説明

免震基礎の施工方法

【課題】熟練を要することなく施工性に優れ、しかも高性能な免震基礎を構築できる免震基礎の施工方法を提供する。
【解決手段】地盤上に構築されて建物本体を支持する基礎本体と、或る大きさを超える地震力を受けて基礎本体の地盤に対する滑りを生じさせる滑り手段と、基礎スラブ及び基礎本体の間に設けられ、地震発生時滑り移動した基礎本体を元の位置に戻す復元力を基礎本体に与える弾性復元装置とを具えた免震基礎を構築する免震基礎の施工方法であって、基礎スラブを形成するとともに基礎本体を構築した後、基礎本体の下部に弾性復元装置を取り付けることにより、弾性復元装置を基礎本体から垂下した状態で支持し、次いで、弾性復元装置を載置固着して基礎スラブに固着する基台を、弾性復元装置と基礎スラブの間に構築する基台構築工程を施工することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震時に建物本体に伝わる揺れを抑制して、その損傷を最小限に留めることのできる免震基礎を構築するための免震基礎の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地震時に生じる地盤の振動エネルギーを、建物に伝わりにくくすることにより、建物構造体への負荷となる地震力を減じる所謂免震構造が多く提案されている。例えば図9では、住宅を構築する地盤aを掘削して、その底部に水平かつ平滑な上表面を有するコンクリート盤bを形成し、その上に、硬質で摩擦係数の小さな摺接材dを備えた布基礎eを構築するとともに、この布基礎eによって住宅本体fを支持している。更に布基礎eとこの布基礎eを囲む地盤aの周壁の間には、小・中程度の地震による振動エネルギーによっては崩壊せず、巨大地震による衝撃力を受けると崩壊するような気泡コンクリート、発泡スチロールなどの崩壊性材料gを充填した免震装置が例示される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような免震装置を用いると、巨大地震の発生時に、崩壊性材料gが崩壊して布基礎eと地盤a周壁との間に空所が形成されることから、住宅本体fに生じる慣性力によって、コンクリート盤bと摺接材dとの間で滑りを生じるため、地盤aの振動エネルギーを逃がして住宅本体fの揺れを抑制できる。
【0004】
【特許文献1】特開2001−336160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、気泡コンクリート、発泡スチロールなどの崩壊性材料gは、一旦クラッシュし始めると、住宅本体fの移動長さとともに漸増する慣性力が作用して、完全に粉砕する傾向がある。その結果巨大地震が発生すると、水平方向の支持を無くした布基礎eが加速度的な滑りを生じることにより、最悪住宅本体fの倒壊を招きやすく、人命の安全が保障できないとともに財産を棄損する恐れが大きい。
【0006】
そこで本出願人は、地盤と布基礎の間に弾性復元装置を設けることで、地震発生時滑り移動した布基礎を元の位置に戻す復元力を布基礎に与え、その結果基礎の滑り移動を弾性的に拘束することにより免震効果を持続できる高性能な免震基礎を提案している。しかし狙いの弾性復元力を発揮するためには、前記免震復元装置の設置位置、設置高さを極めて精度良く取り付け施工する必要があることから、熟練を要するとともに施工性が悪いという問題がある。また施工誤差から設置された免震復元装置の姿勢が微妙に狂うと、所期の弾性復元機能が得られないばかりか、摺接材dによる滑り効果も損なわれる結果を招き、充分な免震効果が得られない恐れがあり、更なる改善が望まれていた。
【0007】
本発明は、弾性復元装置を載置固着して基礎スラブに固着する基台を、弾性復元装置と基礎スラブの間に構築する基台構築工程を施工することを基本とし、熟練を要することなく施工性に優れ、しかも高性能な免震基礎を構築できる免震基礎の施工方法の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明では、地盤上に構築されて建物本体を支持する基礎本体と、或る大きさを超える地震力を受けて基礎本体の地盤に対する滑りを生じさせる滑り手段と、基礎スラブ及び基礎本体の間に設けられ、地震発生時滑り移動した基礎本体を元の位置に戻す復元力を基礎本体に与える弾性復元装置とを具えた免震基礎を構築する免震基礎の施工方法であって、基礎スラブを形成するとともに基礎本体を構築した後、基礎本体の下部に弾性復元装置を取り付けることにより、弾性復元装置を基礎本体から垂下した状態で支持し、次いで、弾性復元装置を載置固着して基礎スラブに固着する基台を、弾性復元装置と基礎スラブの間に構築する基台構築工程を施工することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明において、前記基台構築工程は、基礎本体下部に支持され、かつ脚状の固定アンカーを垂下する弾性復元装置の前記固定アンカーを囲む短筒状型枠を、基礎スラブ上に立設し、この短筒状型枠の内側に無収縮モルタルを打設して、固定アンカーを埋設した基台を構築する工程であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明では、地盤上に構築されて建物本体を支持するとともに、鉄筋コンクリート基礎梁及びその間に架け渡される鋼製基礎小梁からなる基礎本体と、或る大きさを超える地震力を受けて基礎本体の地盤に対する滑りを生じさせる滑り手段と、基礎スラブ及び基礎本体の間に設けられ、地震発生時滑り移動した基礎本体を元の位置に戻す復元力を基礎本体に与える弾性復元装置とを具えた免震基礎を構築する免震基礎の施工方法であって、基礎スラブを形成するとともに鉄筋コンクリート基礎梁を構築した後、この鉄筋コンクリート基礎梁の間に仮設梁を架け渡し、この仮設梁の下部に弾性復元装置を取り付けることにより、弾性復元装置を仮設梁から垂下した状態で支持し、次いで、弾性復元装置を載置固着して基礎スラブに固着する基台を、弾性復元装置と基礎スラブの間に構築する基台構築工程を施工し、その後、仮設梁を取り外して、鉄筋コンクリート基礎梁の間に鋼製基礎小梁を架け渡すとともに、前記弾性復元装置の上部を鋼製基礎小梁に固着する鋼製基礎小梁取り付け工程を施工することを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明において、前記基台構築工程は、基礎本体下部に支持され、かつ脚状の固定アンカーを垂下する弾性復元装置の前記固定アンカーを囲む短筒状型枠を、基礎スラブ上に立設し、この短筒状型枠の内側に無収縮モルタルを打設して、固定アンカーを埋設した基台を構築する工程であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明においては、基礎本体から垂下する状態で弾性復元装置を支持した後、この弾性復元装置を基礎スラブに固着する基台を、弾性復元装置と基礎スラブの間に構築する基台構築工程を施工する。従って高さを含めて基礎本体に対する弾性復元装置の取り付け姿勢を精確に位置合わせできることから、熟練性が要求される微妙な調整を行なう位置合わせ作業が不要となるため、施工性が極めて高い。しかも、弾性復元装置を基礎本体に対して精確な位置にセットできることから、東西南北如何なる方位に地震の揺れが発生しても、弾性復元機能をバランスよく発揮できるため、信頼性の高い免震基礎を構築できる。
【0013】
請求項2に係る発明のように、基礎スラブ上に立設した短筒状型枠の内側に、無収縮モルタルを打設して固定アンカーを埋設した基台を構築する基台構築工程を行なうと、基礎本体から精確な姿勢で垂下支持された弾性復元装置をそのままの状態で固着する基台が構築されるため、弾性復元装置を極めて高い設置精度で位置合わせできる。更に短筒状型枠内に打設した無収縮モルタルが基礎スラブの上で硬化することにより、基礎スラブと一体化した基台が形成されることから、堅牢な免震構造が形成される。
【0014】
請求項3に係る発明では、鉄筋コンクリート基礎梁の間に架け渡した仮設梁から弾性復元装置を垂下した状態で支持し、弾性復元装置と基礎スラブの間に基台を構築する基台構築工程、次いで仮設梁を取り外した、鉄筋コンクリート基礎梁の間に鋼製基礎小梁を架け渡して、弾性復元装置の上部を鋼製基礎小梁に固着する鋼製基礎小梁取り付け工程を施工する。従って、仮設梁から垂下することによって精確な位置に保持した弾性復元装置を基準として基台を形成するため、信頼性の高い免震基礎を構築できる。しかも、仮設梁は弾性復元装置を精確な位置、姿勢で垂下するだけの剛性を持つ比較的軽量な断面に形成できることから持ち運びを含む取扱い性が良いとともに、無収縮モルタルの打設スペースを充分大きく設けることができるため施工性に優れる。
【0015】
請求項4に係る発明のように、短筒状型枠の内側に、無収縮モルタルを打設して固定アンカーを埋設した基台を構築する基台構築工程を行なうと、精確な姿勢で支持された弾性復元装置をそのまま固着する基台を構築できるため、極めて高い設置精度で弾性復元装置を取り付けできる。また短筒状型枠内に打設した無収縮モルタルが基礎スラブと一体に硬化した基台が形成されるため、堅牢な免震構造を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。本発明の免震基礎の施工方法を用いて構築される免震基礎1は、図1に示すように、地盤2に形成される基礎スラブ12と、地盤2上に構築されるとともに建物本体3を支持する基礎本体4と、或る大きさを超える地震の際に機能する滑り手段5と、滑り移動した基礎本体4に復元力を与える弾性復元装置16とを含み構成される。
【0017】
前記建物本体3としては、住宅、ケアーハウス或いはグループホームなどの福祉施設、ホテル或いは旅館など宿泊施設、事務所オフィス或いは店舗など商業施設、学校、図書館或いは公民館など公共施設、その他が含まれる。またその構造としては、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造等があり、平屋建ての他、二階建て以上の多階層建築物も含まれる。
【0018】
前記基礎スラブ12は図1に示すように、地盤2と基礎本体4の間で盤状に形成される鉄筋コンクリート製の構造体である。この基礎スラブ12は、例えば、地盤2の建物配置領域を数十センチの均一深さに掘削した凹部に栗石地形を施工するとともに格子状に配筋し、セメントコンクリートを打設養生することにより、表面が平滑なスラブとして形成される。
【0019】
また基礎本体4は、現場打ちによる鉄筋コンクリート基礎梁6と、鋼製基礎小梁7とを含んで構成される。この鉄筋コンクリート基礎梁6は、縦断面が縦長矩形状をなし、均一断面で水平方向に直線状にのびて形成される。内部には水平にのびる上下の主筋が配筋されるとともに、これら上下の主筋をつなぐあばら筋が一定ピッチで配筋されている。このように構成された鉄筋コンクリート基礎梁6は図4に示すように、少なくとも基礎本体4の外周部に該当する外壁通りに連続して配置される。これに加えて本形態の鉄筋コンクリート基礎梁6は、間仕切り壁通りにも縦横方向に配置される。その結果鉄筋コンクリート基礎梁6は、全体として平面視略格子状に配置される。さらに、縦横の鉄筋コンクリート基礎梁6が交差し、かつ柱脚部が固着される交差部には、内側へ膨出することにより大断面に形成された柱支持部31が設けられ、柱を安定的に支持しうるよう構成される。
【0020】
前記鉄筋コンクリート基礎梁6の上部には、図2、3に示すように、所定位置に上のアンカーボルト32が埋設され、その頭部の螺子部が、鉄筋コンクリート基礎梁6の上面から垂直に立ち上がっている。更に鉄筋コンクリート基礎梁6の中間高さに、厚さ方向にのびる水平アンカーボルト19が埋設されている。この水平アンカーボルト19は、異形鉄筋又は丸鋼の端部に螺孔35を設けたものが用いらる。更に図2に示すように、内側に配された鉄筋コンクリート基礎梁6には、両端に螺孔35を有する水平アンカーボルト19が幅方向に貫通して埋設される。他方図3に示すように、外周部に配された鉄筋コンクリート基礎梁6には、一端にのみ螺孔35を有するとともに鉄筋コンクリート基礎梁6の厚さの略半分の長さの水平アンカーボルト19を、前記螺孔35が鉄筋コンクリート基礎梁6の内向きの側面から露呈する位置に埋設している。この略半分の長さの水平アンカーボルト19は、後端部が二つ割又は定着板が設けられており、外側に拡がる引き抜き抵抗用のアンカー36が形成される。
【0021】
前記滑り手段5は、基礎本体4と地盤2との間に介装され、或る大きさを超える地震力発生時に、基礎本体4に地盤2に対する滑りを発生させるもので、図2、3に示すように、前記基礎スラブ12に載置固着される受け板13と、鉄筋コンクリート基礎梁6の下面に固着されるとともに受け板13の上に重ねられて水平方向に摺動する移動板14とを含み構成される。また前記受け板13の上面及び移動板14の下面は、適切な摩擦係数、例えば0.05〜0.15程度に調整することによって良好な滑り性を有する滑り面に仕上げされる。
【0022】
地震時に双方の板が相対移動する際、移動板14の受け板13からの食み出しを防止するため、前記受け板13は、移動板14よりも大きな面積に形成することが好ましい。例えば、受け板13を1辺60〜120cm程度の正方形に形成し、移動板14は1辺20〜100cm程度の小さな正方形とすることができる。
【0023】
本形態では、受け板13及び移動板14として、滑り面側にセラミックコーティング膜を形成したセメント系硬化板を用いたものが例示される。受け板13、移動板14は、これ以外に、鋼板、セラミック板、FRP板などを用い、更にその表面にフッ素樹脂など摩擦係数の小さな塗膜を形成したもの、或いはこれら板材の表面を研磨するなどの表面加工を施して、摩擦係数を調整して用いることができる。或いは、受け板13、移動板14として、前記の中から異なる材質を選択組み合わせて使用することもできる。
【0024】
受け板13と、この受け板13の上に重なるとともに鉄筋コンクリート基礎梁6の下面に固着される移動板14とで滑り手段5が構成されるため、受け板13と移動板14間の摩擦係数を調整することによって、地震発生時に滑り作用が発生し始める地震力を適度な大きさの水準に合わせて設定できる。そのため安定した免震効果を発揮でき、免震構造としての高い信頼性が得られる。しかも本形態では、前記滑り手段5が基礎スラブ12と基礎本体4との間に介装されることから、地震時に地盤2に隆起、亀裂発生など部分的な変位が発生しても、この地盤2の激しく動く挙動が、基礎スラブ12を通して平均化されるため、滑り手段5が効果的な免震作用を発揮でき、その結果優れた免震効果が得られる。
【0025】
前記鋼製基礎小梁7は図1、4に示すように、鋼製梁材を用いて構成され、本形態ではI型鋼を用いている。このほか、溝形鋼、軽量H型鋼等を用いることもできる。鋼製基礎小梁7は図2、3に示すように、両端部に直立した矩形状の鋼板を溶接した取付板33を有し、並行する鉄筋コンクリート基礎梁6、6の間に、上面が鉄筋コンクリート基礎梁6と略同じ高さで配置される。そして鋼製基礎小梁7は、その両端部の取付板33を固着金具15を介し、鉄筋コンクリート基礎梁6に固着することによって平行で一対の鉄筋コンクリート基礎梁6の間に架け渡され、その結果、鉄筋コンクリート基礎梁6と、鋼製基礎小梁7とが一体化された基礎本体4が構成される。
【0026】
なお前記固着金具15は、図2に示すように、内側に配された鉄筋コンクリート基礎梁6の両側に一対の鋼製基礎小梁7、7を固着する際に用いる両面の固着金具15Wと、図3に示すように、外周部に配された鉄筋コンクリート基礎梁6の内側に一つの鋼製基礎小梁7を固着する際に用いる片面の固着金具15Sとの二種類のものが用いられる。そして前記アンカーボルト32、及び水平アンカーボルト19を用いて鉄筋コンクリート基礎梁6に緊結される。
【0027】
前記弾性復元装置16は、図1、5に示すように、矩形平板状の基板16Aと、この基板16A上に立ち上がる短円柱状の弾性復元部16Bと、この弾性復元部16Bの上部に一体に設けられる矩形板状の上取付板16Dとからなり、弾性復元部16Bを基板16Aと上取付板16Dとで挟んだサンドイッチ状をなす。前記弾性復元部16Bは、例えば天然ゴム、クロロプレンゴム(CR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)を含むゴム、スチレン系・オレフィン系・ウレタン系・ポリエステル系その他の熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)などの弾性材が用いられる。
【0028】
本発明は、この弾性復元装置16を、以下具体的に説明する基台構築工程によって、基礎スラブ12と、基礎本体4との間に設けることを特徴点としている。即ち本発明では、基礎スラブ12を形成し、この基礎スラブ12の上に、前記滑り手段5を介して鉄筋コンクリート基礎梁6及び鋼製基礎小梁7を構築した後、基台構築工程を施工する。
【0029】
前記基台構築工程においては、先ず図6、7に示すように、鋼製基礎小梁7の中間部47の下フランジ7Fに、弾性復元装置16の上取付板16Dをボルトで螺着することにより、弾性復元装置16を鋼製基礎小梁7の下部に固着する。このように鋼製基礎小梁7から垂下した状態で支持した弾性復元装置16の基板16Aに、脚状の固定アンカー61の上部を螺着することにより、弾性復元装置16の下部に複数本の固定アンカー61を固着する。
【0030】
次いで、弾性復元装置16から垂下する固定アンカー61を囲んで、短筒状型枠26を基礎スラブ12の上に載置立設する。なお短筒状型枠26は、位置ズレを防止するため、型枠支保工を用いて仮固定することが望ましい。本形態の短筒状型枠26は図7に示すように、断面矩形状のものを用いるが、断面が多角形状、環状、楕円状などのものを用いることもできる。
【0031】
次いで無収縮モルタルMを、短筒状型枠26の内側へ、弾性復元装置16の基板16A高さまで充填した後、一定時間養生する。無収縮モルタルが硬化すると、基礎スラブ12に一体化するとともに固定アンカー61を埋設することにより弾性復元装置16の下部を強固に固着した基台22が形成される。基礎スラブ12から基台22に連続してのびる鉄筋を埋設すると、基台22と基礎スラブ12とをより強固に一体性できる点で好ましい。なお無収縮モルタルの硬化後、短筒状型枠26を脱型する。さらに本形態では、図5に示すように、弾性復元装置16を取付けた鋼製基礎小梁7の中間部47に対し、直行する他の鋼製基礎小梁7の端部を固着して、鋼製基礎小梁7を平面視T字状に連結した基礎本体4を構築している。
【0032】
このように本発明の基台構築工程では、弾性復元装置16を基礎本体4に先付けした状態で、弾性復元装置16の下部を固着する基台22を構築することから、弾性復元装置16の設置位置が予め精確にセットできるため、熟練性が要求される微妙な調整を含む位置合わせ作業が不要となり、施工性を大幅に改善できる。しかも、基礎本体4に対して弾性復元装置16を精確な位置に取り付けできることから、予測できないあらゆる方位に向く地震の揺れに対し、弾性復元機能をバランス良く発揮でき、信頼性の高い免震基礎を構築できる。
【0033】
また本形態のように、基礎スラブ12の上に立設した短筒状型枠26の内側に、無収縮モルタルを打設することによって、固定アンカー61を埋設した基台22を構築する基台構築工程を施工すると、弾性復元装置16が基礎本体4から精確な姿勢で垂下支持された状態を維持しつつ基台22を構築できるため、弾性復元装置16を非常に高い位置精度で配設することができる。しかも短筒状型枠26の内側に打設した無収縮モルタルが基礎スラブ12の上で硬化することによって、基礎スラブ12と一体化した基台22が形成されるため、信頼性の高い免震構造を形成できる。
【0034】
なおこのようにして、鋼製基礎小梁7と基礎スラブ12との間に弾性復元装置16を設けると、地震発生時に衝撃を吸収しつつ滑り手段5上を移動した基礎本体4を基の位置に復帰させる復元力が与えられる。なおこの弾性復元装置16は、一つの建物の略中央の一箇所に設置する他、複数個を分散して配置することもよい。
【0035】
図8は、他の免震基礎の施工方法を説明している。前記の免震基礎の施工方法と異なる内容について説明し、それ以外は図中に表れた主要構成に同じ符号を付すだけとする。本発明によって施工する免震基礎は、前記と同様に構成された基礎本体4、滑り手段5、及び弾性復元装置16を含み構成されている。
【0036】
本発明では、基礎スラブ12を形成するとともにこの基礎スラブ12の上に滑り手段5を介して鉄筋コンクリート基礎梁6を構築した後、基台構築工程を施工する。そしてこの基台構築工程においては、先ず平行に向き合う鉄筋コンクリート基礎梁6、6の間に仮設梁63を架け渡す。
【0037】
前記仮設梁63は、前記鉄筋コンクリート基礎梁6、6間の間隔と略同じ長さを有する鋼製の角パイプを用いた梁本体64と、この梁本体64の端部に固着される側板65S及びこの側板65Sの上端部から外側へ折れ曲がる上板65Uを含み逆L字状をなす取付部65とからなる。そして、両側部の取付部65の上板65Uを鉄筋コンクリート基礎梁6の上端面に載置することにより鉄筋コンクリート基礎梁6、6の間に支持される。更に鉄筋コンクリート基礎梁6のアンカーボルト32を上板65Uに挿通螺着するとともに、側板65Sを挿通するボルトを水平アンカーボルト19に螺着することにより、仮設梁63を強固に仮固定する。
【0038】
前記仮設梁63は、鉄筋コンクリート基礎梁6、6の間に仮固定された状態で、その梁本体64の下面の高さが、鉄筋コンクリート基礎梁6、6の間に設けられる鋼製基礎小梁7の下面と同じ高さに支持されるように形成されることが重要である。即ち、前記側板65Sの大きさ、及び側板65Sに対する梁本体64の位置を選択、調整することによって、前記仮固定される際の梁本体64の下面が、後で鉄筋コンクリート基礎梁6、6の間に設けられる鋼製基礎小梁7の下面高さと同じレベルに設定される。
【0039】
次いで、鉄筋コンクリート基礎梁6、6の間に仮固定された仮設梁63の下面に上取付板16Dを下から重ねた状態で、弾性復元装置16を仮固定する。本形態では、シャコ万力66によって、上取付板16Dと仮設梁63の梁本体64とを挟着することによって、弾性復元装置16を仮固定している。このほかビス固定、専用のチャック冶具を用いて仮固定することも良い。
【0040】
このようにして、仮設梁63に支持されて正規の取り付け位置を維持する弾性復元装置16の基板16Aに、脚状の固定アンカー61を螺着し、更にこの固定アンカー61を囲んで、短筒状型枠26を基礎スラブ12の上に載置立設する。この状態で無収縮モルタルMを、短筒状型枠26の内側へ、弾性復元装置16の基板16A高さまで充填した後、一定時間養生する。無収縮モルタルの硬化後に短筒状型枠26を取り外して、基台構築工程の施工を完了する。
【0041】
前記基台構築工程に次いで、鋼製基礎小梁取り付け工程を施工する。この工程では、先ずシャコ万力66を緩めて弾性復元装置16と仮設梁63との固定を解除する。次いで弾性復元装置16を挟んで向き合う鉄筋コンクリート基礎梁6、6に各々固着金具15を取付けた後、この固着金具15を用いて鉄筋コンクリート基礎梁6、6の間に鋼製基礎小梁7を架け渡す。この時前記の如く設置された弾性復元装置16は、その上取付板16Dが、鋼製基礎小梁7の下面に沿う高さに形成されている。従ってこの上取付板16Dと鋼製基礎小梁7の下フランジをボルトによって螺着することにより、弾性復元装置16の上部を鋼製基礎小梁7に固着して、鋼製基礎小梁取り付け工程を完了する。なおこの施工の状況は、前記発明を説明する図1乃至4によって説明される。
【0042】
このように本発明の免震基礎の施工方法においては、鉄筋コンクリート基礎梁6、6の間に仮固定した仮設梁63に垂下することによって精確な位置に保持した弾性復元装置16を基準として基台22を形成するため、信頼性の高い免震基礎1を構築できる。しかも、使用する仮設梁63は、弾性復元装置16を精確な位置、姿勢で保持するために必要な剛性を具えた比較的軽量な断面のものを使用できるため、持ち運びを含む取扱い性が良いとともに、無収縮モルタルの打設スペースを充分大きく設けることができるため施工性に優れる。
【0043】
更には本発明の基台構築工程においても、短筒状型枠26の内側に、無収縮モルタルを打設して固定アンカー61を埋設した基台22を構築する。即ち精確な姿勢で支持された弾性復元装置16をそのまま固着する基台22を構築することから、極めて高い設置精度で弾性復元装置16を設置することができる。しかも短筒状型枠26内に打設した無収縮モルタルが基礎スラブ12上で一体に硬化して基台22が形成されるため、堅牢な免震構造を形成できる。
【0044】
尚、叙上の説明は本発明の実施の形態を例示したものである。従って本発明の技術的範囲はこれに何ら限定されるものではなく、前記した実施の形態の他にも、各種の変形例が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の施工方法によって構築される免震基礎を例示する縦断面図である。
【図2】その要部拡大縦断面図である。
【図3】他の要部の拡大縦断面図である。
【図4】その斜視図である。
【図5】更に他の他の要部の拡大縦断面図である。
【図6】基台構築工程を説明する縦断面図である。
【図7】その要部拡大斜視図である。
【図8】他の本発明の基台構築工程を説明する縦断面図である。
【図9】従来の免震基礎の縦断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 免震基礎
2 地盤
3 建物本体
4 基礎本体
5 滑り手段
12 基礎スラブ
16 弾性復元装置
22 基台
26 短筒状型枠
61 固定アンカー
63 仮設梁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤上に構築されて建物本体を支持する基礎本体と、或る大きさを超える地震力を受けて基礎本体の地盤に対する滑りを生じさせる滑り手段と、基礎スラブ及び基礎本体の間に設けられ、地震発生時滑り移動した基礎本体を元の位置に戻す復元力を基礎本体に与える弾性復元装置とを具えた免震基礎を構築する免震基礎の施工方法であって、
基礎スラブを形成するとともに基礎本体を構築した後、基礎本体の下部に弾性復元装置を取り付けることにより、弾性復元装置を基礎本体から垂下した状態で支持し、
次いで、弾性復元装置を載置固着して基礎スラブに固着する基台を、弾性復元装置と基礎スラブの間に構築する基台構築工程を施工することを特徴とする免震基礎の施工方法。
【請求項2】
前記基台構築工程は、基礎本体下部に支持され、かつ脚状の固定アンカーを垂下する弾性復元装置の前記固定アンカーを囲む短筒状型枠を、基礎スラブ上に立設し、
この短筒状型枠の内側に無収縮モルタルを打設して、固定アンカーを埋設した基台を構築する工程であることを特徴とする請求項1記載の免震基礎の施工方法。
【請求項3】
地盤上に構築されて建物本体を支持するとともに、鉄筋コンクリート基礎梁及びその間に架け渡される鋼製基礎小梁からなる基礎本体と、或る大きさを超える地震力を受けて基礎本体の地盤に対する滑りを生じさせる滑り手段と、基礎スラブ及び基礎本体の間に設けられ、地震発生時滑り移動した基礎本体を元の位置に戻す復元力を基礎本体に与える弾性復元装置とを具えた免震基礎を構築する免震基礎の施工方法であって、
基礎スラブを形成するとともに鉄筋コンクリート基礎梁を構築した後、この鉄筋コンクリート基礎梁の間に仮設梁を架け渡し、この仮設梁の下部に弾性復元装置を取り付けることにより、弾性復元装置を仮設梁から垂下した状態で支持し、
次いで、弾性復元装置を載置固着して基礎スラブに固着する基台を、弾性復元装置と基礎スラブの間に構築する基台構築工程を施工し、
その後、仮設梁を取り外して、鉄筋コンクリート基礎梁の間に鋼製基礎小梁を架け渡すとともに、前記弾性復元装置の上部を鋼製基礎小梁に固着する鋼製基礎小梁取り付け工程を施工することを特徴とする免震基礎の施工方法。
【請求項4】
前記基台構築工程は、基礎本体下部に支持され、かつ脚状の固定アンカーを垂下する弾性復元装置の前記固定アンカーを囲む短筒状型枠を、基礎スラブ上に立設し、
この短筒状型枠の内側に無収縮モルタルを打設して、固定アンカーを埋設した基台を構築する工程であることを特徴とする請求項3記載の免震基礎の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−150871(P2008−150871A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340364(P2006−340364)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】