説明

免震装置

【課題】免震装置は地震の水平方向の揺れに効果を発揮し、装置構成が単純であるので、作動の信頼性が高く、しかも低コストで製作できる。
【解決手段】免震装置は、平面鋼板4と、その平面状に自転可能な状態で置かれる主たる鋼球と、その主たる鋼球を同一平面状でそれぞれ一定の位置関係に保持し、かつ、全ての鋼球を自転可能な状態で保持する位置保持用リテーナ2に保持された鋼球群が、主たる鋼球の上部に自転可能な状態で覆いかぶさることで構成される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
大地震時の強い地震動から構造物を保護するために、地盤と構造物の間に、各種の免震装置(各種の積層ゴム、すべり支承、転がり支承等)を配置して地盤の振動が直接伝達されないようにした免震構造物が実用化されている。本発明は、これらの免震装置の中で、最も低い水平抵抗力を提供できると考えられている転がり免震装置に関するものである。
【背景技術】
免震構造は、大地震時の強い地震動に対して構造物の揺れそのものを低減できるので、建物の構造骨組みの耐震安全性が高まるだけでなく、内部の家具や設備備品など収容物の転倒や落下・衝突の危険性が下がり、建物全体の耐震安全性を飛躍的に高めることができる。従来の耐震構造に較べて優れた耐震安全性能を有する免震建物を実現可能としたものは、免震装置の出現であり、これまでに以下のような免震装置が実用化されている。即ち、アイソレータ機能とダンパー機能の両者を有する免震システムとしては、(1)天然ゴム系積層ゴム+別置きダンパ、(2)高減衰積層ゴム、(3)鉛プラグ入り積層ゴムが我が国で採用されている3大システムと言われるものであり、この他に近年PTFE(テフロン)材とステンレス板の組み合わせによる(4)すべり支承系の免震装置も徐々に採用されるようになっている。
更に近年になって、免震構造物の免震性能を改善・向上させる方法として、特許第2603426号などによる転がり支承と積層ゴム支承等を併用する免震構造物も実現されるようになってきている。但し、転がり支承の採用は極く最近取り組まれるようになったばかりで、住宅等の軽量構造物を対象とした試行が行われている段階であり、重量構造物を支持する本格的な転がり免震支承の実現方法は確立されていないのが実状である。
【発明が解決しようとする課題】
これまでに実用化されている転がり免震装置としては、図1に示すような比較的大径の鋼球を1個だけ用いる装置(装置Aと呼ぶ)や図2に示す多数の小径鋼球をそれを内蔵する箱形保持器内を循環運動させて直線軌道(レール)上を走行する直動システム(装置Bと呼ぶ)を直角2方向に組み合わせて使用する方法などがある。装置Aと装置Bは、どちらも多数の小径鋼球を循環運動が可能な状態で内蔵する箱型保持器が必要であり、それによって免震装置が高価なものとなってしまう。本発明は、この転がり支承を、低コストで提供できる極めて優れた免震装置として実現する方法を目標課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
本発明の免震装置は、主たる鋼球1、この鋼球の直径をaとすると、小径鋼球群によって構成される円の直径がaより小さいbである位置保持用リテーナ2、そして、そのリテーナーを保持し主たる鋼球1がリテーナー2を介して回転可能な状態で覆いかぶさる上部部材3、基礎構造材5の上に敷設された鋼板4から構成されている。設置時などに不用意に主たる鋼球1が落下することを防ぐために、鋼板4の四辺には淵が付いている。
なお、主たる鋼球1は覆いかぶさる上部部材3と回転可能な状態を維持するため、半球状の隙間32が存在する。主たる鋼球1に覆いかぶさる上部部材3は建物の基礎に結合される。すなわち、本発明の免震装置は建物の基礎と基礎構造材の間に設置されるものである。
図2を用いて、本発明の免震の動作について説明する。地震が発生し地面が横揺れし、図2(a)に示される矢印6の方向(右から左)に建物の基礎5が移動したとき基礎5に固定された鋼板4との摩擦により、主たる鋼球1は矢印6‘のように反時計回りに回転力が発生する。このとき、上部部材3は、位置保持用リテーナ2を構成する小径鋼球群によって摩擦が低減されるため主たる鋼球1にひきずられることなく移動することはない。逆に、図2(b)に示すように、構成される矢印7の方向(左から右)に建物の基礎5が移動したとき基礎5に固定された鋼板4との摩擦により、主たる鋼球1は矢印7‘のように時計回りに回転力が発生する。このとき、上部部材3は、位置保持用リテーナ2を構成する小径鋼球群によって摩擦が低減されるため主たる鋼球1にひきずられることなく移動することはない。こうして、地震による横揺れで地面が水平方向に揺れても建物が揺れることはない。
リテーナー2は、図3に示される上部部材3の端部に設けられた位置保持用リテーナー固定用凹部31に嵌めこまれ、主たる鋼球1と回転可能な状態で結合する。
図4に鋼板4と建物の基礎材5の結合方法の一例について示す。結合方法としては、固定用ボルト・ナット91〜94によるのが、強度、工法、費用の面から最適と考えられる。
【発明の効果】
上述のとおり、本発明の免震装置は地震の水平方向の揺れに効果を発揮する。
しかも、装置構成が単純明快であるので、作動の信頼性が高く、しかも低コストで製作できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の免新装置の基本構成図
【図2】本発明の免震動作の説明図 (a)は地震の揺れが右から左の場合、(b)は地震の揺れが左から右の場合である。
【図3】本発明免震装置の基本構成要素を表す図である。
【図4】鋼板4と建物の基礎5の固定方法の一例である。
【符号の説明】
1:主たる鋼球 2:位置保持用リテーナ 20:小径鋼球 3:上部部材
31:位置保持用リテーナー固定用凹部 32:主たる鋼球と上部部材との隙間
4:鋼板 5:建物の基礎材 6:揺れの方向 6’:鋼球の転がる方向
7:揺れの方向 7’:鋼球の転がる方向 8:建物の基礎
91〜94:固定用ボルト・ナット

【特許請求の範囲】
平面鋼板と、その平面鋼板上に自転可能な状態で置かれる主たる鋼球と、その主たる鋼球を同一平面上でそれぞれ一定の位置関係に保持し、かつ、全ての鋼球を自転可能な状態で保持する位置保持用リテーナに保持された鋼球群が、主たる鋼球の上部に自転可能な状態で覆いかぶさることで構成される免震装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−225502(P2012−225502A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103838(P2011−103838)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(595106442)
【Fターム(参考)】