説明

共沈された混合酸化物で処理された二酸化チタン顔料の製法

複数の無機酸化物又は1以上の無機酸化物と1以上の無機リン酸塩の組み合わせが、塩化物プロセス又は硫酸塩プロセスからの二酸化チタンベース顔料に施与される表面処理を含む、簡単で改良された、二酸化チタン顔料を調製する方法が提供される。所望の無機酸化物及び/又はリン酸塩の酸水溶液溶解性の源が、酸水溶液に予め溶解され、これが、バッチもしくは好ましくは連続工程で、予めもしくは同時に、所望の無機酸化物のアルカリ水溶液溶解性の源が添加されている二酸化チタンベース顔料を含むアルカリ性スラリに添加される。酸化物及び/又は酸化物とリン酸塩の共沈が、pHの調整により完結され、共沈された酸化物混合物及び/又は酸化物とリン酸塩の、優れた均一性を備える表面処理された顔料を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共沈された無機酸化物の混合物又は酸化物/りん酸塩混合物での表面処理を含む、二酸化チタン顔料の製造方法に関する。得られる顔料は、コーティング、紙及びプラスチックを含む多くの産業で有用である。
【背景技術】
【0002】
二酸化チタンは、乳白剤及び着色剤として、コーティング、プラスチック、及び製紙産業を含む多くの産業で使用されている。一般に、それらの用途における顔料の効果は、コーティング、プラスチック又は紙中に如何に均一に分散されるかに依存する。そのため、顔料は細かく分けられた粉末の形態で取り扱われる。しかし、二酸化チタン粉末は、本質的に埃っぽく、しばしば、特に配合、コンパウンディング、及び消費財(エンドユース)の製造、において乏しい粉末流動性を示す。既存の製造方法により、粉末流動性が良く、埃っぽくない粉末を得ることができるが、それらの粉末は、通常、減じられた乳白特性を示す。
【0003】
このため、二酸化チタン顔料表面を修飾する化学的方法が研究され、顔料の乳白性及び流動特性の所望のバランスが達成された。例えば、二酸化チタン顔料の濡れ及び分散特性は、二酸化チタン中間体(硫酸塩又は塩化物プロセスのいずれによっても製造される)を、無機金属酸化物及び/又は金属水酸化物のコーティングを二酸化チタンの表面に析出させることによる無機処理をすることによって向上することができることが知られている。典型的には、これらの処理は、下記方法により達成される。
(1)中間体(又は粗製)物質を、分散剤、例えばポリリン酸塩、を用いて水性媒体中に分散し、
(2)所望により、得られるスラリを湿式粉砕して、所望の粒子サイズにし、
(3)1又は2以上の無機酸化物、例えばシリカ又はアルミナ、を二酸化チタンスラリの粒子表面上に沈殿させ、
(4)無機酸化物処理された二酸化チタン顔料を水性スラリからろ過によって回収し、
(5)ろ過された生成物を洗浄して、塩及び不純物を除去し、
(6)ろ過され、洗浄された製品を乾燥し、及び
(7)該乾燥された顔料を流体エネルギー粉砕器を用いて乾式粉砕する。
【0004】
典型的には、1以上の無機酸化物により処理される顔料について、ステップ(3)による無機酸化物の湿式析出は、順次、一の無機酸化物毎に、完結される。しかし、二酸化チタン顔料中間体を共沈無機酸化物混合物により化学的処理することも知られている。実施すべき無機表面処理の合計数が減ること以外に、共沈無機酸化物混合物を有する二酸化チタン顔料は、同じ無機酸化物が順次添加された顔料と比べて、異なる振る舞いをする。
【0005】
多くの文献が、共沈無機酸化物混合物で表面処理された二酸化チタン顔料を記載又は少なくとも示唆する。例えば、米国特許第2,913,419号は、濃いシリカを含む、pH5から12の間で、不溶性シリケートを形成する、アルミニウム、錫、チタン、亜鉛及びジルコニウムを含む、金属シリケート及び/又は酸化物からなる群より選ばれる共析出シリケート及び/又は金属酸化物で表面処理された二酸化チタン粒子を含む、広範な粒子を開示する。
【0006】
米国特許第3,513,007号は、二酸化チタン顔料粒子を水性媒体中で、懸濁液のpHを6〜10に維持しつつ、第一に、珪素、チタン、ジルコニウム、及びリン酸塩の水溶性加水分解性化合物からなる群より選ばれる少なくとも一の化合物で、及び、第二に、アルミニウム、セリウム、カルシウム、又はそれらの混合物の水溶性加水分解性化合物からなる群より選ばれる少なくとも一の化合物で、2つの連続するステップで、二酸化チタン顔料粒子をコーティングするための向上された方法を開示する。該発明に従い製造された顔料は、塗料に配合された場合に、高い着色力及び光沢を示すとされている。
【0007】
英国特許第1,256,421号は、既に、チタン、アルミニウム、セリウム、珪素、亜鉛、ジルコニウムの酸化物もしくは水酸化物又はリン酸塩によって処理されている金属酸化物粒子を、加水分解性アルミニウム塩のアルカリ性水性溶液で処理して、第2のアルミナコーティングを施与する、改良された方法を記載する。最初の混合酸化物コーティングの特定の例は、チタニア/アルミナ又はジルコニア/アルミナを含む。該処理は、顔料の改良された耐久性及び光沢特性を与えるとされている。
【0008】
米国特許第3,649,322号は、水和酸化珪素と水和酸化アルミニウムを、水性スラリ中の二酸化チタン上に共沈させることによってアルミニウムシリケートの緻密なコーティングを形成して、調製され、コーティング組成物中での高い着色力及び耐久性が組み合わされた、アルミニウムシリケートで包まれた二酸化チタン顔料を開示する。緻密なアルミニウムシリケートコーティングが単一工程で施与された場合には、顔料は酸化アルミニウムでさらに処理される。
【0009】
米国特許第3,825,438号は、二酸化チタン顔料を水和金属酸化物の少なくとも一つでコーティングする方法であって、二酸化チタン顔料の水性分散物とアルミニウム、チタン、セリウム、ジルコニウム、珪素及び亜鉛からなる群より選ばれる金属の水溶性加水分解性化合物の少なくとも一つと混合するステップ、次いで、分散物に、二以上の水酸基と2〜8の炭素原子を含む多価アルコールを添加するステップ、及び、最後に該分散物のpHを変えることによって二酸化チタン粒子の表面に金属酸化物無水物を沈殿させるステップを含む方法を開示する。実施例は、硫酸チタン及び硫酸アルミニウムの混合溶液から導かれる共沈処理を教示する。該発明の方法で製造された顔料は、塗料、プラスチック、及び紙を含む広範な製品に使用できる。
【0010】
米国特許第4,052,224号は、最初にアルミニウム、ジルコニウム及びチタンの水溶性化合物の混合溶液を用いて処理し、次いで、リン酸アルミニウムにより最終無機表面処理を付与して、二酸化チタン顔料を処理する方法を論じる。得られる顔料は、減じられた光化学活性を有する塗料の製造及び紙ラミネートの製造に特に有用であると記載されている。
【0011】
米国特許第4,115,144号は、水中で所望の金属酸化物混合物の形態として沈殿するもしくは、金属酸化物混合物の形態に変換可能である水溶性化合物を溶解するステップ、次いで、この溶液を二酸化チタンの水性分散物に添加するステップ、及び、水酸化ナトリウムを添加してアルカリ性条件下で、金属酸化物を沈殿させるステップを通る、金属酸化物(例えば、アルミナ及びチタニア)の二酸化チタン顔料上への共沈を記載する。ろ過及び洗浄の後に、被覆され及び洗浄された二酸化チタンが、アルカリ条件の水の存在下で、熱エージングされる。該エージング工程は、工程上の困難性を排除するために必要であり、適した荷電及びpH特性を与えると記載されている。
【0012】
米国特許第4,328,040号は、改良された白亜化抵抗及び光沢維持性を備える二酸化チタン顔料の製造方法を記載し、該方法において、アルカリ金属もしくはアンモニウムの塩基性炭酸ジルコニウム錯体を水性アルカリ性顔料分散液に添加し、次いで、チタン及び/又はアルミニウム及び/又はケイ素及び/又はリンの化合物の溶液を加えて、酸化物及び/又はリン酸塩を顔料上にゆっくりと沈殿させることによって、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、及びケイ素の酸化物及び/又はリン酸塩が、二酸化チタンに施与される。
【0013】
米国特許第4,405,376号は、二酸化チタン顔料及びその製造方法を提供し、該顔料は顔料状二酸化チタンコア粒子、錫及びジルコニウムの混合水和酸化物の内側コーティング、及びアルミニウム水酸化物の外側コーティングを含む。
【0014】
米国特許第4,450,012号は、被覆されたルチル混合相顔料を開示し、該顔料はチタン、ジルコニウムもしくは錫の酸化物もしくはその混合酸化物からなる第一コーティング、及び酸化アルミニウムの第二コーティングを有する。得られる顔料は、酸性触媒により硬化されたラッカー中での凝集に対する向上された耐性を示す。
【0015】
米国特許第4,759,800号は、二酸化チタンを化学的に処理する方法を記載し、該処理において、最初にチタニアがチタンオキシ塩化物溶液から析出され、次いで、アルミナによる外側処理が行われる。多くの実施例が、チタニアと他の金属酸化物、例えば、チタニア/アルミナ、チタニア/ジルコニア、及びジルコニア/チタニア/シリカ等、の共析出もしくは共沈の組み合わせを示す。得られた顔料は改良された耐候性及び光特性を示すとされている。
【0016】
米国特許第4,781,761号は、ボリアとシリカの共析出、好ましくは水溶性珪酸ナトリウム及びホウ酸ナトリウムを含むマスタ溶液からの共析出、が二酸化チタン粒子上に濃密なシリケートコーティングを、従来、濃密なシリケートコーティングを達成するために使用されていた温度よりも低い温度で形成できることを開示する。得られるボリアで修飾されたシリカを含む顔料は、非常に耐光性であり、優れた光沢と分散性を示す。
【0017】
米国特許第5,753,025号は、改良された光沢を有するコーティングを作るのに適したルチル型二酸化チタンの製造方法を開示する。該二酸化チタンは、ホウ素化合物とシリカを共析出し、次いで、アルミニウムの酸化物で処理して得られる。
【0018】
米国特許第7,135,065号は、二酸化チタン顔料の製造方法を記載する。該方法では、錫及びジルコニウムの水溶性化合物の水性溶液並びにアルミニウム、ケイ素及びチタンの少なくと1つが、3超10未満のpHに維持された二酸化チタンベース物質の水性懸濁液中に添加され、次いで、該懸濁液のpHが6〜8に調整されて、二酸化チタンベース物質上に対応する酸化物が析出される。
【0019】
米国公開第20040025749号は、高い耐灰色化性(グレイングレジスタンス)及び隠蔽性を有する二酸化チタン顔料の製造方法を開示する。該方法では、二酸化チタン、リン化合物、チタン化合物及びアルミニウム化合物の懸濁液のpHが約9に調整されて、次いでpHを約8.5超に維持しながら、マグネシウム化合物が添加される。
【0020】
米国公開第20050011408号は、二酸化チタン顔料の表面処理法を記載する。該方法は、a)アルミニウム成分及びリン成分を二酸化チタン懸濁液に、該懸濁液のpHを10以上に維持しながら、添加する工程、及びb)酸成分を、該pHが9未満になるまで、懸濁液に添加する工程を含む。アルミニウム成分及びリン成分と共に、他の塩、例えばセリウム、チタン、ケイ素、ジルコニウム、又は亜鉛、の塩の溶液を、工程a)において添加でき、これらは工程b)においてリン酸塩もしくは水和酸化物として、粒子表面に一緒に沈殿することも教示する。
【0021】
米国公開第20060032402号は、二酸化チタン顔料粒子に関する。該粒子は、該粒子上に析出された2以上の層を有し、該2以上の層のうちの少なくとも1つは、ケイ素以外の金属原子を実質的に含まない二酸化ケイ素からなる濃密な二酸化ケイ素層であり、該2以上の層のうちの少なくとも1つは、有意な量の、ケイ素以外の共沈された金属イオン酸化物もしくは金属イオンの混合酸化物を含む濃密な二酸化ケイ素層である。得られる顔料は、耐候性であり、表面コーティング及びプラスチックでの使用に特に適する。
【0022】
米国公開第20060034739号は、二酸化チタンの処理方法に関し、該方法は、錫及びジルコニウムの水和酸化物と一緒に、アルミニウム、ケイ素及びチタンからなる群選ばれる少なくとも一種の他の水和酸化物が、合わせて粒子表面に共沈されることを特徴とする。処理された顔料は、次いで、アルミニウム酸化物により処理される。先行技術と比べて、得られる顔料はより改良された光安定性を示すと共に、良好な光学特性を維持し、塗料(ペイント)、コーティング及びプラスチックへの使用に特に適する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
記載された、共沈もしくは共析出により施与された無機酸化物の混合物を有する、多くの二酸化チタンに拘らず、上記文献のいずれも本発明により可能となり、以下に詳細に記載されるプロセス効率及び本発明により実現される共沈配合の生成物の改良された密着性(コンシステンシ)及び均一性を記載乃至示唆しない。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、二酸化チタン顔料を作るための、簡易で改良された方法に関し、該方法は複数の無機酸化物もしくは1以上の無機酸化物と1以上の無機リン酸塩の組合わせが二酸化チタンベース顔料に施与される表面処理を含む。
【0025】
第一の態様において、本発明に従う方法は、a)硫酸塩プロセスもしくは塩化物プロセスからの二酸化チタンベース顔料の水性アルカリ性スラリであって、アルカリ水溶液溶解性の無機酸化物源の少なくとも1つが溶解されているもの、を用意する工程、b)少なくとも1の酸水溶液溶解性の無機酸化物源、及び/又は、水不溶性の燐酸塩を形成可能なカチオンの酸水溶液溶解性塩の少なくとも1つ、を硫酸水溶液に溶解する工程、次いで、c)前記硫酸水溶液を二酸化チタンベース顔料の水性アルカリ性スラリに、最終的なスラリのpHが約4〜8.5になるのに十分な量で、徐々に添加する工程を含む。
【0026】
第2の態様において、本発明の方法は、a)少なくとも1の酸水溶液溶解性の無機酸化物源、及び/又は、水不溶性の燐酸塩を形成可能なカチオンの酸水溶液溶解性の塩の少なくとも1つ、を硫酸水溶液に溶解する工程、b)少なくとも1のアルカリ溶解性の無機酸化物源をアルカリ水溶液に溶解する工程、c)次いで、前記硫酸水溶液と前記アルカリ水溶液の双方を、最終的なスラリのpHが約4〜8.5になる量で、硫酸塩プロセスもしくは塩化物プロセスで得られた二酸化チタンベース顔料の水性アルカリ性スラリに徐々に添加する工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0027】
第一の態様において、無機酸化物混合物もしくは酸化物/燐酸塩の組合わせを二酸化チタンベース顔料上に共沈させる改良された方法であって、好ましくは下記工程を含む方法が提供される。
(a)水と、二酸化チタンベース顔料であって、前記二酸化チタンベース顔料は、硫酸塩プロセスもしくは気相酸化に基づく塩化物プロセスにより製造されたものであり、及び、所望により、アルミニウム、ホウ素、リン、ケイ素、チタン及びジルコニウムの酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1つが湿式処理により該二酸化チタンベース顔料上に析出されているもの、を含む混合物を形成する工程、
(b)工程(a)からのスラリに、アルミニウム、ホウ素、リン、及びケイ素のアルカリ水溶液溶解性の酸化物塩からなる群より選ばれるアルカリ水溶液溶解性の酸化物塩の少なくとも1つを添加する工程、
(c)i)アルミニウム、セリウム、錫、チタン、及びジルコニウムの酸水溶液溶解性の塩からなる群より選ばれる少なくとも1つの酸水溶液溶解性の塩、及び/又はii)水不溶性燐酸塩を形成することができるカチオンの酸水溶液溶解性の塩の少なくとも1つを、硫酸水溶液に溶解する工程、
(d)完全に均一で密着した(コンシステントな)、無機酸化物及び/又は無機酸化物とリン酸塩混合物の共沈を促進するように、最終的なスラリのpH値を約4から約8.5になるのに十分な量の、工程(c)で調製した溶液を、工程(b)で調製したスラリに徐々に加える工程;及び
(e)工程(d)の後に、所望により、酸化アルミニウムを工程(d)で調製されたスラリ中の二酸化チタン粒子上に、スラリのpHを約4〜8.5に維持して、湿式処理により析出させる。
【0028】
第二の実施態様において、無機酸化物混合物の二酸化チタンベース顔料上への共沈法は、好ましくは下記工程を含む。
(a)水と、二酸化チタンベース顔料であって、該二酸化チタンベース顔料は硫酸塩プロセス又は気相酸化に基づく塩化物プロセスで製造されたものであり、所望により、アルミニウム、ホウ素、リン、ケイ素、チタン及びジルコニウムの酸化物からなる群より選ばれる無機酸化物の少なくとも1つが湿式処理により該二酸化チタンベースピグメント上に析出されているもの、を含む混合物を形成する;
(b)アルミニウム、ホウ素、リン及びケイ素のアルカリ水溶液溶解性の酸化物塩からなる群より選ばれるアルカリ水溶液溶解性の酸化物塩の少なくとも1つの水溶液を形成する;
(c)i)アルミニウム、セリウム、錫、チタン及びジルコニウムの酸水溶液溶解性の塩からなる群より選ばれる少なくとも1の酸水溶液溶解性の塩、及び/又はii)アルミニウム、セリウム、マグネシウム、チタン、亜鉛及びジルコニウムの酸水溶液溶解性の塩からなる群より選ばれる少なくとも1の他の酸水溶液溶解性の塩を硫酸水溶液に溶解する工程;
(d)完全に均一で密着した、無機酸化物混合物及び/又は無機酸化物とリン酸塩混合物の共沈を促進するように、スラリの最終的なpH値が約4〜約8.5になるのに十分な量で、工程(b)及び(c)で調製された溶液を、二つの別々のプロセス流で、工程(a)で得られたスラリに徐々に加える工程;及び
(e)工程(d)の後に、所望により、酸化アルミニウムを、スラリのpHを約4〜8.5に維持して、湿式処理により析出させる。
【0029】
得られる、処理された二酸化チタン顔料粒子は、典型的に、追加の公知の作用性添加物の存在もしくは不存在下での、ろ過、洗浄、乾燥及び流体エネルギー粉砕を含む、後述されるいくつかの追加の製造プロセスによりさらに処理されて、コーティング、紙、プラスチック及び化粧料における使用に適切な最終顔料となる。
【0030】
本発明の方法において、スラリのpHを硫酸水溶液で調整する前に、酸水溶液溶解性の無機酸化物源及び/又は水不溶性のリン酸塩を硫酸水溶液に溶解することは、より少ない薬剤の添加ストリームを使用が必要とされる点で、共沈酸化物及び/又はリン酸塩処理を得るための簡易な方法を与える。さらに、例えば米国特許第 4,115,144号、第4,328,040号及び第7,135,065号で行われるような酸化物の共沈がバッチベースであるのに対して、本発明の方法はいずれの態様もバッチベースか、好ましくは連続ベースで実施できる。当業者は、二酸化チタン顔料のように非常に大きなスケールで製造される物質の表面処理を連続ベースで行うことができることは、非常に便利で有利であることを認めるであろう。
【0031】
さらに、従前の方法で調製された酸化物混合物で処理された顔料に比べて生成物のより大きな密着性(コンシステンシ)が達成される。一の理論に限定することを意図するものでは無いが、酸溶解性の無機酸化物源を、アルカリ溶解性の無機酸化物を沈殿析出させるために使用されるのと同じ硫酸試薬に溶解させることによって行われる、分子レベルでの親密な混合が、従前の方法に比べて、より均一な無機酸化物及び/又はリン酸塩の共沈、従って、共沈プロセスの間の、酸化物及び/又はリン酸塩化学量論の、より高度な制御及び高い均一性、を可能にすると考えられる。従って、本発明の方法は、最終製品としての顔料特性の、より広い「ファインチューニング」を可能とする。
【0032】
広く、任意のタイプの二酸化チタンを、本発明に従う方法で処理することができる。好ましいのは、硫酸塩又は塩化物プロセスのいずれかで調製されたルチル型二酸化チタンベース顔料である。最も好ましいのは、塩化物プロセスで、気相酸化工程を用いて、四塩化チタンから調製されたルチル型二酸化チタンである。二酸化チタンは、気相酸化工程において、四塩化チタンに加えて、ルチル化を助けるために通常添加される塩化アルミニウムからのアルミナを含むことができる。酸化工程で形成される他の無機酸化物、例えば、米国特許第 3,856,929号、第5,201,949号、第5,922,120号及び第6,562,314号に記載されている粒径制御剤のような酸化可能な無機物質も、酸化工程で当業者が配合を所望する限度の量で、存在してよい。
【0033】
二酸化チタンベース顔料の水性スラリは、約5重量%〜約65重量%までの二酸化チタンの濃度で便利に使用される。好ましくは、二酸化チタン濃度が約15重量%〜約45重量%である。最も好ましくは、二酸化チタン濃度が約25重量%〜約40重量%である。
【0034】
本発明の双方の態様における工程(a)に関し、所望により公知の方法での無機酸化物による湿式処理を施与して、二酸化チタン上に無機酸化物を析出することができる。処理の数、その施与方法は重要ではなく、当業者には種々の可能な方法が公知であり、その詳細の記載は必要ない。しかしながら、プラスチック消費財用途の公知の無機酸化物処理法の例としては、米国特許第5,332,433号及び5,700,318号が無機処理法を記載し、米国特許第5,203,916号及び5,976,237号もコーティング製品への適用を記載する。典型的には、該任意の湿式処理で析出された酸化物は、処理された顔料の約0.5重量%から約5重量%の量で存在する。
【0035】
アルカリ溶解性の無機酸化物の源(ソース)は、酸化物塩の水性溶液として二酸化チタンの水性スラリに添加することができる。該溶液は、約1重量%〜約50重量%の溶解されたアルカリ溶解性塩を含む。好ましくは、水性溶液は約5重量%〜約40重量%の、溶解されたアルカリ溶解性塩を含む。最も好ましくは、水性溶液は約15重量%〜約35重量%の、溶解されたアルカリ溶解性塩を含む。好ましいのは、ナトリウム塩、カリウム塩及びこれらの混合物である。
【0036】
硫酸水溶液は、硫酸を約5重量%〜約98重量%まで含むが、好ましくは約20重量%〜約50重量%までの溶解された硫酸を含み、最も好ましくは、約25重量%〜約40重量%の溶解された硫酸を含む。
【0037】
酸溶解性の無機酸化物源及び/又は水不溶性のリン酸塩を形成することができるカチオンの酸溶解性塩は、予め調製された金属塩の水溶液を、又は、固体塩を硫酸水溶液に溶解することができる。該硫酸水溶液は、最終的に、溶解された酸溶解性塩を、二酸化チタン重量に対して、約0.05重量%〜約8重量%の共沈された酸化物及び/又はリン酸塩を達成するように計算された量で含む。好ましくは、溶解された酸溶解性塩を、二酸化チタン重量に対して、約0.1重量%〜約5重量%の共沈された酸化物及び/又はリン酸塩を達成するように計算された量で含む。最も好ましくは、溶解された酸溶解性塩を、二酸化チタン重量に対して、約0.2重量%〜約2.0重量%の共沈された酸化物及び/又はリン酸塩を達成するように計算された量で含む。金属の酢酸塩、塩化物、硝酸塩、及び硫酸塩が好ましい。
【0038】
典型的には、混合無機酸化物及び/又はリン酸塩の湿式処理は、本発明の方法に従い、処理された顔料について計算して、添加合計量で約0.2重量%〜約10重量%、より好ましくは約0.5〜約8重量%、最も好ましくは約1.0重量%〜約5重量%、の量で析出され、無機酸化物(又は無機酸化物混合物)及び/又はリン酸塩(又はリン酸塩混合物)のアルカリ溶解性の源から析出された、酸化物及び/又はリン酸塩の、無機酸化物及び/又はリン酸塩の酸溶解性の源から析出された、酸化物及び/又はリン酸塩に対する比は、約30:1〜約1:10である。好ましくは、約20:1〜約1:1である。最も好ましくは約15:1〜約2:1の比である。
【0039】
本発明の双方の態様において工程(e)に関しては、所望により、二酸化チタン上に酸化アルミニウムを析出させる任意の公知の方法により、酸化アルミニウムの湿式処理を施こすことができる。典型的には、湿式処理された酸化アルミニウムが存在する場合には、処理された顔料に対して計算して約0.5重量%〜約5重量%で存在する。該任意の酸化アルミニウムの湿式処理は、本発明の目的を疎外しない範囲で、共沈された酸化物及び/又はリン酸塩を含むことができる。
【0040】
湿式処理された二酸化チタン顔料のさらなる処理は、当技術分野において公知の任意の減圧濾過システムまたは加圧濾過システムを用いた濾過、洗浄、及び乾燥によって完了することができる。乾燥としては、乾燥された二酸化チタン顔料を製造するための減圧乾燥、スピン−フラッシュ乾燥、スプレー乾燥が包含される。好ましい方法は、スプレー乾燥である。このようにして製造された乾燥品を、所望により、所望の粒径分布まで、例えば、当技術分野で公知の添加剤の存在下もしくは不存在下で、慣用のスチーム微粉化により、粉砕することができる。
【0041】
<実施例>
以下の実施例が、本発明の特定の実施態様を示すが、ここで開示される本発明の範囲を限定する意図ではない。濃度及びパーセンテージは、特に断りの無い限り、重量である。
【実施例1】
【0042】
四塩化チタンから気相酸化により得られた二酸化チタン顔料粒子の中間体であって、1.0%のアルミナを含むものを、(顔料に対して)0.15重量%のヘキサメタリン酸ソーダ分散剤、及び分散物のpHを9.5以上にするのに十分な量の水酸化ナトリウムの存在下で、分散剤水に分散させて、固形分35重量%の水性分散物を得た。得られた二酸化チタンスラリを、ジルコンサンド対顔料の重量比4対1で、90%超の粒子のマイクロトラックXlOO 粒径分析計 (マイクロトラック社、モンゴメリビル、ペンシルベニア州)を用いて求められる体積平均粒径が0.63μmになるまで、サンドミルした。
【0043】
得られたスラリを、固形分30重量%まで希釈し、90℃まで加熱し、次いで、シリカとして計算して最終顔料の3.0重量%のケイ酸ナトリウムを、250g/リットルのケイ酸ナトリウム水溶液として加えることによって、20分かけて添加した。温度を90℃に維持したまま、スラリのpHをゆっくりと5.0まで、二酸化チタンに対して共沈される酸化ジルコニウムが0.2重量%になるような濃度でオキシ塩化ジルコニウムを含む36重量%の硫酸水溶液をゆっくり添加することによって、55分かけて下げた。pH5で15分間熟成した後、スラリのpHを、他の成分を含んでいない36%硫酸水溶液を同時に加えることによって8.0と8.5の間に維持しながら、アルミン酸ナトリウムを180g/リットルで含む溶液として添加することによって、最終顔料の2.0重量%のアルミナを20分かけて添加した。
【0044】
分散物を90℃で15分間平衡化した。その時点で、未だ熱い状態でろ過する前に、スラリのpHを5.8に再調整した。得られたフィルターケーキを、60℃に予備加熱され及びpH7.0に調整された水で洗浄した。該フィルターケーキは回収された顔料の推定重量の1.5倍であった。
【0045】
洗浄された半固体状のフィルターケーキを、次いで、攪拌しながら水中に再分散し、APV Nordic PSD52 スプレイドライヤ (Invensys APV Silkeborg、デンマーク)で、ドライヤ入口温度を約280℃に維持しながら乾燥し、乾燥顔料粉末を得た。該乾燥顔料粉末を、次いで、顔料に対して0.35重量%のトリメチロールプロパンの存在下で、顔料重量に対して重量比2.5のスチームで、スチームの入射圧力146 psi及びマイクロナイザのリング圧力118psiで、微粉化して最終顔料の調製を完了した。
【0046】
本発明の方法に従い得られた顔料のジルコニア含有量を、PANalytical PW2404 分光器 (PANalytical B. V. Almelo、オランダ)を、標準試料を用いて校正し及びマトリックス補正して用いて、公知のX線蛍光分析により求めた。
【0047】
本発明に従うジルコニアの共沈配合の、効果及び均一性の度合いを決定するのを助けるために、顔料の光触媒活性をT. I. Brownbridge及びJ. R. Brand著, "Photocatalytic Activity of Titanium Dioxide Pigment"、 Surface Coatings Australia、9月、 1990、6-11頁 (SCAA第32回年会における公演, Perth, Wash., 9月、1990), 及び、これを引用し及び記載する米国特許第5,730,796号記載の技術を用いて求めた。該方法は、以下の工程を含む:(1)約0.2gのTiO2生成物を約40ミリリットルの分光分析グレードのイソプロパノール中に入れる;(2)TiO2/イソプロパノール組成物を紫外光に曝す;(3)時間による、該試験組成物中のアセトンの精製を監視する;(4)直線回帰分析により、該試験組成物中のアセトン生成の一次反応速度を求める;及び(5)計算された反応速度値に1000を乗じる。得られる値(高感度光触媒(HSPCA)勾配として報告される)は、紫外光への暴露による顔料の光触媒応答に比例し、顔料生成物を含むコーティングプラスチックの加速耐候特性の測定法となる。より小さい値が、二酸化チタン顔料の内在光触媒活性のより大きな抑制、従って、より大きい耐久性、もしくは耐変色性を意味し、双方とも、シリカ表面処理における、より効率的で均一な共沈ジルコニウム酸化物の取り込みの直接的な結果である。
【0048】
結果を表1に、2つの最終顔料試料の比較結果と共に示す。該比較の第一のものは、シリカ析出工程の始めにオキシ塩化ジルコニウムをバッチ添加したことを除き上記と同様に調製し(比較例IA)及び、該比較の第二のものは、シリカ析出工程の間に使用する硫酸溶液にオキシ塩化ジルコニウムの添加をせず、シリカ及びジルコニア共沈混合酸化物処理を3%シリカ析出に代えたことを除き上記と同様に調製した(比較例IB)。
【0049】
【表1】

【0050】
実施例1は、3.0%の濃いシリカと0.2%ジルコニアの共沈、次いで、2.0%のアルミナによる、2つの逐次工程により混合酸化物処理された二酸化チタンが調製される、本発明の新しい方法を示す。本発明の顔料の、耐久性の実質的な上昇(比較例に対する減少したHSPCA値)は、シリカ処理における共沈されたジルコニアの均一な取り込みを示す。得られた二酸化チタン顔料は、プラスチック、コーティング、特に、外で使用する消費財物品及び組成物の製造に有用である。
【実施例2】
【0051】
四塩化チタンから気相酸化により得られた二酸化チタン顔料粒子の中間体であって、1.0%のアルミナを含むものを、(顔料に対して)0.15重量%のヘキサメタリン酸ソーダ分散剤、及び分散物のpHを9.5以上にするのに十分な量の水酸化ナトリウムの存在下で、分散剤水に分散させて、固形分35重量%の水性分散物を得た。得られた二酸化チタンスラリを、ジルコンサンド対顔料の重量比4対1で、90%超の粒子のマイクロトラックXlOO 粒径分析計を用いて求められる体積平均粒径が0.63μmになるまで、サンドミルした。
【0052】
得られたスラリを、固形分30重量%まで希釈し、90℃まで加熱し、次いで、シリカとして計算して最終顔料の3.0重量%のケイ酸ナトリウムを、250g/リットルのケイ酸ナトリウム水溶液として加えることによって、20分かけて添加した。温度を90℃に維持したまま、スラリのpHをゆっくりと5.0まで、二酸化チタンに対して共沈される酸化アルミニムが0.5重量%になるような濃度で硫酸アルミニウムを含む36重量%の硫酸水溶液をゆっくり添加することによって、55分かけて下げた。pH5で15分間熟成した後、スラリのpHを、他の成分を含んでいない36%硫酸水溶液を同時に加えることによって8.0と8.5の間に維持しながら、アルミン酸ナトリウムを180g/リットルで含む溶液として添加することによって、最終顔料の2.0重量%のアルミナを20分かけて添加した。
【0053】
分散物を90℃で15分間平衡化した。その時点で、未だ熱い状態でろ過する前に、スラリのpHを5.8に再調整した。得られたフィルターケーキを60℃に予備加熱され及びpH7.0に調整された水で洗浄した。該フィルターケーキは回収された顔料の推定重量の1.5倍であった。
【0054】
洗浄された半固体状のフィルターケーキを、次いで、攪拌しながら水中に再分散し、APV Nordic PSD52 スプレイドライヤで、ドライヤ入口温度を約280℃に維持しながら乾燥し、乾燥顔料粉末を得た。該乾燥顔料粉末を、次いで、顔料に対して0.35重量%のトリメチロールプロパンの存在下で、顔料重量に対して重量比2.5のスチームで、スチームの入射圧力146 psi及びマイクロナイザのリング圧力118psiで、微粉化して最終顔料の調製を完了した。
【0055】
本発明の方法に従い得られた顔料のアルミナ含有量を、PANalytical PW2404 分光器 (PANalytical B. V. Almelo、オランダ)を、標準試料を用いて校正し及びマトリックス補正して用いて、公知のX線蛍光分析により求めた。
【0056】
本発明に従うアルミナの共沈の、効果及び均一性の度合いを決定するのを助けるために、顔料の光触媒活性を実施例1と同様にして求めた。より小さい値が、二酸化チタン顔料の内在する光触媒活性のより大きな抑制、従って、より大きい耐久性、もしくは耐変色性を意味し、双方とも、シリカ表面処理における、より効率的で均一な共沈酸化アルミニウムの取り込みの直接的な結果である。
【0057】
結果を表2に、2つの最終顔料試料の比較結果と共に示す。該比較の第一のものは、シリカ析出工程の始めに硫酸アルミニウムをバッチ添加したことを除き上記と同様に調製し(比較例2A)及び、該比較の第二のものは、シリカ析出工程の間に使用する硫酸溶液に硫酸アルミニウムの添加をせず、シリカ及びアルミナ共沈混合酸化物処理を3%シリカ析出に代えた、ことを除き上記と同様に調製した(比較例2B)。
【0058】
【表2】

【0059】
実施例2は、3.0%の濃いシリカと0.5%アルミナの共沈、次いで、2.0%のアルミナによる、2つの逐次工程による混合酸化物処理された二酸化チタンが調製される、本発明の新しい方法を示す。本発明の顔料の、耐久性の実質的な上昇(比較例に対する減少したHSPCA値)は、シリカ処理における共沈されたアルミナの均一な取り込みを示す。得られた二酸化チタン顔料は、プラスチック、コーティング、特に、外で使用する消費財物品及び組成物の製造に有用である。
【実施例3】
【0060】
四塩化チタンから気相酸化により得られた二酸化チタン顔料粒子の中間体であって、1.0%のアルミナを含むものを、(顔料に対して)0.15重量%のヘキサメタリン酸ソーダ分散剤、及び分散物のpHを9.5以上にするのに十分な量の水酸化ナトリウムの存在下で、分散剤水に分散させて、固形分35重量%の水性分散物を得た。得られた二酸化チタンスラリを、ジルコンサンド対顔料の重量比4対1で、90%超の粒子のマイクロトラックXlOO 粒径分析計を用いて求められる体積平均粒径が0.63μmになるまで、サンドミルした。
【0061】
得られたスラリを、固形分30重量%まで希釈し、90℃まで加熱し、次いで、シリカとして計算して最終顔料の3.0重量%のケイ酸ナトリウムを、250g/リットルのケイ酸ナトリウム水溶液として加えることによって、30分かけて添加し、同時に、温度を90℃に維持しながら、36重量%の硫酸水溶液を添加してpHを5まで下げた。
【0062】
pH5で15分間熟成した後、二酸化チタンに対して共沈される酸化ジルコニウムが0.2重量%になるような濃度でオキシ塩化ジルコニウムを含む36%硫酸水溶液を同時に加えることによって、スラリのpHを7.0に維持しながら、アルミン酸ナトリウムを180g/リットルで含む溶液として添加することによって、最終顔料の2.0重量%のアルミナを20分かけて添加した。
【0063】
分散物を90℃で15分間平衡化した。その時点で、未だ熱い状態でろ過する前に、スラリのpHを5.8に再調整した。得られたフィルターケーキを60℃に予備加熱され及びpH7.0に調整された水で洗浄した。該フィルターケーキは回収された顔料の推定重量の1.5倍であった。
【0064】
洗浄された半固体状のフィルターケーキを、次いで、攪拌しながら水中に再分散し、APV Nordic PSD52 スプレイドライヤで、ドライヤ入口温度を約280℃に維持しながら乾燥し、乾燥顔料粉末を得た。該乾燥顔料粉末を、次いで、顔料に対して0.35重量%のトリメチロールプロパンの存在下で、顔料重量に対して重量比2.5のスチームで、スチームの入射圧力146 psi及びマイクロナイザのリング圧力118psiで、微粉化して最終顔料の調製を完了した。
【0065】
実施例1と同様にして、本発明の方法に従い得られた顔料のジルコニア含量及び光触媒活性を調べた。結果を表3に、2つの最終顔料試料の比較結果と共に示す。該比較の第一のものは、アルミン酸ナトリウム溶液の添加工程の直前にオキシ塩化ジルコニウムをバッチ添加したことを除き上記と同様に調製し(比較例3A)及び、該比較の第二のものは、アルミナ析出工程の間に使用する硫酸溶液にオキシ塩化ジルコニウムの添加をせず、ジルコニア及びアルミナ共沈混合酸化物処理を2%アルミナ析出に代えた、ことを除き上記と同様に調製した(比較例3B)。
【0066】
【表3】

【0067】
実施例3は、3.0%の濃いシリカ処理、次いで、(顔料重量に対して)0.2%のジルコニアと2.0%のアルミナの共沈を含む、2つの逐次工程による混合酸化物処理された二酸化チタンが調製される、本発明の新しい方法を示す。本発明の顔料の、耐久性の実質的な上昇(比較例に対する減少したHSPCA値)は、アルミナ処理における共沈されたジルコニアの均一な取り込みを示す。得られた二酸化チタン顔料は、プラスチック、コーティング、特に、外で使用する消費財物品及び組成物の製造に有用である。
【実施例4】
【0068】
四塩化チタンから気相酸化により得られた二酸化チタン顔料粒子の中間体であって、その結晶格子中に0.6%のアルミナを含むものを、(顔料に対して)0.18重量%のヘキサメタリン酸ソーダ分散剤、及び分散物のpHを9.5以上にするのに十分な量の水酸化ナトリウムの存在下で、分散剤水に分散させて、固形分35重量%の水性分散物を得た。得られた二酸化チタンスラリを、ジルコンサンド対顔料の重量比4対1で、90%超の粒子のマイクロトラックXlOO 粒径分析計を用いて求められる体積平均粒径が0.63μmになるまで、サンドミルした。
【0069】
得られたスラリを、固形分30重量%まで希釈し、70℃まで加熱し、36重量%の硫酸水溶液を添加してpH約6.0まで酸性にした。pH6で15分間熟成した後、二酸化チタンに対して共沈される酸化ジルコニウムが0.2重量%になるような濃度でオキシ塩化ジルコニウムを36重量%の硫酸水溶液を同時に添加してスラリのpHを6に維持しながら、最終顔料に対して3.0重量%のアルミナを、180 g/リットルのアルミン酸ナトリウム水溶液として、20分かけて添加した。
【0070】
分散物を70℃で15分間平衡化した。その時点で、未だ熱い状態でろ過する前に、スラリのpHを7.0に再調整した。得られたフィルターケーキを60℃に予備加熱され及びpH7.0に調整された水で洗浄した。該フィルターケーキは回収された顔料の推定重量の1.5倍であった。
【0071】
洗浄された半固体状のフィルターケーキを、次いで、攪拌しながら水中に再分散し、APV Nordic PSD52 スプレイドライヤで、ドライヤ入口温度を約280℃に維持しながら乾燥し、乾燥顔料粉末を得た。該乾燥顔料粉末を、次いで、顔料に対して0.35重量%のトリメチロールプロパンの存在下で、顔料重量に対して重量比2.5のスチームで、スチームの入射圧力146 psi及びマイクロナイザのリング圧力118psiで、微粉化して最終顔料の調製を完了した。
【0072】
実施例1と同様にして、本発明の方法に従い得られた顔料のジルコニア含量及び光触媒活性を調べた。結果を表4に、2つの最終顔料試料の比較結果と共に示す。該比較の第一のものは、アルミン酸ナトリウム溶液の添加工程の直前にオキシ塩化ジルコニウムをバッチ添加したことを除き上記と同様に調製し(比較例3A)及び、該比較の第二のものは、アルミナ析出工程の間に使用する硫酸溶液にオキシ塩化ジルコニウムの添加をせず、ジルコニア及びアルミナ共沈混合酸化物処理を3%アルミナ析出に代えた、ことを除き上記と同様に調製した(比較例3B)。
【0073】
【表4】

【0074】
実施例4は、(顔料重量に対して)3.0%のアルミナ及び0.2%のジルコニアの共沈を含む、一工程による混合酸化物処理された二酸化チタンが調製される、本発明の新しい方法を示す。本発明の顔料の、耐久性の実質的な上昇(比較例に対する減少したHSPCA値)は、アルミナ処理における共沈されたジルコニアの均一な取り込みを示す。得られた二酸化チタン顔料は、建築及び産業用コーティングの製造に特に有用である。
【実施例5】
【0075】
四塩化チタンから気相酸化により得られた二酸化チタン顔料粒子の中間体であって、1.0%のアルミナを含むものを、(顔料に対して)0.15重量%のヘキサメタリン酸ソーダ分散剤、及び分散物のpHを9.5以上にするのに十分な量の水酸化ナトリウムの存在下で、分散剤水に分散させて、固形分35重量%の水性分散物を得た。得られた二酸化チタンスラリを、ジルコンサンド対顔料の重量比4対1で、90%超の粒子のマイクロトラックXlOO 粒径分析計を用いて求められる体積平均粒径が0.63μmになるまで、サンドミルした。
【0076】
得られたスラリを、固形分30重量%まで希釈し、70℃まで加熱し、次いで、アルミナとして計算して最終顔料の1.8重量%のアルミン酸ナトリウムを、180g/リットルのアルミン酸ナトリウム水溶液として加えることによって、20分かけて添加し、及び、5.0重量%のリン酸三ナトリウムを10%水溶液として、10分かけて添加した。
【0077】
温度を70℃に維持したまま、二酸化チタンに対して共沈される酸化ジルコニウムが0.2重量%になるような濃度でオキシ塩化ジルコニウムを含む36重量%の硫酸水溶液をゆっくり添加することによって、スラリのpHをゆっくりと7.0まで、55分かけて下げた。
【0078】
pH7で15分間熟成した後、他の成分を含んでいない36%硫酸水溶液を同時に加えることによってスラリのpHを7に維持しながら、アルミン酸ナトリウムを180g/リットルで含む溶液として添加することによって、最終顔料の3.2重量%のアルミナを30分かけて添加した。
【0079】
分散物を70℃で15分間平衡化した。その時点で、未だ熱い状態でろ過する前に、スラリのpHを7.0に再調整した。得られたフィルターケーキを60℃に予備加熱され及びpH7.0に調整された水で洗浄した。該フィルターケーキは回収された顔料の推定重量の1.5倍であった。
【0080】
洗浄された半固体状のフィルターケーキを、次いで、攪拌しながら水中に再分散し、APV Nordic PSD52 スプレイドライヤで、ドライヤ入口温度を約280℃に維持しながら乾燥し、乾燥顔料粉末を得た。該乾燥顔料粉末を、次いで、顔料に対して0.35重量%のトリメチロールプロパンの存在下で、顔料重量に対して重量比2.5のスチームで、スチームの入射圧力146 psi及びマイクロナイザのリング圧力118psiで、微粉化して最終顔料の調製を完了した。
【0081】
実施例1と同様にして、本発明の方法に従い得られた顔料のジルコニア含量及び光触媒活性を調べた。結果を表5に、2つの最終顔料試料の比較結果と共に示す。該比較の第一のものは、リン酸三ナトリウム溶液の添加工程の直後にオキシ塩化ジルコニウムをバッチ添加したことを除き上記と同様に調製し(比較例5A)及び、該比較の第二のものは、アルミナ析出工程の間に使用する硫酸溶液にオキシ塩化ジルコニウムの添加をせず、共沈されたジルコニア及びアルミナによる、リン酸塩及び酸化物混合処理を3.8%の析出されたリン酸アルミニウムに代えた、ことを除き上記と同様に調製した(比較例5B)。
【0082】
【表5】

【0083】
実施例5は、顔料に対して3.8重量%のリン酸アルミニウムと0.2%ジルコニアの共沈、次いで、3.2%のアルミナによる、2つの逐次工程による無機リン酸塩及び酸化物の混合物で処理された二酸化チタンが調製される、本発明の新しい方法を示す。本発明の顔料の、耐久性の実質的な上昇(比較例に対する減少したHSPCA値)は、リン酸アルミニウム処理における共沈されたジルコニアの均一な取り込みを示す。得られた二酸化チタン顔料は、プラスチック、コーティング、特に、ラミネート紙の製造に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無機酸化物又は1以上の無機酸化物と1以上の無機リン酸塩の組み合わせが、塩化物プロセス又は硫酸塩プロセスからの二酸化チタンベース顔料に施与される表面処理を含む、二酸化チタン顔料を調製する方法であって、
a)硫酸塩プロセスもしくは塩化物プロセスからの二酸化チタンベース顔料の水性アルカリ性スラリであって、アルカリ水溶液溶解性の無機酸化物源の少なくとも1つが溶解されているもの、を用意する工程、b)少なくとも1の酸水溶液溶解性の無機酸化物源、及び/又は、水不溶性の燐酸塩を形成可能なカチオンの酸水溶液溶解性塩の少なくとも1つ、を硫酸水溶液に溶解する工程、次いで、c)前記硫酸水溶液を二酸化チタンベース顔料の水性アルカリ性スラリに、最終的なスラリのpHが約4〜8.5になるのに十分な量で、徐々に添加する工程、
を含む方法。
【請求項2】
選択された二酸化チタンベース顔料が、アルミニウム、ホウ素、リン、ケイ素、チタン及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1の物の無機酸化物をその上に析出させる表面処理を予め施されている、請求項1に従う方法。
【請求項3】
水性アルカリ性スラリを調製するのに使用される二酸化チタンベース顔料が、処理された顔料全体としての重量に対して、約0.5重量%〜約5重量%の無機酸化物もしくは無機酸化物混合物を含む、請求項2に従う方法。
【請求項4】
工程a)が、塩化物プロセス又は硫酸塩プロセスからの二酸化チタンベース顔料と水の混合物を調製し、次いで、アルミニウム、ホウ素、リン、及びケイ素のアルカリ水溶液溶解性の酸化物塩からなる群より選ばれるアルカリ水溶液溶解性の酸化物塩の少なくとも1つを該混合物に添加することにより実施される、請求項1に従う方法。
【請求項5】
アルミニウム、ホウ素、リン、もしくはケイ素の、ナトリウムもしくはカリウム塩が、約1重量%〜約50重量%の溶解された塩を含む水溶液の形態で使用され及び添加される、請求項4に従う方法。
【請求項6】
アルミニウム、ホウ素、リン、もしくはケイ素の、ナトリウムもしくはカリウム塩が、約5重量%〜約40重量%の溶解された塩を含む水溶液の形態で使用され及び添加される、請求項5に従う方法。
【請求項7】
アルミニウム、ホウ素、リン、もしくはケイ素の、ナトリウムもしくはカリウム塩が、約15重量%〜約35重量%の溶解された塩を含む水溶液の形態で使用され及び添加される、請求項6に従う方法。
【請求項8】
酸水溶液溶解性の無機酸化物源又は水不溶性のリン酸塩を形成することができるカチオン源が、アルミウム、セリウム、錫、チタン及びジルコニウムの酸水溶液溶解性の塩からなる群より選ばれる、請求項1に従う方法。
【請求項9】
少なくとも1の、酸水溶液溶解性の無機酸化物源又は水不溶性のリン酸塩を形成することができるカチオン源が、予め用意された金属塩水溶液もしくは固体塩のいずれかの形態で、添加され及び硫酸水溶液に溶解される、請求項8に従う方法。
【請求項10】
工程b)で使用される硫酸水溶液が、約5重量%〜約98重量%の硫酸を含む、請求項1に従う方法。
【請求項11】
工程b)で使用される硫酸水溶液が、約20重量%〜約50重量%の硫酸を含む、請求項10に従う方法。
【請求項12】
工程b)で使用される硫酸水溶液が、約25重量%〜約40重量%の硫酸を含む、請求項11に従う方法。
【請求項13】
二酸化チタンベース顔料が約5重量%〜約65重量%で水性アルカリ性スラリに含まれる、請求項1に従う方法。
【請求項14】
二酸化チタンベース顔料が約15重量%〜約45重量%で水性アルカリ性スラリに含まれる、請求項13に従う方法。
【請求項15】
酸化チタンベース顔料が約25重量%〜約40重量%で水性アルカリ性スラリに含まれる、請求項14に従う方法。
【請求項16】
アルカリ溶解性の源及び酸溶解性の源から析出される、複数の無機酸化物又は1以上の無機酸化物と1以上の無機リン酸塩の組み合わせが、合計で、二酸化チタンに基づく顔料の、約0.2重量%〜約10重量%で含まれる、請求項1に従う方法。
【請求項17】
アルカリ溶解性の源及び酸溶解性の源から析出される、複数の無機酸化物又は1以上の無機酸化物と1以上の無機リン酸塩の組み合わせが、合計で、二酸化チタンに基づく顔料の、約0.5〜約8重量%で含まれる、請求項16に従う方法。
【請求項18】
アルカリ溶解性の源及び酸溶解性の源から析出される、複数の無機酸化物又は1以上の無機酸化物と1以上の無機リン酸塩の組み合わせが、合計で、二酸化チタン顔料に基づき、約1.0重量%〜約5重量%で含まれる、請求項17に従う方法。
【請求項19】
アルカリ溶解性の源から析出された1以上の酸化物及び/又は1以上のリン酸塩の、酸性溶解性の源から析出されたそれらに対する比が、約30:1〜約1:10である、請求項16に従う方法。
【請求項20】
アルカリ溶解性の源から析出された1以上の酸化物及び/又は1以上のリン酸塩の、酸性溶解性の源から析出されたそれらに対する比が、約20:1〜約1:1である、請求項19に従う方法。
【請求項21】
アルカリ溶解性の源から析出された1以上の酸化物及び/又は1以上のリン酸塩の、酸性溶解性の源から析出されたそれらに対する比が、約15:1〜約2:1である、請求項20に従う方法。
【請求項22】
工程(C)に従い、顔料上に、複数の無機酸化物及び/又は無機酸化物と無機リン酸塩の組み合わせを、実質的に完全に共沈させた後に、スラリのpHを約4〜約8.5に維持しながら、酸化アルミニウムを二酸化チタンベース顔料上に湿式処理により析出させる工程をさらに含む、請求項1に従う方法。
【請求項23】
複数の無機酸化物又は1以上の無機酸化物と1以上の無機リン酸塩の組み合わせが、塩化物プロセス又は硫酸塩プロセスからの二酸化チタンベース顔料に施与される表面処理を含む、二酸化チタン顔料を調製する方法であって、
a)少なくとも1の酸水溶液溶解性の無機酸化物源、及び/又は、水不溶性の燐酸塩を形成可能なカチオンの酸水溶液溶解性の塩の少なくとも1つ、を硫酸水溶液に溶解する工程、b)少なくとも1のアルカリ溶解性の無機酸化物源をアルカリ水溶液に溶解する工程、c)次いで、前記硫酸水溶液と前記アルカリ水溶液の双方を、最終的なスラリのpHが約4〜8.5になる量で、硫酸塩プロセスもしくは塩化物プロセスで得られた二酸化チタンベース顔料の水性アルカリ性スラリに徐々に添加する工程、
を含む方法。

【公表番号】特表2010−526015(P2010−526015A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506281(P2010−506281)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/005394
【国際公開番号】WO2008/136946
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(500002799)トロノックス エルエルシー (17)
【Fターム(参考)】