説明

入力機能付表示装置

【課題】背景と符号とのコントラストを高めるとともに、装置の薄型化、低コスト化を図ることのできる入力機能付表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の入力機能付表示装置は、複数の画素からなる表示領域上の座標位置を表す位置情報パターンが付与されている表示装置と、不可視光線を用いて位置情報パターンを読み取る位置情報読取手段と、を備え、表示手段は、位置情報読取手段により位置情報パターンから読み取った符号に基づいて表示を行い、所定の極性に帯電した電気泳動素子の構成部材と、これを保持する分散媒とを有する電気泳動素子と、電気泳動素子側の面に第1電極を有する第1基板と、電気泳動素子側の面に第2電極を有する第2基板と、を具備し、帯電部材及び位置情報パターンのうちいずれか一方が不可視光線に対して反射性を有し、他方が吸収性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力機能付表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネル入力やペン入力可能な携帯電子機器が広く普及している。これら入力方式はキーボードを廃し、表示領域を最大化するとともに表示の切り替えに対応しながら、誰もが簡便な操作で入力可能な装置となっている。したがって、小型でかつ多機能が要求される昨今の携帯電子機器には必須の入力技術となっている。特に、ペン入力方式(手書き入力方式)は、日常で使い慣れたペンと紙の感覚で、指よりも正確で高速な入力操作が可能であることから、表示領域にサインや絵を描く際には不可欠の手段である。そのニーズはゲームや電子書籍等のパーソナル市場から、タブレット、CAD等のビジネス市場に至るまで多岐に渡る。
【0003】
すなわち、ペン入力機能(手書き入力機能)は、表示面上を電子ペンでなぞることでペンの座標を検出し、表示面に電子ペンの筆跡を表示させる機能である。
電子ペンの入力座標を検出する方法には種々あるが、その一つとして、表示面上に点状の複数の符号をある規則に基づいた位置に設け、電子ペンの撮像素子でこの点状の符号群を撮像し、その符号のパターンを復号して、ペン先の座標を検出する方法(符号撮像型入力方式)が提案されている。
【0004】
この符号撮像型入力方式を表示装置に採用する場合、表示画像と符号とを識別するために、符号を表示画像の黒表示よりも暗くするか、白表示よりも明るくする必要がある。ここで、符号として表示画像の黒表示よりも暗いものを採用すると表示全体が暗くなり、表示画像の白表示よりも明るいものを採用するとコントラストが低下するという課題が生じる。また、表示画像の色(背景色)と符号の色の差が小さいことから、符号を識別するために電子ペンにノイズ除去処理等の高度な処理機能を付加する必要があり、その結果、撮像した符号を復号して座標変換するまでの時間が長くなるとともに高価になってしまう。
【0005】
これらの課題に対して、表示面上に符号を直接形成するのではなく、表示面上に可視光線を透過して赤外線を反射するフィルムを設け、その上に赤外線に対して低反射率の材料で符号を形成する方法や、可視光線を透過して赤外線を吸収するフィルム上に赤外線に対して高反射率の材料で符号を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1,2)。これらの方法では、電子ペンの撮像素子に赤外線を発光させる機能を持たせ、赤外線で表示面を照射しながら撮像することで、明るいフィルム面上(背景)に暗い符号あるいは暗いフィルム面上(背景)に明るい符号が撮像される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4129841号公報
【特許文献2】特許第3930891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した可視光線を透過して赤外線を反射または吸収するフィルムは、可視光線を100%透過するわけではないので、表示が暗くなってしまうとともに大判なものは高価である。また、フィルム分だけ表示装置の厚みが増すといった課題もある。
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、背景と符号とのコントラストを高めるとともに、装置の薄型化、低コスト化を図ることのできる入力機能付表示装置を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の入力機能付表示装置は、複数の画素からなる表示領域上の座標位置を表す位置情報パターンが付与されている表示手段と、不可視光線を用いて前記位置情報パターンを読み取る位置情報読取手段と、を備え、前記表示手段は、前記位置情報読取手段により前記位置情報パターンから読み取った符号に基づいて表示を行い、複数の帯電部材と、これを保持する分散媒とを構成部材として有する電気泳動素子と、前記電気泳動素子側の面に第1電極を有する第1基板と、前記電気泳動素子側の面に第2電極を有する第2基板と、を具備し、前記電気泳動素子の構成部材の少なくとも一部及び前記位置情報パターンのうちいずれか一方が前記不可視光線に対して反射性を有し、他方が前記反射性よりも相対的に低い低反射性を有することを特徴とする。
【0010】
これによれば、電気泳動素子の構成部材の少なくとも一部及び位置情報パターンのうちいずれか一方が不可視光線に対して反射性を有し、他方が反射性よりも相対的に低い低反射性を有しており、このように、電気泳動素子の構成部材の少なくとも一部と位置情報パターンとが不可視光線に対して互いに異なる光学特性を有しているので、帯電部材の分布状態(表示画像)によらず、表示画像と位置情報パターンとのコントラストを向上させることができる。このため、位置情報読取手段を用いて位置情報パターンを確実に読み取ることができる。その結果、表示領域上での正確な座標位置を検出することが可能となり、ユーザーの意思に沿った手書き入力を行うことができる。また、本発明では、位置情報パターンを印刷等により形成することが可能なため、従来のように、位置情報パターンが形成された透明導電性フィルムが不要になり、装置の薄型化が可能となる。また、フィルムによる明るさの低減も避けられる。さらに、これに伴うコスト削減も可能である。
【0011】
また、前記不可視光線が近赤外領域の光である構成としてもよい。
これによれば、不可視波長でかつ赤色に近い波長を用いることで、シリコン系光センサが可視領域から近赤外領域まで感度を有することから、汎用的に用いられて安価なシリコン系光センサでの位置情報パターンの読み取りが可能となる。
【0012】
また、前記位置情報パターンが前記可視光線に対して透明性の高い材料を用いて形成されている構成としてもよい。
これによれば、表示手段の表示輝度を低下させることなく明るく視認性の良好な表示画像を行える装置が得られる。
【0013】
また、前記電気泳動素子の構成部材の少なくとも一部が前記不可視光線に対して前記反射性を有する構成としてもよい。
これによれば、不可視光線に対して反射性を有する帯電部材に対して、吸収性を有する位置情報パターンが設けられるので、位置情報読取手段では明るい背景に暗い位置情報パターンが検出される。背景と位置情報パターンとのコントラストが高められることで、位置情報読取手段による位置情報パターンの読み取り精度が向上する。
【0014】
また、前記電気泳動素子の構成部材の少なくとも一部が前記不可視光線に対して前記反射性を有し、残りの前記電気泳動素子の構成部材が前記不可視光線に対して透過性を有する構成としてもよい。
これによれば、帯電粒子の配置状態によらず、不可視光線を反射させることができるので、位置情報読取手段では明るい背景に暗い位置情報パターンが検出される。背景と位置情報パターンとのコントラストが高められることで、位置情報読取手段による位置情報パターンの読み取り精度が向上する。
【0015】
また、前記電気泳動素子の構成部材が前記不可視光線に対して前記低反射性を有する構成としてもよい。
これによれば、不可視光線に対して吸収性を有する帯電部材に対して、吸収性を有する位置情報パターンが設けられるので、位置情報読取手段では暗い背景に明るい位置情報パターンが検出される。背景と位置情報パターンとのコントラストが高められることで、位置情報読取手段による位置情報パターンの読み取り精度が向上する。
【0016】
また、互いに異なる極性に帯電した第1の前記帯電部材及び第2の前記帯電部材のうちいずれか一方が、可視光線及び前記不可視光線に対して前記反射性を有する中心核と、当該中心核を修飾する修飾膜とから構成されており、前記修飾膜が前記可視光線に対して透明性を有するとともに前記不可視光線に対して前記低反射性を有し、あるいは、前記修飾膜が前記可視光線に対して前記低反射性を有するとともに前記不可視光線に対して透明性を有している構成としてもよい。
これによれば、例えば、修飾膜が可視光線に対して光透過性(透明性)を有するとともに不可視光線に対して低反射性(吸収性)を有する第1の帯電部材が視認側に分布した状態では、不可視光線が修飾膜で殆ど吸収されるので、背景は暗くなる。この場合、反射性の高い位置情報パターンを用いることで背景と位置情報パターンとのコントラストが高められ、位置情報読取手段による表示領域への入力位置を高精度に検出することができる。
【0017】
本発明の入力機能付表示装置は、複数の画素からなる表示領域上の座標位置を表す位置情報パターンが付与されている表示手段と、不可視光線を用いて前記位置情報パターンを読み取る位置情報読取手段と、を備え、前記表示手段は、前記位置情報読取手段により前記位置情報パターンから読み取った符号に基づいて表示を行い、所定の極性に帯電した電気泳動素子の構成部材と、これを保持する分散媒とを有する電気泳動素子と、前記電気泳動素子側の面に第1電極を有する第1基板と、前記電気泳動素子側の面に第2電極を有する第2基板と、を具備し、前記第1基板には前記不可視光線に対する反射性が付与されており、前記位置情報パターンは前記不可視光線に対して前記反射性よりも低い低反射性を有していることを特徴とする。
【0018】
これによれば、位置情報パターンと第1基板とが不可視光線に対して互いに異なる光学特性を有しているので、帯電部材の分布状態によらず、表示画像と位置情報パターンとのコントラストを向上させることができる。このため、位置情報読取手段を用いて位置情報パターンを確実に読み取ることができる。その結果、表示領域上での正確な座標位置を検出することが可能となり、スムーズな手書き入力を行うことができる。また、本発明では、位置情報パターンを印刷等により形成することが可能なため、従来のように、位置情報パターンが形成された透明導電性フィルムが不要になり、装置の薄型化が可能となる。また、フィルムによる明るさの低減も避けられる。さらに、これに伴うコスト削減も可能である。
【0019】
また、前記第1基板には前記電気泳動素子側の面に反射部材が設けられており、前記電気泳動素子の構成部材が前記不可視光線に対して透過性を有している構成としてもよい。
これによれば、帯電粒子の分布状態によらず、電気泳動素子に入射した不可視光線は反射部材において反射されるので、明るい背景に暗い位置情報パターンが検出される。背景と位置情報パターンとのコントラストが高められることで、位置情報読取手段による位置情報パターンの読み取り精度が向上する。
【0020】
また、前記第1基板及び前記第2基板との間に設けられ、前記画素を区画する導電性を有した隔壁を有する構成としてもよい。
これによれば、第1電極、第2電極および隔壁との間に所定の電圧を印加することによって、帯電部材を隔壁側へと引き寄せることができる。これにより、入射した不可視光線は反射部材によって反射されることになる。
【0021】
また、前記位置情報パターンが光学特性を異ならせた画素構造を利用して構成されていてもよい。
これによれば、画素構造の異なる画素によって位置情報パターンを構成することができるので、位置情報パターンを別部材として設ける必要がなくなり、装置の薄型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態の入力機能付表示装置の全体構成を示す平面図。
【図2】表示体の全体構成を示す平面図。
【図3】表示体の概略構成を示す断面図。
【図4】電子ペンの概略構成を示す図。
【図5】電気泳動粒子の分布状態を示す図(可視光表示時)。
【図6】電気泳動粒子の分布状態を示す図(赤外光線照射時)
【図7】第2実施形態の入力機能付表示装置の概略構成を示す断面図。
【図8】第2実施形態の素子基板上の構成を示す平面図。
【図9】第2実施形態における電気泳動粒子の分布状態を示す図(可視光表示時)。
【図10】第2実施形態における電気泳動粒子の分布状態を示す図(不可視光照射時)。
【図11】第3実施形態の入力機能付表示装置における電気泳動粒子の分布状態を示す図(可視光表示時)。
【図12】第3実施形態の入力機能付表示装置における電気泳動粒子の分布状態を示す図(赤外光線照射時)。
【図13】第4実施形態の入力機能付表示装置の概略構成を示す図。
【図14】第4実施形態の入力機能付表示装置における電気泳動粒子の分布状態を示す図(可視光表示時)。
【図15】第4実施形態の入力機能付表示装置における電気泳動粒子の分布状態を示す図(赤外光線照射時)。
【図16】第5実施形態の入力機能付表示装置の概略構成を示す断面図。
【図17】第5実施形態の入力機能付表示装置の電気泳動粒子の分布状態を示す図(可視光表示時)。
【図18】第5実施形態の入力機能付表示装置の電気泳動粒子の分布状態を示す図(赤外光線照射時)。
【図19】変形例1の入力機能付表示装置の画素構造を概略的に示す図。
【図20】変形例1における赤外光線照射時における背景の表示状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0024】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の入力機能付表示装置の全体構成を示す平面図である。
図1に示すように、入力機能付表示装置100は、電子ペン(位置情報読取手段)110と、表示本体(表示手段)120とを備え、表示本体120の表示面に対して電子ペン110を用いた手書き入力が可能な表示装置である。ここでは、表示本体120に電子ペン110の位置情報(時間変動における座標値)を検出する手段として位置情報パターン16とこれを撮像する撮像素子を備えた電子ペン110を用い、表示本体120の表示面に対する電子ペン110の接点の時系列データにより手書き情報を取得して表示する、符号撮像型入力装置である。
【0025】
表示本体120は、位置情報パターン16を有する表示体(表示部)10と、これを保持するハウジング9とにより構成されている。表示体10はその表示面を露出させた状態でハウジング9内にはめ込まれており、表示面に対して電子ペン110により手書き入力が行えるように構成されている。なお、位置情報パターン16は表示体(表示部)10以外の部分にあっても良いことは言うまでもない。
【0026】
表示体10としては、記憶性表示素子である電気泳動素子32(図3)を有する電気泳動ディスプレイ(Electrophoretic Display、以下「EPD」という)を用いており、表示面に複数の画素をマトリクス状に配列してなる表示領域5を有している。本実施形態では、図3に示すように、電気泳動素子32として、複数のマイクロカプセル20が配列されてなるカプセル型を採用しているが、これに限られたものではなく、隔壁によって画素ごとに区画形成されたセル内に電気泳動材料が封入されてなる隔壁タイプであっても良い。
図示は省略しているが、ハウジング9内には、表示体10の無線通信部、制御部、駆動制御部等が実装されている。
【0027】
次に表示体の構成について述べる。
図2は、表示体の全体構成を示す平面図である。図3は、表示体の概略構成を示す断面図である。
図2及び図3に示すように、素子基板300と対向基板310とが平面視で重なる領域に表示領域5が形成されている。表示領域5には、m本の走査線66及びn本のデータ線68が形成され、各々の走査線66及びデータ線68の交点位置に対応して画素が設けられている。
【0028】
表示領域5の周辺領域には、表示領域5から延出された複数の走査線6に所定の走査電圧波形を印加する走査線駆動回路Yが接続され、表示領域5の全ての走査線66に所定のデータ電圧波形を印加するデータ線駆動回路Xが接続され、走査線駆動回路Yとデータ線駆動回路Xは表示体10の全体の動作を制御するコントローラー(不図示)に接続されていて所望する表示を行う。コントローラーは、電子ペン110からの入力信号に基づいて表示領域5への画像表示動作を制御する。具体的には、各接続端子6,7を介して走査線66及びデータ線68に所定の電位を入力し、表示領域に所定の画像を表示する。
【0029】
図3に示すように、表示体10は、素子基板300と対向基板310との間に、複数のマイクロカプセルを配列してなる電気泳動素子32を挟持してなる。
素子基板300は、ガラスやプラスチック等からなる第1基板30を有し、その電気泳動素子32側の面に、走査線66、データ線68、選択トランジスタなどが形成された回路層34が設けられており、回路層34上に複数の画素電極35が配列形成されている。
各画素には、選択トランジスタ(図示略)、画素電極(第1電極)35及び電気泳動素子32が設けられている。
【0030】
選択トランジスタは、例えばNMOS(Negative Metal Oxide Semiconductor)−TFT(Thin Film Transistor)からなる画素スイッチング素子である。選択トランジスタのゲート端子は走査線66に接続され、ソース端子はデータ線68に接続され、ドレイン端子は画素電極35に接続されている。
【0031】
画素電極35は、Cu(銅)箔上にニッケルメッキと金メッキとをこの順番で積層したものや、Al(アルミニウム)、ITO(インジウム・スズ酸化物)などにより形成され、後述する対向電極(第2電極)37とともに電気泳動素子32に電圧を印加する電極である。
なお、第1基板30は、画像表示面とは反対側に配置されるため透明なものでなくても良い。
【0032】
対向基板310は、ガラスやプラスチック等からなる第2基板31を有し、その電気泳動素子32側の面に、上記した複数の画素電極35と対向する平面形状の対向電極37が形成されている。対向基板310は、画像表示側に配置されるため透明基板とされる。対向電極37は、画素電極35とともに電気泳動素子32に電圧を印加する電極であり、MgAg(マグネシウム銀)、ITO(インジウム・スズ酸化物)、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)などから形成された透明電極である。
【0033】
なお、電気泳動素子32は対向基板310側に予め形成され、接着剤層33までを含めた電気泳動シートとして取り扱われるのが一般的であって、別途形成される素子基板300に対して離型シートを剥がした電気泳動シートを貼り付けることによって表示部が形成される。
【0034】
電気泳動素子32を構成する複数のマイクロカプセル20は、例えば50μm程度の粒径をそれぞれ有しており、内部に分散媒21と、互いに異なる極性に帯電した2色の電気泳動粒子が封入されてなる。電気泳動粒子は、複数の黒粒子(第1の帯電部材)26と、複数の白粒子(第2の帯電部材)27である。マイクロカプセル20は、1つの画素内に1つ又は複数配置される。あるいは、1つのマイクロカプセル20が複数の画素40に亘って配置される構成としても良い。
【0035】
白粒子27は、二酸化チタン(チタニア)等の白色顔料からなる粒子(高分子あるいはコロイド)であり、正に帯電されて用いられる。黒粒子26は、アゾメチンアゾ系黒色顔料からなる粒子であり、負に帯電されて用いられる。本実施形態の黒粒子26は、所定の波長領域の光を吸収するとともにそれ以外の波長の光を透過する特性を有する。具体的には、350〜700nmの可視光波長を吸収し、700nm以上の波長の光を透過する。
【0036】
また、これらの顔料には、必要に応じ、電解質、界面活性剤、金属石鹸、樹脂、ゴム、油、ワニス、コンパウンドなどの粒子からなる荷電制御剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、シラン系カップリング剤等の分散剤、潤滑剤、安定化剤などを添加することができる。
また、黒色粒子26及び白粒子27に代えて、例えば赤色、緑色、青色などの顔料を用いてもよい。かかる構成によれば、表示領域5に赤色、緑色、青色などを表示することができる。
【0037】
表示体10には、表示領域5上での2次元的な座標を定義する位置情報パターン16が設けられている。位置情報パターン16は、X方向へ所定ピッチで配列された複数の仮想ラスター線17Aと、Y方向へ所定ピッチで配列された複数の仮想ラスター線17Bとの交点に任意に設けられた複数の黒ドット16aによって座標値を示すことで、表示領域5内での位置情報を得るためのパターンとされている。
【0038】
なお、位置情報パターン16は仮想ラスター線の交点から意図的にある規則性を持たせてずらしたパターンであっても良い。
【0039】
位置情報パターン16は、図2に示すごとく2次元系列のパターンであり、上記交点位置におけるドット16aの有無によって得られる2次元コードからその2次元位置を一意的に定義するもので、ドット16aが付された交点qは符号[1]を示し、ドット16aのない交点q’は符号[0]を示す。この位置情報パターン16では、電子ペン110における撮像領域に対応するウィンドウの大きさに対応する微小単位領域Aごとに、異なる部分パターン16Aを有する。この微小単位領域Aにおける部分パターン16Aを構成するドット16aの有無、数、配置位置等に基づいて取得されるコードによって、その指定位置が位置情報パターン16上のどの位置であるかが一意的に決定される。このようにして、位置情報パターン16上での部分パターン16Aを電子ペン110によって読み取ると、座標位置が得られる。
【0040】
本実施形態の入力機能付表示装置100は、上述したように表示本体120の表示領域5に位置情報パターン16を設けることで、表示領域5内での座標ごとにその座標のみに対応した一意な座標情報が割り当てられている。座標情報は、表示領域5内での微小単位領域内に散在させた複数のドット16aに符号化して割り当てられており、これら複数のドット16aからなる位置情報パターン16を電子ペン110で光学的に読み取ることで、任意の座標位置情報が得られるようになっている。
【0041】
具体的には、後述する電子ペン110を用いて位置情報パターン16の所定の微小単位領域Aを撮像し、当該領域における任意の交点位置に設けられた任意の位置に配置されたドットの有無や数等から所定のビット数をとってデジタルコード(符号)を取得する。これは、部分パターン16A上での位置を表す部分コードであるので、これをテーブル変換することによって対応する座標に変換する。図2では、微小単位領域Aを点線で囲って示したが、この範囲については適宜設定できる。
【0042】
したがって、この値(デジタルコードの値)を逆算あるいは参照テーブルを対比することで、一意的に指定位置の座標が決定する。そして、電子ペン110で読み取ったデータを無線あるいは光通信等で、電子ペン110から表示本体120の電子回路部品(無線回路、制御部)に送信して表示本体120における対応画素を点灯すれば、電子ペン110による表示領域5への手書き入力が可能である。
【0043】
ここで、電子ペンの構成について述べる。
図4は、電子ペンの概略構成を示す図である。
図4に示すように、電子ペン110は、細棒状のペン型ケース41の内部に対物レンズ42、発光素子43、撮像素子44、電子回路部品45、電池46等を具備して構成されている。発光素子43としては、赤外光線(近赤外光線:700nm以上)を発光可能なもので、発光ダイオード(LED)あるいはレーザーダイオード(半導体レーザー)が適する。撮像素子44としては、位置情報パターン16の部分領域(図2で示した微小単位領域Aの部分パターン16A)を撮像して記録することのできるCCD光センサあるいはCMOS光センサが用いられる。
電子回路部品45は、発光、撮像及び検出演算処理を実行するCPUなどの画像処理手段、検出データを本体に送信する無線回路等を備える。
電子ペン110の電源は、ペン型ケース41内に取り付けられる電池46から供給されるようになっている。
【0044】
また、発光素子43を常に点灯させておく必要はなく、電子ペン110の走査スピードや撮像素子44による撮像タイミングなどから表示体10の表示領域5に向けてパルス的に照明し、表示体10の照明(背景輝度)に応じて発光時間や消費電力を制御する。
ここで、前回の照明時における撮像素子44によって得た情報を次回の照明時にフィードバックすれば、さらにSN比が改善する。
【0045】
次に、電気泳動粒子の分布状態と表示状態について説明する。
図5及び図6は電気泳動粒子の分布状態を示す図であって、図5は可視光表示時、図6は赤外光線(近赤外光線)照射時の状態を示す。なお、図5(a)は白表示の状態、図5(b)は黒表示の状態を示している。
なお、図5及び図6ではカプセルの外形を省略して図示している。また、図5および図6は、黒粒子が負に帯電し、白粒子が正に帯電している場合の動作説明図であるが、必要に応じて、黒粒子を正に、白粒子を負に帯電させてもよい。この場合、上記と同様に電位を供給すると、白表示と黒表示とを反転した表示が得られる。
【0046】
まず、観測者によって視認される表示本体の表示状態について述べる。
図5(a)に示す白表示の場合には、対向電極37が相対的に低電位、画素電極35が相対的に高電位に保持される。これにより、正に帯電した白粒子27が対向電極37側に引き寄せられる一方、負に帯電した黒色粒子26が画素電極35側に引き寄せられる。その結果、表示面側となる対向電極37側からこの画素を見ると、白色(W)が認識される。つまり、可視光は、対向電極37側に分布している白粒子27で反射して観測者の目に入るため、白と認識される。
【0047】
図5(b)に示す黒表示の場合、対向電極37が相対的に高電位、画素電極35が相対的に低電位に保持される。これにより、負に帯電した黒色粒子26が対向電極37に引き寄せられる一方、正に帯電した白粒子27が画素電極35に引き寄せられる。その結果、対向電極37側からこの画素を見ると黒色(B)が認識される。つまり、可視光は黒粒子26に殆ど吸収されてしまうため黒と認識される。
【0048】
このように、白粒子と黒粒子との分布領域を表示領域の部位ごとにコントロールすることで情報表示がなされる。つまり、対向基板310側から見たときに視認される白粒子と黒粒子との分布領域(面積)を制御することにより、表示色の階調を制御することができる。
【0049】
次に、電子ペンから赤外光線(近赤外光線:700nm以上)を照射した場合について述べる。
図6(a)に示すように対向電極37側に白粒子27が分布している場合、電子ペン110から照射された赤外光は白粒子27にて反射されて撮像素子44に入射する。このため、撮像素子44内の光センサは「明るい」と判断する。
図6(b)では対向電極37側に黒粒子26が分布している。黒粒子26は、近赤外光線を透過する特性を有しているため、対向電極37側から入射した光は当該対向電極37上で分布している黒粒子26を透過して、画素電極35側に分布している白粒子27にて反射される。白粒子27にて反射された赤外光は再び対向電極37上で分布している黒粒子26を透過して外部へ出射し、電子ペン110の撮像素子44に入るので、撮像素子44は「明るい」と判断する。
【0050】
すなわち、可視光で視認される表示パターン、つまり、表示本体120での表示画像の如何に関わらず、近赤外光線を照射して読み取れる画像は常に全面が明るい画像となっている。したがって、表示本体120の表示面(表示領域5)の全体に、少なくとも近赤外光線で低反射率となる材料、すなわち本実施形態では近赤外光線を吸収する材料で位置情報パターン16を形成することで、電子ペン110の撮像素子44では常に明るい背景に暗い符号の画像が読み取られることになる。
【0051】
このように、各種類の電気泳動粒子と位置情報パターン16とが赤外光線に対して互いに異なる光学特性を有しているので、電気泳動粒子によって形成される表示画像と位置情報パターン16とのコントラストを高めることができる。この結果、表示本体120の表示画像によらず、電子ペン110の撮像素子44による位置情報パターン16の撮像画質を向上させることができるため、表示領域5上での正確な座標位置情報を検出することが可能となる。電子ペン110による表示領域5に対する正確な入力位置を把握することで、よりユーザーの意思に沿った手書き入力を実現できる。
【0052】
また、本実施形態では、位置情報パターン16を印刷等により形成することが可能なため、従来のように、位置情報パターンが形成された可視線を透過し、赤外線を吸収又は反射するフィルムが不要になり、装置の薄型化が可能となる。また、フィルムによる表示の明るさの低減がなくなる。さらに、これに伴うコスト削減も可能である。
【0053】
位置情報パターン16の形成材料としては、近赤外光線に対して低反射性(吸収性)を有するとともに可視光線に対する透明性が高いほど好ましい。一般に「透明」とは可視光線に対してのことを言う。これにより、位置情報パターン16に起因する表示画像のコントラストの低下や、輝度の低下を防止することができるので、観測者にとって視認性の良好な画像を提供することができる。
【0054】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の入力機能付表示装置について述べる。
図7は、本実施形態の入力機能付表示装置の概略構成を示す断面図である。図8は、本実施形態の素子基板上の構成を示す平面図である。
図7に示すように、本実施形態の入力機能付表示装置200は、導電性を有した導電性隔壁(隔壁)53を備えている。画素電極35等が形成された素子基板300には、導電性隔壁53を介して対向電極37を有する対向基板310が貼り合わされており、複数の画素電極35、導電性隔壁53および対向電極37に対してそれぞれ任意の電位が入力される構成となっている。
【0055】
導電性隔壁53は、カーボンを含む導電性の感光性アクリル樹脂からなる導電部53Aと、導電部53Aの表面を覆うようにして形成された、カーボンを含まない絶縁性のアクリル材料からなる絶縁膜53Bとにより構成されており、導電性隔壁53と対向電極37との絶縁性が確保されたものとなっている。なお、絶縁膜53Bの形成材料はアクリル材料に限らない。
【0056】
素子基板300を構成する第1基板30上には、図8に示すように、2種類のデータ線68A,68Bが形成されており、画素毎に、データ線68Aに接続される選択トランジスタTR1と、データ線68Bに接続される選択トランジスタTR2とが設けられている。そして、選択トランジスタTR1,TR2の各ゲートにはそれぞれ走査線66が接続され、各ソースにはデータ線68A,68Bが接続されている。また選択トランジスタTR1のドレインには画素電極35が接続され、選択トランジスタTR2のドレインには導電性隔壁53が接続されている。そして、選択トランジスタTR1を介してデータ線68Aからの電位が画素電極35に供給されるとともに、選択トランジスタTR2を介してデータ線68Bからの電位が導電性隔壁53に供給される。
【0057】
また、本実施形態の素子基板300には任意の層間に反射層(反射部材)54が設けられている。具体的には、画素電極35の下層側に設けることによって平坦性を確保することができる。この際、画素電極35をITO(インジウム・スズ酸化物)により形成しておくことによって、画素電極35を透過した光が反射層54において反射されることになる。
【0058】
電気泳動素子32Bは、透明な分散媒21中に、正負のいずれかに帯電したアゾメチンアゾ系黒色顔料からなる黒粒子26のみ保持してなる。本実施形態では、先の実施形態同様に負に帯電した黒粒子26を用いている。
【0059】
このような表示本体120では、画素電極35と導電性隔壁53とにそれぞれ異なる電位を供給することができる。任意の極性(負)に帯電した黒粒子26は、画素電極35と対向電極37と導電性隔壁53との間を移動する。つまり、黒粒子26を導電性隔壁53側に吸着させることができるようになる。
【0060】
次に、電気泳動粒子の分布状態と表示状態について説明する。
図9及び図10は電気泳動粒子の分布状態を示す図であって、図9は可視光表示時、図10は赤外光照射時の状態を示す。なお、図9(a)は白表示する場合、図9(b)は黒表示する場合を示している。
【0061】
図9(a)に示す白表示の場合には、導電性隔壁53が相対的に高電位、画素電極35が相対的に低電位になるように電位を保持することで、黒粒子26が導電性隔壁53側へと引き寄せられてその壁面に沿って分布する。その結果、表示面側となる対向電極37側からこの画素を見ると、白色が認識される。つまり、対向電極37側から入射した可視光は、素子基板側の反射層54で反射して観測者の目に入るため、白と認識される。
【0062】
図9(b)に示す黒表示の場合には、導電性隔壁53が相対的に低電位、画素電極35が相対的に高電位となるように電位を保持することで、黒粒子26が画素電極35側へ着引き寄せられて画素電極35上に分布する。対向電極37側から入射した可視光は黒粒子27において殆ど吸収されるため、黒と認識される。
【0063】
次に、電子ペンから赤外光(近赤外光線)を照射した場合について述べる。
図10(a)に示すように導電性隔壁53の壁面に沿って黒粒子26が分布している場合、電子ペン110から照射された赤外光は素子基板側の反射層54にて反射されて、外部へ出射し、電子ペン110の撮像素子44に入射する。このため、撮像素子44は「明るい」と判断する。
【0064】
図10(b)に示すように、素子基板側に黒粒子26が分布している場合、対向電極37側から入射した赤外光は、画素電極35上の黒粒子26を透過して反射層54にて反射され、電子ペン110の撮像素子44に入射する。このため、撮像素子44は「明るい」と判断する。このように、黒粒子26の分布の如何によらず、入射光は反射層で反射される。
【0065】
したがって、表示本体12における表示画像がどのようになっていても近赤外光線では、撮像素子44内の光センサによって読み取られる像は常に全面が明るい画像となっている。よって、少なくとも近赤外光線に対して低反射率となる材料、すなわち本実施形態では近赤外光線を吸収する材料を用いて位置情報パターン16を形成することによって、撮像素子44では常に明るい背景に暗い符号(位置情報パターン16)が検出される。
【0066】
よって、位置情報パターン16の形成材料としては、近赤外光線に対して低反射性(吸収性)を有するとともに可視光線に対して透明性の高いものを用いることが好ましい。これにより、表示面上に位置情報パターン16を設けることによって表示画像のコントラストが低下したり、明るさが低下したりすることを防止することができる。
【0067】
なお、反射層を設ける構成の場合、位置情報パターン16は、必ずしも表示本体120の表示面に形成する必要はなく、素子基板側に設けた反射層上に形成しても、符号を撮像することが可能である。
【0068】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の入力機能付表示装置について述べる。
図11及び図12は、本実施形態の入力機能付表示装置の概略構成を示す断面図であって、1画素に対応する。図11及び図12は電気泳動粒子の分布状態を示す図であって、図11は可視光表示時、図12は赤外光照射時の状態を示す。なお、図11(a)は白表示する場合、図11(b)は黒表示する場合を示している。
【0069】
図11及び図12に示すように、本実施形態では、黒色の分散媒21(Bk)中に複数の白粒子27が保持されてなる電気泳動素子32Cを備えている。この分散媒21(Bk)は、水溶液中に非帯電のアゾメチンアゾ系黒色顔料を分散させたもので、近赤外光線に対して高い透過性を有する。
このため、図11(a)に示すように、白粒子27を対向電極37側へ移動させると黒色の分散媒21(Bk)が白粒子27によって押し退けられるため、可視光は白粒子27で反射して白く見える。
一方、図11(b)に示すように、白粒子27を画素電極35側へ移動させると黒色の分散媒21(Bk)が対向電極37側を占有し、可視光はこの黒色の分散媒21(Bk)において殆ど吸収されて黒く見える。
【0070】
しかし、アゾメチンアゾ系黒色顔料は近赤外光に対して透明になる(透過性を有している)ので、赤外光線は白粒子27にて反射される。このため、図12(a)、(b)に示すように、白粒子27の分布状態によらず常に高い反射率が得られる。すなわち、表示本体120の表示画像によらず常に明るい背景となるため、少なくとも近赤外光線に対して低反射率となる材料、すなわち本実施形態では近赤外光線を吸収する材料を用いて位置情報パターン16を設けることによって、明るい背景上に暗い符号が撮像素子44で検出される。
【0071】
よって、位置情報パターン16の形成材料としては、近赤外光線に対して低反射性(吸収性)を有するとともに可視光線に対して透明性の高いものを用いることが好ましい。これにより、表示面上に位置情報パターン16を設けることによって表示画像のコントラストが低下したり、明るさが低下したりすることを防止できる。
【0072】
このように、光学特性が可視光と非可視光(近赤外光)とで異なる電気泳動粒子と分散媒とを用いて、可視光での表示によらず、非可視光では常に所定の反射率以上あるいは所定の反射率以下になるようにすることで、表示画像と位置情報パターンとのコントラストを高めることができ、高い識別性が得られるようになる。
【0073】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態の入力機能付表示装置について述べる
図13は、本実施形態の入力機能付表示装置の概略構成を示す断面図であって、1画素に対応する。
図14及び図15は電気泳動粒子の分布状態を示す図であって、図14は可視光表示時、図15は赤外光照射時の状態を示す。なお、図14(a)は白表示する場合、図14(b)は黒表示する場合を示している。
【0074】
図13に示すように、本実施形態の電気泳動素子32Dでは、透明な分散媒中に、互いに逆極性に帯電した、チタニアからなる白粒子27と、チタンブラックからなる黒粒子26とを保持してなる。本実施形態の白粒子27は、チタニア核27aの表面がヘプタメチンシアニン化合物からなる修飾膜27bによって覆われてなる2層構造を呈する。修飾膜27bは、可視光に対して透明で且つ赤外光を吸収する光学特性を有しており、このような光学特性を有する材料であれば、上記材料に限らず用いることができる。
【0075】
図14(a)に示すように、画素電極35及び対向電極37に所定の電圧を印加して白粒子27を対向電極37側、黒粒子26を画素電極35側へと移動させた状態において、可視光線は白粒子27の修飾膜27bを透過してチタニア核27aにおいて反射するため、白表示となる。
図14(b)に示すように、白粒子27を画素電極35側、黒粒子26を対向電極37側へと移動させた状態では、可視光線は黒粒子26において殆ど吸収されて黒表示となる。
【0076】
一方、図15(a)に示すように、対向電極37側に分布する白粒子27に近赤外光線が入射すると、白粒子27の修飾膜27bにおいて殆ど吸収されてしまう。よって、出射光は少ないので、電子ペン110の撮像素子の光センサにより「暗い」と判断される。
また、図15(b)に示すように、対向電極37側に分布する黒粒子26に近赤外光が入射すると、この場合もまた黒粒子26において近赤外光は殆ど吸収されてしまう。よって、電子ペン110の撮像素子44では「暗い」と判断される。
【0077】
このように、可視光で見る表示画像がどのようになっていても、近赤外光では電子ペン110の撮像素子44では常に全面が暗い画像が撮像されることになる。したがって、表示本体120の表示面に、少なくとも近赤外光線に対して高い反射性を有する位置情報パターン16を設けることによって、撮像素子において常に明るい背景に暗い符号の像が撮像されることになる。
【0078】
よって、位置情報パターン16の形成材料としては、近赤外光線に対して高い反射性を有するとともに可視光線に対して透明性の高いものを用いることが好ましい。これにより、表示面上に位置情報パターン16を設けることによって表示画像のコントラストが低下したり、明るさが低下したりすることを防止することができる。
【0079】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態の入力機能付表示装置について述べる。
図16は、本実施形態の入力機能付表示装置の概略構成を示す断面図であって、1画素に対応する。
図17及び図18は電気泳動粒子の分布状態を示す図であって、図17は可視光表示時、図18は赤外光照射時の状態を示す。なお、図17(a)は白表示する場合、図17(b)は黒表示する場合を示している。
【0080】
図16に示すように、本実施形態の電気泳動素子32Eは、透明な分散媒21中に、互いに逆極性に帯電し、とともにチタニアからなる白粒子27及び黒粒子26とが保持されてなる。本実施形態の黒粒子26は、チタニア核26aとその表面を覆う修飾膜26bとにより2層構造を呈するものである。修飾膜26bは、可視光を吸収し、近赤外光を透過する材料を用いて形成され、例えば、鉄およびビスマス(Bi)を主成分とする複合酸化物を用いて形成される。なお、これに限らず、可視光を吸収するとともに近赤外光を透過する材料であれば他の材料を用いてもよい。
【0081】
図17(a)に示すように、対向電極37側に白粒子27が存在する状態において、可視光が入射すると、白粒子27において反射されて白表示となる。
また、図17(b)に示すように、対向電極37側に黒粒子26が存在する状態において、可視光が入射すると、黒粒子26の修飾膜26bにおいて殆どの可視光が吸収されて黒表示となる。
【0082】
一方、図18(a)に示すように、対向電極37側に分布している白粒子27に近赤外光線が入射すると、可視光と同様に反射されて外部へ出射する。このため、電子ペン110の撮像素子の光センサ44では、「明るい」と判断される。
本実施形態の黒粒子26は、チタニア核26aの表面が近赤外光線に対する透過性の高い修飾膜26bによって覆われているので、図18(b)に示すように対向電極37側に黒粒子26が分布している状態において近赤外光線が黒粒子26に入射すると、修飾膜26bを透過してチタニア核26aで反射され、再び修飾膜26bを透過して外部へ出射する。その結果、電子ペン110の撮像素子の光センサ44では、「明るい」と判断される。
【0083】
本実施形態の構成によれば、表示本体120での表示画像(粒子の分布状態)がどのようになっていても、近赤外光線では電子ペン110の撮像素子によって撮像される像は常に全面が明るい画像となっている。したがって、表示本体120の表示面上に、少なくとも近赤外光線に対して低反射性(吸収性)を有する位置情報パターン16を設けることによって、撮像素子において常に明るい背景に暗い符号の像が撮像されることになる。
【0084】
なお、位置情報パターン16の形成材料は、近赤外光線に対して低反射性(吸収性)を有するとともに可視光線に対して透明性の高いものを用いることが好ましい。これにより、表示面上に位置情報パターン16を設けることによって、表示画像のコントラストや輝度の低下を防止することができる。
【0085】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0086】
例えば、表示本体120の表示領域5における各画素構造が部分的に異なっていても良い。具体的には、部分画素領域ごとに、上記した各実施形態の画素構造を採用しても良い。以下に、変形例について述べる。
【0087】
[変形例1]
図19は、変形例1の入力機能付表示装置の画素構造を概略的に示す図である。図20は、赤外光線照射時における背景の表示状態を示す図である。
図19に示すように、本例における入力機能付表示装置200における表示本体120の表示領域には、画素構造の異なる第1画素40Aと第2画素40Bとが混在された状態で存在する。ここで、素子基板300及び対向基板310の構成は上記各実施形態と同様である。
【0088】
第1画素40Aの電気泳動素子32Fは、上記した第4実施形態と同様に、透明な分散媒21中に、チタニア核27aの表面が、可視光に対して透明で且つ赤外光を吸収する修飾膜27bによって修飾されている白粒子27と、チタンブラックからなる黒粒子26とを保持してなる。
一方、第2画素の電気泳動素子32Gは、上記した第5実施形態と同様に、透明な分散媒21中に、チタニアからなる白粒子27と、チタニア核26aの表面が、可視光を透過するとともに近赤外光を透過する修飾膜26bによって修飾されている黒粒子26とを保持してなる。
【0089】
上記した、互いに異なる光学特性を有する第1画素40Aと第2画素40Bとを表示領域5全体の任意の位置に配置することにより、例えば、画素を利用した位置情報パターンを形成することが可能となる。つまり、可視光での表示、すなわち表示本体120における表示画像にかかわらず、赤外光線を照射すると、図20に示すように、所定の画素40Aでは「暗い」と判断され、他の画素40Bでは「明るい」と判断されることから、第1画素40Aと第2画素40Bとの位置関係を考慮することによって、位置情報パターンとして代替することが可能となる。このため、位置情報パターン16を表示面上に別途形成する必要がなくなる。
本例のように、画素ごとに異なる光学特性を有する電気泳動素子構造を採用することによって、別部材や印刷工程を別途用いることなく、位置情報パターンと同じ機能を付与することができる。
【0090】
また、符号撮像型入力方法を採用するにあたり、撮像する際の照明光を可視光領域以外の波長領域とし、この波長領域の光に対して、電気泳動素子(光学素子)の帯電粒子(可動部材)の位置あるいは分布によらず、所定以上あるいは所定以下の反射率を有するように光学素子を構成してもよい。
また、上記実施形態では、電気泳動素子を採用する構成について述べたが、これに限定するものではなく、電子粉流体(登録商標)でも各粒子に電気泳動粒子と同様の光学特性を付与すれば上記実施形態と同様の効果が得られる。
また、画素が着色した油と水(顔料を分散させた水)とからなり、この油と水の配置を変えることによって表示を行う、エレクトロウエッティング素子の場合でも、油と水の可視光領域以外の所定の波長領域(近赤外領域)の光の反射率を所定以上あるいは所定以下の反射率になるようにしておけば、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0091】
また、上記実施形態では、説明を簡単にするため、白表示と黒表示の場合について述べたが、カラー粒子や着色溶媒を用いたカラー表示の場合でも良い。可視光線での表示パターンによらず、所定の非可視光線で全ての画素の反射率が所定以上あるいは所定以下になるような光学特性材料を選択すればよい。この際、例えば、黒表示を行う場合、複数色の帯電粒子を移動させて表示を行ってもよい。こうすることで、単種の黒粒子よりも、安価な材料で近赤外線での反射率を向上させることが可能である。
【0092】
また、修飾膜の形成材料や、可視光に対して透明で近赤外光に対して吸収性を有する位置情報パターン(符号)の形成材料としては、銅や鉄などの金属製イオンを含有させたもの、ニトロソ化合物及びその金属錯塩、シアニン系化合物、スクアリリウム系化合物、ジチオール系金属錯体化合物、アミノチオフェノール系金属錯体化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、トリアリルメタン系化合物、インモニウム系化合物、ジインモニウム系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、アミノ化合物、アミニウム塩系化合物、アゾ化合物等がある。
【符号の説明】
【0093】
5…表示領域、16…位置情報パターン、21…分散媒、26b,27b…修飾膜、30…第1基板、31…第2基板、32,32B,32C,32D,32E,32F,32G…電気泳動素子、35…画素電極(第1電極)、37…対向電極(第2電極)、40…画素、53…導電性隔壁(隔壁)、54…反射層(反射部材)、100,200…入力機能付表示装置、110…電子ペン(位置情報読取手段)、120…表示本体(表示手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素からなる表示領域上の座標位置を表す位置情報パターンが付与されている表示手段と、不可視光線を用いて前記位置情報パターンを読み取る位置情報読取手段と、を備え、
前記表示手段は、前記位置情報読取手段により前記位置情報パターンから読み取った符号に基づいて表示を行い、
複数の帯電部材と、これを保持する分散媒とを構成部材として有する電気泳動素子と、
前記電気泳動素子側の面に第1電極を有する第1基板と、
前記電気泳動素子側の面に第2電極を有する第2基板と、を具備し、
前記電気泳動素子の構成部材の少なくとも一部及び前記位置情報パターンのうちいずれか一方が前記不可視光線に対して反射性を有し、他方が前記反射性よりも相対的に低い低反射性を有する
ことを特徴とする入力機能付表示装置。
【請求項2】
前記不可視光線が近赤外領域の光である
ことを特徴とする請求項1に記載の入力機能付表示装置。
【請求項3】
前記位置情報パターンが前記可視光線に対して透明性の高い材料を用いて形成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の入力機能付表示装置。
【請求項4】
前記電気泳動素子の構成部材の少なくとも一部が前記不可視光線に対して前記反射性を有する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の入力機能付表示装置。
【請求項5】
前記電気泳動素子の構成部材の少なくとも一部が前記不可視光線に対して前記反射性を有し、残りの前記電気泳動素子の構成部材が前記不可視光線に対して透過性を有する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の入力機能付表示装置。
【請求項6】
前記電気泳動素子の構成部材が前記不可視光線に対して前記低反射性を有する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の入力機能付表示装置。
【請求項7】
互いに異なる極性に帯電した第1の前記帯電部材及び第2の前記帯電部材のうちいずれか一方が、可視光線及び前記不可視光線に対して前記反射性を有する中心核と、当該中心核を修飾する修飾膜とから構成されており、
前記修飾膜が前記可視光線に対して透明性を有するとともに前記不可視光線に対して前記低反射性を有し、あるいは、前記修飾膜が前記可視光線に対して前記低反射性を有するとともに前記不可視光線に対して透明性を有している
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の入力機能付表示装置。
【請求項8】
複数の画素からなる表示領域上の座標位置を表す位置情報パターンが付与されている表示手段と、不可視光線を用いて前記位置情報パターンを読み取る位置情報読取手段と、を備え、
前記表示手段は、前記位置情報読取手段により前記位置情報パターンから読み取った符号に基づいて表示を行い、
所定の極性に帯電した電気泳動素子の構成部材と、これを保持する分散媒とを有する電気泳動素子と、
前記電気泳動素子側の面に第1電極を有する第1基板と、
前記電気泳動素子側の面に第2電極を有する第2基板と、を具備し、
前記第1基板には前記不可視光線に対する反射性が付与されており、
前記位置情報パターンは前記不可視光線に対して前記反射性よりも低い低反射性を有している
ことを特徴とする入力機能付表示装置。
【請求項9】
前記第1基板には、前記電気泳動素子側の面に前記不可視光線を反射する反射部材が設けられており、
前記電気泳動素子の構成部材が前記不可視光線に対して透過性を有している
ことを特徴とする請求項8に記載の入力機能付表示装置。
【請求項10】
前記第1基板及び前記第2基板との間に設けられ、前記画素を区画する導電性を有した隔壁を有する
ことを特徴とする請求項8または9に記載の入力機能付表示装置。
【請求項11】
前記位置情報パターンが光学特性を異ならせた画素構造を利用して構成されている
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の入力機能付表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−248145(P2012−248145A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121615(P2011−121615)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】