説明

共有情報更新方法

【課題】 無線通信網内のどの無線端末からでも共有情報を送信することを可能にし、無線通信網内全ての端末の共有情報を更新することができる共有情報更新方法を提供する。
【解決手段】 自己が保持する共有情報のバージョン情報23より端末Aが送信したビーコン又はプローブ要求内のバージョン情報23の方が古いと検知したとき(ステップS1−20)、端末Bが保持する共有情報のバージョン情報23をプローブ要求で端末Aに通知すると(ステップS1−25)、端末Aは共有情報更新要求フレームF1を端末Bに送信する(ステップS1―35)。端末Bは端末Aに共有情報フレームF4をフレーム毎に送信し(ステップS1―40)、全て受信後、端末Aは共有情報を更新する(ステップS1−45)。端末A,Bは、それぞれビーコン又はプローブ要求の送信を契機に新たに無線通信網に接続した他の端末や隣接する無線通信網内の各端末の共有情報を更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共有情報更新方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線LANの通信端末には、通信端末の保守・付加機能を実行するためのソフトウエアや、同一ネットワークで共有しあう各種情報等の共有情報が記憶されている。それら共有情報は、通信性能向上、付加機能追加、不具合改修またはネットワークの保守更新等の理由により、更新されることが多々ある。従来、共有情報の更新の際には、通信端末の設置場所へ保守担当者が赴いて1台ずつ更新作業を行うか、保守センタなどに一旦回収して更新作業を行った後に再び設置するか、または、ユーザ自身が更新される共有情報をメーカーから入手して指示された手順に従い更新するなどの方法で行っていた。そのため、特に複数の端末の共有情報の更新の際に手間を要していた。さらに、更新の際は通信端末内部のメモリを書き換えるため、通信端末の筐体を開けたり、有線LANやUSBメモリ等の外部メディアを介在したりする作業を伴っており、更新の際に手間を要していた。
【0003】
これに対し、無線経路にてプログラムを更新する携帯無線システムがあった。この携帯無線システムは、携帯無線端末装置、外部サーバ、センタ、無線基地局を備えている。そして、外部サーバ若しくはセンタから無線基地局を介して携帯無線端末装置に機種情報とプログラムのバージョン情報の通知要求があったとき、携帯無線端末装置は、外部サーバに対して機種情報とバージョン情報を有する電子メールを送信する。そして、外部サーバは、プログラムを更新するためのデータファイルを電子メールの添付ファイル形式で携帯無線端末装置に送信する。この結果、プログラムをユーザが容易にダウンロード可能であるため、プログラムの更新作業の手間を低減していた(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−174404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の携帯無線システムでは、例えば、電子メールの同報送信によって、複数の携帯無線端末装置に対する更新作業の手間を軽減できるが、携帯無線端末装置の方が外部サーバよりも新しいバージョンのプログラムを持っているときであっても、携帯無線端末装置が外部サーバの持つ共有情報を更新することはできなかった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、無線通信網内のどの無線端末からでも共有情報を送信することを可能にし、無線通信網内全ての端末の共有情報を更新することができる共有情報更新方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、少なくとも1つの無線通信網を通じて前記少なくとも1つの無線通信網内の複数の端末がそれぞれ保持する共有情報を更新する共有情報更新方法であって、前記複数の端末のうち1の端末が保持する共有情報のバージョン情報を前記複数の端末に送信し、前記複数の端末が保持する共有情報のバージョン情報と受信したバージョン情報とをそれぞれ比較し、前記複数の端末のうち前記受信したバージョン情報より新しいバージョン情報の共有情報を保持する端末が、当該共有情報を前記1の端末に送信し、前記1の端末は、同端末が保持する共有情報を前記新しいバージョン情報の共有情報に更新する。
【0007】
この発明によれば、複数の端末のうち1の端末が保持する共有情報のバージョン情報を
複数の端末に送信し、複数の端末は、保持する共有情報のバージョン情報と受信したバージョン情報とを比較し、前記複数の端末のうち前記受信したバージョン情報より新しいバージョン情報の共有情報を保持する端末が、当該共有情報を1の端末に送信し、1の端末は、同端末が保持する共有情報を新しいバージョン情報の共有情報に更新する。従って、無線通信網内のどの端末からでも共有情報を送信することができ、無線通信網内全ての端末の共有情報を更新することができる。なお、本発明の端末とは、移動端末もしくはアクセスポイントを指す。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の共有情報更新方法であって、前記共有情報のバージョン情報を、マネージメントフレーム内の情報要素として搭載し、前記複数の端末は、それぞれ前記マネージメントフレームを送信することによって、前記共有情報のバージョン情報を互いに通知する。
【0009】
この発明によれば、共有情報のバージョン情報を搭載したマネージメントフレームを送信することによってバージョン情報を通知する。この結果、バージョン情報の通知のためのシーケンスを設けることなくバージョン情報を通知し、それを契機に端末に接触することなく自動的に共有情報を更新することができる。従って、共有情報の更新に要する作業負担を軽減することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の共有情報更新方法であって、前記複数の端末は、マネージメントフレーム送信後、SIFS間隔経過後に前記共有情報のバージョン情報を搭載したバージョン情報通知フレームをそれぞれ送信することによって、前記共有情報のバージョン情報を互いに通知する。
【0011】
この発明によれば、マネージメントフレーム送信後、SIFS間隔経過後に送信したバージョン通知フレームによってバージョン情報を通知する。この結果、端末に接触することなく自動的に共有情報を更新することができると共に、共有情報の更新処理を実行する機能を有していない他の端末との混在ネットワーク環境を構築することができる。従って、既存のネットワーク環境を生かしながらも共有情報の更新に要する作業負担を軽減することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の共有情報更新方法であって、マネージメントフレーム内のインフォメーションエレメントに定義された固有の識別子を持つマネージメントフレームの情報要素に前記共有情報のバージョン情報を搭載し、前記複数の端末は、それぞれ前記マネージメントフレームを送信することによって、前記バージョン情報を互いに通知する。
【0013】
この発明によれば、バージョン情報を搭載したマネージメントフレームを送信することによってバージョン情報を通知する。この結果、端末に接触することなく自動的に共有情報を更新することができると共に、共有情報の更新処理を実行する機能を有していない他の端末との混在ネットワーク環境を構築することができる。従って、既存のネットワーク環境を生かしながらも共有情報の更新に要する作業負担を軽減することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の共有情報更新方法であって、前記マネージメントフレームはビーコンもしくはプローブ要求である。
この発明によれば、マネージメントフレームはビーコンもしくはプローブ要求であるため、新しい共有情報を保持し、ビーコンもしくはプローブ要求を送信する端末であれば、どの端末であっても共有情報のバージョン情報を送信し、そのバージョン情報の送信を契機に共有情報更新処理を行うことができる。この結果、ビーコンもしくはプローブ要求が届く範囲の隣接する無線通信網の端末の共有情報も更新することができる。従って、隣接
する無線通信網についても共有情報の更新を実行できるため、共有情報の更新に要する手間を低減することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の共有情報更新方法であって、前記新しいバージョン情報の共有情報を保持する端末は前記新しいバージョン情報の共有情報を複数のフレームに分割して送信し、前記1の端末が前記複数のフレームの少なくとも1つを受信できなかったとき、前記複数の端末間で前記複数のフレームの少なくとも1つを補完し合うことにより、前記複数のフレームを全て受信する。
【0016】
この発明によれば、新しいバージョン情報の共有情報を保持する端末は、その共有情報を複数のフレームに分割して送信し、1の端末がその複数のフレームの少なくとも1つを受信できなかったとき、複数の端末間で互いにフレームを補完し合うことにより、複数のフレームを全て受信する。この結果、一層確実に共有情報を更新することができる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の共有情報更新方法であって、前記1の端末が前記複数のフレームの少なくとも1つを受信できなかったとき、前記複数の端末間で前記複数のフレームの保持情報を互いにブロードキャストで送信し、前記保持情報を基に、前記複数の端末がそれぞれ保持していないフレームのみ前記複数の端末間で補完し合うことにより、前記複数のフレームを全て受信する。
【0018】
この発明によれば、複数のフレームの少なくとも1つを保持している複数の端末間で互いにブロードキャストで送信した複数のフレームの保持情報を基に、複数の端末がそれぞれ保持していないフレームのみ複数の端末間で補完し合う。この結果、共有情報の更新時に送受信する情報量を低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、無線通信網内のどの端末からでも共有情報を送信することを可能にし、無線通信網内全ての端末の共有情報を更新することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜8に従って説明する。図1は、本発明を具体化したアドホックネットワークの概略構成を説明するための説明図である。図1において、それぞれ無線通信網としてのアドホックネットワークで構成されたセルN1とセルN2とを備えており、本実施形態では、セルN1は、無線LAN端末(以下、端末という)A〜D間で相互通信が可能な領域空間であって、セルN2は、端末D,E間で相互通信が可能な領域空間である。また、本実施形態では、セルN1及びセルN2は同一SSID(Service Set Identifier)であり、各端末A〜EがセルN1とセルN2とを相互に行き来したときであっても瞬時にネットワークに加入できる。
【0021】
次に、各端末A〜Eの構成について図2に従って説明する。本実施形態では、各端末A〜Eはそれぞれ同じ構成であるので、端末Aについて説明し、他の端末B〜Eについては、符号を同じにしてその詳細な説明を省略する。端末Aは、無線送受信部11、送受信データ処理部12、制御部13、外部インタフェース14、ワークメモリ15、記憶部16を備えている。無線送受信部11は、端末Aが送受信する無線信号の変調及び復調を行う。送受信データ処理部12は、端末Aが送信する送信データのパケット化、端末Aが受信する受信無線パケットの分解処理を行う。制御部13は、無線送受信部11及び送受信データ処理部12を制御し、データ送受信プロトコルの制御や端末Aの各種設定、状態管理を行う。外部インタフェース14は、ホストシステム等の外部機器への接続部であるとともに、端末Aの状態表示等の処理部である。
【0022】
ワークメモリ15は、各種ソフトウエアを実行する際に、それらソフトウエアを展開したり、一時的にデータを保存したりしておくためのメモリエリアである。記憶部16には、制御部13を動作させるソフトウエア、各端末の設定に関する共有情報及びそのバージョン情報が記憶されている。なお、本実施形態では、共有情報及びそのバージョン情報は、実行時に例えばワークメモリ15に展開される前の状態のものをいう。また、本実施形態では、共有情報は、例えば、端末Aの付加機能を実行するためのソフトウエアであって、バージョン情報は、そのソフトウエアのバージョンを示す情報である。
【0023】
そして、端末Aが共有情報を他の端末に送信する場合、記憶部16に格納された共有情報を複数のフレームに分割して送信する。他の端末は、分割されて送信された更新済みの共有情報を一旦ワークメモリ15に保存し、全てのフレームを受信できるまでは更新処理を行わない。同様に、端末Aも、複数のフレームに分割された更新済みの共有情報を他の端末から受信すると、そのフレームを一旦ワークメモリ15に保存し、全てのフレームを受信できるまでは更新処理を行わない。
【0024】
次に、共有情報のバージョン情報の通知方法について図3〜図5に従って説明する。図3に示すように、本実施形態では、ビーコン、プローブ要求等の公知のMAC(Medium Access Control )フレーム内のSSIDフィールド21にバージョン情報を示すフィールドを備えている。すなわち、kオクテット長のSSIDフィールド21内に共有情報のバージョン情報を示す固定長のフィールドである情報要素としてのバージョン情報23を備える。各端末A〜Eは、SSIDフィールド21内のSSID本体25により、このMACフレームを送信した端末が同一ネットワークの端末か否かを認識し、バージョン情報23により、共有情報のバージョン情報を確認するようになっている。また、このSSIDフィールド21はビーコン、プローブ要求等、IEEE802.11規定のマネージメントフレームであって、SSIDを含む全てのフレーム種別に同様に適用される。
【0025】
また、本実施形態では、図4に示すように、ユニキャストで送信される共有情報更新要求フレームF1、ブロードキャストで送信される共有情報検索要求フレームF2、ブロードキャストで送信される共有情報検索応答フレームF3を備えている。また、本実施形態では、さらに、図5に示すように、共有情報が搭載されたフレームであって、ブロードキャストで送信される共有情報フレームF4を備えている。また、上述のように、共有情報は複数のフレームに分割して送信されるため、共有情報フレームF4は複数送信されるが、その詳細については後述する。
【0026】
図4に示すように、共有情報更新要求フレームF1、共有情報検索要求フレームF2、共有情報検索応答フレームF3はそれぞれ同じ構成であるが、後述するSNAP(Type)によって、異なる意味を有する。
【0027】
共有情報更新要求フレームF1は、受信したバージョン情報23より古いバージョン情報23の共有情報を保持している端末が、新しいバージョン情報23の共有情報を保持している端末に対して、新しいバージョンの共有情報の送信を要求するためのフレームである。
【0028】
共有情報検索要求フレームF2は、送信された複数の共有情報フレームF4全てを受信できなかった端末が送信するフレームであって、送信された複数の共有情報フレームF4のうち、各自端末がいずれの共有情報フレームF4を保持しているまたは保持していないかを通知するためのフレームである。
【0029】
また、共有情報検索応答フレームF3は、共有情報検索要求フレームF2を受信した各端末が送信するフレームであって、送信された複数の共有情報フレームF4のうち、自端
末がいずれの共有情報フレームF4を保持しているまたは保持していないかを通知するフレームである。
【0030】
共有情報検索要求フレームF2を送信した端末は、共有情報検索応答フレームF3を受信することによって、所望のバージョンの何番目の共有情報フレームF4を、どの端末が保持しているかを把握することができる。これにより、各端末は、共有情報更新要求フレームF1をどの端末に送信するのが最適かを判断することができる。共有情報更新要求フレームF1には、送信された複数の共有情報フレームF4のうち自端末がいずれの共有情報フレームF4を保持しているまたは保持していないかを示す情報を搭載している。この結果、共有情報更新要求フレームF1を受信した端末は、送信された複数の共有情報フレームF4のうち必要最小限の共有情報フレームF4のみを選択的に送信することができる。
【0031】
共有情報更新要求フレームF1は、公知のMAC Header、SNAP(Type)、FCS を備えている。また、共有情報更新要求フレームF1は、バージョン情報23、フレーム総数31、極性33、対象フレーム情報35を備えている。なお、共有情報更新要求フレームF1、共有情報検索要求フレームF2、共有情報検索応答フレームF3はそれぞれ同じ構成であるため、共有情報更新要求フレームF1についてのみ説明し、他のフレームについては符号を同一にしてその詳細な説明を省略する。
【0032】
フレーム総数31は、送信される複数の共有情報フレームF4の総数であって、極性33は、送信される複数の共有情報フレームF4の保持状態を表す情報の極性を表すが、その詳細については後述する。対象フレーム情報35は、自端末が、複数の共有情報フレームF4のうちいずれのフレームを保持しているか否かを示す情報であって、情報数41、複数の更新情報43を備えている。情報数41は、更新情報43の個数であって、情報数41の値が0の場合は、更新情報43も0個である。更新情報43は、オフセット51、長さ情報53、ビットマップ55を備えている。オフセット51は、複数の共有情報フレームF4のうち、保持しているか否かを示す対象の最初のフレーム番号を示し、長さ情報53は、ビットマップ55のオクテット長である。
【0033】
従って、例えば、オフセット51が「10」、長さ情報53が「1」のとき、10〜17番目の共有情報フレームF4が対象となる。ビットマップ55は、オフセット51で指定したフレーム番号から長さ情報53で指定した値×8フレーム分の共有情報フレームF4の情報である。そして、例えば、オフセット51が「10」、長さ情報53が「1」のとき、ビットマップ55のビット位置0は10番目の共有情報フレームF4を示す。同様に、ビットマップ55のビット位置1は11番目の共有情報フレームF4を示す。
【0034】
そして、極性33の値は、ビットマップ55の各ビット値が保持していることを示すのか、非保持であることを示すのか決定する。つまり、極性33の値とビットマップ55の各ビット値とから、自端末がいずれの共有情報フレームF4を保持しているのか判断することができる。
【0035】
詳述すると、極性33の値が「0」であって、ビットマップ55の各ビット値が「1」のとき、端末は、その各ビットに対応するフレーム番号の共有情報フレームF4を非保持であり、ビットマップ55の各ビット値が「0」のとき、端末は、その各ビットに対応するフレーム番号の共有情報フレームF4を保持していることを示す。また、更新情報43中に示していないフレーム番号の共有情報フレームF4は保持済みであることを示す。
【0036】
一方、極性の値が「1」であって、ビットマップ55の各ビット値が「1」のとき、端末は、その各ビットに対応するフレーム番号の共有情報フレームF4を保持しており、ビ
ットマップ55の各ビット値が「0」のとき、端末は、その各ビットに対応するフレーム番号の共有情報フレームF4を非保持であることを示す。また、更新情報43中に示していないフレーム番号の共有情報フレームF4は非保持であることを示す。
【0037】
この極性33は、複数の共有情報フレームF4のうち保持フレーム数、非保持フレーム数のいずれが多いかによって、共有情報更新要求フレームF1(共有情報検索要求フレームF2、共有情報検索応答フレームF3)のフレームサイズが最小になるように選択される。
【0038】
そして、共有情報更新要求フレームF1に対して、共有情報フレームF4がブロードキャストで送信される。共有情報フレームF4は、図5に示すように、公知のMAC Header、SNAP(Type)、FCS を備えている。さらに、共有情報フレームF4は、バージョン情報23、フレーム番号61、フレーム総数31、共有情報65を備えている。フレーム番号61は、その共有情報フレームF4が、共有情報を構成する複数の共有情報フレームF4のうち何番目であるかであって、フレーム総数31は、共有情報を構成する複数の共有情報フレームF4の総数である。また、共有情報65は、複数のフレームに分割された共有情報のうち、前記フレーム番号61に対応した共有情報である。
【0039】
また、本実施形態では、複数の共有情報フレームF4のうち、途中で受信できなくなったり、送信中に欠落した共有情報フレームF4があり、全ての共有情報を更新できなかった場合に処理を中断などするために、図示しない共有情報フレーム受信待ちタイマー(以下、受信待ちタイマー)を設けている。そして、共有情報フレームF4の送信開始と共に受信待ちタイマーを起動し、全ての共有情報フレームF4を受信したときに、その受信待ちタイマーを停止する。全ての共有情報フレームF4を受信していないとき、端末は受信待ちタイマーが所定の値になるまで待機し、受信待ちタイマーが所定の値を超えたとき、端末は受信失敗と判断する。
【0040】
次に、各端末A〜Eの共有情報更新処理を図6〜図8に従って説明する。なお、本実施形態では、各端末A〜Eは共有情報更新処理を実行する前に、IEEE802.11に準拠したシーケンスで認証、アソシエーション等が実行され、各種データの授受ができる状態であるとする。
【0041】
(バージョンアップ処理)
共有情報が更新される場合の共有情報更新処理について図6に従って説明する。端末Aの共有情報が更新されると、端末Aはプローブ要求をブロードキャストで送信することによって、端末Aが保持する共有情報のバージョン情報23を送信する(ステップS1−10)。これにより、アドホックネットワークの場合において、ビーコン送信調停時に、ビーコンが送信できない場合があってもセルN1内にバージョン情報23を通知することができる。
【0042】
また、ブロードキャストで送信することによって、共有情報が更新されたことがセルN1内の全ての端末に一度に通知される。なお、端末Aの共有情報が更新され、プローブ要求を送信すると、その後、端末Aが送信するビーコンのSSIDフィールド21にも更新されたバージョン情報23が搭載される。そして、共有情報を更新した後のビーコン送信調停時に、端末Aがビーコンを送信できるときは、ビーコンを送信することによって、セルN1内に端末Aが保持する共有情報のバージョン情報23が送信される。
【0043】
これにより、例えば、新しい共有情報を保持する端末が複数あったとき、ビーコンを送信した端末を、共有情報を送信する端末とすることができる。これにより、新しい共有情報を保持する端末が同一セルN1内に複数ある場合に、共有情報を送信する端末を決定す
る調停メカニズムを、ビーコンを送信するメカニズムに合わせることができる。従って、同一セル内に新しい共有情報を保持する端末が複数ある場合に、共有情報を送信する端末を決定するメカニズムを新たに設ける必要がない。
【0044】
セルN1内の端末Bは、端末Aが送信したプローブ要求を受信するとプローブ要求内のバージョン情報23を確認し、自己が保持する共有情報のバージョン情報23と比較する(ステップS1−15)。そして、端末Aの送信したバージョン情報23が自己の保持する共有情報のバージョン情報23より新しいとき、端末Bは、共有情報更新要求フレームF1(図4参照)を端末Aに送信する。このとき、端末Bは端末Aへユニキャストで送信することによって、共有情報フレームF4の送信元を特定する。
【0045】
また、このとき、共有情報更新要求フレームF1には共有情報フレームF4全て非保持であるという情報が搭載されている。共有情報更新要求フレームF1を受信した端末Aは、端末Bに複数の共有情報フレームF4をフレーム毎に送信する。そして、端末Bが全ての共有情報フレームF4を受信でき、最後に受信した共有情報フレームF4のフレーム番号61とフレーム総数31とが一致することを確認することによって、端末Bが全ての共有情報フレームF4の受信を完了したと判断したときに、共有情報の更新を実行する。共有情報の更新後、端末Bはプローブ要求をブロードキャストで送信することによって、端末Aは端末Bの持つ共有情報のバージョン情報23を受信し、同端末Bの共有情報更新処理を終了する。
【0046】
一方、端末Bが、自己の保持する共有情報のバージョン情報23より端末Aから通知されたバージョン情報23の方が古いと判断したとき(ステップS1−20)、端末Bは端末Aに自己の保持している共有情報のバージョン情報23を、プローブ要求によって通知する(ステップS1−25)。
【0047】
このプローブ要求を受信することによって、端末Aは新しいバージョン情報23を検知し(ステップS1−30)、端末Bに共有情報更新要求フレームF1を端末Aへユニキャストで送信する(ステップS1−35)。これにより、端末Bから端末Aへ共有情報フレームF4が送信される(ステップS1−40)。そして、端末Aが全ての共有情報フレームF4を受信でき、最後に受信した共有情報フレームF4のフレーム番号61とフレーム総数31とが一致することを確認することによって、端末Aが全ての共有情報フレームF4の受信を完了したと判断したときに、共有情報の更新を実行する(ステップS1−45)。
【0048】
共有情報の更新後、端末Aはプローブ要求をブロードキャストで送信することによって(ステップS1−50)、端末Bは端末Aの持つ共有情報のバージョン情報23を受信し、同端末Aの共有情報更新処理を終了する。
【0049】
この共有情報更新処理によれば、共有情報の更新のために新たに機構を加えることなく、無線経路を利用してIEEE802.11に準拠したシーケンスに基づいて共有情報を更新することができる。また、自律分散的に更新情報を周囲の端末に送信するための手段としてビーコンを利用することができる。すなわち、最新の共有情報を保持し、ビーコンを送信する端末であれば、最初に手動で共有情報を更新した端末でなくても共有情報を送信することができる。この結果、図1に示すように、端末Dが最新の共有情報を保持し、ビーコンを送信する端末であれば、セルN1のみならずセルN2の端末Eの共有情報も更新することができる。同様に、セルN1,N2にそれぞれ隣接するセルに存在する端末の共有情報を更新することができる。また、例えば、最初に手動で共有情報を更新した端末が、セルN1の外に出てしまったときであっても、最新の共有情報を持つ他の端末によってセルN1内の各端末の共有情報を更新することができる。さらに、それぞれの端末がお
互いにバージョン情報23を通知し合い、常に全ての端末が最新の共有情報を保持することができる。
【0050】
(取りこぼし処理)
次に、複数の共有情報フレームF4のうち送信できなかった、または受信できなかった(以下、取りこぼしという)共有情報フレームF4があった場合の処理について図7に従って説明する。
【0051】
端末Aの共有情報が更新されると、端末Aはプローブ要求をブロードキャストで送信することによって、端末Aが保持する共有情報のバージョン情報23を送信する(ステップS1−10)。端末Bは、端末Aが送信したビーコンまたはプローブ要求内のバージョン情報23を確認し、自己が保持する共有情報のバージョン情報23と比較する(ステップS1−15)。そして、端末Bは、共有情報更新要求フレームF1を端末Aへユニキャストで送信する(ステップS2−10)。
【0052】
そして、端末Aから端末Bへ共有情報フレームF4が送信され(ステップS2−15)、複数の共有情報フレームF4の送信途中で、送信途中のn番目の共有情報フレームF4の取りこぼしがあったとする(ステップS3−10)。端末Bは、最終番目の共有情報フレームF4を受信後、受信待ちタイマーが所定の値を超えたとき、共有情報フレームF4の受信失敗と判断する(ステップS3−15)。このとき、端末Bは全ての共有情報フレームF4を受信できなかったので、共有情報を更新しない。その後、端末Bは、リカバリ処理を実行する。
【0053】
(リカバリ処理)
リカバリ処理とは、複数の共有情報フレームF4のうち途中の共有情報フレームF4を取りこぼしたとき、その取りこぼした共有情報フレームF4の再送を要求するための処理であって、図8に示すようなシーケンスに基づいて処理が実行される。
【0054】
なお、本実施形態では、端末Aが端末B,C,Dに共有情報を送信し、端末B〜Dの受信したデータにはそれぞれ取りこぼしが発生しているにも関わらず、端末AがセルN1から出てしまっており、セルN1内に端末B〜Dが更新中のバージョンの複数の共有情報フレームF4を完全に保持している端末がないとする。また、取りこぼした共有情報フレームF4は、端末Bが1,6〜9番目、端末Cが5〜9番目、端末Dが1〜4番目の共有情報フレームF4であるとする。
【0055】
まず、端末Dがブロードキャストで共有情報検索要求フレームF2(図4参照)を送信する(ステップS4−10)。このとき、端末Dが送信した共有情報検索要求フレームF2には、1〜4番目の共有情報フレームF4が不足していることが表示されている。また、端末Dはブロードキャストで送信しているため、この共有情報検索要求フレームF2を受信した端末B,Cは、端末Dの不足している共有情報フレームF4の番号と共に端末Dが保持している共有情報フレームF4の番号を取得することができる。すなわち、端末Bは端末Dから6〜9番目の共有情報フレームF4を受信可能であることを(ステップS4−15)、端末Cは端末Dから5〜9番目の共有情報フレームF4を受信可能であることを(ステップS4−20)取得することができる。なお、このとき、共有情報検索要求フレームF2には、同共有情報検索要求フレームF2のフレーム長が最短になるように対象フレーム情報35が生成されている。
【0056】
そして、端末Cがブロードキャストで共有情報検索応答フレームF3(図4参照)を送信する(ステップS4−25)。このとき、端末Cが送信した共有情報検索応答フレームF3には、5〜9番目の共有情報フレームF4が不足していることが表示されている。こ
の結果、端末Bは端末Cから1番目の共有情報フレームF4を受信可能であることを(ステップS4−30)、端末Dは端末Cから1〜4番目の共有情報フレームF4を受信可能であることを(ステップS4−35)取得することができる。なお、このとき、共有情報検索応答フレームF3も同様に、同共有情報検索応答フレームF3のフレーム長が最短になるように対象フレーム情報35が生成されている。
【0057】
さらに、端末Bがブロードキャストで共有情報検索応答フレームF3(図4参照)を送信する(ステップS4−40)。このとき、端末Bが送信した共有情報検索応答フレームF3には、1,6〜9番目の共有情報フレームF4が不足していることが表示されている。この結果、端末Cは端末Bから5番目の共有情報フレームF4を受信可能であることを(ステップS4−45)、端末Dは端末Bから2〜4番目の共有情報フレームF4を受信可能であることを(ステップS4−50)を取得することができる。
【0058】
その後、各端末B〜Dは、それぞれ受信した共有情報検索要求フレームF2、共有情報検索応答フレームF3を基に、自己の不足しているフレーム番号の共有情報フレームF4を最も多く保持している端末に共有情報更新要求フレームF1(図4参照)をユニキャストで送信する。すなわち、端末Dは端末Cに対して1〜4番目の共有情報フレームF4を送信して欲しい旨の共有情報更新要求フレームF1を送信し(ステップS4−55)、端末Cから1〜4番目の共有情報フレームF4を受信する(ステップS4−60)。これにより、端末Cは、端末Dの必要とするフレーム番号の共有情報フレームF4のみ送信するので、最小のサイズで共有情報フレームF4を送信することができる。そして、端末Dは不足していた1〜4番目の共有情報フレームF4を全て受信すると、共有情報を更新する(ステップS4−65)。同様に、端末B,Cもそれぞれ受信した共有情報検索要求フレームF2、共有情報検索応答フレームF3を基に、自己の不足しているフレーム番号の共有情報フレームF4を最も多く保持している端末に共有情報更新要求フレームF1(図4参照)をユニキャストで送信する。そして、不足しているフレーム番号の共有情報フレームF4を全て受信後に共有情報を更新する。
【0059】
この結果、セルN1内に、複数の共有情報フレームF4のうち受信できなかった共有情報フレームF4のある端末が複数あっても、各端末は、各端末同士で共有情報検索要求フレームF2、共有情報検索応答フレームF3を送受信することによって、どの端末がどのフレームを保持しているかの情報を取得することができる。また、その情報を基に、端末同士で不足しているフレーム番号の共有情報フレームF4を補完し合って共有情報の更新処理を完成することができる。
【0060】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態によれば、ビーコンに共有情報のバージョン情報23を搭載したので、最新の共有情報を保持し、ビーコンを送信する端末であれば、どの端末であっても共有情報のバージョン情報23を送信することができ、そのバージョン情報23の送信を契機に共有情報更新処理を行うことができる。この結果、ビーコンが届く範囲の隣接するセル内の端末の共有情報も更新することができる。従って、自律分散的に共有情報の送信を持ちまわることができるため、共有情報の更新に要する手間を低減することができる。
【0061】
(2)本実施形態によれば、ビーコン、プローブ要求に共有情報のバージョン情報23を搭載したので、最新の共有情報を保持し、ビーコン、プローブ要求を送信する端末であれば、どの端末であっても共有情報のバージョン情報23を送信することができ、そのバージョン情報23の送信を契機に共有情報更新処理を行うことができる。この結果、セルN1内で共有情報の送信を持ちまわることができるため、例えば、最初に共有情報を更新した端末がセルN1から移動してしまったときであっても、他の端末が共有情報を送信することができる。
【0062】
(3)本実施形態によれば、ビーコン、プローブ要求に共有情報のバージョン情報23を搭載し、共有情報フレームF4にて共有情報を送受信したので、IEEE802.11準拠の端末にそのまま適応でき、かつ端末に接触することなく自動的に共有情報を更新できる。この結果、共有情報の更新に要する作業負担を軽減することができる。
【0063】
(4)本実施形態によれば、ビーコンに共有情報のバージョン情報23を搭載し、そのバージョン情報23が、各端末が保持する共有情報のバージョン情報23より新しいときのみ共有情報更新処理を行った。この結果、共有情報更新済みの端末が再度同じバージョン情報23の共有情報に更新されることがない。従って、不要な共有情報更新処理を低減することができる。
【0064】
(5)本実施形態によれば、各端末が共有情報を更新したとき、その更新した共有情報のバージョン情報23をプローブ要求によって送信した。この結果、例えば、その共有情報を更新した端末に、ビーコンを送信する順番がすぐに来ないときであっても、確実に新しいバージョン情報23をセルN1内に通知することができる。
【0065】
(6)本実施形態によれば、共有情報フレームF4はブロードキャストフレームであるので、同時に複数台の端末に対して共有情報を送信することができる。
(7)本実施形態によれば、セルN1内の全ての端末から共有情報を送信することが可能であるため、セルN1内の全端末に、常に最新のバージョンの共有情報を保持させることができる。
【0066】
(8)本実施形態によれば、セルN1内の各端末が共有情報を断片的にしか持っていない場合であっても、各端末が共有情報検索要求フレームF2、共有情報検索応答フレームF3を送信することによって、お互いに更新に必要な共有情報を補完しあうことができるリカバリ処理を実行する。この結果、確実に共有情報を更新することができる。
【0067】
(9)本実施形態によれば、リカバリ処理の際に、共有情報検索要求フレームF2、共有情報検索応答フレームF3を送信することによって各端末が保持している共有情報フレームF4の情報を通知し合う。この結果、複数の共有情報フレームF4のうち不足している共有情報フレームF4を送受信するだけで済むので、送受信する情報量を最小に抑えられる。従って、無駄な帯域占有を低減すると共に、送受信に要する電力を低減することができる。
【0068】
(10)本実施形態によれば、共有情報検索要求フレームF2、共有情報検索応答フレームF3はブロードキャストで送信されるため、複数の端末が共有情報のバージョン情報23と、各端末の共有情報フレームF4の保持情報を同時に取得することができる。
【0069】
(11)本実施形態によれば、共有情報更新要求フレームF1を受信したときのみ共有情報フレームF4の送信を行う。この結果、例えば、アドホックネットワークのようにコネクションレス型のネットワーク形態において、不要な帯域占有を避けられる。
【0070】
(12)本実施形態によれば、共有情報の更新は、IEEE802.11準拠のシーケンスに則って実行されているため、共有情報フレームF4を送信中であっても、共有情報と関係ない情報を搭載したフレームを送信することができる。従って、共有情報を更新しながらも通常の通信を実施することができる。
【0071】
実施形態は、上記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○上記実施形態では、リカバリ処理は、送信された複数の共有情報フレームF4に取り
こぼしがあった端末に対して行った。これを、共有情報フレームF4が送信されている最中にセルN1に参加した(以下、途中参加という)端末に対して行ってもよい。
【0072】
詳述すると、図9に示すように、端末B,Cに対して端末Aが複数の共有情報フレームF4を送信している途中で、共有情報を未更新の端末DがセルN1に参加し、データ送受信可能な状態になったとする。端末Aはブロードキャストで共有情報フレームF4を端末B,Cに送信する(ステップS5−5)。m番目の共有情報フレームF4の送信途中で、新たな端末Dが参加すると(ステップS5−10)、その新たな端末Dはm番目の共有情報フレームF4を送信しているときから受信する(ステップS5−15)。共有情報フレームF4内にもバージョン情報23が搭載されているので、共有情報フレームF4の送信途中で参加した場合であっても、既に開始されている共有情報更新処理において更新される共有情報のバージョン情報を把握し、共有情報の更新が必要であれば、その共有情報更新処理に参加することができる。
【0073】
そして、端末Dは、端末Aから最終番目の共有情報フレームF4を受信すると(ステップS5−20)、受信待ちタイマーが所定の値を超えるまで待機する。この後、受信できなかったフレームを受信するためのリカバリ処理を行う。この結果、例えば、アドホックネットワークのように、常に決められた無線LAN端末がセル内に固定されているとは限らず、共有情報フレームF4を送信中にセルを出入りする端末があるときであっても、確実に共有情報を更新することができる。また、セル間を移動した際にも、移動先で共有情報を更新することができる。
【0074】
○上記実施形態では、更新処理中に共有情報フレームF4を送信していた端末AがセルN1から出てしまって、当該セルN1内に更新中のバージョンの共有情報を完全に保持している端末がない場合についてのリカバリ処理を説明した。これを、図10に示すように、端末A以外に共有情報を完全に保持している端末が存在していたときもリカバリ処理を実行してもよい。
【0075】
すなわち、端末Bが更新処理中に、端末Bに共有情報フレームF4を送信した端末AがセルN1から出てしまっているが、その更新処理中のバージョンの複数の共有情報フレームF4全てを端末Cが保持していることを、端末Cがブロードキャストで送信したビーコンまたはプローブ要求から、端末Bが検知した場合にリカバリ処理を行ってもよい。
【0076】
端末Cがブロードキャストまたはプローブ要求を送信すると(ステップS1−10)、端末Bは、端末Bが更新中のバージョンの共有情報を端末Cが保持していることを検知する。そして、端末Bは、不足フレーム番号を搭載した共有情報更新要求フレームF1を端末Cに対してユニキャストで送信する(ステップS6−10)。その後、端末Cから端末Bへ共有情報フレームF4が送信され、端末Bは全ての共有情報フレームF4を受信すると、更新処理を行う。
【0077】
この結果、複数の共有情報フレームF4全てを受信できなかったとき、複数の端末間で互いに共有情報フレームF4を補完し合うことにより、複数の共有情報フレームF4全てを受信する。従って、一層確実に共有情報を更新することができる。
【0078】
○上記実施形態では、更新処理中に共有情報フレームF4を送信していた端末AがセルN1から出てしまって、当該セルN1内に更新中のバージョンの共有情報を完全に保持している端末がない場合についてのリカバリ処理を説明した。これを、一方の端末が保持していない共有情報を他方の端末が保持している場合に、2つの端末間で共有情報を補完するようにリカバリ処理を行ってもよい。
【0079】
詳述すると、図11に示すように、共有情報未更新の端末B,Cがあり、フレーム総数31は「9」であり、端末Bは3〜9番目の共有情報フレームF4を、端末Cは1〜5番目の共有情報フレームF4を保持しているとする。端末Bは端末Cに対して共有情報検索要求フレームF2をブロードキャストで送信する(ステップS7−10)。これにより、端末Cは、端末Bが3〜9番目の共有情報フレームF4を保持しているという情報を取得できる。そして、端末Cは、共有情報検索応答フレームF3をブロードキャストで送信する(ステップS7−15)。これにより、端末Bは端末Cが1,2番目の共有情報フレームF4を保持しているという情報を取得できる。次に、端末Bは、端末Cに対して共有情報更新要求フレームF1をユニキャストで送信し(ステップS7−20)、端末Cは、端末Bに対して1,2番目の共有情報フレームF4を送信する(ステップS7−25)。端末Bは全ての共有情報フレームF4を受信すると、共有情報を更新する(ステップS7−30)。
【0080】
次に、端末Cは、端末Bに対して共有情報更新要求フレームF1をユニキャストで送信し(ステップS7−35)、端末Bは、端末Cに対して6〜9番目の共有情報フレームF4を送信する(ステップS7−40)。端末Bは全ての共有情報フレームF4を受信すると、共有情報を更新する(ステップS7−45)。この結果、複数の共有情報フレームF4全てを受信できなかったとき、複数の端末間で互いに共有情報フレームF4を補完し合うことにより、複数の共有情報フレームF4全てを受信する。従って、一層確実に共有情報を更新することができる。
【0081】
○上記実施形態では、自己の保持する共有情報のバージョン情報23より古いバージョン情報23をビーコンまたはプローブ要求を送信した端末が保持していることを確認した場合、プローブ要求を送信元の端末に送信し、その端末に新しいバージョン情報23の存在を検知させ、共有情報更新処理を行った。これを、共有情報更新処理中にセルに途中参加した端末が送信したビーコン、プローブ要求、共有情報検索要求フレームF2、共有情報検索応答フレームF3、共有情報フレームF4等から、その更新中の共有情報のバージョン情報23より新しいバージョン情報23を検知し、共有情報を更新してもよい。
【0082】
詳述すると、図12に示すように、共有情報決定処理が行われ、端末Aから端末Bに共有情報フレームF4がブロードキャストで送信されているとする(ステップS5−5)。このとき、端末Aの保持している共有情報より新しいバージョンの共有情報を持つ端末DがセルN1に参加したとする(ステップS8−10)。そして、この端末Dがビーコン、もしくはプローブ要求で端末Bに更新処理中の共有情報のバージョンより新しいバージョンの共有情報の存在を検知させる(ステップS8−15)。端末Bは、端末Dから新しいバージョンの共有情報を検知したとき(ステップS8−20)、p番目の共有情報フレームF4以降、端末Aからの共有情報フレームF4を破棄する(ステップS8−25)。そして、端末Bは端末Dに共有情報更新要求フレームF1を送信し(ステップS8−30)、端末Dから全ての共有情報を受信し、共有情報を更新する。
【0083】
この結果、更新処理中であっても、新しいバージョンの共有情報を検知したときはその新しいバージョンの共有情報に基づいて共有情報更新処理を行うので、各端末は常に最新の共有情報を保持することができる。また、セル間を移動した際にも、移動先のアドホックネットワークの端末に新たなバージョンの共有情報を更新させることができる。
【0084】
○上記実施形態では、アドホックネットワーク内の無線LAN端末同士での共有情報更新処理について説明した。これを、無線通信網としてのインフラネットワーク内の無線LAN端末同士の更新処理、無線LAN端末から端末としてのアクセスポイントへの共有情報更新処理に適用してもよい。この場合であっても、手動でアクセスポイントの共有情報を更新後、ビーコンの送信に伴い共有情報のバージョン情報23をセル内に通知し、共有
情報を更新することができる。また、プローブ要求によってもバージョン情報23を通知することができるので、それを契機に、例えば、インフラネットワークの無線LAN端末からアクセスポイントへ最新の共有情報を送信することができる。この結果、移動先のアクセスポイントにも無線LAN端末から最新の共有情報を送信することができる。また、インフラネットワークにおいて、同様にプローブ要求の送信を契機にアクセスポイントから周辺のアクセスポイントへ最新の共有情報を送信することができる。
【0085】
○上記実施形態では、SSIDフィールド21内にバージョン情報23を搭載し、このSSIDフィールド21を含んだビーコン、プローブ要求等を送受信することによって、共有情報のバージョン情報23を通知した。これを、SSIDフィールド21内に共有情報のバージョン情報23を搭載せずに、共有情報のバージョン情報23を通知するためのバージョン情報通知フレームとしてのバージョン通知フレームF5を設けてもよい。詳述すると、図13に示すように、バージョン通知フレームは、IEEE802.11に規定されたデータフレーム内にバージョン情報23を備えている。そして、図14に示すように、各端末A〜Eは、ビーコンまたはプローブ要求を送信後、SIFS(Short Interframe Space)間隔でバージョン通知フレームF5を送信することによって、各端末が保持する共有情報のバージョン情報23を通知する。このとき、SIFS間隔でバージョン通知フレームF5を送信するため、他のフレーム間隔より優先度が高いことから、他のフレームに割り込まれることなく、バージョン通知フレームF5を送信することができる。これにより、上記実施形態と同様の効果を得ながらも、共有情報更新処理を実行する機能を有していないIEEE802.11準拠の無線通信端末との混在ネットワーク環境を構築することができる。
【0086】
○上記実施形態では、SSIDフィールド21内にバージョン情報23を搭載し、このSSIDフィールド21を含んだビーコン、プローブ要求等を送受信することによって、共有情報のバージョン情報23を通知した。これを、図15に示すように、ビーコン、プローブ要求フレーム内のインフォメーションエレメント(Information Element )にベンダーユニークなID(固有の識別子)を定義し、そのフレームのContentsにバージョン情報23を搭載してもよい。すなわち、Element ID=221の場合にはWPA ID(Wireless Protected Access ID)を示すが、Contentsの先頭が00:50:F2:01以外の値であるときはベンダーユニークな情報として取り扱われることを利用して、ContentsにContents ID とバージョン情報23を搭載する。これにより、上記実施形態と同様の効果を得ながらも、共有情報更新処理を実行する機能を有していないIEEE802.11準拠の無線通信端末との混在ネットワーク環境を構築することができる。
【0087】
○上記実施形態では、共有情報は一種類であったが、複数種類であってもよい。このとき、バージョン情報23に共有情報の識別子を含むことによって、複数種類の共有情報のバージョン情報23を管理することができる。
【0088】
○上記実施形態では、端末内の記憶部16に共有情報を格納し、実行時には、その共有情報をワークメモリ15に展開して実行した。これを、端末が外部インタフェース14を経由してホストシステムに接続されている場合は、端末に記憶部16を備えずに、ホストシステム内に備えた記憶部に共有情報やそのバージョン情報23を記憶してもよい。このとき、共有情報は、端末が共有情報を実行時に外部インタフェース14を経由してホストシステムの記憶部から共有情報が同端末に転送され、ワークメモリ15に展開して実行される。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本実施形態のアドホックネットワークの概略説明図。
【図2】同じく、端末のブロック図。
【図3】同じく、SSIDフィールドの構成図。
【図4】同じく、共有情報更新要求フレーム、共有情報検索要求フレーム、共有情報検索応答フレームの構成図。
【図5】同じく、共有情報フレームの構成図。
【図6】同じく、バージョンアップ処理のシーケンス。
【図7】同じく、取りこぼし処理のシーケンス。
【図8】同じく、リカバリ処理のシーケンス。
【図9】別例の途中参加処理のシーケンス。
【図10】同じく、リカバリ処理のシーケンス。
【図11】同じく、リカバリ処理のシーケンス。
【図12】同じく、更新情報送信中のバージョンアップ処理のシーケンス。
【図13】同じく、バージョン通知フレームの構成図。
【図14】同じく、バージョン通知フレームの送信タイミングの説明図。
【図15】同じく、バージョン情報を搭載したフレームの構成図。
【符号の説明】
【0090】
A,B,C,D,E…端末、F1…共有情報更新要求フレーム、F2…共有情報検索要求フレーム、F3…共有情報検索応答フレーム、F4…共有情報フレーム、F5…バージョン通知フレーム、N1,N2…セル、23…バージョン情報、65…共有情報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの無線通信網を通じて前記少なくとも1つの無線通信網内の複数の端末がそれぞれ保持する共有情報を更新する共有情報更新方法であって、
前記複数の端末のうち1の端末が保持する共有情報のバージョン情報を前記複数の端末に送信し、
前記複数の端末が保持する共有情報のバージョン情報と受信したバージョン情報とをそれぞれ比較し、
前記複数の端末のうち前記受信したバージョン情報より新しいバージョン情報の共有情報を保持する端末が、当該共有情報を前記1の端末に送信し、
前記1の端末は、同端末が保持する共有情報を前記新しいバージョン情報の共有情報に更新することを特徴とする共有情報更新方法。
【請求項2】
請求項1に記載の共有情報更新方法であって、
前記共有情報のバージョン情報を、マネージメントフレーム内の情報要素として搭載し、
前記複数の端末は、それぞれ前記マネージメントフレームを送信することによって、前記共有情報のバージョン情報を互いに通知することを特徴とする共有情報更新方法。
【請求項3】
請求項1に記載の共有情報更新方法であって、
前記複数の端末は、マネージメントフレーム送信後、SIFS間隔経過後に前記共有情報のバージョン情報を搭載したバージョン情報通知フレームをそれぞれ送信することによって、前記共有情報のバージョン情報を互いに通知することを特徴とする共有情報更新方法。
【請求項4】
請求項1に記載の共有情報更新方法であって、
マネージメントフレーム内のインフォメーションエレメントに定義された固有の識別子を持つマネージメントフレームの情報要素に前記共有情報のバージョン情報を搭載し、
前記複数の端末は、それぞれ前記マネージメントフレームを送信することによって、前記バージョン情報を互いに通知することを特徴とする共有情報更新方法。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の共有情報更新方法であって、
前記マネージメントフレームはビーコンもしくはプローブ要求であることを特徴とする共有情報更新方法。
【請求項6】
請求項1に記載の共有情報更新方法であって、
前記新しいバージョン情報の共有情報を保持する端末は前記新しいバージョン情報の共有情報を複数のフレームに分割して送信し、
前記1の端末が前記複数のフレームの少なくとも1つを受信できなかったとき、前記複数の端末間で前記複数のフレームの少なくとも1つを補完し合うことにより、前記複数のフレームを全て受信することを特徴とする共有情報更新方法。
【請求項7】
請求項6に記載の共有情報更新方法であって、
前記1の端末が前記複数のフレームの少なくとも1つを受信できなかったとき、前記複数の端末間で前記複数のフレームの保持情報を互いにブロードキャストで送信し、
前記保持情報を基に、前記複数の端末がそれぞれ保持していないフレームのみ前記複数の端末間で補完し合うことにより、前記複数のフレームを全て受信することを特徴とする共有情報更新方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−13649(P2007−13649A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192432(P2005−192432)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】