入力装置、表示装置、および機器
【課題】ガラス基板の強度が低下する可能性を低減することができる入力装置、表示装置、および機器を提供する。
【解決手段】入力装置X1は、透光性を有したガラス基板2と、ガラス基板2上に設けられた検出電極3a,4aと、ガラス基板2上に設けられておりかつ検出電極3a,4aと電気的に接続された配線導体7と、を備え、ガラス基板2と配線導体7との間に樹脂部材6が設けられている。
【解決手段】入力装置X1は、透光性を有したガラス基板2と、ガラス基板2上に設けられた検出電極3a,4aと、ガラス基板2上に設けられておりかつ検出電極3a,4aと電気的に接続された配線導体7と、を備え、ガラス基板2と配線導体7との間に樹脂部材6が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、使用者が入力操作した箇所を入力位置として検出する入力装置、表示装置、および機器に関する。
【背景技術】
【0002】
入力装置としては、例えば、指と検出電極との間での静電容量の変化を捉えて入力位置を検出する静電容量方式のタッチパネルが知られている(例えば、特許文献1および2参照)。このような入力装置は、ガラス基板と、ガラス基板上に設けられた検出電極と、ガラス基板上に設けられておりかつ検出電極と電気的に接続された配線導体と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−97283号公報
【特許文献2】特開2008−310551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の入力装置では、ガラス基板に直接、配線導体が設けられているため、ガラス基板の強度が低下する可能性があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガラス基板の強度が低下する可能性を低減することができる入力装置、表示装置、および機器に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の入力装置における一態様は、透光性を有したガラス基板と、前記ガラス基板上に設けられた検出電極と、前記ガラス基板上に設けられておりかつ前記検出電極と電気的に接続された配線導体と、を備え、前記ガラス基板と前記配線導体との間に樹脂部材が設けられている。
【0007】
本発明の表示装置における一態様は、本発明に係る入力装置と、前記入力装置に対向して配置された表示パネルと、前記表示パネルが収容された第1筐体と、を備える。
【0008】
本発明の機器における一態様は、本発明に係る表示装置を第2筐体に備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の入力装置、表示装置、および機器は、ガラス基板の強度が低下する可能性を低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る入力装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1中に示した切断線I−Iに沿って切断した断面図である。
【図3】図1中に示した切断線II−IIに沿って切断した断面図である。
【図4】図1中に示した切断線III−IIIに沿って切断した断面図である。
【図5】ガラス基板の破壊強度の測定方法を示す図であり、(a)は、測定装置の概略構成を示す平面図、(b)は、(a)中に示した切断線IV−IVに沿って切断した断面図である。
【図6】加重印加位置a〜eに対する、配線導体が形成された部位の破壊強度と、配線導体が形成されていない部位の破壊強度との関係をグラフで示した図である。
【図7】(a)は、配線導体が形成されていない部位におけるガラス基板の断面におけるカリウムの濃度分布を示す図面であり、(b)は、配線導体が形成された部位におけるガラス基板の断面におけるカリウムの濃度分布を示す図面である。
【図8】ガラス基板の裏面と配線導体との間に樹脂部材を設けた場合における、ガラス基板の破壊強度の測定方法を示す図であり、(a)は、測定装置の概略構成を示す平面図、(b)は、(a)中に示した切断線V−Vに沿って切断した断面図である。
【図9】樹脂部材が形成された部位におけるガラス基板の断面におけるカリウムの濃度分布を示す図面である。
【図10】本実施形態に係る表示装置の概略構成を示す断面図である。
【図11】本実施形態に係る携帯端末の概略構成を示す斜視図である。
【図12】変形例1に係る入力装置の概略構成を示す平面図である。
【図13】図13中に示した切断線VI−VIに沿って切断した断面図である。
【図14】変形例2に係る入力装置の概略構成を示す平面図である。
【図15】図15中に示した切断線VII−VIIに沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、本発明の一実施形態の構成部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材を簡略化して示したものである。したがって、本発明に係る入力装置、表示装置、および機器は、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る入力装置X1は、静電容量方式のタッチパネルであって、使用者によって入力操作が可能な入力領域EIと、入力領域EIの外側に位置する外側領域EOとを有している。なお、静電容量方式のタッチパネルに代えて、抵抗膜方式のタッチパネル、表面弾性波方式のタッチパネル、赤外線方式のタッチパネル、あるいは電磁誘導方式のタッチパネルを用いてもよい。
【0014】
図1〜図4に示すように、入力装置X1は、ガラス基板2を備えている。
【0015】
ガラス基板2は、入力領域EIにおいて後述する第1検出電極3a、第1接続電極3b、第2検出電極4a、および第2接続電極4bを支持する役割を担うとともに、外側領域EOにおいて後述する配線導体7を支持する役割を担う部材である。ガラス基板2は、操作面2a、操作面2aの反対側に位置する背面2b、および操作面2aと背面2bとに隣接する端面2cを有している。
【0016】
ガラス基板2は、透光性および絶縁性を有している。すなわち、ガラス基板2は、操作面2aおよび背面2bに対して交差する方向に光を適切に透過することが可能な構成とされている。なお、本明細書において透光性とは、可視光に対する透過性を有することを意味する。また、本実施形態に係るガラス基板2の平面視形状は角部が丸みを帯びている略矩形状とされているが、これには限られない。角部が丸みを帯びていなくともよいし、ガラス基板2の平面視形状が例えば円形状、多角形状であってもよい。
【0017】
ここで、本実施形態では、ガラス基板2として、イオン交換によって化学強化された強化ガラスが用いられている。このため、ガラス基板2は例えば次のような方法で作製される。すなわち、カリウムイオンの入った水溶液にガラスを接触させて熱を加えることにより、ガラス表面のナトリウムイオンをカリウムイオンに置換する。ガラス表面のナトリウ
ムイオンがカリウムイオンに置換されるので、ガラス表面に圧縮応力層が形成される。つまり、カリウムイオンはナトリウムイオンより大きいため、ナトリウムイオンの抜けた穴をより大きなカリウムイオンで塞ぐことで、より強い圧縮応力を分子レベルで得ることが可能となる。このようにして、化学強化されたガラス基板2が作製される。
【0018】
また、図1〜図3に示すように、入力領域EIに対応するガラス基板2の背面2b上には、第1検出電極3a、第1接続電極3b、第2検出電極4a、第2接続電極4b、および絶縁体5が設けられている。
【0019】
第1検出電極3aは、入力領域EIに接近した使用者の指F1の、Y方向における入力位置の検出を行う役割を有するものであり、指F1との間に静電容量を発生する機能を有している。すなわち、第1検出電極3aは、ガラス基板2の背面2b上に、X方向に沿って所定の間隔を空けて設けられている。ここで、本実施形態に係る第1検出電極3aは、検出感度を向上する観点から、平面視形状が略ひし形とされているが、これには限られない。
【0020】
第1接続電極3bは、隣り合う第1検出電極3aを電気的に接続する役割を担う部材である。第1接続電極3bは、ガラス基板2の背面2b上に設けられている。
【0021】
第2検出電極4aは、入力領域EIに接近した使用者の指F1の、X方向における入力位置の検出を行う役割を有するものであり、指F1との間に静電容量を発生する機能を有している。すなわち、第2検出電極4aは、ガラス基板2の背面2b上に、Y方向に沿って所定の間隔を空けて設けられている。ここで、本実施形態に係る第2検出電極4aは、検出感度を向上する観点から、平面視形状が略ひし形とされているが、これには限られない。
【0022】
第2接続電極4bは、隣り合う第2検出電極4aを電気的に接続する役割を担う部材である。第2接続電極4bは、第1接続電極3bと電気的に絶縁するように、絶縁体5を跨ぐように、絶縁体5上に設けられている。ここで、絶縁体5は、第1接続電極3bを覆うようにガラス基板2の背面2b上に設けられている。絶縁体5の構成材料としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、二酸化珪素、あるいは窒化珪素等が挙げられる。
【0023】
上述の第1検出電極3a、第1接続電極3b、第2検出電極4a、および第2接続電極4bの構成材料としては、例えば、透光性を有する導電性部材が挙げられる。透光性を有する導電性部材としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ATO(Antimony Tin Oxide)、AZO(Al-Doped Zinc Oxide)、酸化錫、酸化亜鉛、あるいは導電性高分子が挙げられる。
【0024】
また、図4に示すように、外側領域EOに対応するガラス基板2の背面2b上には、樹脂部材6および配線導体7が設けられている。
【0025】
樹脂部材6は、ガラス基板2の強度が低下する可能性を低減するための役割を担う部材である。樹脂部材6は、ガラス基板2の背面2b上に設けられている。すなわち、樹脂部材6は、ガラス基板2の背面2bと配線導体7との間に位置している。樹脂部材6は、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、あるいはシリコーン樹脂等の透明樹脂から構成される。
【0026】
配線導体7は、第1検出電極3aおよび第2検出電極4aに電圧を印加するための役割を担う部材である。配線導体7は、その一端部が第1検出電極3aおよび第2検出電極4
aと電気的に接続され、その他端部が外部導通領域G1に位置している。本実施形態では、配線導体7は、複数設けられており、図1の上面視して左側において、配線導体群71を構成している。本実施形態では、配線導体群71の全部の配線導体7が、樹脂部材6上に設けられている。
【0027】
配線導体7は、例えば、硬質で高い形状安定性を得るべく、金属薄膜で構成されている。この金属薄膜としては、例えば、アルミニウム膜、アルミニウム合金膜、クロム膜とアルミニウム膜との積層膜、クロム膜とアルミニウム合金膜との積層膜、銀膜、銀合金膜、あるいは金合金膜が挙げられる。なお、金属薄膜を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、蒸着法、あるいは化学気相成長法が挙げられる。
【0028】
また、図2〜図4に示すように、入力領域EIおよび外側領域EOに対応するガラス基板2の背面2b上には、保護部材8が設けられている。
【0029】
保護部材8は、検出電極3a,4aおよび配線導体7を保護するための役割を担う部材である。このため、保護部材8は、検出電極3a,4aおよび配線導体7を覆うようにガラス基板2の背面2b上に設けられている。保護部材8の構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、あるいは二酸化珪素等が挙げられる。保護部材8を形成する方法としては、例えば、転写印刷法、スピンコート法、あるいはスリットコート法等が挙げられる。
【0030】
なお、図4に示すように、保護部材8は、基体2の端面2cから所定距離L1以上離れて設けられていることが好ましい。本実施形態では、この所定距離L1は、0.85〜1.15mmである。保護部材8が所定距離L1以上離れて設けられているので、基体2の端面2cを研磨する際に、保護部材8が基体2の背面2bから剥がれてしまう可能性を低減できる。
【0031】
さらに、図2〜図4に示すように、入力領域EIおよび外側領域EOに対応するガラス基板2の操作面2a上には、粘着材9を介して操作面保護フィルム10が設けられている。
【0032】
操作面保護フィルム10は、基体2の操作面2aを保護するための役割を担う部材である。操作面保護フィルム10としては、例えば、アクリル系粘着材、シリコーン系粘着材、ゴム系粘着材、ウレタン系粘着材等が挙げられる。
【0033】
本実施形態では、ガラス基板2と配線導体7との間に樹脂部材6が設けられているので、ガラス基板2の強度が低下する可能性を低減することができる。
【0034】
ここで、ガラス基板2と配線導体7との間に樹脂部材6が設けられていると、ガラス基板2の強度が低下する可能性を低減することができる理由について以下に詳述する。
【0035】
まず、図5に示すように、ガラス基板20と、ガラス基板20を支持する支持体21とを備えた測定装置Q1を用意して、ガラス基板20の裏面20bに直接、アルミニウムからなる配線導体22を形成した。なお、ガラス基板20は、強化ガラスを用いた。そして、配線導体22が形成された部位A1に対応するガラス基板20の表面20aに、図示しない押し治具を図5(b)に示す矢印の方向に向けて押し当て、加重を印加し、ガラス基板20の破壊強度を測定した。具体的には、図5(a)に示すように、部位A1に対応するガラス基板20の表面20aにおけるa〜eの5個所に押し治具を押し当て、ガラス基板20の破壊強度を測定した。また、配線導体22が形成されていない部位B1に対応するガラス基板20の表面20aに、図示しない押し治具を図5(b)に示す矢印の方向に
向けて押し当て、加重を印加し、ガラス基板20の破壊強度を測定した。具体的には、図5(a)に示すように、部位B1に対応するガラス基板20の表面20aにおけるa〜eの5個所に押し治具を押し当て、ガラス基板20の破壊強度を測定した。なお、押し治具の加重速度は10mm/minである。また、破壊強度とは、破壊時に材料に生じる公称応力のことをいう。
【0036】
図6は、加重印加位置a〜eに対する、配線導体22が形成された部位A1の破壊強度と、配線導体22が形成されていない部位B1の破壊強度との関係をグラフで示した図である。図6に示すように、加重印加位置a〜e共に、配線導体22が形成された部位A1が、配線導体22が形成されていない部位B1よりも破壊強度が低くなっていることが判る。すなわち、ガラス基板20の裏面20bに直接配線導体22を形成すると、配線導体22を形成した部位において、ガラス基板20の強度が低下する。この理由について、以下、説明する。
【0037】
図7(a)は、配線導体22が形成されていない部位B1におけるガラス基板20の断面におけるカリウムの濃度分布を示す図面であり、図7(b)は、配線導体22が形成された部位A1におけるガラス基板20の断面におけるカリウムの濃度分布を示す図面である。なお、カリウムの濃度分布は、電子線マイクロ分析によって求められる。図7(a)および(b)に示すように、ガラス基板20の裏面20b近傍の領域に圧縮応力層が形成されている。本実施形態では、圧縮応力層は、ガラス基板20の裏面20bから17μmまでの領域に形成されている。図7(a)では、圧縮応力層にカリウムが一様に分布していることが判る。図7(b)では、配線導体22の形成領域近傍の圧縮応力層における部位C1において、カリウムが極端に集中していることが判る。当該部位C1においてカリウムが極端に集中するのは、ガラス基板20と配線導体22との化学反応によるものと推察されるが、詳細は明らかではない。
【0038】
このように、ガラス基板20の裏面20bに直接、配線導体22を形成すると、配線導体22の形成領域近傍の圧縮応力層における部位C1において、カリウムが極端に集中してしまうことになる。すなわち、カリウムが極端に集中してしまう部位C1とそれ以外の部位とが圧縮応力層にできてしまうため、当該部位C1とそれ以外の部位との境界を起点としてガラス基板20にクラックが生じ易くなり、ガラス基板20の強度が低下することになる。なお、これは、ガラス基板20の裏面20bと配線導体22との間に二酸化ケイ素層を設けた場合であっても同様である。
【0039】
そこで、図8に示すように、ガラス基板20の裏面20bと配線導体22との間に樹脂部材23を設けた。この樹脂部材23は、樹脂部材6と同様の材料から構成される。
【0040】
図9は、樹脂部材23が形成された部位A2におけるガラス基板20の断面におけるカリウムの濃度分布を示す図面である。ここで、樹脂部材23上には配線導体22が形成されている。図9では、ガラス基板20の裏面20bに樹脂部材23が形成された場合であっても、圧縮応力層にはカリウムが一様に分布していることが判る。圧縮応力層にカリウムが一様に分布しているので、図7(b)に示すガラス基板20と比べて、ガラス基板20の強度を向上させることができる。
【0041】
このように、本実施形態では、入力装置X1において、ガラス基板2と配線導体7との間に樹脂部材6を設けているので、ガラス基板2の強度が低下する可能性を低減することができる。
【0042】
ここで、入力装置X1における実際のガラス基板2単体の破壊強度を測定したところ、破壊強度の平均値は471Nであった(サンプル数15)。また、本実施形態のように、
ガラス基板2と配線導体7との間に樹脂部材6を設けた場合におけるガラス基板2の破壊強度を測定したところ、破壊強度の平均値は574Nであった(サンプル数20)。このように、入力装置X1において、ガラス基板2と配線導体7との間に樹脂部材6を設けると、ガラス基板2の強度が向上することが判る。なお、ガラス基板2の背面2bに直接、配線導体7を形成した場合におけるガラス基板2の破壊強度の平均値は197Nであった(サンプル数15)。
【0043】
次に、上記の入力装置X1の検出原理について説明する。
【0044】
入力領域EIに対応するガラス基板2の操作面2aに、操作面保護フィルム10を介して導電体である指F1が近接、接触、または押圧すると、指F1と検出電極3a,4aとの間の静電容量が変化する。ここで、図示しない位置検出ドライバは、指F1と検出電極3a,4aとの間の静電容量の変化を常に検出している。この位置検出ドライバは、所定値以上の静電容量の変化を検出すると、静電容量の変化が検出された位置を入力位置として検出する。このようにして、入力装置X1は、入力位置を検出することができる。なお、入力装置X1が入力位置を検出する方式として、相互キャパシタンス方式および自己キャパシタンス方式のいずれの方式であってもよい。相互キャパシタンス方式を採用すると、同時に複数の入力位置を検出できるので、自己キャパシタンス方式を採用する場合と比べて、好ましい。
【0045】
以上のように、上記の入力装置X1では、ガラス基板2の強度が低下する可能性を低減することができる。
【0046】
次に、入力装置X1を備えた表示装置Y1について、図10を参照しながら説明する。
【0047】
図10に示すように、本実施形態に係る表示装置Y1は、入力装置X1と、入力装置X1に対向して配置される液晶表示装置Z1とを備えている。
【0048】
液晶表示装置Z1は、液晶表示パネル101、バックライト102、および第1筐体103を備えている。
【0049】
液晶表示パネル101は、表示のために液晶組成物を利用した表示パネルである。なお、液晶表示パネル101の代わりに、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパ等の表示パネルであってもよい。バックライト102は、光源102aおよび導光板102bを備えている。光源102aは、導光板102bに向けて光を出射する役割を担う部材であり、例えば、LED(Light Emitting Diode)から構成される。なお、LEDの代わりに、冷陰極蛍光ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、EL(Electro-Luminescence)であってもよい。導光板102bは、液晶表示パネル101の下面全体にわたって、光源102aからの光を略均一に導くための役割を担う部材である。
【0050】
第1筐体103は、液晶表示パネル101およびバックライト102を収容する役割を担うものであり、上側筐体103aおよび下側筐体103bを含んで構成される。表示装置用筐体103の構成材料としては、例えば、ポリカーボネート等の樹脂、あるいは、ステンレス、アルミニウム等の金属が挙げられる。
【0051】
ここで、入力装置X1と液晶表示装置Z1とは、両面テープ104を介して接着される。すなわち、入力装置X1におけるガラス基板2の背面2bが液晶表示パネル101の主面に対向して配置されるように、入力装置X1と液晶表示装置Z1とが、両面テープ104を介して接着される。なお、入力装置X1と液晶表示装置Z1との固定方法に使用される固定用部材は両面テープ104には限られず、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹
脂等の接着部材、あるいは入力装置X1と液晶表示装置Z1とを物理的に固定する固定構造体であってもよい。また、入力装置X1と液晶表示装置Z1とは、互いに接して配置されていてもよいし、隙間を空けて配置されていてもよい。
【0052】
このように、入力装置X1は、液晶表示装置Z1の液晶表示パネル101を透視しながら、入力装置X1の入力領域EIを入力操作することによって、各種の情報を入力することができる。なお、各種の情報を入力する際に、情報を入力した使用者に対して、押圧感、なぞり感、肌触り感等の様々な触感を呈示する機能を入力装置X1に付与してもよい。この場合、入力装置X1におけるガラス基板2に、1または複数の振動体(例えば、圧電素子等)を備え、所定の入力操作あるいは所定の押圧荷重を検知した場合に、当該振動体を所定の周波数で振動させることで実現することができる。
【0053】
表示装置Y1は、入力装置X1を備えているので、ガラス基板2の強度が低下する可能性を低減することができる。
【0054】
次に、表示装置Y1を備えた携帯端末P1について、図11を参照しながら説明する。
【0055】
図11に示すように、本実施形態に係る携帯端末P1は、例えば、携帯電話、スマートフォン、PDA等の機器であって、表示装置Y1と、音声入力部201と、音声出力部202と、キー入力部203と、第2筐体204とを備えている。
【0056】
音声入力部201は、例えば、マイク等により構成されており、使用者の音声等が入力される。音声出力部202は、スピーカ等により構成されており、相手方からの音声等が出力される。キー入力部203は、例えば、機械的なキーにより構成される。なお、キー入力部203は、表示画面に表示された操作キーであってもよい。第2筐体204は、表示装置Y1、音声入力部201、音声出力部202、およびキー入力部203を収容する役割を担う部材である。
【0057】
他にも、携帯端末P1は、必要な機能に応じて、デジタルカメラ機能部、ワンセグ放送用チューナ、赤外線通信機能部等の近距離無線通信部、および各種インタフェース等を備える場合もあるが、これらの詳細についての図示および説明は省略する。
【0058】
携帯端末P1は、表示装置Y1を備えているので、ガラス基板2の強度が低下する可能性を低減することができる。
【0059】
なお、上記では、携帯端末P1に音声入力部201を備えている例について説明したが、これに限定されない。すなわち、携帯端末P1には音声入力部201は備えられていなくともよい。
【0060】
ここで、表示装置Y1は、上記の携帯端末P1の代わりに、産業用途で使用されるプログラマブル表示器、電子手帳、パーソナルコンピュータ、複写機、ゲーム用の端末装置、テレビ、デジタルカメラ等の種々の機器に備えられていてもよい。
【0061】
なお、上述した実施形態は、本発明の実施形態の一具体例を示すものであり、種々の変形が可能である。以下、いくつかの主な変形例を示す。
【0062】
[変形例1]
図12は、変形例1に係る入力装置X2の概略構成を示す平面図である。図13は、図12中に示した切断線VI−VIに沿って切断した断面図である。図12および図13において、図1および図4と同様の機能を有する構成については、同じ参照符号を付記し、
その詳細な説明を省略する。
【0063】
図13に示すように、入力装置X2では、樹脂部材6の代わりに、樹脂部材61を備えている。入力装置X2では、断面視して、樹脂部材61の端部611における表面は、傾斜面611aをなしている。表面が傾斜面611aをなしているので、ガラス基板2の操作面2aへ加わる応力を当該傾斜面611aにおいてある程度緩和することができる。このため、ガラス基板2の強度が低下する可能性をより低減することができる。
【0064】
なお、傾斜面611aが曲面(凸曲面あるいは凹曲面)をなしていてもよい。傾斜面611aが曲面をなしていると、ガラス基板2の操作面2aへ加わる応力を当該傾斜面611aにてより緩和することができる。
【0065】
[変形例2]
図14は、変形例2に係る入力装置X3の概略構成を示す平面図である。図15は、図14中に示した切断線VII−VIIに沿って切断した断面図である。図14および図15において、図1および図4と同様の機能を有する構成については、同じ参照符号を付記し、その詳細な説明を省略する。
【0066】
図15に示すように、入力装置X3では、ガラス基板2の背面2b上に遮光部材11が設けられている。遮光部材11は、入力装置X1の外側領域EOを例えば黒色に加飾する役割を担う部材であるとともに、使用者から配線導体7が視認されてしまう可能性を低減するための役割を担う部材である。遮光部材11の構成材料としては、例えば、カーボンを含む樹脂材料、酸化クロム、あるいは酸化チタン等が挙げられる。
【0067】
入力装置X3では、樹脂部材6は、遮光部材11を覆うように設けられている。すなわち、ガラス基板2の背面2bと配線導体7との間に、遮光部材11および樹脂部材6が設けられている。変形例2のように、樹脂部材6は、遮光部材11を覆うように設けられていても、上述の実施形態と同様に、ガラス基板2の強度が低下する可能性を低減することができる。
【0068】
[変形例3]
上述した実施形態および上述した変形例は適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0069】
X1〜X3 入力装置
Y1 表示装置
P1 携帯端末(機器)
2 ガラス基板
3a 第1検出電極(検出電極)
4a 第2検出電極(検出電極)
6,61 樹脂部材
7 配線導体
11 遮光部材
101 液晶表示パネル(表示パネル)
103 第1筐体
204 第2筐体
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、使用者が入力操作した箇所を入力位置として検出する入力装置、表示装置、および機器に関する。
【背景技術】
【0002】
入力装置としては、例えば、指と検出電極との間での静電容量の変化を捉えて入力位置を検出する静電容量方式のタッチパネルが知られている(例えば、特許文献1および2参照)。このような入力装置は、ガラス基板と、ガラス基板上に設けられた検出電極と、ガラス基板上に設けられておりかつ検出電極と電気的に接続された配線導体と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−97283号公報
【特許文献2】特開2008−310551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の入力装置では、ガラス基板に直接、配線導体が設けられているため、ガラス基板の強度が低下する可能性があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガラス基板の強度が低下する可能性を低減することができる入力装置、表示装置、および機器に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の入力装置における一態様は、透光性を有したガラス基板と、前記ガラス基板上に設けられた検出電極と、前記ガラス基板上に設けられておりかつ前記検出電極と電気的に接続された配線導体と、を備え、前記ガラス基板と前記配線導体との間に樹脂部材が設けられている。
【0007】
本発明の表示装置における一態様は、本発明に係る入力装置と、前記入力装置に対向して配置された表示パネルと、前記表示パネルが収容された第1筐体と、を備える。
【0008】
本発明の機器における一態様は、本発明に係る表示装置を第2筐体に備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の入力装置、表示装置、および機器は、ガラス基板の強度が低下する可能性を低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る入力装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1中に示した切断線I−Iに沿って切断した断面図である。
【図3】図1中に示した切断線II−IIに沿って切断した断面図である。
【図4】図1中に示した切断線III−IIIに沿って切断した断面図である。
【図5】ガラス基板の破壊強度の測定方法を示す図であり、(a)は、測定装置の概略構成を示す平面図、(b)は、(a)中に示した切断線IV−IVに沿って切断した断面図である。
【図6】加重印加位置a〜eに対する、配線導体が形成された部位の破壊強度と、配線導体が形成されていない部位の破壊強度との関係をグラフで示した図である。
【図7】(a)は、配線導体が形成されていない部位におけるガラス基板の断面におけるカリウムの濃度分布を示す図面であり、(b)は、配線導体が形成された部位におけるガラス基板の断面におけるカリウムの濃度分布を示す図面である。
【図8】ガラス基板の裏面と配線導体との間に樹脂部材を設けた場合における、ガラス基板の破壊強度の測定方法を示す図であり、(a)は、測定装置の概略構成を示す平面図、(b)は、(a)中に示した切断線V−Vに沿って切断した断面図である。
【図9】樹脂部材が形成された部位におけるガラス基板の断面におけるカリウムの濃度分布を示す図面である。
【図10】本実施形態に係る表示装置の概略構成を示す断面図である。
【図11】本実施形態に係る携帯端末の概略構成を示す斜視図である。
【図12】変形例1に係る入力装置の概略構成を示す平面図である。
【図13】図13中に示した切断線VI−VIに沿って切断した断面図である。
【図14】変形例2に係る入力装置の概略構成を示す平面図である。
【図15】図15中に示した切断線VII−VIIに沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、本発明の一実施形態の構成部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材を簡略化して示したものである。したがって、本発明に係る入力装置、表示装置、および機器は、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る入力装置X1は、静電容量方式のタッチパネルであって、使用者によって入力操作が可能な入力領域EIと、入力領域EIの外側に位置する外側領域EOとを有している。なお、静電容量方式のタッチパネルに代えて、抵抗膜方式のタッチパネル、表面弾性波方式のタッチパネル、赤外線方式のタッチパネル、あるいは電磁誘導方式のタッチパネルを用いてもよい。
【0014】
図1〜図4に示すように、入力装置X1は、ガラス基板2を備えている。
【0015】
ガラス基板2は、入力領域EIにおいて後述する第1検出電極3a、第1接続電極3b、第2検出電極4a、および第2接続電極4bを支持する役割を担うとともに、外側領域EOにおいて後述する配線導体7を支持する役割を担う部材である。ガラス基板2は、操作面2a、操作面2aの反対側に位置する背面2b、および操作面2aと背面2bとに隣接する端面2cを有している。
【0016】
ガラス基板2は、透光性および絶縁性を有している。すなわち、ガラス基板2は、操作面2aおよび背面2bに対して交差する方向に光を適切に透過することが可能な構成とされている。なお、本明細書において透光性とは、可視光に対する透過性を有することを意味する。また、本実施形態に係るガラス基板2の平面視形状は角部が丸みを帯びている略矩形状とされているが、これには限られない。角部が丸みを帯びていなくともよいし、ガラス基板2の平面視形状が例えば円形状、多角形状であってもよい。
【0017】
ここで、本実施形態では、ガラス基板2として、イオン交換によって化学強化された強化ガラスが用いられている。このため、ガラス基板2は例えば次のような方法で作製される。すなわち、カリウムイオンの入った水溶液にガラスを接触させて熱を加えることにより、ガラス表面のナトリウムイオンをカリウムイオンに置換する。ガラス表面のナトリウ
ムイオンがカリウムイオンに置換されるので、ガラス表面に圧縮応力層が形成される。つまり、カリウムイオンはナトリウムイオンより大きいため、ナトリウムイオンの抜けた穴をより大きなカリウムイオンで塞ぐことで、より強い圧縮応力を分子レベルで得ることが可能となる。このようにして、化学強化されたガラス基板2が作製される。
【0018】
また、図1〜図3に示すように、入力領域EIに対応するガラス基板2の背面2b上には、第1検出電極3a、第1接続電極3b、第2検出電極4a、第2接続電極4b、および絶縁体5が設けられている。
【0019】
第1検出電極3aは、入力領域EIに接近した使用者の指F1の、Y方向における入力位置の検出を行う役割を有するものであり、指F1との間に静電容量を発生する機能を有している。すなわち、第1検出電極3aは、ガラス基板2の背面2b上に、X方向に沿って所定の間隔を空けて設けられている。ここで、本実施形態に係る第1検出電極3aは、検出感度を向上する観点から、平面視形状が略ひし形とされているが、これには限られない。
【0020】
第1接続電極3bは、隣り合う第1検出電極3aを電気的に接続する役割を担う部材である。第1接続電極3bは、ガラス基板2の背面2b上に設けられている。
【0021】
第2検出電極4aは、入力領域EIに接近した使用者の指F1の、X方向における入力位置の検出を行う役割を有するものであり、指F1との間に静電容量を発生する機能を有している。すなわち、第2検出電極4aは、ガラス基板2の背面2b上に、Y方向に沿って所定の間隔を空けて設けられている。ここで、本実施形態に係る第2検出電極4aは、検出感度を向上する観点から、平面視形状が略ひし形とされているが、これには限られない。
【0022】
第2接続電極4bは、隣り合う第2検出電極4aを電気的に接続する役割を担う部材である。第2接続電極4bは、第1接続電極3bと電気的に絶縁するように、絶縁体5を跨ぐように、絶縁体5上に設けられている。ここで、絶縁体5は、第1接続電極3bを覆うようにガラス基板2の背面2b上に設けられている。絶縁体5の構成材料としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、二酸化珪素、あるいは窒化珪素等が挙げられる。
【0023】
上述の第1検出電極3a、第1接続電極3b、第2検出電極4a、および第2接続電極4bの構成材料としては、例えば、透光性を有する導電性部材が挙げられる。透光性を有する導電性部材としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ATO(Antimony Tin Oxide)、AZO(Al-Doped Zinc Oxide)、酸化錫、酸化亜鉛、あるいは導電性高分子が挙げられる。
【0024】
また、図4に示すように、外側領域EOに対応するガラス基板2の背面2b上には、樹脂部材6および配線導体7が設けられている。
【0025】
樹脂部材6は、ガラス基板2の強度が低下する可能性を低減するための役割を担う部材である。樹脂部材6は、ガラス基板2の背面2b上に設けられている。すなわち、樹脂部材6は、ガラス基板2の背面2bと配線導体7との間に位置している。樹脂部材6は、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、あるいはシリコーン樹脂等の透明樹脂から構成される。
【0026】
配線導体7は、第1検出電極3aおよび第2検出電極4aに電圧を印加するための役割を担う部材である。配線導体7は、その一端部が第1検出電極3aおよび第2検出電極4
aと電気的に接続され、その他端部が外部導通領域G1に位置している。本実施形態では、配線導体7は、複数設けられており、図1の上面視して左側において、配線導体群71を構成している。本実施形態では、配線導体群71の全部の配線導体7が、樹脂部材6上に設けられている。
【0027】
配線導体7は、例えば、硬質で高い形状安定性を得るべく、金属薄膜で構成されている。この金属薄膜としては、例えば、アルミニウム膜、アルミニウム合金膜、クロム膜とアルミニウム膜との積層膜、クロム膜とアルミニウム合金膜との積層膜、銀膜、銀合金膜、あるいは金合金膜が挙げられる。なお、金属薄膜を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、蒸着法、あるいは化学気相成長法が挙げられる。
【0028】
また、図2〜図4に示すように、入力領域EIおよび外側領域EOに対応するガラス基板2の背面2b上には、保護部材8が設けられている。
【0029】
保護部材8は、検出電極3a,4aおよび配線導体7を保護するための役割を担う部材である。このため、保護部材8は、検出電極3a,4aおよび配線導体7を覆うようにガラス基板2の背面2b上に設けられている。保護部材8の構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、あるいは二酸化珪素等が挙げられる。保護部材8を形成する方法としては、例えば、転写印刷法、スピンコート法、あるいはスリットコート法等が挙げられる。
【0030】
なお、図4に示すように、保護部材8は、基体2の端面2cから所定距離L1以上離れて設けられていることが好ましい。本実施形態では、この所定距離L1は、0.85〜1.15mmである。保護部材8が所定距離L1以上離れて設けられているので、基体2の端面2cを研磨する際に、保護部材8が基体2の背面2bから剥がれてしまう可能性を低減できる。
【0031】
さらに、図2〜図4に示すように、入力領域EIおよび外側領域EOに対応するガラス基板2の操作面2a上には、粘着材9を介して操作面保護フィルム10が設けられている。
【0032】
操作面保護フィルム10は、基体2の操作面2aを保護するための役割を担う部材である。操作面保護フィルム10としては、例えば、アクリル系粘着材、シリコーン系粘着材、ゴム系粘着材、ウレタン系粘着材等が挙げられる。
【0033】
本実施形態では、ガラス基板2と配線導体7との間に樹脂部材6が設けられているので、ガラス基板2の強度が低下する可能性を低減することができる。
【0034】
ここで、ガラス基板2と配線導体7との間に樹脂部材6が設けられていると、ガラス基板2の強度が低下する可能性を低減することができる理由について以下に詳述する。
【0035】
まず、図5に示すように、ガラス基板20と、ガラス基板20を支持する支持体21とを備えた測定装置Q1を用意して、ガラス基板20の裏面20bに直接、アルミニウムからなる配線導体22を形成した。なお、ガラス基板20は、強化ガラスを用いた。そして、配線導体22が形成された部位A1に対応するガラス基板20の表面20aに、図示しない押し治具を図5(b)に示す矢印の方向に向けて押し当て、加重を印加し、ガラス基板20の破壊強度を測定した。具体的には、図5(a)に示すように、部位A1に対応するガラス基板20の表面20aにおけるa〜eの5個所に押し治具を押し当て、ガラス基板20の破壊強度を測定した。また、配線導体22が形成されていない部位B1に対応するガラス基板20の表面20aに、図示しない押し治具を図5(b)に示す矢印の方向に
向けて押し当て、加重を印加し、ガラス基板20の破壊強度を測定した。具体的には、図5(a)に示すように、部位B1に対応するガラス基板20の表面20aにおけるa〜eの5個所に押し治具を押し当て、ガラス基板20の破壊強度を測定した。なお、押し治具の加重速度は10mm/minである。また、破壊強度とは、破壊時に材料に生じる公称応力のことをいう。
【0036】
図6は、加重印加位置a〜eに対する、配線導体22が形成された部位A1の破壊強度と、配線導体22が形成されていない部位B1の破壊強度との関係をグラフで示した図である。図6に示すように、加重印加位置a〜e共に、配線導体22が形成された部位A1が、配線導体22が形成されていない部位B1よりも破壊強度が低くなっていることが判る。すなわち、ガラス基板20の裏面20bに直接配線導体22を形成すると、配線導体22を形成した部位において、ガラス基板20の強度が低下する。この理由について、以下、説明する。
【0037】
図7(a)は、配線導体22が形成されていない部位B1におけるガラス基板20の断面におけるカリウムの濃度分布を示す図面であり、図7(b)は、配線導体22が形成された部位A1におけるガラス基板20の断面におけるカリウムの濃度分布を示す図面である。なお、カリウムの濃度分布は、電子線マイクロ分析によって求められる。図7(a)および(b)に示すように、ガラス基板20の裏面20b近傍の領域に圧縮応力層が形成されている。本実施形態では、圧縮応力層は、ガラス基板20の裏面20bから17μmまでの領域に形成されている。図7(a)では、圧縮応力層にカリウムが一様に分布していることが判る。図7(b)では、配線導体22の形成領域近傍の圧縮応力層における部位C1において、カリウムが極端に集中していることが判る。当該部位C1においてカリウムが極端に集中するのは、ガラス基板20と配線導体22との化学反応によるものと推察されるが、詳細は明らかではない。
【0038】
このように、ガラス基板20の裏面20bに直接、配線導体22を形成すると、配線導体22の形成領域近傍の圧縮応力層における部位C1において、カリウムが極端に集中してしまうことになる。すなわち、カリウムが極端に集中してしまう部位C1とそれ以外の部位とが圧縮応力層にできてしまうため、当該部位C1とそれ以外の部位との境界を起点としてガラス基板20にクラックが生じ易くなり、ガラス基板20の強度が低下することになる。なお、これは、ガラス基板20の裏面20bと配線導体22との間に二酸化ケイ素層を設けた場合であっても同様である。
【0039】
そこで、図8に示すように、ガラス基板20の裏面20bと配線導体22との間に樹脂部材23を設けた。この樹脂部材23は、樹脂部材6と同様の材料から構成される。
【0040】
図9は、樹脂部材23が形成された部位A2におけるガラス基板20の断面におけるカリウムの濃度分布を示す図面である。ここで、樹脂部材23上には配線導体22が形成されている。図9では、ガラス基板20の裏面20bに樹脂部材23が形成された場合であっても、圧縮応力層にはカリウムが一様に分布していることが判る。圧縮応力層にカリウムが一様に分布しているので、図7(b)に示すガラス基板20と比べて、ガラス基板20の強度を向上させることができる。
【0041】
このように、本実施形態では、入力装置X1において、ガラス基板2と配線導体7との間に樹脂部材6を設けているので、ガラス基板2の強度が低下する可能性を低減することができる。
【0042】
ここで、入力装置X1における実際のガラス基板2単体の破壊強度を測定したところ、破壊強度の平均値は471Nであった(サンプル数15)。また、本実施形態のように、
ガラス基板2と配線導体7との間に樹脂部材6を設けた場合におけるガラス基板2の破壊強度を測定したところ、破壊強度の平均値は574Nであった(サンプル数20)。このように、入力装置X1において、ガラス基板2と配線導体7との間に樹脂部材6を設けると、ガラス基板2の強度が向上することが判る。なお、ガラス基板2の背面2bに直接、配線導体7を形成した場合におけるガラス基板2の破壊強度の平均値は197Nであった(サンプル数15)。
【0043】
次に、上記の入力装置X1の検出原理について説明する。
【0044】
入力領域EIに対応するガラス基板2の操作面2aに、操作面保護フィルム10を介して導電体である指F1が近接、接触、または押圧すると、指F1と検出電極3a,4aとの間の静電容量が変化する。ここで、図示しない位置検出ドライバは、指F1と検出電極3a,4aとの間の静電容量の変化を常に検出している。この位置検出ドライバは、所定値以上の静電容量の変化を検出すると、静電容量の変化が検出された位置を入力位置として検出する。このようにして、入力装置X1は、入力位置を検出することができる。なお、入力装置X1が入力位置を検出する方式として、相互キャパシタンス方式および自己キャパシタンス方式のいずれの方式であってもよい。相互キャパシタンス方式を採用すると、同時に複数の入力位置を検出できるので、自己キャパシタンス方式を採用する場合と比べて、好ましい。
【0045】
以上のように、上記の入力装置X1では、ガラス基板2の強度が低下する可能性を低減することができる。
【0046】
次に、入力装置X1を備えた表示装置Y1について、図10を参照しながら説明する。
【0047】
図10に示すように、本実施形態に係る表示装置Y1は、入力装置X1と、入力装置X1に対向して配置される液晶表示装置Z1とを備えている。
【0048】
液晶表示装置Z1は、液晶表示パネル101、バックライト102、および第1筐体103を備えている。
【0049】
液晶表示パネル101は、表示のために液晶組成物を利用した表示パネルである。なお、液晶表示パネル101の代わりに、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパ等の表示パネルであってもよい。バックライト102は、光源102aおよび導光板102bを備えている。光源102aは、導光板102bに向けて光を出射する役割を担う部材であり、例えば、LED(Light Emitting Diode)から構成される。なお、LEDの代わりに、冷陰極蛍光ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、EL(Electro-Luminescence)であってもよい。導光板102bは、液晶表示パネル101の下面全体にわたって、光源102aからの光を略均一に導くための役割を担う部材である。
【0050】
第1筐体103は、液晶表示パネル101およびバックライト102を収容する役割を担うものであり、上側筐体103aおよび下側筐体103bを含んで構成される。表示装置用筐体103の構成材料としては、例えば、ポリカーボネート等の樹脂、あるいは、ステンレス、アルミニウム等の金属が挙げられる。
【0051】
ここで、入力装置X1と液晶表示装置Z1とは、両面テープ104を介して接着される。すなわち、入力装置X1におけるガラス基板2の背面2bが液晶表示パネル101の主面に対向して配置されるように、入力装置X1と液晶表示装置Z1とが、両面テープ104を介して接着される。なお、入力装置X1と液晶表示装置Z1との固定方法に使用される固定用部材は両面テープ104には限られず、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹
脂等の接着部材、あるいは入力装置X1と液晶表示装置Z1とを物理的に固定する固定構造体であってもよい。また、入力装置X1と液晶表示装置Z1とは、互いに接して配置されていてもよいし、隙間を空けて配置されていてもよい。
【0052】
このように、入力装置X1は、液晶表示装置Z1の液晶表示パネル101を透視しながら、入力装置X1の入力領域EIを入力操作することによって、各種の情報を入力することができる。なお、各種の情報を入力する際に、情報を入力した使用者に対して、押圧感、なぞり感、肌触り感等の様々な触感を呈示する機能を入力装置X1に付与してもよい。この場合、入力装置X1におけるガラス基板2に、1または複数の振動体(例えば、圧電素子等)を備え、所定の入力操作あるいは所定の押圧荷重を検知した場合に、当該振動体を所定の周波数で振動させることで実現することができる。
【0053】
表示装置Y1は、入力装置X1を備えているので、ガラス基板2の強度が低下する可能性を低減することができる。
【0054】
次に、表示装置Y1を備えた携帯端末P1について、図11を参照しながら説明する。
【0055】
図11に示すように、本実施形態に係る携帯端末P1は、例えば、携帯電話、スマートフォン、PDA等の機器であって、表示装置Y1と、音声入力部201と、音声出力部202と、キー入力部203と、第2筐体204とを備えている。
【0056】
音声入力部201は、例えば、マイク等により構成されており、使用者の音声等が入力される。音声出力部202は、スピーカ等により構成されており、相手方からの音声等が出力される。キー入力部203は、例えば、機械的なキーにより構成される。なお、キー入力部203は、表示画面に表示された操作キーであってもよい。第2筐体204は、表示装置Y1、音声入力部201、音声出力部202、およびキー入力部203を収容する役割を担う部材である。
【0057】
他にも、携帯端末P1は、必要な機能に応じて、デジタルカメラ機能部、ワンセグ放送用チューナ、赤外線通信機能部等の近距離無線通信部、および各種インタフェース等を備える場合もあるが、これらの詳細についての図示および説明は省略する。
【0058】
携帯端末P1は、表示装置Y1を備えているので、ガラス基板2の強度が低下する可能性を低減することができる。
【0059】
なお、上記では、携帯端末P1に音声入力部201を備えている例について説明したが、これに限定されない。すなわち、携帯端末P1には音声入力部201は備えられていなくともよい。
【0060】
ここで、表示装置Y1は、上記の携帯端末P1の代わりに、産業用途で使用されるプログラマブル表示器、電子手帳、パーソナルコンピュータ、複写機、ゲーム用の端末装置、テレビ、デジタルカメラ等の種々の機器に備えられていてもよい。
【0061】
なお、上述した実施形態は、本発明の実施形態の一具体例を示すものであり、種々の変形が可能である。以下、いくつかの主な変形例を示す。
【0062】
[変形例1]
図12は、変形例1に係る入力装置X2の概略構成を示す平面図である。図13は、図12中に示した切断線VI−VIに沿って切断した断面図である。図12および図13において、図1および図4と同様の機能を有する構成については、同じ参照符号を付記し、
その詳細な説明を省略する。
【0063】
図13に示すように、入力装置X2では、樹脂部材6の代わりに、樹脂部材61を備えている。入力装置X2では、断面視して、樹脂部材61の端部611における表面は、傾斜面611aをなしている。表面が傾斜面611aをなしているので、ガラス基板2の操作面2aへ加わる応力を当該傾斜面611aにおいてある程度緩和することができる。このため、ガラス基板2の強度が低下する可能性をより低減することができる。
【0064】
なお、傾斜面611aが曲面(凸曲面あるいは凹曲面)をなしていてもよい。傾斜面611aが曲面をなしていると、ガラス基板2の操作面2aへ加わる応力を当該傾斜面611aにてより緩和することができる。
【0065】
[変形例2]
図14は、変形例2に係る入力装置X3の概略構成を示す平面図である。図15は、図14中に示した切断線VII−VIIに沿って切断した断面図である。図14および図15において、図1および図4と同様の機能を有する構成については、同じ参照符号を付記し、その詳細な説明を省略する。
【0066】
図15に示すように、入力装置X3では、ガラス基板2の背面2b上に遮光部材11が設けられている。遮光部材11は、入力装置X1の外側領域EOを例えば黒色に加飾する役割を担う部材であるとともに、使用者から配線導体7が視認されてしまう可能性を低減するための役割を担う部材である。遮光部材11の構成材料としては、例えば、カーボンを含む樹脂材料、酸化クロム、あるいは酸化チタン等が挙げられる。
【0067】
入力装置X3では、樹脂部材6は、遮光部材11を覆うように設けられている。すなわち、ガラス基板2の背面2bと配線導体7との間に、遮光部材11および樹脂部材6が設けられている。変形例2のように、樹脂部材6は、遮光部材11を覆うように設けられていても、上述の実施形態と同様に、ガラス基板2の強度が低下する可能性を低減することができる。
【0068】
[変形例3]
上述した実施形態および上述した変形例は適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0069】
X1〜X3 入力装置
Y1 表示装置
P1 携帯端末(機器)
2 ガラス基板
3a 第1検出電極(検出電極)
4a 第2検出電極(検出電極)
6,61 樹脂部材
7 配線導体
11 遮光部材
101 液晶表示パネル(表示パネル)
103 第1筐体
204 第2筐体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有したガラス基板と、
前記ガラス基板上に設けられた検出電極と、
前記ガラス基板上に設けられておりかつ前記検出電極と電気的に接続された配線導体と、を備え、
前記ガラス基板と前記配線導体との間に樹脂部材が設けられていることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記配線導体は、複数設けられており、
複数の前記配線導体が配線導体群を構成しており、
前記樹脂部材は、前記ガラス基板と、前記配線導体群の全部の配線導体との間に設けられている、請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
断面視して、前記樹脂部材の端部における表面は、傾斜面をなしている、請求項1または2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記ガラス基板上に遮光部材をさらに備え、
前記樹脂部材は、前記遮光部材を覆うように設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の入力装置と、
前記入力装置に対向して配置された表示パネルと、
前記表示パネルが収容された第1筐体と、を備えた表示装置。
【請求項6】
前記表示パネルは、液晶表示パネルである、請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の表示装置を第2筐体に備えた機器。
【請求項1】
透光性を有したガラス基板と、
前記ガラス基板上に設けられた検出電極と、
前記ガラス基板上に設けられておりかつ前記検出電極と電気的に接続された配線導体と、を備え、
前記ガラス基板と前記配線導体との間に樹脂部材が設けられていることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記配線導体は、複数設けられており、
複数の前記配線導体が配線導体群を構成しており、
前記樹脂部材は、前記ガラス基板と、前記配線導体群の全部の配線導体との間に設けられている、請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
断面視して、前記樹脂部材の端部における表面は、傾斜面をなしている、請求項1または2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記ガラス基板上に遮光部材をさらに備え、
前記樹脂部材は、前記遮光部材を覆うように設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の入力装置と、
前記入力装置に対向して配置された表示パネルと、
前記表示パネルが収容された第1筐体と、を備えた表示装置。
【請求項6】
前記表示パネルは、液晶表示パネルである、請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の表示装置を第2筐体に備えた機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−50781(P2013−50781A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187279(P2011−187279)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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