説明

入退室管理システム、入退室管理方法、および受付装置

【課題】来訪者カードが他の入退室管理システムと混用された場合でも高いセキュリティ性を得る。
【解決手段】来訪者カードで用いるカードIDごとに、当該カードIDを記録した来訪者カードの貸与状態と当該カードIDの運用可否とを来訪者情報記憶部55Aで記憶しておき、IDカード処理部56において、来訪者カード発行時には、来訪者情報記憶部55Aを参照して、貸与状態が未貸与を示すカードIDであって、かつ運用可否が運用可能を示すカードIDを選択し、来訪者情報記憶部55Aのうち選択した当該カードIDの貸与状態を貸与中に設定するとともに、未貸与中の来訪者カードのいずれかに当該カードIDを記録し、来訪者カード返却時には、来訪者情報記憶部55Aのうち返却された当該来訪者カードから読み出したカードIDの貸与状態を未貸与に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入退室技術に関し、特に来訪者用IDカードの発行処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
入退室管理システムでは、個別のカードIDを記録したIDカードを登録者に配布するとともに、これらカードIDごとに、当該IDカードの登録者に関する通行許可区分や個人情報を制御装置の入退室情報に登録しておき、施設のドアに併設されたカード端末でIDカードから取得したカードIDに基づいて、入退室情報を検索することにより入退室可否を判定するものとなっている(例えば、特許文献1など参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−323695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような入退室管理システムでは、一時的な来訪者に対して前述と同様な入退室管理を適用する場合、入退室管理システムに設けた受付装置により、貸与中の来訪者カードに記録していない未使用カードIDを任意に生成し、必要な通行許可区分とともに来訪者カードに記録して、来訪者に貸与する方法が考えられる。
【0005】
しかしながら、このような方法では、貸与中の来訪者カードに記録していない未使用カードIDを任意に生成するため、当該来訪者カードが他の入退室管理システムと混用される場合がある。例えば、同一構成の入退室管理システムを異なる建物に設置し、来訪者カードとして交通システムや決済システムで使用されているような汎用のIDカードを共用する場合、一方の入退室管理システムで発行した来訪者カードが、他方の入退室管理システムで使用される可能性がある。この際、カードIDと通行許可区分とが一致した場合には、他方の入退室管理システムで、本来、来訪者に対して禁止されている施設への入室が許可される場合もある。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、来訪者カードが他の入退室管理システムと混用された場合でも高いセキュリティ性が得られる入退室管理システム、入退室管理方法、および受付装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明にかかる入退室管理システムは、カードIDの書き換え可能な来訪者用のIDカードである複数の来訪者カードと、来訪者に貸与した来訪者カードから読み出したカードIDの正当性を含む入退室判定条件に基づいて、当該来訪者の施設への入退室可否を判定する入退室判定部とを備える入退室管理システムであって、来訪者カードで用いるカードIDごとに、当該カードIDを記録した来訪者カードの貸与状態と当該カードIDの運用可否とを記憶する来訪者情報記憶部と、来訪者カード発行時には、来訪者情報記憶部を参照して、貸与状態が未貸与を示すカードIDであって、かつ運用可否が運用可能を示すカードIDを選択し、来訪者情報記憶部のうち選択した当該カードIDの貸与状態を貸与中に設定するとともに、未貸与中の来訪者カードのいずれかに当該カードIDを記録し、来訪者カード返却時には、来訪者情報記憶部のうち返却された当該来訪者カードから読み出したカードIDの貸与状態を未貸与に設定するIDカード処理部とを備えている。
【0008】
この際、当該入退室管理システムで任意の来訪者カードの運用を開始する前に、当該来訪者カードから当該来訪者カードに予め記録されている初期カードIDを読み出し、来訪者情報記憶部のうち当該初期カードIDの運用可否を運用可能として登録する初期登録部をさらに設けてもよい。
【0009】
また、本発明にかかる入退室管理方法は、カードIDの書き換え可能な来訪者用のIDカードである複数の来訪者カードと、来訪者に貸与した来訪者カードから読み出したカードIDの正当性を含む入退室判定条件に基づいて、当該来訪者の施設への入退室可否を判定する入退室判定部とを備える入退室管理システムで用いる入退室管理方法であって、来訪者情報記憶部が、来訪者カードで用いるカードIDごとに、当該カードIDを記録した来訪者カードの貸与状態と当該カードIDの運用可否とを記憶するステップと、IDカード処理部が、来訪者カード発行時には、来訪者情報記憶部を参照し、貸与状態が未貸与を示すカードIDであって、かつ運用可能なカードIDを選択し、来訪者情報記憶部のうち選択した当該カードIDの貸与状態を貸与中に設定するとともに、未貸与中の来訪者カードのいずれかに当該カードIDを記録し、来訪者カード返却時には、来訪者情報記憶部のうち返却された当該来訪者カードから読み出したカードIDの貸与状態を未貸与に設定するステップとを備えている。
【0010】
この際、初期登録部が、当該入退室管理システムで任意の来訪者カードの運用を開始する前に、当該来訪者カードから当該来訪者カードに予め記録されている初期カードIDを読み出し、来訪者情報記憶部のうち当該初期カードIDの運用可否を運用可能として登録するステップをさらに設けてもよい。
【0011】
また、本発明にかかる受付装置は、カードIDの書き換え可能な来訪者用のIDカードである複数の来訪者カードと、来訪者に貸与した来訪者カードから読み出したカードIDの正当性を含む入退室判定条件に基づいて、当該来訪者の施設への入退室可否を判定する入退室判定部とを備える入退室管理システムで用いられ、来訪者カードの発行および返却を管理する受付装置であって、来訪者カードで用いるカードIDごとに、当該カードIDを記録した来訪者カードの貸与状態と当該カードIDの運用可否とを記憶する来訪者情報記憶部と、来訪者カード発行時には、来訪者情報記憶部を参照し、貸与状態が未貸与を示すカードIDであって、かつ運用可能なカードIDを選択し、来訪者情報記憶部のうち選択した当該カードIDの貸与状態を貸与中に設定するとともに、未貸与中の来訪者カードのいずれかに当該カードIDを記録し、来訪者カード返却時には、来訪者情報記憶部のうち返却された当該来訪者カードから読み出したカードIDの貸与状態を未貸与に設定するIDカード処理部とを備えている。
【0012】
この際、当該入退室管理システムで任意の来訪者カードの運用を開始する前に、当該来訪者カードから当該来訪者カードに予め記録されている初期カードIDを読み出し、来訪者情報記憶部のうち当該初期カードIDの運用可否を運用可能として登録する初期登録部をさらに設けてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、来訪者カード発行時、来訪者情報記憶部において運用可能として登録されているカードIDのいずれかが選択されて来訪者カードに記録されるため、来訪者カードに記録するカードIDを制限することが可能となる。したがって、来訪者情報記憶部に、入退室管理システムに固有のカードIDを登録しておくことにより、当該入退室管理システムでのみ使用可能なカードIDを来訪者カードへ記録することができる。このため、当該入退室管理システムで使用しないカードIDを来訪者カードへ記録するという不正行為を抑止でき、高いセキュリティ性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[実施の形態の構成]
まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態にかかる入退室管理システムについて説明する。図1は、本発明の一実施の形態にかかる入退室管理システムの構成を示すブロック図である。
【0015】
この入退室管理システム1には、IDカード10、カード端末22、電気錠23、制御装置30、管理装置40、および受付装置50が含まれている。各部屋20のドア21に対して設置されているカード端末22および電気錠23は、通信回線L1を介してそれぞれデータ通信可能に制御装置30と接続されている。また、管理装置40には、通信回線L2を介して制御装置30と受付装置50とがデータ通信可能に接続されている。この際、入退室管理システムの規模に応じて、制御装置30を複数設けてもよい。
【0016】
IDカード10は、メモリカードやICカードなどの携帯可能な情報処理用のカードからなり、当該IDカードを所持する利用者の入退室可否を判定するために必要なカード情報を記録する機能を有している。
本実施の形態では、IDカード10として登録者カードと来訪者カードの2種類のIDカードを用いる場合を例として説明する。登録者カードは、入退室管理システム1の管理下にある施設を常用する登録者に予め配布するIDカードである。来訪者カードは、入退室管理システムの管理下にある施設を一時的に利用する来訪者に貸与するIDカードである。
【0017】
カード端末22は、部屋20のドア21ごとに併設された、カードリーダなどのカード処理装置からなり、カードスロットへIDカードを挿入し(接触型)、あるいはカードアンテナへIDカードをかざすことにより(非接触型)、利用者が提示したIDカード10からカード情報を読み出す機能と、当該カード情報を制御装置30へ通信回線L1を介して送信する機能とを有している。
電気錠23は、部屋20のドア21ごとに設けられた電動式の錠前からなり、通信回線L1を介して受信した制御装置30からの開錠/施錠の指示に応じて、ドア21の開錠/施錠を行う機能を有している。なお、電気錠23は、常時、施錠されており、制御装置30から開錠指示が到来した場合にのみ所定期間だけ開錠するものとする。
【0018】
制御装置30は、設備の管理・監視を行う各種制御システムで用いられるコントローラなどの制御装置からなり、カード端末22でIDカード10から読み取られたカード情報に基づき、入退室可否の判定を行う機能を有している。
図2は、制御装置の構成例を示すブロック図である。この制御装置30には、主な機能部として、通信インターフェース部(以下、通信I/F部という)31、端末インターフェース部(以下、端末I/F部という)32、記憶部35、入退室判定情報記憶部35A、および入退室判定部36が設けられており、これら機能部は、バス39を介して相互にデータやり取り可能に接続されている。
【0019】
通信I/F部31は、通信回線L2を介して管理装置40などの外部装置とデータ通信を行う機能を有している。
端末I/F部32は、通信回線L1を介してカード端末22や電気錠23などの外部端末とデータ通信を行う機能を有している。
記憶部35は、メモリやハードディスクなどの記憶装置からなり、制御装置30での処理動作に用いる各種情報やプログラムを記憶する機能を有している。
【0020】
入退室判定情報記憶部35Aは、メモリやハードディスクなどの記憶装置からなり、登録者カードおよび来訪者カードで用いるカードIDと、当該カードIDに対して予め設定した入退室判定用の入退室判定情報とを記憶する記憶部である。図3は、入退室判定情報の構成例である。この例では、これら「カードID」ごとに、当該使用者が通行許可されているエリアやドアを示す「通行許可区分」が、組として保存されている。なお、本実施の形態では、登録者カードのカードIDについて、当該登録者の通行許可区分さらには個人情報を入退室判定情報に記録しておき、来訪者カードのカードIDについては通行許可区分については来訪者カードに記録する場合を例として説明する。
【0021】
入退室判定部36は、CPUとプログラムとが協働してなる演算処理部により構成されており、端末I/F部32を介して受信したカード端末22からのカード情報に応じて入退室可否を判定する機能と、その入退室判定結果を端末I/F部32から要求元のカード端末22へ返送する機能と、入退室可を示す判定結果に応じて当該カード端末22と対応するドア21の電気錠23に対する開錠/施錠の指示を端末I/F部32から送信する機能と、入退室可を示す判定結果に応じて当該入退室に関する履歴の履歴登録指示を通信I/F部31から管理装置40へ送信する機能とを有している。
【0022】
管理装置40は、サーバ装置やパソコンなどの情報処理装置からなる。図4は、管理装置の構成例を示すブロック図である。
管理装置40には、主な機能部として、通信I/F部41、操作入力部43、画面表示部44、記憶部45、履歴情報記憶部45A、利用者情報記憶部45B、および情報管理部46が設けられており、これら機能部は、バス49を介して相互にデータやり取り可能に接続されている。
【0023】
通信I/F部41は、通信回線L2を介して制御装置30や受付装置50などの外部装置とデータ通信を行う機能を有している。
操作入力部43は、キーボードやマウスなどの操作入力装置からなり、オペレータ操作を検出して、情報管理部46などの各種機能部へ出力する機能を有している。
画面表示部44は、LCDやPDPなどの画面表示装置からなり、情報管理部46などの各種機能部から出力された各種情報を画面表示する機能を有している。
記憶部45は、メモリやハードディスクなどの記憶装置からなり、管理装置40での処理動作に用いる各種情報やプログラムを記憶する機能を有している。
【0024】
履歴情報記憶部45Aは、メモリやハードディスクなどの記憶装置からなり、入退室管理システム1の管理下にある施設での入退室の履歴を示す履歴情報を記憶する記憶部である。
利用者情報記憶部45Bは、メモリやハードディスクなどの記憶装置からなり、入退室管理システム1の管理下にある施設を常用する登録者のカードIDごとに、当該登録者の氏名、所属、電話番号、メールアドレスなどの個人情報を記憶する機能と、入退室管理システム1で来訪者カードのカードIDとして運用可能な来訪者用カードIDを記憶する機能とを有している。なお、この来訪者用カードIDは、それぞれ対応する来訪者カードに初期カードIDとして記録されているものとする。
【0025】
情報管理部46は、CPUとプログラムとが協働してなる演算処理部により構成されており、受付装置50からの要求に応じて、利用者情報記憶部45Bの来訪者用ID情報を送信する機能と、制御装置30からの履歴登録指示に応じて、制御装置30の入退室判定部36で判定した入退室に関する履歴を履歴情報として履歴情報記憶部45Aへ保存する機能とを有している。
【0026】
受付装置50は、サーバ装置やパソコンなどの情報処理装置からなる。図5は、受付装置の構成例を示すブロック図である。
受付装置50には、主な機能部として、通信I/F部51、カードインターフェース部(以下、カードI/F部という)52、操作入力部53、画面表示部54、記憶部55、来訪者情報記憶部55A、およびIDカード処理部56が設けられており、これら機能部は、バス59を介して相互にデータやり取り可能に接続されている。
【0027】
通信I/F部51は、通信回線L2を介して制御装置30などの外部装置とデータ通信を行う機能を有している。
カードI/F部52は、無線/有線による通信インターフェース装置や磁気記録再生装置などのカード処理装置からなり、利用者が提示したIDカード10との間でカード情報11の読み出し/書き込みを行う機能を有している。
【0028】
操作入力部53は、キーボードやマウスなどの操作入力装置からなり、オペレータや来訪者の操作を検出して、IDカード処理部56などの各種機能部へ出力する機能を有している。
画面表示部54は、LCDやPDPなどの画面表示装置からなり、入退室判定部36や情報管理部46などの各種機能部から出力された各種情報を画面表示する機能を有している。
【0029】
記憶部55は、メモリやハードディスクなどの記憶装置からなり、受付装置50での処理動作に用いる各種情報やプログラムを記憶する機能を有している。
来訪者情報記憶部55Aは、メモリやハードディスクなどの記憶装置からなり、入退室管理システム1の管理下にある施設を一時利用する来訪者に関する来訪者情報を記憶する記憶部である。
【0030】
図6は、来訪者情報の構成例である。この例では、来訪者用のカードIDごとに、当該来訪者カードを利用する来訪者が通行許可されているエリアやドアを示す「通行許可区分」と、当該カードIDが記録された来訪者カードの貸与状態を示す「貸与状態」と、入退室管理システム1における当該カードIDの運用可否を示す「運用可否」とが組として登録されている。
【0031】
IDカード処理部56は、CPUとプログラムとが協働してなる演算処理部により構成されており、通信I/F部51を介して管理装置40とデータ通信を行うことにより、利用者情報記憶部45Bから来訪者用のカードIDを取得して来訪者情報記憶部55Aへ保存する機能と、これら保存した各カードIDの貸与状態と運用可否を初期化する機能と、操作入力部53からの入力操作に応じて来訪者情報記憶部55Aの各カードIDに対する通行許可区分を登録する機能とを有している。
【0032】
また、IDカード処理部56は、来訪者カード発行時には、操作入力部53からオペレータや来訪者により入力された当該来訪者の来訪者施設し個人情報を取得する機能と、来訪者情報記憶部55Aを参照して、貸与状態が未貸与を示すカードIDであって、かつ運用可否が運用可能を示すカードIDを選択する機能と、来訪者情報記憶部のうち選択した当該カードIDの貸与状態を貸与中に設定するとともに、未貸与中の来訪者カードのいずれかにカードI/F部2を介して当該カードIDを記録することにより来訪者カードを発行する機能と、来訪者カード返却時には、来訪者情報記憶部55Aのうち返却された当該来訪者カードから読み出したカードIDの貸与状態を未貸与に設定する機能とを有している。
【0033】
初期登録部57は、CPUとプログラムとが協働してなる演算処理部により構成されており、カードI/F部52に接続された来訪者カードから当該来訪者カードに予め記録されている初期カードIDを読み出す機能と、来訪者情報記憶部55Aのうち当該初期カードIDの運用可否を運用可能として登録する機能とを有している。
【0034】
[実施の形態の動作]
次に、本発明の一実施の形態にかかる入退室管理システムの動作について説明する。以下では、入退室管理システム1において、来訪者カードの初期登録時、貸与時、および返却時における動作と、登録者や利用者が実際にIDカードを用いて施設に入退室する際の入退室判定動作とを別個に説明する。
【0035】
[初期登録動作]
まず、図7を参照して、受付装置を用いた初期登録動作について説明する。図7は、受付装置を用いた初期登録処理を示すフローチャートである。
受付装置50は、操作入力部53により、オペレータによる初期登録要求操作が検出された場合、初期登録部57により、図7の初期登録処理を実行する。なお、初期登録動作を開始する前に、管理装置30の利用者情報記憶部45Bに保存されている、入退室管理システム1で来訪者カードのカードIDとして運用可能な来訪者用カードIDが、CDなどの記録媒体や通信回線L2を介して、来訪者情報記憶部55Aに保存されているものとする。
【0036】
まず、初期登録部57は、カードI/F部52に接続された来訪者カードから当該来訪者カードに予め記録されている初期カードIDを読み出す(ステップ100)。
次に、初期登録部57は、来訪者情報記憶部55Aのうち当該初期カードIDの運用可否を運用可能として登録し(ステップ101)、一連の初期登録処理を終了する。
この際、操作入力部53により、オペレータによる通行許可区分の入力を受け付け、来訪者情報記憶部55Aのうち当該初期カードIDの通行許可区分に登録してもよい。
【0037】
[来訪者カード発行動作]
まず、図8を参照して、受付装置を用いた来訪者カード発行動作について説明する。図8は、受付装置を用いた来訪者カード発行処理を示すフローチャートである。
受付装置50は、操作入力部53により、オペレータや来訪者によるカード発行要求操作が検出された場合、IDカード処理部56により、図8の来訪者カード発行処理を実行する。
【0038】
まず、IDカード処理部56は、オペレータや来訪者による操作入力部53での入力操作に応じて、当該来訪者の通行許可区分を取得し(ステップ110)、当該通行許可区分と一致する「通行許可区分」を持つカードIDのうち、「貸与状態」が未貸与状態にあり、かつ「運用可否」が運用可状態にあるカードIDを、来訪者情報記憶部55Aから検索する(ステップ111)。
【0039】
ここで、対応するカードIDが検索できなかった場合(ステップ112:NO)、IDカード処理部56は、来訪者カードを貸与できない旨を画面表示部54に表示して(ステップ113)、一連の来訪者カード発行処理を終了する。
一方、対応するIDカードが検索できた場合(ステップ112:YES)、来訪者情報記憶部55Aのうち、当該カードIDの「貸与状態」を未貸与状態から貸与中状態へ設定する(ステップ114)。
【0040】
次に、保管してある未貸与中の各貸与用カードのうちから、任意のIDカード10が、オペレータや来訪者により選択され、受付装置50のカードI/F部52に取り付けられる。
IDカード処理部56は、当該IDカード10と、カードI/F部52を介してデータアクセス可能に接続し(ステップ115)、来訪者情報記憶部55Aのうち、ステップ501で選択したカードIDを、カードI/F部52に接続されているIDカード10のカード情報11に記録し(ステップ116)、一連のカード発行処理を終了する。
【0041】
これにより、受付装置50により、当該来訪者用の新たな来訪者カードが発行される。当該来訪者カードは、オペレータにより受付装置50から取り外され、当該来訪者へ貸与される。
なお、来訪者カード発行処理において、操作入力部53から入力された、あるいは来訪者情報記憶部55Aに予め登録されている当該来訪者の個人情報を、当該来訪者カードへ記録するようにしてもよい。これにより、制御装置30での入退室判定時に、来訪者カードから読み出して管理装置40へ通知し、履歴情報として登録することが可能となる。
【0042】
[来訪者カード返却動作]
次に、図9を参照して、受付装置を用いた来訪者カード返却動作について説明する。図9は、受付装置を用いたカード返却処理を示すフローチャートである。
受付装置50は、操作入力部53により、オペレータや来訪者によるカード返却要求操作が検出された場合、IDカード処理部56により、図9の来訪者カード返却処理を実行する。
【0043】
まず、返却対象の来訪者カードであるIDカード10が、オペレータや来訪者により、受付装置50のカードI/F部52に取り付けられる。
IDカード処理部56は、当該IDカード10と、カードI/F部52を介してデータアクセス可能に接続し(ステップ120)、当該IDカード10からカードIDを読み出して(ステップ121)、来訪者情報記憶部55Aのうち当該カードIDに対応する「貸与状態」を未貸与状態に設定し(ステップ122)、一連の来訪者カード返却処理を終了する。
【0044】
これにより、当該来訪者カードが、オペレータにより受付装置50から取り外されて保管される。
なお、来訪者カード返却処理において、返却された来訪者カードに、当該来訪者の個人情報が記録されている場合には、当該個人情報を消去するようにしてもよい。これにより、個人情報の保護を行うことが可能となる。
【0045】
[入退室判定動作]
次に、図10を参照して、登録者に対する入退室管理システムの動作について説明する。図10は、本発明の一実施の形態にかかる入退室管理システムの動作を示すシーケンス図である。
ここでは、利用者がドア21から部屋20について入退室する際、提示されたIDカードから読み出したカード情報に基づいて、入退室可否判定を行う場合について説明する。なお、利用者が登録者と来訪者の場合について、処理に大きな違いはないため、両方の場合について合わせて説明する。
【0046】
カード端末22は、利用者が提示したIDカード10からカード情報を読み出し(ステップ200)、このカード情報に含まれる所定の情報に基づいて、当該IDカード10のカード種別、すなわち登録者カードか来訪者カードかを確認する(ステップ201)。
ここで、当該IDカードが登録者カードであった場合には、当該カード情報に含まれているカードIDを制御装置30へ通信回線L1を介して送信し(ステップ202)、当該IDカードが来訪者カードであった場合には、当該カード情報に含まれているカードIDを制御装置30へ通信回線L1を介して送信する(ステップ202)。
【0047】
制御装置30の入退室判定部36は、端末I/F部32によりカード端末22からのカード情報を受信して、このカード情報に含まれているカードIDにより入退室判定情報記憶部35Aから、当該カードIDに対応する通行許可区分を取得し(ステップ210)、当該カード端末22に対応するドアIDとに基づき入退室の可否を判定する(ステップ211)。
なお、ドアIDについては、カード端末22からカード情報とともに取得してもよく、カード端末22の通信アドレスや収容位置などの識別情報とドアIDとを対応付けて記憶部35に予め設定しておいてもよい。
【0048】
ステップ211において、入退室判定部36は、カード情報の送信元であるカード端末22に対応するドア21のドアIDが、入退室判定情報記憶部35Aから検索した通行許可区分のドアIDリストに登録されており、かつ入退室判定情報記憶部35Aから検索した当該ドアIDから、当該判定時の時間帯に当該ドア21の通過が許可されている場合にのみ入退室可能と判定し、これ以外の場合には入退室不可と判定する。
【0049】
ここで、入退室不可と判定された場合(ステップ212:NO)、入退室判定部36は、入退室不可を示す判定結果を端末I/F部32からカード端末22へ通知する(ステップ213)。この際、電気錠23では施錠状態を維持させればよいことから、電気錠23に対して特別な指示は行われない。
カード端末22は、制御装置30からの入退室不可の通知に応じて、入退室不可である旨を利用者へ表示する(ステップ214)。
【0050】
一方、ステップ212において、入退室可能と判定された場合(ステップ212:YES)、入退室判定部36は、入退室可能を示す判定結果を端末I/F部32からカード端末22へ通知するとともに(ステップ220)、電気錠23に対して開錠を指示する(ステップ221)。
カード端末22は、制御装置30からの入退室許可の通知に応じて、入退室許可である旨を利用者へ表示する(ステップ222)。また、電気錠23は、制御装置30からの開錠指示に応じて、ドア21を一時的に開錠する(ステップ223)。これにより、利用者はドア21を通行することが可能となる。
【0051】
また、ステップ121において、入退室可能と判定された場合(ステップ212:YES)、入退室判定部36は、当該入退室に関する履歴の履歴登録指示を、通信I/F部31から管理装置40へ送信する(ステップ224)。この際、IDカードが登録者カードの場合には、当該カードIDのみを履歴登録指示で通知し、IDカードが来訪者カードであってカード情報に来訪者の個人情報が含まれている場合には、当該カードIDと個人情報を履歴登録指示で通知すればよい。
【0052】
管理装置40の情報管理部46は、通信I/F部41を介して制御装置30から履歴登録指示を受信し、この履歴登録指示で通知されたカードIDを含む履歴情報を履歴情報記憶部45Aへ保存する(ステップ225)。この際、登録者の個人情報を記憶部45に予め登録しておき、履歴登録指示でカードIDだけが通知された場合には、当該カードIDに対応する登録者の個人情報を記憶部45から検索して履歴情報に含めて保存し、履歴登録指示で来訪者の個人情報が通知された場合には、当該個人情報を履歴情報に含めて保存すればよい。
【0053】
[実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、来訪者カードで用いるカードIDごとに、当該カードIDを記録した来訪者カードの貸与状態と当該カードIDの運用可否とを来訪者情報記憶部55Aで記憶しておき、IDカード処理部56において、来訪者カード発行時には、来訪者情報記憶部55Aを参照して、貸与状態が未貸与を示すカードIDであって、かつ運用可否が運用可能を示すカードIDを選択し、来訪者情報記憶部55Aのうち選択した当該カードIDの貸与状態を貸与中に設定するとともに、未貸与中の来訪者カードのいずれかに当該カードIDを記録し、来訪者カード返却時には、来訪者情報記憶部55Aのうち返却された当該来訪者カードから読み出したカードIDの貸与状態を未貸与に設定するようにしている。
【0054】
これにより、来訪者カード発行時、来訪者情報記憶部55Aにおいて運用可能として登録されているカードIDのいずれかが選択されて来訪者カードに記録されるため、来訪者カードに記録するカードIDを制限することが可能となる。したがって、来訪者情報記憶部に、入退室管理システムに固有のカードIDを登録しておくことにより、当該入退室管理システムでのみ使用可能なカードIDを来訪者カードへ記録することができる。このため、当該入退室管理システムで使用しないカードIDを来訪者カードへ記録するという不正行為を抑止でき、高いセキュリティ性が得られる。
【0055】
また、本実施の形態では、入退室管理システム1で任意の来訪者カードの運用を開始する前に、初期登録部57において、当該来訪者カードから当該来訪者カードに予め記録されている初期カードIDを読み出し、来訪者情報記憶部55Aのうち当該初期カードIDの運用可否を運用可能として登録するようにしたので、実際に存在している来訪者カードのカードIDのみを運用可能な来訪者用のカードIDとして登録することが可能となる。このため、実際に存在していない来訪者カードのカードIDを運用可能とすることを抑止できる。
【0056】
[実施の形態の拡張]
以上では、受付装置50において来訪者カードの発行/返却を行う場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、例えば管理装置40に、カードI/F部52、IDカード処理部56、初期登録部57、来訪者情報記憶部55Aなどを設けて、管理装置40で来訪者カードの発行/返却を行ってもよい。
【0057】
また、以上では、制御装置30に入退室判定部36を設けて、カード端末22でIDカード10から読み取ったカード情報に基づき入退室判定を行う場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、管理装置40で入退室判定を行ってもよい。
この場合、制御装置30の入退室判定部36や入退室判定情報記憶部35Aを管理装置40に設け、管理装置40とカード端末22や電気錠23との間でやり取りする、IDカード10から読み取ったカード情報や各種メッセージを制御装置30で双方へ転送すればよい。これにより、前述と同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる入退室管理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】制御装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】入退室判定情報の構成例である。
【図4】管理装置の構成例を示すブロック図である。
【図5】受付装置の構成例を示すブロック図である。
【図6】来訪者情報の構成例である。
【図7】受付装置での初期登録処理を示すフローチャートである。
【図8】受付装置での来訪者カード発行処理を示すフローチャートである。
【図9】受付装置での来訪者カード返却処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明の一実施の形態にかかる入退室管理システムの動作を示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0059】
1…入退室管理システム、10…IDカード、11…カード情報、20…部屋、21…ドア、22…カード端末、23…電気錠、30…制御装置、31…通信I/F部、32…端末I/F部、35…記憶部、35A…入退室判定情報記憶部、36…入退室判定部、39…バス、40…管理装置、41…通信I/F部、43…操作入力部、44…画面表示部、45…記憶部、45A…履歴情報記憶部、45B…利用者情報記憶部、49…バス、50…受付装置、51…通信I/F部、52…カードI/F部、53…操作入力部、54…画面表示部、55…記憶部、55A…来訪者情報記憶部、56…IDカード処理部、57…初期登録部、59…バス、L1,L2…通信回線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードIDの書き換え可能な来訪者用のIDカードである複数の来訪者カードと、来訪者に貸与した前記来訪者カードから読み出したカードIDの正当性を含む入退室判定条件に基づいて、当該来訪者の施設への入退室可否を判定する入退室判定部とを備える入退室管理システムであって、
前記来訪者カードで用いるカードIDごとに、当該カードIDを記録した前記来訪者カードの貸与状態と当該カードIDの運用可否とを記憶する来訪者情報記憶部と、
来訪者カード発行時には、前記来訪者情報記憶部を参照して、前記貸与状態が未貸与を示すカードIDであって、かつ運用可否が運用可能を示すカードIDを選択し、前記来訪者情報記憶部のうち選択した当該カードIDの貸与状態を貸与中に設定するとともに、未貸与中の前記来訪者カードのいずれかに当該カードIDを記録し、来訪者カード返却時には、前記来訪者情報記憶部のうち返却された当該来訪者カードから読み出したカードIDの貸与状態を未貸与に設定するIDカード処理部と
を備えることを特徴とする入退室管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の入退室管理システムにおいて、
当該入退室管理システムで任意の来訪者カードの運用を開始する前に、当該来訪者カードから当該来訪者カードに予め記録されている初期カードIDを読み出し、前記来訪者情報記憶部のうち当該初期カードIDの運用可否を運用可能として登録する初期登録部をさらに備えることを特徴とする入退室管理システム。
【請求項3】
カードIDの書き換え可能な来訪者用のIDカードである複数の来訪者カードと、来訪者に貸与した前記来訪者カードから読み出したカードIDの正当性を含む入退室判定条件に基づいて、当該来訪者の施設への入退室可否を判定する入退室判定部とを備える入退室管理システムで用いる入退室管理方法であって、
来訪者情報記憶部が、前記来訪者カードで用いるカードIDごとに、当該カードIDを記録した前記来訪者カードの貸与状態と当該カードIDの運用可否とを記憶するステップと、
IDカード処理部が、来訪者カード発行時には、前記来訪者情報記憶部を参照し、前記貸与状態が未貸与を示すカードIDであって、かつ運用可能なカードIDを選択し、前記来訪者情報記憶部のうち選択した当該カードIDの貸与状態を貸与中に設定するとともに、未貸与中の前記来訪者カードのいずれかに当該カードIDを記録し、来訪者カード返却時には、前記来訪者情報記憶部のうち返却された当該来訪者カードから読み出したカードIDの貸与状態を未貸与に設定するステップと
を備えることを特徴とする入退室管理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の入退室管理方法において、
初期登録部が、当該入退室管理システムで任意の来訪者カードの運用を開始する前に、当該来訪者カードから当該来訪者カードに予め記録されている初期カードIDを読み出し、前記来訪者情報記憶部のうち当該初期カードIDの運用可否を運用可能として登録するステップをさらに備えることを特徴とする入退室管理方法。
【請求項5】
カードIDの書き換え可能な来訪者用のIDカードである複数の来訪者カードと、来訪者に貸与した前記来訪者カードから読み出したカードIDの正当性を含む入退室判定条件に基づいて、当該来訪者の施設への入退室可否を判定する入退室判定部とを備える入退室管理システムで用いられ、前記来訪者カードの発行および返却を管理する受付装置であって、
前記来訪者カードで用いるカードIDごとに、当該カードIDを記録した前記来訪者カードの貸与状態と当該カードIDの運用可否とを記憶する来訪者情報記憶部と、
来訪者カード発行時には、前記来訪者情報記憶部を参照し、前記貸与状態が未貸与を示すカードIDであって、かつ運用可能なカードIDを選択し、前記来訪者情報記憶部のうち選択した当該カードIDの貸与状態を貸与中に設定するとともに、未貸与中の前記来訪者カードのいずれかに当該カードIDを記録し、来訪者カード返却時には、前記来訪者情報記憶部のうち返却された当該来訪者カードから読み出したカードIDの貸与状態を未貸与に設定するIDカード処理部と
を備えることを特徴とする受付装置。
【請求項6】
請求項5に記載の受付装置において、
当該入退室管理システムで任意の来訪者カードの運用を開始する前に、当該来訪者カードから当該来訪者カードに予め記録されている初期カードIDを読み出し、前記来訪者情報記憶部のうち当該初期カードIDの運用可否を運用可能として登録する初期登録部をさらに備えることを特徴とする受付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−144396(P2010−144396A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322035(P2008−322035)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】