共平面の基準接地および浮動接地を有するRFIDパッチアンテナ
【課題】低価格で薄くて小型の広帯域パッチアンテナを提供する。
【解決手段】パッチアンテナは、主要な放射素子110が基準接地要素120と共通の幾何学的平面もしくは実質的に同一の平面内に設置されるか、または、主要な放射要素および基準接地要素が誘電性積層体100によって分離された2つの平行な近接して離間する平面内に設置されており、主要な放射要素と基準接地要素との間の重畳は僅かであるか、もしくは全くない。基準接地要素に加えて浮動接地平面130を実装してもよい。
【解決手段】パッチアンテナは、主要な放射素子110が基準接地要素120と共通の幾何学的平面もしくは実質的に同一の平面内に設置されるか、または、主要な放射要素および基準接地要素が誘電性積層体100によって分離された2つの平行な近接して離間する平面内に設置されており、主要な放射要素と基準接地要素との間の重畳は僅かであるか、もしくは全くない。基準接地要素に加えて浮動接地平面130を実装してもよい。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、米国特許出願第60/978,389号(発明の名称”RFID PATCH ANTENNA WITH COPLANAR REFERENCE GROUND AND FLOATING GROUNDS”(2007年10月8日出願))による優先権を主張しており、その米国出願は、参照によって明示的に本明細書に組み込まれている。
【技術分野】
【0002】
一般に本発明は、低価格で薄くて小型の広帯域パッチアンテナに関し、このアンテナは、同一の幾何学的平面または近接して離間する平行面内に放射素子および基準接地導体を有し、また、同一の幾何学的平面または近接して離間される平行面内に選択的に浮動接地導体を有しており、このパッチアンテナ若しくはこのようなパッチアンテナのアレイは、UHF帯域信号がパッチアンテナを経由してリーダ(トランシーバ)とタグ(トランスポンダ)の間を送受信する無線周波 識別(RFID)の用途において実用性を有する。本発明は、RFID用途における特定の使用に関し、そのような用途では、スマートシェルフ、スマートカウンタトップ、または別のRFIDが使用可能な表面上に、良好に制御された指向性UHF信号放射を有する空間を作成することが望ましく、その空間には、一群のRFIDタグ付けアイテムが包含されており、UHF信号がRFIDタグと通信するには弱すぎる不感領域または空間内の位置の複雑性を伴うことなく、アンテナに取り付けられたRFIDリーダからのUHF信号を使用して信頼性を持って空間内のアイテムを読み取れるようにされている。
【背景技術】
【0003】
無線周波識別(RFID)システムおよびその他の形式の電子式商品監視は、アイテムの位置および配置が経済的関心、保全的関心またはその他の関心事項であるアイテムを追跡するために、その使用が急速に普及している。これらの用途においては、代表的には、追跡されるアイテムの内側にトランスポンダまたはタグが取り付けまたは設置されており、これらのトランスポンダまたはタグは、タグの位置(ひいてはそれから推測されるアイテムの位置)を、リーダが直接または間接的に取り付けられるネットワークを経由して人間またはソフトウェアアプリケーションへ報告するトランシーバまたはリーダと少なくとも断続的に通信状態にある。RFID用途の実施形態は、店舗内で公売される小売アイテムの追跡、これらのアイテムの店舗の裏部屋、作り付け棚、ディスプレイ、カウンタ、ケース、キャビネット、クロゼット、またはその他の設備における在庫管理、および販売地点から店舗出口に至るまでのアイテムの追跡を含む。また、アイテムが小売サプライチェーンを移動する際の倉庫、配送センタ、トラック、バン、運送用コンテナ、その他のアイテム保管地点またはアイテム輸送に関係するアイテム追跡用途も存在する。RFID技術の用途の他の領域は、高価なアイテム(必ずしも一般向けに販売されているとは限らない)が、盗難、紛失、または置き違えを防ぐため、またはその資産の管理系統の完全性を維持するために、環境内で追跡される資産追跡に関連する。RFID技術のこれらの用途は、例示目的として列挙したものであり、本技術には多くの他の用途が存在することに留意されたい。
【0004】
RFIDシステムは、代表的には、デジタル信号で変調されてエンコードされた電磁搬送波をRFIDタグに放射するためにリーダアンテナを使用する。そのため、リーダアンテナは、タグとリーダとの間の通信を促進し、その通信の質に影響を与える重要な構成要素である。リーダアンテナは、リーダからの信号を乗せた交流を、タグの中に位置する第2のアンテナに適した信号を乗せた振動電磁場または電磁波に変換するか、あるいは、信号を乗せた振動電磁場または電磁波(タグから送信されるか、タグによって修正される)を、リーダによる通信、およびリーダとの通信の復調ために、信号を乗せた交流に変換するトランデューサとして考えることができる。RFIDシステムに使用されるアンテナの種類は、パッチアンテナ、スロットアンテナ、ダイポールアンテナ、ループアンテナ、および多くの別の種類およびこれらの種類の変形物を含む。
【0005】
パッシブRFIDシステムの場合は、RFIDタグは電磁搬送波によって作動する。いったん作動すると、パッシブタグは高周波(RF)信号を解釈し、通常、電磁搬送波の中に時限式の、間欠的外乱を作成することにより、適切な応答を提供する。タグの応答をエンコードするこれらの外乱は、リーダによってリーダのアンテナを通って感知される。アクティブRFIDシステムの場合は、タグがバッテリ等の自身の電源を含み、自身の搬送波およびエンコードされたRF信号を作成することにより、リーダとのRF通信を開始することができるか、あるいはタグの出力は、タグのデータ処理速度を上げることにより、またはタグの応答の中の出力を上げることにより、タグの性能を強化するために使用することができ、ゆえにタグとリーダとの間の通信の最大距離を強化するために使用されうる。
【0006】
特にパッシブRFIDシステムでは、近距離場対遠距離場の動きについて、RFIDシステムとそのアンテナの動きを区別することはしばしば都合がよい。「近距離場」と「遠距離場」は相対語であり、用語「近」および「遠」が意味を有する搬送波の波長に関する。ある用途に伴う距離が波長を大幅に上回る場合、その用途は遠距離場用途であり、しばしばアンテナは、(ほとんどの電気通信用途において)点源と見なされうる。その一方、ある用途に伴う距離が波長を大幅に下回る場合、アンテナ間の(例えば、リーダアンテナとタグアンテナ)関連する電磁相互作用は、近距離場相互作用である。そうした状況においては、反応性のある電気または磁気構成要素はEM場を圧倒し、2つの結合アンテナ間の相互作用は、場の外乱を介して発生する。対象となる用途が搬送波の波長と類似した距離を伴う場合、状況はより複雑で、単なる近距離場または単なる遠距離場と考えることはできない。以下、この状況を「中間場」と呼ぶ。
【0007】
市販のRFIDシステムによって使用される2つの一般的な周波数帯域は、13.56MHzとUHF(約850〜960MHz、問題となる国によって異なる具体的な帯域を持つ)である。RFIDタグ付きの消費財に付けられるタグは、製造から最終的な小売店舗の場所への配送まで、サプライチェーン全体を通して一般的に多くの用途に使用されるため、小売店のシェルフの機能要件は、タグ周波数の選択に影響を与える一連の要因のうちのほんの1つでしかない。サプライチェーンの中の種々の取引相手に対して対象となる多くの要因および要件が存在し、この複雑な状況の中で、13.56MHzとUHFの両方が、スマートシェルフ、ラック、キャビネット、および別の小売店、倉庫、および別のビジネスの作り付け備品の中またはその上でタグ付きアイテムを追跡するために、広範囲に使用される。米国特許第7,268,742号、第6,989,796号、第6,943,688号、第6,861,993号、第6,696,954号、第6,600,420号、および第6,335,686号は、すべてスマートシェルフ、キャビネット、および関連する作り付け備品に対するRFIDアンテナ用途を扱っている。13.56MHz波は、22メータ(72フィート)をわずかに上回る波長を有し、一方、RFID用途に使用されるUHF放射線の波長は、1メートルの約3分の1、つまりちょうど1フィートである。アイテムレベルのRFID用途に特徴的な距離は、シェルフ、キャビネット、ラック、カウンタ、および別のかかる作り付け備品の中またはその上にあるタグ付きアイテムの追跡および監視を伴うため、かかる作り付け備品は、およそフィート(例えば、0.5フィート〜数フィート)であり、UHF技術が使用される場合、アンテナ相互作用は近距離場でも遠距離場でもなく、むしろ中間場であることは明らかである。この場合、リーダアンテナの種類の不適切な選択、または妥当な種類の不適切な設計は、全体的なRFIDシステムの性能不足およびアプリケーションの故障を招く場合がある。その理由の1つは、中間場の状況において、リーダアンテナから放射される電場および磁場が、関連する表面(例えば、タグ付きアイテムを保管している小売店のシェルフの表面)全体にわたって著しく変化することである。該場は、ある場所では強いかもしれないが、数インチ離れた別の場所でははるかに弱い可能性があり(UHF放射線の周波数はわずか数インチであるため)、UHFシステムの一般的な動きは、13.56MHz用途で観察されるよりもはるかに複雑である。ゆえに、UHFタグがシェルフおよび別の保管用作り付け備品上のRFIDアイテム追跡において使用される状況において、リーダアンテナの設計は重要となる。本発明は、広い不感(読み取り不能)領域のない、および実際の小売および別のビジネス用途におけるアンテナの設計の実用性を制限しかねない、大きなアンテナの厚みを必要としない、アンテナの表面(例えば、シェルフ表面)の真上の均一なUHF放射域をもたらすUHFアンテナの設計に対するアプローチについて記載する。
【0008】
パッシブRFIDシステムの検出範囲は、典型的に、例えば、パッシブUHF RFIDシステムについては、ほぼ数フィート未満の短距離の信号強度によって制限される。パッシブUHF RFIDシステムにおける読み取り範囲の制限により、多くの用途は、特に、1つの固定アンテナが装備された定置または固定リーダの検出範囲よりも著しく大きい空間内にタグ付きアイテムが保管される場合、すべてのタグを検出するために、一群のタグ付きアイテムの周りを手動で移動しうる小型リーダユニットを使用する。しかしながら、携帯型UHFリーダユニットは、いくつかの短所を抱えている。第1の短所は、スキャン活動に付随する人件費を伴う。固定の基礎構造を操作することは、いったん支払いが済めば、付随する持続的な労務費がかかる手動システムよりもはるかに安価である。加えて、携帯型ユニットはしばしば、タグの読み込みの正確な位置に関する不明瞭さをもたらす。例えば、リーダの位置はユーザによって留意されうるが、読み込みイベント中のタグの位置は、任意の用途に対して十分に知らされない場合がある。つまり、携帯型RFIDリーダの使用は、しばしばほんの数フィートの空間分解能の確実性につながり、多くの用途は数インチの空間分解能以内のタグ付きアイテムの位置の認識を必要とする。携帯型RFIDリーダはまた、固定リーダおよびアンテナシステムの場合よりも紛失したり盗難にあったりしやすい場合がある。
【0009】
携帯型UHF RFIDリーダの代替として、より多数のタグ付きアイテムを検出するために十分な電力で駆動される、大型の固定リーダアンテナが使用されても良い。しかしながら、かかるアンテナは、扱いにくく、審美的に不快な場合があり、放射電力が法定または規制の許容限界を超える場合がある。さらに、これらのリーダアンテナは、しばしば空間が非常に高額な店内または別の位置に設置され、かような大型のリーダアンテナを使用することは高価であり不都合である。加えて、単一の大型アンテナが、広い面積(例えば、小売用シェルフ1組、またはキャビネット全体、またはカウンタ全体等)の調査に使用される場合、タグ付きアイテムの位置を、特定の地点、または作り付けシェルフの小さいサブセクションに分散させることが不可能であることにも留意すべきである。いくつかの用途では、タグ付きアイテムの位置を、数インチの空間分解能で認識することが望ましい場合がある(例えば、シェルフ上に多くの小さいアイテムがあり、手動の検索および仕分けを最小限にすることが所望される場合)。この状況では、アイテムを所望される空間分解能で設置することが一般的に可能でないため、単一の大型リーダアンテナの使用は望ましくない。
【0010】
あるいは、全自動移動アンテナシステムが使用されうる。米国特許第7,132,945号には、移動または走査アンテナを採用したシェルフシステムが記載されている。このアプローチは、比較的広い面積を調査することを可能にし、また、人間が行う労働の必要を排除する。しかしながら、市販のシェルフシステムに可動部を導入することは、システム費用がより高額であること、据付がより複雑であること、および維持費がより高額であること、ならびに可動部を組み込んだ機械にしばしば見られるようなシステムのダウンタイムの不便さのために、実用的でないと認められる場合がある。ビーム形成スマートアンテナは、可動部なしで細いビームで空間を走査することができる。しかしながら、能動素子であるので、パッシブアンテナと比較すると通常大型で高価である。
【0011】
上述のアプローチの欠点を克服するため、小型アンテナの固定配列が、いくつかのUHF RPID用途で利用される。このアプローチでは、米国特許第7,084,769号に記載されるように、広い面積に及ぶ非常に多くのリーダアンテナが、ある種のスイッチング回路網を介して単一のリーダまたは1群のリーダに接続される。スマートシェルフおよび別の類似の用途は、RFIDが使用可能なシェルフ、キャビネット、ケース、ラックの中または上の小型タグ付きアイテムの追跡または在庫管理監査を伴い、または別の作り付け備品は、小型アンテナの固定配列を活用することができる。スマートシェルフおよび類似の用途において、タグ付け定置アイテムを追跡する際、小型アンテナの固定配列は、携帯型リーダ、単一の大型固定アンテナを用いたシステム、および移動アンテナシステムに勝るいくつかの利点を提示する。第1に、アンテナ自体が小型であり、したがって各アンテナを取り囲む空間の調査に比較的小さい電力を必要とする。したがって、これらのアンテナに1つずつクエリを行うシステムにおいて、システム自身が比較的小さい電力を必要とする(通常1ワットよりはるかに少ない)。大型アレイ中の小型アンテナのそれぞれにクエリを行うことにより、ゆえに、当該システムは、比較的小さい電力で広い面積を調査することができる。また、アンテナアレイにおいて使用されるUHFアンテナが概して小型であり(制限された電力と1−12インチ(約2.5cm−約30cm)未満という範囲のため)、指定された既知の空間的位置で小さい空間を調査するため、アレイの中の指定されたアンテナによって読み込まれるタグ付きアイテムもまた、1−12インチ(約2.5cm−約30cm)の同一の空間分解能で設置されることも当てはまるはずである。ゆえに、小型アンテナの固定配列を使用するシステムは、携帯型RFIDリーダおよび小数の比較的大型のアンテナを使用するシステムよりも正確にタグ付きアイテムの位置を判定することができる。また、アレイの中の各アンテナが比較的小さいため、棚その他の作り付け保管備品の内部に隠すことは極めて容易であるので、美観が向上し、外部からの破壊的な行為(例えば、子供が好奇心にかられて手で触れる行為、或いは一般人による悪意のある行為など)による被害を最小限にする。また、固定アンテナの配列は可動部を伴わないため、上述の可動部に付随する不利益の何れも問題にならない。また、かかるアンテナアレイの中で使用されるような小型アンテナは、単一のアンテナ要素が故障した場合、取替えがより安価である場合がある(単一の大型アンテナの取替えと比べて)。また、アンテナの固定配列は、タグ付きアイテムの走査を実行するために特別な手作業を必要とせず、したがって、携帯型リーダおよびアンテナシステム、または移動カートのアプローチに付随する高コストな手作業を伴わない。
【0012】
スマートシェルフおよび類似の用途において、アンテナアレイの中で使用されるアンテナが、単純で、低価格で、既存のインフラストラクチャに後から組み込むことが簡単で、アンテナの近くにいる人々の目につかないように隠すことが簡単であること、およびアンテナがすばやく据付けられ、接続されうるということが、経済的および美観的理由により、しばしば重要である。これらの用途の要件は、アンテナの製作に使用される層の数を最小限とし、また、全体のアンテナの厚みを最小限とするアンテナ構成を使用すれば、より簡単に満たされる。つまり、薄型の、または目立たないアンテナは隠すことがより簡単であり、既存のインフラストラクチャに対する特別な変更を必要とせずに、既存のインフラストラクチャに合わせることがより簡単である。また、アンテナの中の層を減らすことは、アンテナの費用を低減する傾向がある。費用および据付けの利便性という理由のためには、RFフィードケーブルまたはワイヤのアンテナへの取り付けには可能な限り単純な試みをなすことが望ましい。好ましくは、取り付けは、一箇所で、一表面上で、穴または特別なチャネル、ワイヤ、またはアンテナ基材を通り抜ける導電体を必要とせずに行われるべきである。この最後の要件は、アンテナシステムの大量製造においては、この場合、最終組み立ては、通常は組立ラインの電気技師によるいくつかの手作業による組み立てステップを伴うため、特に重要であり、1つのまたはいくつかのステップを排除することは、総生産費を著しく低減することになる。また、UHFアンテナの設計が、放射場がタグとリーダとの間の通信を促進するには弱すぎる、アンテナ間またはその周りの「不感体」または小さい面積なしに、アンテナの近くの空間においてRFIDタグの読み込みを可能とすることも重要である。スマートシェルフおよび類似の用途において使用されるアンテナのための別の要件は、多様のタグアンテナ配向を有するアイテムを読み込む能力を持つことである(すなわち、タグ配向の非依存性、または少なくともその理想に近い動き)。
【0013】
上述のもののようなアンテナシステムにおいて使用されうる、従来のパッチアンテナ、スロットアンテナ、ダイポールアンテナ、および別の一般的なUHFアンテナの種類は、概して多層を含む。米国特許第6,639,556号は、この重層構造およびRFフィードに中央の穴を持つパッチアンテナの設計を示す。米国特許第6,480,170号はまた、介在する誘電体の反対側に基準接地および放射素子を持つパッチアンテナを示す。多層アンテナの設計は、過度の製造費および過度のアンテナの厚みにつながる可能性がある(アンテナ据付け中の既存のインフラストラクチャへの改良部品の組み込みを複雑にし、アンテナを視界から隠すことをより困難にする)。多層アンテナの設計はまた、搬送波と基準接地の接続が異なる層で発生するため、接続ワイヤ(例えば、アンテナとリーダとの間の同軸ケーブル)の取り付けの形式を複雑化する傾向があり、これは上述の理由により、アンテナの費用を増大させる。
【0014】
UHFスマートシェルフの用途において、アンテナの種類としてはパッチアンテナが良い選択である。その理由は、パッチアンテナから放射される場が、大部分はアンテナの面に直交する方向であるため、アンテナをシェルフ表面上または中に配置することができ、その領域内のシェルフの真上に、RFIDが有効な空間を作成することができ、シェルフの表面上に置かれたタグ付きアイテムを比較的容易に読み込むことができるからである。もちろん、これは、特定のパッチアンテナの設計が、所定の便利で実際的な電力入力のために、アンテナの周囲に、タグ付きアイテムが信頼できるように、および一貫的に読み込まれうる、十分に広い空間を作成するために十分な帯域幅および放射効率を生じることを前提とする。先行技術において記載される従来のパッチアンテナは、誘電性材料の上部に組立てられた導体材料の主要放射要素を有する。誘電性材料の下(すなわち、裏面)には、典型的に基準接地要素が設置され、これはアンテナによって伝送または受信される信号に関連して電気的に接地される導体材料の平面層である。先行技術において周知の典型的なパッチアンテナの設計において、アンテナの主要放射要素および基準接地要素は、誘電性材料(いくつかの場合には、単に空隙である)によって分離される平行面内にある。また、通常の場合、主要放射要素および基準接地要素は、一方が他方の真上に、またはそれぞれの平行面で一方が実質的に他方に重なるように組み立てられる。この従来の多層パッチアンテナの設計の不利点は、アンテナとRFIDリーダとの間の信号を運ぶシールドケーブルまたはツイストペア線の接続が、誘電性材料によって分離される2つの別個の水平面でアンテナに取り付けられなければならず、ゆえに接続穴または誘電体層の経由を必要とすることである。
【0015】
放射素子と基準接地導体との間の隙間のサイズ(すなわち、誘電体層の厚み)は、所定の誘電性材料においては、この隙間の厚みがアンテナの帯域幅をおおむね決定するため、従来のパッチアンテナにおいては重要な設計パラメータである。隙間が小さくなるにつれて、帯域幅は狭くなる。アンテナの帯域幅が狭すぎると、所定の用途におけるアンテナの同調は非常に難しくなり、通常の動作中における環境の制御不能な変更(アンテナによって監視されている領域への金属性の物体、人間の手、または別の材料の予期しない偶然の挿入)は、共振周波数を変動させる可能性があり、これは、過度に狭い帯域幅と相まって、RFIDタグ検出および読み込みに障害をきたす。ゆえに、所定の用途では、従来のパッチアンテナの設計においては、現実的な理由により、接地面と放射素子との間の距離には下限値が存在し、これはアンテナの全体の厚みを制約する。
【0016】
従来のパッチアンテナの厚みの別の制約は、放射効率(電磁放射線として放射される、アンテナに入る総電気エネルギーの割合)に端を発する。基準接地と放射素子との間の誘電体の厚さつまり隙間が小さすぎると、放射効率が低くなりすぎ、アンテナへの過度の電力は、誘電体および周囲に流れ込む熱として浪費される。
【0017】
上述の説明は、(1)パッチアンテナの設計が、UHFスマートシェルフおよび類似の用途において効果的に使用することができる、および(2)パッチ形式のアンテナを使用することが、さらに好都合であり、高い帯域幅および放射効率の要件によって課されるアンテナの厚みの制約を克服するなんらかの方法があれば、上記で説明されたスマートシェルフの実用的な要件をさらに完全に満たすことを明らかにする。また、フィードケーブルまたはワイヤの取り付けを単純化する、パッチアンテナのための新規の設計を見つけることが好都合となる。加えて、従来のパッチアンテナの設計において可能であるよりも、UHF放射線をより均一に、アンテナを含むシェルフの表面のより大きい面積(すなわち、放射素子平面の上部の領域)に拡散する新規のアンテナの設計を見つけることが好都合となる。上述のとおり、UHF放射の比較的短い波長(約12インチ)は、シェルフ上のあらゆる位置で、効果的におよび一貫してタグの読み込みを可能にすることを望むUHFスマートシェルフの設計者に課題を提示する場合がある。よりよいUHFアンテナの設計は、この問題を最小限とし、アンテナの縁の真上または周囲の領域内のよりよい「磁場拡散」または「磁場整形」を可能にすることになる。
【0018】
本発明は、従来のパッチアンテナの設計の上述の制約を克服し、帯域幅および放射効率を損なうことなく、はるかに薄型の新規のパッチアンテナをもたらす。また、本発明は、従来のパッチアンテナのアプローチを用いたもので可能であるよりもはるかに単純なアンテナフィードケーブルの取り付けを可能にする。また、本発明は、アンテナ周辺にはるかに均一に分散されるUHF場を可能し、これは不感帯を回避することをより簡単にし、スマートシェルフの設計者が、アンテナの周囲で均一に場を拡散または整形することを可能にする。この先行技術と対照的に、本発明は、主要放射要素が、基準接地要素を用いて、共通の幾何学的平面内に、または実質的に同一の平面内に配置される、または、主要放射要素および基準接地要素が、誘電体積層によって分離される、2つの平行な、近接して離間される平面内に配置され、主要放射要素と基準接地要素との間の重複がわずかであるか全くないアンテナについて記載する。つまり、本願に記載される主要な発明は、主要放射要素および基準接地要素が、この2つの要素が、一方が他方に直接重なっているのではなく、もしくは一方が実質的に他方に重複しているのではなく、同一の平面内に、または2つの近接して離間された平行面内に、実質的に隣り合っている、パッチアンテナである。
この費用効率の高いアンテナ構成は、基準接地要素に加えて浮動接地平面に実装され、および浮動接地平面が主要放射要素および基準接地を保持している平面の下部に位置した場合に、特に、RFIDスマートシェルフ用途において、ならびに同様に通常であれば従来のパッチアンテナに同調の困難をもたらす、狭い物理空間の中に集中する低電力RFID信号とともに近接して設置される、いくつかのRFIDタグにインテロゲーションを行うことが所望される類似の用途において、すぐれたアンテナ利得、帯域幅、および同調ロバスト性をもたらす。本発明のさらなる利点は、この新規に発明されたパッチアンテナが、先行技術に記載される典型的なパッチアンテナよりも薄型であることである。つまり、主要放射要素および基準接地要素を、重複がわずかであるか全くない同一の平面内に、または実質的に同一の平面上に設置することにより、より薄型のパッチアンテナが、所与の高い帯域幅、放射効率、および堅固な周波数応答の要件のために設計されうる。
【発明の概要】
【0019】
本発明の好ましい実施形態に従い、例えば、RFIDリーダとRFIDタグまたはトランスポンダとの間でRF信号を送信または受信するためのリーダアンテナが、保管用作り付け備品(例えば、シェルフ、キャビネット、引き出し、またはラック)の中に提供される。リーダアンテナは、各アンテナについて、アンテナのための主要な放射アンテナ要素および基準接地要素が、放射アンテナ要素と基準接地要素との間の重複がわずかであるか全くない、同一の物理的または幾何学的平面の中に、または誘電体積層によって分離される、2つの平行な、近接して離間される平面内に位置する構成を含むがこれに限定されない種々の構成で配置されてもよい。
【0020】
また、1つの選択肢として、1つ以上の浮動接地平面は、アンテナ周辺の電場または磁場の強さを向上、制御、または最適化するために、放射アンテナ要素の幾何学的平面に平行な平面内または同一の平面内に含まれてもよい。
【0021】
好ましい実施形態では、RFIDが使用可能な保管用作り付け備品に、複数のパッチアンテナが装備されていて、各パッチアンテナが、それぞれのパッチアンテナの主要放射要素と同一平面内にあるか、または実質的に同一平面内にある、自身の基準接地要素を有する。
【0022】
さらに、好ましい実施形態では、これらのRFIDが使用可能な作り付け備品は、インテリジェントネットワークを使用して実装され、アンテナはその中で、1つ以上の制御器およびホストコンピュータまたはホストネットワークから成る監視制御システムによって、選択、作動、または別様に管理される。
【0023】
種々の実施形態の、これらのおよび別の態様および利点を、本願において以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】先行技術の典型的なパッチアンテナの設計を示す。
【図2】本発明に記載される、同一平面内にある基準接地を持つパッチアンテナを示す。
【図3】本発明に記載される、アンテナパッチおよび基準接地平面への同軸ケーブル接続の詳細な図面を示す。
【図4】代替的なパッチアンテナの形状の実施例を示す。
【図5】追加の浮動接地要素が、放射アンテナ要素および基準接地要素を含むものと同一の平面内に配置される、パッチアンテナの実施例を示す。
【図6】さまざまな配向のパッチアンテナの配列を示す。
【図7】本発明の発明を実施するための形態に提供されるコンピュータシミュレーション結果に対応する先行技術のパッチアンテナを示す。
【図8】図7に示される設計の、先行技術のパッチアンテナのリターンロス(帯域幅)曲線を示す。
【図9】本発明の発明を実施するための形態において提供されるコンピュータシミュレーション結果に対応する、浮動接地要素を持たない同一平面内にある基準接地パッチアンテナを示す。
【図10】図9に示される設計の、浮動接地要素を持たない同一平面内にある基準接地パッチアンテナのリターンロス(帯域幅)曲線を示す。
【図11】浮動接地要素を持つ同一平面内にある基準接地パッチアンテナのリターンロス(帯域幅)曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ここで、本発明の好ましい実施形態および用途について記載する。別の実施形態を実現することもでき、開示される実施形態の変更は、本発明の精神または範囲を逸脱することなく行われうる。本願に開示される好ましい実施形態を、RFIDシステムの分野に適用するものとして特に記載したが、本発明が、同一または類似の問題を有する任意の技術において具現化されうることは、容易に明白であるものとする。
【0026】
以下の記載において、本願の一部を形成し、いくつかの実施形態を図示する添付の図面を参照する。別の実施形態が利用されてもよく、提供される記載の範囲を逸脱することなく、構造上または操作上の変更が行われてもよいことが理解されるものとする。
【0027】
図1は、従来技術によるパッチアンテナを示す図である。この設計において、支持誘電性材料100は、放射アンテナ要素110(誘電体の表)と基準接地要素120(誘電体の裏)とを分離する。送り地点135は、フィードケーブルの接地要素(図示せず)が基準接地120に取り付けられうるように、誘電体の中に穴を必要とする。
【0028】
図2は、本発明の好ましい実施形態に従う例示的パッチアンテナアセンブリを説明する図である。好ましい実施形態では、プリント基板において一般的に使用されるもののような第1の支持誘電性材料100が、放射アンテナ要素110および基準接地要素120を支持するために使用される。浮動接地130は、金属シートであるか、または回路基板上に印刷され、空気で満たされた空間によって第1のプリント基板から分離される。空隙つまり隙間のサイズは、好ましい実施形態では、2つのプリント基板の縁を固定の分離距離で保持する非導電性支持体によって維持される。アンテナパッチ110、基準接地120および浮動接地130は、典型的に固体の銅金属めっきから成るが、アンテナアセンブリのこれらの要素のために別の種類の導電性材料が使用されてもよいことは、当業者にはただちに明白である。好ましい実施形態では、信号は、図示されるように、同軸ケーブルが、放射アンテナ要素にはんだ付けされるケーブルのコアコンダクタと、基準接地要素にはんだ付けされるケーブルシールドメッシュとに取り付けられた地点150でアンテナに送られる。好ましい実施形態では、アンテナパッチ110と浮動接地130との総分離は、0.125インチ〜0.5インチの間であるが、これより大きいまたは小さい分離もまた使用されうる。アンテナパッチ110、基準接地120、および浮動接地130を支持する硬質誘電体積層の暑さは、典型的に0.025インチ〜0.060インチの間にあり、一方、MylarまたはFR4または別の類似の材料等の別の可撓性材料の厚みは、数ミリ程度でありうる。放射アンテナ要素110および基準接地要素120同一の平面内にあり、互いに近接して据えられるため、送りの容易さが、この構成の明らかな利点である。
【0029】
図2の実施形態パッチアンテナを製造する一実施形態では、パッチ110とも称される放射アンテナ要素および基準接地要素120は、ポリエステルまたはMylarまたはFR4等の別のプラスチックまたはポリマーシートであることができる誘電性材料100の表面上にエッチング、模様付け、または溶着される、銅または別の金属パターンによって加工されうる。
【0030】
図2に示されるアンテナアセンブリは、基準接地要素を放射アンテナ要素と同一の平面内に配置することによって実現される3つの共振周波数を持つ広い帯域幅を提供する。基準接地は金属化された長方形パッチであるため、主要(放射性)パッチに結合されると、第3の共振周波数を生成する。この第3の共振周波数は、基準接地の寸法を調整することによって同調されうる。基準接地要素および放射アンテナ要素のサイズ、基準接地要素と放射アンテナ要素との間の距離、および送りの位置は、共振周波数帯域、帯域幅、および分極要件によって決定される。上述の変数の値を注意深く選択することにより、所望される帯域にわたって拡散する3つの共振ピークを持つアンテナを作製することができる。本発明の高いアンテナ帯域幅は、先行技術のアンテナの設計に勝るもっとも重要な利点のうちの1つである。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、放射アンテナ要素110と浮動接地130との間に物理接続(図2に示されない電気コンダクタ)がしばしば行われる。放射要素と浮動接地との間のこの電気DCショートにより、両者の間にDC電圧の差はなく、この接続は、電気システムにESD(静電放電)による故障が起こる傾向を大幅に低減する。
【0032】
図3は、同軸ケーブル140とアンテナパッチ110および基準接地120の接続のさらなる詳細を示す。本発明の好ましい実施形態では、同軸ケーブルは、RFIDおよび別の高周波用途において一般的に使用されるシールドケーブルである。典型的に、RF信号は、ケーブルの金属メッシュシールド外被142の中の電圧に相対するか参照する、ケーブルの銅芯144内の電圧変動によって運ばれる。該芯144およびシールド外被142は、誘電性の絶縁材143によって分離される。好ましい実施形態では、ケーブル芯線144は、アンテナパッチ110にはんだ148ではんだ付けされ、シールド外被142は、はんだ146で基準接地120にはんだ付けされる。あるいは、SMA等の異なる種類のコネクタもまた、該アンテナと該システムを接続するために使用されうる。
【0033】
本発明(および本発明において教示される構造およびアプローチを考慮した後で、当業者によって容易に想到し得る別の実施形態)に記載される種々の実施形態におけるアンテナは、図2に示されるように、同軸ケーブル等の手段を経由して、外付け回路(図示せず)からRF信号によって送られてもよい。外付け回路は、例えば、スイッチデバイス、RFIDリーダ、インテリジェントネットワーク(米国仮出願第60/673,757号に対する優先権を主張する米国特許出願第11/366,496号に記載されるとおり)、またはRF信号をアンテナ構造へまたはアンテナ構造から伝送するための任意の既知の構成要素またはシステムであってもよい。図2および図3に示されるアンテナ送り地点または取り付け地点は一例に過ぎず、芯144をアンテナパッチ110上の別の地点に取り付けることも可能であるということを認識されたい。また、基準接地120上のシールド外被142のために種々の取り付け地点を選択することが可能である。これらの取り付け地点の特定の選択は、特定のアンテナ用途において必要とされるアンテナ帯域幅および利得によって、およびアンテナによって確立される電場および磁場の形状および対称性についての特定用途向けの要件によって異なる。取り付けの代替は、本願において列挙するには非常に多すぎるが、本発明において教示される構造およびアプローチを考慮した後で、例として、当業者には明白となろう。
【0034】
本発明の図に示される同軸ケーブル140は、本発明が取り組む用途において必要な信号および基準電圧を伝達することのできる、任意の別の適切なケーブル、コード、またはワイヤセットと置き換えられてもよいということは、当業者には明白であり、およびこの置き換えは、本発明の精神を逸脱することなく行われうる。
【0035】
放射アンテナ要素110は、任意のパターンまたは幾何学的形状(例えば、正方形、長方形、円形、フリーフロー等)で実装されてもよい。長方形の形状310、対角線320に沿って切り取った角を持つ長方形の形状、スロット330を持つ長方形の形状、2つの直交スロット340を持つ長方形の形状、円形の形状350、スロット360を持つ円形の形状、および2つの直交スロット370を持つ円形の形状を含む、これらの形状の代案のいくつかが、図4に示される。これらの代案は、例を目的として示されるのみであり、本発明の範囲および用途を限定することを意図するものではない。
【0036】
放射アンテナ要素110は、金属板、金属薄片、印刷または溶射された導電性インクまたは塗料、金属ワイヤメッシュ、または別の機能的に同等の材料(例えば、フィルム、プレート、金属粉等)で構成されてもよい。アンテナ基板100の材料は、誘電性材料(例えば、プリント基板のために典型的に使用される材料)または(積層または層状構造において使用されうるような、かかる無視しうる導電性材料の2つ以上の異なる種類の組み合わせを含む)無視しうる導電率を有する任意の別の材料である。
【0037】
ケーブル140は、どちらかの端部に、またはその全長に沿って位置する、コンデンサおよびインダクタ等の同調構成要素(図示せず)を有してもよい。これらの同調構成要素のサイズ(例えば、静電容量またはインダクタンス)は、当業者に周知の実践に従い、アンテナの所望される整合および帯域幅の特性に基づいて選択される。
【0038】
放射アンテナ要素110と基準接地要素120のための送り地点、放射アンテナ要素110と基準接地要素120との間の分離距離、放射アンテナ要素110および基準接地要素120の形状、放射アンテナ要素110および/または基準接地要素120の中のスロットまたは別の空洞の設置のサイズ、ならびに浮動接地130の有無、そのサイズまたは形状、放射アンテナ要素110と浮動接地130との間の分離距離、および電気的接続または放射アンテナ要素110と浮動接地130との間の「ショート」の位置または存在は、アンテナ利得を最適化するようにそれぞれ個別にまたは一緒に調整され、電場および磁場の形状は、特定の信号によって駆動される場合、アンテナによって設定され、その信号によって駆動される場合、電力はアンテナによって消費される。また、アンテナおよびその種々の構成要素の上述の特性、特にアンテナ要素スロット、スリット、および切断された角の特性は、所望されるアンテナのサイズに到達するように、およびアンテナによって検出される物体上に配置されるRFIDタグをアンテナが読み込むために好ましい方向に分極されるように調整されうる。例えば、アンテナは、特定の配向に配置される物体上のタグを読み込むために好ましい方向に直線分極が与えられてもよい。タグの位置または場所は、もしあれば、タグを好ましく読み込むためにアンテナ分極と協調する。スリットまたはスロットの詳細、および切断された角の性質もまた、アンテナの周波数応答に対して著しい効果を有し、アンテナの帯域幅を拡大するために使用されうる。従来のパッチアンテナが1つまたは2つの共振周波数のみを有する一方、1つ以上の浮動接地要素の使用によって導入される第3の共振周波数は、帯域幅を拡張する。
【0039】
先行技術において典型的なアンテナの設計では、金属性の物体のアンテナの下への設置は、アンテナの共振周波数を変化させ、深刻な難調を引き起こす場合がある。この問題は、本発明によって大幅に軽減された。本発明の好ましい実施形態のアンテナ構造は、制約されるEM場のために金属板または別の導電性の物体がアンテナ構造(金属の小売または収納シェルフ)に近接した下部に配置される場合にさえも良好に機能する。金属シェルフのために導入される浮動接地が反射器として機能するため、放射は一方向のみに発生する。したがって、アンテナはより高い利得を有するが、通常、帯域幅は低下する。
【0040】
図5は、放射アンテナ要素110、基準接地要素120、および1つの浮動接地要素160が共通の平面内に配置されるパッチアンテナの実施例を示す。本実施例では、別の浮動接地平面130もまた第2の平面内に存在する。浮動接地要素を基準接地および放射要素と同一の平面内に設置すると、より大きな帯域幅が得られる。図5は、追加的な(同一平面上の)浮動接地を1つのみ示すが、手近な用途のためにアンテナの周辺に場を整形し、放射パターンを最適化するために、2つ以上の浮動接地が採用されうる。
【0041】
先行技術に関連する本発明のいくつかの利点を示すために、詳細なコンピュータシミュレーションが行われた。図7は、切断された角(円形に分極される場の産出のため)を持つ正方形の放射アンテナ要素、および放射アンテナ要素の平面の下の平面内の正方形の基準接地要素を有する先行技術のパッチアンテナの特定の実施形態を示す。図7の距離Aは4.65インチであり、距離Bは1.3インチである。角の切断は、45度の角度で行われたことに留意されたい。距離C(基準接地要素の縁の長さ)は、8インチである。図7の2つの平面の間の距離Dは、0.5インチである。図7のアンテナのための送り地点は、放射要素(距離E)の側面から2.975インチ、放射要素(距離F)の先端から0.415インチのところに設置される。シミュレーションにおいて、その2つの平面間の誘電体として空気が使用された。銅の特性が放射要素および基準接地のために使用された。放射要素および基準接地を支持している基板は、プリント基板業界で一般的に使用される基板物質であるFR402(厚さ62ミリ)と仮定される。アンテナを取り巻く材料は、空気であると仮定される。図8は、周波数の関数として、図7によって説明されるアンテナのためのリターンロスをdBで示す。−8dBでは、示された帯域幅は約13%であった。−10dBでは、帯域幅は約10%である。
【0042】
図9は、45度に切断された角および同一平面内にある長方形の基準接地要素を持つ、正方形の放射アンテナ要素を有する本発明の特定の実施形態を示す。図9の距離Aは3.94インチ、距離Bは1.34インチである。基準接地要素120の長さCは5.28インチ、その幅Gは0.63インチである。放射アンテナ要素110と基準接地要素120との間の隙間Hは0.28インチである。図7および図8のアンテナに対応するシミュレーションと同様に、図9のシミュレーションは放射要素および基準接地のための銅の特性を仮定する。放射要素および基準接地を担持する基板は、厚さ62ミリのFR402であると仮定される。アンテナを取り巻く材料は、空気であると仮定される。図10は、周波数の関数として、図9によって説明されるアンテナのためのリターンロスをdBで示す。−8dBでは、示された帯域幅は約30%であった。−10dBでは、帯域幅は約20%である。ゆえに、本発明のアンテナの帯域幅は、これらのシミュレーション結果において示されるように、先行技術のものよりも著しく大きい。
【0043】
浮動接地要素が図9のアンテナの0.5インチ下方に配置される、追加的なシミュレーションが実行された。得られたリターンロス曲線は、図12に示される。浮動接地要素の存在による追加の共振ピークの導入に留意されたい。このアンテナの設計の帯域幅は、図9(浮動接地なし)に示されるアンテナのものより小さいが、図7に示される先行技術のパッチアンテナの帯域幅よりも大きい。
【0044】
本発明の別の実施形態では、図2のパッチアンテナアセンブリは、図6に示されるように、アンテナアセンブリのアレイの形で使用されうる。図2のアンテナアセンブリと類似して、図6のアレイの中の各アンテナアセンブリは、自信の放射アンテナ要素110、基準接地要素120、およびフィードケーブル140を有してもよい。本発明の一実施形態では、アレイ内の全てのアンテナは、単一の(共通の)プリント基板上に取り付けられることができ、単一の(共通の)浮動接地要素を活用することができる。あるいは、アレイの中の各アンテナアセンブリのために、別個の基板および浮動接地要素が使用されうる。
【0045】
図6に示されるようなアレイにおいて、各アンテナアセンブリの配向(放射アンテナ要素と垂直で、その中心を通る虚軸の周辺の配向について)はさまざまであってもよく、さもなければアレイの中の各アンテナアセンブリは、同一の回転配向を有してもよい。
【0046】
アンテナアセンブリを、図6に示されるもののようなアレイの中に配置することにより、小売店シェルフ、貯蔵庫または配送センタのラック、カウンタトップ上の、またはRFIDタグ読み込み用途、または別のRF通信用途において関連する別の物理空間の大きい物理面積を網羅することが可能である。かかるアプローチにおいて、アンテナネットワーク制御システム、ホストRFIDリーダ、または別のホストシステムによって、必要に応じて、アレイの中の各アンテナにクエリが行われる、比較的多数の比較的小型のアンテナが使用されうる。かかるネットワークおよび制御システムの実施例は、米国仮出願第60/673,757号に優先権を主張する米国特許出願第11/366,496号に記載されており、当該出願は参照によって明示的に本願に組み込まれる。
【0047】
本発明の追加の実施形態では、図6に示される例等の、しかしこれに限定されないアンテナアセンブリのアレイは、小売店シェルフ、キャビネット、倉庫シェルフまたはラック、小売店のカウンタトップ、またはいくつかの別の商用または家庭用収納庫または作業作り付け備品等の筐体、作り付け備品、またはシェルの中に包含されても良い。筐体、作り付け備品、またはシェルに使用される材料は、木、プラスチック、紙、木、プラスチック、および紙の組み合わせおよび置換から作られる積層体、または金属、または金属と別の誘電性材料との組み合わせを含む広範囲な種々の材料から選択されうる。アンテナアセンブリのアレイを包含するかかる筐体、作り付け備品、またはシェルにおいて、任意のおよび全ての金属の構成要素の設置は、アレイの中のアンテナからの電磁場が、筐体、作り付け備品、またはシェルの上、下、または周辺に放出されうるように、用途が求めるような手法で、構造強度、整合性、および審美性に従って作製されてもよい。
【0048】
例をとして記載される本発明の一実施形態は、図6に示されるもののようなアンテナアセンブリアレイが、その上にアンテナパッチとともに配置され、アンテナアセンブリの基準接地面が表を上にして金属シェルフから離れており、接着剤か金属ねじで適所に固定され、アンテナ構成要素の保護およびその用途に必要とされる審美性を向上させために、プラスチックシェルで覆われる、固体金属の小売用シェルフである。かかる実施形態において、およびアンテナアセンブリの浮動接地面上に、固体の比較的長い金属断片を有する、想到し得る別の実施形態の場合において、放射アンテナ要素110、基準接地要素120、および浮動接地130によって作製されるアンテナの高い指向性利得は、同調および利得を含むアンテナの動きが、アンテナアセンブリのアレイがその上に配置された金属シェルフのサイズ、形状、導電性、および別の特性に対して敏感でない望ましい状況を作る。これは、浮動接地がその場所に電位の均一を作り、それを超える全て(パッチの反対側)を、そうでなければアンテナのその面に放射されることになる電場および磁場から遮蔽するためである。言い換えると、放射アンテナ要素/基準接地平面およびシェルフの金属の間に浮動接地を使用することが、アンテナアセンブリをその動きにおいて「一方的」とし、アンテナアセンブリの上部(シェルフの金属の反対側のアンテナアセンブリの側)の振動場を保持する。金属シェルフの設計の項目に対するこの感度の低さは、複数のおよび異なる作り付けシェルフ向けの単一アンテナアセンブリアレイの設計の用途において大幅な柔軟性を示し、ある用途から別の用途へと移動される際に、パッチアンテナの大規模な再設計またはカスタマイズ化の必要を排除する。
【0049】
本発明の別の実施形態では、小売用シェルフの金属自体が、浮動接地として使用されても良く、あるいは、該シェルフは、金属の共通シートが、浮動接地平面およびアンテナアセンブリまたはアンテナアセンブリアレイの物理的担持の両方として、同様にRFIDタグを保持する小売アイテム等の作り付け備品上に配置されうる物体として使用されるように構成されてもよい。
【0050】
本発明は、放射アンテナ要素のサイズ、形状、厚み、空洞またはスロットの形状、基準接地要素のサイズ、形状、放射アンテナ要素によって占められる平面の二次元内の設置、放射アンテナ要素と基準接地要素とを分離する距離、信号送りラインまたはケーブルの放射アンテナ要素および基準接地要素への取り付けの場所または手法、1つ以上の浮動接地要素の有無、浮動接地平面のサイズまたは形状または厚み、浮動接地と放射アンテナ要素との間の分離距離、放射アンテナ要素を基準接地および浮動接地から分離するために使用される誘電性材料、放射アンテナ要素と基準接地と浮動接地を加工するために使用される導体材料、アレイの中に使用されるアンテナアセンブリの数、またはアンテナアセンブリまたはアンテナアセンブリアレイを格納し保護するために使用される材料および構造を含む、本願明細書に記載される実施形態の1つ以上の特徴の変形によって想到し得る全ての実施形態を明示的に含み、網羅する。
【0051】
本発明はまた、アンテナアセンブリアレイが単一のアンテナアセンブリ(すなわち、単一のパッチアンテナを持つ)によって置き換えられる全ての実施形態を包含する。
【0052】
また、アンテナアセンブリの種々のアレイは、アンテナアセンブリが2つの異なる平面を占めるように構成されうることに留意されたい。例えば、アセンブリのいくつかが第1の幾何学的平面の内部に位置し、アセンブリの残りが第1の幾何学的平面に直交する第2の幾何学的平面の内部に位置するように、アンテナアセンブリのアレイを構築してもよい。この実施形態は例のみを示す目的として示され、2つの平面が必ずしも直交する必要はないことに留意されたい。また、アンテナアセンブリの設置において3つ以上の幾何学的平面を使用し得ることが考えられる。かかるアンテナアセンブリの多平面アレイは、例えば、アンテナによって応答指令信号を送られるRFIDタグの配向が、不明、無作為、若しくは多様であることが判明しているいくつかの用途においてアレイのロバスト性を向上させうる。加えて、この用途は、いくつかの平面内へのアンテナアセンブリの設置によって産出されうる指定の電場または磁場の分極化を要求しうる。複数の平面内の複数のアンテナアセンブリの設置について想到し得る全ての実施形態が、明示的に本発明に含まれる。
【0053】
図2に示されるアンテナアセンブリの放射アンテナ要素110がスロットアンテナ、アンテナループまたは平面コイル、またはいくつかの別の種類のアンテナラジエータ要素と置き換えられる本発明の別の実施形態が想到し得る。かかる置き換えは、本願明細書に記載の本発明のあらゆる実施形態においても想到可能であり、かかる置き換えによって想到し得る全ての追加の実施形態は、明示的に本発明に含まれる。
【0054】
実施形態は、特定の例示的シェルフ構造の使用と関連して説明されたが、任意のシェルフ構造、ラック等(またはアンテナボード、シェルフの背、仕切り等の任意の構造、または別の支持構造)が、アイテムまたは製品を、販売、マーケティング、販売促進、ディスプレイ、提示、提供、小売、保証、保管、または別様に支持する使用における本発明の実施において好適に使用されうるということが容易に明白である。
【0055】
指定の回路、構成要素、モジュール、またはその寸法は、本発明の例示的実施形態に関連して開示されているが、任意の別の構造または機能的に同等の回路、構成要素、モジュール、またはその寸法を本発明の種々の実施形態の実施において利用し得ることは全く明白である。したがって、本発明は、本願に開示される(または本開示から明白な)特定の実施形態に限定されず、以下に添付される請求項によってのみ限定されるものと理解されたい。
新たに米国特許証によって保護されることを希望する特許請求の範囲を以下に記載する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、米国特許出願第60/978,389号(発明の名称”RFID PATCH ANTENNA WITH COPLANAR REFERENCE GROUND AND FLOATING GROUNDS”(2007年10月8日出願))による優先権を主張しており、その米国出願は、参照によって明示的に本明細書に組み込まれている。
【技術分野】
【0002】
一般に本発明は、低価格で薄くて小型の広帯域パッチアンテナに関し、このアンテナは、同一の幾何学的平面または近接して離間する平行面内に放射素子および基準接地導体を有し、また、同一の幾何学的平面または近接して離間される平行面内に選択的に浮動接地導体を有しており、このパッチアンテナ若しくはこのようなパッチアンテナのアレイは、UHF帯域信号がパッチアンテナを経由してリーダ(トランシーバ)とタグ(トランスポンダ)の間を送受信する無線周波 識別(RFID)の用途において実用性を有する。本発明は、RFID用途における特定の使用に関し、そのような用途では、スマートシェルフ、スマートカウンタトップ、または別のRFIDが使用可能な表面上に、良好に制御された指向性UHF信号放射を有する空間を作成することが望ましく、その空間には、一群のRFIDタグ付けアイテムが包含されており、UHF信号がRFIDタグと通信するには弱すぎる不感領域または空間内の位置の複雑性を伴うことなく、アンテナに取り付けられたRFIDリーダからのUHF信号を使用して信頼性を持って空間内のアイテムを読み取れるようにされている。
【背景技術】
【0003】
無線周波識別(RFID)システムおよびその他の形式の電子式商品監視は、アイテムの位置および配置が経済的関心、保全的関心またはその他の関心事項であるアイテムを追跡するために、その使用が急速に普及している。これらの用途においては、代表的には、追跡されるアイテムの内側にトランスポンダまたはタグが取り付けまたは設置されており、これらのトランスポンダまたはタグは、タグの位置(ひいてはそれから推測されるアイテムの位置)を、リーダが直接または間接的に取り付けられるネットワークを経由して人間またはソフトウェアアプリケーションへ報告するトランシーバまたはリーダと少なくとも断続的に通信状態にある。RFID用途の実施形態は、店舗内で公売される小売アイテムの追跡、これらのアイテムの店舗の裏部屋、作り付け棚、ディスプレイ、カウンタ、ケース、キャビネット、クロゼット、またはその他の設備における在庫管理、および販売地点から店舗出口に至るまでのアイテムの追跡を含む。また、アイテムが小売サプライチェーンを移動する際の倉庫、配送センタ、トラック、バン、運送用コンテナ、その他のアイテム保管地点またはアイテム輸送に関係するアイテム追跡用途も存在する。RFID技術の用途の他の領域は、高価なアイテム(必ずしも一般向けに販売されているとは限らない)が、盗難、紛失、または置き違えを防ぐため、またはその資産の管理系統の完全性を維持するために、環境内で追跡される資産追跡に関連する。RFID技術のこれらの用途は、例示目的として列挙したものであり、本技術には多くの他の用途が存在することに留意されたい。
【0004】
RFIDシステムは、代表的には、デジタル信号で変調されてエンコードされた電磁搬送波をRFIDタグに放射するためにリーダアンテナを使用する。そのため、リーダアンテナは、タグとリーダとの間の通信を促進し、その通信の質に影響を与える重要な構成要素である。リーダアンテナは、リーダからの信号を乗せた交流を、タグの中に位置する第2のアンテナに適した信号を乗せた振動電磁場または電磁波に変換するか、あるいは、信号を乗せた振動電磁場または電磁波(タグから送信されるか、タグによって修正される)を、リーダによる通信、およびリーダとの通信の復調ために、信号を乗せた交流に変換するトランデューサとして考えることができる。RFIDシステムに使用されるアンテナの種類は、パッチアンテナ、スロットアンテナ、ダイポールアンテナ、ループアンテナ、および多くの別の種類およびこれらの種類の変形物を含む。
【0005】
パッシブRFIDシステムの場合は、RFIDタグは電磁搬送波によって作動する。いったん作動すると、パッシブタグは高周波(RF)信号を解釈し、通常、電磁搬送波の中に時限式の、間欠的外乱を作成することにより、適切な応答を提供する。タグの応答をエンコードするこれらの外乱は、リーダによってリーダのアンテナを通って感知される。アクティブRFIDシステムの場合は、タグがバッテリ等の自身の電源を含み、自身の搬送波およびエンコードされたRF信号を作成することにより、リーダとのRF通信を開始することができるか、あるいはタグの出力は、タグのデータ処理速度を上げることにより、またはタグの応答の中の出力を上げることにより、タグの性能を強化するために使用することができ、ゆえにタグとリーダとの間の通信の最大距離を強化するために使用されうる。
【0006】
特にパッシブRFIDシステムでは、近距離場対遠距離場の動きについて、RFIDシステムとそのアンテナの動きを区別することはしばしば都合がよい。「近距離場」と「遠距離場」は相対語であり、用語「近」および「遠」が意味を有する搬送波の波長に関する。ある用途に伴う距離が波長を大幅に上回る場合、その用途は遠距離場用途であり、しばしばアンテナは、(ほとんどの電気通信用途において)点源と見なされうる。その一方、ある用途に伴う距離が波長を大幅に下回る場合、アンテナ間の(例えば、リーダアンテナとタグアンテナ)関連する電磁相互作用は、近距離場相互作用である。そうした状況においては、反応性のある電気または磁気構成要素はEM場を圧倒し、2つの結合アンテナ間の相互作用は、場の外乱を介して発生する。対象となる用途が搬送波の波長と類似した距離を伴う場合、状況はより複雑で、単なる近距離場または単なる遠距離場と考えることはできない。以下、この状況を「中間場」と呼ぶ。
【0007】
市販のRFIDシステムによって使用される2つの一般的な周波数帯域は、13.56MHzとUHF(約850〜960MHz、問題となる国によって異なる具体的な帯域を持つ)である。RFIDタグ付きの消費財に付けられるタグは、製造から最終的な小売店舗の場所への配送まで、サプライチェーン全体を通して一般的に多くの用途に使用されるため、小売店のシェルフの機能要件は、タグ周波数の選択に影響を与える一連の要因のうちのほんの1つでしかない。サプライチェーンの中の種々の取引相手に対して対象となる多くの要因および要件が存在し、この複雑な状況の中で、13.56MHzとUHFの両方が、スマートシェルフ、ラック、キャビネット、および別の小売店、倉庫、および別のビジネスの作り付け備品の中またはその上でタグ付きアイテムを追跡するために、広範囲に使用される。米国特許第7,268,742号、第6,989,796号、第6,943,688号、第6,861,993号、第6,696,954号、第6,600,420号、および第6,335,686号は、すべてスマートシェルフ、キャビネット、および関連する作り付け備品に対するRFIDアンテナ用途を扱っている。13.56MHz波は、22メータ(72フィート)をわずかに上回る波長を有し、一方、RFID用途に使用されるUHF放射線の波長は、1メートルの約3分の1、つまりちょうど1フィートである。アイテムレベルのRFID用途に特徴的な距離は、シェルフ、キャビネット、ラック、カウンタ、および別のかかる作り付け備品の中またはその上にあるタグ付きアイテムの追跡および監視を伴うため、かかる作り付け備品は、およそフィート(例えば、0.5フィート〜数フィート)であり、UHF技術が使用される場合、アンテナ相互作用は近距離場でも遠距離場でもなく、むしろ中間場であることは明らかである。この場合、リーダアンテナの種類の不適切な選択、または妥当な種類の不適切な設計は、全体的なRFIDシステムの性能不足およびアプリケーションの故障を招く場合がある。その理由の1つは、中間場の状況において、リーダアンテナから放射される電場および磁場が、関連する表面(例えば、タグ付きアイテムを保管している小売店のシェルフの表面)全体にわたって著しく変化することである。該場は、ある場所では強いかもしれないが、数インチ離れた別の場所でははるかに弱い可能性があり(UHF放射線の周波数はわずか数インチであるため)、UHFシステムの一般的な動きは、13.56MHz用途で観察されるよりもはるかに複雑である。ゆえに、UHFタグがシェルフおよび別の保管用作り付け備品上のRFIDアイテム追跡において使用される状況において、リーダアンテナの設計は重要となる。本発明は、広い不感(読み取り不能)領域のない、および実際の小売および別のビジネス用途におけるアンテナの設計の実用性を制限しかねない、大きなアンテナの厚みを必要としない、アンテナの表面(例えば、シェルフ表面)の真上の均一なUHF放射域をもたらすUHFアンテナの設計に対するアプローチについて記載する。
【0008】
パッシブRFIDシステムの検出範囲は、典型的に、例えば、パッシブUHF RFIDシステムについては、ほぼ数フィート未満の短距離の信号強度によって制限される。パッシブUHF RFIDシステムにおける読み取り範囲の制限により、多くの用途は、特に、1つの固定アンテナが装備された定置または固定リーダの検出範囲よりも著しく大きい空間内にタグ付きアイテムが保管される場合、すべてのタグを検出するために、一群のタグ付きアイテムの周りを手動で移動しうる小型リーダユニットを使用する。しかしながら、携帯型UHFリーダユニットは、いくつかの短所を抱えている。第1の短所は、スキャン活動に付随する人件費を伴う。固定の基礎構造を操作することは、いったん支払いが済めば、付随する持続的な労務費がかかる手動システムよりもはるかに安価である。加えて、携帯型ユニットはしばしば、タグの読み込みの正確な位置に関する不明瞭さをもたらす。例えば、リーダの位置はユーザによって留意されうるが、読み込みイベント中のタグの位置は、任意の用途に対して十分に知らされない場合がある。つまり、携帯型RFIDリーダの使用は、しばしばほんの数フィートの空間分解能の確実性につながり、多くの用途は数インチの空間分解能以内のタグ付きアイテムの位置の認識を必要とする。携帯型RFIDリーダはまた、固定リーダおよびアンテナシステムの場合よりも紛失したり盗難にあったりしやすい場合がある。
【0009】
携帯型UHF RFIDリーダの代替として、より多数のタグ付きアイテムを検出するために十分な電力で駆動される、大型の固定リーダアンテナが使用されても良い。しかしながら、かかるアンテナは、扱いにくく、審美的に不快な場合があり、放射電力が法定または規制の許容限界を超える場合がある。さらに、これらのリーダアンテナは、しばしば空間が非常に高額な店内または別の位置に設置され、かような大型のリーダアンテナを使用することは高価であり不都合である。加えて、単一の大型アンテナが、広い面積(例えば、小売用シェルフ1組、またはキャビネット全体、またはカウンタ全体等)の調査に使用される場合、タグ付きアイテムの位置を、特定の地点、または作り付けシェルフの小さいサブセクションに分散させることが不可能であることにも留意すべきである。いくつかの用途では、タグ付きアイテムの位置を、数インチの空間分解能で認識することが望ましい場合がある(例えば、シェルフ上に多くの小さいアイテムがあり、手動の検索および仕分けを最小限にすることが所望される場合)。この状況では、アイテムを所望される空間分解能で設置することが一般的に可能でないため、単一の大型リーダアンテナの使用は望ましくない。
【0010】
あるいは、全自動移動アンテナシステムが使用されうる。米国特許第7,132,945号には、移動または走査アンテナを採用したシェルフシステムが記載されている。このアプローチは、比較的広い面積を調査することを可能にし、また、人間が行う労働の必要を排除する。しかしながら、市販のシェルフシステムに可動部を導入することは、システム費用がより高額であること、据付がより複雑であること、および維持費がより高額であること、ならびに可動部を組み込んだ機械にしばしば見られるようなシステムのダウンタイムの不便さのために、実用的でないと認められる場合がある。ビーム形成スマートアンテナは、可動部なしで細いビームで空間を走査することができる。しかしながら、能動素子であるので、パッシブアンテナと比較すると通常大型で高価である。
【0011】
上述のアプローチの欠点を克服するため、小型アンテナの固定配列が、いくつかのUHF RPID用途で利用される。このアプローチでは、米国特許第7,084,769号に記載されるように、広い面積に及ぶ非常に多くのリーダアンテナが、ある種のスイッチング回路網を介して単一のリーダまたは1群のリーダに接続される。スマートシェルフおよび別の類似の用途は、RFIDが使用可能なシェルフ、キャビネット、ケース、ラックの中または上の小型タグ付きアイテムの追跡または在庫管理監査を伴い、または別の作り付け備品は、小型アンテナの固定配列を活用することができる。スマートシェルフおよび類似の用途において、タグ付け定置アイテムを追跡する際、小型アンテナの固定配列は、携帯型リーダ、単一の大型固定アンテナを用いたシステム、および移動アンテナシステムに勝るいくつかの利点を提示する。第1に、アンテナ自体が小型であり、したがって各アンテナを取り囲む空間の調査に比較的小さい電力を必要とする。したがって、これらのアンテナに1つずつクエリを行うシステムにおいて、システム自身が比較的小さい電力を必要とする(通常1ワットよりはるかに少ない)。大型アレイ中の小型アンテナのそれぞれにクエリを行うことにより、ゆえに、当該システムは、比較的小さい電力で広い面積を調査することができる。また、アンテナアレイにおいて使用されるUHFアンテナが概して小型であり(制限された電力と1−12インチ(約2.5cm−約30cm)未満という範囲のため)、指定された既知の空間的位置で小さい空間を調査するため、アレイの中の指定されたアンテナによって読み込まれるタグ付きアイテムもまた、1−12インチ(約2.5cm−約30cm)の同一の空間分解能で設置されることも当てはまるはずである。ゆえに、小型アンテナの固定配列を使用するシステムは、携帯型RFIDリーダおよび小数の比較的大型のアンテナを使用するシステムよりも正確にタグ付きアイテムの位置を判定することができる。また、アレイの中の各アンテナが比較的小さいため、棚その他の作り付け保管備品の内部に隠すことは極めて容易であるので、美観が向上し、外部からの破壊的な行為(例えば、子供が好奇心にかられて手で触れる行為、或いは一般人による悪意のある行為など)による被害を最小限にする。また、固定アンテナの配列は可動部を伴わないため、上述の可動部に付随する不利益の何れも問題にならない。また、かかるアンテナアレイの中で使用されるような小型アンテナは、単一のアンテナ要素が故障した場合、取替えがより安価である場合がある(単一の大型アンテナの取替えと比べて)。また、アンテナの固定配列は、タグ付きアイテムの走査を実行するために特別な手作業を必要とせず、したがって、携帯型リーダおよびアンテナシステム、または移動カートのアプローチに付随する高コストな手作業を伴わない。
【0012】
スマートシェルフおよび類似の用途において、アンテナアレイの中で使用されるアンテナが、単純で、低価格で、既存のインフラストラクチャに後から組み込むことが簡単で、アンテナの近くにいる人々の目につかないように隠すことが簡単であること、およびアンテナがすばやく据付けられ、接続されうるということが、経済的および美観的理由により、しばしば重要である。これらの用途の要件は、アンテナの製作に使用される層の数を最小限とし、また、全体のアンテナの厚みを最小限とするアンテナ構成を使用すれば、より簡単に満たされる。つまり、薄型の、または目立たないアンテナは隠すことがより簡単であり、既存のインフラストラクチャに対する特別な変更を必要とせずに、既存のインフラストラクチャに合わせることがより簡単である。また、アンテナの中の層を減らすことは、アンテナの費用を低減する傾向がある。費用および据付けの利便性という理由のためには、RFフィードケーブルまたはワイヤのアンテナへの取り付けには可能な限り単純な試みをなすことが望ましい。好ましくは、取り付けは、一箇所で、一表面上で、穴または特別なチャネル、ワイヤ、またはアンテナ基材を通り抜ける導電体を必要とせずに行われるべきである。この最後の要件は、アンテナシステムの大量製造においては、この場合、最終組み立ては、通常は組立ラインの電気技師によるいくつかの手作業による組み立てステップを伴うため、特に重要であり、1つのまたはいくつかのステップを排除することは、総生産費を著しく低減することになる。また、UHFアンテナの設計が、放射場がタグとリーダとの間の通信を促進するには弱すぎる、アンテナ間またはその周りの「不感体」または小さい面積なしに、アンテナの近くの空間においてRFIDタグの読み込みを可能とすることも重要である。スマートシェルフおよび類似の用途において使用されるアンテナのための別の要件は、多様のタグアンテナ配向を有するアイテムを読み込む能力を持つことである(すなわち、タグ配向の非依存性、または少なくともその理想に近い動き)。
【0013】
上述のもののようなアンテナシステムにおいて使用されうる、従来のパッチアンテナ、スロットアンテナ、ダイポールアンテナ、および別の一般的なUHFアンテナの種類は、概して多層を含む。米国特許第6,639,556号は、この重層構造およびRFフィードに中央の穴を持つパッチアンテナの設計を示す。米国特許第6,480,170号はまた、介在する誘電体の反対側に基準接地および放射素子を持つパッチアンテナを示す。多層アンテナの設計は、過度の製造費および過度のアンテナの厚みにつながる可能性がある(アンテナ据付け中の既存のインフラストラクチャへの改良部品の組み込みを複雑にし、アンテナを視界から隠すことをより困難にする)。多層アンテナの設計はまた、搬送波と基準接地の接続が異なる層で発生するため、接続ワイヤ(例えば、アンテナとリーダとの間の同軸ケーブル)の取り付けの形式を複雑化する傾向があり、これは上述の理由により、アンテナの費用を増大させる。
【0014】
UHFスマートシェルフの用途において、アンテナの種類としてはパッチアンテナが良い選択である。その理由は、パッチアンテナから放射される場が、大部分はアンテナの面に直交する方向であるため、アンテナをシェルフ表面上または中に配置することができ、その領域内のシェルフの真上に、RFIDが有効な空間を作成することができ、シェルフの表面上に置かれたタグ付きアイテムを比較的容易に読み込むことができるからである。もちろん、これは、特定のパッチアンテナの設計が、所定の便利で実際的な電力入力のために、アンテナの周囲に、タグ付きアイテムが信頼できるように、および一貫的に読み込まれうる、十分に広い空間を作成するために十分な帯域幅および放射効率を生じることを前提とする。先行技術において記載される従来のパッチアンテナは、誘電性材料の上部に組立てられた導体材料の主要放射要素を有する。誘電性材料の下(すなわち、裏面)には、典型的に基準接地要素が設置され、これはアンテナによって伝送または受信される信号に関連して電気的に接地される導体材料の平面層である。先行技術において周知の典型的なパッチアンテナの設計において、アンテナの主要放射要素および基準接地要素は、誘電性材料(いくつかの場合には、単に空隙である)によって分離される平行面内にある。また、通常の場合、主要放射要素および基準接地要素は、一方が他方の真上に、またはそれぞれの平行面で一方が実質的に他方に重なるように組み立てられる。この従来の多層パッチアンテナの設計の不利点は、アンテナとRFIDリーダとの間の信号を運ぶシールドケーブルまたはツイストペア線の接続が、誘電性材料によって分離される2つの別個の水平面でアンテナに取り付けられなければならず、ゆえに接続穴または誘電体層の経由を必要とすることである。
【0015】
放射素子と基準接地導体との間の隙間のサイズ(すなわち、誘電体層の厚み)は、所定の誘電性材料においては、この隙間の厚みがアンテナの帯域幅をおおむね決定するため、従来のパッチアンテナにおいては重要な設計パラメータである。隙間が小さくなるにつれて、帯域幅は狭くなる。アンテナの帯域幅が狭すぎると、所定の用途におけるアンテナの同調は非常に難しくなり、通常の動作中における環境の制御不能な変更(アンテナによって監視されている領域への金属性の物体、人間の手、または別の材料の予期しない偶然の挿入)は、共振周波数を変動させる可能性があり、これは、過度に狭い帯域幅と相まって、RFIDタグ検出および読み込みに障害をきたす。ゆえに、所定の用途では、従来のパッチアンテナの設計においては、現実的な理由により、接地面と放射素子との間の距離には下限値が存在し、これはアンテナの全体の厚みを制約する。
【0016】
従来のパッチアンテナの厚みの別の制約は、放射効率(電磁放射線として放射される、アンテナに入る総電気エネルギーの割合)に端を発する。基準接地と放射素子との間の誘電体の厚さつまり隙間が小さすぎると、放射効率が低くなりすぎ、アンテナへの過度の電力は、誘電体および周囲に流れ込む熱として浪費される。
【0017】
上述の説明は、(1)パッチアンテナの設計が、UHFスマートシェルフおよび類似の用途において効果的に使用することができる、および(2)パッチ形式のアンテナを使用することが、さらに好都合であり、高い帯域幅および放射効率の要件によって課されるアンテナの厚みの制約を克服するなんらかの方法があれば、上記で説明されたスマートシェルフの実用的な要件をさらに完全に満たすことを明らかにする。また、フィードケーブルまたはワイヤの取り付けを単純化する、パッチアンテナのための新規の設計を見つけることが好都合となる。加えて、従来のパッチアンテナの設計において可能であるよりも、UHF放射線をより均一に、アンテナを含むシェルフの表面のより大きい面積(すなわち、放射素子平面の上部の領域)に拡散する新規のアンテナの設計を見つけることが好都合となる。上述のとおり、UHF放射の比較的短い波長(約12インチ)は、シェルフ上のあらゆる位置で、効果的におよび一貫してタグの読み込みを可能にすることを望むUHFスマートシェルフの設計者に課題を提示する場合がある。よりよいUHFアンテナの設計は、この問題を最小限とし、アンテナの縁の真上または周囲の領域内のよりよい「磁場拡散」または「磁場整形」を可能にすることになる。
【0018】
本発明は、従来のパッチアンテナの設計の上述の制約を克服し、帯域幅および放射効率を損なうことなく、はるかに薄型の新規のパッチアンテナをもたらす。また、本発明は、従来のパッチアンテナのアプローチを用いたもので可能であるよりもはるかに単純なアンテナフィードケーブルの取り付けを可能にする。また、本発明は、アンテナ周辺にはるかに均一に分散されるUHF場を可能し、これは不感帯を回避することをより簡単にし、スマートシェルフの設計者が、アンテナの周囲で均一に場を拡散または整形することを可能にする。この先行技術と対照的に、本発明は、主要放射要素が、基準接地要素を用いて、共通の幾何学的平面内に、または実質的に同一の平面内に配置される、または、主要放射要素および基準接地要素が、誘電体積層によって分離される、2つの平行な、近接して離間される平面内に配置され、主要放射要素と基準接地要素との間の重複がわずかであるか全くないアンテナについて記載する。つまり、本願に記載される主要な発明は、主要放射要素および基準接地要素が、この2つの要素が、一方が他方に直接重なっているのではなく、もしくは一方が実質的に他方に重複しているのではなく、同一の平面内に、または2つの近接して離間された平行面内に、実質的に隣り合っている、パッチアンテナである。
この費用効率の高いアンテナ構成は、基準接地要素に加えて浮動接地平面に実装され、および浮動接地平面が主要放射要素および基準接地を保持している平面の下部に位置した場合に、特に、RFIDスマートシェルフ用途において、ならびに同様に通常であれば従来のパッチアンテナに同調の困難をもたらす、狭い物理空間の中に集中する低電力RFID信号とともに近接して設置される、いくつかのRFIDタグにインテロゲーションを行うことが所望される類似の用途において、すぐれたアンテナ利得、帯域幅、および同調ロバスト性をもたらす。本発明のさらなる利点は、この新規に発明されたパッチアンテナが、先行技術に記載される典型的なパッチアンテナよりも薄型であることである。つまり、主要放射要素および基準接地要素を、重複がわずかであるか全くない同一の平面内に、または実質的に同一の平面上に設置することにより、より薄型のパッチアンテナが、所与の高い帯域幅、放射効率、および堅固な周波数応答の要件のために設計されうる。
【発明の概要】
【0019】
本発明の好ましい実施形態に従い、例えば、RFIDリーダとRFIDタグまたはトランスポンダとの間でRF信号を送信または受信するためのリーダアンテナが、保管用作り付け備品(例えば、シェルフ、キャビネット、引き出し、またはラック)の中に提供される。リーダアンテナは、各アンテナについて、アンテナのための主要な放射アンテナ要素および基準接地要素が、放射アンテナ要素と基準接地要素との間の重複がわずかであるか全くない、同一の物理的または幾何学的平面の中に、または誘電体積層によって分離される、2つの平行な、近接して離間される平面内に位置する構成を含むがこれに限定されない種々の構成で配置されてもよい。
【0020】
また、1つの選択肢として、1つ以上の浮動接地平面は、アンテナ周辺の電場または磁場の強さを向上、制御、または最適化するために、放射アンテナ要素の幾何学的平面に平行な平面内または同一の平面内に含まれてもよい。
【0021】
好ましい実施形態では、RFIDが使用可能な保管用作り付け備品に、複数のパッチアンテナが装備されていて、各パッチアンテナが、それぞれのパッチアンテナの主要放射要素と同一平面内にあるか、または実質的に同一平面内にある、自身の基準接地要素を有する。
【0022】
さらに、好ましい実施形態では、これらのRFIDが使用可能な作り付け備品は、インテリジェントネットワークを使用して実装され、アンテナはその中で、1つ以上の制御器およびホストコンピュータまたはホストネットワークから成る監視制御システムによって、選択、作動、または別様に管理される。
【0023】
種々の実施形態の、これらのおよび別の態様および利点を、本願において以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】先行技術の典型的なパッチアンテナの設計を示す。
【図2】本発明に記載される、同一平面内にある基準接地を持つパッチアンテナを示す。
【図3】本発明に記載される、アンテナパッチおよび基準接地平面への同軸ケーブル接続の詳細な図面を示す。
【図4】代替的なパッチアンテナの形状の実施例を示す。
【図5】追加の浮動接地要素が、放射アンテナ要素および基準接地要素を含むものと同一の平面内に配置される、パッチアンテナの実施例を示す。
【図6】さまざまな配向のパッチアンテナの配列を示す。
【図7】本発明の発明を実施するための形態に提供されるコンピュータシミュレーション結果に対応する先行技術のパッチアンテナを示す。
【図8】図7に示される設計の、先行技術のパッチアンテナのリターンロス(帯域幅)曲線を示す。
【図9】本発明の発明を実施するための形態において提供されるコンピュータシミュレーション結果に対応する、浮動接地要素を持たない同一平面内にある基準接地パッチアンテナを示す。
【図10】図9に示される設計の、浮動接地要素を持たない同一平面内にある基準接地パッチアンテナのリターンロス(帯域幅)曲線を示す。
【図11】浮動接地要素を持つ同一平面内にある基準接地パッチアンテナのリターンロス(帯域幅)曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ここで、本発明の好ましい実施形態および用途について記載する。別の実施形態を実現することもでき、開示される実施形態の変更は、本発明の精神または範囲を逸脱することなく行われうる。本願に開示される好ましい実施形態を、RFIDシステムの分野に適用するものとして特に記載したが、本発明が、同一または類似の問題を有する任意の技術において具現化されうることは、容易に明白であるものとする。
【0026】
以下の記載において、本願の一部を形成し、いくつかの実施形態を図示する添付の図面を参照する。別の実施形態が利用されてもよく、提供される記載の範囲を逸脱することなく、構造上または操作上の変更が行われてもよいことが理解されるものとする。
【0027】
図1は、従来技術によるパッチアンテナを示す図である。この設計において、支持誘電性材料100は、放射アンテナ要素110(誘電体の表)と基準接地要素120(誘電体の裏)とを分離する。送り地点135は、フィードケーブルの接地要素(図示せず)が基準接地120に取り付けられうるように、誘電体の中に穴を必要とする。
【0028】
図2は、本発明の好ましい実施形態に従う例示的パッチアンテナアセンブリを説明する図である。好ましい実施形態では、プリント基板において一般的に使用されるもののような第1の支持誘電性材料100が、放射アンテナ要素110および基準接地要素120を支持するために使用される。浮動接地130は、金属シートであるか、または回路基板上に印刷され、空気で満たされた空間によって第1のプリント基板から分離される。空隙つまり隙間のサイズは、好ましい実施形態では、2つのプリント基板の縁を固定の分離距離で保持する非導電性支持体によって維持される。アンテナパッチ110、基準接地120および浮動接地130は、典型的に固体の銅金属めっきから成るが、アンテナアセンブリのこれらの要素のために別の種類の導電性材料が使用されてもよいことは、当業者にはただちに明白である。好ましい実施形態では、信号は、図示されるように、同軸ケーブルが、放射アンテナ要素にはんだ付けされるケーブルのコアコンダクタと、基準接地要素にはんだ付けされるケーブルシールドメッシュとに取り付けられた地点150でアンテナに送られる。好ましい実施形態では、アンテナパッチ110と浮動接地130との総分離は、0.125インチ〜0.5インチの間であるが、これより大きいまたは小さい分離もまた使用されうる。アンテナパッチ110、基準接地120、および浮動接地130を支持する硬質誘電体積層の暑さは、典型的に0.025インチ〜0.060インチの間にあり、一方、MylarまたはFR4または別の類似の材料等の別の可撓性材料の厚みは、数ミリ程度でありうる。放射アンテナ要素110および基準接地要素120同一の平面内にあり、互いに近接して据えられるため、送りの容易さが、この構成の明らかな利点である。
【0029】
図2の実施形態パッチアンテナを製造する一実施形態では、パッチ110とも称される放射アンテナ要素および基準接地要素120は、ポリエステルまたはMylarまたはFR4等の別のプラスチックまたはポリマーシートであることができる誘電性材料100の表面上にエッチング、模様付け、または溶着される、銅または別の金属パターンによって加工されうる。
【0030】
図2に示されるアンテナアセンブリは、基準接地要素を放射アンテナ要素と同一の平面内に配置することによって実現される3つの共振周波数を持つ広い帯域幅を提供する。基準接地は金属化された長方形パッチであるため、主要(放射性)パッチに結合されると、第3の共振周波数を生成する。この第3の共振周波数は、基準接地の寸法を調整することによって同調されうる。基準接地要素および放射アンテナ要素のサイズ、基準接地要素と放射アンテナ要素との間の距離、および送りの位置は、共振周波数帯域、帯域幅、および分極要件によって決定される。上述の変数の値を注意深く選択することにより、所望される帯域にわたって拡散する3つの共振ピークを持つアンテナを作製することができる。本発明の高いアンテナ帯域幅は、先行技術のアンテナの設計に勝るもっとも重要な利点のうちの1つである。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、放射アンテナ要素110と浮動接地130との間に物理接続(図2に示されない電気コンダクタ)がしばしば行われる。放射要素と浮動接地との間のこの電気DCショートにより、両者の間にDC電圧の差はなく、この接続は、電気システムにESD(静電放電)による故障が起こる傾向を大幅に低減する。
【0032】
図3は、同軸ケーブル140とアンテナパッチ110および基準接地120の接続のさらなる詳細を示す。本発明の好ましい実施形態では、同軸ケーブルは、RFIDおよび別の高周波用途において一般的に使用されるシールドケーブルである。典型的に、RF信号は、ケーブルの金属メッシュシールド外被142の中の電圧に相対するか参照する、ケーブルの銅芯144内の電圧変動によって運ばれる。該芯144およびシールド外被142は、誘電性の絶縁材143によって分離される。好ましい実施形態では、ケーブル芯線144は、アンテナパッチ110にはんだ148ではんだ付けされ、シールド外被142は、はんだ146で基準接地120にはんだ付けされる。あるいは、SMA等の異なる種類のコネクタもまた、該アンテナと該システムを接続するために使用されうる。
【0033】
本発明(および本発明において教示される構造およびアプローチを考慮した後で、当業者によって容易に想到し得る別の実施形態)に記載される種々の実施形態におけるアンテナは、図2に示されるように、同軸ケーブル等の手段を経由して、外付け回路(図示せず)からRF信号によって送られてもよい。外付け回路は、例えば、スイッチデバイス、RFIDリーダ、インテリジェントネットワーク(米国仮出願第60/673,757号に対する優先権を主張する米国特許出願第11/366,496号に記載されるとおり)、またはRF信号をアンテナ構造へまたはアンテナ構造から伝送するための任意の既知の構成要素またはシステムであってもよい。図2および図3に示されるアンテナ送り地点または取り付け地点は一例に過ぎず、芯144をアンテナパッチ110上の別の地点に取り付けることも可能であるということを認識されたい。また、基準接地120上のシールド外被142のために種々の取り付け地点を選択することが可能である。これらの取り付け地点の特定の選択は、特定のアンテナ用途において必要とされるアンテナ帯域幅および利得によって、およびアンテナによって確立される電場および磁場の形状および対称性についての特定用途向けの要件によって異なる。取り付けの代替は、本願において列挙するには非常に多すぎるが、本発明において教示される構造およびアプローチを考慮した後で、例として、当業者には明白となろう。
【0034】
本発明の図に示される同軸ケーブル140は、本発明が取り組む用途において必要な信号および基準電圧を伝達することのできる、任意の別の適切なケーブル、コード、またはワイヤセットと置き換えられてもよいということは、当業者には明白であり、およびこの置き換えは、本発明の精神を逸脱することなく行われうる。
【0035】
放射アンテナ要素110は、任意のパターンまたは幾何学的形状(例えば、正方形、長方形、円形、フリーフロー等)で実装されてもよい。長方形の形状310、対角線320に沿って切り取った角を持つ長方形の形状、スロット330を持つ長方形の形状、2つの直交スロット340を持つ長方形の形状、円形の形状350、スロット360を持つ円形の形状、および2つの直交スロット370を持つ円形の形状を含む、これらの形状の代案のいくつかが、図4に示される。これらの代案は、例を目的として示されるのみであり、本発明の範囲および用途を限定することを意図するものではない。
【0036】
放射アンテナ要素110は、金属板、金属薄片、印刷または溶射された導電性インクまたは塗料、金属ワイヤメッシュ、または別の機能的に同等の材料(例えば、フィルム、プレート、金属粉等)で構成されてもよい。アンテナ基板100の材料は、誘電性材料(例えば、プリント基板のために典型的に使用される材料)または(積層または層状構造において使用されうるような、かかる無視しうる導電性材料の2つ以上の異なる種類の組み合わせを含む)無視しうる導電率を有する任意の別の材料である。
【0037】
ケーブル140は、どちらかの端部に、またはその全長に沿って位置する、コンデンサおよびインダクタ等の同調構成要素(図示せず)を有してもよい。これらの同調構成要素のサイズ(例えば、静電容量またはインダクタンス)は、当業者に周知の実践に従い、アンテナの所望される整合および帯域幅の特性に基づいて選択される。
【0038】
放射アンテナ要素110と基準接地要素120のための送り地点、放射アンテナ要素110と基準接地要素120との間の分離距離、放射アンテナ要素110および基準接地要素120の形状、放射アンテナ要素110および/または基準接地要素120の中のスロットまたは別の空洞の設置のサイズ、ならびに浮動接地130の有無、そのサイズまたは形状、放射アンテナ要素110と浮動接地130との間の分離距離、および電気的接続または放射アンテナ要素110と浮動接地130との間の「ショート」の位置または存在は、アンテナ利得を最適化するようにそれぞれ個別にまたは一緒に調整され、電場および磁場の形状は、特定の信号によって駆動される場合、アンテナによって設定され、その信号によって駆動される場合、電力はアンテナによって消費される。また、アンテナおよびその種々の構成要素の上述の特性、特にアンテナ要素スロット、スリット、および切断された角の特性は、所望されるアンテナのサイズに到達するように、およびアンテナによって検出される物体上に配置されるRFIDタグをアンテナが読み込むために好ましい方向に分極されるように調整されうる。例えば、アンテナは、特定の配向に配置される物体上のタグを読み込むために好ましい方向に直線分極が与えられてもよい。タグの位置または場所は、もしあれば、タグを好ましく読み込むためにアンテナ分極と協調する。スリットまたはスロットの詳細、および切断された角の性質もまた、アンテナの周波数応答に対して著しい効果を有し、アンテナの帯域幅を拡大するために使用されうる。従来のパッチアンテナが1つまたは2つの共振周波数のみを有する一方、1つ以上の浮動接地要素の使用によって導入される第3の共振周波数は、帯域幅を拡張する。
【0039】
先行技術において典型的なアンテナの設計では、金属性の物体のアンテナの下への設置は、アンテナの共振周波数を変化させ、深刻な難調を引き起こす場合がある。この問題は、本発明によって大幅に軽減された。本発明の好ましい実施形態のアンテナ構造は、制約されるEM場のために金属板または別の導電性の物体がアンテナ構造(金属の小売または収納シェルフ)に近接した下部に配置される場合にさえも良好に機能する。金属シェルフのために導入される浮動接地が反射器として機能するため、放射は一方向のみに発生する。したがって、アンテナはより高い利得を有するが、通常、帯域幅は低下する。
【0040】
図5は、放射アンテナ要素110、基準接地要素120、および1つの浮動接地要素160が共通の平面内に配置されるパッチアンテナの実施例を示す。本実施例では、別の浮動接地平面130もまた第2の平面内に存在する。浮動接地要素を基準接地および放射要素と同一の平面内に設置すると、より大きな帯域幅が得られる。図5は、追加的な(同一平面上の)浮動接地を1つのみ示すが、手近な用途のためにアンテナの周辺に場を整形し、放射パターンを最適化するために、2つ以上の浮動接地が採用されうる。
【0041】
先行技術に関連する本発明のいくつかの利点を示すために、詳細なコンピュータシミュレーションが行われた。図7は、切断された角(円形に分極される場の産出のため)を持つ正方形の放射アンテナ要素、および放射アンテナ要素の平面の下の平面内の正方形の基準接地要素を有する先行技術のパッチアンテナの特定の実施形態を示す。図7の距離Aは4.65インチであり、距離Bは1.3インチである。角の切断は、45度の角度で行われたことに留意されたい。距離C(基準接地要素の縁の長さ)は、8インチである。図7の2つの平面の間の距離Dは、0.5インチである。図7のアンテナのための送り地点は、放射要素(距離E)の側面から2.975インチ、放射要素(距離F)の先端から0.415インチのところに設置される。シミュレーションにおいて、その2つの平面間の誘電体として空気が使用された。銅の特性が放射要素および基準接地のために使用された。放射要素および基準接地を支持している基板は、プリント基板業界で一般的に使用される基板物質であるFR402(厚さ62ミリ)と仮定される。アンテナを取り巻く材料は、空気であると仮定される。図8は、周波数の関数として、図7によって説明されるアンテナのためのリターンロスをdBで示す。−8dBでは、示された帯域幅は約13%であった。−10dBでは、帯域幅は約10%である。
【0042】
図9は、45度に切断された角および同一平面内にある長方形の基準接地要素を持つ、正方形の放射アンテナ要素を有する本発明の特定の実施形態を示す。図9の距離Aは3.94インチ、距離Bは1.34インチである。基準接地要素120の長さCは5.28インチ、その幅Gは0.63インチである。放射アンテナ要素110と基準接地要素120との間の隙間Hは0.28インチである。図7および図8のアンテナに対応するシミュレーションと同様に、図9のシミュレーションは放射要素および基準接地のための銅の特性を仮定する。放射要素および基準接地を担持する基板は、厚さ62ミリのFR402であると仮定される。アンテナを取り巻く材料は、空気であると仮定される。図10は、周波数の関数として、図9によって説明されるアンテナのためのリターンロスをdBで示す。−8dBでは、示された帯域幅は約30%であった。−10dBでは、帯域幅は約20%である。ゆえに、本発明のアンテナの帯域幅は、これらのシミュレーション結果において示されるように、先行技術のものよりも著しく大きい。
【0043】
浮動接地要素が図9のアンテナの0.5インチ下方に配置される、追加的なシミュレーションが実行された。得られたリターンロス曲線は、図12に示される。浮動接地要素の存在による追加の共振ピークの導入に留意されたい。このアンテナの設計の帯域幅は、図9(浮動接地なし)に示されるアンテナのものより小さいが、図7に示される先行技術のパッチアンテナの帯域幅よりも大きい。
【0044】
本発明の別の実施形態では、図2のパッチアンテナアセンブリは、図6に示されるように、アンテナアセンブリのアレイの形で使用されうる。図2のアンテナアセンブリと類似して、図6のアレイの中の各アンテナアセンブリは、自信の放射アンテナ要素110、基準接地要素120、およびフィードケーブル140を有してもよい。本発明の一実施形態では、アレイ内の全てのアンテナは、単一の(共通の)プリント基板上に取り付けられることができ、単一の(共通の)浮動接地要素を活用することができる。あるいは、アレイの中の各アンテナアセンブリのために、別個の基板および浮動接地要素が使用されうる。
【0045】
図6に示されるようなアレイにおいて、各アンテナアセンブリの配向(放射アンテナ要素と垂直で、その中心を通る虚軸の周辺の配向について)はさまざまであってもよく、さもなければアレイの中の各アンテナアセンブリは、同一の回転配向を有してもよい。
【0046】
アンテナアセンブリを、図6に示されるもののようなアレイの中に配置することにより、小売店シェルフ、貯蔵庫または配送センタのラック、カウンタトップ上の、またはRFIDタグ読み込み用途、または別のRF通信用途において関連する別の物理空間の大きい物理面積を網羅することが可能である。かかるアプローチにおいて、アンテナネットワーク制御システム、ホストRFIDリーダ、または別のホストシステムによって、必要に応じて、アレイの中の各アンテナにクエリが行われる、比較的多数の比較的小型のアンテナが使用されうる。かかるネットワークおよび制御システムの実施例は、米国仮出願第60/673,757号に優先権を主張する米国特許出願第11/366,496号に記載されており、当該出願は参照によって明示的に本願に組み込まれる。
【0047】
本発明の追加の実施形態では、図6に示される例等の、しかしこれに限定されないアンテナアセンブリのアレイは、小売店シェルフ、キャビネット、倉庫シェルフまたはラック、小売店のカウンタトップ、またはいくつかの別の商用または家庭用収納庫または作業作り付け備品等の筐体、作り付け備品、またはシェルの中に包含されても良い。筐体、作り付け備品、またはシェルに使用される材料は、木、プラスチック、紙、木、プラスチック、および紙の組み合わせおよび置換から作られる積層体、または金属、または金属と別の誘電性材料との組み合わせを含む広範囲な種々の材料から選択されうる。アンテナアセンブリのアレイを包含するかかる筐体、作り付け備品、またはシェルにおいて、任意のおよび全ての金属の構成要素の設置は、アレイの中のアンテナからの電磁場が、筐体、作り付け備品、またはシェルの上、下、または周辺に放出されうるように、用途が求めるような手法で、構造強度、整合性、および審美性に従って作製されてもよい。
【0048】
例をとして記載される本発明の一実施形態は、図6に示されるもののようなアンテナアセンブリアレイが、その上にアンテナパッチとともに配置され、アンテナアセンブリの基準接地面が表を上にして金属シェルフから離れており、接着剤か金属ねじで適所に固定され、アンテナ構成要素の保護およびその用途に必要とされる審美性を向上させために、プラスチックシェルで覆われる、固体金属の小売用シェルフである。かかる実施形態において、およびアンテナアセンブリの浮動接地面上に、固体の比較的長い金属断片を有する、想到し得る別の実施形態の場合において、放射アンテナ要素110、基準接地要素120、および浮動接地130によって作製されるアンテナの高い指向性利得は、同調および利得を含むアンテナの動きが、アンテナアセンブリのアレイがその上に配置された金属シェルフのサイズ、形状、導電性、および別の特性に対して敏感でない望ましい状況を作る。これは、浮動接地がその場所に電位の均一を作り、それを超える全て(パッチの反対側)を、そうでなければアンテナのその面に放射されることになる電場および磁場から遮蔽するためである。言い換えると、放射アンテナ要素/基準接地平面およびシェルフの金属の間に浮動接地を使用することが、アンテナアセンブリをその動きにおいて「一方的」とし、アンテナアセンブリの上部(シェルフの金属の反対側のアンテナアセンブリの側)の振動場を保持する。金属シェルフの設計の項目に対するこの感度の低さは、複数のおよび異なる作り付けシェルフ向けの単一アンテナアセンブリアレイの設計の用途において大幅な柔軟性を示し、ある用途から別の用途へと移動される際に、パッチアンテナの大規模な再設計またはカスタマイズ化の必要を排除する。
【0049】
本発明の別の実施形態では、小売用シェルフの金属自体が、浮動接地として使用されても良く、あるいは、該シェルフは、金属の共通シートが、浮動接地平面およびアンテナアセンブリまたはアンテナアセンブリアレイの物理的担持の両方として、同様にRFIDタグを保持する小売アイテム等の作り付け備品上に配置されうる物体として使用されるように構成されてもよい。
【0050】
本発明は、放射アンテナ要素のサイズ、形状、厚み、空洞またはスロットの形状、基準接地要素のサイズ、形状、放射アンテナ要素によって占められる平面の二次元内の設置、放射アンテナ要素と基準接地要素とを分離する距離、信号送りラインまたはケーブルの放射アンテナ要素および基準接地要素への取り付けの場所または手法、1つ以上の浮動接地要素の有無、浮動接地平面のサイズまたは形状または厚み、浮動接地と放射アンテナ要素との間の分離距離、放射アンテナ要素を基準接地および浮動接地から分離するために使用される誘電性材料、放射アンテナ要素と基準接地と浮動接地を加工するために使用される導体材料、アレイの中に使用されるアンテナアセンブリの数、またはアンテナアセンブリまたはアンテナアセンブリアレイを格納し保護するために使用される材料および構造を含む、本願明細書に記載される実施形態の1つ以上の特徴の変形によって想到し得る全ての実施形態を明示的に含み、網羅する。
【0051】
本発明はまた、アンテナアセンブリアレイが単一のアンテナアセンブリ(すなわち、単一のパッチアンテナを持つ)によって置き換えられる全ての実施形態を包含する。
【0052】
また、アンテナアセンブリの種々のアレイは、アンテナアセンブリが2つの異なる平面を占めるように構成されうることに留意されたい。例えば、アセンブリのいくつかが第1の幾何学的平面の内部に位置し、アセンブリの残りが第1の幾何学的平面に直交する第2の幾何学的平面の内部に位置するように、アンテナアセンブリのアレイを構築してもよい。この実施形態は例のみを示す目的として示され、2つの平面が必ずしも直交する必要はないことに留意されたい。また、アンテナアセンブリの設置において3つ以上の幾何学的平面を使用し得ることが考えられる。かかるアンテナアセンブリの多平面アレイは、例えば、アンテナによって応答指令信号を送られるRFIDタグの配向が、不明、無作為、若しくは多様であることが判明しているいくつかの用途においてアレイのロバスト性を向上させうる。加えて、この用途は、いくつかの平面内へのアンテナアセンブリの設置によって産出されうる指定の電場または磁場の分極化を要求しうる。複数の平面内の複数のアンテナアセンブリの設置について想到し得る全ての実施形態が、明示的に本発明に含まれる。
【0053】
図2に示されるアンテナアセンブリの放射アンテナ要素110がスロットアンテナ、アンテナループまたは平面コイル、またはいくつかの別の種類のアンテナラジエータ要素と置き換えられる本発明の別の実施形態が想到し得る。かかる置き換えは、本願明細書に記載の本発明のあらゆる実施形態においても想到可能であり、かかる置き換えによって想到し得る全ての追加の実施形態は、明示的に本発明に含まれる。
【0054】
実施形態は、特定の例示的シェルフ構造の使用と関連して説明されたが、任意のシェルフ構造、ラック等(またはアンテナボード、シェルフの背、仕切り等の任意の構造、または別の支持構造)が、アイテムまたは製品を、販売、マーケティング、販売促進、ディスプレイ、提示、提供、小売、保証、保管、または別様に支持する使用における本発明の実施において好適に使用されうるということが容易に明白である。
【0055】
指定の回路、構成要素、モジュール、またはその寸法は、本発明の例示的実施形態に関連して開示されているが、任意の別の構造または機能的に同等の回路、構成要素、モジュール、またはその寸法を本発明の種々の実施形態の実施において利用し得ることは全く明白である。したがって、本発明は、本願に開示される(または本開示から明白な)特定の実施形態に限定されず、以下に添付される請求項によってのみ限定されるものと理解されたい。
新たに米国特許証によって保護されることを希望する特許請求の範囲を以下に記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナアセンブリであって、
平面積層体と、
前記平面積層体に対して平行をなし、前記平面積層体から空隙により離間された平面導電性浮動接地と、
前記平面積層体上に放射アンテナ要素を形成する所定の形状および寸法の平面導電性領域と、
前記平面積層体の上に基準接地要素を形成して、前記放射アンテナ要素と前記基準接地要素とが互いに平面であるように所定の形状および寸法を有する更なる平面導電性領域とを備え、前記放射アンテナ要素と前記基準接地要素との間には実質的な重畳がないアンテナアセンブリ。
【請求項2】
前記放射アンテナ要素および前記基準接地要素が、前記平面積層体上に配置される導体によって形成されており、前記平面積層体はポリエステルシート、プラスチックシート、Mylar、FR4、およびポリマーシートのうちの1つである請求項1に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項3】
前記浮動接地が前記放射アンテナに対して電気的に接続されず、且つ前記基準接地要素に対して電気的に接続されていない請求項1に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項4】
前記浮動接地が前記放射アンテナの中心若しくは中心付近に対して電気的に接続されている請求項1に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項5】
前記放射アンテナ要素および基準接地要素が、1つの構造体内に被包されており、前記アンテナアセンブリからの電磁場が前記構造体の上方又は周辺へ投射される請求項1に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項6】
アンテナアセンブリを作製する方法であって、
平面積層体を与えるステップと、
前記平面積層体に対して平行且つ離間された浮動接地を与えるステップと、
前記平面積層体上の放射アンテナ要素に所定の形状および寸法の平面導電性領域を形成する形成ステップと、
前記平面積層体上の基準接地要素に、前記放射アンテナ要素と前記基準接地要素とが互いに平面となるように所定の形状および寸法の別の平面導電性領域を形成し、前記放射アンテナ要素と前記基準接地要素との間に実質的な重畳がないようにする形成ステップと、
前記放射アンテナ要素および前記基準接地要素のそれぞれと電気的に接続する接続要素を取り付けるステップとを含む方法。
【請求項7】
前記放射アンテナ要素と前記基準接地要素とを形成するステップが、前記放射アンテナ要素および前記基準接地要素として形成されるパターン化導体を溶着すること、ならびに前記放射アンテナ要素および前記基準接地要素を得るために溶着された導体材料をエッチングすることのうちの一方を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記放射アンテナ要素と前記基準接地要素とを形成するステップが、前記平面積層体上に複数の放射アンテナ要素および複数の基準接地要素を形成する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記浮動接地を与えるステップが、前記浮動接地を前記放射アンテナ要素に対して電気的に接続させず、かつ前記浮動接地を前記基準接地要素に対して電気的に接続させないことを含む請求項6に記載の方法。
【請求項1】
アンテナアセンブリであって、
平面積層体と、
前記平面積層体に対して平行をなし、前記平面積層体から空隙により離間された平面導電性浮動接地と、
前記平面積層体上に放射アンテナ要素を形成する所定の形状および寸法の平面導電性領域と、
前記平面積層体の上に基準接地要素を形成して、前記放射アンテナ要素と前記基準接地要素とが互いに平面であるように所定の形状および寸法を有する更なる平面導電性領域とを備え、前記放射アンテナ要素と前記基準接地要素との間には実質的な重畳がないアンテナアセンブリ。
【請求項2】
前記放射アンテナ要素および前記基準接地要素が、前記平面積層体上に配置される導体によって形成されており、前記平面積層体はポリエステルシート、プラスチックシート、Mylar、FR4、およびポリマーシートのうちの1つである請求項1に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項3】
前記浮動接地が前記放射アンテナに対して電気的に接続されず、且つ前記基準接地要素に対して電気的に接続されていない請求項1に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項4】
前記浮動接地が前記放射アンテナの中心若しくは中心付近に対して電気的に接続されている請求項1に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項5】
前記放射アンテナ要素および基準接地要素が、1つの構造体内に被包されており、前記アンテナアセンブリからの電磁場が前記構造体の上方又は周辺へ投射される請求項1に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項6】
アンテナアセンブリを作製する方法であって、
平面積層体を与えるステップと、
前記平面積層体に対して平行且つ離間された浮動接地を与えるステップと、
前記平面積層体上の放射アンテナ要素に所定の形状および寸法の平面導電性領域を形成する形成ステップと、
前記平面積層体上の基準接地要素に、前記放射アンテナ要素と前記基準接地要素とが互いに平面となるように所定の形状および寸法の別の平面導電性領域を形成し、前記放射アンテナ要素と前記基準接地要素との間に実質的な重畳がないようにする形成ステップと、
前記放射アンテナ要素および前記基準接地要素のそれぞれと電気的に接続する接続要素を取り付けるステップとを含む方法。
【請求項7】
前記放射アンテナ要素と前記基準接地要素とを形成するステップが、前記放射アンテナ要素および前記基準接地要素として形成されるパターン化導体を溶着すること、ならびに前記放射アンテナ要素および前記基準接地要素を得るために溶着された導体材料をエッチングすることのうちの一方を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記放射アンテナ要素と前記基準接地要素とを形成するステップが、前記平面積層体上に複数の放射アンテナ要素および複数の基準接地要素を形成する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記浮動接地を与えるステップが、前記浮動接地を前記放射アンテナ要素に対して電気的に接続させず、かつ前記浮動接地を前記基準接地要素に対して電気的に接続させないことを含む請求項6に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−62828(P2013−62828A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−233895(P2012−233895)
【出願日】平成24年10月23日(2012.10.23)
【分割の表示】特願2010−529011(P2010−529011)の分割
【原出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(510024514)センサーマティック・エレクトロニクス・エルエルシー (21)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月23日(2012.10.23)
【分割の表示】特願2010−529011(P2010−529011)の分割
【原出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(510024514)センサーマティック・エレクトロニクス・エルエルシー (21)
【Fターム(参考)】
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