説明

共役ジエン系重合体及びそれを含むゴム組成物

【課題】 優れた粘弾性特性及び耐摩耗性を有するゴム組成物を与える新たな共役ジエン系重合体又は共重合体の提供。
【解決手段】 (A)共役ジエンの単独重合体又は共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体の重合鎖末端のリビングアニオンに、(B)フラーレン並びに(C)(i)少なくとも1個のアルコキシシリル基及び(ii)アルキルシリル基で保護されたアミノ基を有するシラン化合物を反応させて得られる共役ジエン系重合体並びにそれを配合してなるゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は共役ジエン系重合体及びそれを含むゴム組成物に関し、更に詳しくは共役ジエンの単独重合体又は共重合体の末端リビングアニオンにフラーレン及びアミノ基が保護されたアルコキシシラン化合物を反応させた共役ジエン系重合体並びにそれを配合した、低発熱性及び良好なグリップ性能に相関する良好な粘弾性特性を示し、更に非常に優れた耐摩耗性を有するゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年タイヤ用ゴム材料として、補強充填剤にシリカ又はシリカとカーボンブラックの混合物を配合したゴム組成物を用いる手法が一般的にとられている。シリカを含むゴム組成物を用いたタイヤトレッドは転がり抵抗が小さく、ウェットスキッド抵抗に代表される操縦安定性は良いが、引張強度や耐摩耗性に劣るという問題を抱えている。この問題を解決すべくシリカと親和性のある官能基、例えば第3アミノ基、アルキルシリル基、ハロゲン化シリル基、置換アミノ基、第3アミノ基とアルコキシシリル基、第1アミノ基とアルコキシシリル基などを導入した共役ジエン系重合体が提案されている(特許文献1〜6参照)。
【0003】
フラーレンは炭素原子のみからなる球状化合物であり、炭素60個からC60及びそれ以上の偶数個の炭素からなる高次フラーレンの総称である。これらは、12個の5員環と20個又はそれ以上の5員環、6員環もしくは7員環を含んでいる。特に最も代表的なC60は、その特殊な電子系により非常に反応性の高い分子であることが近年わかってきており、その反応性を利用してさまざまな化学修飾が行われている。球状炭素分子フラーレンをゴム成分中にフィラーとして配合することは、例えば特許文献7に記載されており、また、イソプレンをリビングアニオン重合し、その末端をフラーレンで変性することが、例えば非特許文献1に記載されている。しかしながら、非特許文献1の方法で合成した共役ジエン系重合体のゴム組成物としての有用性に関して記載された文献は知られていない。
【0004】
【特許文献1】特開平1−101344号公報
【特許文献2】特開平1−188501号公報
【特許文献3】特開平5−230286号公報
【特許文献4】特開昭64−22940号公報
【特許文献5】特開平7−233217号公報
【特許文献6】特開2004−168904号公報
【特許文献7】特開平10−168238号公報
【非特許文献1】Macromolecules 1997, 30, 2546-2555
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は新たな共役ジエン系重合体又は共重合体を開発して、低発熱性及び良好なグリップ性能に相関する非常に優れた粘弾性特性を示し、しかも耐摩耗性に優れたゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従えば、(A)共役ジエンの単独重合体又は共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体の重合鎖末端のリビングアニオンに、(B)フラーレン並びに(C)(i)少なくとも1個のアルコキシシリル基及び(ii)アルキルシリル基で保護されたアミノ基を有するシラン化合物を反応させて得られる共役ジエン系重合体並びにそれを配合した、粘弾性特性に優れ、耐摩耗性の良好なゴム組成物が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、以下に示す通り、粘弾性特性に優れ、耐摩耗性の良好なゴム組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
共役ジエンの単独重合もしくは共役ジエンと芳香族ビニル化合物の共重合により生じたリビングアニオン末端に、フラーレン並びに(i)少なくとも1個のアルコキシシリル基及び(ii)アミノ基がアルキルシリル基で保護されたシラン化合物を反応させることにより得られた重合体もしくはそれを脱保護した重合体とシリカを配合したゴム組成物が、低発熱性及び良好なグリップ性能に相関する優れた粘弾性特性を示し、更に優れた耐摩耗性を有することを見出した。
【0009】
本発明に従えば、共役ジエンの単独重合又は共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合により得られる重合鎖末端のリビングアニオンにフラーレン(B)並びに例えば式(I)で表される化合物のように少なくとも1個のアルコキシシリル基及びアルキルシリル基で保護されたアミノ基を有するシラン化合物(C)を反応させることにより所望の共役ジエン系重合体を得ることができる。
【化1】

【0010】
(式中、R1は炭素数1〜12のアルキレン基であり、R2〜R6はそれぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基である。mは1〜2の整数であり、nは1〜10の整数である。)
【0011】
本発明に係るゴム組成物に配合する分子中にフラーレン(B)及びシラン化合物(C)を有する共役ジエン系重合体は、アニオン重合で生成した共役ジエンの単独重合体又は芳香族ビニル化合物との共重合体(以下、単に共役ジエン系重合体という)の生長末端アニオンとフラーレン(B)及びシラン化合物(C)とを反応させることにより合成することができる。そのような合成されたものの一つとしては、ブタジエンなどの共役ジエンモノマー又はそれと芳香族ビニルモノマーとのアニオン重合により生じた共重合体の生長末端アニオンに、フラーレン(B)及びシラン化合物(C)を反応させたものが挙げられる。このような共役ジエンモノマーとしては1,3−ブタジエンや2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)などを挙げることができる。中でも1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。芳香族ビニルモノマーとしては、スチレンやα−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレンなどを挙げることができ、中でもスチレンが好ましい。共役ジエン系重合体としては、芳香族ビニルモノマーが変性される共役ジエン系重合体の10〜80重量%であるのが好ましく、10〜50重量%を構成するものが更に好ましい。これは適度なガラス転移温度を保つという理由からである。
【0012】
本発明に従った共役ジエン系重合体としては、例えば芳香族ビニルモノマーとしてスチレンを、そして共役ジエンモノマーとしてブタジエンをブチルリチウムなどの触媒を用いて共重合させることにより、リビングスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)を得、次にこのリビング共重合体の生長末端アニオンと、フラーレン(B)及び前記シラン化合物(C)とを反応させることによりフラーレン(B)及びシラン化合物(C)で変性された変性スチレン−ブタジエン共重合体を得ることができる。他の共役ジエン系重合体として、各種ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ブタジエン−イソプレン共重合体などの各種ジエン系重合体を用いることができ、本発明における共役ジエン系重合体は、このような共役ジエン系重合体を重合する際に後記の合成例にも示したように、共役ジエン系重合体の重合完了時に、末端リビングの共役ジエン重合体のリビング末端に、市販のフラーレン(B)及びシラン化合物(C)を添加して反応させることにより重合体を変性させることにより製造できる。この変性反応温度には特に限定はないが、0〜120℃程度で反応させるのが好ましい。
【0013】
本発明に従った共役ジエン系重合体を得るのに用いるフラーレンは、前述の如く、炭素原子のみからなる球状化合物であり、炭素60個(C60)及びそれ以上の偶数個の炭素からなる高次フラーレンの総称である。これらは、12個の5員環と20個又はそれ以上の5員環、6員環又は7員環を含んでおり、代表的なものとして、C60,C70,C76,C78,C82,C84,C90,C96,C120 等が挙げられる。特に最も代表的なC60は、その特殊な電子系により非常に反応性の高い分子であることが知られており、その反応性を利用してさまざまな化学修飾が行われている。また、特殊な電子系並びに分子サイズが大きいことなどから、フラーレンを分子内に含む重合体は、電気的、磁気的、機械的、熱的諸特性において特異な性質を示すことが予想され、機能性材料として期待されている。本発明において使用するフラーレンは、市販されており、例えばC60,C70,C76,C78,C84の高純度品(99.8%以上)や、C60とその他のフラーレンが混在しているものなどの市販品を用いることができる。
【0014】
本発明における共役ジエン系重合体を得るのに用いる前記式(I)などのシラン化合物(C)はリビングアニオン末端とシラン化合物の反応と当該共役ジエン系重合体とシリカとの反応のため、分子中に少なくとも1個のアルコキシシリル基(例えばメトキシシリル基、エトキシシリル基、メトキシエトキシシリル基、プロポキシシリル基、ブトキシシリル基、フェノキシシリル基、トルイロキシシリル基、など)を有することが必要であり、更に第1アミン、第2アミンなどのアミノ基がトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、エチルメチルメチルフェニルシリル基(SiR456)などの基で保護されているシラン化合物である。かかるシラン化合物(C)はこれらに限定するわけではないが、例えばN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシランなど用いることができる。
【0015】
前記アミノ基の保護は共役ジエン系重合体の変性時のリビングアニオン末端の失活を防ぐために必要であるが、共役ジエン系重合体を変性した後は、例えば水、酸化水、アルコールなどを用いて脱保護してゴム組成物に配合してもよく、アミノ基を脱保護することによりゴム組成物に配合した際にシリカの分散性が一層高まるので好ましい。
【0016】
本発明者らは、共役ジエン系重合体のリビング末端にフラーレン(C)及びシラン化合物(D)を有する変性共役ジエン系重合体又はアミノ基を脱保護したジエン系共重合体を合成してゴム組成物に配合することによって、優れた粘弾性特性及び耐摩耗性を有するゴム組成物が得られ、例えばタイヤのトレッドゴムとして使用した場合には、転がり抵抗の指標であるtanδ(60℃)が非常に低く、ウェットスキッド抵抗の指標となるtanδ(0℃)が高い、優れたtanδバランスを示す耐摩耗性に優れたゴム組成物が得られる。
【0017】
本発明に係るゴム組成物に配合する変性共役ジエン系重合体は、所望の物性を得るためには、重量平均分子量が50,000以上であるのが好ましく、100,000〜2,000,000であるのが更に好ましく、ゴム組成物中に配合するゴム成分の0.5〜100重量%を構成するのが好ましく、5〜100重量%を構成するのがさらに好ましい。フラーレン(B)及び前記シラン化合物(C)の変性量については特に限定はないが、所望の物性を得るためには、変性共役ジエン系重合体の1分子鎖当りフラーレン(B)0.001〜2個(分子)及び前記シラン化合物0.01〜1個(分子)であるのが好ましく、それぞれ0.01〜2個(分子)及び0.1〜1個(分子)であるのが更に好ましい。
【0018】
本発明に係るゴム組成物中には、必要に応じ、好ましくは80重量%以下の他のゴム成分を配合してもよく、そのようなゴム成分としてはゴム組成物に使用できる任意のジエン系ゴム又はジエン系ゴム以外のゴムを挙げることができる。かかる代表的なジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、各種ポリブタジエンゴム(BR)、各種スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合ゴム(EPDM)、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムなどをあげることができる。また、非ジエン系ゴムとしては、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−ブテン共重合ゴム、臭素化イソブチレン−パラメチルスチレン共重合ゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコンゴムなどをあげることができる。これは単独又は任意のブレンドとして使用することができる。
【0019】
本発明に係るゴム組成物には、補強充填剤および必要に応じてその他の配合剤を配合する。補強充填剤としては、カーボンブラックやシリカなど、特にシリカ又は、例えば特開平8−277347号公報などに示されるように表面の少なくとも一部がシリカで被覆された補強充填剤(例えばカーボンブラック)を配合するのが好ましい。かかる補強充填剤の配合量には特に限定はないが、前記ジエン系変性ゴム100重量部に対し、5〜120重量部配合するのが好ましく、5〜100重量部配合するのが更に好ましい。本発明に係る配合することができるシリカとしては従来からゴム組成物に配合されている任意のシリカ、例えば湿式法シリカ、乾式法シリカ、合成けい酸塩シリカなどを配合することができる。本発明に係るゴム組成物に配合することができるカーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなど従来からゴム組成物に配合されている任意のカーボンブラックを用いることができる。
【0020】
本発明に係るゴム組成物は、前記共役ジエン系重合体100重量部に対し、好ましくは0.1〜10重量部、更に好ましくは0.2〜7重量部の加硫剤を配合する。その他、本発明に係るゴム組成物には、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる配合物は一般的な方法で混練、加硫して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。本発明に係るゴム組成物は、優れた耐摩耗性及び優れた粘弾性特性が必要とされるタイヤトレッド用ゴム組成物として有用であるが、それ以外にも、例えば、ベルト、ホース、防振ゴム、ローラー、シート、ライニング、ゴム引布、シール材、手袋、防舷材、各種医療、理化学用品、土木建築用品、海洋、自動車、鉄道、OA、航空機、包装用ゴム製品などに使用することができる。
【実施例】
【0021】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明を以下の実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
【0022】
合成例1〜4
なお、以下の合成例1〜4で用いた試薬は以下の通りである。
シクロヘキサン、スチレン:それぞれ関東化学(株)製の市販品を、モレキュラーシーブス4Aにより脱水し、窒素バブリングして用いた。
ブタジエン:高千穂化学(株)から市販されている純度99.3%品をモレキュラーシーブス4Aにより脱水して用いた。
n−ブチルリチウム:関東化学(株)製、n−ヘキサン溶液1.58mol/Lのものを用いた。
1,1,4,4−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA):関東化学(株)からの市販品をモレキュラーシーブス4Aにより脱水し、窒素バブリングして用いた。
トルエン:関東化学(株)製の市販品を、ナトリウム存在下、1週間程度還流し、脱水の指標であるベンゾフェノンケチルの濃青色を確認した後に蒸留して用いた。
フラーレン:東京化成(株)製C60>99.9%品を脱気、乾燥して用いた。
N,N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン:信越化学(株)製のものをそのまま用いた。
【0023】
合成例1(SBR−A)
窒素置換された内容量10Lのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン3137g、スチレン113.8g(0.812mol)及びブタジエン438.9g(8.114mol)を仕込み、攪拌を開始した。反応容器内の内容物の温度を50℃にした後、n−ブチルリチウム3.054mL(4.856mmol)を添加した。重合完了後、フラーレン(C60)の0.622重量%トルエン溶液34.40g(0.2972mmol)を添加し、2時間撹拌した。続いて、N,N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン1.166g(3.189mmol)を添加し、1.5時間撹拌した。さらに、メタノール0.5mLを添加して30分間攪拌した。得られたポリマー溶液に老化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製イルガノックス1520)を少量添加し、減圧濃縮して溶媒を取り除いた。メタノール中でポリマーを凝固、洗浄した後に、乾燥することにより固形状のポリマーを得た。結果を表Iに示す。
【0024】
合成例2(SBR−B)
合成例1の製造において取り出されたポリマー溶液1870gに水60mLを添加し、85℃にて7.5時間攪拌した。得られたポリマー溶液に老化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製イルガノックス1520)を少量添加し、減圧濃縮して溶媒を取り除いた。メタノール中でポリマーを凝固、洗浄した後に、乾燥することにより固形状のポリマーを得た。結果を表Iに示す。
【0025】
合成例3(SBR−C)
窒素置換された内容量10Lのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン3138g、スチレン115.6g(1.110mol)、ブタジエン438.9g(8.172mol)及びTMEDA1.102mL(7.398mmol)を仕込み、攪拌を開始した。反応容器内の内容物の温度を50℃にした後、n−ブチルリチウム3.805mL(5.936mmol)を添加した。重合完了後、メタノール0.5mLを添加して30分間攪拌した。取り出したポリマー溶液に老化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製イルガノックス1520)を少量添加し、減圧濃縮して溶媒を取り除いた。メタノール中でポリマーを凝固、洗浄した後に、乾燥することにより固形状のポリマーを得た。結果を表Iに示す。
【0026】
合成例4(SBR−D)
窒素置換された内容量10Lのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン3137g、スチレン113.8g(1.093mol)、ブタジエン438.9g(8.172mol)及びTMEDA0.812mL(5.535mmol)を仕込み、攪拌を開始した。反応容器内の内容物の温度を50℃にした後、n−ブチルリチウム3.330mL(5.266mmol)を添加した。重合完了後、フラーレン(C60)の0.670wt%トルエン溶液49.30g(0.4588mmol)を添加し、2時間攪拌した。続いて、メタノール0.5mLを添加して1時間攪拌した。取り出したポリマー溶液に老化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製イルガノックス1520)を少量添加し、減圧濃縮して溶媒を取り除いた。メタノール中でポリマーを凝固、洗浄した後に、乾燥することにより固形状のポリマーを得た。結果を表Iに示す。
【0027】
【表1】

【0028】
実施例1〜2及び比較例1〜3
表IIに示す配合(重量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を0.6リットルの密閉型ミキサーで5分間混練した、得られたマスターバッチと加硫促進剤、硫黄を8インチのオープンロールにて混練してゴム組成物を得た。この組成物を15×15×0.2cmの金型中でそして耐摩耗性試験用サンプルは厚さ5mm、直径49mmの円盤状金型中で160℃で30分間プレス加硫してゴムシート及び円盤状サンプルを得た。得られた加硫ゴムサンプルを以下の方法で評価した。結果を表IIに示す。
【0029】
物性評価方法
粘弾性:粘弾性スペクトロメーター(東洋精機(株)製)を用いて、温度60℃及び0 ℃にて、初期歪10%、動的歪±2%、周波数20Hzの条件での測定したta nδ(60℃)及びtanδ(0℃)を比較例3の値を基準として指数表示し た。なお、tanδ(60℃)の指数値が高いほど転がり抵抗性が小さく、従 って発熱性が少なく燃費が少なく、またtanδ(0℃)の指数値が高いほど ウェットスキッド抵抗が大きく、濡れた路面でのブレーキ性能が向上する。
【0030】
耐摩耗性:ランボーン摩耗試験機を用いてJIS K6264に準拠し、荷重15N、 スリップ率50%の条件にて測定した。(比較例5の摩耗量)×100/( 試料の摩耗量)を100として指数表示した。指数値が大きいほど耐摩耗性 は良好である。
【0031】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0032】
以上の通り、本発明に従ったゴム組成物はtanδバランスに優れ(即ちtanδ(60℃)が低くかつtanδ(0℃)が高い)、耐摩耗性が良好であるので、例えばタイヤのトレッド用ゴムなどに使用するのに好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)共役ジエンの単独重合体又は共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体の重合鎖末端のリビングアニオンに、(B)フラーレン並びに(C)(i)少なくとも1個のアルコキシシリル基及び(ii)アルキルシリル基で保護されたアミノ基を有するシラン化合物を反応させて得られる共役ジエン系重合体。
【請求項2】
請求項1に記載の共役ジエン系重合体の保護されたアミノ基を脱保護することによって得られる請求項1に記載の共役ジエン系重合体。
【請求項3】
請求項1又は2の共役ジエン系重合体100重量部及び補強充填剤5〜120重量部を含んでなるゴム組成物。
【請求項4】
前記補強充填剤の少なくとも一部がシリカ又は表面の少なくとも一部がシリカで被覆された補強充填剤である請求項3に記載のゴム組成物。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2006−137858(P2006−137858A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−329000(P2004−329000)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】