免疫療法および抗腫瘍治療のための新規な結合体および組成物
本発明は、ApoA、インターロイキン15およびIL15受容体α鎖のSushiドメインの併用に基づいて被験体の生得免疫応答と適応免疫応答の双方を促進することができる組成物、ならびに患者において免疫応答を刺激するためのこれらの組成物の使用、および感染性疾患および新生物性疾患を治療するための治療方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、免疫学の分野、より具体的には、被験体の生得免疫応答と適応免疫応答の双方を促進することができる組成物の分野に関する。これらの組成物は、腫瘍および感染性疾患など、より大きな免疫系活性を必要とするあらゆる疾患を治療するのに有用である。
【0002】
発明の背景
インターロイキン15(IL15またはIL15)は、NK、NKT細胞およびCD8 Tメモリーリンパ球の活性のための生命維持に必要なサイトカインである。これはα、βおよびγと呼ばれる3つのサブユニットからなる受容体を介してその機能を遂行する。サブユニットβおよびγは、IL−2受容体と共通である。IL15受容体のα鎖はIL15に独特であり、サイトカインの細胞外媒質への放出に必要であり[Duitman, E.H., et al., Mol Cell Biol, 2008. 28:4851-61]、IL15をサブユニットIL15RβおよびIL15Rγに「提示する」。
【0003】
免疫系の刺激特性のために、このインターロイキンは、NK細胞の存在に依存する抗腫瘍特性(Suzuki, 2001, J. Leuokoc. Biol., 69:531-537)およびT細胞の存在に依存する抗腫瘍特性(Hazama, 1999, Br. J. Cancer., 80:1420-1426, Meazza, 2000, Int. J. Cancer, 87:574-581 and Klebanoff, 2004, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2004, 101:1969-1974)を有する。IL15はまた、ウイルス感染に対する保護、ならびに免疫および樹状細胞の発達におけるT細胞に基づく応答の拡大および維持にも関与する。
【0004】
よって、IL15は、免疫系が関与する疾患を治療するための有用な治療薬となり得る。しかしながら、IL15の機能に関するin vivo研究は、1つには、組換えIL15が利用できないため、また、IL15が天然遺伝子から発現される場合に見られる分泌レベルが低いために妨げられてきた。さらに、ほとんどのサイトカインは、それらがin vivoにおいて局部的かつ一時的に生産されることを考えれば、血漿半減期が極めて短い。結論として、in vivoにおけるIL15の使用は、比較的高用量で頻繁な投与を必要とし、治療に耐性のない癌患者に起こり得る種々の二次的作用をもたらす。
【0005】
これらの欠点を克服するために、IL15は抗CD40、IL−7またはIL−6抗体などの他の治療と組み合わせて用いられてきた[Chou, P.C., et al., 2009, Vet Immunol Immunopathol, 130:25-34; Lin, C.Y., et al., Cancer Lett, 2008. 272(2): p. 285-95; Zhang, M., et al., Proc Natl Acad Sci USA, 2009, 106:7513-8およびCha, E., et al., Breast Cancer Res Treat, 2009]。これらの組合せは、低用量のIL15で同等の効果を達成可能とする相乗効果を示す。
【0006】
IL15活性を増強するもう1つの可能性は、免疫グロブリンの定常領域とIL15受容体のα鎖の可溶性領域とを含んでなる融合タンパク質と同時投与することからなり、これはIL15活性に50倍の増強をもたらす(Rubinstein M.P. et al., 2006, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:9166-71およびStoklasek T.A. et al., 2006, J. Immunol.; 177:6072?80)。
【0007】
最近、IL15受容体α鎖のアミノ末端のアミノ酸1〜77により形成されるポリペプチド(いわゆる「Sushiドメイン」)がIL15のアゴニストであることが実証された[Mortier, E., et al., J Biol Chem, 2006. 281(3): p. 1612-9]。よって、該ドメインとIL15を含む融合タンパク質の投与は、IL15の場合よりも大きな抗腫瘍効果を示し、B16F10腫瘍の肺転移に65%の低下をもたらし、ヌードマウスの盲腸に移植されたHCT−116ヒト腫瘍の転移数に減少をもたらす[Bessard, A., et al., Mol Cancer Ther, 2009. 8(9): p. 2736-45]。
【0008】
望まない二次的作用を受けることなくIL15の効果の改善を達成するためのもう1つの選択肢は、その半減期を延長するために分子を改変することからなる。よって、US2006257361は、免疫グロブリンの定常領域と、投与後に非改変IL15よりも長い血清半減期を示すIL15とを含んでなる融合タンパク質を記載している。
【0009】
しかしながらやはり、当技術分野において、タンパク質がその免疫応答促進活性を維持し、IL15に関連する二次的作用を可能な限り低減させることができるIL15の別の処方物が必要である。
【発明の概要】
【0010】
第一の態様において、本発明は、
(i)以下の群:
(a)ApoAポリペプチド、または該ApoAポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体を含んでなる、ポリペプチド、および
(b)ApoAポリペプチド、または該ApoAポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体をコードする、ポリヌクレオチド
から選択される第一の成分、ならびに
(ii)以下の群:
(a)IL15、またはIL15と少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体、および
(b)IL15、またはIL15と少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体をコードする、ポリヌクレオチド
から選択される第二の成分、ならびに
(iii)以下の群:
(a)IL15受容体α鎖のSushiドメイン、またはIL15受容体α鎖のSushiドメインと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体、および
(b)IL15受容体α鎖のSushiドメイン、またはIL15受容体α鎖のSushiドメインと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体をコードする、ポリヌクレオチド
から選択される第三の成分
を一緒にまたは個別に含んでなる組成物に関する。
【0011】
第二の態様において、本発明は、
(i)ApoAポリペプチド、または該ApoAポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体により形成される、領域A、
(ii)IL15、またはIL15と少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体により形成される、領域B、および
(iii)IL15受容体α鎖のSushiドメイン、またはIL15受容体α鎖のSushiドメインと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体により形成される、領域C
を含んでなる融合タンパク質に関する。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、本発明のポリヌクレオチドを含んでなるベクターもしくは遺伝子構築物、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、または本発明の遺伝子構築物を含んでなる宿主細胞に関する。
【0013】
別の態様において、本発明は、本発明の組成物、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクターまたは遺伝構築物、本発明の宿主細胞と、薬学上許容されるビヒクルとを含んでなる医薬組成物に関する。
【0014】
別の態様において、本発明は、抗原特異的Tリンパ球の大量増殖を促進するin vitro法であって、事前にin vivoで該抗原に曝されたリンパ球集団を、本発明の組成物、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクターまたは遺伝子構築物、本発明の宿主細胞と接触させることを含んでなる方法に関する。
【0015】
さらに、本発明は、医療用の、または被験体の免疫応答の刺激を必要とする疾患の治療のための、本発明の組成物、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクターもしくは遺伝子構築物、本発明の宿主細胞に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】時間t(h:時間)におけるhIL15(ng/mL)の発現動態。C57B16マウス群にプラスミド、pApo−hIL15+pSushi、pApo−hIL15、phIL15+pSushi、phIL15、pApoまたは生理食塩水(S)の流体力学的注射(hydrodynamic injection)を施した。8時間目、24時間目、96時間目、168時間目および240時間目に採血し、hIL15の血清濃度をELISAアッセイにより分析した。各群動物2〜3匹を用いた代表的な実験の平均および平均標準偏差を示す。結果は反復測定ANOVAとその後のボンフェローニ検定により統計学的に比較した。他群と比較した場合、pApo−hIL15処置群の8時間目と24時間目でhIL15レベル間に有意差が見られた(p<0.001)。
【図2】流体力学的注射によりpSushiと同時投与したpApo−hIL15の機能的増殖アッセイ。CTLL2細胞を、pApo−hIL15およびpApo−hIL15+pSushiでマウスを処置して24時間後に得られた血清の希釈系で培養した。48時間目に、トリチウム化チミジンのCTLL2細胞への組込みを増殖指数(c.p.m.)として調べたところ、pApo−hIL15とpSushiで同時処置したマウス血清は、pApo−hIL15単独で処置したマウスの血清よりも高い増殖を誘導したことが見て取れた(p<0.001)。各群動物4〜5匹を用いた代表的な実験の平均および平均標準偏差を示す。結果は、反復測定ANOVAにより統計学的に比較した。
【図3】CD8+ T細胞の総数および総脾細胞に対するパーセンテージの経時的(t(d)、日)増加。C57B16マウス群に種々のプラスミド構築物の流体力学的注射を施し、3日目、4日目、5日目、6日目および7日目に犠牲にし、脾臓を摘出した。CD8+ T細胞の数(A)、総脾細胞に対するCD8+ T細胞のパーセンテージ(B)、CD8+CD44+メモリーT細胞の数(C)および総脾細胞に対するCD8+CD44+メモリーT細胞のパーセンテージ(D)を測定した。プラスミドpApo−hIL15およびpSushiを投与したマウス群(黒四角)は、他群:pApo−hIL15(□)、phIL15+pSushi(▲)、phIL15(△)、pApo(○)および生理食塩水ビヒクル(*)よりも多数のCD8+ T細胞を示す。各群動物2匹を用いた代表的な実験の平均および平均標準偏差を示す。データは、反復測定ANOVAとその後の、pApo−hIL15+pSushi群とphIL15+pSushi群を比較するボンフェローニ検定により分析した。*p<0.05;**p<0.001;***p<0.0001。
【図4】肝臓の総リンパ球に対するCD8+ T細胞のパーセンテージの経時的(t(d)、日)増加。C57B16マウスに種々の構築物を流体力学的に投与した。3日目、4日目、5日目、6日目および7日目に動物を犠牲にし、肝臓を単離した。総リンパ球に対するCD8+ T細胞のパーセンテージを測定した。プラスミドpApo−hIL15およびpSushi(黒四角)を投与したマウス群は、残りの群:pApo−hIL15(□)、phIL15+pSushi(▲)、phIL15(△)、pApo(○)および生理食塩水ビヒクル(*)よりも高いCD8+ T細胞パーセンテージを示した。各群動物2匹を用いた代表的な実験の平均および平均標準偏差を示す。データは、反復測定ANOVAとその後の、pApo−hIL15+pSushi群とphIL15+pSushi群を比較するボンフェローニ検定により分析した。*p<0.05;**p<0.001;***p<0.0001。
【図5】CD8+ T細胞の総数および末梢血リンパ球に対するパーセンテージの増加。C57B16マウスにphIL15を用いた種々の構築物を流体力学的に投与した。3日目、4日目、5日目および6日目に採血し、CD8+ Tリンパ球のパーセンテージ(A)、CD8+CD44+メモリーT細胞のパーセンテージ(B)、エフェクターメモリー細胞CD8+CD44+CD62L−のパーセンテージ(C)および中枢メモリー細胞CD8+CD44+CD62L+のパーセンテージ(D)を測定した。総ての供試集団において、プラスミドpApo−hIL15およびpSushiを施すマウス群(黒四角)は、他群:pApo−hIL15(□)、phIL15+pSushi(▲)、phIL15(△)、pApo(●)、pSushi(▽)および生理食塩水ビヒクル(*)よりも高いパーセンテージのCD8+ T細胞を示した。各群動物3匹を用いた代表的な実験の平均および平均標準偏差を示す。データは、反復測定ANOVAとその後の、pApo−hIL15+pSushi群とphIL15+pSushi群を比較するボンフェローニ検定により分析した。*p<0.05;**p<0.001;***p<0.0001。
【図6】皮下CT26腫瘍モデルにおける構築物の経時的抗腫瘍効果(t(d)、日)。Balb/cマウスに5×105のCT26細胞を皮下に施し、3日後にpApo−hIL15、pApo−hIL15+pSushi、phIL15、phIL15+pSushi、pApoまたは生理食塩水(S)で流体力学的に処置した。2日置きにデジタルカリパスを用いて腫瘍を測定し(mm2)(A)、動物の生存時間を観察した(%SV)(B)。プラスミドpApo−hIL15およびpSushiを投与したマウスは、他群のマウスよりも腫瘍増殖の遅延および高い生存率を示すことが見て取れた。各群動物8匹を用いた代表的な実験の平均および平均標準偏差を示す。
【図7】皮下MC38腫瘍モデルにおけるプラスミドの経時的抗腫瘍効果(t(d)、日)。C57B16マウスに5×105のMC38細胞を皮下投与し、6日後にpApo−hIL15、pApo−hIL15+pSushi、phIL15、phIL15+pSushi、pApoまたは生理食塩水(S)で流体力学的に処置した。2日置きにデジタルカリパスを用いて腫瘍を測定し(mm2)(A)、動物の生存時間を観察した(%SV)(B)。プラスミドpApo−hIL15およびpSushiを投与したマウスは、腫瘍増殖の遅延を示すことが見て取れた。代表的な実験の平均および平均標準偏差を示す。
【図8】脾臓内MC38腫瘍モデルにおける種々のプラスミドの抗転移効果。C57B16マウスの脾臓内に5×105のMC38細胞を投与し、翌日、pApo−hIL15、pApo−hIL15+pSushi、phIL15、phIL15+pSushi、pApoまたは生理食塩水(S)で流体力学的に処置した。19日後、マウスを犠牲にし、I、肝臓転移または全身転移のために死に至ったマウス;II、肝臓組織の一部に転移を示すマウス;III、肝臓転移が無いマウスの3群に分けた。代表的な実験のデータを示す。
【図9A】IL15のα受容体に関する「ノックアウト」マウスにおける種々のプラスミドの効果。IL15のα受容体を欠く4匹のマウスをプラスミドpApo−hIL15とpSushi、phIL15とpSushi、pApoとpApo−hIL15で流体力学的に処置した。動物を5日後に犠牲にし、脾臓を摘出し、分化に関するCD3マーカーを用いたフローサイトメトリーによってNK細胞およびCD8+ Tメモリーリンパ球の脾臓集団を測定した。この図には、非突然変異型C57B16マウスのNK集団およびCD8+ Tメモリー集団も含まれる。供試マウスのNK細胞(A)、CD8+ Tリンパ球(B)およびCD8+CD44+部分集団(C)のパーセンテージを示す。総脾細胞に対する細胞のパーセンテージを示す。
【図9B】IL15のα受容体に関する「ノックアウト」マウスにおける種々のプラスミドの効果。IL15のα受容体を欠く4匹のマウスをプラスミドpApo−hIL15とpSushi、phIL15とpSushi、pApoとpApo−hIL15で流体力学的に処置した。動物を5日後に犠牲にし、脾臓を摘出し、分化に関するCD3マーカーを用いたフローサイトメトリーによってNK細胞およびCD8+ Tメモリーリンパ球の脾臓集団を測定した。この図には、非突然変異型C57B16マウスのNK集団およびCD8+ Tメモリー集団も含まれる。供試マウスのNK細胞(A)、CD8+ Tリンパ球(B)およびCD8+CD44+部分集団(C)のパーセンテージを示す。総脾細胞に対する細胞のパーセンテージを示す。
【図9C】IL15のα受容体に関する「ノックアウト」マウスにおける種々のプラスミドの効果。IL15のα受容体を欠く4匹のマウスをプラスミドpApo−hIL15とpSushi、phIL15とpSushi、pApoとpApo−hIL15で流体力学的に処置した。動物を5日後に犠牲にし、脾臓を摘出し、分化に関するCD3マーカーを用いたフローサイトメトリーによってNK細胞およびCD8+ Tメモリーリンパ球の脾臓集団を測定した。この図には、非突然変異型C57B16マウスのNK集団およびCD8+ Tメモリー集団も含まれる。供試マウスのNK細胞(A)、CD8+ Tリンパ球(B)およびCD8+CD44+部分集団(C)のパーセンテージを示す。総脾細胞に対する細胞のパーセンテージを示す。
【図10】脾細胞、CD8+ T細胞およびNK1.1細胞の総数の増加。C57B16マウス群をプラスミド:1)pmSushi−mIL15−mApo;2)pApo−hIL15とpSushiの組合せ(pApo−hIL15+pSushi);3)pApo−hIL15;4)phIL15とpSushiの組合せ(phIL15+pSushi);5)phIL15;および6)pApoの流体力学的注射により処置した。6日目に動物を犠牲にし、脾臓を摘出した。A)総脾細胞集団;B)CD8+ Tメモリーリンパ球(CD8+CD3+);およびC)NK細胞(NK1.1+CD3+)のフローサイトメトリー試験を行った。pmSushi−mIL15−mApoを投与したマウスは、他群よりも総脾細胞に対してより多数のCD8+ T細胞を示した。各群動物2〜3匹を用いた代表的な実験の平均および平均標準偏差を示す。データは、一元配置ANOVAとその後の、pmSushi−mIL15−mApo群と、示されたタンパク質をコードするプラスミドを注射した残りの群を比較するボンフェローニ検定により分析した。*p<0.05;**p<0.001;***p<0.0001。
【図11】脾細胞の総数ならびに総脾細胞に対するCD8+ T細胞およびNK細胞のパーセンテージの増加における、IL15のヒトまたはネズミイソ型の比較効果。C57BL/6マウスの群をプラスミド:1)pmIL15;2)phIL15;3)pmIL15とpSushiの組合せ;および4)phIL15とpSushiの組合せの流体力学的注射により処置した。4日後に動物を犠牲にし、脾臓を単離し、総脾細胞(A)、脾細胞の総数に対するCD8 T細胞(B)、および脾細胞の総数に対するNK細胞を数えた(C)。各群動物1〜2匹を用いた代表的な実験の平均および平均標準偏差(適用可能な場合)を示す。データは、クラスカル−ウォリス(Kruskall-Wallis)検定とその後のダンの多重比較検定(Dunn’s multiple comparison test)により分析した。これらの図は、mIL15とhIL15が脾臓における脾細胞、CD8 T細胞およびNK細胞の数を同様に刺激することを示す。
【図12】脾臓(A)および肝臓(B)におけるNK細胞のパーセンテージに対するmSushiとmIL15およびApoAIの融合の効果。C57BL/6マウス群をプラスミド:1)pmSushi−mIL15−mApo(それぞれ1μg/マウス、2.5μg/マウスおよび5μg/マウスの異なる用量で投与);および2)pmSushi−mIL15とpApoの組合せ(双方とも同じ3用量で投与)の流体力学的注射により処置した。4日後に動物を犠牲にし、脾臓(A)および肝臓(B)を単離し、NK細胞(NK1.1+CD3+)をマークした。総ての供試用量で、プラスミドpmSushi−mIL15−mApoを投与したマウス群は他群よりも高いNK細胞パーセンテージを示した。各群動物2〜3匹を用いた代表的な実験の各反復および平均を示す。データは、一元配置ANOVAのより分析した。
【図13】皮下MC38腫瘍モデルにおけるmSushiとmIL15およびApoAIの融合の抗腫瘍効果。C57B16マウスに5×105のMC38細胞を皮下投与し、8日後および19日後にプラスミド:1)pApo;2)pmSushi−mIL15−mApoおよび3)pApo−hIL15とpSushiの組合せ(pApo−hIL15+pSushi)で流体力学的に処置した。腫瘍を2〜3日おきにデジタルカリパスを用いて測定した(mm2)。pmSushi−mIL15−mApoを投与したマウスは、腫瘍増殖の遅延を示すことが見て取れた。各群動物5〜9を用いた代表的な実験の平均および標準偏差を示す。
【発明の具体的説明】
【0017】
本発明者らは、驚くべきことに、IL15受容体α鎖のSushiドメイン(以下IL15αR−sushi)とともにApoAタンパク質と融合されたIL15を含んでなる融合タンパク質をコードする核酸の同時投与が、IL15とIL15αR−sushiを一緒に投与した際に見られるものよりも高いIL15活性をもたらすことを見出した。このような高い活性は、本発明の実施例3に見られるようにより高く、より長いIL15の循環レベルが得られた結果であるだけでなく、CTLL2細胞の増殖誘導能(本発明の実施例4)、脾臓内CD8 Tリンパ球およびCD8 Tメモリー細胞、CD8 T肝内リンパ球および血液CD8Tリンパ球の増殖促進能(本発明の実施例5)ならびに2つの実験腫瘍モデルにおけるより高い抗腫瘍効果(本発明の実施例7)および抗転移効果(本発明の実施例8)の結果でもある。
【0018】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、ApoAとの融合タンパク質の形態でのIL15の投与から得られる相乗効果は、それらの表面でApoA受容体を発現する標的組織において、IL15がこれまでに考えられていたものとは異なる、または補足的な組織に対してその作用を遂行し得るような形でIL15作用を果たす結果であると考えられる。この仮説は、IL15のα受容体の遺伝子を欠失したマウスでも見られる相乗効果に対しても維持される。
【0019】
より驚くべきは、IL15およびIL15αR−sushiと融合したApoA1タンパク質を含んでなる三重融合融合タンパク質をコードし、その発現を可能とする核酸の投与は、IL15をコードする核酸の単独もしくはIL15αR−sushiをコードする別の核酸と組み合わせた投与、またはApoA1とIL15の融合タンパク質をコードする核酸の単独もしくはIL15αR−sushiをコードする別の核酸と組み合わせた投与で得られるものよりもはるかに高いCD8リンパ球およびNK細胞の増殖をもたらすことが認められたことである。
【0020】
本発明の組成物
よって、第一の態様において、本発明は、
(i)以下の群:
(a)ApoAポリペプチド、または該ApoAポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体を含んでなる、ポリペプチド、および
(b)ApoAポリペプチド、または該ApoAポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体をコードする、ポリヌクレオチド
から選択される第一の成分、ならびに
(ii)以下の群:
(a)IL15、またはIL15と少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体、および
(b)IL15、またはIL15と少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体をコードする、ポリヌクレオチド
から選択される第二の成分、ならびに
(iii)以下の群:
(c)IL15受容体α鎖のSushiドメイン、またはIL15受容体α鎖のSushiドメインと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体、および
(d)IL15受容体α鎖のSushiドメイン、またはIL15受容体α鎖のSushiドメインと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体をコードする、ポリヌクレオチド
から選択される第三の成分
を一緒にまたは個別に含んでなる組成物に関する。
【0021】
本発明において「組成物」とは、示された成分、言い換えれば、ポリペプチドApoA、IL15およびIL15受容体α鎖のSushiドメインを含んでなる材料、ならびにその種々の成分の任意の量での組合せから直接的または間接的に得られる他のいずれかの生成物の組成物に関する。当業者ならば、その組成物は単一の処方物として処方されてもよいし、または組合せ製剤の形態で一緒に使用するために組み合わせることができるように各化合物の処方物として個別に提供されてもよいことを認識するであろう。該組成物は、各成分が個別に処方および包装されたパーツキットであってもよい。
【0022】
本明細書において「タンパク質」とは、ポリペプチドと区別無く、種々のアミノ酸がペプチド結合またはジスルフィド架橋によって連結された任意の長さのアミノ酸鎖を意味する。
【0023】
本発明において「ポリヌクレオチド」とは、不定数のモノマーにより形成されるポリマーに関し、ここで、モノマーは、リボヌクレオチドならびにデオキシリボヌクレオチドを含むヌクレオチドである。ポリヌクレオチドは、メチル化により修飾されたモノマーならびに非修飾型モノマーを含む。「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は本発明では区別無く用いられ、mRNA、cDNAおよび組換えポリヌクレオチドを含む。本発明において、ポリヌクレオチドは、天然に見られるポリヌクレオチドに限定されず、非天然ヌクレオチド類似体およびヌクレオチド間結合が見られるポリヌクレオチドも含む。この種の非天然構造の限定されない例としては、糖がリボースとは異なるポリヌクレオチド、ホスホジエステル結合3’−5’および2’−5’が見られるポリヌクレオチド、逆転結合(3’−3’および5’−5’)が見られ、分岐構造を持つポリヌクレオチドが挙げられる。また、本発明のポリヌクレオチドは、ペプチド核酸(PNA)、ロックド(locked)核酸(LNA)、メチルホスホネート、ホスホルアミダート、C1−C6アルキルホスホトリエステル、ホスホロチオエートおよびホスホロジチオエート型のC1−C4アルキルリン酸結合などの非天然ヌクレオチド間結合も含む。いずれにせよ、本発明のポリヌクレオチドは、天然ポリヌクレオチドと同様の方法で標的核酸とハイブリダイズする能力を保持する。
【0024】
本発明の組成物の第一の成分
本発明の第一の成分は、ApoAポリペプチドまたはその機能的に等価な変異体、およびApoAポリペプチドまたはその機能的に等価な変異体をコードする核酸の群から選択される。
【0025】
本明細書において「ApoAポリペプチド」とは、高密度リポタンパク質(HDL)の一部を形成し、肝臓細胞表面の受容体と特異的に相互作用することができ、それによりApoAタンパク質と連結しているこの器官に目的分子を輸送するその能力を保証するApoAファミリーの任意のメンバーに関する。好ましくは、本発明において使用可能なApoA分子は、ApoA−I、ApoA−II、ApoA−III、ApoA−IVおよびApoA−V、またはその機能的に等価な変異体の群から選択される。
【0026】
好ましい実施態様では、本発明において使用されるApoAタンパク質はタンパク質ApoA−Iである。ApoA−Iは、本発明において、高密度リポタンパク質(HDL)の一部を形成する成熟型プレプロApoA−Iタンパク質として理解される。ApoA−Iは分泌シグナル配列を含む前駆体(プレプロApoA−I)として合成され、このシグナル配列が除去されて前駆体が次の段階へ進む。このシグナル配列は18個のアミノ酸、6個のプロペプチド、そしてアミノ酸243個の成熟型タンパク質からなる。成熟型タンパク質としては、ペプチドシグナルを欠き、プロセシングを受けたものを用いるのが好ましい。好ましい実施態様では、ApoA−Iタンパク質はヒト起源であり、そのアミノ酸配列は配列番号1(UniProt受託番号P02647)に示されているものである。別の好ましい実施態様では、タンパク質ApoA−Iはネズミ起源、特にマウスのものであり、そのアミノ酸配列は配列番号2(UniProt受託番号Q00623)に示されているものである。別の好ましい実施態様では、ApoA−1タンパク質はネズミ起源、特にラットのものであり、そのアミノ酸配列は配列番号3(UniProt受託番号P04639)に示されているものである。
【0027】
「ApoA−Iの機能的に等価な変異体」は、肝臓細胞に存在するHDL受容体を形成するいわゆる「スカベンジャー受容体クラスB I型」(SR−BI)と相互作用するそれらの完全な能力を実質的に保持している、上述のApoA−I配列の1以上のアミノ酸の挿入、置換または欠失から得られる総てのポリペプチドを意味すると理解される。HDL受容体と相互作用する能力は、本質的にMonaco et al (EMBO J., 1987, 6:3253-3260)に記載されているように、肝細胞の膜へのApoA−I結合試験か、または肝細胞膜の受容体へのHDLの結合を阻害するApoA−Iもしくはその変異体の能力の測定によって決定される。好ましくは、肝細胞膜に結合するApoA−I変異体の解離定数は少なくとも10−8M、10−7M、10−6M、10−5Mまたは10−4Mである。
【0028】
本発明において意図されるApoA−I変異体は、ApoA−Iポリペプチドと少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、90%または95%の類似性または同一性を示すポリペプチドを含む。2つのポリペプチド間の同一性の程度は、コンピューターに実装されたアルゴリズムおよび当業者に広く知られている方法を用いて決定される。2つのアミノ酸配列間の同一性は好ましくは、BLASTPアルゴリズム(BLAST Manual, Altschul, S. et al., NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894, Altschul, S., et al., J., 1990, Mol. Biol. 215:403-410)を用いて決定される。
【0029】
好ましくは、本発明において使用されるApoA−I変異体は上述のApoA−Iに比べて高い血清半減期を示し、ApoA−Iの場合に見られるものよりも高い血清ApoA−Iレベルに到達させることができる。タンパク質、特に、ApoA−Iの血清半減期を決定する方法は当技術分野で公知であり、とりわけ、Eisenberg, S. et al (J. Lipid Res., 1973, 14:446-458)、Blum et al. (J. Clin. Invest., 1977, 60:795-807)およびGraversen et al (J Cardiovasc Pharmacol., 2008, 51:170-177)に記載されているマークタンパク質による代謝標識に基づく方法の使用が含まれる。高い半減期を示す前記変異体の一例として、例えば、ミラノ株(R173C突然変異を含む)として知られる変異体がある。
【0030】
本発明の第一の成分は、ApoAおよび上述のApoA変異体のうち少なくとも1つをコードする核酸であり得る。よって、ApoAをコードする核酸の場合、それはNCBI受託番号X02162(配列番号4)の配列に相当するヒト起源のもの、NCBI受託番号X64262(配列番号5)の配列に相当するネズミ起源のもの、NCBI受託番号M00001(配列番号6)の配列に相当するラット起源のものであり得る。
【0031】
当業者ならば、本発明の第一の成分を形成する核酸が細胞内で発現され、やがて媒体中に分泌される必要があり、そのため、ApoAまたはその機能的に等価な変異体をコードする配列は5’末端に分泌シグナルをコードする配列を持てばよいことを認識するであろう。本発明において「分泌シグナル配列」という表現は、それらのN末端にその配列を有する総てのタンパク質を細胞の分泌経路へと誘導し得るアミノ酸配列を意味する。本発明において使用するのに好適なシグナル配列としては、とりわけ、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、成長ホルモンGM−CSF、および免疫グロブリン、特に、IgκまたはIgVχのシグナル配列が挙げられる。好ましくは、本発明の成分Aの一部を形成するシグナル配列は、それ自体従前に定義されたようなApoAのシグナル配列である。
【0032】
あるいは、本発明の第一の成分は、上述の配列のいずれかと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を示す核酸であってもよく、ここで、同一性パーセンテージは、GAP、BESTFITまたはFASTA型のアルゴリズム(そのコンピューター実装はthe Wisconsin Genetics Software Package Release 7 (Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.)に見られ、Smith and Waterman (Adv. Appl. Math., 1981, 2:482)、Needleman and Wunsch (J. Mol.. Biol. 1970, 48: 443)またはPearson and Lipman (Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.), 1988, 85:2444)のローカルアルゴリズムを用いる)を用いることで決定される(種々のパラメーターに関してデフォルト値を使用)。
【0033】
あるいは、本発明の組成物の第一の成分は、ApoA、または従前に定義された種々の哺乳類のApoAに相当する天然配列のいずれかと特異的にハイブリダイズし得るその変異体をコードするポリヌクレオチドである。本発明において「標的ポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズし得るポリヌクレオチド」は、厳格な条件でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを意味するものと理解され、この厳格な条件とは、例えばおよそ65℃の温度で、6×SSC、0.5%SDS、5%デンハート溶液および100μg/ml濃度の非特異的変性DNAの溶液、およびイオン強度が等価な他の任意の溶液中、特異的ハイブリダイズを可能とし、その後、例えば0.2%SSCおよび0.1%SDSの溶液、およびイオン強度が等価な他の任意の溶液の存在下での洗浄工程が続く条件を意味するものと理解される。しかしながらやはり、これらの厳格な条件は、当業者により、ハイブリダイズさせる配列の大きさ、GC含量および他のパラメーターに従って適合させることができる。適当なハイブリダイゼーション条件を選択するのに好適な方法は、Sambrook et al., 2001 (Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition, Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)により記載されている。
【0034】
本発明の組成物の第二の成分
本発明の第二の成分は、IL15またはその機能的に等価な変異体、およびIL15またはその機能的に等価な変異体をコードする核酸の群から選択される。
【0035】
本発明において「IL15」または「IL−15」とは、その単離、クローニングおよび配列がGrabstein et al. (US5747024 and Grabstein et al., 1994, Science 246: 965-968)に記載されているサイトカインを意味する。IL15は、天然IL15のアミノ酸配列を有する任意のポリペプチド形態を含む。本発明の組成物および融合タンパク質の一部を形成する、使用可能なIL15の例としては、齧歯類(マウス、ラット、ハムスター)ヒト、霊長類、イヌ、ネコ、ブタ、ウマ、ウシ、ヒツジおよび類似のもののIL15が挙げられる。本発明の組成物および融合タンパク質の一部を形成し得る哺乳類のIL15ポリペプチドとしては、限定されるものではないが、ヒト起源のIL15(そのアミノ酸配列はP40933(配列番号7)で示されるものである);マウスIL15(そのアミノ酸配列はP48346(配列番号8)で示される)、ラットIL15(そのアミノ酸配列はP97604(配列番号9)で示される)、ネコIL15(そのアミノ酸配列はO97687(配列番号10)で示される)およびウシIL15(そのアミノ酸配列はQ28028(配列番号11)で示されるものである)が挙げられる。
【0036】
「IL15の機能的に等価な変異体」は、上述のIL15配列のいずれかの1以上のアミノ酸の挿入、置換または欠失から得られ、かつ、IL15の機能の少なくとも1つを実質的に完全な状態で保持する総てのポリペプチドを意味するものと理解され、ここで、該機能は下記のものから選択される。
【0037】
・IL15の変異体の存在下での末梢血単核細胞集団と抗原ペプチドとのインキュベーションに基づく、例えば、Montes, et al, (Clin. Exp. Immunol., 2005, 142:292-302)により記載されている方法によって測定されるCD8+ T細胞の増殖を促進する能力。
【0038】
・樹状細胞、マクロファージおよび好中球によりトランスで提供された後にNK細胞の活性化を促進する能力。樹状細胞に関するこの能力は、IL15の存在下でCD56+ NK細胞の一部におけるトリチウム化チミジンの組込みを測定することによるか、またはGM−CSFサイトカインのNK細胞分泌を測定することによって決定することができる。双方のIL15機能を決定するための方法はCarson, W. et al. (J. Exp. med., 1994, 180:1395-1403)により記載されている。
【0039】
・Demirci et al. (Cell Mol Immunol. 2004, 1:123-8)により記載されているような、B細胞前駆体におけるFasにより媒介されるアポトーシスを阻害するIL15の能力(TUNELなどのアポトーシスを測定するための標準的技術またはゲル電気泳動および臭化エチジウム染色によるDNA断片の測定を用いて決定することができる)。
【0040】
本発明において意図されるIL15の変異体は、上述の哺乳類のIL15ポリペプチドと少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、90%または95%の類似性または同一性を示すポリペプチドを含む。2つのポリペプチド間の同一性の程度は、コンピューターに実装されたアルゴリズムおよび当業者に広く知られている方法を用いて決定される。2つのアミノ酸配列間の同一性は好ましくは、BLASTPアルゴリズム(BLAST Manual, Altschul, S. et al., NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894, Altschul, S., et al., J., 1990, Mol. Biol. 215:403-410)を用いて決定される。
【0041】
本発明の第二の成分は、天然IL15および上述のIL15の変異体のうち少なくとも1つをコードする核酸であり得る。哺乳類IL15をコードする核酸は核酸リポジトリから回収することができ、限定されるものではないが、その配列が受託番号U14407(ヒト、配列番号12)、U14332(マウス、配列番号13)、U69272(ラット、配列番号14)、AF108148(ネコ、配列番号15)およびU42433(ウシ、配列番号16)により定義されるポリヌクレオチドが挙げられる。
【0042】
前記ポリヌクレオチドは前述の配列のいずれかと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を示すものを含み、同一性パーセンテージは上述のアルゴリズムの1つによって決定される。
【0043】
あるいは、本発明の第二の成分を形成するポリヌクレオチドは、従前に定義されたポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズし得るポリヌクレオチドである。標的配列と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドの能力を決定するための方法は、本発明の第一の成分に関して詳細に記載されている。
【0044】
当業者ならば、本発明の第二の成分を形成する核酸は、IL15または機能的に等価な変異体の媒体中への分泌を可能とするシグナル配列と機能的に結合されて見られることを認識するであろう。本発明において使用するのに好適なシグナル配列には、本発明の第一の成分に関して従前に記載されたものが含まれる。好ましくは、本発明の組成物の第二の成分の一部を形成するシグナル配列は、従前に定義されたIL15自体のシグナル配列または免疫グロブリンの1つ、特に、IgκまたはIgVχのシグナル配列である。
【0045】
本発明の組成物の第三の成分
本発明の第三の成分は、IL15受容体α鎖のSushiドメインまたはその機能的に等価な変異体の群から選択される。
【0046】
本発明において「IL15受容体α鎖のSushiドメイン」(以下、IL15Rα−sushi)という表現は、IL15受容体α鎖の細胞外領域に見られ、IL15受容体α鎖の遺伝子の第一エキソンに見られる最初のシステインで始まり、IL15受容体α鎖の遺伝子のエキソン4によりコードされるシステインで終わる配列に相当するアミノ酸配列を意味する。あるいは、Sushiドメインは、シグナル配列の後のIL15受容体α鎖の最初のシステイン残基で始まり、前述の配列のシグナル配列の後の4番目のシステイン残基で終わる配列と定義される。本発明において使用するのに好適なSushiドメインは、UniProt受託番号NP_002180の配列に相当するヒト起源IL15受容体α鎖に由来するSushiドメイン(そのSushiドメインは配列:
CPPPMSVE HADIWVKSYS LYSRERYICN SGFKRKAGTS SLTECVLNKA TNVAHWTTPS LKC(配列番号17)
に相当する)およびSwiss−Prot受託番号Q60819の配列に相当するマウスIL15受容体α鎖に由来するSushiドメイン(そのSushiドメインは配列:
CPPPV SIEHADIRVK NYSVNSRERY VCNSGFKRKA GTSTLIECVI NKNTNVAHWT TPSLKC(配列番号18)
に相当する)を含む。
【0047】
「IL15受容体α鎖のSushiドメインの機能的に等価な変異体」は、上述のヒト起源またはネズミSushiドメイン配列のいずれかの配列の1以上のアミノ酸の挿入、置換または欠失から得られ、かつ、IL15に対する実質的に完全な結合能を保持し、Mortier et al. (J. Biol. Chem., 2006, 281:1612-1619)により記載されているように、低親和性IL15受容体を発現する細胞(例えば、Mo−7eまたは32Dβ系統由来の細胞)におけるIL15の増殖効果を高める総てのポリペプチドを意味するものと理解される。
【0048】
本発明において意図されるIL15Rα−sushiの変異体は、上述のポリペプチドと少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、90%または95%の類似性または同一性を示すポリペプチドを含む。2つのポリペプチド間の同一性の程度は、コンピューターに実装されたアルゴリズムおよび当業者に広く知られている方法を用いて決定される。2つのアミノ酸配列間の同一性は好ましくは、BLASTPアルゴリズム(BLAST Manual, Altschul, S. et al., NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894, Altschul, S., et al., J., 1990, Mol. Biol. 215:403-410)を用いて決定される。
【0049】
本発明の第三の成分は、上述のような少なくとも1つのIL15受容体α鎖のSushiドメイン(天然)およびその変異体をコードする核酸であり得る。哺乳類IL15Rα−sushiをコードする核酸は、核酸レポジトリに見られる対応するα鎖の配列から回収することができ、限定されるものではないが、ヒトIL15受容体α鎖(NCBI受託番号:U31628、配列番号19)およびマウスIL15受容体α鎖(NCBI受託番号:U22339、配列番号20)のIL15Rα−sushiをコードする配列が含まれる。
【0050】
前記ポリヌクレオチドは、上述の配列のいずれかと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を示すものを含み、同一性パーセンテージは上述のアルゴリズムのいずれかを用いて決定される。
【0051】
あるいは、本発明の第三の成分を形成するポリヌクレオチドは、従前に定義されたポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズし得るポリヌクレオチドである。標的配列と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドの能力を決定する方法は、本発明の第一の成分に関して詳細に記載されている。
【0052】
当業者ならば、本発明の第二の成分を形成する核酸がSushiドメインまたはその機能的に等価な変異体の媒体中への分泌を可能とするシグナル配列と機能的に結合されて見られることを認識するであろう。本発明において使用するのに好適なシグナル配列には、本発明の組成物の第一の成分に関して従前に記載されたものが含まれる。好ましくは、本発明の組成物の第二の成分の一部を形成するシグナル配列は、従前に定義されたIL15自体のシグナル配列または免疫グロブリンの1つ、特に、IgκまたはIgVχのシグナル配列である。
【0053】
好ましい実施態様では、本発明の組成物の第三の成分は、配列番号21として定義される配列を含んでなるまたはからなり、ヒトIL15RA受容体のSushiドメインと、その前にその固有のシグナルペプチド(配列番号22)を含んでなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
【0054】
本発明の組成物は、種々の種に由来するポリペプチドまたはポリヌクレオチドにより形成され得る。しかしながら好ましい実施態様では、これら3つの成分は、同じ動物種に由来する。好ましい実施態様では、3つの成分はヒト起源のものである。別の好ましい実施態様では、3つの成分はネズミ起源のものである。
【0055】
第一の成分および第二の成分が単一分子を形成する組成物
本発明の著者らは、本発明の組成物の第一の成分と第二の成分が単一分子の一部を形成する場合にIL15の抗腫瘍活性に対する相乗効果が得られることを見出した。この場合、本発明の組成物は第一の成分(上記で定義される第一の成分と第二の成分を含んでなることになる)および第二の成分(上記で定義される第三の成分に相当する)により形成されるバイナリー組成物である。当業者ならば、組成物の第一の成分および第二の成分がポリペプチドであれば、該単一分子は、(i)ApoAポリペプチドまたはその機能的に等価な変異体と(ii)IL15またはその機能的に等価な変異体とを含んでなる融合タンパク質であることを認識するであろう。
【0056】
本発明において「融合タンパク質」とは、異なるまたは異種のタンパク質に由来する2以上の領域を含んでなるポリペプチドを意味する。
【0057】
あるいは、組成物の第一の成分および第二の成分が双方ともポリヌクレオチドである場合、該単一分子は、(i)ApoAポリペプチドまたはその機能的に等価な変異体を含んでなるポリペプチドと、(ii)IL15またはその機能的に等価な変異体を含んでなる融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドである。
【0058】
この場合、第一の成分および第二の成分がペプチド性のものである際には、本発明は、第一の成分が第二の成分に対してN末端にある組成物、および第一の成分が第二の成分に対してC末端にある組成物を意図する。
【0059】
第一の成分および第二の成分がポリヌクレオチド性である場合、本発明は、第一の成分が第二の成分に対して5’位にある組成物、および第一の成分が第二の成分に対して3’位にある組成物を意図する。
【0060】
いずれの場合でも、第一の成分と第二の成分は直接結合させることができ、言い換えれば、第一の成分のC末端を第二の成分のN末端と結合させるか、または第二の成分のC末端を第一の成分のN末端と結合させるか、または第一の成分の3’末端を第二の成分の5’末端と結合させることができ、および第二の成分の3’末端が第一の成分の5’末端と結合されている組成物。
【0061】
あるいは、別の態様において、本発明は、第一の成分および第二の成分の融合がペプチドリンカーを介して(第一の成分および第二の成分がポリペプチド性である場合)またはペプチドリンカーをコードする配列を介して(第一の成分および第二の成分がポリヌクレオチド性である場合)行われる組成物を意図する。
【0062】
本発明において「ペプチドリンカー」、「リンカー」、「コネクター」、「スペーサー」またはその文法的に等価な表現は、2つの分子を接続し、多くの場合、接続された分子に機能的構成を獲得させる分子を意味する。リンカーペプチドは好ましくは、少なくとも2個のアミノ酸、少なくとも3個のアミノ酸、少なくとも5個のアミノ酸、少なくとも10個のアミノ酸、少なくとも15個のアミノ酸、少なくとも20個のアミノ酸、少なくとも30個のアミノ酸、少なくとも40個のアミノ酸、少なくとも50個のアミノ酸、少なくとも60個のアミノ酸、少なくとも70個のアミノ酸、少なくとも80個のアミノ酸、少なくとも90個のアミノ酸またはおよそ100個のアミノ酸を含んでなる。
【0063】
本発明において好適なリンカーとしては、
・グリシン、セリン、アラニンおよびトレオニンからなる群から選択される2以上のアミノ酸を含んでなるリンカー、例えば、限定されるものではないが、Muller, K.M. et al. (Methods. Enzimology, 2000, 328: 261-281)により記載されている配列SGGTSGSTSGTGST(配列番号23)、AGSSTGSSTGPGSTT(配列番号24)、GGSGGAP(配列番号25)およびGGGVEGGG(配列番号26)のリンカー;
・テトラネクチンのβシートを形成するテトラネクチンの残基53〜56、およびテトラネクチンのターンを形成する残基57〜59に基づくリンカー(Nielsen, B.B. et al., FEBS Lett. 412: 388-396, 1997)、例えば、配列GTKVHMK(配列番号27)のリンカー;
・アミノ酸1992〜2102に相当するヒトフィブロネクチンのリンカーシート3の部分配列、例えば、アミノ酸番号2037〜2049に相当するリンカーPGTSGQQPSVGQQ(配列番号28)に基づくリンカー(中でもアミノ酸2038〜2042残基に相当する部分配列断片GTSGQ(配列番号29)がより好ましい);
・ネズミIgG3の上流ヒンジ領域のアミノ酸10残基の配列に基づくリンカー、例えば、コイルドヘリックスの手段による二量体抗体の作製に用いられている配列PKPSTPPGSS(配列番号30)のリンカー(Pack P. and Pluckthun, A., 1992, Biochemistry 31:1579-1584);
・配列APAETKAEPMT(配列番号31)のリンカーペプチド;
・配列GGSGGGGSGGGSGGGGSLQ(配列番号32)のリンカーペプチド;
・配列GAPのリンカーペプチド
が挙げられる。
【0064】
あるいは、本発明の結合体の2成分は、その配列がプロテアーゼの切断標的を含み、それにより、成分(ii)からのApoA−Iの分離を可能とするペプチドによって接続されていてもよい。本発明のポリペプチドに組み込むのに好適なプロテアーゼ切断部位としては、エンテロキナーゼ(切断部位DDDDK配列番号33)、Xa因子(切断部位IEDGR、配列番号34)、トロンビン(切断部位LVPRGS、配列番号35)、TEVプロテアーゼ(切断部位ENLYFQG、配列番号36)、PreScisssionプロテアーゼ(切断部位LEVLFQGP、配列番号37)、インテインおよび類似のものがあげられる。好ましい実施態様では、切断部位は、腫瘍組織、炎症組織または肝臓(結合体がひと度肝臓に達するとApoAと成分(ii)の分離が起こる形)で発現されるプロテアーゼの切断部位である。好ましい実施態様では、リンカーはマトリックスメタロプロテイナーゼ9認識部位(切断部位LFPTS、配列番号38)を含む。
【0065】
本発明を、第一の成分と第二の成分の融合から得られる成分(ApoAとIL15との融合タンパク質)および第三の成分(IL15受容体α鎖のSushiドメイン)の双方が核酸の形態で用いられる組成物を用いて例示したが、本発明は両成分が核酸である組成物に限定されず、別法として第一の成分および/または第二の成分がポリペプチドである組成物も意図する。よって、本発明は、
・ApoAおよびIL15により形成される融合タンパク質を含んでなるポリペプチドと、IL15受容体α鎖のSushiドメインを含んでなるポリペプチド;
・ApoAおよびIL15により形成される融合タンパク質を含んでなるポリペプチドと、IL15受容体α鎖のSushiドメインを含んでなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
・ApoAおよびIL15により形成される融合タンパク質を含んでなるポリペプチドとIL15受容体α鎖のSushiドメインを含んでなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
・ApoAおよびIL15により形成される融合タンパク質を含んでなるポリペプチドとIL15受容体α鎖のSushiドメインを含んでなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチド
により形成される組成物を意図する。
【0066】
本発明の組成物の一部を形成する成分間の比率は、各特定の場合に用いられる第一の成分および第二の成分の誘導剤ならびに必要とされる使用によって異なる。よって、本発明は、2成分間の量の比率が50:1〜1:50の間、特に、20:1〜1:20の間、1:10〜10:1の間、または5:1〜1:5の間の範囲であり得る組成物を意図する。
【0067】
第一の成分および第二の成分が単一分子を形成する組成物の場合、単一分子の一部を形成する成分は同じ種に由来するのが好ましいが、各成分は異なる種に由来してもよい。よって、好ましい実施態様では、ApoAまたはその機能的に等価な変異体はヒト起源のものであり、IL15またはその機能的に等価な変異体はヒト起源のものである。別の好ましい実施態様では、ApoAまたはその機能的に等価な変異体はネズミ起源のものであり、IL15またはその機能的に等価な変異体はネズミ起源のものである。
【0068】
好ましい実施態様では、組成物の第一の成分を形成する単一分子は、GAP配列を示すリンカーにより隔てられているヒト起源ApoAIポリペプチドとヒト起源IL15により形成される。該融合物をコードするポリヌクレオチドは、本発明において配列番号39として識別される配列を示す。
【0069】
別の好ましい実施態様では、組成物の第一の成分を形成する単一分子は、GAP配列を示すリンカーにより隔てられているネズミ起源ApoAIポリペプチドとヒト起源IL15により形成される。該融合物をコードするポリヌクレオチドは、本発明において配列番号40として識別される配列を示す。
【0070】
別の好ましい実施態様では、組成物の第一の成分を形成する単一分子は、GAP配列を示すリンカーにより隔てられているネズミ起源ApoAIポリペプチドとネズミ起源IL15により形成される。該融合物をコードするポリヌクレオチドは、本発明において配列番号41として識別される配列を示す。
【0071】
IL15受容体α鎖のSushiドメインまたはその機能的に等価な変異体を含んでなるポリペプチドは、ヒト起源またはネズミ起源のものであり得る。しかしながらやはり、単一分子を形成する成分が双方ともヒト起源であれば、IL15受容体α鎖のSushiドメインまたはその機能的に等価な変異体もヒト起源であるのが好ましい。あるいは、単一分子を形成する成分が双方ともネズミ起源であれば、IL15受容体α鎖のSushiドメインまたはその機能的に等価な変異体もネズミ起源であるのが好ましい。
【0072】
別の態様において、本発明は、ApoAまたはその機能的に等価な変異体とIL15またはその機能的に等価な変異体を含んでなる融合タンパク質を意図する。「ApoA」、「IL15」、「ApoAの機能的に等価な変異体」、「IL15の機能的に等価な変異体」は上記で詳細に説明したが、融合タンパク質の場合にも本質的に同様に用いられる。
【0073】
融合タンパク質は、IL−15のN末端にポリペプチドApoAを示してもよいし、またはApoAのN末端にポリペプチドIL−15を示してもよい。同様に、両成分は直接連結されていてもリンカーにより連結されていてもよく、このリンカーは本発明に記載されているいずれのリンカーであってもよい。また、これらの成分は、本発明が、ヒト起源ApoAとIL15の融合物、ネズミ起源ApoAとIL15の融合物、およびApoAがヒト起源であってIL15がネズミ起源である場合のApoAとIL15の融合物、ApoAがネズミ起源であってIL15がヒト起源である場合のApoAとIL15の融合物を意図するように、ヒトまたはネズミ起源のものであってよい。
【0074】
本発明の好ましい実施態様では、ApoAとIL15の融合タンパク質は、配列番号39、配列番号40および配列番号41の配列を有するポリペプチドに相当する。
【0075】
本発明の融合タンパク質
別の態様において、本発明は、
(i)ApoAポリペプチド、または該ApoAポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体により形成される、領域A、
(ii)IL15、またはIL15と少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体により形成される、領域B、および
(iii)IL15受容体α鎖のSushiドメイン、またはIL15受容体α鎖のSushiドメインと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体により形成される、領域C
を含んでなる融合タンパク質に関する。
【0076】
該融合タンパク質の領域Aは本発明の組成物の第一の成分と本質的に同じであり、このことはそれが上記で詳細に記載されていることを意味する。
【0077】
該融合タンパク質の領域Bは本発明の組成物の第二の成分と本質的に同じであり、このことはそれが上記で詳細に記載されていることを意味する。
【0078】
該融合タンパク質の領域Cは本発明の組成物の第三の成分と本質的に同じであり、このことはそれが上記で詳細に記載されていることを意味する。
【0079】
当業者ならば、本発明の融合タンパク質が領域A、BおよびCの種々の配置を示し得ることを認識するであろう。よって、本発明は、
・領域AがN末端にあり、領域Bが中央にあり、領域CがC末端にある融合タンパク質、
・領域AがN末端にあり、領域Cが中央にあり、領域BがC末端にある融合タンパク質、
・領域BがN末端にあり、領域Aが中央にあり、領域CがC末端にある融合タンパク質、
・領域BがN末端にあり、領域Cが中央にあり、領域AがC末端にある融合タンパク質、
・領域CがN末端にあり、領域Aが中央にあり、領域BがC末端にある融合タンパク質、および
・領域CがN末端にあり、領域Bが中央にあり、領域AがC末端にある融合タンパク質
を意図する。
【0080】
また、領域A、Bおよび/またはCは直接結合されていてもよく、言い換えれば、ある領域のC末端アミノ酸が別の領域のN末端アミノ酸にペプチド結合によって連結されている。あるいは、種々の領域がペプチドリンカーによって連結されている。本発明の融合タンパク質に好適なリンカーは本発明の組成物で用いられるものと本質的に同じであり、上記に詳細に記載されている。当業者ならば、これら3つの領域のうち2つだけがリンカーにより連結されているか、3つの領域がリンカーにより連結されているかによって1または2つのペプチドリンカーを含み得ることを認識するであろう。
【0081】
好ましい実施態様では、融合タンパク質はC−B−A型の配置を示し、言い換えれば、N末端からC末端方向に、IL15RαのSushiドメイン領域C)、IL15(領域B)およびApoAI(領域A)を含んでなる。いっそうより好ましい実施態様では、領域CとBはGGSGGGGSGGGSGGGGSLQ型リンカー(配列番号32)により隔てられている。別の実施態様では、領域BとAはGAP型リンカーにより隔てられている。いっそうより好ましい実施態様では、領域CとBはGGSGGGGSGGGSGGGGSLQ型リンカー(配列番号32)により隔てられ、領域BとAはGAP型リンカーにより隔てられている。
【0082】
本発明の融合タンパク質は領域A、BおよびCがネズミ起源のものである融合タンパク質で例示されるが、当業者ならば、本発明が上述の領域の種々の変異体の中でも、領域A、BおよびCのそれぞれが異なる起源のものである融合タンパク質を意図することを認識するであろう。
【0083】
よって、好ましい実施態様では、該融合タンパク質は、ヒト起源またはネズミ起源の領域A、ヒト起源またはネズミ起源の領域B、ヒト起源またはネズミ起源の領域Cを含んでなる。いっそうより好ましい実施態様では、これらの3つの領域は同じ生物体に由来する。よって、いっそうより好ましい実施態様では、領域A、BおよびCはネズミ起源のものである。別の好ましい実施態様では、領域A、BおよびCはヒト起源のものである。
【0084】
好ましい実施態様では、該融合タンパク質は、3つの成分がヒト起源のものであり、かつ、領域CとBならびに領域BとAの双方がペプチドリンカーにより接続されているC−B−A型の配置を示す。好ましい実施態様では、該融合タンパク質は、N末端からC末端方向に、ヒトIL15RαのSushiドメイン(領域C)、ヒトIL15(領域B)およびヒトApoAI(領域A)を含んでなる。いっそうより好ましい実施態様では、領域CとBはGGSGGGGSGGGSGGGGSLQ型リンカーにより隔てられている。別の実施態様では、領域BとAはGAP型リンカーにより隔てられている。いっそうより好ましい実施態様では、領域CとBはGGSGGGGSGGGSGGGGSLQ型リンカーにより隔てられ、領域BとAはGAP型リンカーにより隔てられている。好ましい実施態様では、該融合タンパク質は配列番号42で定義される配列を含んでなる。
【0085】
別の好ましい実施態様では、該融合タンパク質は、N末端からC末端方向に、ネズミIL15RαのSushiドメイン(領域C)、ネズミIL15(領域B)およびネズミApoAI(領域A)を含んでなる。いっそうより好ましい実施態様では、領域CとBはGGSGGGGSGGGSGGGGSLQ型リンカーにより隔てられている。別の実施態様では、領域BとAはGAP型リンカーにより隔てられている。いっそうより好ましい実施態様では、領域CとBはGGSGGGGSGGGSGGGGSLQ型リンカーにより隔てられ、領域BとAはGAP型リンカーにより隔てられている。好ましい実施態様では、該融合タンパク質は配列番号43で定義される配列を含んでなる。
【0086】
本発明のポリヌクレオチド、遺伝子構築物、ベクターおよび宿主細胞
別の態様において、本発明は、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを意図する。本発明の融合タンパク質が細胞外媒体からその機能を遂行することを考えれば、ポリヌクレオチドは、融合タンパク質の分泌経路への接近および融合タンパク質の媒体中への分泌を可能とするシグナル配列とともに本発明の融合タンパク質をコードすることが便利である。該融合タンパク質とともに用いるのに好適なシグナル配列としては、融合タンパク質成分のいずれかのシグナル配列(ApoAのシグナル配列、IL15のシグナル配列、もしくはIL15受容体α鎖のシグナル配列)または本発明の組成物の第一の成分に関して上述されたいずれかのシグナル配列、言い換えれば、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、成長ホルモン、GM−CSFおよび免疫グロブリンの好適なシグナル配列、特に、IgκまたはIgVχのシグナル配列の双方が含まれる。
【0087】
好ましい実施態様では、本発明のポリヌクレオチドは、ヒト起源Sushiドメイン、ヒト起源IL15およびヒト起源ApoA1を含んでなる融合タンパク質または結合体をコードする、配列番号44で定義される配列を含んでなり、ここで、このSushiドメインとIL15は配列GGSGGGGSGGGSGGGGSLQのリンカーにより隔てられ、IL15とApoA1は配列GAPのリンカーにより隔てられ、この融合物の前にヒト起源IL−15受容体α鎖のシグナル配列がある。
【0088】
好ましい実施態様では、本発明のポリヌクレオチドは、ネズミ起源Sushiドメイン、ネズミ起源IL15およびネズミ起源ApoA1を含んでなる融合タンパク質または結合体をコードする配列番号45として示される配列を含んでなり、ここで、SushiドメインとIL15は配列GGSGGGGSGGGSGGGGSLQのリンカーにより隔てられ、IL15とApoA1は配列GAPのリンカーにより隔てられ、この融合物の前にネズミ起源IL−15受容体α鎖のシグナル配列がある。
【0089】
本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、発現の調節領域と機能的に連結し、それにより遺伝子構築物を作出することができる。よって、別の態様において、本発明は本発明のポリヌクレオチドを含んでなる遺伝子構築物に関する。好ましくは、該構築物は、本発明のポリヌクレオチドの発現を調節する配列の操作的制御下に置かれた本発明のポリヌクレオチドを含んでなる。当業者ならば、本発明のポリヌクレオチドが標的組織の核に接近し、核内で転写および翻訳されて生物学的に活性な融合タンパク質を生じなければならないことを認識するであろう。
【0090】
基本的に、いずれのプロモーターも、そのプロモーターがポリヌクレオチドを発現させる細胞に適合した条件で、本発明の遺伝子構築物に使用することができる。よって、本発明を実施するのに好適なプロモーターとしては、限定されるものではないが、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、SV40、CMV、鳥類肉腫ウイルス、B型肝炎ウイルスなどの真核生物ウイルスのゲノムに由来するもの、メタロチオネイン遺伝子プロモーター、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子プロモーター、レトロウイルスのLTR領域、免疫グロブリン遺伝子プロモーター、アクチン遺伝子プロモーター、EF−1α遺伝子プロモーターといった構成プロモーター、ならびにテトラサイクリン系、NFκB/紫外線系、Cre/Lox系および熱ショック遺伝子プロモーターといった、タンパク質の発現が分子または外因性シグナルの付加に依存する誘導プロモーター、WO/2006/135436に記載されているRNAポリメラーゼIIの調節可能なプロモーターならびに特異的組織プロモーターが挙げられる。
【0091】
本発明のポリヌクレオチドまたはそれらを含んでなる遺伝子構築物はベクターの一部を形成し得る。よって、別の態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物を含んでなるベクターに関する。当業者ならば、このようなベクターは、結合体を精製するのに好適な種々の異種生物において好適なポリヌクレオチドもしくは遺伝子構築物、または発現ベクターの増幅および取得に好適なクローニングベクターであり得るので、使用可能なベクターのタイプに関して制限はないことを認識するであろう。よって、本発明において好適なベクターとしては、原核生物の発現ベクター(pUC18、pUC19、Bluescriptおよびその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColEI、pCRI、RP4、ファージおよび「シャトル」ベクター(pSA3およびpAT28など)など)、酵母発現ベクター(2−micraプラスミド型ベクター、組込型プラスミド、YEPベクター、動原体プラスミドおよび類似のもの、昆虫細胞の発現ベクター(pAC系およびpVL系ベクターなど)、植物の発現ベクター(pIBI系、pEarleyGate系、pAVA系、pCAMBIA系、pGSA系、pGWB系、pMDC系、pMY系、pORE系および類似のもののベクターなど)、ならびにpSilencer 4.1−CMV(Ambion)、pcDNA3、pcDNA3.1/hyg pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEFI/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER−HCMV、pUB6/V5−His、pVAXI、pZeoSV2、pCI、pSVLおよびpKSV−10、pBPV−1、pML2dおよびpTDTIなどの非ウイルスベクターの他、ウイルスベクター(アデノウイルス、アデノウイルス随伴ウイルスならびにレトロウイルスおよびレンチウイルス)に十分基づく優れた真核細胞における発現ベクターが挙げられる。
【0092】
本発明のベクターは前記ベクターによる形質転換、トランスフェクションまたは感染に感受性のある細胞を形質転換、トランスフェクトまたは感染させるために使用可能である。該細胞は原核生物であっても真核細胞であってもよい。例として、該DNA配列が導入されるベクターは、宿主細胞に導入された際に、その細胞のゲノムに組み込まれ、それが組み込まれている染色体(染色体群)と一緒に複製するプラスミドまたはベクターであり得る。該ベクターは当業者に公知の従来法(Sambrook et al., 2001, 前掲)によって得ることができる。
【0093】
よって、別の態様において、本発明は、本発明により提供された構築物またはベクターでその細胞を形質転換、トランスフェクトまたは感染可能であったポリヌクレオチド、遺伝子構築物またはベクターを含んでなる細胞に関する。形質転換細胞、トランスフェクト細胞または感染細胞は当業者に公知の従来法(Sambrook et al., 2001, 前掲)によって得ることができる。特定の実施態様では、該宿主細胞は適当なベクターでトランスフェクトされた、または適当なベクターに感染させた動物細胞である。
【0094】
本発明の結合体の発現に好適な宿主細胞としては、限定されるものではないが、哺乳類、植物、昆虫、真菌および細菌の細胞が挙げられる。細菌細胞としては、限定されるものではないが、バチルス属、ストレプトミセス属およびブドウ状球菌属の種などのグラム陽性細菌の細胞、ならびにエシェリキア属およびシュードモナス属の細胞などのグラム陰性菌の細胞が挙げられる。真菌細胞としては、好ましくは、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)およびハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)などの酵母細胞が挙げられる。昆虫細胞としては、限定されるものではないが、ショウジョウバエおよびSf9細胞のものが挙げられる。植物細胞としては、とりわけ、穀類、薬用植物または観賞植物または球根などの作物由来の細胞が挙げられる。本発明に好適な哺乳類細胞としては、上皮細胞系統(ブタなど)、骨肉腫細胞系統(ヒトなど)、神経芽腫細胞系統(ヒトなど)、上皮癌(ヒトなど)、グリア細胞(ネズミなど)、肝臓細胞系統(サルなど)CHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣)、COS細胞、BHK細胞、HeLa細胞、911細胞、AT1080細胞、A549細胞、293細胞またはPER.C6細胞、ヒトECC系NTERA−2細胞、mESC系のD3細胞、ヒト胚幹細胞(HS293およびBGV01、SHEF1、SHEF2およびHS181など)、NIH3T3細胞、293T細胞、REH細胞およびMCF−7細胞、およびhMSC細胞が挙げられる。
【0095】
本発明のin vitro法
抗原感作Tリンパ球の増殖を促進するIL15の能力はすでに記載されている。例えば、単離されたリンパ球の集団を同定された抗原に事前に曝したものをIL15と接触させるとリンパ球の増殖が高まることが実証されている。この大量増殖されたリンパ球集団を養子免疫療法に用い、それにより、これを次にその最初の集団を得た患者に再投与することができる。従って、別の態様において、本発明は、事前に前記抗原に曝されたリンパ球の集団を本発明の組成物、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の遺伝子構築物、または本発明の宿主細胞と接触させることを含む、抗原特異的Tリンパ球の大量増殖を促進するin vitro法に関する。
【0096】
「大量増殖」とは、本発明では、増殖と区別して用いられ、細胞分裂または細胞成長として理解されるべきである。大量増殖は、Transplantation (1999) 67: 605-613に記載されている方法などの広く知られている方法を用いて測定することができる。
【0097】
本発明において「抗原特異的Tリンパ球」という表現は、特定の抗原を認識することができるリンパ球集団を意味する。一般に、リンパ球は該抗原に曝された患者から単離される。あるいは、抗原は米国特許第6828150号または同第6787154号に記載されているような人工抗原提示系においてリンパ球集団と接触させてもよい。
【0098】
本明細書において「抗原」とは、その抗原に不寛容である被験体において免疫応答を誘発し得る任意の物質を意味する。抗原は被験体自身に由来するものであっても(この場合、それは自己抗原である)、または同種抗原、言い換えれば、同じ種の個体から得られた抗原であってもよい。あるいは、抗原は異種抗原、言い換えれば、異なる種の個体に由来する抗原であってもよい。
【0099】
本発明の方法において使用可能なリンパ球としては、限定されるものではないが、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、Tヘルパー細胞、リンホカイン活性化細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TILS)、NK細胞、ナイーブ細胞、メモリー細胞、γδT細胞、NKT細胞ならびに様々な量の前述の1以上の細胞を含んでなる細胞集団が挙げられる。好ましい実施態様では、リンパ球はCTLである。次に本発明の方法を用いてin vitroで大量増殖を行うためのCTLを得るのに好適な方法は当業者に広く知られ、限定されるものではないが、末梢血、臍帯血、リンパ球含有組織からの単離が挙げられる。好ましい実施態様では、リンパ球は特定の疾患を有する患者のリンパ節からのドレナージにより単離される。
【0100】
リンパ球が単離されたら、それらをリンパ球が大量増殖を行うのに好適な条件で本発明の組成物、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の遺伝子構築物または本発明の宿主細胞と接触させる。抗原特異的CTLの大量増殖のための一般的条件は、周知の方法[例えば、Carter J. et al., Immunology, 57 (1), 123-129, (1996)]に従って確立することができ、当業者により慣例的に至適化することができる。一般に、リンパ球と本発明の組成物、融合タンパク質、ポリヌクレオチド、ベクター、遺伝子築物または宿主細胞との接触は、該細胞に好適な培地でリンパ球を培養する手段によって行われる。該細胞は従来の条件下、最小基本培地またはRPMI 1640培地を含む、リンパ球の成長に好適な培地中で培養することができる。細胞成長を促進するために、血清、例えば、ウシ胎仔血清またはヒト血清および抗生物質、例えば、ペニシリン、ストレプトマイシンをはじめとする必要な増殖因子および生存因子を添加してもよい。リンパ球は、成長を助けるのに必要な条件、例えば約37℃の好適な温度および例えば空気+5%CO2の雰囲気で維持する。
【0101】
好ましい実施態様では、リンパ球は、in vitroでそれらの活性化を促進するために本発明の化合物を用いて刺激する前に、それらのリンパ球をそれらが特異的な抗原と接触させることによって処理することができる。これは免疫抑制物質を産生する腫瘍を有する患者の場合に特に必要である。これを達成するには、リンパ球の培養物を適当な抗原で刺激することが必要である。一般に、この抗原は、T細胞においてTCR/CD3複合体を介してシグナルが誘導される形でT細胞に提示される。好ましくは、抗原は抗原提示細胞の手段によってT細胞に提示され得る。
【0102】
本発明において「抗原提示細胞」という表現は、抗原をTリンパ球に提示する手段によって免疫応答の創出に寄与する細胞を意味する。抗原提示細胞としては、樹状細胞、単核食細胞、Bリンパ球またはランゲルハンス細胞を含む。抗原提示細胞は例えば骨髄、血液、胸腺、表皮、肝臓または胎児肝臓から単離することができる。
【0103】
抗原が腫瘍抗原である場合、自己腫瘍および/または組換え腫瘍抗原の抽出物を使用することができる。病原体由来の抗原である場合には、大量増殖前のリンパ球の活性化は、病原体感染細胞、例えば病原体の抗原を提示するウイルスを用いて行うことができる。
【0104】
本発明の抗原特異的CTL大量増殖のための方法では、本発明の組成物、融合タンパク質による細胞の処置は抗CD3抗体、好ましくは、ヒトモノクローナル抗CD3抗体、より好ましくはOKT3の存在下で行うのが好ましい。大量増殖過程の抗CD3抗体の濃度は特に限定されず、例えば、0.001〜100mg/mL、より好ましくは、0.01〜100mg/mLである。それに加えて、またはその代わりに、細胞を抗CD28抗体、より好ましくはヒトモノクローナル抗CD28抗体と同時培養してもよい。それに加えて、またはその代わりに、細胞をレクチンなどのリンパ球刺激因子と同じ培養することもできる。また、これらの成分の1以上を固相に固定化することもできる。
【0105】
また、本発明の抗原特異的CTLの大量増殖法では、状況に応じて細胞をフィーダー細胞と同時培養することもできる。基本的に、フィーダー細胞が本発明のタンパク質もしくは組成物と、またはCTL増殖を促進する能力において前段落に記載した薬剤と共働する条件で使用することができるフィーダー細胞の種類に関して制限はない。好ましくは、好適なフィーダー細胞としては、限定されるものではないが、末梢血単核細胞(PBMC)および自己または非自己EBV−B細胞が挙げられる。通常、好ましくは、X線またはマイトマイシンなどの細胞傷害性薬剤で処置することによってそれらの増殖能を事前に消失させたフィーダー細胞が処理される。
【0106】
本発明の方法に従って得られたリンパ球集団の細胞傷害活性は周知の方法を用いて測定することができる。例えば、マークされた標的細胞の溶解を誘発するリンパ球の能力を測定すること、およびマークされた物質の放出を測定することが可能である。あるいは、細胞傷害活性は、リンパ球または標的細胞により産生されるサイトカイン(例えば、GM−CSFおよびIFN−γ)のレベルを特定することによって測定することができる。あるいは、細胞傷害活性は、リンパ球を、第一の蛍光分子でマークされた細胞傷害性リンパ球の特異的抗体、および抗原ペプチドと第二の蛍光分子でマークされた主要組織適合性複合体により形成される複合体と接触させた後、両分子でマークされた細胞をフローサイトメトリーの手段によって検出することにより測定することができる。
【0107】
本発明の方法に従って大量培養されるリンパ球集団は、養子免疫療法のために、言い換えれば、特異的抗原に対してより高い免疫応答を必要とする被験体に再投与するために特に有用である。好ましくは、Tリンパ球は自己に使用され、言い換えれば、そのTリンパ球が最初に抽出された被験体に再投与される。
【0108】
本発明の医薬組成物
本発明の組成物、ポリヌクレオチドおよび融合タンパク質は、IL15の長期投与を必要とする疾患を治療するのに有用である。よって、別の態様において、本発明は、治療上有効な量の本発明による組成物、融合タンパク質、ポリヌクレオチド、遺伝子構築物、ベクターまたは宿主細胞と薬学上許容される賦形剤またはビヒクルとを含んでなる医薬製剤に関する。
【0109】
本発明において用いるのに好適な賦形剤としては、糖類、デンプン類、セルロース類、ガム類およびタンパク質が挙げられる。好ましい実施態様では、本発明の医薬組成物は、固体(例えば、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、顆粒剤、坐剤、再構成して液体形とすることができる結晶性または非晶質無菌固体など)、液体(例えば、溶液、懸濁液、エマルション、エリキシル剤、ローション、軟膏(unguent)など)または半固体(ゲル、軟膏(ointment)、クリームおよび類似のもの)として投与するための医薬形に処方される。本発明の医薬組成物は、限定されるものではないが、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内(intratecal)、脳室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所的、舌下または直腸経路を含む任意の経路により投与することができる。有効成分の種々の投与形、用いる賦形剤およびそれらの製造方法の修正については、Tratado de Farmacia Galenica, C. Fauli i Trillo, Luzan 5, S.A. de Ediciones, 1993およびRemington’s Pharmaceutical Sciences (A.R. Gennaro, Ed.), 20th edition, Williams & Wilkins PA, USA (2000)に見出すことができる。薬学上許容されるビヒクルの例は当技術の現状において公知であり、リン酸緩衝生理食塩水、水、エマルション(油/水エマルションなど)、種々のタイプの湿潤剤、無菌溶液などが挙げられる。このようなビヒクルを含んでなる組成物は当技術の現状において公知の従来法によって処方することができる。
【0110】
あるいは、本発明の組成物および化合物は、組成物がApoAタンパク質もしくはApoAと第二の成分(IL15またはIL15受容体α鎖のSushiドメイン)の融合物を含んでなる場合、または本発明がApoA、IL15およびIL15RAのSushiドメインを含んでなる融合タンパク質を意図する場合に、ナノリポ粒子(nanolipoparticle)として処方することができる。ナノリポ粒子の形成は高密度リポタンパク質(HDL)の主成分であるApoAに基づく。
【0111】
本発明において「ナノリポ粒子」とは、「リポタンパク質」または「リポタンパク質粒子」に等しく、区別無く用いることができる。ナノリポ粒子は、アポタンパク質、リン脂質および遊離コレステロールにより形成される極性外層に覆われた非極性脂質(エステル化コレステロールおよびトリグリセリド)の核により形成される任意の水溶性粒子を意味するものと理解される。
【0112】
ナノリポ粒子またはリポタンパク質はそれらの密度に応じて、カイロミクロン、超低密度リポタンパク質(VLD)、中密度リポタンパク質(IDL)、低密度リポタンパク質(LDL)および高密度リポタンパク質(HDL)に分類される。リポタンパク質の種々の特徴を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
さらに特定の実施態様では、ナノリポ粒子は、上記の表に示された組成を有すること、およびタンパク質画分を形成するアポリポタンパク質がApoA、ApoC、ApoDおよびApoEであることを特徴とするHDL型リポタンパク質である。
【0115】
ナノリポ粒子は、当技術分野で公知の従来法によって得ることができる。例として、ナノリポ粒子は、in vitroにおいて、Lerch et al. (Vox Sang, 1996, 71: 155-164)に記載されているように融合タンパク質にコレステロールおよびホスファチジルコリンを加えることにより、またはin vivoにおいて、肝臓において本発明の結合体を発現する非ヒト動物を用いてナノリポ粒子を形成させる(なお、これらのナノリポ粒子は血清中に分泌され、血清から単離することができる)ことによって得ることができる。
【0116】
核酸(本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは遺伝子構築物)を含んでなる本発明の医薬組成物の場合、本発明は、該核酸を投与するために特別に調製された医薬組成物を意図する。該医薬組成物はこのような核酸を裸の形態で、言い換えれば、その核酸を生物体のヌクレアーゼによる分解から保護する化合物が存在しない状態で含んでなってよく、トランスフェクションに用いられる試薬に関連する毒性を排除するという利点を伴う。裸の化合物の好適な投与経路としては、血管内、腫瘍内、頭蓋内、腹腔内、脾臓内、筋肉内、網膜下、皮下、粘膜、局所および経口経路が含まれる(Templeton, 2002, DNA Cell Biol., 21:857-867)。あるいは、コレステロールに結合された、またはHIV−1のTATタンパク質に由来するTatペプチド、キイロショウジョウバエ(D.melanogaster)アンテナペディアタンパク質のホメオドメインの第三ヘリックス、単純ヘルペスウイルスのVP22タンパク質、アルギニンのオリゴマー、およびWO07069090 (Lindgren, A. et al., 2000, Trends Pharmacol. Sci, 21:99-103, Schwarze, S.R. et al., 2000, Trends Pharmacol. Sci., 21:45-48, Lundberg, M et al., 2003, Mol. Therapy 8:143-150およびSnyder, E.L. and Dowdy, S.F., 2004, Pharm. Res. 21:389-393)に記載されているものなどのペプチドといった、細胞膜を介する移動を促進し得る化合物に結合された、リポソームの一部を形成する核酸を投与することができる。あるいは、プラスミドベクターまたはウイルスベクター、好ましくはアデノウイルス、アデノ随伴ウイルスもしくはレトロウイルス(ネズミ白血病ウイルス(MLV)に基づくウイルスなど)もしくはレンチウイルス(HIV、FIV、EIAV)に基づくベクターの一部を形成するポリヌクレオチドを投与することができる。
【0117】
別の実施態様では、本発明の組成物、融合タンパク質およびポリヌクレオチドは、Liu, F., et al., (Gene Ther, 1999, 6:1258-66)により記載されているようないわゆる「流体力学的投与」によって投与することもできる。前述の方法に従い、これらの化合物は生物体の血管に高速かつ大容量で導入され、より広い分布で高いレベルのトランスフェクションをもたらす。細胞内接近の有効性は投与される流体の容量および注入速度によって異なることが実証されている(Liu et al., 1999, Science, 305:1437-1441)。マウスにおいて、投与は3〜5秒かけて1ml/体重10gという値に至適化されている(Hodges et al., 2003, Exp. Opin. Biol. Ther, 3:91-918)。ポリヌクレオチドの流体力学的投与後のin vivoにおける細胞トランスフェクションを可能とする厳密な機構は完全には知られていない。マウスの場合、尾静脈による投与は心拍よりも速い律動で起こり、投与された流体の上大静脈への蓄積をもたらすと考えられる。この流体は次に器官の血管に接近し、その後、前述の血管内の開口部(fenestration)を経て管外空間に接近する。このようにして、ポリヌクレオチドは血液と混合する前に標的器官の細胞と接触するようになり、それにより、ヌクレアーゼによる分解の可能性を軽減する。
【0118】
本発明の組成物は体重1キログラム当たり10mg未満、好ましくは、体重1キログラム当たり5、2、1、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001、0.0005、0.0001、0.00005もしくは0.00001mg未満、体重1キログラム当たり薬剤200nmol未満、言い換えれば、およそ4.4×1016コピー、または体重1キログラム当たり1500、750、300、150、75、15、7.5、1.5、0.75、0.15もしくは0.075nmolの用量で投与することができる。この単位用量を注射、吸入または局所投与によって投与することができる。本発明の二官能性ポリヌクレオチドおよび組成物は標的mRNAが発現される器官に直接投与することができ、この場合には器官当たり0.00001mg〜3mg、または好ましくは器官当たり0.0001〜0.001mgの間、器官当たり約0.03〜3.0mg、器官当たり約0.1〜3.0mgまたは器官当たり0.3〜3.0mgの間の用量が投与される。
【0119】
用量は治療される症状の重篤度および応答によって異なり、数日から数ヶ月、またはその症状に緩和が見られるまで様々であり得る。至適用量は、患者生物体における薬剤濃度を周期的に測定することにより決定することができる。至適用量は従前のin vitroまたは動物モデルにおけるin vivo試験で得られたEC50値から決定することができる。単位用量は1日1回または1日1回未満、好ましくは2、4、8または30日おきに1回未満で投与することができる。あるいは、初期量の後に1回または数回の維持量を、一般に初期量よりも少ない量で投与することもできる。維持計画は0.01μg〜1.4mg/kg体重/日の間、例えば1、0.1、0.01、0.001または0.00001mg/kg体重/日の用量で患者を治療することを含み得る。維持量は、好ましくは5、10または30日おきに多くて1回投与する。この治療を、患者が患っている変調のタイプ、その重篤度および患者の状態に応じて異なる時間継続しなければならない。治療後には、その治療に応答しない疾患の場合には用量を引き上げるべきかどうか、またはその疾病の改善もしくは望まない二次的作用が見られる場合には用量を引き下げるべきかどうかを決定するために患者の展開をモニタリングしなければならない。
【0120】
1日用量は、特定の状況に応じて1回用量または2回以上の用量で投与することができる。反復投与または頻繁な投与が要される場合には、ポンプ、半永久的カテーテル(静脈内、腹腔内、大槽内または関節内)またはリザーバーなどの投与デバイスを移植することが勧められる。
【0121】
本発明の組成物および融合タンパク質の治療的使用
さらなる態様において、本発明はまた、医療において用いるための本発明の組成物、融合タンパク質およびポリヌクレオチドに関する。
【0122】
本発明の組成物は、in vivoにおいて脾臓内、肝臓および末梢血CD8リンパ球の増殖を促進すること(本発明の実施例5参照)、種々の結腸直腸腺癌モデルにおいて抗腫瘍効果を提供すること(実施例6および7参照)、および抗代謝効果を実証すること(実施例8参照)ができる。これらの効果はIL15のNK細胞活性を増進する能力に関する証拠と相まって、生得(NK細胞媒介型)または適応(CD8リンパ球媒介型)免疫応答の刺激から利益を受け得る患者を治療するための本発明の化合物および組成物の使用を可能とする。
【0123】
よって、別の態様において、本発明は、被験体の免疫応答の刺激に使用するための本発明の組成物、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクターもしくは遺伝子構築物、本発明の宿主細胞に関する。
【0124】
好ましくは、本発明の組成物、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクターもしくは遺伝子構築物、または本発明の宿主細胞は、抗原に応答した免疫系の活性化を必要とする疾患を治療するためにも用いられる。
【0125】
あるいは、本発明は、抗原に対する被験体の免疫応答を刺激することまたは免疫系の活性化を必要とする疾患を治療することを目的とする薬剤の製造のための、本発明の組成物、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクターもしくは遺伝子構築物、または本発明の宿主細胞の使用に関する。
【0126】
あるいは、本発明は、抗原に対する被験体の免疫応答を刺激するまたは免疫系の活性化を必要とする疾患を治療する方法であって、該被験体に本発明の組成物、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクターもしくは遺伝子構築物、または本発明の宿主細胞を投与することを含んでなる方法に関する。
【0127】
本発明において「被験体の免疫応答を刺激する」とは、その応答が初めて起こる個体での特定の抗原に対する免疫応答の誘導、ならびにその免疫応答がすでに起こったことがある被験体における免疫応答の再活性化を意味する。免疫応答は生得免疫応答ならびに適応免疫応答の双方を含むことができ、体液型応答または細胞型応答のいずれかを含み得る。
【0128】
よって、本発明の化合物および組成物の、特定の抗原に対する被験体の免疫応答を増強する能力は、生物体において該抗原の存在に関連する疾患を治療するのに有用であり得、その疾患としては、ウイルス抗原を取り扱う場合にはウイルス感染により引き起こされる疾患、細菌抗原を取り扱う場合には細菌感染により引き起こされる疾患、真菌抗原を取り扱う場合には真菌感染により引き起こされる疾患、アレルゲンを取り扱う場合にはアレルギー、寄生虫抗原を取り扱う場合には寄生虫感染により引き起こされる疾患、および/または腫瘍細胞特異的抗原を取り扱う場合には腫瘍が含まれる。よって、好ましい実施態様では、免疫系の活性化を必要とする疾患は感染性疾患および新生物性疾患の群から選択される。
【0129】
本発明の化合物および組合せを用いて治療することができるウイルス感染により引き起こされる疾患としては、限定されるものではないが、HIV−1ウイルス(AIDS)の感染により引き起こされる疾患;単純ヘルペスウイルス(単純ヘルペス、性器ヘルペス)、サイトメガロウイルス(単球増加症、網膜炎、肝炎)、エプスタイン・バーウイルス(感染性単球増加症、バーキットリンパ腫および鼻咽頭癌)および水痘帯状疱疹(鶏痘、帯状疱疹)のウイルスなどのヒトヘルペスウイルスにより引き起こされる疾患;B型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスなどの肝炎ウイルスにより引き起こされる疾患;呼吸器合胞体ウイルス、パラインフルエンザウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ヒト乳頭腫ウイルスなどのパラミクソウイルスにより引き起こされる疾患;黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、ダニ媒介脳炎のウイルスまたは日本脳炎ウイルスなどのフラビウイルスおよびロタウイルスにより引き起こされる疾患が挙げられる。本発明の化合物および組合せを用いて治療することができる他のタイプのウイルス感染は、Fundamental Virology, second edition, eds. Fields, B. N. and Knipe, D. M. (Raven Press, New York, 1991)に詳細に記載されている。
【0130】
本発明の化合物および組合せを用いて治療することができる細菌感染により引き起こされる疾患としては、限定されるものではないが、エシェリキア属(Escherichia)、エンテロバクター属(Enterobacter)、サルモネラ菌属(Salmonella)、ブドウ状球菌(Staphylococcus)、赤痢菌属(Shigella)、リステリア属(Listeria)、エーロバクター属(Aerobacter)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、クレブシェラ属(Klebsiella)、プロテウス属(Proteus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、連鎖球菌属(Streptococcus)、クラミジア属(Chlamydia)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、肺炎球菌属(Pneumococcus)、ナイセリア属(Neisseria)、クロストリジウム属(Clostridium)、バチルス属(Bacillus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、マイコバクテリア属(Mycobacterium)、カンピロバクター属(Campylobacter)、ビブリオ属(Vibrio)、セラチア属(Serratia)、プロビデンシア属(Providencia)、クロモバクテリウム属(Chromobacterium)、ブルセラ属(Brucella)、エルシニア属(Yersinia)、ヘモフィラス属(Haemophilus)またはボルデテラ属(Bordetella)の微生物により引き起こされる疾患が挙げられる。
【0131】
本発明の化合物および組合せを用いて治療することができる真菌感染により引き起こされる疾患としては、限定されるものではないが、カンジダ症、アスペルギルス症、ヒストプラズマ症、クリプトコッカス髄膜炎および類似のものが挙げられる。
【0132】
本発明の化合物および組合せを用いて治療することができる寄生虫感染としては、限定されるものではないが、マラリア、ニューモシスチス・ジロヴェチ(Pneumocystis jiroveci)による感染、肺炎、睡眠病、リーシュマニア症、クリプトスポリジウム症、トキソプラズマ症およびトリパノソーマ属(trypanosoma)が挙げられる。
【0133】
本発明の化合物および組成物を用いて治療することができるアレルギー型障害としては、限定されるものではないが、花粉(樹木、草本、雑草および牧草の花粉のアレルゲン)に曝されることにより引き起こされるアレルギー、昆虫アレルゲン(吸入性アレルゲン、唾液由来のアレルゲン、および毒)、ふけおよび動物体毛アレルゲンおよび食物アレルゲンに曝されることにより引き起こされるアレルギーが挙げられる。
【0134】
本発明の結合体および組成物はまた、過増殖性疾患を治療するためにも好適である。本発明において「増殖性疾患」という表現は、不適切に高いレベルの細胞分裂、不適切に低いレベルのアポトーシスまたはその双方により引き起こされる、またはそれを原因とする疾患を含み、原発性腫瘍ならびに転移の双方を含む。「原発性腫瘍」とは、その腫瘍が起源する原発部位の腫瘍を意味する。本発明において「転移」とは、腫瘍が腫瘍の元の原発部位以外の生物組織に拡大するプロセスを意味する。
【0135】
本発明において「過増殖性疾患の治療」または「腫瘍の治療」とは、癌もしくは腫瘍の症候、合併症または生化学的徴候の出現を抑制する、もしくは遅延させるため、その症候を緩和するため、または例えば転移の出現などのその増殖および進行を抑制または阻害するための本発明の化合物および組成物の投与を意味するものと理解される。この治療は、疾患の出現を遅延させるため、またはその臨床徴候もしくは無症状症候の顕在化を抑制するための予防的処置、または疾患の顕在化の後もしくは手術もしくは放射線療法によるその治療に関連する症候を除去もしくは緩和するための治療的処置であり得る。
【0136】
本発明において治療される癌はいずれのタイプの癌または腫瘍であってもよい。これらの腫瘍または癌としては、限定されるものではないが、結腸、腹部、骨、乳房、消化系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、下垂体、精巣、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭頸部、神経系(中枢および末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟組織、脾臓、胸部および泌尿生殖器に存在する悪性腫瘍、より詳しくは、小児急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、成人(原発性)肝細胞性癌、成人(原発性)肝臓癌、成人急性リンパ性白血病、成人急性骨髄性白血病、成人ホジキン病、成人ホジキンリンパ腫、成人リンパ性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、成人原発性肝臓癌、成人軟組織肉腫、AIDS関連リンパ腫、AIDS関連悪性腫瘍、肛門癌、星状細胞腫、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳幹膠腫、脳腫瘍、乳癌、腎盂・尿管癌、原発性中枢神経系リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞腫、脳星状細胞腫、頸部癌、小児(原発性)肝細胞性癌、小児(原発性)肝臓癌、小児急性リンパ芽球性白血病、小児急性骨髄性白血病、小児脳幹膠腫、小児小脳星状細胞腫、小児脳星状細胞腫、小児頭蓋外胚細胞腫瘍、小児ホジキン病、小児ホジキンリンパ腫、小児視覚経路・視床下部神経膠腫、小児リンパ芽球性白血病、小児髄芽細胞腫、小児非ホジキンリンパ腫、小児テント上原始神経外胚葉性・松果体腫瘍、小児原発性肝臓癌、小児横紋筋肉腫、小児軟組織肉腫、小児視覚経路・視床下部神経膠腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、内分泌膵島細胞癌、子宮内膜癌、脳室上衣細胞腫、上皮癌、食道癌、ユーイング肉腫および関連の腫瘍、癌分泌膵臓癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼の癌、女性の乳癌、ゴーシェ病、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管腫瘍、生殖細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍腫瘍、トリコ白血病(tricoleukaemia)、頭頸部癌、肝細胞癌、ホジキン病、ホジキンリンパ腫、高ガンマグロブリン血症、下咽頭癌、腸管癌、眼内黒色腫、膵島細胞癌、膵島細胞性膵臓癌、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、口唇口腔癌、肝臓癌、肺癌、リンパ増殖性障害、マクログロブリン血症、男性の乳癌、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、髄芽細胞腫、黒色腫、中皮腫、原発不明転移性扁平上皮性頸部癌、原発転移性扁平上皮性頸部癌、転移性扁平上皮性頸部癌、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫/形質細胞新生物、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病(myelogenous leukaemia)、骨髄性白血病(myeloid leukaemia)、骨髄増殖性障害、副鼻腔・鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、妊娠中の非ホジキンリンパ腫、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌、原発不明転移性扁平上皮性頸部癌、頬咽頭癌、悪性線維性骨肉腫−Z、骨肉腫−W、悪性線維性組織球腫、悪性線維性骨肉腫/骨の組織球腫、上皮性卵巣癌、卵巣生殖細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓癌、パラプロテイン血症、紫斑病、副甲状腺癌、陰茎癌、褐色細胞種、下垂体腫瘍、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性肝臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎盂・尿管癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、類肉腫症、肉腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟組織肉腫、扁平上皮性頸部癌、胃癌、松果体・テント上原始神経外胚葉性腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣癌、胸腺腫、甲状腺癌、腎盂・尿管移行上皮癌、移行腎盂・尿管癌、絨毛腫瘍、腎盂・尿管細胞癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、視経路・視床下部神経膠腫、外陰癌、ワルデンストロームマクログロブリン血症、ビルムス腫瘍および他のいずれかの過増殖性疾患、ならびに前記器官系に存在する新生物が挙げられる。
【0137】
本発明のワクチン組成物
本発明の化合物および組成物はまた、抗原に対する患者の応答を増強するためのワクチンのけるアジュバントとしても有用である。よって、別の態様において、本発明は、抗原と本発明による組成物、融合タンパク質、ポリヌクレオチド、遺伝子構築物、ベクターまたは宿主細胞とを含んでなるワクチン組成物に関する。
【0138】
本発明において「ワクチン」または「ワクチン組成物」とは、少なくとも1つの抗原を含んでなり、その抗原に対する被験体の免疫応答の活性化を可能等する組成物を意味する。このようなワクチンの目的は、細胞ならびに抗体の双方によって媒介される免疫を活性化することである。好ましくは、細胞性免疫には、T細胞応答、主として、CD4+ T細胞により媒介される応答、および/またはCD8+ T細胞の応答の刺激が含まれる。
【0139】
本明細書において「アジュバント」とは、免疫系を活性化して、ワクチンに対して、アジュバントを含まないワクチンを投与する場合の結果として得られるものよりも強力かつ有効な免疫応答を可能とする免疫学的薬剤を意味する。アジュバントに対する典型的な応答としては、限定されるものではないが、免疫系細胞(B細胞、T細胞、樹状細胞、抗原提示細胞、マクロファージ、NK細胞)の活性化、増殖および/または分化、マーカーおよびサイトカインの発現の増大または低下、IgA、IgMおよび/またはIgG力価の刺激、巨脾症(脾臓細胞充実性の増大)、過形成、種々の組織における浸潤物の形成、ならびに標準的技術を用いて当業者が定量できる他のタイプの応答が含まれる。
【0140】
よって、本発明の組合せおよび化合物と併用可能なワクチンとしては、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原およびアレルゲンまたは環境抗原および腫瘍抗原の群から選択される1以上の抗原を提示するワクチンが含まれる。
【0141】
本発明の組合せおよび化合物と併用可能なワクチンに用いるのに好適なウイルス抗原としては、HIV−1抗原(tat、nef、gp120またはgp160、gp40、p24、gag、env、vif、vpr、vpu、revなど)、ヒトヘルペスウイルス(gH、gL、gM、gB、gC、gK、gEもしくはgDまたはそれらの誘導体)または前初期タンパク質(VHS1またはVHS2のICP27、ICP47、ICP4、ICP36)、サイトメガロウイルス、特にヒトサイトメガロウイルス(gBまたはその誘導体)、エプスタイン・バーウイルス(gp350またはその誘導体)、水痘帯状疱疹ウイルス(gpI、II、IIIおよびIE63)、またはB型肝炎ウイルスなどの肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎の表面抗原または肝炎の核抗原)、C型肝炎ウイルス(例えば、核抗原E1、NS3またはNS5)、呼吸器合胞体ウイルスなどのパラミクソウイルス(タンパク質FおよびGまたはそれらの誘導体)、パラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス(タンパク質E1およびE2)、鶏痘ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス(例えば、HPV6、11、16、18、eg L1、L2、E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7)、フラビウイルス(例えば、黄熱ウイルス、デング熱ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)またはインフルエンザウイルス(タンパク質HA、NP、NAもしくはM、またはその組合せ)に感染した細胞、ロタウイルス抗原(VP7scおよび他のロタウイルス成分)、ならびに類似のもの(ウイルス抗原のさらなる例としてはFundamental Virology, second edition, eds. Fields, B. N. and Knipe, D. M. (Raven Press, New York, 199)を参照)が挙げられる。
【0142】
本発明の化合物および組合せと併用可能なワクチンに用いるのに好適な細菌抗原または誘導体としては、ナイセリア属(Neisseria)の種、例えば、淋菌(N. gonorrhea)および髄膜炎菌(N. meningitidis)の抗原(トランスフェリン結合タンパク質、ラクトフェリン結合タンパク質、PiICおよびアドヘシン);化膿連鎖球菌(S. pyogenes)の抗原(Mタンパク質またはその断片およびC5Aプロテアーゼなど);アガラクチア(S. agalactiae)、S.ミュータンス(S. mutans)の抗原;軟性下疳菌(H. ducreyi)の抗原;M.カタラーリス(M. catarrhalis)(ブランハメラ・カタラーリス(Branhamella catarrhalisとしても知られる)を含むモラクセラ属(Moraxella)の種の抗原(低分子量および高分子量アドヘシンおよびインベーシン);ボルデテラ属(Bordetella)の種、例えば、百日咳菌(B. pertussis)、例えば、パラ百日咳菌(Parapertussis)およびB.ブロンキセプチカ(B. bronchiseptica)の抗原(パータクチン、百日咳毒素またはその誘導体、微細線維性血球凝集素、アデニル酸シクラーゼ、フィムブリエなど);結核菌(M. tuberculosis)、ウシ結核菌(M. bovis)、らい菌(M. leprae)、鳥結核菌(M. avium)、パラ結核菌(M. paratuberculosis)、スメグマ菌(M. smegmatis)を含むマイコバクテリア種の抗原;レジオネラ属(Legionella)の種、例えば、L.ニューモフィラ(L. pneumophila)の抗原(例えば、ESAT6、抗原85A、−Bまたは−C、MPT 44、MPT59、MPT45、HSPIO、HSP65、HSP70、HSP 75、HSP90、19kDaのPPD[Rv3763]、38kDaのPPD[Rv0934]);エシェリキア属(Escherichia)の種、例えば、腸内毒素原性大腸菌の抗原(例えば、定着因子、熱不安定性毒素またはその誘導体、耐熱性毒素またはその誘導体)、腸管出血性大腸菌および腸管病原性大腸菌の抗原(例えば、志賀毒素と類似の毒素またはその誘導体);ビブリオ属(Vibrio)の種、例え
ば、コレラ菌(V. cholera)の抗原(例えば、コレラ毒素またはその誘導体);赤痢菌属(Shigella)の種、例えば、S.ソネイ(S. sonnei)、志賀赤痢菌(S. dysenteriae)、S.フレックスネリ(S. flexnerii)の抗原;エルシニア属(Yersinia)の種、例えば、Y.エンテロコリチカ(Y. enterocolitica)の抗原(例えば、Yopタンパク質);ペスト菌(Y. pestis)、Y.シュードツベルクローシス(Y. pseudotuberculosis)の抗原;カンピロバクター属(Campylobacter)の種、例えば、C.ジェジュニ(C. jejuni)の抗原(例えば、毒素、アドヘシンおよびインベーシン);サルモネラ菌属(Salmonella)の種、例えば、チフス菌(S. typhi)、パラチフス菌(S. paratyphi)、豚コレラ菌(S. choleraesuis)、腸炎菌(S. enteritidis)の抗原;リリステリア属(Listeria)の種、例えば、ステリア菌(L. monocytogenes)の抗原;ヘリコバクター属(Helicobacter)の種、例えば、ピロリ菌(H. pylori)の抗原(例えば、ウレアーゼ、カタラーゼ、空胞化毒素);シュードモナス(Pseudomonas)属の種、例えば、緑膿菌(P. aeruginosa)の抗原;ブドウ状球菌属(Staphylococcus)の種、例えば、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)の抗原;腸球菌属(Enterococcus)の種、例えば、糞便連鎖球菌(E. faecalis)、フェシウム菌(E. faecium)の抗原;クロストリジウム(Clostridium)属の種、例えば、破傷風菌(C. tetani)の抗原(例えば、破傷風毒素およびその誘導体);ボツリヌス菌(C. botulinum)の抗原(例えば、ボツリヌス毒素およびその誘導体)、C.ディフィシル(C. difficile)の抗原(例えば、クロストリジウムAまたはB毒素およびそれらの誘導体);バチルス属(Bacillus)の種、例えば、炭疽菌(B. anthracis)の抗原(例えば、炭疽毒素およびその誘導体);コリネバクテリウム属(Corynebacterium)の種、例えば、ジフテリア菌(C. diphtheriae)の抗原(例えば、ジフテリア毒素およびその誘導体);ボレリア属(Borrelia)の種、例えば、B.ブルグドルフェリ(B. Burgdorferi)の抗原(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB);B.ガリニ(B. garinii)の抗原(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.アフゼリ(B. afzelii)の抗原(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.アンデルソンフィ(B. andersonfi)の抗原(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.ヘルムシ(B. hermsii)の抗原;エーリキア属(Ehrlichia)の種、例えば、E.エクイ(E. equi)の抗原およびヒト顆粒球エーリキア症の薬剤;リケッチア属(Rickettsia)の種、例えば、斑点熱リケッチア(R. rickettsii)の抗原;クラミジア属(Chlamydia)の種、例えば、トラコーマクラミジア(C. trachomatis)の抗原(例えば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質);肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)の抗原(例えば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質)、オウム病クラミジア(C. psittaci)の抗原;レプトスピラ属(Leptospira)の種、例えば、L.インテロガンス(L. interrogans)の抗原;トレポネーマ属(Treponema)の種、例えば、梅毒トレポネーマ(T. pallidum)の抗原(例えば、希少外膜タンパク質)、T.デンチコラ(T. denticola)、T.ハイオジセンテリアエ(T. hyodysenteriae)の抗原;プラスモジウム属(Plasmodium)の種、例えば、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)の抗原;トキソプラズマ属(Toxoplasma)の種およびトキソプラズマ原虫(T. gondii)の抗原(例えば、SAG2、SAGS、Tg34);エントアメーバ属(Entamoeba)の種、例えば、赤痢アメーバ(E. histolytica)の抗原;バベシア属(Babesia)の種、例えば、B.ミクロチ(B. microti)の抗原;トリパノソーマ属(Trypanosoma)の種、例えば、クルーズトリパノソーマ(T. cruzi)の抗原;ジアルジア属(Giardia)の種、例えば、ランブル鞭毛虫(G. lamblia)の抗原;リーシュマニア属(leishmania)の種、例えば、森林型熱帯リーシュマニア(L. major)の抗原;ニューモシスチス属(Pneumocystis)の種、例えば、P.カリニ(P. carinii)の抗原;トリコモナス属(Trichomonas)の種、例えば、膣トリコモナス(T. vaginalis)の抗原;住血球虫属(Schisostoma)の種、例えば、マンソン住血球虫(S. Mansoni)の抗原が挙げられる。
【0143】
カンジダ属(Candida)の種、例えば、C.アルビカンス(C. albicans);クリプトコッカス属(Cryptococcus)の種、例えば、C.ネオフェルマンス(C. neoformans)などの酵母の、またはそれに由来する抗原;結核菌(M. tuberculosis)の抗原(Rv2557、Rv2558、RPF:Rv0837c、Rv1884c、Rv2389c、Rv2450、Rv1009、aceA(Rv0467)、PstS1、(Rv0932)、SodA(Rv3846)、16kDalのRv2031c、Tb Ra12、Tb H9、Tb Ra35、Tb38−1、Erd 14、DPV、MTI、MSL、mTTC2およびhTCC1など);クラミジアの抗原、例えば、高分子量タンパク質(HMWP)、ORF3(文献EP366412)および推定膜タンパク質(possible membrane proteins)(Pmp);連鎖球菌属(Streptococcus)の種、例えば、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)の抗原(PsaA、PspA、ストレプトリジン、コリン結合タンパク質、タンパク質抗原ニューモリシン、およびその変異型解毒化誘導体);ヘモフィルス属(Haemophilus)の種、例えば、H.インフルエンザ(H. influenzae)B型に由来する抗原(例えば、PRPおよびその結合体);分類不能H.インフルエンザの抗原(OMP26、高分子量アドヘシン、P5、P6、タンパク質Dおよびリポタンパク質D、ならびにフィンブリンおよびフィンブリン由来ペプチド、またはその多重コピー変異体または融合タンパク質);熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)に由来する抗原(RTS.S、TRAP、MSP1、AMA1、MSP3、EBA、GLURP、RAP1、RAP2、sequestrin、PfEMP1、Pf332、LSA1、LSA3、STARP、SALSA、PfEXP1、Pfs25、Pfs28、PFS27/25、Pfs16、Pfs48/45、Pfs230およびプラスモジウム属(Plasmodium)の種におけるその類似体など)。
【0144】
本発明の化合物および組合せと併用可能なワクチンに用いるのに好適な真菌抗原としては、限定されるものではないが、例えば、カンジダ真菌抗原;ヒストプラズマ真菌抗原の成分、例えば、熱ショックタンパク質60(HSP60)およびヒストプラズマ真菌抗原の他の成分;クリプトコッカス真菌抗原、例えば、莢膜多糖類およびクリプトコッカス真菌抗原の他の成分;球虫類の真菌抗原、例えば、小球体の抗原、および球虫類の真菌抗原の他の成分;ならびに輪癬、例えば、トリコフィチンの真菌抗原、および球虫類の真菌抗原の他の成分が挙げられる。
【0145】
本発明の化合物および組合せと併用可能なワクチンに用いるのに好適な原虫抗原としては、限定されるものではないが、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の抗原、例えば、娘虫体表面抗原、種虫表面抗原、種虫周囲抗原、配偶子母細胞/配偶子表面抗原、全血抗原pf、55/RESAおよびプラズモイド抗原の他の成分;トキソプラズマの抗原、例えば、SAG−I、p30およびトキソプラズマ抗原の他の成分;住血球虫の抗原、例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、パラミオシンおよび住血球虫抗原の他の成分;リーシュマニアの抗原およびリーシュマニア・テールズ(Leishmania tales)の他の抗原、例えばgp63、リポホスホグリカンおよびその関連タンパク質ならびにリーシュマニア抗原の他の成分;ならびにクルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)の抗原、例えば、75〜77kDaの抗原、56kDaの抗原およびトリパノソーマ抗原の他の成分が挙げられる。
【0146】
本発明の化合物および組合せと併用可能なワクチンに用いるのに好適なアレルゲンまたは環境抗原としては、限定されるものではないが、花粉アレルゲン(樹木、草本、雑草および牧草の花粉のアレルゲン)、昆虫アレルゲン(唾液および毒に由来する吸入性アレルゲン)、ふけおよび動物体毛アレルゲンおよび食物アレルゲンなどの天然で産生されるアレルゲンに由来する抗原が挙げられる。樹木、牧草および草本由来の重要な花粉アレルゲンは、ブナ目(Fagales)、モクセイ目(Oleales)、マツ目(Pinales)およびスズカケノキ(Platanaceae)の分類目(とりわけ、カバノキ(Betula)、ハンノキ(Alnus)、ハシバミ(Corylus)、シデ(Carpinus)およびオリーブ(Olea)、ヒマラヤスギ(CryptomeriaおよびJuniperus)、バナナノキ(Platanus)を含む、イネ目(とりわけ、ドクムギ属(Lolium)、アラガエリ属(Phleum)、イチゴツナギ属(Poa)、ギョウギシバ属(Cynodon)、カモガヤ属(Dactylis)、シラゲガヤ属(Holcus)、クサヨシ属(Phalaris)、ライムギ属(Secale)およびモロコシ属(Sorghum)を含む)、キク目(Asterales)およびイラクサ目(Urticales)(とりわけ、ブタクサ属(Ambrosia)、ヨモギ属(Artemisia)およびヒカゲミズ属(Parietaria)を含む)に起源する。使用可能な他のアレルゲン性抗原としては、ヒョウヒダニ属(Dermatophagoides)およびシワダニ属(Euroglyphus)のイエダニ類、貯蔵庫ダニ、例えば、レピドグリフィス(Lepidoglyphys)、ニクダニ(Glycyphagus)およびコナダニ(Tyrophagus)のアレルゲン、ゴキブリ、小昆虫およびノミ類、例えば、チャバネゴキブリ(Blatella)、クロゴキブリ(Periplaneta)、ユスリカ(Chironomus)およびイヌノミ(Ctenocepphalides)のアレルゲン、ネコ、イヌおよびウマなどの哺乳類のアレルゲン、鳥類のアレルゲン、毒物アレルゲン、例えば、ハナバチ類(ミツバチ(Apidae)上科)、カリバチ類およびアリ類(オオアリ(Formicoidae)上科)を含む膜翅目(Hymenoptera)の分類目のものなどの、昆虫の刺咬に起源するアレルゲンが挙げられる。使用可能なさらなるアレルゲン性抗原としては、アルテルナリア属(Alternaria)およびクラドスポリウム属(Cladosporium)などの吸入性の真菌アレルゲンが挙げられる。
【0147】
本発明の化合物および組合せと併用可能なワクチンに用いるのに好適な腫瘍抗原としては、限定されるものではないが、MAGE、MART−1/Melan−A、gp100、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)−0017−1A/GA733、癌胎児性抗原(CEA)およびその抗原エピトープCAP−1およびCAP−2、etv6、aml1、前立腺特異的抗原(PSA)およびその抗原エピトープPSA−1、PSA−2およびPSA−3、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、T細胞/CD3−V鎖受容体、MAGEファミリーの腫瘍抗原(例えば、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A5、MAGE−A6、MAGE−A7、MAGE−A8、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A11、MAGE−A12、MAGE−Xp2(MAGE−B2)、MAGE−Xp3(MAGE−B3)、MAGE−Xp4(MAGE−B4)、MAGE−C1、MAGE−C2、MAGE−C3、MAGE−C4、MAGE−C5)、GAGEファミリーの腫瘍抗原(例えば、GAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGE−6、GAGE−7、GAGE−8、GAGE−9)、BAGE、RAGE、LAGE−1、NAG、GnT−V、MUM−1、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー、HER2/neu、p2lras、RCAS1、α−フェトプロテイン、E−カドヘリン、α−カテニン、13−カテニン、γ−カテニン、pl2Octn、gp100Pme1117、PRAME、NY−ESO−1、cdc27、結腸タンパク質腺腫様ポリポーシス(APC)、フォドリン、コネキシン37、イディオタイプIg、p15、gp75、GM2およびGD2ガングリオシド、ヒト乳頭腫ウイルスタンパク質などのウイルス産物、Smadファミリーの腫瘍抗原、lmp−1、P1A、EBVによりコードされる核抗原(EBNA)−1、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX−1、SSX−2(HOM−MEL−40)、SSX−3、SSX−4、SSX−5、SCP−1およびCT−7、およびc−erbB−2、急性リンパ芽球性白血病(etv6、amll、シクロフィリンb)、B細胞リンパ腫(イディオタイプIg)、神経膠腫(E−カドヘリン、a−カテニン、13−カテニン、7−カテニン、p120ctn)、膀胱癌(p2lras)、胆管癌(p2lras)、乳癌(MUCファミリー、HER2/neu、c−erbB−2)、頸部癌(p53、p2lras)、結腸癌(p2lras、HER2/neu、c−erbB−2、MUCファミリー)、結腸直腸癌(結腸直腸関連抗原(CRC)−0017−1A/GA733、APC)、絨毛癌(CEA)、上皮細胞癌(シクロフィリンb)、胃癌(HER2/neu、c−erbB−2、ga733糖タンパク質)、肝細胞癌、ホジキンリンパ腫(lmp−1、EBNA−1)、肺癌(CEA、MAGE−3、NY−ESO−1)、リンパ細胞由来白血病(シクロフィリンb)、黒色腫(p15タンパク質、gp75、癌胎児性抗原、GM2およびGD2ガングリオシド、Melan−A/MART−1、cdc27、MAGE−3、p2lras、gp100Pme1117)、骨髄腫(MUCファミリー、p2lras)、非小細胞肺癌(HER2/neu、c−erbB−2)、鼻咽頭癌(lmp−1、EBNA−1)、卵巣癌(MUC ファミリー、HER2/neu、c−erbB−2)、前立腺癌(前立腺特異的抗原(PSA)およびその抗原エピトープPSA−1、PSA−2およびPSA−3、PSMA、HER2/neu、c−erbB−2、ga733糖タンパク質)、腎臓癌(HER2/neu、c−erbB−2)、頸部および食道の扁平上皮細胞癌(ヒト乳頭腫ウイルスタンパク質などのウイルス産物)、精巣癌(NY−ES0−1)およびT細胞白血病(HTLV−1エピトープs)が挙げられる。
【0148】
本発明の組成物の成分、具体的には、ApoAとIL15の融合物または該融合物をコードするポリヌクレオチド、およびIL15受容体α鎖のSushiドメインまたは該ドメインをコードする核酸は単一の処方物として(例えば、一定量の各成分を含んでなる錠剤またはカプセル剤として)提供することができ、あるいはそうでなければ、一緒に、逐次に、または個別に投与するために後に組み合わせる個別の処方物として提供することもできる。本発明の組成物はまた、この処方物を、成分が個別に処方され、同じ容器に包装されているパーツキットとして意図する。
【0149】
当業者ならば、本発明の組成物の第一の成分および第二の成分の処方は同様であってよく、言い換えれば、同じ投与経路による投与を可能とする類似の方法で(例えば、錠剤または丸剤として)処方される。本発明の異なる成分が別個に処方される実施態様では、それらの2成分はブリスターパックで提供することができる。各ブリスターにはその日に消費すべき薬剤が含まれる。薬剤を1日に数回投与する必要がある場合には、各回の投与に相当する薬剤をブリスターパックの別のセクションに配置し、好ましくは、それらを投与する必要のある時刻を、ブリスターパックの各セクションに付記することができる。あるいは、本発明の組成物の成分を、異なる成分が異なった投与がなされるように異なった様式で処方することもできる。よって、例えば、第一の成分を経口投与用の錠剤またはカプセル剤として処方し、第二の成分を静脈投与用に処方することができる。
【0150】
本発明の組成物は、限定されるものではないが、静脈内、経口、鼻腔、非経口、局所、経皮、直腸および類似の投与を含む、当業者に公知の方法に従って投与される。
【0151】
以下、本発明を下記の実施例によって説明するが、これらの実施例は単に例示であって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0152】
実施例1 プラスミドの起源および構築
1.1 RNAの抽出
全マウス肝臓RNAを、TRI試薬(Sigma, Madrid, Spain)を用い、個々のサンプルから単離した。サンプルの濃度および純度を、分光光度計(Biophotometer, Eppendorf)にて260および280nmで吸光度を測定した(320nmでバックグラウンド補正)。
【0153】
1.2 全cDNAのRT−PCR合成
全RNA(3μg)をDNアーゼIで処理し、RNアーゼOUTの存在下、M−MLV RTを用いて逆転写を行ってcDNAを得た(総ての試薬は、Invitrogen, Carfsbed, CA)。全肝臓cDNA 25μlを得た。この反応物を37℃で1時間インキュベートし、95℃で1分間変性させ、4℃にした。これらのサンプルはすぐにPCRに用いるか、−20℃で保存した。
【0154】
1.3 ネズミアポリポタンパク質A−I(mApoA1)cDNAのクローニングおよびプラスミドpCMV−mApoA1の取得
pCMV−mApoA1(pApo)は、ネズミアポリポタンパク質A−I(Apoa1)と、その前にその固有のシグナルペプチドを含んでなり、サイトメガロウイルスプロモーターと機能的に連結されているポリペプチドをコードする配列番号1の配列を含んでなる。
【0155】
センスプライマーFwATGmApoA1:5’-ATGAAAGCTGTGGTGCTGGC-3’(配列番号46)、および
アンチセンスプライマーRvTGAmApoA1:5’-TCACTGGGCAGTCAGAGTCT-3’(配列番号47)
を設計した。
【0156】
BioTaq DNAポリメラーゼ(Bioline, London, UK)を用い、全肝臓cDNAに対するPCR):2720サーマルサイクラー(Applied Biosystems, Foster City, US)にて、94℃5分、94℃40秒を30サイクル、55℃40秒および72℃40秒、その後、72℃7分によってmApoA1のcDNAを増幅した(総ヌクレオチド795、72ヌクレオチドはシグナルペプチドをコードし、723ヌクレオチドは天然タンパク質をコードする)。このPCR産物を1%アガロースD−1 low EEOアガロースゲル(Pronadisa, Madrid, Spain)で泳動させ、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いてゲル断片を精製した。精製したmApoA1 cDNAを、製造者の説明書に従って発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA (Invitrogen, Carfsbed, CA)にクローニングした。これをpCMV−mApoA1またはpApoと呼称する。最後に、得られた配列を配列決定により確認した。
【0157】
1.4 ヒトインターロイキン15(hIL15)cDNAのクローニングおよびプラスミドpCMV−hIL15の取得
pCMV−hIL15(phIL15)は、ヒトIL15と、その前にIgVχ鎖のシグナルペプチドを含んでなり、サイトメガロウイルスプロモーターに機能的に連結されているポリペプチドをコードする配列番号2の配列を含んでなる。
【0158】
センスプライマーFwAscIhIL15:5’-AATAATGGCGCGCCGAACTGGATAGATG-3’(配列番号48)(5’に酵素AscIの制限部位を構成する9ヌクレオチド(GGCGCGCCC)の配列を導入する)および
アンチセンスプライマーRvNotIhIL15:5’-GTTCATCAACACGTCCTGAGCGGCCGC-3’(配列番号49)(5’に酵素NotIの制限部位を構成する8ヌクレオチド(GCGGCCGC)の配列を導入する)
を設計した。
【0159】
hIL15のcDNAを、発現プラスミドpVkL/IL−15IRESneo(Meazza et al. Eur. J. Immunol. 1997; 27: 1049-1054)に対するPCRにより増幅した(総ヌクレオチド345)。このプラスミドは、サイトメガロウイルスプロモーターの制御下に、ヒト成熟型IL15と、その前にIgVχ鎖をコードする配列を含む。これを表すためにpCMV−hIL5またはphIL15の用語を用いる。
【0160】
PCRは、PCRクローニング酵素(Stratagene, Cedar Creek, TX, US)を用いて行った。増幅条件は、2720サーマルサイクラー(Applied Biosystems Foster City, US)にて、95℃2分、95℃40秒を30サイクル、57℃30秒および72℃45秒、その後、72℃7分とした。このPCR産物を1%アガロースD−1 low EEOアガロースゲル(Pronadisa, Madrid, Spain)で泳動させ、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いてゲル断片を精製した。精製したhIL15 cDNAを製造者の説明書に従って発現ベクターpTrcHis2 TOPO(登録商標)TA(Invitrogen, Carfsbed, CA)にクローニングした。これをpTrcHis2−hIL15と呼称する。最後に、得られた配列を配列決定により確認した。
【0161】
1.5 mApoA1とhIL15の遺伝子融合物をコードするプラスミドpCMV−Apo−hIL15(pApo−hIL15)の構築
pCMV−Apo−hIL15(pApo−hIL15)は、ネズミアポリポタンパク質A−IがGAPリンカーによってヒトIL15と連結され、サイトメガロウイルスプロモーターと機能的に連結されたものを含んでなる融合タンパク質をコードする配列番号40の配列を含んでなる。
【0162】
アンチセンスプライマーRvAscImApoA1:5’-GGCGCGCCCTGGGCAGTCAGAGTCTCGC-3’(配列番号50)(ApoA1遺伝子の3’に酵素AscIの制限部位を構成する9ヌクレオチド(GGCGCGCCC)の配列を導入し、停止コドンを除去する)を設計した。この付加された制限配列は、この構成タンパク質にある特定の可動性を与える短いリンカーペプチドGAPに翻訳される。
【0163】
増幅は、鋳型としてpCMV−mApoA1(実施例1.3参照)、ならびにプライマーFwATGmApoA1およびRvAscImApoA1をBioTaq DNAポリメラーゼ酵素(Bioline, London, UK)とともに用い、2720サーマルサイクラー(Applied Biosystems Foster City, US)にて、94℃5分、94℃40秒を30サイクル、57℃40秒および72℃40秒、その後、72℃7分のPCRによって行った。このPCR産物(804ヌクレオチド)を1%アガロースD−1 low EEOアガロースゲル(Pronadisa, Madrid, Spain)で泳動させ、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いてゲル断片を精製した。精製したmApoA1−AscI DNAを発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen, Carfsbed, CA)にクローニングした。これをpCMV−mApoA1−AscIと呼称する。最後に、得られた配列を配列決定により確認した。
【0164】
並行して、鋳型としてpTrcHis2−hIL15(実施例1.4参照)を用い、これをAscI酵素およびバッファー4(New England Biolabs)を用いて37℃で50分消化した。この消化産物を1%アガロースD−1 low EEOアガロースゲル(Pronadisa, Madrid, Spain)で泳動させ、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いてゲル断片を精製した。精製したDNA AscI−hIL15−pTrcHis2を、酵素NotI、1×BSAおよびバッファー3(New England Biolabs)を用いて37℃で50分消化した。この消化産物を1%アガロースD−1 low EEOアガロースゲル(Pronadisa, Madrid, Spain)で泳動させ、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いてゲル断片を精製して精製DNA AscI−hIL15−NotI(345ヌクレオチド)を得た。
【0165】
遺伝子融合を行うために、プラスミドpCMV−mApoA1−AscIを、AscI酵素およびバッファー4(New England Biolabs)を用いて37℃で50分消化した。この消化産物を1%アガロースD−1 low EEOアガロースゲル(Pronadisa, Madrid, Spain)で泳動させ、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いてゲル断片を精製した。精製したpCMV−mApoA1 DNAを次にNotI酵素、1×BSAおよびバッファー3(New England Biolabs)を用い、pcDNA 3.1 V5−His TOPO(登録商標)TAの骨格に存在する制限部位を利用して37℃で50分消化した。この消化産物を1%アガロースD−1 low EEOアガロースゲル(Pronadisa, Madrid, Spain)で泳動させ、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いてゲル断片を精製した。AscIおよびNotI pCMV−mApoA1により開環したベクターを、T4 DNAリガーゼ高濃度と、バッファー溶液として2×Rapid Ligationバッファー(Promega Madison, Wl, U.S.)を用い、この混合物を室温で10分インキュベートして、1:3(ベクター:挿入配列)の比率で挿入配列AscI−hIL15−NotIと結合させた。次に、Top10細菌(Invitrogen, Carfsbed, CA)を形質転換させた。形質転換細菌をアンピシリン含有LB培地の入ったペトリプレートでのそれらの増殖に関して選択した(ベクターはこの抗生物質に対する耐性遺伝子を含むため)。陽性細菌からMiniPrep法(Qiagen, Germany)を用いてプラスミドDNAを抽出した後、2μgの前記プラスミドをAscI/PmeI酵素(New England Biolabs)で消化し、その後、その消化物を1%アガロースゲルでの電気泳動によって分離し、挿入配列の存在を確認した。得られた6669ntのプラスミドを以下、pCMV−Apo−hIL15またはpApo−hIL15と呼称する。
【0166】
1.6 pSushiプラスミドの起源
本発明においてpCMV−Sushi(pSushi)と呼称するプラスミドは、Duitmann et al. (Duitman, E.H., et al., Mol Cell Biol, 2008; 28: 4851-4861)に従前に記載されている、この研究の著者らにより厚意により提供されたプラスミドIL−15RΔMDに相当する。
【0167】
pCMV−Sushi(pSushi)は、ネズミIL15受容体α鎖(IL15ra)のSushiドメインと、その前にIgκのシグナルペプチドを含んでなり、サイトメガロウイルスプロモーターに機能的に連結されているポリペプチドをコードする配列番号20の配列を含む。
【0168】
1.7 ネズミインターロイキン15(mIL15)cDNAのクローニングおよびプラスミドpCMV−mSushi−mIL15(pmSushi−mIL15)の取得
pCMV−mSushi−mIL15(pmSushi−mIL15)は、GGSGGGGSGGGSGGGGSLQ型(配列番号32)のフレキシブルリンカーによってネズミIL15と結合されたネズミIL15受容体α鎖(IL15ra)のSushiドメインを含んでなるポリペプチドをコードする配列を含んでなる。
【0169】
ネズミIL15に融合されたSushiドメインと、その後に3’は1つのNheI制限部位、そして5’はもう1つのXhoI制限部位が隣接した2つの停止コドンをコードする遺伝子はGENEART AG (GENEART AG, BioPark, Josef-Engert-Straβe 11, 93053 Regensburg, Germany)により合成され、これをプラスミドpSecTag2/Hygro A(Invitrogen, Frankfurter Straβe 129B, 64293 Darmstadt, Germany)に導入した。
【0170】
ネズミIL15に融合されたSushiドメインの発現はサイトメガロウイルスプロモーターの制御下にあり、その分泌がIgκ鎖V−J2シグナルペプチドの下で指示される。
【0171】
1.8 mSushi、mIL15およびmApoA1の遺伝子融合物をコードするプラスミドpCMV−mSushi−mIL15−mApoA1(pmSushi−mIL15-mApo)の構築
pCMV−mSushi−mIL15−mApoA1は、ネズミIL15受容体α鎖(IL15ra)のSushiドメイン、ネズミIL15、およびネズミアポリポタンパク質A−Iを含んでなる融合タンパク質をコードする配列番号45の配列を含んでなる。
【0172】
プライマーは、ネズミIL15と融合されたSushi配列を増幅すると同時に、この遺伝子の3’にAscI酵素の制限部位を構成する9ヌクレオチド(GGCGCGCCC)の配列をつなぎ、停止コドンを除去するように設計された。この付加された制限配列は、5’にAscI配列を含むApo配列とのクローニングを可能とし、構成タンパク質にある特定の可動性を与える短いGAPリンカーペプチドに翻訳される。
【0173】
プライマーは、
Fw Sushi:5’-ATGGAGACAGACACCCTGCTG-3’(配列番号51);
Rv IL15 AscI:5’-GGGCGCGCCGCTGGTGTTGATGAACAT-3’(配列番号52)
であった。
【0174】
この配列を、鋳型として前記実施例に記載されているpmSushi−mIL15と、プライマーFw SushiおよびRv IL15 AscIを、酵素BioTaq DNAポリメラーゼ(Bioline, London, UK)とともに用い、2720サーマルサイクラー(Applied Biosystems Foster City, US)にて、94℃1分、94℃30秒を30サイクル、58℃30秒および72℃45秒、その後、72℃2分のPCRにより増幅した。このPCR産物を1%アガロースD−1 low EEOアガロースゲル(Pronadisa, Madrid, Spain)で泳動させ、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いてゲル断片を精製した。精製したDNAを、製造者の説明書に従って発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen, Carfsbed, CA)にクローニングした。これをpCMV−mSushi−mIL15−AscIと呼称する。最後に、得られた配列を配列決定により確認した。
【0175】
遺伝子融合を行うため、プラスミドpCMV−mIFN−AscI−mApo(特許出願WO2009150284に記載、mIFNとmApoの間に融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含んでなる)を、バッファー4(New England Biolabs)中、37℃で50分、酵素AscIおよびNcoIで消化した。この消化産物を1%アガロースD−1 low EEOアガロースゲル(Pronadisa, Madrid, Spain)で泳動させ、IFN配列を含まない開環ベクターを含有する上方のバンドをゲルからQIAquickゲル抽出キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて精製した。プラスミドpCMV−mSushi−mIL15−AscIを、同じ酵素および条件を用いて消化した。この場合には、mSushi−mIL15断片を含有する下方のバンドを精製した。精製した両断片を、T4 DNAリガーゼ高濃度と、バッファー溶液として2×Rapid Ligationバッファー(Promega Madison, Wl, U.S.)を用い、この混合物を室温で10分インキュベートして、1:3(ベクター:挿入配列)の比率で結合させた。次に、Top10細菌(Invitrogen, Carfsbed, CA)を形質転換させた。形質転換細菌をアンピシリン含有LB培地の入ったペトリプレートでのそれらの増殖に関して選択した(ベクターはこの抗生物質に対する耐性遺伝子を含むため)。陽性細菌からMiniPrep法(Qiagen, Germany)を用いてプラスミドDNAを抽出した後、2μgの前記プラスミドをAscI/PmeI酵素(New England Biolabs)で消化し、その後、その消化物を1%アガロースゲルでの電気泳動によって分離し、挿入配列の存在を確認した。得られたプラスミドを以下、pCMV−mSushi−mIL15−mApoA1またはpmSushi−mIL15-mApoと呼称する。
【0176】
実施例2 実験モデル
2.1 動物
実験は、5〜7週齢の間の雌免疫適格BALB/cおよびC57BL/6マウス(Harlan, Barcelona, Spain)で行った。IL15Rα遺伝子の「ノックアウト」マウスを用いた(Lodolce et al. IL15 receptor maintains lymphoid homeostasis by supporting lymphocyte homing and proliferation. Immunity 1998; 9: 669-676)。動物は、外部病原体の無い特殊条件下で、動物実験の倫理規則に従って取扱った。
【0177】
2.2 動物の取扱い
各DNAプラスミド(10μg)を1.8ml生理食塩水血清0.9%(Braun)に再懸濁させ、27.5Gの針と2.5mlのシリンジ(Becton-Dickinson, Spain)を用いて、尾静脈から流体力学的注射により導入した。イソフルラン(Forane, Abbott)で吸入麻酔した後、眼窩後方から血液サンプルを得た。9.1xgで5分間の2連続遠心分離によって血清を回収し、−20℃で保存した。ケタミン(Imalgene)およびキシラジン(Rompun)の9:1混合物200μl/マウスの腹腔内注射により非経口麻酔を行った。
【0178】
2.3細胞系統
CT26細胞系統はBALB/Cマウス結腸直腸腺癌に由来し、発癌物質N−ニトロウス−N−メチル−ウレタンにより誘発されたものである。
【0179】
MC38系統はネズミ腺癌に由来する。
【0180】
双方とも、56℃で不活化した10%ウシ胎仔血清(FCS)、2mMグルタミン、100U/mlストレプトマイシン、100mg/mlペニシリン、1%β−メルカプトエタノール5.10−3を添加した完全RPMI−1640培地で培養した。記載の細胞を加湿インキュベートチャンバーにて37℃、5%CO2雰囲気下で培養した。培養プレートおよび培養ボトルはGreiner Bio-one (Esse, Germany)により供給された。
【0181】
2.4 hIL15の測定
hIL15の血清レベルを、NUNC MaxiSorp平底96穴プレートで製造者の説明書に従ってELISAキット(ヒトIL15セット、BD BiosiencesSan Diego, CA, US)を用い、ELISAアッセイにより測定した。
【0182】
2.5 フローサイトメトリー
細胞集団をフローサイトメトリーにより調べた。この趣意で、眼窩後方ならびに動物の脾臓およびから得た血液を用いた。固形器官を15分間、コラゲナーゼおよびDNアーゼ溶液とともにインキュベートして細胞崩壊を促進し、これはCell Strainer(著作権)(BC Falcon, Bedford, MA, US)の助けで行った。肝臓リンパ球を、35%Percoll(著作権)溶液(GE Heathcare, Uppsala, Sweden)中、the細胞懸濁液の遠心分離により単離した。各肝臓当たり、以下の試薬:1.6mLのPBS 10×、15.8mLのパーコール(著作権)、200Uのヘパリン(Mayne Pharma, Madrid, Spain)および28mLのRPMI(Gibco, Invitrogen, Grand Island, NY, US)を用いた。
【0183】
総ての供試細胞懸濁液を5分間Tris NH4Clバッファーで処理し、赤血球を溶解させた。
【0184】
細胞を50μLのPBSに再懸濁させ、暗所にて4℃で10分間、対応する抗体の混合物とともにインキュベートした。その後、2回の洗浄を行い、それらをFACScalibur(著作権)サイトメーター(BD Bioscience, San Diego, CA, US)で分析した。続いてのデータ解析はFlow Joプログラムバージョン5.7.2を用いて行った。
【0185】
用いた抗体はNK1.1−PE、CD3−FITC、CD8−PE、CD44−APC、CD62L−PE、CD8−PECy7およびNK1.1−APC(BD-Pharmamingen, BD Bioscience, San Diego, CA, US)であった。
【0186】
2.6 統計学的データ解析
データは、Prism 5コンピュータープログラム(GraphPad Software, Inc.)を用いて統計学的に解析した。腫瘍出現に関するデータはカプラン・マイヤーグラフに記録した。種々の時点での供試データを反復測定ANOVAとその後のボンフェローニ検定により解析した。有意な値をp<0.05とみなした。
【0187】
実施例3 プラスミド構築物の流体力学的投与後のhIL15の循環レベル
マウス血清中のヒトhIL15のレベルを調べるため、マウス2〜3匹の群を配置し、各マウスに10μgの対応するプラスミド(またはプラスミドの組合せ)を流体力学的に投与した。各群に注射されたプラスミドは、pApo−hIL15、pApo−hIL15+pSushi、phIL15、phIL15+pSushi、pApoまたは生理食塩水(S)であった。
【0188】
8時間目、24時間目、96時間目、168時間目および240時間目に血清サンプルを採取し、それらのhIL15濃度をELISAサンドイッチアッセイにより測定した。ApoA1を発現する対照プラスミドを施したマウスの血清は検出可能なレベルのhIL15を含んでいなかった(図1)。hIL15を発現するプラスミドを注射したマウスは8時間目に最大hIL15濃度を示し、急速に低下した(図1)。しかしながら、ApoA1−hIL15をコードするプラスミドを施したマウス(pSushiプラスミドの同時感染を伴うまたは伴わない)は8時間目に最高血清hIL15濃度を示し、24時間まで増加を維持した。168時間目では、phIL15を注射したマウスで見られたものとは対照的に、pApo−hIL15を注射したマウスではhIL15をなお検出することができた(図1)。従って、融合タンパク質ApoA1−hIL15を発現する構築物は、より高く、かつ、より持続的なhIL15の循環レベルを達成する。
【0189】
結論として、プラスミドpApo−hIL15の流体力学的投与は、phIL15の投与によってもたられるものをはるかに超えるhIL15の高い血清濃度を誘導する。
【0190】
実施例4 CTLL2細胞における機能アッセイ
pApo−hIL15プラスミドの薬力学的効果を調べるため、増殖のためにIL−2またはIL15を必要とするCTLL2細胞(Meazza et al. Expression of two interleukin-15 mRNA isoforms in human tumors does not correlate with secretion: role of different signal peptides. Eur J Immunol 1997; 27: 1049-1054)を用いて機能アッセイを行った。
【0191】
これらのプラスミドを流体力学的注射のより投与し、24時間目に血清サンプルを得た。血清を熱変性(56℃45分)により除補体し、48時間CTLL2細胞培養物に加え、細胞増殖をトリチウム化チミジンで測定した。hIL15の血清濃度は、市販のELISAサンドイッチアッセイを用いて測定した。等モル量のhIL15に関して、pApo−hIL15+pSushisで処置したマウス血清は、より強いCTLL2細胞増殖を誘導した(図2)。
【0192】
従って、pSushiプラスミドとpApo−hIL15の同時投与はその生物学的効果を高めると結論付けられる。hIL15と融合したApoA1のプラスミド構築物は、IL15RαのSushiドメイン(pSushi)をコードするプラスミドを投与した場合よりもより高いCTLL2細胞増殖誘導果を示した。
【0193】
実施例5 CD8リンパ球増殖の刺激
流体力学的注射の手段により肝臓で発現された構築物の潜在的免疫賦活効果を調べるため、まず、脾臓のCD8 T細胞数の増加を分析した。このために、プラスミドを流体力学的に注射し、3日後、4日後、5日後、6日後および7日後に、脾臓を解離させて単細胞懸濁液を得、総細胞を数え、CD8 Tリンパ球を抗CD3抗体、抗CD8抗体および抗CD44抗体で標識した後に、多色フローサイトメトリーにより分析した。プラスミドpApo−hIL15とpSushiを一緒に注射した場合には、他の処置よりも高い程度で脾臓のCD8 Tリンパ球数が増加した(図3A)。同様のことが、CD3+、CD8+、CD44hi細胞として測定されるメモリーCD8 Tリンパ球の数にも起こった(図3C)。総脾細胞に対するCD8 TおよびCD8メモリー細胞のパーセンテージもまた、プラスミドpApo−hIL15およびpSushiを投与したマウス群では他の群に比べて高かった(図3Bおよび3D)。
【0194】
種々のプラスミドで処置したマウスの肝臓に存在するリンパ球に対するCD8 Tリンパ球のパーセンテージも分析した。このために、プラスミドを流体力学的に注射し、3日目、4日目、5日目、6日目および7日目に肝臓を解離させ、リンパ球をPercoll(著作権)溶液での遠心分離により単離し、CD8 Tリンパ球を抗CD3抗体および抗CD8抗体で標識した後に、それらのリンパ球をフローサイトメトリーにより分析した。プラスミドpApo−hIL15およびpSushiを一緒に投与したマウスは、残りの群のマウスよりも、肝臓において高いCD8 Tリンパ球パーセンテージを示した(図4)。
【0195】
次に、種々のプラスミドで処置したマウスの末梢血に存在するリンパ球に対するCD8 Tリンパ球のパーセンテージを分析した。このために、プラスミドを流体力学的に注射し、3日目、4日目、5日目および6日目に血液サンプルを得、CD8 Tリンパ球を抗CD3抗体、抗CD8抗体、抗CD44抗体および抗CD62L抗体で標識した。それらのリンパ球をフローサイトメトリーにより分析した。プラスミドpApo−hIL15およびpSushiを一緒に投与したマウスは、処置後5日目および6日目に残りの群のマウスよりも末梢血において高いパーセンテージのCD8 Tリンパ球を示した(図5A)。この群(図5B)でも、また、th部分集団であるCD8 Tエフェクターメモリー細胞(CD8+ CD44+ CD62L−)およびCD8中枢メモリー細胞(CD8+ CD44+ CD62L+)(図5Cおよび5d)でも、より高いパーセンテージのCD8 Tメモリーリンパ球(CD8+ CD44+)が見られた。
【0196】
CD8 Tリンパ球の数およびパーセンテージの検討は、pApo−hIL15およびpSushiの投与が、脾臓、肝臓および末梢血において、他のプラスミドの投与よりも豊富なCD8 Tリンパ球集団を誘導することを示す。具体的には、pApo−hIL15およびpSushiの投与は、脾臓、肝臓および血液において、構築物phIL15およびpSushiの投与よりも有意に高いCD8 Tリンパ球集団をもたらす。
【0197】
実施例6 皮下CT26腫瘍モデルに対するApoA1およびhIL15に基づく構築物の抗腫瘍効果
流体力学的に注射したApoA1およびhIL15に基づく構築物の抗腫瘍効果を調べるために、結腸直腸腺癌に由来するCT26細胞系統によって誘発されるBalb/cマウスの皮下腫瘍モデルを選択した。マウス1匹当たり5×105細胞を皮下注射し、3日目にApoA1、hIL15およびSushiに基づき種々の構築物で処置した。腫瘍サイズは、デジタルカリパスで週に2回2つの直径の積を計算して測定した。サイズが246mm2を超えたところでマウスを犠牲にした。
【0198】
pApo−hIL15およびpSushiで処置したマウス群で腫瘍増殖の遅延が見られたが、これは統計学的に有意なものではなかった(図6A)。pApo−hIL15およびpSushiで処置したマウスの25%が腫瘍接種後50日生存し、目に見える腫瘍は無かった(図6B)。pApoプラスミドで処置したマウスの14%が生存し、同様にpApo−hIL15で処置したマウスの11%が生存した。他の処置群のマウスでこの腫瘍に生き残ったものは無かった。これらのデータは、pApo−hIL15およびpSushiによる処置は皮下CT26腫瘍モデルにおいてある種の抗腫瘍効果を有することを示す。
【0199】
実施例7 皮下MC38腫瘍モデルに対するApoA1およびhIL15に基づく構築物の抗腫瘍効果
ApoA1およびhIL15に基づく構築物の抗腫瘍効果の検討を継続するために、別の皮下腫瘍モデルを選択した。C57B16マウスに5×105細胞のMC38系統を皮下注射し、6日目に腫瘍結節を有するマウスに対し、ApoA1、hIL15およびSushiに基づく種々の構築物で処置した。腫瘍サイズはデジタルカリパスで週に2回2つの直径の積を計算して測定し、サイズが246mm2を超えたところでマウスを犠牲にした。
【0200】
pApo−hIL15およびpSushiで処置したマウス群で腫瘍増殖の遅延が見られたが、これは統計学的に有意なものではなかった(図7a)。pApo−hIL15およびpSushiで処置したマウスの37.6%が腫瘍接種後64日生存し、目に見える腫瘍は無かった(図7b)。pApoプラスミドで処置したマウスの16.7%が生存し、同様にpApo−hIL15で処置したマウスの40%、phIL15で処置したマウスの17%、および生理食塩水(S)単独を施したマウスの33%が生存した。phIL15+pSushi群のマウスに生存したものは無かった。
【0201】
これらのデータは、pApo−hIL15およびpSushiによる処置が皮下MC38腫瘍モデルに対してある種の抗腫瘍効果を有することを示す。
【0202】
実施例8 脾臓内MC38腫瘍モデルに対するApoA1およびhIL15に基づく構築物の抗転移効果
ApoA1およびhIL15に基づく構築物の抗腫瘍効果の検討を、肝臓転移を生じる腫瘍細胞の脾臓内注射モデルを用いて継続した。
【0203】
C57B16マウスに、マウス1匹当たり5×105細胞のMC38系統を脾臓内注射し、翌日、ApoA1、hIL15およびpSushiに基づく種々の構築物で処置した。
【0204】
19日目にマウスを犠牲にし、肝臓に存在する転移の数を観察した。転移数に応じてマウスを次の3群に分けた:I 広範囲の肝臓転移または全身転移のために死亡したマウス(一見して健常な肝臓組織が観察できない);II 肝臓組織の一部に転移を示すマウス;III 肝臓転移がないマウス。
【0205】
pApo−hIL15およびpSushiで処置したマウス群では、71%が肝臓転移を示さなかったのに対し、pApo−hIL15で処置したマウスでは30%、phIL15+pSushidで処置したマウスでは25%、生理食塩水(S)を施したマウスでは20%、およびphIL15群とpApo群では0%であった(図8)。
【0206】
これらのデータから、pApo−hIL15およびpSushiの投与は、脾臓内MC38腫瘍モデルにおいて調べた他の構築物よりも効果的な抗転移効果を有すると結論付けられる。
【0207】
実施例9 IL15α受容体「ノックアウト」マウスに対するApoA1およびhIL15に基づく構築物の投与の効果
IL15α受容体を欠くマウスに対するApoA1およびhIL15に基づく構築物の免疫賦活効果の検討を継続した。これらのマウスは、NK細胞を欠き、メモリーCD8 T細胞の量が少ないことから、特徴的な表現型を示す(Lodolce et al. Immunity 1998; 9: 669-676)。
【0208】
この実験の目的は、pApo−hIL15およびpSushiがこの表現型を改変することができるかどうかを観察することであった。4匹のマウスに、1匹にはプラスミドpApo−hIL15およびpSushiを、1匹にはプラスミドphIL15およびpSushiを、1匹にはプラスミドpApoを、最後に1匹にはpApo−hIL15を注射した。5日目にマウスを犠牲にし、脾臓を摘出し、NK細胞およびCD8 Tメモリーリンパ球の脾臓集団をフローサイトメトリーにより調べた(図9)。
【0209】
プラスミドpApo−hIL15およびpSushiで処置したマウスが示したNK細胞パーセンテージは1.02%であり、pApoで処置したマウスの場合(0.39%)よりはるかに高かった。pApo−hIL15およびpSushiで処置したマウスのCD8 Tメモリーリンパ球については、総脾細胞に対して1.47%のCD8+ CD44+細胞が存在した。このパーセンテージはpApo−hIL15構築物単独で達成されたものと同等である。この実験は、pApo−hIL15およびpSushi構築物による処置が、IL15α受容体「ノックアウト」マウスの表現型を部分的に回復させ、試験下の残りの構築物で見られたものよりも高いNKおよびCD8 Tメモリー細胞の脾臓パーセンテージが得られることを示す。
【0210】
実施例10 Sushi、IL15およびApoA1の融合物に基づく三重構築物の投与の効果
実施例1.8.に記載の三重構築物によるプラスミドpmSushi−mIL15−mApoのセイン剤的免疫賦活効果を調べるために、実施例5の記載と同様にして、新たなCD8リンパ球増殖試験を行った。
【0211】
このために、C57BL/6マウス群を確立し(各処置群2〜3匹)、供試プラスミド(2.5μg/マウス)を流体力学的に注射した。6日後、脾臓を解離させて単細胞懸濁液を得、総細胞を数え、CD8 Tリンパ球を抗CD3抗体、抗CD8抗体および抗CD44抗体で標識し、NK細胞を抗CD3抗体、抗NK1.1抗体で標識した後に、多色フローサイトメトリーにより分析した。
【0212】
種々の群で供試したプラスミドは、
・pmSushi−mIL15−mApo;
・pApo−hIL15とpSushiの組合せ(pApo−hIL15+pSushi);
・pApo−hIL15;
・phIL15とpSushiの組合せ(phIL15+pSushi);
・phIL15;および
・pApo
であった。
【0213】
この試験では、三重融合タンパク質をコードするpmSushi−mIL15−mApoプラスミドで処置した動物群で、残りの処置群よりも著しく高い脾細胞数の増殖が見られた(図10A)。同様に、pmSushi−mIL15−mApoによる処置は、他の処置で見られたものよりも極めて有意に高いCD8 Tリンパ球数(図10B)およびNK細胞数(図10C)の増殖を誘導した。
【0214】
実施例11 マウス脾臓におけるCD8 TおよびNK細胞増殖の刺激に対する、ネズミIL15をコードする構築物およびヒトIL15をコードする構築物の効果
mIL15分子およびhIL15分子をコードする構築物の、脾細胞数に対する刺激活性について、対応するプラスミドを流体力学的注射(10μg/マウス)により、pSushiプラスミドの同時投与を伴ってまたは伴わずに投与することによる比較試験を行った。4日後に、脾臓を解離させて単細胞懸濁液を得、総細胞を数え、CD8 Tリンパ球を抗CD3抗体および抗CD8抗体で標識し、NK細胞を抗NK1.1抗体および抗CD−3抗体で標識した後に、多色フローサイトメトリーにより分析した。
【0215】
プラスミドpmIL15およびプラスミドphIL15の注射は同等数の脾細胞、ならびに同等パーセンテージのCD8 TおよびNK細胞を誘導した(図11)。同様に、プラスミドpmIL15またはphIL15をpSushiと同時投与した場合では、ヒトタンパク質をコードするプラスミドを注射したマウスの脾臓はより高いパーセンテージのCD8 T細胞およびNK細胞を示すことが認められたが、この傾向は統計学的に有意であると言えなかった(ラスカル−ウォリス検定)。
【0216】
実施例12 脾臓および肝臓におけるNK細胞のパーセンテージに対するmSushiとmIL15およびApoとの融合の効果
三重融合タンパク質をコードするプラスミドpmSushi−mIL15−mApoは、脾臓および肝臓のNK細胞の数を、プラスミドpmSushi−mIL15をプラスミドpApoと同時に投与する場合よりも高い程度で増大させる。
【0217】
C57BL/6マウス群を確立し、供試プラスミドを流体力学的に注射した。
・pmSushi−mIL15−mApo、用量1μg/マウス;
・pmSushi−mIL15−mApo、用量2.5μg/マウス;
・pmSushi−mIL15−mApo、用量5μg/マウス;
・pmSushi−mIL15とpApoの組合せ、用量1μg/マウス;
・pmSushi−mIL15とpApoの組合せ、用量2.5μg/マウス;および
・pmSushi−mIL15とpApoの組合せ、用量5μg/マウス。
【0218】
4日後に、脾臓を解離させて単細胞懸濁液を得、肝臓のリンパ細胞をPercoll(著作権)による遠心分離によって単離した。NK細胞を抗NK1.1抗体および抗CD−3抗体で標識し、多色フローサイトメトリーにより分析した。pmSushi−mIL15−mApo注射は、脾臓および肝臓において、pmSushi−mIL15とpApoの同時投与(pSushi−mIL−15+pApo)の場合よりも高いNK細胞パーセンテージの存在を誘導した(図12)。
【0219】
実施例13 皮下MC38腫瘍モデルに対するSushi、IL15およびApoA1に基づく三重構築物の抗腫瘍効果
実施例1.8に記載の三重構築物によるpmSushi−mIL15−mApoプラスミドの抗腫瘍効果の検討を継続するために、皮下腫瘍モデルを選択した。C57B16マウスに5×105細胞のMC38系統を皮下注射し、8日目および19日目に種々の構築物で処置した。種々の処置群での供試プラスミドは、
・pApo;
・pmSushi−mIL15−mApo;
・pApo−hIL15とpSushiの組合せ(pApo−hIL15+pSushi)
であった。
【0220】
このために、腫瘍結節を有するC57BL/6マウス群を確立した:5匹はpApoで、8匹はpmSushi−mIL15−mApoで、9匹はpApo−hIL15+pSushiで、供試プラスミドpApo(1μg/マウス)、pmSushi−mIL15−mApo(1μg/マウス)およびpApo−hIL15+pSushi(10μg/マウス1匹)を流体力学的に注射することにより処置した。腫瘍サイズは、デジタルカリパスで週に2回2つの直径の積を計算して測定し、サイズが246mm2を超えたところでマウスを犠牲にした。
【0221】
三重融合タンパク質をコードするpmSushi−mIL15−mApoで処置したマウス群で腫瘍増殖の遅延が見られたが、これは統計学的に有意なものではなかった(図13)。pmSushi−mIL15−mApoで処置したマウスの33.3%は、試験の終了時(接種29日後)に目に見える腫瘍を示さず、40mm2を超える表在腫瘍を示したマウスは33.3%だけであった。pApoプラスミドで処置したマウスは、犠牲当日(29日目)、20%が目に見える腫瘍を示し、80%のマウスが40mm2を超える腫瘍を示したが、pApo−hIL15+pSushiで処置したマウスでは、試験の終了時(29日目)に腫瘍を持たないものはなく、三重融合物の用量よりも10倍高い用量の各プラスミドを施したにもかかわらず、80%のマウスが40mm2を超える腫瘍を持っていた。
【0222】
これらのデータは、pmSushi−mIL15−mApoによる処置が皮下MC38腫瘍モデルに対してある種の抗腫瘍効果を有することを示す。
【発明の背景】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、免疫学の分野、より具体的には、被験体の生得免疫応答と適応免疫応答の双方を促進することができる組成物の分野に関する。これらの組成物は、腫瘍および感染性疾患など、より大きな免疫系活性を必要とするあらゆる疾患を治療するのに有用である。
【0002】
発明の背景
インターロイキン15(IL15またはIL15)は、NK、NKT細胞およびCD8 Tメモリーリンパ球の活性のための生命維持に必要なサイトカインである。これはα、βおよびγと呼ばれる3つのサブユニットからなる受容体を介してその機能を遂行する。サブユニットβおよびγは、IL−2受容体と共通である。IL15受容体のα鎖はIL15に独特であり、サイトカインの細胞外媒質への放出に必要であり[Duitman, E.H., et al., Mol Cell Biol, 2008. 28:4851-61]、IL15をサブユニットIL15RβおよびIL15Rγに「提示する」。
【0003】
免疫系の刺激特性のために、このインターロイキンは、NK細胞の存在に依存する抗腫瘍特性(Suzuki, 2001, J. Leuokoc. Biol., 69:531-537)およびT細胞の存在に依存する抗腫瘍特性(Hazama, 1999, Br. J. Cancer., 80:1420-1426, Meazza, 2000, Int. J. Cancer, 87:574-581 and Klebanoff, 2004, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2004, 101:1969-1974)を有する。IL15はまた、ウイルス感染に対する保護、ならびに免疫および樹状細胞の発達におけるT細胞に基づく応答の拡大および維持にも関与する。
【0004】
よって、IL15は、免疫系が関与する疾患を治療するための有用な治療薬となり得る。しかしながら、IL15の機能に関するin vivo研究は、1つには、組換えIL15が利用できないため、また、IL15が天然遺伝子から発現される場合に見られる分泌レベルが低いために妨げられてきた。さらに、ほとんどのサイトカインは、それらがin vivoにおいて局部的かつ一時的に生産されることを考えれば、血漿半減期が極めて短い。結論として、in vivoにおけるIL15の使用は、比較的高用量で頻繁な投与を必要とし、治療に耐性のない癌患者に起こり得る種々の二次的作用をもたらす。
【0005】
これらの欠点を克服するために、IL15は抗CD40、IL−7またはIL−6抗体などの他の治療と組み合わせて用いられてきた[Chou, P.C., et al., 2009, Vet Immunol Immunopathol, 130:25-34; Lin, C.Y., et al., Cancer Lett, 2008. 272(2): p. 285-95; Zhang, M., et al., Proc Natl Acad Sci USA, 2009, 106:7513-8およびCha, E., et al., Breast Cancer Res Treat, 2009]。これらの組合せは、低用量のIL15で同等の効果を達成可能とする相乗効果を示す。
【0006】
IL15活性を増強するもう1つの可能性は、免疫グロブリンの定常領域とIL15受容体のα鎖の可溶性領域とを含んでなる融合タンパク質と同時投与することからなり、これはIL15活性に50倍の増強をもたらす(Rubinstein M.P. et al., 2006, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:9166-71およびStoklasek T.A. et al., 2006, J. Immunol.; 177:6072?80)。
【0007】
最近、IL15受容体α鎖のアミノ末端のアミノ酸1〜77により形成されるポリペプチド(いわゆる「Sushiドメイン」)がIL15のアゴニストであることが実証された[Mortier, E., et al., J Biol Chem, 2006. 281(3): p. 1612-9]。よって、該ドメインとIL15を含む融合タンパク質の投与は、IL15の場合よりも大きな抗腫瘍効果を示し、B16F10腫瘍の肺転移に65%の低下をもたらし、ヌードマウスの盲腸に移植されたHCT−116ヒト腫瘍の転移数に減少をもたらす[Bessard, A., et al., Mol Cancer Ther, 2009. 8(9): p. 2736-45]。
【0008】
望まない二次的作用を受けることなくIL15の効果の改善を達成するためのもう1つの選択肢は、その半減期を延長するために分子を改変することからなる。よって、US2006257361は、免疫グロブリンの定常領域と、投与後に非改変IL15よりも長い血清半減期を示すIL15とを含んでなる融合タンパク質を記載している。
【0009】
しかしながらやはり、当技術分野において、タンパク質がその免疫応答促進活性を維持し、IL15に関連する二次的作用を可能な限り低減させることができるIL15の別の処方物が必要である。
【発明の概要】
【0010】
第一の態様において、本発明は、
(i)以下の群:
(a)ApoAポリペプチド、または該ApoAポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体を含んでなる、ポリペプチド、および
(b)ApoAポリペプチド、または該ApoAポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体をコードする、ポリヌクレオチド
から選択される第一の成分、ならびに
(ii)以下の群:
(a)IL15、またはIL15と少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体、および
(b)IL15、またはIL15と少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体をコードする、ポリヌクレオチド
から選択される第二の成分、ならびに
(iii)以下の群:
(a)IL15受容体α鎖のSushiドメイン、またはIL15受容体α鎖のSushiドメインと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体、および
(b)IL15受容体α鎖のSushiドメイン、またはIL15受容体α鎖のSushiドメインと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体をコードする、ポリヌクレオチド
から選択される第三の成分
を一緒にまたは個別に含んでなる組成物に関する。
【0011】
第二の態様において、本発明は、
(i)ApoAポリペプチド、または該ApoAポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体により形成される、領域A、
(ii)IL15、またはIL15と少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体により形成される、領域B、および
(iii)IL15受容体α鎖のSushiドメイン、またはIL15受容体α鎖のSushiドメインと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体により形成される、領域C
を含んでなる融合タンパク質に関する。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、本発明のポリヌクレオチドを含んでなるベクターもしくは遺伝子構築物、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、または本発明の遺伝子構築物を含んでなる宿主細胞に関する。
【0013】
別の態様において、本発明は、本発明の組成物、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクターまたは遺伝構築物、本発明の宿主細胞と、薬学上許容されるビヒクルとを含んでなる医薬組成物に関する。
【0014】
別の態様において、本発明は、抗原特異的Tリンパ球の大量増殖を促進するin vitro法であって、事前にin vivoで該抗原に曝されたリンパ球集団を、本発明の組成物、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクターまたは遺伝子構築物、本発明の宿主細胞と接触させることを含んでなる方法に関する。
【0015】
さらに、本発明は、医療用の、または被験体の免疫応答の刺激を必要とする疾患の治療のための、本発明の組成物、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクターもしくは遺伝子構築物、本発明の宿主細胞に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】時間t(h:時間)におけるhIL15(ng/mL)の発現動態。C57B16マウス群にプラスミド、pApo−hIL15+pSushi、pApo−hIL15、phIL15+pSushi、phIL15、pApoまたは生理食塩水(S)の流体力学的注射(hydrodynamic injection)を施した。8時間目、24時間目、96時間目、168時間目および240時間目に採血し、hIL15の血清濃度をELISAアッセイにより分析した。各群動物2〜3匹を用いた代表的な実験の平均および平均標準偏差を示す。結果は反復測定ANOVAとその後のボンフェローニ検定により統計学的に比較した。他群と比較した場合、pApo−hIL15処置群の8時間目と24時間目でhIL15レベル間に有意差が見られた(p<0.001)。
【図2】流体力学的注射によりpSushiと同時投与したpApo−hIL15の機能的増殖アッセイ。CTLL2細胞を、pApo−hIL15およびpApo−hIL15+pSushiでマウスを処置して24時間後に得られた血清の希釈系で培養した。48時間目に、トリチウム化チミジンのCTLL2細胞への組込みを増殖指数(c.p.m.)として調べたところ、pApo−hIL15とpSushiで同時処置したマウス血清は、pApo−hIL15単独で処置したマウスの血清よりも高い増殖を誘導したことが見て取れた(p<0.001)。各群動物4〜5匹を用いた代表的な実験の平均および平均標準偏差を示す。結果は、反復測定ANOVAにより統計学的に比較した。
【図3】CD8+ T細胞の総数および総脾細胞に対するパーセンテージの経時的(t(d)、日)増加。C57B16マウス群に種々のプラスミド構築物の流体力学的注射を施し、3日目、4日目、5日目、6日目および7日目に犠牲にし、脾臓を摘出した。CD8+ T細胞の数(A)、総脾細胞に対するCD8+ T細胞のパーセンテージ(B)、CD8+CD44+メモリーT細胞の数(C)および総脾細胞に対するCD8+CD44+メモリーT細胞のパーセンテージ(D)を測定した。プラスミドpApo−hIL15およびpSushiを投与したマウス群(黒四角)は、他群:pApo−hIL15(□)、phIL15+pSushi(▲)、phIL15(△)、pApo(○)および生理食塩水ビヒクル(*)よりも多数のCD8+ T細胞を示す。各群動物2匹を用いた代表的な実験の平均および平均標準偏差を示す。データは、反復測定ANOVAとその後の、pApo−hIL15+pSushi群とphIL15+pSushi群を比較するボンフェローニ検定により分析した。*p<0.05;**p<0.001;***p<0.0001。
【図4】肝臓の総リンパ球に対するCD8+ T細胞のパーセンテージの経時的(t(d)、日)増加。C57B16マウスに種々の構築物を流体力学的に投与した。3日目、4日目、5日目、6日目および7日目に動物を犠牲にし、肝臓を単離した。総リンパ球に対するCD8+ T細胞のパーセンテージを測定した。プラスミドpApo−hIL15およびpSushi(黒四角)を投与したマウス群は、残りの群:pApo−hIL15(□)、phIL15+pSushi(▲)、phIL15(△)、pApo(○)および生理食塩水ビヒクル(*)よりも高いCD8+ T細胞パーセンテージを示した。各群動物2匹を用いた代表的な実験の平均および平均標準偏差を示す。データは、反復測定ANOVAとその後の、pApo−hIL15+pSushi群とphIL15+pSushi群を比較するボンフェローニ検定により分析した。*p<0.05;**p<0.001;***p<0.0001。
【図5】CD8+ T細胞の総数および末梢血リンパ球に対するパーセンテージの増加。C57B16マウスにphIL15を用いた種々の構築物を流体力学的に投与した。3日目、4日目、5日目および6日目に採血し、CD8+ Tリンパ球のパーセンテージ(A)、CD8+CD44+メモリーT細胞のパーセンテージ(B)、エフェクターメモリー細胞CD8+CD44+CD62L−のパーセンテージ(C)および中枢メモリー細胞CD8+CD44+CD62L+のパーセンテージ(D)を測定した。総ての供試集団において、プラスミドpApo−hIL15およびpSushiを施すマウス群(黒四角)は、他群:pApo−hIL15(□)、phIL15+pSushi(▲)、phIL15(△)、pApo(●)、pSushi(▽)および生理食塩水ビヒクル(*)よりも高いパーセンテージのCD8+ T細胞を示した。各群動物3匹を用いた代表的な実験の平均および平均標準偏差を示す。データは、反復測定ANOVAとその後の、pApo−hIL15+pSushi群とphIL15+pSushi群を比較するボンフェローニ検定により分析した。*p<0.05;**p<0.001;***p<0.0001。
【図6】皮下CT26腫瘍モデルにおける構築物の経時的抗腫瘍効果(t(d)、日)。Balb/cマウスに5×105のCT26細胞を皮下に施し、3日後にpApo−hIL15、pApo−hIL15+pSushi、phIL15、phIL15+pSushi、pApoまたは生理食塩水(S)で流体力学的に処置した。2日置きにデジタルカリパスを用いて腫瘍を測定し(mm2)(A)、動物の生存時間を観察した(%SV)(B)。プラスミドpApo−hIL15およびpSushiを投与したマウスは、他群のマウスよりも腫瘍増殖の遅延および高い生存率を示すことが見て取れた。各群動物8匹を用いた代表的な実験の平均および平均標準偏差を示す。
【図7】皮下MC38腫瘍モデルにおけるプラスミドの経時的抗腫瘍効果(t(d)、日)。C57B16マウスに5×105のMC38細胞を皮下投与し、6日後にpApo−hIL15、pApo−hIL15+pSushi、phIL15、phIL15+pSushi、pApoまたは生理食塩水(S)で流体力学的に処置した。2日置きにデジタルカリパスを用いて腫瘍を測定し(mm2)(A)、動物の生存時間を観察した(%SV)(B)。プラスミドpApo−hIL15およびpSushiを投与したマウスは、腫瘍増殖の遅延を示すことが見て取れた。代表的な実験の平均および平均標準偏差を示す。
【図8】脾臓内MC38腫瘍モデルにおける種々のプラスミドの抗転移効果。C57B16マウスの脾臓内に5×105のMC38細胞を投与し、翌日、pApo−hIL15、pApo−hIL15+pSushi、phIL15、phIL15+pSushi、pApoまたは生理食塩水(S)で流体力学的に処置した。19日後、マウスを犠牲にし、I、肝臓転移または全身転移のために死に至ったマウス;II、肝臓組織の一部に転移を示すマウス;III、肝臓転移が無いマウスの3群に分けた。代表的な実験のデータを示す。
【図9A】IL15のα受容体に関する「ノックアウト」マウスにおける種々のプラスミドの効果。IL15のα受容体を欠く4匹のマウスをプラスミドpApo−hIL15とpSushi、phIL15とpSushi、pApoとpApo−hIL15で流体力学的に処置した。動物を5日後に犠牲にし、脾臓を摘出し、分化に関するCD3マーカーを用いたフローサイトメトリーによってNK細胞およびCD8+ Tメモリーリンパ球の脾臓集団を測定した。この図には、非突然変異型C57B16マウスのNK集団およびCD8+ Tメモリー集団も含まれる。供試マウスのNK細胞(A)、CD8+ Tリンパ球(B)およびCD8+CD44+部分集団(C)のパーセンテージを示す。総脾細胞に対する細胞のパーセンテージを示す。
【図9B】IL15のα受容体に関する「ノックアウト」マウスにおける種々のプラスミドの効果。IL15のα受容体を欠く4匹のマウスをプラスミドpApo−hIL15とpSushi、phIL15とpSushi、pApoとpApo−hIL15で流体力学的に処置した。動物を5日後に犠牲にし、脾臓を摘出し、分化に関するCD3マーカーを用いたフローサイトメトリーによってNK細胞およびCD8+ Tメモリーリンパ球の脾臓集団を測定した。この図には、非突然変異型C57B16マウスのNK集団およびCD8+ Tメモリー集団も含まれる。供試マウスのNK細胞(A)、CD8+ Tリンパ球(B)およびCD8+CD44+部分集団(C)のパーセンテージを示す。総脾細胞に対する細胞のパーセンテージを示す。
【図9C】IL15のα受容体に関する「ノックアウト」マウスにおける種々のプラスミドの効果。IL15のα受容体を欠く4匹のマウスをプラスミドpApo−hIL15とpSushi、phIL15とpSushi、pApoとpApo−hIL15で流体力学的に処置した。動物を5日後に犠牲にし、脾臓を摘出し、分化に関するCD3マーカーを用いたフローサイトメトリーによってNK細胞およびCD8+ Tメモリーリンパ球の脾臓集団を測定した。この図には、非突然変異型C57B16マウスのNK集団およびCD8+ Tメモリー集団も含まれる。供試マウスのNK細胞(A)、CD8+ Tリンパ球(B)およびCD8+CD44+部分集団(C)のパーセンテージを示す。総脾細胞に対する細胞のパーセンテージを示す。
【図10】脾細胞、CD8+ T細胞およびNK1.1細胞の総数の増加。C57B16マウス群をプラスミド:1)pmSushi−mIL15−mApo;2)pApo−hIL15とpSushiの組合せ(pApo−hIL15+pSushi);3)pApo−hIL15;4)phIL15とpSushiの組合せ(phIL15+pSushi);5)phIL15;および6)pApoの流体力学的注射により処置した。6日目に動物を犠牲にし、脾臓を摘出した。A)総脾細胞集団;B)CD8+ Tメモリーリンパ球(CD8+CD3+);およびC)NK細胞(NK1.1+CD3+)のフローサイトメトリー試験を行った。pmSushi−mIL15−mApoを投与したマウスは、他群よりも総脾細胞に対してより多数のCD8+ T細胞を示した。各群動物2〜3匹を用いた代表的な実験の平均および平均標準偏差を示す。データは、一元配置ANOVAとその後の、pmSushi−mIL15−mApo群と、示されたタンパク質をコードするプラスミドを注射した残りの群を比較するボンフェローニ検定により分析した。*p<0.05;**p<0.001;***p<0.0001。
【図11】脾細胞の総数ならびに総脾細胞に対するCD8+ T細胞およびNK細胞のパーセンテージの増加における、IL15のヒトまたはネズミイソ型の比較効果。C57BL/6マウスの群をプラスミド:1)pmIL15;2)phIL15;3)pmIL15とpSushiの組合せ;および4)phIL15とpSushiの組合せの流体力学的注射により処置した。4日後に動物を犠牲にし、脾臓を単離し、総脾細胞(A)、脾細胞の総数に対するCD8 T細胞(B)、および脾細胞の総数に対するNK細胞を数えた(C)。各群動物1〜2匹を用いた代表的な実験の平均および平均標準偏差(適用可能な場合)を示す。データは、クラスカル−ウォリス(Kruskall-Wallis)検定とその後のダンの多重比較検定(Dunn’s multiple comparison test)により分析した。これらの図は、mIL15とhIL15が脾臓における脾細胞、CD8 T細胞およびNK細胞の数を同様に刺激することを示す。
【図12】脾臓(A)および肝臓(B)におけるNK細胞のパーセンテージに対するmSushiとmIL15およびApoAIの融合の効果。C57BL/6マウス群をプラスミド:1)pmSushi−mIL15−mApo(それぞれ1μg/マウス、2.5μg/マウスおよび5μg/マウスの異なる用量で投与);および2)pmSushi−mIL15とpApoの組合せ(双方とも同じ3用量で投与)の流体力学的注射により処置した。4日後に動物を犠牲にし、脾臓(A)および肝臓(B)を単離し、NK細胞(NK1.1+CD3+)をマークした。総ての供試用量で、プラスミドpmSushi−mIL15−mApoを投与したマウス群は他群よりも高いNK細胞パーセンテージを示した。各群動物2〜3匹を用いた代表的な実験の各反復および平均を示す。データは、一元配置ANOVAのより分析した。
【図13】皮下MC38腫瘍モデルにおけるmSushiとmIL15およびApoAIの融合の抗腫瘍効果。C57B16マウスに5×105のMC38細胞を皮下投与し、8日後および19日後にプラスミド:1)pApo;2)pmSushi−mIL15−mApoおよび3)pApo−hIL15とpSushiの組合せ(pApo−hIL15+pSushi)で流体力学的に処置した。腫瘍を2〜3日おきにデジタルカリパスを用いて測定した(mm2)。pmSushi−mIL15−mApoを投与したマウスは、腫瘍増殖の遅延を示すことが見て取れた。各群動物5〜9を用いた代表的な実験の平均および標準偏差を示す。
【発明の具体的説明】
【0017】
本発明者らは、驚くべきことに、IL15受容体α鎖のSushiドメイン(以下IL15αR−sushi)とともにApoAタンパク質と融合されたIL15を含んでなる融合タンパク質をコードする核酸の同時投与が、IL15とIL15αR−sushiを一緒に投与した際に見られるものよりも高いIL15活性をもたらすことを見出した。このような高い活性は、本発明の実施例3に見られるようにより高く、より長いIL15の循環レベルが得られた結果であるだけでなく、CTLL2細胞の増殖誘導能(本発明の実施例4)、脾臓内CD8 Tリンパ球およびCD8 Tメモリー細胞、CD8 T肝内リンパ球および血液CD8Tリンパ球の増殖促進能(本発明の実施例5)ならびに2つの実験腫瘍モデルにおけるより高い抗腫瘍効果(本発明の実施例7)および抗転移効果(本発明の実施例8)の結果でもある。
【0018】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、ApoAとの融合タンパク質の形態でのIL15の投与から得られる相乗効果は、それらの表面でApoA受容体を発現する標的組織において、IL15がこれまでに考えられていたものとは異なる、または補足的な組織に対してその作用を遂行し得るような形でIL15作用を果たす結果であると考えられる。この仮説は、IL15のα受容体の遺伝子を欠失したマウスでも見られる相乗効果に対しても維持される。
【0019】
より驚くべきは、IL15およびIL15αR−sushiと融合したApoA1タンパク質を含んでなる三重融合融合タンパク質をコードし、その発現を可能とする核酸の投与は、IL15をコードする核酸の単独もしくはIL15αR−sushiをコードする別の核酸と組み合わせた投与、またはApoA1とIL15の融合タンパク質をコードする核酸の単独もしくはIL15αR−sushiをコードする別の核酸と組み合わせた投与で得られるものよりもはるかに高いCD8リンパ球およびNK細胞の増殖をもたらすことが認められたことである。
【0020】
本発明の組成物
よって、第一の態様において、本発明は、
(i)以下の群:
(a)ApoAポリペプチド、または該ApoAポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体を含んでなる、ポリペプチド、および
(b)ApoAポリペプチド、または該ApoAポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体をコードする、ポリヌクレオチド
から選択される第一の成分、ならびに
(ii)以下の群:
(a)IL15、またはIL15と少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体、および
(b)IL15、またはIL15と少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体をコードする、ポリヌクレオチド
から選択される第二の成分、ならびに
(iii)以下の群:
(c)IL15受容体α鎖のSushiドメイン、またはIL15受容体α鎖のSushiドメインと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体、および
(d)IL15受容体α鎖のSushiドメイン、またはIL15受容体α鎖のSushiドメインと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体をコードする、ポリヌクレオチド
から選択される第三の成分
を一緒にまたは個別に含んでなる組成物に関する。
【0021】
本発明において「組成物」とは、示された成分、言い換えれば、ポリペプチドApoA、IL15およびIL15受容体α鎖のSushiドメインを含んでなる材料、ならびにその種々の成分の任意の量での組合せから直接的または間接的に得られる他のいずれかの生成物の組成物に関する。当業者ならば、その組成物は単一の処方物として処方されてもよいし、または組合せ製剤の形態で一緒に使用するために組み合わせることができるように各化合物の処方物として個別に提供されてもよいことを認識するであろう。該組成物は、各成分が個別に処方および包装されたパーツキットであってもよい。
【0022】
本明細書において「タンパク質」とは、ポリペプチドと区別無く、種々のアミノ酸がペプチド結合またはジスルフィド架橋によって連結された任意の長さのアミノ酸鎖を意味する。
【0023】
本発明において「ポリヌクレオチド」とは、不定数のモノマーにより形成されるポリマーに関し、ここで、モノマーは、リボヌクレオチドならびにデオキシリボヌクレオチドを含むヌクレオチドである。ポリヌクレオチドは、メチル化により修飾されたモノマーならびに非修飾型モノマーを含む。「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は本発明では区別無く用いられ、mRNA、cDNAおよび組換えポリヌクレオチドを含む。本発明において、ポリヌクレオチドは、天然に見られるポリヌクレオチドに限定されず、非天然ヌクレオチド類似体およびヌクレオチド間結合が見られるポリヌクレオチドも含む。この種の非天然構造の限定されない例としては、糖がリボースとは異なるポリヌクレオチド、ホスホジエステル結合3’−5’および2’−5’が見られるポリヌクレオチド、逆転結合(3’−3’および5’−5’)が見られ、分岐構造を持つポリヌクレオチドが挙げられる。また、本発明のポリヌクレオチドは、ペプチド核酸(PNA)、ロックド(locked)核酸(LNA)、メチルホスホネート、ホスホルアミダート、C1−C6アルキルホスホトリエステル、ホスホロチオエートおよびホスホロジチオエート型のC1−C4アルキルリン酸結合などの非天然ヌクレオチド間結合も含む。いずれにせよ、本発明のポリヌクレオチドは、天然ポリヌクレオチドと同様の方法で標的核酸とハイブリダイズする能力を保持する。
【0024】
本発明の組成物の第一の成分
本発明の第一の成分は、ApoAポリペプチドまたはその機能的に等価な変異体、およびApoAポリペプチドまたはその機能的に等価な変異体をコードする核酸の群から選択される。
【0025】
本明細書において「ApoAポリペプチド」とは、高密度リポタンパク質(HDL)の一部を形成し、肝臓細胞表面の受容体と特異的に相互作用することができ、それによりApoAタンパク質と連結しているこの器官に目的分子を輸送するその能力を保証するApoAファミリーの任意のメンバーに関する。好ましくは、本発明において使用可能なApoA分子は、ApoA−I、ApoA−II、ApoA−III、ApoA−IVおよびApoA−V、またはその機能的に等価な変異体の群から選択される。
【0026】
好ましい実施態様では、本発明において使用されるApoAタンパク質はタンパク質ApoA−Iである。ApoA−Iは、本発明において、高密度リポタンパク質(HDL)の一部を形成する成熟型プレプロApoA−Iタンパク質として理解される。ApoA−Iは分泌シグナル配列を含む前駆体(プレプロApoA−I)として合成され、このシグナル配列が除去されて前駆体が次の段階へ進む。このシグナル配列は18個のアミノ酸、6個のプロペプチド、そしてアミノ酸243個の成熟型タンパク質からなる。成熟型タンパク質としては、ペプチドシグナルを欠き、プロセシングを受けたものを用いるのが好ましい。好ましい実施態様では、ApoA−Iタンパク質はヒト起源であり、そのアミノ酸配列は配列番号1(UniProt受託番号P02647)に示されているものである。別の好ましい実施態様では、タンパク質ApoA−Iはネズミ起源、特にマウスのものであり、そのアミノ酸配列は配列番号2(UniProt受託番号Q00623)に示されているものである。別の好ましい実施態様では、ApoA−1タンパク質はネズミ起源、特にラットのものであり、そのアミノ酸配列は配列番号3(UniProt受託番号P04639)に示されているものである。
【0027】
「ApoA−Iの機能的に等価な変異体」は、肝臓細胞に存在するHDL受容体を形成するいわゆる「スカベンジャー受容体クラスB I型」(SR−BI)と相互作用するそれらの完全な能力を実質的に保持している、上述のApoA−I配列の1以上のアミノ酸の挿入、置換または欠失から得られる総てのポリペプチドを意味すると理解される。HDL受容体と相互作用する能力は、本質的にMonaco et al (EMBO J., 1987, 6:3253-3260)に記載されているように、肝細胞の膜へのApoA−I結合試験か、または肝細胞膜の受容体へのHDLの結合を阻害するApoA−Iもしくはその変異体の能力の測定によって決定される。好ましくは、肝細胞膜に結合するApoA−I変異体の解離定数は少なくとも10−8M、10−7M、10−6M、10−5Mまたは10−4Mである。
【0028】
本発明において意図されるApoA−I変異体は、ApoA−Iポリペプチドと少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、90%または95%の類似性または同一性を示すポリペプチドを含む。2つのポリペプチド間の同一性の程度は、コンピューターに実装されたアルゴリズムおよび当業者に広く知られている方法を用いて決定される。2つのアミノ酸配列間の同一性は好ましくは、BLASTPアルゴリズム(BLAST Manual, Altschul, S. et al., NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894, Altschul, S., et al., J., 1990, Mol. Biol. 215:403-410)を用いて決定される。
【0029】
好ましくは、本発明において使用されるApoA−I変異体は上述のApoA−Iに比べて高い血清半減期を示し、ApoA−Iの場合に見られるものよりも高い血清ApoA−Iレベルに到達させることができる。タンパク質、特に、ApoA−Iの血清半減期を決定する方法は当技術分野で公知であり、とりわけ、Eisenberg, S. et al (J. Lipid Res., 1973, 14:446-458)、Blum et al. (J. Clin. Invest., 1977, 60:795-807)およびGraversen et al (J Cardiovasc Pharmacol., 2008, 51:170-177)に記載されているマークタンパク質による代謝標識に基づく方法の使用が含まれる。高い半減期を示す前記変異体の一例として、例えば、ミラノ株(R173C突然変異を含む)として知られる変異体がある。
【0030】
本発明の第一の成分は、ApoAおよび上述のApoA変異体のうち少なくとも1つをコードする核酸であり得る。よって、ApoAをコードする核酸の場合、それはNCBI受託番号X02162(配列番号4)の配列に相当するヒト起源のもの、NCBI受託番号X64262(配列番号5)の配列に相当するネズミ起源のもの、NCBI受託番号M00001(配列番号6)の配列に相当するラット起源のものであり得る。
【0031】
当業者ならば、本発明の第一の成分を形成する核酸が細胞内で発現され、やがて媒体中に分泌される必要があり、そのため、ApoAまたはその機能的に等価な変異体をコードする配列は5’末端に分泌シグナルをコードする配列を持てばよいことを認識するであろう。本発明において「分泌シグナル配列」という表現は、それらのN末端にその配列を有する総てのタンパク質を細胞の分泌経路へと誘導し得るアミノ酸配列を意味する。本発明において使用するのに好適なシグナル配列としては、とりわけ、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、成長ホルモンGM−CSF、および免疫グロブリン、特に、IgκまたはIgVχのシグナル配列が挙げられる。好ましくは、本発明の成分Aの一部を形成するシグナル配列は、それ自体従前に定義されたようなApoAのシグナル配列である。
【0032】
あるいは、本発明の第一の成分は、上述の配列のいずれかと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を示す核酸であってもよく、ここで、同一性パーセンテージは、GAP、BESTFITまたはFASTA型のアルゴリズム(そのコンピューター実装はthe Wisconsin Genetics Software Package Release 7 (Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.)に見られ、Smith and Waterman (Adv. Appl. Math., 1981, 2:482)、Needleman and Wunsch (J. Mol.. Biol. 1970, 48: 443)またはPearson and Lipman (Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.), 1988, 85:2444)のローカルアルゴリズムを用いる)を用いることで決定される(種々のパラメーターに関してデフォルト値を使用)。
【0033】
あるいは、本発明の組成物の第一の成分は、ApoA、または従前に定義された種々の哺乳類のApoAに相当する天然配列のいずれかと特異的にハイブリダイズし得るその変異体をコードするポリヌクレオチドである。本発明において「標的ポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズし得るポリヌクレオチド」は、厳格な条件でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを意味するものと理解され、この厳格な条件とは、例えばおよそ65℃の温度で、6×SSC、0.5%SDS、5%デンハート溶液および100μg/ml濃度の非特異的変性DNAの溶液、およびイオン強度が等価な他の任意の溶液中、特異的ハイブリダイズを可能とし、その後、例えば0.2%SSCおよび0.1%SDSの溶液、およびイオン強度が等価な他の任意の溶液の存在下での洗浄工程が続く条件を意味するものと理解される。しかしながらやはり、これらの厳格な条件は、当業者により、ハイブリダイズさせる配列の大きさ、GC含量および他のパラメーターに従って適合させることができる。適当なハイブリダイゼーション条件を選択するのに好適な方法は、Sambrook et al., 2001 (Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition, Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)により記載されている。
【0034】
本発明の組成物の第二の成分
本発明の第二の成分は、IL15またはその機能的に等価な変異体、およびIL15またはその機能的に等価な変異体をコードする核酸の群から選択される。
【0035】
本発明において「IL15」または「IL−15」とは、その単離、クローニングおよび配列がGrabstein et al. (US5747024 and Grabstein et al., 1994, Science 246: 965-968)に記載されているサイトカインを意味する。IL15は、天然IL15のアミノ酸配列を有する任意のポリペプチド形態を含む。本発明の組成物および融合タンパク質の一部を形成する、使用可能なIL15の例としては、齧歯類(マウス、ラット、ハムスター)ヒト、霊長類、イヌ、ネコ、ブタ、ウマ、ウシ、ヒツジおよび類似のもののIL15が挙げられる。本発明の組成物および融合タンパク質の一部を形成し得る哺乳類のIL15ポリペプチドとしては、限定されるものではないが、ヒト起源のIL15(そのアミノ酸配列はP40933(配列番号7)で示されるものである);マウスIL15(そのアミノ酸配列はP48346(配列番号8)で示される)、ラットIL15(そのアミノ酸配列はP97604(配列番号9)で示される)、ネコIL15(そのアミノ酸配列はO97687(配列番号10)で示される)およびウシIL15(そのアミノ酸配列はQ28028(配列番号11)で示されるものである)が挙げられる。
【0036】
「IL15の機能的に等価な変異体」は、上述のIL15配列のいずれかの1以上のアミノ酸の挿入、置換または欠失から得られ、かつ、IL15の機能の少なくとも1つを実質的に完全な状態で保持する総てのポリペプチドを意味するものと理解され、ここで、該機能は下記のものから選択される。
【0037】
・IL15の変異体の存在下での末梢血単核細胞集団と抗原ペプチドとのインキュベーションに基づく、例えば、Montes, et al, (Clin. Exp. Immunol., 2005, 142:292-302)により記載されている方法によって測定されるCD8+ T細胞の増殖を促進する能力。
【0038】
・樹状細胞、マクロファージおよび好中球によりトランスで提供された後にNK細胞の活性化を促進する能力。樹状細胞に関するこの能力は、IL15の存在下でCD56+ NK細胞の一部におけるトリチウム化チミジンの組込みを測定することによるか、またはGM−CSFサイトカインのNK細胞分泌を測定することによって決定することができる。双方のIL15機能を決定するための方法はCarson, W. et al. (J. Exp. med., 1994, 180:1395-1403)により記載されている。
【0039】
・Demirci et al. (Cell Mol Immunol. 2004, 1:123-8)により記載されているような、B細胞前駆体におけるFasにより媒介されるアポトーシスを阻害するIL15の能力(TUNELなどのアポトーシスを測定するための標準的技術またはゲル電気泳動および臭化エチジウム染色によるDNA断片の測定を用いて決定することができる)。
【0040】
本発明において意図されるIL15の変異体は、上述の哺乳類のIL15ポリペプチドと少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、90%または95%の類似性または同一性を示すポリペプチドを含む。2つのポリペプチド間の同一性の程度は、コンピューターに実装されたアルゴリズムおよび当業者に広く知られている方法を用いて決定される。2つのアミノ酸配列間の同一性は好ましくは、BLASTPアルゴリズム(BLAST Manual, Altschul, S. et al., NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894, Altschul, S., et al., J., 1990, Mol. Biol. 215:403-410)を用いて決定される。
【0041】
本発明の第二の成分は、天然IL15および上述のIL15の変異体のうち少なくとも1つをコードする核酸であり得る。哺乳類IL15をコードする核酸は核酸リポジトリから回収することができ、限定されるものではないが、その配列が受託番号U14407(ヒト、配列番号12)、U14332(マウス、配列番号13)、U69272(ラット、配列番号14)、AF108148(ネコ、配列番号15)およびU42433(ウシ、配列番号16)により定義されるポリヌクレオチドが挙げられる。
【0042】
前記ポリヌクレオチドは前述の配列のいずれかと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を示すものを含み、同一性パーセンテージは上述のアルゴリズムの1つによって決定される。
【0043】
あるいは、本発明の第二の成分を形成するポリヌクレオチドは、従前に定義されたポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズし得るポリヌクレオチドである。標的配列と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドの能力を決定するための方法は、本発明の第一の成分に関して詳細に記載されている。
【0044】
当業者ならば、本発明の第二の成分を形成する核酸は、IL15または機能的に等価な変異体の媒体中への分泌を可能とするシグナル配列と機能的に結合されて見られることを認識するであろう。本発明において使用するのに好適なシグナル配列には、本発明の第一の成分に関して従前に記載されたものが含まれる。好ましくは、本発明の組成物の第二の成分の一部を形成するシグナル配列は、従前に定義されたIL15自体のシグナル配列または免疫グロブリンの1つ、特に、IgκまたはIgVχのシグナル配列である。
【0045】
本発明の組成物の第三の成分
本発明の第三の成分は、IL15受容体α鎖のSushiドメインまたはその機能的に等価な変異体の群から選択される。
【0046】
本発明において「IL15受容体α鎖のSushiドメイン」(以下、IL15Rα−sushi)という表現は、IL15受容体α鎖の細胞外領域に見られ、IL15受容体α鎖の遺伝子の第一エキソンに見られる最初のシステインで始まり、IL15受容体α鎖の遺伝子のエキソン4によりコードされるシステインで終わる配列に相当するアミノ酸配列を意味する。あるいは、Sushiドメインは、シグナル配列の後のIL15受容体α鎖の最初のシステイン残基で始まり、前述の配列のシグナル配列の後の4番目のシステイン残基で終わる配列と定義される。本発明において使用するのに好適なSushiドメインは、UniProt受託番号NP_002180の配列に相当するヒト起源IL15受容体α鎖に由来するSushiドメイン(そのSushiドメインは配列:
CPPPMSVE HADIWVKSYS LYSRERYICN SGFKRKAGTS SLTECVLNKA TNVAHWTTPS LKC(配列番号17)
に相当する)およびSwiss−Prot受託番号Q60819の配列に相当するマウスIL15受容体α鎖に由来するSushiドメイン(そのSushiドメインは配列:
CPPPV SIEHADIRVK NYSVNSRERY VCNSGFKRKA GTSTLIECVI NKNTNVAHWT TPSLKC(配列番号18)
に相当する)を含む。
【0047】
「IL15受容体α鎖のSushiドメインの機能的に等価な変異体」は、上述のヒト起源またはネズミSushiドメイン配列のいずれかの配列の1以上のアミノ酸の挿入、置換または欠失から得られ、かつ、IL15に対する実質的に完全な結合能を保持し、Mortier et al. (J. Biol. Chem., 2006, 281:1612-1619)により記載されているように、低親和性IL15受容体を発現する細胞(例えば、Mo−7eまたは32Dβ系統由来の細胞)におけるIL15の増殖効果を高める総てのポリペプチドを意味するものと理解される。
【0048】
本発明において意図されるIL15Rα−sushiの変異体は、上述のポリペプチドと少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、90%または95%の類似性または同一性を示すポリペプチドを含む。2つのポリペプチド間の同一性の程度は、コンピューターに実装されたアルゴリズムおよび当業者に広く知られている方法を用いて決定される。2つのアミノ酸配列間の同一性は好ましくは、BLASTPアルゴリズム(BLAST Manual, Altschul, S. et al., NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894, Altschul, S., et al., J., 1990, Mol. Biol. 215:403-410)を用いて決定される。
【0049】
本発明の第三の成分は、上述のような少なくとも1つのIL15受容体α鎖のSushiドメイン(天然)およびその変異体をコードする核酸であり得る。哺乳類IL15Rα−sushiをコードする核酸は、核酸レポジトリに見られる対応するα鎖の配列から回収することができ、限定されるものではないが、ヒトIL15受容体α鎖(NCBI受託番号:U31628、配列番号19)およびマウスIL15受容体α鎖(NCBI受託番号:U22339、配列番号20)のIL15Rα−sushiをコードする配列が含まれる。
【0050】
前記ポリヌクレオチドは、上述の配列のいずれかと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を示すものを含み、同一性パーセンテージは上述のアルゴリズムのいずれかを用いて決定される。
【0051】
あるいは、本発明の第三の成分を形成するポリヌクレオチドは、従前に定義されたポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズし得るポリヌクレオチドである。標的配列と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドの能力を決定する方法は、本発明の第一の成分に関して詳細に記載されている。
【0052】
当業者ならば、本発明の第二の成分を形成する核酸がSushiドメインまたはその機能的に等価な変異体の媒体中への分泌を可能とするシグナル配列と機能的に結合されて見られることを認識するであろう。本発明において使用するのに好適なシグナル配列には、本発明の組成物の第一の成分に関して従前に記載されたものが含まれる。好ましくは、本発明の組成物の第二の成分の一部を形成するシグナル配列は、従前に定義されたIL15自体のシグナル配列または免疫グロブリンの1つ、特に、IgκまたはIgVχのシグナル配列である。
【0053】
好ましい実施態様では、本発明の組成物の第三の成分は、配列番号21として定義される配列を含んでなるまたはからなり、ヒトIL15RA受容体のSushiドメインと、その前にその固有のシグナルペプチド(配列番号22)を含んでなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
【0054】
本発明の組成物は、種々の種に由来するポリペプチドまたはポリヌクレオチドにより形成され得る。しかしながら好ましい実施態様では、これら3つの成分は、同じ動物種に由来する。好ましい実施態様では、3つの成分はヒト起源のものである。別の好ましい実施態様では、3つの成分はネズミ起源のものである。
【0055】
第一の成分および第二の成分が単一分子を形成する組成物
本発明の著者らは、本発明の組成物の第一の成分と第二の成分が単一分子の一部を形成する場合にIL15の抗腫瘍活性に対する相乗効果が得られることを見出した。この場合、本発明の組成物は第一の成分(上記で定義される第一の成分と第二の成分を含んでなることになる)および第二の成分(上記で定義される第三の成分に相当する)により形成されるバイナリー組成物である。当業者ならば、組成物の第一の成分および第二の成分がポリペプチドであれば、該単一分子は、(i)ApoAポリペプチドまたはその機能的に等価な変異体と(ii)IL15またはその機能的に等価な変異体とを含んでなる融合タンパク質であることを認識するであろう。
【0056】
本発明において「融合タンパク質」とは、異なるまたは異種のタンパク質に由来する2以上の領域を含んでなるポリペプチドを意味する。
【0057】
あるいは、組成物の第一の成分および第二の成分が双方ともポリヌクレオチドである場合、該単一分子は、(i)ApoAポリペプチドまたはその機能的に等価な変異体を含んでなるポリペプチドと、(ii)IL15またはその機能的に等価な変異体を含んでなる融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドである。
【0058】
この場合、第一の成分および第二の成分がペプチド性のものである際には、本発明は、第一の成分が第二の成分に対してN末端にある組成物、および第一の成分が第二の成分に対してC末端にある組成物を意図する。
【0059】
第一の成分および第二の成分がポリヌクレオチド性である場合、本発明は、第一の成分が第二の成分に対して5’位にある組成物、および第一の成分が第二の成分に対して3’位にある組成物を意図する。
【0060】
いずれの場合でも、第一の成分と第二の成分は直接結合させることができ、言い換えれば、第一の成分のC末端を第二の成分のN末端と結合させるか、または第二の成分のC末端を第一の成分のN末端と結合させるか、または第一の成分の3’末端を第二の成分の5’末端と結合させることができ、および第二の成分の3’末端が第一の成分の5’末端と結合されている組成物。
【0061】
あるいは、別の態様において、本発明は、第一の成分および第二の成分の融合がペプチドリンカーを介して(第一の成分および第二の成分がポリペプチド性である場合)またはペプチドリンカーをコードする配列を介して(第一の成分および第二の成分がポリヌクレオチド性である場合)行われる組成物を意図する。
【0062】
本発明において「ペプチドリンカー」、「リンカー」、「コネクター」、「スペーサー」またはその文法的に等価な表現は、2つの分子を接続し、多くの場合、接続された分子に機能的構成を獲得させる分子を意味する。リンカーペプチドは好ましくは、少なくとも2個のアミノ酸、少なくとも3個のアミノ酸、少なくとも5個のアミノ酸、少なくとも10個のアミノ酸、少なくとも15個のアミノ酸、少なくとも20個のアミノ酸、少なくとも30個のアミノ酸、少なくとも40個のアミノ酸、少なくとも50個のアミノ酸、少なくとも60個のアミノ酸、少なくとも70個のアミノ酸、少なくとも80個のアミノ酸、少なくとも90個のアミノ酸またはおよそ100個のアミノ酸を含んでなる。
【0063】
本発明において好適なリンカーとしては、
・グリシン、セリン、アラニンおよびトレオニンからなる群から選択される2以上のアミノ酸を含んでなるリンカー、例えば、限定されるものではないが、Muller, K.M. et al. (Methods. Enzimology, 2000, 328: 261-281)により記載されている配列SGGTSGSTSGTGST(配列番号23)、AGSSTGSSTGPGSTT(配列番号24)、GGSGGAP(配列番号25)およびGGGVEGGG(配列番号26)のリンカー;
・テトラネクチンのβシートを形成するテトラネクチンの残基53〜56、およびテトラネクチンのターンを形成する残基57〜59に基づくリンカー(Nielsen, B.B. et al., FEBS Lett. 412: 388-396, 1997)、例えば、配列GTKVHMK(配列番号27)のリンカー;
・アミノ酸1992〜2102に相当するヒトフィブロネクチンのリンカーシート3の部分配列、例えば、アミノ酸番号2037〜2049に相当するリンカーPGTSGQQPSVGQQ(配列番号28)に基づくリンカー(中でもアミノ酸2038〜2042残基に相当する部分配列断片GTSGQ(配列番号29)がより好ましい);
・ネズミIgG3の上流ヒンジ領域のアミノ酸10残基の配列に基づくリンカー、例えば、コイルドヘリックスの手段による二量体抗体の作製に用いられている配列PKPSTPPGSS(配列番号30)のリンカー(Pack P. and Pluckthun, A., 1992, Biochemistry 31:1579-1584);
・配列APAETKAEPMT(配列番号31)のリンカーペプチド;
・配列GGSGGGGSGGGSGGGGSLQ(配列番号32)のリンカーペプチド;
・配列GAPのリンカーペプチド
が挙げられる。
【0064】
あるいは、本発明の結合体の2成分は、その配列がプロテアーゼの切断標的を含み、それにより、成分(ii)からのApoA−Iの分離を可能とするペプチドによって接続されていてもよい。本発明のポリペプチドに組み込むのに好適なプロテアーゼ切断部位としては、エンテロキナーゼ(切断部位DDDDK配列番号33)、Xa因子(切断部位IEDGR、配列番号34)、トロンビン(切断部位LVPRGS、配列番号35)、TEVプロテアーゼ(切断部位ENLYFQG、配列番号36)、PreScisssionプロテアーゼ(切断部位LEVLFQGP、配列番号37)、インテインおよび類似のものがあげられる。好ましい実施態様では、切断部位は、腫瘍組織、炎症組織または肝臓(結合体がひと度肝臓に達するとApoAと成分(ii)の分離が起こる形)で発現されるプロテアーゼの切断部位である。好ましい実施態様では、リンカーはマトリックスメタロプロテイナーゼ9認識部位(切断部位LFPTS、配列番号38)を含む。
【0065】
本発明を、第一の成分と第二の成分の融合から得られる成分(ApoAとIL15との融合タンパク質)および第三の成分(IL15受容体α鎖のSushiドメイン)の双方が核酸の形態で用いられる組成物を用いて例示したが、本発明は両成分が核酸である組成物に限定されず、別法として第一の成分および/または第二の成分がポリペプチドである組成物も意図する。よって、本発明は、
・ApoAおよびIL15により形成される融合タンパク質を含んでなるポリペプチドと、IL15受容体α鎖のSushiドメインを含んでなるポリペプチド;
・ApoAおよびIL15により形成される融合タンパク質を含んでなるポリペプチドと、IL15受容体α鎖のSushiドメインを含んでなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
・ApoAおよびIL15により形成される融合タンパク質を含んでなるポリペプチドとIL15受容体α鎖のSushiドメインを含んでなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
・ApoAおよびIL15により形成される融合タンパク質を含んでなるポリペプチドとIL15受容体α鎖のSushiドメインを含んでなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチド
により形成される組成物を意図する。
【0066】
本発明の組成物の一部を形成する成分間の比率は、各特定の場合に用いられる第一の成分および第二の成分の誘導剤ならびに必要とされる使用によって異なる。よって、本発明は、2成分間の量の比率が50:1〜1:50の間、特に、20:1〜1:20の間、1:10〜10:1の間、または5:1〜1:5の間の範囲であり得る組成物を意図する。
【0067】
第一の成分および第二の成分が単一分子を形成する組成物の場合、単一分子の一部を形成する成分は同じ種に由来するのが好ましいが、各成分は異なる種に由来してもよい。よって、好ましい実施態様では、ApoAまたはその機能的に等価な変異体はヒト起源のものであり、IL15またはその機能的に等価な変異体はヒト起源のものである。別の好ましい実施態様では、ApoAまたはその機能的に等価な変異体はネズミ起源のものであり、IL15またはその機能的に等価な変異体はネズミ起源のものである。
【0068】
好ましい実施態様では、組成物の第一の成分を形成する単一分子は、GAP配列を示すリンカーにより隔てられているヒト起源ApoAIポリペプチドとヒト起源IL15により形成される。該融合物をコードするポリヌクレオチドは、本発明において配列番号39として識別される配列を示す。
【0069】
別の好ましい実施態様では、組成物の第一の成分を形成する単一分子は、GAP配列を示すリンカーにより隔てられているネズミ起源ApoAIポリペプチドとヒト起源IL15により形成される。該融合物をコードするポリヌクレオチドは、本発明において配列番号40として識別される配列を示す。
【0070】
別の好ましい実施態様では、組成物の第一の成分を形成する単一分子は、GAP配列を示すリンカーにより隔てられているネズミ起源ApoAIポリペプチドとネズミ起源IL15により形成される。該融合物をコードするポリヌクレオチドは、本発明において配列番号41として識別される配列を示す。
【0071】
IL15受容体α鎖のSushiドメインまたはその機能的に等価な変異体を含んでなるポリペプチドは、ヒト起源またはネズミ起源のものであり得る。しかしながらやはり、単一分子を形成する成分が双方ともヒト起源であれば、IL15受容体α鎖のSushiドメインまたはその機能的に等価な変異体もヒト起源であるのが好ましい。あるいは、単一分子を形成する成分が双方ともネズミ起源であれば、IL15受容体α鎖のSushiドメインまたはその機能的に等価な変異体もネズミ起源であるのが好ましい。
【0072】
別の態様において、本発明は、ApoAまたはその機能的に等価な変異体とIL15またはその機能的に等価な変異体を含んでなる融合タンパク質を意図する。「ApoA」、「IL15」、「ApoAの機能的に等価な変異体」、「IL15の機能的に等価な変異体」は上記で詳細に説明したが、融合タンパク質の場合にも本質的に同様に用いられる。
【0073】
融合タンパク質は、IL−15のN末端にポリペプチドApoAを示してもよいし、またはApoAのN末端にポリペプチドIL−15を示してもよい。同様に、両成分は直接連結されていてもリンカーにより連結されていてもよく、このリンカーは本発明に記載されているいずれのリンカーであってもよい。また、これらの成分は、本発明が、ヒト起源ApoAとIL15の融合物、ネズミ起源ApoAとIL15の融合物、およびApoAがヒト起源であってIL15がネズミ起源である場合のApoAとIL15の融合物、ApoAがネズミ起源であってIL15がヒト起源である場合のApoAとIL15の融合物を意図するように、ヒトまたはネズミ起源のものであってよい。
【0074】
本発明の好ましい実施態様では、ApoAとIL15の融合タンパク質は、配列番号39、配列番号40および配列番号41の配列を有するポリペプチドに相当する。
【0075】
本発明の融合タンパク質
別の態様において、本発明は、
(i)ApoAポリペプチド、または該ApoAポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体により形成される、領域A、
(ii)IL15、またはIL15と少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体により形成される、領域B、および
(iii)IL15受容体α鎖のSushiドメイン、またはIL15受容体α鎖のSushiドメインと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体により形成される、領域C
を含んでなる融合タンパク質に関する。
【0076】
該融合タンパク質の領域Aは本発明の組成物の第一の成分と本質的に同じであり、このことはそれが上記で詳細に記載されていることを意味する。
【0077】
該融合タンパク質の領域Bは本発明の組成物の第二の成分と本質的に同じであり、このことはそれが上記で詳細に記載されていることを意味する。
【0078】
該融合タンパク質の領域Cは本発明の組成物の第三の成分と本質的に同じであり、このことはそれが上記で詳細に記載されていることを意味する。
【0079】
当業者ならば、本発明の融合タンパク質が領域A、BおよびCの種々の配置を示し得ることを認識するであろう。よって、本発明は、
・領域AがN末端にあり、領域Bが中央にあり、領域CがC末端にある融合タンパク質、
・領域AがN末端にあり、領域Cが中央にあり、領域BがC末端にある融合タンパク質、
・領域BがN末端にあり、領域Aが中央にあり、領域CがC末端にある融合タンパク質、
・領域BがN末端にあり、領域Cが中央にあり、領域AがC末端にある融合タンパク質、
・領域CがN末端にあり、領域Aが中央にあり、領域BがC末端にある融合タンパク質、および
・領域CがN末端にあり、領域Bが中央にあり、領域AがC末端にある融合タンパク質
を意図する。
【0080】
また、領域A、Bおよび/またはCは直接結合されていてもよく、言い換えれば、ある領域のC末端アミノ酸が別の領域のN末端アミノ酸にペプチド結合によって連結されている。あるいは、種々の領域がペプチドリンカーによって連結されている。本発明の融合タンパク質に好適なリンカーは本発明の組成物で用いられるものと本質的に同じであり、上記に詳細に記載されている。当業者ならば、これら3つの領域のうち2つだけがリンカーにより連結されているか、3つの領域がリンカーにより連結されているかによって1または2つのペプチドリンカーを含み得ることを認識するであろう。
【0081】
好ましい実施態様では、融合タンパク質はC−B−A型の配置を示し、言い換えれば、N末端からC末端方向に、IL15RαのSushiドメイン領域C)、IL15(領域B)およびApoAI(領域A)を含んでなる。いっそうより好ましい実施態様では、領域CとBはGGSGGGGSGGGSGGGGSLQ型リンカー(配列番号32)により隔てられている。別の実施態様では、領域BとAはGAP型リンカーにより隔てられている。いっそうより好ましい実施態様では、領域CとBはGGSGGGGSGGGSGGGGSLQ型リンカー(配列番号32)により隔てられ、領域BとAはGAP型リンカーにより隔てられている。
【0082】
本発明の融合タンパク質は領域A、BおよびCがネズミ起源のものである融合タンパク質で例示されるが、当業者ならば、本発明が上述の領域の種々の変異体の中でも、領域A、BおよびCのそれぞれが異なる起源のものである融合タンパク質を意図することを認識するであろう。
【0083】
よって、好ましい実施態様では、該融合タンパク質は、ヒト起源またはネズミ起源の領域A、ヒト起源またはネズミ起源の領域B、ヒト起源またはネズミ起源の領域Cを含んでなる。いっそうより好ましい実施態様では、これらの3つの領域は同じ生物体に由来する。よって、いっそうより好ましい実施態様では、領域A、BおよびCはネズミ起源のものである。別の好ましい実施態様では、領域A、BおよびCはヒト起源のものである。
【0084】
好ましい実施態様では、該融合タンパク質は、3つの成分がヒト起源のものであり、かつ、領域CとBならびに領域BとAの双方がペプチドリンカーにより接続されているC−B−A型の配置を示す。好ましい実施態様では、該融合タンパク質は、N末端からC末端方向に、ヒトIL15RαのSushiドメイン(領域C)、ヒトIL15(領域B)およびヒトApoAI(領域A)を含んでなる。いっそうより好ましい実施態様では、領域CとBはGGSGGGGSGGGSGGGGSLQ型リンカーにより隔てられている。別の実施態様では、領域BとAはGAP型リンカーにより隔てられている。いっそうより好ましい実施態様では、領域CとBはGGSGGGGSGGGSGGGGSLQ型リンカーにより隔てられ、領域BとAはGAP型リンカーにより隔てられている。好ましい実施態様では、該融合タンパク質は配列番号42で定義される配列を含んでなる。
【0085】
別の好ましい実施態様では、該融合タンパク質は、N末端からC末端方向に、ネズミIL15RαのSushiドメイン(領域C)、ネズミIL15(領域B)およびネズミApoAI(領域A)を含んでなる。いっそうより好ましい実施態様では、領域CとBはGGSGGGGSGGGSGGGGSLQ型リンカーにより隔てられている。別の実施態様では、領域BとAはGAP型リンカーにより隔てられている。いっそうより好ましい実施態様では、領域CとBはGGSGGGGSGGGSGGGGSLQ型リンカーにより隔てられ、領域BとAはGAP型リンカーにより隔てられている。好ましい実施態様では、該融合タンパク質は配列番号43で定義される配列を含んでなる。
【0086】
本発明のポリヌクレオチド、遺伝子構築物、ベクターおよび宿主細胞
別の態様において、本発明は、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを意図する。本発明の融合タンパク質が細胞外媒体からその機能を遂行することを考えれば、ポリヌクレオチドは、融合タンパク質の分泌経路への接近および融合タンパク質の媒体中への分泌を可能とするシグナル配列とともに本発明の融合タンパク質をコードすることが便利である。該融合タンパク質とともに用いるのに好適なシグナル配列としては、融合タンパク質成分のいずれかのシグナル配列(ApoAのシグナル配列、IL15のシグナル配列、もしくはIL15受容体α鎖のシグナル配列)または本発明の組成物の第一の成分に関して上述されたいずれかのシグナル配列、言い換えれば、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、成長ホルモン、GM−CSFおよび免疫グロブリンの好適なシグナル配列、特に、IgκまたはIgVχのシグナル配列の双方が含まれる。
【0087】
好ましい実施態様では、本発明のポリヌクレオチドは、ヒト起源Sushiドメイン、ヒト起源IL15およびヒト起源ApoA1を含んでなる融合タンパク質または結合体をコードする、配列番号44で定義される配列を含んでなり、ここで、このSushiドメインとIL15は配列GGSGGGGSGGGSGGGGSLQのリンカーにより隔てられ、IL15とApoA1は配列GAPのリンカーにより隔てられ、この融合物の前にヒト起源IL−15受容体α鎖のシグナル配列がある。
【0088】
好ましい実施態様では、本発明のポリヌクレオチドは、ネズミ起源Sushiドメイン、ネズミ起源IL15およびネズミ起源ApoA1を含んでなる融合タンパク質または結合体をコードする配列番号45として示される配列を含んでなり、ここで、SushiドメインとIL15は配列GGSGGGGSGGGSGGGGSLQのリンカーにより隔てられ、IL15とApoA1は配列GAPのリンカーにより隔てられ、この融合物の前にネズミ起源IL−15受容体α鎖のシグナル配列がある。
【0089】
本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、発現の調節領域と機能的に連結し、それにより遺伝子構築物を作出することができる。よって、別の態様において、本発明は本発明のポリヌクレオチドを含んでなる遺伝子構築物に関する。好ましくは、該構築物は、本発明のポリヌクレオチドの発現を調節する配列の操作的制御下に置かれた本発明のポリヌクレオチドを含んでなる。当業者ならば、本発明のポリヌクレオチドが標的組織の核に接近し、核内で転写および翻訳されて生物学的に活性な融合タンパク質を生じなければならないことを認識するであろう。
【0090】
基本的に、いずれのプロモーターも、そのプロモーターがポリヌクレオチドを発現させる細胞に適合した条件で、本発明の遺伝子構築物に使用することができる。よって、本発明を実施するのに好適なプロモーターとしては、限定されるものではないが、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、SV40、CMV、鳥類肉腫ウイルス、B型肝炎ウイルスなどの真核生物ウイルスのゲノムに由来するもの、メタロチオネイン遺伝子プロモーター、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子プロモーター、レトロウイルスのLTR領域、免疫グロブリン遺伝子プロモーター、アクチン遺伝子プロモーター、EF−1α遺伝子プロモーターといった構成プロモーター、ならびにテトラサイクリン系、NFκB/紫外線系、Cre/Lox系および熱ショック遺伝子プロモーターといった、タンパク質の発現が分子または外因性シグナルの付加に依存する誘導プロモーター、WO/2006/135436に記載されているRNAポリメラーゼIIの調節可能なプロモーターならびに特異的組織プロモーターが挙げられる。
【0091】
本発明のポリヌクレオチドまたはそれらを含んでなる遺伝子構築物はベクターの一部を形成し得る。よって、別の態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたは遺伝子構築物を含んでなるベクターに関する。当業者ならば、このようなベクターは、結合体を精製するのに好適な種々の異種生物において好適なポリヌクレオチドもしくは遺伝子構築物、または発現ベクターの増幅および取得に好適なクローニングベクターであり得るので、使用可能なベクターのタイプに関して制限はないことを認識するであろう。よって、本発明において好適なベクターとしては、原核生物の発現ベクター(pUC18、pUC19、Bluescriptおよびその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColEI、pCRI、RP4、ファージおよび「シャトル」ベクター(pSA3およびpAT28など)など)、酵母発現ベクター(2−micraプラスミド型ベクター、組込型プラスミド、YEPベクター、動原体プラスミドおよび類似のもの、昆虫細胞の発現ベクター(pAC系およびpVL系ベクターなど)、植物の発現ベクター(pIBI系、pEarleyGate系、pAVA系、pCAMBIA系、pGSA系、pGWB系、pMDC系、pMY系、pORE系および類似のもののベクターなど)、ならびにpSilencer 4.1−CMV(Ambion)、pcDNA3、pcDNA3.1/hyg pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEFI/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER−HCMV、pUB6/V5−His、pVAXI、pZeoSV2、pCI、pSVLおよびpKSV−10、pBPV−1、pML2dおよびpTDTIなどの非ウイルスベクターの他、ウイルスベクター(アデノウイルス、アデノウイルス随伴ウイルスならびにレトロウイルスおよびレンチウイルス)に十分基づく優れた真核細胞における発現ベクターが挙げられる。
【0092】
本発明のベクターは前記ベクターによる形質転換、トランスフェクションまたは感染に感受性のある細胞を形質転換、トランスフェクトまたは感染させるために使用可能である。該細胞は原核生物であっても真核細胞であってもよい。例として、該DNA配列が導入されるベクターは、宿主細胞に導入された際に、その細胞のゲノムに組み込まれ、それが組み込まれている染色体(染色体群)と一緒に複製するプラスミドまたはベクターであり得る。該ベクターは当業者に公知の従来法(Sambrook et al., 2001, 前掲)によって得ることができる。
【0093】
よって、別の態様において、本発明は、本発明により提供された構築物またはベクターでその細胞を形質転換、トランスフェクトまたは感染可能であったポリヌクレオチド、遺伝子構築物またはベクターを含んでなる細胞に関する。形質転換細胞、トランスフェクト細胞または感染細胞は当業者に公知の従来法(Sambrook et al., 2001, 前掲)によって得ることができる。特定の実施態様では、該宿主細胞は適当なベクターでトランスフェクトされた、または適当なベクターに感染させた動物細胞である。
【0094】
本発明の結合体の発現に好適な宿主細胞としては、限定されるものではないが、哺乳類、植物、昆虫、真菌および細菌の細胞が挙げられる。細菌細胞としては、限定されるものではないが、バチルス属、ストレプトミセス属およびブドウ状球菌属の種などのグラム陽性細菌の細胞、ならびにエシェリキア属およびシュードモナス属の細胞などのグラム陰性菌の細胞が挙げられる。真菌細胞としては、好ましくは、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)およびハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)などの酵母細胞が挙げられる。昆虫細胞としては、限定されるものではないが、ショウジョウバエおよびSf9細胞のものが挙げられる。植物細胞としては、とりわけ、穀類、薬用植物または観賞植物または球根などの作物由来の細胞が挙げられる。本発明に好適な哺乳類細胞としては、上皮細胞系統(ブタなど)、骨肉腫細胞系統(ヒトなど)、神経芽腫細胞系統(ヒトなど)、上皮癌(ヒトなど)、グリア細胞(ネズミなど)、肝臓細胞系統(サルなど)CHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣)、COS細胞、BHK細胞、HeLa細胞、911細胞、AT1080細胞、A549細胞、293細胞またはPER.C6細胞、ヒトECC系NTERA−2細胞、mESC系のD3細胞、ヒト胚幹細胞(HS293およびBGV01、SHEF1、SHEF2およびHS181など)、NIH3T3細胞、293T細胞、REH細胞およびMCF−7細胞、およびhMSC細胞が挙げられる。
【0095】
本発明のin vitro法
抗原感作Tリンパ球の増殖を促進するIL15の能力はすでに記載されている。例えば、単離されたリンパ球の集団を同定された抗原に事前に曝したものをIL15と接触させるとリンパ球の増殖が高まることが実証されている。この大量増殖されたリンパ球集団を養子免疫療法に用い、それにより、これを次にその最初の集団を得た患者に再投与することができる。従って、別の態様において、本発明は、事前に前記抗原に曝されたリンパ球の集団を本発明の組成物、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の遺伝子構築物、または本発明の宿主細胞と接触させることを含む、抗原特異的Tリンパ球の大量増殖を促進するin vitro法に関する。
【0096】
「大量増殖」とは、本発明では、増殖と区別して用いられ、細胞分裂または細胞成長として理解されるべきである。大量増殖は、Transplantation (1999) 67: 605-613に記載されている方法などの広く知られている方法を用いて測定することができる。
【0097】
本発明において「抗原特異的Tリンパ球」という表現は、特定の抗原を認識することができるリンパ球集団を意味する。一般に、リンパ球は該抗原に曝された患者から単離される。あるいは、抗原は米国特許第6828150号または同第6787154号に記載されているような人工抗原提示系においてリンパ球集団と接触させてもよい。
【0098】
本明細書において「抗原」とは、その抗原に不寛容である被験体において免疫応答を誘発し得る任意の物質を意味する。抗原は被験体自身に由来するものであっても(この場合、それは自己抗原である)、または同種抗原、言い換えれば、同じ種の個体から得られた抗原であってもよい。あるいは、抗原は異種抗原、言い換えれば、異なる種の個体に由来する抗原であってもよい。
【0099】
本発明の方法において使用可能なリンパ球としては、限定されるものではないが、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、Tヘルパー細胞、リンホカイン活性化細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TILS)、NK細胞、ナイーブ細胞、メモリー細胞、γδT細胞、NKT細胞ならびに様々な量の前述の1以上の細胞を含んでなる細胞集団が挙げられる。好ましい実施態様では、リンパ球はCTLである。次に本発明の方法を用いてin vitroで大量増殖を行うためのCTLを得るのに好適な方法は当業者に広く知られ、限定されるものではないが、末梢血、臍帯血、リンパ球含有組織からの単離が挙げられる。好ましい実施態様では、リンパ球は特定の疾患を有する患者のリンパ節からのドレナージにより単離される。
【0100】
リンパ球が単離されたら、それらをリンパ球が大量増殖を行うのに好適な条件で本発明の組成物、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の遺伝子構築物または本発明の宿主細胞と接触させる。抗原特異的CTLの大量増殖のための一般的条件は、周知の方法[例えば、Carter J. et al., Immunology, 57 (1), 123-129, (1996)]に従って確立することができ、当業者により慣例的に至適化することができる。一般に、リンパ球と本発明の組成物、融合タンパク質、ポリヌクレオチド、ベクター、遺伝子築物または宿主細胞との接触は、該細胞に好適な培地でリンパ球を培養する手段によって行われる。該細胞は従来の条件下、最小基本培地またはRPMI 1640培地を含む、リンパ球の成長に好適な培地中で培養することができる。細胞成長を促進するために、血清、例えば、ウシ胎仔血清またはヒト血清および抗生物質、例えば、ペニシリン、ストレプトマイシンをはじめとする必要な増殖因子および生存因子を添加してもよい。リンパ球は、成長を助けるのに必要な条件、例えば約37℃の好適な温度および例えば空気+5%CO2の雰囲気で維持する。
【0101】
好ましい実施態様では、リンパ球は、in vitroでそれらの活性化を促進するために本発明の化合物を用いて刺激する前に、それらのリンパ球をそれらが特異的な抗原と接触させることによって処理することができる。これは免疫抑制物質を産生する腫瘍を有する患者の場合に特に必要である。これを達成するには、リンパ球の培養物を適当な抗原で刺激することが必要である。一般に、この抗原は、T細胞においてTCR/CD3複合体を介してシグナルが誘導される形でT細胞に提示される。好ましくは、抗原は抗原提示細胞の手段によってT細胞に提示され得る。
【0102】
本発明において「抗原提示細胞」という表現は、抗原をTリンパ球に提示する手段によって免疫応答の創出に寄与する細胞を意味する。抗原提示細胞としては、樹状細胞、単核食細胞、Bリンパ球またはランゲルハンス細胞を含む。抗原提示細胞は例えば骨髄、血液、胸腺、表皮、肝臓または胎児肝臓から単離することができる。
【0103】
抗原が腫瘍抗原である場合、自己腫瘍および/または組換え腫瘍抗原の抽出物を使用することができる。病原体由来の抗原である場合には、大量増殖前のリンパ球の活性化は、病原体感染細胞、例えば病原体の抗原を提示するウイルスを用いて行うことができる。
【0104】
本発明の抗原特異的CTL大量増殖のための方法では、本発明の組成物、融合タンパク質による細胞の処置は抗CD3抗体、好ましくは、ヒトモノクローナル抗CD3抗体、より好ましくはOKT3の存在下で行うのが好ましい。大量増殖過程の抗CD3抗体の濃度は特に限定されず、例えば、0.001〜100mg/mL、より好ましくは、0.01〜100mg/mLである。それに加えて、またはその代わりに、細胞を抗CD28抗体、より好ましくはヒトモノクローナル抗CD28抗体と同時培養してもよい。それに加えて、またはその代わりに、細胞をレクチンなどのリンパ球刺激因子と同じ培養することもできる。また、これらの成分の1以上を固相に固定化することもできる。
【0105】
また、本発明の抗原特異的CTLの大量増殖法では、状況に応じて細胞をフィーダー細胞と同時培養することもできる。基本的に、フィーダー細胞が本発明のタンパク質もしくは組成物と、またはCTL増殖を促進する能力において前段落に記載した薬剤と共働する条件で使用することができるフィーダー細胞の種類に関して制限はない。好ましくは、好適なフィーダー細胞としては、限定されるものではないが、末梢血単核細胞(PBMC)および自己または非自己EBV−B細胞が挙げられる。通常、好ましくは、X線またはマイトマイシンなどの細胞傷害性薬剤で処置することによってそれらの増殖能を事前に消失させたフィーダー細胞が処理される。
【0106】
本発明の方法に従って得られたリンパ球集団の細胞傷害活性は周知の方法を用いて測定することができる。例えば、マークされた標的細胞の溶解を誘発するリンパ球の能力を測定すること、およびマークされた物質の放出を測定することが可能である。あるいは、細胞傷害活性は、リンパ球または標的細胞により産生されるサイトカイン(例えば、GM−CSFおよびIFN−γ)のレベルを特定することによって測定することができる。あるいは、細胞傷害活性は、リンパ球を、第一の蛍光分子でマークされた細胞傷害性リンパ球の特異的抗体、および抗原ペプチドと第二の蛍光分子でマークされた主要組織適合性複合体により形成される複合体と接触させた後、両分子でマークされた細胞をフローサイトメトリーの手段によって検出することにより測定することができる。
【0107】
本発明の方法に従って大量培養されるリンパ球集団は、養子免疫療法のために、言い換えれば、特異的抗原に対してより高い免疫応答を必要とする被験体に再投与するために特に有用である。好ましくは、Tリンパ球は自己に使用され、言い換えれば、そのTリンパ球が最初に抽出された被験体に再投与される。
【0108】
本発明の医薬組成物
本発明の組成物、ポリヌクレオチドおよび融合タンパク質は、IL15の長期投与を必要とする疾患を治療するのに有用である。よって、別の態様において、本発明は、治療上有効な量の本発明による組成物、融合タンパク質、ポリヌクレオチド、遺伝子構築物、ベクターまたは宿主細胞と薬学上許容される賦形剤またはビヒクルとを含んでなる医薬製剤に関する。
【0109】
本発明において用いるのに好適な賦形剤としては、糖類、デンプン類、セルロース類、ガム類およびタンパク質が挙げられる。好ましい実施態様では、本発明の医薬組成物は、固体(例えば、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、顆粒剤、坐剤、再構成して液体形とすることができる結晶性または非晶質無菌固体など)、液体(例えば、溶液、懸濁液、エマルション、エリキシル剤、ローション、軟膏(unguent)など)または半固体(ゲル、軟膏(ointment)、クリームおよび類似のもの)として投与するための医薬形に処方される。本発明の医薬組成物は、限定されるものではないが、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内(intratecal)、脳室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所的、舌下または直腸経路を含む任意の経路により投与することができる。有効成分の種々の投与形、用いる賦形剤およびそれらの製造方法の修正については、Tratado de Farmacia Galenica, C. Fauli i Trillo, Luzan 5, S.A. de Ediciones, 1993およびRemington’s Pharmaceutical Sciences (A.R. Gennaro, Ed.), 20th edition, Williams & Wilkins PA, USA (2000)に見出すことができる。薬学上許容されるビヒクルの例は当技術の現状において公知であり、リン酸緩衝生理食塩水、水、エマルション(油/水エマルションなど)、種々のタイプの湿潤剤、無菌溶液などが挙げられる。このようなビヒクルを含んでなる組成物は当技術の現状において公知の従来法によって処方することができる。
【0110】
あるいは、本発明の組成物および化合物は、組成物がApoAタンパク質もしくはApoAと第二の成分(IL15またはIL15受容体α鎖のSushiドメイン)の融合物を含んでなる場合、または本発明がApoA、IL15およびIL15RAのSushiドメインを含んでなる融合タンパク質を意図する場合に、ナノリポ粒子(nanolipoparticle)として処方することができる。ナノリポ粒子の形成は高密度リポタンパク質(HDL)の主成分であるApoAに基づく。
【0111】
本発明において「ナノリポ粒子」とは、「リポタンパク質」または「リポタンパク質粒子」に等しく、区別無く用いることができる。ナノリポ粒子は、アポタンパク質、リン脂質および遊離コレステロールにより形成される極性外層に覆われた非極性脂質(エステル化コレステロールおよびトリグリセリド)の核により形成される任意の水溶性粒子を意味するものと理解される。
【0112】
ナノリポ粒子またはリポタンパク質はそれらの密度に応じて、カイロミクロン、超低密度リポタンパク質(VLD)、中密度リポタンパク質(IDL)、低密度リポタンパク質(LDL)および高密度リポタンパク質(HDL)に分類される。リポタンパク質の種々の特徴を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
さらに特定の実施態様では、ナノリポ粒子は、上記の表に示された組成を有すること、およびタンパク質画分を形成するアポリポタンパク質がApoA、ApoC、ApoDおよびApoEであることを特徴とするHDL型リポタンパク質である。
【0115】
ナノリポ粒子は、当技術分野で公知の従来法によって得ることができる。例として、ナノリポ粒子は、in vitroにおいて、Lerch et al. (Vox Sang, 1996, 71: 155-164)に記載されているように融合タンパク質にコレステロールおよびホスファチジルコリンを加えることにより、またはin vivoにおいて、肝臓において本発明の結合体を発現する非ヒト動物を用いてナノリポ粒子を形成させる(なお、これらのナノリポ粒子は血清中に分泌され、血清から単離することができる)ことによって得ることができる。
【0116】
核酸(本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは遺伝子構築物)を含んでなる本発明の医薬組成物の場合、本発明は、該核酸を投与するために特別に調製された医薬組成物を意図する。該医薬組成物はこのような核酸を裸の形態で、言い換えれば、その核酸を生物体のヌクレアーゼによる分解から保護する化合物が存在しない状態で含んでなってよく、トランスフェクションに用いられる試薬に関連する毒性を排除するという利点を伴う。裸の化合物の好適な投与経路としては、血管内、腫瘍内、頭蓋内、腹腔内、脾臓内、筋肉内、網膜下、皮下、粘膜、局所および経口経路が含まれる(Templeton, 2002, DNA Cell Biol., 21:857-867)。あるいは、コレステロールに結合された、またはHIV−1のTATタンパク質に由来するTatペプチド、キイロショウジョウバエ(D.melanogaster)アンテナペディアタンパク質のホメオドメインの第三ヘリックス、単純ヘルペスウイルスのVP22タンパク質、アルギニンのオリゴマー、およびWO07069090 (Lindgren, A. et al., 2000, Trends Pharmacol. Sci, 21:99-103, Schwarze, S.R. et al., 2000, Trends Pharmacol. Sci., 21:45-48, Lundberg, M et al., 2003, Mol. Therapy 8:143-150およびSnyder, E.L. and Dowdy, S.F., 2004, Pharm. Res. 21:389-393)に記載されているものなどのペプチドといった、細胞膜を介する移動を促進し得る化合物に結合された、リポソームの一部を形成する核酸を投与することができる。あるいは、プラスミドベクターまたはウイルスベクター、好ましくはアデノウイルス、アデノ随伴ウイルスもしくはレトロウイルス(ネズミ白血病ウイルス(MLV)に基づくウイルスなど)もしくはレンチウイルス(HIV、FIV、EIAV)に基づくベクターの一部を形成するポリヌクレオチドを投与することができる。
【0117】
別の実施態様では、本発明の組成物、融合タンパク質およびポリヌクレオチドは、Liu, F., et al., (Gene Ther, 1999, 6:1258-66)により記載されているようないわゆる「流体力学的投与」によって投与することもできる。前述の方法に従い、これらの化合物は生物体の血管に高速かつ大容量で導入され、より広い分布で高いレベルのトランスフェクションをもたらす。細胞内接近の有効性は投与される流体の容量および注入速度によって異なることが実証されている(Liu et al., 1999, Science, 305:1437-1441)。マウスにおいて、投与は3〜5秒かけて1ml/体重10gという値に至適化されている(Hodges et al., 2003, Exp. Opin. Biol. Ther, 3:91-918)。ポリヌクレオチドの流体力学的投与後のin vivoにおける細胞トランスフェクションを可能とする厳密な機構は完全には知られていない。マウスの場合、尾静脈による投与は心拍よりも速い律動で起こり、投与された流体の上大静脈への蓄積をもたらすと考えられる。この流体は次に器官の血管に接近し、その後、前述の血管内の開口部(fenestration)を経て管外空間に接近する。このようにして、ポリヌクレオチドは血液と混合する前に標的器官の細胞と接触するようになり、それにより、ヌクレアーゼによる分解の可能性を軽減する。
【0118】
本発明の組成物は体重1キログラム当たり10mg未満、好ましくは、体重1キログラム当たり5、2、1、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001、0.0005、0.0001、0.00005もしくは0.00001mg未満、体重1キログラム当たり薬剤200nmol未満、言い換えれば、およそ4.4×1016コピー、または体重1キログラム当たり1500、750、300、150、75、15、7.5、1.5、0.75、0.15もしくは0.075nmolの用量で投与することができる。この単位用量を注射、吸入または局所投与によって投与することができる。本発明の二官能性ポリヌクレオチドおよび組成物は標的mRNAが発現される器官に直接投与することができ、この場合には器官当たり0.00001mg〜3mg、または好ましくは器官当たり0.0001〜0.001mgの間、器官当たり約0.03〜3.0mg、器官当たり約0.1〜3.0mgまたは器官当たり0.3〜3.0mgの間の用量が投与される。
【0119】
用量は治療される症状の重篤度および応答によって異なり、数日から数ヶ月、またはその症状に緩和が見られるまで様々であり得る。至適用量は、患者生物体における薬剤濃度を周期的に測定することにより決定することができる。至適用量は従前のin vitroまたは動物モデルにおけるin vivo試験で得られたEC50値から決定することができる。単位用量は1日1回または1日1回未満、好ましくは2、4、8または30日おきに1回未満で投与することができる。あるいは、初期量の後に1回または数回の維持量を、一般に初期量よりも少ない量で投与することもできる。維持計画は0.01μg〜1.4mg/kg体重/日の間、例えば1、0.1、0.01、0.001または0.00001mg/kg体重/日の用量で患者を治療することを含み得る。維持量は、好ましくは5、10または30日おきに多くて1回投与する。この治療を、患者が患っている変調のタイプ、その重篤度および患者の状態に応じて異なる時間継続しなければならない。治療後には、その治療に応答しない疾患の場合には用量を引き上げるべきかどうか、またはその疾病の改善もしくは望まない二次的作用が見られる場合には用量を引き下げるべきかどうかを決定するために患者の展開をモニタリングしなければならない。
【0120】
1日用量は、特定の状況に応じて1回用量または2回以上の用量で投与することができる。反復投与または頻繁な投与が要される場合には、ポンプ、半永久的カテーテル(静脈内、腹腔内、大槽内または関節内)またはリザーバーなどの投与デバイスを移植することが勧められる。
【0121】
本発明の組成物および融合タンパク質の治療的使用
さらなる態様において、本発明はまた、医療において用いるための本発明の組成物、融合タンパク質およびポリヌクレオチドに関する。
【0122】
本発明の組成物は、in vivoにおいて脾臓内、肝臓および末梢血CD8リンパ球の増殖を促進すること(本発明の実施例5参照)、種々の結腸直腸腺癌モデルにおいて抗腫瘍効果を提供すること(実施例6および7参照)、および抗代謝効果を実証すること(実施例8参照)ができる。これらの効果はIL15のNK細胞活性を増進する能力に関する証拠と相まって、生得(NK細胞媒介型)または適応(CD8リンパ球媒介型)免疫応答の刺激から利益を受け得る患者を治療するための本発明の化合物および組成物の使用を可能とする。
【0123】
よって、別の態様において、本発明は、被験体の免疫応答の刺激に使用するための本発明の組成物、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクターもしくは遺伝子構築物、本発明の宿主細胞に関する。
【0124】
好ましくは、本発明の組成物、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクターもしくは遺伝子構築物、または本発明の宿主細胞は、抗原に応答した免疫系の活性化を必要とする疾患を治療するためにも用いられる。
【0125】
あるいは、本発明は、抗原に対する被験体の免疫応答を刺激することまたは免疫系の活性化を必要とする疾患を治療することを目的とする薬剤の製造のための、本発明の組成物、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクターもしくは遺伝子構築物、または本発明の宿主細胞の使用に関する。
【0126】
あるいは、本発明は、抗原に対する被験体の免疫応答を刺激するまたは免疫系の活性化を必要とする疾患を治療する方法であって、該被験体に本発明の組成物、本発明の融合タンパク質、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクターもしくは遺伝子構築物、または本発明の宿主細胞を投与することを含んでなる方法に関する。
【0127】
本発明において「被験体の免疫応答を刺激する」とは、その応答が初めて起こる個体での特定の抗原に対する免疫応答の誘導、ならびにその免疫応答がすでに起こったことがある被験体における免疫応答の再活性化を意味する。免疫応答は生得免疫応答ならびに適応免疫応答の双方を含むことができ、体液型応答または細胞型応答のいずれかを含み得る。
【0128】
よって、本発明の化合物および組成物の、特定の抗原に対する被験体の免疫応答を増強する能力は、生物体において該抗原の存在に関連する疾患を治療するのに有用であり得、その疾患としては、ウイルス抗原を取り扱う場合にはウイルス感染により引き起こされる疾患、細菌抗原を取り扱う場合には細菌感染により引き起こされる疾患、真菌抗原を取り扱う場合には真菌感染により引き起こされる疾患、アレルゲンを取り扱う場合にはアレルギー、寄生虫抗原を取り扱う場合には寄生虫感染により引き起こされる疾患、および/または腫瘍細胞特異的抗原を取り扱う場合には腫瘍が含まれる。よって、好ましい実施態様では、免疫系の活性化を必要とする疾患は感染性疾患および新生物性疾患の群から選択される。
【0129】
本発明の化合物および組合せを用いて治療することができるウイルス感染により引き起こされる疾患としては、限定されるものではないが、HIV−1ウイルス(AIDS)の感染により引き起こされる疾患;単純ヘルペスウイルス(単純ヘルペス、性器ヘルペス)、サイトメガロウイルス(単球増加症、網膜炎、肝炎)、エプスタイン・バーウイルス(感染性単球増加症、バーキットリンパ腫および鼻咽頭癌)および水痘帯状疱疹(鶏痘、帯状疱疹)のウイルスなどのヒトヘルペスウイルスにより引き起こされる疾患;B型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスなどの肝炎ウイルスにより引き起こされる疾患;呼吸器合胞体ウイルス、パラインフルエンザウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ヒト乳頭腫ウイルスなどのパラミクソウイルスにより引き起こされる疾患;黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、ダニ媒介脳炎のウイルスまたは日本脳炎ウイルスなどのフラビウイルスおよびロタウイルスにより引き起こされる疾患が挙げられる。本発明の化合物および組合せを用いて治療することができる他のタイプのウイルス感染は、Fundamental Virology, second edition, eds. Fields, B. N. and Knipe, D. M. (Raven Press, New York, 1991)に詳細に記載されている。
【0130】
本発明の化合物および組合せを用いて治療することができる細菌感染により引き起こされる疾患としては、限定されるものではないが、エシェリキア属(Escherichia)、エンテロバクター属(Enterobacter)、サルモネラ菌属(Salmonella)、ブドウ状球菌(Staphylococcus)、赤痢菌属(Shigella)、リステリア属(Listeria)、エーロバクター属(Aerobacter)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、クレブシェラ属(Klebsiella)、プロテウス属(Proteus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、連鎖球菌属(Streptococcus)、クラミジア属(Chlamydia)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、肺炎球菌属(Pneumococcus)、ナイセリア属(Neisseria)、クロストリジウム属(Clostridium)、バチルス属(Bacillus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、マイコバクテリア属(Mycobacterium)、カンピロバクター属(Campylobacter)、ビブリオ属(Vibrio)、セラチア属(Serratia)、プロビデンシア属(Providencia)、クロモバクテリウム属(Chromobacterium)、ブルセラ属(Brucella)、エルシニア属(Yersinia)、ヘモフィラス属(Haemophilus)またはボルデテラ属(Bordetella)の微生物により引き起こされる疾患が挙げられる。
【0131】
本発明の化合物および組合せを用いて治療することができる真菌感染により引き起こされる疾患としては、限定されるものではないが、カンジダ症、アスペルギルス症、ヒストプラズマ症、クリプトコッカス髄膜炎および類似のものが挙げられる。
【0132】
本発明の化合物および組合せを用いて治療することができる寄生虫感染としては、限定されるものではないが、マラリア、ニューモシスチス・ジロヴェチ(Pneumocystis jiroveci)による感染、肺炎、睡眠病、リーシュマニア症、クリプトスポリジウム症、トキソプラズマ症およびトリパノソーマ属(trypanosoma)が挙げられる。
【0133】
本発明の化合物および組成物を用いて治療することができるアレルギー型障害としては、限定されるものではないが、花粉(樹木、草本、雑草および牧草の花粉のアレルゲン)に曝されることにより引き起こされるアレルギー、昆虫アレルゲン(吸入性アレルゲン、唾液由来のアレルゲン、および毒)、ふけおよび動物体毛アレルゲンおよび食物アレルゲンに曝されることにより引き起こされるアレルギーが挙げられる。
【0134】
本発明の結合体および組成物はまた、過増殖性疾患を治療するためにも好適である。本発明において「増殖性疾患」という表現は、不適切に高いレベルの細胞分裂、不適切に低いレベルのアポトーシスまたはその双方により引き起こされる、またはそれを原因とする疾患を含み、原発性腫瘍ならびに転移の双方を含む。「原発性腫瘍」とは、その腫瘍が起源する原発部位の腫瘍を意味する。本発明において「転移」とは、腫瘍が腫瘍の元の原発部位以外の生物組織に拡大するプロセスを意味する。
【0135】
本発明において「過増殖性疾患の治療」または「腫瘍の治療」とは、癌もしくは腫瘍の症候、合併症または生化学的徴候の出現を抑制する、もしくは遅延させるため、その症候を緩和するため、または例えば転移の出現などのその増殖および進行を抑制または阻害するための本発明の化合物および組成物の投与を意味するものと理解される。この治療は、疾患の出現を遅延させるため、またはその臨床徴候もしくは無症状症候の顕在化を抑制するための予防的処置、または疾患の顕在化の後もしくは手術もしくは放射線療法によるその治療に関連する症候を除去もしくは緩和するための治療的処置であり得る。
【0136】
本発明において治療される癌はいずれのタイプの癌または腫瘍であってもよい。これらの腫瘍または癌としては、限定されるものではないが、結腸、腹部、骨、乳房、消化系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、下垂体、精巣、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭頸部、神経系(中枢および末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟組織、脾臓、胸部および泌尿生殖器に存在する悪性腫瘍、より詳しくは、小児急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、成人(原発性)肝細胞性癌、成人(原発性)肝臓癌、成人急性リンパ性白血病、成人急性骨髄性白血病、成人ホジキン病、成人ホジキンリンパ腫、成人リンパ性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、成人原発性肝臓癌、成人軟組織肉腫、AIDS関連リンパ腫、AIDS関連悪性腫瘍、肛門癌、星状細胞腫、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳幹膠腫、脳腫瘍、乳癌、腎盂・尿管癌、原発性中枢神経系リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞腫、脳星状細胞腫、頸部癌、小児(原発性)肝細胞性癌、小児(原発性)肝臓癌、小児急性リンパ芽球性白血病、小児急性骨髄性白血病、小児脳幹膠腫、小児小脳星状細胞腫、小児脳星状細胞腫、小児頭蓋外胚細胞腫瘍、小児ホジキン病、小児ホジキンリンパ腫、小児視覚経路・視床下部神経膠腫、小児リンパ芽球性白血病、小児髄芽細胞腫、小児非ホジキンリンパ腫、小児テント上原始神経外胚葉性・松果体腫瘍、小児原発性肝臓癌、小児横紋筋肉腫、小児軟組織肉腫、小児視覚経路・視床下部神経膠腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、内分泌膵島細胞癌、子宮内膜癌、脳室上衣細胞腫、上皮癌、食道癌、ユーイング肉腫および関連の腫瘍、癌分泌膵臓癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼の癌、女性の乳癌、ゴーシェ病、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管腫瘍、生殖細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍腫瘍、トリコ白血病(tricoleukaemia)、頭頸部癌、肝細胞癌、ホジキン病、ホジキンリンパ腫、高ガンマグロブリン血症、下咽頭癌、腸管癌、眼内黒色腫、膵島細胞癌、膵島細胞性膵臓癌、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、口唇口腔癌、肝臓癌、肺癌、リンパ増殖性障害、マクログロブリン血症、男性の乳癌、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、髄芽細胞腫、黒色腫、中皮腫、原発不明転移性扁平上皮性頸部癌、原発転移性扁平上皮性頸部癌、転移性扁平上皮性頸部癌、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫/形質細胞新生物、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病(myelogenous leukaemia)、骨髄性白血病(myeloid leukaemia)、骨髄増殖性障害、副鼻腔・鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、妊娠中の非ホジキンリンパ腫、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌、原発不明転移性扁平上皮性頸部癌、頬咽頭癌、悪性線維性骨肉腫−Z、骨肉腫−W、悪性線維性組織球腫、悪性線維性骨肉腫/骨の組織球腫、上皮性卵巣癌、卵巣生殖細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓癌、パラプロテイン血症、紫斑病、副甲状腺癌、陰茎癌、褐色細胞種、下垂体腫瘍、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性肝臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎盂・尿管癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、類肉腫症、肉腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟組織肉腫、扁平上皮性頸部癌、胃癌、松果体・テント上原始神経外胚葉性腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣癌、胸腺腫、甲状腺癌、腎盂・尿管移行上皮癌、移行腎盂・尿管癌、絨毛腫瘍、腎盂・尿管細胞癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、視経路・視床下部神経膠腫、外陰癌、ワルデンストロームマクログロブリン血症、ビルムス腫瘍および他のいずれかの過増殖性疾患、ならびに前記器官系に存在する新生物が挙げられる。
【0137】
本発明のワクチン組成物
本発明の化合物および組成物はまた、抗原に対する患者の応答を増強するためのワクチンのけるアジュバントとしても有用である。よって、別の態様において、本発明は、抗原と本発明による組成物、融合タンパク質、ポリヌクレオチド、遺伝子構築物、ベクターまたは宿主細胞とを含んでなるワクチン組成物に関する。
【0138】
本発明において「ワクチン」または「ワクチン組成物」とは、少なくとも1つの抗原を含んでなり、その抗原に対する被験体の免疫応答の活性化を可能等する組成物を意味する。このようなワクチンの目的は、細胞ならびに抗体の双方によって媒介される免疫を活性化することである。好ましくは、細胞性免疫には、T細胞応答、主として、CD4+ T細胞により媒介される応答、および/またはCD8+ T細胞の応答の刺激が含まれる。
【0139】
本明細書において「アジュバント」とは、免疫系を活性化して、ワクチンに対して、アジュバントを含まないワクチンを投与する場合の結果として得られるものよりも強力かつ有効な免疫応答を可能とする免疫学的薬剤を意味する。アジュバントに対する典型的な応答としては、限定されるものではないが、免疫系細胞(B細胞、T細胞、樹状細胞、抗原提示細胞、マクロファージ、NK細胞)の活性化、増殖および/または分化、マーカーおよびサイトカインの発現の増大または低下、IgA、IgMおよび/またはIgG力価の刺激、巨脾症(脾臓細胞充実性の増大)、過形成、種々の組織における浸潤物の形成、ならびに標準的技術を用いて当業者が定量できる他のタイプの応答が含まれる。
【0140】
よって、本発明の組合せおよび化合物と併用可能なワクチンとしては、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原およびアレルゲンまたは環境抗原および腫瘍抗原の群から選択される1以上の抗原を提示するワクチンが含まれる。
【0141】
本発明の組合せおよび化合物と併用可能なワクチンに用いるのに好適なウイルス抗原としては、HIV−1抗原(tat、nef、gp120またはgp160、gp40、p24、gag、env、vif、vpr、vpu、revなど)、ヒトヘルペスウイルス(gH、gL、gM、gB、gC、gK、gEもしくはgDまたはそれらの誘導体)または前初期タンパク質(VHS1またはVHS2のICP27、ICP47、ICP4、ICP36)、サイトメガロウイルス、特にヒトサイトメガロウイルス(gBまたはその誘導体)、エプスタイン・バーウイルス(gp350またはその誘導体)、水痘帯状疱疹ウイルス(gpI、II、IIIおよびIE63)、またはB型肝炎ウイルスなどの肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎の表面抗原または肝炎の核抗原)、C型肝炎ウイルス(例えば、核抗原E1、NS3またはNS5)、呼吸器合胞体ウイルスなどのパラミクソウイルス(タンパク質FおよびGまたはそれらの誘導体)、パラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス(タンパク質E1およびE2)、鶏痘ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス(例えば、HPV6、11、16、18、eg L1、L2、E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7)、フラビウイルス(例えば、黄熱ウイルス、デング熱ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)またはインフルエンザウイルス(タンパク質HA、NP、NAもしくはM、またはその組合せ)に感染した細胞、ロタウイルス抗原(VP7scおよび他のロタウイルス成分)、ならびに類似のもの(ウイルス抗原のさらなる例としてはFundamental Virology, second edition, eds. Fields, B. N. and Knipe, D. M. (Raven Press, New York, 199)を参照)が挙げられる。
【0142】
本発明の化合物および組合せと併用可能なワクチンに用いるのに好適な細菌抗原または誘導体としては、ナイセリア属(Neisseria)の種、例えば、淋菌(N. gonorrhea)および髄膜炎菌(N. meningitidis)の抗原(トランスフェリン結合タンパク質、ラクトフェリン結合タンパク質、PiICおよびアドヘシン);化膿連鎖球菌(S. pyogenes)の抗原(Mタンパク質またはその断片およびC5Aプロテアーゼなど);アガラクチア(S. agalactiae)、S.ミュータンス(S. mutans)の抗原;軟性下疳菌(H. ducreyi)の抗原;M.カタラーリス(M. catarrhalis)(ブランハメラ・カタラーリス(Branhamella catarrhalisとしても知られる)を含むモラクセラ属(Moraxella)の種の抗原(低分子量および高分子量アドヘシンおよびインベーシン);ボルデテラ属(Bordetella)の種、例えば、百日咳菌(B. pertussis)、例えば、パラ百日咳菌(Parapertussis)およびB.ブロンキセプチカ(B. bronchiseptica)の抗原(パータクチン、百日咳毒素またはその誘導体、微細線維性血球凝集素、アデニル酸シクラーゼ、フィムブリエなど);結核菌(M. tuberculosis)、ウシ結核菌(M. bovis)、らい菌(M. leprae)、鳥結核菌(M. avium)、パラ結核菌(M. paratuberculosis)、スメグマ菌(M. smegmatis)を含むマイコバクテリア種の抗原;レジオネラ属(Legionella)の種、例えば、L.ニューモフィラ(L. pneumophila)の抗原(例えば、ESAT6、抗原85A、−Bまたは−C、MPT 44、MPT59、MPT45、HSPIO、HSP65、HSP70、HSP 75、HSP90、19kDaのPPD[Rv3763]、38kDaのPPD[Rv0934]);エシェリキア属(Escherichia)の種、例えば、腸内毒素原性大腸菌の抗原(例えば、定着因子、熱不安定性毒素またはその誘導体、耐熱性毒素またはその誘導体)、腸管出血性大腸菌および腸管病原性大腸菌の抗原(例えば、志賀毒素と類似の毒素またはその誘導体);ビブリオ属(Vibrio)の種、例え
ば、コレラ菌(V. cholera)の抗原(例えば、コレラ毒素またはその誘導体);赤痢菌属(Shigella)の種、例えば、S.ソネイ(S. sonnei)、志賀赤痢菌(S. dysenteriae)、S.フレックスネリ(S. flexnerii)の抗原;エルシニア属(Yersinia)の種、例えば、Y.エンテロコリチカ(Y. enterocolitica)の抗原(例えば、Yopタンパク質);ペスト菌(Y. pestis)、Y.シュードツベルクローシス(Y. pseudotuberculosis)の抗原;カンピロバクター属(Campylobacter)の種、例えば、C.ジェジュニ(C. jejuni)の抗原(例えば、毒素、アドヘシンおよびインベーシン);サルモネラ菌属(Salmonella)の種、例えば、チフス菌(S. typhi)、パラチフス菌(S. paratyphi)、豚コレラ菌(S. choleraesuis)、腸炎菌(S. enteritidis)の抗原;リリステリア属(Listeria)の種、例えば、ステリア菌(L. monocytogenes)の抗原;ヘリコバクター属(Helicobacter)の種、例えば、ピロリ菌(H. pylori)の抗原(例えば、ウレアーゼ、カタラーゼ、空胞化毒素);シュードモナス(Pseudomonas)属の種、例えば、緑膿菌(P. aeruginosa)の抗原;ブドウ状球菌属(Staphylococcus)の種、例えば、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)の抗原;腸球菌属(Enterococcus)の種、例えば、糞便連鎖球菌(E. faecalis)、フェシウム菌(E. faecium)の抗原;クロストリジウム(Clostridium)属の種、例えば、破傷風菌(C. tetani)の抗原(例えば、破傷風毒素およびその誘導体);ボツリヌス菌(C. botulinum)の抗原(例えば、ボツリヌス毒素およびその誘導体)、C.ディフィシル(C. difficile)の抗原(例えば、クロストリジウムAまたはB毒素およびそれらの誘導体);バチルス属(Bacillus)の種、例えば、炭疽菌(B. anthracis)の抗原(例えば、炭疽毒素およびその誘導体);コリネバクテリウム属(Corynebacterium)の種、例えば、ジフテリア菌(C. diphtheriae)の抗原(例えば、ジフテリア毒素およびその誘導体);ボレリア属(Borrelia)の種、例えば、B.ブルグドルフェリ(B. Burgdorferi)の抗原(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB);B.ガリニ(B. garinii)の抗原(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.アフゼリ(B. afzelii)の抗原(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.アンデルソンフィ(B. andersonfi)の抗原(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.ヘルムシ(B. hermsii)の抗原;エーリキア属(Ehrlichia)の種、例えば、E.エクイ(E. equi)の抗原およびヒト顆粒球エーリキア症の薬剤;リケッチア属(Rickettsia)の種、例えば、斑点熱リケッチア(R. rickettsii)の抗原;クラミジア属(Chlamydia)の種、例えば、トラコーマクラミジア(C. trachomatis)の抗原(例えば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質);肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)の抗原(例えば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質)、オウム病クラミジア(C. psittaci)の抗原;レプトスピラ属(Leptospira)の種、例えば、L.インテロガンス(L. interrogans)の抗原;トレポネーマ属(Treponema)の種、例えば、梅毒トレポネーマ(T. pallidum)の抗原(例えば、希少外膜タンパク質)、T.デンチコラ(T. denticola)、T.ハイオジセンテリアエ(T. hyodysenteriae)の抗原;プラスモジウム属(Plasmodium)の種、例えば、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)の抗原;トキソプラズマ属(Toxoplasma)の種およびトキソプラズマ原虫(T. gondii)の抗原(例えば、SAG2、SAGS、Tg34);エントアメーバ属(Entamoeba)の種、例えば、赤痢アメーバ(E. histolytica)の抗原;バベシア属(Babesia)の種、例えば、B.ミクロチ(B. microti)の抗原;トリパノソーマ属(Trypanosoma)の種、例えば、クルーズトリパノソーマ(T. cruzi)の抗原;ジアルジア属(Giardia)の種、例えば、ランブル鞭毛虫(G. lamblia)の抗原;リーシュマニア属(leishmania)の種、例えば、森林型熱帯リーシュマニア(L. major)の抗原;ニューモシスチス属(Pneumocystis)の種、例えば、P.カリニ(P. carinii)の抗原;トリコモナス属(Trichomonas)の種、例えば、膣トリコモナス(T. vaginalis)の抗原;住血球虫属(Schisostoma)の種、例えば、マンソン住血球虫(S. Mansoni)の抗原が挙げられる。
【0143】
カンジダ属(Candida)の種、例えば、C.アルビカンス(C. albicans);クリプトコッカス属(Cryptococcus)の種、例えば、C.ネオフェルマンス(C. neoformans)などの酵母の、またはそれに由来する抗原;結核菌(M. tuberculosis)の抗原(Rv2557、Rv2558、RPF:Rv0837c、Rv1884c、Rv2389c、Rv2450、Rv1009、aceA(Rv0467)、PstS1、(Rv0932)、SodA(Rv3846)、16kDalのRv2031c、Tb Ra12、Tb H9、Tb Ra35、Tb38−1、Erd 14、DPV、MTI、MSL、mTTC2およびhTCC1など);クラミジアの抗原、例えば、高分子量タンパク質(HMWP)、ORF3(文献EP366412)および推定膜タンパク質(possible membrane proteins)(Pmp);連鎖球菌属(Streptococcus)の種、例えば、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)の抗原(PsaA、PspA、ストレプトリジン、コリン結合タンパク質、タンパク質抗原ニューモリシン、およびその変異型解毒化誘導体);ヘモフィルス属(Haemophilus)の種、例えば、H.インフルエンザ(H. influenzae)B型に由来する抗原(例えば、PRPおよびその結合体);分類不能H.インフルエンザの抗原(OMP26、高分子量アドヘシン、P5、P6、タンパク質Dおよびリポタンパク質D、ならびにフィンブリンおよびフィンブリン由来ペプチド、またはその多重コピー変異体または融合タンパク質);熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)に由来する抗原(RTS.S、TRAP、MSP1、AMA1、MSP3、EBA、GLURP、RAP1、RAP2、sequestrin、PfEMP1、Pf332、LSA1、LSA3、STARP、SALSA、PfEXP1、Pfs25、Pfs28、PFS27/25、Pfs16、Pfs48/45、Pfs230およびプラスモジウム属(Plasmodium)の種におけるその類似体など)。
【0144】
本発明の化合物および組合せと併用可能なワクチンに用いるのに好適な真菌抗原としては、限定されるものではないが、例えば、カンジダ真菌抗原;ヒストプラズマ真菌抗原の成分、例えば、熱ショックタンパク質60(HSP60)およびヒストプラズマ真菌抗原の他の成分;クリプトコッカス真菌抗原、例えば、莢膜多糖類およびクリプトコッカス真菌抗原の他の成分;球虫類の真菌抗原、例えば、小球体の抗原、および球虫類の真菌抗原の他の成分;ならびに輪癬、例えば、トリコフィチンの真菌抗原、および球虫類の真菌抗原の他の成分が挙げられる。
【0145】
本発明の化合物および組合せと併用可能なワクチンに用いるのに好適な原虫抗原としては、限定されるものではないが、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の抗原、例えば、娘虫体表面抗原、種虫表面抗原、種虫周囲抗原、配偶子母細胞/配偶子表面抗原、全血抗原pf、55/RESAおよびプラズモイド抗原の他の成分;トキソプラズマの抗原、例えば、SAG−I、p30およびトキソプラズマ抗原の他の成分;住血球虫の抗原、例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、パラミオシンおよび住血球虫抗原の他の成分;リーシュマニアの抗原およびリーシュマニア・テールズ(Leishmania tales)の他の抗原、例えばgp63、リポホスホグリカンおよびその関連タンパク質ならびにリーシュマニア抗原の他の成分;ならびにクルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)の抗原、例えば、75〜77kDaの抗原、56kDaの抗原およびトリパノソーマ抗原の他の成分が挙げられる。
【0146】
本発明の化合物および組合せと併用可能なワクチンに用いるのに好適なアレルゲンまたは環境抗原としては、限定されるものではないが、花粉アレルゲン(樹木、草本、雑草および牧草の花粉のアレルゲン)、昆虫アレルゲン(唾液および毒に由来する吸入性アレルゲン)、ふけおよび動物体毛アレルゲンおよび食物アレルゲンなどの天然で産生されるアレルゲンに由来する抗原が挙げられる。樹木、牧草および草本由来の重要な花粉アレルゲンは、ブナ目(Fagales)、モクセイ目(Oleales)、マツ目(Pinales)およびスズカケノキ(Platanaceae)の分類目(とりわけ、カバノキ(Betula)、ハンノキ(Alnus)、ハシバミ(Corylus)、シデ(Carpinus)およびオリーブ(Olea)、ヒマラヤスギ(CryptomeriaおよびJuniperus)、バナナノキ(Platanus)を含む、イネ目(とりわけ、ドクムギ属(Lolium)、アラガエリ属(Phleum)、イチゴツナギ属(Poa)、ギョウギシバ属(Cynodon)、カモガヤ属(Dactylis)、シラゲガヤ属(Holcus)、クサヨシ属(Phalaris)、ライムギ属(Secale)およびモロコシ属(Sorghum)を含む)、キク目(Asterales)およびイラクサ目(Urticales)(とりわけ、ブタクサ属(Ambrosia)、ヨモギ属(Artemisia)およびヒカゲミズ属(Parietaria)を含む)に起源する。使用可能な他のアレルゲン性抗原としては、ヒョウヒダニ属(Dermatophagoides)およびシワダニ属(Euroglyphus)のイエダニ類、貯蔵庫ダニ、例えば、レピドグリフィス(Lepidoglyphys)、ニクダニ(Glycyphagus)およびコナダニ(Tyrophagus)のアレルゲン、ゴキブリ、小昆虫およびノミ類、例えば、チャバネゴキブリ(Blatella)、クロゴキブリ(Periplaneta)、ユスリカ(Chironomus)およびイヌノミ(Ctenocepphalides)のアレルゲン、ネコ、イヌおよびウマなどの哺乳類のアレルゲン、鳥類のアレルゲン、毒物アレルゲン、例えば、ハナバチ類(ミツバチ(Apidae)上科)、カリバチ類およびアリ類(オオアリ(Formicoidae)上科)を含む膜翅目(Hymenoptera)の分類目のものなどの、昆虫の刺咬に起源するアレルゲンが挙げられる。使用可能なさらなるアレルゲン性抗原としては、アルテルナリア属(Alternaria)およびクラドスポリウム属(Cladosporium)などの吸入性の真菌アレルゲンが挙げられる。
【0147】
本発明の化合物および組合せと併用可能なワクチンに用いるのに好適な腫瘍抗原としては、限定されるものではないが、MAGE、MART−1/Melan−A、gp100、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)−0017−1A/GA733、癌胎児性抗原(CEA)およびその抗原エピトープCAP−1およびCAP−2、etv6、aml1、前立腺特異的抗原(PSA)およびその抗原エピトープPSA−1、PSA−2およびPSA−3、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、T細胞/CD3−V鎖受容体、MAGEファミリーの腫瘍抗原(例えば、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A5、MAGE−A6、MAGE−A7、MAGE−A8、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A11、MAGE−A12、MAGE−Xp2(MAGE−B2)、MAGE−Xp3(MAGE−B3)、MAGE−Xp4(MAGE−B4)、MAGE−C1、MAGE−C2、MAGE−C3、MAGE−C4、MAGE−C5)、GAGEファミリーの腫瘍抗原(例えば、GAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGE−6、GAGE−7、GAGE−8、GAGE−9)、BAGE、RAGE、LAGE−1、NAG、GnT−V、MUM−1、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー、HER2/neu、p2lras、RCAS1、α−フェトプロテイン、E−カドヘリン、α−カテニン、13−カテニン、γ−カテニン、pl2Octn、gp100Pme1117、PRAME、NY−ESO−1、cdc27、結腸タンパク質腺腫様ポリポーシス(APC)、フォドリン、コネキシン37、イディオタイプIg、p15、gp75、GM2およびGD2ガングリオシド、ヒト乳頭腫ウイルスタンパク質などのウイルス産物、Smadファミリーの腫瘍抗原、lmp−1、P1A、EBVによりコードされる核抗原(EBNA)−1、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX−1、SSX−2(HOM−MEL−40)、SSX−3、SSX−4、SSX−5、SCP−1およびCT−7、およびc−erbB−2、急性リンパ芽球性白血病(etv6、amll、シクロフィリンb)、B細胞リンパ腫(イディオタイプIg)、神経膠腫(E−カドヘリン、a−カテニン、13−カテニン、7−カテニン、p120ctn)、膀胱癌(p2lras)、胆管癌(p2lras)、乳癌(MUCファミリー、HER2/neu、c−erbB−2)、頸部癌(p53、p2lras)、結腸癌(p2lras、HER2/neu、c−erbB−2、MUCファミリー)、結腸直腸癌(結腸直腸関連抗原(CRC)−0017−1A/GA733、APC)、絨毛癌(CEA)、上皮細胞癌(シクロフィリンb)、胃癌(HER2/neu、c−erbB−2、ga733糖タンパク質)、肝細胞癌、ホジキンリンパ腫(lmp−1、EBNA−1)、肺癌(CEA、MAGE−3、NY−ESO−1)、リンパ細胞由来白血病(シクロフィリンb)、黒色腫(p15タンパク質、gp75、癌胎児性抗原、GM2およびGD2ガングリオシド、Melan−A/MART−1、cdc27、MAGE−3、p2lras、gp100Pme1117)、骨髄腫(MUCファミリー、p2lras)、非小細胞肺癌(HER2/neu、c−erbB−2)、鼻咽頭癌(lmp−1、EBNA−1)、卵巣癌(MUC ファミリー、HER2/neu、c−erbB−2)、前立腺癌(前立腺特異的抗原(PSA)およびその抗原エピトープPSA−1、PSA−2およびPSA−3、PSMA、HER2/neu、c−erbB−2、ga733糖タンパク質)、腎臓癌(HER2/neu、c−erbB−2)、頸部および食道の扁平上皮細胞癌(ヒト乳頭腫ウイルスタンパク質などのウイルス産物)、精巣癌(NY−ES0−1)およびT細胞白血病(HTLV−1エピトープs)が挙げられる。
【0148】
本発明の組成物の成分、具体的には、ApoAとIL15の融合物または該融合物をコードするポリヌクレオチド、およびIL15受容体α鎖のSushiドメインまたは該ドメインをコードする核酸は単一の処方物として(例えば、一定量の各成分を含んでなる錠剤またはカプセル剤として)提供することができ、あるいはそうでなければ、一緒に、逐次に、または個別に投与するために後に組み合わせる個別の処方物として提供することもできる。本発明の組成物はまた、この処方物を、成分が個別に処方され、同じ容器に包装されているパーツキットとして意図する。
【0149】
当業者ならば、本発明の組成物の第一の成分および第二の成分の処方は同様であってよく、言い換えれば、同じ投与経路による投与を可能とする類似の方法で(例えば、錠剤または丸剤として)処方される。本発明の異なる成分が別個に処方される実施態様では、それらの2成分はブリスターパックで提供することができる。各ブリスターにはその日に消費すべき薬剤が含まれる。薬剤を1日に数回投与する必要がある場合には、各回の投与に相当する薬剤をブリスターパックの別のセクションに配置し、好ましくは、それらを投与する必要のある時刻を、ブリスターパックの各セクションに付記することができる。あるいは、本発明の組成物の成分を、異なる成分が異なった投与がなされるように異なった様式で処方することもできる。よって、例えば、第一の成分を経口投与用の錠剤またはカプセル剤として処方し、第二の成分を静脈投与用に処方することができる。
【0150】
本発明の組成物は、限定されるものではないが、静脈内、経口、鼻腔、非経口、局所、経皮、直腸および類似の投与を含む、当業者に公知の方法に従って投与される。
【0151】
以下、本発明を下記の実施例によって説明するが、これらの実施例は単に例示であって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0152】
実施例1 プラスミドの起源および構築
1.1 RNAの抽出
全マウス肝臓RNAを、TRI試薬(Sigma, Madrid, Spain)を用い、個々のサンプルから単離した。サンプルの濃度および純度を、分光光度計(Biophotometer, Eppendorf)にて260および280nmで吸光度を測定した(320nmでバックグラウンド補正)。
【0153】
1.2 全cDNAのRT−PCR合成
全RNA(3μg)をDNアーゼIで処理し、RNアーゼOUTの存在下、M−MLV RTを用いて逆転写を行ってcDNAを得た(総ての試薬は、Invitrogen, Carfsbed, CA)。全肝臓cDNA 25μlを得た。この反応物を37℃で1時間インキュベートし、95℃で1分間変性させ、4℃にした。これらのサンプルはすぐにPCRに用いるか、−20℃で保存した。
【0154】
1.3 ネズミアポリポタンパク質A−I(mApoA1)cDNAのクローニングおよびプラスミドpCMV−mApoA1の取得
pCMV−mApoA1(pApo)は、ネズミアポリポタンパク質A−I(Apoa1)と、その前にその固有のシグナルペプチドを含んでなり、サイトメガロウイルスプロモーターと機能的に連結されているポリペプチドをコードする配列番号1の配列を含んでなる。
【0155】
センスプライマーFwATGmApoA1:5’-ATGAAAGCTGTGGTGCTGGC-3’(配列番号46)、および
アンチセンスプライマーRvTGAmApoA1:5’-TCACTGGGCAGTCAGAGTCT-3’(配列番号47)
を設計した。
【0156】
BioTaq DNAポリメラーゼ(Bioline, London, UK)を用い、全肝臓cDNAに対するPCR):2720サーマルサイクラー(Applied Biosystems, Foster City, US)にて、94℃5分、94℃40秒を30サイクル、55℃40秒および72℃40秒、その後、72℃7分によってmApoA1のcDNAを増幅した(総ヌクレオチド795、72ヌクレオチドはシグナルペプチドをコードし、723ヌクレオチドは天然タンパク質をコードする)。このPCR産物を1%アガロースD−1 low EEOアガロースゲル(Pronadisa, Madrid, Spain)で泳動させ、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いてゲル断片を精製した。精製したmApoA1 cDNAを、製造者の説明書に従って発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA (Invitrogen, Carfsbed, CA)にクローニングした。これをpCMV−mApoA1またはpApoと呼称する。最後に、得られた配列を配列決定により確認した。
【0157】
1.4 ヒトインターロイキン15(hIL15)cDNAのクローニングおよびプラスミドpCMV−hIL15の取得
pCMV−hIL15(phIL15)は、ヒトIL15と、その前にIgVχ鎖のシグナルペプチドを含んでなり、サイトメガロウイルスプロモーターに機能的に連結されているポリペプチドをコードする配列番号2の配列を含んでなる。
【0158】
センスプライマーFwAscIhIL15:5’-AATAATGGCGCGCCGAACTGGATAGATG-3’(配列番号48)(5’に酵素AscIの制限部位を構成する9ヌクレオチド(GGCGCGCCC)の配列を導入する)および
アンチセンスプライマーRvNotIhIL15:5’-GTTCATCAACACGTCCTGAGCGGCCGC-3’(配列番号49)(5’に酵素NotIの制限部位を構成する8ヌクレオチド(GCGGCCGC)の配列を導入する)
を設計した。
【0159】
hIL15のcDNAを、発現プラスミドpVkL/IL−15IRESneo(Meazza et al. Eur. J. Immunol. 1997; 27: 1049-1054)に対するPCRにより増幅した(総ヌクレオチド345)。このプラスミドは、サイトメガロウイルスプロモーターの制御下に、ヒト成熟型IL15と、その前にIgVχ鎖をコードする配列を含む。これを表すためにpCMV−hIL5またはphIL15の用語を用いる。
【0160】
PCRは、PCRクローニング酵素(Stratagene, Cedar Creek, TX, US)を用いて行った。増幅条件は、2720サーマルサイクラー(Applied Biosystems Foster City, US)にて、95℃2分、95℃40秒を30サイクル、57℃30秒および72℃45秒、その後、72℃7分とした。このPCR産物を1%アガロースD−1 low EEOアガロースゲル(Pronadisa, Madrid, Spain)で泳動させ、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いてゲル断片を精製した。精製したhIL15 cDNAを製造者の説明書に従って発現ベクターpTrcHis2 TOPO(登録商標)TA(Invitrogen, Carfsbed, CA)にクローニングした。これをpTrcHis2−hIL15と呼称する。最後に、得られた配列を配列決定により確認した。
【0161】
1.5 mApoA1とhIL15の遺伝子融合物をコードするプラスミドpCMV−Apo−hIL15(pApo−hIL15)の構築
pCMV−Apo−hIL15(pApo−hIL15)は、ネズミアポリポタンパク質A−IがGAPリンカーによってヒトIL15と連結され、サイトメガロウイルスプロモーターと機能的に連結されたものを含んでなる融合タンパク質をコードする配列番号40の配列を含んでなる。
【0162】
アンチセンスプライマーRvAscImApoA1:5’-GGCGCGCCCTGGGCAGTCAGAGTCTCGC-3’(配列番号50)(ApoA1遺伝子の3’に酵素AscIの制限部位を構成する9ヌクレオチド(GGCGCGCCC)の配列を導入し、停止コドンを除去する)を設計した。この付加された制限配列は、この構成タンパク質にある特定の可動性を与える短いリンカーペプチドGAPに翻訳される。
【0163】
増幅は、鋳型としてpCMV−mApoA1(実施例1.3参照)、ならびにプライマーFwATGmApoA1およびRvAscImApoA1をBioTaq DNAポリメラーゼ酵素(Bioline, London, UK)とともに用い、2720サーマルサイクラー(Applied Biosystems Foster City, US)にて、94℃5分、94℃40秒を30サイクル、57℃40秒および72℃40秒、その後、72℃7分のPCRによって行った。このPCR産物(804ヌクレオチド)を1%アガロースD−1 low EEOアガロースゲル(Pronadisa, Madrid, Spain)で泳動させ、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いてゲル断片を精製した。精製したmApoA1−AscI DNAを発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen, Carfsbed, CA)にクローニングした。これをpCMV−mApoA1−AscIと呼称する。最後に、得られた配列を配列決定により確認した。
【0164】
並行して、鋳型としてpTrcHis2−hIL15(実施例1.4参照)を用い、これをAscI酵素およびバッファー4(New England Biolabs)を用いて37℃で50分消化した。この消化産物を1%アガロースD−1 low EEOアガロースゲル(Pronadisa, Madrid, Spain)で泳動させ、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いてゲル断片を精製した。精製したDNA AscI−hIL15−pTrcHis2を、酵素NotI、1×BSAおよびバッファー3(New England Biolabs)を用いて37℃で50分消化した。この消化産物を1%アガロースD−1 low EEOアガロースゲル(Pronadisa, Madrid, Spain)で泳動させ、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いてゲル断片を精製して精製DNA AscI−hIL15−NotI(345ヌクレオチド)を得た。
【0165】
遺伝子融合を行うために、プラスミドpCMV−mApoA1−AscIを、AscI酵素およびバッファー4(New England Biolabs)を用いて37℃で50分消化した。この消化産物を1%アガロースD−1 low EEOアガロースゲル(Pronadisa, Madrid, Spain)で泳動させ、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いてゲル断片を精製した。精製したpCMV−mApoA1 DNAを次にNotI酵素、1×BSAおよびバッファー3(New England Biolabs)を用い、pcDNA 3.1 V5−His TOPO(登録商標)TAの骨格に存在する制限部位を利用して37℃で50分消化した。この消化産物を1%アガロースD−1 low EEOアガロースゲル(Pronadisa, Madrid, Spain)で泳動させ、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いてゲル断片を精製した。AscIおよびNotI pCMV−mApoA1により開環したベクターを、T4 DNAリガーゼ高濃度と、バッファー溶液として2×Rapid Ligationバッファー(Promega Madison, Wl, U.S.)を用い、この混合物を室温で10分インキュベートして、1:3(ベクター:挿入配列)の比率で挿入配列AscI−hIL15−NotIと結合させた。次に、Top10細菌(Invitrogen, Carfsbed, CA)を形質転換させた。形質転換細菌をアンピシリン含有LB培地の入ったペトリプレートでのそれらの増殖に関して選択した(ベクターはこの抗生物質に対する耐性遺伝子を含むため)。陽性細菌からMiniPrep法(Qiagen, Germany)を用いてプラスミドDNAを抽出した後、2μgの前記プラスミドをAscI/PmeI酵素(New England Biolabs)で消化し、その後、その消化物を1%アガロースゲルでの電気泳動によって分離し、挿入配列の存在を確認した。得られた6669ntのプラスミドを以下、pCMV−Apo−hIL15またはpApo−hIL15と呼称する。
【0166】
1.6 pSushiプラスミドの起源
本発明においてpCMV−Sushi(pSushi)と呼称するプラスミドは、Duitmann et al. (Duitman, E.H., et al., Mol Cell Biol, 2008; 28: 4851-4861)に従前に記載されている、この研究の著者らにより厚意により提供されたプラスミドIL−15RΔMDに相当する。
【0167】
pCMV−Sushi(pSushi)は、ネズミIL15受容体α鎖(IL15ra)のSushiドメインと、その前にIgκのシグナルペプチドを含んでなり、サイトメガロウイルスプロモーターに機能的に連結されているポリペプチドをコードする配列番号20の配列を含む。
【0168】
1.7 ネズミインターロイキン15(mIL15)cDNAのクローニングおよびプラスミドpCMV−mSushi−mIL15(pmSushi−mIL15)の取得
pCMV−mSushi−mIL15(pmSushi−mIL15)は、GGSGGGGSGGGSGGGGSLQ型(配列番号32)のフレキシブルリンカーによってネズミIL15と結合されたネズミIL15受容体α鎖(IL15ra)のSushiドメインを含んでなるポリペプチドをコードする配列を含んでなる。
【0169】
ネズミIL15に融合されたSushiドメインと、その後に3’は1つのNheI制限部位、そして5’はもう1つのXhoI制限部位が隣接した2つの停止コドンをコードする遺伝子はGENEART AG (GENEART AG, BioPark, Josef-Engert-Straβe 11, 93053 Regensburg, Germany)により合成され、これをプラスミドpSecTag2/Hygro A(Invitrogen, Frankfurter Straβe 129B, 64293 Darmstadt, Germany)に導入した。
【0170】
ネズミIL15に融合されたSushiドメインの発現はサイトメガロウイルスプロモーターの制御下にあり、その分泌がIgκ鎖V−J2シグナルペプチドの下で指示される。
【0171】
1.8 mSushi、mIL15およびmApoA1の遺伝子融合物をコードするプラスミドpCMV−mSushi−mIL15−mApoA1(pmSushi−mIL15-mApo)の構築
pCMV−mSushi−mIL15−mApoA1は、ネズミIL15受容体α鎖(IL15ra)のSushiドメイン、ネズミIL15、およびネズミアポリポタンパク質A−Iを含んでなる融合タンパク質をコードする配列番号45の配列を含んでなる。
【0172】
プライマーは、ネズミIL15と融合されたSushi配列を増幅すると同時に、この遺伝子の3’にAscI酵素の制限部位を構成する9ヌクレオチド(GGCGCGCCC)の配列をつなぎ、停止コドンを除去するように設計された。この付加された制限配列は、5’にAscI配列を含むApo配列とのクローニングを可能とし、構成タンパク質にある特定の可動性を与える短いGAPリンカーペプチドに翻訳される。
【0173】
プライマーは、
Fw Sushi:5’-ATGGAGACAGACACCCTGCTG-3’(配列番号51);
Rv IL15 AscI:5’-GGGCGCGCCGCTGGTGTTGATGAACAT-3’(配列番号52)
であった。
【0174】
この配列を、鋳型として前記実施例に記載されているpmSushi−mIL15と、プライマーFw SushiおよびRv IL15 AscIを、酵素BioTaq DNAポリメラーゼ(Bioline, London, UK)とともに用い、2720サーマルサイクラー(Applied Biosystems Foster City, US)にて、94℃1分、94℃30秒を30サイクル、58℃30秒および72℃45秒、その後、72℃2分のPCRにより増幅した。このPCR産物を1%アガロースD−1 low EEOアガロースゲル(Pronadisa, Madrid, Spain)で泳動させ、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いてゲル断片を精製した。精製したDNAを、製造者の説明書に従って発現ベクターpcDNA(商標)3.1/V5−His TOPO(登録商標)TA(Invitrogen, Carfsbed, CA)にクローニングした。これをpCMV−mSushi−mIL15−AscIと呼称する。最後に、得られた配列を配列決定により確認した。
【0175】
遺伝子融合を行うため、プラスミドpCMV−mIFN−AscI−mApo(特許出願WO2009150284に記載、mIFNとmApoの間に融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含んでなる)を、バッファー4(New England Biolabs)中、37℃で50分、酵素AscIおよびNcoIで消化した。この消化産物を1%アガロースD−1 low EEOアガロースゲル(Pronadisa, Madrid, Spain)で泳動させ、IFN配列を含まない開環ベクターを含有する上方のバンドをゲルからQIAquickゲル抽出キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて精製した。プラスミドpCMV−mSushi−mIL15−AscIを、同じ酵素および条件を用いて消化した。この場合には、mSushi−mIL15断片を含有する下方のバンドを精製した。精製した両断片を、T4 DNAリガーゼ高濃度と、バッファー溶液として2×Rapid Ligationバッファー(Promega Madison, Wl, U.S.)を用い、この混合物を室温で10分インキュベートして、1:3(ベクター:挿入配列)の比率で結合させた。次に、Top10細菌(Invitrogen, Carfsbed, CA)を形質転換させた。形質転換細菌をアンピシリン含有LB培地の入ったペトリプレートでのそれらの増殖に関して選択した(ベクターはこの抗生物質に対する耐性遺伝子を含むため)。陽性細菌からMiniPrep法(Qiagen, Germany)を用いてプラスミドDNAを抽出した後、2μgの前記プラスミドをAscI/PmeI酵素(New England Biolabs)で消化し、その後、その消化物を1%アガロースゲルでの電気泳動によって分離し、挿入配列の存在を確認した。得られたプラスミドを以下、pCMV−mSushi−mIL15−mApoA1またはpmSushi−mIL15-mApoと呼称する。
【0176】
実施例2 実験モデル
2.1 動物
実験は、5〜7週齢の間の雌免疫適格BALB/cおよびC57BL/6マウス(Harlan, Barcelona, Spain)で行った。IL15Rα遺伝子の「ノックアウト」マウスを用いた(Lodolce et al. IL15 receptor maintains lymphoid homeostasis by supporting lymphocyte homing and proliferation. Immunity 1998; 9: 669-676)。動物は、外部病原体の無い特殊条件下で、動物実験の倫理規則に従って取扱った。
【0177】
2.2 動物の取扱い
各DNAプラスミド(10μg)を1.8ml生理食塩水血清0.9%(Braun)に再懸濁させ、27.5Gの針と2.5mlのシリンジ(Becton-Dickinson, Spain)を用いて、尾静脈から流体力学的注射により導入した。イソフルラン(Forane, Abbott)で吸入麻酔した後、眼窩後方から血液サンプルを得た。9.1xgで5分間の2連続遠心分離によって血清を回収し、−20℃で保存した。ケタミン(Imalgene)およびキシラジン(Rompun)の9:1混合物200μl/マウスの腹腔内注射により非経口麻酔を行った。
【0178】
2.3細胞系統
CT26細胞系統はBALB/Cマウス結腸直腸腺癌に由来し、発癌物質N−ニトロウス−N−メチル−ウレタンにより誘発されたものである。
【0179】
MC38系統はネズミ腺癌に由来する。
【0180】
双方とも、56℃で不活化した10%ウシ胎仔血清(FCS)、2mMグルタミン、100U/mlストレプトマイシン、100mg/mlペニシリン、1%β−メルカプトエタノール5.10−3を添加した完全RPMI−1640培地で培養した。記載の細胞を加湿インキュベートチャンバーにて37℃、5%CO2雰囲気下で培養した。培養プレートおよび培養ボトルはGreiner Bio-one (Esse, Germany)により供給された。
【0181】
2.4 hIL15の測定
hIL15の血清レベルを、NUNC MaxiSorp平底96穴プレートで製造者の説明書に従ってELISAキット(ヒトIL15セット、BD BiosiencesSan Diego, CA, US)を用い、ELISAアッセイにより測定した。
【0182】
2.5 フローサイトメトリー
細胞集団をフローサイトメトリーにより調べた。この趣意で、眼窩後方ならびに動物の脾臓およびから得た血液を用いた。固形器官を15分間、コラゲナーゼおよびDNアーゼ溶液とともにインキュベートして細胞崩壊を促進し、これはCell Strainer(著作権)(BC Falcon, Bedford, MA, US)の助けで行った。肝臓リンパ球を、35%Percoll(著作権)溶液(GE Heathcare, Uppsala, Sweden)中、the細胞懸濁液の遠心分離により単離した。各肝臓当たり、以下の試薬:1.6mLのPBS 10×、15.8mLのパーコール(著作権)、200Uのヘパリン(Mayne Pharma, Madrid, Spain)および28mLのRPMI(Gibco, Invitrogen, Grand Island, NY, US)を用いた。
【0183】
総ての供試細胞懸濁液を5分間Tris NH4Clバッファーで処理し、赤血球を溶解させた。
【0184】
細胞を50μLのPBSに再懸濁させ、暗所にて4℃で10分間、対応する抗体の混合物とともにインキュベートした。その後、2回の洗浄を行い、それらをFACScalibur(著作権)サイトメーター(BD Bioscience, San Diego, CA, US)で分析した。続いてのデータ解析はFlow Joプログラムバージョン5.7.2を用いて行った。
【0185】
用いた抗体はNK1.1−PE、CD3−FITC、CD8−PE、CD44−APC、CD62L−PE、CD8−PECy7およびNK1.1−APC(BD-Pharmamingen, BD Bioscience, San Diego, CA, US)であった。
【0186】
2.6 統計学的データ解析
データは、Prism 5コンピュータープログラム(GraphPad Software, Inc.)を用いて統計学的に解析した。腫瘍出現に関するデータはカプラン・マイヤーグラフに記録した。種々の時点での供試データを反復測定ANOVAとその後のボンフェローニ検定により解析した。有意な値をp<0.05とみなした。
【0187】
実施例3 プラスミド構築物の流体力学的投与後のhIL15の循環レベル
マウス血清中のヒトhIL15のレベルを調べるため、マウス2〜3匹の群を配置し、各マウスに10μgの対応するプラスミド(またはプラスミドの組合せ)を流体力学的に投与した。各群に注射されたプラスミドは、pApo−hIL15、pApo−hIL15+pSushi、phIL15、phIL15+pSushi、pApoまたは生理食塩水(S)であった。
【0188】
8時間目、24時間目、96時間目、168時間目および240時間目に血清サンプルを採取し、それらのhIL15濃度をELISAサンドイッチアッセイにより測定した。ApoA1を発現する対照プラスミドを施したマウスの血清は検出可能なレベルのhIL15を含んでいなかった(図1)。hIL15を発現するプラスミドを注射したマウスは8時間目に最大hIL15濃度を示し、急速に低下した(図1)。しかしながら、ApoA1−hIL15をコードするプラスミドを施したマウス(pSushiプラスミドの同時感染を伴うまたは伴わない)は8時間目に最高血清hIL15濃度を示し、24時間まで増加を維持した。168時間目では、phIL15を注射したマウスで見られたものとは対照的に、pApo−hIL15を注射したマウスではhIL15をなお検出することができた(図1)。従って、融合タンパク質ApoA1−hIL15を発現する構築物は、より高く、かつ、より持続的なhIL15の循環レベルを達成する。
【0189】
結論として、プラスミドpApo−hIL15の流体力学的投与は、phIL15の投与によってもたられるものをはるかに超えるhIL15の高い血清濃度を誘導する。
【0190】
実施例4 CTLL2細胞における機能アッセイ
pApo−hIL15プラスミドの薬力学的効果を調べるため、増殖のためにIL−2またはIL15を必要とするCTLL2細胞(Meazza et al. Expression of two interleukin-15 mRNA isoforms in human tumors does not correlate with secretion: role of different signal peptides. Eur J Immunol 1997; 27: 1049-1054)を用いて機能アッセイを行った。
【0191】
これらのプラスミドを流体力学的注射のより投与し、24時間目に血清サンプルを得た。血清を熱変性(56℃45分)により除補体し、48時間CTLL2細胞培養物に加え、細胞増殖をトリチウム化チミジンで測定した。hIL15の血清濃度は、市販のELISAサンドイッチアッセイを用いて測定した。等モル量のhIL15に関して、pApo−hIL15+pSushisで処置したマウス血清は、より強いCTLL2細胞増殖を誘導した(図2)。
【0192】
従って、pSushiプラスミドとpApo−hIL15の同時投与はその生物学的効果を高めると結論付けられる。hIL15と融合したApoA1のプラスミド構築物は、IL15RαのSushiドメイン(pSushi)をコードするプラスミドを投与した場合よりもより高いCTLL2細胞増殖誘導果を示した。
【0193】
実施例5 CD8リンパ球増殖の刺激
流体力学的注射の手段により肝臓で発現された構築物の潜在的免疫賦活効果を調べるため、まず、脾臓のCD8 T細胞数の増加を分析した。このために、プラスミドを流体力学的に注射し、3日後、4日後、5日後、6日後および7日後に、脾臓を解離させて単細胞懸濁液を得、総細胞を数え、CD8 Tリンパ球を抗CD3抗体、抗CD8抗体および抗CD44抗体で標識した後に、多色フローサイトメトリーにより分析した。プラスミドpApo−hIL15とpSushiを一緒に注射した場合には、他の処置よりも高い程度で脾臓のCD8 Tリンパ球数が増加した(図3A)。同様のことが、CD3+、CD8+、CD44hi細胞として測定されるメモリーCD8 Tリンパ球の数にも起こった(図3C)。総脾細胞に対するCD8 TおよびCD8メモリー細胞のパーセンテージもまた、プラスミドpApo−hIL15およびpSushiを投与したマウス群では他の群に比べて高かった(図3Bおよび3D)。
【0194】
種々のプラスミドで処置したマウスの肝臓に存在するリンパ球に対するCD8 Tリンパ球のパーセンテージも分析した。このために、プラスミドを流体力学的に注射し、3日目、4日目、5日目、6日目および7日目に肝臓を解離させ、リンパ球をPercoll(著作権)溶液での遠心分離により単離し、CD8 Tリンパ球を抗CD3抗体および抗CD8抗体で標識した後に、それらのリンパ球をフローサイトメトリーにより分析した。プラスミドpApo−hIL15およびpSushiを一緒に投与したマウスは、残りの群のマウスよりも、肝臓において高いCD8 Tリンパ球パーセンテージを示した(図4)。
【0195】
次に、種々のプラスミドで処置したマウスの末梢血に存在するリンパ球に対するCD8 Tリンパ球のパーセンテージを分析した。このために、プラスミドを流体力学的に注射し、3日目、4日目、5日目および6日目に血液サンプルを得、CD8 Tリンパ球を抗CD3抗体、抗CD8抗体、抗CD44抗体および抗CD62L抗体で標識した。それらのリンパ球をフローサイトメトリーにより分析した。プラスミドpApo−hIL15およびpSushiを一緒に投与したマウスは、処置後5日目および6日目に残りの群のマウスよりも末梢血において高いパーセンテージのCD8 Tリンパ球を示した(図5A)。この群(図5B)でも、また、th部分集団であるCD8 Tエフェクターメモリー細胞(CD8+ CD44+ CD62L−)およびCD8中枢メモリー細胞(CD8+ CD44+ CD62L+)(図5Cおよび5d)でも、より高いパーセンテージのCD8 Tメモリーリンパ球(CD8+ CD44+)が見られた。
【0196】
CD8 Tリンパ球の数およびパーセンテージの検討は、pApo−hIL15およびpSushiの投与が、脾臓、肝臓および末梢血において、他のプラスミドの投与よりも豊富なCD8 Tリンパ球集団を誘導することを示す。具体的には、pApo−hIL15およびpSushiの投与は、脾臓、肝臓および血液において、構築物phIL15およびpSushiの投与よりも有意に高いCD8 Tリンパ球集団をもたらす。
【0197】
実施例6 皮下CT26腫瘍モデルに対するApoA1およびhIL15に基づく構築物の抗腫瘍効果
流体力学的に注射したApoA1およびhIL15に基づく構築物の抗腫瘍効果を調べるために、結腸直腸腺癌に由来するCT26細胞系統によって誘発されるBalb/cマウスの皮下腫瘍モデルを選択した。マウス1匹当たり5×105細胞を皮下注射し、3日目にApoA1、hIL15およびSushiに基づき種々の構築物で処置した。腫瘍サイズは、デジタルカリパスで週に2回2つの直径の積を計算して測定した。サイズが246mm2を超えたところでマウスを犠牲にした。
【0198】
pApo−hIL15およびpSushiで処置したマウス群で腫瘍増殖の遅延が見られたが、これは統計学的に有意なものではなかった(図6A)。pApo−hIL15およびpSushiで処置したマウスの25%が腫瘍接種後50日生存し、目に見える腫瘍は無かった(図6B)。pApoプラスミドで処置したマウスの14%が生存し、同様にpApo−hIL15で処置したマウスの11%が生存した。他の処置群のマウスでこの腫瘍に生き残ったものは無かった。これらのデータは、pApo−hIL15およびpSushiによる処置は皮下CT26腫瘍モデルにおいてある種の抗腫瘍効果を有することを示す。
【0199】
実施例7 皮下MC38腫瘍モデルに対するApoA1およびhIL15に基づく構築物の抗腫瘍効果
ApoA1およびhIL15に基づく構築物の抗腫瘍効果の検討を継続するために、別の皮下腫瘍モデルを選択した。C57B16マウスに5×105細胞のMC38系統を皮下注射し、6日目に腫瘍結節を有するマウスに対し、ApoA1、hIL15およびSushiに基づく種々の構築物で処置した。腫瘍サイズはデジタルカリパスで週に2回2つの直径の積を計算して測定し、サイズが246mm2を超えたところでマウスを犠牲にした。
【0200】
pApo−hIL15およびpSushiで処置したマウス群で腫瘍増殖の遅延が見られたが、これは統計学的に有意なものではなかった(図7a)。pApo−hIL15およびpSushiで処置したマウスの37.6%が腫瘍接種後64日生存し、目に見える腫瘍は無かった(図7b)。pApoプラスミドで処置したマウスの16.7%が生存し、同様にpApo−hIL15で処置したマウスの40%、phIL15で処置したマウスの17%、および生理食塩水(S)単独を施したマウスの33%が生存した。phIL15+pSushi群のマウスに生存したものは無かった。
【0201】
これらのデータは、pApo−hIL15およびpSushiによる処置が皮下MC38腫瘍モデルに対してある種の抗腫瘍効果を有することを示す。
【0202】
実施例8 脾臓内MC38腫瘍モデルに対するApoA1およびhIL15に基づく構築物の抗転移効果
ApoA1およびhIL15に基づく構築物の抗腫瘍効果の検討を、肝臓転移を生じる腫瘍細胞の脾臓内注射モデルを用いて継続した。
【0203】
C57B16マウスに、マウス1匹当たり5×105細胞のMC38系統を脾臓内注射し、翌日、ApoA1、hIL15およびpSushiに基づく種々の構築物で処置した。
【0204】
19日目にマウスを犠牲にし、肝臓に存在する転移の数を観察した。転移数に応じてマウスを次の3群に分けた:I 広範囲の肝臓転移または全身転移のために死亡したマウス(一見して健常な肝臓組織が観察できない);II 肝臓組織の一部に転移を示すマウス;III 肝臓転移がないマウス。
【0205】
pApo−hIL15およびpSushiで処置したマウス群では、71%が肝臓転移を示さなかったのに対し、pApo−hIL15で処置したマウスでは30%、phIL15+pSushidで処置したマウスでは25%、生理食塩水(S)を施したマウスでは20%、およびphIL15群とpApo群では0%であった(図8)。
【0206】
これらのデータから、pApo−hIL15およびpSushiの投与は、脾臓内MC38腫瘍モデルにおいて調べた他の構築物よりも効果的な抗転移効果を有すると結論付けられる。
【0207】
実施例9 IL15α受容体「ノックアウト」マウスに対するApoA1およびhIL15に基づく構築物の投与の効果
IL15α受容体を欠くマウスに対するApoA1およびhIL15に基づく構築物の免疫賦活効果の検討を継続した。これらのマウスは、NK細胞を欠き、メモリーCD8 T細胞の量が少ないことから、特徴的な表現型を示す(Lodolce et al. Immunity 1998; 9: 669-676)。
【0208】
この実験の目的は、pApo−hIL15およびpSushiがこの表現型を改変することができるかどうかを観察することであった。4匹のマウスに、1匹にはプラスミドpApo−hIL15およびpSushiを、1匹にはプラスミドphIL15およびpSushiを、1匹にはプラスミドpApoを、最後に1匹にはpApo−hIL15を注射した。5日目にマウスを犠牲にし、脾臓を摘出し、NK細胞およびCD8 Tメモリーリンパ球の脾臓集団をフローサイトメトリーにより調べた(図9)。
【0209】
プラスミドpApo−hIL15およびpSushiで処置したマウスが示したNK細胞パーセンテージは1.02%であり、pApoで処置したマウスの場合(0.39%)よりはるかに高かった。pApo−hIL15およびpSushiで処置したマウスのCD8 Tメモリーリンパ球については、総脾細胞に対して1.47%のCD8+ CD44+細胞が存在した。このパーセンテージはpApo−hIL15構築物単独で達成されたものと同等である。この実験は、pApo−hIL15およびpSushi構築物による処置が、IL15α受容体「ノックアウト」マウスの表現型を部分的に回復させ、試験下の残りの構築物で見られたものよりも高いNKおよびCD8 Tメモリー細胞の脾臓パーセンテージが得られることを示す。
【0210】
実施例10 Sushi、IL15およびApoA1の融合物に基づく三重構築物の投与の効果
実施例1.8.に記載の三重構築物によるプラスミドpmSushi−mIL15−mApoのセイン剤的免疫賦活効果を調べるために、実施例5の記載と同様にして、新たなCD8リンパ球増殖試験を行った。
【0211】
このために、C57BL/6マウス群を確立し(各処置群2〜3匹)、供試プラスミド(2.5μg/マウス)を流体力学的に注射した。6日後、脾臓を解離させて単細胞懸濁液を得、総細胞を数え、CD8 Tリンパ球を抗CD3抗体、抗CD8抗体および抗CD44抗体で標識し、NK細胞を抗CD3抗体、抗NK1.1抗体で標識した後に、多色フローサイトメトリーにより分析した。
【0212】
種々の群で供試したプラスミドは、
・pmSushi−mIL15−mApo;
・pApo−hIL15とpSushiの組合せ(pApo−hIL15+pSushi);
・pApo−hIL15;
・phIL15とpSushiの組合せ(phIL15+pSushi);
・phIL15;および
・pApo
であった。
【0213】
この試験では、三重融合タンパク質をコードするpmSushi−mIL15−mApoプラスミドで処置した動物群で、残りの処置群よりも著しく高い脾細胞数の増殖が見られた(図10A)。同様に、pmSushi−mIL15−mApoによる処置は、他の処置で見られたものよりも極めて有意に高いCD8 Tリンパ球数(図10B)およびNK細胞数(図10C)の増殖を誘導した。
【0214】
実施例11 マウス脾臓におけるCD8 TおよびNK細胞増殖の刺激に対する、ネズミIL15をコードする構築物およびヒトIL15をコードする構築物の効果
mIL15分子およびhIL15分子をコードする構築物の、脾細胞数に対する刺激活性について、対応するプラスミドを流体力学的注射(10μg/マウス)により、pSushiプラスミドの同時投与を伴ってまたは伴わずに投与することによる比較試験を行った。4日後に、脾臓を解離させて単細胞懸濁液を得、総細胞を数え、CD8 Tリンパ球を抗CD3抗体および抗CD8抗体で標識し、NK細胞を抗NK1.1抗体および抗CD−3抗体で標識した後に、多色フローサイトメトリーにより分析した。
【0215】
プラスミドpmIL15およびプラスミドphIL15の注射は同等数の脾細胞、ならびに同等パーセンテージのCD8 TおよびNK細胞を誘導した(図11)。同様に、プラスミドpmIL15またはphIL15をpSushiと同時投与した場合では、ヒトタンパク質をコードするプラスミドを注射したマウスの脾臓はより高いパーセンテージのCD8 T細胞およびNK細胞を示すことが認められたが、この傾向は統計学的に有意であると言えなかった(ラスカル−ウォリス検定)。
【0216】
実施例12 脾臓および肝臓におけるNK細胞のパーセンテージに対するmSushiとmIL15およびApoとの融合の効果
三重融合タンパク質をコードするプラスミドpmSushi−mIL15−mApoは、脾臓および肝臓のNK細胞の数を、プラスミドpmSushi−mIL15をプラスミドpApoと同時に投与する場合よりも高い程度で増大させる。
【0217】
C57BL/6マウス群を確立し、供試プラスミドを流体力学的に注射した。
・pmSushi−mIL15−mApo、用量1μg/マウス;
・pmSushi−mIL15−mApo、用量2.5μg/マウス;
・pmSushi−mIL15−mApo、用量5μg/マウス;
・pmSushi−mIL15とpApoの組合せ、用量1μg/マウス;
・pmSushi−mIL15とpApoの組合せ、用量2.5μg/マウス;および
・pmSushi−mIL15とpApoの組合せ、用量5μg/マウス。
【0218】
4日後に、脾臓を解離させて単細胞懸濁液を得、肝臓のリンパ細胞をPercoll(著作権)による遠心分離によって単離した。NK細胞を抗NK1.1抗体および抗CD−3抗体で標識し、多色フローサイトメトリーにより分析した。pmSushi−mIL15−mApo注射は、脾臓および肝臓において、pmSushi−mIL15とpApoの同時投与(pSushi−mIL−15+pApo)の場合よりも高いNK細胞パーセンテージの存在を誘導した(図12)。
【0219】
実施例13 皮下MC38腫瘍モデルに対するSushi、IL15およびApoA1に基づく三重構築物の抗腫瘍効果
実施例1.8に記載の三重構築物によるpmSushi−mIL15−mApoプラスミドの抗腫瘍効果の検討を継続するために、皮下腫瘍モデルを選択した。C57B16マウスに5×105細胞のMC38系統を皮下注射し、8日目および19日目に種々の構築物で処置した。種々の処置群での供試プラスミドは、
・pApo;
・pmSushi−mIL15−mApo;
・pApo−hIL15とpSushiの組合せ(pApo−hIL15+pSushi)
であった。
【0220】
このために、腫瘍結節を有するC57BL/6マウス群を確立した:5匹はpApoで、8匹はpmSushi−mIL15−mApoで、9匹はpApo−hIL15+pSushiで、供試プラスミドpApo(1μg/マウス)、pmSushi−mIL15−mApo(1μg/マウス)およびpApo−hIL15+pSushi(10μg/マウス1匹)を流体力学的に注射することにより処置した。腫瘍サイズは、デジタルカリパスで週に2回2つの直径の積を計算して測定し、サイズが246mm2を超えたところでマウスを犠牲にした。
【0221】
三重融合タンパク質をコードするpmSushi−mIL15−mApoで処置したマウス群で腫瘍増殖の遅延が見られたが、これは統計学的に有意なものではなかった(図13)。pmSushi−mIL15−mApoで処置したマウスの33.3%は、試験の終了時(接種29日後)に目に見える腫瘍を示さず、40mm2を超える表在腫瘍を示したマウスは33.3%だけであった。pApoプラスミドで処置したマウスは、犠牲当日(29日目)、20%が目に見える腫瘍を示し、80%のマウスが40mm2を超える腫瘍を示したが、pApo−hIL15+pSushiで処置したマウスでは、試験の終了時(29日目)に腫瘍を持たないものはなく、三重融合物の用量よりも10倍高い用量の各プラスミドを施したにもかかわらず、80%のマウスが40mm2を超える腫瘍を持っていた。
【0222】
これらのデータは、pmSushi−mIL15−mApoによる処置が皮下MC38腫瘍モデルに対してある種の抗腫瘍効果を有することを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)以下の群:
(a)ApoAポリペプチド、または該ApoAポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体を含んでなる、ポリペプチド、および
(b)ApoAポリペプチド、または該ApoAポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体をコードする、ポリヌクレオチド
から選択される第一の成分、ならびに
(ii)以下の群:
(a)IL15、またはIL15と少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体、および
(b)IL15、またはIL15と少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体をコードする、ポリヌクレオチド
から選択される第二の成分、ならびに
(iii)以下の群:
(a)IL15受容体α鎖のSushiドメイン、またはIL15受容体α鎖のSushiドメインと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体、および
(b)IL15受容体α鎖のSushiドメイン、またはIL15受容体α鎖のSushiドメインと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体をコードする、ポリヌクレオチド
から選択される第三の成分
を一緒にまたは個別に含んでなる、組成物。
【請求項2】
第一の成分と第二の成分が単一分子の一部を形成し、
a.第一の成分および第二の成分がポリペプチドである場合には、該単一分子は、ApoAポリペプチドまたは該ApoAポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体、およびIL15またはIL15と少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体を含んでなる融合タンパク質であり、
b.第一の成分および第二の成分がポリヌクレオチドである場合には、該単一分子は、ApoAポリペプチドまたは該ApoAポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体を含んでなるポリペプチド、およびIL15またはIL15と少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体を含んでなる融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記単一分子の第一の成分および第二の成分の配置が、
a.第一の成分が第二の成分に対してN末端または5’位にある、および
b.第一の成分が第二の成分に対してC末端または3’位にある
からなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
(i)ApoAポリペプチド、または該ApoAポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体により形成される、領域A、
(ii)IL15、またはIL15と少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体により形成される、領域B、および
(iii)IL15受容体α鎖のSushiドメイン、またはIL15受容体α鎖のSushiドメインと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体により形成される、領域C
を含んでなる、融合タンパク質。
【請求項5】
前記融合タンパク質におけるN末端からC末端方向の領域A、BおよびCの配置が、A−B−C、A−C−B、B−A−C、B−C−A、C−A−BおよびC−B−Aからなる群から選択される、請求項4に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
領域A、BおよびCの間の結合の少なくとも1つがペプチドリンカーにより確立される、請求項4または5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
a.ApoAまたはApoAと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体が、ヒト起源またはネズミ起源のものであり、
b.IL15またはIL15と少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体が、ヒト起源またはネズミ起源のものであり、かつ/または
c.IL15受容体α鎖のSushiドメインまたはIL15受容体α鎖のSushiドメインと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体を含んでなるポリペプチドが、ヒト起源またはネズミ起源のものである、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物、または請求項4〜6のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項8に記載のポリヌクレオチドを含んでなる、ベクターまたは遺伝子構築物。
【請求項10】
請求項4〜7のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項8に記載のポリヌクレオチド、請求項9に記載のベクター、または請求項9に記載の遺伝子構築物を含んでなる、宿主細胞。
【請求項11】
請求項1〜3および7のいずれか一項に記載の組成物、請求項4〜7のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項8に記載のポリヌクレオチド、請求項9に記載のベクターもしくは遺伝子構築物、または請求項10に記載の宿主細胞と、薬学上許容されるビヒクルとを含んでなる、医薬組成物。
【請求項12】
抗原特異的Tリンパ球の大量増殖を促進するin vitro法であって、事前にin vivoで該抗原に曝されたリンパ球集団を、請求項1〜3および7のいずれか一項に記載の組成物、請求項4〜7のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項8に記載のポリヌクレオチド、請求項9に記載のベクターまたは遺伝子構築物、または請求項10に記載の宿主細胞と接触させることを含んでなる、方法。
【請求項13】
リンパ球を前記Tリンパ球が曝された抗原と接触させることにより、リンパ球に事前にin vitro活性化が施される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
医療用の、請求項1〜3および7のいずれか一項に記載の組成物、請求項4〜7のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項8に記載のポリヌクレオチド、請求項9に記載のベクターまたは遺伝子構築物、または請求項10に記載の宿主細胞。
【請求項15】
被験体の免疫応答の刺激を必要とする疾患の治療を目的とした薬剤の製造のための、請求項1〜3および7のいずれか一項に記載の組成物、請求項4〜7のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項8に記載のポリヌクレオチド、請求項9に記載のベクターまたは遺伝子構築物、または請求項10に記載の宿主細胞の使用。
【請求項16】
免疫応答の刺激を必要とする疾患が、感染性疾患および新生物性疾患からなる群から選択される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
新生物性疾患が、腫瘍および転移の群から選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項1】
(i)以下の群:
(a)ApoAポリペプチド、または該ApoAポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体を含んでなる、ポリペプチド、および
(b)ApoAポリペプチド、または該ApoAポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体をコードする、ポリヌクレオチド
から選択される第一の成分、ならびに
(ii)以下の群:
(a)IL15、またはIL15と少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体、および
(b)IL15、またはIL15と少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体をコードする、ポリヌクレオチド
から選択される第二の成分、ならびに
(iii)以下の群:
(a)IL15受容体α鎖のSushiドメイン、またはIL15受容体α鎖のSushiドメインと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体、および
(b)IL15受容体α鎖のSushiドメイン、またはIL15受容体α鎖のSushiドメインと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体をコードする、ポリヌクレオチド
から選択される第三の成分
を一緒にまたは個別に含んでなる、組成物。
【請求項2】
第一の成分と第二の成分が単一分子の一部を形成し、
a.第一の成分および第二の成分がポリペプチドである場合には、該単一分子は、ApoAポリペプチドまたは該ApoAポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体、およびIL15またはIL15と少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体を含んでなる融合タンパク質であり、
b.第一の成分および第二の成分がポリヌクレオチドである場合には、該単一分子は、ApoAポリペプチドまたは該ApoAポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体を含んでなるポリペプチド、およびIL15またはIL15と少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体を含んでなる融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記単一分子の第一の成分および第二の成分の配置が、
a.第一の成分が第二の成分に対してN末端または5’位にある、および
b.第一の成分が第二の成分に対してC末端または3’位にある
からなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
(i)ApoAポリペプチド、または該ApoAポリペプチドと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体により形成される、領域A、
(ii)IL15、またはIL15と少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体により形成される、領域B、および
(iii)IL15受容体α鎖のSushiドメイン、またはIL15受容体α鎖のSushiドメインと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体により形成される、領域C
を含んでなる、融合タンパク質。
【請求項5】
前記融合タンパク質におけるN末端からC末端方向の領域A、BおよびCの配置が、A−B−C、A−C−B、B−A−C、B−C−A、C−A−BおよびC−B−Aからなる群から選択される、請求項4に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
領域A、BおよびCの間の結合の少なくとも1つがペプチドリンカーにより確立される、請求項4または5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
a.ApoAまたはApoAと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体が、ヒト起源またはネズミ起源のものであり、
b.IL15またはIL15と少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体が、ヒト起源またはネズミ起源のものであり、かつ/または
c.IL15受容体α鎖のSushiドメインまたはIL15受容体α鎖のSushiドメインと少なくとも70%の同一性を有するその機能的に等価な変異体を含んでなるポリペプチドが、ヒト起源またはネズミ起源のものである、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物、または請求項4〜6のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項8に記載のポリヌクレオチドを含んでなる、ベクターまたは遺伝子構築物。
【請求項10】
請求項4〜7のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項8に記載のポリヌクレオチド、請求項9に記載のベクター、または請求項9に記載の遺伝子構築物を含んでなる、宿主細胞。
【請求項11】
請求項1〜3および7のいずれか一項に記載の組成物、請求項4〜7のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項8に記載のポリヌクレオチド、請求項9に記載のベクターもしくは遺伝子構築物、または請求項10に記載の宿主細胞と、薬学上許容されるビヒクルとを含んでなる、医薬組成物。
【請求項12】
抗原特異的Tリンパ球の大量増殖を促進するin vitro法であって、事前にin vivoで該抗原に曝されたリンパ球集団を、請求項1〜3および7のいずれか一項に記載の組成物、請求項4〜7のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項8に記載のポリヌクレオチド、請求項9に記載のベクターまたは遺伝子構築物、または請求項10に記載の宿主細胞と接触させることを含んでなる、方法。
【請求項13】
リンパ球を前記Tリンパ球が曝された抗原と接触させることにより、リンパ球に事前にin vitro活性化が施される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
医療用の、請求項1〜3および7のいずれか一項に記載の組成物、請求項4〜7のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項8に記載のポリヌクレオチド、請求項9に記載のベクターまたは遺伝子構築物、または請求項10に記載の宿主細胞。
【請求項15】
被験体の免疫応答の刺激を必要とする疾患の治療を目的とした薬剤の製造のための、請求項1〜3および7のいずれか一項に記載の組成物、請求項4〜7のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項8に記載のポリヌクレオチド、請求項9に記載のベクターまたは遺伝子構築物、または請求項10に記載の宿主細胞の使用。
【請求項16】
免疫応答の刺激を必要とする疾患が、感染性疾患および新生物性疾患からなる群から選択される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
新生物性疾患が、腫瘍および転移の群から選択される、請求項16に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2013−513377(P2013−513377A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542587(P2012−542587)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/ES2010/070818
【国際公開番号】WO2011/070214
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(506061716)プロイェクト、デ、ビオメディシナ、シーマ、ソシエダッド、リミターダ (34)
【氏名又は名称原語表記】PROYECTO DE BIOMEDICINA CIMA, S.L.
【出願人】(512151252)
【氏名又は名称原語表記】RESEARCH CENTER BORSTEL
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/ES2010/070818
【国際公開番号】WO2011/070214
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(506061716)プロイェクト、デ、ビオメディシナ、シーマ、ソシエダッド、リミターダ (34)
【氏名又は名称原語表記】PROYECTO DE BIOMEDICINA CIMA, S.L.
【出願人】(512151252)
【氏名又は名称原語表記】RESEARCH CENTER BORSTEL
【Fターム(参考)】
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