説明

免震建築物

【課題】小規模の免震建築物において、免震装置の上に木製の架台を簡単に組み立てることができ、この架台によって構造躯体が支持された免震建築物を提供する。
【解決手段】複数の木製の横架材41,42がほぼ同じ高さで水平に支持され、これらが枠状に組み合わされた架台4を免震支承装置10の上に支持する。免震支承装置は、上部に架台支持部材16を有し、ほぼ水平となった上面の上に架台を形成する横架材を支持する。複数の横架材が架台支持部材上でほぼ直角に接合され、この接合部には架台固定金具17が用いられる。架台固定金具は、金属板がほぼ直角に連続して二つの鉛直面を形成する鉛直部17aと、鉛直部の下端と連続する水平部17bとを有する。そして、接合されるそれぞれの集成材の隅角部で側面に鉛直部を当接してビスで固着されるとともに、水平部が架台支持部材の上面に当接してボルトで固着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震時における地盤と構造躯体との間の相対的な変位を許容し、地盤から構造躯体に伝達される震動を低減する免震建築物に係り、特に戸建て住宅等の小規模な免震建築物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物には地震に対する高い安全性が求められ、大規模の商業ビルや集合住宅だけでなく、木造等の戸建て住宅でも免震構造とする提案が数多くなされている。
一般に戸建て住宅のような小規模の建築物では基礎上に免震装置を介して水平方向に組み立てられた架台を支持し、免震装置によって地盤と架台との間の相対的な変位を許容する。そして、この架台の上に構造躯体を組み立てて建築物を構築する。免震装置は、大規模の建築物では積層ゴムが多く用いられており、積層ゴムの変形により構造躯体へ伝播する震動を低減するものとなっている。しかし、小規模建築物では建築物全体の重量が小さく、積層ゴムの剛性が大きいと地盤の震動を有効に吸収できない場合がある。このため、小規模建築物では球体を介して構造躯体を支持するものや、滑り支承を介して構造躯体を支持するものが多く採用される。また、レール上を転がるように移動する支持体を二つ重ねて用い、移動方向を互いに直角方向に設定して地盤と構造躯体との間で水平方向の自由な相対変位を確保するものもある。
【0003】
上記のような容易に相対変位を許容する支承を用いたときには、特許文献1に示されるように、主に鉛直方向の荷重を支持する免震支承装置の他に、地盤と構造躯体との間に介挿して相対的な移動に抵抗を付与する減衰装置を用いたり、相対変位が生じたときに双方の位置関係を元に戻す復元機能を免震支承に組み込むことが多くなっている。また、別途に復元装置が設けられることもある。
【0004】
一方、上記免震装置を介して支持される架台は、特許文献2又は特許文献3に示されるように、鋼型材によって枠状に組み立てられたものが多く用いられている。また、鉄筋コンクリート構造とすることも考えられる。そして、これらの架台の下面に上記免震支承装置、復元装置、減衰装置等が固着され、地盤上に形成された基礎上に支持される。地震が発生したときには、架台は地盤に対して水平方向に変位し、地盤から伝達される水平方向力は緩和されるが、免震支承装置、復元装置、減衰装置の取り付け部分にはある程度の水平力が作用し、これらの取り付け部分から集中して架台に水平力が伝達される。
【0005】
構造躯体は、鉄骨プレハブ構造等であるときには、上記鋼製の架台上に柱を立設するともに、架台上に支持させて床組を形成することができる。構造躯体が木造軸組構造であるときには、上記鋼製の架台又は鉄筋コンクリート製の架台上に木材からなる土台を設置し、この上に柱及び床組を支持して構造躯体を構築する。これにより、従来の構造躯体をそのまま採用して免震構造とすることができる。
【特許文献1】特開2005−30152
【特許文献2】特開2005―207176
【特許文献3】特開2001―262864
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のように鋼製又は鉄筋コンクリート製の架台上に木製の土台を配置し、この上に木造の免震建築物を構築するときには、架台と土台とを上下に重ねて構築することになり、費用が嵩むことになる。また、この様な問題点を解決するために架台を木製とすることも考えられるが、このような木製の架台を構築するためには木部材を現場で配列し、これらを強固に接合しなければならない。そして、木部材は構造躯体の重量を支持し得るようにやや断面寸法の大きい部材となり、これらを免震支承装置や復元装置の上で組み立てることになる。このため、現場で免震装置の上に木製の枠体を組み立てる作業は、多くの手間を要するものとなる。
【0007】
本願発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、免震装置の上に木製の架台を簡単に組み立てることができ、この架台によって構造躯体がしっかりと支持された免震建築物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 複数の木製の横架材がほぼ同じ高さで水平に支持され、これらが枠状に組み合わされた架台と、 前記架台を地盤上に支持するとともに、該架台と地盤との間で水平方向への相対的変位を許容する免震支承装置と、 前記架台上に構築された構造躯体とを有する免震建築物であって、 前記免震支承装置は、ほぼ水平となった上面の上に前記横架材を支持する架台支持部材を有し、 複数の前記横架材が前記架台支持部材上でほぼ直角に接合され、 金属板がほぼ直角に連続して二つの鉛直面を形成する鉛直部と、該鉛直部の下端と連続する水平部とを有する架台固定金具が、接合されるそれぞれの横架材の側面に前記鉛直部を当接して固着されるとともに、前記水平部が前記架台支持部材の上面に当接して固着されている免震建築物を提供する。
【0009】
この免震建築物では、免震支承装置に支持される架台を形成するときに、所定の位置に設けられた免震支承装置の架台支持部材上に木製の横架材を載置することができる。そして、ほぼ直角方向に接合される複数の横架材を架台支持部材上の所定の位置に配置して架台固定金具を取り付けることにより、横架材は互いに接合されるとともに架台支持部材とも強固に固定される。したがって免震支承装置上に支持される木製の架台を現場における簡単な作業で構築することができる。また、ほぼ直角に接合される横架材は免震支承装置の架台支持部材上で接合されるので、簡単な構造で横架材に作用する鉛直方向のせん断力が確実に支持される。
【0010】
この木製の架台上には直接に柱を立設することができるとともに、木製の大引き等を支持させて床組を形成することができ、木製の土台を布基礎上に用いた構造と全く同様に構造躯体を構築することが可能となる。また、この木製の架台上には、ツーバイフォー工法やその他の様々な工法による構造躯体を構築することも可能である。
なお、上記免震支承装置は、例えば、転動が可能な球体を介して架台支持部材を支えるもの、装置の上部と下部との間で互いに滑動が可能となったもの、基礎側と架台側とに互いに直角となるようにレールを設け、これらのレールに対して滑動又はロール等を介して転動が可能な支持体を有するもの等を用いることができる。また、地震時に有効な変形が可能な材料、形状、構造等が選択できれば積層ゴムを用いることもでき、地盤側と構造躯体側との間における水平方向の相対的な変位を許容する支承装置であれば様々のものを用いることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の免震建築物において、 前記架台固定金具は、連続した一つの水平部から複数の鉛直部が立ち上げられており、 複数の前記鉛直部は、互いに接合される複数の横架材間の複数の隅角部にそれぞれ固着されるものとする。
【0012】
上記架台固定金具の直角な二つの鉛直面を有する部分は、あらかじめ一つの板材からなる水平部上で位置を正確に設定して複数が立設されており、接合される二つの横架材は、上記水平部の上で、簡単な作業により所定位置に据え付けることができる。これにより、二つの横架材の側面が形成する隅角部に上記鉛直部が当接され、これらの鉛直部によって横架材が互いに強固に連結される。また、この鉛直部と連続する水平部が架台支持部材にボルト等によって固着されるので、接合された横架材と免震支承装置とが強固に固着される。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2において、 前記架台固定金具は、ビス又は釘によって前記横架材に固着されるものとする。
【0014】
上記架台固定金具を横架材の側面にビス又は釘で固定することにより、横架材の接合部分にあらかじめ加工を施しておく必要がなく、現場で簡単に接合することができる。
なお、上記ビス又は釘には、釘の軸部に螺旋状の溝が形成されたラグスクリュー等をも含むものであり、木材に簡単にねじ込み又は打ち込むことができる様々な部材を含むものである。
【0015】
請求項4に係る発明は、 複数の木製の横架材がほぼ同じ高さで水平に支持され、これらが枠状に組み合わされた架台と、 前記架台を地盤上に支持するとともに、該架台と地盤との間で水平方向への相対的変位を許容する免震支承装置と、 弾性的に変形する部材の上端が前記架台に固着され、下端が地盤上に固定支持された基礎に固着された位置復元装置と、 前記架台上に構築された構造躯体とを有する免震建築物であって、 前記位置復元装置は、ほぼ水平となった上面が前記横架材の底面に当接して固着される上部固定部材を有し、 複数の前記横架材が前記上部固定部材上でほぼ直角に接合され、 金属板がほぼ直角に連続して二つの鉛直面を形成する鉛直部と、該鉛直部の下端と連続する水平部とを有する架台固定金具が、接合されるそれぞれの横架材の側面に前記鉛直部を当接して固着されるとともに、前記水平部が前記上部固定部材の上面に当接して固着されている免震建築物を提供するものである。
【0016】
この免震建築物は、免震支承装置の他に、架台と地盤との間に相対変位が生じたときに、元の位置に復元する力を付与する位置復元装置を有するものであり、この位置復元装置は、上面がほぼ水平となった上部固定部材を備えている。この上部固定部材の上面には、免震支承装置の架台支持部材と同様に、架台を組み立てるときに複数の横架材を所定の位置に載置することができる。この状態で架台固定金具を用い、ほぼ直角に配置される複数の横架材を互いに接合するともに、横架材と上部固定部材とを強固に接合することができる。したがって、位置復元装置による復元力は、上部固定部材及び架台固定金具を介して架台に確実に伝達される。
なお、上記位置復元装置は、例えば積層ゴムの上端部に上部固定部材が固着され、下部には基礎に固定するための部材を有するものを用いることができる。また、バネを用いて復元力を付与するものでも良い。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の免震建築物において、 前記位置復元装置は、前記上部固定部材に一端が連結され、他端が地盤上に固定支持された基礎に連結された変位制限部材を有し、 該変位制限部材は、前記架台と地盤との間に生じる水平方向の相対的変位量を所定の値以下に拘束するように長さが調整されているものとする。
【0018】
この免震建築物では、地震時に架台と地盤との間に相対的な変位が生じ、この変位量が所定の制限値に達すると変位制限部材がそれ以上に相対的変位が増大するのを拘束する。これにより架台及び構造躯体の変位量が過大になるのが防止され、免震支承装置等の損傷を防止することができる。また、変位制限部材によって相対的な変位を拘束するときには、上部固定部材に大きな水平力が作用することになるが、この水平力は架台を構成する横架材がほぼ直角に接合された部分に架台固定金具を介して伝達される。また、接合される横架材は架台固定金具によって互いに強固に接合されており、変位制限部材による拘束力は架台全体及び構造躯体に円滑に伝達される。
【0019】
請求項6に係る発明は、 複数の木製の横架材がほぼ同じ高さで水平に支持され、これらが枠状に組み合わされた架台と、 前記架台を地盤上に支持するとともに、該架台と地盤との間で水平方向への相対的変位を許容する免震支承装置と、 一端が前記架台に結合され、他端が地盤上に固定支持された基礎に結合され、水平方向へ相対的に変位する前記架台と前記基礎との間に抵抗力を付与する減衰装置と、 前記架台上に構築された構造躯体とを有する免震建築物であって、 前記減衰装置の一端は、ほぼ水平となった上面を有する上部結合部材を前記横架材の底面に固着することによって連結され、 複数の前記横架材は前記上部結合部材上でほぼ直角に接合され、 金属板がほぼ直角に連続して二つの鉛直面を形成する鉛直部と、該鉛直部の下端と連続する水平部とを有する架台固定金具が、接合されるそれぞれの横架材の側面に前記鉛直部を当接して固着されるとともに、前記水平部が前記上部結合部材の上面に当接して固着されている免震建築物を提供するものである。
【0020】
この免震建築物は、免震支承装置の他に、架台と地盤との間の相対変位に抵抗力を付与し、架台に伝達される震動を減衰させる減衰装置を有するものである。地震動が生じたときに、この減衰装置によって付与される抵抗力は、横架材の底面に当接して固着された上部結合部材を介して架台に伝達される。この上部結合部材は免震支承装置及び位置復元装置と同様の架台固定金具により架台と結合され、架台を構成する複数の横架材は同じ架台結合金具によって互いに接合されており、上記抵抗力が上記架台固定金具を介して架台の広い範囲に確実に伝達される。
なお、上記減衰装置は、例えばオイルダンパー等の粘性流体を用いて相対的変位に抵抗力を付与するもの、塑性変形を生じる固体材料を用いるもの、摩擦抵抗によって相対的な変位に抵抗力を付与するもの等、様々のものを採用することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本願発明の免震建築物では、免震支承装置上に木製の架台を簡単に組み立てることができ、この上に構造躯体を構築することができる。そして、地震時には架台と地盤との間に相対的な変位を許容するとともに、架台に作用する水平力は架台固定金具を介して架台に伝達される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本願に係る発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本願発明の一実施形態である免震建築物の概略立面図である。
この免震建築物は、地盤1上に形成された基礎2の上に免震装置3を介して架台4が支持され、この上に上部構造5が構築されている。上記免震装置3は、免震支承装置10、位置復元装置20及び減衰装置30を含むものであり、それぞれが複数用いられ、平面上の適切な位置に配置されている。
【0023】
上記基礎2は、地盤上に形成された鉄筋コンクリートからなる床版であり、地盤の状態によっては杭を打ち込んで、その上に支持されるものであってもよい。
【0024】
上記架台4は、木材を貼り合わせた集成材を用いて形成されており、互いに直角となる水平な二方向にそれぞれ複数の集成材を配置し、ほぼ格子状の枠体を形成するように組み立てられたものである。集成材を互い接合する構造及び免震装置と接合する構造については後述する。
【0025】
上部構造5は、従来から木造の建築物で一般に用いられる軸組構造が採用されており、上記架台4上に柱を立設して構造躯体が構築されている。また、床組も大引き、根太等を架台4に支持させて形成されている。
【0026】
上記免震支承装置10は、図2に示すように、基礎コンクリート2の上にモルタル層11を形成し、その上に設置されており、モルタル層11の上に敷設された鋼板12と、この上で転動が可能となった球体13と、この球体13の上部に設けられ、球体13の回転を確保するとともに鉛直方向の荷重を球体13を介して基礎2に伝達する球体受け部14と、球体13が転動する鋼板12上を覆うカバー板15と、上記球体受け部14と架台4との間に介挿され、球体受け部14上に架台4を支持する架台支持部材16とで主要部が形成されている。
【0027】
上記鋼板12は、上面が正確に水平となるようにモルタル層11の上に敷設され、地震動によって球体13が転動する範囲に設けられている。そして、周縁付近には周囲を取り囲むようにゴム材18が取り付けられ、このゴム材18の頂部がカバー板15の下面に接している。これによりカバー板15が球体受け部14とともに移動するのを拘束することなく、カバー板15と鋼板12との間すなわち球体13の転動範囲に砂や塵が入り込むのを防止するものとなっている。
【0028】
上記球体13は鋼からなるものであり、架台4からの鉛直荷重を支持することができる十分な強度と剛性を有するものである。そして、球体13の上に設けられた球体受け部16は、鉛直方向の荷重を支持するともに、球体13の自由な回転を確保するように小さな複数の球(図示しない)を介して支持されている。これにより、免震支承装置10の上部が基礎2に対して水平方向へ移動するのを許容するものとなっている。
【0029】
上記架台支持部材16は鋼によって形成され、球体受け部14に固着されており、上面は水平な面となっている。この上面の上に集成材41,42からなる架台4が載置され、架台固定金具17によって架台支持部材16と架台4とが結合されている。
【0030】
上記架台固定金具17は鋼板材によって形成されたものであり、図3に示すように、互いに直角となって連続する鉛直な2つの面を有する鉛直部17aと、これらの下縁で連続する水平部17bとを有するものである。この架台固定金具17は、図4に示すように直角に接合される三つの集成材41,42,43の側面が形成する四つの隅角部にそれぞれ取り付けられている。そして、それぞれの架台固定金具17の二つの鉛直面を接合される二つの集成材の側面にそれぞれ当接し、ビス51によって固定されている。水平部17bは、架台支持部材16の上面に当接され、ボルト52によって固着される。
【0031】
なお、上記架台固定金具17は、それぞれ隅角部に取り付けられる部分が独立したものであるが、図5に示すようにこれらが一体となった他の架台固定金具19を用いることもできる。この架台固定金具19は、一つの連続した水平部19bの上に4つの鉛直部19aが立設されたものである。このような架台固定金具19を用いても、同様に集成材を互いに接合し、これらを免震支承装置の架台支持部材上に容易に固着することができる。
【0032】
図6は、位置復元装置20及びこの位置復元装置20を架台4に取り付ける構造を示す概略立面図である。この位置復元装置20は、ゴム等の弾性材料からなる復元部材23と、この復元部材23の下面に接合された鋼板からなる下部固定部材22と、復元部材23の上面に固着された鋼製の上部固定部材24とで主要部が構成されている。そして、下部固定部材22がアンカーボルト26により、モルタル層21を介して基礎コンクリート2に強固に固着されている。上部固定部材24は、上記免震支承装置10と同様に架台4の三つの集成材が接合される部分の下側に架台固定金具25を用いて固定されている。したがって、基礎と架台との間に水平方向の相対的な変位が生じたときに、上記復元部材23には上部固定部材24と下部固定部材22との間で弾性的なせん断変形が生じる。そして、この弾性変形にともなう復元力が架台4と基礎2との相対的な変位を元の位置へ戻すように作用する。
【0033】
上記位置復元装置20には、図7に示すように、変位制限部材27を取り付けることもできる。この変位制限部材27はワイヤからなるものであり、両端がそれぞれ上部固定部材24及び下部固定部材22に連結されている。つまり、下部固定部材22を取り付けるアンカーボルト28及び上部固定部材24と架台固定金具25とを結合するボルト29としてそれぞれ頭部に輪状の連結部を有するものを用い、この連結部を利用してにワイヤの両端部をそれぞれ連結するものとなっている。このワイヤの長さは、架台4と基礎2との間の相対変位の許容値と対応するように決定され、相対変位量が許容値を超えないように設定されている。
【0034】
図8は、減衰装置30及びこの減衰装置30を架台4に取り付ける構造を示す概略立面図である。この減衰装置30は、架台4の下面に取り付けられる上部結合部材31と、上部結合部材31が取り付けられた位置から水平方向へ所定の距離をおいた位置の基礎上に固定される下部結合部材32と、上部結合部材31と下部結合部材32との間に介挿されるオイルダンパー34とで主要部が構成されている。
【0035】
上部結合部材31は、上面が水平な面となっており、この面を架台4の下面に当接して固着されている。この上部結合部材31が固着される位置は、上記免震支承装置10及び位置復元装置20と同様に三つの集成材が接合される部分の下側となっており、免震支承装置10と同様に架台固定金具37を用いて固定されている。一方、下部結合部材32は基礎2のコンクリートにアンカーボルト33によって固着されている。オイルダンパー34は、円筒状のシリンダー内に粘性流体を収容し、両側の取り付けロッド35,36間が伸縮するときに粘性抵抗を付与するものである。そして両側の取り付けロッド35,36は、上部結合部材31及び下部結合部材32の双方に水平方向の回動が可能となるように連結されている。
このような減衰装置30は複数が用いられ、オイルダンパー34の軸線がほぼ直角となる二つの方向に配置されたものが併存するように配置されている。したがって、架台4と基礎2との間の相対的変位がいかなる方向に生じた場合であっても、震動による相対的変位に粘性抵抗を付与するものとなっている。
【0036】
このような免震建築物では、地震時に基礎2と構造躯体を支持する架台4との間で水平方向の相対的な変位が許容され、地盤から構造躯体に伝達される地震動を低減することができる。また、地震動が作用したときに免震支承装置10、位置復元装置20又は減衰装置30から架台4に作用する水平力は、架台固定金具17、25、37を介して伝達される。一方、この免震建築物の架台4を組み立てるときには、所定の位置に据え付けられた免震支承装置10又は位置復元装置20の上に、架台4を構成する集成材を横方向に架け渡し、架台固定金具17,25を用いて免震支承装置10又は位置復元装置20と集成材とを接合することができるともに、直角方向に接合される集成材を現場における簡単な作業で結合することができる。
【0037】
なお、上記の実施の形態では、減衰装置30及び位置復元装置20が設けられる位置は、架台4の集成材が四方から接合される部位としたが、これ以外の位置例えば一つの集成材の長さ方向の中間部に設けても良い。また、複数が設けられる免震支承装置の一部も、一つの集成材の長さ方向の中間部または三方に伸びる集成材が接合される部分に設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本願発明の一実施形態である免震建築物の概略立面図である。
【図2】図1に示す免震建築物で用いられる免震支承装置及びこの免震支承装置を架台に取り付ける構造を示す概略立面図である。
【図3】図2に示す免震支承装置を架台に取り付ける部分及び架台固定金具の概略斜視図である。
【図4】図2に示す免震支承装置を架台に取り付ける部分の概略平面図である。
【図5】図2に示す免震支承装置を架台に取り付ける架台固定金具の他の例を示す概略平面図である。
【図6】図1に示す免震建築物で用いられる位置復元装置及びこの位置復元装置を架台に取り付ける構造を示す概略立面図である。
【図7】変位制限部材を有する位置復元装置の一例を示す概略立面図である。
【図8】図1に示す免震建築物で用いられる減衰装置及びこの減衰装置を架台に取り付ける構造を示す概略立面図である。
【符号の説明】
【0039】
1:地盤、 2:基礎、 3:免震装置、 4:架台、 5:建築物の上部構造
10:免震支承装置、 11:モルタル層、 12:鋼板、 13:球体、 14:球体受け部、 15:カバー板、 16:架台支持部材、 17:架台固定金具、 17a:架台固定金具の鉛直部、 17b:架台固定金具の水平部、 18:ゴム材、 19:架台固定金具、
20:位置復元装置、 21:モルタル層、 22:下部固定部材、 23:復元部材、 24:上部固定部材、 25:架台固定金具、 26:アンカーボルト、
30:減衰装置、 31:上部結合部材、 32:下部結合部材、 33:アンカーボルト、 34:オイルダンパー、 35,36:取り付けロッド、 37:架台固定金具、
41,42,43,44,45,46,47:集成材(木材)、
51:ビス、 52:ボルト:







【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の木製の横架材がほぼ同じ高さで水平に支持され、これらが枠状に組み合わされた架台と、
前記架台を地盤上に支持するとともに、該架台と地盤との間で水平方向への相対的変位を許容する免震支承装置と、
前記架台上に構築された構造躯体とを有する免震建築物であって、
前記免震支承装置は、ほぼ水平となった上面の上に前記横架材を支持する架台支持部材を有し、
複数の前記横架材が前記架台支持部材上でほぼ直角に接合され、
金属板がほぼ直角に連続して二つの鉛直面を形成する鉛直部と、該鉛直部の下端と連続する水平部とを有する架台固定金具が、接合されるそれぞれの横架材の側面に前記鉛直部を当接して固着されるとともに、前記水平部が前記架台支持部材の上面に当接して固着されていることを特徴とする免震建築物。
【請求項2】
前記架台固定金具は、連続した一つの水平部から複数の鉛直部が立ち上げられており、
複数の前記鉛直部は、互いに接合される複数の横架材間の複数の隅角部にそれぞれ固着されるものであることを特徴とする請求項1に記載の免震建築物。
【請求項3】
前記架台固定金具は、ビス又は釘によって前記横架材に固着されるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の免震建築物。
【請求項4】
複数の木製の横架材がほぼ同じ高さで水平に支持され、これらが枠状に組み合わされた架台と、
前記架台を地盤上に支持するとともに、該架台と地盤との間で水平方向への相対的変位を許容する免震支承装置と、
弾性的に変形する部材の上端が前記架台に固着され、下端が地盤上に固定支持された基礎に固着された位置復元装置と、
前記架台上に構築された構造躯体とを有する免震建築物であって、
前記位置復元装置は、ほぼ水平となった上面が前記横架材の底面に当接して固着される上部固定部材を有し、
複数の前記横架材が前記上部固定部材上でほぼ直角に接合され、
金属板がほぼ直角に連続して二つの鉛直面を形成する鉛直部と、該鉛直部の下端と連続する水平部とを有する架台固定金具が、接合されるそれぞれの横架材の側面に前記鉛直部を当接して固着されるとともに、前記水平部が前記上部固定部材の上面に当接して固着されていることを特徴とする免震建築物。
【請求項5】
前記位置復元装置は、前記上部固定部材に一端が連結され、他端が地盤上に固定支持された基礎に連結された変位制限部材を有し、
該変位制限部材は、前記架台と地盤との間に生じる水平方向の相対的変位量を所定の値以下に拘束するように長さが調整されていることを特徴とする請求項4に記載の免震建築物。
【請求項6】
複数の木製の横架材がほぼ同じ高さで水平に支持され、これらが枠状に組み合わされた架台と、
前記架台を地盤上に支持するとともに、該架台と地盤との間で水平方向への相対的変位を許容する免震支承装置と、
一端が前記架台に結合され、他端が地盤上に固定支持された基礎に結合され、水平方向へ相対的に変位する前記架台と前記基礎との間に抵抗力を付与する減衰装置と、
前記架台上に構築された構造躯体とを有する免震建築物であって、
前記減衰装置の一端は、ほぼ水平となった上面を有する上部結合部材を前記横架材の底面に固着することによって連結され、
複数の前記横架材は前記上部結合部材上でほぼ直角に接合され、
金属板がほぼ直角に連続して二つの鉛直面を形成する鉛直部と、該鉛直部の下端と連続する水平部とを有する架台固定金具が、接合されるそれぞれの横架材の側面に前記鉛直部を当接して固着されるとともに、前記水平部が前記上部結合部材の上面に当接して固着されていることを特徴とする免震建築物。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−321437(P2007−321437A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152813(P2006−152813)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【Fターム(参考)】