説明

共振器

【課題】FSRの大小にかかわらず、フォトニック結晶導波路に挿入される共振器の導波路方向の長さを調整できるようにする。
【解決手段】直線状に配列された第1柱状構造体101、および第1柱状構造体101の列の周囲に配列された第2柱状構造体102からなるピラー型フォトニック結晶による第1導波路111を備える。また、直線状に配列された複数の第5柱状構造体105および第5柱状構造体105の列の周囲に配列された第2柱状構造体102からなるピラー型フォトニック結晶による第2導波路114を備える。第2導波路114は、第1導波路111に接続して第1導波路111に対してスタブとして機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトニック結晶体より構成された共振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品が集積されたトランジスタ集積回路のように、光部品が集積された光集積回路を実現する技術が望まれている。現在、光スイッチ,波長フィルタ,3dB結合器(光カプラ)などの光部品を、光ファイバなどの光導波路を介して接続して光回路を構成している。これに対し、複数の光部品を小さなチップの中に集積化させることができれば、光回路の体積,消費電力,製造コストなどを飛躍的に低減させることが可能である。
【0003】
光集積回路の実現を目指した技術は、これまでにも多数開発されており、この中の1つにフォトニック結晶技術がある。フォトニック結晶体あるいはフォトニック結晶とは、広義には屈折率を周期的に変化させた構造体の総称である。なお、以降では、特に断らない限り、「フォトニック結晶体」および「フォトニック結晶」は、同義語として用いる。
【0004】
フォトニック結晶は、屈折率分布の周期構造に起因して種々の特殊な光学的特徴を有する。最も代表的な特徴は、フォトニック・バンド・ギャップ(Photonic Band Gap:PBG)である。光は、フォトニック結晶中を透過することができるが、フォトニック結晶中の周期的な屈折率変化が十分に大きいと、ある特定の周波数帯域の光はフォトニック結晶中を伝搬することができない。フォトニック結晶を透過することができる光の周波数帯域(波長帯域)は、フォトニック・バンド(Photonic Band)と呼ばれている。
【0005】
これに対し、透過することができない光の帯域は、フォトニック・バンドの間に存在するギャップということで、フォトニック・バンド・ギャップ(PBG)と呼ばれている。PBGは、異なった周波数帯に複数存在することもある。PBGによって分断されたフォトニック・バンドは、周波数の小さい方から、第1バンド、第2バンド、第3バンド等と呼ばれることがある。
【0006】
フォトニック結晶中に、屈折率分布の周期構造(屈折率分布の周期性)を崩すような微小な欠陥が存在すると、PBG内の周波数の光は微小欠陥に閉じ込められる。この場合、欠陥の大きさに対応した周波数の光のみが閉じ込められるので、フォトニック結晶が光共振器として働く。このようなフォトニック結晶は、周波数(波長)フィルタとして利用することができる。
【0007】
また、フォトニック結晶中に微小な欠陥を連続的に配列させ、結晶中に線欠陥を形成すると、PBG内の周波数の光は、線欠陥内に閉じ込められ、線欠陥に沿って伝搬する。このようなフォトニック結晶は、光導波路として利用することができる。フォトニック結晶中に形成されるこのような光導波路は、線欠陥導波路と呼ばれている。
【0008】
フォトニック結晶中に光フィルタや光導波路を形成することができれば、これらの組み合わせによって、光変調器や光スイッチなどの光機能素子を構成することが可能となる。また、フォトニック結晶中に主要な光機能素子を形成し、形成した各光機能素子を接続して光回路を構成することができる。このような理由から、フォトニック結晶が、光集積回路のプラットフォームとして期待されている。
【0009】
ここで、フォトニック結晶を実用的な光集積回路のプラットフォームとして使用する場合には、次に示すような制限が生じる。例えば、PBGの効果を互いに垂直なx,y,zの3方向で利用するためには、フォトニック結晶の屈折率分布が3次元周期構造を有することが重要となる。しかしながら、3次元周期構造は複雑なため、製造コストが高くなる。このため、屈折率分布が2次元周期構造を有するフォトニック結晶(2次元フォトニック結晶)が利用されることが多い。具体的には、屈折率分布が基板面内では周期性を有するが、厚み方向には周期性を有さない有限厚みの2次元フォトニック結晶が用いられる。この場合、基板の厚み方向における光の閉じ込めは、PBGの効果ではなく、屈折率差に起因する全反射によって実現される。
【0010】
なお、有限厚みの2次元フォトニック結晶の特性は、無限の厚みの2次元フォトニック結晶の特性と完全には一致しない。しかし、有限厚みの2次元フォトニック結晶の厚み方向における屈折率分布が、光が伝搬する領域において鏡映対称であれば、無限の厚みの2次元フォトニック結晶の光学特性とほぼ一致する。無限の厚みの2次元フォトニック結晶によるデバイスの動作予測は、有限の厚みを考慮した動作予測に比べて格段に容易である。このため、屈折率分布が鏡映対称の2次元フォトニック結晶を利用することができれば、これを用いたデバイスの設計も容易になる。
【0011】
有限厚みの2次元フォトニック結晶として、これまで実現された具体的な構造はいくつかある。この中で柱(ピラー)型正方格子フォトニック結晶は、線欠陥導波路における光の伝搬速度が広い帯域で遅い(低群速度)という特徴を有する。一般に、伝搬速度の遅い導波路を用いると、同じ機能の光回路を短い導波路長で作ることができる。このため、柱型正方格子フォトニック結晶を用いた線欠陥導波路は、光集積回路に適している。
【0012】
図3は、有限厚みのピラー型正方格子フォトニック結晶における線欠陥導波路の構造を模式的に示す斜視図である。この柱型正方格子フォトニック結晶は、低誘電率材料(媒質)303の中に、高誘電率材料で構成された高さが有限の円柱301と、円柱301よりも直径の小さな円柱302とが正方格子状に配置(正方配列)されている。これらの円柱が、正方格子状に配置されている構造が、シリコンや水晶などの結晶中に原子が格子状に配置されている状態に似ており、光学用途であることから、「フォトニック結晶」と呼ばれている。なお、低誘電率材料303や円柱301や円柱302の材料は、結晶である必要はなく、アモルファスでもよい。
【0013】
このフォトニック結晶の場合、円柱301が完全なフォトニック結晶を構成する円柱であるのに対し、円柱302は円柱301よりも直径が小さい。このため、円柱302を、完全結晶に導入された欠陥であると見なす。以下の説明では、完全結晶を構成している円柱と、欠陥に相当する円柱とを区別するために、前者を「非線欠陥柱」、後者を「欠陥柱」と称する。なお、「欠陥柱」は、「欠陥円柱」または「線欠陥柱」と呼ぶ場合がある。なお、線欠陥柱自体には、特に欠陥があるわけではないことに注意すべきである。
【0014】
フォトニック結晶の線欠陥柱となる円柱302は、直線上に一列に並べられて列を形成している。円柱302の列と、この列の周囲の円柱301によって線欠陥導波路が形成されている。図3に示した円柱型正方格子フォトニック結晶の線欠陥導波路は、線欠陥柱の列が、光ファイバなどの全反射閉じ込め型の導波路におけるコアに相当する。また、線欠陥柱の列の両側の非線欠陥柱(円柱301)の格子や周囲の誘電体材料303がクラッドに相当する。
【0015】
全反射閉じ込め型導波路の場合、コアとクラッドが存在して初めて導波路として働くように、線欠陥導波路の場合も、線欠陥の列とこの周囲の非線欠陥柱や媒質が存在して初めて導波路として機能する。
【0016】
また、フォトニック結晶の導波路は、比較的単純な構造によって、共振器の機能を発現させることができる(特許文献1,2,3)。例えば、フォトニック結晶の直線導波路内に不連続な部分を2カ所設けることにより、これらの不連続な部分に挟まれた有限長の導波路を共振器として動作させることができる。言い換えると、直線の導波路を有限長に分断することにより、分断箇所の前後の導波路によって光を入出力できる共振器を構成できる。この共振器は、周波数(波長)フィルタとして使用できる。
【0017】
このようなフォトニック結晶導波路の共振器は、一定の周波数間隔の光(一般には電磁波)に対して共鳴する。共鳴周波数は、一般に複数存在し、これらの共鳴周波数の間隔は、自由スペクトル範囲(Free Spectral Range;FSR)と呼ばれる。共振器の用途によって、FSRが小さいことが好ましい場合もあるが、ある程度大きいことが好ましい場合もある。
【0018】
例えば、ある特定の周波数範囲内で、1つの周波数の光だけを共振させることにより、共振した光だけを取り出すフィルタとして共振器を用いる場合には、FSRは特定の周波数範囲よりも十分に大きくする。一方、均等な周波数間隔で多重化された複数の光の中から1つおきに光を取り出すインターリーバーとして用いるには、上記周波数間隔にFSRを合わせることになり、FSRの値として小さくなる。
【0019】
また、FSRができるだけ小さな共振器フィルタを用い、この共振器フィルタを光が透過している状態から、共振周波数を僅かに変調させて非透過の状態にし、ON/OFF光スイッチとして用いるような応用もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2002-365401号公報
【特許文献2】特開2004-245866号公報
【特許文献2】特開2007-047604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
ところで、FSRを大きくする共振器フィルタの場合は、通常、共振器は短い。このため、共振器を含むフォトニック結晶導波路の光回路も短くすることができる。しかしながら、FSRが小さいほうが好ましい共振器フィルタに適用する場合に、一般には、共振器となるフォトニック結晶導波路が一方向に非常に長くなる。このような状態では、共振器を含む光回路にレイアウト上の問題が生じる。
【0022】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、FSRの大小にかかわらず、フォトニック結晶導波路に挿入される共振器の導波路方向の長さを調整できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明に係る共振器は、直線状に配列された第1柱状構造体およびこの第1柱状構造体の列の周囲に配列された第2柱状構造体からなるピラー型フォトニック結晶による第1導波路と、この第1導波路の両端に第1柱状構造体の列に連続して配列された第3柱状構造体とこの第3柱状構造体の列の両脇に配列された第4柱状構造体とからなるピラー型フォトニック結晶による第1不連続部および第2不連続部と、直線状に配列された複数の第5柱状構造体およびこの第5柱状構造体の列の周囲に配列された第2柱状構造体からなるピラー型フォトニック結晶による第2導波路とを少なくとも備え、第2導波路は、第1導波路に接続して第1導波路に対してスタブとして機能し、第1柱状構造体,第2柱状構造体,第3柱状構造体,第4柱状構造体,および第5柱状構造体は、誘電体から構成され、第1柱状構造体,第2柱状構造体,および第5柱状構造体は、同一の材料から構成され、第2柱状構造体は、第1柱状構造体および第5柱状構造体より大きな径に形成され、第2柱状構造体および第4柱状構造体は、直交配列され、第1不連続部および第2不連続部は、第1導波路とは異なる状態に形成されているものである。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、第1不連続部および第2不連続部に挟まれた第1導波路に、第2導波路を接続したので、FSRの大小にかかわらず、フォトニック結晶導波路に挿入される共振器の導波路方向の長さを調整できるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態1における共振器の構成を示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態2における共振器の構成を示す平面図である。
【図3】有限厚みの柱型正方格子フォトニック結晶の線欠陥導波路の構造を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1における共振器の構成を示す平面図である。この共振器は、まず、直線状に配列された第1柱状構造体101、および第1柱状構造体101の列の周囲に配列された第2柱状構造体102からなるピラー型フォトニック結晶による第1導波路111を備える。
【0027】
また、第1導波路111の両端に第1柱状構造体101の列に連続して配列された第3柱状構造体103と、第3柱状構造体103の列の両脇に配列された第4柱状構造体104とからなるピラー型フォトニック結晶による第1不連続部112および第2不連続部113を備える。これら第1不連続部112および第2不連続部113は、第1導波路111とは異なる状態に形成されている。
【0028】
第1不連続部112および第2不連続部113は、第1導波路111に対して不連続な部分である。従って、これらに挟まれた第1導波路111は、有限長の導波路となり、共振器として動作させることができる。このように、第1導波路111,第1不連続部112,および第2不連続部113により、基本的な共振器が構成されている。
【0029】
本実施の形態における共振器は、上述した構成に加え、直線状に配列された複数の第5柱状構造体105および第5柱状構造体105の列の周囲に配列された第2柱状構造体102からなるピラー型フォトニック結晶による第2導波路114を備える。第2導波路114は、第1導波路111に接続して第1導波路111に対してスタブとして機能する。また、図1では、第1導波路111に対し、第2導波路114が垂直に接続している例を示している。
【0030】
なお、第2導波路114は、完全に垂直な状態で第1導波路111に接続している必要はない。例えば、実際に製造する場合、製造の誤差などにより、完全に垂直な状態より数度ずれた状態で、第2導波路114が第1導波路111に接続する場合もある。このような状態でも、後述する本実施の形態における共振器の機能は発現される。第2導波路114は、実質的に垂直な状態で、第1導波路111に接続していればよい。
【0031】
また、第1柱状構造体101,第2柱状構造体102,第3柱状構造体103,第4柱状構造体104,および第5柱状構造体105は、シリコンなどの誘電体から構成されている。また、第1柱状構造体101,第2柱状構造体102,および第5柱状構造体105は、同一の材料から構成されている。また、第2柱状構造体102は、第1柱状構造体101および第5柱状構造体105より大きな径に形成され、第2柱状構造体102および第4柱状構造体104は、正方配列されている。
【0032】
なお、図示していないが、この共振器は、各柱状構造体を埋めるように、これら柱状構造体より屈折率の低い材料から構成された媒質を備えている。また、各柱状構造体は、例えば円柱である。ここで、第1柱状構造体101,第3柱状構造体103,および第5柱状構造体105は、フォトニック結晶におけるいわゆる「欠陥柱」であり、光導波路のコアに相当する。また、第2柱状構造体102および第4柱状構造体104は、フォトニック結晶におけるいわゆる「非線欠陥柱」である。
【0033】
例えば、第3柱状構造体103の径を、第1柱状構造体101より大きく、第2柱状構造体102より小さくすれば、第1不連続部112および第2不連続部113を、第1導波路111とは異なる状態にすることができる。例えば、第1柱状構造体101の径を0.16μmとし、第3柱状構造体103の径を0.20μmとすればよい。この場合、第4柱状構造体104は、第2柱状構造体102と同様に構成し、例えば、径を0.24μmとすればよい。なお、上述したような寸法の円柱とした場合、各柱状構造体は、0.4μm間隔で、正方配列されていればよい。
【0034】
また、第3柱状構造体103を、第1柱状構造体101とは異なる材料から構成すれば、第1不連続部112および第2不連続部113を、第1導波路111とは異なる状態にすることができる。例えば、第3柱状構造体103を、第1柱状構造体101と屈折率が異なる材料から構成すればよい。この場合においても、第4柱状構造体104は、第2柱状構造体102と同様に構成すればよい。
【0035】
また、第3柱状構造体103を第1柱状構造体101と同様に形成し、第4柱状構造体104を第2柱状構造体102とは異なる材料から構成することでも、第1不連続部112および第2不連続部113を、第1導波路111とは異なる状態にすることができる。例えば、第4柱状構造体104を、第2柱状構造体102と屈折率が異なる材料から構成すればよい。
【0036】
また、第3柱状構造体103の周囲の媒質を、第1柱状構造体101の周囲の媒質とは異なる材料から構成することで、第1不連続部112および第2不連続部113を、第1導波路111とは異なる状態にすることができる。また、第3柱状構造体103の配列間隔を、第1柱状構造体101とは異なる配列間隔とすることで、第1不連続部112および第2不連続部113を、第1導波路111とは異なる状態にすることができる。
【0037】
上述した構成とした本実施の形態の共振器では、まず、第2導波路114が第1導波路111に接続するT分岐117において、損失や反射などなく、第2導波路114を導波する光を、第1導波路111の左右に分配して伝播させることができる。この共振器では、第1導波路111に、第2導波路114を含めた有限状の導波路を、一体の共振器として動作させることができる。
【0038】
このため、例えば、第2導波路114の導波路長を長くすることで、第1導波路111の導波路長を長くした場合と同様の共振器動作を得ることができる。言い換えると、本実施の形態の共振器によれば、第1導波路111を長くすることなく、第1導波路111を長くした場合と同じ共振器特性が得られる。
【0039】
例えば、FSRを小さくしようとすると、一般には、共振器となる第1導波路111をより長くすることになる。これに対し、本実施の形態によれば、第2導波路114を長くすることで、FSRを小さくする場合に対応させることができる。従って、本実施の形態によれば、FSRの大小にかかわらず、第1導波路111の長さ、言い換えると共振器の導波路方向の長さを調整することが可能となる。
【0040】
次に、本実施の形態における共振器の製造について簡単に説明する。まず、この共振器は、SOI(Silicon On Insulator)ウエハを用いることで作製できる。例えば、埋め込み絶縁層の層厚2.0μm、シリコン活性層(ノンドープ)の層厚1.0μmのSOIウエハを用意する。次に、公知の電子線リソグラフィー技術により、シリコン活性層の上に上述した各柱状構造体に対応するレジストパターンを形成する。
【0041】
例えば、対象とする光信号の波長を光通信用の1.55μmとする場合、上記レジストパターンは、まず、第2柱状構造体102および第4柱状構造体104に対応するレジストパターンとして直径0.24μmの円柱を備える。また、第1柱状構造体101および第5柱状構造体105に対応するパターンとして直径0.16μmの円柱を備える。また、第4柱状構造体104に対応するパターンとして直径0.2μmの円柱を備える。また、各柱状構造体は、間隔0.4μmで正方配列している。また、第2導波路114の導波路長が15μmとなるように、第5柱状構造体105が配列されている。
【0042】
以上のようにレジストパターンを形成した後、例えば、CF4ガスを用いたリアクティブイオンエッチングなどの異方性ドライエッチングにより、レジストパターンをマスクとしてシリコン活性層を選択的にエッチングする。このエッチングにより、シリコンより構成された各柱状構造体が、埋め込み絶縁層の上に形成される。
【0043】
次に、例えばアセトンなどの溶媒による溶解でレジストパターンを除去した後、埋め込み絶縁層と同じ屈折率(1.45)を有する紫外線硬化樹脂を、形成した各柱状構造体を埋め込むように、埋め込み絶縁層の上に塗布する。最後に、塗布した紫外線硬化樹脂の膜に紫外線を照射して硬化させ、各柱状構造体が、上述した樹脂による媒質に埋め込まれた状態とする。
【0044】
ここで、第2導波路114において、第5柱状構造体105が、第1導波路111より離れるほど径が太く形成されているようにしてもよい。例えば、上述の場合、第5柱状構造体105の直径を、0.16μmから0.22μmまで変化させるようにすればよい。ピラー型フォトニック結晶においては、コアの部分となる柱状構造体の径により、通過できる光の周波数の上限が決定される。このため、上述したように、スタブとなる第2導波路114の奥に行くほど、第5柱状構造体105の径を太くすると、周波数が長い光はスタブの奥まで伝播し、周波数が短い光は、あまり奥まで伝播しないようになる。従って、このように構成することで、波長によって伝播可能な長さが異なる状態となり、1つの第2導波路114で、複数の波長に対応させることが可能となり、例えば、感度のよい光スイッチが構成できる。
【0045】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、基本的な共振器の部分となる導波路に、スタブとなる1つの導波路を接続させたが、これに限るものではない。以下は、上述した実施の形態におけるスタブとなる導波路に、更にスタブとなる導波路を接続した場合について説明する。
【0046】
図2は、実施の形態2における共振器の構成を示す平面図である。この共振器は、まず、直線状に配列された第1柱状構造体101、および第1柱状構造体101の列の周囲に配列された第2柱状構造体102からなるピラー型フォトニック結晶による第1導波路111を備える。
【0047】
また、第1導波路111の両端に第1柱状構造体101の列に連続して配列された第3柱状構造体103と、第3柱状構造体103の列の両脇に配列された第4柱状構造体104とからなるピラー型フォトニック結晶による第1不連続部112および第2不連続部113を備える。これら第1不連続部112および第2不連続部113は、第1導波路111とは異なる状態に形成されている。
【0048】
また、直線状に配列された複数の第5柱状構造体105および第5柱状構造体105の列の周囲に配列された第2柱状構造体102からなるピラー型フォトニック結晶による第2導波路114を備える。上述した構成は、前述した実施の形態1と同様である。
【0049】
本実施の形態2では、新たに、直線状に配列された複数の第5柱状構造体105および第5柱状構造体105の列の周囲に配列された第2柱状構造体102からなるピラー型フォトニック結晶による第3導波路115を備える。第3導波路115は、第2導波路114に接続して第2導波路114に対してスタブとして機能する。第3導波路115は、第2導波路114に対して垂直に接続されていればよい。なお、前述した第1導波路111と第2導波路114との場合と同様に、第3導波路115は、完全に垂直な状態で第2導波路114に接続している必要はない。
【0050】
また、図2では、第1不連続部112に接続する入射側導波路121および第2不連続部113に接続する出射側導波路122を備える状態を示している。このように、本発明の共振器は、第1不連続部112および第2不連続部113が、対象とする光の入出射端となる。なお、例えば、第1不連続部112の第3柱状構造体103に対し、入射側導波路121の第1柱状構造体101の列が、連続して直線状に配置されていなくてもよい。例えば、第1不連続部112の第3柱状構造体103に対し、入射側導波路121の第1柱状構造体101の列が、図2の平面で上下方向に1つの配列間隔分ずれて接続されていてもよい。
【0051】
本実施の形態2によれば、第2導波路114をより長くした状態を、第3導波路115を用いることで、第2導波路114を変化させることなく実現できるようになる。従って、実施の形態1に比較して、導波方向に垂直な幅方向の共振器の寸法を、より小さくすることができるようになる。
【0052】
なお、上述では、本発明の共振器の一例について説明したが、本発明は上述した形態に限定されるものではない。例えば、フォトニック結晶を構成している線欠陥柱以外の円柱を変位させた、また、円柱の断面積を増減させたるようにしてもよい。更には、柱状構造体は必ずしも円柱である必要はなく、四角柱や八角柱など、他の形状であってもよい。また、各柱状構造体は、正方配列に限らず、直交配列されていればよい。
【0053】
また、FSRの異なる本発明の共振器を2個あるいは3個というように、複数個の共振器を接続してもよい。このようにすることで、透過帯域の重なった周波数の光だけが透過する周波数フィルタを、コンパクトにレイアウトできる。また、同じFSRの本発明の共振器を複数接続すれば、透過帯域の透過スペクトルをフラットトップ化することや、阻止波長帯域をフラット化することもできる。
【0054】
上述したように、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、上記各実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0055】
101…第1柱状構造体、102…第2柱状構造体、103…第3柱状構造体、104…第4柱状構造体、105…第5柱状構造体、111…第1導波路、112…第1不連続部、113…第2不連続部、114…第2導波路、115…第3導波路、117…T分岐。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に配列された第1柱状構造体およびこの第1柱状構造体の列の周囲に配列された第2柱状構造体からなるピラー型フォトニック結晶による第1導波路と、
この第1導波路の両端に前記第1柱状構造体の列に連続して配列された第3柱状構造体とこの第3柱状構造体の列の両脇に配列された第4柱状構造体とからなるピラー型フォトニック結晶による第1不連続部および第2不連続部と、
直線状に配列された複数の第5柱状構造体およびこの第5柱状構造体の列の周囲に配列された前記第2柱状構造体からなるピラー型フォトニック結晶による第2導波路と
を少なくとも備え、
前記第2導波路は、前記第1導波路に接続して前記第1導波路に対してスタブとして機能し、
前記第1柱状構造体,前記第2柱状構造体,前記第3柱状構造体,前記第4柱状構造体,および前記第5柱状構造体は、誘電体から構成され、
前記第1柱状構造体,前記第2柱状構造体,および前記第5柱状構造体は、同一の材料から構成され、
前記第2柱状構造体は、前記第1柱状構造体および前記第5柱状構造体より大きな径に形成され、
前記第2柱状構造体および前記第4柱状構造体は、直交配列され、
前記第1不連続部および前記第2不連続部は、前記第1導波路とは異なる状態に形成されていることを特徴とする共振器。
【請求項2】
請求項1記載の共振器において、
前記第2導波路は、前記第1導波路に垂直に接続していることを特徴とする共振器。
【請求項3】
請求項1または2記載の共振器において、
直線状に配列された複数の前記第5柱状構造体およびこの第5柱状構造体の列の周囲に配列された前記第2柱状構造体からなるピラー型フォトニック結晶による第3導波路を備え、
前記第3導波路は、前記第2導波路に接続して前記第2導波路に対してスタブとして機能する
ことを特徴とする共振器。
【請求項4】
請求項3記載の共振器において、
前記第3導波路は、前記第2導波路に垂直に接続していることを特徴とする共振器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の共振器において、
前記第3柱状構造体は、前記第1柱状構造体より大きく前記第2柱状構造体より小さい径に形成されていることを特徴とする共振器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の共振器において、
前記第3柱状構造体は、前記第1柱状構造体とは異なる材料から構成されていることを特徴とする共振器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の共振器において、
前記第3柱状構造体は、前記第1柱状構造体とは異なる間隔で配列されていることを特徴とする共振器。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の共振器において、
前記第3柱状構造体の周囲は、前記第1柱状構造体の周囲とは異なる媒質で充填されていることを特徴とする共振器。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の共振器において、
前記第2導波路の前記第5柱状構造体は、前記第1導波路より離れるほど径が太く形成されていることを特徴とする共振器。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の共振器において、
前記第2柱状構造体および前記第4柱状構造体は、正方配列されていることを特徴とする共振器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−107383(P2011−107383A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261872(P2009−261872)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、総務省、「ナノ技術を活用した超高機能ネットワーク技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】