説明

共沸様組成物

【課題】 オゾン層を破壊する恐れが無く、塩素を含まないハイドロフルオロエ−テルをベ−スとして、加工や錆止めとして金属部品に使用されているグリ−スや加工油等の脱脂及び半導体製造時のフラックス除去のために好適に使用される洗浄剤のほか、発泡剤、作動媒体、分散剤、電気絶縁剤等の用途を代替することが可能な共沸乃至それに近い挙動(共沸様)を示す新規な組成物を提供すること。
【解決手段】 80〜99.5重量%の1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエ−テル、及び20〜0.5重量%の2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノールからなる共沸様組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度にフッ素化されたハイドロフルオロエ−テルをベ−スとする共沸乃至それに近い挙動を示す新規な組成物に関するものである。更に詳しくは、加工や錆止めとして金属部品に使用されているグリ−スや加工油等の脱脂及び半導体製造時のフラックス除去のために好適に使用される洗浄剤のほか、発泡剤、作動媒体、分散剤、電気絶縁剤等の用途を代替することが可能な新規な共沸様組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロフルオロカ−ボンは毒性が少なく難燃性で、化学的、熱的に安定なものが多いため、溶剤、発泡剤、冷媒等に広く使用され、フラックスや加工油等の洗浄には、クロロフルオロカ−ボン系溶剤である1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン(CFC−113、沸点約48度)、或いは塩素系溶剤である1,1,1−トリクロロエタン等が使用されて来た。
【0003】
しかし、オゾン層保護の観点からウイ−ン条約(1985年)やモントリオ−ル議定書(1987年)に基づき、わが国でもCFC−11(トリクロロフルオロメタン)、CFC−12(ジクロロジフルオロメタン)、CFC−113、CFC−114(1,2−ジクロロテトラフルオロエタン)、CFC−115(クロロペンタフルオロエタン)などのクロロフルオロカ−ボンについては、1995年までに生産が事実上停止された。また、塩素系溶剤については、衛生や環境面の影響が懸念されている。
【0004】
それに代る低沸点溶剤として、パーフルオロブチルメチルエーテルが知られているが、パーフルオロブチルメチルエーテルは、油やフラックス等の汚れに対して洗浄性能が低く、使用できる分野が限られている。
【0005】
そのため、パーフルオロブチルメチルエーテルの洗浄性能を改善する試みが行われてきた。例えば、特開2000−143568号公報にはパーフルオロブチルメチルエーテル、含臭素炭化水素及び低級アルコールよりなる共沸様組成物が提案されている。さらに、特表平10−510579号公報には、ペルフルオロブチルメチルエーテルと、ケトン、アルコール、環状アルカン、塩素化アルカン、一部フッ素化アルコール、HCFCなどの有機溶剤との組成物が提案されている。
【0006】
本発明者らは、従来公知の組成物とは異なり、洗浄使用工程において蒸留操作があっても組成変化が少なく組成物の特性を維持することができ、且つ回収や再利用に好都合な共沸乃至それに近い挙動(共沸様)を示す、オゾン層を破壊する恐れが無く、塩素を含まない新規な組成物を鋭意研究した結果、本発明に到達した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−143568号公報
【特許文献2】特表平10−510579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、オゾン層を破壊する恐れが無く、塩素を含まないハイドロフルオロエ−テルをベ−スとして、加工や錆止めとして金属部品に使用されているグリ−スや加工油等の脱脂及び半導体製造時のフラックス除去のために好適に使用される洗浄剤ほか、発泡剤、作動媒体、分散剤、電気絶縁剤等の用途を代替することが可能な共沸乃至それに近い挙動(共沸様)を示す新規な組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、80〜99.5重量%の1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエ−テル、及び20〜0.5重量%の2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノ−ルからなる共沸様組成物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、オゾン層を破壊する恐れが無く、塩素を含まないハイドロフルオロエ−テルをベ−スとして、共沸乃至それに近い挙動を示す新規な組成物が提供される。
本発明によれば、本発明は共沸乃至それに近い挙動を示す組成であるため、使用工程において蒸留操作があっても成分の組成変化が少なく、該組成物の特性を維持することができ、組成物の回収や再利用に好都合な組成物が提供される。
本発明によれば、炭化水素系油等の溶解性がハイドロフルオロエ−テル単独の場合よりも向上した組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、ハイドロフルオロエ−テルとフッ素化アルコ−ルからなる共沸様組成物に関する。
【0012】
本発明のハイドロフルオロエ−テルは、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエ−テル(以下、HFE347pc−fということがある)である。
【0013】
本発明のフッ素化アルコールは、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノ−ル(以下、PFPということがある)である。
【0014】
本発明の共沸様組成物は、ハイドロフルオロエ−テルの1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエ−テルと、フッ素化アルコ−ルの2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノ−ルからなる共沸様組成物である。
【0015】
これらの共沸様組成物の好ましい組成としては、80〜99.5重量%のHFE−347pc−fと20〜0.5重量%のPFPからなる共沸様組成物を挙げることができる。
【0016】
本発明において、共沸様組成物とは、共沸乃至それに近い挙動(共沸様)を示す組成物をいう。本発明の共沸様組成物においては、使用工程において蒸留操作があっても成分の組成変化が少なく共沸様組成物の特性を維持することができるため、組成物の回収や再利用に好都合である。
また、炭化水素系油等の溶解性をハイドロフルオロエ−テル単独の場合よりも向上させることができる。
【0017】
本発明で特に好ましい共沸様組成物として、97重量%のHFE−347pc−fと3重量%のPFPからなる共沸様組成物を挙げることができる。
【0018】
本発明の共沸様組成物は、必要に応じて安定化剤を含んでいてもよい。安定化剤としては、ニトロアルカン類、エポキシド類、フラン類、ベンゾトリアゾール類、フェノール類、アミン類、ホスフェイト類から選ばれる少なくとも1種を含むことができる。安定化剤としては、従来クロロフルオロカーボン類に用いられてきたものから、適宜選択して用いることができる。これらの安定化剤の配合量は、共沸様組成物に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%であることが望ましい。
【0019】
さらに、本発明の共沸様組成物は、本発明の特徴を損なわない範囲で、必要に応じて、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、炭化水素類、アミン類、グリコールエーテル類、シロキサン類などの他の成分を含むことができる。
【0020】
本発明の共沸様組成物は、洗浄剤、発泡剤、作動媒体、分散剤、電気絶縁剤等の用途に用いることができる。
洗浄剤用途としては、金属部品、プラスチック部品、ゴム製品、ガラス製品、及びこれらを組み合わせた精密機械部品、電子部品の、微粒子や油脂などの汚染物除去用洗浄剤として、或いはドライクリーニング用洗浄剤として用いることができる。洗浄剤として用いる場合、常温洗浄法での拭い落とし、浸漬、はけ洗い、フラッシュ、スプレー、超音波洗浄、或いは、加熱洗浄法での沸騰状態での浸漬、蒸気すすぎ、蒸気洗浄等が適用でき、これらを適宜組み合わせることにより更に効果的に洗浄することができる。
分散剤用途としては、潤滑剤、撥水撥油剤、防錆剤、及び金属部品や、プラスチック部品、ガラス部品等に塗料等を均一に塗布するための媒体として、効果的に用いることができる。
【実施例】
【0021】
次に実施例及び比較例を示して、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
【0022】
(実施例1)
HFE−347pc−f(沸点57.2℃(測定値))約100gをフラスコ(300ml)に入れ沸騰させた。その中に任意の量のPFP(沸点約81.0℃(測定値))を添加していき、液相の温度変化を調べた。その結果、当初57.2℃であった沸点が57.1℃まで低下した。このときの液相及び及びガス相の組成をガスクロマトグラフ(島津製作所製GC−14A)により分析したところ、HFE−347pc−fが97.0重量%、PFP濃度は3.0重量%であった。
本実施例から、97.0重量%のHFE−347pc−f及び3.0重量%のPFPからなる本発明の組成物は、沸点が57.1度に低下し気相と液相の組成がほぼ同一となり、共沸様組成物となっていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明により、高度にフッ素化された特定のハイドロフルオロエ−テルをベ−スとする、共使用工程において蒸留操作があっても成分の組成変化が少なく、該組成物の特性を維持することができ、組成物の回収や再利用に好都合な沸乃至それに近い挙動(共沸様)を示す新規な組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、炭化水素系油等の溶解性がハイドロフルオロエ−テル単独の場合よりも向上した新規な共沸様組成物を提供することができる。
本発明により提供される新規な共沸様組成物は、クロロフロロカーボン、或いは塩素系溶剤の代替として、加工や錆止めとして金属部品に使用されているグリ−スや加工油等の脱脂及び半導体製造時のフラックス除去のために好適に使用される洗浄剤のほか、発泡剤、作動媒体、分散剤、電気絶縁剤等の用途に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
80〜99.5重量%の1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエ−テル、及び20〜0.5重量%の2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノールからなる共沸様組成物。
【請求項2】
97重量%の1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエ−テル、及び3重量%の2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノールからなる請求項1に記載の共沸様組成物。

【公開番号】特開2010−285626(P2010−285626A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165240(P2010−165240)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【分割の表示】特願2004−259294(P2004−259294)の分割
【原出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000174851)三井・デュポンフロロケミカル株式会社 (59)
【Fターム(参考)】