説明

免疫応答を誘発する天然痘DNAワクチンおよびその中の抗原

本発明は、ポックスウイルスに対する哺乳動物での防御免疫応答を生じさせることができるDNAワクチンに関するものであり、複数のVACV MV抗原を発現することができる少なくとも1つのDNAプラスミドと、VACV EV抗原を発現することができる少なくとも1つのDNAプラスミドとを含む。また、本発明は、中和抗体応答を含む、ポックスウイルスに対する哺乳動物での防御免疫応答を誘導する方法であって、該哺乳動物の組織に該DNAワクチンを注射する工程を含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第61/056,687号(2008年5月28日出願)および米国仮特許出願第61/121,054号(2008年12月9日出願)の恩典を主張し、これらの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府により支援された研究に関する声明
米国政府は、本発明における一括払いライセンスを有し、限られた状況において、国防省により与えられている助成金番号HDTRA1-07-C-0104の条件によって規定されているように、適当な条件で他の者に使用許諾するように特許権者に要求する権利を有する。
【0003】
本発明は、コンセンサス天然痘抗原、そのような抗原をコードする核酸コンストラクト、および天然痘ウイルスに対する免疫応答を生じさせるためにそれから作製されワクチン、ならびに天然痘ウイルスから哺乳動物を防御するためにこれらの製品を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ここ四半世紀の大半の間、世間的関心または科学的関心が、天然痘または天然痘ワクチン接種に関する問題に向けられることはほとんどなかったが、昨今の生物テロに関する懸念のために、故意の放出による天然痘発生の潜在的脅威が現実的な懸念となっている。天然痘が第一選択のテロ兵器になる要因はいくつかある。天然痘は大量に製造することができ、保存と輸送の間は安定であり、曝露された非ワクチン接種者での死亡率が30%のエアロゾルとして製造することができる。10〜20またはそれより多くの症例が、1人の感染者が起源となることで起こり得るので、天然痘は非常に感染性が高い。したがって、テロ攻撃によって天然痘が放出された場合、多くの米国人が感染、疾患、および死の危険に曝されることになるという大きな懸念がある。
【0005】
限定的に使用可能な市販認可された天然痘ワクチンは、確立されたドライバックス(Dryvax)ワクチンとアカンビス(Acambis)ワクチンである。このワイス(Wyeth)社のワクチンは、仔ウシリンパ液に由来する生ワクシニアウイルス(VACV)の凍結乾燥製剤である。ワイス社は、一般市民への天然痘ワクチン販売を1983年に中止した。アカンビスワクチンは、今なおヒトでの重大な副作用を伴う生きた組織培養物に適応したワクチンストックである。過去に、ドライバックスに伴うリスクに関する懸念があった。最近の臨床試験での有害事象によって、こうした懸念は高まっている。重大な懸念は、かなりの数の免疫不全者(HIV感染者)や1970年に存在していたよりもはるかに多くの高齢者がいるということである。さらに、妊婦、静注薬物使用者、移植を受けた人、および北米で生活する免疫抑制剤の使用者は潜在的なワクチン受容者であり、もとのドライバックスや最近のアカンビスの生ワクチン戦略による危険性がみな高い。北米では、許容できない数の人が重篤な合併症で入院するおそれがあるという懸念が重要な意味を持っている。ワクチンだけが原因で、または生物テロの場合、天然痘の使用が原因で、多くの人が死亡することがあるが、ワクチンに関連する健康への懸念のために、配備の遅れまたは服薬不履行が起こり得る。最近の天然痘ワクチン接種プログラムは生物テロ事象からの防御を意図しているが、VACV誘導性免疫を持つ人の数が減少しているので、天然のポックスウイルス疾患についても懸念が高まっている。
【0006】
AIDS患者のサイトメガロウイルス性網膜炎治療用の承認薬であるシドフォビルは、ほとんど全てのDNAウイルスに対する幅広い活性を有する。最近、シドフォビルは、天然痘やサル痘(MPXV)を含むいくつかのポックスウイルスに対するマウスでのインビトロ活性とインビボ活性が証明された。シドフォビルの単回投与は、曝露されてから数日以内に薬物治療を開始すれば、ワクシニアまたは牛痘のいずれかによる致死的呼吸器感染からマウスを防御するのに極めて有効であることを示した。
【0007】
それでもやはり、現在の治療には限界がある。1960年代に発生したよりも著しく高い割合の合併症に対処するために現在備蓄されているワクチンを使用するのは、効果がない可能性がある。なぜなら、需要が満たされないことや、最近の天然痘ウイルスの進化のために有効性が低下することがあり得るからである。免疫不全の人や健康が衰えた人の場合、前述の安全性への懸念もある。DNAベースのワクチンの実現可能性は、ワクチンへの潜在的基盤になると考えられているが、ヒトで成功することがまだ証明されていない。さらに、天然痘ウイルスは、200を超える遺伝子をコードし、かつ各々それ自身に固有の膜糖タンパク質と異なる侵入要件とを有する、成熟ビリオン(MV)とエンベロープビリオン(EV)という2つの感染形態を有する極めて複雑なDNAウイルスであるので、有効なDNAワクチンを開発するための候補抗原が難しい。
【0008】
現在の天然痘ワクチンの安全かつ有効な代替物が依然として必要とされている。さらに、十分に許容され、広範な免疫防御を提供し、かつ生物テロの脅威に応えて時宜を得た方法で大規模に製造することができる天然痘ワクチンが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、天然痘ウイルスに対する哺乳動物での防御免疫応答を生じさせることができるDNAワクチンを含む。DNAワクチンは、複数のVACV MV抗原を発現することができる少なくとも1つのDNAプラスミドと、複数のVACV EV抗原を発現することができる少なくとも1つのDNAプラスミドとを含む。好ましくは、DNAワクチンは、A4L抗原を発現することができるプラスミドをさらに含む。本発明の別の態様は、中和抗体応答を含む、天然痘ウイルスに対する哺乳動物での防御免疫応答を誘導する方法であって、該哺乳動物の組織に、複数のVACV MV抗原を発現することができる少なくとも1つのDNAプラスミドと、複数のVACV EV抗原を発現することができる少なくとも1つのDNAプラスミドと、A4Lを発現することができるDNAプラスミドとを含むDNAワクチンを注射する工程を含む方法に関する。好ましくは、これらの方法は、電気穿孔量の電気エネルギーを用いて該組織を電気穿孔する工程をさらに含む。
【0010】
本発明の多くの目的および利点は、添付の図面を参照することにより、当業者によってより良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】多くの天然痘プラスミドに基づく製造に関する表とそれらの物理化学特性のまとめを示す。
【図2】ヒトコドンに最適化されたコンセンサスA4L(配列番号1に示すDNA配列をコードする)を含むA4L抗原を発現するプラスミド地図pGX4001を示す。
【図3】ヒトコドンに最適化されたコンセンサスA27L(配列番号3に示すDNA配列をコードする)を含むA27L抗原を発現するプラスミド地図pGX4002を示す。
【図4】ヒトコドンに最適化されたコンセンサスB5R(配列番号5に示すDNA配列をコードする)を含むB5R抗原を発現するプラスミド地図pGX4003を示す。
【図5】ヒトコドンに最適化されたコンセンサスA33R(配列番号7に示すDNA配列をコードする)を含むA33R抗原を発現するプラスミド地図pGX4004を示す。
【図6】ヒトコドンに最適化されたコンセンサスA56R(配列番号9に示すDNA配列をコードする)を含むA56R抗原を発現するプラスミド地図pGX4005を示す。
【図7】ヒトコドンに最適化されたコンセンサスF9L(配列番号11に示すDNA配列をコードする)を含むF9L抗原を発現するプラスミド地図pGX4006を示す。
【図8】ヒトコドンに最適化されたコンセンサスH3L(配列番号13に示すDNA配列をコードする)を含むH3L抗原を発現するプラスミド地図pGX4007を示す。
【図9】ヒトコドンに最適化されたコンセンサスL1R(配列番号15に示すDNA配列をコードする)を含むL1R抗原を発現するプラスミド地図pGX4008を示す。
【図10】ウサギでの予備的研究における事象の順序を示す時系列を示す。
【図11】3つの異なる群に由来するウサギでのB5R抗体応答を示す棒グラフを示す。
【図12】3つの異なる群に由来するウサギでのH3L抗体応答を示す棒グラフを示す。
【図13】3つの異なる群に由来するウサギでのA27L抗体応答を示す棒グラフを示す。
【図14】3つの異なる群に由来するウサギでのL1R抗体応答を示す棒グラフを示す。
【図15】カニクイザル(非ヒト霊長類)での予備的研究における事象の順序を示す時系列を示す。
【図16】3つの霊長類の群についてのELISpotの結果を示す棒グラフを示す。
【図17】ウサギでの皮内(ID)または筋肉内(IM)のいずれかへの抗原送達を比較する研究における事象の順序を示す時系列を示す。
【図18】A群からJ群の各々1つの群のウサギに投与された複数のプラスミドの電気穿孔条件と送達条件を示す表を示す。
【図19】様々なIM条件またはID条件の下での抗体力価(HA抗原)を示す棒グラフを示す。
【図20】様々なIM条件またはID条件の下での抗体力価(B5R抗原)を示す棒グラフを示す。
【図21】様々なIM条件またはID条件の下での抗体力価(A27L抗原)を示す棒グラフを示す。
【図22】ウサギのIMワクチン接種またはIDワクチン接種のスケジュールを示す時系列を示す。
【図23】A群からJ群の各々1つの群のウサギに投与された複数のプラスミドの電気穿孔条件と送達条件を示す表を示す。
【図24】様々な群のウサギでのA27L抗原に対する抗体応答を示す棒グラフを示す。
【図25】様々な群のウサギでのB5R抗原に対する抗体応答を示す棒グラフを示す。
【図26】様々な群のウサギでのA4L抗原に対する抗体応答を示す棒グラフを示す。
【図27】様々な群のウサギでのH3L抗原に対する抗体応答を示す棒グラフを示す。
【図28】様々な群のウサギでのA33R抗原に対する抗体応答を示す棒グラフを示す。
【図29】様々な群のウサギでのL1R抗原に対する抗体応答を示す棒グラフを示す。
【図30】42日目での4つのプラスミド組合せについてのA27L抗原に対する終点ELISA曲線を示す線グラフを示す。
【図31】42日目での8つのプラスミド組合せについてのA27L抗原に対する終点ELISA曲線を示す線グラフを示す。
【図32】84日目での4つのプラスミド組合せについてのA27L抗原に対する終点ELISA曲線を示す線グラフを示す。
【図33】84日目での8つのプラスミド組合せについてのA27L抗原に対する終点ELISA曲線を示す線グラフを示す。
【図34】各ワクチン接種についてのID送達およびIM送達後の抗体応答および細胞性応答の増強。0、28、および56日目に、カニクイザルにワクチン接種した。図34aは、pVAX1対照群と比較した各抗原についての抗体応答を示す棒グラフを示す。図34bは、各ワクチン接種についてのID送達およびIM送達後の細胞性応答を示す棒グラフを示す(各ワクチン接種(0、28、および56日目)由来の個々の免疫付与されたサルからPBMCを単離し、プールした。各抗原についてのペプチドプールでPBMCを刺激した後、IFN−γ ELISPOTアッセイを行なった)。
【図35−1】曝露後のワクチン接種を受けたサルにおけるウイルス血症のレベルを示すグラフを示す。血液1ml当たりのサル痘ウイルスゲノムの数を、定量的TaqMan 3'-マイナーグルーブバインダーPCRで測定した。検出下限は、5000ゲノム/ml血液であった。平均値±標準誤差を示す。
【図35−2】示されるように、1群につきサル1匹で、手と胴体の病変が示された写真を示す。
【図35−3】サル痘ウイルスを静脈内曝露した後の痘痕病変の発症を示すための病変総数を示す棒グラフを示す。
【図36】ワクチン接種を受けたサルにおける抗VACV結合抗体の曝露前と曝露後の終点力価を示すグラフを示す。終点力価は、陽性反応性が陰性対照血清の平均光学密度+3標準偏差よりも大きい最大血清希釈の逆数として表す。Vはワクチンを接種した日を示す。Cは曝露した日を示す。
【図37】サル痘ウイルス曝露前後の中和抗体応答を示すグラフを示す。各処置群のPRNT50中和抗体力価が示されている。Vはワクチンを接種した日を示す。Cは曝露した日を示す。
【図38】VACV中和抗体力価と痘痕病変の最大数のスピアマン順位相関を示すグラフを示す。
【図39】免疫付与後の抗原特異的T細胞機能を示す棒グラフを示す。3回目の免疫付与をしてから2週間後に単離されたPBMCを、インビトロで、A27またはB5の全ペプチドプール混合物で5時間刺激した。IFNγ、TNFα、およびIL-2の細胞内産生とCD107aによる脱顆粒化について細胞を染色した。CD4+(図39a)T細胞とCD8+(図39b)T細胞について機能的表現型を評価した。積み重ね表示棒グラフは、各々の免疫付与群についてのA27(灰色)とB5(黒色)に対する全ての機能的応答の平均の大きさを示す。
【図40】CD4+T細胞とCD8+T細胞の増殖能を示す棒グラフを示す。3回目の免疫付与をしてから4週間後に単離された新鮮PBMCをCFSEで染色し、インビトロで5日間、抗原特異的ペプチドで刺激して、抗原特異的CD4+(図40a)T細胞とCD8+(図40b)T細胞の増殖能を測定した。結果は、積み重ね表示の群平均応答±標準誤差として示す。免疫前試料でのバックグラウンド応答が高かったので、A4L応答は報告しなかった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の省略された、または短縮された、定義は、本発明の好ましい実施形態の理解を助けるために提供される。本明細書で提供される省略された定義は、決して網羅的なものではなく、また、当該分野で理解されるような定義または辞書的な意味と矛盾するものでもない。省略された定義は、当技術分野で公知の定義を補足するまたはより明確に定義するために本明細書で提供される。
【0013】
定義
本明細書で使用する場合、「核酸コンストラクト」という用語は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むDNA分子またはRNA分子を指す。コード配列、または「核酸配列をコードする」は、核酸分子が投与される個体の細胞における発現を導くことができるプロモーターやポリアデニル化シグナルを含む調節エレメントに機能的に連結される開始シグナルおよび終結シグナルを含み得る。
【0014】
本明細書で使用する場合、「発現可能形態」という用語は、個体の細胞に存在するときにコード配列が発現されるように、タンパク質をコードするコード配列に機能的に連結される必要な調節エレメントを含有する核酸コンストラクトを指す。
【0015】
「定電流」という用語は、組織、または該組織を規定する細胞が、同組織に送達される電気パルスの持続期間中に受容するまたは経験する電流を定義するために本明細書で使用される。電気パルスは、本明細書に記載の電気穿孔装置から送達され、本明細書に記載のプラスミドおよびワクチンとともに使用されることが企図される。この電流は、電気パルスの寿命期間中、該組織に定電流量で留まるが、それは、本明細書で提供される電気穿孔装置が、好ましくは瞬間的フィードバックを有する、フィードバック素子を有するからである。フィードバック素子は、パルスの持続期間中の組織(または細胞)の抵抗を測定し、電気穿孔装置の電気エネルギー出力を変化させる(例えば、電圧を増大させる)ことができるので、同組織中の電流は、電気パルスの間ずっと(約マイクロ秒)、およびパルス毎に、一定であり続ける。いくつかの実施形態では、フィードバック素子は、制御器を含む。
【0016】
「フィードバック」または「電流フィードバック」という用語は互換的に使用されており、提供される電気穿孔装置の活発な応答を意味するが、これは、電極間の組織の電流を測定することと、電流を一定レベルで維持するために、EP装置が送達するエネルギー出力を適宜変化させることとを含む。この一定レベルは、パルスシーケンスまたは電気処理を開始する前に、ユーザが予め設定する。電気穿孔装置の中の電気回路が、電極間の組織の電流を連続的にモニターし、そのモニターされた電流(または組織中の電流)を予め設定された電流と比較し、連続的にエネルギー出力の調整を行なって、モニターされた電流を予め設定されたレベルで維持することができるように、フィードバックは、電気穿孔装置の電気穿孔コンポーネント、例えば、制御器によって達成されることが好ましい。いくつかの実施形態では、フィードバックループは瞬間的なものであるが、それは、フィードバックループがアナログ閉ループフィードバックであるからである。
【0017】
本明細書で互換的に使用される「電気穿孔」、「電気透過」、または「動電増強」(「EP」)という用語は、膜貫通電界パルスを用いて、生体膜に微視的通路(孔)を導入することを指す。これらの通路が存在することにより、プラスミド、オリゴヌクレオチド、siRNA、薬物、イオン、および/または水などの生体分子が細胞膜の一方側から他方側へと通過することができる。
【0018】
「分散電流」は、本明細書に記載の電気穿孔装置の様々な針電極アレイから送達される電流のパターンを定義するために本明細書で使用されており、これらのパターンは、電気穿孔される任意の組織領域に対する電気穿孔関連の熱応力の発生を最小限に抑えるか、または好ましくは消失させる。
【0019】
本明細書で使用される「フィードバック機構」という用語は、ソフトウェアまたはハードウェア(もしくはファームウェア)のいずれかによって実行されるプロセスであって、(エネルギーパルスの送達前、送達中、および/または送達後の)所望の組織の電気抵抗を受容し、それを現在値、好ましくは電流と比較し、送達されるエネルギーパルスを調整して、予め設定された値を達成するプロセスを指す。「電気抵抗」という用語は、フィードバック機構を論じるときに本明細書で使用されており、オームの法則によって電流値に変換することができるので、予め設定された電流と比較することができる。好ましい実施形態では、「フィードバック機構」は、アナログ閉ループ回路によって実行される。
【0020】
「アジュバント」という用語は、以下に記載のDNAプラスミドおよびコード核酸配列によってコードされるVACV抗原の抗原性を増強するために本明細書に記載のDNAワクチンに添加される任意の分子を意味するために本明細書で使用される。
【0021】
「防御免疫応答」という用語は、本明細書で提供されるDNAワクチンによる免疫付与によって生じる、抗体応答と細胞性免疫応答の組合せ、好ましくは、中和抗体応答を意味するために本明細書で使用される。
【0022】
本発明の好ましい抗原を説明するために互換的に使用される「コンセンサス」または「コンセンサス配列」または「コンセンサス抗原」という用語は、今存在する特定のウイルス分離株に基づいて生成される合成配列を指す。コンセンサスは、所与のどの天然ウイルス分離株よりも、現在広まっているウイルス分離株に遺伝的に近い可能性がある。しかしながら、通常、急性感染期にサンプリングされるウイルスではなく、慢性感染期にサンプリングされるウイルスを用いて全体的な配列決定が行なわれるので、大部分は免れたエピトープに対するコンセンサスワクチン応答を発生させるのは不利な場合がある。この不都合を最小にするために、ワクチン設計の1つの有用な戦略は、早期伝達配列を考慮に入れることである。コンセンサスは、ワクチン株と今広まっているウイルスの配列の相違度を最小にする効果的なアプローチであって、これらのウイルスの「中核を成す」人工配列を作り出することになるアプローチとなる。1つの設計戦略は、アラインメントの位置ごとに最もよく見られるアミノ酸から得られるコンセンサス配列を使用することである。その結果、そのようなコンセンサスは、様々な天然ウイルス分離株に対する広範な免疫応答を誘発することができ、組合せ上の多型はどの天然ウイルスにも見られないはずである。
【0023】
本発明の一態様は、ポックスウイルスに対する哺乳動物での防御免疫応答を生じさせることができるDNAワクチンを含む。好ましくは、ポックスウイルスは天然痘ウイルスである。DNAワクチンは、複数のVACV MV抗原を発現することができる少なくとも1つのDNAプラスミドと、複数のVACV EV抗原を発現することができる少なくとも1つのDNAプラスミドとを含む。好ましくは、DNAワクチンは、A4L抗原を発現することができるプラスミドをさらに含む。各々の該抗原は、(複数のコード配列を含む)単一のDNAプラスミドによって、または別々のDNAプラスミドによって発現され得る。好ましくは、各々の別々の抗原は、別々のDNAプラスミドによって発現される。VACV MV抗原は、A27L、F9L、H3L、またはL1Rを含み、一方、VACV EV抗原は、A33R、A56R、またはB5Rを含む。好ましくは、各々のDNAプラスミドは、該抗原をコードするコンセンサスDNA配列を含む。VACV MV抗原をコードするコンセンサスDNA配列は、配列番号3(A27L)、配列番号11(F9L)、配列番号13(H3L)、または配列番号15(L1R)を含む。VACV EV抗原をコードするコンセンサスDNA配列は、配列番号5(B5R)、配列番号7(A33R)、または配列番号9(A56R)を含む。A4LをコードするコンセンサスDNA配列は、配列番号1を含む。いくつかの実施形態では、複数のVACV MV抗原を発現することができるDNAプラスミドは、配列番号4(A27L)、配列番号12(F9L)、配列番号14(H3L)、または配列番号16(L1R)を含む配列を有するタンパク質をコードするコード配列を含み、複数のVACV MV抗原を発現することができるDNAプラスミドは、配列番号6(B5R)、配列番号8(A33R)、または配列番号10(A56R)を含む配列を有するタンパク質をコードするコード配列を含み、A4L抗原を発現することができるDNAプラスミドは、配列番号2の配列を有するタンパク質をコードするコード配列を含む。好ましくは、DNAワクチンは、コードDNA配列、すなわち、配列番号1(A4L)、配列番号3(A27L)、配列番号5(B5R)、配列番号7(A33R)、配列番号9(A56R)、配列番号11(F9L)、配列番号13(H3L)、および配列番号15(L1R)をそれぞれ含む、複数の別々のDNAプラスミドを含む。別の好ましい実施形態では、DNAワクチンは、配列、すなわち、配列番号2(A4L)、配列番号4(A27L)、配列番号6(B5R)、配列番号8(A33R)、配列番号10(A56R)、配列番号12(F9L)、配列番号14(H3L)、および配列番号16(L1R)をそれぞれ有するタンパク質をコードするコードDNA配列を含む、複数の別々のDNAプラスミドを含む。いくつかの好ましい実施形態では、コンセンサスコード配列は、ヒトコドンに最適化されている。
【0024】
別の好ましい実施形態では、DNAワクチンは、DNAプラスミドpGX4001、pGX4002、pGX4003、pGX4004、pGX4005、pGX4006、pGX4007、もしくはpGX4008、またはそれらの組合せを含む。
【0025】
本発明の別の態様は、中和抗体応答を含む、ポックスウイルスに対する哺乳動物での防御免疫応答を誘導する方法であって、該哺乳動物の組織に、複数のVACV MV抗原を発現することができる少なくとも1つのDNAプラスミドと、複数のVACV EV抗原を発現することができる少なくとも1つのDNAプラスミドと、A4Lを発現することができるDNAプラスミドとを含むDNAワクチンを注射する工程を含む方法に関する。好ましくは、ポックスウイルスは天然痘ウイルスである。好ましい実施形態では、注射する工程は、皮内に注射する工程または筋肉内に注射する工程を含む。防御免疫応答を誘導する方法は、電気穿孔量の電気エネルギーを用いて該組織を電気穿孔する工程をさらに含むことができる。好ましくは、電気穿孔する工程は、該組織に定電流を送達する工程を含む。より好ましくは、電気穿孔する工程は、0.2Aの電流を送達する工程を含む。いくつかの実施形態では、防御免疫応答を誘導する方法は、該注射する工程を繰り返す工程を含む。好ましい実施形態では、送達する工程は、8つの別々のDNAプラスミドを送達する工程を含む。
【0026】
本明細書に記載のDNAワクチンは、高いDNA濃度を有するDNAプラスミド処方物を用いて処方される。高いDNA濃度は、5mg/mL以上、6mg/mL以上、7mg/mL以上、8mg/mL以上、9mg/mL以上、10mg/mL以上、11mg/mL以上、12mg/mL以上、13mg/mL以上、14mg/mL以上、15mg/mL以上の濃度であり得る。いくつかの実施形態では、プラスミドDNAは、5〜15mg/mL、5〜14mg/mL、5〜13mg/mL、5〜12mg/mL、5〜11mg/mL、5〜10mg/mL、5〜9mg/mL、5〜8mg/mLの濃度、6〜15mg/mL、6〜14mg/mL、6〜13mg/mL、6〜12mg/mL、6〜11mg/mL、6〜10mg/mL、6〜9mg/mL、6〜8mg/mLの濃度、7〜15mg/mL、7〜14mg/mL、7〜13mg/mL、7〜12mg/mL、7〜11mg/mL、7〜10mg/mL、7〜9mg/mL、8〜15mg/mL、8〜14mg/mL、8〜13mg/mL、8〜12mg/mL、8〜11mg/mL、8〜10mg/mL、9〜15mg/mL、9〜14mg/mL、9〜13mg/mL、9〜12mg/mL、9〜11mg/mL、10〜15mg/mL、10〜14mg/mL、10〜13mg/mL、10〜12mg/mL、11〜15mg/mL、11〜14mg/mL、11〜13mg/mL、12〜15mg/mL、12〜14mg/mL、または13〜15mg/mLの濃度であってもよい。DNAプラスミド濃度が高い処方物を用いてDNAワクチンを処方することにより、各々のDNAプラスミドを高い用量で維持したまま、様々な別々のDNAプラスミドの混合物を1つに混合することができる。いくつかの実施形態では、各々の別々のDNAプラスミドは高用量で存在し、これは、50μgを超える、60μgを超える、70μgを超える、80μgを超える、90μgを超える、100μgを超える、110μgを超える、120μgを超える、130μgを超える、140μgを超える、150μgを超える、160μgを超える、170μgを超える、180μgを超える、190μgを超える、200μgを超える、210μgを超える、220μgを超える、230μgを超える、240μgを超える、または250μgを超える用量である。好ましくは、高用量は120μgを超えるものであり、より好ましくは125μgである。好ましい一実施形態では、DNAワクチンは、125μgの用量で存在するDNAプラスミドを含む。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、DNAワクチンは、アジュバントをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、アジュバントは、α-インターフェロン、γ-インターフェロン、血小板由来増殖因子(PDGF)、TNFα、TNFβ、GM-CSF、上皮増殖因子(EGF)、皮膚T細胞誘引ケモカイン(CTACK)、上皮胸腺発現ケモカイン(TECK)、粘膜関連上皮ケモカイン(MEC)、IL-12、IL-15、IL-28、MHC、CD80、CD86(シグナルペプチドを欠失し、かつ任意でIgE由来のシグナルペプチドを含むIL-15を含む)からなる群から選択される。有用なアジュバントであり得る他の遺伝子としては、MCP-1、MIP-1α、MIP-1p、IL-8、RANTES、L-セレクチン、P-セレクチン、E-セレクチン、CD34、GlyCAM-1、MadCAM-1、LFA-1、VLA-1、Mac-1、p150.95、PECAM、ICAM-1、ICAM-2、ICAM-3、CD2、LFA-3、M-CSF、G-CSF、IL-4、突然変異型IL-18、CD40、CD40L、血管増殖因子、線維芽細胞増殖因子、IL-7、神経増殖因子、血管内皮増殖因子、Fas、TNF受容体、Flt、Apo-1、p55、WSL-1、DR3、TRAMP、Apo-3、AIR、LARD、NGRF、DR4、DR5、KILLER、TRAIL-R2、TRICK2、DR6、カスパーゼICE、Fos、c-jun、Sp-1、Ap-1、Ap-2、p38、p65Rel、MyD88、IRAK、TRAF6、IkB、不活性NIK、SAP K、SAP-1、JNK、インターフェロン応答遺伝子、NFkB、Bax、TRAIL、TRAILrec、TRAILrecDRC5、TRAIL-R3、TRAIL-R4、RANK、RANKリガンド、Ox40、Ox40リガンド、NKG2D、MICA、MICB、NKG2A、NKG2B、NKG2C、NKG2E、NKG2F、TAP1、TAP2、およびそれらの機能断片をコードする遺伝子が挙げられる。いくつかの好ましい実施形態では、アジュバントは、IL-8、IL-12、IL-15、IL-18、IL-28、MCP-1、MIP-1α、MIP-1p、RANTES、RANK、RANKリガンド、Ox40、Ox40リガンド、CTACK、TECK、もしくはMEC、またはそれらの組合せから選択され、より好ましくは、アジュバントは、IL-12、IL-15、IL-28、またはRANTESである。
【0028】
ポックスウイルスは、ポックスウイルス科由来の巨大複合ウイルスであり、VACVと痘瘡ウイルス(天然痘)とを含む。4つのポックスウイルス属がヒトに感染することが知られており、オルトポックス、パラポックス、ヤタポックス、モラシポックスを含む。オルトポックス:痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、牛痘ウイルス、サル痘ウイルス、天然痘(撲滅された);パラポックス:オルフウイルス、偽牛痘ウイルス、ウシ丘疹性口炎ウイルス;ヤタポックス:タナポックスウイルス、ヤバサル腫瘍ウイルス;モラシポックス:伝染性軟属腫ウイルス(MCV)。他のポックスウイルスとしては、とりわけ、ラクダ痘ウイルス、牛痘ウイルス、エクトロメリアウイルス、サル痘ウイルス、アライグマ痘ウイルス、スカンク痘ウイルス、アレチネズミ痘ウイルス(Tatera poxvirus)、ウアシン・ギシュ(Uasin Gishu)ウイルス、痘瘡ウイルス、ハタネズミ痘ウイルス(Volepox virus)などのオルトポックスウイルス、アウスディーク(Ausdyk)ウイルス、ウシ丘疹性口炎ウイルス、オルフウイルス、偽牛痘ウイルス、アカシカ痘ウイルス、アザラシ痘ウイルスなどのパラポックスウイルス、ヒツジ痘ウイルス、ヤギ痘ウイルス、塊皮病ウイルスなどのカプリポックスウイルス、豚痘ウイルスなどのスイポックスウイルス、粘液腫ウイルス、線維腫ウイルス、ウサギ線維腫ウイルス、リス線維腫ウイルス、西洋リス(western squirrel)線維腫、多くの種のアビポックスウイルスなどのレポリポックスウイルス、タントポックス(Tantpox)ウイルス、ヤバポックスウイルスなどのヤタポックスウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、カンガルー類ポックスウイルス、ワニ類ポックスウイルスなどのモラシポックスウイルスが挙げられる。本明細書に記載のDNAワクチンの天然痘に対する高い交差反応性(広範な防御)に加えて、ポックスウイルス間での同一性が高いために、本発明のDNAワクチンが異なるポックスウイルス間での交差防御も提供すると予想される。
【0029】
投与経路としては、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、皮内、皮下、静脈内、動脈内、眼球内、および経口、ならびに局所、経皮、吸入もしくは坐薬によるもの、または粘膜組織へのもの(例えば、膣組織、直腸組織、尿道組織、頬組織、および舌下組織の洗浄によるもの)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい投与経路としては、筋肉内注射、腹腔内注射、皮内注射、および皮下注射が挙げられる。遺伝子コンストラクトは、従来のシリンジ、無針注射装置、「マイクロプロジェクタイルボンバードメント遺伝子銃」、または電気穿孔(「EP」)、「流体力学法」、もしくは超音波などの他の物理的方法を含むが、これらに限定されない、手段で投与してもよい。
【0030】
本発明のDNAワクチンの送達を容易にするのに好ましい電気穿孔装置および電気穿孔法の例としては、Draghia-Akliらによる米国特許第7,245,963号、Smithらにより提出された米国特許公開第2005/0052630号に記載されているものが挙げられ、これらの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。米国特許法119条(e)項の下、米国仮特許出願第60/852,149号(2006年10月17日出願)および同第60/978,982号(2007年10月10日出願)に対する恩典を主張する、同時係属かつ共同所有の米国特許出願第11/874072号(2007年10月17日出願)に提供されているDNAワクチンの送達を容易にするための電気穿孔装置および電気穿孔法も好ましく、これらの文献は全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
以下は、本発明の好ましい実施形態の一例であり、上で考察した特許参考文献においてより詳細に考察されている。電気穿孔装置は、ユーザによって入力された予め設定された電流と同様の定電流を生じさせるエネルギーパルスを哺乳動物の所望の組織に送達するように構成することができる。電気穿孔装置は、電気穿孔コンポーネントと電極アセンブリまたはハンドルアセンブリを含む。電気穿孔コンポーネントは、制御器、電流波形発生器、電気抵抗試験器、波形自動記録装置、入力素子、状況報告素子、通信ポート、メモリコンポーネント、電源、および電源スイッチを含む様々な電気穿孔装置素子の1つまたは複数を含み、かつ組み入れることができる。電気穿孔コンポーネントは、電気穿孔装置の1つの素子として機能することができ、他の素子は、電気穿孔コンポーネントと連通している独立した素子(要素)である。いくつかの実施形態では、電気穿孔コンポーネントは、電気穿孔装置の2つ以上の素子として機能し、これは、電気穿孔コンポーネントから離れている電気穿孔装置のさらに他の素子と連通することができる。本発明は、1つの電気機械装置または機械装置の部分として存在する電気穿孔装置の素子によって限定されるものではない。なぜなら、これらの素子は、1つの装置または互いに連通する独立した素子として機能することができるからである。電気穿孔コンポーネントは、所望の組織で定電流を生じさせるエネルギーパルスを送達することができ、フィードバック機構を含む。電極アセンブリは、複数の電極をある空間的配置で有する電極アレイを含むが、その場合、電極アセンブリは、電気穿孔コンポーネントからのエネルギーパルスを受容し、電極を通してそれを所望の組織に送達する。複数の電極のうちの少なくとも1つは、エネルギーパルスの送達の間、中性であり、所望の組織中の電気抵抗を測定し、この電気抵抗を電気穿孔コンポーネントに伝達する。フィードバック機構は、測定された電気抵抗を受容し、電気穿孔コンポーネントによって送達されるエネルギーパルスを調整して、定電流を維持することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、複数の電極は、分散形式のエネルギーパルスを送達することができる。いくつかの実施形態では、複数の電極は、プログラムされたシーケンス下にある電極の制御を通じて分散形式のエネルギーパルスを送達することができ、プログラムされたシーケンスは、ユーザによって電気穿孔コンポーネントに入力される。いくつかの実施形態では、プログラムされたシーケンスは、順々に送達される複数のパルスを含み、その場合、複数のパルスの各々のパルスは、少なくとも2つの活性電極と、電気抵抗を測定する1つの中性電極とによって送達され、複数のパルスの次のパルスは、少なくとも2つの活性電極のうちの異なる電極と、電気抵抗を測定する1つの中性電極とによって送達される。
【0033】
いくつかの実施形態では、フィードバック機構は、ハードウェアまたはソフトウェアのいずれかによって行なわれる。好ましくは、フィードバック機構は、アナログ閉ループ回路によって行なわれる。好ましくは、このフィードバックは、50μs、20μs、10μs、または1μs毎に起こるが、好ましくはリアルタイムフィードバックまたは瞬間的なものである(すなわち、応答時間を決定するための利用可能な技術で測定した場合に実質的に瞬間的なものである)。いくつかの実施形態では、中性電極は、所望の組織中の電気抵抗を測定し、この電気抵抗をフィードバック機構に伝達し、このフィードバック機構が電気抵抗に応答し、電気パルスを調整して、予め設定された電流と同様の値で定電流を維持する。いくつかの実施形態では、フィードバック機構は、エネルギーパルスの送達の間、連続的かつ瞬間的に定電流を維持する。
【0034】
薬学的に許容される賦形剤としては、ビヒクル、アジュバント、担体、または希釈剤のような機能分子を挙げることができるが、これらは公知であり、かつ公に容易に入手可能である。好ましくは、薬学的に許容される賦形剤は、アジュバントまたはトランスフェクション促進剤である。いくつかの実施形態では、核酸分子、またはDNAプラスミドは、ポリヌクレオチド機能増強剤または遺伝子ワクチン促進剤(もしくはトランスフェクション促進剤)の投与と併せて細胞に送達される。ポリヌクレオチド機能増強剤は、米国特許出願第5,593,972号、同第5,962,428号、および国際出願PCT/US94/00899号(1994年1月26日出願)に記載されており、これらは各々、参照により本明細書に組み込まれる。遺伝子ワクチン促進剤は、米国特許出願第021,579号(1994年4月1日出願)に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。トランスフェクション促進剤は、核酸分子との混合物として、核酸分子と併せて投与するか、または核酸分子の投与の前もしくは後に、別々に同時に投与することができる。トランスフェクション促進剤の例としては、界面活性剤(例えば、免疫刺激複合体(ISCOM))、フロイント不完全アジュバント、LPS類似体(モノホスホリル脂質Aを含む)、ムラミルペプチド、キノン類似体、ならびに小胞(例えば、スクアレン)およびスクアレンが挙げられるが、ヒアルロン酸も遺伝子コンストラクトと併せて用いて投与してもよい。いくつかの実施形態では、DNAプラスミドワクチンはまた、脂質、DNA-リポソーム混合物(例えば、WO9324640号参照)としてのリポソーム(レシチンリポソームもしくは当技術分野で公知の他のリポソームを含む)、カルシウムイオン、ウイルスタンパク質、ポリアニオン、ポリカチオン、もしくはナノ粒子などのトランスフェクション促進剤、または他の公知のトランスフェクション促進剤を含み得る。好ましくは、トランスフェクション促進剤は、ポリアニオン、ポリカチオン(ポリ-L-グルタメート(LGS)を含む)、または脂質である。
【0035】
いくつかの好ましい実施形態では、そのような標的タンパク質に対する免疫応答をさらに増強するタンパク質の遺伝子であるDNAプラスミドは、アジュバントとともに送達される。そのような遺伝子の例は、他のサイトカインおよびリンホカイン、例えば、α-インターフェロン、γ-インターフェロン、血小板由来増殖因子(PDGF)、TNFα、TNFβ、GM-CSF、上皮増殖因子(EGF)、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-12、IL-18、MHC、CD80、CD86、およびIL-15(シグナル配列を欠失し、かつ任意でIgE由来のシグナルペプチドを含むIL-15を含む)をコードする遺伝子である。有用であり得る他の遺伝子としては、MCP-1、MIP-1α、MIP-1p、IL-8、RANTES、L-セレクチン、P-セレクチン、E-セレクチン、CD34、GlyCAM-1、MadCAM-1、LFA-1、VLA-1、Mac-1、p150.95、PECAM、ICAM-1、ICAM-2、ICAM-3、CD2、LFA-3、M-CSF、G-CSF、IL-4、突然変異型IL-18、CD40、CD40L、血管増殖因子、線維芽細胞増殖因子、IL-7、神経増殖因子、血管内皮増殖因子、Fas、TNF受容体、Flt、Apo-1、p55、WSL-1、DR3、TRAMP、Apo-3、AIR、LARD、NGRF、DR4、DR5、KILLER、TRAIL-R2、TRICK2、DR6、カスパーゼICE、Fos、c-jun、Sp-1、Ap-1、Ap-2、p38、p65Rel、MyD88、IRAK、TRAF6、IkB、不活性NIK、SAP K、SAP-1、JNK、インターフェロン応答遺伝子、NFkB、Bax、TRAIL、TRAILrec、TRAILrecDRC5、TRAIL-R3、TRAIL-R4、RANK、RANKリガンド、Ox40、Ox40リガンド、NKG2D、MICA、MICB、NKG2A、NKG2B、NKG2C、NKG2E、NKG2F、TAP1、TAP2、およびそれらの機能断片をコードする遺伝子が挙げられる。
【0036】
本発明によるDNAプラスミドワクチンは、約1マイクログラム〜約10ミリグラム、約10マイクログラム〜約10ミリグラム、約100マイクログラム〜約10ミリグラム、約200マイクログラム〜約10ミリグラム、約300マイクログラム〜約10ミリグラム、約400マイクログラム〜約10ミリグラム、約500マイクログラム〜約10ミリグラム、約1マイクログラム〜約1ミリグラム、約10マイクログラム〜約1ミリグラム、約100マイクログラム〜約1ミリグラム、約200マイクログラム〜約1ミリグラム、約300マイクログラム〜約1ミリグラム、約400マイクログラム〜約1ミリグラム、約500マイクログラム〜約1ミリグラム、約100マイクログラム〜約1ミリグラム、約200マイクログラム〜約1ミリグラム、約300マイクログラム〜約1ミリグラム、約400マイクログラム〜約1ミリグラム、または約500マイクログラム〜約1ミリグラムのDNA量を含む。好ましくは、ワクチン中に存在するDNA量は、約100マイクログラム〜約1ミリグラムである。
【0037】
本発明によるDNAプラスミドワクチンは、使用すべき投与様式に従って処方される。DNAプラスミドワクチンが注射可能な組成物である場合、それらは、滅菌されている、および/または発熱物質を含まない、および/または微粒子を含まない。等張処方物が使用されることが好ましい。通常、等張性を得るための添加物としては、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、およびラクトースを挙げることができる。場合によっては、リン酸緩衝化生理食塩水などの等張溶液が好ましい。安定化剤としては、ゼラチンおよびアルブミンが挙げられる。いくつかの実施形態では、血管収縮剤を処方物に添加する。いくつかの実施形態では、長期間にわたって室温または周囲温度で処方物を安定にさせる安定化剤(例えば、LGSもしくは他のポリカチオンまたはポリアニオン)を処方物に添加する。
【0038】
いくつかの実施形態では、コンセンサス天然痘抗原に対する哺乳動物での免疫応答を誘発する方法として、粘膜免疫応答を誘導する方法が挙げられる。そのような方法は、上記のコンセンサス天然痘抗原を含むDNAプラスミドと組み合わせて、CTACKタンパク質、TECKタンパク質、MECタンパク質、およびそれらの機能断片またはそれらの発現可能なコード配列のうちの1つまたは複数を哺乳動物に投与する工程を含む。CTACKタンパク質、TECKタンパク質、MECタンパク質、およびそれらの機能断片のうちの1つまたは複数を、本明細書で提供されるDNAプラスミド天然痘ワクチンの投与の前、投与と同時、または投与の後に、投与し得る。いくつかの実施形態では、CTACK、TECK、MEC、およびそれらの機能断片からなる群から選択される1つまたは複数のタンパク質をコードする単離された核酸分子を哺乳動物に投与する。
【実施例】
【0039】
本発明を以下の実施例でさらに説明する。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すものの、例示のためだけに提示されることが理解されるべきである。上記の考察とこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的な特徴を確認することができ、その精神と範囲から逸脱することなく、本発明を様々な用法および条件に適合させるために、本発明の様々な変更および修正を行なうことができる。したがって、本明細書に示され、記載されたものに加えた、本発明の様々な修正が、上述の記載から当業者には明白となるであろう。そのような修正もまた、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【0040】
好ましくは、本明細書に記載の筋肉または皮膚用のEP装置とともに使用されるDNA処方物は、皮膚への送達に最適な少ない容量、好ましくは少ない注射容量、好ましくは25〜200マイクロリットル(μL)中に、高いDNA濃度、好ましくはマイクログラムから数十ミリグラム量のDNA、および好ましくはミリグラム量のDNAを含む濃度を有する。いくつかの実施形態では、DNA処方物は、1mg/mL以上などの高いDNA濃度(mgDNA/処方物の容量)を有する。より好ましくは、DNA処方物は、200μLの処方物中にグラム量のDNAを、より好ましくは100μLの処方物中にグラム量のDNAを提供するDNA濃度を有する。
【0041】
本発明のEP装置とともに使用されるDNAプラスミドは、公知の装置および技術の組合せを用いて処方または製造することができるが、好ましくは、共同所有された、同時係属中の米国仮特許出願である、米国特許出願第60/939,792号(2007年5月23日出願)に記載されている最適化されたプラスミド製造技術を用いて製造する。いくつかの例では、これらの研究で使用されるDNAプラスミドは、10mg/mL以上の濃度で処方することができる。製造技術には、米国特許出願第60/939792号に記載されているもの(共同所有の特許である米国特許第7,238,522号(2007年7月3日発行)に記載されているものを含む)に加えて、当業者によく知られている様々な装置およびプロトコルも含まれるかまたは組み込まれる。本明細書に記載の皮膚用のEP装置および送達技術とともに使用される高濃度のプラスミドは、適度に少ない容量でID/SC空間にプラスミドを投与することを可能にし、発現と免疫付与効果とを増強するのに役立つ。それぞれ、米国特許出願第60/939,792号および米国特許第7,238,522号という、共同所有の出願および特許は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
方法
適用可能であり、かつ特定の方法が特定の実施例で別途提供されない場合、以下の方法を以下の実施例に利用する。
【0043】
DNA発現コンストラクトのクローニング。VACV遺伝子、A4L、A27L、A33R、A56R、B5R、F9L、H3L、およびL1R(ウェスタンリザーブ株由来)を合成オリゴヌクレオチドから化学合成し、ヒトコドンに最適化し、DNA配列の5'末端にコザック(Kozak)コンセンサス配列とIgEリーダー配列を、DNA配列の3'末端にHAエピトープタグを含有するように修飾した。各々のこれらの修飾された遺伝子カセットを、従来のクローニング法を用いて、真核生物発現プラスミドである、GENEART(Burlingame,CA)製のpVAX1(Invitrogen,Carlsbad,CA)にクローニングした。各遺伝子の発現は、CMVプロモーターによって調節される。それぞれ、発現プラスミドpGX4001とpGX4003を作製するために、A4LとB5Rの合成遺伝子カセットを、HindIII部位とXhoI部位にクローニングした。A33R(pGX4004)とA56R(pGX4005)の発現プラスミドを作製するために、合成遺伝子カセットを、HindIII制限部位とXbaI制限部位にクローニングした。pGX4007とpGX4008は、H3LとL1Rの合成遺伝子カセットを、HindIII制限部位とBamHI制限部位にクローニングすることによって調製した。残りのプラスミドである、pGX4002とpGX4006は、A27LとF9Lの合成遺伝子カセットを、それぞれ、KpnI/XhoI制限部位とEcoRI/XbaI制限部位にクローニングすることによって作製した。クローニング後、抗原は全て、シークエンシングで確認した。
【0044】
ワクチン調製および免疫付与。プラスミドを高濃度に製造し、米国特許第7,238,522号でHebelらによって記載された製造手順を修正して用いて精製した。この方法により、ワクチンの生物薬剤的送達に適した、内毒素を含まない非常に高いプラスミド濃度のプラスミド処方物(≦10EU/mg)が得られた。プラスミド製剤は全て、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製した低分子量ポリ-L-グルタメート(LGS、平均MW10,900)を含む滅菌水を用いて1%重量/重量で処方および調製した。全てのプラスミド(pGX4001〜pGX4008)を組み合わせて、ID用に0.1mLまたはIM投与用に0.5mLの総容量の、125μgの各プラスミドからなる単一のワクチン製剤を作製した。
【0045】
ケタミンHCL(10〜30mg/kg)を用いて動物に筋肉内麻酔を施した。ワクチンを各大腿部(1回のワクチン接種につき大腿部当たり1つの注射部位)に投与し、CELLECTRA(登録商標)2000装置(ヒト使用に有効な装置;VGX Pharmaceuticals,Blue Bell,PA)を用いるEPと組み合わせて、半膜様筋肉内にIDまたはIMのいずれかで送達した。注射のすぐ後、0.2Aの定電流、52msのパルス長、パルス間隔1秒の2×2回のパルスを皮内投与に適用し、0.5Aの定電流、52msのパルス長、パルス間隔1秒の3回のパルスを静脈内投与に適用した。0、28、および56日目に免疫付与を行ない、免疫付与した日に血清を回収して、抗体応答を測定した。
【0046】
試料回収とPBMC単離。ワクチン接種スケジュール中、2週間おきに、および3回曝露した後ごとに、カニクイザルから採血した。ケタミンHCL(10〜30mg/kg)を用いて動物に筋肉内麻酔を施した。EDTAチューブに血液を回収した。標準的なFicoll-Hypaque密度勾配遠心分離で全血からPBMCを単離し、完全培養培地(10%熱非働化FBS、100IU/ml ペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、および55μM β-メルカプトエタノールを補充した、2mM L-グルタミンを含むRPMI 1640)に再懸濁した。
【0047】
抗原特異的ELISA用の抗原の調製。適当な制限酵素部位を含有する遺伝子特異的プライマーを用いてウェスタンリザーブ株のVACVから各抗原のオープンリーディングフレームをPCR増幅し、原核生物発現ベクターのpEt219a(+)(EMD Chemicals,Gibbstown,NJ)にクローニングした。pEt21a(+)に存在する6×ヒスチジンタグとの融合が可能になるように3'-末端オリゴヌクレオチドを設計した。タンパク質は、標準的なニッケルカラム精製法(Abgent,Inc.,San Diego,CA)を用いて精製した。
【0048】
抗原特異的ELISA。IgG抗体応答を測定するために、MaxiSorp Immuno 96ウェルプレート(Nunc,Rochester,NY)に、PBSに希釈した50ngの精製抗原(A4L、A27L、A33R、A56R、B5R、F9L、H3L、またはL1R)をコーティングすることにより、ELISAを行なった。4℃で一晩インキュベートした後、プレートを、0.05%Tween20を補充したPBS(PBS-T)で洗浄し、次に、3%BSAを補充したPBSで、室温で1時間ブロッキングした。個々のカニクイザルから回収した血清を、0.5%BSA、0.05%Tween20を補充したPBSに希釈し、希釈血清50μlとして、4℃で一晩インキュベートした。ウェルをPBS-Tで洗浄した後、2次抗体のHRPコンジュゲートヤギ抗ウサギIgG(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)とインキュベートし、0.5%BSA、0.05%Tween20を補充したPBSに1:10,000で希釈した(100μL/ウェル)。ウェルを室温で1時間インキュベートし、洗浄した。製造元の推奨(KPL,Gaithersburg,MD)に従って、TMB基質と停止溶液を各ウェルに添加した。
【0049】
Lumistar Galaxyプレートリーダー(BMG Labtech)を用いて吸光度を450nmで測定した。終点力価は、陰性対照血清の2倍よりも大きい陽性反応性を生じる最大血清希釈の逆数として表す。
【0050】
VACV ELISA。マイクロタイタープレートに、パラホルムアルデヒド固定し、ショ糖勾配精製したVACV WR株(Advanced Biotechnologies,Inc.)を0.6μg/mlの濃度でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを、5%脱脂粉乳を補充したPBS-T(PBS-TM)を用いて、37℃で2時間ブロッキングした。ウェルをPBS-Tで8回洗浄し、サル血清の連続希釈とともに37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、ウェルを、2次抗体、すなわち、西洋ワサビペルオキシダーゼ(KPL)にコンジュゲートしたヤギ抗サルIgGおよびABTS基質(Sigma-Aldrich)とともにインキュベートした。100μLの10%SDSを添加して反応を停止させ、Molecular Devices SpectraMax Plus 384を用いて405nmで読み取った。
【0051】
終点力価は、陰性対照血清の平均光学密度+3標準偏差よりも大きい陽性反応性を生じる最大血清希釈の逆数として表す。
【0052】
合成ペプチド。この研究に使用したペプチドは、WR株のVACVのA4L、A27L、A33R、A56R、B5R、F9L、H3L、およびL1Rのコード領域に由来するものであった。A4L、A27L、A33R、A56R、F9L、H3L、およびL1Rについて、全抗原ペプチドライブラリーを合成した。ペプチドは全て、9アミノ酸(A27Lの場合)、11アミノ酸(A4L、A33R、A56R、F9L、H3L、およびL1Rの場合)、または6アミノ酸(B5Rの場合)のいずれかだけ重複する15merであった。A27LライブラリーはInvitrogenにより調製された。他のライブラリーは全て、GenScript Corporation(Piscataway,NJ)により調製された。ライブラリーは、DMSO中に10mg/mLの濃度の対応するペプチドプールとして調製された。
【0053】
IFN-γ ELISPOTアッセイ。非ヒト霊長類ELISpotアッセイを行なった(Boyer,J.D.ら.J.Med.Primatol.34,262-270(2005)参照)。ペプチドを含有するウェルから陰性対照ウェル中のスポットの数を差し引くことによって、抗原特異的応答を測定した。結果は、3通りのウェルについて得られた平均値(スポット/100万個の脾細胞)として示す。
【0054】
PBMCのカルボキシフルオレセインスクシニミジルエステル(CFSE)コンジュゲーションおよびフローサイトメトリー解析。細胞をペレット化し、PBS中の二酢酸カルボキシフルオレセインスクシニミジルエステル(CFDA-SE)(Molecular Probes,Eugene,OR)(1:2000希釈)1mlに再懸濁した。細胞を37℃で10分間インキュベートした。細胞を完全培地で洗浄し、1×10細胞/100μlの濃度に再懸濁し、全ペプチドプール100μlとともに96ウェル丸底プレート中にプレーティングした。コンカバリンA 5μg/ml(陽性)と完全培地(陰性)とを対照として用いた。培養物を5日間インキュベートした。細胞をまず、生細胞/死細胞マーカーである、Vivid色素バイオレットで、37℃で10分間染色した。細胞をPBSで1回洗浄した。次に、細胞を、抗ヒトCD3-APC Cy7(クローンSP34-2)(BD Pharmingen)と抗ヒトCD4-PerCP Cy5.5(クローンL200)と抗ヒトCD8-APC(クローンSK1)を用いて4℃で1時間染色した。次に、細胞をPBSで2回洗浄し、1%パラホルムアルデヒドで固定した。LSR IIフローサイトメーター(BD Biosciences,Franklin Lakes,NJ)を用いてデータを回収した。フローサイトメトリーデータは、CD3リンパ球に対してゲートをかけて、FlowJoソフトウェア(Tree Star,Ashland,OR)を用いて解析した。試料1つにつき3万〜5万個のCD3リンパ球を回収した。培地差し引き後のデータを示す。免疫前試料中でのバックグラウンド増殖が高かったので、A4に対する増殖応答は評価しなかった。
【0055】
細胞内サイトカイン染色。抗体試薬:直接コンジュゲート抗体は以下から入手した:BD Biosciences(San Jose,CA):IL-2(PE)、CD3(APC Cy7)、CD8(APC)、IFN-γ(Alexa Fluor 700)、TNF-α(PE Cy7)、CD95(PE Cy5)、およびCD4(PerCP Cy5.5)。CD28(ECD)はBeckman Coulterから入手した。
【0056】
細胞の刺激と染色。PBMCを、完全RPMI中で1×10細胞/100μlに再懸濁し、1:200希釈の刺激ペプチドA27LおよびB5R 100μlとともに96ウェルプレート中にプレーティングした。刺激しない陽性対照(ブドウ球菌腸毒素B、1μg/ml;Sigma-Aldrich)を各アッセイに含めた。細胞を37℃で5時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を洗浄(PBS)し、表面抗体で染色した。細胞を洗浄し、説明書に従って、Cytofix/Cytopermキット(BD Pharmingen,San Diego,CA)を用いて固定した。固定後、細胞をこのperm緩衝液中で2回洗浄し、細胞内マーカーに対する抗体で染色した。染色後、細胞を洗浄し、固定し(1%パラホルムアルデヒドを含有するPBS)、解析するまで4℃で保存した。
【0057】
フローサイトメトリー。細胞を改良型のLSR IIフローサイトメーター(BD Immunocytometry Systems,San Jose,CA)で解析した。試料1つにつき5万回のCD3事象を回収した。FlowJoバージョン8.6.3(TreeStar,San Carlos,CA)を用いてデータ解析を行なった。最初のゲーティングでは、前方散乱面積(FSC-A)対高さ(FSC-H)プロットを用いて、ダブレットを取り除いた。これらの事象に、FSC-A対SSCプロットにより、リンパ球ゲートをかけた。生きたT細胞は、生/死対CD3プロットにより同定した。この後、事象に、CD8事象対IFN-γとCD4-事象対IFN-γとで順次ゲートをかけて、下方調節を明らかにした。CD8T細胞を同定した後、最適に分離する組合せを用いるそれぞれの関数の各々についてゲートを作成した。各々の関数についてのゲートを作成した後、本発明者らは、ブーリアンゲートプラットフォームを用いて、4つの関数を試験したときの15の応答パターンに等しい、可能な組合せの完全なアレイを作成した。データはバックグラウンド補正後に報告される。免疫前応答が高かったので、1匹のpVAX1動物(#4384)についての応答は解析に含めなかった。
【0058】
ウイルスの繁殖と調製。ザイール株、V79-I-005(サル痘ウイルスマスターシードNR-523)のサル痘ウイルスは、米国立衛生研究所の生体防御および新興感染症研究資源レポジトリ(Biodefense and Emerging Infections Research Resources Repository)から入手した。このザイール株は、もともと、1979年にザイール出身の致死感染を受けたヒトから入手された(米国疾病対策予防センターにある天然痘および他のポックスウイルス感染症に関するWHO指定研究協力センター(World Health Organization Collaborating Center for Smallpox and Other Poxvirus Infections)により単離された)。このウイルスをニワトリ胚線維芽細胞内で継代することによって摂取材料を調製し、標準的なショ糖勾配による沈降によって精製した。これをニワトリ胚線維芽細胞内で繁殖させて、精製した。
【0059】
サル痘ウイルス曝露。最後のワクチン接種から4週間後(91日目)に、本明細書に記載の通りにカニクイザルに麻酔をかけ、2×10PFUのサル痘ウイルスNR-523を、23ゲージのバタフライ針を用いて伏在静脈に筋肉内注入した。実際に送達された用量を確認するために、標準的なプラークアッセイ技術を用いて、Vero E6細胞に対して、曝露用摂取材料の事後力価測定(back-titter)を行なった。
【0060】
サル痘ウイルスゲノム検出のためのリアルタイムPCR。QIAamp DNAミニキット(Qiagen)を用いて凍結血液試料からDNAを抽出した。定量的汎オルトポックスHA PCRアッセイ(Applied Biosystems)についての製造元の指示書に従ってリアルタイムPCRを準備したが、これは、ヘマグルチニン遺伝子増幅用の以下のプライマー:OPHA F89:5'-ATGTACTATCTCAACGTAGTAG-3'(配列番号17)と、OPHA R219:5'-CTGCAGAACATAAAACTATTAATATG-3'(配列番号18)とからなっていた。TaqManプローブ(OPHA P143S-MGB:6FAM AGTGCTTGGTATAAGGAG MGBNFQ(配列番号19および配列番号20))は5'末端でFAM標識されており、非蛍光性クエンチャーを含んでいた。ウイルスゲノムのコピーを、LightCycler 1.5(Roche)を用いて行なった。
【0061】
VACV中和抗体の測定。サル由来の血清を試験の継続期間を通じて回収し、熱で非働化し(56℃、30分間)、古典的なプラーク減少中和試験を用いて、VACV中和抗体の存在について評価した。各アッセイには、FDAの生物学的製剤評価研究センターで確認されたFDA標準参照ワクシニアIg(Cangene)が陽性対照として含まれた。陰性対照には、ワクチン接種を受けていないサル由来の血清が含まれた。1〜4つの血清連続希釈を完全培養培地中に調製し、Vero E6細胞(100%コンフルエント)入りの24ウェルプレートに3つ1組で添加した。4.5×10PFUのザイール79株を24ウェルプレートの各ウェルに添加した。事前に温めたメチルセルロースの半固体オーバーレイ(等容量の4%MEM(4%FBS、4mM L-グルタミン、および1%メチルセルロースが添加されている)から構成されたもの)500μLを各ウェルに添加した。プレートを37℃、5%CO2で、72時間インキュベートした。細胞単層を250μLの0.1%クリスタルバイオレット染色溶液(20%メタノール中に調製)で染色した。
【0062】
プラークを計数し、抗体が存在しないときのプラーク数と比較した中和パーセントを算出した。力価は、プラーク数の50%低下をもたらす最大希釈の逆数を表す。
【0063】
全血算値の解析。HevaVet 950 FS Hematology Analyzer(Drew Scientific)を用いて、全血算値(CBC)を測定した。CBCは、ワクチン接種期間中の各採血時点と、0、6、12、21、および27日目の曝露時に行なった。血液学的パラメータには、以下のものが含まれた:ヘマトクリット値、ヘモグロビン数、全白血球数、および各種白血球数(好中球、リンパ球、単球、好酸球、および好塩基球)、血小板数、平均赤血球容積、平均赤血球ヘモグロビン、平均赤血球およびヘモグロビン濃度。
【0064】
統計解析。言及されている場合、スチューデントの対応のあるt検定を比較に用いた。データを平均±標準誤差として表し、P<0.05(両側T検定)を統計的有意とみなした。スピアマン順位相関(ノンパラメトリック)検定を用いて、中和抗体力価(PRNTアッセイで測定)と病変数の相関を評価した。
【0065】
実施例1
天然痘抗原を発現するプラスミドのクローニング、インビトロ発現、および製造
各遺伝子は、GeneArt Inc.(Toronto,ON)により、オリゴヌクレオチドから合成で構築され、調製された。これらのオリゴヌクレオチドを、ワクシニアウイルス・ウェスタンリザーブ(WR)株からコドン最適化し、標準的なクローニング法を用いて、pVAX1(Invitrogen,Carlsbad,CA)にクローニングした。それぞれ、A4LとB5Rについて最適化された遺伝子をコードするDNAワクチンプラスミドである、pGX4001とpGX4003は、合成で構築された断片を、HindIII制限部位とXhoI制限部位にクローニングすることによって調製された。pGX4004(A33Rをコードする)とpGX4005(A56Rをコードする)は、DNA断片をHindIII制限部位とXbaI制限部位にクローニングすることによって調製された。pGX4007とpGX4008は、それぞれ、H3LとL1RをコードするDNA断片を、HindIII制限部位とBamHI制限部位にクローニングすることによって調製された。F9Lをコードするプラスミド(pGX4006)とA27Lをコードするプラスミド(pGX4002)については、DNA断片を、それぞれ、EcoRI/XbaI制限部位とKpnI/XhoI制限部位にクローニングした。より効率的なタンパク質発現を可能にするために、コザックコンセンサス配列とIgEリーダー配列を各遺伝子の5'末端に付加した。さらに、局在解析と発現解析を助けるために、HAエピトープタグを遺伝子の3'末端に付加した。
【0066】
クローニングした後、全ての抗原をシークエンシングで確認し、挿入物の発現について試験した。その後、部分的に、米国特許第7,238,522号でHebelらによって記載された製造手順を修正して用いてプラスミドを製造し、それによって、ワクチンの生物薬剤的送達に適した、非常に高いプラスミド濃度のプラスミド処方物が得られた(目的の例については図1を参照)。この方法を用いて、VACV抗原A4L、A27、A33R、A56R、B5R、F9L、H3L、およびL1Rから構成される天然痘多価DNAワクチンを製造した。製品は高純度で、RNA、タンパク質、および内毒素が検出されず、-80℃で1年以上保存した後に、平均濃度が10.7±0.7mg/mLで、スーパコイル状のパーセンテージが94.5±1.1%であることが示された(データは示さない)。ワクチン製剤中の各抗原は、マウスまたはウサギにおいて強力な抗体免疫応答と細胞性免疫応答の両方を誘発した(データは示さない)。
【0067】
天然痘抗原をコードするプラスミドのうちのいくつかも示す(図2〜9)。
【表1】

【0068】
本明細書に記載の全ての実験において、Draghia-Akli R,Khan AS,Pope MA,Brown PA.Innovative electroporation for therapeutic and vaccination applications.Gene Therapy & Molecular Biology;9:329-38(2005)に以前に記載されているように、内毒素を含まないプラスミド製剤を滅菌水に希釈し、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製した低分子量ポリ-L-グルタメート(LGS、平均MW10,900)を用いて1%重量/重量で処方した。
【0069】
こうしたプラスミドに基づく治療が効果的にヒトに移されるためには、より大量のプラスミドを少ない処方容量(古典的なワクチンの処方容量と同様の容量)で有することが好ましい。さらに、導入遺伝子産物は、標的器官から効率的に分泌されるべきであり、また、検出可能でかつ活性があるべきである。
【0070】
実施例2
プラスミドの投与と電気穿孔
微小電極(mEP)が滅菌可能な使い捨てのプラスチックアレイに取り付けられた、ID適用のための定電流電気穿孔装置(CELLECTRA(登録商標)、VGX Pharmaceuticals,Inc.,Blue Bell,PA)が開発されたが、このアレイは、(交差汚染を防ぐために)患者の皮膚に実際に接触する唯一のコンポーネントである。少ない容量(古典的なワクチンの容量と同様の容量、すなわち、50〜300μL、より好ましくは50〜100μLまたは100〜200μL)の濃縮された高純度ワクチン処方物を選択領域、標的領域に送達した後、この標的領域をマイクロアレイで囲む。微小電極を皮膚に挿入する。プラスチックアレイは、皮膚に挿入された微小電極の周りの圧力を均一にし、これにより、標的領域でのEPプロセスの間、電場を均一にすることができる。
【0071】
実施例3
天然痘発現コンストラクトを用いたウサギへの免疫付与
予備実験において、上記実施例1のプラスミドワクチンによって送達される天然痘抗原に対する免疫応答とインビボでの定電流電気穿孔とをウサギの群(n=3/群)で解析した(図10の時系列参照)。ウサギには餌と水を自由に摂らせ、IUCUC標準とStillmeadow,Inc.(Sugarland,TX)での慣例に従って飼育した。DNAワクチン投与の前に、注射部位の毛を剃り、徹底的に洗浄して、余分な毛や残屑を除去した。DNAワクチン接種の日に、ウサギの体重を量り、ケタミン/キシラジンで麻酔をかけ、採血し、治療の継続期間中、イソフロウラン(isoflourane)(2%)を維持した。
【0072】
800μgの単回筋肉内(IM)注射(注射1回につき100μgの各抗原および/または最大800μgの空ベクター)により、プラスミドを以下の組合せで投与した。すなわち、第1群のウサギは、様々な天然痘抗原(A13L、A14L、A27L、A33R、B5R、D8L、H3L、L1R)を発現する8つのプラスミドの組合せで免疫付与し、第2群のウサギは、4つの異なる抗原(A27L、B5R、D8L、L1R)の組合せで免疫付与し、第3群のウサギは、単一の抗原(B5R)を発現する個々のプラスミドで免疫付与した。プラスミドは全て、半膜様筋肉内に投与し、次いで、CELLECTRA(登録商標)装置(VGX Pharmaceuticals,Inc.,Blue Bell,PA)を用いて、0.6Amp、パルス3回、52ms/パルス、パルス間隔1秒で、電気穿孔した。様々な時点でウサギから血清を回収し、タンパク質ELISAで抗体応答を測定するために使用した。
【0073】
抗体応答は、送達された抗原の数に関係なく、電気穿孔によって両方の免疫付与群で向上した。様々な抗原、すなわち、B5R(図11)、H3L(図12)、A27L(図13)、L1R(図14)に対する液性応答もELISpotで測定した。各群(n=3)の動物由来の血清をプールし、1:50に希釈した。第1群と第2群由来の血清は、A27LとL1Rに対する有意な応答を示し(第3群と比較してp<0.05)、単一のワクチンに対する免疫応答は、これらの抗原が4つの抗原または8つの抗原のいずれかの群で投与された場合にも、影響を受けなかった。
【0074】
実施例4
天然痘発現コンストラクトを用いた非ヒト霊長類への免疫付与
DNA注射と、その後の電気穿孔(EP)によって、有意に高い免疫応答が誘発されるかどうかを調べるために、最初の予備的研究を少数のカニクイザル(6匹の動物)で実施した。実験は、CELLECTRA(登録商標)装置を用いて行なった。2匹のサルの群(n=2/群)に、ウイルス抗原、すなわち、最適化されたA4L(すなわち、A4Lopt)、A27Lopt、およびB5Ropt(上記実施例1のプラスミド参照)をコードする漸増用量のプラスミドを筋肉内(IM)注射した。
【0075】
0、28、および56日目に、動物に、それぞれ(0.5mL滅菌水+0.01mg/mL LGS中)0.03、0.1、および0.3mgの各プラスミドを、無傷の皮膚を通して半膜様筋肉内に注射し、その後、0.6Amp、パルス長52msec、パルス間隔1秒という条件下で電気穿孔した。84日目に、全ての動物にタンパク質追加免疫を与え、ベースラインでの細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答と、28、56、84、および112日目でのCTL応答を測定した(図16)。図16に示すように、最初の免疫付与から2週間後のELISpotの結果から、IM注射と電気穿孔を受けた群は、IM注射のみを受けた群よりも、平均で2.5倍多いインターフェロン-γ(IFNγ)産生細胞を有することが示された。
【0076】
実施例5
動物で生じる抗体応答のレベルにより測定されるような併用ワクチンの有効性を明らかにするために、いくつかの異なるワクシニアウイルス抗原からなる併用ワクチンを評価した。さらに、皮内(ID)または筋肉内(IM)のいずれかへの送達を比較して、DNA送達方法を有効性について評価した。DNAは、CELLECTRA(登録商標)定電流装置を用いて送達した。
【0077】
動物:ELISAを用いて、ニュージーランド白ウサギ(1群当たりn=3〜4)の抗体免疫応答を評価した。ウサギには餌と水を自由に摂らせ、IUCUC標準とStillmeadow,Inc.(Sugarland,TX)での慣例に従って飼育した。DNAワクチン投与の前に、注射部位の毛を剃り、徹底的に洗浄して、余分な毛や残屑を除去した。
【0078】
DNAワクチン接種の日に、ウサギの体重を量り、ケタミン/キシラジンで麻酔をかけ、採血し、治療の継続期間中、イソフロウラン(2%)を維持した。様々なワクシニアウイルス抗原をコードするプラスミドを含むDNAワクチンを(0、21、および35日目に)皮内(ID)(100μl)または筋肉内(IM)(500μlもしくは1000μl)のいずれかに投与したが、各ワクチンは、ウサギ1羽当たり合計1mgのプラスミド総量(抗原1つ当たり250μg)からなっていた。ワクチン処方物中で利用されたプラスミド組合せは、インフルエンザH5ヘマグルチニン発現プラスミド(H5HA)(アッセイの陽性対照として使用)と、3つのワクシニアウイルス抗原(A4L、A27L、およびB5R;上記実施例1参照)の組合せとからなっていた。各DNAワクチン処方物は、1%LGS中に調製された。
【0079】
DNAワクチンは全て、半膜様筋肉内に投与し、次いで、図18に示すような種々の電気穿孔条件を用いて、CELLECTRA(登録商標)定電流装置を用いて電気穿孔した。A群〜D群には100μlのID注射を受けさせ、0.2Ampで電気穿孔し、2回のパルス(A群)、3回のパルス(B群)、4回のパルス(C群)、6回のパルス(D群)を与えた。E群にはID注射を与えたが、電気穿孔は与えなかった。F群、G群、およびI群には、500μlのDNAワクチン処方物を筋肉内(IM)投与し、0.5Ampで電気穿孔し、3回のパルスを与えたが、各々のパルスは、それぞれ、80秒、4秒、4秒、および10〜15秒の遅延期間からなっていた。J群には電気穿孔を与えなかった(IM、500μl)。H群には、1000μlの筋肉内注射を与え、電気穿孔条件は、0.5Amp、遅延4秒、およびパルス3回からなっていた。CELLECTRA(登録商標)定電流装置は、52ms/パルス、パルス間隔1秒で送達するようにプログラムされた。様々な時点でウサギから血清を回収し、ELISAで抗体応答を測定するために使用した(図19〜21の結果を参照のこと)。
【0080】
実施例6
ELISAを用いて、8〜9週齢のニュージーランド白ウサギ(1群当たりn=4)を抗体免疫応答について評価した。ウサギには餌と水を自由に摂らせ、IUCUC標準とStillmeadow,Inc.(Sugarland,TX)での慣例に従って飼育した。DNAワクチン投与の前に、注射部位の毛を剃り、徹底的に洗浄して、余分な毛や残屑を除去した。DNAワクチン接種の日に、ウサギの体重を量り、ケタミン/キシラジンで麻酔をかけ、採血し、治療の継続期間中、イソフロウラン(2%)を維持した。
【0081】
様々なワクシニアウイルス抗原(上記実施例1を参照)をコードするプラスミドは、(0、21、42、および84日目に)皮内(ID)または筋肉内(IM)のいずれかに、それぞれ、100μlおよび500μlの容量で投与されたが、これらのプラスミドはウサギ1羽当たり1mgのプラスミド総量(注射1回当たり、抗原1つにつき125μgおよび/または最大1mgの空ベクター)からなっていた。図22と図23には、ワクチン接種スケジュールとワクチン摂取パラメータが詳細に示されている。以下の組合せを用いて、電気穿孔を行なった(A群〜J群)。A群とF群のウサギは、単一の抗原(B5R)抗原を発現する個々のプラスミドで免疫付与した。B群とG群のウサギは、4つの異なる抗原(A27L、B5R、H3L、L1R)の組合せで免疫付与した。C群とH群は、様々な抗原(A4L、A27L、A33R、A56R、B5R、F9L、H3L、L1R)を発現する8つのプラスミドの組合せからなっていた。D群とI群は、抗体応答の陰性対照としての役割を果たし、空ベクター、pVAX1(Invitrogen,Carlsbad,CA)で免疫付与した。E群とJ群は、同じ組合せの8つの抗原を用いてワクチン接種したが、電気穿孔しなかった。各抗原処方物は、1%LGS中に調製された。
【0082】
プラスミドは全て、半膜様筋肉内に投与し、次いで、CELLECTRA(登録商標)定電流装置を用いて、IM注射については、0.5Amp、パルス3回、52ms/パルス、パルス間隔1秒で、およびID注射については、0.2Amp、パルス4回、52ms/パルス、パルス間隔1秒で電気穿孔した(第5群以外)。様々な時点でウサギから血清を回収し、タンパク質ELISAで抗体応答を測定するために使用した(図24〜33)。
【0083】
ELISA抗原調製:ELISA用の抗原は、Abgent,Inc.(San Diego,CA)により調製された。クローニング用の適当な制限部位を含有する遺伝子特異的プライマーを用いて、遺伝子をコードするORFをPCR増幅した。原核生物発現ベクターのpEt21a(+)に存在する6×ヒスチジンタグとの融合が可能になるように3'-末端オリゴヌクレオチドを設計した。タンパク質は、標準的なニッケルカラム精製法を用いて精製した。
【0084】
ELISAアッセイ:IgG応答を測定するために、MaxiSorp Immuno 96ウェルプレート(Nunc,Rochester,NY)に、PBSに希釈した50ngの抗原(A4L、A27L、A33R、B5R、H3L、またはL1R)をコーティングすることにより、ELISAアッセイを行ない、4℃で一晩インキュベートした。0.05%Tween20を補充したPBS(PBS-T)で洗浄した後、プレートを、3%BSAを補充したPBSでブロッキングし、室温で1時間インキュベートした。ウサギ血清を、0.5%BSA、0.05%Tween20を補充したPBSに希釈し、4℃で一晩インキュベートした(50μl)。PBS-Tで洗浄した後、ウェルを、2次抗体のHRPコンジュゲートヤギ抗ウサギIgG(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)とインキュベートし、0.5%BSA、0.05%Tween20を補充したPBSに1/10,000に希釈した(100μL/ウェル)。ウェルを室温で1時間インキュベートし、適宜洗浄した。製造元の推奨(KPL,Gaithersburg,MD)に従って、TMB基質と停止溶液を各ウェルに添加した。Lumistar Galaxyプレートリーダー(BMG Labtech,Durham,NC)を用いて吸光度を450nmで測定した。
【0085】
ELISpotアッセイ:MultiScreen(商標)-IP 96ウェルプレート(Millipore,Bedford,MA)に、PBS中で1:100に希釈したサルIFN-γ(GZ-4)に対するモノクローナル抗体(mAb)をコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。PBSで5回洗浄した後、プレートを、完全培養培地(10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むRPMI 1640)で、室温で2時間ブロッキングした。PBMCを、入力細胞数を2×10細胞にして、100μlの完全培養培地中に3つ1組で添加した。ペプチドを、最終濃度25μg/mlで完全培養培地中に希釈し、希釈液100μlをウェル毎に添加した。コンカナバリンA(ConA、5μg/ml;Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)を陽性対照として使用し、完全培養培地のみに再懸濁した細胞は陰性対照としての役割を果たした。37℃で24時間インキュベートした後、プレートをPBSで5回洗浄し、次いで、PBS中で1000倍に希釈した、100μl/ウェルのサルINF-γに対するビオチン化検出mAb(7-B6-1)とともに4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄し、PBS中で1:1000に希釈した、100μl/ウェルのストレプトアビジン-アルカリホスファターゼコンジュゲートを添加し、室温で1時間インキュベートした。次に、ウェルを洗浄し、100μlの基質溶液(BCIP/NBT,Sigma-Aldrich)をウェル毎に添加した。室温で10分後、水道水で数回洗浄することにより呈色反応を停止させた。プレートを風乾させ、ImmunoSpot(登録商標)ソフトウェアが入った自動ELISpotリーダーシステム(CTL analyzers,Cleveland,OH)を用いて、スポットを計数した。3つ1組のウェルから得たスポットの平均数を、脾細胞1×10個に合わせた。ELISpotデータは、平均+標準偏差として表す。
【0086】
対照培地ウェルで形成されたスポットを、刺激に使用した対応するペプチドに応答して形成されたスポットの数から差し引いた後に、抗原特異的IFN-γ応答を算出した。ELISpotアッセイは、CD8除去ビーズ(Miltenyi Biotec,Gladbach,Germany)を用いて、CD8リンパ球をPBMCから除去した後にも行なった。
【0087】
実施例7
ウサギに高濃度の多価DNAワクチンを皮内接種するための電気穿孔条件の最適化
EP条件の最適化は、タンパク質発現のための重要な要素である。EP条件を最適化するための実験を、高濃度併用ワクチンを用いてウサギで実施した。検討したEP条件を表2に示す。
【表2】

【0088】
動物に、様々なID-EPパラメータの下で、陽性対照インフルエンザH5ヘマグルチニン発現プラスミド(HA)(Laddy,D.J.ら.Heterosubtypic protection against pathogenic human and avian influenza viruses via in vivo electroporation of synthetic consensus DNA antigens.PLoS.ONE.3,e2517(2008))と、B5R、A27L、およびA4Lの組合せとをワクチン接種した。結果は、2×2回の皮内EPパルスパターンによってより良好な応答が得られ、ヘマグルチニン阻害(HI)と2つの天然痘抗原の力価とが最も強力となることを示した。第3の天然痘抗原は、3回のパルスパターンでより良好な結果をもたらした。「多数決原理」の基準を用いて、2×2回のEPパルス条件を次の非ヒト霊長類研究に利用した。
【0089】
実施例8
非ヒト霊長類における多価ワクチンの接種
DNA多価ワクチンは強力な抗体応答を誘発する
カニクイザルは、Three Springs Scientific(Perkasie,PA)から購入し、Southern Research Institute(Birmingham,AL)によって飼育および管理された。合計24匹のサル(雌14匹と雄10匹)を1匹ずつケージで飼育し、体重と性別の類似性に基づいて各群に割り当てた。サルは全て、SIV、STLV、SRV、およびHBVの検査で陰性と出た。受け取った後すぐに、全ての動物を隔離し、研究室に馴化させた。隔離と研究の間、サルにTeklad 2050C Dietを与えた。餌は、約ひとすくいの量の餌(ビスケット6〜10枚)で1日に2回与えた。実験デザインは、Southern Research InstituteのIACUCが示したガイドラインである、the Guide for the Care and Use of Laboratory Animals,第7版(Institute of Animal Resources,Commission on Life Sciences,National Research Council;National Academy Press;Washington,DC;1996)と、米農務省が動物福祉法を通じて示したガイドライン(公法99〜198)とに準拠するものであった。
【0090】
4つのカニクイザルの群を、免疫付与ごとに1か月おいて、8つのVACVウェスタンリザーブ株遺伝子:A4L、A27L、A33R、A56R、B5R、F9L、H3L、およびL1Rから構成された多価DNAワクチンで3回免疫付与した。1つの群(n=6)には、皮内(ID)経路で高用量(HD)のDNA(250μg/抗原)を与え、一方、別の群(n=6)には、同じ経路で低用量(LD)のDNA(125μg/抗原)を与えた。さらに、2つのサルの群(n=4)を、筋肉内(IM)経路で、高用量または低用量のいずれかのワクチンで免疫付与した。pVAX1で免疫付与した動物の群(n=4)を陰性対照として使用した。3回目の免疫付与の1か月後、動物を、致死用量のザイール79株のサル痘ウイルス(静脈内送達で2×10PFUを導入)に曝露させた。
【0091】
ELISAアッセイを用いて、多価DNAワクチン製剤中の各抗原に対する抗体特異的応答を評価した(表3a)。表3のグラフによる表示は、図34aに示す棒グラフに見ることができる。
【表3a】

ELISAで測定された各抗原についての平均光学密度測定値(450nm)を標準誤差とともに示す。抗体応答は70日目に測定した。
は、それぞれの処置群とpVAX1の間の統計的有意性、P<0.05(分散が等しい両側T検定)を示す。
**は、pVAX1光学密度値を超える増加倍数を示す。
【0092】
最後のワクチン接種の2週間後の抗体応答を示す。多価ワクチン中の抗原は全て、ワクチン接種の投薬量と経路に関係なく、様々な程度に抗体応答を誘発した(表3a)。用量効果は、ID高用量(HD、250μg/プラスミド)の抗原について観察され、ほとんどの場合、低用量(LD、125μg/プラスミド)ワクチンよりも良い成績を収めた。IMワクチン接種について、抗原特異的応答は両方の用量で観察され、用量効果はなかった。応答の観点からは、HDワクチンの場合、同等であったB5Rを例外として、ID経路の送達の方がIM送達よりもうまく行った。ID-HD経路の送達について、本発明者らは、14倍(A27LおよびA33R)ならびに9倍(H3L)の抗体応答誘導を観察した。IM-HD経路を用いた場合、本発明者らは、A27LおよびA33Rの対照に対して、それぞれ、10.6倍および13.3倍の応答の増加を観察した。
【0093】
さらに、抗原特異的抗体力価を測定した。多価ワクチン中のほとんどの抗原は、ワクチン接種の投薬量と経路に関係なく、様々な程度に抗体応答を誘発した。下記、表3bの結果を参照されたい。
【表3b】

【0094】
用量効果は、ID-HDの抗原について観察され、ほとんどの場合、ID-LDワクチンよりも良い成績を収めた。IMワクチン接種について、抗原特異的応答は両方の用量で観察され、用量効果はなかった。応答の観点からは、HDワクチンの場合、ID経路の送達の方がIM送達よりもうまく行った。免疫付与群は全て、L1に対する抗体応答をそれほど示さなかった。
【0095】
B.非ヒト霊長類における細胞介在性免疫の誘導
多価ワクチンによって誘導される細胞性免疫応答も評価した(図34b)。ID-EPについては、LDとHDの間にわずかな応答レベルの差しか見られなかったが、IM-EPワクチン接種後に、はるかにより顕著な投薬量効果が観察された。ID注射とIM注射の両方の後に、全体の細胞性免疫が顕著に増加し、2回目と3回目のワクチン接種HD注射後に強力な免疫応答が観察された(図34b)。ID-HD送達については増強効果が観察され、細胞性応答が全体で8倍増加した(10SFU当たり687±31.5対5675±538.1、P<0.03)。同様の効果がIM-HD送達について観察された。本発明者らは、最初のIM-HDワクチン接種と2回目または3回目のIM-HDワクチン接種の間に、3倍の細胞性応答の増加を観察した(10SFU当たり、それぞれ、2388±199対8028±719または2388±199対7098±587、P<0.02)。
【0096】
C.T細胞機能と増殖の結果
いくつかのT細胞機能を、IFNγ、IL-2、およびTNFα産生、ならびに脱顆粒化の代用マーカーとしてのCD107aを含む、細胞内サイトカイン染色によって評価した。費用と試料制限に基づいて、A27とB5の2つの抗原に対する機能的T細胞応答を解析した。A27とB5に対する機能的応答の全体的な大きさは、CD8T細胞コンパートメントよりもCD4T細胞コンパートメントで高かった。ID-HD群はCD4T細胞応答が最大で、平均の大きさが0.3±0.06%であり、全ての動物が2つの抗原のうちの少なくとも1つに応答した(図39a)。IMで免疫付与した動物は、平均の応答がより低かったが、高用量群と低用量群の間の応答に有意差はなかった(それぞれ、0.2±0.08%および0.2±0.1%)。ID-LD群は、CD4応答が最も低かった(0.13±0.03%)。CD4応答とは対照的に、A27とB5に対するCD8応答の大きさは、わずかにより低かった(図39b)。IM-LD群は、ID-HD群よりもわずかに高い応答を有した(それぞれ、0.18±0.08%および0.15±0.04%)。ID-LDとIM-HDは両方とも、CD8T細胞応答が中程度であった(それぞれ、0.07±0.02%および0.08±0.05%)。
【0097】
ブーリアンゲーティング(Boolean gating)を用いて、本発明者らは、細胞性応答の多機能性を調べた。一般に、応答動物は、CD107aが主な機能となって、単機能性応答を示し、IM-LD群の動物1匹のみが、B5に対する3機能のCD8+ T細胞応答を示した(データは示さない)。
【0098】
細胞性免疫応答の別のパラメータは、ワクチン誘導性T細胞応答の増殖能である。3回目の免疫付与の後、PBMCを単離し、エクスビボで刺激し、その後、CFSE希釈によって増殖を評価した。CD4T細胞増殖はID-HD群で最も高かった(10.2±6.2%)(図40a)。ID-LD群とIM-HD群は、(それぞれ、1.7±0.67%および1.4±1.1%)という低いCD4T細胞応答を有した。IM-LDはバックグラウンドよりも高い応答を有さなかった。同様の結果はCD8T細胞コンパートメントで見られ、ID-HD群の応答が最も高かった(6.7±5.4%)(図40b)。ID-LD群、IM-HD群、およびIM-LD群は、CD8T細胞増殖のレベルが似ていた(それぞれ、1.6±0.69%、1.9±1.1%、および1.8±1.6%)。
【0099】
ELISpotによる強いIFNγ応答が非ヒト霊長類研究で観察されたが、IMで免疫付与した群は、IDで免疫付与した群よりも高い総IFNγ応答を示した。また、ID-HD群は、他の免疫付与群と比較して、より良好なCD4T細胞増殖とCD8T細胞増殖を示した。A27とB5に対するワクチン誘導性免疫応答の多機能性解析は、ID-HDワクチン接種によって誘導されるより高い全体のCD4T細胞応答を示したのに対し、IM-LDワクチン接種は、CD8T細胞コンパートメントでのより高い応答を生じさせた。しかしながら、免疫付与の経路または用量に関係なく、CD4T細胞とCD8T細胞は両方とも、主に単機能性であり、殺傷表現型と関連している可能性があった。(当技術分野で報告されているような)HIV抗原のIM電気穿孔の経験に基づいて、A27とB5に対する4機能の応答を示した動物はなかったが、本研究で観察されたワクチン誘導性免疫応答の機能プロファイルは、抗原特異的現象である可能性が最も高い。
【0100】
実施例9
曝露:ワクチン接種を受けた非ヒト霊長類とサル痘ザイール79による曝露
A.多価DNAワクチンは非ヒト霊長類を重度のサル痘疾患から防御する
応答の有効性を十分に評価するために、動物をザイール79株のサル痘ウイルスのNR-523分離株に曝露させた。投与経路に関係なく、多価ワクチンによって防御がもたらされた(表4)。
【表4】

TNTC=多過ぎて計数不能、RE=記録エラー。15日目の4389の写真を再検討してみると、いくつかの病変が見られたので、0個の病変と記載されるべきではない。これは明らかに記録エラー(RE)である。しかしながら、18日目の写真はどれも(全ての領域を図示しているわけではないが)、病変の証拠していない。**24日目の4384の写真を再検討してみると、背中(21日目に2個の病変しかなかった)にTNTCの証拠はなかった。病変は、この時点ではっきりと消失していたので、病変総数がTNTCであった可能性は低く、したがって、24日目のTNTCは記録エラーであるように思われる。
【0101】
データは、図35b2でグラフとして見ることができる。
【0102】
ワクチンは、pVAX1処置対照群で記録された数え切れないほどの病変数と75%の死亡率と比較して、病変数を大幅に減少させ、低用量と高用量の両方での死からの100%の防御をもたらした。病変数が最高に達した時には、pVAX1処置動物の4匹中3匹が数え切れないほどの病変を有し、4匹目の動物にとっては疾患が致死的であった。対照群のサルは1匹だけが曝露を切り抜けて生き残ったが、病変は観察期間の最後(曝露後27日目)にまだ存在していた。ワクチン接種を受けた動物では、病変は15日目までに消失し始め、ID-HD注射を受けた動物で効果がより顕著であった。21日目に、6匹中1匹の動物だけが、病変を有していた(4つの病変しか観察されなかった)。観察の最後の日(27日目)、サル痘病変の兆候を示した動物はいなかった。ID-LDでの処置によって、6匹中3匹のサルで、21日目までに痘症がなくなり、27日目までに全ての動物で病変が完全に消失していた。非ヒト霊長類をIM-EPによって処置した場合には、わずかにより早く治癒の兆候が見えた。21日目までに、4匹中3匹のサルに病変がなかった。曝露研究の最後に、1匹のサルに病変が2つ残っていた。IM-LDワクチンによる処置も4匹中1匹のサルで効果的であり、18日目までに病変がなかった。21日目までに、1匹のサルに8つの病変があったものの、4匹中3匹のサルには痘症がなかった。観察時間の最後までに、IM-LD群の4匹全てのサルに病変がなかった。
【0103】
B.多価ワクチンによって誘発されるウイルス血症レベルの低下
全てのサルが、サル痘ウイルス感染の樹立を示し、ウイルス血症レベルは曝露後6〜9日後に最大に達した(図35a)。pVAX1対照動物は、サル痘疾患の典型的症状を発症し、疾患が重症であったために、4匹中3匹の動物を安楽死させた。ウイルス血症レベルは、7.5対数と8.5対数の間のpVAX1ワクチン接種動物で、それぞれ、曝露後9日後と12日後に最大に達した。曝露を切り抜けて生き残ったサル(#4384)は、ウイルス血症をある程度制御しているように見えた。21日目に、ウイルス血症レベルは、HDワクチン接種動物を1対数未満しか超えていなかった。対照的に、ワクチン接種を受けた動物については、ウイルス血症レベルが9日目に少なくとも3対数分、有意に低下しており(P<0.05、一方向ANOVA)、研究の最後には検出不可能なレベル(1mL当たり<5000コピー)しか観察されなかった。15日目までに、ID-HD群の6匹中4匹のサルとIM-HD群の100%のサルは、両方のLDワクチン接種の場合の50%と比較して、検出不可能なレベルのウイルス血症を有していた。18日目までに、両方のワクチン接種群のサルのうちの1匹だけが検出可能なレベルのウイルス血症を有していた。したがって、これらの知見は、サル痘ウイルスのウイルス血症の制御と重症疾患の予防とにおけるDNAワクチンの防御的有効性を示している。
【0104】
C.多価ワクチンによって誘発される抗VACV抗体の誘導
DNAワクチンとサル痘ウイルス曝露とで誘導された抗体の検出を、精製され、不活化された全VACVをコーティング抗原として用いるELISAで測定した(図36)。ウイルス特異的VACV特異的抗体の低レベル力価は、DNAワクチンを受容した動物で28日目に検出され、動物全てが、ワクチン接種群と投薬量の両方について、1:100の終点力価を有していた。抗体力価はそれ以降増加し始め、平均終点力価は、91日目に、ID-HD送達経路とIM-HD送達経路について、それぞれ、1:633と1:300であり、投与量間にはほんのわずかな差しか存在しなかった。曝露後、ワクチン接種を受けたサルで抗VACV抗体力価の劇的な増加が観察された。pVAX1ワクチン接種動物と比べて約100倍の増加が、曝露6日後(研究97日目)に、ワクチン接種を受けたサルで観察され、終点力価は、HDワクチン接種を受けたサルで約1:10,000であった。LDをワクチン接種した動物について、より低いかまたは同様の終点力価が観察され、平均終点力価は、ID注射とIM注射について、それぞれ、1:3600±1867と1:8800±2400であった。対照的に、pVAX1処置動物は、曝露後12日(研究103日目)まで顕著な応答を示さず、平均最大終点力価は1:800であった。曝露を切り抜けて生き残ったサルは、曝露18日後(研究109日目)に、最大終点抗体力価が1:1600でしかなかった。
【0105】
D.多価ワクチンによって誘発される中和抗体力価の誘導
全VACVに対する結合抗体が同定されたので、インビトロでの機能的PRNTアッセイでサル痘ウイルスを中和するその能力を検討し、インビボでのサル痘ウイルス曝露に対する防御におけるワクチンで誘導された抗体の役割を明らかにした。サル痘ウイルス中和抗体力価を様々な群で測定した(表5参照)。
【表5】

力価はPRNT50値として表されている。0、28、および56日目に、動物にワクチン接種し、91日目(曝露0日目)に曝露した。97、103、109、および118日目は、それぞれ、曝露6、12、18、および27日目に対応する。
【0106】
曝露前にpVAX1処置対照動物から回収した血清は、ウイルスを中和することができなかった。しかしながら、曝露6日後(研究97日目)、全てのサルが検出可能な力価を示し始めた。曝露を切り抜けて生き残った対照サルは、最大の中和抗体力価を有していた。対照的に、多価ワクチンを接種した動物は、ワクチン接種経路または投薬量に関係なく、2回目のワクチン接種の2週間後(42日目)に、中程度の中和抗体応答を示し始めた。重要なことに、中和抗体応答は、曝露後、大いにかつ急速に増強された。結果のグラフを図37に見ることができる。予想通り、HDワクチンは、全ての時点について、LDワクチンよりも大きい抗体応答を誘発した(表5)。
【0107】
さらに、中和抗体力価は病変数スコアと相関した(スピアマン順位相関、ノンパラメトリック、P<0.008− 図38参照)。
【0108】
実施例10
サル痘曝露後の臨床的観察
pVAX1処置動物は、感染の急性期に、顕著な体重損失、体温上昇、鬱、および無気力を経験した。最も顕著な体重損失は、痘痕病変とウイルス血症がピークに達した曝露後12日目に観察された(表6)。
【表6】

曝露6〜27日目の欄内の数は、0日目と比較した体重変化%として表されている。
体重は0日目の欄に示されている。
【0109】
曝露12日目、平均体重損失は8.73%であった(体重損失は、曝露前の体重と比較して、5.6〜11.1%の範囲である)。群内で生き残った1匹のサル(#4384)は、最終的には体重が回復したが、曝露後21日目までは回復しなかった。対照的に、ワクチン接種動物は、曝露後にそれほどの体重損失を経験しなかった。体重損失は、HDワクチン接種動物でよりも両方のLDワクチンで処置した動物でより顕著であった。ID-HDワクチンで処置した動物については、体重変動が曝露後12日目に観察され、平均損失は、曝露前の体重に対して1.34%であった。この同じ日、IM経路でワクチン接種した動物は、曝露前の体重に対して1.7%の体重増加を経験した。LDワクチンを接種した動物は、HDワクチン接種動物について観察された体重損失よりも大きい体重損失を経験した。IDワクチン接種とIMワクチン接種について、動物は、それぞれ、2.9%±1.3と6.0%±2.38という平均±標準誤差損失を経験した。
【0110】
pVAX1処置動物については、曝露12日後まで体温上昇が観察された(データは示さない)。最大の体温上昇は、曝露後3日目に観察され、平均温度は華氏103.1度(範囲:華氏101.5〜104.4度)であった。曝露を切り抜けて生き残ったサルは、27日目までに正常体温を有していた。予想通り、ワクチン接種を受けたサルの温度は、ワクチン接種経路と投薬量に関係なく、曝露期間中ずっと変動した。しかしながら、ワクチン接種動物の平均温度は、曝露期間中、正常体温(華氏99〜102度)の範囲内に維持された(データは示さない)。
【0111】
臨床パラメータ:研究期間中の全血数(CBC)モニタリングは、サル痘曝露の間、わずかな血液学的パラメータの変化しか示さなかった。サル痘疾患のために安楽死させた対照動物は、ウイルス血症レベルがピークに達した12日目に、曝露前のレベルと比較して、58.2%(#4403、1μL当たり11,500対18,200)、65.6%(#4392、1μL当たり6,100対10,100)、および121%(#4393、1μL当たり8,600対19,000)という増加した白血球(WBC)を有していた。ワクチン接種動物は、12日目に、同じ程度まで増加したWBC数も有しており、平均増加パーセントは、曝露前のレベルに対して、ID-LD、ID-HD、IM-LD、IM-HDについて、それぞれ、69.4±15.8、68.8±15.6、80.9±17.2、70.0±28.0であった。研究の終わりまでに、各群のほとんどのワクチン接種動物は、WBC数を曝露前のレベルにまで復帰させたが、対照群由来の生き残ったサルは、1μL当たり22,300の増加したWBC数を有し続けた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のVACV MV抗原を発現することができる少なくとも1つのDNAプラスミドと、複数のVACV EV抗原を発現することができる少なくとも1つのDNAプラスミドとを含む、ポックスウイルスに対する哺乳動物での防御免疫応答を生じさせることができるDNAワクチン。
【請求項2】
A4L抗原を発現することができるプラスミドをさらに含む、請求項1に記載のDNAワクチン。
【請求項3】
各々の前記抗原が別々のDNAプラスミドによって発現される、請求項1〜2のいずれか一項に記載のDNAワクチン。
【請求項4】
前記VACV MV抗原が、A27L、F9L、H3L、またはL1Rを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のDNAワクチン。
【請求項5】
前記VACV EV抗原が、A33R、A56R、またはB5Rを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のDNAワクチン。
【請求項6】
前記DNAプラスミドが、前記抗原をコードするコンセンサスDNA配列を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のDNAワクチン。
【請求項7】
VACV MV抗原をコードする前記コンセンサスDNA配列が、配列番号3(A27L)、配列番号11(F9L)、配列番号13(H3L)、または配列番号15(L1R)を含む、請求項6に記載のDNAワクチン。
【請求項8】
複数のVACV MV抗原を発現することができる前記DNAプラスミドが、配列番号4(A27L)、配列番号12(F9L)、配列番号14(H3L)、または配列番号16(L1R)を含む配列を有するタンパク質をコードするコード配列を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のDNAワクチン。
【請求項9】
VACV EV抗原をコードする前記コンセンサスDNA配列が、配列番号5(B5R)、配列番号7(A33R)、または配列番号9(A56R)を含む、請求項6に記載のDNAワクチン。
【請求項10】
複数のVACV MV抗原を発現することができる前記DNAプラスミドが、配列番号6(B5R)、配列番号8(A33R)、または配列番号10(A56R)を含む配列を有するタンパク質をコードするコード配列を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のDNAワクチン。
【請求項11】
A4Lをコードする前記コンセンサスDNA配列が、配列番号1、または配列番号2の配列を有するタンパク質をコードするDNA配列を含む、請求項6に記載のDNAワクチン。
【請求項12】
前記DNAワクチンが、それぞれ、配列番号1(A4L)、配列番号3(A27L)、配列番号5(B5R)、配列番号7(A33R)、配列番号9(A56R)、配列番号11(F9L)、配列番号13(H3L)、および配列番号15(L1R)というコードDNA配列を含む複数の別々のDNAプラスミドを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載のDNAワクチン。
【請求項13】
前記DNAワクチンが、それぞれ、配列番号2(A4L)、配列番号4(A27L)、配列番号6(B5R)、配列番号8(A33R)、配列番号10(A56R)、配列番号12(F9L)、配列番号14(H3L)、および配列番号16(L1R)という配列を有するタンパク質をコードするコードDNA配列を含む複数の別々のDNAプラスミドを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載のDNAワクチン。
【請求項14】
前記DNAワクチンが、DNAプラスミドpGX4001、pGX4002、pGX4003、pGX4004、pGX4005、pGX4006、pGX4007、もしくはpGX4008、またはそれらの組合せを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載のDNAワクチン。
【請求項15】
各々の前記DNAプラスミドが、50μgを超える用量で存在する、請求項1〜14のいずれか一項に記載のDNAワクチン。
【請求項16】
各々の前記DNAプラスミドが、125μgの用量で存在する、請求項15に記載のDNAワクチン。
【請求項17】
IL-8、IL-12、IL-15、IL-18、IL-28、MCP-1、MIP-1α、MIP-1p、RANTES、RANK、RANKリガンド、Ox40、Ox40リガンド、CTACK、TECK、もしくはMEC、またはそれらの組合せから選択されるアジュバントをさらに含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載のDNAワクチン。
【請求項18】
前記アジュバントが、IL-12、IL-15、IL-28、またはRANTESである、請求項17に記載のDNAワクチン。
【請求項19】
前記DNAワクチンが、天然痘ウイルスに対する哺乳動物での防御免疫応答を生じさせることができる、請求項1〜18のいずれか一項に記載のDNAワクチン。
【請求項20】
中和抗体応答を含む、ポックスウイルスに対する哺乳動物での防御免疫応答を誘導する方法であって、前記哺乳動物の組織に、複数のVACV MV抗原を発現することができる少なくとも1つのDNAプラスミドと、複数のVACV EV抗原を発現することができる少なくとも1つのDNAプラスミドと、A4Lを発現することができるDNAプラスミドとを含むDNAワクチンを注射する工程を含む方法。
【請求項21】
前記注射する工程が、皮内に注射する工程または筋肉内に注射する工程を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
電気穿孔量の電気エネルギーを用いて前記組織を電気穿孔する工程をさらに含む、請求項20〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記電気穿孔する工程が、前記組織に定電流を送達する工程を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記電気穿孔する工程が、0.2Aの電流を送達する工程を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記注射する工程を繰り返す工程をさらに含む、請求項20〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記DNAプラスミドが、配列番号1(A4L)、配列番号3(A27L)、配列番号5(B5R)、配列番号7(A33R)、配列番号9(A56R)、配列番号11(F9L)、配列番号13(H3L)、または配列番号15(L1R)の配列を有するコード配列を含む、請求項20〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記DNAプラスミドが、配列番号2(A4L)、配列番号4(A27L)、配列番号6(B5R)、配列番号8(A33R)、配列番号10(A56R)、配列番号12(F9L)、配列番号14(H3L)、または配列番号16(L1R)の配列を有するタンパク質をコードするコード配列を含む、請求項20〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記送達する工程が、8つの別々のDNAプラスミドを送達する工程を含む、請求項26〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記8つの別々のDNAプラスミドが、pGX4001、pGX4002、pGX4003、pGX4004、pGX4005、pGX4006、pGX4007、およびpGX4008を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記方法が、天然痘ウイルスに対する哺乳動物での防御免疫応答を誘導する、請求項20〜29のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35−1】
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【図35−2】
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【図35−3】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公表番号】特表2011−522804(P2011−522804A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511807(P2011−511807)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/045420
【国際公開番号】WO2010/044919
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(510312112)ブイジーエックス ファーマシューティカルズ, エルエルシー (2)
【出願人】(504074710)ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア (20)
【Fターム(参考)】