説明

共役系高分子、及びそれを有する有機半導体素子

【課題】共役系高分子は有機ELや有機トランジスタなどの有機半導体素子用の有機半導体材料として用いられる。本発明は、高いキャリア移動度を有する共役系高分子を提供する。
【解決手段】共役系高分子であって、その部分構造2個のスタッキング安定構造において、式(1)で表される分子2個のスタッキング安定構造と比較して、理論化学的手法を用いて計算したHOMO間および/またはLUMO間の共鳴積分絶対値が大きいことを特徴とする共役系高分子。



(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役系高分子、及びそれを有する有機半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
共役系高分子は有機ELや有機トランジスタなどの有機半導体素子用の有機半導体材料として用いられる。
【0003】
従来の共役系高分子からなる有機半導体中のキャリア移動度は十分高いとは言えず、それを用いた有機半導体素子(例えば有機トランジスタ)の性能が十分ではなく、より高い性能を示す有機半導体素子を与え得る高いキャリア移動度を有する共役系高分子が求められていた(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Nature Materials、2006年、VOL.5、328−333ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高いキャリア移動度を有する共役系高分子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者らは、共役系高分子から成る有機半導体中のキャリア移動度について鋭意検討した結果、主鎖間スタッキング安定構造におけるHOMO間および/またはLUMO間の共鳴積分絶対値が一定の基準より大きい場合にキャリア移動度が大きくなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の<1>〜<7>を提供する。
<1> 共役系高分子であって、その部分構造2個のスタッキング安定構造において、式(1)で表される分子2個のスタッキング安定構造と比較して、理論化学的手法を用いて計算したHOMO間および/またはLUMO間の共鳴積分絶対値が大きい共役系高分子。


(1)
【0008】
<2> 共鳴積分絶対値がHOMO間の共鳴積分絶対値である<1>記載の共役系高分子。
【0009】
<3> HOMO間の共鳴積分絶対値が式(1)で表される分子におけるHOMO間の共鳴積分絶対値の1.1倍以上である<2>記載の共役系高分子。
【0010】
<4> 共役系高分子において、式(2)で表される分子と比較して、部分構造における理論化学的手法を用いて計算したHOMOエネルギーが低い<1>〜<3>のいずれかに記載の共役系高分子。


(2)
【0011】
<5> 式(3)で表される構造を繰り返し単位の一部とする<1>〜<4>のいずれかに記載の共役系高分子。
【0012】


・・・(3)
(式中、X1はそれぞれ独立にX2及びX3と共に複素環を形成するのに必要な置換基を有していてもよい原子群であり、Zはそれぞれ独立にX2及びX3と共に化学結合によって環を形成するのに必要な置換基を有していてもよい原子群である。)
【0013】
<6> <1>〜<5>のいずれかに記載の共役系高分子を有する有機半導体素子。
【0014】
<7> 共役系高分子が部分的にスタッキング構造をとる<6>に記載の有機半導体素子。
【0015】
<8> <6>〜<7>のいずれかに記載の有機半導体素子を構成要素とする装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明の共役系高分子はキャリア移動度が高く、それを用いてなる本発明の有機半導体素子と、それを構成要素とする装置は高い性能を示すので、本発明は工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の共役系高分子及びそれを有する有機半導体素子について詳細に説明する。
【0018】
本発明の共役系高分子は、その部分構造2個のスタッキング安定構造において、式(1)で表される分子2個のスタッキング安定構造と比較して、理論化学的手法を用いて計算したHOMO間および/またはLUMO間の共鳴積分絶対値が大きいことを特徴とする。


(1)
【0019】
式(1)で表される分子を基準分子とし、基準分子と対象とする分子について、同じ手法の理論化学的手法を用いて、部分構造2個のスタッキング安定構造における共鳴積分絶対値を算出し、ここでHOMO間の共鳴積分絶対値同士および/またはLUMO間の共鳴積分絶対値同士を比較し、少なくともいずれかの共鳴積分絶対値が基準分子より大きい共役系高分子が、高いキャリア移動度を示すことを本発明者らは見出したのである。
基準分子と比較する共鳴積分絶対値としてはHOMO間の共鳴積分絶対値である場合が好ましい。
【0020】
そして、共役系高分子において、理論化学的手法を用いて計算した部分構造2個のスタッキング安定構造におけるHOMO間共鳴積分絶対値が、前記理論化学的手法を用いて計算した式(1)で表される分子2個のスタッキング安定構造におけるHOMO間共鳴積分絶対値の1.1倍以上である共役系高分子は、より高いキャリア移動度を示す傾向があるのでより好ましい。
【0021】
本発明の共役系高分子としては、共役系高分子において、理論化学的手法を用いて計算した部分構造2個のスタッキング安定構造におけるHOMO間共鳴積分絶対値が0.29eV以上であるものが、より高いキャリア移動度を示す傾向があるのでさらに好ましい。
【0022】
HOMO(最高被占分子軌道)間共鳴積分絶対値が大きいほど分子間ホール移動確率が大きいため、前記共役系高分子からなる層中のホール移動度は、高性能な有機半導体素子(有機薄膜トランジスタ等)を作製するのに十分な値となる。
【0023】
本発明において、理論化学的手法とは、MPWB1K密度汎関数と6-31G*基底関数を組み合わせたものである(以下MPWB1K/6-31G*法とする)。前記手法を用いて計算される全エネルギーが極小となるように構造パラメータを最適化することによって、2分子のスタッキング安定構造を予測することが可能である(「Chem.Phys.Lett. 2007, 439, p35-39」参照)。計算はGaussian03等の量子化学計算プログラムを用いて実行可能である。
【0024】
また、共役系高分子の部分構造とは、チオフェン4量体の鎖長に近い長さの部分を共役系高分子から切り出し、末端を水素原子で封止した分子である。
【0025】
また、HOMO間共鳴積分絶対値は、各部分構造(以下A、Bとする)がスタッキング安定構造と同一の空間配置を独立にとっている状態におけるHOMO(以下ΨAHOMO、ΨBHOMOとする)を、スタッキング安定構造(以下ABとする)における分子軌道(以下ΨiABとする。iは分子軌道番号)の線形一次結合(式(21))で表現することにより計算する。
【0026】




(21)
【0027】
ここで、CAi,HOMOとCBj,HOMOとは展開係数である。前記表現は、A、B、ABの分子軌道が同じ原子軌道関数の線形一次結合で表現されているため可能である。
【0028】
前記表現を利用し、HOMO間共鳴積分絶対値を下式(22)で計算する。
【0029】


(22)
【0030】
ここで、FABはスタッキング安定構造におけるFock演算子であり、εiABはスタッキング安定構造におけるi番目の分子軌道のエネルギーである。
【0031】
本発明の共役系高分子としては、共役系高分子において、部分構造における理論化学的手法を用いて計算したHOMOエネルギーが、式(2)で表される分子と比較して、式(2)で表される分子において前記理論化学的手法を用いて計算したHOMOエネルギーよりも低いものが好ましい。HOMOエネルギーが低くなることによって、酸化が起こり難くなり、前記共役系高分子を有する有機半導体素子の安定性が向上する。


(2)
【0032】
本発明の共役系高分子としては、より具体的には、式(3)で表される構造を繰り返し単位として含むものが挙げられる。前記共役系高分子においては、複素環の拡張によるファンデルワールス相互作用の増大、或いはヘテロ原子の導入による静電相互作用の増大によって、2分子間でHOMOの重なりが大きい配置を取り易くなる結果、HOMO間共鳴積分絶対値が式(1)で表される分子の場合よりも大きくなるのである。
【0033】


・・・(3)
【0034】
式(3)において、X1はそれぞれ独立にX2及びX3と共に複素環を形成するのに必要な置換基を有していてもよい原子群であり、Zはそれぞれ独立にX2及びX3と共に化学結合によって環を形成するのに必要な置換基を有していてもよい原子群である。前記化学結合には共有結合ばかりでなく、水素結合やイオン結合も含む。前記置換基はハロゲンまたは、1〜30個のC原子を有し、非置換であるか、F、Cl、Br、IもしくはCNにより単置換もしくは多置換されていてもよい直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル基であり、また、1つまたは2つ以上の隣接していないCH2基が、互いに独立して、−O−、−S−、−NR0−、−SiR000−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−NR0−CO−、−CO−NR0−、−CR0=CR00−、−C≡C−、アリーレンまたはヘテロアリーレンにより置換されていてもよく、R0およびR00は、互いに独立して、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキル基である。前記アリーレンおよびヘテロアリーレンは好ましくは1,4−フェニレン、p,p’−ビフェニル、ナフタレン−2,6−ジイル、2,5−ピリジン、2,5−ピリミジン、チオフェン−2,5−ジイル、2,5−チアゾール、2,5−チアジアゾール、フラン−2,5−ジイル、2,5−オキサゾール、2,5−オキサジアゾールである。なおX2とX3は直接結合している。
【0035】
式(3)で表される構造としては、式(4)で表される構造が好ましい。

・・・(4)
【0036】
式(4)において、X1、X2及びX3はそれぞれ独立に、炭素原子であるC1及びC2と共に複素環を形成するのに必要な原子であり、Zはそれぞれ独立にX2及びX3と共に化学結合によって環を形成するのに必要な置換基を有していてもよい原子群である。前記化学結合には共有結合ばかりでなく、水素結合やイオン結合も含む。Xは置換基を有していてもよい。前記置換基は、式(3)における置換基と同じ意味を有する。
【0037】
式(4)で表される構造としては、式(5)で表される構造、式(6)で表される構造、および式(7)で表される構造が好ましい。


・・・(5)
【0038】
式(5)において、X1、X2及びX3はそれぞれ独立に、炭素原子であるC1及びC2と共に複素環を形成するのに必要な原子であり、Z1及びZ2はそれぞれ独立にX2及びX3と共に化学結合によって環を形成するのに必要な原子であり、R1はH、あるいは式(3)における置換基と同じ意味を有する置換基である。Z1とZ2の間の実線と破線で表されている結合は単結合、あるいは2重結合である。Z1とX2の間の実線と破線で表されている結合は単結合、あるいは水素結合である。X及びZは式(3)における置換基と同じ意味を有する置換基を有していてもよい。
【0039】


・・・(6)
【0040】
式(6)において、X1、X2及びX3はそれぞれ独立に、炭素原子であるC1及びC2と共に複素環を形成するのに必要な原子であり、Z1、Z2及びZ3はそれぞれ独立にX2及びX3と共に環を形成するのに必要な原子であり、R1はH、あるいは式(3)における置換基と同じ意味を有する置換基である。
、Z1、Z2及びZ3は、Rとは別に式(3)における置換基と同じ意味を有する置換基を有していてもよい。
【0041】


・・・(7)
【0042】
式(7)において、X1、X2及びX3はそれぞれ独立に、炭素原子であるC1及びC2と共に複素環を形成するのに必要な原子であり、Z2及びZ3はそれぞれ独立に炭素原子またはヘテロ原子であり、R1はH、あるいは式(3)における置換基と同じ意味を有する置換基である。Z2に結合したHとX2は水素結合によって結合しており、Z2とZ3の間の実線と破線で表されている結合は単結合または二重結合である。X及びZ3は式(3)における置換基と同じ意味を有する置換基を有していてもよい。
【0043】
式(5)で表される構造としては、式(8)または式(9)で表される構造が好ましい。

・・・(8)
【0044】
式(8)において、X1は酸素原子、硫黄原子、セレン原子またはテルル原子であり、Z1及びZ2はそれぞれ独立に、X2及びX3と共に共有結合によって環を形成するのに必要な原子であり、R1はH、あるいは式(3)における置換基と同じ意味を有する置換基である。Z1とZ2の間の実線と破線で表されている結合は単結合または二重結合である。Zは式(3)における置換基と同じ意味を有する置換基を有していてもよい。
【0045】

・・・(9)
【0046】
式(9)において、X1は酸素原子、硫黄原子、セレン原子またはテルル原子であり、X2及びX3はそれぞれ独立に、X1と共に複素環を形成するのに必要な原子であり、Zは窒素原子またはリン原子であり、R1はH、あるいは式(3)における置換基と同じ意味を有する置換基である。Zに結合したHとX2は水素結合によって結合している。
【0047】
式(8)で表される構造としては、式(10)または式(11)で表される構造が好ましい。

・・・(10)
【0048】
式(10)において、X1は酸素原子、硫黄原子、セレン原子またはテルル原子であり、R1、R2及びR3は、互いに独立して、H、あるいは式(3)における置換基と同じ意味を有する置換基である。
【0049】


・・・(11)
【0050】
式(11)において、X1は酸素原子、硫黄原子、セレン原子またはテルル原子であり、R1及びR2は、互いに独立して、H、あるいは式(3)における置換基と同じ意味を有する置換基である。
【0051】
式(9)で表される構造としては、式(12)で表される構造が好ましい。

・・・(12)
【0052】
式(12)において、X1は酸素原子、硫黄原子、セレン原子またはテルル原子であり、R1はH、あるいは式(3)における置換基と同じ意味を有する置換基である。窒素原子であるN2に結合したHと窒素原子であるN1は水素結合によって結合している。
【0053】
式(6)で表される構造としては、式(13)で表される構造が好ましい。

・・・(13)
【0054】
式(13)において、X1は酸素原子、硫黄原子、セレン原子またはテルル原子であり、Z1、Z2及びZ3はそれぞれ独立に、X2及びX3と共に共有結合によって環を形成するのに必要な原子であり、R1はH、あるいは式(3)における置換基と同じ意味を有する置換基である。Z及びZは式(3)における置換基と同じ意味を有する置換基を有していてもよい。
【0055】
式(13)で表される構造としては、式(14)で表される構造が好ましい。

・・・(14)
【0056】
式(14)において、X1は酸素原子、硫黄原子、セレン原子またはテルル原子であり、R1はH、あるいは式(3)における置換基と同じ意味を有する置換基である。
【0057】
式(7)で表される構造としては、式(15)で表される構造が好ましい。

・・・(15)
【0058】
式(15)において、X1、X2及びX3はそれぞれ独立に、炭素原子であるC1及びC2と共に複素環を形成するのに必要な原子であり、Z2及びZ3はそれぞれ独立に、炭素原子またはヘテロ原子であり、R1はH、あるいは式(3)における置換基と同じ意味を有する置換基である。Z2に結合したHとX2は水素結合によって結合しており、Z2とZ3の間の実線と破線で表されている結合は単結合または二重結合である。Zは式(3)における置換基と同じ意味を有する置換基を有していてもよい。
【0059】
式(15)で表される構造としては、式(16)で表される構造が好ましい。

・・・(16)
【0060】
式(16)において、X1は酸素原子、硫黄原子、セレン原子またはテルル原子であり、R1はH、あるいは式(3)における置換基と同じ意味を有する置換基である。窒素原子であるN2に結合したHと窒素原子であるN1は水素結合によって結合している。
【0061】
また、本発明の共役系高分子としては、より具体的には、式(17)で表される構造と、式(3)〜(16)のいずれかで表される構造を繰り返し単位として含むものが挙げられる。

・・・(17)
【0062】
式(17)において、X4は酸素原子、硫黄原子、セレン原子またはテルル原子であり、X5はC−R3、窒素原子またはリン原子であり、R3はH、あるいは式(3)における置換基と同じ意味を有する置換基である。
【0063】
式(17)で表される構造と、式(3)〜(16)のいずれかで表される構造を繰り返し単位として含む構造としては、式(18)と(19)で表される構造が好ましい。


・・・(18)
【0064】
式(18)において、X1及びX4はそれぞれ独立に酸素原子、硫黄原子、セレン原子またはテルル原子であり、X2は窒素原子またはリン原子であり、R1、R3及びR4は、互いに独立して、H、あるいは式(3)における置換基と同じ意味を有する置換基である。
【0065】


・・・(19)
【0066】
式(19)において、X1及びX4はそれぞれ独立に酸素原子、硫黄原子、セレン原子またはテルル原子であり、R1、R3及びR4は、互いに独立して、H、あるいは式(3)における置換基と同じ意味を有する置換基である。
【0067】
前記共役系高分子から成る層を有する有機半導体素子、例えば有機薄膜トランジスタは、前記層中のキャリア(ホール)移動度が大きいため、有機ELを駆動するのに十分な電流量を供給可能であり、工業的に極めて有用である。
【0068】
次に本発明の有機半導体素子の例として電界効果型有機薄膜トランジスタの構成と製造方法について説明する。電界効果型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり本発明の共役系高分子化合物を含有する有機半導体層、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極、並びに、有機半導体層とゲート電極との間に配置される絶縁層を備えることが好ましい。特に、ソース電極及びドレイン電極が、本発明の共役系高分子化合物を含有する有機半導体層に接して設けられており、さらに有機半導体層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられていることが好ましい。
【0069】
電界効果型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば特開平5−110069号公報記載のように、端子を備えたゲート電極にゲート絶縁膜を設け、該ゲート絶縁膜に活性化処理により半導体となる有機薄膜を設け、該ゲート電極を保護しながら上記有機薄膜を活性化処理して有機半導体薄膜とした後、該ゲート電極の端子を露出させ、並びに上記有機半導体薄膜にソース電極およびドレイン電極を形成する方法により製造することができる。
【0070】
前記有機薄膜を作製する際、適切な溶媒を選択する、或いは溶媒が徐々に蒸発するようにする、高温でアニールする、延伸する、磁場をかける、ラビングした基板上に製膜する、光配向膜上に製膜する等の処理により、共役系高分子のスタッキング度を高めることが可能である。スタッキング度が高まったことは、XRD等で確認できる。スタッキング部分ではスタッキングしていない部分よりもHOMO間および/またはLUMO間共鳴積分絶対値が大きいため、キャリア移動度が大きくなる。
【0071】
また、前記有機半導体素子を構成要素とすることにより、インクジェット法等を利用して大面積の発光部分を有する装置、例えばフレキシブルディスプレイを作製することが可能となる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0073】
[実施例1]
式(10)においてR1=n-C49、R2=R3=H、X1=Sとした構造をHead-to-Head型で連結した共役系高分子の部分構造1と部分構造2(式(31))のスタッキング安定構造におけるHOMO間共鳴積分絶対値をMPWB1K/6-31G*法を用いて計算した結果を表1に示す。
【0074】


部分構造1


部分構造2
・・・(31)
【0075】
[実施例2]
式(14)においてR1=n-C49、X1=Sとした構造をHead-to-Tail型で連結した共役系高分子の部分構造(式(32))について、2分子スタッキング安定構造におけるHOMO間共鳴積分絶対値をMPWB1K/6-31G*法を用いて計算した結果を表1に示す。
【0076】



・・・(32)
【0077】
[実施例3]
式(11)においてR1=n-C49、R2=H、X1=Sとした構造をHead-to-Tail型で連結した共役系高分子の部分構造(式(33))について、2分子スタッキング安定構造におけるHOMO間共鳴積分絶対値をMPWB1K/6-31G*法を用いて計算した結果を表1に示す。
【0078】



・・・(33)
【0079】
[実施例4]
式(16)においてR1=n-C49、X1=Sとした構造をHead-to-Tail型で連結した共役系高分子の部分構造(式(34))について、2分子スタッキング安定構造におけるHOMO間共鳴積分絶対値をMPWB1K/6-31G*法を用いて計算した結果を表1に示す。
【0080】


・・・(34)
【0081】
[実施例5]
式(18)においてR1=n-C49、R3=R4=H、X1=X4=S、X2=Nとした構造を連結した共役系高分子の部分構造(式(35))について、2分子スタッキング安定構造におけるHOMO間共鳴積分絶対値をMPWB1K/6-31G*法を用いて計算した結果を表1に示す。
【0082】


・・・(35)
【0083】
[実施例6]
式(19)においてR1=n-C49、R3=R4=H、X1=X4=Sとした構造を連結した共役系高分子の部分構造(式(36))について、2分子スタッキング安定構造におけるHOMO間共鳴積分絶対値をMPWB1K/6-31G*法を用いて計算した結果を表1に示す。
【0084】


・・・(36)
【0085】
[比較例1]
文献「Chem.Mater. 2004, 16, 4543-4555」に記述されている共役系高分子の部分構造(式(37))について、2分子スタッキング安定構造におけるHOMO間共鳴積分絶対値をMPWB1K/6-31G*法を用いて計算した結果、及び、前記共役系高分子の実測移動度文献値を表1に示す。
【0086】


・・・(37)
【0087】
[比較例2]
P3HT(ポリ-3-ヘキシルチオフェン)の部分構造(式(38))について、2分子スタッキング安定構造におけるHOMO間共鳴積分絶対値をMPWB1K/6-31G*法を用いて計算した結果、及び、P3HTの実測移動度文献値(「Chem.Mater. 2004,16,4772-4776」参照)を表1に示す。
【0088】


・・・(38)
【0089】
[比較例3]
文献「Nature Materials 2006, 5, 328-333」に記述されている共役系高分子の部分構造(式(39))について、2分子スタッキング安定構造におけるHOMO間共鳴積分絶対値をMPWB1K/6-31G*法を用いて計算した結果、及び、前記共役系高分子の実測移動度文献値を表1に示す。
【0090】

・・・(39)
【0091】
【表1】

【0092】
表1から分かるように、比較例1〜3の共役系高分子においては、HOMO間共鳴積分絶対値が大きいほど実測移動度が高い傾向がある。一方、実施例1〜6の共役系高分子においては、何れもHOMO間共鳴積分絶対値が0.29eV以上で、共役系高分子としては高い移動度を有する比較例3の共役系高分子の場合よりも大きい。以上のことから、実施例1〜6の共役系高分子は高い移動度を有し、有機半導体材料として工業的に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役系高分子であって、その部分構造2個のスタッキング安定構造において、式(1)で表される分子2個のスタッキング安定構造と比較して、理論化学的手法を用いて計算したHOMO間および/またはLUMO間の共鳴積分絶対値が大きいことを特徴とする共役系高分子。


(1)
【請求項2】
共鳴積分絶対値がHOMO間の共鳴積分絶対値である請求項1記載の共役系高分子。
【請求項3】
HOMO間共鳴積分絶対値が式(1)で表される分子におけるHOMO間共鳴積分絶対値の1.1倍以上である請求項2記載の共役系高分子。
【請求項4】
共役系高分子において、式(2)で表される分子と比較して、部分構造における理論化学的手法を用いて計算したHOMOエネルギーが低い請求項1〜3のいずれかに記載の共役系高分子。


(2)
【請求項5】
下記式(3)で表される構造を繰り返し単位として含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の共役系高分子。


・・・(3)
(式中、X1はそれぞれ独立にX2及びX3と共に複素環を形成するのに必要な置換基を有していてもよい原子群であり、Zはそれぞれ独立にX2及びX3と共に化学結合によって環を形成するのに必要な置換基を有していてもよい原子群である。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の共役系高分子を有することを特徴とする有機半導体素子。
【請求項7】
共役系高分子が部分的にスタッキング構造をとることを特徴とする請求項6記載の有機半導体素子。
【請求項8】
請求項6〜7のいずれかに記載の有機半導体素子を構成要素とすることを特徴とする装置。

【公開番号】特開2009−209359(P2009−209359A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22370(P2009−22370)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】