Foxp3の発現をGeneAmp 5500 Sequence Detection System (Applied Biosystems)にて特異的なプライマーおよびプローブ(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)により定量化した。発現をハウスキーピング遺伝子GAPDHの発現に対して規準化した。
【0128】
図3aに示されるように、zFoxp3発現はリンパ球画分に限定された。この所見は、哺乳動物Foxp3の発現パターンと一致しており、組織特異性を制御する遺伝子発現の調節機構の保存を支持している。
【0129】
実施例2: Foxp3における転写因子結合部位の特定
ゲノムDNAにおける遺伝子発現を調節する要素は、選択圧下にあり、それゆえ、周囲の非機能配列よりも保存されている。系統発生フットプリンティングは、遺伝子発現の調節に関与するDNA領域を特定するための、異なる種由来のオルソロガス遺伝子間の配列保存の解析に基づく方法である。特定されたら、これらの保存領域をTFBS検出アルゴリズムで解析して、推定上のTFBSのリストを作成することができる。
【0130】
本発明者らは、ゼブラフィッシュ、マウスおよびヒトFoxp3遺伝子内の調節領域を特定することに狙いを定めて、系統発生フットプリンティング解析を行った(Ovcharenko et al., Genome Res 15, 184-94 (2005))。ゼブラフィッシュのような遠縁の種を含めることは、いずれの選択圧にもさらされなかったDNA領域中での保存調節配列の特定を容易にするので、非常に情報価値がある(Ovcharenko et al., Genome Res 15, 184-94 (2005))。
【0131】
Mulanサーバ(mulan.dcode.org)を用いて、Foxp3の系統発生フットプリンティング解析を行った。Mulanはウェブベースの使いやすいインターフェースの中に異なるアルゴリズムを集めたものであり、複数のアライメントで進化的に保存されたTFBSを検出するためのmultiTF/TRANSFACデータベースに接続されている局所的配列保存の迅速特定用プログラムである。図7A〜Bはラット、マウス、イヌ、ヒトおよびゼブラフィッシュでFoxp3の配列を用いて得られた結果を示す。どれもT細胞において発現され、機能することが公知の6種の転写因子: NKX22、AHR、EGR1、EGR2、EGR3、NGFICおよびDelta EF1について推定上のTFBSが見出された。系統発生フットプリンティングによって特定されたこれらのTFは、Foxp3発現およびTreg産生の他の潜在的な調節因子である。
【0132】
実施例3: ゼブラフィッシュにおける適応細胞免疫およびFoxp3依存的な免疫調節
フロイント不完全アジュバント(IFA)中の熱死菌結核菌(M. tuberculosis; MT)またはPBSを腹腔内に(ip)免疫した6ヶ月齢ゼブラフィッシュの適応細胞免疫応答を調べた。
【0133】
図1Aに示されるように、MTまたはPBSによる免疫から14日後に調製した脾臓細胞は、コンカナバリンA (ConA)での刺激に応じて増殖したが、MTを免疫した魚類から採取した細胞しかMTでの活性化時に増殖しなかった。
【0134】
別の群の6ヶ月齢ゼブラフィッシュを0.02%トリカイン(Sigma-Aldrich)で麻酔し、これに、フロイント完全アジュバント(CFA)中で乳化された10 μl/魚のゼブラフィッシュ脳ホモジネート(zCNS)をi.p免疫した。図1b〜dに示されるように、これは、脳内でCD3、IFNgおよびIL-17発現細胞の蓄積をもたらした。
【0135】
これらの結果から、ゼブラフィッシュは抗原特異的な適応細胞性免疫応答および自己免疫応答を開始できることが実証された。
【0136】
線虫(C. elegans)およびキイロショウジョウバエ(D. melanogaster)は、自然免疫を統治する遺伝子の特定に極めて有用とされている(Lemaitre et al., Nat Rev Immunol 4, 521-7 (2004))。しかしながら、これらの実験モデルは、適応免疫系を欠いており、それゆえ、脊椎動物特異的な免疫過程を調べるのに使用することができない。ゼブラフィッシュは、機能的なマクロファージ(Davis et al., Immunity 17, 693-702 (2002))、B細胞(Danilova et al., Proc Natl Acad Sci USA 99, 13711-6 (2002))、およびT細胞(Danilova et al., Dev Comp Immunol 28, 755-67 (2004); Langenau et al., Proc Natl Acad Sci USA 101, 7369-74 (2004))を備えた自然免疫系も適応免疫系も持つ。大規模な遺伝的および化学的スクリーニングの実現のためにゼブラフィッシュがもたらす実験的な利点(Lieschke et al., Nat Rev Genet. 8, 353-67 (2007))とともに、適応免疫系の主成分が存在すること(Langenau et al., Nat Rev Immunol. 5, 307-17 (2005))を合わせて考えると、ゼブラフィッシュは、Treg産生などの適応免疫過程を制御する経路の研究用の実験モデルとして役立ちうる。
【0137】
実施例4: AHRはFoxp3発現およびTreg産生を制御する
上記の方法を用いて、アリール炭化水素受容体(AHR)に対する保存された結合部位をFoxp3のゲノム配列において特定し(図3bおよび3j参照)、これを、保存されたAHR結合部位(CABS)と名付けた。同じように位置付けられた調節配列は、AHRによって調節されるシトクロムP4501A2 (CYP1A2)の発現を制御する。さらに、三つの非進化的保存AHR結合部位(NCABS)がzFoxp3プロモーターにおいて特定された(NCABS-1、-2および-3と名付けた) (図3iおよび3j参照)。
【0138】
まず初めに、Foxp3発現をFoxp3gpfノックインマウスから単離したマウスTregにおいて測定した。Foxp3gpfノックインマウスは、Foxp3遺伝子に挿入されたGFPレポーターを有し、Foxp3+ TregにおいてGFPを産生し、これによってGFP:Foxp3+ Tregの特定およびFACS選別を容易とする(Bettelli et al., Nature 441, 235-8 (2006))。
【0139】
抗CD4ビーズ(Miltenyi, Auburn, CA, USA)を用いてCD4+ T細胞をFoxp3gfpノックインマウスから精製し、未感作のCD4+Foxp3:GFP-またはCD4+Foxp3:GFP+ T細胞に選別した(FACSAria(商標)細胞選別機、BD Biosciences)。CD4+Foxp3:GFP- T細胞を5日間、プレートに結合された1 μg/mlの抗CD3 (145-2C11 , eBioscience)および2 μg/mlの抗CD28 (37.51 , eBioscience)で刺激し、これに2日目および4日目の時点で組み換えIL-2 (50 U/ml)を補充し、これをCD4+Foxp3:GFP+ Tregへのその分化について5日目の時点でFACSにより解析した。TGFβ1 (2.5 ng/ml)を陽性対照として用いた。
【0140】
より高いAHR発現レベルが、CD4+GFP:Foxp3- T細胞におけるよりも、FACSで選別したCD4+GFP:Foxp3+ Tregにて検出され(図3c参照)、AHRとFoxp3発現とのつながりの可能性を浮き彫りにした。次いでAHRとFoxp3との関係を、RT-PCRによってさらに分析した。
【0141】
手短に言えば、CD4+ T細胞を、上記のようにFoxp3gfpノックインマウスから精製した。次にRNAeasyカラム(Qiagen, Valencia, CA, USA)を用いてRNAを抽出した。相補的DNAを、推奨(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA, USA)の通り調製し、リアルタイムPCRの鋳型として用いた。Foxp3の発現を、GeneAmp 5500 Sequence Detection System (Applied Biosystems)にて特異的なプライマーおよびプローブ(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)により定量化した。発現をハウスキーピング遺伝子GAPDHまたはアクチンの発現に対して規準化した。
【0142】
RT-PCRを用いて作成されたデータは、AHRとFoxp3との間で観察された関連性を裏付けた。さらに、CYP1A1の発現、つまりAHR応答性遺伝子もCD4+GFP:Foxp3+ Treg細胞において認められた。さらに、図3nに示されるように、AHRアンタゴニストのレスベラトロール(resveratol)での細胞の処理は、Foxp3およびCYP1A1の両発現レベルの大幅な減少をもたらした(それぞれP<0.0023およびP<0.0235)。抑制活性の減少もレスベラトロール処理細胞において示された(図3o)。合わせて、これらの結果は、検出されたAHRが機能的であることを強く示唆している。
【0143】
AHRがFoxp3発現を直接的に制御するかどうかについて調べるため、本発明者らは、ATG開始コドンの後にウミシイタケ・ルシフェラーゼ・レポーターをタグ付けした、foxp3全遺伝子座を含む細菌人工染色体を用いた。より具体的には、本発明者らは、Foxp3遺伝子の全遺伝子座を含む、200 kbのマウスゲノムDNAを含んだ、RP23-267C15 BACクローンを用いた。DY 380細菌株に含まれるRed組み換え系を用いて相同組み換えにより、ウミシイタケcDNAカセットをFoxp3のATG開始コドンのすぐ後ろにクローニングした。最終の構築物を、BACFoxp3:Renと名付けた。
【0144】
図3kに示されるように、マウスAHRをコードする構築物とのBACFoxp3:Renのコトランスフェクションにより、構成的に活性化されたTGFβ受容体IIで達成されたものと似た、ウミシイタケ活性の大幅な上方制御がもたらされた(P<0.01)。この所見は、AHRがFoxp3発現を直接的に制御できることを実証している。
【0145】
次いで、図3bおよび3iにそれぞれ示した、CABSおよびNCABSとのAHRの相互作用を分析するために、クロマチン免疫沈降(ChIP)を適用した。
【0146】
手短に言えば、細胞を90秒(90')間TCDDで処理し、15分間1%ホルムアルデヒドで固定し、0.125 Mグリシンでクエンチした。クロマチンを単離し、超音波処理によって平均長300〜500 bpに剪断した。クロマチンのアリコットを、RNase、プロテイナーゼK、および脱架橋結合のため熱で処理し、その後エタノール沈殿を行うことにより、ゲノムDNA (インプット)を調製した。AHRに結合したDNA配列をAHR特異的抗体(Biomol SA-210)で免疫沈降した。終夜65℃でのインキュベーションによって架橋を停止させ、ChIP DNAをフェノール-クロロホルム抽出およびエタノール沈殿によって精製した。その後、以下のプライマー対を用いて定量的PCR反応を行った。

【0147】
chr6: 120,258,582-120,258,797に位置する第6染色体中のUntr6領域を、Untr6 F: tcaggcatgaaccaccatac (SEQ ID NO )およびUntr6 R: aacatccacacgtccagtga (SEQ ID NO )により対照として増幅した。
【0148】
実験Ct値を、同一のPCRプレートにて行ったDNA標準曲線との比較によって、検出されたコピー数に変換した。次いで、インプットDNAおよび同じプライマー対を用いて得られた値で割ることにより、コピー数の値をプライマー効率のために規準化した。エラーバーは三重測定から計算された標準偏差を表す。
【0149】
次いでAHRと、Foxp3中のCABSおよびNCABSならびにCYP1A1との相互作用のChIP分析を、マウスから単離された対照および2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(TCDD; 高親和性AHRリガンド)処理CD4+ T細胞およびT細胞において行った。
【0150】
図3lに示すように、TCDDによるCD4+ T細胞の処理は、CABSおよびNCABS-2とのAHRの結合を増大した(p<0.05)。この上方制御は、AHRによって調節される遺伝子シトクロムP4501A1 (CYP1A1)遺伝子のプロモーターにおいて検出されたものに匹敵していた。NCABS-1、NCABS-3または対照配列UTR6においてAHR結合の顕著な増加は見られなかった。図3mに示されるように、CD4 T細胞をTCDD処理マウスから精製した場合に類似の結果が得られた。これらのデータは、AHRがFoxp3発現を制御することを示唆している。
【0151】
また、AHRとFoxp3との間の機能的関係を特徴付けるために、TCDDを用いた。受精後3日のゼブラフィッシュ胚のTCDDによる処理は、zFoxp3発現の用量依存的な増加を引き起こし、zFoxp3配列中の保存されたAHR結合部位が機能的であることを示唆した(図3D参照)。
【0152】
次に本発明者らは、マウスTreg数に及ぼすAHR活性化の効果を調べた。未処理C57BL/6マウスをTCDD (1 mg/マウス、ip)で処理し、24時間後にCFA中のMOG35-55で免疫した。10日後に流入領域リンパ節を調製し、CD4+Foxp3+ TregをFACSによって定量化した。TCDDの投与は、CD4+Foxp3+ Treg数のわずかな増加を引き起こした(図3E参照)。さらに、TCDDの単回投与、引き続きMOG35-55免疫は、CD4+Foxp3+ T細胞数の顕著な増加を引き起こした(図3E参照)。さらに、TCDD投与およびMOG35-55免疫によりインビボで増殖されたCD4+Foxp3:GFP+ T細胞は、機能的であり、MOG35-55特異的な抑制活性の増大を示した(図3P参照)。
【0153】
エフェクタT細胞に及ぼすTCDDのいかなる直接的な細胞傷害作用もまたはプロアポトーシス作用も除外するために、精製マウスCD4+CD25- T細胞を、TCDDの存在下で、CD3に対する抗体によりインビトロで活性化した。TCDDとともにインキュベーションすることで、アネキシン-FITC染色によって測定されるT細胞のアポトーシスは増えず、増殖応答は減らなかった(図3F参照)。まとめると、これらのデータは、ゼブラフィッシュでもマウスでも、AHRがFoxp3発現およびTreg増殖を制御することを示唆している。
【0154】
TCDDが、CD4+Foxp3- T細胞の新たなFoxp3+ Treg細胞への転換を誘発したかどうかを確証するために、FACS選別したCD4+Foxp3:GFP- T細胞を、TCDDの存在下で、CD3およびCD28に対する抗体によりインビトロで活性化し、FACSによってCD4+Foxp3:GFP+ Tregの生成を追跡した。TGFb1を陽性対照として用いた。図3Gに示されるように、TCDDは、およそ13%の培養細胞のCD4+Foxp3:GFP+ Tregへの転換を誘発した。さらに、図3に示されるように、TCDDによって誘導されたCD4+Foxp3:GFP+ Tregは、TGFβ1によりインビトロで誘導されたTregまたは未処理Foxp3gpfマウスから選別されたCD4+Foxp3:GFP+ Tregのものに類似の抑制活性を示した。
【0155】
このように、高親和性AHRリガンドTCDDによるAHR活性化は、CD4+Foxp3- T細胞の機能的CD4+GFP+ Tregへの転換を誘発することができる。
【0156】
図3rおよび3sに示されるように、AHRアンタゴニストのレスベラトロール(50 μM)での処理は、TGFβ1およびTCDDによるTregの誘導を妨害したが、TCDDにより誘発されるTreg転換にいっそう強い影響を与えた(P = 0.0053、図1h)。未処理マウスから精製されたCD4+Foxp3:GFP+ Tregは、CD3およびCD28に対する抗体ならびにTCDDでの刺激時に、増殖せず、抑制活性の増大を示さなかった。これらの所見は、AHRが樹立Tregの活性にとってよりも、新たなTregの分化にとって重要であることを示唆している。
【0157】
TCDD投与後にインビボで新しいTregも産生されうるかどうかを調べるために、本発明者らは、CD90.2ドナー由来のCD4+Foxp3:GFP- 2D2 T細胞を、野生型CD90.1レシピエントに移入した。CD4+Foxp3:GFP- 2D2 T細胞は、MOG35-55特異的なT細胞受容体を発現する。レシピエントに1 μg/マウスTCDDを投与し、2日後にMOG35-55を免疫した。次にCD4+Foxp3:GFP+ CD90.2 T細胞(TCDDでの処理時にTregへの転換を起こしたドナー細胞)を、FACSによって定量化した。図3hに示されるように、TCDDは、CD4+Foxp3:GFP- CD90.2ドナーT細胞のTreg細胞への顕著な(P < 0.02、対応のないt-検定、n = 5)転換を促進した。
【0158】
このように、TCDDによるAHRの活性化に続くTregの頻度の増大は、少なくとも一つには、CD4+Foxp3:GFP- T細胞のCD4+Foxp3:GFP+ Tregへの転換によるものである。
【0159】
実施例5: TCDDによるAHR活性化はEAEを抑制する
AHR活性化によって誘導されるTreg細胞の機能性を分析するために、本発明者らは、EAE発生に及ぼすTCDDの効果を調べた。
【0160】
C57BL/6マウスに単回の腹腔内(ip)用量のTCCDを与え、1日後にCFA中のMOG35-55での免疫によりEAEを誘導した。また、TCDDを経口的に投与して(1 μg/マウス)、有効な用量のこのリガンドを経口投与によって送達できるかどうか、およびこの用量がEAE発生を低減できるかどうかを判定した。EAEは、フロイント完全アジュバント油中のMOG35-55ペプチド(MEVGWYRSPFSRVVHLYRNGK (SEQ ID NO: )) 100 mlを、マウスの皮下に注射することによって誘導された。さらに、0日目および2日目に、マウスに百日咳毒素(Sigma-Aldrich) 150 ngをip投与した。EAEの臨床的兆候を以下のスコアにしたがって評価した: 0、疾患の兆候なし; 1、尾部における緊張喪失; 2、後肢不全麻痺; 3、後肢完全麻痺; 4、四肢麻痺; 5、瀕死。
【0161】
図4aおよび表3に示されるように、ip投与されたTCDDは、EAEの臨床的兆候に用量依存的な効果を及ぼした。1 μg/マウスは、EAEの臨床的兆候を顕著に抑えた(P < 0.001; n = 6)。
【0162】
(表3) TCDD処理はEAEを抑制する

とうもろこし油(対照)またはTCDDで(ip)処理したマウスを、CFA中のMOG35-55ペプチドで免疫し、EAE発生についてモニターした。一元配置分散分析を用いた群比較により、統計解析を行った。P<0.0001。
【0163】
図4G〜4Iに示されるように、IP投与されたTCDDはEAEの組織病理学的兆候も低減した。
【0164】
さらに、EAE誘導の一日前に、経口的に投与された1 μg/マウスのTCDDはEAE発生も抑止した(P < 0.001、二方向ANOVA、n = 10)。この所見は、有効な用量のTCDDを経口的に投与できることを示唆している。
【0165】
EAEに及ぼす効果がAHRの活性化によって媒介されたことを確認するために、本発明者らは、ahr遺伝子のd対立遺伝子を保有するC57BL/6マウス(AHR-dマウス)を用いた。この対立遺伝子は変異体AHRをコードしており、そのリガンド結合部位での突然変異のためTCDDおよび他のリガンド(Okey et al., Mol Pharmacol. 35, 823-30 (1989))に対するその親和性が10倍低下している。TCDD (1 μg/マウス)のAHR-dマウスへの投与は、図4Bおよび表4に示されるように、AHR-mtマウスでのCD4+Foxp3+ Tregのレベルを増大させず、EAEの進行を阻止しなかった。
【0166】
(表4) AHR-dマウスのTCDD処理

C57BL/6 (WT)およびとうもろこし油(対照)またはTCDD(1 μg/マウス)で処理したAHR-dマウスを、CFA中のMOG35-55ペプチドで免疫し、EAE発生についてモニターした。一元配置分散分析を用いた群比較により、統計解析を行った。P<0.001 vs WT対照群およびP<0.01 vs AHR-d TCDD群;P=0.0046 vs WT対照群; # P=0.0005 vs WT対照群、P=0.0019 vs AHR-d TCDD群。
【0167】
まとめると、これらの結果は、TCDD依存的なAHR活性化が、EAEの発生および/または進行を阻止または抑止できることを示している。実施例3に提示したデータは、この効果が、機能的Tregの誘導を促進するTCDD依存的AHR活性化によるものであることを示唆している。
【0168】
次いで、TCDDによるAHR活性化の結果としてEAEを発生しなかったマウスにおいて、ミエリンに対する抗体応答を研究するため、抗原マイクロアレイを用いた。表1に記載した抗原を、記載(Quintana et al., Proc Natl Acad Sci USA 101 Suppl 2, 14615-21 (2004))のように、エポキシスライド(TeleChem, Sunnyvale, CA, USA)上にスポットした。抗原を6つの複製物にスポットし、マイクロアレイを1%ウシ血清アルブミンにより37℃で1時間ブロッキングし、ブロッキング緩衝液中100分の1希釈の被験血清とともに37℃で2時間インキュベートした。次いでアレイを洗浄し、ヤギ抗マウスIgG Cy3結合検出抗体(Jackson ImmunoResearch Labs, West Grove, PA, USA)とともに37℃で45分間インキュベートした。アレイをScanArray 4000Xスキャナ(GSI Luminomics, Billerica, Massachusetts, USA)でスキャンした。マイクロアレイ上のその抗原の複製物との結合の平均強度により、抗原反応性を規定した。GeneSpringソフトウェア(Silicon Genetics, Redwood City, CA, USA)を、ノンパラメトリックWilcoxon-Mann-Whitney検定とともに使い、有意性を判定するため、0.05の誤りの発見率(FDR)でBenjaminiおよびHochberg法を用いて、生データを規準化し解析した。距離測度としてスピアマンの順位相関係数に基づくペアワイズ平均連鎖アルゴリズムを用い、サンプルをクラスタ化した。
【0169】
マイクロアレイは、組織溶解物、組み換えタンパク質、ミエリンタンパク質の配列全体に及ぶペプチドライブラリーならびに中枢神経系および末梢神経系に見られる脂質を含む362種のCNS関連自己抗原の一群からなっており、用いた抗原の完全なリストを表1に示す。
【0170】
(表1) 362種のCNS関連自己抗原




【0171】
AHR活性化によるEAEの制御は、表2に記載されている、97種のミエリン抗原に対するIgG血清抗体の顕著な減少と相関していた。
【0172】
(表2) TCDD処理マウスでの有意な(FDR < 0.05)下方制御を示すIgG抗体の特異性


【0173】
AHR活性化によるEAEの抑制をさらに特徴付けるために、本発明者らは、TCDD処理マウスにおいてMOG35-55/CFAの接種により誘導されるミエリン特異的T細胞の活性を調べた。TCDD処理マウスは、MOG35-55ペプチドに対する抑制された想起増殖応答を示したが、CD3に対する抗体での活性化時に相違は認められなかった(図4c〜d参照)。
【0174】
さらに、細胞を、100 μg/ml MOG35-55を含有する培地中で2日間またはPMA (50 ng/ml) (Sigma-Aldrich)およびイオノマイシン(1 nM) (Calbiochem, San Diego, CA, USA)で4時間刺激し、最後の4時間の間Golgistop (BD Biosciences)を培養物に添加した。表面マーカーの染色の後、BD Biosciencesから入手したCytofix/CytopermおよびPerm/Washを製造元の使用説明書にしたがって用いて、細胞を固定し、透過処理した。対応するアイソタイプ対照を含むサイトカイン(IFN-γ、IL-17、IL-10)に対する全ての抗体を、BD Biosciencesから入手した。細胞を25℃で20分間インキュベートし(1:100)、分析の前にPerm/Wash中で2回洗浄した。データをFACSCalibur (BD Biosciences)にて取得し、FlowJoソフトウェア(Tree Star, Ashland, OR, USA)で解析した。対照動物由来の流入領域リンパ節細胞と比べた場合、TCDD処理マウス由来の細胞は、MOG35-55での活性化時に、より大量のTGFb1およびより少量のIFNgおよびIL-17を分泌した(図4e参照); 有意な量のIL-4またはIL-10は検出されなかった。さらに、TCDDによるAHRの活性化は、流入領域リンパ節におけるCD4+IL-17+およびCD4+IFNg+ T細胞の頻度の増大をもたらした(図4F参照)。
【0175】
これらのデータは、AHR活性化が脳炎誘発性のT細胞応答の発生を妨害することを示唆している。
【0176】
実施例6: AHR活性化によって誘導されるTregはTGFb1依存的な機構によりEAEを抑制する
TCDDでのAHR活性化によるEAEの発生の阻止は、CD4+Foxp3+ T細胞の頻度の顕著な増加と関連していた(図5A参照)。図4Dに示されるTCDD処理動物でのMOG35-55に対する増殖低下に関わる機構を特定するために、CD4+CD25+ Treg集団を磁気ビーズで枯渇した。Treg枯渇はTCDDで処理した免疫マウスでのMOG35-55に対する想起応答を回復し(図5B参照)、図4Dで認められた抑制がTCDD誘導性Tregの活性から生じたことを示唆した(図5A参照)。さらに、EAEからの防御を、TCDD処理マウス由来の5×106個のCD4+ T細胞の移入によって、野生型の未処理動物に移入することができたが、媒体処理マウスから単離された細胞では、移入することができなかった(P < 0.001、二方向ANOVA、n = 4; 図5C)。病原性T細胞応答の制御は、CD4+CD25+ Tregにより媒介され、その枯渇が移入細胞の防御効果を抑止した(P < 0.001、二方向ANOVA、n = 4; 図5C)。
【0177】
さらなる特徴付けで、TCDD処理マウスから精製したエフェクタCD4+Foxp3:GFP- T細胞は、MOG35-55での活性化時に、通常の増殖を示したが(図5F)、IL-17およびIFNγの分泌を顕著に低減した(図5G参照)ことが明らかになった。
【0178】
EAEに及ぼすTCDDの防御効果がTregによって媒介されたことを確認するために、本発明者らは、TCDD処理の前にCD25に対する抗体で天然Tregを枯渇した。非枯渇細胞集団と枯渇細胞集団との相違を図5Hに示す。TCDD処理マウスは、EAE発症の顕著な遅延(P<0.03)および流入領域リンパ節におけるIL-17+ CD4+ T細胞の顕著な低下(P<0.03; 図5Iおよび5J参照)と同時に、そのTreg数のさらに速い立ち直りを示した(7日目の時点でP<0.04) (図5H参照)。さらに、TCDD処理マウス由来の5×106個のCD4+ T細胞の移入は、図5hおよび表5に示されるように、EAEの発生を顕著に阻止した。この防御効果は、CD4+CD25+ T細胞が枯渇すると失われた。図5hおよび表5を参照されたい。全体として、これらのデータは、TCDDによるAHRの活性化が、脳炎誘発性の応答を制御するCD4+ Foxp3+ Tregの産生を引き起こすことを示唆している。
【0179】
(表5) Treg枯渇細胞集団におけるEAE抑制

未処理C57BL/6マウスに、MOG35-55/CFA免疫から10日後、TCDDまたは対照処理マウスから精製されたCD4+またはCD4+CD25- T細胞(5×106個)を投与した。24時間後にMOG35-55/CFAによりレシピエントマウスでEAEを誘導し、EAEの発生についてマウスをモニターした。一元配置分散分析を用いた群比較により、統計解析を行った。P<0.05 vs CD4+対照群。
【0180】
TGFb1は、インビトロおよびインビボでのTregの抑制活性に結び付けられている(Li et al, Annu Rev Immunol. 24, 99-146 (2006))。TregによるMOG35-55に対する想起応答の阻害(図4dおよび5b参照)においてTGFb1が果たす役割を評価するため、本発明者らは、IL-4、IL-10、TGFb1に対する遮断用抗体またはアイソタイプ適合対照の存在下で、TCDD処理マウス由来のリンパ節細胞を活性化した。TGFb1に対する抗体とのインキュベーションが、MOG35-55に対する想起応答を回復しえたが、IL-4またはIL-10に対する抗体では回復しえなかったことを、図5dに示す。
【0181】
EAEの制御においてインビボでTFGb1が果たす役割を分析するために、本発明者らは、TGFb受容体IIのドミナントネガティブ変種をそのT細胞上に発現している未処理マウスに、TCDD処理マウス由来のCD4+ T細胞を移入した; これらのマウス由来のT細胞は、TGFb1の免疫抑制作用に不応性である(Gorelik et al., Immunity. 12, 171-81 (2000))。図5Eに示されるように、移入されたTreg細胞は、野生型マウスではEAEを制御できたが、TGFb1に不応性のT細胞を持つマウスでは制御できなかった(P<0.001、二方向ANOVA、n = 4)。このように、TCDDでのAHRの活性化によって誘導されたTregは、TGFb1依存的な機構によりEAEの進行を阻止する。
【0182】
実施例7: 内因性AHRリガンドはインビボでTreg産生を制御する
AHR活性化によるTreg産生の制御に関して本明細書に記載した所見は、内因性AHRリガンドが免疫調節に関与することを示唆している。この裏付けとして、本発明者らは、未処理AHR-dマウスがより低いレベルのCD4+Foxp3+ T細胞を持ち(P < 0.03、t検定; 図6A参照)、より高いレベルのCD4+CD25+Foxp3- T細胞を持つことを実証した。さらに、本発明者らは、これらの細胞が、より早期の疾患発症およびより高い臨床スコアによって特徴付けられる、顕著により激しいEAEを発生することを実証した(P < 0.001、二方向ANOVA、n = 6〜8; 図6B参照)。
【0183】
いくつかの内因性AHRリガンドが当技術分野において記載されている28。本発明者らの結果に基づき、TCDDなどのAHRリガンドはTreg産生の制御において有用でありうる。本発明者らのデータは、TCDDなどのAHRリガンドを用いて、EAEの発生および/または進行を抑制できることをさらに実証している。明らかに、そのような技術は自己免疫障害などの他の免疫学的障害の調節においても有用であろう。AHRに対するさらに二種の内因性の高親和性リガンドは、トリプトファン(Trp)異化の誘導体トリプタミン(TA) (Heath-Pagliuso et al., Biochemistry. 37, 11508-15 (1998))、および肺から単離された分子2-(1'H-インドール-3'-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE) (Song et al., Proc Natl Acad Sci USA. 99, 14694-9 Epub 2002 Oct 30 (2002))である。興味深いことに、インビボでこれらのAHRリガンドについて、おそらくその短い半減期の結果として、毒性は報告されていない(Henry et al., Arch Biochem Biophys. 450, 67-77 Epub 2006 Mar 3 (2006))。Treg活性の制御に対するAHR活性化の生理的関連性を確認するために、本発明者らは、EAEに及ぼすTAおよびITEの作用を調べた。これらの分子の短い半減期に基づき、本発明者らは、毎日それらを投与した。ITEの投与は、EAEの重症度に関して顕著な低下を生じたが、TAではおそらくTAの急速分解により、低下を生じなかった(P < 0.001、二方向ANOVA、n = 9; 図6c参照)。この所見は、内因性AHRリガンドが生理的条件下での炎症の制御に関与することを示唆している。
【0184】
全体として、これらの結果は、Foxp3に結合する転写因子の活性を調節することによるFoxp3発現の調節を用いて、Tregおよびインビボでの免疫応答の制御に影響を与えられることを示している。
【0185】
実施例8: Foxp3ノックインマウスにおける転写因子の発現レベル
マウスTregおよび非Tregを、Foxp3gpfノックインマウスから単離し、mRNAを調製し、Foxp3 (図8A参照)、NKX2.2 (図8B参照)、EGR1 (図8C参照)、EGR2 (図8D参照)、およびEGR3 (図8E参照)の発現をリアルタイムPCRによって定量化した。Foxp3gpfノックインマウスは、Foxp3遺伝子に挿入されたGFPレポーターを有し、Foxp3+ TregにおいてGFPを産生し、それゆえGFP:Foxp3+ Tregの特定およびFACS選別を容易とする。
【0186】
GFP- CD4+ T細胞をFoxp3gpfノックインマウスから単離し、次にTGFβ1の存在下でCD3およびCD28に対する抗体によりインビトロで活性化して、Treg分化をインビトロで誘導した。実験の開始時におよび培養において3日または6日後に、mRNAを調製し、Foxp3 (図9A参照)、NKX2.2 (図9B参照)、EGR1 (図9C参照)、EGR2 (図9D参照)、およびEGR3 (図9E参照)の発現を、リアルタイムPCRによりFoxp3:GFP+CD4+ T細胞において定量化した。
【0187】
これらの結果は、Foxp3ならびに転写因子EGR1、EGR2、EGR3およびNKX2.2の発現が相互に関連していることを示している。まとめると、これらのTFが遺伝子発現の調節に及ぼす報告された作用、Foxp3遺伝子上のTF結合部位の特定、ならびにこれらのTFおよびFox3発現の間の相関関係により、EGR1、EGR2、EGR3、およびNKX2.2が、Foxp3発現の調節およびTregの産生に関与していることが示唆される。
【0188】
実施例9: トリプタミン(TA)を用いた併用処置
上記に示されるように、TAはモノアミンオキシダーゼ阻害剤によりインビボで急速に分解される。図13に示されるように、モノアミンオキシダーゼ阻害剤トランス-2-フェニルシクロプロピルアミン塩酸塩(トラニルシプロミン)と併用した場合、TAはEAEの抑制を効果的に抑制する。
【0189】
この所見は、TAが、モノアミンオキシダーゼ阻害剤と併用される場合、Tregの数および/または活性の増大を促進するための転写因子リガンドとして使用できるTCDD様のリガンドであることを示唆している。
【0190】
実施例10: 改変スクリーニングアッセイ法
Foxp3メチオニン開始コドン(ATG)の後にウミシイタケ・レポーターが挿入された、完全なマウスFoxp3遺伝子座をコードするBAC構築物を、ゼブラフィッシュ受精卵に微量注入することにより、改変されたゼブラフィッシュに基づくスクリーニングアッセイ法を確立した。微量注入から6日後に、ウミシイタケ活性を全ゼブラフィッシュ溶解物において測定した。図14に示されるように、ウミシイタケ・ルシフェラーゼ活性によって測定したときに、微量注入されたゼブラフィッシュにおいてマウスFoxp3が発現されていた。その活性は、TCDDの存在下で用量依存的に増大した。
【0191】
これらのデータは、マウスFoxp3をコードするゼブラフィッシュ系を用いて、Foxp3発現レベルを増大または低減する小分子をスクリーニングできることを示唆している。
【0192】
実施例11: AHRのその非毒性リガンドITEによる活性化は機能的Tregを誘導する
リガンドで活性化される転写因子アリール炭化水素受容体(AHR)は、ゼブラフィッシュ、マウスおよびヒトFoxp3の発現ならびにTreg分化の調節因子である(Quintana et al., Nature 23, 23 (2008))。AHRのそのリガンド2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(TCDD)による活性化はTregを誘導し、これが実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)をTGFb1依存的な機構によって抑制した。これらの知見は、AHRを自己免疫障害の管理のための関心対象の治療標的と特定するものであるが、その治療的活用は十分に特徴付けられたTCDDの有毒性によって制限される(Baccarelli et al., Environ Health Perspect. 110, 1169 (2002))。
【0193】
いくつかの内因性AHRリガンドが単離されているが、それらの中にはトリプタミン(TA)のようなトリプトファン誘導体(Heath-Pagliuso et al., Biochemistry. 37, 11508 (1998))および図1に描いた粘膜関連2-(1'H-インドール-3'-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE)がある(Song et al., Proc Natl Acad Sci USA. 99, 14694 (Nov 12, 2002))。特に、ITEおよびTAは高親和性AHRリガンドであることが示されているが、それらはTCDDによって報告されている毒性作用を示していない(Heath-Pagliuso et al., (1998)、前記; Henry et al., Arch Biochem Biophys. 450, 67 (2006))。本明細書において実証されるように、腹腔内に、経口的に、またはペグ化金ナノ粒子により投与された非毒性AHRリガンドITEを用いて、機能的Tregを誘導することができる。
【0194】
治療的な設定においてインビボでAHRを活性化するためにITEを用いることの実行可能性を分析するため、本発明者らは、EAE発生に及ぼすITEの作用を調べた。未処理C57BL/6マウスにてEAEを誘導し、ITE (200 mg/マウス)を毎日、経口的にまたは腹腔内に投与した。経口的または腹腔内のいずれかのITEの投与は、EAE発生に対する顕著な遅延およびEAE臨床スコアの顕著な低下をもたらした(図15A〜B)。このように、ITEによるAHRの活性化は、EAEを制御できる機能的Tregを誘導する。
【0195】
ITEで誘導されたTregがEAEを制御する機構を調べるために、本発明者らは、ITEによるAHRの活性化がTregを誘導する能力を調べた。本発明者らは、未処理C57BL/6マウスをITE (200 mg/マウスを毎日、ip投与)で処理し、それらに100 mg/マウスのCFA中MOG35-55を免疫した。10日後に脾臓を調製し、CD4+FoxP3+ TregをFACSによって定量化した。ITEの投与はCD4+FoxP3+ Treg数の顕著な増加をもたらした(図16および17)。特にこの増加は、CD25+およびCD25- CD4+FoxP3+ Tregの両方の増殖から生じたが、しかしLAP+調節性T細胞のレベルの顕著な変化をもたらした(図16および17)。このように、ITEによるAHRの活性化はCD4+FoxP3+ Treg区画の増大を引き起こす。
【0196】
ITEの毒性がないことを確認するために、本発明者らはそれを14日間、200 mg/マウスで腹腔内に投与し、肝機能誘導の生化学的指標の血中レベルを調べた。肝細胞は高レベルのAHRを発現することが知られており、すなわちAHR活性化の毒性作用は肝臓で現れる。表6は、14日目の時点で本発明者らが肝機能の生化学的指標の何らかの有意な相違を検出しなかったことを示しており、ITEに毒性がないことを裏付けている。
【0197】
(表6) ITE投与は肝毒性を引き起こさない

【0198】
AHRを活性化するためにおよび機能的Tregを誘導するためにITEを経口的に投与することの実行可能性を調べるため、本発明者らは、未処理C57BL/6マウスをITE (200 mg/マウスを毎日、経口投与)で処理し、それらに100 mg/マウスのCFA中MOG35-55を免疫した。10日後に脾臓を調製し、CD4+FoxP3+ TregをFACSによって定量化した。ITEの投与はCD4+FoxP3+ Treg数の顕著な増加をもたらした(図18および19)。特に、この増加はCD25+およびCD25- CD4+FoxP3+ Tregの両方の増殖から生じたが、しかしLAP+調節性T細胞のレベルの顕著な変化をもたらした(図18および19)。このように、ITEを経口的に投与して、AHRを活性化させることができ、CD4+FoxP3+ Treg区画を増大させることができる。
【0199】
ITEによるAHRの活性化がTreg区画を増大させる能力を確認するために、本発明者らは、Foxp3gpfノックインマウスを用いた。Foxp3gpfノックインマウスはFoxp3遺伝子に挿入されたGFPレポーターを有し、GFP:FoxP3+ Tregの特定およびFACS選別を容易とするGFP:Foxp3融合タンパク質を産生する(Bettelli et al., Nature 441, 235 (2006))。Foxp3gpfノックインマウスをITE (200 mg/マウスを毎日、ip投与)で処理し、100 mg/マウスのCFA中MOG35-55で免疫した。10日後にCD4+FoxP3:GFP+ TregをFACSによって定量化した。ITEの投与は血液および脾臓中CD4+FoxP3:GFP+ Treg数の顕著な増加をもたらした(図20A〜Bおよび21A〜B)。このようにITEによるAHRの活性化はCD4+FoxP3+ Treg区画の増大を引き起こす。
【0200】
次いで本発明者らは、ミエリンに対する脳炎誘発性の応答に及ぼすITE投与の影響を調べた。未処理C57BL/6マウスにてEAEを誘導し、ITE (200 mg/マウス)を毎日、経口的にまたは腹腔内に投与した。MOG35-55/CFAの接種から10日後に、ITE処理マウスはMOG35-55ペプチドに対する抑制された想起増殖応答を示した(図22); CD3に対する抗体での活性化時に相違は認められなかった(図22)。対照動物由来の脾細胞と比べた場合、ITE処理マウス由来のCD4+ T細胞はMOG35-55での活性化時に、より大量のTGFb1およびIL-10ならびにより少量のIL2、IL6、IFNgおよびIL17を分泌した(図22)。経口投与したITEで処理されたマウスのMOG35-55に対する想起応答に関しても類似の結果が認められた(図23)。
【0201】
IFNgおよびIL17を分泌するT細胞の産生に及ぼすAHR活性化の抑制作用を確認するために、IFNg+およびIL17+ CD4+ T細胞を、足蹠免疫およびITE (200 mg/マウス)の腹腔内投与から10日後に、流入領域リンパ節中でFACSにより定量化した。ITEでのAHRの活性化は、CD4+IL17+およびCD4+IFNg+ T細胞の頻度の減少をもたらした(図24)。これらの結果にしたがって、本発明者らは、MOG35-55またはaCD3で活性化されたITE処理マウス由来のリンパ節細胞によるIL-17およびIFNgの分泌の顕著な低下を認めた。
【0202】
MOG35-55特異的TregおよびエフェクタT細胞(Teff)の頻度に及ぼすITEによるAHRの活性化の影響を調べるために、Foxp3gpfノックインマウスをMOG35-55/CFAで免疫し、腹腔内ITE (200 mg/マウス)で毎日処理し、MOG35-55特異的Treg (CD4+FoxP3:GFP+)およびTeff (CD4+FoxP3:GFP-)を、MBP35-55を含有する組み換えMHCクラスII四量体または対照ペプチドTMEV70-86を用いてFACSにより解析した。ITEでのAHRの活性化はMOG35-55特異的Teffの頻度の減少をもたらし、MOG35-55特異的Tregの頻度の同時増加をもたらし、MOG35-55特異的Teff/Treg比を半分に低減した(図25)。
【0203】
TregによるMOG35-55特異的Teffの能動抑制を詳しく調べるために、Foxp3gpfノックインマウスをMOG35-55/CFAで免疫し、腹腔内ITE (200 mg/マウス)で毎日処理し、FACS選別したCD4+ T細胞およびCD4+ FoxP3:GFP- Teffに関してMOG35-55および分裂促進性の抗体〜CD3抗体に対する想起応答を調べた。ITE処理マウスから精製されたCD4+ T細胞は、MOG35-55に対する抑制応答を示したが、抗CD3に対しては示さなかった(図26)。このMOG35-55に対する抑制応答はCD4+FoxP3:GFP+ Tregの除去により失われた(図26)。CD4+FoxP3:GFP+ TregのMOG35-55特異的な抑制活性をさらに分析するために、それらを異なる比率で共培養し、MOG35-55に特異的なTCRを持つ、CD4+FoxP3:GFP- Teff型の2D2マウスのMOG35-55または抗CD3誘発性増殖の抑制についてアッセイした。ITE処理マウス由来のCD4+FoxP3:GFP+ Tregは、MOG35-55特異的な抑制活性の増大を示したが、これはTGFb1に対する抗体を遮断する抗体で阻害することができた(図27A〜C)。全般的に見て、これらのデータは、本発明者らがTCDDについて記載したものと同様に、脳炎誘発性の応答をTGFb1依存的に抑制する抗原特異的なCD4+ FoxP3+ Tregの増殖を、ITEによるAHRの活性化が引き起こすことを示唆している。
【0204】
EAEに及ぼすITEの作用をTregが媒介したことを実証するために、本発明者らは、EAE誘導から14日後にITEの経口投与または腹腔内投与によってEAEから防御されたマウスよりCD4+ T細胞を精製した。ITE処理マウス由来の5×106個のCD4+ T細胞の移入によって、EAEからの防御を野生型の未処理動物に移入することができたが、媒体処理マウスから単離された細胞では移入することができなかった(図28)。病原性T細胞応答の制御はCD4+CD25+ Tregにより媒介され、移入された集団からのその枯渇が移入細胞の防御効果を抑止した。このように、ITEでのAHRの活性化によって誘導されたTregは、EAEの進行を阻止する。
【0205】
AHRは、樹状細胞(CD11c+)およびマクロファージ(CD11b+)などの抗原提示細胞(APC)によって発現されることが知られている(Vorderstrasse and Kerkvliet, Toxicol Appl Pharmacol. 171, 117 (2001); Laupeze et al., J Immunol. 168, 2652 (2002); Hayashi et al., Carcinogenesis. 16, 1403 (1995); Komura et al., Mol Cell Biochem. 226, 107 (2001))。TeffおよびTreg細胞の産生に潜在的に影響を与える可能性のある、ITEによるAHRの活性化が異なったAPC集団に及ぼしうる作用を分析するために、本発明者らは、樹状細胞(CD11c+)およびマクロファージ(CD11b+)によるMHCクラスII発現に及ぼすITEおよびTCDD処理の影響を調べた。C57BL/6マウスをITE (200 mg/マウスを毎日、ip投与)またはTCDD (1 mg/マウスを0日目にip投与)で処理し、それらに100 mg/マウスのCFA中MOG35-55を免疫した。10日後に脾臓を調製し、FACSによりCD11b+およびCD11c+細胞に関してMCHクラスIの発現を詳しく調べた。ITEまたはTCDDの投与はCD11c+ MHCクラスII発現の顕著な減少を引き起こし、これはCD11b+ MHCクラスII発現の顕著な増加と同時に起こった(図29)。最近になって、CD11c+ MHC-II+およびCD11b+ MHC-II+は、それぞれ、TeffおよびTregの誘導に結び付けられているので、これらの結果は、異なるAPC集団の変化がITEによるAHR活性化の免疫調節作用に寄与しうることを示唆している。
【0206】
実施例12: ITE負荷ナノ粒子の投与は機能的Tregを誘導する
上記のように、AHRリガンドTCDD 1 mg/マウスの単回用量の投与は、EAEの発生を防ぐことができた。疾患進行に及ぼす類似の効果を達成するためには、実験の間中、毎日200 mg/マウスのITEが投与されなければならない。ITEは、特異的酵素の活性の結果としてインビボで短い半減期を有するものと考えられるトリプトファン誘導体である。実際に、毎日の代わりに週1回の間隔でのITEの投与では、EAEに及ぼすこの防御効果は完全に喪失される(図30)。
【0207】
金コロイドは関節リウマチの処置において50年以上にわたり使用されており、これらの金コロイドナノ粒子は、長期毒性または副作用がほとんどまたは全くないことが明らかにされている(Paciotti et al., Drug Deliv. 11, 169 (2004))。その小さなサイズ(直径10〜100 nm)のため、金コロイドナノ粒子は、複数の小さなタンパク質または他の分子を結合できる大きな表面積を有する(Paciotti et al., Drug Deliv. 11, 169 (2004))。金コロイドナノ粒子のPEG化は、共有結合されている分子の全体的な安定性を大いに高める(Qian et al., Nat Biotechnol. 26, 83 (2008))。さらに、最近、PEG化金コロイドナノ粒子を特異抗体に連結させて、それらを特定の細胞型に標的化できることも示されている(Qian et al., Nat Biotechnol. 26, 83 (2008))。このように、ITEの半減期を増大するためにおよび特定の細胞型へのその標的化を促進するために、本発明者らは、ポリエチレングリコールでコーティングされた(PEG化された) AHRリガンド負荷金コロイドナノ粒子を構築した(図31)。
【0208】
AHRリガンドFICZ、ITEまたはTCDDを保有するPEG化金コロイドナノ粒子は、典型的な光吸収スペクトルを示した(図32)。さらに、FICZ、ITEまたはTCDD負荷ナノ粒子は、AHRレポーター細胞株上のルシフェラーゼ発現を、10 nM TCDDによって達成されたものに類似のレベルまで活性化した。
【0209】
AHRリガンド負荷ナノ粒子のインビボでの機能性を詳しく調べるために、本発明者らは、未処理C57BL/6マウスにEAEを誘導し、0日目の時点で開始して、週1回45フェムトモルのナノ粒子でそれらのマウスを処理した。本発明者らの過去の実験において本発明者らが記載したものと同様に、TCDDでの処理はEAEの完全な抑制を生じたが、AHRリガンドFICZは疾患を悪化させた(図33)。ITE負荷ナノ粒子の週1回投与はEAE発生の顕著な阻止を引き起こした(図34)。このように、ナノ粒子を用いたITEの投与は、EAEに及ぼすその抑制効果を増強する(図31および33を比較されたい)。
【0210】
Treg区画に及ぼすITE負荷ナノ粒子の作用を調べるために、本発明者らは、未処理C57BL/6マウスにEAEを誘導し、0日目の時点で開始して、週1回45フェムトモルのナノ粒子でそれらのマウスを処理した。EAE誘導から21日後に脾臓を調製し、CD4+FoxP3+ TregをFACSによって定量化した。ITE負荷ナノ粒子の投与は、CD4+FoxP3+ Treg数の顕著な増加をもたらした(図34); この増加はCD25+およびCD25- CD4+FoxP3+ Tregの両方の増殖から生じた(図34)。このように、ITE負荷ナノ粒子を用いてAHRを活性化することができ、Treg区画を増大させることができる。
【0211】
ITE負荷ナノ粒子がEAEを制御する機構を調べるために、本発明者らは、ミエリン特異的T細胞の活性を調べた。本発明者らは、未処理C57BL/6マウスにEAEを誘導し、0日目の時点で開始して、週1回45フェムトモルのナノ粒子でそれらのマウスを処理した。EAEを誘導してから21日後に脾臓を調製し、それらをMOG35-55および抗CD3に対するその想起応答について分析した。ITE負荷ナノ粒子で処理したマウスは、MOG35-55ペプチドに対する抑制された想起増殖応答を示した(図35); CD3に対する抗体での活性化時に相違は認められなかった(図35)。対照動物由来の脾細胞と比べた場合、ITE負荷ナノ粒子で処理したマウス由来のCD4+ T細胞は、MOG35-55での活性化時に、より大量のTGFb1およびIL-10ならびにより少量のIL2、IL6、IFNgおよびIL17を分泌した(図35)。
【0212】
実施例13: AHR活性化による機能的なヒト調節性T細胞の誘導
ヒトTregの誘導のためのAHR標的化の可能性について詳しく調べるために、本発明者らは、TCDD 100 nMもしくはTGFb1 2.5 ng/mlまたはその両方の存在下で、CD3およびCD28に対する抗体で5日間、健常ドナーの精製未処理CD4+ CD62L+ CD45RO- T細胞を活性化した。TCDDの存在下でのT細胞活性化は全部のヒトサンプル(図37)ではないが一部のヒトサンプル(図36)で、 CD4+ FoxP3+ T細胞の誘導をもたらした。
【0213】
TCDDの存在下で誘導された推定上のヒトTregの機能性を調べるために、本発明者らは、TCDDもしくはTGFb1 2.5 ng/mlまたはその両方の存在下で5日間の活性化の後に、CD4+ CD25HighおよびCD4+ CD25Low T細胞のその抑制活性を調べた。TGFb1の存在下での活性化は、抑制性T細胞の誘導を引き起こさなかった(図38)。しかしながら、TCDDの存在下での活性化は、キラーT細胞(responder T cell)の増殖を阻害する能力から明らかなように、CD4+ CD25HighおよびCD4+ CD25Lowの両方の機能的なヒト調節性T細胞の産生をもたらした(図38)。このTCDDの作用は、これらの条件下で生じたT細胞の抑制活性の増大から明らかなように、TGFb1の存在下で増幅された(図38)。
【0214】
TCDD誘導性Tregの抑制活性を媒介する機構を詳しく調べるために、本発明者らは、Tregの抑制機能に以前から結び付けられているいくつかの遺伝子の発現について、リアルタイムPCRによってそれらを分析した。FoxP3発現はTCDDおよびTGFb1の存在下での活性化によって顕著に上方制御された(図39)が、それはTGFb1だけでも誘導されたことから、FoxP3発現がAHRの活性化を介した抑制機能の誘導と相関していないことが示唆される。これは、TGFb1の非存在下TCDDでのAHRの活性化により引き起こされたFoxP3発現のわずかな誘導によって裏付けられる(図39)が、低レベルのFoxP3を発現したこれらの細胞は、共培養アッセイにおいて抑制性であった(図38)。TGFb1はまた、AHR発現レベルをT細胞上で認められる基礎レベルの数倍超に上方制御したが、このAHR発現レベルも共培養アッセイにおいて示されるように抑制活性の誘導と相関していなかった(図40)。際立って、TCDDによる処理はさらに高いレベルのIL-10を発現したが、これはTGFb1によって完全に阻害された(図41)。したがって、IL-10特異的な遮断用抗体は、TCDDで誘導されたTregの抑制活性を妨害することはできたが、TGFb1およびTCDDで誘導されたその抑制活性を妨害することはできなかった(図42)。このように、TCDDで誘導されたCD4+CD25High T細胞は、抑制活性が、少なくとも部分的に、IL-10を介して媒介されるFoxP3-調節性細胞であり、1型Tregの表現型に似ている(Roncarolo et al., Immunol Rev. 212, 28 (2006); Roncarolo and Gregori, Eur J Immunol. 38, 925 (2008))。
【0215】
その他の態様
本発明をその詳細な説明とともに説明してきたが、以上の説明は本発明を例示するためのものであって、その範囲を限定するものではなく、それは添付する特許請求の範囲によって規定されることが理解されるべきである。その他の局面、利点および変更は以下の特許請求の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性ナノ粒子に連結された、アリール炭化水素受容体(AHR)転写因子に特異的に結合するリガンドを含む、組成物。
【請求項2】
リガンドが、AHRとの結合について競合的に2,3,7,8テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(TCDD)と競合しかつAHR依存的なシグナル伝達を活性化する小分子である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
リガンドが、2,3,7,8テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(TCDD)である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
リガンドが、トリプタミン(TA)である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
トラニルシプロミンなどのモノアミンオキシダーゼ阻害剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
リガンドが、2-(1'H-インドール-3'-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE)である、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
リガンドが、6-ホルミルインドロ[3,2-b]カルバゾール(FICZ)である、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
T細胞、B細胞、樹状細胞またはマクロファージ上に存在する抗原に選択的に結合する抗体をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
抗体が生体適合性ナノ粒子に連結される、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
2,3,7,8テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(TCDD)、トリプタミン(TA)、および2-(1'H-インドール-3'-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE)からなる群より選択される一種または複数種のAHRリガンドを含む組成物の十分な量と、細胞の集団を接触させる段階であって、該リガンドが生体適合性ナノ粒子に連結されている、段階と、
任意で集団中のCD4/CD25/Foxp3を発現する細胞の存在および/または数を評価する段階と
を含む方法であって、
該方法が、調節性T細胞(Treg)の数および/または活性の増大をもたらす、
T細胞の集団中のCD4/CD25/Foxp3を発現するT調節性(Treg)細胞の数を増大するための方法。
【請求項11】
T細胞の集団が、ナイーブT細胞またはCD4+CD62リガンド+ T細胞を含む、請求項9記載の方法。
【請求項12】
自己免疫障害に罹患した対象に、障害の症状を改善または寛解させるのに十分な量で、Treg細胞を投与する段階をさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項13】
T細胞の集団が生きている哺乳動物対象内にある、請求項9記載の方法。
【請求項14】
対象が自己免疫障害を有する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
自己免疫障害が多発性硬化症である、請求項9または14記載の方法。
【請求項16】
一種または複数種のリガンドを経口的に投与する段階を含む、請求項13記載の方法。
【請求項17】
一種または複数種のリガンドを静脈内に投与する段階を含む、請求項13記載の方法。
【請求項18】
哺乳動物Foxp3プロモーター配列中のアリール炭化水素受容体(AHR)に対する結合配列を含むレポーター構築物を発現する細胞を提供する段階であって、該結合配列が、レポーター遺伝子、例えばルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質およびそれらの変種からなる群より選択されるレポーター遺伝子に機能的に連結されている、段階と、
該細胞を試験化合物と接触させる段階と、
レポーター遺伝子の発現に及ぼす試験化合物の作用を評価する段階と
を含む方法であって、
レポーター遺伝子の発現を増大または低減する試験化合物が、Tregの産生を調節する候補化合物である、
調節性T細胞(Treg)の産生または活性を増大する候補化合物を特定する方法。
【請求項19】
2,3,7,8テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(TCDD)、トリプタミン(TA)および2-(1'H-インドール-3'-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE)からなる群より選択される公知のAHRリガンド、またはそれらと競合的にAHRに結合する化合物の存在下でレポーター構築物の発現を測定する段階と、
候補化合物がAHRとの結合について公知の化合物と競合するかどうかを判定する段階と、
候補化合物が公知の化合物と競合的にAHRに結合する場合、その候補化合物を選択する段階と
をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
生きているゼブラフィッシュを提供する段階と、
ゼブラフィッシュを試験化合物と接触させる段階と、
ゼブラフィッシュにおけるFoxp3発現に及ぼす試験化合物の作用を評価する段階と
を含む方法であって、
ゼブラフィッシュにおけるFox-3の発現を増大または低減する試験化合物が、Tregの産生を調節する候補化合物である、
調節性T細胞(Treg)の産生を調節する候補化合物を特定する方法。
【請求項21】
ゼブラフィッシュが、ヒト、マウス、またはゼブラフィッシュのFoxp3遺伝子をコードするルシフェラーゼ・レポーター構築物を含む、請求項5記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【図3I】
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【図3J】
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【図3K】
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【図3L】
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【図3M】
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【図3N】
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【図3O】
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【図3P】
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【図3Q】
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【図3R】
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【図3S】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図4I】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図5I】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図11F】
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【図11G】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図12F】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27A】
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【図27B】
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【図27C】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35A】
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【図35B】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公表番号】特表2011−503232(P2011−503232A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535001(P2010−535001)
【出願日】平成20年10月11日(2008.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/083016
【国際公開番号】WO2009/067349
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(503146324)ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド (24)
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
【Fターム(参考)】