説明

六方晶マグネトプランバイト型フェライト、その製造方法および磁気記録媒体

【課題】小さい平均板径、適切な板径の変動係数、板状比および抗磁力を有する六方晶マグネトプランバイト型フェライトおよびその製造方法を提供し、該フェライトを磁性層に使用し、MRヘッドを使用して再生したとき短波長出力が高く、媒体ノイズが低い磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】逆ミセル法により所望の六方晶マグネトプランバイト型フェライト組成の共沈物を形成し、この表面をアルカリ土類金属化合物で被覆し、被覆物を空気中550〜650℃で加熱し、続いて650〜900℃で加熱しフェライト化し、得られた生成物を洗浄し、平均板径10〜30nm、板径の変動係数5〜25%、板状比1.5〜4.5、かつ抗磁力125〜400kA/mの六方晶マグネトプランバイト型フェライトを得る。また該フェライトを磁性粉末として磁性層に含有させ、磁気記録媒体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高密度磁気記録媒体に使用される六方晶マグネトプランバイト型フェライトおよびその製造方法に関し、特に微細でかつ粒度分布が優れた六方晶マグネトプランバイト型フェライトおよびその製造方法に関する。また本発明は、該六方晶マグネトプランバイト型フェライトを磁性層に有し、特に再生に磁気抵抗効果を利用したMRヘッドを使用したシステムに好適な、磁気テープ等の磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビデオテープ、コンピューター用テープ、フレキシブルディスク等の磁気記録媒体としては、強磁性酸化鉄、Co変性強磁性酸化鉄、CrO2、強磁性合金金属粉末、六方晶フェライト等を結合剤中に分散した磁性層を支持体に塗設したものが広く用いられる。この中でも六方晶系フェライトは高密度記録特性に優れている事が知られている(例えば、特開昭60−157719号公報、特開昭62−109226号公報、特開平3−280215号公報)。特開平5−12650号公報には、該フェライトを用いた磁性層の厚みを0.1〜0.6μmとし、磁性層と支持体の間に磁性層より厚い非磁性層を設け、表面性、短波長出力、消去特性、耐久性を改善するとしている。特開平5−225547号公報には、支持体上に非磁性層を設け、その上に0.1μm以下の磁性粉を含有した磁性層を設けた磁気記録媒体を開示し、高域特性に優れ、しかも信号の重ね書き特性の良好な、耐久性も良好な磁気記録媒体を提供している。
【0003】
最近、コンピュ−タ−用デ−タ記録システムには、磁気抵抗効果を利用した高感度な再生ヘッド(MRヘッド)が使用されるようになり、システムノイズは磁気記録媒体に由来するノイズに支配されている。特開平7−182646号公報にはBaフェライトを使用した媒体をMRヘッドで再生することが提案されている。媒体ノイズを低減するため磁性粉末の微細化が進められているが、磁性粉末の微細化にともない熱揺らぎの影響を受け、磁化遷移領域の安定性が問題となることが推定されている。磁化の安定性は、KuV/kT(Kuは磁気異方性定数、Vは粒子体積、kはボルツマン定数、Tは絶対温度)で評価されている。メタルテープの粒子体積と熱揺らぎに関しては、鈴木俊行らによる報告(信学技報MR97−55 P33−40 1997.11.21)がある。また、Baフェライト媒体と熱揺らぎに関しても鈴木俊行らの報告がある(信学技報 MR2000−45 2000.11.14、日本応用磁気学会誌25 1399-1404(2001)、同26 258-262(2002) )。
【0004】
六方晶フェライトは飽和磁化が強磁性金属粉末の約1/3〜1/2であるので、Kuを大きくすることが難しく熱揺らぎの影響は大きくなる。特に微細な粒子が含まれると、熱揺らぎの影響が大きくなり、平均粒子径が小さくなればなるほど粒度分布の均一性が求められる。また、六方晶フェライトを用いた磁気記録媒体は粒子間の相互作用が大きく、媒体のノイズレベルに影響すると言われている。粒子間の相互作用が大きいと磁化の安定性が優れていると言われているが、なんらかの原因で粒子が磁化反転すると周囲の磁性体もひきずられて磁化反転する可能性がある。そのためか粉体サイズを微細にした六方晶フェライト粉末を用いて作成した高密度記録用媒体をMRヘッドで再生したとき、C/Nを十分に確保することが困難であるという問題があった。
【0005】
六方晶フェライト磁性粉末の製法としてはガラス結晶化法、共沈法、水熱反応法等があるが、いずれの方法でも磁気記録媒体のノイズを低下させるために、使用される磁性粉末を微細化しかつ粒度分布を小さくすることが絶えず指向されている。六方晶フェライトでも、粒度分布を小さくするため核発生と成長反応を分離することが試みられている(特開昭59−151339号公報、特開平10−92618号公報)。ガラス化結晶法での結晶化条件については、特開昭58−42203号公報、特開昭60−262403号公報に非晶質フレークサイズ、厚みと加熱温度を規定し結晶化し、特性が均一な六方晶フェライトを得ることが提案されている。しかしながら、目的とする粒子サイズが小さくなるにつれ、非晶質フレーク全体を均一加熱すると核生成と成長を分離することが困難となり、従来の条件では所望の高密度記録が達成できる微粒子かつ粒度分布が良好な六方晶フェライトを生成することができない。また特許文献1には、共沈法を改良した製造方法として、金属塩化合物を界面活性剤の存在下で水と混じりあわない有機溶媒中に分散させW/Oエマルジョンを形成させアルカリ水溶液と混合することで得た共沈物を焼成し、平均径が0.1μm程度のBaフェライトを得ている。しかしながら特許文献1に記載されたBaフェライトは粒子サイズが大きく、高記録密度磁気記録媒体には使用することができない。
【0006】
【特許文献1】特開平3−204909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、小さい平均板径、適切な板径の変動係数、板状比および抗磁力を有する六方晶マグネトプランバイト型フェライトおよびその製造方法を提供し、該六方晶マグネトプランバイト型フェライトを磁性層に使用し、MRヘッドを使用して再生したとき短波長出力が高く、媒体ノイズが低い磁気記録媒体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記マグネトプランバイト型フェライトを製造するため鋭意検討した結果、逆ミセル法により所望のマグネトプランバイト型フェライト組成の微細な共沈物を形成し、この表面をアルカリ土類金属化合物で被覆した後熱処理することで、粒子間焼結が防止され、逆ミセル径に対応する粒子サイズを有し、かつ粒度が均一なマグネトプランバイト型フェライトが得られることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は以下のとおりである。
1)以下の(1)〜(3)の工程を有する、平均板径が10〜30nm、板径の変動係数が5〜25%、板状比が1.5〜4.5、かつ抗磁力が125〜400kA/mである六方晶マグネトプランバイト型フェライトの製造方法。
(1)逆ミセル法により所望の六方晶マグネトプランバイト型フェライト組成の共沈物を形成し、この表面をアルカリ土類金属化合物で被覆する工程;(2)前記(1)工程で得られた被覆物を乾燥した後、空気中550〜650℃で加熱し、続いて650〜900℃で加熱しフェライト化する工程;および(3)前記(2)工程で得られた生成物を洗浄し、六方晶マグネトプランバイト型フェライトを回収する工程。
2)以下の(1’)、(2)および(3)の工程を有する、平均板径が10〜30nm、板径の変動係数が5〜25%、板状比が1.5〜4.5、かつ抗磁力が125〜400kA/mである六方晶マグネトプランバイト型フェライトの製造方法。
(1’)所望の六方晶マグネトプランバイト型フェライト組成となる塩化物を出発原料とし、アルカリ金属水酸化物を使用し逆ミセル法により共沈物を形成し、共存するアルカリ金属塩化物を除去することなく、この表面をアルカリ土類金属化合物で被覆する工程;(2)前記(1)工程で得られた被覆物を乾燥した後、空気中550〜650℃で加熱し、続いて650〜900℃で加熱しフェライト化する工程;および(3)前記(2)工程で得られた生成物を洗浄し、六方晶マグネトプランバイト型フェライトを回収する工程。
3)上記1)または2)に記載の製造方法により製造された、平均板径が10〜30nm、板径の変動係数が5〜25%、板状比が1.5〜4.5、かつ抗磁力が125〜400kA/mである六方晶マグネトプランバイト型フェライト。
4)非磁性支持体上に磁性粉末および結合剤を含有する磁性層を有する磁気記録媒体であって、前記磁性粉末が上記3)に記載の六方晶マグネトプランバイト型フェライトを含有することを特徴とする磁気記録媒体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、小さい平均板径、適切な板径の変動係数、板状比および抗磁力を有する六方晶マグネトプランバイト型フェライトおよびその製造方法を提供し、該六方晶マグネトプランバイト型フェライトを磁性層に使用し、MRヘッドを使用して再生したとき短波長出力が高く、媒体ノイズが低い磁気記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の製造方法における(1)工程は、逆ミセル法により所望の六方晶マグネトプランバイト型フェライト組成の共沈物を形成し、この表面をアルカリ土類金属化合物で被覆する工程である。
【0012】
本発明における前記共沈物を形成するには、次のような方法が挙げられる。
(逆ミセル溶液(I)の調製)
まず、界面活性剤を含有する非水溶性有機溶媒と中和剤および/または酸化剤水溶液とを混合した逆ミセル溶液(I)を調製する。
前記界面活性剤としては、油溶性界面活性剤が用いられる。具体的には、スルホン酸塩型(例えば、エーロゾルOT(和光純薬製))、4級アンモニウム塩型(例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)、エーテル型(例えば、ペンタエチレングリコールドデシルエーテル)、ソルビタンモノオレエート等、HLB値が4〜6のノニオン系などが挙げられる。非水溶性有機溶媒中の界面活性剤量は、20〜200g/リットルであることが好ましい。
【0013】
前記界面活性剤を溶解する非水溶性有機溶媒として好ましいものは、アルカン、エーテルおよびアルコール等が挙げられる。アルカンとしては、炭素数7〜12のアルカン類であることが好ましい。具体的には、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等が好ましい。エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等が好ましい。 アルコールとしては、エトキシエタノール、エトキシプロパノール等が好ましい。
【0014】
中和剤水溶液中の中和剤としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類水酸化物、アンモニア水(NH4OH)、尿素、アミン系化合物を単独で使用、または2種以上を併用することが好ましい。これらの中ではアルカリ金属水酸化物、NH4OH、尿素、アミン系化合物が好ましい。水溶液中の中和剤量は、金属塩の中和量に対して、1〜5倍量であることが好ましい。酸化剤水溶液としては、硝酸塩、過塩素酸塩、過酸化水素水を単独で使用、または2種以上を併用することが好ましい。水溶液中の酸化剤量は、金属塩1モルに対し、1.1〜10モルであることが好ましい。
【0015】
ここで、逆ミセル溶液(I)中の水と界面活性剤との質量比(水/界面活性剤)は、20以下となるようにすることが好ましい。質量比が20を超えると、沈殿が起きやすく、粒子も不揃いとなりやすいといった問題が生じることがある。質量比は、15以下とすることが好ましく、0.5〜10とすることがより好ましい。
【0016】
(逆ミセル溶液(II)の調製)
界面活性剤を含有する非水溶性有機溶媒と所望の六方晶マグネトプランバイト型フェライト組成となる金属塩水溶液とを混合した逆ミセル溶液(II)を調製する。界面活性剤および非水溶性有機溶媒の条件(使用する物質、濃度等)については、逆ミセル溶液(I)の場合と同様である。
なお、逆ミセル溶液(I)と同種のものまたは異種のものを使用することができる。また、逆ミセル溶液(II)溶液中の水と界面活性剤との質量比も逆ミセル溶液(I)の場合と同様であり、逆ミセル溶液(I)の質量比と同一としてもよく、異なっていてもよい。
【0017】
金属塩水溶液に含有される金属塩としては、製造しようとする六方晶マグネトプランバイト型フェライトを形成し得るように、適宜選択することが好ましい。所望の磁気特性を得るため既知の各種置換元素を加えることが好ましい。
金属塩水溶液中の濃度(金属塩濃度として)は、0.1〜1000μmol/mlであることが好ましく、1〜200μmol/mlであることがより好ましい。
【0018】
(逆ミセル溶液(I)および(II)の混合)
調製した逆ミセル溶液(I)と(II)とを混合する。混合方法としては、特に限定されるものではないが、反応の均一性を考慮して、逆ミセル溶液(I)を撹拌しながら、逆ミセル溶液(II)を添加して混合する。
混合終了後、中和反応および/または酸化反応を進行させることになるが、その際の温度は、10〜40℃の範囲で、一定の温度とすることが好ましい。
反応温度が10℃未満では、反応の進行が遅くなり、反応が不均一になるといった問題が生じる。40℃を超えると、凝集または沈殿が起こりやすく系が不安定となることがある。好ましい反応温度は15〜35℃であり、より好ましくは20〜30℃である。
ここで、前記「一定温度」とは、設定温度をT(℃)とした場合、当該TがT±3℃の範囲にあることをいう。なお、このようにした場合であっても、当該Tの上限および下限は、上記温度(10〜40℃)の範囲にあるものとする。
【0019】
中和反応の場合、添加時間は逆ミセル溶液の量等により適宜設定する必要があるが、1〜30分とすることが好ましく、3〜20分とすることがより好ましい。酸化反応の場合、添加時間は1〜30分とすることが好ましく、3〜20分とすることがより好ましい。
【0020】
中和もしくは酸化反応は、粒径分布の単分散性に大きな影響を与えるため、できるだけ高速攪拌しながら行うことが好ましい。好ましい攪拌装置は高剪断力を有する攪拌装置であり、詳しくは、攪拌羽根が基本的にタービン型あるいはパドル型の構造を有し、さらに、その羽根の端もしくは、羽根と接する位置に鋭い刃を付けた構造であり、羽根をモーターで回転させる攪拌装置である。具体的には、ディゾルバー(特殊機化工業製)、オムニミキサー(ヤマト科学製)、ホモジナイザー(SMT製)、ジェット流混合装置などの装置が有用である。これらの装置を用いることにより、単分散な粒子を安定な分散液として合成することができる。
【0021】
前記逆ミセル溶液(I)および(II)の少なくともいずれかに、アミノ基またはカルボキシ基を1〜3個有する少なくとも1種の分散剤を、作製しようとする粒子1モル当たり、0.001〜10モル添加してもよい。
【0022】
かかる分散剤を添加することで、より単分散で、凝集の無い粒子を得ることが可能となる。添加量が、0.001モル未満では、粒子の単分散性をより向上できない場合があり、10モルを超えると凝集が起こる場合がある。
【0023】
前記分散剤としては、粒子表面に吸着する基を有する有機化合物が好ましい。具体的には、アミノ基、カルボキシ基、スルホン酸基またはスルフィン酸基を1〜3個有するものであり、これらを単独または併用して用いることができる。
構造式としては、R−NH2、NH2−R−NH2、NH2−R(NH2)−NH2、R−COOH、COOH−R−COOH、COOH−R(COOH)−COOH、R−SO3H、SO3H−R−SO3H、SO3H−R(SO3H)−SO3H、R−SO2H、SO2H−R−SO2H、SO2H−R(SO2H)−SO2Hで表される化合物であり、式中のRは直鎖、分岐または環状の飽和、不飽和の炭化水素である。
反応終了後、熟成することも好ましく、反応後の溶液を熟成温度まで昇温する。前記熟成温度は、30〜90℃で一定の温度とすることが好ましく、その温度は、前記反応の温度より高くする。また、熟成時間は、5〜300分とすることが好ましい。
【0024】
(不純物の除去)
前記の反応物を水と1級アルコールとの混合溶液で洗浄し、不純物を除去する。洗浄で用いる前記1級アルコールとしては、特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール等が好ましい。体積混合比(水/1級アルコール)は、10/1〜2/1の範囲にあることが好ましく、5/1〜3/1の範囲にあることがより好ましい。水の比率が高いと、界面活性剤が除去されにくくなることがあり、逆に1級アルコールの比率が高いと、凝集を起こしてしまうことがある。洗浄後、溶剤置換し水系とする。
【0025】
(アルカリ土類金属化合物による被覆)
次に、アルカリ土類金属化合物およびアルカリを添加し、アルカリ土類金属化合物で共沈物を被覆する。使用するアルカリ水溶液はアルカリ金属水酸化物、NH4OH、尿素が好ましい。アルカリ土類金属化合物としては、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウムなどが好ましい。
アルカリ土類金属化合物の添加量は、共沈物に対し、50〜500質量%がこのましく、75〜300質量%がさらに好ましい。
このようにして共沈物の表面にアルカリ土類金属化合物が被覆される。被覆物は、洗浄、ろ過、分離、造粒、乾燥などを行うのが好ましい。
【0026】
なお、前記の金属塩水溶液に含有される金属塩として、所望の六方晶マグネトプランバイト型フェライト組成となる塩化物を出発原料とし、アルカリ金属水酸化物を使用し前記と同様に逆ミセル法により共沈物を形成し、共存するアルカリ金属塩化物を除去することなく、この表面をアルカリ土類金属化合物で被覆するようにすれば、生成したアルカリ金属塩化物は、下記の(2)工程のマグネトプランバイト型フェライトの結晶化のときフラックスとして活用され、結晶化温度を低下することができるので好ましい(本発明の(1’)工程)。
【0027】
本発明の製造方法における(2)工程は、前記(1)または(1’)工程で得られた被覆物を乾燥した後、空気中550〜650℃で加熱し、表面被覆物を酸化物とし、続いて650〜900℃で加熱し結晶化してマグネトプランバイト型フェライトとする工程である。
結晶化温度が650℃未満では、結晶化する時間が長くこの間に粒度分布が劣化し、900℃を超えると結晶が成長しすぎて粗大化するので好ましくない。
上記の酸化温度は好ましくは570〜630℃であり、結晶化温度は好ましくは660〜880℃である。また酸化時間は好ましくは30〜120分であり、結晶化時間は好ましくは30〜360分である。(2)工程終了後は、必要に応じて生成物を粉砕してもよい。
【0028】
本発明の製造方法における(3)工程は、前記(2)工程で得られた生成物を洗浄し、六方晶マグネトプランバイト型フェライトを回収する工程である。
このとき、pH4程度の弱酸を使用し表面を被覆するアルカリ土類金属の酸化物の溶解を促進することが好ましい。またマグネトプランバイト型フェライトを回収するとき、磁気記録媒体製造途中に添加される脂肪酸(pKaは〜4.2)よりもpKaが小さい有機物を共存させ、回収したマグネトプランバイト型フェライト表面に吸着させ、粒子間のスタッキングを防止し、分散性を向上させることも好ましい。pKaが4以下の官能基としては、PO(OH)2、OPO(OH)2、SO3H、CONHOH、SO2NHOHなどがある。吸着量は粒子表面を完全に被覆することが好ましいが、表面の一部を被覆していても、これら効果が認められた。
【0029】
なお、上記工程を一部簡略化した方法を使用してもよい。具体的には、(a)界面活性剤を含有する非水溶性有機溶媒とマグネトプランバイト型フェライト組成となる金属塩水溶液とを混合した逆ミセル溶液(II’)を調製する。前記界面活性剤としては、油溶性界面活性剤が用いられる。具体的には、スルホン酸塩型(例えば、エーロゾルOT(和光純薬製))、4級アンモニウム塩型(例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)、エーテル型(例えば、ペンタエチレングリコールドデシルエーテル)、ソルビタンモノオレエート等HLB値が4〜6のノニオン系などが挙げられる。非水溶性有機溶媒中の界面活性剤量は、20〜200g/リットルであることが好ましい。
【0030】
前記界面活性剤を溶解する非水溶性有機溶媒として好ましいものは、アルカン、エーテルおよびアルコール等が挙げられる。アルカンとしては、炭素数7〜12のアルカン類であることが好ましい。具体的には、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等が好ましい。エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等が好ましい。アルコールとしては、エトキシエタノール、エトキシプロパノール等が好ましい。
(a)工程に続く(b)工程として、中和剤を溶解した水溶液を攪拌しつつ調整した逆ミセル溶液(II’)に添加し、スラリーを沈降させる。次に(c)工程として、上澄みを除去し、共沈物を水と1級アルコールとの混合溶液で洗浄し、不純物を除去し、洗浄後、溶剤置換し水系とする。続いて(d)工程として、アルカリ土類金属化合物およびアルカリを添加し、共沈物を被覆する。使用するアルカリ水溶液はアルカリ金属水酸化物、NH4OH、尿素が好ましい。洗浄し、ろ過、分離、造粒、乾燥する。これ以降は上記と同様の工程条件でマグネトプランバイト型フェライトを製造する。
【0031】
本発明の製造方法により得られる六方晶マグネトプランバイト型フェライトは、平均板径が10〜30nm、板径の変動係数が5〜25%、板状比が1.5〜4.5、かつ抗磁力(Hc)が125〜400kA/mである。
平均板径が10nm未満のとき、所望に磁気特性が得られないので高密度記録用磁性粉として好ましくなく、30nmを超えると磁性体体積が大きくなりノイズが大きくなり好ましくなく、変動係数が25%を超えると体積変動に起因するノイズが大きくなり好ましくなく、板状比が上記の範囲を外れると、所望の残留磁束密度が得られないので好ましくなく、抗磁力が125kA/m未満では高記録密度を達成することができず、400kA/mを超えるとヘッドの記録電流が不足し記録できなかったり、オーバーライトできないのでノイズが高くなり好ましくない。
好ましくは、平均板径が15〜25nm、変動係数が5〜20%、板状比が1.8〜4.0、抗磁力が140〜350kA/mである。
なお本発明でいう板状比は、(板径/板厚)の算術平均であり、板径および板厚は、粒子TEM写真より500粒子を無作為に測定して得られる。平均板径は、その算術平均であり、その変動係数は、標準偏差を平均値で除して得られる百分率である。
【0032】
次に本発明の磁気記録媒体について説明する。本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に磁性粉末および結合剤を含有する磁性層を有する磁気記録媒体であって、磁性層における磁性粉末として、前記マグネトプランバイト型フェライトを含有する。
【0033】
磁気記録媒体を製造するには、通常の塗布型磁気記録媒体の製法を適用することができる。本発明の磁気記録媒体における磁性層の結合剤は、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物が使用できる。熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が1000〜200000、好ましくは10000〜100000、重合度が約50〜1000程度のものである。
【0034】
このような結合剤樹脂としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコ−ル、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラ−ル、ビニルアセタ−ル、ビニルエ−テル、等を構成単位として含む重合体または共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。
【0035】
また、熱硬化性樹脂または反応型樹脂としてはフェノ−ル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコ−ン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネ−トプレポリマ−の混合物、ポリエステルポリオ−ルとポリイソシアネ−トの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等があげられる。
【0036】
前記の結合剤樹脂に、より優れた磁性粉末の分散効果と磁性層の耐久性を得るためには必要に応じ、COOM、SO3M、OSO3M、P=O(OM)2、O−P=O(OM)2、(以上につきMは水素原子、またはアルカリ金属塩基)、OH、NR2、N+3(Rは炭化水素基)エポキシ基、SH、CN、などから選ばれる少なくとも1つ以上の極性基を共重合または付加反応で導入するのが好ましい。このような極性基の量は10-1〜10-8モル/gであり、好ましくは10-2〜10-6モル/gである。
【0037】
本発明の磁気記録媒体に用いられる結合剤樹脂は、磁性粉末に対し、5〜50質量%の範囲、好ましくは10〜30質量%の範囲で用いられる。塩化ビニル系樹脂を用いる場合は5〜100質量%、ポリウレタン樹脂を用いる場合は2〜50質量%、ポリイソシアネ−トは2〜100質量%の範囲でこれらを組み合わせて用いるのが好ましい。
【0038】
本発明において、ポリウレタン樹脂を用いる場合はガラス転移温度が−50〜100℃、破断伸びが100〜2000%、破断応力は0.05〜10kg/cm2(4.9〜980kPa)、降伏点は0.05〜10kg/cm2(4.9〜980kPa)が好ましい。
【0039】
本発明に用いるポリイソシアネ−トとしては、トリレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、キシリレンジイソシアネ−ト、ナフチレン−1、5−ジイソシアネ−ト、o−トルイジンジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネ−ト、トリフェニルメタントリイソシアネ−ト等のイソシアネ−ト類、また、これらのイソシアネ−ト類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネ−ト等を使用することができる。これらのイソシアネート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレタン社製、コロネートL、コロネ−トHL、コロネ−ト2030、コロネ−ト2031、ミリオネ−トMRミリオネ−トMTL、武田薬品社製、タケネ−トD−102、タケネ−トD−110N、タケネ−トD−200、タケネ−トD−202、住化バイエル社製、デスモジュ−ルL、デスモジュ−ルIL、デスモジュ−ルN、デスモジュ−ルHL、等がありこれらを単独または硬化反応性の差を利用して二つもしくはそれ以上の組合せでもちいることができる。
【0040】
本発明の磁気記録媒体の磁性層中には、通常、潤滑剤、研磨剤、分散剤、帯電防止剤、分散剤、可塑剤、防黴剤等などを始めとする種々の機能を有する素材をその目的に応じて含有させる。
【0041】
本発明の磁性層に使用する潤滑剤としては、ジアルキルポリシロキサン(アルキルは炭素数1〜5個)、ジアルコキシポリシロキサン(アルコキシは炭素数1〜4個)、モノアルキルモノアルコキシポリシロキサン(アルキルは炭素数1〜5個、アルコキシは炭素数1〜4個)、フェニルポリシロキサン、フロロアルキルポリシロキサン(アルキルは炭素数1〜5個)などのシリコンオイル;グラファイト等の導電性微粉末;二硫化モリブデン、二硫化タングステンなどの無機粉末;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン塩化ビニル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等のプラスチック微粉末;α−オレフィン重合物;常温で固体の飽和脂肪酸(炭素数10から22);常温で液状の不飽和脂肪族炭化水素(n−オレフィン二重結合が末端の炭素に結合した化合物、炭素数約20);炭素数12〜20個の一塩基性脂肪酸と炭素数3〜12個の一価のアルコールから成る脂肪酸エステル類、フルオロカーボン類等が使用できる。
【0042】
上記の中でも飽和脂肪酸と脂肪酸エステルが好ましく、両者を併用することがより好ましい。脂肪酸エステルの原料となるアルコールとしてはエタノール、ブタノール、フェノール、ベンジルアルコール、2−メチルブチルアルコール、2−ヘキシルデシルアルコール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、s−ブチルアルコール等の系モノアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ソルビタン誘導体等の多価アルコールが挙げられる。同じく脂肪酸としては酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、アラキン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、パルミトレイン酸等の脂肪族カルボン酸またはこれらの混合物が挙げられる。
【0043】
脂肪酸エステルとしての具体例は、ブチルステアレート、s−ブチルステアレート、イソプロピルステアレート、ブチルオレエート、アミルステアレート、3−メチルブチルステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、2−ヘキシルデシルステアレート、ブチルパルミテート、2−エチルヘキシルミリステート、ブチルステアレートとブチルパルミテートの混合物、ブトキシエチルステアレート、2−ブトキシ−1−プロピルステアレート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルをステアリン酸でアシル化したもの、ジエチレングリコールジパルミテート、ヘキサメチレンジオールをミリスチン酸でアシル化してジオールとしたもの、グリセリンのオレエート等の種々のエステル化合物を挙げることができる。
【0044】
さらに、磁気記録媒体を高湿度下で使用するときしばしば生ずる脂肪酸エステルの加水分解を軽減するために、原料の脂肪酸及びアルコールの分岐/直鎖、シス/トランス等の異性構造、分岐位置を選択することがなされる。
これらの潤滑剤は結合剤100質量部に対して0.2〜20質量部の範囲で添加される。
【0045】
潤滑剤としては、更に以下の化合物を使用することもできる。即ち、シリコンオイル、グラファイト、二硫化モリブデン、窒化ほう素、弗化黒鉛、フッ素アルコール、ポリオレフィン、ポリグリコール、アルキル燐酸エステル、二硫化タングステン等である。
【0046】
本発明の磁性層に用いられる研磨剤としては、一般に使用される材料でα、γアルミナ、溶融アルミナ、コランダム、人造コランダム、炭化珪素、酸化クロム(Cr23)、ダイヤモンド、人造ダイヤモンド、ザクロ石、αFe23等が使用される。これらの研磨剤はモース硬度が6以上である。具体的な例としては住友化学社製、AKP−30、AKP−50、HIT- 50、HIT60A、HIT60G、HIT70、HIT80、HIT82、HIT-100、日本化学工業社製、G5、G7、S−1、酸化クロムK 、上村工業社製UB40B、不二見研磨剤社製WA8000、WA10000、LANDS社製LS600F 0/-1/4、東名ダイヤ社製 MD-200、MD-150、MD-100、MD-70、IRM 0-1/4F、IRM 0-1/4FF、GE社製 0-1/10、0-1/4、DuPont社製マイポレックス 1/10QG、同 1/8QG、戸田工業社製TF100、TF140、TF180などが上げられる。平均粒子径が0.05〜0.5μmのものが効果的であり、好ましくは0.05〜0.3μmである。
研磨剤を単体で使用するだけでなく、2種類以上の研磨剤を併用することも好適で、微粒子ダイヤモンドの場合は他の研磨剤と併用することで、磁性粉末に対する添加量を0.1%程度に減少することができる。これら研磨剤の合計量は磁性粉末100質量部に対して1〜20質量部、望ましくは1〜15質量部の範囲で添加される。1質量部より少ないと十分な耐久性が得られず、20質量部より多すぎると表面性、充填度が劣化する。これら研磨剤は、あらかじめ結合剤で分散処理したのち磁性塗料中に添加してもかまわない。
【0047】
本発明の磁気記録媒体の磁性層中には、前記非磁性粉末の他に帯電防止剤として導電性粒子を含有することもできる。しかしながら最上層の飽和磁束密度を最大限に増加させるためにはできるだけ最上層への添加は少なくし、最上層以外の塗布層に添加するのが好ましい。帯電防止剤としては特に、カーボンブラックを添加することは、媒体全体の表面電気抵抗を下げる点で好ましい。本発明に使用できるカ−ボンブラックはゴム用ファ−ネス、ゴム用サ−マル、カラ−用ブラック、導電性カーボンブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。比表面積は5〜500m2/g、DBP吸油量は10〜1500ml/100g、粒子径は5〜300nm、PHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/cm3、が好ましい。本発明に用いられるカ−ボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製、BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、700、VULCAN XC−72、旭カ−ボン社製、#80、#60、#55、#50、#35、三菱化学社製、#3030B、#3040B、#3050B、#3230B、#3350B、#9180B、#2700、#2650、#2600、#2400B、#2300、#950B、#900、#1000、#95、#30、#40、#10B、MA230、MA220、MA77、コロンビアンカ−ボン社製、CONDUCTEX SC、RAVEN 150、50、40、15、ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックECDJ−500、ケッチェンブラックECDJ−600などがあげられる。カ−ボンブラックを分散剤などで表面処理したり、カーボンブラックを酸化処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カ−ボンブラックを磁性塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。磁性層にカ−ボンブラックを使用する場合は磁性粉末に対する量は0.1〜30質量%で用いることが好ましい。さらに非磁性層には全非磁性粉体に対し3〜20質量%含有させることが好ましい。
【0048】
一般的にカ−ボンブラックは帯電防止剤としてだけでなく、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカ−ボンブラックにより異なる。従って本発明に使用されるこれらのカ−ボンブラックは、その種類、量、組合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分けることはもちろん可能である。使用できるカーボンブラックは例えば「カ−ボンブラック便覧」カ−ボンブラック協会編を参考にすることができる。
【0049】
本発明の磁気記録媒体の磁性層の下層に非磁性層を形成する場合の非磁性層は、非磁性粉末を結合剤樹脂中に分散した層である。その非磁性層に使用される非磁性粉末には、種々のものが使用できる。例えば、α化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、ベーマイト、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ゲ−タイト、コランダム、窒化珪素、チタンカ−バイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどが単独または組合せで使用される。微細で粒度がそろっているものとして、α−酸化鉄、ゲ−タイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ベーマイトが好適である。これら非磁性粉末の粒子サイズは0.01〜0.6μmが好ましいが、必要に応じて粒子サイズの異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。使用する結合剤樹脂との相互作用を大きくし分散性を改良するために、使用する非磁性粉末が表面処理されていてもよい。表面処理物としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、シリカ−アルミナなどの無機物により処理でも、カップリング剤による処理でもよい。タップ密度は0.3〜2g/cm3、含水率は0.1〜5質量%、pHは2〜11、比表面積は5〜150m2/g、が好ましい。前記非磁性粉末の形状は針状、球状、サイコロ状、板状のいずれでも良い。本発明により得られる磁気記録媒体の下層に用いられる非磁性粉末の具体的な例としては、昭和電工製ナノタイト、住友化学製HIT−100、HIT−80、戸田工業製α−酸化鉄DPN−250BX、DPN−245、DPN−270BX、DPN−550RX、DBN−450BX、DBN−650RX、DAN−850RX、石原産業製酸化チタンTTO−51B、TTO−55A、TTO−55B、TTO−55C、TTO−55S、TTO−55D、SN−100、チタン工業製酸化チタンSTT−4D、STT−30D、STT−30、STT−65C、テイカ製酸化チタンMT−100S、MT−100T、MT−150W、MT−500B、MT−600B、MT−100F、MT−500HD、堺化学製FINEX−25、BF−1、BF−10、BF−20、ST−M、同和鉱業製酸化鉄DEFIC−Y、DEFIC−R、日本アエロジル製AS2BM、TiO2 P25、宇部興産製100A、500A、及びそれを焼成したものが挙げられる。
【0050】
非磁性支持体上に2層以上の塗布層を形成させることも高記録密度の磁気記録媒体を製造するうえで有効であり、同時塗布方式は超薄層の磁性層を作り出すことができるので生産効率が優れている。その同時塗布方式としてウェット・オン・ウェット方式の具体的な方法としては、
【0051】
(1)磁性塗料で一般的に用いられるグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、 エクストルージョン塗布装置によりまず下層を塗布し、その層がまだ湿潤状態にあるうちに、例えば、特公平1−46186号公報、特開昭60−238179合公報及び特開平2−265672号公報に開示されている非磁性支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により上層を塗布する方法、
【0052】
(2)特開昭63−88080号公報、特開平2−17971号公報及び特開平2−265672号公報に開示されているような塗布液通液スリットを二つ内蔵した塗布ヘッドにより、下層の塗布液及び上層の塗布液をほぼ同時に塗布する方法、
【0053】
(3)特開平2−174965号公報に開示されているバックアップロール付きエ クストルージョン塗布装置により、上層及び下層をほぼ同時に塗布する方法、
等が挙げられる。
【0054】
ウェット・オン・ウェット方式で塗布する場合、磁性層用塗布液と非磁性層用塗布液の流動特性はできるだけ近い方が、塗布された磁性層と非磁性層の界面の乱れがなく厚さが均一な厚み変動の少ない磁性層を得ることができる。塗布液の流動特性は、塗布液中の粉末粒子と結合剤樹脂の組合せに強く依存するので、特に、非磁性層に使用する非磁性粉末の選択に留意する必要がある。また、非磁性層を形成した後、該非磁性層上に磁性層を形成してもよい。この方法は界面の乱れをさらに小さくすることができるので、薄層の磁性層を形成するとき好ましい方法である。
【0055】
本磁気記録媒体の非磁性支持体は、通常、3〜100μm、テ−プ状で使用する時は望ましくは2〜15μm、フレキシブルディスクとして使用する場合は20〜80μmが好ましく、非磁性支持体上に設ける非磁性層は、0.5〜3.0μm、好ましくは0.5〜2.5μmである。磁性層の厚みは、30〜200nm、好ましくは50〜150nm、さらに好ましくは50〜100nmである。また、前記磁性層及び前記非磁性層以外の他の層を目的に応じて形成することは、前記磁性層を最上層にして、前記非磁性層をその下層にする構成である限り許される。例えば、非磁性支持体と下層の間に密着性向上のための下塗り層を設けてもかまわない。この厚みは0.01〜0.7μm、好ましくは0.05〜0.5μmである。また、非磁性支持体性の磁性層側と反対側にバックコ−ト層を設けてもかまわない。この厚みは0.1〜1.0μm、好ましくは0.2〜0.8μmである。これらの中間層、バックコ−ト層は公知のものが使用できる。円盤状磁気記録媒体の場合、両面もしくは片面に上記層構成を設けることができる。
【0056】
本発明で使用される非磁性支持体には特に制限はなく、通常使用されているものを用いることができる。非磁性支持体を形成する素材の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン等の各種合成樹脂のフィルム、およびアルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を挙げることができる。
【0057】
本発明の目的を有効に達成するには、非磁性支持体の表面粗さは、中心面平均表面粗さRa(カットオフ値0.25mm)で0.03μm以下、望ましく0.02μm以下、さらに望ましく0.01μm以下である。また、これらの非磁性支持体は単に前記中心面平均表面粗さが小さいだけではなく、1μm以上の粗大突起がないことが好ましい。また表面の粗さ形状は必要に応じて非磁性支持体に添加されるフィラ−の大きさと量により自由にコントロ−ルされるものである。これらのフィラ−の一例としては、Ca、Al、Si、Tiなどの酸化物や炭酸塩の他、アクリル系などの有機樹脂微粉末があげられる。本発明に用いられる非磁性支持体のウエブ走行方向のF−5値は好ましくは5〜50kg/mm2(49〜490MPa)、ウエブ幅方向のF−5値は好ましくは3〜30kg/mm2(29.4〜294MPa)であり、ウエブ走行方向のF−5値がウエブ幅方向のF−5値より高いのが一般的であるが、特に幅方向の強度を高くする必要があるときはその限りでない。
【0058】
また、支持体のウエブ走行方向および幅方向の100℃30分での熱収縮率は好ましくは3%以下、さらに望ましくは1.5%以下、80℃30分での熱収縮率は好ましくは1%以下、さらに望ましくは0.5%以下である。破断強度は両方向とも5〜100kg/mm2(49〜980MPa)、弾性率は100〜2000kg/mm2(0.98〜19.6GPa)が望ましい。
【0059】
本発明で用いられる有機溶媒は任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、ブタノ−ル、イソブチルアルコ−ル、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノール、などのアルコ−ル類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコ−ル等のエステル類、グリコ−ルジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、などのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、などの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン、等の塩素化炭化水素類、N、N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等のものが使用できる。これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分がふくまれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。本発明で用いる有機溶媒は必要ならば磁性層と中間層でその種類、量を変えてもかまわない。第一層に揮発性の高い溶媒をもちい表面性を向上させる、第一層に表面張力の高い溶媒(シクロヘキサノン、ジオキサンなど)を用い塗布の安定性をあげる、第二層の溶解性パラメ−タの高い溶媒を用い充填度を上げるなどがその例としてあげられるがこれらの例に限られたものではないことは無論である。
【0060】
本発明の磁気記録媒体は、前記磁性粉末と結合剤樹脂、及び必要ならば他の添加剤と共に有機溶媒を用いて混練分散し、磁性塗料を非磁性支持体上に塗布し、必要に応じて配向、乾燥して得られる。
【0061】
本発明の磁気記録媒体の磁性塗料を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上にわかれていてもかまわない。本発明に使用する磁性粉末、結合剤、カ−ボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。
【0062】
磁性塗料の混練分散に当たっては各種の混練機が使用される。例えば、二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、ペブルミル、トロンミル、サンドグラインダー、ゼグバリ(Szegvari)、アトライター、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速衝撃ミル、ディスパー、ニーダ、高速ミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機などを用いることができる。
【0063】
本発明の目的を達成するためには、これまでに公知である製造技術を一部の工程として用いることができることはもちろんであるが、混練工程では連続ニ−ダや加圧ニ−ダなど強い混練力をもつものを使用することにより初めて本発明の磁気記録媒体の高いBrを得ることができる。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開昭64−79274号公報に記載されている。本発明では、特開昭62−212933号公報に示されるような同時重層塗布方式を用いることによりより効率的に生産することが出来る。
【0064】
本発明の磁気記録媒体の磁性層中に含まれる残留溶媒は好ましくは100mg/m2以下、さらに好ましくは10mg/m2以下であり、磁性層に含まれる残留溶媒が非磁性層に含まれる残留溶媒より少ないほうが好ましい。
【0065】
磁性層が有する空隙率は下層、最上層とも好ましくは30容量%以下、さらに好ましくは10容量%以下である。非磁性層の空隙率が磁性層の空隙率より大きいほうが好ましいが非磁性層の空隙率が5容量%以上であれば小さくてもかまわない。
【0066】
本発明の磁気記録媒体は下層と最上層を有するが、目的に応じ下層と最上層でこれらの物理特性を変えることができるのは容易に推定されることである。例えば、最上層の弾性率を高くし走行耐久性を向上させると同時に下層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りを良くするなどである。
【0067】
このような方法により、非磁性支持体上に塗布された磁性層は必要により層中の磁性粉末を配向させる処理を施したのち、形成した磁性層を乾燥する。又必要により表面平滑化加工を施したり、所望の形状に裁断したりして、本発明の磁気記録媒体を製造する。以上の最上層用の組成物および下層用の組成物を溶剤と共に分散して、得られた塗布液を非磁性支持体上に塗布し、配向乾燥して、磁気記録媒体を得る。
【0068】
磁性層の0.5%伸びでの弾性率はウエブ塗布方向、幅方向 とも望ましくは100〜2000kg/mm2(0.98〜19.6GPa)、破断強度は望ましくは1〜30kg/cm2(98〜2940KPa)、磁気記録媒体の弾性率はウエブ塗布方向、幅方向とも望ましくは 100〜1500kg/mm2(0.98〜14.7GPa)、残留のびは望ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は望ましくは1%以下、さらに望ましくは0.5%以下、もっとも望ましくは0.1%以下である。
【0069】
本発明の磁気記録媒体は、ビデオ用途、データ記録用途などのテープであってもデータ記録用途のフレキシブルディスクや磁気ディスクであってもよいが、ドロップ・アウトの発生による信号の欠落が致命的となるデジタル記録用途の媒体に対しては特に有効である。更に、下層を非磁性層とし、最上層の厚さを0.3μm以下とすることにより、電磁変換特性が高い、オーバーライト特性が優れた、高密度で大容量の磁気記録媒体を得ることができる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【0071】
<磁性粉末の製造例>
実施例1〜11
NaOH 80ミリモルを純水160mlに溶解した水溶液に、エーロゾルOT 108gとデカン800mlとを混合したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(I)を調製した。
【0072】
BaCl・2HO 2ミリモル、FeCl・6HO 22.7ミリモル、CoCl・6HO 0.56ミリモル、ZnCl 0.50ミリモル、Nb(NO 0.24ミリモルを純水140mlに溶解した金属塩水溶液に、エーロゾルOT(表1に示す量)とデカン500mlとを混合したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(II)を調製した。
【0073】
逆ミセル溶液(I)を22℃でオムニミキサー(ヤマト科学製)で高速攪拌しながら、22℃にした逆ミセル溶液(II)を3分間かけて添加した。マグネチックスターラーで8分攪拌した後、50℃に昇温して30分間熟成した。室温まで冷却し、冷却後大気中に取出した。逆ミセルを破壊するために、水500mlとメタノール500mlとの混合溶液を添加して水相と油相とに分離した。油相側に共沈粒子が分散した状態が得られた。油相側を水600mlとメタノール200mlとの混合溶液で2回洗浄した。
【0074】
その後、メタノールを2000ml添加して共沈粒子にフロキュレーションを起こさせて沈降させた。上澄み液を除去して、ヘプタン100mlを添加して再分散した。
さらに、メタノール1000ml添加による沈降とヘプタン100ml分散との沈降分散を2回繰り返し、メタノールを添加して共沈粒子を沈降させた。上澄みを除去し、次に水1000mlを添加し分散、沈降、上澄み除去を2回繰り返した。
【0075】
得られた共沈物について、組成の分析を行った。組成は、反応して得られた共沈物含有液を塩酸で溶解し、ICP(誘導結合高周波プラズマ発光分析法)で測定し算出した。実験誤差内で添加したマグネトプランバイト型フェライト組成物が含有されていた。
【0076】
得られた共沈物を純水1L中に再分散し、0.1モルのCaCl・6HOを純水に溶解したものを添加し、ついでNHOHで中和し、Baフェライト組成物粒子表面にCa(OH)の被覆を形成した。沈殿物をろ過・水洗し、次いで120℃で乾燥した。乾燥物を乾式粉砕した。
乾燥物を空気中で600℃にて加熱し表面被覆物を酸化物とした後、さらに表1に示す温度で熱処理し、Baフェライトとした。生成物を5%酢酸水溶液に入れ表面被覆物を除去し、マグネトプランバイト型フェライトを回収した。得られたBaフェライトをTEM観察し平均板径、変動係数、平均板状比をもとめた。また窒素中で250℃にて脱気し、BET法で比表面積を測定した。また振動試料型磁力計を使用し、印加磁界796kA/m(10kOe)で磁気特性を測定した。これらの測定値を表1に示す。
【0077】
実施例12
NHOH 80ミリモルを純水160mlに溶解した水溶液に、エーロゾルOT 108gとデカン800mlとを混合したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(I)を調製した。
【0078】
BaCl・2HO 2ミリモル、FeCl・6HO 24.0ミリモルを純水140mlに溶解した金属塩水溶液に、エーロゾルOT54gとデカン500mlとを混合したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(II)を調製した。
【0079】
逆ミセル溶液(I)を22℃でオムニミキサー(ヤマト科学製)で高速攪拌しながら、22℃にした逆ミセル溶液(II)を3分間かけて添加した。マグネチックスターラーで8分攪拌した後、50℃に昇温して30分間熟成した。室温まで冷却し、冷却後大気中に取出した。逆ミセルを破壊するために、水500mlとメタノール500mlとの混合溶液を添加して水相と油相とに分離した。油相側に共沈粒子が分散した状態が得られた。油相側を水600mlとメタノール200mlとの混合溶液で2回洗浄した。
【0080】
その後、メタノールを2000ml添加して共沈粒子にフロキュレーションを起こさせて沈降させた。上澄み液を除去して、ヘプタン100mlを添加して再分散した。
さらに、メタノール1000ml添加による沈降とヘプタン100ml分散との沈降分散を2回繰り返し、メタノールを添加して共沈粒子を沈降させた。上澄みを除去し、次に水1000mlを添加し分散、沈降、上澄み除去を2回繰り返した。
【0081】
得られた共沈物について、組成の分析を行った。組成は、反応して得られた共沈物含有液を塩酸で溶解し、ICP(誘導結合高周波プラズマ発光分析法)で測定し算出した。実験誤差内で添加したマグネトプランバイト型フェライト組成物が含有されていた。
【0082】
得られた共沈物を純水1L中に再分散し、0.1モルのCaCl・6HOを純水に溶解したものを添加し、ついでNHOHで中和し、Baフェライト組成物粒子表面にCa(OH)の被覆を形成した。沈殿物をろ過・水洗し、次いで120℃で乾燥した。乾燥物を乾式粉砕した。
乾燥物を空気中で600℃にて加熱し表面被覆物を酸化物とした後、850℃で2時間熱処理し、Baフェライトとした。生成物を5%酢酸水溶液に入れ表面被覆物を除去し、マグネトプランバイト型フェライトを回収した。得られたBaフェライトの測定値を表1に示す。
【0083】
実施例13
BaCl・2HO 2ミリモル、FeCl・6HO 22.0ミリモル、AlCl 2ミリモルを純水140mlに溶解した金属塩水溶液に、エーロゾルOT54gとデカン500mlとを混合したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(II)を調製した以外は実施例12と同様に合成した。得られたBaフェライトの測定値を表1に示す。
【0084】
実施例14
BaCl・2HO 0.05モル、ZnCl0.025モル、Nb(NO 0.0015モルおよびFeCl・6HO 0.56モルを純水1Lに溶解し、金属塩化物溶液を作成した。あらかじめソルビタンモノオレエート30mLを溶解し25℃にしたn−ペプタン1.5L中に金属塩化物溶液を加え、ホモジナイザーを使用して強力に分散させ、W/Oエマルジョンを形成した。NaOH 100gおよびNaCO 10.6gを純水2Lに溶解したアルカリ溶液を攪拌しつつ25℃とし、これにW/Oエマルジョンを混合し共沈物スラリーを得た。15分攪拌した後、45℃に30分保持後、HCl水溶液を加え、スラリーのpHを7.8とし、スラリーを沈降させ上澄みを除去した。3モルのCaCl・6HOを純水1Lに溶解したものをスラリーに加え、NHOHで中和し、共沈物の表面をCa(OH)で被覆した。共沈物をろ過・水洗し、次いで120℃で乾燥した。乾燥物を乾式粉砕した。乾燥物を空気中で625℃にて30分加熱し表面被覆物を酸化物とした後、さらに800℃で2時間熱処理し、Baフェライトとした。得られたBaフェライトをTEM観察し平均板径、変動係数、板状比をもとめた。また窒素中で250℃にて脱気し、BET法で比表面積を測定した。また振動試料型磁力計を使用し、印加磁界796kA/m(10kOe)で磁気特性(SQは角形比)を測定した。これらの測定値を表1に示す。
【0085】
比較例1
BaCl・2HO 0.05モル、ZnCl0.025モル、Nb(NO 0.0055モルおよびFeCl・6HO 0.56モルを純水1Lに溶解し、金属塩化物溶液を作成した。あらかじめソルビタンモノオレエート30mLを溶解し25℃にしたn−ペプタン1.5L中に金属塩化物溶液を加え、ホモジナイザーを使用して強力に分散させ、W/Oエマルジョンを形成した。NaOH 100gおよびNaCO 10.6gを純水2Lに溶解したアルカリ溶液を攪拌しつつ25℃とし、これにW/Oエマルジョンを混合し共沈物スラリーを得た。15分攪拌した後、45℃に30分保持後、HCl水溶液を加え、スラリーのpHを7.8とし、スラリーを沈降させ上澄みを除去した。共沈物をろ過・水洗し、次いで120℃で乾燥した。乾燥物を乾式粉砕した。乾燥物を空気中で625℃にて30分加熱し表面被覆物を酸化物とした後、さらに800℃で2時間熱処理し、Baフェライトとした。得られたBaフェライトをTEM観察し平均板径、変動係数、板状比をもとめた。また窒素中で250℃にて脱気し、BET法で比表面積を測定した。また振動試料型磁力計を使用し、印加磁界796kA/m(10kOe)で磁気特性を測定した。これらの測定値を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
<塗料の作製>
実施例中、「部」との表示は「質量部」を示す。
磁性液処方 1
Baフェライト(磁性粉末は表2に示す) 100部
結合剤樹脂
塩化ビニル共重合体 14部
(−SOK基:1×10−4eq/g含有、重合度 300)
ポリエステルポリウレタン樹脂 5部
(ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI=
0.9/2.6/1、−SONa基:1×10−4eq/g含有)
α−アルミナ(平均粒子径:0.10μm) 2部
カ−ボンブラック(平均粒子径:30nm) 4部
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 2部
メチルエチルケトン 125部
シクロヘキサノン 125部
【0088】
磁性液処方 2
Baフェライト(磁性粉末は表3に示す) 100部
結合剤樹脂
塩化ビニル共重合体 15部
(−SOK基:1×10−4eq/g含有、重合度 300)
ポリエステルポリウレタン樹脂 5部
(ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI=
0.9/2.6/1、−SONa基:1×10−4eq/g含有)
α−アルミナ(平均粒子径:0.10μm) 2部
カ−ボンブラック(平均粒子径:30nm) 5部
ブチルステアレート 10部
ブトキシエチルステアレート 5部
イソヘキサデシルステアレート 2部
ステアリン酸 3部
メチルエチルケトン 125部
シクロヘキサノン 125部
【0089】
非磁性液処方 1
針状ヘマタイト 80部
(BET法による比表面積:65m/g、平均長軸長:0.10μm、
平均針状比:7、pH:8.8、アルミ処理層:Alとして1質量%)
カーボンブラック 20部
(平均粒子径:17nm、DBP吸油量:80ml/100g、
BET法による表面積:240m/g、pH7.5)
結合剤樹脂
塩化ビニル共重合体 13部
(−SOK基:1×10−4eq/g含有、重合度 300)
ポリエステルポリウレタン樹脂 5部
(ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI=
0.9/2.6/1、−SONa基:1×10−4eq/g含有)
フェニルフォスフォン酸 3部
ブチルステアレート 3部
ステアリン酸 3部
メチルエチルケトンとシクロヘキサノン1:1混合溶剤 280部
【0090】
非磁性液処方 2
針状ヘマタイト 80部
(BET法による比表面積:65m/g、平均長軸長:0.10μm、
平均針状比:7、pH:8.8、アルミ処理層:Alとして1質量%)
カーボンブラック 20部
(平均粒子径:17nm、DBP吸油量:80ml/100g、
BET法による表面積:240m/g、pH7.5)
結合剤樹脂
塩化ビニル共重合体 15部
(−SOK基:1×10−4eq/g含有、重合度 300)
ポリエステルポリウレタン樹脂 5部
(ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI=
0.9/2.6/1、−SONa基:1×10−4eq/g含有)
フェニルフォスフォン酸 3部
α−アルミナ(平均粒子径:0.15μm) 2部
カ−ボンブラック(平均粒子径:30nm) 5部
ブチルステアレート 10部
ブトキシエチルステアレート 5部
イソヘキサデシルステアレート 2部
ステアリン酸 3部
メチルエチルケトンとシクロヘキサノン1:1混合溶剤 280部
【0091】
上記の磁性液処方1、2及び非磁性液処方1、2のそれぞれについて、磁性粉末もしくは顔料、塩化ビニル樹脂、フェニルフォスフォン酸と処方量の50質量%の各溶剤をニーダーで混練したのち、ポリウレタン樹脂と残りの成分を加えてサンドグラインダーで分散した。得られた分散液にイソシアネートを非磁性液には15部、磁性液には14部を加え、さらにそれぞれにシクロヘキサノン30部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性層形成用および磁性層形成用の塗布液をそれぞれ調製した。
【0092】
<テープの作成:実施例15〜19および比較例2>
得られた非磁性液処方1からなる下層非磁性層形成用の塗布液1を厚さ7μmのポリエチレンテレフタレート支持体上に乾燥後の厚さが1.5μmとなるように塗布し、さらにその直後下層非磁性層用塗布層がまだ湿潤状態にあるうちに、磁性液処方1からなる磁性層形成用の塗布液1の塗布量を制御することで乾燥後の磁性層厚みが約0.080μmとなるように湿式同時重層塗布を行い、両層がまだ湿潤状態にあるうちに配向装置を通過させ長手配向した。この時の配向磁石は希土類磁石(表面磁束500mT)を通過させた後ソレノイド磁石(磁束密度500mT)中を通過させ、ソレノイド内で配向が戻らない程度まで乾燥しさらに磁性層を乾燥し巻き取った。その後金属ロールより構成される7段カレンダーでロール温度を90℃にしてカレンダー処理を施して、ウェッブ状の磁気記録媒体を得、それを8mm幅にスリットして8mmビデオテープのサンプルを作成した。振動試料型磁力計(東英工業製)を使用し、印加磁界796kA/mで配向方向に平行にサンプルの磁気特性を測定した。さらに表面粗さを測定した。表面粗さは、WYKO社(USアリゾナ州)製の光干渉3次元粗さ計「TOPO−3D」を使用し250μm角の試料面積を測定した。測定値の算出にあたっては、傾斜補正、球面補正、円筒補正等の補正をJIS−B601に従って実施し、中心面平均粗さRaを表面粗さの値とした。
【0093】
<フレキシブルディスクの作成:実施例20〜22および比較例3>
得られた非磁性液処方2からなる下層非磁性層用処方2の塗布液を厚さ35μmのポリエチレンナフタレート支持体上に乾燥後の厚さが1.4μmとなるように塗布、乾燥後、磁性液処方2からなる磁性層形成用の塗布液2を用いて磁性層の塗布量を調整することにより乾燥後の磁性層厚み約0.1μmの磁性層を形成し、磁性層がまだ湿潤状態にあるうちに、周波数50Hzで磁場強度24kA/m、ついで周波数50Hzで12kA/mである2つの磁場強度交流磁場発生装置の中を通過させランダム配向処理を行った。これにより配向度比98%以上を得ることができた。
もう片方の支持体面にも同様に下層非磁性層および磁性層形成用の塗布液を塗布、配向し、乾燥後、7段のカレンダーで温度90℃、線圧300kg/cm(294kN/m)にて処理を行った。3.7吋に打ち抜き、サーモ処理(70℃、24時間)を行い塗布層の硬化処理を促進させ、研磨テープでバーニッシュ処理をおこない、表面の突起を削る後処理を行った。振動試料型磁力計(東英工業製)を使用し、印加磁界796kA/mで支持体の長手方向に平行にサンプルの磁気特性を測定した。さらに表面粗さを測定した。表面粗さは、WYKO社(USアリゾナ州)製の光干渉3次元粗さ計「TOPO−3D」を使用し250μm角の試料面積を測定した。測定値の算出にあたっては、傾斜補正、球面補正、円筒補正等の補正をJIS−B601に従って実施し、中心面平均粗さRaを表面粗さの値とした。
結果を表2および3に示す。なお表3中のエラーレートの単位は、(×10−5)である。
テープ系の電磁変換特性の測定法は次の方法によった。データー記録用8ミリデッキにMIGヘッド(ヘッドギャップ0.2μm、トラック幅17μm、飽和磁束密度1.5T、アジマス角20°)と再生用MRヘッド(SALバイアス、MR素子はFe-Ni、トラック幅6μm、ギャップ長0.2μm、アジマス角20°)を搭載した。MIGヘッドを用いて、テープとヘッドの相対速度を10.2m/秒とし、1/2Tb(λ=0.5μm)の入出力特性から最適記録電流を決めこの電流で信号を記録し、MRヘッドで再生した。C/Nは再生キャリアのピークから消磁ノイズまでとし、スペアナの分解能バンド幅は100kHzとした。比較例2を0dBとして測定結果を示す。
フレキシブルディスクの評価は以下の条件で実施した.
出力は、線記録密度144kbpi、トラック密度200tpiで測定した。出力のrefは比較例3を使用した。線記録密度は記録方向1インチ当たりに記録する信号のビット数である。トラック密度とは1インチ当たりのトラック数である。線記録密度とトラック密度を掛け合わせたものが面記録密度である。ディスクのエラーレートは上記の線記録密度の信号を(2,7)RLL変調方式をディスクに記録し測定した。
【0094】
【表2】

【0095】
【表3】

【0096】
上記の実施例から分かるように、逆ミセル法により所望の六方晶マグネトプランバイト型フェライト組成の共沈物を形成し、この表面をアルカリ土類金属化合物で被覆し、被覆物を適切に熱処理することにより、微細な粒子径を維持しつつ粒子径の変動係数も小さなマグネトプランバイト型フェライト粒子が得られた。また、これらを使用した磁気記録媒体はSFDが小さく、これを反映して出力が大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)〜(3)の工程を有する、平均板径が10〜30nm、板径の変動係数が5〜25%、板状比が1.5〜4.5、かつ抗磁力が125〜400kA/mである六方晶マグネトプランバイト型フェライトの製造方法。
(1)逆ミセル法により所望の六方晶マグネトプランバイト型フェライト組成の共沈物を形成し、この表面をアルカリ土類金属化合物で被覆する工程;(2)前記(1)工程で得られた被覆物を乾燥した後、空気中550〜650℃で加熱し、続いて650〜900℃で加熱しフェライト化する工程;および(3)前記(2)工程で得られた生成物を洗浄し、六方晶マグネトプランバイト型フェライトを回収する工程。
【請求項2】
以下の(1’)、(2)および(3)の工程を有する、平均板径が10〜30nm、板径の変動係数が5〜25%、板状比が1.5〜4.5、かつ抗磁力が125〜400kA/mである六方晶マグネトプランバイト型フェライトの製造方法。
(1’)所望の六方晶マグネトプランバイト型フェライト組成となる塩化物を出発原料とし、アルカリ金属水酸化物を使用し逆ミセル法により共沈物を形成し、共存するアルカリ金属塩化物を除去することなく、この表面をアルカリ土類金属化合物で被覆する工程;(2)前記(1)工程で得られた被覆物を乾燥した後、空気中550〜650℃で加熱し、続いて650〜900℃で加熱しフェライト化する工程;および(3)前記(2)工程で得られた生成物を洗浄し、六方晶マグネトプランバイト型フェライトを回収する工程。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法により製造された、平均板径が10〜30nm、板径の変動係数が5〜25%、板状比が1.5〜4.5、かつ抗磁力が125〜400kA/mである六方晶マグネトプランバイト型フェライト。
【請求項4】
非磁性支持体上に磁性粉末および結合剤を含有する磁性層を有する磁気記録媒体であって、前記磁性粉末が請求項3に記載の六方晶マグネトプランバイト型フェライトを含有することを特徴とする磁気記録媒体。

【公開番号】特開2007−91517(P2007−91517A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282161(P2005−282161)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】