入力装置及びその製造方法
【課題】 輻射ノイズの影響を抑えるシールド層を備えるとともに安価で安定して動作する入力装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 透明な基材1の両面に透明な導電膜2A,2Bを積層した後、レーザを用いて区画溝3を形成することにより、導電膜2A,2Bに複数の電極部4,4を同時に形成する。導電膜2A側には絶縁層6、配線パターン7、さらには保護層9を形成し、導電膜2B側には導通パターン8を形成することにより個々の電極部4を接続してグランドとし、さらに感度調整層10を所定の膜厚で形成することによりタッチセンサTSの製造が完成する。従来のように2枚の導電膜を有する基材どうしを貼り合わせる必要がないため、製造コストを安価にできる。導電膜2Aの電極部4と導電膜2Bの電極部4とを同一形状及び配列にできるため、安定して動作するタッチセンサTSとすることができる。
【解決手段】 透明な基材1の両面に透明な導電膜2A,2Bを積層した後、レーザを用いて区画溝3を形成することにより、導電膜2A,2Bに複数の電極部4,4を同時に形成する。導電膜2A側には絶縁層6、配線パターン7、さらには保護層9を形成し、導電膜2B側には導通パターン8を形成することにより個々の電極部4を接続してグランドとし、さらに感度調整層10を所定の膜厚で形成することによりタッチセンサTSの製造が完成する。従来のように2枚の導電膜を有する基材どうしを貼り合わせる必要がないため、製造コストを安価にできる。導電膜2Aの電極部4と導電膜2Bの電極部4とを同一形状及び配列にできるため、安定して動作するタッチセンサTSとすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指などの操作体が接触あるいは接近したこと平面電極を用いて検出する静電式の入力装置の製造方法に係わり、特に、機器内部から発生する輻射ノイズの影響を押さえるシールド層を有する入力装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下に示す特許文献には透明な容量検出型のセンサに関する発明が開示されている。例えば特許文献1の図6に示すように、センサは透明な絶縁体の表面に積層された透明なX導体トレースと裏面に積層されたY導体トレースとを有して構成されている。さらに、センサの下層側には均一層からなる透明な導体が設けられている。このセンサでは前記導体を接地することにより、下部側の位置に設けられた電気回路(例えば、表示装置など)から生じる電気ノイズ源から前記センサを隔離できるようになっている。
【特許文献1】特表2003−511799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に電子機器では電圧や電流を変化させて信号を伝送する。電圧や電流を変化させた場合、ラインからの電磁波(輻射ノイズ)が発生する。この輻射ノイズが強いと近くのセンサに悪影響を与えるため、センサの精度を低下させる。したがって、センサと電気回路との間に接地された透明な導体からなるシールド層を配置することは、輻射ノイズの影響がセンサに及ばないようにするための手段としては有効である。
【0004】
しかし、特許文献1に示すセンサは、前記X、Yの導体トレースがそれぞれ別個に用意された透明な基板の上に形成した後、間に絶縁体を介在させた状態で両基板を両側から貼り合わせることにより製造されるため、製造コストの高騰を抑え難いという問題がある。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、輻射ノイズの影響を抑えるシールド層を備える安価な静電式の入力装置及びその製造方法を提供することを目的としている。
【0006】
また本発明はXY型とは異なる平面電極を用いた静電式の入力装置においては、平面電極と対向配置されたシールド電極自体の電位がふら付くと、検出値が不安定になりやすいという問題もある。
【0007】
本発明は、平面電極を用いた静電式の入力装置において、安定して動作する入力装置及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、操作体との間での静電容量変化を検出するセンサ部を有する入力装置において、
基材の表裏両面に導電膜が夫々設けられ、
前記基材の表面には、前記導電膜が区画溝によって所定形状に分離されることにより前記センサ部を構成する複数の電極部が配列されており、
前記基板の裏面には、前記表面に形成された前記複数の電極部を重ねたときに、同一の形状及び配列で重なり合う複数の電極部が設けられるとともに、前記裏面に設けられた個々の電極部どうしが導通接続されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の入力装置では、基材の表面に配置される電極部と基材の裏面に配置される電極部とを同一形状、同一配列とすることができる。このため、各電極部によって形成される各センサ部の静電容量Cが一定以上とすることができ、安定性の良いタッチセンサとすることができる。
【0010】
また本発明は、操作体との間での静電容量変化を検出するセンサ部を有する入力装置の製造方法において、
(a) 基材の両面に導電膜を形成する工程、
(b) レーザ光を前記導電膜に向けて照射して区画溝を形成し、複数の所定形状の区画からなる前記センサ部を構成する電極部と配線導電膜を、少なくとも一方の導電膜に形成する工程、
(c) 前記一方の導電膜に形成された一部の前記配線導電膜上に絶縁層を形成する工程、
(d) 絶縁層上に、前記個々の電極部の夫々に対して電気的に接続される配線パターンを形成する工程、
(e) 他方の導電膜に、前記区画溝により分離された個々の電極部間を導通接続する導通パターンを形成する工程、
を有することを特徴とするものである。
【0011】
本発明では、製造工程の一部を省略化ないしは簡略化することができるため、製造コストの高騰を抑えることができる。
【0012】
上記においては、
(f) 前記(e)工程の後に、前記一方の導電膜を透明な絶縁層で覆う工程、
(g) 前記他方の導電膜を透明な絶縁層で覆う工程、
を有するものものが好ましい。
【0013】
上記において、例えば、
前記(c)の工程の後に前記(e)の工程が行われ、その後に前記(d)の工程が行われるものとすることができる。
【0014】
あるいは、前記(b)の工程の後に前記(e)の工程が行われ、その後に前記(c)の工程、前記(d)の工程が行われるものとすることもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、誤動作が少なく、安定して動作する静電式の入力装置とすることができる。
【0016】
また本発明では、製造に要する時間を短縮化することができるとともに、製造工程を簡略化することができるため、製造コストの高騰を抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明の実施の形態としてのタッチセンサ(平面電極を用いた静電式の入力装置)を示す平面図であり、図1Aは表面を示す平面図、図1Bは裏面を示す背面図、図2は第1の実施の形態としての入力装置の一部を拡大して示す部分断面図である。なお、各図におけるX方向は横方向、Y方向は縦方向、Z方向は膜厚方向(Z)を示し、各方向は残り2つの方向に対し直交関係にある。前記膜厚方向(Z)のうち、Z1方向は指やペンなどの操作体が位置する上方を示しており、Z2方向は液晶表示装置20などが配置される下方を示している。
【0018】
本実施形態におけるタッチセンサ(平面電極を用いた静電式の入力装置)TSは、液晶などの表示装置の上に積層された状態で、例えば携帯電話機、PDAなどからなる電子機器に搭載される。タッチセンサは、人の指やペンなどの操作体が指し示した前記表示装置上の座標位置を検出し、この入力情報を電子機器内の制御部に与える機能を有するものである。
【0019】
図1A、図1Bおよび図2に示すように、本実施形態におけるタッチセンサTSは、基材1、導電膜2A,2B、絶縁層6、配線パターン7、さらにはフレキシブルケーブル12などを有して構成される。
【0020】
基材1は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)など透明性および絶縁性を有するシート状の部材で形成される。また基材1は可撓性であることが好ましい。前記基材1が可撓性を有する場合には、タッチセンサTSを曲面の筐体に取り付けることができる等、取り付けの自由度が向上させる上で好適である。
【0021】
前記導電膜2Aは透明な基材1の上面に対し、例えばITOなどからなる透明な薄い金属膜として形成されている。前記導電膜2Aには、例えば図1Aに示すように、縦方向及び横方向を長手方向とする複数の区画溝3と、前記複数の区画溝3により分離され且つマトリックス状に配列された複数の電極部4(個別に、4a〜4oで示す)と、前記電極部4a〜4o以外の部分で且つ隣り合う2以上の区画溝3の間に形成された配線導電膜5などが設けられている。個々の電極部a〜4oは、所定の面積を有する略長方形からなる透明電極で形成され、それぞれセンサ部として機能している。なお、各電極部4a〜4oはある程度の面積を有していればよく、電極部4a〜4oがすべて同じ形状および同じ面積で構成されていなくてもよい。
【0022】
X1方向の端部およびX2方向の端部では、隣り合う電極部4どうしの間、すなわち区画溝3や配線導電膜5の上部に絶縁層6が部分的に積層されている。そして、この絶縁層6の上には複数の配線パターン7が形成されている。個々の配線パターン7の一端7aは前記電極部4a〜4oのいずれかに夫々接続されており、他端は基材1に接続されたフレキシブルケーブル12を介してタッチセンサTSの外部に引き出されている。そして、これら導電膜2A、絶縁層6および配線パターン7の上、すなわち最上層は透明レジスト材などからなる保護層9で覆われている。
【0023】
この実施の形態では、基材1の下面側には上記導電膜2A同様の構成からなる導電膜2Bが設けられている。すなわち導電膜2BはITOなど透明な薄い金属膜で形成されている。前記導電膜2Bには、上記同様の区画溝3、電極部4および配線導電膜5が形成されている。
【0024】
ただし、図1Bに示すように、基材1の裏面側の4つの周辺部には、導通パターン8が枠状に積層されている。導通パターン8は、前記区画溝3によって分離された各電極部4および各配線導電膜5の間を互いに導通接続しており、導電膜2B全体が等しい電位に設定されている。
【0025】
本実施の形態において、導電膜2BはグランドGNDを構成しており、液晶表示装置20と導電膜2A側の個々の電極部4a〜4oとの間に介在している。このため,導電膜2Bは液晶表示装置20などからの輻射ノイズの影響がセンサ部に与える影響を小さくするシールド層としての機能を有する。なお、前記導電膜2Bは前記区画溝3を有しない構成、すなわち前記基材1の下面を一枚の薄い金属膜(いわゆる「べた膜」)で覆われる構成であってよい。
【0026】
タッチセンサTSでは、導電膜2Aを形成する個々の各電極部4a〜4oと前記グランドGNDを形成する導電膜2Bとの間に所定の電圧が印加される。このとき、導電膜2A側の各電極部4a〜4oと導電膜2B側のグランドGNDとの間に静電容量Cが夫々形成される。
【0027】
操作体が、前記保護層9の表面のいずれかの位置に接すると、操作体と対向するいずれかの導電膜2A側の電極部4と導電膜2B側のグランドGNDとの間に形成された静電容量Cの容量が変化する。このため、図示しない検出回路を用いて前記静電容量Cの変化を検出することにより、前記操作体の位置(XY平面上の位置)を求めることが可能となっている。
【0028】
ところで、この種のタッチセンサTSでは、操作者がタッチセンサTSを備えた電子機器を把持すると、指などの操作体はタッチセンサTSの裏側にも接する。このとき、タッチセンサTSの裏側に位置する操作体と基材1の裏側に位置する導電膜2Bとの間の距離が近いと、操作体と導電膜2Bとの間に不要な静電結合が形成され、前記導電膜2Bの電位(グランドGNDの電位)がふら付きやすくなる。このため、場合によってはタッチセンサTSの検出精度が低下する可能性がある。よって、グランドGNDを構成する導電膜2Bと操作体が触れるタッチセンサTSの裏面との間の距離は離れていること(厚いこと)が好ましい。
【0029】
そこで、本願発明では前記導電膜2Bの表面に、透明レジスト材からなる感度調整層10を設けた構成としている。これにより、操作者がタッチセンサTSを把持したときに、操作体とグランドGNDを構成する導電膜2Bとの間に静電結合が形成され難くなり、前記導電膜2Bの電位を安定させることが可能となる。よって、タッチセンサTSの検出精度を高めることが可能となる。
【0030】
次に、タッチセンサの製造方法について説明する。
図3Aないし図3Gは本発明の実施の形態としての第1の製造方法を工程別に示すタッチセンサの部分断面図である。
【0031】
図3Aに示すように、第1の工程では、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)などからなる基材1を用意し、前記基材1の表裏両面に導電膜2A,2Bを形成する。この導電膜2A,2BはITO(酸化インジウムスズ、Indium TinOxide)である。基材1への導電膜2A,2Bの成膜は、例えば真空蒸着法により酸素雰囲気中でITOを蒸着し、その後、大気中で加熱後酸化する方法でITOフィルムを生成する。または放電ガスとしてのArガス中に、若干のガスを混合してDCグロー放電を起こし、生成しAr+カチオンによるITOターゲットのスパッタリングにより、ITO薄膜を基材1に形成する(スパッタ法)。あるいは、圧力勾配型アーク放電ガンを用いて、ITOの蒸発と蒸気の活性化を同時に行うイオンプレーティング法を用いるものであってもよい。なお、市販されている透明導電性フィルムを購入するものであってもよい。
【0032】
図3Bに示すように、第2の工程では前記導電膜2A,2Bに複数の区画溝3を図示しないレーザ装置を用いて形成する。レーザ装置からのレーザ光は、基材1を貫通するように一方の面から他方の面に向けて射出される。本実施の形態では、基材1の上方の位置から、Z1側の前記導電膜2Aに向けて出射される。レーザ光は導電膜2Aを切断した後、基材1を膜厚(Z)方向に通り抜けて裏面に設けられた導電膜2Bを切断する。よって、レーザ光の向きを、前記導電膜2A上を横方向及び縦方向に予めプログラミングされた所定の形状に沿って移動させることにより、図1に示すような複数の区画溝3、電極部4(4a〜4o)および配線導電膜5を表裏両面に同時に形成することができる。すなわち、基材1の表面側の前記導電膜2Aに形成された複数の前記区画溝3、電極部4および配線導電膜5と、基材2の裏面側の前記導電膜2Bに形成された複数の前記区画溝3、電極部4および配線導電膜5とは同一形状および同一配列であり、両導電膜2A,2Bに形成された形状は板厚方向において互いに重なり合う。このように、本願発明では、膜厚(Z)方向において重なり合う個々の電極部4が互いに同じ形状および同じ配列であるため、導電膜2Aと導電膜2Bとの間に形成される個々の静電容量Cのすべてを一定値以上に設定することができる。よって、安定的に動作するタッチセンサTSとすることができる。
【0033】
第3の工程では、図3Cに示すように前記導電膜2A上に絶縁レジスト材などをスクリーン印刷等することにより絶縁層6を形成する。なお、本実施の形態では前記絶縁層6は基材1の周囲の各辺に沿って印刷されている。
【0034】
第4の工程では、図3Dに示すように前記絶縁層6の上に配線パターン7がAgインクなどを用いて形成される。このとき、配線パターン7の一端7aは電極部4a〜4oのいずれかに接続される。また配線パターン7の他端は前記絶縁層6の上を引き回され、基材1に設けられたフレキシブルケーブル12とのコネクタ13に接続される。
【0035】
第5の工程では、図3Eに示すように裏面側の前記導電膜2B上にAgインクなどが印刷されて、グランドGND用の導通パターン8が形成される。これにより、前記区画溝3によって分離された複数の電極部4a〜4oおよび配線導電膜5が導通接続される。すなわち、前記導電膜2B全体が電気的に接続され、グランドGNDに設定することが可能となる。
【0036】
タッチセンサTSの製造は、上記第1ないし第5の工程により動作可能な程度の製造は完了する。ただし、タッチセンサTSの表面には配線パターン7が露出されたままであり、裏面にはグランドGND用の導通パターン8が露出されたままである。この状態では、配線パターン間の短絡事故やゴミなどが付着などの問題が起こり易く、品質低下の原因を招く可能性がある。そこで、以下の工程を続けて行う。
【0037】
第6の工程では、図3Fに示すように最上層に絶縁性を有する透明レジスト材が印刷されて保護層9が形成される。
【0038】
そして、第7の工程では、図3Gに示すように最下層に絶縁性を有する透明レジスト材が所定の膜厚寸法で印刷されて感度調整層10が形成され、タッチセンサTSが完成する。前記感度調整層10を所定の膜厚で形成することにより、タッチセンサTSを有する電子機器の背面に位置する操作体とグランドGND用の導通パターン8との間の距離を、導通パターン8の電位がふら付かない程度に設定することができる。これにより、タッチセンサTSの誤動作が少なく検出精度を高めることが可能となる。
【0039】
以上のように、本願発明の第1の製造方法では、誤動作が少なく且つ高い検出精度を有するタッチセンサを効率良く製造することができる。
【0040】
すなわち、従来は、1番目の工程で第1の基材の一方の面に導電膜を形成し、2番目の工程で第2の基材に導電膜を形成し、3番目の工程では第1の基材と第2の基材とを張り合わせ、4番目の工程で第1の基材の導電膜にエッチング等により区画溝3、各電極部4a〜4oおよび配線導電膜5などを形成するという工程を経ることが必要であった。
【0041】
しかし、本願発明では、第1の工程中において前記1番目と3番目の工程を同時に行い、第2の工程ではレーザを用いることにより、一度の作業で導電膜2Aと導電膜2Bの双方に区画溝3、各電極部4a〜4oおよび配線導電膜5などを同時に形成することが可能である。このため、本願発明の製造方法では、製造工程を大幅に省略化ないしは簡略化することができる。よって、本願発明では製造に要する時間を短縮化および製造コストを低廉化に寄与することが可能となる。
【0042】
上記実施の形態に示す第1の製造方法では、絶縁層6上に配線パターン7を形成し(第4の工程、図3D)、次に導電膜2B上に導通パターン8を形成する(第5の工程、図3E)という順番で説明したが、第4の工程と第5の工程とは互いに入れ替えてもよい。すなわち、先に導電膜2B上に導通パターン8を形成(第5の工程)し、その後に絶縁層6上に配線パターン7を形成する(第4の工程)ようにしてもよい。
【0043】
あるいは、導電膜2A,2Bを形成した(第2の工程)後に導電膜2B上に導通パターン8を形成する工程(第5の工程)を行い、次に導電膜2A上に絶縁層6を形成し(第3の工程)、続いて絶縁層6上に配線パターン7を形成する工程(第4の工程)を行うという順番であってもよい。
【0044】
図4は第2の実施の形態としての入力装置(タッチセンサ)の一部を拡大して示す部分断面図、図5Aないし図5Fは、本発明の第2の実施の形態としての第2の製造方法を工程別に示すタッチセンサの部分断面図である。なお、以下においては、第1の実施の形態で示した同一の部材については、同一の符号を付して説明する。
【0045】
第2の実施の形態に示すタッチセンサTS2(図4参照)が、上記第1の実施の形態に示すタッチセンサTS(図2参照)と異なる点は、前記タッチセンサTS2では主に前記タッチセンサTSが有していた絶縁層6を有さない構成とした点にある。なお、第2の実施の形態に示すタッチセンサTS2のその他の構成は、上記第1の実施の形態に示すタッチセンサTS同様である。
【0046】
次に、図5Aないし図5Fを用いて、第2の実施の形態に示すタッチセンサTS2の製造方法(第2の製造方法)について説明する。
【0047】
図5Aに示すように、第1の工程では、上記第1の実施の形態同様に例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)などからなる基材1が用意され、前記基材1の表裏両面にITOからなる導電膜2A,2Bを形成する。
【0048】
図5Bに示すように、第2の工程では上記第1の実施の形態同様に図示しないレーザ装置を用いて前記導電膜2A,2Bに複数の区画溝3を形成する。これにより、基材1の表裏両面に複数の電極部4(4a〜4o)および配線導電膜5が同一形状および同一配列で形成される。ただし、第2の実施の形態では、前記配線導電膜5のうち、図5Bに破線で示す複数の電極部4(4a〜4o)の両端に位置する配線導電膜5A,5Aは除去されて基板1が露出される点が上記第1に実施の形態と相違している。
【0049】
第3の工程では、図5Cに示すように基材1の表面に配線パターン7がAgインクなどを用いて印刷形成される。このとき、配線パターン7の一端7aは電極部4a〜4oのいずれかに接続される。また配線パターン7の他端は前記基材1の表面上を引き回され、上記第1の実施の形態同様に基材1に設けられるフレキシブルケーブル12とのコネクタ13に接続される(図示せず)。
【0050】
第4の工程では、図5Dに示すように基材1の裏面上にAgインクなどが印刷されて、グランドGND用の導通パターン8が形成される。これにより、基材1の裏面側において前記区画溝3によって分離された複数の電極部4a〜4oおよび配線導電膜5が導通接続される。すなわち、前記導電膜2B全体が電気的に接続され、グランドGNDに設定される。
【0051】
そして、第1の実施の形態同様に、第5の工程では図5Eに示すように最上層に絶縁性を有する透明レジスト材が印刷されて保護層9が形成され、続く第6の工程では図5Fに示すように最下層に絶縁性を有する透明レジスト材が所定の膜厚寸法で印刷されて感度調整層10が形成され、タッチセンサTSが完成する。
【0052】
前記感度調整層10を所定の膜厚で形成することにより、タッチセンサTSを有する電子機器の背面に位置する操作体とグランドGND用の導通パターン8との間の距離を、導通パターン8の電位がふら付かない程度に設定することができる。これにより、タッチセンサTSの誤動作が少なく検出精度を高めることが可能となる。
【0053】
第2の実施の形態に示すタッチセンサTS2では、上記第1の実施の形態に示すタッチセンサTSに比較して、前記絶縁層6を有しない分だけ厚さ寸法を薄くすることが可能である。さらには、第2の実施の形態に示す製造方法では、上記第1の実施の形態に比較して絶縁層6を形成する工程を不要とすることが可能であり、この点で製造コストを安価とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1A】本発明の実施の形態としてのタッチセンサの表面を示す平面図、
【図1B】本発明の実施の形態としてのタッチセンサの裏面を示す背面図、
【図2】第1の実施の形態としてのタッチセンサの一部を拡大して示す部分断面図、
【図3A】本発明の実施の形態としての第1の製造方法の一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【図3B】図3Aに続く一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【図3C】図3Bに続く一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【図3D】図3Cに続く一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【図3E】図3Dに続く一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【図3F】図3Eに続く一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【図3G】図3Fに続く一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【図4】第2の実施の形態としてのタッチセンサの一部を拡大して示す部分断面図、
【図5A】本発明の実施の形態としての第2の製造方法の一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【図5B】図5Aに続く一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【図5C】図5Bに続く一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【図5D】図5Cに続く一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【図5E】図5Dに続く一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【図5F】図5Eに続く一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【符号の説明】
【0055】
1 基材
2A,2B 導電膜
3 区画溝3
4,4a〜4o 電極部
5 配線導電膜
6 絶縁層
7 配線パターン
8 導通パターン
9 保護層
10 感度調整層
12 フレキシブルケーブル
20 液晶表示装置
TS タッチセンサ(入力装置)
【技術分野】
【0001】
本発明は、指などの操作体が接触あるいは接近したこと平面電極を用いて検出する静電式の入力装置の製造方法に係わり、特に、機器内部から発生する輻射ノイズの影響を押さえるシールド層を有する入力装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下に示す特許文献には透明な容量検出型のセンサに関する発明が開示されている。例えば特許文献1の図6に示すように、センサは透明な絶縁体の表面に積層された透明なX導体トレースと裏面に積層されたY導体トレースとを有して構成されている。さらに、センサの下層側には均一層からなる透明な導体が設けられている。このセンサでは前記導体を接地することにより、下部側の位置に設けられた電気回路(例えば、表示装置など)から生じる電気ノイズ源から前記センサを隔離できるようになっている。
【特許文献1】特表2003−511799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に電子機器では電圧や電流を変化させて信号を伝送する。電圧や電流を変化させた場合、ラインからの電磁波(輻射ノイズ)が発生する。この輻射ノイズが強いと近くのセンサに悪影響を与えるため、センサの精度を低下させる。したがって、センサと電気回路との間に接地された透明な導体からなるシールド層を配置することは、輻射ノイズの影響がセンサに及ばないようにするための手段としては有効である。
【0004】
しかし、特許文献1に示すセンサは、前記X、Yの導体トレースがそれぞれ別個に用意された透明な基板の上に形成した後、間に絶縁体を介在させた状態で両基板を両側から貼り合わせることにより製造されるため、製造コストの高騰を抑え難いという問題がある。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、輻射ノイズの影響を抑えるシールド層を備える安価な静電式の入力装置及びその製造方法を提供することを目的としている。
【0006】
また本発明はXY型とは異なる平面電極を用いた静電式の入力装置においては、平面電極と対向配置されたシールド電極自体の電位がふら付くと、検出値が不安定になりやすいという問題もある。
【0007】
本発明は、平面電極を用いた静電式の入力装置において、安定して動作する入力装置及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、操作体との間での静電容量変化を検出するセンサ部を有する入力装置において、
基材の表裏両面に導電膜が夫々設けられ、
前記基材の表面には、前記導電膜が区画溝によって所定形状に分離されることにより前記センサ部を構成する複数の電極部が配列されており、
前記基板の裏面には、前記表面に形成された前記複数の電極部を重ねたときに、同一の形状及び配列で重なり合う複数の電極部が設けられるとともに、前記裏面に設けられた個々の電極部どうしが導通接続されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の入力装置では、基材の表面に配置される電極部と基材の裏面に配置される電極部とを同一形状、同一配列とすることができる。このため、各電極部によって形成される各センサ部の静電容量Cが一定以上とすることができ、安定性の良いタッチセンサとすることができる。
【0010】
また本発明は、操作体との間での静電容量変化を検出するセンサ部を有する入力装置の製造方法において、
(a) 基材の両面に導電膜を形成する工程、
(b) レーザ光を前記導電膜に向けて照射して区画溝を形成し、複数の所定形状の区画からなる前記センサ部を構成する電極部と配線導電膜を、少なくとも一方の導電膜に形成する工程、
(c) 前記一方の導電膜に形成された一部の前記配線導電膜上に絶縁層を形成する工程、
(d) 絶縁層上に、前記個々の電極部の夫々に対して電気的に接続される配線パターンを形成する工程、
(e) 他方の導電膜に、前記区画溝により分離された個々の電極部間を導通接続する導通パターンを形成する工程、
を有することを特徴とするものである。
【0011】
本発明では、製造工程の一部を省略化ないしは簡略化することができるため、製造コストの高騰を抑えることができる。
【0012】
上記においては、
(f) 前記(e)工程の後に、前記一方の導電膜を透明な絶縁層で覆う工程、
(g) 前記他方の導電膜を透明な絶縁層で覆う工程、
を有するものものが好ましい。
【0013】
上記において、例えば、
前記(c)の工程の後に前記(e)の工程が行われ、その後に前記(d)の工程が行われるものとすることができる。
【0014】
あるいは、前記(b)の工程の後に前記(e)の工程が行われ、その後に前記(c)の工程、前記(d)の工程が行われるものとすることもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、誤動作が少なく、安定して動作する静電式の入力装置とすることができる。
【0016】
また本発明では、製造に要する時間を短縮化することができるとともに、製造工程を簡略化することができるため、製造コストの高騰を抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明の実施の形態としてのタッチセンサ(平面電極を用いた静電式の入力装置)を示す平面図であり、図1Aは表面を示す平面図、図1Bは裏面を示す背面図、図2は第1の実施の形態としての入力装置の一部を拡大して示す部分断面図である。なお、各図におけるX方向は横方向、Y方向は縦方向、Z方向は膜厚方向(Z)を示し、各方向は残り2つの方向に対し直交関係にある。前記膜厚方向(Z)のうち、Z1方向は指やペンなどの操作体が位置する上方を示しており、Z2方向は液晶表示装置20などが配置される下方を示している。
【0018】
本実施形態におけるタッチセンサ(平面電極を用いた静電式の入力装置)TSは、液晶などの表示装置の上に積層された状態で、例えば携帯電話機、PDAなどからなる電子機器に搭載される。タッチセンサは、人の指やペンなどの操作体が指し示した前記表示装置上の座標位置を検出し、この入力情報を電子機器内の制御部に与える機能を有するものである。
【0019】
図1A、図1Bおよび図2に示すように、本実施形態におけるタッチセンサTSは、基材1、導電膜2A,2B、絶縁層6、配線パターン7、さらにはフレキシブルケーブル12などを有して構成される。
【0020】
基材1は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)など透明性および絶縁性を有するシート状の部材で形成される。また基材1は可撓性であることが好ましい。前記基材1が可撓性を有する場合には、タッチセンサTSを曲面の筐体に取り付けることができる等、取り付けの自由度が向上させる上で好適である。
【0021】
前記導電膜2Aは透明な基材1の上面に対し、例えばITOなどからなる透明な薄い金属膜として形成されている。前記導電膜2Aには、例えば図1Aに示すように、縦方向及び横方向を長手方向とする複数の区画溝3と、前記複数の区画溝3により分離され且つマトリックス状に配列された複数の電極部4(個別に、4a〜4oで示す)と、前記電極部4a〜4o以外の部分で且つ隣り合う2以上の区画溝3の間に形成された配線導電膜5などが設けられている。個々の電極部a〜4oは、所定の面積を有する略長方形からなる透明電極で形成され、それぞれセンサ部として機能している。なお、各電極部4a〜4oはある程度の面積を有していればよく、電極部4a〜4oがすべて同じ形状および同じ面積で構成されていなくてもよい。
【0022】
X1方向の端部およびX2方向の端部では、隣り合う電極部4どうしの間、すなわち区画溝3や配線導電膜5の上部に絶縁層6が部分的に積層されている。そして、この絶縁層6の上には複数の配線パターン7が形成されている。個々の配線パターン7の一端7aは前記電極部4a〜4oのいずれかに夫々接続されており、他端は基材1に接続されたフレキシブルケーブル12を介してタッチセンサTSの外部に引き出されている。そして、これら導電膜2A、絶縁層6および配線パターン7の上、すなわち最上層は透明レジスト材などからなる保護層9で覆われている。
【0023】
この実施の形態では、基材1の下面側には上記導電膜2A同様の構成からなる導電膜2Bが設けられている。すなわち導電膜2BはITOなど透明な薄い金属膜で形成されている。前記導電膜2Bには、上記同様の区画溝3、電極部4および配線導電膜5が形成されている。
【0024】
ただし、図1Bに示すように、基材1の裏面側の4つの周辺部には、導通パターン8が枠状に積層されている。導通パターン8は、前記区画溝3によって分離された各電極部4および各配線導電膜5の間を互いに導通接続しており、導電膜2B全体が等しい電位に設定されている。
【0025】
本実施の形態において、導電膜2BはグランドGNDを構成しており、液晶表示装置20と導電膜2A側の個々の電極部4a〜4oとの間に介在している。このため,導電膜2Bは液晶表示装置20などからの輻射ノイズの影響がセンサ部に与える影響を小さくするシールド層としての機能を有する。なお、前記導電膜2Bは前記区画溝3を有しない構成、すなわち前記基材1の下面を一枚の薄い金属膜(いわゆる「べた膜」)で覆われる構成であってよい。
【0026】
タッチセンサTSでは、導電膜2Aを形成する個々の各電極部4a〜4oと前記グランドGNDを形成する導電膜2Bとの間に所定の電圧が印加される。このとき、導電膜2A側の各電極部4a〜4oと導電膜2B側のグランドGNDとの間に静電容量Cが夫々形成される。
【0027】
操作体が、前記保護層9の表面のいずれかの位置に接すると、操作体と対向するいずれかの導電膜2A側の電極部4と導電膜2B側のグランドGNDとの間に形成された静電容量Cの容量が変化する。このため、図示しない検出回路を用いて前記静電容量Cの変化を検出することにより、前記操作体の位置(XY平面上の位置)を求めることが可能となっている。
【0028】
ところで、この種のタッチセンサTSでは、操作者がタッチセンサTSを備えた電子機器を把持すると、指などの操作体はタッチセンサTSの裏側にも接する。このとき、タッチセンサTSの裏側に位置する操作体と基材1の裏側に位置する導電膜2Bとの間の距離が近いと、操作体と導電膜2Bとの間に不要な静電結合が形成され、前記導電膜2Bの電位(グランドGNDの電位)がふら付きやすくなる。このため、場合によってはタッチセンサTSの検出精度が低下する可能性がある。よって、グランドGNDを構成する導電膜2Bと操作体が触れるタッチセンサTSの裏面との間の距離は離れていること(厚いこと)が好ましい。
【0029】
そこで、本願発明では前記導電膜2Bの表面に、透明レジスト材からなる感度調整層10を設けた構成としている。これにより、操作者がタッチセンサTSを把持したときに、操作体とグランドGNDを構成する導電膜2Bとの間に静電結合が形成され難くなり、前記導電膜2Bの電位を安定させることが可能となる。よって、タッチセンサTSの検出精度を高めることが可能となる。
【0030】
次に、タッチセンサの製造方法について説明する。
図3Aないし図3Gは本発明の実施の形態としての第1の製造方法を工程別に示すタッチセンサの部分断面図である。
【0031】
図3Aに示すように、第1の工程では、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)などからなる基材1を用意し、前記基材1の表裏両面に導電膜2A,2Bを形成する。この導電膜2A,2BはITO(酸化インジウムスズ、Indium TinOxide)である。基材1への導電膜2A,2Bの成膜は、例えば真空蒸着法により酸素雰囲気中でITOを蒸着し、その後、大気中で加熱後酸化する方法でITOフィルムを生成する。または放電ガスとしてのArガス中に、若干のガスを混合してDCグロー放電を起こし、生成しAr+カチオンによるITOターゲットのスパッタリングにより、ITO薄膜を基材1に形成する(スパッタ法)。あるいは、圧力勾配型アーク放電ガンを用いて、ITOの蒸発と蒸気の活性化を同時に行うイオンプレーティング法を用いるものであってもよい。なお、市販されている透明導電性フィルムを購入するものであってもよい。
【0032】
図3Bに示すように、第2の工程では前記導電膜2A,2Bに複数の区画溝3を図示しないレーザ装置を用いて形成する。レーザ装置からのレーザ光は、基材1を貫通するように一方の面から他方の面に向けて射出される。本実施の形態では、基材1の上方の位置から、Z1側の前記導電膜2Aに向けて出射される。レーザ光は導電膜2Aを切断した後、基材1を膜厚(Z)方向に通り抜けて裏面に設けられた導電膜2Bを切断する。よって、レーザ光の向きを、前記導電膜2A上を横方向及び縦方向に予めプログラミングされた所定の形状に沿って移動させることにより、図1に示すような複数の区画溝3、電極部4(4a〜4o)および配線導電膜5を表裏両面に同時に形成することができる。すなわち、基材1の表面側の前記導電膜2Aに形成された複数の前記区画溝3、電極部4および配線導電膜5と、基材2の裏面側の前記導電膜2Bに形成された複数の前記区画溝3、電極部4および配線導電膜5とは同一形状および同一配列であり、両導電膜2A,2Bに形成された形状は板厚方向において互いに重なり合う。このように、本願発明では、膜厚(Z)方向において重なり合う個々の電極部4が互いに同じ形状および同じ配列であるため、導電膜2Aと導電膜2Bとの間に形成される個々の静電容量Cのすべてを一定値以上に設定することができる。よって、安定的に動作するタッチセンサTSとすることができる。
【0033】
第3の工程では、図3Cに示すように前記導電膜2A上に絶縁レジスト材などをスクリーン印刷等することにより絶縁層6を形成する。なお、本実施の形態では前記絶縁層6は基材1の周囲の各辺に沿って印刷されている。
【0034】
第4の工程では、図3Dに示すように前記絶縁層6の上に配線パターン7がAgインクなどを用いて形成される。このとき、配線パターン7の一端7aは電極部4a〜4oのいずれかに接続される。また配線パターン7の他端は前記絶縁層6の上を引き回され、基材1に設けられたフレキシブルケーブル12とのコネクタ13に接続される。
【0035】
第5の工程では、図3Eに示すように裏面側の前記導電膜2B上にAgインクなどが印刷されて、グランドGND用の導通パターン8が形成される。これにより、前記区画溝3によって分離された複数の電極部4a〜4oおよび配線導電膜5が導通接続される。すなわち、前記導電膜2B全体が電気的に接続され、グランドGNDに設定することが可能となる。
【0036】
タッチセンサTSの製造は、上記第1ないし第5の工程により動作可能な程度の製造は完了する。ただし、タッチセンサTSの表面には配線パターン7が露出されたままであり、裏面にはグランドGND用の導通パターン8が露出されたままである。この状態では、配線パターン間の短絡事故やゴミなどが付着などの問題が起こり易く、品質低下の原因を招く可能性がある。そこで、以下の工程を続けて行う。
【0037】
第6の工程では、図3Fに示すように最上層に絶縁性を有する透明レジスト材が印刷されて保護層9が形成される。
【0038】
そして、第7の工程では、図3Gに示すように最下層に絶縁性を有する透明レジスト材が所定の膜厚寸法で印刷されて感度調整層10が形成され、タッチセンサTSが完成する。前記感度調整層10を所定の膜厚で形成することにより、タッチセンサTSを有する電子機器の背面に位置する操作体とグランドGND用の導通パターン8との間の距離を、導通パターン8の電位がふら付かない程度に設定することができる。これにより、タッチセンサTSの誤動作が少なく検出精度を高めることが可能となる。
【0039】
以上のように、本願発明の第1の製造方法では、誤動作が少なく且つ高い検出精度を有するタッチセンサを効率良く製造することができる。
【0040】
すなわち、従来は、1番目の工程で第1の基材の一方の面に導電膜を形成し、2番目の工程で第2の基材に導電膜を形成し、3番目の工程では第1の基材と第2の基材とを張り合わせ、4番目の工程で第1の基材の導電膜にエッチング等により区画溝3、各電極部4a〜4oおよび配線導電膜5などを形成するという工程を経ることが必要であった。
【0041】
しかし、本願発明では、第1の工程中において前記1番目と3番目の工程を同時に行い、第2の工程ではレーザを用いることにより、一度の作業で導電膜2Aと導電膜2Bの双方に区画溝3、各電極部4a〜4oおよび配線導電膜5などを同時に形成することが可能である。このため、本願発明の製造方法では、製造工程を大幅に省略化ないしは簡略化することができる。よって、本願発明では製造に要する時間を短縮化および製造コストを低廉化に寄与することが可能となる。
【0042】
上記実施の形態に示す第1の製造方法では、絶縁層6上に配線パターン7を形成し(第4の工程、図3D)、次に導電膜2B上に導通パターン8を形成する(第5の工程、図3E)という順番で説明したが、第4の工程と第5の工程とは互いに入れ替えてもよい。すなわち、先に導電膜2B上に導通パターン8を形成(第5の工程)し、その後に絶縁層6上に配線パターン7を形成する(第4の工程)ようにしてもよい。
【0043】
あるいは、導電膜2A,2Bを形成した(第2の工程)後に導電膜2B上に導通パターン8を形成する工程(第5の工程)を行い、次に導電膜2A上に絶縁層6を形成し(第3の工程)、続いて絶縁層6上に配線パターン7を形成する工程(第4の工程)を行うという順番であってもよい。
【0044】
図4は第2の実施の形態としての入力装置(タッチセンサ)の一部を拡大して示す部分断面図、図5Aないし図5Fは、本発明の第2の実施の形態としての第2の製造方法を工程別に示すタッチセンサの部分断面図である。なお、以下においては、第1の実施の形態で示した同一の部材については、同一の符号を付して説明する。
【0045】
第2の実施の形態に示すタッチセンサTS2(図4参照)が、上記第1の実施の形態に示すタッチセンサTS(図2参照)と異なる点は、前記タッチセンサTS2では主に前記タッチセンサTSが有していた絶縁層6を有さない構成とした点にある。なお、第2の実施の形態に示すタッチセンサTS2のその他の構成は、上記第1の実施の形態に示すタッチセンサTS同様である。
【0046】
次に、図5Aないし図5Fを用いて、第2の実施の形態に示すタッチセンサTS2の製造方法(第2の製造方法)について説明する。
【0047】
図5Aに示すように、第1の工程では、上記第1の実施の形態同様に例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)などからなる基材1が用意され、前記基材1の表裏両面にITOからなる導電膜2A,2Bを形成する。
【0048】
図5Bに示すように、第2の工程では上記第1の実施の形態同様に図示しないレーザ装置を用いて前記導電膜2A,2Bに複数の区画溝3を形成する。これにより、基材1の表裏両面に複数の電極部4(4a〜4o)および配線導電膜5が同一形状および同一配列で形成される。ただし、第2の実施の形態では、前記配線導電膜5のうち、図5Bに破線で示す複数の電極部4(4a〜4o)の両端に位置する配線導電膜5A,5Aは除去されて基板1が露出される点が上記第1に実施の形態と相違している。
【0049】
第3の工程では、図5Cに示すように基材1の表面に配線パターン7がAgインクなどを用いて印刷形成される。このとき、配線パターン7の一端7aは電極部4a〜4oのいずれかに接続される。また配線パターン7の他端は前記基材1の表面上を引き回され、上記第1の実施の形態同様に基材1に設けられるフレキシブルケーブル12とのコネクタ13に接続される(図示せず)。
【0050】
第4の工程では、図5Dに示すように基材1の裏面上にAgインクなどが印刷されて、グランドGND用の導通パターン8が形成される。これにより、基材1の裏面側において前記区画溝3によって分離された複数の電極部4a〜4oおよび配線導電膜5が導通接続される。すなわち、前記導電膜2B全体が電気的に接続され、グランドGNDに設定される。
【0051】
そして、第1の実施の形態同様に、第5の工程では図5Eに示すように最上層に絶縁性を有する透明レジスト材が印刷されて保護層9が形成され、続く第6の工程では図5Fに示すように最下層に絶縁性を有する透明レジスト材が所定の膜厚寸法で印刷されて感度調整層10が形成され、タッチセンサTSが完成する。
【0052】
前記感度調整層10を所定の膜厚で形成することにより、タッチセンサTSを有する電子機器の背面に位置する操作体とグランドGND用の導通パターン8との間の距離を、導通パターン8の電位がふら付かない程度に設定することができる。これにより、タッチセンサTSの誤動作が少なく検出精度を高めることが可能となる。
【0053】
第2の実施の形態に示すタッチセンサTS2では、上記第1の実施の形態に示すタッチセンサTSに比較して、前記絶縁層6を有しない分だけ厚さ寸法を薄くすることが可能である。さらには、第2の実施の形態に示す製造方法では、上記第1の実施の形態に比較して絶縁層6を形成する工程を不要とすることが可能であり、この点で製造コストを安価とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1A】本発明の実施の形態としてのタッチセンサの表面を示す平面図、
【図1B】本発明の実施の形態としてのタッチセンサの裏面を示す背面図、
【図2】第1の実施の形態としてのタッチセンサの一部を拡大して示す部分断面図、
【図3A】本発明の実施の形態としての第1の製造方法の一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【図3B】図3Aに続く一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【図3C】図3Bに続く一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【図3D】図3Cに続く一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【図3E】図3Dに続く一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【図3F】図3Eに続く一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【図3G】図3Fに続く一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【図4】第2の実施の形態としてのタッチセンサの一部を拡大して示す部分断面図、
【図5A】本発明の実施の形態としての第2の製造方法の一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【図5B】図5Aに続く一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【図5C】図5Bに続く一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【図5D】図5Cに続く一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【図5E】図5Dに続く一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【図5F】図5Eに続く一工程を示すタッチセンサの部分断面図、
【符号の説明】
【0055】
1 基材
2A,2B 導電膜
3 区画溝3
4,4a〜4o 電極部
5 配線導電膜
6 絶縁層
7 配線パターン
8 導通パターン
9 保護層
10 感度調整層
12 フレキシブルケーブル
20 液晶表示装置
TS タッチセンサ(入力装置)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作体との間での静電容量変化を検出するセンサ部を有する入力装置において、
基材の表裏両面に導電膜が夫々設けられ、
前記基材の表面には、前記導電膜が区画溝によって所定形状に分離されることにより前記センサ部を構成する複数の電極部が配列されており、
前記基板の裏面には、前記表面に形成された前記複数の電極部を重ねたときに、同一の形状及び配列で重なり合う複数の電極部が設けられるとともに、前記裏面に設けられた個々の電極部どうしが導通接続されていることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
操作体との間での静電容量変化を検出するセンサ部を有する入力装置の製造方法において、
(a) 基材の両面に導電膜を形成する工程、
(b) レーザ光を前記導電膜に向けて照射して区画溝を形成し、複数の所定形状の区画からなる前記センサ部を構成する電極部と配線導電膜を、少なくとも一方の導電膜に形成する工程、
(c) 前記一方の導電膜に形成された一部の前記配線導電膜上に絶縁層を形成する工程、
(d) 絶縁層上に、前記個々の電極部の夫々に対して電気的に接続される配線パターンを形成する工程、
(e) 他方の導電膜に、前記区画溝により分離された個々の電極部間を導通接続する導通パターンを形成する工程、
を有することを特徴とする入力装置の製造方法。
【請求項3】
(f) 前記(e)工程の後に、前記一方の導電膜を透明な絶縁層で覆う工程、
(g) 前記他方の導電膜を透明な絶縁層で覆う工程、
を有する請求項2記載の入力装置の製造方法。
【請求項4】
前記(c)の工程の後に前記(e)の工程が行われ、その後に前記(d)の工程が行われる請求項2または3記載の入力装置の製造方法。
【請求項5】
前記(b)の工程の後に前記(e)の工程が行われ、その後に前記(c)の工程、前記(d)の工程が行われる請求項2または3記載の入力装置の製造方法。
【請求項1】
操作体との間での静電容量変化を検出するセンサ部を有する入力装置において、
基材の表裏両面に導電膜が夫々設けられ、
前記基材の表面には、前記導電膜が区画溝によって所定形状に分離されることにより前記センサ部を構成する複数の電極部が配列されており、
前記基板の裏面には、前記表面に形成された前記複数の電極部を重ねたときに、同一の形状及び配列で重なり合う複数の電極部が設けられるとともに、前記裏面に設けられた個々の電極部どうしが導通接続されていることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
操作体との間での静電容量変化を検出するセンサ部を有する入力装置の製造方法において、
(a) 基材の両面に導電膜を形成する工程、
(b) レーザ光を前記導電膜に向けて照射して区画溝を形成し、複数の所定形状の区画からなる前記センサ部を構成する電極部と配線導電膜を、少なくとも一方の導電膜に形成する工程、
(c) 前記一方の導電膜に形成された一部の前記配線導電膜上に絶縁層を形成する工程、
(d) 絶縁層上に、前記個々の電極部の夫々に対して電気的に接続される配線パターンを形成する工程、
(e) 他方の導電膜に、前記区画溝により分離された個々の電極部間を導通接続する導通パターンを形成する工程、
を有することを特徴とする入力装置の製造方法。
【請求項3】
(f) 前記(e)工程の後に、前記一方の導電膜を透明な絶縁層で覆う工程、
(g) 前記他方の導電膜を透明な絶縁層で覆う工程、
を有する請求項2記載の入力装置の製造方法。
【請求項4】
前記(c)の工程の後に前記(e)の工程が行われ、その後に前記(d)の工程が行われる請求項2または3記載の入力装置の製造方法。
【請求項5】
前記(b)の工程の後に前記(e)の工程が行われ、その後に前記(c)の工程、前記(d)の工程が行われる請求項2または3記載の入力装置の製造方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【公開番号】特開2008−140130(P2008−140130A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325611(P2006−325611)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
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