説明

全身性軽度炎症の新しい処置

本発明によれば、全身性軽度炎症の処置に使用するためのペミロラストまたは医薬上許容されるその塩が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既知の肥満細胞阻害化合物の新しい使用に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、典型的には、例えば微生物の侵入、ある種の抗原、損傷細胞または物理的および/または化学的因子などに対する限局的組織応答と特徴づけられる。炎症応答は、通常、有害物質と傷ついた組織をどちらも破壊し、弱体化し、隔離する役割を果たすと共に、組織治癒を開始する役割も果たす、保護機序である。
【0003】
多くの状態/障害は、組織を損傷する異常な炎症を特徴とし、かつ/またはそのような炎症によって引き起こされる。そのような状態は、典型的には、免疫防御機序の活性化を特徴とし、宿主に対して有益である以上に有害な効果をもたらし、一般に、さまざまな程度の組織の発赤または充血、腫脹、発熱、痛み、かゆみ、細胞死、組織破壊、細胞増殖および/または機能喪失を伴う。炎症性腸疾患、関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬、糸球体腎炎および移植片拒絶などが、その例である。
【0004】
典型的には、複雑な一連の事象が、発赤および熱、例えば、局所血管の拡張による血流の増加などをもたらす。または、白血球および血漿の血管外漏出をもたらし、そしてこれがしばしば限局的腫脹をもたらす。または、感覚神経の活性化をもたらし、そしてこれが一部の組織における痛みをもたらし、機能喪失をもたらす。これらの炎症性変化は、好中球、単球、マクロファージ、およびリンパ球のような細胞が、血管作用性アミン、サイトカイン、補体因子および活性酸素種などの炎症性メディエーターと共に関与する、細胞的および生化学的事象のカスケードによって引き起こされる。
【0005】
大半の炎症反応は局所にとどまり、発熱や悪寒などの全身効果を引き起こさない。しかし、場合によっては、炎症が広範囲に及ぶか強力であるため、循環血中の炎症性メディエーターが増加して、体全体に影響を及ぼし始める。その一例が細菌性肺炎であり、これは、一般に、高熱(炎症性メディエーター/刺激が脳に達した場合)、悪寒および/または倦怠感のような全身症状を伴う。
【0006】
このような反応は、通例、「全身性」炎症と呼ばれる。このような状況では、炎症誘発性サイトカイン(主として単球/マクロファージに由来;例えばEklund,Adv.Clin.Chem.,48,111(2009)参照)が肝臓にも到達し、肝臓は、血中に放出されるいわゆる急性期反応物質を産生することによって応答する。放出される急性期タンパク質の中で最も良く知られているのが、C反応性タンパク質(CRP)である。これは、他の急性期反応物質と共に、組織傷害を制限し、感染に対する宿主の抵抗性を増進し、組織の修復と炎症の消散を促進するのに役立ち得る(The Merck Manual Of Diagnosis And Therapy,18th edition(2006)参照)。
【0007】
血漿中CRPレベルは有用な炎症マーカーであり、医学的臨床実務でも獣医学的臨床実務でも日常的に測定されている。最も高い血漿中CRPレベル(多くの場合、100mg/Lを超える)は、通例、重症細菌感染症において見られる。炎症性腸疾患や関節リウマチのような炎症性および/または自己免疫性疾患の増悪も、高いCRPレベル(多くの場合、50mg/L前後)を伴う。また、がん患者におけるCRPレベルも著しく増加する場合があるのに対し、軽度の炎症および多くのウイルス感染症は、10〜50mg/Lの範囲の血漿中CRP濃度を引き起こす。
【0008】
高感度アッセイを使って低レベルのCRP(hsCRPと呼ばれる)を測定することにより、見かけ上健康な被験者における中央CRP(またはhsCRP)濃度は0.6〜0.8mg/Lの範囲にあることがわかっている(Wilkinset al,Clin.Chem.,44,1358(1998)参照)。しかし、見かけ上健康な被験者におけるhsCRP濃度は、歪んだ分布を有している。このことは、Shineらによって明らかにされており(Clinica Chimica Acta,117,13(1981))、彼らは、正常成人ボランティアの献血者から採取した500近い血清において、中央hsCRP値が0.8mg/Lであるが、高値側にテールがあり、3mg/Lで90パーセンタイル(percentile)、10mg/Lで99パーセンタイル(percentile)であることを報告している。
【0009】
炎症によってCRP産生が引き起こされることを考慮すると、これらの被験者はいわゆる「全身性軽度炎症」(systemic low‐grade inflammation:SLGI)を有すると考えられる。SLGIの背景にある正確な分子機序はまだ完全にはわかっていないが、それ自体が注目すべき状態であると考えられる。
【0010】
SLGIはCRPの軽微な上昇(0.9〜10mg/LのCRP)を検出することによって診断することができる(例えばRidker et al,N.Engl.J.Med.,352,20(2005)およびEklund,Adv.Clin.Chem.,48,111(2009)参照)。
【0011】
CRPレベル(SLGIに対応する低濃度範囲にあるもの)は、心血管イベント(例えば心筋梗塞および脳卒中)の予測因子であり、実際、それらのイベントについては、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールレベルよりも良い予測因子であることが示されている(Ridker et al,N.Engl.J.Med.,347,1557(2002))。最近、JUPITER試験が報告された。これは26カ国の1315施設で行われた大規模ランダム化二重盲検プラセボ対照多施設治験である。この治験は1.9年以上にわたって行われた。この治験は(正常または低いLDLコレステロール値を有する見かけ上健康な被験者において)上昇したCRP(SLGIに相当する低い濃度範囲にあるもの)をロスバスタチンで薬理学的に低下させると、心血管罹病/死亡が有意に減少することを示した(Ridker et al,同上書,359,2195(2008))。
【0012】
しかしスタチン類には、全ての患者に等しく有効なわけではないという欠点があり、一定の副作用(例えば肝機能の変化、筋疾患および横紋筋融解)があることも知られている。その上、アテローム性動脈硬化などの心血管疾患は、依然として、死亡および能力障害の主要原因である。実際、最近の総説(Briel et al,JAMA,295,2046(2006))は、スタチン類が、急性冠症候群を有する患者において、重篤な心血管イベントを処置の最初の4ヶ月間は減少させないことを示唆している。したがって、より安全でかつ/またはより効果的な、心血管疾患の処置、特に心血管罹病および/または心血管死亡のリスクを低下させるための処置に、真の未充足臨床ニーズがある。
【0013】
SLGIは、当初は健康である対象における2型糖尿病の進展も予測し、その進展に関与し得る(Pickup,Diabetes Technol.Ther.,8,1(2006)参照)。
【0014】
上述のようにSLGIの病因はまだはっきりしていない。肥満細胞活性とSLGI/hsCRPレベルとの直接的な関連が知られていないことは確かである。実際、肥満細胞トリプターゼの循環レベルとCRPの間の相関関係の欠如は、心血管疾患を有する患者において見いだされており(van Haelst et al,Int.J.Cardiol.,78,75(2001)およびKervinen et al,同上書,104,138(2005)参照)、これは、SLGIが肥満細胞の活性化とは無関係であるという概念を裏付けている。(トリプターゼは肥満細胞分泌顆粒に豊富に存在し、血漿中トリプターゼは、肥満細胞活性の選択的かつ信頼できるマーカーとして使用されている(例えばPayne And Kam,Anaesthesia,59,695(2004)参照))。
【0015】
さらにまた、周知の肥満細胞阻害薬ケトチフェンは、前糖尿病および全身性炎症の徴候(患者の半数以上に測定される血清中TNF−アルファの上昇)を有する被験者において、CRPを低下させないことが示されている(Bohmer et al,Diabetes Care,17,139(1994)参照)。肥満細胞活性化を阻害することが知られているホスホジエステラーゼ阻害剤であるテオフィリンが、慢性閉塞性肺疾患を有する患者においてhsCRPを低下させないことも、最近になって示されている(Kanehara et al,Pulmonary Pharmacology & Therapeutics,21,874(2008))。したがって文献からは、肥満細胞を阻害する抗アレルギー性および/または抗喘息性の薬物がSLGIに対して何らかの効果を有すると予想する根拠がない。
【0016】
したがって、抗アレルギー性/抗喘息性の肥満細胞阻害薬ペミロラストが、血漿CRP>0.9mg/Lの被験者におけるCRPレベルを著しく低下させることを我々が発見したのは、意外なことである。そのような低下は、見かけ上健康な非アレルギー性/非喘息性被験者でも、既存の心血管状態を有する被験者でも観察された。したがってペミロラストはSLGIの処置に有用であると考えられ、そのSLGIの処置は心血管イベント(例えば罹病および/または死亡)のリスクが増加することが示されているCRPレベルを上回るレベルであるCRPレベルによって特徴づけられている。(Ridker et al,N.Engl.J.Med.,352,20(2005)参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Eklund,Adv.Clin.Chem.,48,111(2009)
【非特許文献2】The Merck Manual Of Diagnosis And Therapy,18th edition(2006)
【非特許文献3】Wilkins et al,Clin.Chem.,44,1358(1998)
【非特許文献4】Shine et al,Clinica Chimica Acta,117,13(1981)
【非特許文献5】Ridker et al,N.Engl.J.Med.,352,20(2005)
【非特許文献6】Eklund,Adv.Clin.Chem.,48,111(2009)
【非特許文献7】Ridker et al,N.Engl.J.Med.,347,1557(2002)
【非特許文献8】Ridker et al,N.Engl.J.Med.,359,2195(2008)
【非特許文献9】Briel et al,JAMA,295,2046(2006)
【非特許文献10】Pickup,Diabetes Technol.Ther.,8,1(2006)
【非特許文献11】van Haelst et al,Int.J.Cardiol.,78,75(2001)
【非特許文献12】Kervinen et al,Int.J.Cardiol.,104,138(2005)
【非特許文献13】Payne And Kam,Anaesthesia,59,695(2004)
【非特許文献14】Bohmer et al,Diabetes Care,17,139(1994)
【非特許文献15】Kanehara et al,Pulmonary Pharmacology &Therapeutics,21,874(2008)
【非特許文献16】Ridker et al,N.Engl.J.Med.,352,20(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の第1の課題は、SLGIの処置に使用するためのペミロラストまたは医薬上許容されるその塩を提供することである。
【0019】
本発明の第2の課題は、SLGIの処置方法を提供することである。
【0020】
本発明の2つのさらなる課題は、患者における血漿中CRPレベルを(上述した値のいずれか一つを下回るレベルにまで)低下させるためのペミロラストまたは医薬上許容されるその塩と、患者における血漿中CRPレベルを(上述した値のいずれか一つを下回るレベルにまで)低下させる方法を提供することであり、前記方法には患者へのペミロラストまたは医薬上許容されるその塩の投与が含まれる。
【0021】
本発明のさらなる課題は、患者における心血管罹病および心血管死亡のリスクを低減(すなわち心血管罹病および心血管死亡を防止)し、かつ/または2型糖尿病の進展を低減(すなわち防止)する方法であって、
(a)その患者における血漿中CRPレベルを測定すること;
(b)血漿中CRPのレベルが上述した値の一つより高いかどうか、特に約0.9mg/Lより高いかどうかを決定すること;および
(c)高い場合は、CRPレベルを、例えば上述した適切な値を下回るまで、低下させるために、ペミロラストまたは医薬上許容されるその塩を、ある期間にわたって、適当な投薬量で、その患者に投与すること
を含む方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第1の態様によれば、SLGIの処置に使用するためのペミロラストまたは医薬上許容されるその塩が提供される。
【0023】
「SLGI」という用語は、文献において「全身性軽度炎症」、「軽度全身性炎症」、「潜在性(subclinical)全身性炎症」、「慢性軽度炎症」、「持続性軽度炎症」、または文脈によっては、単に「軽度炎症」もしくは「全身性炎症」と、さまざまに呼ばれている状態を包含すると理解される(例えばMaerz et al,Circulation,110,3068(2004)およびNicklas et al,CMAJ,172,1199(2005)参照)。他の炎症マーカー(例えば循環サイトカイン、接着分子(adhesion molecules)および白血球)もSLGIの指標であることが知られており、本発明に従って、それらを測定し、低下させることができる。通常、SLGIは被験者(または、例えば外見上健康なかつ/または非アレルギー性/非喘息性の哺乳動物対象)の特に血漿中CRPレベルで特徴づけられる。血漿中CRPレベルは、約10mg/L未満であり、約7mg/Lより高く、例えば約5mg/Lより高い、好ましくは約3mg/Lより高い、さらに好ましくは約2mg/Lより高い、特に好ましくは約1mg/Lより高い、より特に好ましくは約0.9mg/Lより高い。そのような血漿中CRPレベルは、ペミロラストまたは医薬上許容されるその塩の適切な薬理学的有効量を投与することによって、低下させることができる。
【0024】
本発明の第2の態様によれば、SLGIの処置方法を提供できる。この処置方法には、そのような処置を必要とする患者へのペミロラストまたは医薬上許容されるその塩の薬理学的有効量の投与が含まれる。
【0025】
疑義が生じないように述べると、本発明の文中では、「処置」、「治療」および「治療法」という用語は、処置を必要とする患者の治療的処置または緩和的処置を包含すると共に、SLGIまたは本明細書において言及する他の関連状態に陥りやすい患者の予防的処置および/または診断も包含する。
【0026】
「患者」は、哺乳動物(ヒトを含む)患者を包含する。
【0027】
本発明の2つのさらなる態様によれば、患者における血漿中CRPレベルを(上述した値のいずれか一つを下回るレベルにまで)低下させるためのペミロラストまたは医薬上許容されるその塩と、患者における血漿中CRPレベルを(上述した値のいずれか一つを下回るレベルにまで)低下させる方法が提供され、前記方法には患者へのペミロラストまたは医薬上許容されるその塩の投与が含まれる。
【0028】
上述のように、SLGIは、例えばメタボリック症候群、糖尿病(例えば2型糖尿病)、インスリン抵抗性症候群、肥満、心血管疾患(例えばアテローム性動脈硬化、腹部大動脈瘤および他の心血管イベント)、ならびに一部のがん(例えば大腸がん)などと関連することが知られている。CRPレベルの軽微な上昇は、他の点では見掛け上健康な対象における疾患の唯一の徴候である場合もある。
【0029】
CRPの軽微な上昇は、さまざまな医学的状態における望ましくない転帰もしくは合併症(例えばイベント)、または異なる疾患で死亡する可能性を、予測することもできる。特に、CRPの上昇は、心血管罹病および心血管死亡などのイベント、および/または2型糖尿病の進展を予測することができ、本発明によれば、そのどちらのリスクも、ペミロラストまたは医薬上許容されるその塩を使って低下させ得る。
【0030】
本発明のさらなる一態様によれば、患者における心血管罹病および心血管死亡のリスクを低減(すなわち心血管罹病および心血管死亡を防止)し、かつ/または2型糖尿病の進展を低減(すなわち防止)する方法であって、
(a)その患者における血漿中CRPレベルを測定すること;
(b)血漿中CRPのレベルが上述した値の一つより高いかどうか、特に約0.9mg/Lより高いかどうかを決定すること;および
(c)高い場合は、CRPレベルを、例えば上述した適切な値を下回るまで、低下させるために、ペミロラストまたは医薬上許容されるその塩を、ある期間にわたって、適当な投薬量で、その患者に投与すること
を含む方法が提供される。
【0031】
アメリカ心臓協会(AHA)および疾病予防管理センター(CDC)は、CRPをリスク評価ツールとして評価し、心血管罹病または心血管死亡を起こす相対リスクが低い対象、平均的な対象および高い対象を同定するために、それぞれ1mg/L未満、1〜3mg/L、および3mg/Lを上回るというカットポイント(cut point)を使用することを提案した。
【0032】
「罹病」という用語は、任意の疾患状態、能力障害、疾病および/または健康不良を広く包含すると、当業者には理解されている。したがって「心血管」罹病には、潜在的な心血管合併症から導かれる結果として示されるような状態を含み、血管合併症自体が、上述した他の状態の1つ以上、例えば肥満、メタボリック症候群、(例えば2型)糖尿病などの結果であり得る(下記参照)。
【0033】
2型糖尿病は、インスリンに対する末梢組織の応答の低減(インスリン抵抗性)と、インスリン抵抗性、および、高血糖に直面しているにもかかわらず不十分なインスリン分泌ということで明らかにされるベータ細胞機能障害とを特徴とする障害である(例えばRobbins And Cotran,Pathologic Basis Of Disease,8th edition,Saunders Elsevier参照)。2型糖尿病の症状には、慢性疲労、尿産生過剰、多渇および水分摂取増加が含まれる。糖尿病に関する世界保健機関の現行の診断基準は、(a)少なくとも7.0mmol/Lの空腹時血漿中グルコースレベルまたは(b)経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)における少なくとも11.1mmol/Lの血漿中グルコースレベルである。「2型糖尿病の進展を低減する」には、持病の進展(例えば悪化)を防止するためのSLGIの処置に加えて、2型糖尿病の発症の防止も包含されるものとする。
【0034】
我々は、ペミロラストが、0.9mg/Lを上回るCRPを有する被験者において、血漿中トリプターゼレベルを付随的に低下させないことを見いだし、被験者におけるCRPの血漿中レベルと肥満細胞トリプターゼレベルの間に相関関係がないことも見いだした。
【0035】
したがって、本明細書に記載する使用および方法は、非アレルギー性患者におけるもの、または非アレルギー性患者のものであることが好ましい。「非アレルギー性」とは、その患者が、免疫系のアトピー性障害の外見的徴候を(本発明の処置を受ける時に)呈さないことを意味するものとする。この点において、そのような患者は、アレルゲンに対して、IgEによる肥満細胞および/または好塩基球の活性化を含む免疫学的応答を特徴とする過敏症の徴候を示さない。ある患者が非アレルギー性であるかどうかの決定は、例えば既知のアレルゲンに対する応答について(例えば皮膚を)検査することによって、またはアレルゲン特異的IgEの存在およびレベルについて血液を分析することによって、ルーチンに行うことができる。
【0036】
本明細書に記載する使用および方法は、非喘息性患者におけるもの、または非喘息性患者のものであることが、さらに好ましい。「非喘息性」とは、その患者が、気管支内の平滑筋細胞の収縮によって気管支が可逆的に狭窄する肺の慢性炎症、気道炎症および呼吸困難の素因の外見的徴候を(本発明の処置を受ける時に)呈さないことを意味するものとする。喘息はアレルギー性であっても非アレルギー性であってもよい。
【0037】
本発明の好ましい使用および処置方法には、患者が高血圧を有するか、より好ましくは喫煙者であるか、または元喫煙者であるもの、対象が糖尿病および/またはメタボリック症候群を有するか、25を上回る肥満度指数(body mass index)を有するものが含まれる。
【0038】
言及することができるペミロラストの医薬上許容される塩には、酸付加塩および塩基付加塩が含まれる。そのような塩は従来の手段により、例えば遊離酸型または遊離塩基型の活性成分を1当量またはそれ以上の適当な酸または塩基と、場合によっては溶媒中で、またはその塩が不溶な媒質中で、反応させた後、標準的な技法を使って(例えば減圧下で、または凍結乾燥によって、または濾過によって)前記溶媒または前記媒質を除去することにより、形成させることができる。塩は、塩の形態にある活性成分の対イオンを、例えば好適なイオン交換樹脂を使うなどして、別の対イオンと交換することによって製造することもできる。
【0039】
ペミロラストの好ましい塩には、アルカリ土類、そして特にアルカリ金属塩、例えばカルシウム塩、マグネシウム塩、好ましくはナトリウム塩、特にカリウム塩(例えばペミロラストカリウム)が含まれる。
【0040】
本明細書に記載する使用および方法において、ペミロラストおよびその塩は、好ましくは、局所的にまたは全身的に、例えば経口、静脈内もしくは動脈内(血管内または他の血管周囲デバイス/製剤(例えばステント)によるものを含む)、筋肉内、皮膚、皮下、経粘膜(例えば舌下または口腔粘膜)、直腸、経皮、鼻腔、肺(例えば気管または気管支)、局所経路、または他の任意の非経口経路により、医薬上許容される剤形中に上記化合物を含む医薬調製物の形態で投与される。好ましい送達様式には、経口(特に好ましい)、静脈内、皮膚または皮下、鼻腔、筋肉内、または腹腔内送達が含まれる。
【0041】
ペミロラストおよびその塩は、一般に、意図する投与経路および標準的な医薬実務を十分に考慮して選択することができる医薬上許容されるアジュバント、希釈剤または担体と混合された1つ以上の医薬製剤の形態で投与される。そのような医薬上許容される担体は、活性化合物に対して化学的に不活性であり、使用条件下で有害な副作用または毒性を有さない。そのような医薬上許容される担体は、本発明の化合物の即時放出または調節放出をもたらすこともできる。
【0042】
好適な医薬製剤は市販されているか、そうでなければ文献、例えばRemington The Science And Practice Of Pharmacy,19th ed.,Mack Printing Company(ペンシルバニア州イーストン、1995)およびMartindale−The Complete Drug Reference(35th Edition)ならびにそれらの引用文献に記載されており、それらの文献の全てにおいて関連する記載は、上記を参照することにより本明細書に組み込まれる。そうでない場合も、当業者は、日常的な技法を使って、好適な製剤の製造を非発明的に達成することができる。
【0043】
製剤中のペミロラストまたはその塩の量は、処置すべき状態の重症度、および処置すべき患者に依存し、使用する化合物にも依存するが、当業者はそれを非発明的に決定し得る。
【0044】
処置すべき疾患および処置すべき患者ならびに投与経路に依存して、ペミロラストまたはその塩は、それを必要とする患者に、さまざまな治療有効量で投与され得る。
【0045】
ただし、本発明に関連して哺乳動物(特にヒト)に投与される用量はその哺乳動物における治療応答を(上述のように)妥当な時間枠にわたって達成するのに十分な量でなければならない。正確な用量および組成ならびに最も適当な送達レジメンの選択は、特に製剤の薬理学的性質、処置される状態の性質および重症度、ならびに受容者の身体状態および知能の影響を受け、また処置すべき患者の年齢、状態、体重、性別および応答、ならびに疾患の段階/重症度、そして患者間の遺伝的差異の影響を受けることが、当業者に理解されている。
【0046】
ペミロラストまたはその塩の投与は持続的であっても断続的(例えばボーラス注射によるもの)であってもよい。投薬量は投与のタイミングおよび頻度によっても決まり得る。
【0047】
好適な用量には、医学文献、例えばMartindale−The Complete Drug Reference(35th Edition)およびその引用文献において言及されているものが含まれ、それらの文献の全てにおける関連する開示は上記を参照することにより本明細書に組み込まれる。したがって、ペミロラストまたはその塩の好適な用量(遊離酸として計算したもの)は、約0.01mg/kg体重〜約1,000mg/kg体重の範囲にある。より好ましい範囲は、経口投与の場合であれば、1日あたり約0.1mg/kg〜約20mg/kgである。
【0048】
しかしペミロラストの好適な用量は当業者には知られている。例えば、経口用量(遊離酸として計算したもの)は、1日につき約0.1mg〜約1.2gの範囲内、例えば約0.5mg〜約900mgの範囲内にあり得る。例えば、1日量の好適な下限は、約1mg、例えば約2mg、例えば約5mg、例えば約10mg、より好ましくは約20mgであり、1日量の好適な上限は約200mg、例えば約100mg、例えば約80mgである。したがって、経口1日量は、約2mg〜約100mg(例えば約50mg)、例えば約5mg〜約60mg(例えば約40mg)、好ましくは約10mg〜約50mg(例えば約30mg)であり得る。好適な個別用量(individual dose)は、約40mg、より好ましくは約30mg(例えば約25mg)であり得る。
【0049】
いずれにせよ、開業医または他の当業者は、個々の患者にとって最も好適であるだろう実際の投薬量を、ルーチンに決定することができる。上述の投薬量は、平均的ケースの典型例であり、もちろん、上記より高いまたは低い投薬量範囲が妥当であるような個別例も存在することができ、それらも本発明の範囲に包含される。
【0050】
本明細書に記載する使用および方法において、ペミロラストおよび医薬上許容されるその塩は、心血管罹病および心血管死亡の処置および/または2型糖尿病の処置に役立つ1つ以上の活性成分と組み合わせることもできる。したがってそのような患者は、上記活性成分の1つ以上の投与に基づく治療も、(および/または既に)受けていてもよい。それは、本明細書において言及する活性成分の1つ以上の処方量を、ペミロラストまたはその塩による処置の前に、および/またはその処置に加えて、および/またはその処置の後に投与することを意味する。
【0051】
そのような活性成分には、トロンボキサンA2アンタゴニスト、P2Y12アンタゴニスト、PPARγアゴニスト、アンジオテンシンIIの形成および/または作用を阻害する化合物、他の血小板凝集阻害薬、抗糖尿病薬、脂質低下薬、そしてより好ましくは、スタチン類(statins)が含まれる。
【0052】
「トロンボキサンA2アンタゴニスト」という用語は、(i)トロンボキサンTP受容体をブロックすること、(ii)酵素トロンボキサンシンターゼを阻害すること、または(iii)血小板シクロオキシゲナーゼ1を(例えば選択的に)阻害することの1つ以上によって、トロンボキサンA2の効果を、インビトロおよび/またはインビボ試験において実験的に決定可能な程度に阻害し、それによって、例えば血小板凝集を阻害する能力を有する、任意の化合物を包含する。
【0053】
好ましいトロンボキサンA2アンタゴニストには、セラトロダスト、より好ましくは、エグアレン(egualen)、特にオザグレル、より好ましくは、ピコタミドおよびテルトロバン(terutroban)、とりわけアスピリン/アセチルサリチル酸、さらには特にラマトロバンが含まれる。
【0054】
「P2Y12アンタゴニスト」という用語は、血小板受容体P2Y12へのADPの結合を、インビトロおよび/またはインビボ試験において実験的に決定可能な程度に(例えば選択的に)阻害し、それによって血小板凝集を阻害する能力を有する、任意の化合物を包含する。
【0055】
好ましいP2Y12アンタゴニストには、プラスグレル、チカグレロル、特にクロピドグレルが含まれる。
【0056】
「PPARγ」アゴニストという用語は、インビトロおよび/またはインビボ試験において実験的に決定可能な程度に、ペルオキシソーム増殖因子活性化ガンマ受容体に結合し、かつ/またはその機能に影響を及ぼす能力を有する、任意の化合物を包含する。
【0057】
したがって好ましいPPARγアゴニストには、チアゾリジンジオン類と総称される化合物、例えばリボグリタゾン、ナベグリタザル、バラグリタゾン、より好ましくはロシグリタゾン、とりわけピオグリタゾンなどが含まれる。言及することができる他のPPARγアゴニストには、チグリタザル(Chiglitazar)、エタロシブ、ファルグリタザル、ロベグリタゾン(lobeglitazone)、ネトグリタゾン、ソデルグリタザル(sodelglitazar)、ならびに以下の開発途上薬コードで文献に定義されているものがある:THR−0921(Theracos Inc.)、より好ましくはAVE−0847およびAVE−0897(どちらもSanofi−Aventis)、CLX−0921(Calyx Therapeutics)、CS−7017(第一三共株式会社)、DRF−11605(Dr Reddy’s Laboratories Ltd)、GFT−505(Genfit SA)、GSK−376501(GlaxoSmithKline plc)、INT−131(Amgen Inc;InteKrin Therapeutics)、(LBM−642;セボグリタザル;Novartis AG)、ONO−5129(小野薬品工業株式会社)、(PLX−204;インデグリタザール(indeglitazar);Plexxikon Inc)およびSDX−101。
【0058】
「アンジオテンシンIIの形成および/または作用を阻害する化合物」という用語は、アンジオテンシンIIの形成および/または作用を、インビトロおよび/またはインビボ試験において実験的に決定可能な程度に(例えば選択的に)阻害する能力を有する、任意の化合物を包含し、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシン受容体ブロッカー(ARB)およびレニン阻害剤を含むと理解される。
【0059】
「アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤」という用語は、アンジオテンシンIのアンジオテンシンIIへの変換を、インビトロおよび/またはインビボ試験において実験的に決定可能な程度に(例えば選択的に)阻害する能力を有する、任意の化合物を包含する。
【0060】
言及することができるACE阻害剤には、アラセプリル、ベナゼプリル、カプトプリル、セロナプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、フォシノプリル、ゲモパトリラト、グリコプリル(glycopril)、イドラプリル、イレパトリル、イミダプリル、リベンザプリル、リシノプリル、マイクロジニン(microginin)−FR1、ミキサンプリル(mixanpril)、モエキシプリル、モエキシプリラト、モベルチプリル、オマパトリラト、プレンチル(Prentyl)、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、サムパトリラト、スピラプリル、シネコル(Synecor)、テモカプリル、トランドラプリル、ウチバプリル、ゾフェノプリルおよびザビシプリラトなどがある。より好ましいACE阻害剤には、ベナゼプリル、シラザプリル、イレパトリル、イミダプリル、モエキシプリル、スピラプリル、テモカプリルおよびゾフェノプリル、さらに好ましくはフォシノプリルおよびトランドラプリル、特にエナラプリル、リシノプリルおよびキナプリル、とりわけカプトプリル、ペリンドプリルおよびラミプリルが含まれる。
【0061】
「アンジオテンシン受容体ブロッカー(ARB)」という用語は、用語「アンジオテンシンII AT1受容体アンタゴニスト」とおおむね同義であると当業者には理解されるため、この用語は、アンジオテンシンII AT1受容体の活性化をインビトロおよび/またはインビボ試験において実験的に決定可能な程度に(例えば選択的に)ブロックする能力を有する任意の物質を包含する。
【0062】
言及することができるARBには、アジルサルタン、アジルサルタンメドキソミル、カンデサルタン、カンデサルタンシレキセチル、アンジオカイン(angiokine)ダイバル(Dival)、エリサルタン、エリサルタンカリウム、エプロサルタン、エンブサルタン(embusartan)、フィマサルタン、フォンサルタン(fonsartan)、イルベサルタン、ロサルタン、ミルファサルタン、オルメサルタン、ポミサルタン、プラトサルタン、リピサルタン、サプリサルタン、サララシン、タソサルタン、テルミサルタン、バルサルタンおよびゾラサルタンなどがある。より好ましくは、ARBには、アジルサルタン、エプロサルタン、フィマサルタンおよびプラトサルタン、さらに好ましくはテルミサルタン、特にイルベサルタンおよびオルメサルタン、とりわけカンデサルタン、ロサルタンおよびバルサルタンが含まれる。
【0063】
「レニン阻害剤」という用語は、レニン−アンジオテンシン系におけるレニンの機能を、インビトロおよび/またはインビボ試験において実験的に決定可能な程度に(例えば選択的に)ブロックする能力を有する任意の物質を包含すると、当業者には理解される。
【0064】
言及することができるレニン阻害剤には、シクロチアゾマイシン、アリスキレン、シプロキレン、ジテキレン、エナルキレン、レミキレン、テルラキレンおよびザンキレンなどがある。好ましいレニン阻害剤にはアリスキレンが含まれる。
【0065】
アンジオテンシンIIの形成および/または作用を阻害する化合物には、以下の開発途上薬コードによって文献に定義されているものも含まれる:100240、606A、A−65317、A−68064、A−74273、A−81282、A−81988、A−82186、AB−47、BIBR−363、BIBS−222、BIBS−39、BILA−2157BS、BL−2040、BMS−180560、BMS−181688、BMS−182657、BMS−183920、BMS−184698、BRL−36378、CGP−38560、CGP−38560a、CGP−42112−A、CGP−42112、CGP−421132−B、CGP−48369、CGP−49870、CGP−55128A、CGP−56346A、CGS−26670、CGS−26582、CGS−27025、CGS−28106、CGS−30440、CHF−1521、CI−996、CL−329167、CL−331049、CL−332877、CP−191166、CP−71362、CV−11194、CV−11974、DMP−581、DMP−811、DU−1777、DuP−167、DuP−532、E−4030、E−4177、EC−33、EK−112、EMD−56133、EMD−58265、EMD−66684、ER−32897、ER−32935、ER−32945、ES−1005、ES−305、ES−8891、EXP−408、EXP−597、EXP−6803、EXP−7711、EXP−929、EXP−970、FPL−66564、GA−0050、GA−0056、GA−0113、FK−739、FK−906、GR−137977、GR−70982、GW−660511、Hoe−720、ICI−219623、ICI−D−6888、ICI−D−8731、JT−2724、KR−30988、KRH−594、KRI−1314、KT3−866、KW−3433、L−158809、L−158978、L−159093、L−159689、L−159874、L−159894、L−159913、L−161177、L−161290、L−161816、L−162223、L−162234、L−162313、L−162389、L−162393、L−162441、L−162537、L−162620、L−163007、L−163017、L−163579、L−163958、L−363564、L−746072、LCY−018、LR−B−057、LY−285434、LY−301875、LY−315996、MDL−102353、MDL−27088、MDL−27467A、ME−3221、MK−8141、MK−996、PD−123177、PD−123319、PD−132002、PD−134672、PS−433540、RB−106、RS−66252、RU−64276、RU−65868、RWJ−38970、RWJ−46458、RWJ−47639、RXP−407、S−2864、S−5590、SB−203220、SC−50560、SC−51316、SC−51895、SC−52458、SC−54629、SC−565254、Sch−47896、Sch−54470、SK−1080、SKF−107328、SL−910102、SQ−30774、SQ−31844、SQ−33800、SR−43845、TA−606、TH−142177、U−97018、UK−63831、UK−77568、UK−79942、UP−275−22、WAY−121604、WAY−126227、VNP−489、XH−148、XR−510、YM−21095、YM−26365、YM−31472、YM−358およびZD−7155。
【0066】
言及することができる他の血小板凝集阻害薬には、アスピリン/アセチルサリチル酸の酸化窒素供与性誘導体(例えばNCX−4016、NicOx S.A.)、より好ましくはアナグレリド、アルガトロバン、ベラプロスト、カングレロール、シロスタゾール、ジピリダモール、リマプロスト、パログレルル、プロカインアミド、サルポグレラート(例えば塩酸サルポグレラート)、チクロピジン、チロフィバンおよびトリフルサル、ならびに以下の開発途上薬コードによって文献に定義されているものなどがある:DA−697b(国際特許出願WO2007/032498参照;第一製薬株式会社)、DG−041(deCODE Genetics Inc)、K−134(CAS登録番号189362−06−9)、PL−2200(CAS登録番号50−78−2)、PRT−60128(Portola Pharmaceuticals Inc)、SH−529(イロプロスト/ベータ−シクロデキストリン包接体;Bayer Schering Pharma AG)およびYY−280(チクロピジンとEGb−761(タナミン(tanamin);イチョウ抽出物;Yuyu Inc.)との併用療法)。
【0067】
脂質低下薬には、樹脂(例えばコレスチラミン、コレセベラム、コレスチポール、または胆汁酸と結合することで、肝臓に、より多くの胆汁酸を産生させ、その過程でコレステロールを使い果たすことによって作用する、他の任意の薬物)、B群ビタミン・ナイアシン、フィブラート(例えばベザフィブラート、シプロフィブラート、クロフィブラート、ゲムフィブロジルおよびフェノフィブラート)、またはトリグリセリドレベルを低下、LDLレベルを低下、かつ/またはHDLレベルを増加させる能力を有する他の任意の薬物、エゼチミブ、または、腸からのコレステロールの吸収を阻害することによって作用する他の任意の薬物などがある。
【0068】
「スタチン」という用語は任意のHMG−CoA還元酵素阻害剤を包含し、これには、フルバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン、グレンバスタチン、セリバスタチン、プラバスタチン、メバスタチン、ベルバスタチン、ダルバスタチンおよびアトルバスタチンなどがある。
【0069】
言及することができる他のスタチン類には、アシテマート、ベンフルオレックス、クレスチン(Clestin)、コレストロン(colestolone)、ジヒドロメビノリン、メグルトール、ラウソノール、ならびに以下のコードネームを持つ化合物などがある:ATI−16000、BAY−10−2987、BAY−x−2678、BB−476、BIO−002、BIO−003、BIO−2、BMS−180431、CP−83101、DMP−565、FR−901512、GR−95030、HBS−107、KS−01−019、L−659699、L−669262、NR−300、P−882222、PTX−023595、RP61969、S−2468、SC−32561、sc−45355、SDZ−265859、SQ−33600、U−20685、およびNO増進/放出スタチン類、例えばNCX−6550(ニトロプラバスタチン)およびNCX−6560(ニトロアトルバスタチン)。
【0070】
より好ましいスタチン類には、ピタバスタチン(例えばリバロ(Livalo(登録商標))、ピタバ(Pitava(登録商標)))、フルバスタチン(例えばレスコール(Lescol(登録商標))、シンバスタチン(例えばゾコール(Zocor(登録商標))、リペックス(Lipex(登録商標)))、ロバスタチン(例えばメバコール(Mevacor(登録商標))、アルトコール(Altocor(登録商標)))、ロスバスタチン(例えばクレストール(Crestor(登録商標))、プラバスタチン(例えばプラバコール(Pravachol(登録商標))、セレクチン(Selektine(登録商標))、リポスタット(Lipostat(登録商標))およびアトルバスタチン(例えばリピトール(Lipitor(登録商標))、トルバスト(Torvast(登録商標))がある。特に好ましいスタチン類には、シンバスタチン、更に好ましくは、アトルバスタチン、とりわけロスバスタチンが含まれる。
【0071】
言及することができる心血管罹病および心血管死亡の処置に有用な他の活性成分の医薬上許容される塩には、酸付加塩および塩基付加塩が含まれる。そのような塩は、例えばペミロラストに関して上で述べたように、従来の手段によって形成させることができる。
【0072】
言及することができるピコタミドの塩には、塩酸塩、硫酸水素塩(bisulfate)、マレイン酸塩およびトシル酸塩が含まれる。言及することができるオザグレル、テルトロバン、エグアレン (egualen)およびアスピリンの塩には、リチウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩などのアルカリ金属塩が含まれる。オザグレルおよびエグアレン(egualen)の好ましい塩にはナトリウム塩が含まれる。
【0073】
クロピドグレルの好ましい塩には硫酸水素塩(bisulfate)が含まれるが、言及することができる他の塩、ならびに言及することができるチカグレロルの塩には、塩酸塩、硫酸水素塩(bisulfate)、マレイン酸塩およびトシル酸塩が含まれる。言及することができるプラスグレルの好ましい塩には塩酸塩が含まれるが、言及することができる他の塩には、硫酸水素塩(bisulfate)、マレイン酸塩およびトシル酸塩がある。
【0074】
言及することができるピオグリタゾンの好ましい塩には塩酸塩が含まれるが、言及することができる他の塩には、硫酸水素塩、マレイン酸塩およびトシル酸塩が含まれる。言及することができるロシグリタゾンの好ましい塩にはマレイン酸塩が含まれるが、言及することができる他の塩には、塩酸塩、硫酸水素塩(bisulfate)およびトシル酸塩が含まれる。
言及することができるリボグリタゾンの塩には、塩酸塩、硫酸水素塩(bisulfate)、マレイン酸塩およびトシル酸塩が含まれる。ナベグリタザルの好ましい塩にはナトリウム塩が含まれるが、言及することができる他の塩には、リチウム塩およびカリウム塩が含まれる。言及することができるバラグリタゾンの好ましい塩には、ナトリウム塩、カリウム塩およびカルシウム塩が含まれる。
【0075】
アンジオテンシンIIの形成および/または作用を阻害する化合物の好ましい塩には、例えば塩酸塩、硫酸水素塩(bisulfate)、マレイン酸塩、メシル酸塩、トシル酸塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、またはナトリウム塩およびカリウム塩などのアルカリ金属塩などが含まれる。そのような塩は、ペリンドプリル、エナラプリル、リシノプリル、キナプリル、イルベサルタン、オルメサルタン、トランドラプリル、テルミサルタン、ベナゼプリル、シラザプリル、モエキシプリル、スピラプリル、エプロサルタンおよびフィマサルタンを含む化合物に関して、日常的な技法を使って製造することができる。ラミプリルおよびアリスキレンなどの化合物については、塩酸塩、硫酸水素塩(bisulfate)、マレイン酸塩、メシル酸塩、およびトシル酸塩が好ましい。カンデサルタン、バルサルタン、カプトプリル、ロサルタン、そして特にフォシノプリルなどの化合物については、アルカリ土類、そして特にアルカリ金属塩が好ましく、その中でも好ましい塩には、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、そして特にナトリウム塩が含まれる。言及することができるベナゼプリルおよびモエキシプリルの好ましい塩には塩酸塩が含まれるが、言及することができる他の塩には、硫酸水素塩(bisulfate)、マレイン酸塩、メシル酸塩、およびトシル酸塩が含まれる。言及することができるエプロサルタン(eprosarten)の好ましい塩にはメシル酸塩が含まれるが、言及することができる他の塩には、塩酸塩、硫酸水素塩(bisulfate)、マレイン酸塩およびトシル酸塩が含まれる。
【0076】
スタチン類の好ましい塩には、ナトリウム塩、カリウム塩およびカルシウム塩、例えばピタバスタチンカルシウム、フルバスタチンナトリウム、プラバスタチンナトリウム、ロスバスタチンカルシウムおよびアトルバスタチンカルシウムなどが含まれる。
【0077】
他の活性成分の適切な用量には、心血管障害(または適宜、糖尿病性障害)、そして特に心血管罹病および心血管死亡および/または2型糖尿病の処置に有用であるもの、当業者には知られているものが含まれる。
【0078】
また、他の活性成分の適切な用量には、マーチンデール、Martindale−The Complete Drug Reference(35th Edition)およびその引用文献などといった医学文献に、問題の薬物に関して挙げられているものが含まれ、それらの文献の全てにおいて関連する開示は上記を参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0079】
例えば量(例:血漿中CRPレベルおよび活性成分の用量)に関連して、本明細書において「約」という語を使用する場合はいつでも、その変量はおおよそであり、したがって、本明細書において指定された数字から±10%、例えば±5%、好ましくは±2%(例えば±1%)変動し得ることは、理解される。
【0080】
本明細書に記載する使用/方法は、SLGIの処置において、そのような治療で使用される従来技術において既知の類似する方法(処置)と比較して、医師および/または患者にとって便利であり、効力が高く、毒性が低く、活性範囲が広く、強力であり、生じる副作用が少なく、または他の有用な薬理学的性質を持ち得るという、利点を有し得る。
【0081】
以下に実施例を挙げて、本発明を説明するが、これらの実施例は決して本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】SLGIを有する4人の健常ボランティアにおける、ペミロラストカリウムによる5日間の処置の前および後の、血漿中CRPレベルを表す図である。点線は、0.9mg/L血漿中CRPのカットポイントを示している。
【図2】心血管疾患を有する患者における、14日間にわたるペミロラストカリウムによる処置中の、血漿中CRPレベルを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0083】
経口ペミロラスト処置によるSLGIの低減
この試験はスウェーデン医薬品局(Swedish Medical Products Agency)によって承認され、スウェーデン国リンヒェーピングのベルセリウス クリニカル リサーチ センター AB(Berzelius Clinical Research Centre AB)によって実施された。
【0084】
この試験の目的は、経口投与されたペミロラスト(後述するように10、30または50mg、1日2回投与)の薬物動態、安全性および忍容性を決定することであった。簡単に述べると、結果は、ペミロラストの忍容性が高く、吸収は比較的迅速であり、AUCおよびCmaxは用量比例的に増加することを示した。
安全面では、検査値、バイタルサインまたはECGに臨床的に重要な所見はなかった。しかし驚いたことに、ペミロラストは、>0.9mg/LのhsCRPレベルを有する(すなわち上述のようにSLGIを有する)患者における血漿中CRPレベルを低下させることがわかった。
【0085】
血漿中CRPは、ベックマン カウンター(Beckman Coulter)社製のUniCel DxC 800装置で(近赤外粒子イムノアッセイレート法(Near Infrared Particle Immunoassay rate methodology)に基づく)高感度CRPアッセイを使って決定した(分析はスウェーデン国ストックホルムのカロリンスカ大学ラボラトリー臨床化学部門(Department Of Clinical Chemistry)で行われた)。Phadia製の免疫CAP250(immunoCAP250)装置で免疫CAPトリプターゼ・フルオロ−イムノ−エンザイムアッセイ(Tryptase Fluoro−Immuno−Enzmatic Assay)を使って血漿中トリプターゼを測定することによって、肥満細胞活性の度合を決定した(分析はスウェーデン国ストックホルムのカロリンスカ大学ラボラトリー臨床免疫学輸血医学部門(Clinical Immunology And Transfusion Medicine)で行われた)。
【0086】
血漿分析のための血液試料採取は、1回目のペミロラスト投与の直前(CRPおよびトリプターゼ)と、最後の投与の2時間後(トリプターゼ)または4時間後(CRP)に行った(ペミロラストの血漿中レベルは、最後の投与後の試料採取期間中、基本的に安定したままだった)。
【0087】
17人の非アレルギー性健常ボランティア(全員男性、年齢18〜45歳、平均年齢25歳)を、10mg(n=6)、30mg(n=5)または50mg(n=6)のペミロラストカリウム(日本の大洋薬品工業株式会社から購入した10mgアルジキサール(Ulgixal)錠)で経口的に処置した。1日目の朝に1回目のペミロラストを各被験者に投与した。2〜4日目の毎日の投与の間、各被験者は、12時間の時間間隔を設けて、朝1回、晩1回で投与を受けた。最後(8回目)のペミロラストは5日目の朝に投与した。抗鼻閉薬またはパラセタモールの不定期使用を除いて、試験中は、他の薬物、アルコールまたはニコチンを使用しないように、被験者に指示した。
【0088】
17人の被験者のうち4人は、ペミロラスト処置の前に、0.9mg/Lを上回る血漿中CRPレベル(すなわち、これは上述のようにSLGIを示し、これを上回るレベルでは心血管イベントのリスクが増加することが示されている;Ridker et al,N.Engl.J.Med.,352,20(2005)参照))を有した。
【0089】
ペミロラスト(上述のように1日目〜5日目の間に投与した10mg(1被験者)、30mg(1被験者)、または50mg(2被験者))は、これら4人の被験者におけるCRPレベルを著しく低下させた(図1参照)。これら4人の被験者における平均CRPレベルは、処置前の1.8mg/Lからペミロラスト処置終了時の1.1mg/Lへと有意に低下した(p<0.05)。0.9mg/L未満のベースラインCRPレベルを有する残りの被験者では、平均CRPレベルが処置前で0.32mg/L、ペミロラスト処置の終了時点で0.38mg/Lだった(n=13)。
【0090】
血漿中トリプターゼレベル(肥満細胞活性の度合を反映する)がCRPレベルと相関するかどうかを決定するために、トリプターゼレベルもペミロラスト処置の前および後に分析した。トリプターゼのレベルは1.8〜14μg/Lであり、血漿中のCRPとトリプターゼの間に正または負の相関関係を示す傾向はなかった(相関係数0.001)。血漿中CRPが、CRP>0.9mg/LでSLGIを有し、ペミロラストがSLGIを低減した4人の被験者では、ペミロラスト処置がトリプターゼレベルを低下させることはなかった。すなわち、血漿トリプターゼレベルはペミロラスト処置の前も後も共に4.8μg/Lだった。これは、SLGIに対するペミロラストの阻害効果が肥満細胞阻害とは無関係であったことを示唆している。(これら2つの知見を合わせると(上述した従来技術の開示に加えて)肥満細胞がSLGIの起源に関与しないことのさらなる証拠になる)。
【実施例2】
【0091】
心血管疾患を有する患者における経口ペミロラスト処置によるSLGIの低減
この試験の目的は、心血管疾患を有する患者における、より具体的に述べると冠状動脈疾患(CAD)を有する患者における、血漿中C反応性タンパク質(CRP)レベルに対するペミロラストの効果を評価することであった。この試験はスウェーデン医薬品局によって承認され、スウェーデン国リンヒェーピングのベルセリウス クリニカル リサーチ センター AB(Berzelius Clinical Research Centre AB)(以下、クリニック)によって実施された。
【0092】
血漿中CRPは、上記実施例1で述べた高感度CRP(hsCRP)アッセイで決定された。
【0093】
CAD患者(下記参照)を、1日2回、2週間にわたって、30mgペミロラストカリウム(日本の大洋薬品工業株式会社から購入した10mgアルジキサール錠)で処置した。1回目(10mg×3)は1日目の朝にクリニックで投与され、2回目は1日目の晩に自宅で投与され、その後、2日目〜14日目の間は、3×10mgが1日2回自宅で投与された。最後の投与は14日目の晩に自宅で行われた。血漿中CRP分析のための血液試料採取は、1日目の最初のペミロラスト投与の直前、8日目の朝(その日の朝のペミロラスト投与の後)、および15日目の朝に行った。
【0094】
CAD患者は身長188cm、体重103kgの63歳白人男性だった。彼は、2006年以来、エナラプリル20mg QD(1日)による高血圧の処置を受けていた。2009年の心筋梗塞後に、シンバスタチン40mg QD、アセチルサリチル酸75mg QD、およびメトプロロール100mg QDによる処置を開始した(薬物は3つとも2009年6月に開始した)。2010年1月以降、患者はフェロジピン5mg QDによる処置も受けた。ペミロラストによる2週間の処置中、患者はこれらの医薬を服用し続けた。試験の開始時に、患者の身体的検査およびECG結果は正常だった。
【0095】
1日目(1回目のペミロラスト投与の前)に、患者は6.4mg/LのCRPレベルを有した。ペミロラスト処置の8日目に、CRPレベルは4.0mg/Lに低下し、15日目の朝には、CRPレベルは1.8mg/Lまで下がった(図2参照)。
【0096】
試験中、患者からの有害イベントの報告は何もなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全身性軽度炎症の処置に使用するためのペミロラストまたは医薬上許容されるその塩。
【請求項2】
全身性軽度炎症処置用医薬品を製造するためのペミロラストまたは医薬上許容されるその塩の使用。
【請求項3】
全身性軽度炎症の処置方法であって、前記処置を必要とする患者へのペミロラストまたは医薬上許容されるその塩の投与を含む方法。
【請求項4】
前記全身性軽度炎症が約0.9mg/Lより高い血漿中C反応性タンパク質レベルを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の(適宜)化合物、使用または方法。
【請求項5】
患者における血漿中C反応性タンパク質レベルを低下させる方法であって、
前記方法は、前記患者へのペミロラストまたは医薬上許容されるその塩の投与を含む方法。
【請求項6】
患者における心血管罹病および/または心血管死亡のリスクを低減する方法であって、
前記方法は、
(a)前記患者における血漿中C反応性タンパク質レベルを測定すること;
(b)前記血漿中C反応性タンパク質レベルが約0.9mg/Lより高いかどうかを決定すること;および
(c)前記血漿中C反応性タンパク質レベルが約0.9mg/Lより高い場合は、前記血漿中C反応性タンパク質レベルを低下させるために、ペミロラストまたは医薬上許容されるその塩を、ある期間にわたって、適当な投薬量で、前記患者に投与すること
を含む方法。
【請求項7】
患者における2型糖尿病の進展を低減する方法であって、
前記方法は、
(a)前記患者における血漿中C反応性タンパク質レベルを測定すること;
(b)前記血漿中C反応性タンパク質レベルが約0.9mg/Lより高いかどうかを決定すること;および
(c)前記血漿中C反応性タンパク質レベルが約0.9mg/Lより高い場合は、前記血漿中C反応性タンパク質レベルを低下させるために、ペミロラストまたは医薬上許容されるその塩を、ある期間にわたって、適当な投薬量で、前記患者に投与すること
を含む方法。
【請求項8】
前記患者が非アレルギー性および/または非喘息性である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の(適宜)化合物、使用または方法。
【請求項9】
前記患者が高血圧を有し、喫煙者または元喫煙者であり、糖尿病を有し、メタボリック症候群を有し、かつ/または25より高い肥満度指数(body mass index)を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の(適宜)化合物、使用または方法。
【請求項10】
前記患者が、トロンボキサンA2アンタゴニスト、P2Y12アンタゴニスト、PPARγアゴニスト、アンジオテンシンIIの形成および/または作用を阻害する化合物、血小板凝集阻害薬およびスタチンから選択される活性成分の投与を含む治療も受けている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の(適宜)化合物、使用または方法。
【請求項11】
前記活性成分がスタチンである、請求項10に記載の化合物、使用または方法。
【請求項12】
前記活性成分がアトルバスタチンまたはロスバスタチンである、請求項11に記載の化合物、使用または方法
【請求項13】
活性成分が、アスピリン/アセチルサリチル酸、エグアレン(egualen)、オザグレル、ピコタミド、テルトロバン、セラトロダスト、ラマトラバン、プラスグレル、チカグレロル、クロピドグレル、リボグリタゾン、ナベグリタザル、バラグリタゾン、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン、カプトプリル、ペリンドプリル、ラミプリル、カンデサルタン、ロサルタン、バルサルタンまたはアリスキレンである、請求項10に記載の化合物、使用または方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−510837(P2013−510837A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538402(P2012−538402)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【国際出願番号】PCT/GB2010/002096
【国際公開番号】WO2011/058331
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(509171232)カルドズ・アーベー (4)
【Fターム(参考)】