説明

六価クロムを含む焼却灰の無害化方法

【課題】低コストで、設備費も安く、処理安定性に優れる六価クロムを含む焼却灰の無害化方法を提供すること。
【解決手段】六価クロムを含む焼却灰に金属アルミニウム粉を0.3%〜1.0%加えて混合攪拌して混合物を得る混合工程と、前記混合工程で得られた混合物に10%〜15%の水を水量を制御して添加しながら混合攪拌して水添混合物を得る水添加工程と、前記水添加工程で得られた水添混合物を8時間〜24時間養生する養生工程とにより六価クロムを三価クロムに還元することを特徴とする六価クロムを含む焼却灰の無害化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、六価クロムを含む焼却灰の無害化方法に関し、詳しくは低コストで、設備費も安く、処理安定性に優れる六価クロムを含む焼却灰の無害化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メッキ加工、皮鞣し等の工場などから発生するクロムを多く含む排水を生物処理した汚泥を焼却する場合や、クロムを含む廃棄物などを焼却する場合には、焼却の際に発生した焼却灰に有害な六価クロムが多く含まれるおそれがある。
【0003】
このような六価クロムを含む焼却灰は、焼却処分すると、土壌中に溶出して公害問題を発生させるおそれがある。
【0004】
焼却灰中に含まれる六価クロムを無害化するには、一般的に廃棄物などの焼却を還元性雰囲気で行い、廃棄物に含まれる六価クロムを三価クロムの形にすることが行われているが、焼却そのものは高温酸化反応であるため、還元性雰囲気を形成することは容易でない。
【0005】
特許文献1には、焼結灰排出口近傍に形成された高温の造粒灰焼結部を還元性雰囲気とし、焼却灰中の六価クロムを三価クロムとして無害化させる方法が開示されている。
【0006】
なお、排水処理において、六価クロムを三価クロムとして無害化する手法として、還元薬剤を用いた還元手法が知られている。また固化や封じ込め方法も知られている(特許文献2)。
【特許文献1】特許3174527号公報
【特許文献2】特開2000−86322号公報(セメント固化)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のような還元性雰囲気の形成による手法は、造粒灰焼結部が高温酸化反応を完全に抑制できるわけではないので、三価クロムが酸化されて六価クロムに戻されるおそれがある。そのため得られた造粒灰焼結体の商品価値を減少させることになる。
【0008】
また造粒灰焼結部の形成自体の設備コストもかかり、還元性雰囲気の形成に燃料コストがかかる欠点もある。
【0009】
なお、排水処理における六価クロムを三価クロムとして無害化する手法を適用した場合、薬剤処理の場合、混合処理が基本のため、設備コストは高くないが、薬剤による処理コストが高い欠点がある。例えば焼却灰中の六価クロムが5〜10mg/L含有されている場合、1トンの灰処理費として、2〜3%(重量比)添加で、4000〜6000円/トンの実薬剤コストが発生する(薬剤単価は一般的に200円/Kg程度)。
【0010】
また固化や封じ込め方法ではプロセスが複雑となり、処理設備の建設費が高い欠点がある。また長期間の間には、封じ込め機能が低下し、漏洩する危険性がある。
【0011】
そこで、本発明は、低コストで、設備費も安く、処理安定性に優れる六価クロムを含む焼却灰の無害化方法を提供することを課題とする。
【0012】
更に本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0014】
(請求項1)
六価クロムを含む焼却灰に金属アルミニウム粉を0.3%〜1.0%加えて混合攪拌して混合物を得る混合工程と、前記混合工程で得られた混合物に10%〜15%の水を水量を制御して添加しながら混合攪拌して水添混合物を得る水添加工程と、前記水添加工程で得られた水添混合物を8時間〜24時間養生する養生工程とにより六価クロムを三価クロムに還元することを特徴とする六価クロムを含む焼却灰の無害化方法。
【0015】
(請求項2)
六価クロムを含む焼却灰に金属アルミニウム粉を0.3%〜1.0%加えて混合攪拌して混合物を得る予備混合工程と、六価クロムを含む焼却灰に20%〜30%の水を水量を制御して添加しながら混合攪拌して湿り焼却灰を得る水添加工程と、前記予備混合工程で得られた混合物と水添加工程で得られた湿り焼却灰とを同量ずつ混合機に供給して混合攪拌して水添混合物を得る混合工程と、前記水添加工程で得られた水添混合物を8時間〜24時間養生する養生工程とにより六価クロムを三価クロムに還元することを特徴とする六価クロムを含む焼却灰の無害化方法。
【0016】
(請求項3)
金属アルミニウム粉が、屑アルミニウム粉であることを特徴とする請求項1又は2記載の六価クロムを含む焼却灰の無害化方法。
【0017】
(請求項4)
金属アルミニウムがコーティングされた廃プラスチックから製造されたRPFと六価クロムを含む焼却灰を燃焼設備に供給して燃焼する燃焼工程と、前記燃焼工程から発生する混合焼却灰を捕集する捕集工程と、前記捕集工程で捕集される混合焼却灰中の金属アルミニウム濃度を0.5〜1.0%になるように前記RPFの供給量を調整して燃焼灰中の金属アルミニウム濃度を調整する調整工程と、前記調整工程で調整された混合燃焼灰に10〜15%の水を水量を制御して添加しながら混合攪拌する水添加工程と、前記水添加工程後に養生する養生工程とにより六価クロムを三価クロムに還元することを特徴とする六価クロムを含む焼却灰の無害化方法。
【0018】
(請求項5)
廃プラスチックが円柱状又は角柱状に圧縮成型してなることを特徴とする請求項4記載の六価クロムを含む焼却灰の無害化方法。
【0019】
(請求項6)
廃アルミニウム缶を破砕機にて1〜5mm程度に破砕する破砕工程と、前記破砕工程で粉砕されたアルミ破砕品を一定量の割合で燃焼設備に供給して燃焼する燃焼工程と、前記燃焼工程から発生する混合焼却灰を捕集する捕集工程と、前記捕集工程で捕集される焼却灰中の金属アルミニウム濃度を0.5〜1.0%になるように前記アルミ破砕品の供給量を調整して燃焼灰中の金属アルミニウム濃度を調整する調整工程と、前記調整工程で調整された混合燃焼灰に10〜15%の水を水量を制御して添加しながら混合攪拌する水添加工程と、前記水添加工程後に養生する養生工程により六価クロムを三価クロムに還元することを特徴とする六価クロムを含む焼却灰の無害化方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、低コストで、設備費も安く、処理安定性に優れる六価クロムを含む焼却灰の無害化方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
<第1の態様>
図1は、本発明の第1の態様を実施するための無害化装置の一例を示すフロー図であり、同図において、1は混合工程に好ましく採用される混合機であり、10は混合機1内に設置される攪拌機である。混合機1には、六価クロムを含む焼却灰と金属アルミニウム粉が供給される。金属アルミニウム粉としては、例えば軽量気泡コンクリート(ALC)などに利用されているアルミニウム粉(10〜40ミクロン粒子)が使用される。
【0023】
図1において、2は六価クロムを含む焼却灰を入れたホッパーであり、3は金属アルミニウム粉を入れたホッパーである。六価クロムを含む焼却灰はホッパー2から配管20を介して混合機1に供給され、量的な制御(調整)が可能なように配管20にボール弁のような調整弁21が設けられている。また金属アルミニウム粉はホッパー3から配管30を介して混合機1に供給され、量的な制御(調整)が可能なように配管30にボール弁のような調整弁31が設けられている。
【0024】
混合工程に採用される混合機1には、六価クロムを含む焼却灰に金属アルミニウム粉が0.3%〜1.0%(混合物全量に対して)添加混合される。0.3%未満であると、効果が不十分で六価クロムが残存するという問題があり、1.0%を越えると、必要以上に金属アルミニウム粉を加えるため不経済であるという問題がある。
【0025】
次に、水添加工程で、前記混合工程で採用される混合機1で得られた混合物に10%〜15%(混合物全量に対して)の水を添加しながら混合攪拌する。水添加工程は水供給管4を備え、水供給管4には制御弁40が設けられている。制御弁40は水の供給量を制御する機能を果たす。
【0026】
次に、養生工程において、前記水添加工程で得られた混合物を8時間〜24時間養生する。図示の例では得られた混合物を搬送コンベア5で図示しない建屋に移送し、建屋内に放置する。養生というのは、建屋内で温度や湿度があまり変化しない状況下に放置し過剰の水分をゆっくり大気中に蒸発させるということを意味する。
【0027】
かかる養生によって六価クロムが三価クロムに還元される。本発明者の実験によれば、養生後の混合物は六価クロム溶出量がほぼゼロとなることが明らかになっており、六価クロムを含む焼却灰が無害化される。
【0028】
金属アルミによる六価クロムの還元反応は、金属アルミニウム粉が水と反応して酸化され、水酸化アルミになる時に生成する活性水素(H・)による還元作用による。反応式で示すと以下の(1)、(2)の反応による。
【0029】
Al+3HO=Al(OH)+3H・ (1)
Cr6++3H・=Cr3++3/2H (2)
【0030】
上記の(1)、(2)式を比較すると、反応速度は(1)>(2)であり、(1)式で発生する水素ラジカルは容易に大気中に飛散してしまう。このため反応は右方向に進み、水を消費して、(2)の反応が完了する前に金属アルミニウムが不活性の水酸化アルミニウムに変わってしまうという問題がある。
【0031】
このことは(2)の反応効率が低下することであり、その結果、必要なアルミニウム量が増大してしまうという重大な問題となっていた。
【0032】
かかる問題を解消するために、アルミニウムの水酸化反応による水素発生の反応速度(上記(1)の反応速度)と六価クロムの三価クロムへの還元反応速度(上記(2)の反応速度)をほぼ一致させる必要がある。
【0033】
そこで、本発明者は、このアルミニウム水酸化反応を制御するため、水量を制御して(水の添加量を制御)、最も反応効率がアップする低コストが可能な方法(経済的な方法)を実験的に見出した。
【0034】
すなわち本態様では、この(1)式の反応を制御するためには、水の供給速度(添加速度)を制御する。かかる供給速度制御は、制御弁40によって行う。本発明では、比例制御でも、段階的な制御のいずれでもよい。段階的な制御の場合には、例えばタイマーによって制御する方式でもよい。
【0035】
<第2の態様>
図2は、本発明の第2の態様を実施するための無害化装置の一例を示すフロー図であり、同図において、図1と同一符号の部位は同一構成であるので、その説明を援用する。
【0036】
図2に示す態様は、第1に六価クロムを含む焼却灰に金属アルミニウム粉を0.3%〜1.0%加えて混合攪拌して混合物を得る予備混合工程を備えている。図2において、6は攪拌機60を備えた予備混合機である。六価クロムを含む焼却灰はホッパー2から配管20を介して予備混合機6に供給され、量的な制御(調整)が可能なように配管20にボール弁のような調整弁21が設けられている。また金属アルミニウム粉はホッパー3から配管30を介して予備混合機6に供給され、量的な制御(調整)が可能なように配管30にボール弁のような調整弁31が設けられている。
【0037】
この態様で特徴的なのは、焼却灰のホッパー2から配管22を介して供給される六価クロムを含む焼却灰に20%〜30%の水を水量を制御して添加しながら混合攪拌して湿り焼却灰を得る水添加工程を有していることである。なお、23は調整弁である。
【0038】
水添加工程を実施するには、湿り焼却灰を得られるように、上記予備混合機とは別の破線で示される予備の混合機24を設けて、その中で混合攪拌するようにしてもよいし、あるいは混合機1をバッチ式で運転し、六価クロムを含む焼却灰と水だけを供給して湿り焼却灰を得ることもできる。
【0039】
次いで、前記予備混合工程で得られた混合物と水添加工程で得られた湿り焼却灰とを同量ずつ混合工程に採用される混合機1に供給して混合攪拌して水添混合物を得る。
【0040】
次いで、養生工程で前記水添加工程で得られた水添混合物を8時間〜24時間養生することにより六価クロムを三価クロムに還元する。
【0041】
この態様は、金属アルミニウム添加量を削減するものである方法としては第1の態様と同様であり、本発明者は、六価クロムを含む焼却灰を2つに分割し、一方には金属アルミニウム粉を混合し、もう一方には水だけを添加して混合し、その後この水添加灰にアルミニウム粉を混合した灰を混合した後、養生することにより、急激なアルミニウムの水酸化反応を抑制し、アルミニウム添加量を削減でき、低コストが可能な方法(経済的な方法)であることを見出した。
【0042】
<第3の態様>
本発明の第3の態様は、金属アルミニウム粉が、屑アルミニウム粉であることである。
市販のアルミニウム粉ではコストが高い(1000〜1500円/Kg)という課題がある。その対策として、屑アルミニウム粉を用いることとした。金属アルミニウム粉の製造過程で発生する屑アルミニウム粉は150〜200円/Kg程度であり、これは従来より使用されている還元薬剤とほぼ同じ価格帯である。六価クロム還元性能も通常のアルミニウム粉とほとんど変わらないことを実験的に確認している。
【0043】
<第4の態様>
廃プラスチックのなかの食品梱包プラスチックの内面にはアルミニウムがコーティングされており、これをボイラなどで燃焼させた場合は、燃焼灰中に酸化されていない金属アルミニウム粉が含まれることが当社の燃焼試験で明らかになった。特に、廃プラスチックを円柱状に圧縮成型した場合、ボイラ内部の燃焼によってもアルミニウムが酸化されて、反応性のないALにならず、金属アルミニウムのままで、集塵設備で10〜40ミクロンの微粉として排出される割合が増大することを確認した。
【0044】
また、金属アルミニウム含有燃焼灰(灰中に0.5%以上の金属アルミニウム粉を含む)は、水を加えると、水素を発生し、その反応時に六価クロムを還元して三価クロムに還元することを確認した。
【0045】
さらに、このアルミニウムを含む廃プラスチックは、ボイラ内でアルミニウムの溶融付着を生じるため、燃料としての利用に限界があり、ボイラ燃料として受け入れる場合、アルミ含有率に制限を加えられていることが多い。したがって、アルミニウムを含む廃プラスチックの引き取り量が限られる問題をかかえている。
【0046】
このため金属アルミニウムを含むRPFをボイラ燃料として供給し、六価クロムを含む焼却灰をボイラに同時に供給して金属アルミニウムのボイラヘの溶融付着防止と六価クロムの還元を同時に行うことができる。
【0047】
金属アルミの溶融付着問題は、六価クロムは含むが金属アルミは含まない焼却灰を供給するため、灰中の金属アルミニウム濃度が低下し、付着限界以下となるため、これを防止できる。
【0048】
また、六価クロムを含む焼却灰は集塵設備で金属アルミニウムと混合された状態で排出されるため、水添加と養生により無害な灰として処理できる。
【0049】
図3は、本発明の第4の態様を実施するための無害化装置の一例を示すフロー図であり、同図に示す例はRPF燃焼ボイラとして循環流動層ボイラを用いたものである。100は燃焼工程に採用される燃焼設備の一例である火炉であり、金属アルミニウムがコーティングされた廃プラスチックから製造されたRPFと六価クロムを含む焼却灰が供給される。その他燃料として建築廃材などを供給することもできる。
【0050】
次いで、捕集工程で六価クロムを含む焼却灰は金属アルミニウムと混合された状態で捕集される。捕集工程は、図3の例ではサイクロン101、サイクロン101で分離された高温粒子を捕集する捕集機102、サイクロン101の上部から排出される焼却灰を含む排ガスから熱交換する熱交換器103、排ガス中に含まれる灰分と金属アルミニウムを捕集するバグフィルタ104によって構成されている。なお、同図において105は煙突、106は吸引ファンである。
【0051】
本態様では、前記捕集工程で捕集される混合焼却灰中の金属アルミニウム濃度は0.5〜1.0%になるように調整される必要があり、そのためには前記RPFの供給量を調整する手法を採用する。本発明では、このように燃焼灰中の金属アルミニウム濃度を調整するのが調整工程である。
【0052】
次いで、上記第1の態様と同様に、水添加工程で、前記調整工程で調整された混合燃焼灰に10〜15%の水を水量を制御して添加しながら混合攪拌し、次いで前記水添加工程後に養生工程で養生することにより六価クロムを三価クロムに還元することができる。
【0053】
すなわち、このアルミコーティングされた廃プラスチックを燃焼設備(ボイラなど)で一定量燃焼し、焼却灰中の金属アルミの濃度を一定範囲に調整すれば、焼却灰に金属アルミニウム粉を添加混合するのと同様な効果が得られることが明らかとなった。この焼却灰に一定量の水を添加し、24時間程度養生することで、六価クロムをほぼ100%無害の三価クロムに還元できた。
【0054】
<第5の態様>
この態様は、廃アルミニウム缶は非常に入手しやすいアルミニウム源であることから、それらの廃アルミニウム成分を積極的に利用し、その焼却灰中の金属アルミニウム粉を用いて六価クロム含有焼却灰の無害化を図るプロセスである。
【0055】
第4の態様において用いた金属アルミを含むRPFの代替品として、回収アルミニウム缶を利用する。
【0056】
第4の態様と同様に、RPF燃焼ボイラとして循環流動層ボイラを利用し、アルミニウム源として回収アルミニウム缶を破砕機107にて1〜5mm程度まで破砕して定量的にボイラに供給出来る状態とし、一定量を火炉100に供給する。
【0057】
火炉100内の燃焼温度は850℃程度のため、アルミニウム缶は溶融し、循環粒子により微細化されてバグフィルタ104で捕集される。
【0058】
このバグフィルタ104で捕集される焼却灰中の金属アルミ濃度を0.5〜1.0%程度となるようにアルミニウム缶供給量を調整することにより、ボイラ内へのアルミ溶融付着は防止できる。捕集された焼却灰は、水添加後に養生することにより六価クロムを還元して無害化を図ることができる。
【実施例】
【0059】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されない。
【0060】
実施例1(アルミニウム添加割合と六価クロムの溶出濃度の関係)
(手法1)
図1に示す装置(1段混合法)を用いて実験した。
【0061】
1.5mg/Lの六価クロムを含む焼却灰に金属アルミニウム粉を図4のように変化させて混合攪拌して混合物を得て、その混合物に15%の水を添加しながら混合攪拌し、その水添混合物を8時間養生した。金属アルミニウム粉として軽量気泡コンクリート(ALC)に用いるアルミニウム粉(10〜40ミクロン粒子)を用いた。
【0062】
24時間養生後の混合物について、六価クロムの溶出濃度を分析(JIS K 0102 65.2.1)した。その結果を図4に示す。
【0063】
(手法2)
手法1において、金属アルミニウム粉を、屑アルミニウム粉に代えた以外は同様に行い、24時間養生後の混合物について、六価クロムの溶出濃度を分析(JIS K 0102 65.2.1)した。その結果を図4に示す。
【0064】
(手法3)
手法2において、水添加工程において、添加する水の量を制御して添加した。添加量の制御はタイマーにより、1時間毎に5%の水を添加し、合計15%となるように制御した。24時間養生後の混合物について、六価クロムの溶出濃度を分析(JIS K 0102 65.2.1)した。その結果を図4に示す。
【0065】
(手法4)
図2に示す装置を用いて実験した。すなわち水を添加した焼却灰と、アルミニウム粉を添加した焼却灰を混合する(2段階混合)手法を採用した。
【0066】
1.5mg/Lの六価クロムを含む焼却灰を用いた。また金属アルミニウム粉としては屑アルミニウム粉を用いた。水の添加量は、混合物に対して15%となるように段階的に添加した。
【0067】
24時間養生後の混合物について、六価クロムの溶出濃度を分析(JIS K 0102 65.2.1)した。その結果を図4に示す。
【0068】
実施例2
図3に示す循環流動層ボイラを用いて実験を行った。燃料は建築廃材75%、RPF25%含有のものを用いた。焼却灰への水添加量は15wt%とした。養生時間は24時間とした。
【0069】
調整工程で、前記捕集工程で捕集される混合焼却灰中の金属アルミニウム濃度を0.5〜1%になるように前記RPFの供給量を調整して燃焼灰中の金属アルミニウム濃度を調整する効果を確認するために、RPF中のアルミニウム濃度と六価クロムの溶出濃度の関係を調べた。その結果を図5に示す。
【0070】
実施例3
図3に示す循環流動層ボイラを用いて実験を行った。燃料は金属アルミニウム含有RPFと六価クロムを含む焼却灰を用いた。六価クロムを含む焼却灰中の六価クロム濃度は30mg/gであった。RPF中の金属アルミニウム濃度は3wt%であった。
【0071】
水添加後、24時間養生した後の六価クロムの溶出濃度は0.04mg/L未満であった。
【0072】
六価クロムを含む焼却灰の火炉への供給量と、処理後の灰中の金属アルミニウム濃度を調べ、同時に流動層ボイラ(火炉)へのアルミニウム付着の状態を調べた。その結果を図6に示す。
【0073】
図6より、燃焼灰中の金属アルミニウム濃度を0.5〜1wt%に保持することにより、ボイラ内への溶融アルミニウム付着問題を回避しながら、燃焼灰中の六価クロムを、水添加により三価クロムに還元することができることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の態様を実施するための無害化装置の一例を示すフロー図
【図2】本発明の第2の態様を実施するための無害化装置の一例を示すフロー図
【図3】本発明の第4、5の態様を実施するための無害化装置の一例を示すフロー図
【図4】アルミニウム添加割合と六価クロムの溶出濃度の関係を示すグラフ
【図5】RPF中のアルミニウム濃度と六価クロムの溶出濃度の関係を示すグラフ
【図6】六価クロムを含む焼却灰の火炉への供給量と処理後の灰中の金属アルミニウム濃度の関係を示すグラフ
【符号の説明】
【0075】
1:混合機
10:攪拌機
2:ホッパー
20:配管
21:調整弁
22:配管
23:調整弁
24:予備の混合機
3:ホッパー
30:配管
31:調整弁
4:水供給管
40:制御弁
5:搬送コンベア
6:予備混合機
60:攪拌機
100:火炉
101:サイクロン
102:捕集機
103:熱交換器
104:バグフィルタ
105:煙突
106:吸引ファン
107:破砕機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
六価クロムを含む焼却灰に金属アルミニウム粉を0.3%〜1.0%加えて混合攪拌して混合物を得る混合工程と、前記混合工程で得られた混合物に10%〜15%の水を水量を制御して添加しながら混合攪拌して水添混合物を得る水添加工程と、前記水添加工程で得られた水添混合物を8時間〜24時間養生する養生工程とにより六価クロムを三価クロムに還元することを特徴とする六価クロムを含む焼却灰の無害化方法。
【請求項2】
六価クロムを含む焼却灰に金属アルミニウム粉を0.3%〜1.0%加えて混合攪拌して混合物を得る予備混合工程と、六価クロムを含む焼却灰に20%〜30%の水を水量を制御して添加しながら混合攪拌して湿り焼却灰を得る水添加工程と、前記予備混合工程で得られた混合物と水添加工程で得られた湿り焼却灰とを同量ずつ混合機に供給して混合攪拌して水添混合物を得る混合工程と、前記水添加工程で得られた水添混合物を8時間〜24時間養生する養生工程とにより六価クロムを三価クロムに還元することを特徴とする六価クロムを含む焼却灰の無害化方法。
【請求項3】
金属アルミニウム粉が、屑アルミニウム粉であることを特徴とする請求項1又は2記載の六価クロムを含む焼却灰の無害化方法。
【請求項4】
金属アルミニウムがコーティングされた廃プラスチックから製造されたRPFと六価クロムを含む焼却灰を燃焼設備に供給して燃焼する燃焼工程と、前記燃焼工程から発生する混合焼却灰を捕集する捕集工程と、前記捕集工程で捕集される混合焼却灰中の金属アルミニウム濃度を0.5〜1.0%になるように前記RPFの供給量を調整して燃焼灰中の金属アルミニウム濃度を調整する調整工程と、前記調整工程で調整された混合燃焼灰に10〜15%の水を水量を制御して添加しながら混合攪拌する水添加工程と、前記水添加工程後に養生する養生工程とにより六価クロムを三価クロムに還元することを特徴とする六価クロムを含む焼却灰の無害化方法。
【請求項5】
廃プラスチックが円柱状又は角柱状に圧縮成型してなることを特徴とする請求項4記載の六価クロムを含む焼却灰の無害化方法。
【請求項6】
廃アルミニウム缶を破砕機にて1〜5mm程度に破砕する破砕工程と、前記破砕工程で粉砕されたアルミ破砕品を一定量の割合で燃焼設備に供給して燃焼する燃焼工程と、前記燃焼工程から発生する混合焼却灰を捕集する捕集工程と、前記捕集工程で捕集される焼却灰中の金属アルミニウム濃度を0.5〜1.0%になるように前記アルミ破砕品の供給量を調整して燃焼灰中の金属アルミニウム濃度を調整する調整工程と、前記調整工程で調整された混合燃焼灰に10〜15%の水を水量を制御して添加しながら混合攪拌する水添加工程と、前記水添加工程後に養生する養生工程により六価クロムを三価クロムに還元することを特徴とする六価クロムを含む焼却灰の無害化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−301421(P2007−301421A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−19633(P2006−19633)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】