説明

入力インターフェイス装置

【課題】 柔軟で、掴む、揉む、傾ける等の動作への追従性が高く、当該動作により入力が可能な入力インターフェイス装置を提供する。
【解決手段】 入力インターフェイス装置1を、荷重が入力される荷重入力面20U、20Dを有し該荷重により弾性変形するゲルエラストマー製の荷重伝達部2と、荷重伝達部2を介して該荷重が伝達され該荷重により出力する電気量が変化するセンサ素子3と、を備える入力部10と、センサ素子3から出力された該電気量の変化により、入力された荷重分布を電気信号として出力可能な演算部50と、を備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作者の掴む、揉む、傾ける等の動作により入力が可能な入力部を備える入力インターフェイス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力インターフェイス装置の入力部としては、コンピュータへの入力を行うマウス、ゲーム機等を操作するスティック等が挙げられる。一般に、これらの入力部は、硬質な成形物である。このため、入力するには、マウスやスティックそのものを移動させたり、指で押しボタンスイッチを押圧している。つまり、従来の入力インターフェイス装置の入力部では、掴む、揉む、傾ける等の人間本来の直感的な動作により、入力することはできない。一方、入力動作が行われる入力部に、弾性材料を使用した入力インターフェイス装置が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−339088号公報
【特許文献2】実開平6−56831号公報
【特許文献3】特開2008−258116号公報
【特許文献4】特開平10−222291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1に開示されている入力インターフェイス装置は、球状の入力部を備えている。当該入力部は、弾性体と、四つ以上の圧力センサと、を備えている。弾性体は、球状を呈しており、内部に空洞を有している。圧力センサは、いずれも弾性体の内部の空洞に配置されている。操作者が入力部を握ると、その荷重は、弾性体を介して個々の圧力センサに伝達される。一つの圧力センサでは、球面に入力された荷重分布を検出することができない。このため、四つ以上の圧力センサが、分散して配置されている。
【0005】
また、特許文献2に開示されている入力インターフェイス装置の入力部によると、押しボタンスイッチの外側が弾性材料で被覆されている。これにより、入力時の疲労は軽減されるかもしれないが、押しボタンスイッチを押圧するという入力動作は変わらない。
【0006】
また、特許文献3、4に開示されている入力インターフェイス装置の入力部は、弾性体と圧力センサとを備えている。入力された荷重は、弾性体を介して圧力センサに伝達される。弾性体として使用可能な弾性材料としては、シリコーンゴム、発泡材(スポンジ)が開示されている。また、上述した特許文献1、2には、弾性材料として、上記以外に、軟質樹脂、プラスチック粘土が開示されている。これら開示された材料は、弾性を有するものの、軟らかさや、除荷後の復元性が充分ではない。したがって、掴む、揉む等の動作で入力しようとしても、弾性体が手の動きに追従しにくい。また、入力するのに比較的大きな力を必要とする。また、除荷後、元の形状に復元するのに時間を要するため、連続した入力操作を行う場合に問題となる。このように、入力部に弾性材料を使用していても、従来の入力インターフェイス装置の操作性は、充分ではない。また、掴んだり、揉んだりした時の感触も、満足できるものではない。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、柔軟で、掴む、揉む、傾ける等の動作への追従性が高く、当該動作により入力が可能な入力インターフェイス装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の入力インターフェイス装置は、荷重が入力される荷重入力面を有し該荷重により弾性変形するゲルエラストマー製の荷重伝達部と、該荷重伝達部を介して該荷重が伝達され該荷重により出力する電気量が変化するセンサ素子と、を備える入力部と、該センサ素子から出力された該電気量の変化により、入力された荷重分布を電気信号として出力可能な演算部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の入力インターフェイス装置は、入力部と演算部とを備えている。荷重は、荷重伝達部の荷重入力面に入力される。入力された荷重は、荷重伝達部を介して、センサ素子に伝達される。
【0010】
荷重伝達部は、ゲルエラストマーからなる。ゲルエラストマーは、ゲル状のエラストマーであって、製造過程で発泡させたものも含む。ゲルエラストマーは、非常に柔軟である。加えて、後の実施例で示すように、応力−歪み曲線におけるヒステリシスが小さい。つまり、元の形状への戻りが速い。
【0011】
したがって、荷重伝達部を掴んだり、揉んだり、傾けたりして、入力することができる。この際、入力動作に対する荷重伝達部の追従性は高い。また、荷重伝達部に触れると、ゲルエラストマー特有の軟らかな触感が得られる。このため、入力時の違和感や負担が少ない。また、荷重伝達部は、入力される荷重が比較的小さくても、弾性変形する。このため、例えば力の弱い高齢者や、子供等でも、容易に入力することができる。また、荷重伝達部は、大きく弾性変形できる。したがって、様々な動作により入力が可能である。また、大きく弾性変形させて、荷重の変化を大きくすることにより、より正確な入力が可能となる。また、荷重伝達部は、除荷後、速やかに元の形状に戻る。これにより、一つの入力動作に要する時間が短くて済む。つまり、連続して入力する場合において、次の動作までの待ち時間が少ない。
【0012】
また、ゲルエラストマーのタック力は大きい。このため、荷重伝達部とセンサ素子とを積層させるだけで、両者を貼着することができる。この場合、荷重伝達部が弾性変形しても、センサ素子の位置ずれは少ない。また、荷重伝達部に対するセンサ素子の追従性も、良好である。
【0013】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記ゲルエラストマーのちょう度は、10以上110以下である構成とする方がよい。
【0014】
ちょう度は、JIS K2220に規定されている固形ちょう度試験に準じて測定された値である(1/4円錐使用)。ちょう度は、円錐の進入深さ(mm)を10倍した値で示される。ちょう度が10未満の場合には、ゲルエラストマーが硬いため、荷重伝達部を握った時に違和感を感じる。一方、ちょう度が110を超える場合には、ゲルエラストマーが軟らかすぎて、入力しにくくなる。本構成によると、所望の軟らかさを有する荷重伝達部が得られる。さらに、ちょう度が、25以上70以下であるとより好適である。
【0015】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記ゲルエラストマーは、シリコーンゲル、ウレタンゲル、およびオイル成分が配合された熱可塑性エラストマーから選ばれる一種以上である構成とする方がよい。
【0016】
本構成のゲルエラストマーによると、所望の軟らかさ、復元性を有する荷重伝達部を得やすい。ここで、オイル成分が配合された熱可塑性エラストマーとしては、全体質量を100質量%とした場合に、オイル成分が70質量%以上含有されているものが望ましい。熱可塑性エラストマーとしては、A−B−Aの三部構造を有するものが望ましい。ここで、Aは剛直性ポリマー(ポリスチレン、官能基ポリマー等)、Bはエラストマー性ポリマー(ポリブチレン、ポリエチレン、ポリ(エチレン/プロピレン)、ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)、水素化ポリ(イソプレン、ブタジエン、イソプレン−ブタジエン)、ポリ(エチレン/ブチレン+エチレン/プロピレン))である。なかでも、超高分子のポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)−ポリスチレン構造をもつものが好適である。また、オイル成分としては、パラフィン性白ミネラルオイル、パラフィン、イソパラフィン、ナフテンオイル、ポリブチレン、ポリプロピレン、ポリテルペン、ポリ−β−ピネン、水素化ポリブタン、ポリブタン(ポリブタンポリマーの一端にエポキシド基を有する)等が挙げられる。
【0017】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記入力部は、さらに、前記荷重入力面を被覆する、伸縮性を有する布およびフィルムの少なくとも一方からなるカバー層を備える構成とする方がよい。
【0018】
操作者は、荷重入力面を触って入力する。よって、荷重入力面の汚れ防止のために、布またはフィルム製のカバー層を、荷重入力面を被覆するように配置することが望ましい。本構成によると、カバー層は伸縮性を有する。すなわち、カバー層は、荷重伝達部の弾性変形に応じて伸縮可能である。したがって、カバー層が、荷重伝達部の弾性変形を規制するおそれは小さい。カバー層には、伸縮布、伸縮フィルム、あるいは伸縮性を有する布とフィルムとを圧着等により積層させた積層体等を使用することができる。
【0019】
(5)好ましくは、上記(4)の構成において、前記ゲルエラストマーは、オイル成分が配合された熱可塑性エラストマーから選ばれる一種以上であり、前記カバー層は、さらに耐油性を有する構成とする方がよい。
【0020】
ゲルエラストマーとして、オイル成分が配合された熱可塑性エラストマーを使用する場合には、含有されたオイル成分が、ゲルエラストマーの表面に染み出してくる場合がある。この点、本構成によると、荷重入力面を被覆するカバー層は、伸縮性に加えて耐油性を有する。したがって、仮にゲルエラストマー(荷重伝達部)の表面に、オイル成分が染み出した場合でも、入力時にオイル成分が手に付着するおそれは小さい。
【0021】
カバー層には、伸縮性および耐油性を有する布、フィルムを使用すればよい。例えば、耐油性エラストマーを塗布する等の、耐油性を付与する表面処理が施された伸縮布、伸縮性を有する布と耐油性を有するフィルムとを圧着等により積層させた積層体等が好適である。
【0022】
(6)好ましくは、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成において、前記ゲルエラストマーは、オイル成分が配合された熱可塑性エラストマーから選ばれる一種以上であり、前記入力部は、さらに、前記荷重伝達部と前記センサ素子との間に介装され、耐油性および伸縮性を有するフィルム製の中間層を備える構成とする方がよい。
【0023】
上記(5)において述べたように、ゲルエラストマーとして、オイル成分が配合された熱可塑性エラストマーを使用する場合には、含有されたオイル成分が、ゲルエラストマーの表面に染み出してくる場合がある。本構成によると、耐油性および伸縮性を有する中間層が、荷重伝達部とセンサ素子との間に介装される。したがって、仮にゲルエラストマー(荷重伝達部)の表面に、オイル成分が染み出した場合でも、センサ素子が汚染されるおそれは小さい。
【0024】
(7)好ましくは、上記(1)ないし(6)のいずれかの構成において、前記荷重伝達部は、該センサ素子の全体を包囲するように配置される構成とする方がよい。
【0025】
本構成によると、荷重伝達部が、センサ素子の全体を包み込むように配置される。このため、入力部全体を、柔軟にすることができる。また、多方向からセンサ素子に荷重を入力することができる。したがって、操作者の入力動作の自由度が高くなる。
【0026】
(8)好ましくは、上記(1)ないし(6)のいずれかの構成において、前記入力部は、さらに、弧状断面を有する凸状の芯部を備え、前記センサ素子は、該芯部の弧状外周面を被覆し、前記荷重伝達部は、前記荷重入力面が径方向外側を向くように、該センサ素子の外周面を被覆する構成とする方がよい。
【0027】
本構成において、荷重入力面は、芯部の弧状外周面と略相似形状の凸面状を呈する。したがって、例えば、入力部を、操作者の手で包み込める程度の大きさにすると、荷重入力面を、操作者の手のひらに沿わせることができる。これにより、入力部を握った時のフィット感が向上し、入力が容易になる。本構成の入力インターフェイス装置は、例えば、パーソナルコンピュータ(パソコン)入力用のマウス等に使用することができる。
【0028】
本構成において、芯部は、中空でも中実でもよい。例えば、荷重伝達部と同じ、あるいは異なるゲルエラストマーで、芯部を形成してもよい。また、入力部を軽量化したい場合には、芯部を中空にするか、あるいは発泡材等の軽量な材料で形成すればよい。また、形状の保持を目的とする場合には、芯部を比較的硬質の材料で形成すればよい。
【0029】
(9)好ましくは、上記(1)ないし(6)のいずれかの構成において、前記入力部は、さらに、棒状の芯部を備え、前記センサ素子は、該芯部の外周面を被覆し、前記荷重伝達部は、前記荷重入力面が径方向外側を向くように、該センサ素子の外周面を被覆する構成とする方がよい。
【0030】
本構成においても、上記(8)の構成と同様に、荷重入力面は、芯部の外周面と略相似形状を呈する。例えば、芯部が円柱状の場合には、荷重伝達部は略円筒状に配置される。これにより、略円柱状の入力部が構成される。このように、棒状の芯部の外周側に、センサ素子および荷重伝達部を順に積層させることにより、握りやすい入力部を実現することができる。また、握りやすいため、本構成の入力インターフェイス装置の入力部によると、比較的弱い力でも、容易に入力することができる。よって、本構成の入力インターフェイス装置は、コンピュータやゲーム機等への入力手段の他、例えば、手の運動のリハビリテーションや、握力測定等にも使用することができる。
【0031】
本構成においても、芯部は、中空でも中実でもよい。例えば、荷重伝達部と同じ、あるいは異なるゲルエラストマーで、芯部を形成してもよい。また、入力部を軽量化したい場合には、芯部を中空にするか、あるいは発泡材等の軽量な材料で形成すればよい。また、形状の保持を目的とする場合には、芯部を比較的硬質の材料で形成すればよい。
【0032】
(10)好ましくは、上記(1)ないし(9)のいずれかの構成において、前記センサ素子は、樹脂またはエラストマーを含むセンサ薄膜と、該センサ薄膜に接続される少なくとも一対の電極と、を有する構成とする方がよい。
【0033】
本構成において、センサ素子は、樹脂またはエラストマーを含むセンサ薄膜を有する。センサ薄膜は、荷重伝達部から入力された荷重に応じて、換言すると、荷重伝達部の弾性変形に応じて、弾性変形可能である。本構成によると、全体として柔軟な入力部を実現することができる。
【0034】
(11)好ましくは、上記(10)の構成において、前記センサ薄膜は、さらに、導電性フィラーを含み、前記荷重により該センサ薄膜が変形することで、該センサ薄膜の電気抵抗が変化する構成とする方がよい。
【0035】
センサ薄膜の変形に対して、電気抵抗は増加しても減少してもよい。母材である樹脂またはエラストマーの種類、導電性フィラーの種類および配合量等を調整することにより、センサ薄膜の変形に対する電気抵抗の変化挙動を、調整することができる。
【0036】
例えば、球状の導電性フィラーを、センサ薄膜の体積を100vol%とした場合の30vol%以上の含有割合で母材に配合すると、センサ薄膜において、導電性フィラー同士の接触による三次元的な導電パスを形成させることができる。これにより、無荷重状態において、センサ薄膜は、高い導電性を有する。一方、センサ薄膜が変形すると、導電性フィラー同士の接触状態が変化する。これにより、三次元的な導電パスが崩壊し、電気抵抗が増加する。
【0037】
(12)好ましくは、上記(10)の構成において、前記センサ薄膜は、前記エラストマーからなり、一対の前記電極は、該センサ薄膜の表裏方向両側に配置され、一対の該電極間の静電容量は、前記荷重により変化する構成とする方がよい。
【0038】
一般に、一対の電極間に誘電膜が介装されてなる静電容量型センサの静電容量(キャパシタンス)は、次式(I)により求めることができる。
C=εεS/d・・・(I)
[C:静電容量、ε:真空中の誘電率、ε:誘電膜の比誘電率、S:電極面積、d:電極間距離]
例えば、本構成のセンサ素子が押圧されると、センサ薄膜(誘電膜)は圧縮され、その分だけ電極面に対して平行方向に伸長する。上記式(I)より、センサ薄膜の厚さ、すなわち電極間距離dが小さくなると、電極間の静電容量Cは大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第一実施形態の入力インターフェイス装置の入力部の斜視図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】入力部におけるセンサ素子の上面透過図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【図5】入力部に対する荷重入力時の模式図である。
【図6】手を右前方に傾けた時に出力された荷重分布図の一例である。
【図7】手を左前方に傾けた時に出力された荷重分布図の一例である。
【図8】手を左後方に傾けた時に出力された荷重分布図の一例である。
【図9】手を右後方に傾けた時に出力された荷重分布図の一例である。
【図10】第二実施形態の入力インターフェイス装置のセンサ素子の上面図である。
【図11】第三実施形態の入力インターフェイス装置の入力部の斜視図である。
【図12】第四実施形態の入力インターフェイス装置の入力部の断面図である。
【図13】ゲルエラストマーおよびウレタンフォームの応力−歪み曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
次に、本発明の入力インターフェイス装置の実施の形態について説明する。
【0041】
<第一実施形態>
[入力インターフェイス装置の構成]
まず、本実施形態の入力インターフェイス装置の構成について説明する。本実施形態の入力インターフェイス装置1は、入力部10と、演算部50と、を備えている。図1に、入力インターフェイス装置1の入力部10の斜視図を示す。説明の便宜上、図1においては、保護カバーを一点鎖線で示す。また、フィルム部材を省略して示す。また、透過して見える部分については細線で示す。図2に、図1のII−II断面図を示す。説明の便宜上、図2においては、センサ素子から外部に延びる配線を、省略して示す。
【0042】
図1、図2に示すように、入力部10は、荷重伝達部2と、センサ素子3と、保護カバー40と、フィルム部材41U、41Dと、ケーブル51と、を備えている。入力部10は、操作台(図略)の上面に移動可能に載置されている。入力部10は、ケーブル51により、パソコン(図略)内の演算部50に接続されている。演算部50については、後述する。
【0043】
荷重伝達部2は、上側荷重伝達部2Uと下側荷重伝達部2Dとからなる。上側荷重伝達部2Uは、略直方体状を呈している。上側荷重伝達部2Uは、上面、および左右前後の四方の側面からなる荷重入力面20Uを有している。上側荷重伝達部2Uは、スチレン系熱可塑性エラストマー((株)クラレ製「セプトン(登録商標)4077」)に、パラフィン系プロセスオイルを配合したゲルエラストマーからなる。ゲルエラストマー全体の質量を100質量%とすると、スチレン系熱可塑性エラストマーの含有割合は10質量%、パラフィン系プロセスオイルの含有割合は90質量%である。ゲルエラストマーのちょう度は、62である。
【0044】
下側荷重伝達部2Dは、上側荷重伝達部2Uの下方に積層されている。下側荷重伝達部2Dは、左右前後の四方の側面からなる荷重入力面20Dを有している。下側荷重伝達部2Dの構成、大きさ、形状は、上側荷重伝達部2Uと同じである。上側荷重伝達部2Uと下側荷重伝達部2Dとが、上下方向に積層されることにより、全体として略直方体状の荷重伝達部2を形成している。
【0045】
センサ素子3は、上側荷重伝達部2Uと下側荷重伝達部2Dとの間に介装されている。センサ素子3については、後述する。
【0046】
保護カバー40は、袋状を呈しており、荷重伝達部2の外側全体を被覆している。保護カバー40は、荷重入力面20U、20Dを被覆している。保護カバー40は、ポリエステルおよびポリウレタンから形成されている伸縮布(東レ(株)製「プログレスキン(登録商標)」)からなる。保護カバー40は、本発明におけるカバー層に含まれる。
【0047】
フィルム部材41U、41Dは、ウレタンフィルム(大倉工業(株)製「シルクロン(登録商標)」)からなる。フィルム部材41Uは、上側荷重伝達部2Uとセンサ素子3との間に介装されている。フィルム部材41Dは、下側荷重伝達部2Dとセンサ素子3との間に介装されている。フィルム部材41U、41Dは、本発明における中間層に含まれる。
【0048】
[センサ素子の構成]
次に、センサ素子3の構成について説明する。図3に、センサ素子3の上面透過図を示す。なお、図3においては、表側絶縁被覆層、裏側絶縁被覆層を省略して示す。また、裏側電極、裏側配線を細線で示す。また、検出部にハッチングを施して示す。図4に、図3のIV−IV断面図を示す。図3、図4に示すように、センサ素子3は、誘電膜30と、表側電極01X〜24Xと、裏側電極01Y〜16Yと、検出部A0101〜A2416と、表側配線01x〜24xと、裏側配線01y〜16yと、表側絶縁被覆層31と、裏側絶縁被覆層32と、表側配線用コネクタ33と、裏側配線用コネクタ34と、を備えている。なお、検出部の符合「A○○△△」中、上二桁の「○○」は、表側電極01X〜24Xに対応している。下二桁の「△△」は、裏側電極01Y〜16Yに対応している。
【0049】
誘電膜30は、ウレタンゴム製であって、シート状を呈している。誘電膜30は、XY方向(前後左右方向)に延在している。誘電膜30は、本発明におけるセンサ薄膜に含まれる。
【0050】
表側電極01X〜24Xは、誘電膜30の上面に、合計24本配置されている。表側電極01X〜24Xは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。表側電極01X〜24Xは、各々、帯状を呈している。表側電極01X〜24Xは、各々、X方向(左右方向)に延在している。表側電極01X〜24Xは、Y方向(前後方向)に、所定間隔ごとに離間して、互いに略平行になるように、配置されている。
【0051】
表側配線01x〜24xは、誘電膜30の上面に、合計24本配置されている。表側配線01x〜24xは、各々、ウレタンゴムと、銀粉と、を含んで形成されている。表側配線01x〜24xは、各々、線状を呈している。表側配線用コネクタ33は、誘電膜30の左後隅に配置されている。表側配線01x〜24xは、各々、表側電極01X〜24Xの左端と、表側配線用コネクタ33と、を接続している。
【0052】
表側絶縁被覆層31は、誘電膜30の上方に配置されている。表側絶縁被覆層31は、アクリルゴムを含んで形成されている。表側絶縁被覆層31は、シート状を呈している。表側絶縁被覆層31は、誘電膜30、表側電極01X〜24X、表側配線01x〜24xを、上方から覆っている。
【0053】
裏側電極01Y〜16Yは、誘電膜30の下面に、合計16本配置されている。裏側電極01Y〜16Yは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。裏側電極01Y〜16Yは、各々、帯状を呈している。裏側電極01Y〜16Yは、各々、Y方向に延在している。裏側電極01Y〜16Yは、X方向に、所定間隔ごとに離間して、互いに略平行になるように、配置されている。
【0054】
裏側配線01y〜16yは、誘電膜30の下面に、合計16本配置されている。裏側配線01y〜16yは、各々、各々、ウレタンゴムと、銀粉と、を含んで形成されている。裏側配線01y〜16yは、各々、線状を呈している。裏側配線用コネクタ34は、誘電膜30の左前隅に配置されている。裏側配線01y〜16yは、各々、裏側電極01Y〜16Yの前端と、裏側配線用コネクタ34と、を接続している。
【0055】
裏側絶縁被覆層32は、誘電膜30の下方に配置されている。裏側絶縁被覆層32は、アクリルゴムを含んで形成されている。裏側絶縁被覆層32は、シート状を呈している。裏側絶縁被覆層32は、誘電膜30、裏側電極01Y〜16Y、裏側配線01y〜16yを、下方から覆っている。
【0056】
検出部A0101〜A2416は、図3にハッチングで示すように、表側電極01X〜24Xと、裏側電極01Y〜16Yと、が上下方向に交差する部分(重複する部分)に配置されている。検出部A0101〜A2416は、合計384個(=24個×16個)配置されている。検出部A0101〜A2416は、センサ素子3の略全面に亘って、略等間隔に配置されている。検出部A0101〜A2416は、各々、表側電極01X〜24Xの一部と、裏側電極01Y〜16Yの一部と、誘電膜30の一部と、を備えている。
【0057】
[演算部の構成]
次に、演算部50の構成について説明する。前出図3に示すように、演算部50は、センサ素子3の表側配線用コネクタ33、裏側配線用コネクタ34と、各々、電気的に接続されている。
【0058】
演算部50は、電源回路52と、CPU(Central Processing Unit)53と、RAM(Random Access Memory)54と、ROM(Read Only Memory)55と、出力部56と、を備えている。
【0059】
電源回路52は、検出部A0101〜A2416に、正弦波状の交流電圧を印加する。ROM55には、予め、検出部A0101〜A2416における静電容量と荷重との対応を示すマップが、格納されている。RAM54には、表側配線用コネクタ33、裏側配線用コネクタ34から入力されるインピーダンス、位相が、一時的に格納される。CPU53は、RAM54に格納されたインピーダンス、位相を基に、検出部A0101〜A2416の静電容量を抽出する。そして、静電容量から、センサ素子3における荷重分布を算出する。出力部56は、CPU53が算出した荷重分布に基づいて、予め決められた指示を出力する。
【0060】
[入力部の製造方法]
次に、入力部10の製造方法について説明する。まず、下側荷重伝達部2Dの上面に、フィルム部材41Dを配置する。次に、フィルム部材41Dの上面に、センサ素子3を配置する。この際、演算部50と接続される配線は、ケーブル51を介して、外側に導出しておく。続いて、センサ素子3の上面に、フィルム部材41Uを配置する。そして、上側荷重伝達部2Uを、下側荷重伝達部2Dに積層して、両者を一体化する。最後に、荷重伝達部2(上側荷重伝達部2U+下側荷重伝達部2D)の周囲を、保護カバー40で被覆する。この際、ケーブル51は、保護カバー40から外側に突出させておく。このようにして、入力部10を製造する。
【0061】
[入力インターフェイス装置の動き]
次に、入力インターフェイス装置1の動きについて説明する。まず、操作者が入力を行う前に、検出部A0101〜A2416ごとに、静電容量Cを算出する。すなわち、検出部A0101から検出部A2416までを、あたかも走査するように、静電容量Cを算出する。算出された静電容量Cは、検出部A0101〜A2416ごとに、RAM54に格納される。
【0062】
図5に、入力部10に対する荷重入力時の模式図を示す。図5に示すように、まず、操作者9は、入力部10を手のひらで包み込むようにして、入力部10を軽く把持する。次に、操作者9が、手を右前方に傾けると、入力部10の上側荷重伝達部2U(前出図1参照)が主として押圧される。
【0063】
ここで、入力前と同様に、検出部A0101〜A2416ごとに、静電容量Cを算出する。算出された静電容量Cは、検出部A0101〜A2416ごとに、RAM54に格納される。それから、CPU53が、入力前後の静電容量Cの変化量ΔCから、センサ素子3に加わった荷重分布を算出する。具体的には、ROM55には、予め静電容量Cと荷重との対応を示すマップが、格納されている。静電容量Cをマップに代入して、任意の検出部A0101〜A2416における荷重を算出する。
【0064】
図6に、手を右前方に傾けた時に出力された荷重分布図の一例を示す。図6の枠内が、センサ素子3の検出領域に相当する。検出領域は、前後方向10cm、左右方向8cmである。また、図6においては、静電容量の変化量ΔCの分布を、荷重分布として示す(後出の図7〜図9についても同様)。図6に示すように、センサ素子3の検出領域において、右前方の荷重が大きくなっていることがわかる。算出された荷重分布に基づいて、出力部56は、例えば、画面上のカーソルを右下に移動させる等、予め決められた指示を出力する。
【0065】
操作者9が、手を左前方、左後方、右後方に傾けた場合においても、同様に、荷重分布を算出する。図7に、手を左前方に傾けた時に出力された荷重分布図の一例を示す。図8に、手を左後方に傾けた時に出力された荷重分布図の一例を示す。図9に、手を右後方に傾けた時に出力された荷重分布図の一例を示す。前出図6に加えて、図7〜図9に示すように、手の傾け方を変化させることにより、異なる荷重分布が得られている。このように、入力インターフェイス装置1は、センサ素子3から出力された静電容量の変化により、入力部10に入力された荷重分布を出力することができる。
【0066】
[作用効果]
次に、本実施形態の入力インターフェイス装置1の作用効果について説明する。本実施形態の入力インターフェイス装置1によると、入力部10の荷重伝達部2は、ちょう度約62のゲルエラストマー製である。荷重伝達部2が非常に柔軟であるため、操作者9は、入力部10を掴んだり、揉んだり、傾けたりして、入力することができる。また、荷重伝達部2は復元性に優れる。このため、入力動作に対する荷重伝達部2の追従性は高い。また、荷重伝達部2に触れると、ゲルエラストマー特有の軟らかな触感が得られる。このため、入力時の違和感や負担が少ない。また、荷重伝達部2は、弾性変形しやすい。このため、例えば操作者9が、力の弱い高齢者や子供等でも、容易に入力することができる。また、荷重伝達部2は、大きく弾性変形できる。したがって、様々な動作により入力が可能である。また、荷重伝達部2を大きく弾性変形させて、荷重の変化を大きくすることにより、より正確な入力が可能となる。また、荷重伝達部2は、除荷後、速やかに元の形状に戻る。これにより、一つの入力動作に要する時間が短くて済む。つまり、連続して入力する場合において、次の動作までの待ち時間が少ない。
【0067】
また、上記ゲルエラストマーのタック力は大きい。このため、上側荷重伝達部2Uと下側荷重伝達部2Dとの間に、センサ素子3を挟持するだけで、一体化させることができる。この場合、荷重伝達部2(上側荷重伝達部2U+下側荷重伝達部2D)が弾性変形しても、センサ素子3の位置ずれは少ない。また、荷重伝達部2に対するセンサ素子3の追従性も、良好である。
【0068】
また、荷重入力面20U、20Dを含む荷重伝達部2の外側全体は、保護カバー40により被覆されている。このため、荷重伝達部2は汚れにくい。また、保護カバー40は、伸縮性と耐油性とを有している。したがって、荷重伝達部2の弾性変形が規制されにくい。また、荷重伝達部2は、スチレン系熱可塑性エラストマーにパラフィン系プロセスオイルが配合されたゲルエラストマー製である。荷重伝達部2の外側全体を、耐油性を有する保護カバー40で被覆することにより、入力部10表面へのオイル成分の染み出しを抑制することができる。したがって、入力時にオイル成分が手に付着するおそれは小さい。
【0069】
また、上側荷重伝達部2Uとセンサ素子3との間、下側荷重伝達部2Dとセンサ素子3との間には、フィルム部材41U、41Dが、各々介装されている。フィルム部材41U、41Dは、伸縮性と耐油性とを有している。したがって、荷重伝達部2から染み出したオイル成分により、センサ素子3が汚染されるおそれは小さい。
【0070】
また、荷重伝達部2は、センサ素子3の全体を包囲するように配置されている。このため、入力部10全体が柔軟である。また、操作者9は、上方および前後左右方向のいずれの方向からでも、入力することができる。すなわち、掴む、揉む、傾けるといった直感的な入力動作を行いやすい。
【0071】
また、本実施形態の入力インターフェイス装置1によると、センサ素子3の静電容量の変化から荷重分布を算出することができる。ここで、センサ素子3は、ウレタンゴム製の誘電膜30を有している。加えて、表側電極01X〜24X、裏側電極01Y〜16Y、表側配線01x〜24x、裏側配線01y〜16yも、エラストマーを含んで形成されている。このため、入力部10全体が柔軟である。また、表側電極01X〜24X、裏側電極01Y〜16Y、表側配線01x〜24x、裏側配線01y〜16yは、誘電膜30と共に、伸縮することができる。したがって、誘電膜30の伸縮を、規制するおそれが小さい。
【0072】
<第二実施形態>
本実施形態の入力インターフェイス装置と、第一実施形態の入力インターフェイス装置と、の相違点は、センサ素子の構成である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0073】
図10に、本実施形態の入力インターフェイス装置のセンサ素子の上面図を示す。図10中、図3と対応する部位については、同じ符合で示す。また、図10においては、説明の便宜上、配線を一部省略して示す。
【0074】
図10に示すように、センサ素子3は、基板35と、素子本体36と、コネクタ37と、電極01a〜16a、01b〜16b、01c〜24c、01d〜24dと、配線38と、を備えている。
【0075】
基板35は、長方形板状を呈している。基板35は、ゴム製であって、長方形板状を呈している。基板35は、弾性変形可能である。素子本体36は、基板35の上面に配置されている。素子本体36は、導電性フィラーを含有するエラストマー製であって、長方形板状を呈している。素子本体36における導電性フィラーの含有割合は、素子本体の体積を100vol%とした場合の約45vol%である。素子本体36の電気抵抗は、素子本体36の弾性変形量が増加するのに従って増加する。素子本体36は、本発明におけるセンサ薄膜に含まれる。コネクタ37は、正方形板状を呈している。コネクタ37は、基板35の上面の左後隅に配置されている。
【0076】
電極01a〜16aは、素子本体36の後辺に、所定間隔ずつ離間して並んでいる。電極01b〜16bは、素子本体36の前辺に、所定間隔ずつ離間して並んでいる。電極01a〜16aと電極01b〜16bとは、図10に一点鎖線で示すように、各々、前後方向に対向している。
【0077】
電極01c〜24cは、素子本体36の左辺に、所定間隔ずつ離間して並んでいる。電極01d〜24dは、素子本体36の右辺に、所定間隔ずつ離間して並んでいる。電極01c〜24cと電極01d〜24dとは、図10に一点鎖線で示すように、各々、左右方向に対向している。これら一点鎖線の交点(合計384=24×16)が、検出部である。
【0078】
電極01a〜16a、01b〜16b、01c〜24c、01d〜24dと、コネクタ37とは、各々、配線38により接続されている。
【0079】
演算部50は、コネクタ37と電気的に接続されている。ROM55には、予め、検出部における電気抵抗と荷重との対応を示すマップが、格納されている。電源回路52は検出部に直流電圧を印加する。直流電圧は、合計384点の検出部に、走査的に順番に印加される。各検出部の電気抵抗は、RAM54に一時的に格納される。CPU53は、RAM54に格納された電気抵抗から、素子本体36の荷重分布を算出する。出力部56は、CPU53が算出した荷重分布に基づいて、予め決められた指示を出力する。
【0080】
本実施形態の入力インターフェイス装置は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の入力インターフェイス装置と同様の作用効果を有する。また、本実施形態の入力インターフェイス装置によると、センサ素子3の電気抵抗の変化から荷重分布を算出することができる。
【0081】
<第三実施形態>
本実施形態の入力インターフェイス装置と、第一実施形態の入力インターフェイス装置と、の相違点は、入力部の形状である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0082】
図11に、本実施形態の入力インターフェイス装置の入力部の斜視図を示す。図11中、図1と対応する部位については、同じ符合で示す。また、説明の便宜上、図11においては、保護カバーを一点鎖線で示す。また、透過して見える部分については細線で示す。また、配線を省略して示す。図11に示すように、入力部10は、芯部60と、荷重伝達部2と、センサ素子3と、保護カバー40と、を備えている。
【0083】
芯部60は、円柱状を呈しており、荷重伝達部2と同じゲルエラストマー製である。センサ素子3は、円筒状を呈しており、芯部60の外周面600を被覆している。荷重伝達部2は、円筒状を呈しており、センサ素子3の外周面300を被覆している。荷重伝達部2は、上下底面を除く外周面からなる荷重入力面20を有している。保護カバー40は、袋状を呈しており、荷重伝達部2の外側全体を被覆している。保護カバー40は、荷重入力面20を被覆している。
【0084】
入力部10は、以下のようにして製造される。まず、芯部60の外周面600に、センサ素子3を巻回する。次に、予め円筒状に形成しておいた荷重伝達部2の円柱状の内側空間に、センサ素子3を巻回した芯部60を挿入する。最後に、荷重伝達部2の周囲を、保護カバー40で被覆する。
【0085】
操作者が、入力部10の荷重伝達部2を握ると、荷重がセンサ素子3に伝達される。その結果、センサ素子3に加わった荷重分布が算出される。
【0086】
本実施形態の入力インターフェイス装置は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の入力インターフェイス装置と同様の作用効果を有する。また、本実施形態の入力インターフェイス装置によると、入力部10が円柱状を呈している。このため、入力部10を握りやすい。また、比較的弱い力でも、容易に入力することができる。また、入力方向の制限が少ないため、操作者の入力動作の自由度が高い。さらに、芯部60が、荷重伝達部2と同じゲルエラストマー製である。このため、入力部10全体が柔軟である。したがって、本実施形態の入力インターフェイス装置は、コンピュータやゲーム機等への入力手段の他、例えば、手の運動のリハビリテーションや、握力測定等にも好適である。
【0087】
<第四実施形態>
本実施形態の入力インターフェイス装置と、第一実施形態の入力インターフェイス装置と、の相違点は、入力部の形状である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0088】
図12に、本実施形態の入力インターフェイス装置の入力部の断面図を示す。図12中、図2と対応する部位については、同じ符合で示す。また、説明の便宜上、図12においては、配線を省略して示す。図12に示すように、入力部10は、芯部61と、荷重伝達部2と、センサ素子3と、保護カバー40と、を備えている。
【0089】
芯部61は、中実の椀状を呈しており、荷重伝達部2と同じゲルエラストマー製である。芯部61は、弧状の外周面610を有している。センサ素子3は、芯部61の外周面610を被覆している。センサ素子3は、径方向外側方向に湾曲して配置されている。荷重伝達部2は、椀状を呈しており、センサ素子3の外周面300を被覆している。荷重伝達部2は、弧状の外周面からなる荷重入力面20を有している。保護カバー40は、袋状を呈しており、荷重伝達部2の外側全体を被覆している。保護カバー40は、荷重入力面20を被覆している。
【0090】
入力部10は、以下のようにして製造される。まず、芯部61の外周面610に、センサ素子3を配置する。次に、センサ素子3が貼着された芯部61を、予め椀状に形成しておいた荷重伝達部2の凹部に配置する。これにより、センサ素子3の外周面300は、荷重伝達部2により被覆される。最後に、一体化された芯部61と荷重伝達部2の周囲を、保護カバー40で被覆する。
【0091】
操作者が、入力部10の荷重伝達部2を握ると、荷重がセンサ素子3に伝達される。その結果、センサ素子3に加わった荷重分布が算出される。
【0092】
本実施形態の入力インターフェイス装置は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の入力インターフェイス装置と同様の作用効果を有する。また、本実施形態の入力インターフェイス装置によると、入力部10が椀状を呈している。このため、荷重入力面20が、操作者の手のひらに沿いやすい。これにより、入力部10を握った時のフィット感が高く、入力しやすい。また、芯部61が、荷重伝達部2と同じゲルエラストマー製である。このため、入力部10全体が柔軟である。したがって、本実施形態の入力インターフェイス装置は、パソコン入力用のマウス等に好適である。
【0093】
<その他>
以上、本発明の入力インターフェイス装置の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0094】
例えば、荷重伝達部の材質、つまり、ゲルエラストマーの種類は、上記実施形態に限定されない。例えば、シリコーンゲル、ウレタンゲル、トポロジカルゲル等を使用してもよい。また、スチレン系熱可塑性エラストマーとパラフィン系プロセスオイルとの組合せ以外の、オイル成分が配合された熱可塑性エラストマーを使用してもよい。例えば、熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系、塩化ビニル系、ポリアミド系、ポリウレタン系等のエラストマーが挙げられる。また、オイル成分としては、上述したパラフィンオイル、ナフテンオイル等の他に、フタレート系、アジペート系、セバケート系、フォスフェート系、ポリエーテル系、ポリエステル系のオイルを使用することができる。
【0095】
上記実施形態では、入力部に対して、操作者が片手で入力する態様を示した。しかし、入力部に対する入力を、必ずしも片手で行う必要はない。両手、肘、腕、足等を使った、あらゆる入力動作が可能である。したがって、入力部の形状、大きさは、用途において想定される入力動作に応じて、適宜決定すればよい。また、入力部における荷重伝達部の厚さも、特に限定されない。例えば、10mm以上100mm以下とすることが望ましい。また、演算部の配置場所は、パソコン内に限定されない。
【0096】
上記第三、第四実施形態において、芯部を、荷重伝達部と同じゲルエラストマーから形成した。しかし、芯部の材質は、特に限定されない。例えば、荷重伝達部とは異なるゲルエラストマー、発泡材、硬質の樹脂材料等で形成してもよい。また、芯部の形状も特に限定されない。芯部は中空でもよい。
【0097】
上記実施形態では、荷重伝達部の全体を保護カバー(カバー層)で被覆した。しかし、カバー層は無くても構わない。また、カバー層の種類についても、特に限定されない。例えば、カバー層としては、上記実施形態の「プログレスキン」(東レ(株)製)の他、同社製の「トリンティ(登録商標)」、「C100」等を使用することができる。また、セーレン(株)製「FH13−50」等の、表面処理が施された伸縮布を使用してもよい。
【0098】
上記第一、第二実施形態では、荷重伝達部とセンサ素子との間に、フィルム部材(中間層)を配置した。しかし、上記第三、第四実施形態のように、中間層は無くても構わない。中間層の種類についても、特に限定されない。例えば、伸縮性および耐油性を有するフィルムとしては、塩化ビニル、ナイロン、ポリエステル製のフィルムが挙げられる。また、中間層として、カバー層と同じフィルムを使用してもよい。
【0099】
上記第一、第三、第四実施形態では、エラストマー製のセンサ薄膜を備えるセンサ素子を使用した。また、第二実施形態では、導電性フィラーを含有するエラストマー製のセンサ薄膜を備えるセンサ素子を使用した。センサ素子の種類、構成、形状、大きさ等は、上記実施形態に限定されない。また、センサ素子から出力される電気量についても、電圧、電気抵抗、静電容量等のいずれであってもよい。
【0100】
例えば、センサ素子として、金属抵抗体を使用した歪みゲージ、圧電素子を使用してもよい。また、上記第二実施形態のセンサ薄膜(素子本体)を、長方形板状ではなく、複数の帯状に成形し、帯状の素子本体を、基板の表裏両面に、所定間隔ごとに離間して配置してもよい。この際、素子本体を、表裏方向から見て、交差するように配置することが望ましい。
【0101】
また、上記第一、三、四実施形態のセンサ素子において、センサ薄膜のエラストマーの種類は、特に限定されない。例えば、静電容量を大きくするという観点では、比誘電率が大きいものが望ましい。また、上記第一、第三、第四実施形態のセンサ素子においては、電極および配線を、エラストマーを含んで形成した。この場合、電極および配線が伸縮するため、センサ薄膜と一体となって変形することができる、という利点がある。しかし、電極、配線を、金属材料で形成しても構わない。また、いずれの実施形態においても、電極の数、配置場所については、特に限定されない。所望する入力インターフェイス装置の機能に応じて、電極の数、配置場所を適宜決定すればよい。
【実施例】
【0102】
上記実施形態において、荷重伝達部を形成したゲルエラストマーの復元性を評価した。復元性は、応力−歪み曲線におけるヒステリシスロス率を算出して、評価した。まず、ゲルエラストマーについて、JIS K6400−2(2004)B法に従って、圧縮たわみ試験を行った。得られた応力−歪み曲線から、ヒステリシスロス率を算出した。次に、比較のため、発泡材のウレタンフォームについても、同様に試験を行い、ヒステリシスロス率を算出した。図13に、応力−歪み曲線を示す。図13において、ゲルエラストマーについては太線で、ウレタンフォームについては細線で示す。
【0103】
図13に示すように、ゲルエラストマーにおけるヒステリシスは、ほとんどない。これに対して、ウレタンフォームにおけるヒステリシスは大きい。また、ゲルエラストマーのヒステリシスロス率は21.36%、ウレタンフォームのヒステリシスロス率は108.26%であった。以上より、ゲルエラストマーは、発泡材と比較して、ヒステリシスロス率が小さいことが確認された。すなわち、ゲルエラストマーは復元性に優れ、除荷後に速やかに元の形状に戻ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の入力インターフェイス装置は、コンピュータへの入力や、ゲーム機等の操作に有用である。また、リハビリテーション、握力測定、心肺蘇生や治療の訓練用の模型等にも好適に使用される。
【符号の説明】
【0105】
1:入力インターフェイス装置 10:入力部
2:荷重伝達部 2D:下側荷重伝達部 2U:上側荷重伝達部
20、20D、20U:荷重入力面
3:センサ素子 30:誘電膜(センサ薄膜) 31:表側絶縁被覆層
32:裏側絶縁被覆層 33:表側配線用コネクタ 34:裏側配線用コネクタ
35:基板 36:素子本体(センサ薄膜) 37:コネクタ 38:配線
300:外周面
40:保護カバー(カバー層) 41D、41U:フィルム部材(中間層)
50:演算部 51:ケーブル 52:電源回路 53:CPU 54:RAM
55:ROM 56:出力部
60、61:芯部 600:外周面 610:外周面
9:操作者
01X〜24X:表側電極 01Y〜16Y:裏側電極 01x〜24x:表側配線
01y〜16y:裏側配線 A0101〜A2416:検出部
01a〜16a、01b〜16b、01c〜24c、01d〜24d:電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重が入力される荷重入力面を有し該荷重により弾性変形するゲルエラストマー製の荷重伝達部と、該荷重伝達部を介して該荷重が伝達され該荷重により出力する電気量が変化するセンサ素子と、を備える入力部と、
該センサ素子から出力された該電気量の変化により、入力された荷重分布を電気信号として出力可能な演算部と、
を備えることを特徴とする入力インターフェイス装置。
【請求項2】
前記ゲルエラストマーのちょう度は、10以上110以下である請求項1に記載の入力インターフェイス装置。
【請求項3】
前記ゲルエラストマーは、シリコーンゲル、ウレタンゲル、およびオイル成分が配合された熱可塑性エラストマーから選ばれる一種以上である請求項1または請求項2に記載の入力インターフェイス装置。
【請求項4】
前記入力部は、さらに、前記荷重入力面を被覆する、伸縮性を有する布およびフィルムの少なくとも一方からなるカバー層を備える請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の入力インターフェイス装置。
【請求項5】
前記ゲルエラストマーは、オイル成分が配合された熱可塑性エラストマーから選ばれる一種以上であり、
前記カバー層は、さらに耐油性を有する請求項4に記載の入力インターフェイス装置。
【請求項6】
前記ゲルエラストマーは、オイル成分が配合された熱可塑性エラストマーから選ばれる一種以上であり、
前記入力部は、さらに、前記荷重伝達部と前記センサ素子との間に介装され、耐油性および伸縮性を有するフィルム製の中間層を備える請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の入力インターフェイス装置。
【請求項7】
前記荷重伝達部は、該センサ素子の全体を包囲するように配置される請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の入力インターフェイス装置。
【請求項8】
前記入力部は、さらに、弧状断面を有する凸状の芯部を備え、
前記センサ素子は、該芯部の弧状外周面を被覆し、
前記荷重伝達部は、前記荷重入力面が径方向外側を向くように、該センサ素子の外周面を被覆する請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の入力インターフェイス装置。
【請求項9】
前記入力部は、さらに、棒状の芯部を備え、
前記センサ素子は、該芯部の外周面を被覆し、
前記荷重伝達部は、前記荷重入力面が径方向外側を向くように、該センサ素子の外周面を被覆する請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の入力インターフェイス装置。
【請求項10】
前記センサ素子は、樹脂またはエラストマーを含むセンサ薄膜と、該センサ薄膜に接続される少なくとも一対の電極と、を有する請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の入力インターフェイス装置。
【請求項11】
前記センサ薄膜は、さらに、導電性フィラーを含み、
前記荷重により該センサ薄膜が変形することで、該センサ薄膜の電気抵抗が変化する請求項10に記載の入力インターフェイス装置。
【請求項12】
前記センサ薄膜は、前記エラストマーからなり、
一対の前記電極は、該センサ薄膜の表裏方向両側に配置され、
一対の該電極間の静電容量は、前記荷重により変化する請求項10に記載の入力インターフェイス装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−113386(P2011−113386A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270450(P2009−270450)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】