説明

免疫賦活剤及びこれを含有する免疫賦活性飲食物

【課題】 コショウ科植物成分を含有する免疫賦活剤及びこれを含有する免疫賦活性飲食物を提供する。
【解決手段】 本発明の免疫賦活剤はコショウ科植物成分(ヒハツ抽出物等)を含有する。また、本発明の免疫賦活剤はサイトカインの誘導能に優れ、特にTNF−α及びIL12の誘導能に優れている。本発明の免疫賦活性飲食物は本発明の免疫賦活剤を含有する。従って、本発明の免疫賦活性飲食物はサイトカインの誘導能に優れ、特にTNF−α及びIL12の誘導能に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫賦活剤及びこれを含有する免疫賦活性飲食物に関する。更に詳しくは、本発明はコショウ科植物成分を含有する免疫賦活剤及びこれを含有する免疫賦活性飲食物に関する。本発明の免疫賦活剤及びこれを含有する免疫賦活性飲食物は、食品分野及び医療分野等で広く利用できる。例えば、保健飲料、健康食品、保健食品、医薬品等として利用される。特にサイトカイン分泌誘導による各種免疫機能強化の目的で利用される。
【背景技術】
【0002】
近年、各種食品に含まれる成分を効率的に摂取して生体の免疫賦活作用を利用して、疾病の予防及び治癒を行う方法が注目されている。このなかでコショウ科植物の抽出物等に関して、冠血管拡張作用(特許文献1)、高血圧抑制機能(特許文献2)、肝障害抑制機能(特許文献3)、紫外線吸収機能(特許文献4)、色素沈着、しみ、そばかす予防(特許文献5)、脂肪分解促進(特許文献6)及び冷え性改善剤(特許文献7)等が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開昭62−178517号公報
【特許文献2】特開2005−162745号公報
【特許文献3】特開平05−262646号公報
【特許文献4】特開平07−238275号公報
【特許文献5】特開2000−198741号公報
【特許文献6】特開2005−132847号公報
【特許文献7】特開2003−040788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記いずれの特許文献等におけるコショウ科植物についての免疫賦活作用については示唆も検討もされていない。
免疫機構は複雑な生体システムであり不明な部分も多いが、従来、リンパ球から分泌されるサイトカインは、免疫機構のなかで重要な役割を担っていることが知られている。例えば、TNF(腫瘍壊死因子)及びIL(インターロイキン)等は、腫瘍に対する免疫作用の強化や、Th1細胞とTh2細胞とのバランス改善よるとされるアレルギー性疾患の改善効果等が知られている。また、サイトカインは、各種特定の食物等により分泌が誘導されたり、逆に抑制されたりすることが知られている。このことから、近年、手軽に長期間にわたって安全に摂取が可能な生体免疫機構を強化させられる免疫賦活剤及び飲食物などが求められている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、コショウ科植物成分を含有する免疫賦活剤及びこれを含有する免疫賦活性飲食物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は以下のとおりである。
(1)コショウ科植物成分を含有することを特徴とする免疫賦活剤。
(2)サイトカインの分泌を誘導する上記(1)に記載の免疫賦活剤。
(3)上記サイトカインはTNF−αを含む上記(2)に記載の免疫賦活剤。
(4)上記サイトカインはIL12を含む上記(2)又は(3)に記載の免疫賦活剤。
(5)上記コショウ科植物成分は、コショウ科植物の抽出物である請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の免疫賦活剤。
(6)上記抽出物は水溶性である上記(5)に記載の免疫賦活剤。
(7)上記コショウ科植物はヒハツである上記(1)乃至(6)のうちのいずれかに記載の免疫賦活剤。
(8)上記(1)乃至(7)のうちのいずれかに記載の免疫賦活剤を含有することを特徴とする免疫賦活性飲食物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の免疫賦活剤によれば、免疫機能を向上させることができる。
サイトカインの分泌が誘導される場合は、サイトカインに起因する免疫機能を向上させることができる。
サイトカインがTNF−αを含む場合及びサイトカインがIL12を含む場合は、抗腫瘍性及び抗アレルギー性等の免疫機能を向上させることができる。
コショウ科植物成分がコショウ科植物の抽出物である場合は、特に高い免疫賦活能を得ることができる。
抽出物が水溶性である場合は、上記各効果を得られつつ、工業的に扱い易く、安全且つ安価に抽出物の抽出を行うことができる。
コショウ科植物がヒハツである場合は、特に上記効果を顕著に得ることができる。
本発明の免疫賦活性飲食物によれば、免疫機能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
[1]免疫賦活剤
本発明の免疫賦活剤は、コショウ科植物成分を含有することを特徴とする。
【0009】
上記「コショウ科植物成分」は、コショウ科植物(コショウ科植物の乾燥粉末等)及びコショウ科植物から抽出された抽出物などを含む意味である。これらのうちでは抽出物が好ましい。効能成分がより多く含有されるためである。
【0010】
このコショウ科植物成分に用いるコショウ科植物は、コショウ科に属する植物である。コショウ科植物としては、コショウ属(Piper属)に属する各種植物及びペペロミア属(Peperomia属)に属する各種植物等が挙げられる。コショウ科コショウ属の植物としては、各種ナガコショウ類{ヒハツ(Piper longum)、ナガコショウ(Piper officinarum及びPiper retrofractum)、ヒハツモドキ(Piper retrofractum Vahl)}、コショウ(Piper nigrum)、カバ(Piper methysticum)、マチコ(Piper aduncum)、キンマ(Piper betle)、アウリツム(Piper auritum)、フウトウカズラ(Piper kadsula)等が挙げられる。また、ペペロミア属としては、オブツシフォリア(Peperomia obtusifolia)、フラゼリ(Peperomia fraseri)、アルギレイア(Peperomia argyreia)等が挙げられる。これらのなかではコショウ属が好ましく、更には、コショウ属のなかでも各種ナガコショウ類が好ましく、更には、ヒハツが好ましい。これらの各種コショウ科植物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記コショウ科の植物の生産地(栽培地及び自生地等を含む)は特に限定されない。
これらのコショウ科植物のなかではコショウ属に属する植物が好ましく、更には、ヒハツ、コショウ、カバ、マチコ、ナガコショウ、ヒハツモドキ及びキンマが好ましく、特にヒハツが好ましい。
【0011】
また、上記各種コショウ科植物の採取地(インドネシア、インド、フィリピン、ベトナム、ブラジル、マレーシア、フィジー、ニューギニア、バヌアツ、タヒチ、アフリカ等)などは特に限定されない。更に、コショウ科植物成分として用いる部位(全体を含む)は特に限定されない。即ち、例えば、果実、果穂、果皮、種子、根、気根、茎、花、葉、葉柄等の部位が挙げられる。また植物の全体を用いてもよい。これらのなかでは、果実、果穂、果皮、種子、根、気根及び花が好ましい。これらの部位は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。更に、コショウ科植物の採取時期も特に限定されないが、例えば、上記果実、果穂、果皮、種子及び花等を用いる場合にはこれらを得ることができる所定の時期となる。
【0012】
更に、コショウ科植物成分として用いるコショウ科植物は、未乾燥物、乾燥物及び凍結物等のどのような形態のものを用いてもよく、これらの形態のうちの2種以上を併用してもよい。また、コショウ科植物成分が抽出物である場合には、この抽出物の抽出に用いるコショウ科植物も、未乾燥物、乾燥物及び凍結物等のどのような形態のものを用いてもよく、これらの形態のうちの2種以上を併用してもよい。更に、抽出物では、後述する抽出に供する前に前処理を行うことができる。前処理としては、乾燥処理、粉砕処理、親水性抽出溶媒による脱脂処理等を行うことができる。
【0013】
上記「抽出物」は、上記コショウ科植物から抽出溶媒を用いて抽出された成分である。この抽出物を得るための抽出条件及び抽出方法等は特に限定されない。抽出溶媒の種類は特に限定されず、水及び各種有機溶媒等を用いることができる。これらの溶媒は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記水は、冷水、常温水、温水、熱水、水蒸気等を含む意味であり、全ての温度における水の状態を含むものである。また、水は殺菌処理及び/又はイオン交換処理が施された水を用いることができる。更に、水は浸透圧調整及び/又は緩衝化して用いることができる。
【0014】
上記有機溶媒としては、親水性有機溶媒及び親油性有機溶媒が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記親水性有機溶媒としては、炭素数1〜5の1価アルコール(エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール等)、炭素数2〜5の多価アルコール(グリセリン、イソプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等)、エステル(酢酸メチル等)及びケトン(アセトン等)などが挙げられる。これらのなかでは炭素数1〜5の1価アルコール及び/又は炭素数2〜5の多価アルコールが好ましく、更には、炭素数1〜5の1価アルコールが好ましく、特にエタノールが好ましい。これらの親水性有機溶媒は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記親油性有機溶媒としては、ベンゼン、キシレン、シクロヘキサン等が挙げられる。これらの親油性有機溶媒は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
これらの抽出溶媒のなかでは、水、水と親水性有機溶媒との混合溶媒、及び/又は親水性有機溶媒が好ましく、水、及び/又は、上記混合溶媒が好ましく、特に水が好ましい。即ち、コショウ科植物の抽出物は水溶性であることが好ましい。この水溶性とは、温度18℃の純水に対して少なくとも50μg/mL以上が溶解できることを意味する。
【0016】
また、抽出手法は特に限定されず、浸漬抽出、攪拌抽出、還流抽出、振とう抽出及び超音波抽出等を用いることができる。これらは1種の抽出方法のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。更に、抽出条件は特に限定されない。即ち、例えば、抽出に際しては加熱を行ってもよく、加熱を行わなくてもよい。また、加圧してもよく、加圧しなくてもよい。更に、抽出操作は1回で行ってもよく、複数回(抽出操作を行った後に得られる抽出残渣を再度抽出することを複数回数繰り返す)行ってもよい。
【0017】
上記のうち、例えば、加熱して行う場合には30〜80℃(好ましくは30〜70℃、より好ましくは30〜60℃)で行うことができる。この抽出温度は抽出溶媒の種類等により適宜とすることができる。但し、通常、抽出温度が過度に高いと抽出成分の免疫賦活作用を阻害する場合があるために、より低温度で、短時間で、行うことが好ましい。加熱せず抽出を行う場合は10〜30℃の常温で行うことができる。更に、抽出時間は特に限定されず、例えば、0.5〜168時間(好ましくは0.5〜120時間、より好ましくは0.5〜72時間)とすることができる。また、pH調整を行ってもよく、pH調整を行わなくてもよい。pH調整を行うことで抽出効率を向上させることができる。
【0018】
これらの各抽出条件のなかでも、特に温度32〜45℃(特に35〜40℃)の水(温水)による抽出が好ましい。即ち、本発明の免疫賦活剤には、温度32〜45℃(特に35〜40℃)の水(温水)による抽出物が少なくとも含有されることが好ましい。
尚、この温度32〜45℃の水による抽出物が含有されるとは、この温度32〜45℃の水のみによる抽出物以外にも、例えば、水と水以外の抽出溶媒との混合溶媒で温度32〜45℃で抽出して得られた抽出物にも含まれる抽出物である。
【0019】
上記抽出により得られる抽出液と抽出残渣との分離方法は特に限定されず、例えば、フィルタプレス及び濾過(加圧、常圧)等により分離できる。抽出残渣から分離された抽出液は、そのまま本発明の免疫賦活剤として用いることができる。また、抽出残渣から分離された抽出液は、その後、含まれる溶媒を除去して用いることもできる。抽出液からの溶媒の除去方法は特に限定されず、例えば、噴霧乾燥法、エバポレーション及び凍結乾燥法等により行うことができる。抽出液から分取された固形分(免疫賦活剤)はそのまま用いてもよく、更に精製を行ってもよい。即ち、この固形分を水及び/又は有機溶媒等に溶解させた後、濾過を行って夾雑物等を除去し、その後、溶媒を除去して精製することができる。更に、必要に応じて、滅菌処理等を施すことができる。
【0020】
抽出(抽出工程)を行う前には各種前処理工程を行うことができる。前処理工程としては、殺菌処理工程、粉砕処理工程、細胞壁構成成分を分解させる酵素処理工程等が挙げられる。殺菌工程は、紫外線照射、脱酸素、加熱等により行うことができる。上記粉砕処理工程における粉砕方法は特に限定されず、各種ミル等を用いることができる。この粉砕処理を行うことで抽出効率を向上させることができる。粉砕粒径は特に限定されないが、通常、10〜1000μmとすることができる。酵素処理工程は、各種酵素に適した溶媒、pH及び温度の環境に酵素と抽出対象物(粉砕後物でもよい)を浸漬して行うことができる。この際には、例えば、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ及びリパーゼ等のうちの1種又は2種以上の酵素を用いることができる。
【0021】
コショウ科植物成分の含有量は特に限定されないが、本免疫賦活剤中にコショウ科植物成分(乾燥物)に換算して50mg以上(通常、5000mg以下)が含有されることが好ましい。
また、本免疫賦活剤の使用方法は特に限定されず、投与する対象(ヒト、又はその他の動物、これらの年齢、体重及び性別)、症状、目的とする効果(予防、抑制、改善、治療、治癒等)、投与方法(経口投与、注射剤投与、外用投与、坐剤投与等)、使用期間、その他各種条件により適宜のものとすることが好ましい。例えば、通常の成人に対して、コショウ科植物成分(乾燥物)に換算して1日あたり1mg/kg(通常、100mg/kg以下)を投与することが好ましい。また、その際には、1回で投与してもよく、2回以上に分割して投与してもよい。
【0022】
本発明の免疫賦活剤は、免疫賦活成分(免疫賦活能を発揮させることができる成分、特にTNF−α及びIL12の分泌を誘導する成分)として、本免疫賦活剤の効果が得られる範囲においてコショウ科植物成分以外の他の免疫賦活成分を含有してもよいが、含有しなくてもよい。他の免疫賦活成分としては、免疫賦活性を有するキノコ成分(抽出物及び原末等)、海藻(メカブ及びモズク等)成分(抽出物及び原末等)などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。他の免疫賦活成分を含有しない場合には、即ち、本発明の免疫賦活剤は、免疫賦活成分としてコショウ科植物成分(特にヒハツ成分)のみを含有する免疫賦活剤とすることができる。
【0023】
また、本発明の免疫賦活剤の効果が得られる範囲において上記免疫賦活成分以外の他の成分を含有できる。即ち、例えば、成形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、滑沢剤、担体、溶剤、増量剤、等張化剤、乳化剤、懸濁化剤、増粘剤、被覆剤、吸収促進剤、凝固剤、保存剤(安定剤、防湿剤、着色防止剤、酸化防止剤等)、矯味剤、矯臭剤、着色剤、消泡剤、無痛化剤、帯電防止剤及びpH調節剤等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記のうち例えば、成形剤としては、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、澱粉、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、第二リン酸カルシウム、コーンスターチ及びアルギン酸等が挙げられる。結合剤としては、単シロップ、ブドウ糖液、澱粉液、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、水及びエタノール等が挙げられる。崩壊剤としては、澱粉、アルギン酸、寒天、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース及び澱粉グリコール酸ナトリウム等が挙げられる。崩壊抑制剤としては、ステアリルアルコール、ステアリン酸、カカオバター及び水素添加油等が挙げられる。滑沢剤としては、硬化植物油誘導体、胡麻油、サラシミツロウ、カルナバロウ、硬化油、ステアリン酸、ステアリン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム及びポリエチレングリコール等が挙げられる。担体としては、澱粉、乳糖、カオリン、ベントナイト、無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及びコロイド状ケイ酸等が挙げられる。吸収促進剤としては、第4級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム、尿素及び酵素等が挙げられる。
【0025】
本発明の免疫賦活剤の形態は特に限定されず、固形状、粉末状、顆粒状、クリーム状、液状等とすることができる。また、上記各々の形態において、錠剤(糖衣錠、ゼラチン被包錠、胃溶性被覆錠、腸溶性被覆錠及び水溶性フィルムコーティング錠等)、カプセル剤(硬質ゼラチンカプセル剤及び軟質カプセル剤等)、散剤、顆粒剤、液剤、軟膏剤及び貼付剤などとすることができる。更に、各々経口剤、注射剤、坐剤、外用剤及び飲食物添加剤等として用いることができる。
【0026】
本発明の免疫賦活剤は、免疫機能の強化を目的に用いることができる。特に本発明の免疫賦活剤は少なくともサイトカイン誘導能を有する。また、上記サイトカインは、少なくともTNF−α及びIL12を含む。従って、本発明の免疫賦活剤は、TNF−αの誘導能に優れるためにTNF−α誘導剤(腫瘍壊死因子誘導剤)として用いることができる。また、IL12の誘導能に優れるためにIL12誘導剤(インターロイキン12誘導剤)として用いることができる。
【0027】
更に、上記優れたTNF−αの誘導能及びIL12誘導能を有するため、抗腫瘍剤として用いることができる。抗腫瘍とは、即ち、腫瘍性疾病に対して予防、抑制、改善、治療、又は治癒等の効果を発揮できることである。腫瘍性疾患としては、骨髄増殖性疾患{白血病(白血病は、急性、慢性、骨髄性、単球性及びリンパ性等を含む)、多血症、血小板血症及び骨髄線維症等}、悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫等)、骨髄腫、形質細胞性腫瘍(多発性骨髄腫、形質細胞腫、原発性マクログロブリン血症等)、肺癌、乳癌、前立腺癌、大腸癌、結腸腺癌、頸部癌、子宮内膜癌、卵巣癌、膀胱癌、ウィルムス腫瘍、線維肉腫、骨肉種、黒色腫、骨膜肉腫、神経芽腫、脳腫瘍、神経内分泌腫瘍、腎臓癌、頭頸部癌、鼻咽頭癌、胃癌、食道癌、肝癌、胆道癌、肉腫、皮膚癌、甲状腺癌、睾丸腫瘍、膵臓癌、中皮腫等が挙げられる。
また、抗アレルギー剤として用いることができる。抗アレルギーとは、即ち、アレルギー性疾病に対して予防、抑制、改善、治療、又は治癒等の効果を発揮できることである。抗アレルギー性疾患としては、アトピー性皮膚炎、気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎、じんましん、花粉症、アレルギー性胃腸炎、慢性関節リウマチ、慢性肝炎等が挙げられる。
【0028】
尚、上記TNF−α誘導剤、上記IL12誘導剤、上記抗腫瘍剤、上記抗アレルギー剤として用いる場合には、上記免疫賦活剤として用いる場合と同様に、上記各種免疫賦活能を有する成分以外の他の各種成分、形態及び配合等をそのまま適用できる。また、同様に後述する使用方法をそのまま適用できる。
【0029】
[2]免疫賦活性飲食物
本発明の免疫賦活性飲食物は、本発明の免疫賦活剤を含有することを特徴とする。
免疫賦活剤は、前記本発明の免疫賦活剤をそのまま適用できる。本発明の免疫賦活性飲食物に含有される免疫賦活剤の量は特に限定されないが、免疫賦活性飲食物中にコショウ科植物成分(乾燥物)に換算して50mg以上(通常5000mg以下)含有されることが好ましい。
本発明の飲食物の摂取方法は特に限定されず、摂取するヒトの年齢、体重及び性別、症状、目的とする効果(予防、抑制、改善、治療、治癒等)、使用期間、その他各種条件により適宜のものとすることが好ましい。例えば、1日あたり通常の成人に対して、コショウ科植物成分(乾燥物)に換算して1mg/kg以上(通常、100mg/kg以下)摂取されることが好ましい。また、その際には、1回で摂取してもよく、2回以上に分割して摂取してもよい。
【0030】
本発明の免疫賦活性飲食物は特定の保健効果が認められる飲食物、又は生体調整成分の機能を活かした機能性飲食物等とすることができる。免疫賦活性飲食物の形態は特に限定されず種々のものとすることができる。即ち、例えば、液状食品、固形食品、半流動食品及びゲル状食品等が挙げられる。即ち、例えば、アルコール含有飲料(酒、焼酎、ビール等)、清涼飲料(炭酸飲料、果汁飲料、コーヒー、ココア及び茶等)、乳、乳酸菌飲料、乳製品、氷菓子、飴、ガム、焼き菓子(ビスケット、クッキー等)、加工穀物(パン、麺、シリアル、強化米等)、加工水産物(モズク等)などが挙げられる。これらのなかでは、例えば、乳酸菌飲料、加工水産物等に添加、又は併用することができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]免疫賦活剤
(1)実施例1、比較例1〜3の免疫賦活剤等の調整
下記に示すコショウ科植物成分(ヒハツ抽出物)と、アガリクス抽出物とを別々に純水に添加して各10質量%液を調整した。得られた各10質量%液を40℃に48時間保って抽出を行った。その後、孔径0.8μmのフィルター(日本ミリポア株式会社製、マイレクスAA)を用いて濾過した後、更に、孔径0.22μmのフィルター(日本ミリポア株式会社製、マイレクスGS)を用いて再度濾過して非水溶性成分と水溶性成分とを分離し、更に滅菌を施した。このようにして実施例1及び比較例2の水溶液を得た。
【0032】
また、抗悪性腫瘍溶連菌製剤{中外製薬株式会社製、品名「ピシバニール0.5KE」、ストレプトコックス・ピオゲネス(A群3型)Su株ペニシリン処理凍結乾燥粉末}を純水に添加した後、後述する培地を加えて抗悪性腫瘍溶連菌製剤の0.05KE溶液を調整した。その後、孔径0.8μmのフィルター(日本ミリポア株式会社製、マイレクスAA)を用いて濾過した後、更に、孔径0.22μmのフィルター(日本ミリポア株式会社製、マイレクスGS)を用いて再度濾過して非水溶性成分と水溶性成分とを分離し、更に滅菌を施した。このようにして比較例1の抗悪性腫瘍溶連菌製剤水溶液を得た。更に、比較例3(コントロール)として後述する培地(のみ)を用いた。
実施例1;ヒハツ抽出物水溶液(コショウ科植物成分)
比較例1:抗悪性腫瘍溶連菌製剤水溶液
比較例2:アガリクス抽出物水溶液
比較例3:コントロール(培地のみ)
【0033】
コショウ科植物成分 ;ヒハツ抽出物(熱水抽出物)、粉末状、丸善製薬株式会社製、品名「 ヒハツエキスパウダーMF」
【0034】
(2)ヒトリンパ球の培養
ヒトの上腕部より採取した20mLの血液からLymphoprep(Nycomed Pharma AS社製)を用いてリンパ球を単離した。得られたリンパ球を96穴プレートの各ウェルに50万〜100万個/mLで播種し、更に、上記(1)で得られた実施例1のヒハツ抽出物水溶液を400μg/mLとなるように、上記(1)で得られた比較例2のアガリクス抽出物水溶液を400μg/mLとなるように、各々添加して、37℃、5%CO2の培養条件下で培養を行った。培養には血清(10%FCS)、β−メルカプトエタノール(50μM)及びL−グルタミン(2mM)を含有するRPMI−1640(培地)を使用した。尚、上記400μg/mLとは、ウェル内の濃度を表す。ウェル内の液体量に対する上記[1](1)で用いた被抽出物(コショウ科植物成分、アガリクス抽出物)の作用量を意味する。また、上記比較例1の抗悪性腫瘍溶連菌製剤水溶液は上記0.05KEの濃度で用いた。
【0035】
(3)TNF−α及びIL12の測定
上記培養を開始してから6時間後と、24時間後と、に培地と細胞とを遠心分離し、上清を分収し、上清中のTNF−αの分泌量(含有量)をELISA法にて測定した。この測定に際してはEndogen社製の品名「Endogen Human TNFα ELISA Kit」を用いた。また、定量にはVmaxプレートリーダー(Molecular Devices社製)を測定波長450nmで用いた。この結果を表1に示し、グラフ化して図1に示した。
更に、同様に24時間後に培地と細胞とを遠心分離し、上清を分収し、上清中のIL12の分泌量(含有量)をELISA法にて測定した。この測定に際してはEndogen社製の品名「Endogen Human IL12 ELISA Kit」を用いた。また、定量にはVmaxプレートリーダー(Molecular Devices社製)を測定波長450nmで用いた。この結果を表1に併記し、グラフ化して図1に示した。
【0036】
【表1】

【0037】
(4)免疫賦活能の評価
表1及び図1より、TNF−αの6時間培養後の分泌量は、アガリクス抽出水溶液(比較例2)が1153pg/mLであり、ヒハツ抽出物水溶液(実施例1)が1313pg/mLであった。更に、TNF−αの24時間後の分泌量は、比較例2が2005pg/mLであり、実施例1が2236pg/mLであった。即ち、TNF−αの6時間培養後の分泌量は、実施例1は比較例2の分泌量より14%多く、24時間培養後においても12%多かった。このことから、ヒハツは、免疫賦活効果が高いことで知られるアガリクスと同等かそれを超える免疫賦活能を発揮できることが分かる。また、ヒハツ抽出物水溶液(実施例1)の6時間培養後のTNF−αの分泌量は抗悪性腫瘍溶連菌製剤水溶液(比較例1)の約50%であり、24時間培養後では約58%であった。このことから、ヒハツは、強いサイトカイン分泌誘導作用から医薬品として使用されている抗悪性腫瘍溶連菌製剤の水溶液と比較し得るTNF−α分泌誘導能を有していることが分かる。
【0038】
また、IL12の24時間後の分泌量は、実施例1が612pg/mLであり、比較例1(抗悪性腫瘍溶連菌製剤水溶液)が1500pg/mLであった。即ち、IL12の24時間培養後の分泌量は、実施例1は比較例1の分泌量の41%であり、上記TNF−αの場合と同様に抗悪性腫瘍溶連菌製剤の水溶液(比較例1)と比較し得るIL12分泌誘導能を有することが分かる。従って、本発明の免疫賦活剤は、優れたTNF−α誘導能及びIL12誘導能を有することによる優れた免疫賦活能を発揮できることが分かる。
【0039】
[2]免疫賦活性飲食物
本発明の免疫賦活性飲食物は、本発明の免疫賦活剤を含有することから、上記[1]で認められた免疫賦活効果がそのまま本免疫賦活性飲食物においても発揮されることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例1、比較例1〜3のTNF−α分泌量とIL12分泌量とを各々グラフ化して示した説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コショウ科植物成分を含有することを特徴とする免疫賦活剤。
【請求項2】
サイトカインの分泌を誘導する請求項1に記載の免疫賦活剤。
【請求項3】
上記サイトカインはTNF−αを含む請求項2に記載の免疫賦活剤。
【請求項4】
上記サイトカインはIL12を含む請求項2又は3に記載の免疫賦活剤。
【請求項5】
上記コショウ科植物成分は、コショウ科植物の抽出物である請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の免疫賦活剤。
【請求項6】
上記抽出物は水溶性である請求項5に記載の免疫賦活剤。
【請求項7】
上記コショウ科植物はヒハツである請求項1乃至6のうちのいずれかに記載の免疫賦活剤。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちのいずれかに記載の免疫賦活剤を含有することを特徴とする免疫賦活性飲食物。

【図1】
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【公開番号】特開2007−131568(P2007−131568A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325399(P2005−325399)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(399087433)日本製薬工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】