説明

免疫細胞の負の走化性の調節方法

本発明は、癌細胞から放出される化学忌避因子の活性を阻害する工程を含む、癌細胞への免疫細胞の遊走を誘導する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2008年10月2日に出願された米国特許仮出願第61/102,177号および2009年7月1日に出願された米国特許仮出願第61/222,217号の恩典を主張する。上記出願の全教示は、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
腫瘍免疫学における長年のジレンマは、抗腫瘍T細胞応答が実証され得るにも関わらず、免疫サーベイランスを回避する充実性腫瘍細胞の能力である。主に、腫瘍の免疫回避機構は、樹状細胞(DC)およびT細胞の機能を抑制する、免疫抑制性生体分子すなわち、IL-10、トランスホーミング増殖因子-b(TGF-b)、インドールアミン-2,3-デオキシゲナーゼ(IDO)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、アルギナーゼ、プロスタグランジンE2(PGE2)、シクロオキシゲナーゼ-2(COX2)および酸化窒素シンターゼ2(NOS2)、IL-6、ケモカインCXCL12等の発現に関して評価されている。また、腫瘍浸潤T細胞においてアポトーシスを誘導する死誘導分子(FasL & TRAIL)の発現の増加は、腫瘍が免疫系を回避する機構を説明すると解明されている。
【0003】
免疫細胞の標的部位への移動は、腫瘍細胞に対する免疫応答を誘起する主要な工程である。走化性、または化学剤に応答した細胞の指向性の移動は、複雑で高度に統合されたプロセスである。該移動は、化学的勾配に対して正(向かう)または負(離れる)であり得る。剤または刺激に向かう移動は正の走化性と称され(すなわち、剤または刺激が細胞に対する化学誘発剤である)、剤または刺激から離れる移動は負の走化性と称される(すなわち、剤または刺激が細胞に対する化学誘発剤である)。原核生物および真核生物の両方で、走化性を有する細胞は、剤の濃度の変化を感知し、濃度勾配に応答して移動していると考えられている。従って、化学誘引(CA)および化学忌避(CR)は剤または刺激の特性であり、走化性は細胞の特性である。
【発明の概要】
【0004】
本発明により、腫瘍細胞により発現(分泌)され、調節性T細胞を腫瘍部位に動員しながら、抗腫瘍T細胞(CD4 & CD8)、好中球、NK細胞を溝(bay)に保持し、免疫応答の回避を仲介するタンパク質が発見された。免疫細胞の負の走化性を誘導する、癌細胞から放出されるタンパク質を同定すること、および/または免疫細胞が癌細胞へと向かう正の走化性を誘導するために、癌細胞から放出されるタンパク質の活性を抑制することが有利である。
【0005】
発明の概要
本発明は、癌細胞から放出される化学忌避因子の活性を抑制することを含む、癌細胞に向かう免疫細胞の移動を誘導する方法を提供する。
【0006】
いくつかの態様において、ヒト癌細胞から放出される化学忌避(chemorepellant)因子の活性が抑制される。他の態様において、ヒト癌細胞は、腎臓腺癌細胞、腎臓癌細胞、グリア芽腫細胞結腸癌細胞、肝細胞癌細胞、卵巣癌細胞および前立腺癌細胞からなる群より選択される。
【0007】
一態様において、癌細胞から放出される化学忌避因子の活性が抑制され、ここで該化学忌避因子は、卵巣癌嚢胞液から単離されたタンパク質またはその生物学的に活性な断片と実質的な同一性を有する配列を含み、単離されたタンパク質またはその断片は、免疫細胞の化学忌避を誘導し得る。別の態様において、化学忌避因子は、細胞株の上清から単離されたタンパク質またはその生物学的に活性な断片と実質的な同一性を有する配列を含み、ここで該細胞株は、ヒト腎臓腺癌細胞、ヒト腎臓癌細胞、ヒトグリア芽腫細胞、ヒト結腸癌細胞、ヒト肝細胞癌細胞、ヒト卵巣癌細胞およびヒト前立腺癌細胞からなる群より選択される。
【0008】
別の態様において、化学忌避因子は、卵巣嚢胞液から単離されたタンパク質またはその生物学的に活性な断片と実質的な同一性を有する。別の態様において、化学忌避因子は、細胞株の上清から単離されたタンパク質またはその生物学的に活性な断片と実質的な同一性を有し、ここで該細胞株は、ヒト腎臓腺癌細胞、ヒト腎臓癌細胞、ヒトグリア芽腫細胞、ヒト結腸癌細胞、ヒト肝細胞癌細胞、ヒト卵巣癌細胞およびヒト前立腺癌細胞からなる群より選択される。
【0009】
一態様において、化学忌避因子は、表1〜9に記載される化学忌避性タンパク質から選択されるタンパク質またはその生物学的に活性な断片と実質的な同一性を有する。さらなる態様において、化学忌避因子は、表10〜11に記載されるタンパク質から選択されるタンパク質またはその生物学的に活性な断片と実質的な同一性を有する。別の態様において、化学忌避因子は、アクチン、14-3-3ζ/δ、アポリポタンパク質A1、ヘモペキシン、PARK7、コフィリン-1、14-3-3ε、14-3-3-γ、ホスホセリンホスファターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、プロフィリン-2、β-2ミクログロブリン、シトクロームc、シスタチンB、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)、FK506結合タンパク質、チオレドキシン、ガレクチン3、ヒトトランスフェリン、ヒトEF-I-γおよびヒトガレクチン3結合タンパク質からなる群より選択されるタンパク質またはそれらのいずれかの生物学的に活性な断片と実質的な同一性を有する。
【0010】
さらに別の態様において、本発明は、癌細胞から放出される化学忌避因子の活性を抑制する工程を含む、癌の治療を必要とする患者における癌の治療方法である。
【0011】
さらなる態様において、本発明は、目的の化学忌避因子を投与する工程を含む、ヒト免疫細胞の負の走化性を誘導する方法である。いくつかの態様において、化学忌避因子は、卵巣癌嚢胞液から単離されるタンパク質またはその生物学的に活性な断片と実質的な同一性を有する配列を含み、ここで該単離されたタンパク質またはその断片は、免疫細胞の化学忌避を誘導し得る。別の態様において、本発明は、化学忌避因子を投与する工程を含む、ヒト免疫細胞の負の走化性を誘導する方法であり、ここで該化学忌避因子は、ヒト腎臓腺癌細胞、ヒト腎臓癌細胞、ヒトグリア芽腫細胞、ヒト結腸癌細胞、ヒト肝細胞癌細胞、ヒト卵巣癌細胞およびヒト前立腺癌細胞からなる群より選択される細胞株の上清から単離されたタンパク質または前記単離されたタンパク質の生物学的に活性な断片と実質的な同一性を有する配列を含み、前記タンパク質またはその断片は、負の走化性を誘導し得る。さらなる態様において、投与される化学忌避因子は、表1〜9に列挙されるタンパク質またはその生物学的に活性な断片と実質的な同一性を有する配列を含む。さらなる態様において、投与される化学忌避因子は、表10〜11に列挙されるタンパク質またはその生物学的に活性な断片と実質的な同一性を有する。さらに別の態様において、投与される化学忌避因子は、アクチン、14-3-3ζ/δ、アポリポタンパク質A1、ヘモペキシン、PARK7、コフィリン-1、14-3-3ε、14-3-3-γ、ホスホセリンホスファターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、プロフィリン-2、β-2ミクログロブリン、シトクロームc、シスタチンB、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)、FK506結合タンパク質、チオレドキシン、ガレクチン3、ヒトトランスフェリン、ヒトEF-I-γおよびヒトガレクチン3結合タンパク質からなる群より選択されるタンパク質またはその生物学的に活性な断片と実質的な同一性を有する配列を含む。
【0012】
さらに別の態様において、本発明は、治療を必要とする患者に、治療有効量の目的の化学忌避因子を投与する工程を含む、走化性部位に向かうヒトの遊走細胞の移動により仲介される状態の治療方法である。いくつかの態様において、該化学忌避因子は、卵巣癌嚢胞液から単離されたタンパク質またはその生物学的に活性な断片と実質的な同一性を有する配列を含み、ここで該単離されたタンパク質またはその断片は、免疫細胞の化学忌避を誘導し得る。さらなる態様において、本発明は、治療を必要とする患者に治療有効量の化学忌避因子を投与する工程を含む、走化性部位に向かうヒトの遊走細胞の移動により仲介される状態の治療方法であり、該化学忌避因子は、ヒト腎臓腺癌細胞、ヒト腎臓癌細胞、ヒトグリア芽腫細胞、ヒト結腸癌細胞、ヒト肝細胞癌細胞、ヒト卵巣癌細胞およびヒト前立腺癌細胞からなる群より選択される細胞株の上清から単離されたタンパク質またはそのいずれかの生物学的に活性な断片と実質的な同一性を有する配列を含み、該タンパク質またはその断片は、免疫細胞の負の走化性を誘導し得る。
【0013】
本発明のこれらおよびその他の局面、ならびに種々の利点および有用性は、本発明の図面および本発明の態様の詳細な説明を参照すると明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、卵巣癌嚢胞液の1:30、1:10、1:3の希釈液および無希釈液で処理された好中球の化学忌避(右)および化学誘引(左)の誘導倍数(fold induction)(培地に対する)を示す棒グラフである。
【図2】図2は、嚢胞液のS-200クロマトグラフィー画分で処理された好中球の化学忌避(右)および化学誘引(左)の誘導倍数(培地に対する)を示す棒グラフである。
【図3】図3は、0.0011、0.011、0.11および1.1uMアクチン(左)ならびに0.0018、0.018、0.18および1.8uM 14-3-3(右)で処理された好中球の化学忌避の誘導倍数(培地に対する)を示す棒グラフである。
【図4】図4は、アクチンおよび14-3-3の1:1組合せの1:27、1:9、1:3の希釈液および無希釈液で処理された好中球の化学忌避(右)および化学誘引(左)の誘導倍数(培地に対する)を示す棒グラフである。
【図5】図5は、0.0051、0.051、0.51および5.1uMアポリポタンパク質A1で処理された好中球の化学忌避(右)および化学誘引(左)の誘導倍数(培地に対する)を示す棒グラフである。
【図6】図6は、0.0088、0.088、0.88および8.8uMヘモペキシンで処理された好中球の化学忌避(右)および化学誘引(左)の誘導倍数(培地に対する)を示す棒グラフである。
【図7】図7は、0.15、0.46、1.39および4.16uMのPark-7で処理された好中球の化学忌避(右)および化学誘引(左)の誘導(ウェル当たりの細胞数)を示す棒グラフである。
【図8】図8は、0.28、0.77、2.30および6.9uMのコフィリン-1で処理された好中球の化学忌避(右)および化学誘引(左)の誘導(ウェル当たりの細胞数)を示す棒グラフである。
【図9】図9は、0.43、1.28、3.83および11.48uMの14-3-3εで処理された好中球の化学忌避(右)および化学誘引(左)の誘導(ウェル当たりの細胞数)を示す棒グラフである。
【図10】図10は、0.13、0.39、1.18、3.53uMの14-3-3γで処理された好中球の化学忌避(右)および化学誘引(左)の誘導(ウェル当たりの細胞数)を示す棒グラフである。
【図11】図11は、0.15、0.44、1.33および3.99uMのホスホセリンホスファターゼで処理された好中球の化学忌避(右)および化学誘引(左)の誘導(ウェル当たりの細胞数)を示す棒グラフである。
【図12】図12は、0.32、0.97、2.92および8.76uMのスーパーオキシドジスムターゼで処理された好中球の化学忌避(右)および化学誘引(左)の誘導倍数(培地に対する)を示す棒グラフである。
【図13】図13は、0.28、0.85、2.56および7.68uMのプロフィリン-2で処理された好中球の化学忌避(右)および化学誘引(左)の誘導(ウェル当たりの細胞数)を示す棒グラフである。
【図14】図14は、0.45、1.36、4.07および12.20uMのβ-2ミクログロブリンで処理された好中球の化学忌避(右)および化学誘引(左)の誘導(ウェル当たりの細胞数)を示す棒グラフである。
【図15】図15は、3、9、27および81.1uMシトクロームCで処理された好中球の化学忌避(右)および化学誘引(左)の誘導(ウェル当たりの細胞数)を示す棒グラフである。
【図16】図16は、0.22、0.66、1.98および5.95uMシスタチンBで処理された好中球の化学忌避(右)および化学誘引(左)の誘導(ウェル当たりの細胞数)を示す棒グラフである。
【図17】図17は、0.16、0.48、1.43および4.3uMマクロファージ阻害因子(MIF)で処理された好中球の化学忌避(右)および化学誘引(左)の誘導(ウェル当たりの細胞数)を示す棒グラフである。
【図18】図18は、0.47、1.41、4.23および12.70uMのFKBPで処理された好中球の化学忌避(右)および化学誘引(左)の誘導(ウェル当たりの細胞数)を示す棒グラフである。
【図19】図19は、0.16、0.48、1.43および12.2uMのチオレドキシンで処理された好中球の化学忌避(右)および化学誘引(左)の誘導(ウェル当たりの細胞数)を示す棒グラフである。
【図20】図20は、第0日(d0)〜第4日(d4)から回収されたACHN上清画分およびTurbodoma(対照として使用)で処理された好中球の化学忌避(右)および化学誘引(左)の誘導(ウェル当たりの細胞数)を示す棒グラフである。
【図21】図21AおよびBは、ACHNサイズ排除画分で処理された好中球の化学忌避(B)および化学誘引(A)の誘導(ウェル当たりの細胞数)を示す棒グラフである。
【図22】図22は、第0日(d0)〜第4日(d4)から回収された786-O上清画分およびTurbodoma対照(TD)で処理された好中球の化学忌避(右)および化学誘引(左)の誘導(ウェル当たりの細胞数)を示す棒グラフである。
【図23】図23AおよびBは、786-Oサイズ排除画分で処理された好中球の化学忌避(B)および化学誘引(A)の誘導(ウェル当たりの細胞数)を示す棒グラフである。
【図24】図24は、ACHNおよび786-Oの上清画分のSDS PAGEゲルの写真である。
【図25】図25は、第2日(d2)〜第4日(d4)から回収されたSF-359上清画分およびTD対照で処理された好中球の化学忌避(右)および化学誘引(左)の誘導(ウェル当たりの細胞数)を示す棒グラフである。
【図26】図26AおよびBは、SF-359サイズ排除画分で処理された好中球の化学忌避(右)および化学誘引(左)の誘導倍数(培地に対する)(A)または細胞数(B)を示す棒グラフである。
【図27】図27は、SF-359培養物の上清画分のSDS PAGEゲルの写真である。
【図28】図28は、第0日(d0)〜第4日(d4)から回収されたU-251上清画分およびTD対照で処理された好中球の化学忌避(右)および化学誘引(左)の誘導(ウェル当たりの細胞数)を示す棒グラフである。
【図29】図29AおよびBは、U-251サイズ排除画分で処理された好中球の化学忌避(A)および化学誘引(B)の誘導(ウェル当たりの細胞数)を示す棒グラフである。
【図30】図30は、U-251上清画分の上清画分のSDS PAGEゲルの写真である。
【図31】図31は、第0日(d0)〜第4日(d4)から回収されたHCC-2998上清およびTD対照で処理された化学忌避(右)および化学誘引(左)の誘導(ウェル当たりの細胞数)を示す棒グラフである。
【図32】図32Aおよび32Bは、HCC-2998サイズ排除画分で処理された好中球の化学誘引(A)および化学忌避(B)の誘導(ウェル当たりの細胞数)を示す棒グラフである。
【図33】図33は、第0日(d0)〜第7日(d7)から回収されたHepG2上清画分の化学誘引(左)および化学忌避(右)の誘導倍数(培地に対する)を示す棒グラフである。
【図34】図34は、HepG2サイズ排除画分の化学誘引(左)および化学忌避(右)の誘導倍数(培地に対する)を示す棒グラフである。
【図35】図35は、第0日(d0)〜第7日(d7)から回収されたCRL-1978上清およびTD対照で処理された好中球の化学誘引(左)または化学忌避(右)の誘導倍数(培地に対する)を示す棒グラフである。
【図36】図36は、CRL-1978サイズ排除画分で処理された好中球の化学誘引(左)または化学忌避(右)の誘導倍数(培地に対する)を示す棒グラフである。
【図37】図37は、第0日(d0)〜第7日(d7)から回収されたPC3上清およびTD対照で処理された好中球の化学誘引(左)または化学忌避(右)の誘導倍数(培地に対する)を示す棒グラフである。
【図38】図38は、PC3サイズ排除画分で処理された好中球の化学誘引(左)または化学忌避(右)の誘導倍数(培地に対する)を示す棒グラフである。
【図39】図39は、SK-BR-3アニオン交換画分(A2-A8)および培地で処理された好中球の化学誘引(右)または化学忌避(左)のRUを示す棒グラフである。
【図40】図40は、質量解析(MS)分析に供したSK-BR-3アニオン交換画分のゲル(クーマシー染色)の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明の態様の説明を以下にする。
【0016】
本明細書で使用される場合、「a」または「an」は、そうではないと特定されない限りは1つ以上を意味する。
【0017】
本発明は、卵巣癌嚢胞液および/またはヒト癌細胞培養物の上清から単離された1つ以上のタンパク質が、好中球の負の走化性を誘導するという驚くべき発見に基づく。例えば、実施例1に示されるように、卵巣癌嚢胞液の特定のクロマトグラフィー画分と接触させた好中球は、培地に応答したものよりも9倍より高い誘導を示した。
【0018】
一態様において、本発明は、癌細胞から放出される化学忌避因子の活性を抑制する工程を含む、癌細胞に向かう免疫細胞の移動の誘導方法である。いくつかの態様において、癌細胞は、結腸癌細胞、前立腺癌細胞、乳癌細胞、肺癌細胞、皮膚癌細胞、肝臓癌細胞、骨の癌細胞、膵臓癌細胞、卵巣癌細胞、精巣癌細胞、膀胱癌細胞、腎臓癌細胞、脳の癌細胞、神経膠腫細胞、頭部および頚部癌細胞からなる群より選択される。別の態様において、癌細胞は、腎臓腺癌細胞、腎臓癌細胞、グリア芽腫細胞結腸癌細胞、肝細胞癌細胞、卵巣癌細胞および前立腺癌細胞である。
【0019】
本発明の方法によると、癌細胞に向かう免疫細胞の移動は、癌細胞から放出される化学忌避因子の活性を抑制することにより誘導され得る。癌細胞から放出される化学忌避因子は、免疫細胞の負の走化性を誘導するタンパク質である。本発明の方法はまた、化学忌避因子を投与する工程を含む、免疫細胞の負の走化性を誘導する方法を包含し、該化学忌避因子は、癌細胞から放出されるタンパク質またはその生物学的に活性な断片と実質的な同一性を有する配列を含む。
【0020】
「化学忌避因子」は、遊走細胞の負の走化性(剤または刺激から離れる移動)を誘導、誘起または誘発する剤または刺激である。一態様において、化学忌避因子は、卵巣癌嚢胞液から単離されたタンパク質またはその生物学的に活性な断片と実質的な同一性を有するアミノ酸配列を含み、該単離されたタンパク質またはその断片は、免疫細胞の化学忌避を誘導し得る。別の態様において、化学忌避因子は、卵巣癌嚢胞液から単離されたタンパク質またはその生物学的に活性な断片と実質的な同一性を有する。さらなる態様において、化学忌避因子は、卵巣癌嚢胞液から単離されたタンパク質と実質的な同一性を有する。
【0021】
別の態様において、化学忌避因子は、ヒト腎臓腺癌細胞、ヒト腎臓癌細胞、ヒトグリア芽腫細胞、ヒト結腸癌細胞、ヒト肝細胞癌細胞、ヒト卵巣癌細胞およびヒト前立腺癌細胞からなる群より選択される細胞株の上清から単離されたタンパク質または前記単離されたタンパク質の生物学的に活性な断片と実質的な同一性を有する配列を含み、前記タンパク質またはその断片は、負の走化性を誘導し得る。なお別の態様において、化学忌避因子は、ヒト腎臓腺癌細胞、ヒト腎臓癌細胞、ヒトグリア芽腫細胞、ヒト結腸癌細胞、ヒト肝細胞癌細胞、ヒト卵巣癌細胞およびヒト前立腺癌細胞からなる群より選択される細胞株の上清から単離されたタンパク質または前記単離されたタンパク質の生物学的に活性な断片と実質的な同一性を有する。
【0022】
なお別の態様において、化学忌避因子は、表1〜9(以下、実施例1〜3に示す)に記載されるタンパク質またはその生物学的に活性な断片と実質的な同一性を有する配列を含む。さらなる態様において、化学忌避因子は、表1〜9に記載されるタンパク質またはその生物学的に活性な断片と実質的な同一性を有する。なお別の態様において、化学忌避因子は、表1〜9に記載されるタンパク質である。別の態様において、化学忌避因子は、表10〜11に記載されるタンパク質である。
【0023】
さらなる態様において、化学忌避因子タンパク質は、少なくとも2種類の異なる癌細胞から放出されるタンパク質である。癌細胞は、起源が異なるものであるかまたは異なる種類の癌細胞である場合に異なる。例えば、肝臓癌細胞と卵巣癌細胞は、異なる癌細胞である。同様に、腎臓癌細胞株の癌細胞ACHNは、腎臓癌細胞株786-Oとは異なる。さらなる態様において、化学忌避因子タンパク質は、表10〜11に記載されるタンパク質またはその生物学的に活性な断片と実質的な同一性を有する。
【0024】
別の態様において、化学忌避因子は、アクチン、14-3-3ζ/δ、アポリポタンパク質A1、ヘモペキシン、PARK7、コフィリン-1、14-3-3ε、14-3-3-γ、ホスホセリンホスファターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、プロフィリン-2、β-2ミクログロブリン、シトクロームc、シスタチンB、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)、FK506結合タンパク質、チオレドキシン、ガレクチン3、ヒトトランスフェリン、ヒトEF-I-γおよびヒトガレクチン3結合タンパク質からなる群より選択されるタンパク質またはそのいずれかの生物学的に活性な断片のアミノ酸配列と実質的な同一性を有する配列を含む。さらなる態様において、化学忌避因子は、アクチン、14-3-3ζ/δ、アポリポタンパク質A1、ヘモペキシン、PARK7、コフィリン-1、14-3-3ε、14-3-3-γ、ホスホセリンホスファターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、プロフィリン-2、β-2ミクログロブリン、シトクロームc、シスタチンB、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)、FK506結合タンパク質、チオレドキシン、ガレクチン3、ヒトトランスフェリン、ヒトEF-I-γおよびヒトガレクチン3結合タンパク質からなる群より選択されるタンパク質と実質的な同一性を有する。さらなる態様において、化学忌避因子は、アクチン、14-3-3ζ/δ、アポリポタンパク質A1、ヘモペキシン、PARK7、コフィリン-1、14-3-3ε、14-3-3-γ、ホスホセリンホスファターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、プロフィリン-2、β-2ミクログロブリン、シトクロームc、シスタチンB、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)、FK506結合タンパク質、チオレドキシン、ガレクチン3、ヒトトランスフェリン、ヒトEF-I-γおよびヒトガレクチン3結合タンパク質からなる群より選択されるタンパク質である。これらのタンパク質についての受託番号は、以下の表1〜9に示される。
【0025】
生物学的に活性な断片は、天然に存在するタンパク質のペプチド断片または天然に存在するタンパク質の生物学的活性の少なくとも一部を保持する完全長タンパク質または完全長タンパク質である。いくつかの態様において、生物学的活性は、ヒトの遊走細胞の化学忌避を誘導する能力である。
【0026】
卵巣癌嚢胞液は、卵巣癌を有する患者由来の嚢胞液のことをいう。
【0027】
いくつかの態様において、化学忌避因子は、癌細胞培養物の上清から単離されたタンパク質と実質的な同一性を有する配列を含み、該培養物は、腎臓腺癌細胞、腎臓癌細胞、グリア芽腫細胞結腸癌細胞、肝細胞癌細胞、卵巣癌細胞および前立腺癌細胞からなる群より選択されるヒト癌細胞の培養物である。一態様において、ヒト腎臓腺癌細胞株は、ACHNである。別の態様において、ヒト腎臓癌細胞株は、786-Oである。別の態様において、ヒトグリア芽腫細胞株はSF539またはU251である。さらなる態様において、ヒト結腸癌細胞株はHCC-2998である。さらなる態様において、ヒト肝細胞癌細胞株はHepG2(ATCC番号HB-8065)である。なお別の態様において、ヒト卵巣明細胞癌細胞株は、ATCC番号CRL-1978である。さらなる態様において、ヒト前立腺癌細胞株はPC3(ATCC番号CRL-1435)である。
【0028】
本発明の特定の態様において、化学忌避因子は、卵巣癌嚢胞液または癌細胞株の上清から単離されたタンパク質のアミノ酸配列と実質的な同一性を有する配列を含む。これらの態様において、卵巣癌嚢胞液または上清は分画され、該タンパク質は化学忌避画分から単離される。化学忌避画分は、ヒトの遊走細胞の化学忌避を誘導する画分である。卵巣癌嚢胞液または上清は、例えばサイズ排除クロマトグラフィーおよびアニオン交換クロマトグラフィーにより分画され得る。
【0029】
アクチン、14-3-3ζ/δ、アポリポタンパク質A1、ヘモペキシン、PARK7、コフィリン-1、14-3-3ε、14-3-3-γ、ホスホセリンホスファターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、プロフィリン-2、β-2ミクログロブリン、シトクロームc、シスタチンB、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)、FK506結合タンパク質、チオレドキシン、ガレクチン3、ヒトトランスフェリン、ヒトEF-I-γおよびヒトガレクチン3結合タンパク質の例示的なアミノ酸配列は、以下に示される:

















































【0030】
本明細書において使用される場合、化学忌避因子は、他のタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも約60%配列同一性、少なくとも約70%配列同一性、少なくとも約80%配列同一性、少なくとも約85%配列同一性、少なくとも約85〜95%配列同一性、少なくとも約90〜約95%配列同一性、少なくとも約98%配列同一性または少なくとも約99%配列同一性を有するアミノ酸配列を有する場合、別のタンパク質と「実質的な同一性」を有する。用語「配列同一性」または配列についての「同一性」は、2つのアミノ酸配列間または2つのヌクレオチド配列間の配列同一性のことをいう。同一性は、比較目的で配列され得るそれぞれの配列中の位置を比較することにより決定することができる。用語「配列相同性」または配列についての「相同性」は、2つのアミノ酸配列または2つのヌクレオチド配列間の配列相同性のことをいう。比較された配列中の同等の位置が同じ塩基またはアミノ酸で占められる場合、分子はその位置で同一であり;同等の部位が同じまたは類似のアミノ酸残基(例えば立体的および/または電気的性質が類似)で占められる場合、その位置で分子は相同(類似)ということができる。相同性、類似性または同一性のパーセントの表示は、比較された配列により共有される位置での同一または類似のアミノ酸の数の関数をいう。相同性、類似性または同一性のパーセントの表示は、比較された配列により共有される位置での同一または類似のアミノ酸の数の関数をいう。FASTA、BLASTまたはENTREZなどの種々の配列アルゴリズムおよび/またはプログラムが使用され得る。FASTAおよびBLASTは、GCG配列解析パッケージの一部として利用可能であり(University of Wisconsin, Madison, Wis.)、例えばデフォルト設定と共に使用され得る。ENTREZは、全米バイオテクノロジー情報センター、国立医学図書館、国立衛生研究所、Bethesda, Md.を通じて利用可能である。一態様において、2つの配列のパーセント同一性は、ギャップウェイト1のGCGプログラム、例えばそれぞれのアミノ酸ギャップを、2つの配列間の1アミノ酸またはヌクレオチドのミスマッチであるかのように偏らせることにより決定することができる。
【0031】
「化学誘引因子」は、遊走細胞による正の走化性(剤または刺激に向かう移動)を誘導、誘起または誘発する剤または刺激である。
【0032】
本明細書で使用される用語「誘導」、「誘起」および「誘発」は、負または正の走化性に関して、化学忌避因子または化学誘引因子の活性のことをいう場合、同じ意味を有する。
【0033】
癌細胞から放出される化学忌避因子の活性は、化学忌避因子が免疫細胞の負の走化性を誘導する能力を抑制または低減する場合に阻害される。本発明によると、癌細胞から放出される化学忌避因子の活性は、免疫細胞の負の走化性を抑制するかまたは免疫細胞の癌細胞に向かう正の走化性を誘導するいずれかの手段により阻害され得る。例えば、化学忌避因子の活性は、化学忌避因子の活性を阻害する剤を投与することにより阻害し得る。かかる剤としては、限定されないが、小分子、タンパク質、抗体およびアンチセンス核酸が挙げられる。
【0034】
一態様において、癌細胞から放出される化学忌避因子の活性は、化学忌避因子の放出が抑制または低減される場合に阻害される。別の態様において、癌細胞から放出される化学忌避因子の活性は、化学忌避因子に結合し、その活性を阻害する剤を投与することにより阻害される。いくつかの態様において、化学忌避因子の活性は、化学忌避因子に結合して化学忌避活性を阻害する抗体を投与することにより阻害される。本明細書において使用される場合、用語「抗体」は、抗原に特異的に結合し抗原を認識する免疫グロブリン遺伝子由来のフレームワーク領域またはその断片を含むポリペプチドのことをいう。本明細書で使用される場合、用語抗体としては、全抗体の改変により作製される抗体断片、または組み換えDNA法を使用してデノボで合成されるもの(例えば、単鎖Fv)(scFv)、または相ディスプレイライブラリー(例えば、McCafferty et al. (1990) Nature 348:552-554参照)を使用して同定されたものが挙げられる。用語抗体はまた、モノクローナルおよびポリクローナルの両抗体を包含する。用語ポリクローナルおよびモノクローナルは、抗体調製の均質性の程度をいい、特定の製造方法に限定されることを意図しない。一態様において、抗体は化学忌避因子以外のほかのタンパク質または分子に結合しない。
【0035】
抗体は、適切な免疫原、例えば癌細胞から放出される化学忌避因子またはその断片に対して生成され得る。免疫抗原の調製、ならびにポリクローナルおよびモノクローナル抗体産生は、任意の適切な技術を使用して実施できる。種々の方法が記載されている(例えば、Kohler et al., Nature, 256:495-497 (1975) and Eur. J. Immunol. 6:511-519 (1976); Milstein et al., Nature 266:550-552 (1977); Koprowski et al., 米国特許第4,172,124号; Harlow, E. and D. Lane, 1988, Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory: Cold Spring Harbor, N.Y.);およびCurrent Protocols In Molecular Biology, Vol. 2 (Supplement 27, Summer '94), Ausubel, F. M. et al., Eds., (John Wiley & Sons: New York, N. Y.), Chapter 11, 1991)参照;それぞれの教示は参照により本明細書に援用される)。例えば、ライブラリーから組み換え抗体を選択する方法、またはヒト抗体の完全レパートリーを産生し得るトランスジェニック動物(例えばマウス)の免疫に依拠する方法などの必須特異性を有する抗体の産生または単離の他の適切な方法を使用し得る(例えば、Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 2555 (1993); Jakobovits et al., Nature, 362:255 258 (1993); Lonberg et al., 米国特許第5,545,806号;およびSurani et al., 米国特許第5,545,807参照;その教示は参照により本明細書に援用される)。単鎖抗体、およびキメラ、ヒト化もしくは霊長類化(primatized)(CDR移植)または張り合わせ(veneered)抗体、ならびに異なる種由来の部分を含むキメラ、CDR移植または張り合わせ単鎖抗体等も本発明および用語「抗体」に包含される。これらの抗体の種々の部分は、従来の技術により化学的に合わせることができるか、または遺伝子改変技術を使用して連続タンパク質として調製することができる。例えば、キメラ鎖またはヒト鎖をコードする核酸を発現させ、連続タンパク質を産生することができる。例えば、Cabilly et al, 米国特許第4,816,567号;Cabilly et al., 欧州特許第0 125 023 B1号;Boss et al., 米国特許第4,816,397号;Boss et al., 欧州特許第0 120 694 B1号;Neuberger, M. S. et al., WO 86/01533;Neuberger, M. S. et al., 欧州特許第0 194 276 B1;Winter, 米国特許第5,225,539号;Winter, 欧州特許第0 239 400 B1号;Queen et al.,欧州特許第0 451 216 B1号;およびPadlan et al., EP 0 519 596 A1を参照。また、霊長類化抗体に関してNewman et al., BioTechnology, 10:1455 1460 (1992)、ならびに単鎖抗体に関してLadner et al., 米国特許第4,946,778およびBird et al., Science, 242:423 426 (1988)も参照。また、キメラ、ヒト化、霊長類化、張り合わせまたは単鎖抗体の断片などの、限定されないがFv、Fab、Fab'およびF(ab')2断片などを含む抗体の抗原結合断片も作製することができ、本発明に包含される。
【0036】
別の態様において、化学忌避因子の活性は、アンチセンス核酸を投与することにより阻害される。この意味において、化学忌避因子アンチセンス核酸は、癌細胞から放出される化学忌避因子またはその部分をコードする遺伝子またはcDNAに対してアンチセンスの少なくとも6個のヌクレオチドを含む。アンチセンス核酸は、化学忌避因子をコードするRNAの一部にハイブリダイズし得る。アンチセンス核酸は、二重鎖もしくは単鎖オリゴヌクレオチド、RNAもしくはDNAまたはその修飾物もしくは誘導体であり、細胞に直接投与し得るか、または外因性導入配列の転写により細胞内で産生させ得る。一態様において、アンチセンス核酸は、約6〜約50ヌクレオチドを有する。他の態様において、アンチセンス核酸は、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも15ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチドまたは少なくとも200ヌクレオチドを有する。アンチセンス核酸は、DNAまたはRNAまたはキメラ混合物またはその誘導体または修飾形態であり得、単鎖または二重鎖であり得る。また、アンチセンス分子は、核酸模倣物であるポリマー、例えばPNA、モルホリノオリゴ、およびLNAであり得る。他の種類のアンチセンス分子としては、siRNAとして公知の短二重鎖RNAおよび短ヘアピンRNAおよび長dsRNA(50塩基対より長い)が挙げられる。
【0037】
なお別の態様において、化学忌避因子の活性は、化学忌避因子をコードする遺伝子mRNA転写産物を触媒的に切断するように設計されたリボザイム分子を投与することにより阻害される。従って、リボザイムは、標的mRNAの翻訳を阻害し、遺伝子産物の発現を阻害する。リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒し得る酵素RNA分子である。リボザイム作用の機構は、リボザイム分子の相補的標的RNAへの配列特異的ハイブリダイゼーション、その後のエンドヌクレオ消化切断事象を伴う。リボザイム分子の組成は、標的遺伝子mRNAに相補的な1つ以上の配列を必ず含み、mRNA切断の原因となる周知の触媒配列を必ず含む。
【0038】
別の態様において、本発明は、癌細胞から放出される化学忌避因子の活性を阻害することにより癌細胞に向かう免疫細胞の移動を誘導する工程を含む、癌に苦しむ患者において癌を治療する方法である。「治療すること」または「治療」は、疾患の症状、合併症もしくは生化学的徴候(indicia)の開始を予防もしくは遅延すること、症状を改善もしくは緩和すること、または疾患、状態もしくは障害のさらなる発展を停止または阻止することを含む。「患者」は、治療の必要があるヒト被験体のことをいう。
【0039】
特定の態様において、癌は、充実性腫瘍である。一態様において、充実性腫瘍は、結腸、前立腺、乳房、肺、皮膚、肝臓、骨、膵臓、卵巣、精巣、膀胱、腎臓、脳、頭部および頚部の癌からなる群より選択される。本明細書で使用される場合、化学忌避因子の阻害に関して、「治療有効量」は、免疫細胞の負の移動を阻害して、患者の疾患もしくは状態を緩和する、または所望の転帰を達成するのに充分な量である。
【0040】
走化性の誘導を参照すると、「治療有効量」は、遊走細胞の負の移動を誘導して患者の疾患もしくは状態を緩和する、または所望の転帰を達成するのに充分な量である。
【0041】
本明細書で使用される場合、「遊走細胞」は、刺激に応答して1つの場所から別の場所へと移動し得る細胞である。ヒト遊走細胞としては、癌、免疫脈管形成または炎症のプロセスに関与するものを含み、他の疾患状態または症状に役割を果たすことが確認されているものも含まれる。遊走細胞としては限定されないが、免疫細胞、造血細胞、神経細胞、上皮細胞、間葉細胞、幹細胞、生殖細胞および脈管形成に関与する細胞が挙げられる。
【0042】
免疫細胞としては、限定されないが、単球、ナチュラルキラー(NK)細胞、樹状細胞(未熟または成熟であり得る)、骨髄性細胞、形質細胞性細胞(またはリンパ性)またはランゲルハンス細胞などの樹状細胞のサブセット;組織球、クップファー細胞、肺胞マクロファージまたは腹膜マクロファージなどのマクロファージ;好中球、好酸球、マスト細胞、好塩基球;血漿B細胞、メモリーB細胞、B-1細胞、B-2細胞などのB細胞;CD45RO(ナイーブT)、CD45RA(メモリーT);Th1、Th2およびTr1/Th3などのCD4ヘルパーT細胞;CD8細胞傷害性T細胞、調節性T細胞およびγδT細胞が挙げられる。
【0043】
造血細胞としては、限定されないが、多能性(pluripotent)幹細胞、多能性前駆細胞および/または特定の造血系統に拘束される前駆細胞が挙げられる。特定の造血系統に拘束される前駆細胞は、T細胞系統、B細胞系統、樹状細胞系統、好中球系統、ランゲルハンス細胞系統および/またはリンパ組織特異的マクロファージ細胞系統であり得る。造血細胞は、骨髄、末梢血(動員末梢血など)、臍帯血、胎盤血液、胎性肝臓、胚性細胞(胚性幹細胞など)、大動脈-生殖腺-中腎由来細胞、およびリンパ系軟組織などの組織由来であり得る。リンパ系軟組織としては、胸腺、脾臓、肝臓、リンパ節、皮膚、扁桃およびパイエル板が挙げられ得る。他の態様において、造血細胞は、前述の細胞のいずれかのインビトロ培養物、特に前駆細胞のインビトロ培養物由来であり得る。
【0044】
神経細胞は神経起源の細胞であり、ニューロンおよびグリアおよび/または中枢神経組織および末梢神経組織の両方の細胞を含む。
【0045】
上皮細胞は、身体の自由表面を覆い、層をなす組織の細胞を含む。かかる上皮組織は、皮膚および感覚器官の細胞、ならびに血管、胃腸管、気道、肺、腎臓および内分泌器官の管に層を形成する特殊化された細胞を含む。
【0046】
間葉細胞としては、限定されないが、コラーゲン、ビメンチンおよびフィブロネクチンなどの典型的な線維芽細胞マーカーを発現する細胞が挙げられる。
【0047】
脈管形成に関与する細胞は血管形成に関与する細胞であり、内皮起源の細胞および間葉起源の細胞を含む。
【0048】
生殖細胞は、半数体配偶子を産生するように特殊化された細胞である。
【0049】
特定の態様において、ヒトの遊走細胞は免疫細胞である。他の態様において、免疫細胞は、リンパ球、単球、好中球、好酸球およびマスト細胞からなる群より選択される。さらなる態様において、免疫細胞は好中球または好酸球である。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「接触」または「接触すること」は、少なくとも一方が他方に作用するように2つの実体または物体が近位に触れるまたはまとまる作用を意味する。該定義は物理的接触を包含するがそれに限定されない。
【0051】
本明細書に記載されるように、負の走化性を誘導する能力に基づいて、化学忌避タンパク質またはその生物学的に活性な断片は、走化性部位に向かう遊走細胞の走化性の誘導を阻害することに有用である。一態様において、化学忌避因子は、表1〜9に記載されるタンパク質から選択されるタンパク質またはその生物学的に活性な断片のアミノ酸配列と実質的な同一性を有する配列を含む。いくつかの態様において、化学忌避タンパク質は、表10〜11に記載されるタンパク質から選択されるタンパク質またはその生物学的に活性な断片と実質的な同一性を有する配列を含む。別の態様において、該タンパク質は、アクチン、14-3-3ζ/δ、アポリポタンパク質A1、ヘモペキシン、PARK7、コフィリン-1、14-3-3ε、14-3-3-γ、ホスホセリンホスファターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、プロフィリン-2、β-2ミクログロブリン、シトクロームc、シスタチンB、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)、FK506結合タンパク質、チオレドキシン、ガレクチン3、ヒトトランスフェリン、ヒトEF-I-γおよびヒトガレクチン3結合タンパク質からなる群より選択されるタンパク質またはそのいずれかの生物学的に活性な断片と実質的な同一性を有する配列を含む。本明細書で使用される場合、「走化性部位」は、遊走細胞の正の走化性を誘導する部位である。走化性部位としては、炎症、医学埋没物、移植および脈管形成の部位が挙げられる。
【0052】
本明細書に記載される化学忌避因子は、炎症の部位に向かう遊走細胞の走化性の誘導を阻害することに有用である。炎症の部位に向かう遊走細胞の走化性の阻害により、細菌感染、組織傷害誘導性炎症(例えば、虚血-かん流傷害)、補体誘導性炎症、酸化ストレス(例えば、血液透析)、免疫合併症誘導性炎症(例えば、抗体媒介性糸球体腎炎)、サイトカイン誘導性炎症(例えば、関節リウマチ)、抗好中球細胞性抗体および脈管炎(例えば、好中球成分に対する自己免疫)、好中球調節の遺伝的障害(例えば、遺伝性周期熱症候群)、移植関連炎症、および嚢胞性線維症などの状態における炎症性応答の減少または改善がもたらされ得る。
【0053】
特定の態様において、本発明は、炎症状態に苦しむ患者に本明細書に記載される治療有効量の化学忌避因子を投与する工程を含む、炎症状態に苦しむ患者における炎症状態の治療方法である。特定の他の態様において、本発明は、炎症状態に苦しむ患者に本明細書に記載される治療有効量の化学忌避因子を投与する工程を含む、炎症状態に苦しむ患者における炎症状態の治療方法である。炎症状態としては、限定されないが、虫垂炎、消化性胃または十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、急性または虚血性大腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、アカラシア、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、炎症性腸疾患(例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎など)、腸炎、ホウィップル病、喘息、慢性閉塞性肺疾患、急性肺傷害、イレウス(例えば、手術後イレウス)、アレルギー、アナフィラキシーショック、免疫合併症、臓器虚血、かん流傷害、臓器壊死、枯草熱、セプシス、敗血症、内毒素ショック、悪液質、超高熱、好酸球肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、敗血流産、精巣上体炎、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、気腫、鼻炎、嚢胞性線維症、肺炎、肺超顕微鏡ケイ素じん肺(pneumoultramicroscopic silicovolcanoconiosis)、肺胞炎(alvealitis)、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、静脈洞炎、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス、ヘルペス、播種性菌血、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、包虫嚢胞、やけど、皮膚炎、皮膚筋炎、蕁麻疹、ざそう、脈管炎(vasulitis)、血管炎、心内膜炎、動脈炎、アテローム硬化症、血栓静脈炎(thrombophlebitis)、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、アルツハイマー病、セリアック病、うっ血性心不全、成人呼吸促進症候群、髄膜炎、脳炎、多発性硬化症、大脳梗塞、大脳塞栓症、ギヤン-バレー症候群、神経炎、神経痛、ブドウ膜炎、関節炎、関節痛、骨髄炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節リウマチ、滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット症候群、同種移植変拒絶、対宿主性移植片病、I型糖尿病、強直性脊椎炎、バージャー病、II型糖尿病、定年症候群、ホジキン病および注射部位反応が挙げられる。
【0054】
注射部位反応は、注射の部位およびその周辺における炎症を説明するために一般的に使用される用語である。注射部位反応は、化学療法薬、免疫調整薬およびワクチンなどの多くの薬剤の注射に伴い観察される。本発明は、本明細書に記載される化学忌避因子の注射部位への投与を含む、注射部位反応の治療または低減のための方法を包含する。例えば、化学忌避因子は、注射の前、間または後に投与され得る。いくつかの態様において、そのエクセナチドまたはアナログは、注射の部位に局所的に投与され得る。
【0055】
別の態様において、本発明は、医学埋没物に向かう正の走化性を阻害する方法である。医学埋没物は、本明細書に記載される化学忌避因子に接触され得るかまたは被覆され得る。また、該タンパク質は、医学埋没物の部位に局所的に投与され得る。医学埋没物は、体内に外科的に埋め込まれるか体内に自然にできた空洞に埋め込まれたデバイスまたは実体として定義される。医学埋没物としては、限定されないが、ステント、ペースメーカー、ペースメーカー導線、除細動器、薬物送達デバイス、センサー、ポンプ、塞栓形成コイル、縫合糸、電極、心臓血管埋没物、動脈ステント、心臓弁、整形外科埋没物、歯科埋没物、骨スクリュー、プレート、カテーテル、カニューレ、プラグ、充填剤、圧迫器、シート、骨の留め具、プレート、ロッド、シード、チューブ、またはそれらの一部が挙げられる。化学忌避因子に加えて、医療用埋没物も、細胞増殖性剤、抗感染剤および/または抗炎症剤で被覆され得る。
【0056】
また別の態様において、本発明は、器官移植組織または組織移植片への正の化学走性を阻害する方法である。器官移植組織および組織移植片(grant)としては、限定されないが、腎臓、膵臓、肝臓、リンパ系および心臓の移植片および器官が挙げられる。リンパ系移植片としては、脾臓移植片、リンパ節由来移植片、パイアー斑由来移植片、胸腺移植片および骨髄由来移植片が挙げられる。さらなる態様において、本発明は、本発明の化学忌避因子を投与する工程を含む、移植組織または移植片拒絶に苦しんでいる患者の治療方法である。
【0057】
上記のように、本発明の化学忌避因子は、新脈管形成部位への化学走性を阻害するために使用され得る。新脈管形成部位は、血管が形成されている部位である。一態様において、本発明は、新脈管形成部位から離れる内皮細胞の負の化学走性を誘導する方法である。また、本発明は、本発明の化学忌避因子を投与する工程を含む、必要な患者において新脈管形成を阻害する方法を包含する。さらなる態様において、本発明は、新脈管形成が阻害されるのに有効な量の本発明の化学忌避因子を投与する工程を含む、癌または腫瘍の治療方法である。本発明の別の局面によれば、被検体において腫瘍部位への内皮細胞遊走を阻害する方法が提供される。該方法は、かかる治療を必要とする腫瘍部位の周辺領域に、被検体において腫瘍部位への内皮細胞遊走が阻害されるのに有効な量の本発明の化学忌避因子を局所投与する工程または接触させる工程を含む。
【0058】
本発明の方法に従って治療され得る例示的な癌および腫瘍としては、例えば、胆汁管癌;脳の癌、例えば神経膠芽細胞腫および髄芽細胞腫;乳癌;頸部癌;絨毛上皮腫;結腸癌;子宮内膜癌;食道癌、胃癌;血液学新形成、例えば急性リンパ球および骨髄性白血病;多発性骨髄腫;AIDS関連白血病および成人T細胞白血病リンパ腫;上皮内新形成、例えばボーエン病およびパジェット病;肝臓癌(肝癌);肺癌;リンパ腫、例えばホジキン病およびリンパ球性リンパ腫;神経芽細胞腫;口腔癌、例えば扁平上皮細胞癌;卵巣癌、例えば上皮細胞、ストローマ細胞、生殖細胞および間充織細胞から生じるもの;膵臓癌;前立腺癌;直腸癌;肉腫、例えば平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫および骨肉腫;皮膚癌、例えばメラノーマ、カポジ肉腫、基底細胞癌および扁平上皮細胞癌;精巣癌、例えば生殖器腫瘍(精上皮腫、非精上皮腫[奇形腫、絨毛上皮腫])、間質腫瘍および生殖細胞腫瘍;甲状腺癌、例えば甲状腺腺癌および髄質癌;ならびに腎臓癌、例えば腺癌およびウイルムス腫瘍が挙げられる。
【0059】
また、本発明は、被検体の生殖細胞の遊走の阻害に有効な量の本発明の化学忌避因子を投与する工程を含む、避妊の必要な患者の避妊方法を包含する。本発明の別の局面によれば、不妊および早産の治療方法が提供される。該方法は、被検体において免疫細胞が生殖細胞近くに遊走するのを阻害するのに有効な量の上記の化合物を投与する工程を含む。
【0060】
本明細書に開示する治療方法は、局所または全身のいずれかで、かかる治療を必要とする被検体の選択された部位に、本発明の化学忌避因子をヒト遊走細胞の負の化学走性を誘導するのに有効な量で、または化学忌避因子のインヒビターを、免疫細胞の負の化学走性を抑制するのに有効な(effect)量で投与する工程を含む。例えば、炎症状態の治療に関連する「治療有効量」は、免疫細胞の負の化学走性を誘導する、および/または炎症状態の症状を改善するのに充分な量を包含する。
【0061】
特定の態様において、化学忌避因子が、第二薬剤(例えば、別の化学誘引因子またはそれ自体化学誘引因子ではない任意の薬物または薬剤と共に)と同時投与され得る。同時に投与される薬剤、化合物、化学誘引因子または治療剤は、正確に同時に投与される必要はない。しかしながら、特定の態様において、化学忌避剤は、第二薬剤と実質的に同時に投与される。「実質的に同時に」とは、化学忌避因子が、第二薬剤の投与の前、第二薬剤の投与と同時および/または第二薬剤の投与の後に、投与されることを意味する。第二薬剤としては、例えば、抗炎症剤、抗癌薬剤、抗感染剤、免疫治療剤(免疫抑制剤)および他の治療化合物が挙げられる。第二薬剤は、処置対象の状態または疾患に基づいて選択され得る。例えば、癌または腫瘍の治療方法では、化学忌避因子は、抗癌剤とともに投与され得る。同様に、炎症状態の治療方法では、化学忌避因子は、抗炎症剤、抗感染剤または免疫抑制剤とともに投与され得る。
【0062】
抗感染剤は、微生物の活動を減少させる薬剤または微生物を殺傷する薬剤であり、アズトレオナム;グルコン酸クロルヘキシジン;イミド尿素;リセタミン;ニブロキサン;ピラズモナムナトリウム;プロピオン酸;ピリチオンナトリウム;塩化サンギナリウム;チゲモナムジコリン;アセダプソン;アセトスルホンナトリウム;アラメシン;アレキシジン;アムジノシリン;アムジノシリンピボキシル;アミサイクリン;アミフロキサシン;アミフロキサシンメシレート;アミカシン;アミカシンスルフェート;アミノサリチル酸;アミノサリチル酸ナトリウム;アモキシシリン;アンホマイシン;アンピシリン;アンピシリンナトリウム;アパルシリンナトリウム;アプラマイシン;アスパルトシン;アストロミシンスルフェート;アビラマイシン;アボパルシン;アジスロマイシン;アズロシリン;アズロシリンナトリウム;塩酸バカンピシリン;バシトラシン;バシトラシンメチレンジサリチル酸;バシトラシン亜鉛;バンバーマイシン(bambermycin);ベンゾイルパスカルシウム;ベリスロマイシン;ベタミシンスルフェート;ビアペネム;ビニラマイシン;塩酸ビフェナミン;ビスピリチオンマグスルフェクス;ブチカシン;ブチロシンスルフェート;カプレオマイシンスルフェート;カルバドックス;カルベニシリン二ナトリウム;カルベニシリンインダニルナトリウム;カルベニシリンフェニルナトリウム;カルベニシリンカリウム;カルモナムナトリウム;セファクロール(cefaclor);セファドロキシル;セファマンドール;セファマンドールナフェート;セファマンドールナトリウム;セファパロール;セファトリジン;セファザフルール(cefazaflur)ナトリウム;セファゾリン;セファゾリンナトリウム;セフブペラゾン;セフジニル(cefdinir);セフェピム(cefepime);塩酸セフェピム;セフェテコール;セフィキシム(cefixime);塩酸セフィネノキシム(cefinenoxime);セフメタゾール;セフメタゾールナトリウム;セフォニシドモノナトリウム;セフォニシドナトリウム;セフォペラゾンナトリウム;セフォラニド;セフォタキシムナトリウム;セフォテタン;セフォテタン二ナトリウム;塩酸セフォチアム;セフォキシチン;セフォキシチンナトリウム;セフピミゾール;セフピミゾールナトリウム;セフピラミド;セフピラミドナトリウム;セフピロムスルフェート;セフポドキシムプロキセチル;セフプロジル;セフロキサジン;セフスロジンナトリウム;セフタジジム;セフチブテン;セフチゾキシムナトリウム;セフトリアキソン(ceftriaxone)ナトリウム;セフロキシム;セフロキシムアクセチル(axetil);セフロキシムピボキセチル;セフロキシムナトリウム;セファセトリルナトリウム;セファレキシン;塩酸セファレキシン;セファログリシン;セファロリジン;セファロチンナトリウム;セファピリンナトリウム;セフラジン;塩酸セトサイクリン;セトフェニコール;クロラムフェニコール;クロラムフェニコールパルミテート:クロラムフェニコールパントテネート錯体;コハク酸クロラムフェニコールナトリウム;クロルヘキシジンホスファニレート;クロロキシレノール;クロルテトラサイクリンビスルフェート;塩酸クロルテトラサイクリン;シノキサシン;シプロフロキサシン;塩酸シプロフロキサシン;シロレマイシン;クラリスロマイシン;塩酸クリナフロキサシン;クリンダマイシン;塩酸クリンダマイシン;パルミチン酸クリンダマイシン塩酸塩;リン酸クリンダマイシン;クロファジミン;クロキサシリンベンザチン;クロキサシリンナトリウム;クロキシキン;コリスチメテートナトリウム;コリスチンスルフェート;クメルマイシン(coumermycin);クメルマイシンナトリウム;シクラシリン;シクロセリン;ダルフォプリスチン;ダプソン;ダプトマイシン;デメクロサイクリン;塩酸デメクロサイクリン;デメサイクリン;デノフンギン(denofungin);ジアベリジン;ジクロキサシリン;ジクロキサシリンナトリウム;ジヒドロストレプトマイシンスルフェート;ジピリチオン;ジリスロマイシン;ドキシサイクリン;ドキシサイクリンカルシウム;ドキシサイクリンホスファテックス(fosfatex);ドキシサイクリンヒクラート;ドロキサシンナトリウム;エノキサシン;エピシリン;塩酸エピテトラサイクリン;エリスロマイシン;エリスロマイシンアシストレート;エリスロマイシンエストレート;エリスロマイシンエチルスクシネート;エリスロマイシングルセプテート;エリスロマイシンラクトビオネート;エリスロマイシンプロピオネ−ト;エリスロマイシンステアレート;塩酸エタンブトール;エチオナミド;フレロキサシン;フロキサシリン;フルダラニン;フルメキン;ホスホマイシン;ホスホマイシントロメタミン;フモキシシリン;塩化フラゾリウム;酒石酸フラゾリウム;フシデートナトリウム;フシジン酸;ゲンタマイシンスルフェート;グロキシモナム;グラミシジン;ハロプロジン;ヘタシリン;ヘタシリンカリウム;ヘキセジン;イバフロキサシン;イミペネム;イソコナゾール;イセパミシン;イソニアジド;ジョサマイシン(josamycin);カナマイシンスルフェート;キタサマイシン;レボフラルタドン;レボプロピルシリンカリウム;レキシスロマイシン;リンコマイシン;塩酸リンコマイシン;ロメフロキサシン;塩酸ロメフロキサシン;ロメフロキサシンメシレート;ロラカルベフ;マフェニド;メクロサイクリン;スルホサリチル酸メクロサイクリン;リン酸メガロミシンカリウム;メキドクス(mequidox);メロペネム;メタサイクリン;塩酸メタサイクリン;メテナミン;馬尿酸メテナミン;メテナミンマンデレート;メチシリンナトリウム;メチオプリム;塩酸メトロニダゾール;リン酸メトロニダゾール;メズロシリン;メズロシリンナトリウム;ミノサイクリン;塩酸ミノサイクリン;ミリンカマイシンリドロクロライド;モネンシン;モネンシンナトリウム;ナフシリンナトリウム;ナリジクス酸ナトリウム;ナリジクス酸;ナタマイシン;ネブラマイシン;ネオマイシンパルミテート;ネオマイシンスルフェート;ネオマイシンウンデシレネート;ネチルミシンスルフェート;ニュートラマイシン;ニフラデン;ニフラルデゾン;ニフラテル;ニフラトロン;ニフルダジル;ニフリミド;ニフルピリノール;ニフルキナゾール;ニフルチアゾール;ニトロサイクリン;ニトロフラントイン;ニトロミド;ノルフロキサシン;ノボビオシンナトリウム;オフロキサシン;オルメトプリム;オキサシリンナトリウム;オキシモナム;オキシモナムナトリウム;オキソリン酸;オキシテトラサイクリン;オキシテトラサイクリンカルシウム;塩酸オキシテトラサイクリン;パルジマイシン;パラクロロフェノール;パウロマイシン;ペフロキサシン;ペフロキサシンメシレート;ペナメシリン;ペニシリンGベンザチン;ペニシリンGカリウム;ペニシリンGプロカイン;ペニシリンGナトリウム;ペニシリンV;ペニシリンVベンザチン;ペニシリンVヒドラバミン;ペニシリンVカリウム;ペンチジドンナトリウム;アミノサリチル酸フェニル;ピペラシリンナトリウム;ピルベニシリンナトリウム;ピリジシリンナトリウム;塩酸ピルリマイシン;塩酸ピバンピシリン;ピバンピシリンパモエート;ピバンピシリンプロベネート;ポリミキシンBスルフェート;ポルフィロマイシン;プロピカシン;ピラジンアミド;ピリチオン亜鉛;キンデカミンアセテート;キヌプリスチン;ラセフェニコール;ラモプラニン;ラニマイシン;レロマイシン;レプロマイシン;リファブチン;リファメタン;リファメキシル;リファミド;リファンピン;リファペンチン;リファキシミン;ロリテトラサイクリン;ロリテトラサイクリンニトレート;ロサラマイシン;ロサラマイシンブチレート;ロサラマイシンプロピオネート;リン酸ロサラマイシンナトリウム;ロサラマイシンステアレート;ロソキサシル;ロキサルソン;ロキシスロマイシン;サンサイクリン;サンフェトリネンナトリウム;サルモキシシリン;サルピシリン;スコパフンギン(scopafungin);シソマイシン;シソマイシンスルフェート;スパルフロキサシン;塩酸スペクチノマイシン;スピラマイシン;塩酸スタリマイシン;ステフィマイシン;ストレプトマイシンスルフェート;ストレプトニコジド;スルファベンズ;スルファベンズアミド;スルファセタミド;スルファセタミドナトリウム;スルファシチン;スルファジアジン;スルファジアジンナトリウム;スルファドキシン;スルファレン;スルファメラジン;スルファメータ(sulfameter);スルファメタジン;スルファメチゾール;スルファメトキサゾール;スルファモノメトキシン;スルファモキソール;スルファニレート亜鉛;スルファニトラン;スルファサラジン;スルファソミゾール;スルファチアゾール;スルファザメト;スルフィソキサゾール;スルフィソキサゾールアセチル;スルフィソキサゾールジオラミン;スルホミキシン;スロペネム;スルタミシリン;サンシリンナトリウム;塩酸タランピシリン;テイコプラニン;塩酸テマフロキサシン;テモシリン;テトラサイクリン;塩酸テトラサイクリン;リン酸テトラサイクリン錯体;テトロキソプリム;チアンフェニコール;チフェンシリンカリウム;チカルシリンクレシルナトリウム;チカルシリン二ナトリウム;チカルシリンモノナトリウム;チクラトン;塩化チオドニウム;トブラマイシン;トブラマイシンスルフェート;トスフロキサシン;トリメトプリム;トリメトプリムスルフェート;トリスルファピリミジン;トロレアンドマイシン;トロスペクトマイシンスルフェート;チロスリシン;バンコマイシン;塩酸バンコマイシン;バージニアマイシン;ゾルバマイシン;塩酸ジフロキサシン;ラウリルイソキノリニウムブロミド;モキサラクタム二ナトリウム;オルニダゾール;ペンチソマイシン;および塩酸サラフロキサシンが挙げられる。
【0063】
例示的な抗癌剤としては、アシビシン;アクラルビシン;塩酸アコダゾール;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;アメタントロンアセテート;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタト(batimastat);ベンゾデパ;ビカルタミド;塩酸ビスアントレン;ビスナフィドジメシレート;ビゼレシン;ブレオマイシンスルフェート;ブレキナル(brequinar)ナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー(carbetimer);カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;クリスナトールメシレート;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;塩酸ダウノルビシン;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;デザグアニンメシレート;ジアジクオン;ドセタキセル;ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;ドロモスタノロンプロピオネート;デュアゾマイシン;エダトレキセート;塩酸エフロリチン(eflorithine hydrochloride);エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;塩酸エピルビシン;エルブロゾール;塩酸エソルビシン;エストラムスチン;エストラムスチンリン酸ナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;塩酸ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルロシタビン;ホスキドン;ホストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;塩酸ゲムシタビン;ヒドロキシ尿素;塩酸イダルビシン;イホスファミド;イルモホシン;インターフェロンα-2a;インターフェロンα-2b;インターフェロンα-n1;インターフェロンα-n3;インターフェロンβ-Ia;インターフェロンγ-Ib;イプロプラチニ;塩酸イリノテカン;ランレオチドアセテート;レトロゾール;ロイプロリドアセテート;塩酸リアロゾール;ロメトレキソル(lometrexol)ナトリウム;ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコル;メイタンシン;塩酸メクロレタミン;メゲストロールアセテート;メレンゲストロールアセテート;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトジリン;マイトマルシン;ミトマイシン;ミトスペル;ミトタン;塩酸ミトザントロン;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;ペプロマイシンスルフェート;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサントロン;プリカマイシン;プロメスタン;ポドフィロックス;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;塩酸プロカルバジン;ピューロマイシン;塩酸ピューロマイシン;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴル;塩酸サフィンゴル;セムスチン;シムトラゼン;スパルホサートナトリウム;スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル(sulofenur);タリソマイシン;タキソテレ(taxotere);テコガランナトリウム;テガフル;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;塩酸トポテカン;クエン酸トレミフェン;トレストロンアセテート;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルリン(verteporlin);ビンブラスチンスルフェート;ビンクリスチンスルフェート;ビンデシン;ビンデシンスルフェート;ビネピジンスルフェート;ビングリシネートスルフェート;ビンレウロシンスルフェート;酒石酸ビノレルビン;ビルロシジン(virlrosidine)スルフェート;ビンゾリジンスルフェート;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;および塩酸ゾルビシンが挙げられる。
【0064】
例示的な免疫抑制剤としては、アザチオプリン;アザチオプリンナトリウム;シクロスポリン;ダルトロバン;三塩酸グスペリムス;シロリムス;およびタクロリムスが挙げられる。例示的な抗炎症剤としては、アルクロフェナク;アルクロメタゾンジプロピオネート;アルゲストンアセトニド;アルファアミラーゼ;アンシナファル;アンシナフィド;アンフェナクナトリウム;塩酸アミプリロース;アナキンラ;アニロラク;アニトラザフェン;アパゾン;バルサラジド二ナトリウム;ベンダザック;ベノキサプロフェン;塩酸ベンジダミン;ブロメライン;ブロペラモル;ブデソニド;カルプロフェン;シクロプロフェン;シンタゾン;クリプロフェン;クロベタゾールプロピオネート;クロベタゾンブチレート;クロピラク;クロチカゾンプロピオネート;コルメタゾンアセテート;コルトドキソン;デフラザコート;デソニド;デスオキシメタゾン;デキサメタゾンジプロピオネート;ジクロフェナクカリウム;ジクロフェナクナトリウム;ジフロラゾンジアセテート;ジフルミドンナトリウム;ジフルニサル;ジフルプレドネート;ジフタロン;ジメチルスルホキシド;ドロシノニド;エンドリゾン;エンリモマブ;エノリカムナトリウム;エピリゾール;エトドラク;エトフェナメート;フェルビナク;フェナモル;フェンブフェン;フェンクロフェナク;フェンクロラク;フェンドサル(fendosal);フェンピパロン;フェンチアザク;フラザロン;フルアザコート;フルフェナム酸;フルミゾール;フルニソリドアセテート;フルニキシン;フルニキシンメグルミン;フルオコルチンブチル;フルオロメトロンアセテート;フルカゾン;フルルビプロフェン;フルレトフェン;フルチカゾンプロピオネート;フラプロフェン;フロブフェン;ハルシノニド;ハロベタゾールプロピオネート;ハロプレドンアセテート;イブフェナク;イブプロフェン;イブプロフェンアルミニウム;イブプロフェンピコノール;イロニダプ;インドメタシン;インドメタシンナトリウム;インドプロフェン;インドキソール;イントラゾール;イソフルプレドンアセテート;イソキセパク;イソキシカム;ケトプロフェン;塩酸ロフェミゾール;ロルノキシカム;ロテプレドノールエタボネート;メクロフェナメートナトリウム;メクロフェナム酸;メクロリゾンジブチレート;メフェナム酸;メサラミン;メセクラゾン;メチルプレドニゾロンスレプタネート;モルニフルメート;ナブメトン;ナプロキセン;ナプロキセンナトリウム;ナプロキソール;ニマゾン;オルサラジンナトリウム;オルゴテイン;オルパノキシン;オキサプロジン;オキシフェンブタゾン;塩酸パラニリン;ペントサンポリスルフェートナトリウム;フェンブタゾングリセレートナトリウム;ピルフェニドン;ピロキシカム;ピロキシカムシンナメート;ピロキシカムオラミン;ピルプロフェン;プレドナザート;プリフェロン;プロドリン酸(prodolic acid);プロカゾン;プロキサゾール;プロキサゾールシトレート;リメキソロン;ロマザリト;サルコレクス(salcolex);サルナセジン;サルサレート;塩化サンギナリウム;セクラゾン;セルメタシン;スドキシカム;スリンダク;スプロフェン;タルメタシン;タルニフルメート;タロサレート;テブフェロン;テニダプ;テニダプナトリウム;テノキシカム;テシカム;テシミド;テトリダミン;チオピナク;チキソコルトルピバレート(tixocortol pivalate);トルメチン;トルメチンナトリウム;トリクロニド;トリフルミデート;ジドメタシン;およびゾメピラクナトリウムが挙げられる。
【0065】
本明細書で使用されるように、「治療」および/または「治療すること」は、治療(therapeutic treatment)ならびに予防的治療または予防的措置をいう。化学忌避因子および/または他の治療剤(化学忌避因子に対する抗体など)は、薬学的に許容され得る担体または賦形剤を含む医薬組成物で投与され得る。賦形剤は、治療適用において組成物の予測される投与経路に基づいて選択され得る。組成物の投与経路は、治療対象の状態に依存する。投与経路としては、限定されないが、非経口、局所(topic)、経口、筋肉内、静脈内投与が挙げられる。投与される組成物の投与経路および投薬量は、過度に実験することなく、標準的な用量応答試験に関連させて当業者によって決定され得る。
【0066】
該決定を行なう際に考慮される関連の状況としては、治療対象の状態(1つまたは複数)、投与される組成物の選択、個々の患者の年齢、体重および応答、ならびに患者の症状の重症度が挙げられる。一態様において、化学忌避因子またはその組成物が局所投与される。
【0067】
本発明の方法に使用される治療組成物は、例えば、静脈内、筋肉内、髄腔内または皮下注射などによって非経口投与され得る。非経口投与は、本発明の治療組成物を溶液または懸濁液に組み込むことによって行なってもよい。また、かかる溶液または懸濁液としては、注射用水などの滅菌希釈剤、生理食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒が挙げられ得る。また、非経口配合物としては、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの酸化防止剤、およびEDTAなどのキレート剤が挙げられ得る。また、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張度の調整の薬剤を添加してもよい。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、または反復用量バイアルに封入され得る。
【0068】
本発明を、限定を意図しない以下の実施例によって説明する。
【実施例】
【0069】
実施例
実施例1:腫瘍環境に存在する細胞遊走調節因子の同定
目的: 腫瘍微環境内に存在する、免疫細胞サブセットの遊走を調節する能力を有する因子の同定
【0070】
材料および方法:
嚢胞液試料:インフォームドコンセントを得た上で、卵巣癌患者から該液を外科処置中に収集した。該液を遠心分離して残屑を除去した。上清みに、プロテアーゼインヒビターのカクテルを添加し、アリコートに分け、さらなる処理まで-80Cで保存した。Boydenチャンバ内でのトランスウェル(transwell)遊走アッセイで好中球の遊走に対する効果を試験し、化学誘引(CA)活性および化学忌避(CR)活性を以下に記載するようにして試料を評価した。
【0071】
クロマトグラフィーによる分離:嚢胞液(65mg/mlで0.2ml)をSuperdex 200 10/300 GLカラム(GE Healthcare)に負荷し、0.5ml/分の速度で分画した。10μlの100X濃度Complete EDTA-free Protease Inhibitor Cocktail(Roche)を事前に負荷したチューブ内に画分(1ml)を収集した。これらの画分を、CA CR活性について、後述するトランスウェル遊走アッセイにおいて評価した。
【0072】
1次元および2次元SDS-PAGE解析:S-200クロマトグラフィーから収集されたCR活性を有する画分およびCR活性のない隣接画分を、1次元および2次元SDS-PAGEによってさらに分画した。S-200画分中に識別的に存在しCR活性を有するタンパク質のバンドおよび/またはスポットを手仕事で切り取り、トリプシンで消化し、LC-MS/MS(1-Dバンド)解析またはMALDI(2-Dスポット)解析のいずれかに供した。
【0073】
S-200クロマトグラフィーにより収集した嚢胞液画分および以下に列挙するタンパク質の化学忌避活性を以下のようにして測定した。
【0074】
アッセイの開始前、以下のものを調製した。
イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)(アッセイ培地)中0.5%ウシ胎児血清(FCS)(ともにATCCのもの)
アッセイ培地中2x107細胞/mlの濃度の遊走細胞
アッセイ培地中目的のリガンドの4種類の連続(3倍)希釈液
アッセイプレートは、好中球ではNeuroprobe ChemoTxプレート、品番206-3(3um孔径)である。
31μlの以下の溶液を各ウェルにピペットで移した。
培地対照および化学忌避試料には、アッセイ培地を使用した。
化学誘引試料には、適切なリガンド希釈液を使用した。
プレート上に膜を、片側から始め、次いで他端をゆっくりプレート上に下ろしながら注意深く置いた。
29μlの以下のものを各サークルの上面にピペットで移した。
培地対照および化学誘引試料には、アッセイ培地を使用する。
化学忌避試料には、適切なリガンド希釈液を使用する。
2μlの細胞(40,000細胞)を工程7の液体の各気泡に添加した。
【0075】

【0076】
プレートに備え付けの蓋を被せ、 5%CO2中37℃で所望の時間インキュベートした。特に記載のない限り、インキュベーション時間は、好中球では1時間およびT細胞では3時間とした。単球およびB細胞では、インキュベーション時間を2時間とした。
所望のアッセイ時間後、キムワイプを用いてプレートの上面から液体を除去した。
【0077】
プレートの上面から注意深く膜を除き、廃棄した。プレートを顕微鏡下で検査し、リガンド結晶化、汚染および全体的な遊走について調べた。
白色読取プレートに25ulのPBSを事前に負荷した。
マルチチャンネルピペッターを使用し、5ulのCell Titer Glo(Promega # G7572)を各ウェルに添加した。
30ulに設定したマルチチャンネルピペッターを使用し、溶解細胞溶液を、PBSを事前に負荷した白色読取プレートに移した。
遊走した細胞の数を定量するため、BioTek Synergy4プレートリーダーを用いてプレートを読み取った。
【0078】
結果:
質量分析(MS)解析により、化学忌避活性クロマトグラフィー画分中に86種類のタンパク質が同定され、これらを以下の表に示す。
【0079】

【0080】

【0081】

【0082】
これらのタンパク質のいくつかを、CAおよびCR活性に対する効果について個々に、および組合せで評価した。これらのタンパク質のうち、アクチン、14-3-3ζ/δ、アポリポタンパク質A1およびヘモペキシンは、最も大きなCAおよび/またはCR活性を示した。図1〜6は、嚢胞液全体、Superdex 200画分、アクチンおよび14-3-3の各々(同タンパク質の2種類を組合せでアッセイ)、アポリポタンパク質A1、ならびにヘモペキシンの、CAおよびCR様式のヒト好中球の遊走に対する効果を示す。
【0083】
図の説明:
図1は、ヒト好中球の遊走に対する嚢胞液の効果である。ヒト好中球は、異なる濃度の嚢胞液:ストレート(未希釈)、ならびに培地中1:3、1:10および1:30希釈で試験した。化学誘引(CA)および化学忌避はどちらも、Boydenチャンバトランスウェル遊走アッセイを用いて測定した。嚢胞液は、トランスウェル遊走アッセイで試験した場合、試験したすべての濃度でヒト好中球を効率的に忌避した。
【0084】
図2は、トランスウェル遊走アッセイにおけるヒト好中球に関する嚢胞液のS-200クロマトグラフィー分画の評価である。画分をヒト好中球の化学誘引(CA)および化学忌避について、Boydenチャンバトランスウェル遊走アッセイを用いて評価した。画分A15およびB1は、他の画分と比べて最も高い好中球忌避活性を有する。
【0085】
図3は、ヒト好中球の遊走に対するヒトアクチンおよび14-3-3の効果である。アクチンおよび14-3-3は、異なる濃度で、ヒト好中球の化学忌避(CR)を誘導する能力について、Boydenチャンバトランスウェル遊走アッセイを用いて評価した。ヒト好中球は、トランスウェル遊走アッセイにおいてアクチンによって効率的に忌避された。
【0086】
図4は、ヒト好中球の遊走に対するアクチンと14-3-3の1:1の組合せの効果である。アクチンおよび14-3-3は、1:1の組合せで異なる濃度で、ヒト好中球の化学誘引(CA)および化学忌避(CR)を誘導する能力について、Boydenチャンバトランスウェル遊走アッセイを用いて評価した。アクチンおよび14-3-3は組合せで、トランスウェル遊走アッセイにおいて、ヒト好中球の遊走を効率的に調節した。
【0087】
図5は、ヒト好中球の遊走に対するアポリポタンパク質A1の効果である。アポリポタンパク質A1は、異なる濃度で、ヒト好中球の化学誘引(CA)および化学忌避(CR)を誘導する能力について、Boydenチャンバトランスウェル遊走アッセイを用いて評価した。ヒト好中球は、5.1マイクロM濃度のアポリポタンパク質A1によって効率的に忌避された。
【0088】
図6は、ヒト好中球の遊走に対するヘモペキシンの効果である。ヘモペキシンは、異なる濃度で、ヒト好中球の化学誘引(CA)および化学忌避(CR)を誘導する能力について、Boydenチャンバトランスウェル遊走アッセイを用いて評価した。ヒト好中球は、8.8マイクロM濃度のヘモペキシンによって効率的に誘引された。
【0089】
実施例2:哺乳動物癌細胞株上清み中に存在する細胞遊走調節因子の同定
目的: 哺乳動物癌細胞株中に存在する、免疫細胞サブセットの遊走を調節する能力を有する因子を同定すること
【0090】
材料および方法:
哺乳動物癌細胞株:
癌細胞株は、血清含有培地中で所望のコンフルエンスに達するまで培養した。培養条件を無血清培地に切り替え、上清みを一定の日数まで毎日収集した。上清みに、プロテアーゼインヒビターのカクテルを添加し、アリコートに分け、さらなる処理まで-80Cで保存した。培養上清みは、容量に応じて10倍濃縮または未濃縮のいずれかで評価し、Boydenチャンバトランスウェル遊走アッセイで好中球遊走に対する効果を試験した。
【0091】
クロマトグラフィーによる分離:
上清みをさらに濃縮し、Superdex 200 10/300 GLカラム(GE Healthcare)に負荷し、0.5ml/分の速度で分画した。10μlの100X濃度Complete EDTA-free Protease Inhibitor Cocktail(Roche)を事前に負荷したチューブ内に画分(1ml)を収集した。これらの画分を、化学誘引(CA)および化学忌避(CR)活性について、後述するトランスウェル遊走アッセイにおいて評価した。
【0092】
乳癌細胞株SK-BR-3の上清みを、まず一晩透析し、次いでHiTrap-Q Fast Flowアニオン交換カラムに負荷し、1mL/分の速度で分画した。3mL画分を脱塩し、化学誘引(CA)および化学忌避(CR)活性について、後述するトランスウェル遊走アッセイにおいて評価した。
【0093】
1次元 SDS-PAGE解析:
S-200およびアニオン交換クロマトグラフィーから収集されたCR活性を有する画分およびCR活性のない隣接画分を、1次元SDS-PAGEによってさらに分画した。S-200画分中に識別的に存在しCR活性を有するタンパク質のバンドを手仕事で切り取り、トリプシンで消化し、LC-MS/MSに供した。
【0094】
上清み、S-200およびアニオン交換クロマトグラフィーにより収集した画分、ならびに以下に列挙するタンパク質の化学忌避活性を以下のようにして測定した。
【0095】
トランスウェル遊走アッセイ:
1. アッセイの開始前、以下のものを調製した。
a. イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)(アッセイ培地)中0.5%ウシ胎児血清(FCS)(ともにATCCのもの)
b. アッセイ培地中2x107細胞/mlの濃度の遊走細胞
2. アッセイプレートは、好中球ではNeuroprobe ChemoTxプレート、品番206-3(3um孔径)である。
3. 31μlの以下の溶液を各ウェルにピペットで移した。
a. 培地対照および化学忌避試料には、アッセイ培地を使用した。
b. 化学誘引試料には、適切なリガンド希釈液を使用した。
4. プレート上に膜を、片側から始め、次いで他端をゆっくりプレート上に下ろしながら注意深く置いた。
5. 29μlの以下のものを各サークルの上面にピペットで移した。
a. 培地対照および化学誘引試料には、アッセイ培地を使用した。
b. 化学忌避試料には、適切なリガンド希釈液を使用した。
6. 2μlの細胞(40,000細胞)を工程7の液体の各気泡に添加した。
7. プレートに備え付けの蓋を被せ、 5%CO2中37℃で1時間インキュベートした。
8. 次いで、キムワイプを用いてプレートの上面から液体を除去した。
9. 次いで、プレートを顕微鏡下で検査し、結晶化、汚染および全体的な遊走について調べた。
【0096】
この時点から、アッセイプレートを、方法A:CTG(Cell Titer Glo、読取は相対発光単位による)または方法B:Guava(読取は細胞計数による)のいずれかで処理した。
【0097】
方法A:
1. 白色読取プレートに25ulのPBSを事前に負荷し、5ulのCell Titer Glo(Promega # G7572)を、トランス遊走プレートの各ウェルに添加した。
2. 30ulに設定したマルチチャンネルピペッターを使用し、溶解細胞溶液を、PBSを事前に負荷した白色読取プレートに移した。
3. 遊走した細胞の数を定量するため、BioTek Synergy4プレートリーダーを用いてプレートを読み取った。
【0098】
方法B:
U型底96ウェルプレートに50ulアッセイ培地を事前に負荷し、Neuroprobeプレートの内容物をU型底プレートに移した。
等容量のGuava viacount試薬を各ウェルに添加し、細胞を染色した。
次いで、プレートを暗所にて室温で5分間インキュベートした。
1%パラホルムアルデヒドを添加して細胞を固定し、次いで接着性フィルムで密封し、4℃で一晩保存した。
Guava Easy Cyte Plusを用いてプレートを読み取り、遊走した細胞の数を定量した。
【0099】
化学忌避活性を示す上清み画分由来のバンドを、MS(液体クロマトグラフィー/質量分析/質量分析)解析に出した(外注)。次いで、質量分析で同定されたタンパク質に対応する市販のタンパク質を細胞遊走アッセイにおいて試験した。
【0100】
タンパク質の同定は、外注により、LTQ(「線形捕捉四重極(linear trap quadrupole)」)質量分析装置においてナノLC/MS/MS(液体クロマトグラフィー/質量分析/質量分析)を用いて行なわれた。タンパク質試料をゲルまたは溶液中に供し、まず、ロボットによりトリプシンを用いて消化し、ペプチド混合物を得た(必要であれば、代替的に酵素を使用してもよい)。次いで、ペプチドを特注設計LCカラム設備に注入し、MSおよびMS/MSが行なわれる質量分析装置内に溶出した。偽発見率の評価を可能にし、正しいタンパク質の同定のみの報告を確実にするため、前向きおよび逆向きデータベース検索法を用いて生成物イオンデータを検索した。検索結果をScaffold TM可視化ソフトウェアで解析し、ProteinProphetTMおよびPeptideProphet TM 1ツールによるタンパク質の帰属のさらなる確認を可能にした。
【0101】
ゲル内消化のために用いた方法は以下のとおりである。
【0102】
試料をProGestワークステーションでのタンパク質分解消化に、以下のようにして供した。
【0103】
試料を60℃でDTTにより還元し、室温に放冷し、ヨードアセトアミドでアルキル化し、トリプシンの存在下で37℃で4時間インキュベートし、ギ酸を添加して反応を停止させた。
【0104】
質量分析に使用した方法-溶液系は以下のとおりである。
試料を、ZipTipを使用するC18捕捉に供した。試料を較正したC18 ZipTipから吸引し、0.1%ギ酸中で洗浄し、0.1%ギ酸中80%アセトニトリル中に溶出し、真空遠心分離によって濃縮し、0.1%ギ酸中に再懸濁して注入した。
【0105】
LC/MS/MS(データ依存性)に使用した方法は以下のとおりである。
試料は、ThermoFisher LTQ XLまたはOrbitrap XLでナノLC/MS/MSによって解析した。30μlの加水分解物を75μmのC12 ベント型カラムに10μL/分の流速で負荷し、300nL/分で溶出し、1h勾配を使用した。Mascot(www.matrixscience.com)のローカルコピーを用いてMS/MSデータを検索した。全LC/MS/MS(Mascot)検索のパラメータは以下のとおりとした。
検索の型:MS/MSイオン検索
酵素:トリプシン
固定修飾:カルバミドメチル(C)
可変修飾:酸化(M、アセチル(N末端、Pyro-glu(N末端 Q)
質量値:モノアイソトピック
タンパク質質量:無制限
ペプチド質量許容差:±10 ppm(Orbitrap);±2.0 Da(LTQ)
断片質量許容差:±0.5 Da(LTQ)
最大誤切断:1
【0106】
MASCOT TMで作成された.DATファイルを用いて、サンプルをScaffold TMアルゴリズム(www.proteomesoftware.com)で処理した。LTQデータのパラメータには、タンパク質レベルで最低95%および対応するペプチドレベルで50〜80%の確率でタンパク質1つあたり最低3つのペプチドマッチが必要である。QTOF/Orbitrapデータには、該機器の卓越した質量精度により同じ最低確率閾値を有する最低2つのペプチドが必要である。
【0107】
注:これらの各方法の詳細なプロトコルは、http://www.prsproteomics.comの技術情報セクションに見られ得る。
注:SK-BR-3は、ジョージア大学、プロテオミクスリソース施設で行なわれたLC/MS/MSを用いて外注された。
【0108】
結果:
上清みクロマトグラフィーにより収集された、画分および市販のタンパク質の化学忌避活性を図7〜39に示す。
【0109】
LC/MS/MS(質量分析)によって化学忌避上清み画分中で同定されたタンパク質を以下の表に示す。
【0110】

【0111】



















【0112】



【0113】

【0114】



【0115】

【0116】



【0117】



【0118】

【0119】
図に示すように、以下のタンパク質:
アクチン、14-3-3ζ/δ、アポリポタンパク質A1、ヘモペキシン、PARK7、コフィリン-1、14-3-3ε、14-3-3-γ、ホスホセリンホスファターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、プロフィリン-1、β-2ミクログロブリン、シトクロームc、シスタチンB、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)、FK506結合タンパク質、チオレドキシン、ガレクチン3、ヒトトランスフェリン、ヒトEF-1-ガンマおよびヒトガレクチン3結合タンパク質は、細胞株由来の上清の化学忌避因子画分中で同定され、および/または卵巣嚢胞液は好中球の負の走化性を誘導することが示された。
【0120】
化学忌避因子上清画分中でプロフィリン-1を同定した。図に示すように、プロフィリン-2は、負の走化性を誘導することが示された。
【0121】
実施例3:多数の化学忌避因子画分中で同定された化学忌避タンパク質
表10には、少なくとも2種類の細胞の化学忌避因子画分または細胞株および卵巣嚢胞液から単離され(「X」で示す)、精製形態の好中球(実施例1および2に記載)の化学忌避を誘導することが示されたタンパク質が示される。例えば、SF-539細胞の上清および卵巣嚢胞液試料(実施例1に記載)から単離された化学忌避因子画分中で、アクチンを同定した。
【0122】

【0123】
表11には、少なくとも2種類の細胞株または少なくとも1種類の細胞株および卵巣嚢胞液の化学忌避画分中で同定されたタンパク質が列挙される。
【0124】

【0125】

【0126】

【0127】

【0128】

【0129】

【0130】

【0131】

【0132】

【0133】
本発明を、その好ましい態様を参照して具体的に示し、記載したが、形態および詳細における種々の変形が、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱せずになされ得ることは、当業者によって理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌細胞から放出される化学忌避因子の活性を阻害する工程を含む、癌細胞への免疫細胞の遊走を誘導する方法。
【請求項2】
化学忌避因子が、腎腺癌細胞、腎癌細胞、グリア芽腫細胞 結腸癌細胞、肝細胞癌細胞、卵巣癌細胞および前立腺癌細胞からなる群より選択されるヒト癌細胞から放出される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
化学忌避因子が卵巣癌嚢胞液から単離されたタンパク質と実質同一性を有し、単離されたタンパク質が免疫細胞の化学忌避を誘導し得る、請求項1記載の方法。
【請求項4】
化学忌避因子が、卵巣癌嚢胞液から単離されたタンパク質と少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項2記載の方法。
【請求項5】
化学忌避因子が、癌細胞培養物の上清みから単離されたタンパク質と実質同一性を有し、癌細胞が、ヒト腎腺癌細胞株、ヒト腎癌細胞株、ヒトグリア芽腫細胞株、ヒト結腸癌細胞株、ヒト肝細胞癌細胞株、ヒト卵巣明細胞癌細胞株およびヒト前立腺癌細胞株からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
化学忌避因子が、該上清みから単離されたタンパク質と少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
ヒト腎腺癌細胞株がACHNである、請求項5記載の方法。
【請求項8】
ヒト腎癌細胞株が786-Oである、請求項5記載の方法。
【請求項9】
ヒトグリア芽腫細胞株がSF539またはU251である、請求項5記載の方法。
【請求項10】
ヒト結腸癌細胞株がHCC-2998である、請求項5記載の方法。
【請求項11】
ヒト肝細胞癌細胞株がHepG2である、請求項5記載の方法。
【請求項12】
ヒト卵巣明細胞癌細胞株がCRL-1978である、請求項5記載の方法。
【請求項13】
ヒト前立腺癌細胞株がPC3である、請求項5記載の方法。
【請求項14】
化学忌避因子が、アクチン、14-3-3ζ/δ、アポリポタンパク質A1、ヘモペキシン、PARK7、コフィリン-1、14-3-3ε、14-3-3-γ、ホスホセリンホスファターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、プロフィリン-2、β-2ミクログロブリン、シトクロムc、シスタチンB、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)、FK506結合タンパク質、チオレドキシン、ガレクチン3、ヒトトランスフェリン、ヒトEF-I-γおよびヒトガレクチン3結合タンパク質からなる群より選択されるタンパク質またはそのいずれかの生物学的活性断片と実質同一性を有する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
少なくとも2つの化学忌避因子タンパク質の活性が抑制される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
化学忌避因子の活性が、化学忌避因子に結合してその活性を阻害する抗体の投与によって、アンチセンス核酸の投与によって、または小分子の投与によって阻害される、請求項1記載の方法。
【請求項17】
癌細胞が、結腸癌細胞、前立腺癌細胞、乳癌細胞、肺癌細胞、皮膚癌細胞、肝臓癌細胞、骨の癌細胞、膵臓癌細胞、卵巣癌細胞、精巣癌細胞、膀胱癌細胞、腎臓癌細胞、脳の癌細胞、神経膠腫細胞、頭部頚部癌細胞からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項18】
癌が卵巣癌細胞であり、化学忌避因子タンパク質が、14-3-3ζ/δ、ヘモペキシン、アクチンおよびアポリポタンパク質A1からなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
癌細胞が腎癌細胞であり、化学忌避因子が、PARK7、コフィリン-1、14-3-3ε、14-3-3γ、ホスホセリンホスファターゼおよびスーパーオキシドジスムターゼからなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項20】
癌細胞が神経膠腫細胞であり、化学忌避因子が、プロフィリン-2、β-2ミクログロブリン、シトクロムC、シスタチンB、マクロファージ遊走阻害因子、FK506結合タンパク質、チオレドキシンおよびガレクチン-3からなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項21】
癌細胞から放出される化学忌避因子の活性を阻害することにより癌細胞への免疫細胞の遊走を誘導する工程を含む癌の治療方法。
【請求項22】
癌が、結腸、前立腺、乳房、肺、皮膚、肝臓、骨、膵臓、卵巣、精巣、膀胱、腎臓、脳、頭部頚部癌からなる群より選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
化学忌避因子の活性が、化学忌避因子の活性を阻害する薬剤の治療有効量の投与によって阻害される、請求項21記載の方法。
【請求項24】
薬剤が、化学忌避因子に結合してその活性を阻害する抗体またはアンチセンス核酸である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
化学忌避因子が、卵巣癌嚢胞液から単離されたタンパク質またはその生物学的活性断片と実質同一性を有し、該単離されたタンパク質またはその断片が免疫細胞の化学忌避を誘導し得る、請求項21記載の方法。
【請求項26】
化学忌避因子が、ヒト腎腺癌細胞株、ヒト腎癌細胞株、ヒトグリア芽腫細胞株、ヒト結腸癌細胞株、ヒト肝細胞癌細胞株、ヒト卵巣明細胞癌細胞株およびヒト前立腺癌細胞株からなる群より選択される細胞株の上清みから単離されたタンパク質、またはその生物学的活性断片と実質同一性を有する、請求項21記載の方法。
【請求項27】
化学忌避因子が、アクチン、14-3-3ζ/δ、アポリポタンパク質A1、ヘモペキシン、PARK7、コフィリン-1、14-3-3ε、14-3-3-γ、ホスホセリンホスファターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、プロフィリン-2、β-2ミクログロブリン、シトクロムc、シスタチンB、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)、FK506結合タンパク質、チオレドキシン、ガレクチン3、ヒトトランスフェリン、ヒトEF-I-γおよびヒトガレクチン3結合タンパク質、またはその生物学的活性断片からなる群より選択される、請求項21記載の方法。
【請求項28】
卵巣癌嚢胞液または癌細胞培養物の上清みから単離されたタンパク質または任意のその生物学的活性断片と実質同一性を有するアミノ酸配列を含む化学忌避因子の有効量を投与する工程を含む、ヒト遊走細胞の負の化学走性を誘導する方法であって、癌細胞が、ヒト腎腺癌細胞株、ヒト腎癌細胞株、ヒトグリア芽腫細胞株、ヒト結腸癌細胞株、ヒト肝細胞癌細胞株、ヒト卵巣明細胞癌細胞株およびヒト前立腺癌細胞株からなる群より選択され、該単離されたタンパク質または断片が免疫細胞の化学忌避を誘導し得る、方法。
【請求項29】
化学忌避因子が卵巣嚢胞液または癌細胞培養物の上清みから単離されたタンパク質と実質同一性を有する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
化学忌避因子が、アクチン、14-3-3ζ/δ、アポリポタンパク質A1、ヘモペキシン、PARK7、コフィリン-1、14-3-3ε、14-3-3-γ、ホスホセリンホスファターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、プロフィリン-2、β-2ミクログロブリン、シトクロムc、シスタチンB、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)、FK506結合タンパク質、チオレドキシン、ガレクチン3、ヒトトランスフェリン、ヒトEF-I-γおよびヒトガレクチン3結合タンパク質、またはそのいずれかの生物学的活性断片からなる群より選択される、請求項28記載の方法。
【請求項31】
ヒト遊走細胞が免疫細胞である、請求項28記載の方法。
【請求項32】
免疫細胞が、リンパ球、単球、好中球、好酸球、肥満細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞およびT細胞からなる群より選択される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
ヒト遊走細胞が内皮細胞、線維芽細胞、幹細胞またはニューロン細胞である、請求項28記載の方法。
【請求項34】
患者に、卵巣癌嚢胞液もしくは癌細胞培養物の上清みから単離されたタンパク質、またはそのいずれかの生物学的活性断片と実質同一性を有するアミノ酸配列を含む化学忌避因子の治療有効量を投与する工程を含む、免疫細胞の化学走性誘導の阻害を必要とする患者において免疫細胞の化学走性誘導を阻害する方法であって、癌細胞が、ヒト腎腺癌細胞株、ヒト腎癌細胞株、ヒトグリア芽腫細胞株、ヒト結腸癌細胞株、ヒト肝細胞癌細胞株、ヒト卵巣明細胞癌細胞株およびヒト前立腺癌細胞株からなる群より選択され、該単離されたタンパク質またはその断片が免疫細胞の化学忌避を誘導し得る、方法。
【請求項35】
化学忌避因子が、アクチン、14-3-3ζ/δ、アポリポタンパク質A1、ヘモペキシン、PARK7、コフィリン-1、14-3-3ε、14-3-3-γ、ホスホセリンホスファターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、プロフィリン-2、β-2ミクログロブリン、シトクロムc、シスタチンB、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)、FK506結合タンパク質、チオレドキシン、ガレクチン3、ヒトトランスフェリン、ヒトEF-I-γおよびヒトガレクチン3結合タンパク質、またはそのいずれかの生物学的活性断片からなる群より選択される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
患者が炎症状態に苦しんでいる、請求項34記載の方法。
【請求項37】
患者が癌または腫瘍に苦しんでおり、新脈管形成が阻害される、請求項34記載の方法。
【請求項38】
医療用埋没物への化学走性が阻害される、請求項34記載の方法。
【請求項39】
移植組織(transplant)または移植片への化学走性が阻害される、請求項34記載の方法。
【請求項40】
化学忌避因子が局所投与される、請求項34記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公表番号】特表2012−504650(P2012−504650A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530262(P2011−530262)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/059337
【国際公開番号】WO2010/040029
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(509095606)セルタクシス,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】