説明

免疫複合体関連疾患を処置するための方法および組成物

【課題】本発明は、免疫複合体関連疾患(ICAD)を有するか発症させる危険性のある患者の処置のための方法および組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、クロマチン含有免疫複合体が、両方の細胞型において、Toll様レセプター(TLR)に関連する二重のレセプター結合プロセスにより自己反応性B細胞および樹状細胞を活性化するという知見に基づく。ICADを処置する方法は、1)TLRの形成および/もしくはTLRへの結合のいずれかを防ぐことにより免疫複合体の形成を阻害する、または2)TLRへの自己抗原含有免疫複合体の結合に干渉する、または3)免疫複合体もしくは非複合体化自己抗原を介する、BCRおよびTLR(B細胞において)もしくはFcRおよびTLR(樹状細胞において)の二重の結合により開始されるシグナル伝達経路を阻害する、化合物を、それを必要とする個体に投与する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、国立衛生研究所により授与された契約番号R01 AR−35230および
K08 DK−02597の下で政府支援を用いてなされた。政府は、本発明における特
定の権利を有する。
【0002】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、免疫複合体関連疾患(好ましくは、全身性エリテマトーデス(SLE))お
よび異常なToll様レセプター(TLR)/B細胞レセプター(BCR)二重結合(B
細胞において)またはTLR/Fcγレセプター二重結合(樹状細胞および/またはマク
ロファージにおいて)を有する被験体に関連する他の全身性自己免疫疾患を処置する方法
および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
自己免疫疾患は、非常に一般的であるが、理解が乏しい疾患群であり、この疾患群にお
いて、個体の免疫系は、1)自己抗原を外来として認識し始め、そしてそのような抗原を
発現する組織を破壊し始め、それにより疾患を引き起こすか、または2)これらの抗原と
免疫複合体を形成し、次いでそれが組織に沈着し、そして炎症性病理を引き起こすかのい
ずれかである。このような自己免疫疾患としては、例えば、糖尿病(ここで、免疫系は、
インスリン産生膵島細胞に対し、そしてこれを破壊する);多発性硬化症(ここで、標的
抗原は、運動ニューロンの機能の破壊を導くミエリン鞘保護ニューロンである);乾癬(
ここで、免疫系の標的は、皮膚である);慢性関節リウマチ(ここで、標的組織は、軟骨
である);および全身性エリテマトーデス(SLE)(これは、その標的抗原自体は、完
全に一致しかつ特徴的であるが、見かけ上特異性も選択性も示すことなく種々の組織を標
的化するものとして生じる)が挙げられる。自己免疫疾患の発症を導く機構が、一般的に
、ほとんど未知であるので、これらの処置は、しばしば、一般的に免疫系を抑制すること
に向けられる。このような一般的な免疫抑制治療は、しばしば、種々の所望されない副作
用(癌、不妊症、ならびにウイルス、真菌、酵母、および細菌よる感染に対する増加した
感受性が挙げられる)を引き起こす。従って、自己免疫疾患の処置のためのより特定の治
療の開発を可能にするために、免疫系を自己抗原に対して指向させる機構を理解すること
が所望される。
【0004】
理解が乏しい自己免疫疾患の一例は、一般に、狼瘡としてしられている全身性エリテマ
トーデス(SLE)である。SLEは、抗核抗体の産生、循環性免疫複合体の産生、およ
び補体系の活性化を生じる免疫系の調節不全により特徴付けられる。免疫複合体は、組織
および関節中で蓄積して、組織および関節の両方に対する炎症および分解を引き起こす。
用語「全身性」は、正しくは、この疾患が身体全体およびほとんどの器官の系統に影響す
ることを示すが、この疾患は、大抵、炎症、および結果として生じる関節、皮膚、腎臓、
脳、体腔における膜、肺、心臓、および胃腸管に対する損傷を伴う。SLEを有する個体
は、しばしば、予想外の急性発症または「アウトブレーク」および等しく予想外の寛解を
経験する。この疾患の病理の顕著な特徴は、皮膚表面の発疹または変化に似た、再発する
、広範で、かつ多様な血管病変である。
【0005】
合衆国におけるSLEの有病率は、いくつかの議論の争点である。有病率の見積もりは
、250,000〜2,000,000人の範囲である。非常に高年および非常に若年の
両方において報告されているが、この疾患は、主に、妊娠可能年齢の女性に発症する。子
供において、SLEは、女性において、男性より3倍一般的である。思春期から30〜4
0歳の間にこの疾患の発症を経験したSLE患者の60%において、女性:男性比は、9
:1である。その後、この女性優性は、再び、思春期前の子供において観察される女性優
性(すなわち、3:1)になる。さらに、この疾患は、アフリカ人起源およびアジア人起
源の人において、白色人種起源の人においてよりも3倍一般的である。
【0006】
SLEの病因は、未知のままである。遺伝的素因、性ホルモンの全身性増殖、および種
々の環境要因(例えば、ウイルス感染)が、この疾患を典型的に表す異常な免疫応答の誘
発において役割を果たすことが示唆されている。遺伝の役割が、SLEの患者における2
つの組織適合性抗原(HLA−DR2およびHLA−DR3)の増加した%によって示唆
されている。さらに、罹患した個体において拡張されたハプロタイプHLA−A1、HL
A−B8およびHLA−DR3の頻度が増加する。遺伝の役割は、一卵性双生児の中での
この疾患についての一致によってさらに支持される。しかし、この遺伝的素因の遺伝的特
性および環境因子の寄与は、まさに中程度であり、一致率により示唆され、25%〜60
%の間であると報告されている。
【0007】
SLEの正確な発症要因は未知である。しかし、この疾患の臨床的症状発現のほとんど
が、自己抗体産生および引き続く病原性免疫複合体の形成により直接的または間接的のい
ずれかで引き起こされることが一般に受け入れられている。調節不全Bリンパ球により産
生された、これらの自己抗体は、別個の核自己抗原(なかでも、DNA、ヌクレオソーム
、およびサブヌクレオソーム)を認識する明確な特異性を有する。特定のRNA/タンパ
ク質複合体(Sm抗原および核内低分子リボ核タンパク質(snRNP)が挙げられる)
は、さらなる特徴的な自己抗原性特異性を有する。病原性免疫複合体は、自己抗体の、そ
れぞれのそれらの核自己抗原への結合により形成される。
【0008】
SLEにおける自己抗体は、しばしば、それらのそれぞれの自己抗原に結合された免疫
複合体(IC)として循環する。クロマチンまたはクロマチンフラグメント(例えば、D
NA、ヌクレオソームまたはサブヌクレオソーム粒子)は、マウスおよびヒトの両方にお
いて特に一般的な自己抗原特異性を有する(Tan、E.Adv.Immunol.44
44、93−151(1989);MonestierおよびNovick、Mol.I
mmunol.33:89−99.、1996)。
【0009】
従って、SLEの処置における主要な目的は、機能不全Bリンパ球を抑制し、それによ
り自己抗体の産生を減少させる試み、または一旦、免疫複合体が形成された後、それらの
病原性を排除する試みのいずれかである。現在、これらの目的は、コルチゾン、アザチオ
プリン、ヒドロキシクロロキンおよびシクロホスファミドのような薬物を用いる集中的な
免疫抑制剤治療の使用によってのみ、しばしば不完全に、達成され得る。これらの治療は
、多くの重篤かつ所望されない副作用(感染、不妊症、網膜症、および癌が挙げられる)
に関連する。従って、SLE、および他の自己免疫疾患についての新規の処置が所望され
る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
(発明の要旨)
従って、本発明の目的は、自己免疫複合体関連疾患(ICAD)(例えば、SLE、慢
性関節リウマチ、およびC型肝炎関連免疫複合体疾患(例えば、クリオグロブリン血症)
)を有するか、またはICADを発症する危険性のある被験体における、ICADを処置
する方法および組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、クロマチン含有免疫複合体が、二重レセプター結合プロセスにより自己
反応性B細胞および樹状細胞を、活性化することを発見した。両方の細胞型において、T
oll様レセプター(TLR)が、関連する。TLR9(細胞質コンパートメント内に位
置する)は、細胞活性化のために必要とされる必須の第二のレセプターである。B細胞の
場合、その細胞表面上に位置するB細胞抗原レセプターは、細胞活性化のために必要とさ
れる必須の第一のレセプターである。樹状細胞の場合、細胞表面上に位置する刺激性Fc
γレセプターは、細胞活性化のために必要とされる必須の第二のレセプターである。本発
明者らは、1)形成を防ぎそして/もしくはToll様レセプター(TLR)への結合す
ることのいずれかによって免疫複合体(すなわち、自己抗体および核自己抗体)の形成を
阻害するか、2)自己抗原含有免疫複合体(もしくはその抗原性成分)のTLRへの結合
に干渉するか、または3)免疫複合体化自己抗原または非複合体化自己抗原を介してBC
RおよびTLR(B細胞において)もしくはFcRおよびTLR(樹状細胞において)の
二重結合により開始されるシグナル伝達経路を阻害するかのいずれかの化合物を、それを
必要とする個体に投与することによりICADを処置する方法を見出した。この化合物は
、薬学的に需要可能なキャリア中で投与される。
【0012】
好ましくは、ICADはSLE、慢性関節リウマチまたはC型肝炎関連免疫複合体疾患
(例えば、クリオグロブリン血症)である。他の実施形態において、ICADは、臓器移
植後の宿主における免疫反応に関連する。
【0013】
理論に束縛されるように作用しないが、本発明者らは、自己抗原(例えば、クロマチン
)を含む免疫複合体(IC)(しかし、外部抗原を含むICではない)が、自己反応性B
細胞を活性化し得、そしてこの活性化は、自己抗原含有ICが、B細胞におけるB細胞レ
セプター(BCR)または樹状細胞におけるFcγRのいずれかと、第二のレセプター(
Toll様レセプター)とを連続的に結合する能力に完全に依存すると考える。この知見
は、先天免疫系および適応性免疫系間の新規の連結を確立し、そしてそれによりタンパク
質/核酸自己抗原に特異的な自己反応性B細胞または樹状細胞が活性化される一般的な機
構を示唆する。
【0014】
本発明の1つの局面に従い、ICADを有する個体を同定する工程、そして自己抗原ま
たは自己抗原/免疫複合体が活性化B細胞または樹状細胞を形成および/または活性化す
ることを阻害し得る有効量の化合物を投与する工程による、ICADを有するか、または
ICADについての危険性のある患者を処置するための方法が提供される。
【0015】
ICADまたは全身性自己免疫疾患の危険性のある人とは、ICADまたは全身性自己
免疫疾患を有する少なくとも親、祖父母、または兄弟を有する個体である。
【0016】
この化合物は、免疫複合体の成分を結合し、そしてその形成を防ぐかまたは自己抗原が
Toll様レセプター(TLR)を活性化するのを防ぐかのいずれかの化合物からなる群
より選択される。このような化合物としては、Toll様レセプターデコイ、MyD88
の活性を阻害する化合物、免疫複合体成分の産生を阻害する化合物(例えば、アンチセン
スヌクレオチド)、ドミナントネガティブTLR、Toll様レセプターアンタゴニスト
、およびTLRへの免疫複合体または自己抗原の相互作用または結合により活性化される
シグナル伝達経路を阻害する化合物が挙げられる。好ましくは、この化合物は、Toll
様レセプターTLR2、TLR3、およびTLR9またはその機能的ドメインを結合し、
そして/またはこれらの機能を阻害する。より好ましくは、このTLRは、TLR3もし
くはTLR9またはそれらの機能的フラグメントである。
【0017】
免疫複合体の成分を結合し、そしてその形成を阻害するかまたはToll様レセプター
への複合体の結合体を防ぐ化合物、およびMyD88シグナル伝達を阻害する化合物とし
ては、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、野生型TLR活性をブロックし得
るかまたはTLR媒介シグナル伝達カスケードの成分をブロックし得るドミナントネガテ
ィブタンパク質、阻害性オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)(例えば、S−ODN
2088)(Lenartら、Antisense Nucleic Acid Dru
g Dev.4、247−256(2001))、アンチセンスヌクレオチド(RNAお
よび改変ヌクレオチドを含む)、または他の経路特異的キナーゼインヒビターが挙げられ
る。この化合物は、クロロキン以外の化合物である。
【0018】
1つの実施形態において、本発明は、免疫複合体の形成またはToll様レセプターへ
の結合を阻害し、そして/またはB細胞/樹状細胞活性化を阻害する化合物または薬剤を
スクリーニングする方法を提供する。これらの方法は、免疫複合体成分と、試験薬剤と接
触させる工程、およびB細胞または樹状細胞の活性化および/もしくは増殖ならびに/ま
たはToll様レセプターへのこの複合体の結合を測定する工程を包含する。
【0019】
他の実施形態において、ICADを診断する方法が提供される。この方法は、ICAD
を有する疑いのある個体のIgGを含む生物学的サンプルを取り出す工程、この生物学的
サンプルを、RF+ B細胞または樹状細胞と共にインキュベートする工程、およびRF
+ B細胞または樹状細胞の活性化を測定する工程を包含し、ここで、ICADを有する
疑いのある個体由来の生物学的サンプルに曝されたRF+ B細胞または樹状細胞培養物
における活性の、コントロールの個体由来のIgGを含む生物学的サンプルに曝されたR
F+ B細胞または樹状細胞と比較した変化は、ICADの指標である。好ましくは、こ
の変化は、活性の増加である。B細胞の活性化が、例えば、同時刺激分子(例えば、CD
80およびCD86)の増殖またはアップレギュレーション、ならびにMHCクラスII
分子のアップレギュレーションを測定することにより測定され得る。樹状細胞の活性化は
、同時刺激分子の発現、サイトカイン(例えば、TNF−α)の産生、または樹状細胞表
現型の変化を測定することにより評価され得る。
【0020】
なお別の実施形態において、本発明は、化合物または薬剤のICADの処置におけるそ
の有効性について評価するためのインビボモデル系を提供する。このモデル系は、ICA
Dモデル動物(マウスモデルおよびラットモデルを含む)に試験薬剤を投与する工程、お
よびこのような動物におけるB細胞または樹状細胞の活性化および/もしくは増殖ならび
に/またはToll様レセプターへのこの複合体の結合を測定する工程を包含し、ここで
、減少した活性化は、ICADを処置し得る薬剤の指標である。あるいは、実施者は、T
oll様レセプターを発現する細胞株を用い得、そしてそのようなレセプターを調節、好
ましくは阻害またはブロックする化合物をスクリーニングし得る。したがって、本発明は、以下を提供する。
(1)免疫複合体関連疾患(ICAD)もしくは全身性自己免疫疾患を有するか、またはICA
Dもしくは全身性自己免疫疾患の危険性がある患者を処置する方法であって、該方法は、
該免疫複合体または自己抗原の、Toll様レセプターへの結合または該Toll様レセ
プターの活性化を阻害する有効量の化合物を、該患者に投与する工程を包含し、ここで、
該免疫複合体は、自己抗体および細胞レセプターに結合される自己抗原を含む、方法。
(2)前記ICADが、全身性エリテマトーデスである、項目1に記載の方法。
(3)前記ICADが、慢性関節リウマチである、項目1に記載の方法。
(4)前記ICADが、C型肝炎関連免疫複合体疾患である、項目1に記載の方法。
(5)前記Toll様レセプターが、Toll様レセプター9である、項目1に記載の方法。
(6)前記Toll様レセプターが、Toll様レセプター3である、項目1に記載の方法。
(7)項目1に記載の方法であって、ここで、前記化合物が、以下からなる群より選択される
、方法:
(a)前記免疫複合体の成分に結合し、そしてその形成または前記Toll様レセプター
への結合を防ぐ化合物;
(b)Toll様レセプターデコイ;
(c)MyD88またはTLRにより開始されるシグナル伝達カスケードの他の成分の活
性を阻害する化合物;
(d)免疫複合体成分の産生を阻害する化合物;および
(e)Toll様レセプターアンタゴニスト。
(8)前記化合物が、Toll様レセプターに結合する抗体である、項目1に記載の方法。
(9)前記抗体が、単鎖抗体である、項目8に記載の方法。
(10)Toll様レセプター2、Toll様レセプター3、およびToll様レセプター9のう
ち少なくとも2つの組み合わせに対する結合を阻害する化合物のカクテルが用いられる、
項目7に記載の方法。
(11)前記Toll様レセプターアンタゴニストが、阻害性オリゴヌクレオチドである、項目
7に記載の方法。
(12)前記Toll様レセプターアンタゴニストが、ドミナントネガティブToll様レセプタ
ーである、項目7に記載の方法。
(13)免疫複合体の形成またはToll様レセプターへの結合を阻害する化合物をスクリーニン
グする方法であって、該方法は、免疫複合体成分を、該スクリーニングされる化合物と接
触させる工程、ならびにB細胞の活性化および/もしくは増殖ならびに/またはToll
様レセプターへの免疫複合体の抗原性フラグメントの結合を測定する工程を包含し、ここ
で、該免疫複合体は、自己抗体および自己抗原を含む、方法。
(14)免疫複合体の形成またはToll様レセプターへの結合を阻害する化合物をスクリーニン
グする方法であって、該方法は、免疫複合体成分を、該スクリーニングされる化合物と接
触させる工程、ならびに樹状細胞の活性化および/またはToll様レセプターへの免疫
複合体の抗原性フラグメントの結合および/または細胞形態を測定する工程を包含し、こ
こで、該免疫複合体は、自己抗体ならびに自己抗原を含む、方法。
(15)免疫複合体関連疾患(IDAC)もしくは全身性自己免疫疾患を有するか、またはICD
Aもしくは全身性自己免疫疾患の危険性のある患者を処置するために、前記免疫複合体ま
たは自己抗原の、Toll様レセプターへの結合またはToll様レセプターの活性化を
阻害する化合物の使用であって、ここで、該免疫複合体は、自己抗体および細胞レセプタ
ーに結合される自己抗原を含む、使用。
(16)項目15に記載の化合物であって、ここで、前記化合物が、以下からなる群より選択さ
れる、化合物:
(a)前記免疫複合体の成分を結合し、そしてその形成または前記Toll様レセプター
への結合を防ぐ化合物;
(b)Toll様レセプターデコイ;
(c)MyD88またはTLRにより開始されるシグナル伝達カスケードのほかの成分の
活性を阻害する化合物;
(d)免疫複合体成分の産生を阻害する化合物;および
(e)Toll様レセプターアンタゴニスト。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本明細書中に組みこまれ、そして本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の実
施形態を図示し、詳細な説明と共に、本発明の目的、利益、および原理を説明し、例示す
るために用いられる。
【図1】図1は、AM14 RF+B細胞の抗ヌクレオソーム抗体(PL2−3)刺激が、DNase感受性であることを示す。IgG2a抗ヌクレオソーム抗体は、培地中のB細胞から放出されたクロマチンに結合し、そのIgG2a特異的抗原レセプターを介してB細胞に認識される、免疫複合体を形成する。AM14 RF+脾臓細胞を、ヤギ抗マウスIgM F(ab’)、PL2−3(IgG2a抗ヌクレオソームmAb)、またはLPSの添加前に、15分間、種々の濃度のDNase I(0μg/ml、5μg/ml、15μg/ml、または50μg/ml)と共にプレインキュベートした。結果を、DNaseの非存在下における、各リガンドに対する最大応答のパーセントとして示す。
【図2a】図2は、抗TNP/TNP−BSA ICが、AM14 RF+B細胞の増殖を効果的に刺激できなかったことを示す。抗TNP mAbs Hyl.2(IgG2a)およびC4010(IgG2a)を、種々の濃度のTNP−BSA[50μg/ml(丸)、12.5μg/ml(四角)、3.1μg/ml(上向き三角)]と混合し、それぞれ、1:1、4:1、および16:1の抗体/タンパク質比を有するICを形成した。図2aにおいて、IC形成を、複合体化されていない抗体(下向き三角)に対するC1q結合活性のシフトによって確認した。
【図2b】図2は、抗TNP/TNP−BSA ICが、AM14 RF+B細胞の増殖を効果的に刺激できなかったことを示す。抗TNP mAbs Hyl.2(IgG2a)およびC4010(IgG2a)を、種々の濃度のTNP−BSA[50μg/ml(丸)、12.5μg/ml(四角)、3.1μg/ml(上向き三角)]と混合し、それぞれ、1:1、4:1、および16:1の抗体/タンパク質比を有するICを形成した。図2bにおいて、RF+B細胞増殖を刺激するための、上記の抗TNP/TNP−BSA ICの能力を、抗ヌクレオソームmAb PR1−3、非複合体化Hy1.2、C4010、または50μg/ml TNP−BSAによって誘導される刺激と比較した。
【図3】図3は、RF+B細胞の自己抗体/自己抗原−IC刺激が、補体レセプター依存性ではないことを示す。各2匹のWTコントロールマウス(灰色)、RF+CR+/+マウス(白色)、およびRF+CR−/−マウス(網掛け)由来の脾臓細胞を、ヤギ抗マウスIgM F(ab’)、CpG S−ODN 1826、抗ヌクレオソームmAbであるPR1−3(IgG2a)、PL2−3(IgG2a)、PL2−8(IgG2b)、またはそれぞれの自己免疫マウス(lpr/gldおよびgld)由来の3%血清で刺激した。
【図4a】図4a〜4cは、RF+B細胞の自己Ab/自己Ag−IC刺激が、MyD88依存性であることを示す。図4aにおいて、野生型(WT)およびRF+MyD88−/−マウス由来のT−枯渇脾臓細胞を、B220およびイディオタイプ特異的抗体である4G7で染色した。
【図4b】図4a〜4cは、RF+B細胞の自己Ab/自己Ag−IC刺激が、MyD88依存性であることを示す。図4bにおいて、MyD88 WTまたはノックアウトマウスをPCRによって同定した。
【図4c】図4a〜4cは、RF+B細胞の自己Ab/自己Ag−IC刺激が、MyD88依存性であることを示す。図4cにおいて、各2匹のWT(灰色)、RF+MyD88+/+(白色)、RF+MyD88−/−(網掛け)マウス由来の脾臓細胞を、抗IgM F(ab’)、CpG S−ODN 1826、LPS、抗ヌクレオソームmAbであるPR1−3、PL2−3、PL2−8、または3% lpr/gld血清で刺激した。抗IgM刺激培養物についての総cpmは、83,414/39,049(WT);93,126/61,315(RF+MyD88+/+);および39,826/57,484(RF+MyD88−/−)であった。結果を、抗IgM応答のパーセントとして示し、これらの結果は、4つの別々の実験を示す。
【図5】図5a〜5cは、RF+B細胞の自己Ab/自己Ag−IC刺激が、TLR9シグナル伝達経路のインヒビターによってブロックされ得ることを示す。図5aにおいて、RF+B細胞を、1μg/mlまたは2μg/mlのクロロキンで15分間プレインキュベートするか(a)、コンカナマイシンBで2時間プレインキュベートするか(b)、または阻害性CpG S−ODN 2088と共に(30分間)プレインキュベートし(c)、その後刺激性リガンドである抗IgM F(ab’)、5〜50μg/ml PL2−3、0.3〜2.0μg/ml CpG S−ODN 1826、LPS、リポペプチド、もしくはポリン(porin)Bを添加した。図5Bにおいて、RF+B細胞を、刺激性リガンドの添加前に、12μg/mlのCpG S−ODN 2088と共に30分間プレインキュベートした。結果を、インヒビターの非存在下における抗IgM応答のパーセントとして示す。(図5a)および(図5c)中のデータは、2〜4回の実験を示し、一方(図5b)のデータは、2回の実験の平均値である。
【図6】図6A〜Bは、MyD88欠損(MyD88−/−)Fas充足マウスを、MyD88−充足(MyD88+/+)Fas−欠損(lprlpr)自己免疫マウスと交配して、MyD88−/− lpr/lprマウスおよび適切なコントロール群を作成した実験の結果を示す。同一年齢のMyD88+/+ lprlpr(図6A)およびMyD88−/−lpr/lpr(図6B)の同腹子(12〜13週齢)の血清中の抗核抗体(ANA)を、以前に記載されたように(Rifkinら、Journal of Immunology.161:5164−5170、1998)、基質としてHEp−2細胞を使用して間接的な免疫蛍光によって検出した。罹患した自己免疫MRL−lpr/lprマウス由来の血清をポジティブコントロールとして利用し、そして非自己免疫BALB/cマウス由来の血清をネガティブコントロールとして利用した。このインビボ実験は、標準マウス株および広範に使用された狼瘡マウス株において、抗体産生が、MyD88を介するシグナル伝達を必要とすることを示す。このことは、TLR活性化が、このモデルにおいて狼瘡の発症のために必要であることを強く示唆する。
【図7】図7A〜7Bは、B細胞が、TLR9を介して活性化され得ること、およびこの活性化がODN2088でのTLR9阻害によってブロックされ得ることを示す。B細胞は、MRL+/+マウスの脾臓から精製され、そして種々の用量のODN2088(TLR9を介するシグナル伝達を特異的にブロックする阻害オリゴデオキシヌクレオチド)と共に30分間プレインキュベートされるかまたはプレインキュベートされないかのいずれかであった。次いで、抗IgM F(ab’)(抗−IgM)(B細胞レセプターを介して活性化する(7A))または刺激性ODN1826(TLR9を介して特異的に活性化する(7B))を、培養物に添加した。20〜24時間後、[H]チミジンを培養物に加え、さらに14〜18時間後、増殖を、LKB Wallac 1212 Rackbeta計数器を使用してチミジン取りこみを測定することによって決定した。TLR9を介する刺激のみがODN2088によってブロックされ、このことは阻害効果(B細胞レセプター架橋によって誘導された刺激が阻害されないこと)の特異性を示している。
【図8A】図8A〜8Cは、TLR9を介して特異的に活性化され得る樹状細胞およびこの活性化が、ODN2088でのTLR9阻害によってブロックされ得ることを示す。
【図8B】図8A〜8Cは、TLR9を介して特異的に活性化され得る樹状細胞およびこの活性化が、ODN2088でのTLR9阻害によってブロックされ得ることを示す。
【図8C】図8A〜8Cは、TLR9を介して特異的に活性化され得る樹状細胞およびこの活性化が、ODN2088でのTLR9阻害によってブロックされ得ることを示す。
【図9】図9は、クロマチン含有免疫複合体媒介性B細胞増殖に対するODN2088の阻害効果が持続性であることを示す。B細胞は、MRL+/+マウスの脾臓から精製され、12μg/mlのODN2088と共に16〜20時間、プレインキュベートされるかまたはプレインキュベートされないかのいずれかであった。このプレインキュベーション後、この細胞を洗浄し、培養物からODN2088を除去し、次いで、このB細胞を培地のみでかまたは12μg/mlの新たなODN2088と共にかのいずれかで培養した。30分後、抗クロマチンモノクローナル抗体PL2−3(50μg/ml)またはLPS(10μg/ml)を培養物に加えた。20〜24時間後、[H]チミジンを培養物に加え、さらに14〜18時間後、増殖を、LKB Wallac 1212 Rackbeta計数器を使用してチミジン取りこみを測定することによって決定した。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の他の局面を、以下に開示する。
【0023】
(発明の詳細な説明)
本発明は、免疫複合体関連疾患(ICAD)を有するかまたはICADの危険性のある
被験体において、ICADを処置および/または予防するための方法および組成物を提供
する。
【0024】
本発明の目的のために、用語「免疫複合体関連疾患」すなわち「ICAD」としては、
以下が挙げられるが、これらに限定されない疾患をいう:全身性エリテマトーデス(SL
E)および関連する結合組織疾患、慢性関節リウマチ、C型肝炎およびB型肝炎関連免疫
複合体疾患(例えば、クリオグロブリン血症)、ベーチェット病(Behcets di
sease)、自己免疫糸球体腎炎(autoimmune glomerulonep
hritides)、ならびにLDL/抗LDL免疫複具体の存在と関連する血管症。
【0025】
本発明者らは、自己抗原(例えば、クロマチン)を含有する免疫複合体(IC)は、自
己反応性B細胞を活性化し得るが、外来性抗原を含有するICは、自己反応性細胞を活性
化し得ないこと、ならびにこの活性化は、自己抗原含有ICが、B細胞レセプターおよび
第2のレセプターであるToll様レセプターの両方に連続的に結合する能力に依存する
ことを発見した。この知見は、先天性の免疫系および順応性の免疫系と、その結果として
の一般機構との間の新規の関係を確立し、この一般機構によってタンパク質/核酸自己抗
原に特異的な自己反応性B細胞が活性化される。
【0026】
Toll様レセプター(TLR)は、膜結合レセプタータンパク質のファミリーであり
、先天性の免疫応答に強く関与し、そして微生物に独特のものであると思われる病原体関
連の分子パターンまたは決定因子を認識し、これらの微生物粒子の供給源に対する免疫細
胞の活性化に関与する。
【0027】
レセプターのToll様ファミリーは、その細胞外ドメイン中にロイシンリッチリピー
トを有し、かつその細胞質ドメイン中にToll/IL−1レセプターホモロジードメイ
ンを有する。このTollファミリーは、進化において著しく保存される。発見された第
1のメンバーは、toll遺伝子の産物であり、この産物は、ショウジョウバエDros
ophila melanogasterの初期発生における背側−腹側極性の特異化を
担う、シグナル伝達経路の一部である。
【0028】
現在10個の哺乳動物ホモログが同定されており、TLR1〜TLR10と呼ばれてい
る。IL−1レセプターとTLRとの両方は、類似の下流効果(例えば、免疫応答遺伝子
の活性化)を共有し、そしてこれらのレセプター全てが、アダプタータンパク質MyD8
8を含むシグナル伝達カスケードを介して働く(Mussioら、Science 27
8:1612;Wescheら、Immunity 7:837)。このMyD88は、
骨髄性分化タンパク質として以前に記載されている(Lordら、Oncogene 5
:1095)。一般的には、異なるTLRは、異なる型の微生物粒子によって活性化され
ると考えられる(Hemmiら、Nature 408:740−745(2000);
Underhillら、Nature 402:39−43(1999);Alipra
ntisら、EMBO J.、19:3325−3336(2000))。しかし、微生
物粒子に加えて、哺乳動物TLRはまた、特定の自己(哺乳動物)抗原(特に、細胞死の
結果として細胞から放出される特定の細胞質成分)を認識するという証拠も蓄積されてい
る(Akiraら、Nat Immunol.、2:675−680(2000))。
【0029】
用語「Toll様レセプター」は、本明細書中において、インタクトなToll様レセ
プター(例えば、Online Mendelian Inheritance in
Manに以下のアクセスナンバーで記載されているレセプター:*601194 TOL
L−LIKE RECEPTOR 1、TLR1;*603028 TOLL−LIKE
RECEPTOR 2、TLR2;*603029 TOLL−LIKE RECEP
TOR 3、TLR3;*603030 TOLL−LIKE RECEPTOR 4、
TLR4;*603031 TOLL−LIKE RECEPTOR 5、TLR5;*
605403 TOLL−LIKE RECEPTOR 6、TLR6;*300365
TOLL−LIKE RECEPTOR 7、TLR7;*300366 TOLL−
LIKE RECEPTOR 8、TLR8;*605474 TOLL−LIKE R
ECEPTOR 9、TLR9;および*606270 TOLL−LIKE RECE
PTOR 10、TLR10;またはこれらの機能的フラグメント(例えば、Toll様
レセプターの可溶形態(すなわち、膜結合ドメインが欠失しているかまたは変化されてお
り、いくつかの実施形態において、細胞質ドメインもまた存在しない)あるいはMyD8
8に結合し得るかもしくはMyD88と相互作用し得る、Toll様レセプターまたはT
oll様レセプターのホモログのMyD88結合フラグメントまたはMyD88相互作用
フラグメント)を含むことを意味する。より好ましくは、TLRは、TLR9である。
【0030】
この点に対する本発明者らの実験は、TLR9とクロマチン含有免疫複合体のクロマチ
ン成分との間の相互作用の重要性を同定した。しかし、SLEおよび関連する疾患におい
て、免疫複合体は、通常、自己抗体ならびにSm抗原および核内低分子リボ核タンパク質
(snRNP)を含む別個のRNA/タンパク質抗原複合体によって生じる(Tan、E
.Adv.Immunol.44,93−151(1989))。さらに、免疫複合体関
連疾患(例えば、C型肝炎)において、病原性免疫複合体は、抗体とRNA含有ウイルス
との間に生じる。TLR3は、二本鎖RNAに特異的なレセプターとして同定されている
(Alexopoulou、Nature.413,732−738(2001))。し
たがって、TLR3結合が、これらのRNA含有免疫応答複合体によって惹起される活性
化プロセスにおいて重要であることを予測するのは当然である。
【0031】
好ましくは、TLRは、TLR3もしくはTLR9、あるいはこれらの機能的フラグメ
ントまたはTLR3もしくはTLR9と相同であり、かつMyD88に結合し得るかもし
くは相互作用し得るフラグメントである。
【0032】
本発明に従って有用なToll様レセプターはまた、融合レセプターであり得、ここで
、このToll様レセプターは、Mycタグのような別のタンパク質と融合される。好ま
しいToll様レセプターとしては、Toll様レセプター−2またはToll/インタ
ーロイキン−1レセプター様4(Chaudharyら、Blood 91:4020−
4027,1998)、Toll様レセプター−3(Rockら、Proc.Nat.A
cad.Sci.95:588−593,1998)、およびToll様レセプター−9
(ChuangおよびUlevitch、Europ.Cytokine Netw.1
1:372−378、2000;Duら、Europ.Cytokine Netw.1
1:362−371,2000)またはこれらの機能的フラグメントもしくは(例えば、
MyD88に結合するような)類似の機能を有するホモログが挙げられる。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「処置(treatment)」または「処置(t
reating)」は、以下を含む:(1)これらの疾患に罹りやすいが、これらの疾患
を有しているとまだ診断されていない被験体が、このような疾患を発症するのを予防する
こと;(2)これらの疾患を抑制すること(すなわち、これらの発症をおさえること);
または(3)これらの疾患の症状を回復または軽減させること(すなわち、疾患状態の後
退を引き起こすこと)。
【0034】
これらの化合物は、好ましくは、以下で議論されるインビトロアッセイまたはインビボ
アッセイにおいて、B細胞(BC)または樹状細胞(DC)の活性化を少なくとも約50
%阻害する。より好ましくは、これらの化合物は、Toll様レセプターを介して、75
%、最も好ましくは95%、BCまたはDCの自己抗原性活性化を阻害する。さらなる化
合物が同定され、以下により詳細に議論されるスクリーニングアッセイにおいて試験され
る。
【0035】
本発明に従う有用な化合物は、免疫複合体の成分またはToll様レセプターに結合す
る化合物からなる群から選択される。これらの化合物は、免疫複合体の形成を防ぐか、あ
るいは、免疫複合体の自己抗原もしくは自己抗原性フラグメントがToll様レセプター
(TLR)を活性化するのを防ぐか、または下流分子がToll様レセプターからの(M
yD88を通して媒介されるような)シグナルを伝達するのを防ぐかのいずれかである。
このような化合物としては、Toll様レセプターデコイ、MyD88の活性を阻害する
化合物、免疫複合体成分(例えば、アンチセンスセンスヌクレオチド)の生成を阻害する
化合物、ドミナントネガティブTLR、Toll様レセプターアンタゴニストもしくはT
oll様レセプターブロッカー(例えば、ODN2088またはTLRに対する抗体)、
およびTLRに対する免疫複合体の抗原性フラグメントの相互作用もしくは結合によって
活性化されるシグナル伝達経路を阻害する化合物が挙げられる。好ましくは、この化合物
は、Toll様レセプターであるTLR2、TLR3、およびTLR9またはこれらの機
能的ドメインに結合するかならびに/あるいはToll様レセプターであるTLR2、T
LR3、およびTLR9またはこれらの機能的ドメインの機能を阻害する。より好ましく
は、TLRは、TLR3もしくはTL9またはこれらの機能的フラグメントである。
【0036】
本発明は、免疫複合体(またはこれらの抗原性成分)のTLR(好ましくは、TLR2
、TLR3、TLR9またはこれらの任意の組み合わせであり、最も好ましくは、TLR
3またはTLR9)への結合を阻害する薬剤について薬物またはリード化合物を同定する
ための効率的なスクリーニング法をさらに提供する。これらの方法は、自動化され、費用
効率的なハイスループット薬物スクリーニングになじみ、かつ広範な薬物開発プログラム
における直接の用途を有する。
【0037】
一般的には、これらのスクリーニング方法は、例えば、TLR(好ましくは、TLR2
、TLR3、TLR9またはこれらの任意の組み合わせであり、最も好ましくは、TLR
3またはTLR9)との自己抗原相互作用を調節する化合物についてのアッセイを含む。
さらに、より好ましくは、これらの化合物は、TLR9との相互作用を調節する。結合剤
についての広範な種々のアッセイが提供され、これらには、インビトロ標識化タンパク質
−タンパク質結合アッセイ、免疫アッセイ、細胞ベースのアッセイなどが含まれる。
【0038】
インビトロ結合アッセイは、TLRポリペプチド(好ましくは、TLR2、TLR3、
TLR9またはこれらの任意の組み合わせであり、最も好ましくは、TLR3またはTL
R9、さらにより好ましくは、別のペプチドまたはポリペプチド(例えば、検出または固
着のためのタグなど)との融合産物の一部であり得るTLR9)を含む成分の混合物を使
用する。このアッセイ混合物はまた、天然の細胞内TLR結合標的(例えば、MyD88
)を含み得る。ネイティブな全長結合標的が使用され得るが、アッセイにおいて都合よく
測定可能な対象のMyD88ポリペプチドに対する結合親和性および結合活性を提供する
部分ほどの長さの部分(例えば、ペプチド)を使用することが頻繁に好まれる。このアッ
セイ混合物はまた、候補薬物を含む。候補薬剤は、多くの化学物質のクラスを包含するが
、典型的には、有機化合物であり;好ましくは、小さい有機化合物であって、合成化合物
もしくは天然の化合物のライブラリーを含む広範な種々の供給源から得られる。種々の他
の試薬もまた、混合物中に含まれ得る。塩、緩衝剤、中性タンパク質(例えば、アルブミ
ン)、界面活性剤、プロテアーゼインヒビター、ヌクレアーゼインヒビター、抗菌剤など
を含む試薬が、使用され得る。
【0039】
得られた混合物は、候補薬理学的因子の存在について、TLRポリペプチドが、参照結
合親和性で、細胞結合標的、部分またはアナログに特異的に結合するような条件下で、イ
ンキュベートされる。この混合物の成分は、必要な結合を提供する任意の順序で添加され
得、そしてインキュベーションは、最適な結合を促進する任意の温度で実施され得る。イ
ンキュベーション時間は、同様に、結合を最適化するために選択されるが、また迅速な高
スループットを促進するために最小化される。
【0040】
インキュベーション後、TLRポリペプチドと1以上の結合標的との間の、この因子に
より偏向された結合は、任意の従来方法によって検出される。この因子の存在下での結合
親和性と比較した、この因子の非存在下での、TLRポリペプチドの標的に対する結合親
和性の差異は、この因子が、TLR結合標的に対するTLRポリペプチドの結合を調節す
ることを示す。同様に、以下にまた記載される細胞ベースのアッセイにおいて、因子の存
在下および非存在下でのTLR依存的転写活性化は、この因子が、TLR機能(例えば、
MyD88に対する結合)を調節することを示す。本明細書中で使用される場合、差異と
は、統計的に有意であり、かつ好ましくは、少なくとも50%、より好ましくは少なくと
も75%、なおより好ましくは少なくとも90%の差異を示す。
【0041】
B細胞または樹状細胞の活性化を妨害する能力について、薬学的因子を試験するために
好ましいアッセイは、適切な細胞培養培地中で、試験因子およびTLR刺激因子(例えば
、PR1−3、PR2−3またはCpG S−ODN 1826(例えば、Leadbe
tterら、Nature、416:603−607、2002を参照のこと))と共に
インキュベートされるRF+B細胞または樹状細胞を含む。試験因子とのインキュベーシ
ョンは、刺激因子の添加の前または添加と同時に実施され得る。
【0042】
B細胞の活性化は、当業者に周知の多数の技術を使用して、観察され得る。例えば、
[H]チミジン取り込みアッセイは、B細胞の増殖を測定するために実施され得る。ある
いは、B細胞の活性化は、例えば、CD80、CD86またはMHCクラスII分子の細
胞表面発現を測定するために、蛍光活性化細胞分類(FACS)を使用して分析され得る
。樹状細胞の活性化は、サイトカイン(例えば、TNF−α、インターフェロン−α、I
L−12およびBAFF)または同時刺激分子(例えば、CD80、CD86またはMH
CクラスII分子)の産生を測定することによって、観察され得る(Bancherea
uら、Annu.Rev.Immunol.18:767−811、2000;Mack
ayおよびBrowing、Nat.Rev.Immunol.2:465−475)。
【0043】
あるいは、樹状細胞活性化は、DCにおける形態学的変化を測定することによって観察
され得る(Banchereauら、Annu.Rev.Immunol.18:767
−811、2000)。
【0044】
試験因子の添加後に、例えば同時刺激分子の発現の刺激が減少する場合、この試験因子
は、ICADを処置するための強力な因子とみなされる。発現は、試験因子が添加されて
いない細胞サンプルと比較して、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60
〜75%、最も好ましくは少なくとも約90%減少した場合に、減少したとみなされる。
より詳細な例は、この節の最後の実施例において与えられる。
【0045】
本発明の好ましいアッセイ混合物は、実施例において示される。本発明のアッセイ混合
物はまた、候補薬理学的因子を含む。一般に、複数のアッセイ混合物が、種々の濃度に対
する差示的応答を得るために、異なる候補因子濃度で並行して実施される。代表的には、
これらのアッセイ混合物の1つは、ネガティブコントロール(すなわち、ゼロ濃度または
アッセイ検出の限界未満)として働く。候補因子は、多数の化学物質のクラスを包含する
が、これらは、代表的には、有機化合物であり、そして好ましくは小さい有機化合物であ
る。小さい有機化合物は、適切には、例えば、約50より大きいが約2,500未満の分
子量を有し得る。候補因子は、タンパク質および/またはDNAと相互作用する機能的化
学基を含み得る。
【0046】
候補因子は、合成化合物または天然化合物のライブラリーを含む、広範な種々の供給源
から得られる。例えば、多数の手段が、広範な種々の有機化合物および生体分子(ランダ
ム化オリゴヌクレオチドおよびペプチドの発現を含む)のランダム且つ直接的な合成のた
めに利用可能である。あるいは、細菌、真菌、植物および動物の抽出物の形態での天然化
合物のライブラリーが利用可能であるか、または容易に生成される。ライブラリーは、小
さいポリペプチドから構成され得る(例えば、Lamら、Nature、354:82、
1991およびWO 92/00091;Geysenら、J Immunol Met
h、102:259、1987:Houghtenら、Nature、354:84、1
991およびWO 92/09300、ならびにLeblら、Int J Pept P
rot Res、41、201、1993を参照のこと)。あるいは、小さい非ペプチド
分子のライブラリーは、一般的なテンプレートまたはコア構造に基づき得る(例えば、ベ
ンゾジアゼピンテンプレートについては、EllmanおよびBunin、J Amer
Chem Soc、114:10997、1992を;オキサゾールおよびアミジンテ
ンプレートについては、WO 95/32184を;ジヒドロベンゾピランテンプレート
についてはWO 95/30642を;そしてピロリジンテンプレートについては、WO
95/35278を参照のこと)。
【0047】
さらに、天然および合成的に生成されたライブラリーおよび化合物は、従来の化学的手
段、物理的手段および生化学的手段によって、容易に改変される。さらに、既知の薬理学
的因子は、指向的化学改変またはランダム化学改変(例えば、アシル化、アルキル化、エ
ステル化、アミド化など)に供され得る。
【0048】
免疫複合体の成分を結合し、そして形成またはTLR結合を防止する、抗体およびその
結合フラグメントまたはアプタマー(例えば、SomaLogic Inc.、Boul
der、COから入手可能)もまた、有用である。本発明に従って有用な抗体の例として
は、TLRに対するモノクローナル抗体(例えば、抗TLR3モノクローナル抗体(Ma
tsumotoら、Biochem.Biophys.Res.Commun.、293
:1364−1369、2002)、抗TLR−9(Toll様レセプター9、Imge
nex、San Diego、CA)、またはこれらのヒト化バージョンが挙げられる。
【0049】
用語、ドミナントネガティブなToll様レセプターは、本明細書中で使用する場合、
欠損(例えば、下流のシグナル伝達に必要なドメインの欠失)を有するが、免疫複合体の
抗原性部分を結合し得るように操作された、Toll様レセプターをいう。
【0050】
抗体およびその結合フラグメントは、ポリクローナルまたはモノクローナルのいずれか
であり得るが、好ましくはモノクローナルである。ポリクローナルの場合、これらの抗体
は、抗血清または単一特異的抗体の形態(例えば、精製タンパク質によって動物を免疫す
ることによって生成された、精製抗血清)であり得る。しかし、好ましくは、これらの抗
体は、個体への外来性タンパク質の投与を最小化するために、モノクローナル抗体である
。モノクローナル抗体は、周知のプロトコルに従って調製され得る。例えば、Skare
ら、J.Biol.Chem.268:16302−16308(1993);ならびに
米国特許第4,918,163号および同第5,057,598号(これらは、本明細書
中で参考として援用される)を参照のこと。抗体は、全体、Fab、単鎖、単一ドメイン
重鎖などであり得る。単鎖抗体が好ましい。単鎖結合ポリペプチドの産生のための方法は
、例えば、米国特許第4,946,778号(これは、本明細書中で参考として援用され
る)において詳細に記載される。
【0051】
抗体または他のタンパク質もしくはペプチドが使用される場合、このペプチドは、好ま
しくは、キャリア(例えば、ビオチンまたはポリ(アルキレンオキシド)(poly(a
lkaline oxide)(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))に結合体
化される。ポリマー性物質(例えば、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリサッカ
リド、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドまたは他の類似のポリマー
)が使用され得る。ポリ(アルキレンオキシド)(poly(alkaline oxi
de)としては、モノメトキシポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポ
リエチレングリコールのブロックコポリマーなどが挙げられ得る。ポリ(アルキレンオキ
シド)としては、ポリエチレングリコールが好ましい。これらのポリマーはまた、モノメ
トキシ基の代わりに、C1〜4アルキルで、遠位でキャップされ得る。
【0052】
例えば、インビボ処置のための組成物の成分としての、ヒトへの投与のために、これら
のモノクローナル抗体は、好ましくは、免疫原性を最小化するために実質的にヒト抗体で
あるかまたはヒト化抗体であり、そして実質的に純粋な形態である。「実質的にヒト」は
、この組成物の免疫グロブリン部分が、一般に、少なくとも約70%のヒト抗体配列、好
ましくは少なくとも約80%ヒト抗体配列、そして最も好ましくは少なくとも約90〜9
5%またはそれ以上のヒト抗体配列を含む。
【0053】
治療適用について、これらの化合物は、単独でかまたは薬学的組成物の一部として、被
験体(例えば、哺乳動物(特にヒト))に適切に投与され得、この組成物は、この化合物
を、1種以上の薬学的に受容可能なキャリアと共に、そして必要に応じて他の治療成分と
共に含む。キャリアは、処方物中の他の成分と適合性であり、そしてそのレシピエントに
対して有害ではないという意味で、「受容可能」でなければならない。
【0054】
本発明の薬学的組成物としては、経口投与、直腸投与、鼻腔投与、局所投与(頬および
舌下を含む)、膣投与、非経口投与(皮下、筋内、静脈内および皮内を含む)、点眼薬を
使用する眼投与、エアロゾル化(aerosolubilize)または噴霧された薬物
を使用する経肺投与に適切な組成物が挙げられる。この処方物は、簡便には、単位投薬形
態(例えば、錠剤および徐放性カプセル)で、およびリポソーム中に提示され得、そして
薬学の分野で周知の任意の方法によって調製され得る(例えば、Remington:T
he Science and Practice of Pharmacy by A
lfonso R.Gennaro(編)第20版、2000年12月15日、Lipp
incott、Williams & Wilkins;ISBN:068330647
2を参照のこと)。
【0055】
このような調製方法は、投与されるべき分子を、1つ以上の補助成分を構成する成分(
例えば、キャリア)と会合させる工程を包含する。一般に、これらの組成物は、活性成分
を、液体キャリア、リポソームまたは微細に分割された固体キャリア、あるいはこれら両
方と、均一かつ完全に会合させ、次いで必要に応じて、製品を成形することによって、調
製される。
【0056】
経口投与に適切な本発明の組成物は、別個の単位(例えば、カプセル、カシェ剤もしく
は錠剤(各々、所定量の活性成分を含む))として;粉末もしくは顆粒として;水性液体
もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として;または水中油液体エマルジョンもし
くは油中水液体エマルジョンとして;あるいはリポソーム中にパッケージングされて、そ
してボーラスなどとして、提示され得る。
【0057】
錠剤は、必要に応じて1種以上の補助成分と共に、圧縮または成形によって、作製され
得る。圧縮錠剤は、必要に応じて結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、防腐剤、界面活性剤ま
たは分散剤と混合された、自由流動形態(例えば、粉末または顆粒)の活性成分を、適切
な機器において圧縮することによって調製され得る。成形された錠剤は、不活性液体希釈
剤で加湿された粉末化合物の混合物を、適切な機器において成形することによって、作製
され得る。これらの錠剤は、必要に応じて、コーティングされ得るかまたは刻み目を入れ
られ得、そしてこの錠剤中の活性成分の緩徐放出または制御放出を提供するように、処方
され得る。
【0058】
局所投与に適切な組成物としては、風味付けされた基剤(通常、スクロースおよびアカ
シアまたはトラガカント)中に活性成分を含むロゼンジ;および不活性基剤(例えば、ゼ
ラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシア)中に活性成分を含む香錠が
挙げられる。
【0059】
非経口投与に適切な組成物としては、この処方物を、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および
意図されたレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る、水性および非水性の滅菌注
射溶液;ならびに懸濁剤および増粘剤を含み得る、水性および非水性の滅菌注射溶液、が
挙げられる。この処方物は、一回用量容器または複数回用量容器(例えば、密封アンプル
および密封バイアル)で提示され得、そして滅菌液体キャリア(例えば、注射用の水)を
使用直前に添加することのみを必要とする凍結乾燥(freeze dry(lyoph
ilize))条件にて、保存され得る。即席注射溶液および懸濁液は、滅菌の粉末、顆
粒および錠剤から調製され得る。
【0060】
所定の治療において使用される所定の化合物の実際の好ましい量は、利用される特定の
化合物、処方された特定の組成物、適用様式、特定の投与部位、患者の体重、一般的健康
、性別など、処置される特定の適応症など、および所属の医師または獣医師を含む当業者
によって認識される他のこのような因子に従って変動する。所定の投与プロトコルについ
ての最適な投与速度は、従来の投薬量決定試験を使用して、当業者によって容易に決定さ
れ得る。
【0061】
本発明はまた、個体においてICADを診断するための方法を提供する。この方法は、
自己抗原および自己抗体からなる免疫複合体を含む生物学的サンプルによって誘導される
、B細胞または樹状細胞のToll様レセプター媒介性活性化を測定する工程を包含する
。B細胞におけるToll様レセプターの活性化は、例えば、B細胞の増殖、種々の同時
刺激分子(例えば、CD80、CD86)の発現、またはMHCクラスII分子のアップ
レギュレーションを測定することによって、間接的に測定され得る。樹状細胞におけるT
oll様レセプターの活性化は、mRNAまたはタンパク質のレベルをアッセイすること
を含む、多数の異なる技術を使用して、特異的染色を有するかもしくは有さないかのいず
れかである樹状細胞の形態学的変化を観察することによってか、または同時刺激分子(例
えば、CD80、CD86)の発現を測定することによってか、または活性化マーカー(
例えば、CD69)のアップレギュレーションを測定することによってか、またはケモカ
インレセプター(例えば、CCR7)のアップレギュレーションを測定することによって
か、またはサイトカイン(例えば、TNF−α)の産生を測定することによって、測定さ
れ得る。
【0062】
例えば、TNF−αの発現の変化は、樹状細胞から単離されたRNAを使用して測定さ
れ得る。RNA定量法としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースの方法(例えば
、TaqMan(登録商標)システム(Applied Biosystems)、Br
illiant Quantitative PCR(Stratagene)、Pla
tinum(登録商標)定量的PCR(Resgen,Inc.))が挙げられる。RN
Aは、ICADを有する疑いのある個体から採取された生物学的サンプル(例えば、血液
サンプル)から単離される。Toll様レセプターmRNAの量は、例えば、上記の技術
を使用して定量され、そしてコントロール個体由来のサンプルと比較される。
【0063】
好ましくは、アッセイ(例えば、FACS分析)は、同時刺激分子のタンパク質発現を
測定するために使用される。これらの同時刺激分子の発現が増加する場合、このことは、
その個体がICADに罹患していることを示す。コントロールサンプルと比較して、この
アッセイが同時刺激分子の量の少なくとも約5%の増大を示す場合に、この活性は増大し
たとみなされる。
【0064】
あるいは、ICADを有する疑いのある試験個体由来の血清は、機能的なToll様レ
セプター経路を発現する細胞培養物に注入され得る。Toll様レセプターの活性は、結
果として、コントロール被験体血清および試験被験体血清で並行して処理された細胞培養
物から測定される。Toll様レセプターの活性が、試験個体の血清で処理された細胞に
おいて、コントロール血清で処理された細胞と比較して増大する場合、このことは、その
個体が、ICADに罹患していることを示す。発現は、コントロールサンプルと比較して
、少なくとも約5%高い場合に、増大したとみなされる。
【0065】
本発明を、その好ましい特定の実施形態と組み合わせて記載してきたが、前述の説明お
よび以下の実施例は、例示を意図し、そして本発明の範囲を限定しないことが、理解され
るべきである。本発明の範囲内の他の局面、利点および改変は、本発明が関する分野の当
業者に明らかである。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
自己反応性B細胞は、健常な個体のリンパ組織中に存在するが、代表的には、静止状態
である。この恒常性が乱される場合、自己反応性抗体の形成は、重篤な病理学的結果を有
し得る。自己IgGに特異的な抗原レセプターを発現するB細胞は、リウマチ因子(RF
)として公知の自己抗体のクラスを生成する。ここで、本発明者らは、RF+B細胞の効
果的な活性化が、IgG2a/クロマチン免疫複合体によって媒介され、そして抗原レセ
プターおよびMyD88依存性Toll様レセプターファミリーメンバーの連続的結合を
必要とすることを示す。これらのデータは、全身性自己免疫疾患の発症における生得的免
疫系と順応性免疫系との間の重要な関連性を確立し、そして核酸/タンパク質粒子と反応
性の自己抗体の優勢を説明する。この二重結合経路の独自の特徴は、自己反応性B細胞を
特異的に標的化する治療剤の開発を容易にするはずである。
【0067】
本発明者らは、ここで、自己免疫疾患における自己反応性B細胞および樹状細胞の活性
化に関与する因子を分析するための、モデルインビトロ系を開発した。狼瘡傾向のlpr
マウスにおける優勢な自己抗体特異性の1つは、リウマチ因子(RF)である。RFは、
自己IgGと反応性の抗体である。RF B細胞は、自己免疫のマウス株において活性化
され、数が増え、そして抗体分泌細胞へと分化するが、非自己免疫バックグラウンドでは
、これらは起こらない。この病理学的活性化に関与する機構を調査するために、本発明者
らは、特定のRFに、ほとんどのB細胞に対する特異性を付与する一対の導入遺伝子を発
現するように遺伝子操作されたマウスの脾臓由来の初代RF+B細胞を研究した。これら
のB細胞は、SLE患者において見出される自己反応性B細胞の原型である。
【0068】
最初に、本発明者らは、これらのRF+B細胞が、自己免疫マウス由来の血清サンプル
によって活性化されたが、非自己免疫マウス由来の血清によっては、活性化されなかった
ことを実証した(Rifkinら、2000)。本発明者らは、血清中の刺激因子が、実
際にIgG2aであることをさらに証明した。しかし、非自己免疫血清から単離されたか
なりの量のIgG2aは、刺激性ではなく、このことは、IgG2aの全てがRF+B細
胞を刺激するのに、充分なわけではなかったことを示す。従って、本発明者らは、自己免
疫血清中のIgG2aが、独自の特性を有すると結論付けた。優勢なIgG2a成分をさ
らに同定するために、本発明者らは、IgG2aモノクローナル抗体(mAb)を使用し
て、自己抗原(例えば、DNA−ヒストン複合体)に特異的なmAbは刺激性であったが
、一方で、外来または非自己の抗原に特異的な抗体は、刺激性でなかったことを示した。
【0069】
本発明者らは、次に、自己抗体/自己抗原免疫複合体が、優勢な成分であるという可能
性を考慮した。血清およびmAbを用いたアッセイをDNAseの存在下で実施した場合
、RF+B細胞の刺激は、劇的に減少した(図1)。これらのデータは、DNA骨格の切
断が、自己抗体/自己抗原(DNA)免疫複合体の解離を生じることを示唆した。このこ
とは、自己抗体/自己抗原免疫複合体が、自己反応性B細胞を優先的に活性化する独自の
特性を有することを強力に示す。非自己抗原を含む免疫複合体が、自己反応性B細胞を活
性化できないことは、図2に示される。
【0070】
本発明者らは、自己抗体/自己抗原免疫複合体が、第二のレセプター(これは次いで、
RF B細胞の活性化を促進する)と結合し得るという可能性を調査した。最近の研究に
より、Toll様レセプター(TLR)として公知のタンパク質ファミリーが、細菌DN
Aに結合し得、そしてマクロファージ、樹状細胞およびB細胞の活性化を導き得ることが
示されたので、本発明者らは、TLRが、これらの自己反応性RF B細胞の活性化にお
いて役割を果たし得るという可能性を考慮した。TLRは、最近非常にポピュラーな研究
領域であり、そして多くの病原体関連分子パターン(PAMPS)の結合および認識を担
うことが示されており、従って、生得的免疫応答とのこの関連は、自己免疫についての非
常に独自の関連である。全ての既知の哺乳動物TLRは、アプタマータンパク質を介して
、MyD88へとシグナル伝達する。MyD88遺伝子が遺伝子操作によって排除された
マウスにおけるTLR媒介性の活性化は、非常に損なわれ、そしてTLR9を介したシグ
ナルは、完全に破壊される。本発明者らは、本発明者らのRF+マウスを、MyD88−
/−バックグラウンドで繁殖させた。得られたマウスは、RF導入遺伝子について陽性で
あり(図4A)、そしてMyD88シグナル伝達分子を欠いた(図4B)。
【0071】
本発明者らは、RF MyD88−/−マウスが、そうでなければRF MyD88+
/+のB細胞の増殖を刺激する自己抗体のいずれに対しても応答できなかったことを見出
した(図4C)。本発明者らは、複数の形態の自己抗体(血清、抗ヌクレオソーム抗体お
よび抗Sm抗体)を試験した。これは、自己抗体/自己抗原免疫複合体が、反復パターン
の成分(例えば、B細胞の内側(DNA/TLR9)またはB細胞の表面上(RNA/T
LR3)のいずれかでTollレセプターと結合する、DNAまたはRNA)を含むとい
う仮定と一致する。自己反応性RF+B細胞の場合、この自己抗体/自己抗原免疫複合体
は、おそらく、BCRおよびTLRと連続的に結合して、活性化および増殖の増加を導く
。これは、BCRおよびTLRの同時結合が、自己反応性B細胞の活性化を生じ得ること
の最初の実証である。この関連は、自己免疫と身体の生得的免疫応答との間の非常に独自
の関連を提供し、そして自己免疫疾患(例えば、SLEおよび慢性関節リウマチ)におけ
る病原性応答の多くについての出発機構を提供し得る。
【0072】
引き続く研究は、TLR9を介する刺激性CpG ODNによるB細胞活性化をブロッ
クすることが知られている薬物(例えば、クロロキンおよびコンカナマイシン(conc
anamycin)A)が、ICを含有するクロマチンがRF+B細胞を刺激する能力を
完全にブロックすることを示した。その応答もまた、TLR9によって活性化を特異的に
阻害する阻害性CpG ODNによってブロックされ得る。これらのデータは、TLR9
が、自己反応性B細胞の活性化における重要なレセプターであることを示している。この
データは、免疫複合体のIgG成分が、BCR(これは、免疫複合体の内在化および内部
小胞コンパートメントへの送達を引き起こす)に結合することを示している。この内部コ
ンパートメント内のICのクロマチン成分による、引く続くTLR9の結合(engag
ement)は、B細胞の活性化を引き起こす。増強した有効性、従って、クロマチンそ
れ自体の取り込みに寄与する因子(SLEに対する感受性因子)もまた、類似の機構を介
して、B細胞活性化を引き起こし得る。抗クロマチン抗体は、SLE患者および自発的S
LEの動物モデルの血清中に存在する第一の検出可能な抗体であることが、記される。
【0073】
(実施例2)
SLEおよび他の全身性自己免疫疾患に罹患した患者は、広範な自己抗体特性を生じる
。これらの自己抗体は、かなり頻繁に、クロマチンまたは他の亜細胞核酸/タンパク質粒
子に結合する(Tan,E.Adv.Immunol.44,93−151(1989)
)。MRL/lprマウス(全身性エリテマトーデスおよび慢性関節リウマチについて十
分に研究されたマウスモデル)もまた、高い力価のIgG抗IgGリウマチ因子(RF)
を過度に生じる(Theofilopoulosら、J Exp.Med.162,1−
18(1985);Wolfowiczら、Clin.Immunol.Immunop
ath.46,382−395(1988))。そのRF応答は、自己抗体調節の研究に
非常に適切なトランスジェニックモデルを提供する。AM14トランスジェニックマウス
株由来のB細胞は、IgG2aa/jに特異的な抗原レセプターを発現し、これは本来、
病変したMRL/lprマウスの脾臓由来のハイブリドーマ産物として捕捉される(Sh
lomchikら、Int.Immunol.5,1329−1341(1993))。
単量体IgG2aに対するAM14アロタイプの特異性および相対的に低い親和性は、R
Fレパートリーに関連した疾患の典型である(Jacobsonら、J.Immunol
.152,4489−99(1994))。野生型マウスにおいて、AM14 RF+B
細胞は、正常に発達し、そして機能的に未処置のままである(Hannumら、J:Ex
p.Med.184,1269−1278(1996))。しかし、同族アロタイプの自
己免疫傾向性lprバックグラウンドにおいて、これらは活性になり、増殖し、そして自
己抗体を分泌する(WangおよびShlomchik,J.Exp.Med.190,
639−649(1999))。多数の因子が、lprマウスのAM14 B細胞の活性
化に寄与するようであるが、これらの因子のほとんどが、自己抗原(IgG2a)の状態
ではない。
【0074】
(RF+B細胞は、自己抗体/自己抗原免疫複合体によって活性化される)
本発明者らは、AM14 RF+B細胞が、自己免疫マウスの血清から単離されるIg
G2aa/jによってインビトロで活性化され得るが、野生型マウスから得られる血清中
に存在する匹敵したレベルのIgG2aによって活性化されないことを以前に示した(R
ifkinら、J.Immunol.165,1626−1633(2000))。RF
+B細胞はまた、ヌクレオソームに特異的なアフィニティー精製されたIgG2a
Ab(自己抗原)に応答して激しく増殖するが、ヘプタンまたは他の外来性抗原に特異的
なIgG2aa/j mAbは、たとえあったとしてもほとんど応答しないことが見出さ
れた(Rifkinら、J.Immunol.165,1626−1633(2000)
)。これらの研究は、IgG2aヌクレオソーム特異的mAbと共培養細胞から放出され
るクロマチンフラグメントとの間に形成される免疫複合体(IC)(Emlenら、J.
Immunol.148,3042−3048(1992))は、有効な活性化RF+B
細胞であり得るが、単量体抗ハプテンIgG2a抗体は、有効な活性化RF+B細胞であ
り得ないことを示唆した。この前提をさらに試験するために、DNaseを、推定ICを
分裂させる手段によって、アッセイ媒体に加えた。精製された抗ヌクレオソームmAb
PL2−3によってか(MonestierおよびNovick Mol.Immuno
l.33,89−99(1996))または自己免疫血清によって通常誘発される強い増
殖性応答は、劇的に減少した(図1)。DNaseの非特異的毒性は、F(ab’)
IgMに対する応答のような因子ではなく、LPSは影響を受けなかった(図1)。これ
らのデータは、RF+B細胞が、DNAを含むIgG2a ICに応答し、単量体IgG
2a抗体単独には応答しないことを確証する。
【0075】
単にIgG2a ICによるRF+B細胞の活性化が、単量体IgG2aを用いて可能
であるよりも、より効果的な抗原レセプターの架橋を生じる場合、従来の抗ハプテン/ハ
プテン−タンパク質複合体はまた、RF+B細胞を強く刺激するはずである。この論点に
取り組むために、TNP−BSAの濃度を変化させながら、IgG2aモノクローナル抗
TNP抗体をプレインキュベートすることによって、ICを調製した;複合体形成を、C
lq結合活性の増加を実証することによって、確認した(図2a)。予測されるように、
C4010のIC(IgG2a抗TNP mAb)は、全ての抗TNP/TNP−BS
A比で、RF+B細胞を刺激しなかった。驚くべきことに、Hyl.2のIC(IgG2
抗TNP mAb)のみが、抗ヌクレオソームmAb含有ICによって誘発される増
殖性応答に対して、かなり適度な増殖性応答を誘発した。この矛盾は、ICによって誘発
されるRF+B細胞増殖の程度が、(自己)抗原の抗体および性質の両方に依存すること
を示した。
【0076】
(ICによる活性化は、相補性レセプターの共結合(co−engagement)に
依存しない)
抗ヌクレオソームおよび抗TNP ICの刺激性能力の劇的な差異について考えられる
説明は、前者のみがB細胞レセプター(BCR)とそのB細胞表面上の第二のレセプター
との両方に相乗的に結合することができるというものであった。相補性成分は、自己抗原
ICに結合することが示されており、かつ理論上、CD19/CD21およびBCRと効
果的に共結合するように働き得る場合、1つの潜在的な候補レセプターは、相補性レセプ
ターCD21であった(Carterら、J.Immunol.141,457−463
(1988))。しかし、AM14の重鎖トランスジェニックおよび軽鎖トランスジェニ
ックを、CRl/2Cr2欠乏性マウスから繁殖させた場合(Ahearnら、Immu
nity 4,251−262(1996))、CRl/2の欠乏した同腹仔およびCR
l/2の十分な同腹仔由来のRF+B細胞は、IgG2a抗ヌクレオソームmAbおよび
自己免疫血清に対して同等に応答した(図3)。コントロールのRF同腹仔由来のB細胞
は、いかなる形態のIgG2aに対しても応答せず、これにより、この研究において使用
したリガンドの特定の性質が確認された。マイトジェン低メチル化CpGオリゴデオキシ
ヌクレオチドを、コントロール刺激として含めた。これらのデータは、相補性レセプター
が自己抗体/自己抗原ICに対するRF+B細胞応答に必要とされないことを示す。
【0077】
(MyD88依存性レセプターの役割)
潜在的な候補レセプターは、Toll様レセプター(TLR)ファミリーのメンバーを
含んだ。これらのパターン認識レセプターは、Drosophilaにおいて最初に記載
され、ここで、これらは、抗真菌ペプチドの放出を誘発することが示されている(Lem
aitreら、Cell 86,973−983(1996))。その後に同定された哺
乳動物ホモログは、保存的微生物産物(すなわち、LPS、微生物リポタンパク質、およ
び低メチル化CpG DNA)(病原体関連分子パターン(PAMPS)と呼ばれる(M
edzhitovら、Nature 388,323−324(1997);Akira
ら、Nat.Immunol.2,675−680(2001)))の種を認識すること
が見出された。初期の研究は、先天性免疫系の細胞に対する微生物産物の効果に焦点を当
てており、ここで、これらは、広範な炎症性メジエーターの放出を刺激することが見出さ
れた(Akiraら、Nat.Immunol.2,675−680(2001))。し
かし、外因性の微生物リガンドに加えて、TLRもまた、損傷性またはストレス性(st
ressed)の哺乳動物細胞から放出される外因性リガンドを認識し得ることが、後に
示された(Liら、J.Immunol.166,7128−7135(2001))。
全ての公知の哺乳動物TLRシグナル伝達経路は、アダプタータンパク質MyD88を使
用するが(Akiraら、Nat.Immunol.2,675−680(2001))
、TLR4の場合において、さらなるMyD88依存性経路が、記載されている(Hor
ngら、Nat.Immunol.2,835−841(2001))。
【0078】
自己抗体/自己抗原ICに対するRF+B細胞応答を媒介する際のTLRの潜在的な役
割を研究するために、本発明者らは、AM14導入遺伝子を、MyD88−/−バックグ
ラウンド上に交雑させた(Adachiら、Immunity 9,143−150(1
998))。RF−MyD88+/+子孫(野生型)、RF+MyD88+/+子孫、お
よびRF+MyD88−/−子孫由来のB細胞(PCR分析とFACS分析との組み合わ
せによって同定される(図4A〜4B))を、それらが抗IgM、CpG ODN、およ
びLPSに応答する能力、ならびに抗ヌクレオソームmAbsおよび自己免疫血清のパネ
ルに応答する能力について評価した。MyD88欠乏性マウス由来のB細胞は、抗IgM
に正常に応答したが、刺激性CpG DNAには応答することができなかった(Hack
erら、J.Exp.Med.192,595−600(2000))。これらのLPS
に対する応答は、野生型マウスにおけるよりもかなり低かったが、MyD88による部分
的な活性化と一致して、依然として検出可能であり、そしてLPSに対してのみ弱く応答
した(これは、MyD88依存性機構を介して部分的に刺激することが知られている(H
orngら、Nat.Immunol.2,835−841(2001)))(図4C)
。最も劇的には、RF+MyD88−欠乏性マウス由来のB細胞は、完全に、抗ヌクレオ
ソームmAbs PR1−3またはPL2−3に対して無応答性であるか、またはRF+
MyD88+/+B細胞を効果的に刺激するいかなる自己免疫血清に対して無応答性であ
った(図4C)。これらの結果は、自己抗体/自己抗原ICが、RF+B細胞に対して部
分的に刺激性であることを明確に示している。なぜなら、これらは、BCRとMyD88
依存性レセプターとの両方に相乗的に結合するからである。
【0079】
低メチル化CpGモチーフは、細菌DNAの共通の特徴であるが、これらはまた、哺乳
動物DNAプロモーターエレメントにも存在する(SingalおよびGinder B
lood 93,4059−4070(1999))。CpGオリゴデオキシリボヌクレ
オチド(ODN)に対するB細胞応答は、TLR9によって媒介されるので(Hemmi
ら、Nature 408,740−745(2000))、本発明者らは、クロマチン
含有ICが、TLR9に共結合することによってRF B細胞を刺激し得ると仮定した。
CpG S−ODNに対するTLR9媒介性応答は、クロロキンおよび塩化アンモニウム
に対する感受性によって決定されるように、エンドソームの酸化および/または成熟のた
めの推定される必要条件によって、他の公知のTLRシグナル伝達経路と区別される(Y
iら、J.Immunol.160,4755−4761(1998);Hackerら
、EMBO J.17,6230−6240(1998))。コンカナマイシンBおよび
バフィロマイシンAは、エンドソームの酸化を担うV型ATPaseの特定のインヒビタ
ーである(Benarochら、EMBO J.14,37−49(1995))。RF
+B細胞の酸化におけるTLR9の役割を評価するために、mAb PL2−3および公
知のTLR2(リポペプチド、ポリン(porin)B)(Massariら、J.Im
munol.168:1533−1537,2002)、TLR4(LPS)、およびT
LR9(CpG S−ODN 1826)リガンドの刺激性能力に対するクロロキン、コ
ンカナマイシンB、バフィロマイシンA、および塩化アンモニウムの効果を決定した。予
測されるように、クロロキンは、CpG S−ODN応答を阻害し、そしてこれらのイン
ヒビターは、TLR2リガンドおよびTLR4リガンドに対してほとんど効果がなかった
。特に、クロロキンをブロックする4つ全ての因子はまた、mAb PL2−3に対する
RF+B細胞応答を阻害した(図5Aおよび5B)。クロロキンは、慢性関節リウマチお
よびSLEを含む自己免疫疾患に対する有効な処置であるので、クロロキンへの関連は興
味深い(Canadian Hydroxychloroquine Study Gr
oup,N.Engl.J.Med.324,150−154(1991);Furst
ら、Arth.Rheu.42,357−365(1999))。従って、本発明者らの
データは、クロロキンの治療効果が、TLR媒介性シグナル(これは、自己抗体産生また
は炎症誘発性メジエーターの産生に寄与する)と干渉するその能力に、少なくとも部分的
に起因することを示唆している。
【0080】
刺激性CpG S−ODN 1826に対するB細胞応答はまた、密接に関連したイン
ヒビターCpG S−ODN(例えば、S−ODN 2088)の群によってブロックさ
れ得る(Lenartら、Antisense Nucleic Acid Drug
Dev.4,247−256(2001))。本発明者らは、S−ODN 2088が、
S−ODN 1826に対する増殖性応答を大いに阻害するが、抗IgMまたは本発明の
TLR2リガンドおよびTLR4リガンドに対する応答に効果がないことを見出した(図
5Cおよび5B)。最も有意には、S−ODN 2088はまた、mAb PL2−3に
対するRF+B細胞応答を劇的にブロックした。全体的に、これらのデータは、RF+B
細胞活性化における、エンドソームプロセシングおよび/またはエンドソーム関連TLR
(最も好ましくは、TLR9)の結合に強く関連する。
【0081】
外来性抗原に対する従来型のB細胞応答のT依存性特性と同様に、自己反応性B細胞ク
ローンがアイソタイプスイッチングおよび体細胞性変異を受け得ることが明確に示された
(Shlomchikら,Nature 328,805〜811(1987))。しか
し、より最近の報告によって、自己反応性B細胞は、末梢リンパ組織における従来型のB
細胞と分離し得ることが示唆され;自己反応性B細胞は脾性白脾髄26髄質(splen
ic white pulp26pulp)の周辺帯に局在する傾向がある(Zengら
,J.Immunol.164,5000〜5004(2000))が、その一方で、従
来型のB細胞は、濾胞性領域を目指すことが示唆されている。さらに、いくつかの例にお
いて、自己反応性B細胞の増殖および体細胞性変異は、その胚中心(germinal
center)の外側で起こり得る。これらの分散性局在パターンは、刺激性の自己抗体
/自己抗原ICのこれらの部位における優勢な集積を反映し得る。あるいは、この相対的
に特有のホーミングパターン(homing pattern)は、BCR/TLR結合
の総合効果に応答して誘発される特徴的なケモカインレセプタープロファイルから生じ得
る。将来の研究では、BCR/TLR二重結合を通して活性化されたB細胞からBCRク
ロスリンキングのみを通して活性化されたB細胞の機能特性を比較する必要がある。
【0082】
DNA/ヌクレオソームを認識する自己抗体は、SLE患者およびSLEのマウスルー
プスモデルにおいて限定的かつ最も優勢な特異性であるが、RFは、SLE患者、自己免
疫易発性lprマウス、およびRA患者のサブセットの特徴である。注目すべきことに、
これらの同じ自己抗原は、リンパ球の恒常性または自己抗原代謝を破壊する変異によって
生じる多くの新規マウス自己免疫モデルにおける標的である(Bottoら,Natur
e Genetics 19,56−59(1998);Bickerstaffら,N
ature Medicine 5,694〜697(1999);Napireiら,
Nat.Gen.25,177〜180(2000);Scottら,Nature 4
11,207〜211(2001))。これらの特徴的な特異性の優勢の理由は、長い間
探し求められてきた。本発明者らのデータは、説明、すなわち、クロマチン含有免疫複合
体によって媒介されるBCR/TLRシグナル伝達事象の強力な相乗的効果を提供する。
本発明者らの実験系(この系は、エンドソーム/リソソーム局在TLR9に依存している
(Hackerら,EMBO J.17,6230−6240(1998)))において
、このBCRの自己抗体/自己抗原IC結合が、IC関連抗原のエンドサイトーシスを誘
発して、これによって、エンドソーム結合TLR9に対するクロマチンフラグメントの高
効率送達が生じると結論付けることが妥当である。公開された研究(Bellら,J.C
lin.Invest.85,1487〜1496(1990);Bellら,Clin
.Immunol.Immunopath.60,1326(1991))とは対照的に
、本発明者らが培養上清またはクロマチンフラグメントのいずれかのみを用いてB細胞を
活性化させることは不可能であった。マウスの他の系統が本発明者らのフラグメントに対
してより応答性であるか否かということは未だ決定されていない。
【0083】
現存の実験モデルを超越して、BCR/TLR二重結合の原理は、一般にいう自己免疫
についての広範な意味を有する。ハプテン化LPSおよびハプテン化LPSLPS結合S
RBCのようなモデルリガンドはまた、BCRおよびTLRを同時刺激し得、そして、そ
れらの関連レセプターを有するB細胞に対して、驚くほどに、強力かつ特異的である(P
ike,Methods Enzymol.1987;150:265〜75,1987
)。従って、この様式での活性化は、広範で多様な設定における末梢B細胞寛容性の消失
における基礎的な事象である可能性があり;他の自己抗原は、TLR9よりもTLRを通
じてシグナル伝達し得る。全体として、これらのデータは、自己免疫における適応免疫系
の異常な活性化での内因性TLRリガンドの重要な役割を確立し、そして、如何にして、
この自己抗体レパートリーが、しばしば、細胞下の核酸/タンパク質粒子を認識する傾向
にあるかを説明する(Tan,E.Adv.Immunol.44,93〜151(19
89))。
【0084】
(方法)
(マウス) 以前に記載される(Hannumら,J.Exp.Med.184,12
69〜1278(1996);Rifkinら,J.Immunol.165,1626
〜1633(2000))MRL+/+AM14 BCR Tgマウスを、Cr2欠失マ
ウス(Dr.Michael Carroll(Harvard Medical Sc
hool,Boston)の好意により提供された)とかけ合わせ、そして、そのF1子
孫を交雑してAM14 Cr2欠失マウスおよびCr2の十分なコントロールマウスを作
製した。MyD88−/−マウス(もともとは、Dr.Shizuo Akira(Os
aka University,Osaka,Japan)により作製され(Adach
iら,Immunity 9,143−150(1998))、そして、Dr.Doug
las Golenbock(University of Massachusett
s Medical School,Worcester,MA)の好意により提供され
た)をAM14 MRL+/+マウスとかけ合わせ、AM14 MyD88−/−および
コントロール同腹仔である子孫を作製した。RF+子孫を、まずPCRによって同定し、
そして、これらの同一性を、記載された(Shlomchikら,Int.Immuno
l.5,1329−1341(1993))4−G7モノクローナル抗イディオタイプを
使用して、末梢血リンパ球および脾臓細胞のフローサイトメトリー分析によって確認した
。補完的レセプターの遺伝子型を、FITC結合7G6抗体(Pharmingen,S
an Diego,CA)を使用するフローサイトメトリーによって決定した。MyD8
8遺伝子型を以下のプライマーを使用してPCRによって決定し、それぞれ約550bp
および約750bpの野生型産物およびノックアウト産物を得た:MyD88F(5’−
TGG CAT GCC TCC ATC ATA GTT AAC C−3’)[配列
番号1]、MyD88R(5’−GTC AGA AAC AAC CAC CAC C
AT GC−3’)[配列番号2]、およびneoR(5’−ATC GCC TTC
TAT CGC CTT CTT GAC G−3’)[配列番号3](MWG Bio
tech,High Point,NC)。
【0085】
(細胞培養および試薬) 脾臓細胞調製物を、T減損(T−deplete)させ、そ
して、40時間〜48時間に亘って適切なリガンドを使用して培養した。いくつかの実験
において、B細胞を、前述(Rifkinら,J.Immunol.165,1626〜
1633(2000))のように、CD40Lを用いてプレインキュベートした。最終的
な16時間の培養の間の[H]−チミジン取り込みによって、増殖をアッセイした。三
連の培養からの抗IgM応答の平均パーセンテージとして、データを表す。この抗IgM
応答のパーセンテージは、以下の式に従って計算した:
[(cpm実験条件−cpm CD40L単独)/(cpm 抗IgM−cpm CD4
0L単独)×100]。
【0086】
(含まれたリガンド): ヤギ抗マウスIgM F(ab’)(15μg/ml,J
ackson ImmunoResearch Laboratories,West
Grove,PA);ヌクレオソーム特異的mAbである、PR1−3(IgG2a
、PL2−3(IgG2a)、およびPL2−8(IgG2b)(これらの全ては、5
0μg/mlであった)(これらは、Dr.Marc Monestier(Templ
e University School of Medicine,Philadel
phia,PA)のご好意によって提供された(Monestier and Novi
ck Mol.Immunol.33,89−99(1996));10μg/ml L
PS(Sigma,St.Louis,MO);0.3〜2μg/ml刺激性CpG S
−ODN 1826(Yiら,J.Immunol.160,4755−4761(19
98))(Oligo’s Etc,Wilsonville,OH)、10μg/ml
Neisseria MeningitidisポリンB(Dr.Lee Wetzl
er(Boston University School of Medicine,
Boston,MA)のご好意によって提供された);10μg/ml合成リポペプチド
PamCys−Sk(これは、Dr.G.Jung,Univ.of Tuebin
gen,Germanyにより,Dr.Doug Golenbockのご好意によって
提供された);ならびに種々の濃度のTNP−BSAに複合体化された抗TNP mAb
Hyl.2(IgG2a)およびC1040(IgG2a)(Hannumら,J
.Exp.Med.184,1269〜1278(1996))(双方とも50μg/m
lであった)。いくつかの実験において、DNase I(IV型)(Sigma,St
.Louis,MO),クロロキン(Sigma)、コンカナマイシンB(concan
amycin B)、バフィロマイシンA(bafilomycin A)(Sigma
)、または12μg/mlの阻害性CpG S−ODN 2008(Lenartら,A
ntisense Nucleic Acid Drug Dev.4,247−256
(2001))(Oligo’s Etc.)を、リガンドの添加の、15分間〜30分
間から2時間前に培養物に添加した。全てのmAbおよびODNの調製物を、Limul
us Amebocyte Lysate ELISA(Bio−Whittaker,
Walkersville,MD)によって、遊離した内毒素であったことを示した。
【0087】
(実施例3)
本発明者らは、樹状細胞が、FcレセプターおよびTLR9のその後の結合を介するク
ロマチン含有免疫複合体により活性化されることをさらに示した。これは、B細胞につい
て記載した機構に類似の機構であるが、但し、B細胞の場合に、関連する細胞表面レセプ
ターは、B細胞抗原レセプターであるが、樹状細胞において、この関連する細胞表面レセ
プターは、Fcγレセプター(FcγR)である。両方の細胞表面レセプターとも、エン
ドソーム/リソソーム画分中のTLR9に、クロマチンを送達する役割を担う。
【0088】
図8A〜図8Cにおいて、樹状細胞はTLR9を介して特異的に活性化され得て、そし
てこの活性化はODN2088でのTLR9阻害によってブロックされ得るということを
発明者らは示す。特異的なTLR9活性化リガンドODN1826が、TNF−αおよび
IL−12の産生を樹状細胞(8A,8B)により誘導し、そしてさらに同時刺激分子(
8C)のアップレギュレートを誘導するという点において、本発明者らがその後の実験(
以下の表1および表2において示される)において使用した樹状細胞は機能的TLR9を
発現するということが、上記の実験によって実証された。ODN2088がODN182
6媒介性活性をブロックするがLPS媒介性活性化に対してはなんら影響を持たないので
、ODN 2088は、TLR9媒介性活性化の特異的なインヒビターである(8A、8
B、8Cに示される)。
【0089】
6日間に亘るGM−CSFおよびIL−4のインビトロ培養によって、樹状細胞をC5
7BL/6マウスの骨髄から作製した。第6日目において、CD11c陽性の樹状細胞を
、磁性ビーズ(Miltenyi Biotec)を使用して単離し、そして、ODN2
088(TLR9を介するシグナルで伝達を特異的にブロックする阻害性オリゴデオキシ
ヌクレオチド)とともに、30分間のプレインキュベートしたかまたは、プレインキュベ
ートをしなかった。次いで、刺激性ODN1826(CpG,3μg/ml)(TLR9
を介して特異的に活性化する)またはリポポリサッカリド(LPS,10μg/ml)(
これは、TLR4を介して活性化する)あるいは培養培地単独(培地)を、これらの培養
物に添加した。48時間後、培養物の上清中のTNF−α(8A)およびIL−12(8
B)のレベルを、ELISAによって測定した(結果を、405nmの吸収によって決定
されるOD単位として示す)。この上清の除去の後に、細胞を回収して、そして同時刺激
分子CD86(8c)の発現についてフローサイトメトリーによって分析した。培地単独
の存在下のCD86の発現レベルは、刺激されなかったとしてみなされるが、刺激(OD
N 1826またはLPS)の存在下のCD86の発現レベルは刺激されたとしてみなさ
れる。
【0090】
以下の表1は、クロマチン含有免疫複合体(クロマチン自己抗原と複合体化している自
己抗体を含む)は、樹状細胞を活性化して、TNF−αを産生するが、その一方で、外来
性の抗原(TNP−BSA)を含む免疫複合体は、樹状細胞の活性化を誘導しないことを
示す。さらに、クロマチン含有免疫複合体によって誘導される活性化は、TLR9特異的
インヒビターODN2088によって完全にブロックされ、このことは、(おそらくは、
このクロマチン含有免疫複合体中のクロマチンによる)TLR9の結合が、活性化プロセ
スの本質的な構成要素であることを示している。
【0091】
(表1)
【0092】
【表1】


表1は、クロマチン含有免疫複合体によって誘導される樹状細胞TNF−α産生は、T
LR9特異的インヒビターODN2088によってブロックされることを示している。6
日間に亘るGM−CSFおよびIL−4とのインビトロ培養によって、樹状細胞は、C5
7BL/6マウスの骨髄から作製した。第6日目において、CD11c陽性の樹状細胞を
、磁性ビーズ(Miltenyi Biotec)を使用して単離した。次いで、これら
の樹状細胞を、12μg/mlのODN2088とともに、30分間に亘って、プレイン
キュベートしたかまたは、プレインキュベートをしなかった。次いで、刺激性ODN18
26(3μg/ml)(TLR9を介して特異的に活性化する)、リポポリサッカリド(
LPS,10μg/ml)(これは、TLR4を介して活性化する)、抗クロマチン抗体
PL2−3(50μg/ml)、3つの異なる抗体/タンパク質比のα−TNP/TNP
−BSA免疫複合体(50μg/ml)、あるいは培養培地単独(培地)を、これらの培
養物に添加した。48時間後、培養物の上清中のTNF−αのレベルを、ELISAによ
って測定した(結果を、pg/mlとして示す;アッセイの感度の低レベルは50pg/
mlであった)。3つの類似の実験のうちの代表的実験を示す。
【0093】
表2は、クロマチン含有免疫複合体が、野生型マウス由来の樹状細胞によりTNF−α
産生を誘導する(これはまた、ODN2088の非存在下で、表1中に示された研究にお
いても示される)が、Fcレセプターγ鎖欠失マウスに由来する樹状細胞によるTNF−
αの産生は全く誘導されないことを示す。このことは、活性化Fcレセプターが、クロマ
チン含有免疫複合体による樹状細胞活性化にとって絶対に必要とされることを実証してい
る。
【0094】
(表2)
【0095】
【表2】


表2は、クロマチン含有免疫複合体が、野生型マウス由来の樹状細胞によるTNF−α
産生を誘導するが、Fcレセプターγ鎖欠損マウス由来の樹状細胞によるTNF−α産生
を誘導しないことを立証する。C57BL/6野生型マウスの骨髄およびFcレセプター
γ鎖を欠くC57BL/6マウスから、骨髄細胞をGM−CSFおよびIL−4とともに
6日間インビトロ培養することにより、樹状細胞を産生した。6日目に、CD11cポジ
ティブ樹状細胞を、磁性ビーズを使用して単離した。次いで、刺激性ODN 1826(
3μg/ml)(これは、TLR9を介して特異的に活性化する)、リポポリサッカリド
(LPS、10μg/ml)、抗クロマチン抗体PL2−3(50μg/ml;IgG2
a)およびPL2−8(50μg/ml;IgG2b)、2つの異なる抗体/タンパク質
比のα−TNP/TNP−BSA免疫複合体(50μg/ml)、または培養培地のみ(
培地)を、樹状細胞培養物に添加した。48時間後、培養上清中のTNF−αのレベルを
、ELISAにより測定した(結果をpg/mlとして示す;アッセイの感度の低いレベ
ルは、50pg/mlである)。2つの類似の実験の代表的な実験を示す。
【0096】
まとめると、上記の表1および表2に示すデータは、クロマチン含有免疫複合体によっ
て誘導される樹状細胞の活性化が、活性化Fcγレセプターを介するシグナルおよびTL
R9を介して媒介されるシグナルを必要とすることを立証する。
【0097】
このFcγR/TLR二重関与経路の機構および結果を評価するためのさらなる実験を
、以下に概説する。
【0098】
(IFN−α産生樹状細胞サブセットの特徴づけ)
(マウス系統)自己免疫性狼瘡様マウス系統と非自己免疫性マウス系統との間の、樹状
細胞およびマクロファージの機能における差が、記載されている。これらとしては、免疫
複合体操作(Jonesら、Clin.Immunol.Immunopathol.3
6:30−39,1985;Magilavyら、J.Immunol.131:278
4−2788,1983)、食作用(Russell,およびSteinberg Cl
in.Immunol.Immunopathol.27:387−402,1983)
、Fcレセプターの発現および機能(Pritchardら、Current Biol
ogy.10:227−230,2000;Jiangら、Immunogenetic
s.51:429−435.,2000)ならびにサイトカイン産生(Allevaら、
J.Immunol.159:5610−5619.,1997;Kohら、J.Imm
unol.165:4190−4201.,2000)における差が挙げられる。従って
、自己免疫性系統および非自己免疫性系統の両方由来の樹状細胞を直接比較することが重
要である。MRL+/+および(NZB×NZW)F1は、2種の自己免疫性狼瘡様系統
であり、そしてC57BL/6およびBALB/cは、使用した2種の非自己免疫性系統
である。
【0099】
(樹状細胞サブセットの精製)SLEの病因において特に重要な2つの樹状細胞のサブ
セットがある:CD11c+ CD8α+およびCD11c+ B220+ Gr−1+
。これらの細胞は、脾臓から直接得られるか(Hochreinら、J.Immunol
.166:5448−5455,2000;Nakanoら、J.Exp.Med.19
4:1171−1178,2001)、またはFlt3リガンドの存在下で骨髄細胞のイ
ンビトロ培養によって産生されるかのいずれかである(Braselら、Blood.9
6:3029−3039,2000;Gillietら、J.Exp.Med.195:
953−958,2002)。脾臓の樹状細胞を、記載されるとおり(Vremecら、
J.Immunol.164:2978−2986,2000)に単離し、そして適切な
蛍光抗体染色の後、特定の樹状細胞サブセットを、MoFloセルソーター(Cytom
ation,Fort Collins,CO)を用いて、分画および収集する。CD1
1c+ CD8α−樹状細胞サブセット(これもまた脾臓中に見られる)を、標的のCD
11c+ CD8α+樹状細胞サブセットと同時に単離し、そして実験コントロールとし
て使用する。
【0100】
骨髄由来樹状細胞を産生するために、骨髄細胞を収集し、そして確立されたプロトコル
(Gillietら、J.Exp.Med.195:953−958,2002;Lab
eurら、J.Immunol.162:168−175,1999)を用いて、組換え
マウスFlt3リガンドの存在下でインビトロで6〜10日間培養する。Flt3リガン
ド中で増殖した骨髄細胞は、標的の集団(すなわち、CD11c+ CD8α+樹状細胞
およびCD11c+ B220+ Gr−1+樹状細胞)が濃縮されている。これらの集
団を、脾臓由来の樹状細胞について、上記のとおりにセルソーティングにより分画する。
【0101】
(特定の樹状細胞サブセットにおけるTLR9の発現の決定)TLR9メッセンジャー
RNAを、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により測定する。さらに
、TLR9特異的刺激性リガンド(S−ODN 1826(Ballasら、J.Imm
unol.167:4878−4886,2001))に対する樹状細胞サブセットの応
答を、同時刺激性(co−stimulatory)分子の発現およびサイトカイン産生
を測定することにより比較する。マウスTLR9に対する特異的抗体を、当業者に公知の
技術を用いて産生し得る。
【0102】
(ICの調製ならびに樹状細胞によるICの結合および取り込みの評価)
(免疫複合体の調製)抗ヌクレオソーム/クロマチンICを、抗ヌクレオソームモノク
ローナル抗体PL2−3(IgG2a)、PL2−8(IgG2b)およびPL9−7(
IgG3)を、脾臓細胞の24時間インビトロ培養物から得た上清と共にインキュベート
することにより調製する。クロマチンは、培養脾臓細胞から自発的に放出され(Bell
ら、J.Clin.Invest.85:1487−1496,1990)、そしてこの
クロマチンに対する抗ヌクレオソーム抗体の結合は、C1q免疫アッセイ(Rifkin
ら、Journal of Immunology.165:1626−1633,20
00)を使用して測定され得るICの形成を生じる。本発明者らは、培養液と予めインキ
ュベートしたビオチン化PL2−3が、フローサイトメトリーによって検出されるように
、リウマチ因子B細胞に特異的に結合し;単量体のビオチン化PL2−3は、結合しない
ことをさらに示している。非自己抗原コントロールICは、抗TNPモノクローナル抗体
Hy1.2(IgG2a)またはC4010(IgG2b)を使用し、そしてそれらをT
NP−BSAと共にインキュベートして作製し、IC形成もまた、示されたように(Le
adbetterら、Nature.416:603−607,2002)、C1q結合
によって確認する。さらなる非自己抗原コントロールICを、本研究所で調製した抗オボ
アルブミンモノクローナル抗体Ov1(IgG2a)およびOv2(IgG2b)を使用
し、そしてそれらをオボアルブミンとインキュベートすることにより作製する。C1q結
合アッセイにおいてIC形成を立証するのと同時に、さらなる確証的なアッセイとして、
FPLCをまた使用する。
【0103】
(樹状細胞による免疫複合体の結合および取り込み)ICおよび樹状細胞を含む実際の
実験的培養物をセットアップする前に、異なる系統由来の精製した樹状細胞サブセットが
ICを結合および取り込み得る程度を決定することが必要である。このことは、IC操作
(Jonesら、Clin.Immunol.Immunopathol.36:30−
39,1985;Magilavyら、J.Immunol.131:2784−278
8,1983)、およびFcレセプターの発現(Pritchardら、Current
Biology.10:227−230,2000;Jiangら、Immunoge
netics.51:429−435.,2000)に関して、自己免疫性マウス系統と
非自己免疫性マウス系統との間の報告された差を考慮すると、特に重要である。実験的ア
プローチは、フローサイトメトリーおよび共焦点顕微鏡の組合せを使用して、免疫複合体
の抗体構成要素を追跡することである。抗ヌクレオソーム抗体PL2−3(IgG2a)
、PL2−8(IgG2b)およびPL9−7(IgG3)を、標準的な手順を用いてビ
オチン結合体化し、そしてビオチン−抗ヌクレオソーム/クロマチンICを、上記のとお
りに調製する。ビオチン−抗ヌクレオソーム/クロマチンICが、機能性を保持している
ことを立証するために、ビオチン−PL2−3/クロマチンICが、非ビオチン−PL2
−3/クロマチンICと同じ程度にリウマチ因子B細胞の増殖を誘導し得るかどうか評価
する(Rifkinら、Journal of Immunology.165:162
6−1633,2000)。IgG2bおよびIgG3がリウマチ因子B細胞によって認
識されないので、このようにしてビオチン−PL2−8/クロマチンICおよびビオチン
−PL9−7/クロマチンICを、試験し得ないが、ビオチン結合体化の機能的影響は、
アイソタイプに関わらず同様であると推定される。アイソタイプが一致するビオチン−抗
TNP/TNP−BSA ICおよびビオチン−抗オボアルブミン/オボアルブミンIC
を、同様に調製する。複合体中に組み入れられていないビオチン結合体化抗体単独を、コ
ントロールとして使用する。ビオチン結合体化ICおよびビオチン結合体化抗体単独を、
異なる樹状細胞サブセットに添加し、そしてフローサイトメトリーを使用して、細胞表面
の結合を検出する。ビオチン標識化化合物を、特定の蛍光色素に結合体化された抗ビオチ
ンモノクローナル抗体(Molecular Probes:抗ビオチンマウスモノクロ
ーナル抗体2F5 Alexa Fluor 488結合体)を用いて可視化する。続い
て、抗ヌクレオソーム抗体(ビオチン−抗ヌクレオソーム/クロマチンIC)、抗TNP
抗体(ビオチン−抗TNP/TNP−BSA IC)または抗オボアルブミン抗体(ビオ
チン−抗オボアルブミン/オボアルブミンIC)の樹状細胞内部移行を、1〜12時間の
インキュベーション期間および3%パラホルムアルデヒドでの固定後に、共焦点顕微鏡を
使用して評価する。
【0104】
さらに、エンドソーム/リソソームコンパートメントに特異的な蛍光標識化モノクロー
ナル抗体での同時染色によってか、または酸性オルガネラに区分化する蛍光pH指示薬(
Molecular Probes)の使用によって、共局在研究を実施する。
【0105】
(クロマチン含有ICならびにToll様レセプターおよびFcγレセプターの役割の
確立による樹状細胞活性化の測定)
(ICによる樹状細胞活性化の測定)上記で概説した抗ヌクレオソーム/クロマチンI
C、抗TNP/TNP−BSA ICおよび抗オボアルブミン/オボアルブミンICを、
樹状細胞サブセットと共にインキュベートし、同時刺激性分子産生およびサイトカイン産
生の上方制御を測定することにより樹状細胞活性化を決定する。コントロールとしては、
単量体の非複合体化抗体単独、抗原単独、TLR9シグナル伝達に対するポジティブコン
トロールとして刺激性CpG S−ODN 1826、TLR4シグナル伝達に対するポ
ジティブコントロールとしてLPSおよびTLR2シグナル伝達に対するポジティブコン
トロールとしてporin Bが挙げられる。サイトカインを、ELISAによって測定
する。サイトカインとしては、IL−12、TNF−α、IL−10およびIFN−αが
挙げられる。IL−12およびTNF−αは、樹状細胞活性化のマーカーとして最も一般
的に使用される2つのサイトカインであり(Banchereauら、Annu.Rev
.Immunol.18:767−811,2000)、そしてIFN−αは、CD11
c+ CD8α+樹状細胞サブセットおよびCD11c+ B220+ Gr−1+樹状
細胞サブセットの活性化に最も強く関連したサイトカインである。マクロファージにおけ
るFcレセプター結合が、それに続く刺激により誘導されるIL−10産生を導き得、こ
の刺激は、Fcレセプター結合の非存在下では、IL−12産生を導き、そしてIL−1
0産生を導かないことが示されているので(GerberおよびMosser J.Im
munol.166:6861−6868.,2001)、IL−10を測定することが
必要である。MHCクラスIIならびに同時刺激性分子CD80、CD86およびCD4
0の増加した発現を、フローサイトメトリーによって決定する。
【0106】
(IC媒介樹状細胞活性化におけるToll様レセプターおよびFcγレセプターの役
割)S−ODN 2088は、TLR9を介するシグナル伝達を特異的にブロックする阻
害性CpG S−ODNである(Lenertら、Antisense and Nuc
leic Acid Drug Development.11:247−256,20
01)。本発明者らは、S−ODN 2088が、リウマチ因子B細胞レセプタートラン
スジェニックマウス由来のB細胞のクロマチン含有ICに誘導される増殖を強く阻害する
ことを示している(Leadbetterら、Nature.416:603−607,
2002(Leadbetterら、Nature.416:603−607,2002
)。また、本発明者らは、S−ODN 2088が、TLR9を介して作用する刺激性C
pG S−ODN(例えば、S−ODN 1826)による樹状細胞活性化を完全に抑制
することを示している。上記で概説した実験を、S−ODN 2088の存在下または非
存在下で実施して、IC媒介樹状細胞活性化におけるTLR9の役割を評価する。それら
をまた、TLR9を介するシグナル伝達を抑制するエンドゾームの酸性化のインヒビター
(クロロキン、コンカナマイシンBおよびバフィロマイシンAが挙げられる)の存在下お
よび非存在下で実施する。さらに、C57BL/6 MyD88+/+マウス由来の樹状
細胞を、C57BL/6 MyD88−/−マウス由来の樹状細胞と比較して、TLRシ
グナル伝達についての要件を確立する。
【0107】
Fcγレセプター(FcγR)シグナル伝達についての要件を評価するために、2.4
.G2(マウスFcγRIIおよびFcγRIIIを特異的にブロックするモノクローナ
ル抗体)(Araujo−Jorgeら、Infect Immun.61:4925−
4928.,1993)の存在下および非存在下で、実験をまた実施する。しかし、第3
の型のマウスFcγレセプター、FcγIは、2.4G2によってブロックされず、そし
てIC誘導炎症応答を媒介し得る(Ioan−Facsinayら、Immunity.
16: 391−402.,2002,Barnesら、Immunity.16:37
9−389,2002)。樹状細胞は、3つのクラスのFcγR(FcγRI、FcγR
IIおよびFcγRIII)全てを発現する(RavetchおよびBolland,A
nn.Rev.Immunol.19:275−290,2001)。従って、FcγR
ノックアウトマウスを使用して、さらなる研究を実施し得る。マウスは、Jackson
Laboratoriesから入手可能であり、そしてこれらとしては、i)これらの
2つのレセプターにより共有される、共通の刺激性シグナル伝達γ鎖のノックアウトによ
ってFcγRIおよびFcγRIIを遺伝的に欠損させられたマウス(Takaiら、C
ell.76:519−529.,1994)、ii)FcγRIIノックアウトマウス
(Takaiら、Nature.379:346−349.,1996)ならびにiii
)FcγRIIIノックアウトマウス(Hazenbosら、Immunity.5:1
81−188.,1996)が挙げられる。
【0108】
(樹状細胞による抗原プロセッシングおよび抗原提示におけるICおよびTLR9の役
割)CD4+自己反応性T細胞は、ヒトおよびこの疾患のマウスモデルの両方においてS
LEの食作用の要である(Craftら、Immunol.Res.19:,1999;
Hoffman,Front.Biosci.6:D1369−78,2001;Shl
omchikら、Nature Rev.Immunol.1:147−153.,20
01)。樹状細胞は、T細胞応答の開始に関与する重要な抗原提示細胞であり(Banc
hereauら、Annu.Rev.Immunol.18:767−811,2000
)、そしてTLR9結合が、Th1型免疫応答の進行を強く促進することが示されている
(Jakobら、J.Immunol.161:3042−3049,1998;Lip
fordら、J.Immunol.165:1228−1235.,2000)。TLR
9結合が、免疫複合体内に含まれる抗原に対するT細胞応答を変えるかどうかを示すため
に、オボアルブミンを、記載されるように(Shirotaら、J.Immunol.1
64:5575−5582.,2000)、刺激性CpG S−ODN 1826に結合
体化する。抗オボアルブミンモノクローナル抗体Ov1(IgG2a)またはOv2(I
gG2b)と共に、非結合体化オボアルブミンまたはオボアルブミン−CpG結合体をイ
ンキュベートすることにより、結果的にICを作製する。BALB/cマウス(H−2
)由来の樹状細胞サブセットを、これらのICでパルスする。CD4+T細胞(これは、
H−2Aの状況でオボアルブミンを認識する)を、オボアルブミン特異的T細胞レセプ
タートランスジェニックマウス(DO11.10マウス)のリンパ節から精製する(Mu
rphyら、Science.250:1720−1723,1990)。これらのCD
4+T細胞を、ICパルスした樹状細胞と共に培養し、そして1次T細胞応答および2次
T細胞応答の間のT細胞の増殖およびサイトカイン産生(IFN−γ、IL−4およびI
L−2)を測定する。S−ODN 2088およびエンドゾーム酸性化のインヒビターを
使用して、TLR9の役割を評価する。
【0109】
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ここで引用される参考文献および本明細書全体を通して引用される参考文献は、その全体
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫複合体関連疾患(ICAD)もしくは全身性自己免疫疾患を有するか、またはICADもしくは全身性自己免疫疾患の危険性がある患者を処置する方法であって、該方法は、該免疫複合体または自己抗原の、Toll様レセプターへの結合または該Toll様レセプターの活性化を阻害する有効量の化合物を、該患者に投与する工程を包含し、ここで、該免疫複合体は、自己抗体および細胞レセプターに結合される自己抗原を含む、方法、およびその他明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−203245(P2009−203245A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144762(P2009−144762)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【分割の表示】特願2003−526424(P2003−526424)の分割
【原出願日】平成14年9月9日(2002.9.9)
【出願人】(504087503)ザ トラスティーズ オブ ボストン ユニバーシティ (1)
【出願人】(392019352)イェール ユニバーシティー (38)
【氏名又は名称原語表記】YALE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】