説明

免疫調節因子としてのB7−H3の使用

【課題】免疫系に関連する障害および状態のための治療方法を提供すること。より詳細には、免疫応答の調節におけるB7ファミリーリガンドならびにそのアゴニストおよびアンタゴニストの使用を提供すること。
【解決手段】本発明により、リンパ球の活性化を阻害する方法であって、該方法は、該リンパ球とB7−H3アゴニストとを接触させる工程、および該アゴニストが、該リンパ球の活性化を阻害することを可能にする工程を包含する、方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の説明)
(発明の分野)
本開示は、免疫学および臨床免疫学の分野に関し、より詳細には、免疫応答の調節におけるB7ファミリーリガンドならびにそのアゴニストおよびアンタゴニストの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
リンパ球活性化は、そのリンパ球と「補助」細胞(T細胞活性化の場合には抗原提示細胞(APC)またはB細胞活性化のためにはヘルパーT細胞)との間のいくつかのシグナル伝達事象を必要とする、複数工程プロセスである。リンパ球活性化が生じるためには、休止しているリンパ球に、2つのタイプのシグナルが伝達されなければならない。一次的なタイプ(primary type)(刺激)は、免疫応答に特異性を与え、抗原ペプチド−MHC複合体の認識の際に、抗原特異的レセプター(T細胞上のTcRおよび細胞上のBcR)により媒介される。第二のタイプ(共刺激性)は、上記応答の大きさを担う。このシグナルは、上記リンパ球の表面に発現される「補助」レセプターを介して媒介される。共刺激の要求は、リンパ球活性化が厳密に調節されることを可能にする。次いで、共刺激は、これらの細胞上の、正の共刺激シグナルを妨げる負のシグナルを送達し得る阻害レセプターによって調節される。
【0003】
多くの証拠が、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリー分子に属する多数の構造的に関連しているリガンドおよびレセプターが、リンパ球活性化プロセスの間に使用されるシグナルと相互作用し、かつその均衡を保っていることを示唆している(非特許文献1)。このような構造的に関連する群の1つとしては、B7ファミリーのリガンド(B7−1、B7−2、ICOS−L、PD−L1、PD−L2およびB7−H3)が挙げられ、これらは、この分子の細胞外部分に存在する1つのIg−V様(「V」)ドメインおよび1つのIg−C様(「C」)ドメインを有する類似のドメイン構造を共有する(非特許文献2)。B7タンパク質のエキソン欠失研究および結晶学的研究において、レセプター−リガンド相互作用が、上記Vドメインを介して生じ(非特許文献3)、他方、上記Cドメインは、上記Vドメインのための構造的支持体手段として働くことが証明されている。
【0004】
B7−1およびB7−2は、正のシグナル(それらの低親和性同種レセプターCD28を介して)または負のシグナル(高親和性レセプターCTLA4を介して)のいずれかを送達し得る。ICOS−LとICOSレセプターとの相互作用が、正のシグナル伝達をもたらすのに対し、PD−L1は、そのレセプターであるPD−1を介して負のシグナルを送達する(非特許文献4)。
【0005】
本開示は、B7ファミリーリガンドの最も新しいメンバーであるB7−H3により調節される、免疫応答の調節に関する。ヒトB7−H3は、元々、他のB7ファミリーメンバーと20%〜27%のアミノ酸同一性を共有し、かつ1つのVドメインおよび1つのCドメインを有する、B7様タンパク質として同定された(非特許文献5)。しかし、部分的なB7−H3 ESTクローンのより詳細な分析は、哺乳動物種における遺伝子エキソンの変化を証明した(非特許文献6)。特に、霊長類において、B7−H3 cDNAは、2つの形態で存在する:一方は、VドメインおよびCドメインの単一セット(「VC形態」)をコードし、そして、他方は、VドメインおよびCドメインの二重セット(「VCVC形態」)をコードする。霊長類のB3−H3とは対照的に、齧歯動物のB7−H3 cDNAは、VCとして単一形態でのみ存在する。
【0006】
B7−H3 VCは、最初、ヒト(非特許文献7および特許文献1)およびマウス(非特許文献8)の両方において、共刺激リガンドとして特徴付けられた。特に、ヒトT細胞のB7−H3 VCによる共刺激が、T細胞増殖の促進、細胞傷害性T細胞の誘導およびγインターフェロン転写物発現の上昇をもたらすことが報告されている。さらに、細胞ベースのアッセイにおける結合実験は、B7−H3 VCが、CTLA−4、ICOSまたはPD−1ではない、活性化T細胞上に発現されるレセプターに結合することを示唆している。
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/016876号公報
【非特許文献1】Frauwirthら,J.Clin.Invest.,2002,109:295−299
【非特許文献2】Sharpeら,Nature Rev.Immunol.,2002,2:116−126
【非特許文献3】Ostrovら,Science,2000,290:816−819
【非特許文献4】Carrenoら,Annual Rev.Immunol.,2002,20:29−53
【非特許文献5】Chapovalら,Nat.Immunol.,2001,2:269−274
【非特許文献6】Sunら,J.Immunol.,2002,168:6294−6297
【非特許文献7】Chapovalら,Nat.Immunol.,2001,2:269−274
【非特許文献8】Sunら(2002)J.Immunol.,168:6294−6297
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、免疫系に関連する障害および状態のための治療方法を提供する必要が存在する。免疫応答の適切な調節は、上記B7−H3経路の操作により達成され得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明の目的の1つは、免疫応答の調節のための方法および組成物を提供することである。本発明のさらなる目的は、以下の説明において部分的に述べられ、そして、その説明から部分的に理解されるか、または本発明の実施により学習され得る。
【0009】
本発明は、部分的に、B7−H3のVCVC形態が、複数の組織にわたって観察されるB7−H3転写物の大部分を占め、他方、B7−H3のVC形態は、少量の転写物でしかないという発見および証明に基づく。本発明は、部分的に、B7−H3 VCおよびB7−H3 VCVCの両方の形態が、B7−H3存在下でのT細胞増殖の減少およびこれらの細胞によるサイトカイン分泌の減少により証拠付けられるように、リンパ球活性化に対して阻害効果を示すという発見および証明にさらに基づく。本発明は、部分的に、進化学的選択の純化を現在経験しているB7−H3遺伝子内の特定領域の発見になおさらに基づく。
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下の手段を提供する:
(項目1)
リンパ球の活性化を阻害する方法であって、該方法は、該リンパ球とB7−H3アゴニストとを接触させる工程、および該アゴニストが、該リンパ球の活性化を阻害することを可能にする工程を包含する、方法。
(項目2)
項目1に記載の方法であって、前記B7−H3アゴニストが、B7−H3の可溶性形態である、方法。
(項目3)
項目3に記載の方法であって、前記B7−H3アゴニストが、配列番号15を含む、方法。
(項目4)
項目2に記載の方法であって、前記可溶性形態が、B7−H3の少なくとも1つのVドメインを含む、方法。
(項目5)
項目4に記載の方法であって、前記Vドメインが、(a)配列番号7、または(b)配列番号7と実質的に同一であるアミノ酸配列を含む、方法。
(項目6)
項目4に記載の方法であって、前記B7−H3の可溶性形態が、B7−H3の少なくとも1つのCドメインをさらに含む、方法。
(項目7)
項目4に記載の方法であって、前記B7−H3の可溶性形態が、抗体のFc領域をさらに含む、方法。
(項目8)
項目7に記載の方法であって、前記B7−H3の可溶性形態が、(a)配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21もしくは配列番号22から選択されるアミノ酸配列;または(b)配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21もしくは配列番号22から選択される配列のうちの少なくとも1つと実質的に同一であるアミノ酸配列を含む、方法。
(項目9)
項目7に記載の方法であって、前記B7−H3の可溶性形態が、(a)配列番号10、配列番号12もしくは配列番号14から選択されるアミノ酸配列;または(b)配列番号10、配列番号12もしくは配列番号14から選択される配列のうちの少なくとも1つと実質的に同一であるアミノ酸配列を含む、方法。
(項目10)
項目3に記載の方法であって、前記B7−H3アゴニストが、一次刺激分子に連結される、方法。
(項目11)
項目10に記載の方法であって、前記B7−H3の可溶性形態と前記一次刺激分子とが、100μm以下だけ隔てられている、方法。
(項目12)
項目1に記載の方法であって、前記B7−H3アンタゴニストが、配列番号15のアミノ酸をコードする核酸である、方法。
(項目13)
リンパ球の活性化を促進する方法であって、該方法は、該リンパ球とB7−H3アンタゴニストとを接触させる工程、および該アンタゴニストが、該リンパ球の活性化を促進することを可能にする工程を包含する、方法。
(項目14)
項目13に記載の方法であって、前記リンパ球が、ヒトリンパ球である、方法。
(項目15)
項目13に記載の方法であって、前記B7−H3アンタゴニストが、B7−H3に対する抗体またはB7−H3レセプターに対する抗体である、方法。
(項目16)
項目13に記載の方法であって、前記B7−H3アンタゴニストが、アンチセンス核酸またはsiRNAである、方法。
(項目17)
項目1〜16のいずれか1項に記載の方法であって、前記リンパ球が、T細胞である、方法。
(項目18)
項目17に記載の方法であって、前記T細胞が、CD4T細胞である、方法。
(項目19)
項目1〜16のいずれか1項に記載の方法であって、前記リンパ球が、哺乳動物中にある、方法。
(項目20)
項目19に記載の方法であって、前記哺乳動物が、免疫障害、癌もしくは感染症のうちの少なくとも1つに罹患しているかまたはその危険がある、方法。
(項目21)
項目19に記載の方法であって、前記哺乳動物が、第VIII因子または第IX因子を用いて処置される、方法。
【0010】
1つの局面において、本開示は、インビトロ、インビボおよびエキソビボの免疫応答調節方法(ヒトまたは動物の処置方法を含む)を提供する。いくつかの実施形態において、このような方法は、リンパ球(例えば、T細胞)とB7−H3因子とを接触させる工程を包含し、ここで、このB7−H3因子は、(a)B7−H3の誘導体(例えば、B7−H3の可溶性形態);(b)B7−H3に対する抗体;(c)B7−H3レセプターに対する抗体;または(d)B7−H3 mRNAまたはその相補体の少なくとも一部を含む核酸であり得る。特定の実施形態において、上記B7−H3因子は、一次的な(primary)(刺激、抗原特異的)シグナルに連結される。
【0011】
特定の実施形態において、本発明の方法は、このような組成物を用いる処置に対して感受性の免疫障害を処置または予防するために使用される。具体的には、このような障害としては、自己免疫障害(例えば、慢性関節リウマチ(RA)、乾癬、多発性硬化症(MS)、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、全身性エリテマトーデス(SLE)、I型糖尿病)、移植片拒絶反応、移植片対宿主病(GVHD)、過剰増殖性免疫障害、癌、免疫抑制障害、種々の感染性疾患などを含む、免疫学的障害が挙げられるが、これらに限定されない。従って、特定の実施形態において、本発明の方法は、リンパ球活性化の阻害を必要としている被験体を同定する工程、およびアゴニストであるB7−H3因子をその被験体に投与する工程を包含する。他の実施形態において、上記方法は、リンパ球活性化の促進を必要としている被験体を同定する工程、およびアンタゴニストであるB7−H3因子をその被験体に投与する工程を包含する。
【0012】
本発明の方法において使用される抗体は、2つの群((1)B7−H3に対する抗体および(2)B7−H3レセプターに対する抗体)に分類される。これらの抗体は、(a)B7−H3に特異的に結合し、それにより、B7−H3とそのレセプターとの相互作用を遮断するか;(b)B7−H3レセプターに特異的に結合し、それにより、B7−H3とのその相互作用を遮断するか;または(c)(a)および(b)の両方を実施し得る。所望される効力に依存して、上記抗体は、免疫応答を促進するかまたは阻害するかのいずれかのために、いずれかの形態で使用され得る。いくつかの実施形態において、抗体は、天然で発現されるB7−H3の生物学的活性に拮抗するために投与される。
【0013】
本開示は、B7−H3の可溶性形態を含有する組成物を含む方法をさらに提供する。いくつかの実施形態において、B7−H3の可溶性形態は、全長より短いB7−H3を含み、そして、B7−H3の膜貫通ドメインも細胞内ドメインも含まない。さらなる実施形態において、B7−H3の可溶性形態は、B7−H3の少なくとも1つのVドメイン、および必要に応じて、B7−H3の少なくとも1つのCドメインを含む。可溶性形態は、少なくとも2つ、3つ、4つまたは5つのVドメイン、および必要に応じて、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのCドメインを含み得る。なおさらなる実施形態において、B7−H3の可溶性形態は、(a)B7−H3の細胞外ドメイン由来の第1のアミノ酸配列および(b)抗体の定常領域由来の第2のアミノ酸配列を含み得る。上記第1のアミノ酸配列は、B7−H3細胞外ドメインの全てまたは部分に由来し、そして、(a)B7−H3の天然に存在する形態がそのレセプターへ結合するのを競合的に阻害し、そして/または(b)負の共刺激活性を有する。いくつかの実施形態において、上記第1のアミノ酸配列は、配列番号15において示されるような配列を含む。特定の実施形態において、上記第1のアミノ酸配列は、配列番号14のアミノ酸23〜244もしくは配列番号12のアミノ酸23〜462と、同一であるかまたは実質的に同一である。例示的実施形態において、上記B7−H3の可溶性形態は、配列番号12または配列番号14におけるような配列を含む。
【0014】
本開示はまた、このような核酸によりコードされる核酸もしくはポリペプチドの治療的な使用または非治療的な使用を含む方法を提供し、ここで、このような核酸のヌクレオチド配列は、(a)配列番号1、配列番号3、配列番号5のヌクレオチド配列またはその部分;および(b)少なくとも60ヌクレオチド長、80ヌクレオチド長、100ヌクレオチド長、120ヌクレオチド長または140ヌクレオチド長であり、かつ規定される条件下で、(a)の核酸に対してこれらにハイブリダイズする核酸から選択され、ここで、この核酸は、負の共刺激活性を有する発現産物をコードする。特定の実施形態において、このような核酸は、配列番号15におけるようなアミノ酸配列をコードする。例示的実施形態において、上記核酸は、実質的に配列番号11または配列番号13におけるような配列を含む。
【0015】
本発明の方法はまた、免疫応答を増強するために、B7−H3の発現を減少するための短い干渉RNAおよびアンチセンス核酸の使用を包含する。
【0016】
本発明はまた、任意の上述の核酸を含むベクターおよび任意のこのようなベクターを含む宿主細胞を包含する。
【0017】
上述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方が、例示および説明にすぎず、そして、特許請求されている本発明を限定するものではないことが、理解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(配列の簡単な説明)
配列番号1および配列番号2は、それぞれ、ヒトB7−H3 VCの核酸全長配列およびアミノ酸全長配列を示す。
【0019】
配列番号3および配列番号4は、それぞれ、マウスB7−H3の核酸全長配列およびアミノ酸全長配列を示す。
【0020】
配列番号5および配列番号6は、それぞれ、ヒトB7−H3 VCVCの核酸全長配列およびアミノ酸全長配列を示す。
【0021】
配列番号7は、ヒトB7−H3のアミノ酸配列(B7−H3 VCまたはB7−H3 VCVCのアミノ酸28〜139)を示す。
【0022】
配列番号8は、ヒトB7−H3 VCVCのV1領域とV2領域との間(すなわち、配列番号6のアミノ酸28〜139とアミノ酸246〜357との間)で保存されたアミノ酸を示す。
【0023】
配列番号9および配列番号10は、それぞれ、オンコスタチンMシグナル配列(配列番号10のアミノ酸1〜22)、ヒトB7−H3 VCの細胞外ドメイン(配列番号10のアミノ酸23〜244)およびマウスIgG2amの定常領域(配列番号10のアミノ酸245〜482)を含む融合ポリペプチドの核酸配列およびアミノ酸配列を示す。
【0024】
配列番号11および配列番号12は、それぞれ、オンコスタチンMシグナル配列(配列番号12のアミノ酸1〜22)、ヒトB7−H3 VCVCの細胞外ドメイン(配列番号12のアミノ酸23〜462)およびマウスIgG2amの定常領域(配列番号12のアミノ酸463〜700)を含む融合ポリペプチドの核酸配列およびアミノ酸配列を示す。
【0025】
配列番号13および配列番号14は、それぞれ、オンコスタチンMシグナル配列(配列番号14のアミノ酸1〜22)、マウスB7−H3 VCの細胞外ドメイン(配列番号14のアミノ酸23〜244)およびマウスIgG2amの定常領域(配列番号14のアミノ酸245〜482)を含む融合ポリペプチドの核酸配列およびアミノ酸配列を示す。
【0026】
配列番号15は、哺乳動物B7−H3のIg V様ドメインにおける保存されたアミノ酸を示す。
【0027】
配列番号16〜22は、哺乳動物B7−H3のIg V様領域における個々の高度に保存された領域を示す。
【0028】
配列番号23〜35は、実施例に記載されるように、B7−H3配列の単離のために用いられたPCRプライマーを示す。
【0029】
(発明の詳細な説明)
(1.定義)
本発明がより容易に理解されるために、本明細書中で、特定の用語が定義される。さらなる定義は、詳細な説明を通して述べられる。
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」とは、免疫グロブリンまたはその部分をいい、そして、供給源、生成方法および他の特性に関わらず、抗原結合部位を含む任意のポリペプチドを包含する。上記用語としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、モノ特異的抗体、ポリ特異的抗体、非特異的抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、キメラ抗体、合成抗体、組み換え抗体、ハイブリッド抗体およびCDR移植化抗体が挙げられるが、これらに限定されない。用語「抗原結合ドメイン」とは、抗原の部分もしくは全体に特異的に結合するかまたは補完的である領域を含む、抗体分子の部分をいう。抗原が大きい場合、抗体は、その抗原の特定部分に結合するのみであり得る。「エピトープ」または「抗原決定基」は、抗体の抗原結合ドメインとの特異的な相互作用を担う抗原分子の部分である。抗原結合ドメインは、1つ以上の抗体可変ドメイン(例えば、VドメインからなるいわゆるFd抗体フラグメント)により提供され得る。抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(V)および抗体重鎖可変領域(V)を含む。
【0031】
用語「抗B7−H3抗体」または「B7−H3に対する抗体」とは、少なくとも1つのB7−H3形態の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する任意の抗体をいい、これらの抗体としては、B7−H3 VCおよびB7−H3 VCVCが挙げられるが、これらに限定されない。用語「抗B7−H3レセプター抗体」および「B7−H3レセプターに対する抗体」とは、B7−H3に対するレセプターの少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する任意の抗体をいう。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「B7−H3」とは、そうでないと言及されなければ、B7−H3の任意および全ての形態をいい、これらとしては、VCおよびVCVCが挙げられるが、これらに限定されない。用語「B7−H3因子」とは、B7−H3の生物学的活性を調節可能な任意の化合物をいう。用語「調節」およびその同義語は、B7−H3の生物学的活性(例えば、B7−H3レセプターを発現するリンパ球に対して、天然に発現されるB7−H3により発揮される効力と関連する活性)の減少または増加をいう。生物学的活性の減少または増加は、好ましくは、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれより多い。このような減少を引き起こすB7−H3因子は、「アンタゴニスト」と呼ばれ、他方、このような増加を引き起こすB7−H3因子は、「アゴニスト」と呼ばれる。B7−H3のアンタゴニストが、B7−H3レセプターを発現するリンパ球に対して、天然に発現されるB7−H3により発揮される「負の共刺激シグナル」を妨げるのに対し、アゴニストは、このような「負の共刺激シグナル」を増強することが、理解される。従って、B7−H3のアンタゴニストは、一般的に、(例えば、細胞増殖および/またはサイトカイン分泌により測定されるように)リンパ球活性化の上昇を引き起こすのに対し、B7−H3のアゴニストは、一般的に、リンパ球活性化の減少を引き起こす。
【0033】
用語「生物学的活性」とは、生物学的な系において、分子により実現される、機能または一連の機能(またはその機能が寄与する効力)をいい、インビボであってもインビトロであってもよい。生物学的活性は、例えば、リンパ球増殖、生存および機能(例えば、サイトカイン分泌)、細胞膜分化マーカーの発現、転写、翻訳もしくは翻訳後レベルの遺伝子発現に対する効力または自己抗体産生に対する効力などによってアッセイされ得る。
【0034】
用語「共刺激」およびその同義語は、リンパ球活性化を可能にするための応答リンパ球および「補助」細胞(例えば、T細胞活性化の場合には抗原提示細胞(APC)またはB細胞活性化にはヘルパーT細胞)上での細胞表面分子のレセプター/リガンド対の間のシグナル伝達事象をいう。用語「負の共刺激」、「負の共刺激シグナル」、「阻害シグナル」、「負の共刺激活性」およびそれらの同義語は、このようなシグナルの非存在下に対して、リンパ球活性化を阻害するシグナル伝達事象をいう。活性化T細胞が、ヘルパー細胞(すなわち、CD4)、細胞傷害性またはサプレッサ細胞(すなわち、CD8)であり得ることが理解される。負の共刺激活性は、標準の技術を用いて測定され得、そして、実施例に記載されるように限定されない。特に、ここで開示されるB7−H3因子は、リンパ球活性化を阻害し、(a)細胞増殖および/または(b)サイトカイン分泌によって測定され得る。
【0035】
用語「誘導体」、「誘導される」およびそれらの同義語は、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列に関して使用される場合、元の配列の全てもしくは部分と同一であるかまたは実質的に同一である配列をいい、そして、例えば、アミノ酸またはヌクレオチドの置換、欠失もしくは付加、または他の改変によって、その元の配列から実際に得られ得る。
【0036】
用語「規定される条件下でのハイブリダイゼーション」とは、ハイブリダイゼーションおよび洗浄のための条件をいい、その条件下で、互いに対して有意に同一または相同性であるヌクレオチド配列は、互いに結合したままである。上記条件は、少なくとも50ヌクレオチド、100ヌクレオチド、150ヌクレオチド、300ヌクレオチド以上の長さであり、かつ少なくとも70%、より好ましくは、少なくとも80%、さらにより好ましくは、少なくとも85〜90%同一である配列が、互いに結合したままであるようなものである。パーセント同一性は、Altschulら(1997)Nucleic Acids Res.,25:3389−3402に記載されるように決定され得る。低いストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシーおよび高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の非限定的な例は、後続の節において提供される。
【0037】
用語「免疫学的障害」とは、免疫応答が異常である障害および状態をいう。上記異常応答は、免疫細胞(例えば、T細胞またはB細胞)の異常な増殖、成熟、生存、分化または機能に起因し得る。このような障害としては、自己免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ(RA)、乾癬、多発性硬化症(MS)、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、全身性エリテマトーデス(SLE)、I型糖尿病)、移植片拒絶反応、移植片対宿主病(GVHD)、過剰増殖性免疫障害および免疫抑制障害が挙げられるが、これらに限定されない。特に、本開示は、B7−H3因子(例えば、B7−H3の可溶性形態またはB7−H3に対する抗体もしくはそのレセプターに対する抗体)を含有する組成物を含む方法を提供する。
【0038】
用語「単離された」とは、その天然の環境から実質的に離れている分子をいう。例えば、単離されたタンパク質は、それが由来する細胞供給源由来もしくは組織供給源由来の細胞物質または他のタンパク質から、実質的に離れている。用語「単離された」とはまた、単離されたタンパク質が、薬学的組成物として投与されるために充分に純粋であるか、または少なくとも70〜80%(w/w)純粋、より好ましくは、少なくとも80〜90%(w/w)純粋、さらにより好ましくは、90〜95%純粋;そして、最も好ましくは、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%(w/w)純粋である調製物をいう。本明細書中で使用される場合、用語「単離された」とはまた、実質的にエンドトキシンを含まない(すなわち、エンドトキシンレベルが、500、300、200、100、50、10、5、1、0.5、0.1、0.05、0.01EU/ml未満または検出可能レベル未満である)調製物をいう。
【0039】
用語「哺乳動物」とは、分類された任意の動物(例えば、ヒトを含む)をいう。
【0040】
用語「一次刺激シグナル(primary stimulatory signal)」とは、免疫応答に特異性を与えるリンパ球に送達される刺激シグナルをいい、そして抗原ペプチド−MHC複合体の認識の際に抗原特異的レセプター(T細胞上のTcRおよび細胞上のBcR)により媒介される。
【0041】
用語「処置」、「治療方法」およびそれらの同義語は、治療処置および予防(prophylactic/preventative)手段の両方をいう。処置を必要としているものとしては、特定の医学的障害を既に有している個体およびその障害の危険がある個体(すなわち、最終的にはその障害を獲得しそうな個体)が挙げられ得る。治療方法は、症状の予防もしくは改善、またはそうでなければ所望される生物学的結果をもたらし、そして、臨床的な徴候(例えば、実施例に記載されるようなPASI)の改善、疾患の発症の遅延、リンパ球および/または抗体の減少/増大されたレベルなどにより評価され得る。
【0042】
本明細書中で使用される場合、用語「治療化合物」および「治療剤(therapeutic)」とは、障害の臨床的な発現を改善可能であるかまたは所望される生物学的結果を生成するための、任意の化合物をいう。
【0043】
用語「治療有効用量」および「治療有効量」とは、患者における症状の予防もしくは改善、または所望される生物学的結果(例えば、臨床的な徴候の改善(例えば、実施例に記載されるようなPASI)、疾患の発症の遅延、リンパ球および/または抗体の減少/増大されたレベルなど)をもたらす化合物の量をいう。上記有効量は、後続の節において記載されるように決定され得る。
【0044】
用語「特異的に結合する」およびその同義語は、2つの分子が、生理学的条件下で比較的安定な複合体を形成することを意味する。特異的な結合は、高い親和性および低い容量から中程度までの容量により特徴付けられる。非特異的な結合は、通常、中程度から高い容量とともに低い親和性を有する。代表的に、上記結合は、上記親和性定数Kが、10−1より高いか、または好ましくは、10−1より高い場合に特異的であると考えられる。必要な場合、非特異的な結合は、結合条件を変化させることによって、特異的な結合に実質的に影響を与えることなく減少され得る。このような条件は、当該分野で公知であり、そして、慣用的な技術を用いる当業者は、適切な条件を選択し得る。上記条件は、通常、タンパク質濃度、その溶液のイオン強度、温度、結合させる時間、非関連分子(例えば、血清アルブミン、ミルクカゼイン)の濃度などに関して規定される。
【0045】
熟語「実質的に同一」とは、関連するアミノ酸配列が、所与の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%同一であることを意味する。例として、このような配列は、種々の種由来の改変体であり得るか、またはそれらは、トランケーション、欠失、アミノ酸の置換もしくは付加による所与の配列から誘導され得る。2つのアミノ酸配列の間のパーセント同一性は、標準的な配列アルゴリズム(例えば、Altschulら(1990)J.Mol.Biol.,215:403−410に記載されるBasic Local Alignment Tool(BLAST)、Needlemanら(1970)J.Mol.Biol.,48:444−453のアルゴリズム;Meyersら(1988)Comput.Appl.Biosci.,4:11−17のアルゴリズム;またはTatusovaら(1999)FEMS Microbiol.Lett.,174:247−250など)により決定される。このようなアルゴリズムは、BLASTN、BLASTPおよび「BLAST 2 Sequences」プログラムに組み込まれている(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLASTを参照のこと)。このようなプログラムを利用する場合、デフォルトパラメータが使用され得る。例えば、ヌクレオチド配列に対しては、「BLAST 2 Sequences」プログラムに対して以下の設定が使用され得る:プログラム BLASTN、マッチに対する獲点(reward for match) 2、ミスマッチに対するペナルティ(penalty for mismatch)−2、オープンギャップペナルティ(open gap penalty)およびエクステンションギャップペナルティ(extension gap penalty) それぞれ、5および2、ギャップx_ドロップオフ(gap x_dropoff) 50、予測(expect) 10、文字サイズ(word size) 11、フィルタ(filter) オン。アミノ酸配列に対しては、以下の設定が、「BLAST 2 Sequences」に対して使用され得る:プログラム BLASTP、マトリックス(matrix) BLOSUM62、オープンギャップペナルティおよびエクステンションギャップペナルティ それぞれ、11および1、ギャップx_ドロップオフ 50、予測 10、文字サイズ 3、フィルタ オン。
【0046】
用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」とは、デオキシリボ核酸(DNA)をいい、そして、適切な場合は、リボ核酸(RNA)またはペプチド核酸(PNA)をいう。上記用語はまた、ヌクレオチドアナログ、および一本鎖ポリヌクレオチドまたは二本鎖ポリヌクレオチド(例えば、siRNA)を含むことが理解されるべきである。ポリヌクレオチドの例としては、プラスミドDNAまたはそのフラグメント、ウイルスDNAまたはウイルスRNA、アンチセンスRNAなどが挙げられるが、これらに限定されない。用語「プラスミドDNA」とは、環状である二本鎖DNAをいう。本明細書中で使用される場合、「アンチセンス」とは、配列相補性に起因してmRNAのコード領域および/または非コード領域の一部に対してハイブリダイズし、それにより、そのmRNAからの翻訳を干渉し得る核酸をいう。用語「siRNA」および「RNAi」とは、mRNAの分解を誘導する能力を有し、それにより、遺伝子発現を「サイレンシングする」、二本鎖RNAである核酸をいう。代表的に、siRNAは、少なくとも15ヌクレオチド長〜50ヌクレオチド長(例えば、20ヌクレオチド長、21ヌクレオチド長、22ヌクレオチド長、23ヌクレオチド長、24ヌクレオチド長、25ヌクレオチド長、26ヌクレオチド長、27ヌクレオチド長、28ヌクレオチド長、29ヌクレオチド長または30ヌクレオチド長)である。
【0047】
用語「Vドメイン」(単数または複数)とは、特に述べられなければ、起源の種に関わらず、B7−H3のタンパク質またはゲノム配列における第1のIg様定常ドメイン(V)および/または第2のIg様ドメイン(V)(例えば、配列番号15を含む任意の配列およびそれをコードするヌクレオチド配列)をいう。同様に、用語「Cドメイン」(単数または複数)とは、特に述べられなければ、起源の種に関わらず、B7−H3のタンパク質またはゲノム配列における第1のIg様定常ドメイン(C)および/または第2のIg様定常ドメイン(C)(例えば、配列番号15を含む任意の配列およびそれをコードするヌクレオチド配列)をいう。文脈がそうではないことを要求しなければ、VドメインおよびCドメインとの言及は、タンパク質ドメイン、それらのための核酸配列およびそのコード配列に対応する偽エキソン(pseudo−exon)配列(例えば、齧歯動物ゲノム配列のCΨおよびVΨ)を包含することが理解されるべきである。
【0048】
(2.B7−H3因子)
1つの局面において、本発明は、免疫応答の調節におけるB7−H3因子の使用に関する。本発明は、部分的に、B7−H3のVCVC形態が、複数の組織にわたって観察されるB7−H3転写物の大部分を占め、他方、B7−H3のVC形態は、少量の転写物でしかないという発見および実証に基づく。本発明は、部分的に、B7−H3 VCおよびB7−H3 VCVCの両方の形態が、B7−H3存在下での増殖の減少およびT細胞によるサイトカイン分泌の減少により証拠付けられるように、T細胞活性化に対して阻害効果を示すという発見および実証にさらに基づく。本発明は、部分的に、進化学的選択の純化を現在経験しているB7−H3遺伝子内の特定領域の発見になおさらに基づく。
【0049】
マウス、ヒト、サルおよびハムスターのゲノムのVエキソンの一部は、Align module of Vector NTI version 8.0のClustalWを用いて配列決定されている。9ヌクレオチド以上の配列が100%の配列同一性を示す領域を、最も高度に保存されたヌクレオチド部位として選択した。これらの11個の保存された領域は、配列番号15に示される。
【0050】
特定の実施形態において、本発明の方法において使用される組成物は、天然に存在するB7−H3の生物学的活性に拮抗するかまたは作用するB7−H3因子を含有する。いくつかの実施形態において、上記B7−H3因子は、タンパク質性である(すなわち、上記B7−H3因子は、ペプチド結合により結合されたアミノ酸を含む)。タンパク質性B7−H3因子としては、B7−H3(B7−H3−Ig融合体、B7−H3に対する抗体およびB7−H3レセプターに対する抗体を含む)の可溶性形態が挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態において、本発明の方法において使用される組成物は、非タンパク質性B7−H3因子(例えば、核酸、低分子インヒビターなど)を含有する。特に、ここで開示されるB7−H3因子は、以下:(a)リンパ球増殖:および(b)サイトカイン(例えば、インターロイキン(IL)−10、腫瘍壊死因子(TNF)−α、インターフェロン(IFN)−γおよび顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF))分泌のうちの1つ以上により測定される場合、リンパ球活性化を調節する。いくつかの実施形態において、B7−H3因子は、そのB7−H3因子が治療的な使用のために適切であるようにする、薬物動態学的特性(例えば、充分に長い循環半減期および/またはタンパク分解性の分解からの良好な保護)を有する。
【0051】
(2.1 抗体)
本発明の方法において使用される抗体は、2つの群((1)B7−H3に対する抗体および(2)B7−H3レセプターに対する抗体)に分類される。種々の実施形態において、本発明の方法において使用される抗体は、(a)B7−H3;(b)B7−H3レセプター;(c)B7−H3中のVドメイン;(d)B7−H3中のCドメイン;および(e)配列番号15、配列番号2、配列番号4、配列番号6または配列番号7を含むポリペプチドのうちの少なくとも1つに、特異的に結合する。このような抗体は、(a)B7−H3に特異的に結合し、それにより、B7−H3とそのレセプターとの相互作用を遮断するか;(b)B7−H3レセプターに特異的に結合し、それにより、B7−H3とのその相互作用を遮断するか;または(c)(a)および(b)の両方を実施し得る。所望される効力に依存して、上記抗体は、後続の節に記載されるように、免疫応答を(B7−H3生物学的活性のアンタゴニストとして)促進するかまたは(B7−H3生物学的活性のアゴニストとして)阻害するかのいずれかのために、いずれかの形態で使用され得る。
【0052】
抗体は、例えば、従来のハイブリドーマ技術(KohlerおよびMilstein(1975)Nature,256:495−499)、組み換えDNA法(米国特許第4,816,567号)または抗体ライブラリを用いるファージディスプレイ技術(Clacksonら(1991)Nature,352:624−628;Marksら(1991)J.Mol.Biol.,222;581−597)によって作製され得る。種々の他の抗体生成技術については、例えば、Antibodies:A Laboratory Manual,Harlowら編,Cold Spring Harbor Laboratory,1988;およびAntibody Engineering,第2版,Oxford University Press,Borrebaeck編,1995を参照のこと。ヒトへの投与のために、抗体は、完全にヒトまたはヒト化であり得る。特定の実施形態において、抗体は、後続の節において記載されるように、変化または改変されたFc領域を有し得る。
【0053】
(2.2 B7−H3の可溶性形態)
本発明の方法は、リンパ球活性化を阻害するB7−H3の可溶性形態の使用を含む。いくつかの実施形態において、B7−H3の可溶性形態は、全長より短いB7−H3を含み、かつB7−H3の膜貫通ドメインも細胞内ドメインも含まない。このような可溶性形態はまた、シグナル配列も含まなくてもよい。例示のためのみに、かつ限定することなく、図1Aに示されるように、ヒトおよびマウスのB7−H3におけるこれらのドメインが示され得る。
【0054】
特定の実施形態において、可溶性形態は、配列番号15または配列番号7のようなアミノ酸配列を含む。なおさらなる実施形態において、B7−H3の可溶性形態は、B7−H3の少なくとも1つのVドメイン、そして、必要に応じて、B7−H3の少なくとも1つのCドメインを含む。可溶性形態は、少なくとも2つ、3つ、4つまたは5つのVドメイン、および必要に応じて、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのCドメインを含み得る。
【0055】
さらなる実施形態において、B7−H3の可溶性形態は、(a)B7−H3の細胞外ドメイン由来の第1のアミノ酸配列および(b)抗体の定常領域由来の第2のアミノ酸配列を含み得る。上記第1のアミノ酸配列は、B7−H3細胞外ドメインの全てまたは部分に由来し、そして、(a)B7−H3の天然に存在する形態がそのレセプターへ結合するのを競合的に阻害し、そして/または(b)負の共刺激活性を有する。
【0056】
いくつかの実施形態において、上記第1のアミノ酸配列は、配列番号15において示されるような配列を含む。特定の実施形態において、上記第1のアミノ酸配列は、配列番号14のアミノ酸23〜244もしくは配列番号12のアミノ酸23〜462と、同一であるかまたは実質的に同一である。例示的実施形態において、上記B7−H3の可溶性形態は、配列番号12または配列番号14におけるような配列を含む。
【0057】
上記第2のアミノ酸配列は、抗体の定常領域(例えば、Fc領域)に由来し得る。いくつかの実施形態において、上記第2のアミノ酸配列は、IgGのFc領域に由来する。関連する実施形態において、上記Fc領域は、IgG、IgGまたは別のIgGアイソタイプであるIgGに由来する。非限定的実施形態において、上記第2の配列は、マウスIgG2amに由来する。
【0058】
特定の実施形態において、上記第2のアミノ酸配列は、リンカー配列によって結合されるかまたは結合されずに、上記第1のアミノ酸配列のC末端またはN末端に結合する。上記リンカー配列の正確な長さおよび配列、ならびに結合される配列に対するその配向は、変化し得る。上記リンカーは、例えば、1つ以上のGly−Serを含み得る。上記リンカーは、少なくとも2アミノ酸長、少なくとも10アミノ酸長、少なくとも20アミノ酸長、少なくとも30アミノ酸長であり得、そして、所望される特性(例えば、溶解度、長さ、立体化学的分離、免疫原性など)に基づいて選択される。
【0059】
(2.3 タンパク質性B7−H3因子の誘導体)
タンパク質性B7−H3因子(B7−H3の可溶性形態、B7−H3に対する抗体およびB7−H3レセプターに対する抗体を含む)の誘導体は、置換、付加および/もしくは欠失/トランケーションによりそれらのアミノ酸配列を変化させるか、または機能的な等価体もしくは分子をもたらす化学的な改変を導入することによって、作製され得る。任意のタンパク質の配列における特定のアミノ酸が、そのタンパク質の活性に有害に作用することなく、他のアミノ酸に置換され得ることが、当業者により理解される。
【0060】
それらの生物学的活性、機能または有用性を認識可能なほどに損うことなく、本発明のタンパク質性B7−H3因子のアミノ酸配列またはそれらをコードするDNA配列において、種々の変化が作製され得る。このような誘導体の使用は、本発明の範囲内である。具体的な実施形態において、上記誘導体は、機能的に活性である(すなわち、(例えば、配列番号2、配列番号4または配列番号6に示されるような)天然に存在するB7−H3の細胞外ドメインに関連する、1つ以上の活性を示し得る)。上記配列内でのアミノ酸の代わりは、そのアミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択され得る(表1を参照のこと)。さらに、種々のアミノ酸が、一般的に、中性アミノ酸(例えば、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニン)に置換される(例えば、MacLennanら(1998)Acta Physiol.Scand.Suppl.643:55−67;Sasakiら(1998)Adv.Biophys.35:1−24を参照のこと)。
【0061】
【表1】

【0062】
B7−H3因子は、他のタンパク質および薬学的因子に、化学的に接続されるかまたは結合され得る。このような改変は、結果としてもたらされる組成物の薬物動態および/または生体分布を変化させるために設計され得る。本発明のB7−H3−Igおよび抗体はまた、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号;または同第4,179,337号に述べられるような様式で、グリコシル化され得るか、PEG化され得るかまたは別の非タンパク質性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレン)に連結され得る。上記B7−H3−Igおよび抗体は、ポリマーへの共有結合により化学的に改変されて、例えば、それらの循環半減期を上昇させ得る。例示的なポリマーおよびそれらをペプチドに結合するための方法はまた、米国特許第4,766,106号;同第4,179,337号;同第4,495,285号;および同第4,609,546号に示される。
【0063】
抗体のFc部分を含むB7−H3因子(例えば、B7−H3−Ig融合体)または本発明の方法において使用される抗体は、そのFc領域中でさらに改変されて、エフェクター機能を最小限に抑え得る。このような改変としては、Fcレセプターへの結合を変化させる特定のアミノ酸残基の変化(Lundら(1991)J.Immun.,147:2657−2662およびMorganら(1995)Immunology,86:319−324)、またはその定常領域が由来する種の変化が挙げられる。抗体およびB7−H3−Ig融合体は、重鎖のC2領域中にエフェクター機能(すなわち、Fcレセプター結合および補体活性化)を低下させる変異を有し得る。例えば、抗体およびB7−H3−Ig融合体は、変異(例えば、米国特許第5,624,821号および同第5,648,260号に記載される変異)を有し得る。上記IgG重鎖またはIgG重鎖において、例えば、このような変異は、IgGまたはIgGの全長配列中のアミノ酸234およびアミノ酸237に対応するアミノ酸残基で行われ得る。抗体およびB7−H3−Ig融合体はまた、免疫グロブリンの2つの重鎖の間のジスルフィド結合を安定化する変異(例えば、Angalら(1993)Mol.Immunol.,30:105−108に開示されるような、IgGのヒンジ領域の変異)を有し得る。
【0064】
特定の実施形態において、他のタンパク質由来のアミノ酸配列に対する本発明のB7−H3−Igのうちのいずれかのさらなる融合が、本発明の方法における使用のために構築され得る。所望され得る融合配列は、B7−H3の生物学的活性とは異なる生物学的活性を有するタンパク質(例えば、サイトカイン、増殖因子および分化因子、酵素、ホルモン、他のレセプター成分など)に由来し得る。
【0065】
上記B7−H3因子(タンパク質性および非タンパク質性)はまた、検出可能標識または機能的標識を用いてタグ化され得る。検出可能標識としては、放射標識(例えば、131Iまたは99Tc)が挙げられ、これらの放射標識は、従来の化学を用いて結合され得る。検出可能標識としては、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)および検出可能部分(例えば、ビオチンまたはアビジン)がさらに挙げられる。
【0066】
誘導体は、当該分野において周知の種々の技術(組み換え法および合成法を含む)により生成され得る(Maniatis(1990)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY;およびBodanskyら(1995)The Practice of Peptide Synthesis,第2版,Spring Verlag,Berlin,Germany)。
【0067】
(2.4 核酸)
本開示はまた、核酸またはこのような核酸によりコードされるポリペプチドの治療的な使用および非治療的な使用を含む方法を提供し、ここで、このような核酸のヌクレオチド配列は、(a)配列番号1、配列番号3、配列番号5のヌクレオチド配列またはその部分;および(b)少なくとも60ヌクレオチド長、80ヌクレオチド長、100ヌクレオチド長、120ヌクレオチド長または140ヌクレオチド長であり、かつ規定される条件下で、(a)の核酸に対してこれらにハイブリダイズする核酸から選択され、ここで、この核酸は、負の共刺激活性を有する発現産物をコードする。
【0068】
特定の実施形態において、このような核酸は、配列番号15におけるようなアミノ酸配列をコードする。例示的な実施形態において、上記核酸は、実質的に、配列番号11または配列番号13におけるような配列を含む。他の実施形態において、このような核酸としては、それが、少なくとも1つの同義置換を有する(すなわち、その置換を有するコドンは、配列番号11または配列番号13におけるのと同じであるかまたは機能的に等価なアミノ酸残基をコードする)という点で、配列番号11または配列番号13とは異なるヌクレオチド配列が挙げられる。
【0069】
1つの実施形態において、規定される条件は、低いストリンジェンシーの条件である。別の実施形態において、規定される条件は、中程度のストリンジェンシーの条件である。さらに別の実施形態において、規定される条件は、高いストリンジェンシーの条件である。
【0070】
適切なハイブリダイゼーション条件が、Ausubelら(1995)、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,2節,4節および6節において例示されるように、当業者により容易に選択され得る。さらに、ストリンジェント条件は、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Press,7章,9章および11章に記載される。規定される低いストリンジェンシーの条件の非限定的例は、以下のとおりである。DNAを含むフィルタを、35%ホルムアミド、5×SSC、50mM Tris−HCl(pH7.5)、5mM EDTA、0.1% PVP、0.1% Ficoll、1% BSAおよび500μg/ml 変性サケ精子DNAを含有する溶液中で、6時間、40℃で前処理する。ハイブリダイゼーションを、以下の改変を有する同じ溶液中で実施する:0.02% PVP、0.02% Ficoll、0.2% BSA、100μg/ml サケ精子DNA、10%(wt/vol) デキストラン硫酸および5×10〜20×10 32P標識されたプローブを使用する。フィルタを、ハイブリダイゼーション混合物中で、18時間〜20時間、40℃でインキュベートし、そして、次いで、2×SSC、25mM Tris−HCl(pH 7.4)、5mM EDTAおよび0.1% SDSを含有する溶液中で、1.5時間、55℃で洗浄する。この洗浄溶液を、新鮮な溶液に置き換え、そして、さらに1.5時間、60℃でインキュベートする。フィルタを、ブロット乾燥し、そして、オートラジオグラフィーに曝す。当該分野で周知の低いストリンジェンシーの他の条件が、(例えば、種間(cross−species)ハイブリダイゼーションのために用いられるように)使用され得る。
【0071】
規定される中程度のストリンジェンシーの条件の非限定的例は、以下のとおりである。DNAを含むフィルタのプレハイブリダイゼーションを、5×SSC、50mM Tris−HCl(pH 7.5)、1mM EDTA、0.02% PVP、0.02% Ficoll、0.02% BSAおよび500μg/ml 変性サケ精子DNAを含む緩衝液中で、7時間から一晩、50℃で実施する。フィルタを、100μg/ml 変性サケ精子DNAおよび5×10〜20×10cpmの32P標識されたプローブを含有するプレハイブリダイゼーション混合物中で、18時間〜36時間、50℃でハイブリダイズする。フィルタの洗浄を、2×SSC、0.01% PVP、0.01% Ficollおよび0.01% BSAを含有する溶液中で、37℃で1時間行う。この後、0.1×SSC中で、50℃で45分間洗浄する。当該分野において周知の中程度のストリンジェンシーの他の条件が、使用され得る。
【0072】
規定される高いストリンジェンシーの条件の非限定的例は、以下のとおりである。DNAを含むフィルタのプレハイブリダイゼーションを、6×SSC、50mM Tris−HCl(pH 7.5)、1mM EDTA、0.02% PVP、0.02% Ficoll、0.02% BSAおよび500μg/ml 変性サケ精子DNAを含む緩衝液中で、8時間から一晩、65℃で実施する。フィルタを、100μg/ml 変性サケ精子DNAおよび5×10〜20×10cpmの32P標識されたプローブを含有するプレハイブリダイゼーション混合物中で、48時間、65℃でハイブリダイズする。フィルタの洗浄を、2×SSC、0.01% PVP、0.01% Ficollおよび0.01% BSAを含有する溶液中で、37℃で1時間行う。この後、0.1×SSC中で、50℃で45分間洗浄する。当該分野において周知の高いストリンジェンシーの他の条件が、使用され得る。
【0073】
B7−H3因子は、実質的に純粋な形態または均質な形態で、あるいは、核酸の場合には、必要とされる機能を有するポリペプチドをコードする配列以外の核酸または遺伝子起源を含まずにまたは実質的に含まずに、それらの天然の環境から得られ得、単離され得、そして/または精製され得る。種々の異なる宿主細胞中でのポリペプチドのクローニング系および発現系は、周知である。適切な宿主細胞としては、細菌、哺乳動物細胞、ならびに酵母系およびバキュロウイルス系が挙げられる。異種ポリペプチドの発現のための当該分野において利用可能な哺乳動物細胞株としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、乳仔ハムスター腎臓細胞、NS0マウス黒色腫細胞などが挙げられる。一般的な細菌宿主は、E.coliである。例えば、B7−H3−Igを生成するために適切な他の細胞については、Gene Expression Systems,Fernandezら編,Academic Press,1999を参照のこと。
【0074】
適切なベクターが、選択されても構築されてもよく、これらのベクターは、必要に応じて、適切な調節配列(プロモーター配列、終結配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および他の配列を含む)を含む。ベクターは、必要に応じて、プラスミドまたはウイルス性(例えば、ファージ)であってもファージミドであってもよい。さらなる詳細については、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrookら,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989を参照のこと。例えば、核酸構築物の調製、変異誘発、配列決定、DNAの細胞への導入および遺伝子発現、ならびにタンパク質の分析における核酸の操作のための多くの公知の技術およびプロトコールが、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubelら編,第2版,John Wiley & Sons,1992に詳細に記載されている。
【0075】
核酸は、さらなるポリペプチド配列をコードする他の配列(例えば、マーカーまたはレポーターとして機能する配列)に融合され得る。マーカー遺伝子またはレポーター遺伝子の例としては、β−ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(ネオマイシン(G418)耐性を担う)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、ハイグロマイシン−B−ホスホトランスフェラーゼ(HPH)、チミジンキナーゼ(TK)、lacZ(β−ガラクトシダーゼをコードする)、キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT)および当該分野で公知の他の多くが挙げられる。
【0076】
本発明の方法はまた、免疫応答を増強するために、B7−H3の発現を減少させるための短い干渉RNA(siRNA)およびアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用を包含する。siRNAは、Hannon(2002)Nature,418:244−251;McManusら(2002)Nat.Reviews,3:737−747;Heasman(2002)Dev.Biol.,243:209−214;Stein(2001)J.Clin.Invest.,108:641−644;およびZamore(2001)Nat.Struct.Biol.,8(9):746−750に記載されるような標準的な技術を用いて生成され得る。アンチセンス核酸は、Antisense Drug Technology:Principles,Strategies,and Applications,第1版,Crooke編,Marcel Dekker,2001に記載されるような標準的な技術を用いて生成され得る。
【0077】
(3.使用方法)
(3.1 免疫応答の調節方法)
開示されるB7−H3因子は、それらの使用方法に依存して、天然に発現されるB7−H3のアゴニストまたはアンタゴニストのいずれかとして作用し得る。上記B7−H3因子は、哺乳動物における(例えば、ヒトにおける)医学的障害を予防、診断または処置するために使用され得る。B7−H3因子のインビトロ適用は、例えば、免疫細胞の機能に対する研究、または、例えば、他のB7−H3因子の生物学的活性を試験するための研究のいずれかにおける使用のための活性化リンパ球の調製において、有用であり得る。このような方法は、実施例に詳述されている。
【0078】
1つの局面において、本発明は、免疫応答の調節におけるB7−H3およびそのアゴニストおよびアンタゴニストの使用に関する。本発明の方法は、リンパ球活性化を調節(すなわち、共刺激または阻害)するために、リンパ球(例えば、T細胞またはB細胞)とB7−H3因子とを接触させる工程を包含する。特に、ここで開示されるB7−H3因子は、以下:(a)リンパ球増殖;(b)サイトカイン(例えば、インターロイキン(IL)−10、腫瘍壊死因子(TNF)−α、インターフェロン(IFN)−γおよび顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF))分泌のうちの1つ以上により測定される場合、リンパ球活性化を調節する。上記方法は、インビトロ、インビボまたはエキソビボで実施され得る。
【0079】
上記接触させる工程は、上記リンパ球の活性化前、活性化の間または活性化後に生じ得る。T細胞活性化は、例えば、(例えば、抗CD3抗体を用いて;米国特許第6,405,696号および同第5,316,763号)そのT細胞を、TcRに結合する抗体またはTCRに物理的に関連するCD3複合体のポリぺプチドのうちの1つに曝すことによって、生じられ得る。あるいは、上記T細胞は、同種抗原(例えば、MHC同種抗原)(例えば、抗原提示細胞(APC)(例えば、樹状細胞、マクロファージ、単球またはB細胞)上で)または抗原性ペプチドのいずれかに曝され得、この抗原性ペプチドは、上記APCのいずれかによるタンパク質抗原のプロセシングにより生成され、かつそのAPCの表面上のMHC分子によって、上記T細胞に対して提示される。上記T細胞は、CD4T細胞であってもCD8T細胞であってもよい。上記B7−H3因子は、上記細胞を含む溶液に添加され得るか、または、それは、APC(例えば、MHC分子に結合される同種抗原または抗原ペプチドを提示するAPC)の表面に発現され得る。
【0080】
さらに、B7−H3因子は、障害の危険があるかもしくは障害に対して感受性である被験体、または異常なB7−H3の発現もしくは機能に関連する障害を有する被験体を処置するために使用され得る。従って、特定の実施形態において、本発明の方法は、リンパ球活性化の阻害を必要としている被験体を同定する工程、およびその被験体にB7−H3アゴニストを投与する工程を包含する。他の実施形態において、上記方法は、リンパ球活性化の促進を必要としている被験体を同定する工程、およびその被験体にB7−H3アンタゴニストを投与する工程を包含する。
【0081】
免疫応答の減少が所望される場合、B7−H3因子は、B7−H3に関連する免疫応答の減少を促進するために、B7−H3のアゴニストとして使用され得る。例えば、B7−H3因子は、特定の抗原(例えば、治療用タンパク質)に対する耐性の誘導のために、本発明の方法において使用され得る。1つの実施形態において、抗原とB7−H3因子との同時投与により、特定の抗原に対して耐性が誘導される。例えば、第VIII因子または第IX因子を受容した患者は、しばしば、このタンパク質に対する抗体を生成し、従って、組み換え第VIII因子または第IX因子と組み合わせた、B7−H3アゴニスト(例えば、B7−H3−Ig、およびB7−H3をコードする核酸またはその機能性フラグメント)の同時投与は、この凝固因子に対する免疫応答のダウンレギュレーションをもたらすと予測される。さらに、例えば、あるタイプのアレルギーまたはアレルギー反応、自己免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ、乾癬、I型糖尿病、多発性硬化症、炎症性腸疾患、クローン病および全身性エリテマトーデス)、組織移植片、皮膚移植片および器官移植片の拒絶反応ならびに移植片対宿主病(GVHD)において、免疫応答レベルの減少が所望され得る。
【0082】
特定の実施形態において、アゴニスト効果を達成するために、正のシグナル(すなわち、抗原レセプター(例えば、TcRまたはBcR)により媒介される)と負のシグナル(すなわち、B7−H3)との間の同時提示(co−presentation)または結合(すなわち、物理的に近接している)が必要であり得る。これは、支持マトリック上へのB7−H3因子の固定化により達成され得、この支持マトリックスはまた、一次刺激分子(例えば、抗CD3抗体)を運ぶ。このような場合、好ましい距離は、天然に存在する抗原提示細胞の大きさよりも小さいか、またはそれと匹敵する大きさである(すなわち、100μm未満;より好ましくは、50μm未満;そして最も好ましくは、20μm未満)。あるいは、B7−H3因子は、例えば、抗体を介した架橋により、一次刺激分子に結合され得る。
【0083】
いくつかの実施形態において、上記正の(活性化)シグナルおよび上記負の(阻害)シグナルは、固体支持マトリックスまたはキャリアに固定されたリガンドまたは抗体により提供される。種々の実施形態において、上記固体支持マトリックスは、ポリマー(例えば、活性化されたアガロース、デキストラン、セルロース、フッ化ポリビニリデン(PVDF))からなり得る。あるいは、上記固体支持マトリックスは、ケイ素ポリマーまたはプラスチックポリマー(例えば、ナイロン、ダクロン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリビニル、テフロン(登録商標)など)に基づき得る。
【0084】
上記マトリックスは、患者の脾臓に移植され得る。あるいは、上記マトリックスは、患者から得られたT細胞のエキソビボインキュベーションのために使用され得、次いで、このT細胞は、分離されてその患者に移植して戻される。上記マトリックスはまた、生分解性物質(例えば、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシアルカノエート、コラーゲンまたはゼラチン)から作製され得、その結果、それらのマトリックスは、患者の腹膜腔に注射され、そして、注射の後しばらくして溶解する。上記キャリアは、細胞を模倣するように形づくられ得る(例えば、ビーズまたはミクロスフェア)。
【0085】
特定の環境下では、免疫障害または癌を処置するために、患者の免疫応答を誘発または促進することが所望され得る。上記障害は、本開示方法により処置または予防され、これらの障害としては、微生物(例えば、細菌)、ウイルス(例えば、インフルエンザのような全身性のウイルス感染、ヘルペスまたは帯状ヘルペスのような皮膚疾患、およびHIV)または寄生生物による感染;ならびに癌(例えば、黒色腫および前立腺癌)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
このような環境において、B7−H3因子は、B7−H3と関連するダウンレギュレート活性を阻害または減少するために使用され得る。特に、B7−H3アンタゴニスト(例えば、抗B7−H3抗体、B7−H3レセプターに対する抗体、siRNAおよびB7−H3に対するアンチセンス核酸)は、T細胞活性化の刺激のために使用され得る。種々の実施形態において、B7−H3に対する抗体またはB7−H3レセプターに対する抗体は、10nM未満、そしてより好ましくは、5nM未満、そして最も好ましくは、1nM未満のIC50を有する、B7−H3とこのようなレセプターを発現する細胞との結合を阻害する。IC50は、当該分野で公知の標準的な技術を用いて測定され得る。
【0087】
本発明の組成物は、治療有効量で投与される。一般的に、治療有効量は、被験体の年齢、状態および性別、ならびにその被験体の医学的状態の重症度とともに、変動し得る。治療有効量のタンパク質性B7−H3因子は、0.001〜30mg/kg体重、好ましくは、0.01〜25mg/kg体重、0.1〜20mg/kg体重または1〜10mg/kg体重の範囲である。必要な場合、投与量は、その処置の観察される効力に適合するために調節され得る。上記抗体およびB7−H3の可溶性形態は、ボーラス投与として与えられ得る。連続的な輸液もまた、ボーラス投与後に使用され得る。適切な用量およびレジメンが、処置する医師により臨床的な指標に基づいて選択される。
【0088】
免疫細胞(例えば、活性化T細胞)はまた、患者から単離され得、そして、B7−H3因子とともにエキソビボでインキュベートされ得る。例えば、末梢血液単核細胞(PBMC)は、被験体または適切なドナーから取り出され得、そして、エキソビボで活性化刺激(上を参照のこと)およびB7−H3因子(可溶性形態であるか固体支持体に結合されているかのいずれか)に曝され得る。次いで、活性化T細胞を含むPBMCが、同じ被験体または異なる被験体に導入される。あるいは、単離された細胞は、核酸を用いてトランスフェクトされ得、そして、次いで、このようなトランスフェクトされた細胞は、上記被験体に再導入され得る。このような細胞は、好ましくは、造血細胞(例えば、骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、T細胞またはB細胞)であるが、それらの細胞はまた、別の細胞型であり得、これらの細胞型としては、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイトが挙げられるが、これらに限定されない。造血細胞の使用は、このような細胞が、特に、リンパ系組織(例えば、リンパ節または脾臓)に帰ると予測されているという点で、有利であり得る。さらに、APCが使用される場合、外因性B7−H3を発現するAPCは、関連するT細胞に対して同種抗原または抗原性ペプチドを提示するAPCと同じであり得る。上記B7−H3因子は、上記APCにより分泌され得るか、またはその表面上に発現され得る。組み換えAPCは、上記被験体に戻される前に、必要に応じて、本発明の抗原または抗原性ペプチドの供給源(例えば、腫瘍、感染性微生物または自己抗原の供給源)に曝され得る。
【0089】
いくつかの実施形態において、B7−H3因子は、本発明の組成物を用いる処置に対して感受性の免疫障害を処置または予防するために使用され、このような障害としては、自己免疫障害(例えば、慢性関節リウマチ(RA)、乾癬、多発性硬化症(MS)、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、全身性エリテマトーデス(SLE)、I型糖尿病、移植片拒絶反応、移植片対宿主病(GVHD)、過剰増殖性免疫障害など)、癌、免疫抑制障害および種々の感染性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。特に、本開示は、B7−H3誘導体(例えば、B7−H3の可溶性形態またはB7−H3に対する抗体またはそのレセプターに対する抗体)を含有する組成物に関与する方法を提供する。
【0090】
(3.2 スクリーニング方法)
B7−H3因子はまた、治療薬剤を同定するスクリーニング方法に使用され得る。試験される化合物は、例えば、抗B7−H3抗体、B7−H3レセプターに対する抗体または、小有機分子であり得る。そのようなスクリーニングアッセイにおいて、第1の結合混合物は、B7−H3−IgとB7−H3レセプターを発現する細胞(例えば、活性化T細胞)とを、組み合わせることにより形成される;および第1結合混合物(M)の上記2種の間の結合量が測定される。第2結合混合物もまた、B7−H3−Igと、B7−H3レセプターを発現する細胞と試験される薬剤とを組み合わせることにより形成され、そして第2結合混合物(M)の結合量が測定される。
【0091】
第1結合混合物および第2結合混合物の結合量は、例えば、M/M比を計算することにより比較される。上記試験された化合物は、第1結合混合物と比較して第2結合混合物の結合の減少が観察される場合、免疫応答のB7−H3関連のダウンレギュレーションを調節する能力があると考えられる。結合混合物の処方および最適化は、当該分野の技術レベルの範囲内であり、そのような結合混合物はまた、最適結合を高めるかまたは最適化するのに必要な緩衝液および塩も含み得、そしてさらなるコントロールアッセイが、本発明のスクリーニングアッセイに包含され得る。上記B7−H3結合を少なくとも10%(即ち、M/M<0.9)、好ましくは30%を超えて減少させることがわかっている化合物は、このように同定され得、その後、所望であれば、以下に記載するように他のアッセイまたは動物モデルで障害を改善させる能力に関し、2次的にスクリーニングされ得る。上記結合の強度は、例えば、エンザイムイムノアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、表面プラズモン−ベースの技術(例えば、Biacore)(それらの全ては当該分野で周知の技術である)を用いて測定され得る。
【0092】
上記試験された化合物は、実施例に記載しているようにインビトロで、または動物モデル(一般的に、Immunologic Defects in Laboratory Animals、Gershwinら編、Plenum Press、1981を参照のこと)、例えば、以下のような:SWR X NZB(SNF1)マウスモデル(Unerら(1998)J.Autoimmune.Dis.,11(3):233〜240)、KRNマウス(K/BxN)モデル(Jiら、(1999)Immunol.Rev.、169:139);NZB X NZW(B/W)マウス、SLEのモデル(Riemekastenら、(2001)Arthritis Rheum.、44(10):2435〜2445);マウス実験的自己免疫脳炎(EAE)、多発性硬化症のモデル(Tuohyら(1988)J.Immunol.、141:1126〜1130、Sobelら(1984)J.Immunol.132:2393〜2401およびTraugott(1989)Cell Immunol.、119:114〜129);NODマウス糖尿病モデル(Baxterら、(1991)Autoimmunity、9(1):61〜67)など)でさらに試験され得る。
【0093】
例えば、動物試験により決定された予備的用量およびヒトへの投薬量の倍率決定は、当該分野で受容されている慣例に従って達成される。毒性および治療効力は細胞培養または実験動物、例えばLD50(集団の50%が致死する用量)およびED50(集団の50%に治療的効果のある用量)を決定する、標準的な薬学的な手続により決定され得る。毒性と治療効果間の用量の比は治療指標であり、そしてそれは、比LD50/ED50として表現され得る。大きな治療指標を示す組成物は好ましい。
【0094】
上記治療的に有効な用量は、初期に細胞培養アッセイから推定され得る。用量は、細胞培養アッセイまたは動物モデルで決定されるIC50(即ち、症状の最大半減阻害を達成する治療剤の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するよう、動物モデルで処方され得る。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーまたはELISAにより、測定され得る。任意の特定の投薬量の効果は、適切なバイオアッセイによりモニターされ得る。投薬量の例としては、0.1×IC50、0.5×IC50、1×IC50、5×IC50、10×IC50、50×IC50および100×IC50である。
【0095】
上記細胞培養アッセイまたは動物研究から得られるデータは、ヒトの用途の範囲の投薬量を処方するのに使用され得る。1種の動物モデルで達成された治療的に有効な投薬量は、ヒトを含む別の種の動物に使用されるのに、当該分野で公知の変換因子を用いて、変換され得る(Freireichら、(1966)Cancer Chemother.Reports、50(4):219〜244および等価体表面積投薬因子の表2を参照のこと)。
【0096】
【表2】

【0097】
(4.薬学的組成物、投与方法および投薬量)
本開示は、B7−H3因子を含む薬学的組成物を提供する。そのような組成物は、薬学的な用途および患者への投与に適切であり得る。上記組成物は、典型的には1種以上の本発明の抗体および薬学的に受容可能な賦形剤を含む。上記成句「薬学的に受容可能な賦形剤」は、薬学的投与に適合する如何なるおよび全ての溶剤、分散媒体、コーティング剤、抗細菌剤、抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的活性物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当該分野で周知である。上記組成物はまた、補完的な、付加的なまたは高められた治療的機能を提供する他の活性化合物を含み得る。上記薬学的組成物はまた、投与に関する説明書を有する容器、包装または分配器に含まれ得る。
【0098】
本発明の薬学的組成物は、意図された投与経路に適合するように処方される。投与を達成する方法は、当業者に公知である。上記投与は、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、膣内(intracavity)、皮下または経皮であり得る。また、局所的もしくは経口的に投与されるか、または、粘膜を経由して透過することができる組成物を得ることができる。
【0099】
皮内もしくは皮下適用に用いられる溶液剤もしくは懸濁剤としては、典型的には1種以上の以下の成分:注射用の水、生理食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールもしくは他の合成溶剤のような滅菌希釈剤;ベンジルアルコールもしくはメチルパラベンのような抗細菌剤;アスコルビン酸もしくは重亜硫酸ナトリウムのような抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸のようなキレート剤;酢酸、クエン酸もしくはリン酸のような緩衝液;および塩化ナトリウムもしくはブドウ糖のような張度を調整する薬剤が挙げられる。pHは、塩酸または苛性ソーダなどの酸または塩基で調整され得る。そのような調製物は、ガラス製またはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器もしくは多用量のバイアルビンに封入され得る。
【0100】
注射に適切な薬学的組成物としては、滅菌水溶液もしくは滅菌分散剤、および滅菌注射可能な溶液もしくは分散液の即時調合調製物のための滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与のために適切なキャリアとしては、生理食塩水、静菌水もしくはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合、上記組成物は、滅菌され、容易に注射可能な程度に流体でなければならない。それは、製造および貯蔵の条件下で安定であるべきで、細菌および真菌のような微生物の汚染作用が起こらないよう保存されなければいけない。微生物の上記作用の予防は、種々の抗細菌剤または抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成され得る。多くの場合、等張剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトールのようなポリアルコールおよび塩化ナトリウムを組成物に含むことが好ましい。上記キャリアとしては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコールおよび液性ポリエチレングリコールなど)を含む溶媒または分散剤およびそれらの適切な混合物であり得る。上記適切な流体は、例えばレシチンのようなコーティング剤の使用により、分散剤の場合は必要とされる粒子サイズの維持のより、および/または界面活性剤の使用により、維持され得る。注射可能な組成物の持続的吸収は、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅延する薬剤を組成物の中に含むことにより達成され得る。
【0101】
経口組成物は、一般に不活性な希釈剤または可食性のキャリアを含む。それらは、ゼラチンカプセルに封入され得、または錠剤に打錠され得る。経口投与のために、上記抗体は賦形剤と併用され得るし、かつ錠剤、トローチ剤またはカプセル剤としても使用され得る。薬学的に適合する結合剤および/または薬学的に適合するアジュバント物質は、上記組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、類似する性質の以下の如何なる成分または化合物;微結晶性セルロース、ガム、トラガカントもしくはゼラチンのような結合剤;デンプンもしくは乳糖のような賦形剤、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)もしくはコーンスターチのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはSterotesのような滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素のような滑剤(glidant);ショ糖またはサッカリンのような甘味剤;ペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジ香味料のような矯味矯臭薬をも、含み得る。
【0102】
全身投与はまた、経粘膜または経皮的手段であり得る。経粘膜または経皮投与のために、透過すべきバリアに適切な浸透剤が、処方物に用いられる。そのような浸透剤は、一般に、当該分野で公知であり、例えば表面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、例えばロゼンジ、鼻スプレー、吸入器または坐薬の使用を通じて達成され得る。例えば、抗体およびFc部分を含むIg融合タンパク質の場合、組成物は、腸管、口もしくは肺の粘膜を通って透過することができ得る(例えば、米国特許番号第6,030.613号に記載されているようにFcRnレセプター媒介経路を経由して)。経皮投与のために、上記活性化合物は、当該分野で一般に公知のように、軟膏剤(ointment)、軟膏剤(salve)、ゲル剤またはクリーム剤に処方され得る。吸入による投与のために、上記抗体は、例えば二酸化炭素のような適切な噴霧剤を含有する加圧容器もしくは加圧ディスペンサーからのエアゾールスプレーまたはネブライザーの形態で送達され得る。
【0103】
特定の実施形態では、本明細書で開示されたB7−H3薬剤は、インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む、徐放処方物のような、身体からの早い消失に対する化合物を保護するキャリアを用いて調製される。エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸のような生分解性、生物適合性ポリマーは、使用され得る。そのような処方物の調製方法は、当業者には明らかである。本明細書で開示する抗体を含有するリポソーム懸濁剤もまた、薬学的に受容可能なキャリアとして使用され得る。これらは、例えば米国特許番号4,522,811号に記載されているように、当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0104】
投与の容易なおよび投薬量の均一な投薬単位形態での経口または非経口組成物を処方することは、有利であり得る。本明細書で用いられる用語「投薬単位形態」は、処置される被験体に対して単位投薬量として適切な、物理的な個々の単位をいう;各単位は、所望の治療効果を実現するために計算された所定量の活性化合物を、必要な薬学的キャリアと共に含有する。
【0105】
本発明の組成物の毒性および治療有効性は、例えばLD50(集団の50%が致死する用量)およびED50(集団の50%に治療的効果のある用量)を決定するための細胞培養または動物実験のような標準的な薬学的な手順により決定され得る。毒性と治療効果間の用量の比は治療指標であり、そしてそれは、比LD50/ED50として表現され得る。大きな治療指標を示す組成物は好ましい。
【0106】
本発明で使用される任意の組成物のために、治療的有効用量は、初期に細胞培養アッセイで推定され得る。適切なバイオアッセイの例としては、DNA複製アッセイ、サイトカイン送達アッセイ、転写を基礎にしたアッセイ、結合アッセイ、クレアチンキナーゼアッセイ、前脂肪細胞の分化を基礎にしたアッセイ、脂肪細胞におけるグルコース取込みを基礎にしたアッセイ、免疫学的アッセイ、例えば、実施例に記載の他のアッセイが挙げられる。細胞培養アッセイおよび動物研究から得られるデータは、ヒト用途の範囲の投薬量を処方するのに用いられ得る。用量は、細胞培養または動物モデルで決定されるIC50(即ち、症状の最大半減阻害を達成する治療剤の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するよう、動物モデルで処方され得る。血漿中の循環レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより、測定され得る。特定の投薬量の効果は、適切なバイオアッセイでモニターされ得る。上記投薬量は、好ましくは、毒性が殆どないまたは毒性が無い循環濃度の範囲内に入っていることである。投薬量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路により変わり得る。
【0107】
以下の実施例は、本発明の範囲を決して限定するものではない。当業者は、本発明の精神および範囲を変えることなく実施され得る多くの改変および変化を認識するであろう。そのような改変および変化は、本発明の範囲内に包含される。本出願のいたるところで引用している全ての参考文献、特許および公開特許出願の全内容は、本明細書で参考として援用している。
【実施例】
【0108】
(実施例1:B7−H3のゲノムDNAの単離)
B7−H3 RT−PCRを、ヒトB7−H3の開始メチオニンおよび停止コドン(Genbank accession No.AF302102)を含む領域に対応するオリゴヌクレオチドを用いて、以下のPCR条件で実施した。
【0109】
この研究で用いたPCR酵素としては、製造業者のプロトコールに従った酵素、KOD Hot Start(Novagen、Madison、WI)、AdvantageTM 2(Clontech、Palo Alto、CA)、およびPlatinum Taq(Invitrogen、Carlsbad、CA)が挙げられる。必要な場合、反応条件を、強い増幅のために、最終濃度1M ベタインおよび3%DMSOになるよう、補充した。attB1/Kozakを埋め込んだプライマーPW264(配列番号23)およびattB2部位を埋め込んだプライマーPW265(配列番号24)を、脾臓、リンパ節、心臓、肝臓、膵臓および胎盤の第1cDNA鎖をテンプレート(Clontech)として、ヒトB7−H3をコードする配列を増幅するのに用いた。現存のデータベースの記載項目(Celera Human and Mouse Genomic Assemblies、Celera Genomics、Rockville、MD)に表されている配列に対応するヒトB7−H3 VCVCコード領域配列を得た:特にAX357960、AX097550、AX047072、AX097556、およびAX136363。ヒトB7−H3 VC形態を、ヒトB7−H3 VCVC C〜Vドメインの欠失により、NM_025240のコード配列に合わせて構築した。PW270(配列番号26)およびPW271(配列番号27)を、マウス胚子の第1cDNA鎖からのマウスB7−H3の配列を増幅するのに用いた。951bpのサイズのPCR産物をサブクローンし、全ての分析したクローンには、いかなる擬エキソン配列を包含しない、100%の正確さを有する真正な7つの予測されたエキソンの正確なスプライシングをはっきりと明らかにした。マウスB7−H3をコードする配列は、現存のデータベース記載事項BC019436、AX370312、およびNM_133983に対応する。プライマーPW284(配列番号29)およびPW267(配列番号25)を、cDNAパネル(Clontech)におけるヒトB7−H3 VC(690bp)およびVCVC(1344bp)転写の相対的な寄与を、半定量的に評価するのに用いた。ZetaprobeTM GT メンブレン(BioRad、Hercules、CA)上に、DNAをアルカリ転写し、そして32P末端ラベルしたPW278(配列番号28)を、検出オリゴヌクレオチドとして用いてハイブリダイズしてサザンブロットを行なった(Lingら、(2001)J.Immunol.166:7300〜7308)。
【0110】
サルおよびハムスターのゲノムDNAをCOS細胞株およびCHO細胞株から単離した(Lingら、(1999)Genomics 60:341〜355)。ゲノムPCRをPW358(配列番号30)およびプライマーPW359(配列番号31)をヒトおよびマウスB7−H3配列で保存されている、ヌクレオチドを基礎にしたプライマーとして実施した(配列番号6のアミノ酸60〜66、216〜221、および278〜284、434〜439)。増幅反応を、二重に行い、そして多重のサブクローン化産物を配列決定により分析した。サルゲノムDNA内のV−イントロン−Cドメインの配向を、PW381(配列番号33)およびPW384(配列番号34)を用いて、そしてハムスターのゲノムDNA内のV−イントロン−Cドメインの配向を、PW358(配列番号30)およびPW378(配列番号32)を用いてPCRにより決定した。
【0111】
DNA分析を、以下のように行なった。1アリコート(0.25〜0.5μg)のプラスミドDNAを、1μlの5μMのプライマーおよび3μlの2倍希釈ABIPRISMTMBigDyeTMTerminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit ミックス(バージョン3)と組み合わせた。その容量を、10mM Tris−HCl(pH8.0)で、10μlに調整し、そして増幅反応をPTC−225サイクラー(MJ Research、Waltham、MA)で、25サイクル(96℃10秒、50℃5秒および60℃4分)行なった。10μlの水を上記反応物に加え、過剰の染料を、96ウェルのG−50ビーズ入りのMilliporeろ過プレートでゲルろ過により除去した。サンプルを90〜95℃で2分間、加熱変性し、製造業者推奨の条件下で、ABI3100 Genetic Analyzer(Applied Biosystems、Foster City、CA)で、電気泳動を行なった。SequencherTM 4.1(Gene Codes、Ann Arbor、MI)を用いて、手作業の配列編集を行なった。
【0112】
主要な増幅産物の配列決定は、B7−H3と異なり、他のESTおよび特許データベース記載事項と一致する1605bpの配列という結果となった。B7−H3は、単一のVドメインおよびCドメイン(B7−H3 VC形態)を含有するが、変種クローンは、重複するVドメインおよびCドメイン(B7−H3 VCVC形態)を含有した。これらのクローンが、B7−H3に非依存性の遺伝子産物であるか否かを決定するために、VCVCクローンのゲノム構成をヒトゲノムデータベースクエリー(Celera Genomics)により分析した。得られた一致は、染色体15のゲノム軸GA_x2HTBL4SSTP−04に対応する。これは、B7−H3 VCおよびB7−H3 VCVCの変種の両方に関して、単一の遺伝子起源を示唆している。図1Bは、ヒトおよびマウスB7−H3遺伝子座の遺伝子構成を示す。集合体は、Celeraヒトゲノム軸GA_x2HTBL4SSTPおよびCeleraマウスゲノム軸GA_x5J8B7W7NM9の選択された部分を基礎にしている。棒状の印は、Alu複合体反復およびSVA複合体反復、単純反復、転写エキソン構造ならびにドメイン名の相対的位置を表している。上記B7−H3 VCVCのゲノム構成は、リーダードメイン、Vドメイン、Cドメイン、Vドメイン、Cドメイン、膜貫通ドメインおよび三つの細胞質ドメインをコードする9個のエキソンを明らかにしている。約13.5kbのゲノム配列が、ヒトB7−H3座のエキソン1の開始メチオニンを、エキソン9の停止コドンから分離した。ヒトB7−H3 VCのB7−H3座に対するエキソン描写は、エキソン2(V)からエキソン5(C)までの代替的スプライシングを表しており、この遺伝子産物からのCドメインおよびVドメインの欠失を生じた。
【0113】
配列分析、アラインメントおよび分子進化系統樹の作製を、Vector NTITM バージョン7.1(Informax Inc、North Bethesda、MD)のAlign module(Clustal W)を用いて実行した。霊長類の配列の配列アラインメントおよび系統図分析は、種間V−イントロン−cDNA配列よりも種内V−イントロン−cDNA配列のより大きな程度の配列類似性、即ち、ヒトV−イントロン−Cが、サルV−イントロン−Cより、ヒトV−イントロン−Cにより類似していることをあきらかにした。実際に、分析されたサルのCドメイン配列間で、100%の同一性が観察された。種内クラスタリングは、複製されたエキソンよりも、より高い配列保存が観察される非コード化種内VCイントロン配列のアラインメントにより、さらに支持されている(97% 対 94%)。保存ヌクレオチドが、4種の全てのイントロン配列に見出されたが、非保存ヌクレオチド対が、齧歯類および霊長類間で排他的に共有されている(データを示していない)ことが見出された。このことは、霊長類および齧歯類伝来の共通の「予備複製された」霊長類VCVC分子について相反している。ヒトB7−H3 V−イントロン−Cドメインのフランキング配列は、そのような配列保存がなく、それは、霊長類における複製が突然変異から非常に近いか、または上記V−イントロン−C領域が、突然変異から極度に保護されていることを示唆している。このように、これらのデータは、ヒトおよびサルの種内タンデムVCリピートの多重独立性発生のモデルを強く支持する。
【0114】
(実施例2.B7−H3スプライス変種間の相対的転写寄与)
種々のヒト組織サンプルについてRT−PCRを行ない、引き続き放射標識したオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイゼーションを行なった(図2A)。二つの不明瞭なバンドが検出され、一方は、B7−H3 VCVC増幅産物の予測されたサイズと一致する1344bpに対応する相対的移動度で移動した。VC増幅産物の予測されたサイズと一致する690bpに対応する微量なバンドもまた、検出された。3つのcDNAパネルのRT−PCRは、増幅産物が検出されなかった白血球/PBLを除いては、試験したいずれの組織にも、このパターンを示した。ハイブリダイズした領域のリン画像定量化は、12.7:1(脳)と92.1:1(腎臓)の間の比を示した。いずれの場合にも、より小さいB7−H3 VC産物へのハイブリダイゼーションンシグナルが、B7−H3 VCVC産物で見られたシグナルより大きいということはなかった。もし増幅反応が小さい増幅産物に有利だとすると、より小さいB7−H3 VCの存在度を上回るより大きいB7−H3 VCVCの相対的存在度は、B7−H3 VCVCが、ヒト組織で自然に発現するヒトB7−H3遺伝子産物の主要な転写種であることを示唆している。上記B7−H3 VC形態の希少性は、B7−H3 VCVC産物(Chapovalら、(2001)Nat.Immunol.、2:269〜274)が主要な産物であることを最確的に示している、以前に報告されたノーザンブロットの中で観察された単一の4.1kbのB7−H3バンドと一致する。比較のために、マウスB7−H3のPCR−サザンブロットは、予測された951bpの増幅産物と一致する、約1kbの主要なバンドで調べた全ての組織における発現を示す(図2B)。他のB7−H3ハイブリダイゼーションシグナルもまた、マウス胎児、心臓および骨格筋組織において検出した。霊長類とは異なり、齧歯類の配列は、推定CおよびVエキソンのコドン変性に起因して、単一のVC形態のみしか有さない。
【0115】
以下に示すように、ヒトB7−H3 VC形態およびVCVC形態は、インビトロで類似した生物学的活性を有し、これは、上記タンデムに重複したエキソンが、細胞ベースのアッセイで機能的に等価であることを示唆する。そのような機能的な冗長性は、生理学的に有害な効果なしでC〜Vのエキソンの損失耐性を説明し得る。
【0116】
(実施例3.マウスおよびヒトB7−H3の比較ゲノム分析)
VCドメイン断片の重複が、B7ファミリーのタンパク質の中で、B7−H3に特異的であるらしいと仮定して、本発明者らは、次にB7−H3の上記配列が、コドンベース置換を基礎にした他の共刺激リガンドの配列と異なるか否かについて試験した。分子進化の速度を決定する一つの方法は、コドン内の同義部位と非同義部位間との予測される突然変異速度の測定による。齧歯類 対 霊長類のさらなる配列比較を他の公知のリガンド(B7−1、B7−2、GL50、PD−L1およびPD−L2)のVエキソンおよびCエキソンに関して行なった。これらのリガンドは、VドメインおよびCドメインが、各分子の細胞外の部分に存在する構造的類似性を共有する。これらの不同性の分子の間の共有構造部分の存在は、これらの分子がV配列およびC配列を有する祖先配列に由来するという概念を広めてきた。マウスとヒトとの間のVドメインおよびCドメインの分岐の相対的速度を決定するために、同義コドンおよび非同義コドンにおけるヌクレオチド置換の相対的頻度を決定した。同義突然変異および非同義突然変異の頻度の計算を、Wisconsin Package GCG10.0 Diverge module(GCG、Madison、WI)を用いて実行した。B7−H3アラインメントに関して、ヒトVドメインおよびCドメインに対応するエキソンは、マウスVドメインおよびCドメインと整列化した。調べた全てのVドメインおよびCドメインの中で、同義置換 対 非同義突然変異の比は、B7−H3のVドメイン以外は、1より小さかった。上記B7−H3分子は、全てのVドメインの中で最も低いレベル(一部位当りd=0.129置換)の同義突然変異であり、一方、同時にまた、全てのCドメインの中で最も低いレベルの非同義突然変異(一部位当りd=0.026置換)であった。結果として、上記B7−H3分子は、共刺激リガンドの中で、Vドメインで最も高いd:d比を有し、一方、同時にCドメインで最も低いd:d比を有する点において異なる。ヒトVドメインとマウスVドメインとの間の交差ドメイン分岐比較は、d=0.433およびd=0.037を示し、一方、ヒトCドメインとマウスCドメインとではd=0.393およびd=0.034を示した。ヒトVとマウスVとの間で見られる、ヒトVおよびマウスVより低い同義突然変異率は、ヒトVドメインおよびマウスVドメインはオルソログであることを意味する。配列進化の線形機序を仮定すると、同一分子の隣接するエキソン間での異なるヌクレオチド置換率は、B7−H3のVドメインとCドメインとの間で異なる選択プロセスが起こることを示している。
【0117】
分子進化の数学的モデルを基礎にして、特定のコード配列に関して同義置換率が、非同義置換率より多い場合は、選択の純正化を反映している。選択の純正化は、生理的な抑制が、遺伝子産物のアミノ酸変化のレベルを制限する時に起こる。選択の純正化は、試験された全てのB7ファミリーのVドメインおよびCドメインでは、B7−H3 Vドメインを除いて、明らかである。B7−H3 Vに関して、dは、B7−2 Vのdの半分、かつPD−L1 Vのdのおよそ8分の1である。B7−H3 Vは低いが、1.18のd:d比でB7−H3 Vdのdをまだ上回る。d:d比が1より大きい場合は、異常であり、早く進化する機能の明確な選択を受けている配列に起因する。B7−H3 Cエキソンは、試験された全てのエキソンの中で最も低い値の0.063のd:d比を示し、他の試験された他のCドメインに見られるレベルの5分の1から15分の1であることは、注目すべきである。従って、B7−H3を含むエキソンは、他の共刺激リガンドに対して異なる様式で容易に積極的に維持された/される。
【0118】
(実施例4.B7−H3 VCおよびVCVCはT細胞活性化をダウンレギュレートする)
齧歯類B7−H3で観察される上記単一VC単位を基礎にして、本発明者らは、ヒトで見られるB7−H3 VCおよびVCVC形態が、細胞ベースのアッセイで類似の機能を有するか否かについて決定しようとした。B7−H3 VCおよびB7−H3 VCVCのT細胞活性化をダウンレギュレートする能力を、増殖およびサイトカイン産生レベルの両方で観察した。この実験を以下のように行なった。
【0119】
ヒトB7−H3 VCまたはVCVC構築物のエントリーベクターを、IRES−GFPをコードする二重シストロンレトロウイルスベクターにクローニングした。受容先のレトロウイルスベクターは、もともとGFP−RVベクター(Ranganath(1998)J.Immunol.、161:3822〜3826)由来であって、attB1−ccdB−attB2カセット(Invitrogen)を用いてGateway組換え用に改変した。ウイルス含有上清を産生し、以前に記載されているように(Carterら、(2002)Eur.J.Immunol.、32:634〜643)、CHO.HLA−DR2細胞を感染するのに用いた。CHO.HLA−DR2.B7−H3 VCおよびCHO.HLA−DR2.B7−H3 VCVCをGFP発現を基礎にして細胞ソーティングにより選択した。同様のGFPレベルを発現しているCHO.HLA−DR2トランスフェクト体を、細胞アッセイのコントロールとして用いた。CHO.HLA−DR2.B7.1およびCHO.HLA−DR2.B7.2の産生は、以前に記載されている(Andersonら、(2000)Nature Medicine、6(2):211〜214)。CHO.HLA−DR2トランスフェクト体を室温で4分間0.2%パラホルムアルデヒド中で固定し、固定反応を、1Mリジン中、室温で4分間クエンチした。細胞を一度PBSで洗浄し、培養媒体(RPMI1640、10%FCS)に再懸濁し、T細胞増殖アッセイの抗原提示細胞として用いた。
【0120】
ヒトCD4T細胞を、以前に記載(Blairら、(1998)J.Immunol.、160:12〜15)されているように末梢リンパ球から、負の選択により精製した。CD4T細胞(10細胞/ウェル)を平底96ウェルプレート中、可溶性抗CD3抗体(1μg/ml、UCHT1,Pharmingen、San Diego、CA)および種々の濃度の可溶性抗CD28抗体(CD28.2、Pharmingen)の存在下で、パラホルムアルデヒド固定したCHO.HLA−DRトランスフェクト体(1.25×10細胞/ウェル)と一緒に培養した。増殖を、72時間のインキュベーション期間のうち最後の5〜12時間、1ウェルあたり1Ci[H]−チミジンで培養物をパルスすることにより決定した。サイトカイン産生を測定するために、上清を72時間で収集し、サンプルを多重ELISAスクリーニング(Pierce Boston、Woburn、MA)でアッセイした。
【0121】
B7−H3 VC形態およびB7−H3 VCVC形態の機能的活性を決定するために、以下の細胞ベースのアッセイを行なった。精製ヒトCD4T細胞を、パラホルムアルデヒド処理したCHO.HLA−DRトランスフェクト体で、一定量の可溶性抗CD3抗体および増加する濃度の可溶性抗CD28抗体の存在下で刺激した。CHO.HLA−DR2−GFPトランスフェクト体の存在下で、抗CD3で精製T細胞を活性化すると、増殖は起こらなかった;増殖レベルは、抗CD3抗体および抗CD28抗体の存在下で昂進した(図3A〜3B);CHO.HLA−DR2.B7−1もしくはB7−2の存在下で、抗CD3抗体でT細胞を刺激すると、CHO.HLA−DR2−GFPコントロール細胞で得られるレベル(図3A)より上の増殖が起こった。可溶性抗CD28抗体は、GFPコントロールを昂進したが、B7−1およびB7−2の応答を昂進しなかった。反対に、B7−H3 VCまたはB7−H3 VCVCの存在下でのT細胞の刺激は、低下した増殖応答をもたらした(図3B)。抗CD3(1g/ml)および低い共刺激(5ng/mlの抗CD28抗体)で、サイトカイン産生は、B7−H3 VCおよびB7−H3 VCVC刺激時に有意に減少した。IL−10(約81%)レベル、TNF−α(約69%)レベル、IFN−γ(約85%)レベル、およびGM−CSF(約65%)レベルは、GFPコントロールと比較して、B7−H3 VCまたはVCVCのいずれかの培養物で刺激した培養物中で、劇的に減少した(図4)。これらのアッセイ条件では、IL−1A、IL−2、IL−4、IL−6およびIL−13が、無視し得る量しか検出されなかった。これらの結果は、B7−H3 VCも、B7−H3 VCVCも、共刺激分子として機能するのではないことを示し、かつB7−H3 VCおよびB7−H3 VCVC細胞表面分子が活性化の負のレギュレータとして作用するT細胞上のレセプターとかかわりあうことを示唆している。200ng/ml程度の高い濃度の抗CD28抗体の添加は、増殖に対するB7−H3の阻害効果を部分的にのみ維持できた。
【0122】
(実施例5:B7−H3 VCおよびVCVCは、T細胞活性化をダウンレギュレートする。)
B7−H3機能をさらに特徴づけるために、T細胞応答のB7−H3ダウンレギュレーションが、TCR/B7−H3レセプターの協調的かかわりを要求するか否かを決定するため、単一(CIS)または別々の(TRANS)表面上で実験を行なった。CISビーズは、抗CD3抗体と、精製した融合タンパク質B7−H3 VC−IgまたはB7−H3 VCVC−Igとを含有するが、一方、TRANSビーズは、抗CD3抗体および、B7−H3 VC−IgまたはB7−H3 VCVC−Igとのいずれかを含有した。
【0123】
T細胞のビーズ刺激を以下のように実施した。抗CD3(UCHT1、Pharmigen)、ヒトB7−H3 VC−Ig、ヒトB7−H3 VCVC−IgおよびコントロールIgを、ポリウレタン被覆tosyl活性化Dynabeads(Dynal、Lake Success、NY)に共有結合した。ビーズを一定濃度(1μg、総結合タンパク質の20%)の部分最適化抗CD3抗体およびB7−H3−IgまたはコントロールIg(4μg、総結合タンパク質の80%(Bennettら、(2003)J.Immunol.、170:711〜718)で調製した。ビーズは、10ビーズあたり、5μgの結合能を有する。CISビーズは、同じビーズに抗CD3およびB7−H3の両方を含有し、TRANSビーズは、二つのタイプのビーズからなり、一方は、抗CD3抗体を含有し、他方はB7−H3−Igを含有する(Bennettら、(2003)J.Immunol.、170:711〜718)。CISおよびTRANS条件下で、等しいビーズ対細胞比を維持するために、コントロールIgGで被覆されたビーズをCIS培養物に添加した。タンパク質被覆ビーズを、平底96ウェルマイクロタイタープレートの精製CD4T細胞(10細胞/ウェル)に1:1の比で添加した。増殖を、72時間のインキュベーション期間のうちの最後の6〜16時間に、一ウェルあたり1Ci[H]−チミジンで培養物をパルスして決定した。
【0124】
図5に示すように、増殖阻害は、細胞がCISビーズで活性化された場合にのみ観察された。まとめると、これらの所見は、B7−H3レセプターおよびTCRが、T細胞活性化のダウンレギュレーションのためには、近接している必要があることを示唆している。これらのデータは、B7−H3レセプター経路がT細胞応答を調節するために、活性化と阻害の両方のシグナルが同じ細胞から生じなければならないことを示唆している。
【0125】
上清中のサイトカインの量を、多重ELISAスクリーニングを用いて、72時間で測定した:TNF−α(図6A)、IFN−γ(図6B)およびGM−CSF(図6C)。B7−H3 VCおよびB7−H3 VCVCのT細胞活性化をダウンレギュレーションする能力を、サイトカイン産生レベルで評価した。抗CD3(1g/ml)および低い共刺激(5ng/ml 抗CD28抗体)で、B7−H3 VCおよびB7−H3 VCVC刺激の際に、サイトカイン産生は有意に減少した(図6A〜6C)。IL−10(約81%)レベル、TNF−α(約69%)レベル、IFN−γ(約85%)レベル、およびGM−CSF(約65%)レベルは、GFPコントロールに対して、B7−H3 VCまたはVCVC培養物のいずれかで刺激した培養物中で、劇的に減少した。これらのアッセイ条件では、IL−1A、IL−2、IL−4、IL−6および1L−13を無視しうる量でしか検出しなかった。これらの所見は、B7−H3 VCも、B7−H3 VCVCのいずれも共刺激分子としては機能しないことを示しており、かつB7−H3 VCおよびB7−H3 VCVC細胞表面分子が活性化の負のレギュレータとして作用するT細胞上のレセプターと係わり合いを持つことを示唆している。
【0126】
結果は、T細胞のTCR/B7H3(VCまたはVCVC)活性化がT細胞応答のダウンレギュレーションをもたらすことを示している。増殖およびサイトカイン産生は、TCR単独で活性化された細胞に対して、TCR/B7−H3活性化T細胞において減少する。このデータは、T細胞上のB7−H3レセプターの係わり合いが負のシグナルを送達することを示唆している。結果はまた、TCRおよびB7−H3レセプター間の物理的近接が、B7−H3レセプター経由のT細胞活性化を、ダウンレギュレートするために要求され得ることを示唆する。
【0127】
CD4T細胞の活性化をダウンレギュレートするB7−H3 VCおよびVCVCの能力は、B7タンパク質のいずれかによる、CTLA4の係わり合いにより産生される負のシグナルまたはPD−1とPD−L1タンパク質およびPDL2タンパク質のいずれかによるPD−1の係わり合いにより産生される負のシグナルを示唆している。さらに、固体マトリックスに結合したB7−H3での実験は、TCRおよびB7−H3レセプターシグナルの両方が同じ細胞により送達されることを示している。同様な要件が、CTLA−4またはPD−1のいずれかによる負のシグナル伝達に関して記載されている(Griffinら、(2000)J.Immunol.、164:4433;およびBennettら、(2003)J.Immunol.、170:711〜718)。最終的に、ヒトB7−H3 VCおよびヒトB7−H3 VCVC分子の両方が、CD4 T細胞応答を調節する能力において重複しているようにみえる。
【0128】
(実施例6:乾癬患者における治療有効性)
B7−H3により制御される免疫応答の調節は、免疫抑制効果または免疫応答の増強が所望される場合に有用である。B7−H3アゴニスト(例えばB7−H3の可溶性形態)は、異常に昂進した免疫応答(例えば、自己免疫障害におけるように、自己抗原に応答することが挙げられる)を含む疾患または状態の重症度および/または症状を、予防または減少させるのに使用され得る。B7−H3アンタゴニストは、一方、例えば癌または免疫抑制障害で起こり得る望ましくない低い免疫応答を有する被験体に投与され得る。
【0129】
乾癬は、典型的なT細胞媒介性自己免疫疾患であると考えられている。乾癬は、部分的には、活性化された損傷性T細胞(Th非対称)に産生されるIFN−γを通して媒介される慢性炎症性皮膚疾患である。
【0130】
最も一般的には、可溶性タンパク質が、外来患者に投与され、これは、ゆっくりとした静脈内(IV)注入で、0.1〜10mg/kg用量での週一回の投与に設定される。アンタゴニストの適切な治療有効用量は、処置する臨床医により選択され、およそ1μg/kg〜20mg/kg、1μg/kg〜10mg/kg、1μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜100μg/kg、100μg/kg〜1mg/kgおよび500μg/kg〜5mg/kgの範囲である。
【0131】
皮膚T細胞に対する効果を評価するために、B7−H3に対する抗体、B7−H3レセプターに対する抗体またはB7−H3−Igを、正規化した疾患重症度(最小PASI(Psoriasis Activity and Severity Index)スコア12)を有する乾癬患者のランダマイズした群に対して、12週間連続投与した。長期にわたって患者の臨床改善を評価し治療に対する彼等の応答をモニターするために、上記PASIスコアシステムが使用され得る(Fredrikssonら、(1978)Dermatologica、157:238〜244;およびMarksら、(1989)Arch.Dermatol.1989;125:235〜240)。
【0132】
要約すれば、PASIスコアの要素は、以下を含む:(1)体表面積(BSA)の%としての患部領域;(2)患部領域の程度(スケール1〜10);および(3)乾癬変化の程度(紅斑、浸潤、剥離)スケール0〜4)。PASIスコアは以下のように計算する:((0.1×(紅斑頭部)+(浸潤頭部)+(剥離頭部))×(患部頭部の程度))+((0.2×(「紅斑体幹部)+(浸潤体幹部)+(剥離体幹部))×(患部体幹部の程度))+((0.3×(紅斑上部先端)+(浸潤上部先端)+(剥離上部先端)×(患部上部先端の程度))+((0.4×(紅斑下部先端)+(浸潤下部先端)+(剥離下部先端)×(患部下部先端))。最小スコアは0であり、最高スコアが72である。PASIスコアの減少は効果的処置を暗示している。上記処置を受けた個体の少なくとも50%がPASIスコアの減少および彼等の状態に改善を示すことが理解される。
【0133】
本明細書は、本明細書に参考として援用される本明細書で引用される参考文献の教示する観点に照らし、徹底的に理解される。本明細書内の実施形態は、本発明の例証的な実施形態を提供するが、本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。当業者は、容易に多くの他の実施形態が本発明により包含されることを容易に認識する。本開示の中の引用された全ての刊行物および特許ならびに登録番号またはデータベース参照番号により同定された配列は、その全体が参考として援用される。参考として援用された物質が、本明細書と矛盾または一致しない範囲まで、本明細書は、如何なるそのような物質にもとってかわる。本明細書中の如何なる参考文献の引用も、そのような参考文献が本発明の先行技術であると承認するものではない。
【0134】
他に示さない限り、特許請求の範囲を含む本明細書で使用される、成分、細胞培養物、処置条件などの量を表現している全ての数値は、全ての例において、用語「約」により改変され得ると理解されるべきである。従って、そうではないと他に示さない限り、数値パラメータは近似であり、本発明で得られるよう求められる所望の性質に大きく依存する。他に示されない限り、一連の要素の前にたつ用語「少なくとも」は、一連の全ての要素に言及していることが理解されるべきである。当業者は、本明細書で記載されている本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を、単なる慣用実験を用いて認識し、または確認することができる。そのような等価物は以下の特許請求の範囲により包含されていると意図される。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1A】図1Aは、ヒトとマウスとのB7−H3配列の比較を示す。推定翻訳ヒトB7−H3 VC遺伝子産物、推定翻訳ヒトB7−H3 VCVC遺伝子産物および推定翻訳マウスB7−H3遺伝子産物の配列アラインメント。配列アラインメントの上の黒線は、ゲノム配列により区別されたエキソンドメインを示す。ペプチド配列の下の矢印は、交差種増幅のために使用されるオリゴヌクレオチドプライマーにおいて使用される、対応する核酸位置を示す。
【図1B】図1Bは、ヒトおよびマウスのB7−H3遺伝子座のゲノム構成を示す。構成部分は、Celeraヒトゲノム軸GA_x2HTBL4SSTPおよびCeleraマウスゲノム軸GA_x5J8B7W7NM9の選択された部分に基づく。バーは、Alu複合体反復およびSVA複合体繰反復の相対位置、単純反復(simple repeat)の相対位置、転写物のエキソン構造およびドメイン名を示す。
【図2A】図2Aは、ヒトサンプルに対するB7−H3 RT−PCRの結果を示す。第1鎖ヒトcDNAの3つの別々の群を、B7−H3 VC配列およびB7−H3 VCVC配列の両方に共通のPCRプライマーを用いて増幅し、そして、Vドメインに対するオリゴヌクレオチドを用いて検出した。増幅産物の予測される大きさは、示されるとおりである。
【図2B】図2Bは、マウスサンプルに対するB7−H3 RT−PCRの結果を示す。成体cDNAおよび胎仔cDNAからなるマウス群を、B7−H3転写物の存在について分析した。約1kbのバンドの主な特異的ハイブリダイゼーションは、マウスB7−H3の単一VC形態の存在と一致する。
【図3】図3A〜3Bは、活性化T細胞の増殖により測定される場合のB7の共刺激効果を実証する。T細胞のB7−H3活性化は、増幅およびサイトカイン産生の減少をもたらす。図3Aが、GFPを発現するCHO.HLA−DR2細胞、B7−1を発現するCHO.HLA−DR2細胞、B7−2を発現するCHO.HLA−DR2細胞についての増殖アッセイの結果を示すのに対し、図3Bは、GFPを発現するCHO.HLA−DR2細胞、B7−H3 VCVCを発現するCHO.HLA−DR2細胞またはB7−H3 VCを発現するCHO.HLA−DR2細胞についての増殖アッセイの結果を示す。CHO.HLA−DR2トランスフェクト体(1.25×10細胞/ウェル)を、可溶性抗CD3抗体(1μg/ml)および力価測定された濃度の抗CD28抗体の存在下で、CD4T細胞(10細胞/ウェル)とともにインキュベートした。増殖を、72時間目に測定した。抗CD3非存在下でのCD4T細胞添加CHO.HLA−DR2トランスフェクト体の応答は、300CPMより下であった。
【図4】図4は、活性化T細胞によるサイトカイン産生に対するB7−H3の阻害効果を実証する。GFPを発現するCHO.HLA−DR2細胞、B7−H3 VCVCを発現するCHO.HLA−DR2細胞またはB7−H3 VCを発現するCHO.HLA−DR2細胞(1.25×10細胞/ウェル)を、可溶性抗CD3抗体(1μg/ml)および力価測定された濃度の抗CD28抗体(0.5ng/ml)の存在下で、CD4T細胞(10細胞/ウェル)とともにインキュベートした。抗CD3抗体(1μg/ml)および抗CD28抗体(0.5ng/ml)の存在下で、CHO.HLA−DR2 GFP、CHO.HLA−DR2 B7−H3 VCVCまたはCHO.HLA−DR2 B7−H3 VCのうちのいずれかにより刺激されたT細胞培養物から、上清を収集した。サイトカイン産生を、多重ELISAスクリーニングを用いて、72時間目に測定した。
【図5】図5は、細胞増殖阻害により測定される場合、B7−H3 VCおよびB7−H3 VCVCが、ヒトCD4T細胞に負のシグナルを送達することを実証する。精製されたCD4細胞(10細胞/ウェル)を、CISミクロスフェアまたはTRANSミクロスフェアにおける抗CD3抗体(1μg/10ミクロスフェア)およびB7−H3−Ig(VCVCまたはVC;4μg/10ミクロスフェア)を用いて活性化した。CISミクロスフェアを、4μg/10ミクロスフェアで、抗CD3(1μg/10ミクロスフェア)およびB7−H3(VCVCまたはVC)の両方によりコーティングした。TRANSミクロスフェアは、2つのタイプのミクロスフェア:(a)抗CD3抗体(1μg/10ミクロスフェア)によりコーティングされたミクロスフェアと、(b)B7−H3(VCVCまたはVC)によりコーティングされたミクロスフェアとの混合物からなっていた。等しいミクロスフェア対細胞比を維持するために、コントロールのマウスIgでコーティングされたミクロスフェアを添加して、5μg/10ビーズの総タンパク質濃度を達成した。増殖を、72時間目に測定した。
【図6】図6A〜6Cは、サイトカイン分泌阻害により測定される場合、B7−H3 VCおよびB7−H3 VCVCが、ヒトCD4T細胞に負のシグナルを送達することを実証する。精製されたCD4細胞(10細胞/ウェル)を、CISミクロスフェアまたはTRANSミクロスフェア上にある、抗CD3抗体(1μg/10ミクロスフェア)およびB7−H3−Ig(VCVCまたはVC;4μg/10ミクロスフェア)を用いて活性化した。CISミクロスフェアを、4μg/10ミクロスフェアにて、抗CD3(1μg/10ミクロスフェア)およびB7−H3−Ig(VCVCまたはVC)の両方によりコーティングした。TRANSミクロスフェアは、2つのタイプのミクロスフェア:(a)抗CD3抗体(1μg/10ミクロスフェア)によりコーティングされたミクロスフェアと、(b)B7−H3(VCVCまたはVC)によりコーティングされたミクロスフェアとの混合物からなっていた。等しいミクロスフェア対細胞比を維持するために、コントロールのマウスIgでコーティングされたミクロスフェアを添加して、5μg/10ビーズの総タンパク質濃度を達成した。この上清中のサイトカイン量を、多重ELISAスクリーニングを用いて72時間目に測定した:TNF−α(図6A)、IFN−γ(図6B)およびGM−CSF(図6C)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンパ球の活性化を阻害する方法であって、該方法は、該リンパ球とB7−H3アゴニストとを接触させる工程、および該アゴニストが、該リンパ球の活性化を阻害することを可能にする工程を包含する、方法。

【図1B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1A】
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【図2A】
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【図2B】
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【公開番号】特開2007−191489(P2007−191489A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95108(P2007−95108)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【分割の表示】特願2006−510118(P2006−510118)の分割
【原出願日】平成16年4月16日(2004.4.16)
【出願人】(502161704)ワイス (51)
【Fターム(参考)】