説明

免疫測定装置

【課題】結合物質が固定された反応容器の内壁面に被検物質を固定した状態で、反応容器内の液面を変動させず、かつ被検物質を剥離することなく反応容器内を置換洗浄する。
【解決手段】反応容器51内に先端部10aが挿入可能に支持され、先端部10aから洗浄液21を吐出吸引する吐出吸引部材10と、先端部10aに設けられ、反応容器51内の溶液22を第1の流量で吸い込む吸入口11aと、先端部10aに設けられ、洗浄液21を前記第1の流量で反応容器51内へ吐出する吐出口12aとを有し、反応容器51内の溶液22を洗浄液21により置換洗浄する免疫測定装置。吐出口11a及び吸入口12aの開口面積を調整して反応容器51内の流れ71、71の流速を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体溶液中の抗体又は抗原を反応容器の内壁面に固定された結合物質と抗原抗体反応を起こさせてその内壁面に固定し、検体中の抗体又は抗原を検出、測定する免疫測定装置に関し、とくに、反応容器内の溶液を置換洗浄することができる免疫測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
抗原抗体反応を利用した免疫測定(イムノアッセイ:immunoassay)装置は、微量の蛋白質、例えば体液中の抗体、抗原又は蛋白質の検出及び定量に広く用いられている。とくに、被検物質と抗原抗体反応を起こす結合物質が内壁面に固定された反応容器を用いるイライザ(ILISA)法は、測定が簡便な免疫測定法として近年は広く利用されている。
【0003】
このように結合物質又は被検物質を反応容器の壁面に固定する免疫測定装置では、反応容器内に検体溶液を注いで結合物質と被検物質との抗原抗体反応を起こさせ、内壁面に結合物質と結合した被検物質を固定した後、反応容器内に残る検体溶液を捨て去る工程を必要とする。この残留検体溶液を捨て去る工程は、従来、ピペットを用いて人手で反応容器内の溶液を吸い取り、続いてピペットを用いて洗浄液を反応容器内に注入することで、反応容器内の溶液を洗浄液により置換し洗浄していた。
【0004】
免疫測定装置では、かかる反応容器の置換洗浄工程が複数回なされることも多い。例えば、サンドイッチ法においては、上述の検体溶液の置換洗浄の他に、標識物質を反応させた後になされる標識物質を含む溶液の置換洗浄がある。さらに、多数の反応容器を用いて分析が行われることも多く、この場合は多数の反応容器を置換洗浄する必要がありピペットを用いて人手で作業するのは煩雑である。
【0005】
測定に使用した反応容器を免疫測定後に自動的に洗浄する免疫測定装置が開発されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この免疫測定装置は、自動昇降するピペットの上部外側面に洗浄液を供給し、洗浄液をピペット上部からピペット外側面を伝わせて反応容器内に供給する。他方、反応容器内の溶液は、ピペット先端に設けられた吸入口からピペット内に吸い込まれ、ピペット上端から排出される。これにより、反応容器内の溶液を洗浄液により置換し、反応容器を洗浄することができる。
【特許文献1】特許第2761385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ピペットを用いて人手で置換洗浄を行うのでは、反応容器内壁にピペットが接触して、反応容器内壁に固定されている結合物質、被検物質あるいは標識物質を剥離してしまう危険がある。また、反応容器内の溶液を吸い取ったとき、反応容器内壁に固定されたこれらの物質が空気に暴露されて変質する危険もある。このような剥離又は変質を生ずると分析精度が劣化してしまう。
【0008】
また、洗浄液をピペット上部の外側面に吐出して、その外側面を伝わらせて反応容器内に流下させる免疫測定装置の洗浄機構を測定工程途中の反応容器の置換洗浄に用いたのでは、洗浄液の流下速度の制御が難しく、洗浄液の流下により反応容器内壁面に固定された結合物質、被検物質あるいは標識物質を剥離する危険がある。さらに、この免疫測定装置ではピペットの先端が反応容器の底面に接触するので、底面に固定された物質を剥離する危険が高い。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の構成は、測定すべき抗原又は抗体と抗原抗体反応をする結合物質が内壁面に固定された反応容器内に、前記測定すべき抗原又は抗体を含む検体溶液を注入して前 記反応容器の内壁面に前記測定すべき抗原又は抗体を固定させる免疫測定装置において、前記反応容器内に先端部が挿入可能に支持され、前記先端部から液体を吐出吸引する吐出吸引部材と、前記吐出吸引部材の前記先端部に設けられ、前記反応容器内の溶液を第1の流量で吸い込む吸入口と、前記吐出吸引部材の前記先端部に設けられ、洗浄液を前記第1の流量で前記反応容器内へ吐出する吐出口とを有し、前記反応容器内の前記溶液を前記洗浄液により置換洗浄することを特徴とする免疫測定装置として構成する。
【0010】
また、第1の構成において、前記吸入口に対する前記吐出口の開口面積の比を、前記吸入口近傍の流速及び前記吐出口近傍の流速が所望の流速となるように選択することが好ましい。
【0011】
さらに、前記吸入口から前記反応容器の内壁面までの距離を、前記吸入口へ吸い込むまれる流れの前記内壁面近傍の流速が第1の所望値となるように選択し、かつ、前記吐出口から前記反応容器の内壁面までの距離を、前記吐出口から吐出される流れの前記内壁面近傍の流速が第2の所望値となるように選択することもできる。
【0012】
本発明の第2の構成は、前端に吸込口及び後端に送出口が設けられたシリンジと、前記シリンジ内を2分するピストンと、前記ピストンを貫通するねじ穴に螺合し、前記シリンジ内に前記シリンジの軸に平行に配置されたねじ棒と、前記ねじ棒を回転駆動して、前記ねじ棒の回転により前記ピストンを前後に移動させる回転駆動部とを有する送液ポンプを備えたことを特徴とする本発明の第1の構成に係る免疫測定装置として構成する。
【0013】
本発明の第3の構成は、両端が閉塞され、長軸方向に伸縮自在な第1部材及び第2部材と、前記第1部材の固定された前端の近傍に設けられた吸込口と、前記第2部材の固定された後端の近傍に設けられた送出口と、前面に前記第1部材の後端が固定され、後面に前記第2部材の前端が固定された移動板と、前記移動板を前記長軸に平行に移動させる移動板駆動部とを有する送液ポンプを備えたことを特徴とする本発明の第1の構成に係る免疫測定装置として構成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る免疫測定装置によれば、時間当たりの吸込流量と吐出流量を同じで、かつ、反応容器内の溶液を吸い込む吸入口と反応容器内へ洗浄液を吐出する吐出口との開口面積比を吸入口及び吐出口近傍の流速が洗浄に適切な所望値になるように選択される。このため、反応容器内の液面の変動が小さく、かつ、反応容器内壁面に固定した物質の剥離がない適切な流速による置換洗浄がなされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の第1実施形態は、サンドイッチイムノアッセイを用いたイライザ法による免疫測定装置に関する。
【0016】
図1は本発明の第1実施形態免疫測定装置の洗浄機構断面図であり、洗浄機構の主要な構成を表している。図2は本発明の第1実施形態反応容器断面図であり、容器基板に形成された反応容器を表している。図3は、本発明の第1実施形態吐出吸引部材断面図であり、図1中の円内に示す吐出吸引部材の先端部の構造を表している。
【0017】
図1を参照して、本第1実施形態の免疫測定装置は、装置の基台101上に保持台105が設けられ、その保持台105上に容器基板50が水平に載置される。なお、保持台105にはXYテーブル機構及び震盪機構が組み込まれ、載置された容器基板50を水平面内で移動し、また載置された容器基板50を震盪することができる。容器基板50の上面には窪みが形成されており、この窪みが反応容器51を構成する。
【0018】
保持台105の外側の基台101上に、垂設された回転軸102aを、垂直軸廻りに回転させ、かつ垂直に昇降させる昇降回転機構102が設けられている。回転軸102aには水平に伸びるアーム103が固定されている。従って、アーム103は、昇降回転機構102により駆動され、基台101上を回転移動及び上下移動する。
【0019】
保持台105上に載置された容器基板50の上方に、吐出吸引部材10がアーム103に固定されて保持される。吐出吸引部材10は後端(図1の上端)にそれぞれチューブ31、32が接続された、吐出管11及び吸入管12(図3参照)を構成する2本の管状部材を有する。この管状部材は、アーム103の先端部の下面に固定された抑え板104に設けられた貫通孔に嵌合してアーム103に固定される。なお、アーム103先端部の抑え板104直上にチューブ31、32を嵌挿する貫通孔103a、103bが設けられ、アーム103上面に延在するチューブ31、32は、この貫通孔103a、103bを貫通して吐出吸引部10を構成する管状部材上端に接続される。
【0020】
チューブ31、32の後端(吐出吸引部10に接続する端とは反対側の端)は、それぞれ後述する液送ポンプ110の送出口125及び吸込口124に接続されており、チューブ31には吐出吸引部10へ向けて洗浄液21が送液され、チューブ22からは吐出吸引部10を通して溶液22が吸引される。
【0021】
図2を参照して、容器基板50は、マイクロタイタープレートを構成し、例えばポリスチレン等のプラスチック板からなり、上面に例えば円柱状の窪みからなる反応容器51が形成されている。反応容器51は、直径4〜6mm、高さ4〜6mmのものが多く用いられ、通常は容器基板50上面に行列状に配置される。ここでは、例えば直径5mm、高さ5mmの円柱状の反応容器51が、10行20列に配列された容器基板50を用いた。また、容器基板50はプラスチックの他、金属、又はガラス製(石英ガラスを含む。)とすることもできる。
【0022】
図3を参照して、吐出吸引部材10は、垂直に保持された管状部材からなる吸入管12と、吸入管12に斜交して貫入する管状部材からなる吐出管11とを有する。吐出管11及び吸入管12の上端(後端)には、それぞれチューブ31及びチューブ32が接続される。吐出管11の下端(先端)は、チューブ31から液送された液体(洗浄液21)を吐出する吐出口11aとなっている。また、吸入管12の下端(先端)は、液体を吸入する吸入口12aとなっており、吸入口12aから吸入された液体はチューブ32へ通り排出される。これら吸入口12a及び吐出口11aは、ほぼ同一平面内に配置される。また、吐出口11aは、吸入口12a内に、例えば吸入口12aとほぼ同心円をなすように配置される。
【0023】
なお、吐出管11aは、例えば先端が内径0.3mm、外形0.5mm、後端が内径3mm、外形5mmの漏斗状の形状を有するポリプロピレン管とすることができる。かかる吐出管11aとして、市販されているピペットの先端用部材を用いることができる。また、吸入管12は、例えば内径2.5mm、外形3.0mmのシリコンゴムチューブを用いることができる。シリコンゴムチューブの吸入管12は、管壁に設けた開口に吐出管を差し込むことで開口が機密に保たれるので、容易に図3を参照して説明した吐出吸引部材10を製造することがてきる。
【0024】
図1〜図3を参照して、吐出吸引部材10は、アーム103の回転により測定及び作業の邪魔にならない位置から容器基板50上方に持ち込まれる。そして、アーム103の上下駆動により降下され、その先端部10aが反応容器51の内部に挿入される。保持台105のXYテーブル機構は、反応容器51を先端部10aの直下に位置決めするために用いられる。
【0025】
その結果、先端部10に形成されている吐出口11a及び吸入口12aは反応容器51内の溶液22中に浸される。そして、吐出口11aから反応容器51内の溶液22中に洗浄液21が吐出され、同時に吸入口12から反応容器内の溶液22が吸入される。従って、洗浄液21による反応容器51内の溶液22の置換洗浄がなされる。
【0026】
上述した洗浄機構を具えた第1実施形態に係る免疫測定装置の使用方法を、免疫測定工程を参照しつつ詳細に説明する。
【0027】
図4は本発明の第1実施形態免疫測定断面工程図であり、サンドイッチイムノアッセイによる免疫測定工程を表している。
【0028】
図4(a)を参照して、本第1実施形態の免疫測定工程では、まず、反応容器51内壁面51aに結合物質61として抗体(以下、「抗体61」とも記載する。)を固定したマイクロタイタープレートを準備する。
【0029】
次いで、被検物質62とされる抗原62(以下、「抗原62」とも記載する。)及び競合物質63である競合抗原(以下、「競合抗原63」とも記載する。)を含む緩衝液からなる検体溶液22を、手動または自動で反応容器51内に分注し、反応容器51を震盪させて抗原抗体反応を起こさせる。この競合物質63は、被検物質62に対して競合的に結合物質61と抗原抗体反応する。これにより、被検物質62が全ての結合物質61に付着することで生ずる検出曲線(濃度に対する検出感度を表す曲線)の飽和が避けられ、測定限界を向上させることができる。もちろん、必要がなければ競合物質63を使用しなくてもよい。
【0030】
次いで、図4(b)を参照して、反応容器51を震盪した後静置して抗原抗体反応を起こさせ、反応容器51の内壁面51aに固定されている結合物質61(抗体61)に、被検物質62及び競合物質63を固定する。その結果、溶液22と接触した結合物質61は、被検物質62が結合した結合物質61aと、競合物質63が結合した結合物質61bに変換される。静置後の反応容器51内の溶液22中には、未反応の被検物質62及び競合物質63が多数存在している。
【0031】
次いで、図4(c)を参照して、反応容器51内の溶液22を洗浄液21に置換する置換洗浄を行う。
【0032】
図5は、本発明の第1実施形態反応容器内の流れを示す断面図であり、置換洗浄工程における反応容器51内の流れを表している。
【0033】
図4(c)に示す置換洗浄工程は、図1及び図5を参照して、まず、アーム103を回転して吐出吸引部材10を保持台105上方に持ち来し、XYテーブル機構を用いて吐出吸収部材10の先端部10aを応容器51直上に位置決めする。次いで、吐出吸引部材10を降下して、吐出吸引部材10の先端部10aを反応容器51内の溶液22中に浸漬させる。この吐出吸引部材10の昇降はアームの昇降によりなされ、吐出吸引部材10の先端部10aが反応容器51内の底面51a−1及び側壁面51a−2から所定の距離をおいて保持されるように制御される。なお、昇降は昇降回転機構102により制御され、反応容器51の選択及び反応容器51内での水平面内位置の制御は主に保持台105によりなされる。
【0034】
次いで、洗浄液21が吐出管11に供給され、吐出吸引部材10の先端部10aに開口する吐出口11aから洗浄液21が反応容器51内の溶液22中に吐出される。同時に、吸入管12後端から溶液22が吸引され、吐出吸引部材10の先端部10aに開口する吸入口12aから反応容器51内の溶液22が吸入管12へ吸い込まれて排出される。このとき、吐出流量と吸入流量は同量とする。
【0035】
この置換洗浄工程において、吐出口11aから吐出される洗浄液21により、反応容器51内には吐出口11aから反応容器51の底面51a−1に向かい、さらに底面51a−1に沿って反応容器51の側壁面51a−2へ向かった後、側壁面51a−2に沿って上昇する流れ71が形成される。一方、吸入口12aへ吸入される溶液22により、溶液22の上方から吸入口12aが開口する反応容器51の中央底部に向かう流れ72が形成される。
【0036】
吐出口11aから反応容器51の底面51a−1に向かう流れ71が速すぎると、反応容器51の底面51a−1及び側壁面51a−2に固定されている被検物質62、競合物質63又は結合物質61が剥離してしまう。逆に流れ71が遅すぎると、反応容器51の内壁面51aに未反応のまま付着している余分な被検物質62及び競合物質63を洗い流すことができず、洗浄が不完全になってしまう。従って、流れ71を、適切な流速になるように、例えば実験に基づき決定しなければならない。
【0037】
一方、吸入口12aから吸入される流れ72は、速すぎると反応容器51の内壁面51aに固定された物質61、62、63を剥離する他、流れ71を乱して流れ71による洗浄を不完全なものにしてしまう。逆に遅いと、置換時間が長くなってしまう。従って、流れ72も適切な速度になるように、例えば実験により決定する必要がある。
【0038】
吐出口11aから吐出される洗浄液21の流量は、吸入口12aへ吸入される溶液22の流量と同一である。従って、この置換洗浄工程中は、反応容器51内の液体(溶液22)の量は変わらず、液面(溶液22の液面)の高さは変動しない。
【0039】
一方、吐出口11aの開口面積は、吸入口12aの開口面積より小さい。このため、吐出口11aから反応容器51底面51a−1へ向かう流れ71の流速は、吸入口12aへ吸入される流れ72の流速より速い。これらの流速は、吐出口11a及び吸入口12aの開口面積と、吐出及び吸入される流量とにより決定されので、これら開口面積及び流量を調整することで容易に制御することができる。このように、吐出口11a及び吸入口12aの開口面積は互いに異なるものとすることで、例えば、吐出口11aの開口面積を小さくすることで、吐出の流速を速くし洗浄を確実にすることもできる。なお、必要ならば、開口面積を同一とすることもできる。
【0040】
図6は、本発明の第1実施形態流速の口径依存性を示す図であり、吐出口11a又は吸入口12aの開口口径(直径)をパラメータとして、吐出口11a又は吸入口12aにおける流速を流量との関係で表したものである。なお、図6中の直線A、B及びCは、それぞれ口径が1.0mm、0.8mm及び0.6mmのときの流速を表し、直線D及びEはそれぞれ図3を参照して説明した本第1実施形態の吐出吸引部材10の吐出口11a及び吸入口12aにおける流速を表している。
【0041】
図6中の直線A〜Eを参照して、流速は流量に比例している。その比例係数は開口面積、即ち口径の2乗に反比例する。従って、一定流量の下では、流速は口径の2乗に反比例する。
【0042】
図6を参照して、流量が同じであっても、吐出口11a及び吸入口12aの開口面積を変えることで、それぞれの開口における流速を任意に制御することができる。例えば、流量を4mL/分としたとき、直線A及び直線Cを参照して、吐出口11a又は吸入口12aの開口の直径を1.0mmから0.6mmに変えることで、その開口における流速を83mm/秒から233mm/秒に変化させることができる。
【0043】
また、吐出口11a及び吸入口12aにおける流速比は、任意の流量に対して常に吐出口11a及び吸入口12aの開口面積比に等しい。従って、吐出口11a及び吸入口12aにおける適切な流速が実験等により明らかにされている場合、吐出口11a及び吸入口12aの開口面積比をその適切な流速の比とし、さらに流量を選択することでそれらの流速を適切な値に設定することができる。
【0044】
例えば、図3に示す吐出吸引部材10では、内径2.5mmの吸入口12aの内部に外径0.5mmの吐出管11が貫入されており,吸入口12aの開口面積は4.71mm2 である。また、内径0.3mmの吐出口11aの開口面積は0.071mm2 であるから、開口面積比は67であり、吐出口11aの流速は吸入口12aの流速の67倍になる。
【0045】
ここで、吐出口11aの流速を例えば200mm/秒以下に制限するには、図6中の直線Dを参照して、流量が0.85mL/分以下でなければならない。このとき、吸入口12aの流速は図6中の直線Eを参照して、3mm/秒以下と算出される。
【0046】
吐出口11a及び吸入口12aの適切な流速は、抗原抗体反応の強さ及び固定された物質の剥離強度の他、溶液22及び洗浄液21の粘度、反応容器51の内壁面51aから吐出口11a及び吸入口12aまでの距離、吐出する方向等に依存する。このため、既述したように適切な流速を実験により求めることが望ましい。
【0047】
本第1実施形態では、実験結果に基づき、吐出口11aの流速を50mm/秒〜200mm/秒とした。200mm/秒を超えると反応容器51の内壁面51aに固定した物質が剥離することがある。50mm/秒未満では内壁面51aに付着した除去されるべき物質が残留することがある。より剥離を起こさずかつ確実に洗浄するという観点からは、吐出口11aでの流速を100mm/秒〜150mm/秒とすることが望ましい。
【0048】
なお、吐出口11aのかかる範囲の流速に対して、吸入口12aにおける流速は3mm/秒〜0.75mm/秒であり、乱流や停留を生ずることなく洗浄置換に適切な流れのパターンが形成される。また、このときの流量は0.85mL/分〜0.21mL/分であり、この流量で吸入すると容器内の溶液22が5秒〜20秒で吸入される。従って、洗浄時間を適切な範囲に収めることができる。
【0049】
次いで、図4(c)を参照して、上述した反応容器51内の溶液22の置換洗浄工程により、反応容器51内は洗浄液21により置換される。このとき、反応容器51の内壁面51aには、被検物質62又は競合物質63のいずれかが結合した結合物質61a、61bが固定されている。
【0050】
置換洗浄工程の終了後、アーム103を上昇し、回転して、吐出吸引部材10を初期位置に収容する。
【0051】
次いで、図4(d)を参照して、反応容器51内に被検物質62と選択的に抗原抗体反応をする標識物質64、例えば蛍光体を付加した識別抗体64を投入する。そして、反応容器51内の洗浄液を標識物質64を含む溶液22とする。
【0052】
通常、標識物質64の投入による反応容器51内の液体の体積変化は小さく、体積変化による液面変動を考慮する必要は少ない。しかし、この体積変化が大きい場合又は標識物質64を含む溶液22により洗浄液を置換する場合は、上述した置換洗浄工程と同様の方法を用いて、反応容器51内の洗浄液21を標識物質64を含む溶液22により置換することもできる。なお、この場合、溶液22に代えて反応容器51内にある置換後の洗浄液21とし、洗浄液21に代えて標識物質64を含む溶液22とする。これにより、液面変動を回避することができる。
【0053】
次いで、反応容器51を震盪した後静置する。標識物質64は被検物質62と選択的に抗原抗体反応を起こすので、被検物質62と結合した結合物質61aは、被検物質62を標識物質64と結合物質61aにより挟むサンドイッチ構造を形成する。他方、標識物質64は競合物質63と抗原抗体反応を起こさないので、競合物質63と結合した結合物質61bは変化せずそのままの状態で残される。
【0054】
次いで、図4(e)を参照して、反応容器51内の識別物質64を含む溶液22を洗浄液21に置換する置換洗浄を行う。
【0055】
この置換洗浄工程は、既述の図4(c)を参照して説明した置換洗浄工程と同様にしてなされる。その結果、図4(e)を参照して、反応容器51内は洗浄液21により置換される。その反応容器51の内壁面には、識別物質64/被検物質62/結合物質61aのサンドイッチ構造を有する結合体、及び、競合物質63/結合物質61bの結合体が固定されて残される。なお、溶液21、22に接触することがない反応容器51の内壁面51a上部には、未反応の結合物質61が固定されている。
【0056】
次いで、反応容器51に例えば紫外線を照射して識別標識64を励起し、識別標識64の蛍光を測定する。この蛍光の光量に基づき識別標識64の量、即ち検体中の被検物質62濃度を算出する。
【0057】
上述した本発明の第1実施形態では、被検物質62として抗原を用いたが、被検物質62が抗体であってもよい。この場合、結合物質61、競合物質63及び識別物質64として抗原が用いられる。
【0058】
次に、第1実施形態で洗浄液21及び溶液22の液送に用いた液送ポンプを説明する。
【0059】
図7は本発明の第1実施形態送液ポンプ断面図であり、洗浄液21及び溶液22をそれぞれ等流量で送出及び吸入する液送ポンプ110の構造の概念を表している。
【0060】
図7 を参照して、液送ポンプ110は、基台101上に固定されたシリンジ121を有し、さらに、シリンジ121内を移動するピストン122を駆動するためのモータ129が基台101上に固設されている。なお、液送ポンプが固定される基台101は、免疫測定装置の基台101であってもよく、またそれとは別の基台であってもよい。
【0061】
シリンジ121内に、シリンジ121の中心軸に平行に、ねじ棒123がシリンジ121の中心軸廻りに回動自在に設けられている。また、ねじ棒123に螺合し、シリンジ121内を前室121aと後室121bとに2分するピストン122が設けられる。
【0062】
ピストン122は、ねじ棒123の回動により駆動され、シリンジ121の中心軸に沿ってシリンジ121内を前後方向に移動する。なお、前室121aのある側をシリンジ121の前方とし、後室121bのある側をシリンジ121の後方とした。また、ピストン122は、前室121a内の液体と後室121b内の液体とが混合しないように、ピストン122の外周がシリンジ121の円筒内面に密接して摺動するように移動される。
【0063】
シリンジ121前方及び後方の端面、即ち前端121c及び後端121dは、シリンジ121端面を塞ぐ板状部材から構成される。シリンジ121の前端121c及び後端121dには軸受126が設けられ、この軸受126にねじ棒123の回転軸127が嵌合している。ねじ棒123の回転軸127は、シリンジ121後端121dの軸受126を貫通し、回転継ぎ手128を介してモーター回転軸129aに結合される。
【0064】
シリンジ121の前方に前室121aに開口する吸込口124が設けられ、シリンジ121の後方に後室121bに開口する送出口125が設けられる。吸込口124は、図1 を参照して、チューブ32を介して吐出吸引部材10の吸入管11に連結されている。また、この送出口125は、図1 を参照して、チューブ31を介して吐出吸引引部材10の吐出管11に連結される。
【0065】
上記の液送ポンプ110の動作を以下に説明する。
【0066】
まず、吐出吸引部材10の先端部10aを大気中に開放した状態で、ピストン122をシリンジ121後端121bまで移動する。このピストン122の移動は、例えはモーター129を正回転して、ねじ棒123を正回転させることでなされる。
【0067】
次いで、吐出吸引部材10の先端部10aを容器に保存された洗浄液中に浸漬し、この状態でピストン122をシリンジ121前端121c方向へ、例えば前端121cまで移動する。これにより、シリンジ121の後室121b内に洗浄液が吸入される。このピストン122の移動は、例えはモーター129を逆回転して、ねじ棒123を逆回転させることでなされる。
【0068】
次いで、吐出吸引部材10の先端部10aを置換洗浄されるべき反応容器51内の溶液22中に浸漬する。この状態で、ピストン122をシリンジ121後端121b方向へ向けて一定の所定速度で移動する。この移動は、モーター129を所定の一定速度で正回転させることでなされる。このピストン122の後端121b方向への移動により、送出口125から後室121b内の洗浄液21が吐出管11を通り反応容器51内へ送出され、同時に、吸込口124から反応容器51内の溶液22が前室121a内へ吸入される。従って、反応容器51内の溶液22が洗浄液21により置換洗浄される。
【0069】
この送液ポンプでは、ピストン122移動により前室121a及び後室121bの全容積は変化しない。このため、シリンジ121内をピストン122が移動する際の前室121a及び後室121bの単位時間当たりの容積変化量は、常に同一である。従って、送出される洗浄液21の流量は常に吸入される溶液22の流量に等しい。また、ピストン122の移動速度が所定の一定速度とされることから、送出される洗浄液21及び吸入される溶液22の流量は、常に一定の所定量となる。流量は、シリンジ121内径及びねじ棒123のピッチを考慮して、モータ129の回転速度を制御することで調整される。この流量の所定量は、既に説明したように適切な洗浄がなされるように例えば実験によりあるいは洗浄時間を考慮して決定される。
【0070】
本第1実施形態において、吐出口11a及び吸入口12aにおける適切な流速、及び流量は、反応容器51の形状、大きさにより異なる。本第1実施形態の送液ポンプでは、流量の制御はモーター129の回転速度によりなされる。回転速度の制御は、容易に精密かつ広範囲になすことができる。このため、流量を精密に制御することができ、かつ流量の制御範囲を容易に大きくすることがてきる。
【0071】
上述したように、本第1実施形態では、反応容器51内への洗浄液21の吐出流量と反応容器内からの溶液22の吸入流量とが等しい。このため、反応容器51内の液面変動が回避されるので、反応容器51の内壁面51aに固定された物質(結合物質61、被検物質62、競合物質63及び標識物質)が液面変動により大気に暴露されて生ずる変質を防止することができる。また、吐出流量及び吸入流量が同一であるにも拘わらず、吐出口11a及び吸入口12aの開口面積を調整することで、吐出口11a及び吸入口12aから吐出又は吸入される流速を洗浄に適切な流速に設定することができる。このため、反応容器51の内壁面51aに固定された物質を剥離することなく、かつ、適切な洗浄を適切な時間内でなすことができる。
【0072】
本発明の第2実施形態は、第1実施形態の免疫測定装置に用いられる別の送液ポンプ111に関する。
【0073】
図8は本発明の第2実施形態送液ポンプ断面図であり、送液ポンプ111の主要な構成を表している。
【0074】
図8を参照して、本第2実施形態の液送ポンプは、基台101上に、基台101に垂直に立設された互いに平行な 2枚の支持板135と、支持板135間に設けられた第1部材131及び第2部材132と、支持板135間に設けられたねじ棒123と、ねじ棒123を回転駆動するモータ129とを有する。なお、本第2実施形態の第1及び第2部材131、132は、筒状の部材を形成するので、以下「第1筒部材131」及び「第2筒部材132」とも記載する。このとき、筒の中心軸が長軸をなす。
【0075】
ねじ棒123は、ねじ棒123の回転軸127廻りに回動自在に設けられ、第1実施形態と同様の手段によりモータ129により回転駆動される。
【0076】
ねじ棒123に、ねじ棒123に螺合してねじ棒123の回転により回転軸127に沿って前後に移動する移動部材134が設けられ、移動部材134には、支持板135と平行に保持された移動板133が固定されている。従って、移動板133は移動部材134とともに常に支持板135に平行に保持されて移動する。なお、図8の左方を前、右方を後とした。
【0077】
第1筒部材131及び第2筒部材132は、長軸方向に伸縮自在な筒状部材からなり、例えば側面に蛇腹を用いた円筒状のフレキシブルチューブを用いて構成される。なお、必ずしも円筒状である必要はない。
【0078】
第1筒部材131は移動板133と前方の支持板135との間に設けられ、第2筒部材132は移動板133と後方の支持板135との間に設けられる。これら第1及び第2筒部材は131、132は、例えば共通の長軸を有するように互いの前後に設けることができる。なお、ねじ棒123は、第1及び第2筒部材131、132の外部にこれらの長軸に平行に設けられる。
【0079】
第1筒部材131の前端は、前方の支持板135後面に平行に固定された前板131aにより密閉され、後端は、移動板133により密閉される。第2筒部材132の後端は、後方の支持板135前面に平行に固定された後板132aにより密閉され、前端は、移動板133により密閉される。そして、第1筒部材131の前端に、前板131a及び支持板135を貫通して第1筒部材131内に開口する吸込口124が設けられ、第2筒部材132の後端に、後板132a及び支持板135を貫通して第2筒部材132内に開口する送出口125が設けられる。
【0080】
モーター129によりねじ棒123が正逆いずれかに回転駆動されると、移動部材134がねじ棒123に沿って前又は後(図8の紙面左右)に移動し、移動部材134に固定された移動板133が前又は後に移動する。このとき、移動板133は、常に支持板135に平行に、即ち、前板131aと後板132aとに平行の状態を保持したまま移動する。従って、第1筒部材131及び第2筒部材132の前後の端面は、移動板133の移動中も常に平行に保持される。
【0081】
移動板133を前方から後方へ移動すると、第1円筒部材131は伸張して内部容積が増加する。その結果、吸込口124から溶液22が第1円筒部材131内に吸入される。同時に、第2円筒部材132は短縮して内部容積が減少する結果、第2円筒部材132内の洗浄液21が送出口125から送出される。
【0082】
移動板133の移動中も、第1及び第2円筒部材131、132の両端面は常に平行に保持され、かつ、移動板133の移動は第1及び第2円筒部材131、132の端面を同一速度で移動させるから、第1及び第2円筒部材131、132の内容積の変化速度は常に同一である。従って、吸込口124から吸入される溶液22と、送出口125から送出口される洗浄液21は、常に同一流量となる。
【0083】
本第2実施形態の液送ポンプ111の使用方法は、上述の第1実施形態の液送ポンプ110と同様であるから、説明を省略する。
【0084】
上述したように、本第2実施形態の送液ポンプ111は、第1実施形態の送液ポンプ110と同様に、送出流量と吸入流量とが常に同一の状態で動作する。従って、第1実施形態の免疫測定装置に用いることで、反応容器51内の液面変動が効果的に抑制される。
【0085】
本発明の第3 実施形態は、スパイラル状の流れに沿って溶液を吸入する吐出吸引部材10に関する。
【0086】
図9は本発明の第3実施形態吐出吸引部材構造説明図であり、大容量の反応容器51の置換洗浄に適した吐出吸引部材10の先端の構造を表している。なお、図9(a)は断面図、図9 (b)は先端部10aを下方から見た平面図である。
【0087】
図9を参照して、本第3 実施形態の吐出吸引部材10の先端は、太いプラスチックチューブ、例えば内径6mm〜7mmのシリコン又はプロピレンからなる吸入管12の略中心軸に沿って、細いプラスチックチューブ、例えば内径1mm、外径2mmのテフロン(登録商標)からなる吐出管11が設けられている。
【0088】
この吐出管11の外壁と吸入管12の内壁の間に、吐出管11にスパイラル状に巻きつく例えは直径1.5mmのプラスチック製のコイルばね33が設けられている。吐出管11は、このコイルばね33により、吸入管12のほぼ中心軸に支持される。吐出管11及び吸入管12の下端は、ほぼ同一面内にあり、それぞれ吐出口11a及び吸入口12aが開口する。
【0089】
吸入管12の上端は例えはテフロン製の上栓35により密閉される。吐出管11は上栓35のほぼ中央を貫通し密嵌して支持され、送液ポンプ110から送液される洗浄液21をその先端(下端)の吐出口11aから吐出する。さらに、上栓35を貫通して吸入官12内に開口する管34が設けらる。吸入口12aから吐出管12内に吸入され溶液22は、この管34の一端(上端)に接続されたチューブ32(図1参照)を介して送液ポンプ110へ吸引される。
【0090】
本第3実施形態は、吐出吸引部10を除き第1実施形態と同様であり、吐出及び吸入流量を同じとし、かつ吐出口11a及び吸入口12aでの流速を制御することができるという同様の作用効果を奏する。他方、本第3実施形態では、太い吸入管12であっても吐出口11aを確実に吸入口12aのほぼ中心に保持することができる。このため、例えば、直径20mm〜40mm、高さ10〜20mmという大きな反応容器51が用いられる場合、洗浄時間を短縮するために太い吸入管12を用いても、吐出口11aの位置が正確に固定されるので、確実な洗浄が可能となる。さらに、吸収される溶液22は、コイルばね33に沿ってスパイラル状に流れる。このため、反応容器51内の流れが渦巻き状になり急激な吸引による急な流れが緩和されるので、急速な流れによる反応容器51の内壁面51aに固定された物質61〜64の剥離が防止される。
【0091】
本発明の第4 実施形態は、吐出吸引部材10の先端部10aに複数の吸入口12aを有する免疫測定装置に関する。
【0092】
図10は本発明の第4実施形態吐出吸引部材構造説明図であり、吐出吸引部材10の先端部10aの構造を表している。なお、図10(a)は断面図、図10(b)は先端部10aを下方から見た平面図である。
【0093】
図10を参照して、第4実施形態の吐出吸引部材10の先端は、上端が上栓37により、下端が下栓36により密閉された例えば内径3.5mmのテフロン製の管からなる吸入管12を有する。上栓37及び下栓36は、例えばテフロン製とされる。
【0094】
さらに、上栓37及び下栓36を貫通し、吸入管12の中心線を通る例えば内径0.3mmのガラス又はテフロン製の管からなる吐出管11が設けられる。吐出管11の下端は、下栓36の下面近くに開口する吐出口11aを構成する。吐出管11の上端には、チューブ31(図1 参照)が接続され、洗浄液21が送液される。上栓37には、さらに上端に溶液22を吸入するチューブ32(図1 参照)が接続された管34、例えばガラス管34が貫通しており、吸入管12内の溶液22は管34を介してチューブ32へ吸引される。
【0095】
下栓36には、下栓36を貫通する例えば直径0.3mmの吸入口12aが、吐出口11aを中心として例えば同心円に配置されている。吸入口12aは、複数個、例えば3個配置される。なお、吸引口12aの個数及び直径は、流速及び流量を適切にするように定められる。
【0096】
本第4実施形態では、吸入口12aを複数設けるため、吸入口12aの開口面積を広範に変更することがてきる。
【0097】
本発明の第5 実施形態は、吐出吸引部材10の先端部10aに複数の吸入口を有する別の免疫測定装置に関する。
【0098】
図11は本発明の第5実施形態吐出吸引部材構造説明図であり、吐出吸引部材10の先端部10aの構造を表している。なお、図11(a)は断面図、図11(b)は先端部10aを下方から見た平面図である。
【0099】
図11を参照して、第5実施形態の吐出吸引部材10の先端は、上下端が半球状に密閉された円筒形の吸入管12を有し、吸入管12の中心線を上下に貫通する吐出管11が設けられている。吸入管12は例えば外径3.5mmのガラス製であり、吐出管11は例えば内径0.3mのガラス管とする。吸入管12の上部に開口する管34が設けられ、管34の上端に接続するチューブ32(図1参照)を介して、吸入管12内の溶液22が吸入される。
【0100】
吐出管11の先端は吸入管12の中心下端に開口して、吐出口11aを構成する。吐出口11aは、吸入管12の先端外面に開口してもよく、また、先端外面から下方へ突出して開口することもできる。
【0101】
吸入管12の下端半球面の吐出口11aを中心とする同心円の回転対称位置に、例えば直径0.3mmの複数の吸入口12aが例えは5個開設される。
【0102】
本第5実施形態の吐出吸引部材10は、第4実施形態と同様の作用・効果を奏する他、吸入口12aが吐出口11aから離れた位置に鉛直から斜め方向に開口しており、吸入される溶液22の流れを吐出により生ずる流れから分離するため、反応容器51内全体を澱みなく隈なく循環する流れを形成することができる。このため、置換洗浄が確実になされる。
【0103】
本発明の第6実施形態は、吐出口11aと吸入口12aとの間に落差を設けた吐出吸引部材10を有する免疫測定装置に関する。
【0104】
図12は本発明の第6実施形態吐出吸引部材構造説明図であり、吐出吸引部材10の先端部10aの構造を表している。なお、図11(a)は断面図、図11(b)は先端部10aを下方から見た平面図である。
【0105】
図12を参照して、本第6実施形態では、先細の漏斗状の形状を有する例えばポリプロピレン製の管状部材からなる吐出管11及び吸入管12が、接着材13により接合されている。吐出管11及び吸入管12の位置は、互いの位置関係が固定されていればよく、接着材13による接合に代えて、機械的な手段により互いを固定してもよい。
【0106】
吐出管11の先端に開口する吐出口11aが、吸入管12の先端に開口する吸入口12aより高い位置(上方に)に位置するように、吐出管11及び吸入管12は接合される。例えば、吐出管11及び吸入管12は、ともに先端(下端)で内径1mm、外径1.5mm、後端(上端)で内径3mm、外径5.0mmの先細の漏斗状に加工されたプラスチック、例えば第1実施形態の吐出管11に用いられたポリプロピレン製の管状部材を用いることができる。
【0107】
本第6実施形態では、吐出口11aが吸入口12aより高さhだけ高い位置に設けられる。このため、吐出口11aから吐出された洗浄液21が作る流れ71の流速を、高さhを調整することで反応容器51の内壁面51a近傍で適切な速度になるように制御することができる。従って、流速の制御範囲が広がるので、より確実な置換洗浄が可能となる。なお、吐出口11aと吸入口12aとの開口面積は同一であっても、高さhによる流速の制御が可能である。また、吐出口11aと吸入口12aとの開口面積を異なるものとすることで、さらに流速の制御範囲を拡大することもできる。
【0108】
上述した本発明の第1〜第6実施形態の吐出管11及び吸入管12を構成する材料は、かかる形状に加工することができかつ免疫測定の妨害とならない材料であればよく、上述した材料に限定されず他の材料を用いてもよい。
【0109】
また、本発明の第1〜第6実施形態における吐出管11と吸入管12と入れ換える、即ち、第1〜第6実施形態の吐出口11aから溶液22を吸入み、吸入口12aから洗浄液21を吐出するようにすることもできる。これにより、溶液22の吸入の流速を、洗浄液21の吐出の流速に比べて大幅に遅くすることができる。また、反応容器51内の流れを変更することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の第1実施形態免疫測定装置の洗浄機構断面図
【図2】本発明の第1実施形態反応容器断面図
【図3】本発明の第1実施形態吐出吸引部材断面図
【図4】本発明の第1実施形態免疫測定工程断面図
【図5】本発明の第1実施形態反応容器内の流れを示す断面図
【図6】本発明の第1実施形態流速の口径依存性を示す図
【図7】本発明の第1実施形態送液ポンプ断面図
【図8】本発明の第2実施形態送液ポンプ断面図
【図9】本発明の第3実施形態吐出吸引部材構造説明図
【図10】本発明の第4実施形態吐出吸引部材構造説明図
【図11】本発明の第5実施形態吐出吸引部材構造説明図
【図12】本発明の第6実施形態吐出吸引部材構造説明図
【符号の説明】
【0111】
10 吐出吸引部材
10a 先端部
11 吐出管
11a 吐出口
12 吸入管
12a 吸入口
13 接着材
21 洗浄液
22 溶液
31、32 チューブ
33 コイルばね
34 管
35、37 上栓
36 下栓
50 容器基板
51 反応容器
51a 内壁面
51a−1 底面
51a−2 側壁面
61:61a、61b 結合物質(抗体)
62 被検物質(抗原)
63 競合物質(競合抗原)
64 標識物質(標識抗体)
71、72 流れ
101 基台
102 昇降回転機構
102a 回転軸
103 アーム
103a、103b 貫通孔
104 抑え板
105 保持台
110、111 送液ポンプ
121 シリンジ
121a 前室
121b 後室
121c 前端
121d 後端
122 ピストン
123 ねじ棒
124 吸込口
125 送出口
126 軸受
127 回転軸
128 継ぎ手
129 モーター
129a モーター回転軸
130 台座
131 第1部材(第1筒部材)
131a 前板
132 第2部材(第2筒部材)
132a 後板
133 移動板
134 移動部材
135 支持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原又は抗体と抗原抗体反応をする結合物質が内壁面に固定された反応容器内に、検体溶液を注入する免疫測定装置において、
前記反応容器内の溶液を第1の流量で吸い込む吸入口と、
洗浄液を前記第1の流量で前記反応容器内へ吐出する吐出口とを有し、
前記反応容器内の前記溶液を前記洗浄液により置換洗浄することを特徴とする免疫測定装置。
【請求項2】
前記吸入口は、円管状の吸入管を含み構成され、
前記吸入管の側面から前記吸入管内へ貫入され、先端が前記吐出口として開口する吐出管とを有し、
前記吐出口が、前記吸入口の中に開口することを特徴とする請求項1記載の免疫測定装置。
【請求項3】
先端が前記吸入口として開口する円管状の吸入管と、
前記吸入管内を前記円管の軸に沿って貫通する吐出管と、
前記吸入管内に設けられ、前記吐出管の外側をスパイラル状に巻き込み前記吐出管を前記吸入管内に支持するコイルばねとを有することを特徴とする請求項1記載の免疫測定装置。
【請求項4】
前端に吸込口及び後端に送出口が設けられたシリンジと、
前記シリンジ内を2分するピストンと、
前記ピストンを貫通するねじ穴に螺合し、前記シリンジ内に前記シリンジの軸に平行に配置されたねじ棒と、
前記ねじ棒を回転駆動して、前記ねじ棒の回転により前記ピストンを前記に移動させる回転駆動部とを有する送液ポンプを更に備えたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の免疫測定装置。
【請求項5】
両端が閉塞され、長軸方向に伸縮自在な第1部材及び第2部材と、
前記第1部材の固定された前端の近傍に設けられた吸込口と、
前記第2部材の固定された後端の近傍に設けられた送出口と、
前面に前記第1部材の後端が固定され、後面に前記第2筒部材の前端が固定された移動板と、
前記移動板を前記長軸に平行に移動させる移動板駆動部とを有する送液ポンプを備えたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の免疫測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−192386(P2009−192386A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33785(P2008−33785)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】