説明

入力レベル補正回路

【課題】電力増幅手段の前段で、複数の信号源からの入力レベルの異なる複数の高周波信号の入力レベル補正を行うことにより、安定した増幅出力を行うとともに、電力増幅手段の内部回路の破損を防止すること。
【解決手段】減衰量変更手段としての整合用回路(PLD)118により高周波信号の下限周波数及び上限周波数に対応して変更された減衰量に基づき下限周波数及び上限周波数の間の周波数における適切な入力レベルを直線近似して得られる減衰量に応じて、減衰手段としての可変アッテネータ112による減衰量が変更されることにより、複数の信号源40a〜40cからの入力レベルの異なる高周波信号の入力レベル補正が適切に行われるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力レベルの異なる高周波信号の入力レベル補正を行う入力レベル補正回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、無線システムは、たとえば図5に示すように、信号源10と電力増幅部(PA)20とが一つの筐体内に収められた構成とされている。このような無線システムでは、信号源10の水晶振動子11の発振による高周波信号が周波数変換器12によって任意の周波数に変換されると、可変アッテネータ21、増幅器22,23、サーキュレータ24、バンドパスフィルタ(BPF)25、方向性結合器(Drectional Copler)26を経て、出力コネクタ26からアンテナ30に出力される。
【0003】
なお、アンテナ30側から浸入してくる信号は、サーキュレータ24にて矢印c側に導かれ、抵抗Rによって吸収されるようになっている。
【0004】
そして、このような無線システムでは、増幅器28を介して得られるダイレクト・コンバージョン回路26からのAPC(automatic power control)電圧の増減に応じて可変アッテネータ21の減衰量が可変されることにより、出力コネクタ27からアンテナ30に出力される高周波信号の増幅出力がほぼ一定に保持されるようになっている。
【0005】
また、このような無線システムでは、信号源10と電力増幅部(PA)20とが一つの筐体内に収められており、信号源10から電力増幅部(PA)20への高周波信号の入力レベルがほぼ一定とされることから、信号源10から電力増幅部(PA)20への高周波信号の入力レベルの補正処理を行わなくても電力増幅部(PA)20から安定した増幅出力が行えるようになっている。
【0006】
ところで、現状では、このような無線システムを大幅に変更し、複数の信号源と複数の電力増幅器とを別々に設け、いずれかの信号源といずれかの電力増幅器とが切替器により自在に組み合わされるようにした無線システムも開発されている。この場合、それぞれの電力増幅器に図5の電力増幅部(PA)20をそのまま利用できれば、新たな電力増幅器の開発が不要となり開発コスト等の点で有利である。
【0007】
ところが、いずれかの信号源といずれかの電力増幅器とが切替器により自在に組み合わされるようにすると、それぞれの信号源からの高周波信号の入力レベルが異なるばかりか、いずれかの信号源といずれかの電力増幅器との経路長が長くなり、その経路間での損失(主としてケーブルロス)等が周波数に比例して増大し、周波数特性に影響を及ぼすことがあり、それぞれの電力増幅器での安定した増幅出力が阻害されてしまうことがある。
【0008】
しかも、損失(主としてケーブルロス)等によって周波数特性に影響が及ぼされ、さらに入力レベルが不定となると、送信時での過渡的な増幅動作に影響が出て、電力増幅器の内部回路が破損してしまうおそれもある。
【0009】
このような送信時での不具合を解消するようにしたものとして、特許文献1では、送信増幅回路の増幅度を送信出力制御電圧により制御して一定の送信出力を得る送信出力制御回路において、送信立上り時に、前回送信時の送信出力制御電圧を記憶回路から読み出して送信出力制御を行い、送信出力が安定した時点で、送信出力を検出した検出電圧を送信出力制御電圧として送信出力制御を行うよう切り換える手段を備えるようにした送信出力制御回路を提案している。
【0010】
また、特許文献2では、所定の周波数帯域内での周波数ホッピングが行われた高周波送信信号を生成し、高周波送信信号が電力増幅されて出力とする送信機において、生成された高周波信号に対して電子的に減衰量を変化させる可変アッテネータと、電力増幅された高周波信号の一部のレベルを検出し、検出された高周波信号を検波して検波電圧値として出力する検波回路と、検波電圧値を書き込み及び読み出し可能なメモリーを有し、周波数ホッピングに対応してメモリーから読み出された検波電圧値を可変アッテネータの減衰量の制御のために出力する制御部と、により構成された自動電力制御回路と、周波数ホッピングされ、および電源投入時には周波数掃引された局部発振周信号を出力するホッピングシンセサイザとを備えるようにした送信機を提案している。
【0011】
【特許文献1】特開平07−212255号公報
【特許文献2】特開2007−295153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した特許文献1では、送信出力が安定した時点で、送信出力を検出した検出電圧を送信出力制御電圧として送信出力制御を行うようにしているので、送信立上り時の波形が適正出力になるように制御されることから、送信時での過渡的な増幅動作に伴う内部回路の破損が防止される。
【0013】
また、上述した特許文献2では、周波数ホッピングに対応してメモリーから読み出された検波電圧値により可変アッテネータの減衰量が制御されるため、送信周波数の切替時に切替後の周波数の立ち上がりで発生するオーバーシュート等による過渡的な増幅動作に伴う内部回路の破損が防止される。
【0014】
ところが、これらの特許文献1,2に示されたものは、いずれも信号源と電力増幅部(PA)とが一対一であり、上述したように、複数の信号源と複数の電力増幅器とを別々に設け、いずれかの信号源といずれかの電力増幅器とが切替器により自在に組み合わされるようにした無線システムに適用しようとすると、上述したように、いずれかの信号源といずれかの電力増幅器との経路長が長くなり、その経路間での損失(主としてケーブルロス)等が周波数に比例して増大し、周波数特性に影響を及ぼすことがあり、それぞれの電力増幅器での安定した増幅出力が阻害されてしまうことがあるといった問題があった。
【0015】
また、上述したように、損失(主としてケーブルロス)等によって周波数特性に影響が及ぼされ、さらに入力レベルが不定となると、送信時での過渡的な増幅動作に影響が出て、電力増幅器の内部回路が破損してしまうおそれもあるといった問題もあった。
【0016】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決することができる入力レベル補正回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の入力レベル補正回路は、電力増幅手段の前段で、複数の信号源からの入力レベルの異なる複数の高周波信号の入力レベル補正を行う入力レベル補正回路であって、前記高周波信号の入力レベルに応じた減衰を行う減衰手段と、前記高周波信号の下限周波数及び上限周波数のそれぞれの適切な入力レベルを検出して前記減衰手段による減衰量を変更する減衰量変更手段とを備え、前記減衰量変更手段は、前記下限周波数及び上限周波数に対応して変更された減衰量に基づき前記下限周波数及び上限周波数の間の周波数における適切な入力レベルを直線近似して得られる減衰量に応じて、前記減衰手段による減衰量を変更することを特徴とする。
本発明の入力レベル補正回路では、減衰量変更手段により、下限周波数及び上限周波数に対応して変更された減衰量に基づき下限周波数及び上限周波数の間の周波数における適切な入力レベルを直線近似して得られる減衰量に応じて、減衰手段による減衰量が変更されることにより、複数の信号源からの入力レベルの異なる高周波信号の入力レベル補正が適切に行われる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の入力レベル補正回路によれば、減衰量変更手段により、下限周波数及び上限周波数に対応して変更された減衰量に基づき下限周波数及び上限周波数の間の周波数における適切な入力レベルを直線近似して得られる減衰量に応じて、減衰手段による減衰量が変更されることにより、複数の信号源からの入力レベルの異なる高周波信号の入力レベル補正が適切に行われるようにしたので、いずれかの信号源との経路長が長くなり、その経路間での損失(主としてケーブルロス)等が周波数に比例して増大し、周波数特性に影響を及ぼすことがあっても、適切な入力レベルを直線近似して得られる減衰量に応じて減衰手段による減衰量が変更されるため、電力増幅手段での安定した増幅出力を行うことができる。
【0019】
また、損失(主としてケーブルロス)等によって周波数特性に影響が及ぼされ、さらに入力レベルが不定となっても、上記同様に、適切な入力レベルを直線近似して得られる減衰量に応じて減衰手段による減衰量が変更されるため、送信時での過渡的な増幅動作に影響が及ぼされることがなく、電力増幅手段の内部回路の破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の詳細について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る入力レベル補正回路が適用される無線システムの概要を説明するための図である。
【0021】
同図に示す無線システムは、複数の信号源40a〜40cと、切替器50と、複数の電力増幅器100a〜100cとを備えている。信号源40a〜40cの出力コネクタ41a〜41cは、切替器50の入力コネクタ51a〜51cに接続されている。切替器50の出力コネクタ52a〜52cは、電力増幅器100a〜100cの入力コネクタ101a〜101cに接続されている。電力増幅器100a〜100cの出力コネクタ102a〜102cには、アンテナ130a〜130cが接続されている。
【0022】
このような無線システムでは、切替器50の切替スイッチ53による切り替えによって、信号源40a〜40cと電力増幅器100a〜100cとが一対一で自在に組み合わされ、それぞれの電力増幅器100a〜100cによって増幅された信号が出力コネクタ102a〜102cに接続されているアンテナ130a〜130cから出力されるようになっている。
【0023】
ここで、電力増幅器100a〜100cは、切替器50による切り替えによって、信号源40a〜40cと電力増幅器100a〜100cとの組み合わせによる経路が設定されると、その経路に対応するいずれかの信号源40a〜40cに対し、整合用の高周波信号である下限周波数と上限周波数とを送信させるための送信命令を出すようになっている。
【0024】
なお、信号源40a〜40c側に、整合用のための高周波信号の下限周波数での送信と上限周波数での送信に関わる情報が持たされている場合は、電力増幅器100a〜100cから信号源40a〜40c側への送信命令には下限及び上限の周波数を指示するような命令は不要であり、単に送信指示のみであればよい。
【0025】
図2は、電力増幅器100a〜100cの内部構成を説明するための回路ブロック図である。なお、以下の図においては、電力増幅器100a〜100cの内部構成がそれぞれほぼ同じであるため、電力増幅器100aを代表して説明するものとする。
【0026】
すなわち、電力増幅器100aは、入力レベル補正回路110と電力増幅部(PA)120とを備えている。
【0027】
入力レベル補正回路110は、電力増幅部(PA)120の前段に設けられており、アッテネータ111、可変アッテネータ112、アッテネータ113、切替スイッチ114、増幅器115、検波ダイオード116、比較器117、整合用回路(PLD)118、D/Aコンバータ119を備えている。
【0028】
アッテネータ111は、入力コネクタ101aより入力される高周波信号のレベルを所定量に減衰させる。ここで、入力コネクタ101aより入力される高周波信号は、上述した切替器50によって切り替えられたいずれかの信号源40a〜40cからの信号であるが、入力レベル補正が行われるときは整合用の信号とされる。
【0029】
可変アッテネータ112は、整合用回路(PLD)118によって制御されるD/Aコンバータ119からの減衰制御電圧に応じてアッテネータ111からの高周波信号のレベルを減衰させる。アッテネータ113は、可変アッテネータ112によって減衰された高周波信号のレベルを所定量に減衰させる。
【0030】
切替スイッチ114は、入力レベル補正時にa側に切り替えられ、入力レベル補正後の通常送信時ではb側に切り替えられる。すなわち、上述した切替器50により、信号源40a〜40cと電力増幅器100a〜100cとの組み合わせによる経路が設定されると、切替スイッチ114がb側からa側に切り替えられて入力レベルの補正処理が行われるが、その詳細については後述する。
【0031】
増幅器115は、アッテネータ113によって減衰された高周波信号を所定量まで増幅する。検波ダイオード116は、増幅器115によって増幅された高周波信号を検波し、その検波電圧(DC電圧)を出力する。
【0032】
比較器117は、基準電圧と検波電圧(DC電圧)とを比較し、検波電圧(DC電圧)が基準電圧を超えると、出力を行う。
【0033】
整合用回路(PLD)118は、入力レベル補正時及び入力レベル補正後の通常送信時に、可変アッテネータ112の減衰量を制御する。すなわち、入力レベル補正時では、切替スイッチ114がb側からa側に切り替えられるとき、D/Aコンバータ119を介して可変アッテネータ112を最大の減衰量になるように制御した後、再度、D/Aコンバータ119を介して可変アッテネータ112をその減衰量が徐々に小さくなるように制御する。
【0034】
このような可変アッテネータ112の減衰量の制御は、電力増幅器(PA)100aから切替器50によって切り替えられたいずれかの信号源40a〜40cに対して送信命令が出されている間に行われる。また、このような可変アッテネータ112の減衰量の制御は、切替器50によって切り替えられたいずれかの信号源40a〜40cからの整合用の高周波信号である下限周波数と上限周波数とに対してそれぞれ同様に行われる。
【0035】
ここで、いずれかの信号源40a〜40cからの整合用の下限周波数に対して可変アッテネータ112を最大の減衰量になるように制御した後、D/Aコンバータ119を介して可変アッテネータ112をその減衰量が徐々に小さくなるように制御すると、検波ダイオード116による検波電圧(DC電圧)が徐々に上昇し、その検波電圧(DC電圧)が比較器117での基準電圧を超えた時点で可変アッテネータ112の減衰量が固定されるとともに、その固定されたときの減衰量に応じた下限周波数に対するD/A値が整合用回路(PLD)118により記憶される。このようにして可変アッテネータ112の減衰量が固定された時点では、下限周波数が適切な入力レベルとなる。
【0036】
同様に、いずれかの信号源40a〜40cからの整合用の上限周波数に対して可変アッテネータ112を最大の減衰量になるように制御した後、D/Aコンバータ119を介して可変アッテネータ112をその減衰量が徐々に小さくなるように制御すると、検波ダイオード116による検波電圧(DC電圧)が徐々に上昇し、その検波電圧(DC電圧)が比較器117での基準電圧を超えた時点で可変アッテネータ112の減衰量が固定されるとともに、その固定されたときの減衰量に応じた上限周波数に対するD/A値が整合用回路(PLD)118により記憶される。このようにして可変アッテネータ112の減衰量が固定された時点では、上限周波数が適切な入力レベルとなる。
【0037】
そして、下限周波数と上限周波数のそれぞれの適切な可変アッテネータ112の減衰量に応じたD/A値から下限周波数と上限周波数との間での適切なD/A値が直線近似により求められ、入力レベル補正後の通常送信時では、いずれかの信号源40a〜40cからの周波数データを基に、その直線近似により求められたD/A値に従い可変アッテネータ112の減衰量が制御されるようになっているが、その詳細については後述する。
【0038】
D/Aコンバータ119は、整合用回路(PLD)118からの制御に応じて可変アッテネータ112の減衰量を可変させるための信号を出力する。
【0039】
電力増幅部(PA)120は、入力レベル補正回路110によってレベル補正された高周波信号の電力増幅を行うものであり、可変アッテネータ121、増幅器122,123、サーキュレータ124、バンドパスフィルタ(BPF)125、方向性結合器(Drectional Copler)126、増幅器127を備えている。
【0040】
可変アッテネータ121は、増幅器127を介して得られるダイレクト・コンバージョン回路126からのAPC(automatic power control)電圧の増減に応じて入力レベル補正回路110により入力レベルが補正された高周波信号のレベルを減衰させる。増幅器122,123は、可変アッテネータ121によって減衰された高周波信号を増幅する。
【0041】
サーキュレータ124は、たとえば3ポート構成であり、増幅器123によって増幅された高周波信号をバンドパスフィルタ(BPF)125側に出力する。また、サーキュレータ124は、アンテナ130a側から浸入してくる信号を矢印c側に導く。このとき、その信号は、抵抗Rによって吸収されるようになっている。
【0042】
バンドパスフィルタ(BPF)125は、サーキュレータ124を通過した高周波信号に対し、所定の帯域のみを通過させる。ダイレクト・コンバージョン回路126は、バンドパスフィルタ(BPF)125を通過した高周波信号の進行波を検出し、APC(automatic power control)電圧として出力する。増幅器127は、ダイレクト・コンバージョン回路126からのAPC(automatic power control)電圧を所定の値に増幅し、可変アッテネータ121に出力する。
【0043】
次に、図3及び図4により、入力レベル補正回路110による入力レベル補正について説明する。ここで、図3は入力レベル補正回路110による入力レベル補正について説明するためのフローチャートであり、図4は整合用回路(PLD)118による入力レベル補正について説明するための図である。なお、以下の説明においては、切替器50により、たとえば信号源40cと電力増幅器100bとの組み合わせによる経路が設定されるものとする。
【0044】
まず、切替器50により、信号源40cと電力増幅器100bとの組み合わせによる経路が設定されると(ステップS1)、電力増幅器100bから信号源40cに対し、整合用のための高周波信号の送信命令が出される(ステップS2)。この場合、電力増幅器100bから信号源40cへは、下限周波数で送信するように送信命令が出される。この送信命令は、入力レベル補正回路110による下限周波数と後述の上限周波数に対する入力レベルの補正が完了するまで継続して出力される。
【0045】
なお、信号源40c側に、整合用のための高周波信号を送信するとき、下限周波数で送信するような情報が持たされている場合は、上述したように、電力増幅器100bから信号源40cへの下限周波数で送信するような命令は不要であり、単に送信指示のみでよい。この場合も、その送信指示は入力レベル補正回路110による下限周波数と後述の上限周波数に対する入力レベルの補正が完了するまで継続して出力される。
【0046】
次いで、電力増幅器100b側では入力レベル補正回路110の切替スイッチ114が入力レベル補正後の通常送信時のb側から入力レベル補正時のa側に切り替えられると(ステップS3)、整合用回路(PLD)118により、D/Aコンバータ119を介して可変アッテネータ112の減衰量が最大となるように制御された後、D/Aコンバータ119を介して可変アッテネータ112の減衰量が徐々に小さくなるように制御される(ステップS4)。
【0047】
このとき、入力コネクタ101bから入力される信号源40cからの整合用の高周波信号がアッテネータ111、可変アッテネータ112、アッテネータ113、切替スイッチ114(a側に切り替えられている)を通過し、増幅器115により所定の値まで増幅され、検波ダイオード116によりその増幅された高周波信号の検波電圧(DC電圧)が出力される。
【0048】
このように、可変アッテネータ112の減衰量が徐々に小さくされると、検波ダイオード116による検波電圧(DC電圧)が徐々に上昇し、その検波電圧(DC電圧)が比較器117での基準電圧を超えると(ステップS5)、この超えた時点で、整合用回路(PLD)118により可変アッテネータ112の減衰量が固定され、その固定されたときの減衰量に応じた下限周波数に対するD/A値が整合用回路(PLD)118により記憶される(ステップS6)。このようにして可変アッテネータ112の減衰量が固定された時点では、下限周波数が適切な入力レベルとなる。
【0049】
次に、電力増幅器100bから信号源40cに対し、上限周波数で送信するように送信命令が出される(ステップS7)。この場合、上述したように、信号源40c側に、上限周波数で送信するような情報が持たされている場合は、電力増幅器100bから信号源40cへの上限周波数で送信するような命令は不要であり、単に送信指示のみでよい。
【0050】
そして、整合用回路(PLD)118は、上記同様に、D/Aコンバータ119を介して可変アッテネータ112の減衰量が最大となるように制御した後、D/Aコンバータ119を介して可変アッテネータ112をその減衰量が徐々に小さくなるように制御する(ステップS8)。
【0051】
このとき、上記同様に、可変アッテネータ112の減衰量が徐々に小さくなることに従い、検波ダイオード116による検波電圧(DC電圧)が徐々に上昇し、その検波電圧(DC電圧)が比較器117での基準電圧を超えると(ステップS9)、この時点で、整合用回路(PLD)118により可変アッテネータ112の減衰量が固定され、その固定されたときの減衰量に応じた上限周波数に対するD/A値が整合用回路(PLD)118により記憶される(ステップS10)。このようにして可変アッテネータ112の減衰量が固定された時点では、上限周波数が適切な入力レベルとなる。
【0052】
このとき、整合用回路(PLD)118では、下限周波数が適切な入力レベルとなるD/A値と、上限周波数が適切な入力レベルとなるD/A値とに基づき、図4に示すように、直線近似により下限周波数(たとえば200MHz)と上限周波数(たとえば400MHz)との間の傾き(D/A値)が求められ、さらに下限周波数(たとえば200MHz)と上限周波数(たとえば400MHz)との間で所定幅の周波数分割が行われる(ステップS11)。
【0053】
このような直線近似により得られる傾き(D/A値)は、入力レベル補正後の通常送信時における信号源40cからの高周波信号の周波数に対する可変アッテネータ112での適切な減衰量として用いられる。
【0054】
すなわち、整合用回路(PLD)118により、下限周波数が適切な入力レベルとなるD/A値と、上限周波数が適切な入力レベルとなるD/A値とに基づき、直線近似により下限周波数(たとえば200MHz)と上限周波数(たとえば400MHz)との間の傾き(D/A値)が求められるようにすることで、入力レベル補正後の通常送信時では、信号源40cからの周波数データに応じた上記の周波数分割に対応する最適なD/A値により可変アッテネータ112の減衰量が適切に制御される。
【0055】
なお、図4では、下限周波数がたとえば200MHzで、上限周波数がたとえば400MHzである場合とし、その下限周波数と上限周波数との間の傾き(D/A値)が求められる場合を示しているが、信号源40cからの周波数データが200MHz〜400MHz以外の場合はその下限周波数と上限周波数との間の傾き(D/A値)に沿って最適なD/A値が求められ、可変アッテネータ112の減衰量が適切に制御される。
【0056】
このように、本実施形態では、減衰量変更手段としての整合用回路(PLD)118により高周波信号の下限周波数及び上限周波数に対応して変更された減衰量に基づき下限周波数及び上限周波数の間の周波数における適切な入力レベルを直線近似して得られる減衰量に応じて、減衰手段としての可変アッテネータ112による減衰量が変更されることにより、複数の信号源40a〜40cからの入力レベルの異なる高周波信号の入力レベル補正が適切に行われるようにした。
【0057】
これにより、いずれかの信号源40a〜40cとの経路長が長くなり、その経路間での損失(主としてケーブルロス)等が周波数に比例して増大し、周波数特性に影響を及ぼすことがあっても、適切な入力レベルを直線近似して得られる減衰量に応じて可変アッテネータ112による減衰量が変更されるため、電力増幅手段としての電力増幅部(PA)120での安定した増幅出力を行うことができる。
【0058】
また、損失(主としてケーブルロス)等によって周波数特性に影響が及ぼされ、さらに入力レベルが不定となっても、上記同様に、適切な入力レベルを直線近似して得られる減衰量に応じて可変アッテネータ112による減衰量が変更されるため、送信時での過渡的な増幅動作に影響が及ぼされることがなく、電力増幅部(PA)120の内部回路の破損を防止することができる。
【0059】
また、本実施形態では、整合用回路(PLD)118により下限周波数と上限周波数との間の傾き(D/A値)に沿って最適なD/A値が求められ、可変アッテネータ112の減衰量が適切に制御されるようにしたので、デジタル的な制御動作を行うことができ、アナログ的な制御回路と比較し、回路の調整個所を少なくすることができる。
【0060】
また、本実施形態では、入力レベル補正回路110を、比較的安価なアッテネータ111、可変アッテネータ112、アッテネータ113、切替スイッチ114、増幅器115、検波ダイオード116、比較器117、整合用回路(PLD)118、D/Aコンバータ119で構成することができるため、回路構成を安価なものとすることができる。
【0061】
また、本実施形態では、可変アッテネータ112の減衰量が整合動作で設定されたら次の整合動作まで固定されるため、振幅が変動する変調や送信立ち上がり時の無線周波数(RF)に不要に追従することもなく、送信出力検波フィードバック制御の構成を有する従前の電力増幅部(PA)120をそのまま使用することができる。
【0062】
また、本実施形態では、いずれかの信号源40a〜40cからの周波数データが変化するタイミングで可変アッテネータ112の減衰量が変更されるようにすることができるため、通常の送信時はもちろんのこと、周波数ホッピング等の高速な周波数の切り替えにも適切な減衰量となるようなD/A値を設定することができることから、過渡的な動作時にも適切な送信出力制御を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
移動通信又は固定通信等での無線システムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に係る入力レベル補正回路が適用される無線システムの概要を説明するための図である。
【図2】図1の電力増幅器の内部構成を説明するための回路ブロック図である。
【図3】図2の入力レベル補正回路による入力レベル補正について説明するためのフローチャートである。
【図4】図2の整合用回路(PLD)による入力レベル補正について説明するための図である。
【図5】従来の無線システムの一例を説明するための回路ブロック図である。
【符号の説明】
【0065】
100a〜100c 電力増幅器
101a〜101c 入力コネクタ
102a〜102c 出力コネクタ
110 入力レベル補正回路
111 アッテネータ
112 可変アッテネータ
113 アッテネータ
114 切替スイッチ
115 増幅器
116 検波ダイオード
117 比較器
118 整合用回路(PLD)
119 D/Aコンバータ
121 可変アッテネータ
122,123 増幅器
124 サーキュレータ
125 バンドパスフィルタ(BPF)
126 方向性結合器(Drectional Copler)
127 増幅器
130a〜130c アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力増幅手段の前段で、複数の信号源からの入力レベルの異なる複数の高周波信号の入力レベル補正を行う入力レベル補正回路であって、
前記高周波信号の入力レベルに応じた減衰を行う減衰手段と、
前記高周波信号の下限周波数及び上限周波数のそれぞれの適切な入力レベルを検出して前記減衰手段による減衰量を変更する減衰量変更手段とを備え、
前記減衰量変更手段は、前記下限周波数及び上限周波数に対応して変更された減衰量に基づき前記下限周波数及び上限周波数の間の周波数における適切な入力レベルを直線近似して得られる減衰量に応じて、前記減衰手段による減衰量を変更する
ことを特徴とする入力レベル補正回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−21644(P2010−21644A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178220(P2008−178220)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】